JP2023051167A - クロロフィル類含有組成物 - Google Patents

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賢哉 村田
Masaya Murata
晃典 梅山
Akinori Umeyama
正明 田村
Masaaki Tamura
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Abstract

【課題】長期保存によっても凝集の発生が抑制されたクロロフィル類、ポリフェノール類、水を含む溶媒を含有する液状組成物を提供する。【解決手段】クロロフィル類、ポリフェノール類、水を含む溶媒、ポリエステル樹脂を含有する長期保存によっても凝集の発生が抑制された液状組成物の提供。【選択図】なし

Description

本発明は、クロロフィル類を含有する組成物に関する。
着色料のうちの天然着色料は、植物等から抽出された色素であり、自然ならではの色合いや合成着色料に比べて体や環境にやさしいというイメージを有するため、食品、化粧品、染料などに使用されている。天然着色料のうち、クロロフィル(葉緑素)は、植物や藻類などに含まれる緑色の天然色素として、ほうれん草やクロレラなどから抽出され、ガムや飴等の食品や染料等に利用されている。引用文献1には、笹葉よりクロロフィル類を含む抽出液を抽出する方法が記載されている。
特開2000-69946号公報
クロロフィル類、ポリフェノール類、水を含む溶媒を含有する液状組成物は、長期保存した場合に凝集が発生し、当該液状組成物をフィルター等に塗布した場合に、クロロフィル類及びポリフェノール類を均一に塗布することが困難であることが本発明者らの検討により判明した。
従って、本発明は、長期保存によっても凝集の発生が抑制されたクロロフィル類、ポリフェノール類、水を含む溶媒を含有する液状組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の内容の本発明を完成した。
[1]クロロフィル類と、ポリフェノール類と、水を含む溶媒と、ポリエステル樹脂とを含む液状組成物。
[2]前記クロロフィル類が、銅クロロフィルである[1]に記載の液状組成物。
[3]前記ポリフェノール類が、カテキン類である[1]又は[2]に記載の液状組成物。
[4]前記クロロフィル類を0.01質量%~10質量%、総ポリフェノール量0.01質量%~10質量%、前記ポリエステル樹脂を0.01質量%~10質量%含有する[1]~[3]のいずれかに記載の液状組成物。
[5]前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が2000以上50000以下である[1]~[4]のいずれかに記載の液状組成物。
[6]液状組成物中の水の含有量が1質量%以上である[1]~[5]のいずれかに記載の液状組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の液状組成物を塗布する工程を含むフィルターの製造方法。
[8]銅クロロフィルと、カテキン類と、ポリエステル樹脂を含む液状組成物用粉末。
本発明によれば、クロロフィル類と、ポリフェノール類と、水を含む溶媒とを含有する液状組成物に、ポリエステル樹脂を含有させることで長期保存によっても凝集の発生が抑制された液状組成物が提供される。
以下に本発明について説明する。
[クロロフィル類]
本実施形態に係るクロロフィル類は、クロロフィルa又はクロロフィルb等のクロロフィル、クロロフィリン、フェオフィチン、クロロフィリド等のクロロフィル分解物、銅クロロフィル、鉄クロロフィル、又は亜鉛クロロフィル等の中心金属置換クロロフィル、銅クロロフィリンNa、鉄クロロフィリンNa、又は亜鉛クロロフィリンNa等のクロロフィリンのアルカリ塩、その他のクロロフィル誘導体等が挙げられ、銅クロロフィルが好ましい。
[ポリフェノール類]
本実施形態に係るポリフェノール類としては、例えば、カテキン類、プロアントシアニジン類などの一次ポリフェノール、それらの酸化重合等による生成物であるテアシネンシン類、ウーロンテアニン、テアフラビン類、テアルビジン類等の二次ポリフェノール等が挙げられ、カテキン類が好ましく、カテキン類は茶葉に含まれる茶カテキンであることが好ましい。茶カテキンとしては、例えば、カテキン、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、ガロカテキン(GC)や、ガレート型のエピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、ガロカテキンガレート(GCg)、カテキンガレート(Cg)、重合カテキン、その他のカテキン類が挙げられる。
[クロロフィル類及びポリフェノール類の製造方法]
クロロフィル類及びポリフェノール類の製造方法は特に限定されないが、茶葉と溶媒とを含む混合液を加熱することで、クロロフィル類及びポリフェノール類を溶媒中に抽出させる方法が挙げられる。
前記抽出工程では、クロロフィル類及びポリフェノール類を抽出した抽出液と、クロロフィル類及びポリフェノール類が抽出された茶葉とを分離する工程を含む。茶葉を分離する工程では、茶葉(固形分)とクロロフィル類及びポリフェノール類を含む抽出液とが分離できれば、具体的な方法は限定されず、フィルターや金属メッシュ(金網)等を用いてもよい。これにより、クロロフィル類及びポリフェノール類を含む抽出液を得ることができる。本ステップの分離は、好ましくは加温下、例えば70℃以上で行われる。これにより、ポリフェノール類の抽出量を高めることができ、茶葉残渣と抽出液とを効率よく分離することができる。
