JP2023048173A - 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法 - Google Patents

酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023048173A
JP2023048173A JP2021157334A JP2021157334A JP2023048173A JP 2023048173 A JP2023048173 A JP 2023048173A JP 2021157334 A JP2021157334 A JP 2021157334A JP 2021157334 A JP2021157334 A JP 2021157334A JP 2023048173 A JP2023048173 A JP 2023048173A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
aluminum oxide
based composition
zirconium
aluminum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021157334A
Other languages
English (en)
Inventor
謙介 影山
Kensuke Kageyama
卓也 四山
Takuya Shizan
直幸 相場
Naoyuki Aiba
寛人 赤池
Hiroto Akaike
範壽 千歳
Norihisa Chitose
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Mitsubishi Materials Electronic Chemicals Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Mitsubishi Materials Electronic Chemicals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp, Mitsubishi Materials Electronic Chemicals Co Ltd filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2021157334A priority Critical patent/JP2023048173A/ja
Publication of JP2023048173A publication Critical patent/JP2023048173A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Pigments, Carbon Blacks, Or Wood Stains (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

【課題】黒色顔料として黒色パターニング膜を形成するときに、波長1000nmの近赤外線領域での光遮蔽性が比較的高く、パターニング性及び可視光線遮蔽性に優れ、耐湿性が良好な酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を提供する。【解決手段】水溶性アルミニウム化合物由来の酸化アルミニウム系組成物が粉末表面に部分的に付着し、粉末の全量を100質量%とするとき、アルミニウムを1質量%を超え15質量%以下の割合で含有し、BET法により測定される比表面積が30m2/g~90m2/gである酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末である。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁性の黒色顔料として好適に用いられる酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法に関する。本明細書において「酸化アルミニウム系組成物」とはアルミナ(Al23)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等が混在した組成物をいう。
この種の黒色顔料は、感光性樹脂に分散されて黒色感光性組成物に調製され、この組成物を基板に塗布してフォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー法でフォトレジスト膜に露光してパターニング膜を形成することで、液晶ディスプレイのカラーフィルター等の画像形成素子のブラックマトリックスに用いられる。従来の黒色顔料としてのカーボンブラックは導電性があるため、絶縁性が要求される用途には向かない。
従来、黒色顔料として黒色パターニング膜を形成するときに高解像度のパターニング膜を形成するとともに形成したパターニング膜が高い遮光性能を有する、窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法が開示されている(特許文献1(請求項1、請求項3、段落[0007])参照。)。この窒化ジルコニウム粉末は、BET法により測定される比表面積が20~90m2/gであり、X線回折プロファイルにおいて、窒化ジルコニウムのピークを有する一方、二酸化ジルコニウムのピーク、低次酸化ジルコニウムのピーク及び低次酸窒化ジルコニウムのピークを有さず、かつ粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、370nmの光透過率Xが少なくとも18%であり、550nmの光透過率Yが12%以下であって、前記550nmの光透過率Yに対する前記370nmの光透過率X(X/Y)が2.5以上であることを特徴とする。
特許文献1に示される窒化ジルコニウム粉末は、二酸化ジルコニウム粉末又はシリカがコーティングされた二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、窒化マグネシウム粉末とを、金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの2.0倍モル~6.0倍モルの割合になるように、かつ窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの0.3倍モル~3.0倍モルの割合になるように混合して混合物を得た後、前記混合物を窒素ガス単独、又は窒素ガスと水素ガスの混合ガス、又は窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスの雰囲気下、650~900℃の温度で焼成することにより、前記二酸化ジルコニウム粉末を還元して、製造される。
しかし、特許文献1に示される窒化ジルコニウム粉末は、例えば80℃、85%の高温高湿度雰囲気中に放置すると、窒化ジルコニウム表面の酸化が進むことにより、この窒化ジルコニウム粉末を用いてパターニング膜を形成したときに、膜の耐湿性が十分でなく遮光性能が低下する課題があった。
この課題を解消するため、これまで、アクリル樹脂等との相溶性を向上でき、またガスバリア性と相まって耐湿性も向上できる、窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法が開示されている(特許文献2(請求項1、請求項2、段落[0006])参照。)。また、黒色顔料として紫外線透過性に優れて高解像度のパターニング特性を有する黒色遮光膜を形成するとともに形成した黒色遮光膜が高い遮光性能と高い耐候性を有する、黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法が開示されている(特許文献3(請求項1、請求項2、段落[0010]、段落[0033])参照。)。
特許文献2に示される窒化ジルコニウム粉末は、アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末であって、体積抵抗率が1×106Ω・cm以上であり、アルミナによる被覆量が窒化ジルコニウム100質量%に対して1.5質量%~9質量%であり、等電点が5.7以上であることを特徴とする。
特許文献2に示される窒化ジルコニウム粉末の製造方法は、窒化ジルコニウム粉末を水中で粉砕して窒化ジルコニウムスラリーを調製する工程と、アルミニウム化合物を溶媒に溶かしてアルミニウム化合物溶液を調製する工程と、前記窒化ジルコニウムスラリーに前記アルミニウム化合物溶液を窒化ジルコニウム粉末:酸化アルミニウムが質量比で(100:1.5)~(100:15)の割合になるように添加する工程と、前記アルミニウム化合物溶液を添加した窒化ジルコニウムスラリーに酸を添加して窒化ジルコニウムスラリーのpHを調整し前記アルミニウム化合物を前記窒化ジルコニウム粉末の表面に析出させて前記アルミニウム化合物により前記窒化ジルコニウム粉末を被覆する工程と、前記アルミニウム化合物により被覆された窒化ジルコニウム粉末を洗浄した後に回収する工程と、前記回収されかつ前記アルミニウム化合物により被覆された窒化ジルコニウム粉末を大気又は窒素雰囲気中で60℃~200℃の温度で1時間~24時間保持して焼成することにより酸化アルミニウムにより被覆された窒化ジルコニウム粉末を得る工程とを含む。
一方、特許文献3に示される黒色遮光膜形成用粉末は、BET法により測定される比表面積が20~90m2/gであって、窒化ジルコニウムを主成分とし、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含有する黒色遮光膜形成用粉末であって、前記マグネシウムを含有するとき、前記マグネシウムの含有割合が前記黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01~1.0質量%であり、前記アルミニウムを含有するとき、前記アルミニウムの含有割合が前記黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01~1.0質量%である。
