JP2023050636A - 非調質鋼および窒化部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、合金コストを抑制しつつ、優れた被削性、降伏強度および疲労強度を有する非調質鋼および窒化部品を提供する。【解決手段】C:0.30~0.50%、Si:0.05~0.35%、Mn:0.45~1.00%、P:0.080%以下、S:0.035~0.100%、Cu:0.25%以下、Ni:0.25%以下、Cr:0.03~0.25%、Al:0.020%以下、N:0.0125~0.0250%、Ti:0.005~0.030%、Ca:0.0003~0.0100%、V:0~0.02%、及びMo:0~0.03%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、固溶N量Nsolが0.008%以上、初析フェライトの面積率が20%以上、残部組織がパーライトであり、AlとSiの重量濃度の和が10%以上の酸化物系介在物において、CaとTiの重量濃度の和であるCTの、AlとSiの重量濃度の和であるASに対する比率CT/ASが0.50以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、非調質鋼および窒化部品に関する。
自動車、船舶、産業機械等に用いられる機械構造部品(以下、単に部品とも称する。)には、硬さ、耐摩耗性、疲労強度などの機械特性を高めるため、0.3~0.6%程度の炭素を含んだ中炭素鋼が素材として用いられる場合がある。これらの部品や素材である鋼材には、量産性、経済性の観点から、最低限の疲労強度を有し、かつ、製造コストができるだけ低いことが望まれる。
部品の製造コストを低減するためには、素材として安価な鋼材を用いることに加え、棒鋼圧延、熱間鍛造、切削加工等の製造プロセスもできるだけ安価に実施する必要がある。多くの部品ではこれらの製造コストの内、切削加工に要するコストが大きい。そのため、製造コストを低減するためには、鋼材の被削性を高めることが有効である。
鋼材の被削性を高めるためには、鋼材に多量のSを含有させ、鋼中のMnS量を増やして切りくず処理性を高めることが有効である。さらに、鋼材の被削性の向上には、焼入れ性を向上させる合金元素の含有量を抑えて硬さを低減させることも有効である。また、鋼材にCaを含有させ、CaOを生成させることで工具摩耗を抑制することも、鋼材の被削性の向上に有効に作用する。
そこで近年では、被削性を高めるために、熱間鍛造ままの硬さが高くなりすぎないよう合金成分を制御しつつ、多量のSを含有させ、さらにCaを含有させることで被削性を高めた種々の非調質鋼が開発されている。
特許文献1には、安価な炭素鋼をベースとして、SにCaを複合的に含有させることでMnSの形態を変化させ、被削性を向上させる技術が示されている。この技術により得られた鋼は硬さが低く、高い被削性を有している。
特許文献2には、Sの含有量と高めるとともに、鋼の組織をフェライト+パーライトにし、かつ鋼材のC濃度と、炭素等量を適切に制御することで被削性を向上させる技術が開示されている。この鋼では疲労強度を高めるために、C量を0.3%以下に低減し、0.4%以上のCrと0.03%以上のVを含有させている。
特開2008-57021号公報 特開平7-179986号公報
特許文献1の鋼は、疲労強度を高めるための工夫が十分になされているとはいいがたい。さらに、鋼の硬さが低いため、部品のハンドリング時における衝撃や異物のかみこみ等により変形したり、へこみが生じたりしやすいという問題があった。
特許文献2では、CrやVを、JISに規定された機械構造用炭素鋼以上に含有させている。そのため、鋼材コストの増大につながる問題があった。さらに、鋼の硬さのばらつきを抑制するための工夫が十分ではないため、加工条件によっては十分に高い被削性が得られない場合があるという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、合金コストを抑制しつつ、優れた被削性、降伏強度および疲労強度を有する非調質鋼および窒化部品を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る非調質鋼は、質量%で、
C:0.30~0.50%、
Si:0.05~0.35%、
Mn:0.45~1.00%、
P:0.080%以下、
S:0.035~0.100%、
Cu:0.25%以下、
Ni:0.25%以下、
Cr:0.03~0.25%、
Al:0.020%以下、
N:0.0125~0.0250%、
Ti:0.005~0.030%、
Ca:0.0003~0.0100%、
V:0~0.02%、及び
Mo:0~0.03%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
下記式(1)であらわされる固溶N量Nsolが0.008%以上であり、
金属組織において、初析フェライトの面積率が20%以上、残部組織がパーライトであり、
酸化物系介在物のうち、AlとSiの重量濃度の和が10%以上の酸化物系介在物において、CaとTiの重量濃度の和であるCTの、AlとSiの重量濃度の和であるASに対する比率CT/ASが0.50以上である。
Nsol=N-Ti/3.4 ・・・ (1)
ただし、上記式(1)中の各元素記号は、当該元素の質量%での含有量である。