前記抽出工程における茶葉は、粉砕せずに用いてもよいし、粉砕処理を予め施したものでもよい。粉砕処理は、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよい。乾式粉砕には、例えばカッターミル、ボールミル等の乾式粉砕機を用いることができる。本ステップにおける、溶媒抽出は、例えば50℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下で行われる。これにより、クロロフィル類及びポリフェノール類を効率よく抽出することができる。混合液における溶媒の重量は、茶葉の重量の2倍以上30倍以下とすることができる。これにより、茶葉中のクロロフィル類及びポリフェノール類を溶媒中に十分に抽出することができる。
抽出に用いられる溶媒は、特に限定されないが、水又はアルコールが好ましく、例えば、水とアルコールの混合溶媒(含水アルコール)であってもよい。水としては、純水、超純水、脱塩水、滅菌水、蒸留水、及び水道水等の任意の水であり得る。水は、緩衝液、生理食塩水、希酸、及び希アルカリ等であってもよい。アルコールとしては、一価アルコール又は多価アルコール(例えば、二価アルコール、又は三価以上のアルコール)が挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、エタノール、メタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
前記抽出工程における茶葉は、茶の有効成分として、クロロフィル類及びポリフェノール類を含む茶樹組織を広く意味し、「葉」に限定されず、「茎」等も含む。また、本実施形態に係る茶葉は、摘採後の生茶葉であってもよく、摘採後に熱処理や冷蔵、冷凍保存されたものであってもよい。また、茶葉は、裁断又は粉砕されたものであってもよく、その形状は特に限定されない。さらに、前記抽出工程における茶葉は、茶系飲料を抽出した後の茶殻であってもよい。茶殻には、茶葉と同様にクロロフィル類やカテキン類が含まれている。茶系飲料の製造時に大量に発生する茶殻を廃棄せず有効利用して、残存するクロロフィル類を抽出することで、省資源化を実現できる。
クロロフィル類の中心金属(マグネシウム)を銅、鉄又は亜鉛の金属イオンに置換する中心金属置換処理を行ってもよい。中心金属置換処理では、クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛の金属イオンに置換できれば、その方法は特に限定されない。例えば、クロロフィル類と硫酸銅・5水和物を反応させることで銅と置換することができる。中心金属置換処理がされるクロロフィル類は、アルカリ化処理後の水溶化したクロロフィル類(クロロフィリン等)であってもよく、茶葉に含まれる不溶性のクロロフィルであってもよい。これにより、不安定なクロロフィルに対して、より安定化した、鮮やかな青~緑色を呈するクロロフィル類、例えば、銅クロロフィル、鉄クロロフィル、亜鉛クロロフィル、銅クロロフィリンNa、鉄クロロフィリンNa、又は亜鉛クロロフィリンNa等を得ることができる。
中心金属置換処理で用いる金属塩として、公知の有機塩、無機塩を用いることができる。具体的には、塩化物塩、硫酸塩、アセチルアセトナート、蟻酸塩、硝酸塩、乳酸塩、酢酸塩及びこれらの水和物を用いることができる。金属塩濃度は、例えば、溶媒抽出前の茶葉全量に対し、0.1~25wt%であり、好ましくは2.5~10wt%であってもよい。中心金属置換反応時の温度は、例えば、70℃~100℃であってもよい。中心金属置換処理をする時間は、例えば、0.5時間~8時間であり、好ましくは1~3時間であってもよい。これらの条件により、クロロフィル類の変色を抑制しつつ、クロロフィル類の中心金属置換処理をすることができ、発色性の良好なクロロフィル類を得ることができる。
ポリフェノール類及びクロロフィル類を含む前記抽出液を乾燥させてもよい。本ステップの乾燥は、特に限定されないが、凍結乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等の方法により行うことができる。クロロフィル類を含む溶液を乾燥させることで、クロロフィル類及びポリフェノール類を含む粉末を生成することができる。さらに、必要に応じて、前記粉末を精製することもできる。
本発明の液状組成物に含まれるクロロフィル類は、液状組成物の凝集を抑制しつつ、液状組成物をフィルターに塗布した際にフィルターの抗菌性・消臭性・抗ウイルス性を発現させる観点から、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.15質量%~3質量%が特に好ましい。
本発明の液状組成物に含まれる総ポリフェノール量は、液状組成物の凝集を抑制しつつ、液状組成物をフィルターに塗布した際にフィルターの抗菌性・消臭性・抗ウイルス性を発現させる観点から、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~8質量%が好ましく、0.2質量%~5質量%が特に好ましい。