特許文献3に示される黒色遮光膜形成用粉末の製造方法は、二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、酸化マグネシウム粉末又は窒化マグネシウムと、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末とを、前記金属マグネシウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して25~150質量%、前記酸化マグネシウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して15~500質量%、前記酸化アルミニウム又は前記窒化アルミニウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.02~5.0質量%の各割合になるように、混合し、得られた混合粉末を窒素ガス単体の雰囲気下、窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気下、窒素ガスとアンモニアガスの混合ガス雰囲気下又は窒素ガスと不活性ガス雰囲気下で650~900℃の温度で焼成することにより、前記混合粉末を還元して黒色遮光膜形成用粉末を製造する方法である。
特開2017-222559号公報 特開2020-158377号公報 特開2019-112275号公報
近年、イメージセンサーなどの光学素子において、ノイズ抑制のために波長1000nm付近の近赤外領域を遮蔽するニーズが増加しており、従来の可視光線領域のみならずこの近赤外線領域を遮蔽する膜の要求が高まっている。
しかしながら、特許文献2に示されるアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末は、アクリル樹脂等との相溶性を向上でき、またガスバリア性と相まって耐湿性も向上できるものの、黒色顔料として黒色パターニング膜を形成するときに波長1000nmの近赤外線領域での光遮蔽性を高くすることができない課題があった。その理由は、窒化ジルコニウム粒子表面がアルミナで被覆されていること、並びにレジストとした場合の粉末の沈降を抑制する目的で、製造初期に窒化ジルコニウムを粉砕処理して、窒化ジルコニウム粉末のBET比表面積を、90m2/gを超える(平均粒子径10nm未満の)サイズに微細化して結晶性を低下させていたことである。
また、特許文献3に示される黒色遮光膜形成用粉末は、窒化ジルコニウムを主成分とし、アルミニウムを含有する場合に、アルミニウムの含有割合が黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して1.0質量%以下である。1.0質量%を超えると、黒色遮光膜の遮光性能を低下させる旨が特許文献3に記載されているが、アルミニウムをテルミット法における酸化ジルコニウムの還元剤に利用する場合には、アルミニウムの含有量を増やしても、膜の可視光線遮蔽性を低下させないこと、窒化ジルコニウム粉末の結晶性を低下させずに高く保つこと、及び窒化ジルコニウム粉末を粗大化させずに紫外線領域の透過率を悪化させないことを、本発明者らは知見し、本発明に到達した。
また、特許文献3に示される黒色遮光膜形成用粉末の製造方法のように、酸化アルミニウムを酸化ジルコニウム粉末と金属マグネシウム粉末と酸化マグネシウム粉末と単純に混合して焼成した場合には、アルミニウムによるテルミット還元反応が起こりにくいことを、本発明者らは知見し、本発明に到達した。
本発明の目的は、黒色顔料として黒色パターニング膜を形成するときに、波長1000nmの近赤外線領域での光遮蔽性が比較的高く、パターニング性及び可視光線遮蔽性に優れ、耐湿性が良好な酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を提供することにある。
本発明の第1の観点は、水溶性アルミニウム化合物由来の酸化アルミニウム系組成物が粉末表面に部分的に付着し、前記粉末の全量を100質量%とするとき、アルミニウムを1質量%を超え15質量%以下の割合で含有し、BET法により測定される比表面積が30m2/g~90m2/gであることを特徴とする酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末である。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、370nmの光透過率Xが20%以上であり、1000nmの光透過率Yが35%以下であって、前記1000nmの光透過率Yに対する前記370nmの光透過率X(X/Y)が1.1以上である酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末である。
本発明の第3の観点は、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末と、前記酸化ジルコニウムの2.0倍モル~6.0倍モルの金属マグネシウム粉末と、前記酸化ジルコニウムの0.3倍モル~5.0倍モルの酸化マグネシウム粉末とを、混合して混合物を得た後、テルミット法により前記混合物を窒素ガス雰囲気下、700℃~1100℃の温度で30分間~180分間焼成することにより、前記酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末を還元して、第1又は2の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を製造する方法である。
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって、前記酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末が、酸化ジルコニウム粉末を水に分散した酸化ジルコニウムスラリーに水溶性アルミニウム化合物を添加混合して混合液を得て、前記混合液にアルカリ又は酸を添加混合して室温~80℃の温度で少なくとも60分間保持した後、前記混合液を固液分離し乾燥することにより製造される酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法である。
本発明の第5の観点は、第4の観点に基づく発明であって、前記水溶性アルミニウム化合物が水に溶解すると酸性になるアルミニウム化合物であって、前記混合液にアルカリを添加混合する酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法である。
本発明の第6の観点は、第4の観点に基づく発明であって、前記水溶性アルミニウム化合物が水に溶解するとアルカリ性になるアルミニウム化合物であって、前記混合液に酸を添加混合する酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法である。
本発明の第7の観点は、第1又は第2の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末が溶剤又はモノマー化合物に分散した黒色分散液である。
本発明の第8の観点は、第1又は第2の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として含む黒色感光性組成物である。
本発明の第9の観点は、第8の観点の黒色感光性組成物を用いて得られた黒色パターニング膜である。
本発明の第10の観点は、第9の観点の黒色パターニング膜を用いて得られたブラックマトリックスである。
本発明の第11の観点は、第9の観点の黒色パターニング膜を用いて得られた遮光材である。
本発明の第12の観点は、第9の観点の黒色パターニング膜を用いて得られた遮光フィルターである。
本発明の第13の観点は、支持フィルムと、この支持フィルム上に第9の観点の黒色パターニング膜とを備えた黒色フィルムである。
本発明の第1の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、水溶性アルミニウム化合物由来の酸化アルミニウム系組成物が粉末表面に部分的に付着し、粉末の全量を100質量%とするとき、アルミニウムを1質量%を超え15質量%以下の割合で含有し、BET法により測定される比表面積が30m2/g~90m2/gである。特許文献2に示されるアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末と異なり、本発明の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、粉末のBET比表面積が30m2/g~90m2/gの微粉末であっても、結晶性が高く保たれるため、波長370nmの紫外線領域での光透過率が高く、波長1000nmの近赤外線領域での光遮蔽性が高い(光透過性が低い)。
また特許文献3に示される黒色遮光膜形成用粉末と異なり、アルミニウムの含有量を1質量%を超え15質量%以下の割合にしても、テルミット法により粉末が作られ、アルミニウムが酸化ジルコニウムの還元剤として用いられるため、形成された膜の可視光線遮蔽性を低下させることなく、粉末の耐湿性を良好にする。また、窒化ジルコニウム粉末の結晶性を低下させずに高く保ち、窒化ジルコニウム粉末を粗大化させずに紫外線領域の透過率を悪化させない。
またこの酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が30m2/g以上であるため、レジストとした場合の沈降抑制の効果があり、また90m2/g以下であるため、十分な可視光線遮蔽性を有する効果がある。