(2)本発明の一態様に係る窒化部品は、上記(1)に記載の非調質鋼からなる母材と、前記母材の表層に形成されている、化合物層と拡散層からなる窒化層とを有する。
(3)上記(2)に記載の窒化部品は、機械構造用部品であってもよい。
本発明によれば、合金コストを抑制しつつ、優れた被削性、降伏強度および疲労強度を有する非調質鋼および窒化部品を提供することができる。そのため、本発明の非調質鋼は、例えば、自動車や産業機械などの機械構造部品の素材として好適である。
実施例にて用いた、小野式回転曲げ疲労試験片の側面図である。なお、図中の寸法の単位はmmである。 実施例にて用いた、引張試験片の概略図である。なお、図中の寸法の単位はmmである。 実施例にて用いた、小野式回転曲げ疲労試験片の側面図である。なお、図中の寸法の単位はmmである。
以下、本発明の一実施形態に係る非調質鋼(以下、単に「鋼」もしくは「鋼材」とも称する。)および窒化部品について説明する。
本実施形態に係る非調質鋼は、本発明者らによって得られた下記の知見(a)~(i)により見出された。具体的に、説明する。
まず、本発明者らは、熱間加工後の硬さを抑制でき、かつ、機械加工時の工具摩耗が抑制できる鋼、すなわち被削性に優れた鋼を得るための条件について検討した。切削加工時の工具摩耗を抑制するためには、単純に硬さを低減するだけでなく、鋼中の酸化物量を低減するとともに、酸化物の組成を制御する必要がある。
具体的に得られた知見(a)~(d)は以下のとおりである。
(a)溶鋼中にCaを添加すると、不純物である酸化物系介在物(単に、介在物との称する。)は、硬質なAlやSiOを主体とする形態から、それらにCaOが複合した複合酸化物に変化する。このような複合酸化物は軟質であるため、工具摩耗を抑制できる。
(b)溶鋼中にAlとCaを同時に添加したり、Caを先に添加後にAlを添加したりすると、粗大なCaOが単独で生成するため、複合酸化物中のCaOの比率が高くならない。
(c)溶鋼中のS濃度が高いと、CaはCaSを形成するために消費されるため、CaOが形成されにくい。その場合は、Caを添加した後の保持時間を長くすることで、複合酸化物中のCaOの割合を増加できる。ただし、保持時間が長すぎると、溶鋼中のCa濃度が低下し、目標とする鋼成分への調整が難しくなる。
(d)溶鋼中にTiを添加すると、Tiは単独で酸素や窒素と結びつき、Ti酸化物やTi窒化物が形成される。このとき、Tiの一部は、AlやSiO中に固溶し、Tiを含む複合酸化物が形成される。このTiを含む複合酸化物は軟質であるため、工具摩耗を抑制できる。
このように、S量が高い成分系であっても、溶鋼中にTiとCaを含有させ、さらに溶鋼へのCaの添加のタイミングと、添加後の保持時間を制御することで、工具摩耗に対して有利な介在物とすることができる。ただし、工具摩耗を十分に抑制するためには、上記(a)~(d)に記載のような介在物の制御だけでなく、鋼組織に占める初析フェライトの分率を高め、硬さを抑制する必要がある。そこで、本発明者らは、多量のSとCaを含み、介在物を制御した鋼の成分を調整し、鋼組織にしめる初析フェライト率を高めることで、硬さを抑制する手法について検討した。その結果、以下の知見(e)~(g)を得た。
(e)鋼の硬さの増大を抑制するためには、焼入れ性を高める作用及びフェライトを固溶強化させる作用を有するCr、Si、Mnの含有量を低減すればよい。これにより、初析フェライトの分率を高めるとともに、フェライトの強化が抑制され、鋼の硬さを抑制できる。
(f)一方、ソリュートドラッグ効果を有するCrやMn等の合金元素を低減すると、熱間加工条件によっては、オーステナイト粒径が容易に粗大化しやすくなる。このような粗大なオーステナイト粒は、焼入れ性を上昇させるため、ベイナイトの生成を招く。
(g)そこで、合金元素の含有量が比較的小さい安価な鋼に対して種々の条件で熱間加工を施してもベイナイトが生成しないようにするためには、鋼の焼入れ性が十分に低くなるよう制御することに加え、第二相によるピン止めを活用すればよい。1100℃を超える温度での熱間加工中に安定的にピン止め効果を得るためにはTiNを活用するのが良い。すなわち、TiNによるピン止め効果によって、オーステナイト粒の粗大化を抑制できるため、その結果、焼入れ性の上昇を回避でき、初析フェライトの分率を高めることが可能となる。
以上説明したように、鋼の被削性を高めるためには、多量のSを含有させ、Si,Mn,Crの含有量を低くすることが有効であるが、一方で、これら合金元素を低減させると、部品としての、降伏強度と疲労強度が低くなってしまう。そこで、部品として必要な降伏強度と疲労強度を得るための条件に付いて検討した。その結果、下記の知見(h)、(i)を得た。
(h)被削性をそこなわずに降伏強度と疲労強度を高めるためには、鋼材に含有させるN量を高めればよい。N量を多くすれば、硬さが過度に増加することなく、降伏強度と疲労強度を上昇させることができる。さらにNは、非常に安価な合金元素であるため、N量を増やしても合金コストはほとんど上昇しない。
(i)ただし、単に鋼材に含有されるN量を高めるだけでは、降伏強度は上昇しない。降伏強度を上昇させるためには、Nは固溶状態である必要がある。Tiは、NをTiNとして固定するため、Tiを含む鋼中の固溶N量を高めるためには、含有させるTi量に応じて適切なN含有量に調整する必要がある。