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、例えば、二塩基酸(a1)と、ジオール(a2)とを反応させて得られるものが挙げられる。
前記二塩基酸(a1)は、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸、グルタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
前記ジオール(a2)は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2,2-トリメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-3-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン等の脂肪族ジオール;ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のエーテルグリコール;前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ジオールと、ε-カプロラクトン等の種々のラクトンとの重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール;前記ビスフェノールにエチレンオキサイド、プロプレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
本発明の液状組成物に含まれる前記ポリエステル樹脂は0.01質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~8質量%が好ましく、0.4質量%~5質量%が特に好ましい。また、本発明の液状組成物に含まれるクロロフィル類の含有量1質量部に対して、本発明の液状組成物に含まれる前記ポリエステル樹脂は、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることが好ましく、1~3質量部であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g未満であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2000以上であることが好ましい。この場合、ポリエステル樹脂は十分な材料強度を有しうる。また。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が2000以上であることで、本発明の液状組成物の凝集が抑制され、かつ、ポリエステル樹脂がフィルターへの良好な密着性を有するとともに、優れた耐薬品性を有することができる。ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2500以上であることがより好ましい。なお、ポリエステル樹脂の重量平均分子量の上限は特に制限されないが、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、例えば、50000以下であってよく、40000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフによる分析によってポリスチレン換算の平均分子量を測定することで導出される。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20℃以上110℃以下の範囲内であることが好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度が-20℃以上であることで、ポリエステル樹脂のタック性が高くなりすぎることを防ぐことができる。また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が110℃以下であることで、ポリエステル樹脂の硬度が高くなりすぎることを防げるため、ポリエステル樹脂から形成される被膜の基材に対する密着性が低下することを抑制できる。ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、20℃以上100℃以下の範囲内であることがより好ましい。
前記ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、プラスコートZ-565、プラスコートZ-880、プラスコートZ-3310、プラスコートRZ-105、プラスコートRZ-570、GX-1157(以上、互応化学工業株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
クロロフィル類、ポリフェノール類、水を含む溶媒に、ポリエステル樹脂を含有させることで長期保存によっても凝集の発生が抑制された液状組成物を得ることができる。メカニズムの詳細は明らかではないが、ポリエステル樹脂にクロロフィル類及びポリフェノール類が適度に吸着され、かつ、ポリエステル樹脂間の立体障害や電荷による反発が機能することでクロロフィル類及びポリフェノール類を含む粒子の凝集が抑制されると推定される。
[溶媒]