本発明の第2の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末では、更に粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、370nmの光透過率Xが20%以上であり、1000nmの光透過率Yが35%以下である特徴を有し、またX/Yが1.1以上であることにより、紫外線をより一層透過する特長がある。この結果、黒色顔料として黒色パターニング膜を形成するときにより一層高解像度のパターニング膜を形成することができ、しかも形成したパターニング膜はより高い可視光線の遮蔽性能を有するようになる。
本発明の第3の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法では、特許文献2に示される方法が、窒化ジルコニウムスラリーにアルミニウム化合物を添加混合してアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末を調製した後で、これを焼成してアルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末を製造していたのに対して、酸化ジルコニウムスラリーに水溶性アルミニウム化合物を添加混合して、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末を調製した後で、この粉末と金属マグネシウム粉末と酸化マグネシウム粉末とを所定の割合で混合して、テルミット還元反応により、酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を製造するため、粉末の表面に酸化アルミニウム系組成物が部分的に付着するようになる。
また、特許文献3に示される黒色遮光膜形成用粉末の製造方法のように、酸化アルミニウムを酸化ジルコニウム粉末と金属マグネシウム粉末と酸化マグネシウム粉末と単純に混合せずに、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末を金属マグネシウム粉末と酸化マグネシウム粉末とともに混合し、その混合粉末を焼成するため、アルミニウムによるテルミット還元反応が起こり易くかつテルミット還元反応がより一層進む。これは原料の酸化ジルコニウムに酸化アルミニウム系組成物が密着しているためと考えられる。
酸化アルミニウム系組成物は窒化ジルコニウム粉末の表面に部分的に付着することは確認されるが、現段階で窒化ジルコニウム粉末の内部に含まれている否かを分析することができない。
特許文献2の製造方法では、窒化ジルコニウム粉末をアルミナで被覆する目的で、出発原料の窒化ジルコニウム粉末を粉砕処理して、窒化ジルコニウム粉末のBET比表面積を90m2/gを超える(平均粒子径10nm未満の)サイズにしていたため、粉砕により窒化ジルコニウムの結晶性を低下させていた。これに対して、本発明の第3の観点の方法では、窒化ジルコニウム粉末を粉砕しないこと、及び粉末表面に付着した酸化アルミニウム系組成物が酸化ジルコニウムのテルミット還元反応に寄与することの理由により、酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の結晶性を低下させず、結晶性を高く保つことができる。
テルミット還元反応の詳細なメカニズムは不明であるが、この反応材料として、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム(以下、被覆された酸化ジルコニウムということもある。)粉末を使用することにより、テルミット還元反応において以下の副反応を生じることが予想され、その効果により良好な光学特性が得られるものと推測される。ここで、「酸化アルミニウム系組成物」とは、アルミナ(Al23)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等が混在した組成物をいう。
上記酸化アルミニウム系組成物をアルミナとすると、このアルミナのマグネシウムによる還元は、次の式(1)で示される。
Al23 + 3Mg → 2Al + 3MgO (1)
アルミニウムによる酸化ジルコニウムの還元(テルミット還元反応)は、次の式(2)で示される。
4Al + 3ZrO2 → 2Al23 + 3Zr (2)
金属ジルコニウムの窒化反応は、次の式(3)で示される。
Zr + 1/2N2 → ZrN (3)
上記式(1)~式(3)に示される反応が順次進む結果、反応生成物は窒化ジルコニウム、及び酸化アルミニウム系化合物の混合体となる。
金属アルミニウムは金属マグネシウム同様に高温でのテルミット還元反応を起こすが、マグネシウムより長く緩やかな反応となるため、反応物として得られる窒化ジルコニウムは均一性に優れた小粒径の形状となり、特に紫外線領域の透過性向上に寄与すると考えられる。酸化アルミニウム系組成物は窒化ジルコニウム粉末の表面に部分的に付着することは確認されるが、現段階で窒化ジルコニウム粉末の内部に含まれている否かを分析することができない。
本発明の第4の観点の製造方法では、酸化ジルコニウムスラリーに水溶性アルミニウム化合物を添加混合した混合液にアルカリ又は酸を添加混合して所定の条件で熟成した後、前記混合液を固液分離し乾燥することにより、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末が製造されるため、酸化ジルコニウム粉末表面に酸化アルミニウム系組成物を均一に被覆することができ、次の工程のテルミット還元反応で、粉末表面に酸化アルミニウム系組成物が部分的に付着する特長がある。酸化アルミニウム系組成物が粉末内部に含まれている否かを現段階で分析することができない。
本発明の第5の観点の製造方法では、水溶性アルミニウム化合物として、水に溶解すると酸性になるアルミニウム化合物を用いる場合には、混合液にアルカリを添加混合して中和反応を行うことができる。
本発明の第6の観点の製造方法では、水溶性アルミニウム化合物として、水に溶解するとアルカリ性になるアルミニウム化合物を用いる場合には、混合液に酸を添加混合して中和反応を行うことができる。
本発明の第7の観点の黒色分散液は、第1又は第2の観点の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末が溶剤又はモノマー化合物に分散されることにより、窒化ジルコニウムが紫外線を通すとともに可視光線を遮蔽する特長がある。この結果、この黒色分散液は黒色パターニング膜形成用材料として好適に用いられる。
本発明の第8の観点の黒色感光性組成物によれば、黒色顔料として酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を含むため、この組成物を用いて黒色パターニング膜を形成すれば、紫外線透過率が高いため、光開始剤の使用量を減らしても高解像度のパターニング膜を形成することができる。
本発明の第9の観点の黒色パターニング膜は、高解像度である上、高い可視光線及び近赤外領域の光の遮蔽性能を有する。
本発明の第10の観点のブラックマトリックスは、上記黒色パターニング膜を用いて得られるため、微細なパターンを有する。
本発明の第11の観点の遮光材、第12の観点の遮光フィルター及び第13の観点の黒色フィルムは、上記黒色パターニング膜を用いて得られるため、高い可視光線及び近赤外領域の光の遮蔽性能を有する。
実施例1、比較例1及び比較例2でそれぞれ得られた窒化ジルコニウム粉末の分散液を粉末濃度50ppmに希釈した分散液における光透過率を示す分光曲線である。 実施例1により得られた酸化アルミニウム系組成物が付着した窒化ジルコニウム粉末の走査型透過電子顕微鏡(STEM)写真図である。 本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を製造するフロー図である。
次に本発明を実施するための形態を説明する。
〔酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法〕
本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法の特徴ある点は、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末を用いることにある。このため、最初に酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末の製造方法について説明する。
〔酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末の製造方法〕
図3に示すように、先ず酸化ジルコニウム粉末11を用意し、これに水12を添加混合して酸化ジルコニウムスラリー13を、スラリー中の酸化ジルコニウムの濃度が1質量%~20質量%の割合になるように、調製する。ここで、酸化ジルコニウム粉末11は、二酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末である。最終製品のBET比表面積が30m2/g~90m2/gである酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を得るために、酸化ジルコニウム粉末11は、BET比表面積の測定値から球形換算した平均粒子径で500nm以下であることが好ましく、粉末の取扱い易さから、平均粒子径で10nm以上(BET比表面積105m2/g以下)かつ500nm以下(BET比表面積2m2/g以上)であることが好ましい。
本実施形態の酸化ジルコニウム粉末11としては、例えば、単斜晶系二酸化ジルコニウム、立方晶系二酸化ジルコニウム、イットリウム安定化二酸化ジルコニウム等の二酸化ジルコニウムの粉末がいずれも使用可能であるが、窒化ジルコニウム粉末の生成率が高くなる観点から、単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末が好ましい。酸化ジルコニウムには通常不可避不純物としてハフニウムが2質量%程度含有されるが、2質量%のレベルであれば光学特性への影響は及ぼさない。