以上の知見に基づいて完成した本発明の一実施形態である非調質鋼は、質量%で、C:0.30~0.50%、Si:0.05~0.35%、Mn:0.45~1.00%、P:0.080%以下、S:0.035~0.100%、Cu:0.25%以下、Ni:0.25%以下、Cr:0.03~0.25%、Al:0.020%以下、N:0.0125~0.0250%、Ti:0.005~0.030%、Ca:0.0003~0.0100%、V:0~0.02%、及びMo:0~0.03%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記式(1)であらわされる固溶N量Nsolが0.008以上であり、金属組織において、初析フェライトの面積率が20%以上、残部組織がパーライトであり、酸化物系介在物のうち、AlとSiの重量濃度の和が10%以上の酸化物系介在物において、CaとTiの重量濃度の和(CT)の、AlとSiの重量濃度の和(AS)に対する比率CT/ASが0.50以上である。
Nsol=N-Ti/3.4 ・・・ (1)
ただし、上記式(1)中の各元素記号は、当該元素の質量%での含有量である。
以下、本発明の一実施形態である非調質鋼および、窒化部品について詳しく説明する。なお、本実施形態における「非調質鋼」とは、窒化部品の素材となる鋼であり、例えば、熱間鍛造に供される鋼(例えば、棒鋼)や、熱間鍛造によって粗成型された粗形材を含む。すなわち、本実施形態の「非調質鋼」は、部品加工(機械加工)前の素材(鋼材)である。また本実施形態における「窒化部品」とは、例えば、機械構造用部品である。
以下の説明において、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。また、化学組成の各元素の含有量を「元素量」と表記することがある。例えば、Cの含有量は、C量と表記することがある。更に、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。更にまた、「~」の前後に記載される数値に「超え」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これらの数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
[化学組成]
本実施形態による非調質鋼の化学組成は、次の元素を含有する。なお、通常、窒化部品の母材部も素材である非調質鋼と同じ成分になるので、特に断りのない限り、鋼材の成分と部品の母材部における成分は同等である。
C:0.30~0.50%
Cは、鋼材の硬さ、および疲労強度を高める効果を有する。C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、初析フェライト量が不足して過度に硬さが上昇してしまい、結果、切削抵抗が上昇し、被削性が低下する。したがって、C含有量は0.30~0.50%である。C含有量は好ましくは0.33%以上であり、さらに好ましくは0.35%以上である。また、C含有量は好ましくは0.48%以下であり、さらに好ましくは0.45%以下である。
Si:0.05~0.35%
Siは、フェライトに固溶して鋼材を強化する効果を有する。Si含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎると、酸化物系介在物が硬質化し、工具摩耗を劣化させる。また、Siを過度に多く含有させると、フェライトが過度に硬くなり、被削性が低下する場合がある。したがって、Si含有量は0.05~0.35%である。Si含有量は、好ましくは0.10%以上であり、さらに好ましくは0.15%以上である。また、Si含有量は、好ましくは0.30%以下であり、さらに好ましくは0.26%以下であり、さらに好ましくは0.24%以下である。
Mn:0.45~1.00%
Mnは、窒化物を形成し、窒化層の硬化に寄与する。Mnはさらに、鋼材中でMnSを形成して鋼材の被削性を高める効果も有する。Mn含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、窒化層が過度に硬化し、曲げ矯正性が劣化する。また、Mnを過度に多く含有させると、焼入れ性が高まり、ベイナイトの生成が促進され、十分な初析フェライトを確保できない場合がある。したがって、Mn含有量は0.45~1.00%である。Mn含有量は、好ましくは0.50%以上であり、さらに好ましくは0.55%以上である。Mn含有量は好ましくは0.90%以下であり、さらに好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.75%である。
P:0.080%以下
Pは不純物として鋼材に含まれる元素である。P含有量が高すぎれば結晶粒界に偏析し、熱間延性やじん性を劣化させる。したがって、P含有量は0.080%以下である。P含有量は好ましくは0.060%以下であり、さらに好ましくは0.040%以下である。ただし、Pはフェライトを僅かに強化し、疲労強度の増大に寄与する。また、Pを過度に低減することは脱Pのための費用の増大につながる。これらのことから、P含有量を0.002%以上としてもよい。P含有量は好ましくは0.005%以上、もしくは0.008%以上としてもよい。
S:0.035~0.100%
