JP2023042761A - 抗ウイルス性編織物 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便に製造することができ、かつ初期だけでなく洗濯後でも良好な抗ウイルス性能を有する抗ウイルス性編織物を提供する。【解決手段】セルロース繊維を50重量%以上含む編織物であって、編織物にベンゼンスルホン酸化合物が付着していることを特徴とする抗ウイルス性編織物。セルロース繊維は、親水性ビニル系モノマーが5~40重量%グラフト重合された改質セルロース繊維を10~50重量%含むことが好ましい。ベンゼンスルホン酸化合物がアルキルベンゼンスルホン酸化合物であり、アルキルベンゼンスルホン酸化合物のアルキル基の炭素数が10~15であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、簡便に製造でき、洗濯後でも優れた抗ウイルス性を発現できる抗ウイルス性編織物に関する。
ウイルス感染は、ウイルス感染者から放出されたウイルスを含む飛沫(くしゃみ等)に直接接触する場合のみならず、ウイルス感染者が触れた衣服やタオルなどに接触(間接接触)することによっても生じる。例えばウイルス感染を防止する手段として、一般的にマスクが使用されているが、使用時間が長くなると、マスクのフィルター部にウイルスが濃縮された状態となるため、マスクの脱着時にマスク本体に触れるとウイルスが手に付着し、その手でタオルや衣服に触れることによって、ウイルスがタオルや衣服に付着する。そして、第三者が該ウイルス付着箇所に触れると、手にウイルスが付着し、二次感染を引き起こす。
こうした問題に鑑み、ウイルスを撲滅するあるいはウイルスの増殖を抑制する技術が各種提案されている。例えば、銀を利用するもの(特許文献1、2参照)、4級アンモニウムを利用するもの(特許文献3、4参照)、金属ピリチオンを利用するもの(特許文献5、6参照)、カルボキシル基を有する重合体を使用するもの(特許文献7参照)、カルボキシル基を有する重合体とスルホン酸基を有する重合体の複合物を使用するもの(特許文献8参照)などを挙げることができる。
しかしながら、銀を使用するものは使用している際に変色する、4級アンモニウムを使用するものは高温での安定性に劣る、金属ピリチオンを使用するものは抗菌性が高いものの抗ウイルス性が不十分である、カルボキシル基を有する重合体を使用するものは製品への加工工程で使用される薬剤により性能が低下することがあるといった問題がある。一方、カルボキシル基を有する重合体とスルホン酸基を有する重合体の複合物を使用するものは前述のような問題は起こりにくいが、重合体の化学変性又は重合体へのグラフト重合によってカルボキシル基及びスルホン酸基を重合体に導入することが必要であり、製造工程が複雑で安定生産やコスト面などに問題があった。
国際公開第2005/083171号公報 特開平11-19238号公報 特開2008-115506号公報 特開2001-303372号公報 特開2006-9232号公報 特開2005-281951号公報 特開2013-147774号公報 特開2017-36431号公報
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、簡便に製造することができ、かつ初期だけでなく洗濯後でも良好な抗ウイルス性能を有する抗ウイルス性編織物を提供することにある。
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、セルロース繊維を含む編織物にベンゼンスルホン酸化合物を付着することにより、ベンゼンスルホン酸化合物がセルロース繊維に強力に結合し、洗濯前の初期だけでなく洗濯後でも、良好な抗ウイルス性能を有する編織物が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下の(1)~(9)の構成により達成されるものである。
(1)セルロース繊維を50重量%以上含む編織物であって、編織物にベンゼンスルホン酸化合物が付着していることを特徴とする抗ウイルス性編織物。
(2)セルロース繊維が、親水性ビニル系モノマーが5~40重量%グラフト重合された改質セルロース繊維を10~50重量%含むことを特徴とする(1)に記載の抗ウイルス性編織物。
(3)ベンゼンスルホン酸化合物がアルキルベンゼンスルホン酸化合物であり、アルキルベンゼンスルホン酸化合物のアルキル基の炭素数が10~15であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗ウイルス性編織物。
(4)ベンゼンスルホン酸化合物が、下記一般式(I)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物:
Figure 2023042761000001
式中、Rは炭素数10~15のアルキル基を表し、Mn+はn価カチオンを表し、nは1又は2である。
(5)ベンゼンスルホン酸化合物が、下記式(II)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物:
Figure 2023042761000002