次いで、酸化ジルコニウムスラリー13に水溶性アルミニウム化合物14を添加混合して混合液15を得る。酸化ジルコニウムスラリー13に混合する前に水溶性アルミニウム化合物14は水に溶解しておくことが好ましい。水溶性アルミニウム化合物14には、水に溶解すると酸性になるものと、アルカリ性になるものがある。水に溶解すると酸性になるアルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム無水和物、塩化アルミニウム6水和物等の塩化アルミニウム化合物、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等が例示される。また水に溶解するとアルカリ性になるアルミニウム化合物としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸リチウム等のアルミン酸アルカリ塩、水酸化アルミニウム等が例示される。
水溶性アルミニウム化合物14は、最終製品のアルミニウムの含有割合が1質量%を超え15質量%以下である酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を得るために、酸化ジルコニウム(ZrO2)100質量%に対して酸化アルミニウム(Al23)換算で2質量%~30質量%の割合で添加する。
次に、得られた混合液15にアルカリ又は酸16を添加混合し、pHを6~7に調整して、中和反応を生じさせ、水酸化アルミニウムを得る。混合液を中和させるのは、水中に溶解しているアルミニウムイオンを水酸化物として析出させ、酸化ジルコニウム粉末表面に被覆させるためである。ここで、中和反応を生じさせるための中和剤として、水溶性アルミニウム化合物14が、水に溶解すると酸性になる塩化アルミニウム化合物である場合には、アンモニア水、苛性ソーダ等のアルカリが用いられる。一方、水溶性アルミニウム化合物14が、水に溶解するとアルカリ性になるアルミニウム化合物である場合には、塩酸、硝酸、硫酸等の酸が用いられる。以下の式(4)にアンモニア水を用いたときの反応式の一例を、式(5)に塩酸を用いたときの反応式の一例をそれぞれ示す。
AlCl3 + 3NH4OH → Al(OH)3 + 3NH4Cl (4)
NaAlO2 + HCl + H2O → Al(OH)3 + NaCl + H2↑ (5)
混合液15にアルカリ又は酸16を添加混合して生じる中和反応は、室温~80℃の温度で最長で60分間、好ましくは10分~40分間行われる。上記(4)及び(5)に示す反応が十分に行われるためである。中和反応が行われた後、液をデカンテーションして、上澄み液を取り除き、沈殿物をろ過した後、100℃~120℃の温度で10時間~12時間乾燥する。これにより酸化アルミニウム系組成物で被覆された酸化ジルコニウム粉末17が得られる。前述したように、この酸化アルミニウム系組成物は、アルミナ(Al23)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等が混在した組成物である。
〔酸化アルミニウム系組成物により被覆されたZrO2粉末と金属Mg粉末とMgO粉末との混合〕
続いて、得られた酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末(ZrO2粉末)17を、金属マグネシウム粉末(金属Mg粉末)18と酸化マグネシウム粉末(MgO粉末)19とに混合して混合物20を得る。これらの混合割合は、上記被覆された酸化ジルコニウム粉末17を十分に還元して最終製品の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末にするために決められる。具体的には、酸化ジルコニウム粉末1モルに対して、金属マグネシウム粉末18を2.0倍モル~6.0倍モル、酸化マグネシウム粉末19を0.3倍モル~5.0倍モルの割合で混合する。
[金属マグネシウム粉末]
金属マグネシウム粉末18は、粒径が小さすぎると、反応が急激に進行して操作上危険性が高くなるので、粒径が篩のメッシュパスで100μm~1000μmの粒状のものが好ましく、特に200μm~500μmの粒状のものが好ましい。ただし、金属マグネシウム粉末18は、すべて上記粒径範囲内になくても、その80質量%以上、特に90質量%以上が上記範囲内にあればよい。
金属マグネシウム粉末18の、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末17に対する添加量の多寡は、金属マグネシウムの還元力に影響を与える。金属マグネシウムの量が少なすぎると、還元不足で目的とする窒化ジルコニウム粉末が得られにくくなり、多すぎると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。金属マグネシウム粉末18は、その粒径の大きさによって、金属マグネシウムが酸化ジルコニウムの2.0倍モル~6.0倍モルの割合になるように、金属マグネシウム粉末18を上記被覆された酸化ジルコニウム粉末17に添加して混合する。2.0倍モル未満では、金属マグネシウムの還元力が不足し、6.0倍モルを超えると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こすおそれがあるとともに不経済となる。3.0倍モル~5.0倍モルが好ましい。
〔酸化マグネシウム粉末〕
酸化マグネシウム粉末19は、金属マグネシウムによる酸化ジルコニウムの還元反応により生成する窒化ジルコニウムの焼結を防止するためのものである。その使用量は、酸化マグネシウムの粒径によっても異なるが、酸化ジルコニウム粉末1モルに対して、0.3倍モル~5.0倍モルであることが好ましい。酸化マグネシウム粉末19は、窒化ジルコニウムの焼結を防止することができる量だけあればよく、過剰に使用すると、反応後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加するので、上記の範囲で使用するのが好ましい。
[酸化アルミニウム系組成物により被覆されたZrO2粉末と金属Mg粉末とMgO粉末との混合物の焼成]
本実施形態の酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末17と金属マグネシウム粉末18と酸化マグネシウム粉末19を図示しない反応容器に入れ、これらの混合物20を焼成する。酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末17を還元して窒化ジルコニウム粉末を生成させるための金属マグネシウムによる還元反応時の温度、即ち焼成温度は、700℃~1100℃、好ましくは900℃~1100℃である。650℃は金属マグネシウムの溶融温度であり、温度がそれより低いと、酸化ジルコニウムの還元反応が十分に生じない。また、温度を1100℃より高くしても、その効果は増加せず、熱エネルギーの無駄になるとともに粒子の焼結が進行し好ましくない。また還元反応時間、即ち焼成時間は、還元反応温度と同じ理由で、30分間~180分間、好ましくは60分間~120分間である。この還元反応時、即ち焼成時の雰囲気ガスは、還元生成物の酸化を防ぐため窒素ガス雰囲気である。上記還元反応を促進させるために、窒素ガスと水素ガスの混合ガス、又は窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスを用いてもよい。上記混合物20を焼成して焼成物21が得られる。
[焼成物の処理]
上記混合物を焼成することにより得られた焼成物21は、反応容器から取り出し、最終的には室温まで冷却した後、塩酸水溶液などの酸溶液22で洗浄して、金属マグネシウムの酸化によって生じた酸化マグネシウムや生成物の焼結防止のために当初から含まれていた酸化マグネシウム(MgO)及び焼成により生成した窒化マグネシウム(Mg32)を除去する。この酸洗浄に関しては、pH0.5以上、特にpH1.0以上、温度は90℃以下で行うのが好ましい。これは酸性が強すぎたり温度が高すぎるとジルコニウムまでが溶出してしまうおそれがあるためである。そして、その酸洗浄後、アンモニア水などでpHを5~6に調整した後、ろ過又は遠心分離により固形分を分離し、その固形分を乾燥した後、粉砕して本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末23を得る。なお、酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末23は、使用原料又はステンレス鋼製の反応容器の材質等に由来した、工程上含有し得る不純物を含んでいても良い。不純物としては、塩化マグネシウム、酸化マグネシウムなどのマグネシウム塩、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、フッ素、塩素、臭素、金属アルミニウム、窒化アルミニウム、カーボン、吸着水、鉄、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、コバルト、カリウム、銅、ハフニウム化合物などが挙げられる。酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末23に、これらの不純物が微量含まれた場合においても、その光学特性、電気的絶縁性、恒温恒湿環境での特性変化などに特に影響を及ぼさない。
〔酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の特性〕
本実施形態で得られた酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、その表面に水溶性アルミニウム化合物由来の酸化アルミニウム系組成物が部分的に付着し、アルミニウムが、粉末の全量を100質量%とするとき、1質量%を超え15質量%以下の割合で含有する。この割合が1質量%以下では、窒化ジルコニウム粉末のアルミニウムの含有量が少な過ぎ、粉末の耐湿性を良好にすることができず、またアルミニウムのテルミット還元反応による、結晶性向上及び粒子の微細均一化の効果が発現せず、波長370nmにおける光透過率が低くなる。この割合が15質量%を超えると、粉末の耐湿性を向上することができるが、酸化アルミニウムが高誘電率を有するために波長1000nmの近赤外領域での光遮蔽性が低下する。好ましい含有割合は1.1質量%~15質量%であり、更に好ましい含有割合は1.5質量%~14質量%である。