Sは、鋼材中でMnと結合してMnSを形成し、鋼材の被削性を高める効果を有する。中炭素鋼水準のC量を含む鋼を安価に製造するため、また、望ましい被削性を確保するためには、S量を十分に高める必要がある。一方、S含有量が高すぎれば、粗大なMnSが形成され、疲労特性が劣化する。したがって、S含有量は0.035~0.100%である。S含有量は、好ましくは0.040%以上であり、さらに好ましくは0.045%以上である。S含有量は、好ましい上限は0.090%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。
Cr:0.03~0.25%
Crはパーライトのラメラ間隔を微細化し、強化することで疲労強度を向上させる効果を有する。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、鋼材の焼入れ性が向上し、熱間鍛造条件によっては初析フェライトが十分に生成せず、パーライトが増えることで被削性が劣化するおそれがある。したがって、Cr含有量は0.03~0.25%である。Cr含有量は、好ましくは0.05%以上である。Cr含有量は、好ましくは0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下であり、さらに好ましくは0.10%以下である。
Cu:0.25%以下
Cuは鉄鉱石や、スクラップに含まれ、鋼を高炉、電炉で製造した場合は、鋼に不可避的に不純物として含有される。またCuは、フェライトに固溶して鋼材の強度と疲労強度を高めるために意図的に含有させる場合もある。しかしながら、Cu含有量が過度に多くなると、熱間鍛造時に鋼の粒界に偏析して熱間割れを誘起する。したがって、Cu含有量は0.25%以下である。Cu含有量は、好ましくは0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。Cuを含有させて効果を得る場合は、Cu含有量は0.001%以上、または0.01%以上とすることが好ましい。
Ni:0.25%以下
Niは鉄鉱石や、スクラップに含まれ、鋼を高炉、電炉で製造した場合は、鋼に不可避的に不純物として含有される。またNiは、フェライトに固溶して鋼材の強度と疲労強度を高めるために意図的に含有させる場合もある。Niはさらに、鋼材がCuを含有する場合に、Cuに起因する熱間割れを抑制する。しかしながら、Ni含有量が多すぎれば、その効果が飽和し、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0.25%以下である。Ni含有量は、好ましくは0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。Niを含有させて効果を得る場合、Ni含有量は0.001%以上、または0.01%以上とすることが好ましい。
Al:0.020%以下
Alは鋼に不純物として混入する元素であるが、脱酸のために含有させてもよい。Al含有量が高すぎれば、工具摩耗を促進する硬質なAl酸化物が形成される。Al以外の元素で十分に脱酸できる場合は、Al含有量は低い方がよい。したがって、Al含有量は0.020%以下である。Al含有量は、好ましくは0.010%以下であり、さらに好ましくは0.006%以下である。Al含有量は、0%であってもよい。なお、Al含有量の下限値は特に限定しないが、脱酸のために含有させる場合、0.001%以上としてもよい。
Ti:0.005~0.030%
Tiは、酸化物系介在物を軟質化させる効果を有する。さらにTiは、Nと結合してTiNを形成し、ピン止め効果により熱間鍛造時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。粗大なオーステナイト粒の生成が抑制されると、焼入れ性が低減されるため、初析フェライトを十分に確保でき、その結果、被削性を向上させることができる。Ti含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Ti含有量が多くなりすぎると、TiN生成のために多量のNが消費され、固溶Nが減少するため、降伏強度や疲労特性が劣化する場合がある。また、Tiを過度に多く含有させると、粗大なTiOやTiNが生成し、疲労特性を劣化させる場合がある。したがって、Ti含有量は0.005~0.030%である。Ti含有量は、好ましくは0.025%以下であり、さらに好ましくは0.020%以下である。Ti含有量は、好ましくは0.007%以上である。
N:0.0125~0.0250%
NはCと同じく非常に安価な元素であるため、安価に鋼材の強度を上昇させるために重要な元素である。Nは、鋼に固溶した状態の場合、転位上でコットレル雰囲気を作るため、降伏強度の上昇に寄与する。また、TiNとして析出した場合は、ピン止め効果によりオーステナイトの粗大化を抑制できるため、硬さのばらつきを低減できる。N含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、N量が過剰になると、鋼中に窒素ガスによる気泡が生じることがあり、疲労強度が劣化する。したがって、N含有量は0.0125~0.0250%である。N含有量は、好ましくは0.0140%以上であり、さらに好ましくは0.0160%である。N含有量は、好ましくは0.0230%以下であり、さらに好ましくは0.0200%以下である。
Ca:0.0003~0.0100%以下