本発明の液状組成物の水を含む溶媒としては、特に限定されないが、水又は「水及び有機溶媒」を含む溶媒が好ましく、水又は「水及びアルコール」を含む溶媒がより好ましく、例えば、水とアルコールの混合溶媒(含水アルコール)がより好ましい。液状組成物の水は、茶葉に含まれる水分であってもよいし、それにアルコール及び/又は水等が添加されたものであってもよい。それらの溶媒も「水を含む溶媒」の範囲に含まれる。水としては、純水、超純水、脱塩水、滅菌水、蒸留水、及び水道水等の任意の水であり得る。水を含む溶媒は、緩衝液、生理食塩水、希酸、及び希アルカリ等であってもよい。アルコールとしては、一価アルコール又は多価アルコール(例えば、二価アルコール、又は三価以上のアルコール)が挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、エタノール、メタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
水を含む溶媒が「水及び有機溶媒」の場合に、液状組成物中の水と有機溶媒の比率は特に限定されないが、質量比で10:90~99:1の範囲が好ましく、30:70~97:3がより好ましく、40:60~95:5の範囲がより好ましい。
液状組成物中の水の含有量は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がより好ましい。
液状組成物中の、クロロフィル類、ポリフェノール類及びポリエステル樹脂の合計質量に対して、溶媒の量は5~200質量部が好ましく、10~100質量部がより好ましい。
[茶葉由来の成分]
本発明の液状組成物は、茶葉由来の成分を含んでいても良く、例えば、カフェイン、テアニン、フラボノール類、複合多糖類、アスコルビン酸、γ-アミノ酪酸、サポニン、ビタミンB2、食物繊維、ミネラル類等が挙げられ、これらの成分が液状組成物に含まれることが好ましい。
[クロロフィル類の測定]
クロロフィル類の測定は、標準液として銅クロロフィル(日本葉緑素製 クロロンGA)を用い、銅クロロフィルの換算量として求める。試料20mgをアセトンで100mLに定容し、紫外可視吸光光度計(日立U4100形分光光度計)を用いて410nmで吸光度を測定し、クロロンGAによる検量線からクロロフィル量を求める。
[総ポリフェノール類の測定]
総ポリフェノール量の測定は酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求める(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10)。試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、紫外可視吸光光度計(日立U4100形分光光度計)を用いて540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線から総ポリフェノール量を求める。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとする。リン酸緩衝液の調製:1/15Mリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15Mリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整する。
[フィルター]
本発明の液状組成物を、フィルターを構成する繊維構造物に塗布後、乾燥させ、クロロフィル類及びポリフェノール類を繊維構造物に固定化することで、消臭性、抗菌性、抗ウイルス性を有するフィルターを得ることができる。
前記フィルターを構成する繊維構造物の材質としては、任意のものが使用できるが、不織布、紙、あるいはこれらの複合物等が好ましい。特に消臭性能の観点から不織布が好ましい。また、これら繊維構造物を構成する繊維としては、合成樹脂繊維、無機繊維、天然パルプ等が挙げられる。
不織布としては、具体的には、スパンボンド法、メルトブロー法、遠心力法、フラッシュ紡糸法、高電圧乾式紡糸法、フィルム法等の直接製布法、エアレイ法、カード法、ガーネット機(反毛機)法等の乾式法、抄紙と同様の湿式法により製造される不織布が挙げられ、繊維間の結合方法としては、接着剤法、熱融着法、超音波接着法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法等が挙げられる。
紙としては、具体的には、薄葉紙(例えば、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキン、タオル紙)、包装紙、塗工紙(例えば、アート紙、コート紙)、非塗工紙、印刷紙、図面紙、ラミネート紙、和紙等が挙げられ、また、ダンボール構造紙、ハニカム構造紙、白板紙、黄板紙、チップボール紙、コルゲート紙、紙幣原紙及び台紙等の板紙も挙げられる。
合成樹脂繊維としては、具体的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリスチレン繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、具体的には、アルミナ繊維、活性炭繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ジルコニア繊維、アルミナ・シリカ繊維等が挙げられる。