この窒化ジルコニウム粉末23における酸化アルミニウム系組成物の形態は、図2に示すように、粉末23aの表面に酸化アルミニウム系組成物23bが部分的に付着していることを確認することができる。しかし、現段階で粉末23aの内部に酸化アルミニウム系組成物23bが含まれているか否かは確認できない。また酸化アルミニウム系組成物が付着していない窒化ジルコニウム粉末23aの表面は、窒化ジルコニウムが露出する場合が殆どであるが、薄いアルミニウム化合物の酸化層になっている場合もある。
粉末の表面における酸化アルミニウム系組成物の付着の有無は走査型透過電子顕微鏡(STEM)及びエネルギー分散型X線分析法(EDS)を用いて確認する。具体的には、この有無の確認は、STEM(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製Titan G2 ChemiSTEM)を用いて、倍率10000倍から200000倍のうち、粒子が1~5個確認できる倍率に設定し、加速電圧200kVの条件で粒子外観の観察により行う。更に、この有無の確認は、同じ視野において、EDS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製Velox)を用いてアルミニウム元素、ジルコニウム元素、酸素元素、窒素元素について元素マッピングを行い、酸化アルミニウム系組成物と窒化ジルコニウムの判別により行う。簡易的には、粒子外観の観察時に、高角環状暗視野(HAADF:High-Angle Annular Dark Field)像におけるアルミニウム元素とジルコニウム元素のコントラスト差からも、酸化アルミニウム系組成物と窒化ジルコニウムとを判別することが可能である。ここで、酸化アルミニウム系組成物としては、アルミナ(Al23、αアルミナ、θアルミナ、γアルミナを含む。)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等が挙げられる。
アルミニウムの含有割合は、誘導結合プラズマ発光分析装置(島津製作所社製のICP発光分析装置:ICPS-7510)により測定する。
また酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、BET比表面積が30m2/g~90m2/gである。この窒化ジルコニウム粉末の上記比表面積が30m2/g未満では、黒色レジストとしたときに、長期保管時に顔料が沈降する不具合があり、90m2/gを超えると、黒色顔料としてパターニング膜を形成したときに、可視光線の遮蔽性能が不足する不具合がある。30m2/g~70m2/gが好ましい。上記比表面積から次の式(6)により球状に見なした平均粒子径を算出することができる。このBET比表面積から算出される、本実施形態の窒化ジルコニウム粉末の平均粒子径は10nm~40nmである。式(6)中、Lは平均粒子径(μm)、ρは粉末の密度(g/cm3)、Sは粉末の比表面積(m2/g)である。
L=6/(ρ×S) (6)
本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末では、窒化ジルコニウム粒子の表面に水溶性アルミニウム化合物由来の酸化アルミニウム系組成物が部分的に付着して存在する。特許文献2のように、窒化ジルコニウム粉末の表面がアルミナで完全に粉末表面が被覆されると、アルミナが高誘電率を有するために1000nmの長波長側の光を透過する。一方、本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末のように、酸化アルミニウムが粉末表面に部分的に付着している場合には、耐湿性を良好にしながら、窒化ジルコニウムの遮蔽性が維持されるために高い遮光性を有する。また、前述したように、酸化ジルコニウムを被覆する酸化アルミニウム系組成物がテルミット還元反応の補助剤として働くため、本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の結晶性を低下させず、高く保つ。この結果、波長370nmの紫外線領域での光透過性が向上し、近赤外線領域の光透過率が上昇しない(光遮蔽性が向上する)。
本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末では、更に、粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、370nmの光透過率Xが20%以上であり、1000nmの光透過率Yが35%以下であることが好ましい。光透過率Xが20%未満では、黒色顔料としてパターニング膜を形成するときにフォトレジスト膜の底部まで露光されず、パターニング膜のアンダーカットが発生し易い。また光透過率Yが35%を超えると、形成したパターニング膜の近赤外線領域の光遮蔽性が不足し易い。更に好ましい光透過率Xは25%以上であり、更に一層好ましい光透過率Yは30%以下である。上記光透過率Xと光透過率Yの二律背反的な特性を考慮して、本実施形態の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、1000nmの光透過率Yに対する前記370nmの光透過率X(X/Y)が1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることが更に好ましい。即ち、X/Yが1.1以上であることにより、紫外線透過の効果があり、パターニング膜のアンダーカットを発生しないことが優先され易くなる。
なお、上記光学特性を満たす最終製品の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、光学特性を測定するときに、粒子が凝集しないで、十分に分散された状態にしておくことが必要不可欠である。十分な分散は、例えば、リン酸、カルボン酸、アミンなどの官能基を有する高分子系の分散剤を使用し、ジルコニアビーズなどの粉砕メディアを使用して所定時間分散処理を行うことにより実現する。分散度の指標としては、動的散乱方式の粒度分布系(例えばマイクロトラック社製のUPA、や堀場製作所製のSZ-100)において、200nmを超える二次凝集物が確認されないことが挙げられる。
〔黒色分散液の調製〕
最終製品の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を溶剤又はアクリルモノマー又はエポキシモノマーなどのモノマー化合物に分散することにより、黒色分散液を調製する。
アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタアクリロイル基を含む。アクリルモノマーは、1つ分子中に(メタ)アクリル基を1つ有する単官能アクリルモノマーであってもよいし、1つの分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上有する多官能アクリルモノマーであってもよい。
単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2・エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
二官能(メタ)アクリルモノマーとしては、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシモノマーは、エポキシ基を有するものである。エポキシモノマーは、1つの分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシモノマーであってもよいし、1つの分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシモノマーであってもよい。エポキシモノマーとしては、グリシジルエーテル、脂環式エポキシなどが挙げられる。
このモノマー分散体である黒色分散液をポリマー中に添加することにより、上記窒化ジルコニウム粉末を分散して含有する樹脂組成物が作製され、この樹脂組成物から樹脂成形体が形成される。また、上記モノマー分散体である黒色分散液は、更に金属酸化物粉末を含み、可塑剤を更に含有することができる。可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸トリブチル、リン酸2-エチルヘキシル等のリン酸エステル系可塑剤、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル系可塑剤、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪族- 塩基性エステル系可塑剤、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチラートなどの二価アルコールエステル系可塑剤;アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリブチルなどオキシ酸エステル系可塑剤等の従来公知の可塑剤を挙げることができる。
更に、モノマー分散体である黒色分散液に、更に別のモノマーを添加することができる。別のモノマーとしては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、ウレタンアクリレート等のウレタン系モノマー、上記各種ポリオール類など、従来公知のモノマーを挙げることができる。なお、モノマー分散体の粘度は、窒化ジルコニウム粉末の分散性を考慮して10mPa・s~1000mPa・sの範囲内に設定されることが好ましい。モノマーへの分散は、次に述べる溶剤への分散と同様に、粉砕メディアを使用したミル方式を使用することも可能である。また、必須成分ではないが、より分散性を向上させるため高分子分散剤を使用することも可能である。高分子分散剤は分子量が数千~数万であることが有効である。