Caは、酸化物系介在物を、CaOが複合した軟質な複合酸化物に変化させることで、工具摩耗を抑制し、工具寿命を長寿命化させる作用を有する。この効果を安定して得るためには、Caの含有量は、0.0003%以上とする必要がある。しかしながら、Caの含有量が多過ぎると、粗大なCaOが単体で生成し、工具摩耗を悪化させる。従って、Ca含有量は0.0003~0.0100%である。Ca含有量は、好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量は、好ましくは0.0050%以下であり、さらに好ましくは0.0035%以下である。
V:0.02%以下
Mo:0.03%以下
本実施形態の非調質鋼は、製造コストを低減するために、疲労強度や降伏強度の向上に有効なV、Moの含有量は可能な限り低減する。ただし、Mo、Vは不純物として鋼材に含有される場合があり、その場合は製造コストに悪影響を及ぼさないため、含まれていてもよい。製造コストの観点から、V含有量は0.02%以下とし、Mo含有量は0.03%以下とする。V含有量は好ましくは0.01%以下であり、Mo含有量は好ましくは0.02%以下である。V含有量、Mo含有量ともに、0%であってもよい。
本実施形態の非調質鋼の成分組成において、残部は、Feおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明の窒化用鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
上述した鋼及び非調質鋼部品の化学成分は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。
[金属組織(ミクロ組織)]
本実施形態の非調質鋼の金属組織(ミクロ組織)において、初析フェライトの面積率は20%以上、残部組織はパーライトである。すなわち、本実施形態のミクロ組織は、初析フェライトおよびパーライトを主体とする組織である。
切削時の鋼の組織にベイナイトやマルテンサイトが混入していると、硬さが増大し、被削性が劣化する。また、熱間鍛造条件の変化による硬さの変化量も大きくなる。熱間鍛造時の硬さの変化量を低減するためには、金属組織はフェライトおよびパーライト組織とする必要がある。また、金属組織に占める初析フェライトの分率が高い場合、鋼材の硬さが抑制され、被削性を向上させることができる。このように高い被削性を得るためには、金属組織に占める初析フェライトの面積率が20%以上である必要がある。初析フェライトの面積率は好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。
本実施形態のミクロ組織は、初析フェライトおよびパーライトを主体とする組織であり、初析フェライトおよびパーライト以外の組織は含まれないことが好ましい。すなわち、初析フェライトおよびパーライトの合計面積率は100%であることが好ましい。ただし、製造条件によっては、残部組織として、ベイナイト組織が含まれ得るが、ベイナイト組織が生成すると被削性が低下する。そのため、残部組織は極力少ないことが好ましく、10%以下、または5%以下が好ましい。より好ましくは、残部組織は0%である。
金属組織の面積分率は、以下の方法により測定する。
金属組織を測定するサンプルを鏡面研磨したのちにナイタールでエッチングして組織を現出させる。光学顕微鏡を用いて、倍率200倍で組織を撮影する。撮影した像にメッシュ間隔50μmの正方形格子パターンを重ね、格子点が重なった部位の組織の数を数える。各組織上の格子点の数を全測定格子点の数で割った値を該当組織の面積分率とする。ただし、組織の面積分率の測定に用いる全格子点は500点以上とする。像のサイズは、上記条件を満たしていれば制限はないが、例えば、0.6mm×0.48mmの像を5枚撮影したものを使用してもよい。
[Nsol]
鋼材中のN含有量を増やすだけでは、疲労強度や降伏強度が向上しない場合がある。Nによって疲労強度や降伏強度を向上させるためには、固溶状態のNを増やす必要がある。熱間加工後に放冷した鋼中における固溶N量は、N含有量から、TiNとして析出するN量を引いた量となる。具体的には、固溶N量Nsolは式(1)であらわされる。
Nsol=N-Ti/3.4 ・・・(1)
ただし、上記式(1)中の各元素記号は、当該元素の質量%での含有量である。
固溶Nによる上記効果を得るためには、Nsolは0.008%以上にする必要がある。NsolはNの含有量が上記範囲内であれば、どれだけ大きくてもよい。すなわち、上述した本実施形態のN含有量、T含有量の範囲から、実質的なNsolの上限値は、0.0235%以下である。高い疲労強度・降伏強度が必要な場合、Nsolは、好ましくは0.009%以上であり、さらに好ましくは0.010%以上である。
[酸化物系複合介在物の平均組成(CT/AS:0.50以上)]
AlとSiの重量濃度の和が10%以上の酸化物系の介在物は硬質なため、工具摩耗を劣化させる。酸化物を軟化させ工具摩耗を抑制するためには、酸化物系介在物にTiとCaを複合させて酸化物系複合介在物を確保する必要がある。この効果を得るためには、酸化物系複合介在物中のCa、Ti、Al、Siの重量濃度をそれぞれ、XCa、XTi、XAl、XSiとした場合に、下記式(2)であらわされるCaとTiの重量濃度の和(XCa+XTi)の、AlとSiの重量濃度の和(XAl+XSi)に対する比率であるCT/ASを0.50以上にする必要がある。好ましくは、0.70以上である。一方、CT/ASが高すぎると、酸化物系介在物と複合しない単独のTiOやCaOが粗大化し、工具摩耗に悪影響を及ぼす可能性があるため、CT/ASは3.0以下とすることが好ましい。