天然パルプとしては、具体的には、木材パルプ、靭皮繊維、葦パルプ、バガスパルプ、ワラパルプ、竹パルプ等が挙げられる。
不織布、紙以外に、樹脂、金属、活性炭等のフィルム、シート等の成形品を使用することも可能である。
本発明の液状組成物をフィルターに塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられ、ディップコート法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(クロロフィル類及びポリフェノール類を含有する粉末の製造)
茶葉10質量部、メタノール80質量部、水10質量部を90℃条件下で3時間混合後、
固液分離を行った。次いで、溶媒100質量部に対して硫酸銅5質量部を加え90℃条件下で3時間混合するクロロフィリン化合物の中心金属置換反応を行った後、固液分離を行い、得られた液体を濃縮乾固後、真空乾燥し、茶葉抽出液由来粉末(銅クロロフフィル:25質量%、総ポリフェノール量:40質量%)を得た。
[実施例1]
銅クロロフィル0.2質量%、総ポリフェノール量0.3質量%、ポリエステル樹脂(X)(互応化学工業株式会社製、プラスコート RZ-570、分子量:23000、Tg:60℃、軟化点:160~170、酸化:5mgKOH/g未満、屈折率1.57)0.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記粉末とポリエステル樹脂を混合し、液状組成物を得た。
[実施例2]
銅クロロフィル1.5質量%、総ポリフェノール量2.4質量%、ポリエステル樹脂(X)2.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記粉末とポリエステル樹脂を混合した以外は実施例1と同様にして液状組成物を得た。
[実施例3]
銅クロロフィル2.5質量%、総ポリフェノール量4.0質量%、ポリエステル樹脂(X)4.0質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記粉末とポリエステル樹脂を混合した以外は実施例1と同様にして液状組成物を得た。
[実施例4]
銅クロロフィル(日本葉緑素製 クロロンGA)0.2質量%、エピガロカテキンガレート(Skyherb製、Green Tea Extract)を総ポリフェノール量0.3質量%、ポリエステル樹脂(X)(互応化学工業株式会社製、プラスコート RZ-570、分子量:23000、Tg:60℃、軟化点:160~170、酸化:5mgKOH/g未満、屈折率1.57)0.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記銅クロロフィル、エピガロカテキンガレート及びポリエステル樹脂を混合し、液状組成物を得た。
[実施例5]
銅クロロフィル1.5質量%、エピガロカテキンガレートを総ポリフェノール量2.4質量%、ポリエステル樹脂(X)2.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に混合した以外は、実施例4と同様にして液状組成物を得た。
[実施例6]
銅クロロフィル2.5質量%、エピガロカテキンガレートを総ポリフェノール量4.0質量%、ポリエステル樹脂(X)4.0質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に混合した以外は、実施例4と同様にして液状組成物を得た。
[実施例7]
銅クロロフィルの代わりに銅クロロフィリンNa(日本葉緑素製、クロロンG)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして液状組成物を得た。
[実施例8]
銅クロロフィルの代わりに銅クロロフィリンNa(日本葉緑素製、クロロンG)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして液状組成物を得た。
[実施例9]
銅クロロフィルの代わりに銅クロロフィリンNa(日本葉緑素製、クロロンG)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして液状組成物を得た。
[実施例10]
銅クロロフィル0.2質量%、総ポリフェノール量0.3質量%、ポリエステル樹脂(Y)(互応化学工業株式会社製、プラスコート RZ-105、分子量:16000、Tg:52℃、軟化点:130~135、酸化:5mgKOH/g未満、屈折率1.56)0.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記粉末と前記ポリエステル樹脂を混合し、液状組成物を得た。
[実施例11]
銅クロロフィル1.5質量%、総ポリフェノール量2.4質量%、ポリエステル樹脂(Y)2.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記粉末と前記ポリエステル樹脂を混合した以外は実施例10と同様にして液状組成物を得た。
[実施例12]
銅クロロフィル2.5質量%、総ポリフェノール量4.0質量%、ポリエステル樹脂(Y)4.0質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に前記粉末と前記ポリエステル樹脂を混合した以外は実施例10と同様にして液状組成物を得た。
[実施例13]