また、顔料に吸着する高分子分散剤の官能基としては二級アミン、三級アミン、カルボン酸、リン酸、リン酸エステルなどが挙げられるが、特に三級アミン、カルボン酸が有効である。高分子分散剤の代わりに、シランカップリング剤を少量添加することも分散性向上に有効である。一方、遊星撹拌を施した後、三本ロールを数回通して黒色分散液を得ることも可能である。
溶剤に分散した黒色分散液についても、モノマー化合物を分散した黒色分散液と同様に高分子分散剤の添加が有効である。高分子分散剤は、モノマー化合物を分散した黒色分散液と同様に分子量が数千から数万であることが有効であり、高分子分散剤の官能基としては三級アミン、カルボン酸、リン酸が有効である。溶剤としては、イソプロパノール(IPA)、酢酸ブチル(BA)、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。
〔黒色感光性組成物の調製〕
最終製品の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末が黒色顔料として分散媒に分散され、更に樹脂が混合された黒色組成物が調製される。この上記分散媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM-Ac)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸ブチル(BA)等が挙げられる。また、上記樹脂としては、感光性のアクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
〔酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として用いたパターニング膜の形成方法〕
上記酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として用いた、ブラックマトリックスに代表されるパターニング膜の形成方法について述べる。先ず、上記酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を溶剤に分散させて黒色分散液を調製する。アミン系分散剤を用いることが好ましい。溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM-Ac)、ジエチルケトン、酢酸ブチル等が例示される。この分散液に感光性のアクリル樹脂を、質量比で黒色顔料:樹脂=(10:90)~(80:20)となる割合で添加混合して黒色感光性組成物を調製する。次いでこの黒色感光性組成物を基板上に塗布した後、プリベークを行って溶剤を蒸発させて、フォトレジスト膜を形成する。次にこのフォトレジスト膜にフォトマスクを介して所定のパターン形状に露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、フォトレジスト膜の未露光部を溶解除去し、その後好ましくはポストベークを行うことにより、所定の黒色パターニング膜が形成される。
上記基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。また上記基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。黒色感光性組成物を基板に塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布法を採用することができる。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.1μm~10μm、好ましくは0.2μm~7.0μm、更に好ましくは0.5μm~6.0μmである。パターニング膜を形成する際に使用される電磁波としては、本実施形態では、波長が250nm~370nmの範囲にある電磁波が好ましい。電磁波の積算光量は、好ましくは10J/m2 ~10,000J/m2 である。
また上記アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。上記アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができ、現像条件は、常温で5秒~300秒が好ましい。このようにして形成されたパターニング膜は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス、イメージセンサー用遮光材。光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター等に好適に用いられる。またこの黒色パターニング膜は、黒色フィルムを構成する要素として用いられる。具体的には、支持フィルムと、この支持フィルム上にこの黒色パターニング膜とを備えることにより黒色フィルムが得られる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
BET比表面積が30m2/gの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末5gを水500gに添加混合して酸化ジルコニウムスラリーを調製した。アルミニウム源として、塩化アルミニウム6水和物を水に溶解し、この溶液を酸化ジルコニウムスラリーに添加混合して混合液を得た。塩化アルミニウム6水和物の添加量は、Al23換算で酸化ジルコニウムを100質量%とするとき、12質量%とした。また混合液は70℃に保持された。得られた混合液にアンモニア水を滴下して、混合液のpHを7に調整した。混合液を70℃で30分保持した後、デカンテーションを行い、沈殿物をろ過した。固形分を熱風乾燥機を用いて、120℃の温度で、12時間乾燥した。この乾燥した粉末を走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察したところ、粉末表面の一部が酸化アルミニウム系組成物で被覆された酸化ジルコニウム粉末であった。上述した電子線回折装置で分析したところ、酸化アルミニウム系組成物は非晶質酸化アルミニウムであった。
次に、酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末5.5g(酸化ジルコニウムとして5g)と、金属マグネシウム粉末4.9g(酸化ジルコニウムに対して5モル)と、酸化マグネシウム粉末4.9g(酸化ジルコニウムに対して3モル)とを混合した。カッコ内のモル数は、酸化ジルコニウム1モルに対する割合である。この混合物を反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、900℃の温度で60分間焼成した。この焼成物を、0.1リットルの水に分散し、10%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を90℃以下に保ちながら洗浄した後、25%アンモニア水にてpH7~8に調整し、ろ過した。そのろ過固形分を水中に0.4リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、ろ過した。このように酸洗浄-アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、ろ過物をイオン交換水に固形分換算で5g/リットルで分散させ、60℃での加熱撹拌とpH7への調整をした後、吸引ろ過装置でろ過し、さらに等量のイオン交換水で洗浄し、120℃の温度に設定された熱風乾燥機にて乾燥することにより、最終製品の粉末を得た。実施例1の製造条件を以下の表1に示す。また実施例1の粉末の走査型透過電子顕微鏡(STEM)写真図を図2に示す。図2には、黒色の窒化ジルコニウム粉末23aの表面を灰色の酸化アルミニウム系組成物23bが部分的に付着して構成された酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末23が示される。
Figure 2023048173000002
<実施例2~7及び比較例2、3>
実施例2~7及び比較例2、3の各最終製品の粉末の製造に際して、出発原料の酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末のBET比表面積を実施例1と同一又は変更し、アルミニウム源を実施例1と同一又は変更し、その添加量を実施例1と同一又は変更し、中和剤を実施例1と同一又は変更した。また酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末に対する金属マグネシウム(金属Mg)粉末と酸化マグネシウム(MgO)粉末の添加割合、焼成時の雰囲気、温度及び時間を、それぞれ実施例1と同一又は変更して、実施例2~7及び比較例2、3の各最終製品の粉末を得た。これらの内容を上記表1に示す。
<比較例1>
比較例1では、特許文献2の請求項2に準じた実施例1に示される方法で、最終製品の粉末を得た。