CT/AS=(XCa+XTi)/(XAl+XSi)・・・(2)
酸化物系複合介在物中のCa、Ti、Al、Siの重量濃度XCa、XTi、XAl、XSiは、以下の方法により測定する。
介在物組成を測定するサンプルを鏡面研磨し、被検面を得る。エネルギー分散型X線分光器(EDS)が付属した走査型電子顕微鏡内で、サンプルの被検面における介在物を観察し、介在物中のCa、Ti、Al、Si、O、Feの重量分率をEDSで分析する。このとき得られるEDSスペクトルには、Ca、Ti、Al、Si、O、Fe以外の元素も検出されるが、介在物がこれらの6元素のみで構成されていると仮定して、重量分率を分析する。EDSで分析した重量分率から、バックグラウンドのFeの影響をのぞくため、Ca、Ti、Al、Si、Oの5元素の重量の和が100%になるように、各元素の重量分率を規格化する。このとき、Oの重量分率が10%未満の介在物は酸化物系の介在物ではないとみなし、今回の測定から除外することとする。
次に、Oの重量分率が10%以上の介在物において、Ca、Ti、Al、Siの4元素の重量の和が100%になるように、各元素の重量分率を再度、規格化し、その値をその介在物のCa、Ti、Al、Siの重量分率とする。同様の解析を、観察視野(2mm×2mm)のすべての酸化物系の介在物の内、観察面上の面積を円に換算した場合の直径が1.0μm以上の介在物に対して行う。
そして、測定したすべての酸化物系介在物のCa、Ti、Al、Siの重量分率について、元素ごとに算術平均値を算出したものを、そのサンプルのXCa、XTi、XAl、XSiとする。これらの値を式(2)に代入して計算することで、そのサンプルのCT/ASを求める。
なお、本実施形態では観察視野を2mm×2mmとしているが、これは測定する介在物の個数を十分に確保し、測定結果のばらつきを抑えるためである。換言すれば、測定結果のばらつきを抑えることができるのであれば、視野サイズは上記範囲に限定されない。ただし、視野サイズを変更する場合は、測定結果のばらつきを抑え、安定した測定データを得る観点から、介在物が100個以上存在するような視野サイズに設定することが望ましい。
以上、本実施形態の非調質鋼について説明したが、上記のとおり、本実施形態の非調質鋼は、部品加工(機械加工)前の素材(鋼材)であり、例えば、熱間加工に供される鋼(例えば、棒鋼)や、棒鋼を熱間鍛造することで得られる粗形材である。つまり、棒鋼や粗形材などの本実施形態の非調質鋼は、上述してきた化学組成、金属組織および介在物に関する規定をすべて満足するものである。
[窒化部品]
次に、本実施形態の窒化部品について説明する。
本実施形態の窒化部品は、本実施形態の非調質鋼に対して、機械加工および窒化処理した部品であって、母材と窒化層とを備える。母材は、上述の非調質鋼と同一の化学組成を有する。窒化層は、母材の表層に形成されている。窒化層は化合物層と、拡散層とを含む。化合物層は、窒化層の最表層に形成されている。拡散層は、化合物層下に形成されている。
ここで母材とは、窒化処理により窒素の侵入が及ばなかった部分、すなわち、窒化処理を経たにも関わらず、化学組成および金属組織の変動がなく、もしくは変動が無視できる程度に小さい領域であって、部品の母材となる非調質鋼と同等の成分組成を有する部位である。なお、母材の組成とは、例えば、部品表面から深さ2.0mmにおける組成であるとも言える。
窒化層とは、窒化処理により窒素が侵入した部分を指す。すなわち、窒化層とは、窒化処理の影響によって、化学組成または金属組織が変化した領域である。例えば、部品表面から深さ約1.0mmまでの領域を指す。
本実施形態の非調質鋼を用いて周知の窒化処理により製造された窒化部品は、十分な疲労強度と高い降伏強度を有する。
[製造方法]
本実施形態の非調質鋼および窒化部品の製造方法の一例を説明する。
本実施形態の窒化部品の製造方法は、非調質鋼を製造する鋼素材準備工程と、成型工程と、機械加工工程とを含む。以下、それぞれの工程を説明する。ただし、本実施形態に係る非調質鋼および窒化部品の製造方法は、以下の態様に限定されることはない。
[鋼素材準備工程]
鋼素材準備工程では、窒化部品の素材となる非調質鋼を製造する。
まず、本実施形態の鋼の化学組成と介在物の組成を満たす溶鋼を製造する。鋼の化学成分と酸化物系複合介在物の平均組成が、上記範囲に入れば、鋼材の製造方法はどのような方法によってもよい。ここでは、その一例として真空溶解したインゴットを溶製し、非調質鋼として棒鋼を製造する方法について述べる。
まず、鋼の原料となる電解鉄、グラファイトを加熱し溶融させる。その後、CaとTi以外の合金元素を上記範囲の化学成分になるように歩留まりを考慮し適切な量を溶鋼に含有させる。
次に、溶鋼に金属Tiを加え、その後、Caを含有させるためにSiCa合金を加える。SiCa合金を加えて200秒以上保持した後に、鋳型に鋳造する。Caは溶鋼に投入後、介在物として浮上し、取り除かれるため、Caは最終的に必要な量よりも多く溶鋼に投入する必要がある。なお、SiCa合金を加えた後の保持時間は、酸化物系複合介在物におけるCT/ASの制御のために重要な条件である。