銅クロロフィル(日本葉緑素製 クロロンGA)0.2質量%、エピガロカテキンガレート(Skyherb製、Green Tea Extract)を総ポリフェノール量0.3質量%、ポリエステル樹脂(Y)(互応化学工業株式会社製、プラスコート RZ-105、分子量:16000、Tg:52℃、軟化点:130~135、酸化:5mgKOH/g未満、屈折率1.56)0.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に銅クロロフィル、エピガロカテキンガレート及びポリエステル樹脂を混合し、液状組成物を得た。
[実施例14]
銅クロロフィル1.5質量%、エピガロカテキンガレートを総ポリフェノール量2.4質量%、ポリエステル樹脂(Y)を2.5質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に混合した以外は、実施例10と同様にして液状組成物を得た。
[実施例15]
銅クロロフィル2.5質量%、エピガロカテキンガレートを総ポリフェノール量4.0質量%、ポリエステル樹脂(Y)を4.0質量%となるように、溶媒(水:エタノール=5:5(質量比))に混合した以外は、実施例10と同様にして液状組成物を得た。
[実施例16]
銅クロロフィルの代わりに銅クロロフィリンNa(日本葉緑素製、クロロンG)を用いたこと以外は、実施例13と同様にして液状組成物を得た。
[実施例17]
銅クロロフィルの代わりに銅クロロフィリンNa(日本葉緑素製、クロロンG)を用いたこと以外は、実施例14と同様にして液状組成物を得た。
[実施例18]
銅クロロフィルの代わりに銅クロロフィリンNa(日本葉緑素製、クロロンG)を用いたこと以外は、実施例15と同様にして液状組成物を得た。
[実施例19]
溶媒として「水:エタノール=9:1(質量比)」を用いた以外は、実施例3と同様にして液状組成物を得た。
[実施例20]
溶媒として「水:エタノール=1:9(質量比)」を用いた以外は、実施例3と同様にして液状組成物を得た。
[実施例21]
溶媒として「水:エタノール=9:1(質量比)」を用いた以外は、実施例12と同様にして液状組成物を得た。
[実施例22]
溶媒として「水:エタノール=1:9(質量比)」を用いた以外は、実施例12と同様にして液状組成物を得た。
[比較例1]
前記ポリエステル樹脂を混合しない以外は、実施例2と同様にして液状組成物を得た。
[比較例2]
前記ポリエステル樹脂を添加しない以外は、実施例5と同様にして液状組成物を得た。
[比較例3]
前記ポリエステル樹脂を、アクリル樹脂(DIC株式会社製、R-3380-E)に変更した以外は、実施例2と同様にして液状組成物を得た。
[比較例4]
前記ポリエステル樹脂を、アクリル樹脂(DIC株式会社製、R-3380-E)に変更した以外は、実施例5と同様にして液状組成物を得た。
<液状組成物の安定性評価>
実施例、比較例の液状組成物をガラス容器に入れ密封後、25℃の恒温槽で1ヵ月間保管し、1ヵ月経過後の液状組成物に凝集や沈降が発生していないかを目視で確認した。液状組成物に凝集や沈降が発生していない場合はA、凝集や沈降が発生している場合はBと評価した。
Figure 2023051167000001
前記のとおり、実施例においては、長期保存によっても凝集の発生が抑制されたクロロフィル類、ポリフェノール類、水を含む溶媒を含有する液状組成物を得ることができた。
<消臭性・抗菌性・抗ウイルス性フィルターの製造と評価>
実施例1の液状組成物をポリエステル繊維からなる不織布にディップコート後、乾燥させフィルターを製造した。製造したフィルターを用いて消臭性試験・抗菌性試験・抗ウイルス性試験を実施した。消臭性試験において、当該フィルターは悪臭(アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン)に対して消臭効果を示し、抗菌性試験において、当該フィルターは大腸菌に対して抗菌効果を示し、抗ウイルス性試験において、当該フィルターはA型インフルエンザに対して良好な効ウイルス性を示した。


Claims (8)

  1. クロロフィル類と、ポリフェノール類と、水を含む溶媒と、ポリエステル樹脂とを含む液状組成物。
  2. 前記クロロフィル類が、銅クロロフィルである請求項1に記載の液状組成物。
  3. 前記ポリフェノール類が、カテキン類である請求項1又は2に記載の液状組成物。
  4. 前記クロロフィル類を0.01質量%~10質量%、総ポリフェノール量0.01質量%~10質量%、前記ポリエステル樹脂を0.01質量%~10質量%含有する請求項1~3のいずれかに記載の液状組成物。
  5. 前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が2000以上50000以下である請求項1~4のいずれかに記載の液状組成物。
  6. 液状組成物中の水の含有量が1質量%以上である請求項1~5のいずれかに記載の液状組成物。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の液状組成物を塗布する工程を含むフィルターの製造方法。
  8. 銅クロロフィルと、カテキン類と、ポリエステル樹脂を含む液状組成物用粉末。


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