具体的には、BET比表面積が30m2/gの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末7.4gに、平均粒子径が150μmの金属マグネシウム粉末7.3gと平均粒子径が200nmの窒化マグネシウム粉末3.0gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの5.0倍モル、窒化マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの0.5倍モルであった。この混合物を窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成して焼成物を得た。この焼成物を、0.1リットルの水に分散し、17.5%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を90℃以下に保ちながら洗浄した後、2.5%アンモニア水にてpH7~8に調整し、ろ過した。そのろ過固形分を水中に0.4リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、ろ過した。このように酸洗浄-アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、ろ過物をイオン交換水に固形分換算で5g/リットルで分散させ、60℃での加熱撹拌とpH7への調整をした後、吸引ろ過装置でろ過し、更に等量のイオン交換水で洗浄し、120℃の温度に設定された熱風乾燥機にて乾燥することにより、窒化ジルコニウム粉末を得た。
上記窒化ジルコニウムを水中でビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズ使用)により粉砕することにより、平均粒子径30nmの窒化ジルコニウム粉末を得た。この粉砕した窒化ジルコニウムスラリー(窒化ジルコニウム粉末(黒色顔料)濃度10%)に、5%水酸化アルミニウム溶液(水酸化アルミニウムを苛性ソーダに溶かした溶液)を窒化ジルコニウム100質量%に対してAl23が5質量%になるように添加した。このときのスラリーのpHは10であった。次に、pHが5になるまで上記スラリーに17.5%塩酸を滴下した。これにより、水酸化アルミニウムが窒化ジルコニウム表面に析出した。このスラリーについてデカンテーションを数回行って洗浄した後、ろ過してケーク(ろ材の表面に堆積したカス)を回収した。得られたケークを窒素雰囲気下で300℃の温度に1時間保持して焼成することにより、酸化アルミニウムにより被覆された最終製品の粉末を得た。
<比較例4>
比較例4では、特許文献1の請求項3に準じた実施例1の方法で最終製品の粉末を得た。アルミニウム源のないBET比表面積が30m2/gの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末を出発原料として用いた。
具体的には、BET法が30m2/gの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末7.4gに、平均粒子径が150μmの金属マグネシウム粉末7.3gと平均粒子径が200nmの窒化マグネシウム粉末3.0gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの5.0倍モル、窒化マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの0.5倍モルであった。この混合物を窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成して焼成物を得た。この焼成物を、0.1リットルの水に分散し、10%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を90℃以下に保ちながら洗浄した後、25%アンモニア水にてpH7~8に調整し、ろ過した。そのろ過固形分を水中に0.4リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、ろ過した。このように酸洗浄-アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、ろ過物をイオン交換水に固形分換算で5g/リットルで分散させ、60℃での加熱攪拌とpH7への調整をした後、吸引ろ過装置でろ過し、さらに等量のイオン交換水で洗浄し、120℃の温度に設定された熱風乾燥機にて乾燥することにより、最終製品の粉末を得た。
比較例1と比較例4の各製造条件を上記表1に示す。
<比較試験>
実施例1~7及び比較例1~4の各最終製品の粉末を試料として用いた。これらの試料から、酸化アルミニウム系組成物の有無の確認とこれによる粉末の種類の判定を行い、アルミニウムの含有割合を測定した。この確認及び測定は上述した方法で行った。次に、これらの試料について、(1) BET比表面積を測定し、(2) 370nmの光透過率X及び1000nmの光透過率Yの分光曲線からの読取り、及び X/Yの計算を行った。更に(3) 耐湿性を測定した。それらの結果を以下の表2に示す。表2において、『酸化アルミニウム』は『酸化Al』と記載している。
(1) BET比表面積: 全ての試料について、比表面積測定装置(柴田化学社製、SA-1100)を用いて、窒素吸着によるBET1点法により測定した。
(2) 粉末濃度50ppmの分散液における分光曲線: 実施例1~7と比較例1~4の各試料について、これらの試料を循環式横型ビーズミル(メディア:ジルコニア)に各別に入れ、アミン系分散剤を添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM-Ac)溶剤中での分散処理を行った。得られた11種類の分散液を10万倍に希釈し粉末濃度を50ppmに調整した。この希釈した分散液における各試料の光透過率を日立ハイテクフィールディング((株)(UH-4150)を用い、波長240nmから1300nmの範囲で測定して分光曲線を得た。i線(365nm)近傍の波長370nmにおける光透過率X及び波長1000nmにおける光透過率Yを分光曲線から読み取った。図1に、実施例1と比較例1、2の3つの分光曲線を示す。
実施例1~7と比較例1~4の各試料の分光曲線から読み取られた光透過率Xと光透過率YよりX/Yを算出した。
(3) 耐湿性: アルミニウムの含有効果を確認するため、全ての試料について、耐湿性を調べた。
実施例1~7及び比較例1~4の各粉末について、アミン系分散剤を添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM-Ac)溶剤中で分散処理を行って分散液を調製した。この分散液にアクリル樹脂を、質量比で黒色顔料:樹脂=5:5となる割合で添加し混合して黒色組成物を調製した。この黒色組成物をガラス基板上にスピンコートし、250℃の温度に30分間保持することにより厚さ1μmの乾燥した塗膜を得た。これらの塗膜体積抵抗率をそれぞれ測定した。
作製した塗膜の試料を温度60℃、湿度90%に設定した恒温恒湿器に100時間入れ、高温耐湿試験を行った。試験前と試験後の各膜の塗膜体積抵抗率を三菱ケミカルアナリテック社製ハイレスタ(型番:MCP-HT800)を用いて、電圧1000Vで測定した。試料の耐湿性は、試験前と試験後の各膜の表面抵抗率の差から求められる下記式(7)の比率Rが50%未満の場合を耐湿性があるとし『良好』と判定した。またこの差が50%以上の場合を耐湿性がないとし『不良』とした。
R = [(変化後の抵抗率-変化前の抵抗率)/変化前の抵抗率]×100 (7)
Figure 2023048173000003
<評価>
表2から明らかなように、比較例1では、窒化ジルコニウムスラリーに水酸化アルミニウム溶液を添加して窒化ジルコニウム粉末を製造したため、この最終製品の粉末をSTEMで観察したところ、窒化ジルコニウム粉末の表面がアルミナで被覆されていることが確認された。この粉末の耐湿性は良好であったが、アルミナにより粉末が完全被覆されていたため、窒化ジルコニウムの遮光性をアルミナが阻害し、X/Yの値が0.95となり、1.1を下回った。
比較例2では、アルミニウム源である塩化アルミニウム6水和物の添加量が0.6質量%と少な過ぎ、最終製品の粉末におけるアルミニウムの含有割合は0.3質量%と少な過ぎた。このため、この最終製品の粉末をSTEMで観察したところ、この窒化ジルコニウム粉末の表面に酸化アルミニウム系組成物が僅かに付着している状態が確認された。この粉末では、BET比表面積が29m2/gと小さかった(平均粒子径が大きかった)。即ち、酸化アルミニウム系組成物によるテルミット還元反応における粒子の粗大化を抑制することができなかった。このため、370nmの透過率Xは19.3%となり、20%を下回り、X/Yの値が0.95となり、1.1を下回り、近紫外線領域の透過率が低かった。また耐湿性はアルミニウムの含有割合が低いため、不良であった。
比較例3では、アルミニウム源である塩化アルミニウム6水和物の添加量が38.0質量%と多過ぎ、最終製品の粉末におけるアルミニウムの含有割合は17.0質量%と多過ぎた。この最終製品の粉末をSTEMで観察したところ、この窒化ジルコニウム粉末の表面が酸化アルミニウム系組成物で殆ど被覆されている状態が確認された。このため、この粉末では、耐湿性が良好であったが、過剰なアルミナ化合物が近赤外線領域での光透過性を有するため1000nmの透過率Yは40%であり、X/Yの値が1.05となり、1.1を下回った。またBET比表面積が100m2/gと大き過ぎたため、最終製品の粉末の分散が不十分で可視光線領域の遮蔽性も低下した。
比較例4では、最終製品の粉末をSTEMで観察したところ、この窒化ジルコニウム粉末の表面には酸化アルミニウム系組成物は存在しないことが確認された。この粉末は表面がアルミナに被覆もされず、アルミニウムを含有しないため、耐湿性は不良であった。また、この粉末のBET比表面積が26m2/gと小さかった(平均粒子径が大きかった)。即ち、酸化アルミニウム系組成物によるテルミット還元反応における粒子の粗大化を抑制することができなかった。このため、370nmの透過率Xは19.0%となり、20%を下回ったため、近紫外線領域の透過性が低く、X/Yの値は1.00であった。