インゴットの製造方法は、酸化物系複合介在物の組成が規定内に入ればどのような手法によってもよく、SiCa添加後の保持時間を短時間にする代わりに、成分を調整した混合フラックスの添加を行う方法でもよいし、転炉法において、二次精錬時のスラグの成分を調整したものを連続鋳造する手法であってもよい。
次いで、インゴットを一般的な条件で加熱、熱間加工(圧延、鍛造など)、冷却して棒鋼を製造する。
熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造(熱間鍛伸等)でもよい。加熱温度はいわゆる「熱間」であればよい。加熱温度は例えば、1000℃以上1300℃以下である。熱間加工後の冷却方法は特に限定されない。好ましくは、熱間加工後の冷却速度は、初析フェライト及びパーライトを主体とする組織が得られやすい冷却速度の範囲とするのが好ましく、たとえば空冷やファン風冷である。熱間加工後は焼入れ焼戻し等の調質熱処理を行う必要はない。本実施形態の鋼成分であれば、熱間加工後に室温まで放冷することで、フェライト+パーライト組織が得られる。
以上の工程により、本実施形態の非調質鋼を製造できる。
次に、棒鋼を所定の部品形状とするために機械加工を行う。このとき、棒鋼を直接機械加工してもよいし、後述の成型工程のように、棒鋼を熱間鍛造で粗く成形して粗形材としたのちに機械加工してもよい。
[成型工程]
機械加工前に、棒鋼を一旦粗く成形する場合は、製造された上記棒鋼を熱間鍛造して、窒化部品用粗形材に成形する。熱間鍛造により窒化部品用粗形材に成形した後は、上記と同じように、空冷やファン風冷により冷却することが好ましい。なお、金属組織や上記CT/ASは、熱間加工以降の工程で変化しないため、得られる粗形材の金属組織および上記CT/ASは、ほぼ同等である。
[機械加工工程]
上述の棒鋼、または成型工程後の窒化部品用粗形材に対して機械加工を実施して所定の部品形状にする。所定の部品形状とするための機械加工としては、例えば、切削加工または研削加工が挙げられる。
[窒化処理]
機械加工後の部品に対して、窒化処理を実施する。窒化処理は、周知のガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒化、プラズマ窒化等を適用できる。窒化処理に用いるガスは、NHのみであってもよいし、NHに加え、N、H、CO、各種炭化水素を含有する混合気体であってもよい。窒化後の冷却は、水冷、油冷及び炉冷等、いずれの方法でもよい。
以上の工程により窒化部品が製造される。
以上の製造工程により製造された非調質鋼は硬さが十分に低く、かつ、機械加工時の工具の摩耗を抑制できる。加えて、本実施形態の非調質鋼は、降伏強度が高いため疵やへこみが生じにくく、かつ必要な疲労強度を得ることができる。そのため、本実施形態の非調質鋼は、例えば、自動車や産業機械などの機械構造用部品の素材として好適である。
以上の製造工程により製造された窒化部品は、硬さが低く、かつ、硬さのばらつきが小さいため切削コストが安価で、中水準程度の負荷が加わる部品にとって十分な疲労強度と高い降伏強度を有する。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
真空溶解炉を用いて、表1に示す化学組成を有する鋼A~Rの50kgのインゴットを製造した。具体的にまず、電解鉄とグラファイトを誘導加熱で溶解させた。その後、その後、CaとTi以外の合金元素を目標の化学成分になるように歩留まりを考慮し適切な量を溶鋼に含有させた。次に、金属Tiを加え、その後、SiCa合金ワイヤを適量加えた。鋼A~G、I~Pは、表2の「保持時間」に記載のとおり、SiCa合金を加えて200秒保持した後に、鋳型に鋳造しインゴットを製造した。鋼H、Q、RはSiCa合金を加えてから、それぞれ、600秒、5秒、30秒保持後に鋳造しインゴットを製造した。なお、表1に示す化学組成のうち、Cu、Ni、V、Moの「<0.01」および「-」は、いずれも対応する元素含有量が検出限界未満であることを示す。
次に、得られた各インゴットを1250℃にて4時間加熱した。加熱されたインゴットを一辺が75mmの角棒に鍛造し、その後、室温まで放冷した。
放冷後の角棒に対し、部品の熱間鍛造を模擬するため、再度1250℃に加熱後、60mmの直径を有する棒鋼に鍛伸し、ファンで風をかけながら室温まで冷却した。なお、当該鍛伸は、上記の成型工程に相当し、部品形状に加工する前の粗形材成形を模擬するものである。
<評価>
得られた棒鋼の長手方向に対して垂直な断面の、中心と表面を結んだ線分の中点付近から、図1に示すような、小野式回転曲げ疲労試験片(平行部:直径8mm、長さ22mm)と、図2に示すような、引張試験片(平行部:直径6mm、長さが32mm)と、1辺が約10mmの立方体形状の確性調査用試験片を採取した。図1および図2中の数値は、試験片の各部位の寸法(mm)を示す。
(降伏強度)
作成した引張試験片を用い、JIS Z 2241:2011に準拠し、室温(約25℃)で、引張速度1.5mm/minの条件で引張試験に供して降伏強度YP(MPa)を測定した。被削性の指標である硬さHVに対する降伏強度YPの比(YP/HV)が2.20以上である場合、降伏強度に優れると判断した。
(疲労強度)
作成した回転曲げ疲労試験片を用い、室温(約25℃)で、回転数を3000rpmとして小野式回転曲げ疲労試験を実施した。応力負荷繰り返し数1.0×10回まで破断しなかった試験片において、最も高い応力(最大応力)をその試験番号の疲労強度σw(MPa)と定義した。被削性の指標である硬さHVに対する疲労強度σwの比(σw/HV)が1.55以上である場合、疲労強度に優れると判断した。
(硬さ)
作成した確性調査用試験片を樹脂に埋め込み鏡面研磨した。鏡面研磨後の試験片の被検面の中心付近のビッカース硬さ(HV)を測定した。試験荷重は9.8Nとし5回測定を行い、その算術平均値をその試験材の硬さとした。
(酸化物系複合介在物)
硬さを測定した後の確性調査用試験片を、走査電子顕微鏡(SEM)内でエネルギー分散型X線分光器(EDS)による測定に供した。観察視野は2mm×2mmとして、視野内の酸化物の内、断面上の面積を円に換算した場合に直径が1.0μm以上のすべての酸化物系介在物に対してEDS分析を行い、その結果から、CT/ASの値を算出した。このCT/ASの値は、1300℃以下の熱処理では変化せず、具体的には、本実施形態で開示した熱間鍛造処理、または窒化処理がなされたとしても、処理前後で変化しない。
(工具摩耗(被削性))
得られた棒鋼からφ35×200mmの試験片を作成し、旋盤を用いた切削試験に供した。切削速度は250m/minで、送りは0.20mm/rev、切込み深さは1.5mmとした。潤滑はせず、ドライ条件でP20種の超硬工具を用いて、2000m加工後の工具の逃げ面の摩耗量(μm)を測定した。摩耗量が200.0μm以下である場合、被削性に優れると判断した。
表2に、各試験の測定結果を示す。表中の保持時間は、溶鋼中にSiCa合金を加えから、鋳型に鋳造を始めるまでの間に保持する時間である。
試験番号1~8では工具摩耗が200μm以下に抑制されており、硬さに対する降伏強度の比(YP/HV)が2.20以上と高くハンドリング性に優れ、硬さに対する疲労強度の比(σw/HV)が1.55以上と疲労特性に優れていた。一方で、比較例である試験番号9~18では、目標の特性が得られなかった。
Figure 2023050636000001
Figure 2023050636000002
(窒化部品)
また、表2において良好な特性を示した発明例である棒鋼について、窒化処理への適用可否を確認すべく、以下の追加評価を行った。
上述したφ60の棒鋼の長手方向に対して垂直な断面の、中心と表面を結んだ線分の中点付近から、図3に示すような、平行部が直径10mm、長さ22mmで、切欠き半径Rが3mm、深さが1mmの環状切欠き(切欠底:φ8)を有する小野式回転曲げ疲労試験片を採取した。
次に、疲労試験片を590℃で2h保持し、その後に、油冷する軟窒化処理に供した。軟窒化処理は、アンモニアとRXガスの混合比が1:1である混合ガスを流しながら実施した。軟窒化処理後の試験片は、回転数3000rpmで小野式回転曲げ疲労試験に供した。1.0×10回の負荷で破断しなかった試験片において、最大の応力を疲労強度とみなした。また、応力集中を考慮して評価すべく、得られた疲労強度の公称応力に応力集中係数をかけた評価値を算出した。
得られた疲労強度(公称応力)および評価値を表3に示す。
いずれの試験番号においても、評価値は、未窒化材である棒鋼の疲労強度σw(表2)と比べて約1.5~2倍程度まで上昇していた。これらの結果から、発明例については、非調質鋼に窒化処理を加えて窒化部品とした後も、良好な特性が得られることが確認された。
Figure 2023050636000003
本発明は、自動車や産業機械などの機械構造用部品の素材として、幅広い産業分野に利用することができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.30~0.50%、
    Si:0.05~0.35%、
    Mn:0.45~1.00%、
    P:0.080%以下、
    S:0.035~0.100%、
    Cu:0.25%以下、
    Ni:0.25%以下、
    Cr:0.03~0.25%、
    Al:0.020%以下、
    N:0.0125~0.0250%、
    Ti:0.005~0.030%、
    Ca:0.0003~0.0100%、
    V:0~0.02%、及び
    Mo:0~0.03%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    下記式(1)であらわされる固溶N量Nsolが0.008%以上であり、
    金属組織において、初析フェライトの面積率が20%以上、残部組織がパーライトであり、
    酸化物系介在物のうち、AlとSiの重量濃度の和が10%以上の酸化物系介在物において、CaとTiの重量濃度の和であるCTの、AlとSiの重量濃度の和であるASに対する比率CT/ASが0.50以上であることを特徴とする非調質鋼。
    Nsol=N-Ti/3.4 ・・・ (1)
    ただし、上記式(1)中の各元素記号は、当該元素の質量%での含有量である。
  2. 請求項1に記載の非調質鋼からなる母材と、
    前記母材の表層に形成されている、化合物層と拡散層からなる窒化層とを有することを特徴とする窒化部品。
  3. 請求項2に記載の窒化部品であって、前記窒化部品は機械構造用部品であることを特徴とする、窒化部品。
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