これに対して、実施例1~7の最終製品は、酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末であり、これらの最終製品の粉末をSTEMで観察したところ、すべての窒化ジルコニウム粉末の表面に酸化アルミニウム系組成物で部分的に付着した状態が確認された。電子線回折装置で分析したところ、すべての最終製品の粉末において非晶質酸化アルミニウムが存在していた。更に、すべての最終製品の粉末の耐湿性が良好であり、またアルミニウムの含有量が1質量%を超え15質量%以下の範囲にあった。即ち、実施例1~7の最終製品は、本発明の第1の観点の要件を満たしており、可視光線の遮光性能が高いことに加え、紫外線を透過するためパターニングに有利であることが判った。
特にBET比表面積が30m2/g~90m2/gの範囲にあり、370nmの光透過率Xが20%以上であり、1000nmの光透過率Yが35%以下であって、1000nmの光透過率Yに対する370nmの光透過率X(X/Y)が1.1以上である実施例1~6の最終製品は、本発明の第2の観点の要件を満たしており、可視光線の遮光性能が更に高く、紫外線を透過するためパターニングに更に有利であることが判った。
本発明の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス、イメージセンサー用遮光材、光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター、黒色フィルム等に利用することができる。

Claims (13)

  1. 水溶性アルミニウム化合物由来の酸化アルミニウム系組成物が粉末表面に部分的に付着し、前記粉末の全量を100質量%とするとき、アルミニウムを1質量%を超え15質量%以下の割合で含有し、BET法により測定される比表面積が30m2/g~90m2/gであることを特徴とする酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末。
  2. 粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、370nmの光透過率Xが20%以上であり、1000nmの光透過率Yが35%以下であって、前記1000nmの光透過率Yに対する前記370nmの光透過率X(X/Y)が1.1以上である請求項1記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末。
  3. 酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末と、前記酸化ジルコニウムの2.0倍モル~6.0倍モルの金属マグネシウム粉末と、前記酸化ジルコニウムの0.3倍モル~5.0倍モルの酸化マグネシウム粉末とを、混合して混合物を得た後、テルミット法により前記混合物を窒素ガス雰囲気下、700℃~1100℃の温度で30分間~180分間焼成することにより、前記酸化ジルコニウム粉末を還元して、請求項1又は2記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を製造する方法。
  4. 前記酸化アルミニウム系組成物により被覆された酸化ジルコニウム粉末が、酸化ジルコニウム粉末を水に分散した酸化ジルコニウムスラリーに水溶性アルミニウム化合物を添加混合して混合液を得て、前記混合液にアルカリ又は酸を添加混合して室温~80℃の温度で少なくとも1時間保持した後、前記混合液を固液分離し乾燥することにより製造される請求項3記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法。
  5. 前記水溶性アルミニウム化合物が水に溶解すると酸性になるアルミニウム化合物であって、前記混合液にアルカリを添加混合する請求項4記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法。
  6. 前記水溶性アルミニウム化合物が水に溶解するとアルカリ性になるアルミニウム化合物であって、前記混合液に酸を添加混合する請求項4記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末の製造方法。
  7. 請求項1又は2記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末が溶剤又はモノマー化合物に分散した黒色分散液。
  8. 請求項1又は2記載の酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として含む黒色感光性組成物。
  9. 請求項8記載の黒色感光性組成物を用いて得られた黒色パターニング膜。
  10. 請求項9記載の黒色パターニング膜を用いて得られたブラックマトリックス。
  11. 請求項9記載の黒色パターニング膜を用いて得られた遮光材。
  12. 請求項9記載の黒色パターニング膜を用いて得られた遮光フィルター。
  13. 支持フィルムと、この支持フィルム上に請求項9記載の黒色パターニング膜とを備えた黒色フィルム。
JP2021157334A 2021-09-28 2021-09-28 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法 Pending JP2023048173A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021157334A JP2023048173A (ja) 2021-09-28 2021-09-28 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021157334A JP2023048173A (ja) 2021-09-28 2021-09-28 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023048173A true JP2023048173A (ja) 2023-04-07

Family

ID=85780215

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021157334A Pending JP2023048173A (ja) 2021-09-28 2021-09-28 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023048173A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3521242B1 (en) Zirconium nitride powder and method for producing same
EP3636591B1 (en) Zirconium nitride powder and production method therefor
EP3546426B1 (en) Black-film-forming mixed powder and production method therefor
WO2019031246A1 (ja) 電磁波吸収透明基材
JP3444655B2 (ja) 複合導電性粉末及び導電膜
JP2009161808A (ja) 銀微粉、銀インクおよび銀塗料ならびにそれらの製造法
JP7181827B2 (ja) アルミナにより被覆された窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
WO2019130772A1 (ja) 黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法
EP4043400A1 (en) Bismuth sulfide particles, method for producing same, and use of same
EP1491503B1 (en) Metal oxide particle comprising the metals tin, zinc and antimony and process for producing same
JP5292809B2 (ja) 超微粒子硫酸バリウム、水性塗料組成物及び水性インキ組成物
JP2023048173A (ja) 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
WO2023053809A1 (ja) 酸化アルミニウム系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
JP2010168254A (ja) 紫外線遮蔽剤、化粧料及び微細針状酸化亜鉛
JP2005008515A (ja) 金属酸化物粒子及びその製造方法
JP2023132124A (ja) 窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
JP2023107263A (ja) 亜鉛系組成物含有窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
JP7529510B2 (ja) 窒化ジルコニウム粉末及びその製造方法
JP5304306B2 (ja) 紫外線カットガラス用塗料及び紫外線カットガラス
WO2024106401A1 (ja) 酸化チタン粒子、分散液、塗膜形成用塗布液、塗膜および塗膜付基材
JP2024025905A (ja) 窒化ジルコニウム粉末、窒化ジルコニウム粉末の製造方法、黒色分散液、黒色ペースト、感光性黒色膜形成用組成物、紫外線硬化型黒色接着剤、黒色膜、黒色成形体
JP4171871B2 (ja) 導電性酸化物粒子及びその製造方法
JP5288848B2 (ja) 金呈色用顔料および金呈色用顔料の製造方法
WO2022210031A1 (ja) 硫化ビスマス粒子及びその製造方法並びにその用途
JPH0558629A (ja) ペロブスカイト型鉛酸化物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20220427

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240924