式中、R,Rは、各々独立して炭素数10~15の直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基から選択され、各mは、独立して0又は1であり、各Mは、独立して水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択され、式(II)の化合物が少なくとも1個のスルホナート基を含むことを条件として各wは、独立して0又は1である。
(6)編織物にカチオン系アミン化合物がさらに付着していることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物。
(7)カチオン系アミン化合物が、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、モノアリルアミン塩酸塩重合物、ジアリルアミン塩酸塩重合物、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする(6)に記載の抗ウイルス性編織物。
(8)SEKマーク繊維製品の洗濯方法(2020年10月30日改訂版・文書番号JEC326)に従い、標準洗濯法(JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施した後の編織物の抗ウイルス性が3.0以上であることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物を使用した繊維製品であって、寝具、衣料品、雑貨、内装材、医療用品、又はインテリア用品から選択される繊維製品。
本発明の抗ウイルス性編織物は、セルロース繊維を含む編織物に抗ウイルス性のベンゼンスルホン酸化合物を付着させるだけで製造できるため、化学変性又はグラフト重合によって抗ウイルス性化合物基を導入する従来の方法と異なり、抗ウイルス性編織物を簡便な方法で製造することができる。特に、本発明の抗ウイルス性編織物は、編織物を構成するセルロース繊維とベンゼンスルホン酸化合物が強固に結合できるため、洗濯等の外部からの作用を受けても、ベンゼンスルホン酸化合物が編織物から脱落しにくく、高いレベルの抗ウイルス性を維持することができる。従って、本発明の抗ウイルス性編織物は、衣料品、寝具、インテリア用品、内装材、医療用品をはじめ、様々な用途、分野の製品に使用して、高いレベルの抗ウイルス性能を付与することができる。
図1は、実施例で使用した編物のスムース、天竺、織物の2/1ツイルの組織図を示す。なお、2/1ツイルの組織図中、灰色の升は経糸を表わし、白色の升は緯糸を表わす。
本発明の抗ウイルス性編織物は、セルロース繊維を含む編織物にベンゼンスルホン酸化合物を付着させてなるものである。
本発明の編織物において使用されるセルロース繊維は、セルロース骨格の高分子構造を持つ繊維であり、例えば木綿、麻等の天然セルロース繊維、リヨセル、ビスコースレーヨン、ポリノジック、ハイウェットモジュラス等の再生セルロース(溶剤紡糸セルロースを含む)、銅アンモニアレーヨン、ジアセテート、トリアセテート等の半合成繊維が挙げられる。このうち特に好ましいのは、木綿と再生セルロースである。
セルロース繊維が木綿の場合、有効繊維長が35~45mmの超長綿を含むことが好ましい。有効繊維長は、より好ましくは37~43mm、特に好ましくは40~43mmである。例えばアップランド綿やオーストラリア綿のような中繊維綿、スーピマ綿やGIZA45、スビン綿、新彊綿、海島綿等の超長綿が使用可能である。また、セルロースがレーヨン等の化学繊維である場合は、繊維のカット長は30~55mmとすることが好ましい。より好ましくはカット長は、35~48mmである。この範囲であれば、一般的な綿紡績の設備を使って紡績糸を作りやすい。レーヨンとしては、モダールが好ましい。
本発明において使用されるセルロース繊維は、親水性ビニル系モノマーが5~40重量%グラフト重合された改質セルロースを10~50重量%含むことが好ましい。セルロース繊維を親水性ビニル系モノマーで改質することで、消臭や、吸放湿性、pHコントロール性等の各種機能をセルロース繊維に付与することができる。更に、このような改質セルロース繊維を用いることで、編織物の抗ウイルス性の洗濯耐久性を高めることが可能となる。親水性ビニル系モノマーとは、分子構造内に重合性のビニル基を有し、且つカルボン酸および/またはその塩を有するモノマーであり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸およびこれらの金属塩等が挙げられる。これらの中では、グラフト重合性の点でメタクリル酸およびアクリル酸が好ましい。また、これらのモノマーは単独もしくは2種以上を使用しても良い。また、カルボン酸以外のビニル系モノマーを含んでも構わない。
セルロース繊維における親水性ビニル系モノマーのグラフト率は5~40%であることが必要である。グラフト率の下限は10%であることが好ましく、15%であることがより好ましい。また、グラフト率の上限は35%であることが好ましく、30%であることがさらに好ましい。グラフト率を上記範囲とすることによって、洗濯耐久性に優れた抗ウイルス性を示すことができる。グラフト率が上記範囲未満では、未洗濯で優れた抗ウイルス性が得られたとしても、繰返し洗濯により徐々に抗ウイルス性が低下する場合がある。また、上記範囲を超えると、セルロース繊維の硬化や強伸度の低下が起こり、後の紡績工程の工程通過性が悪くなる場合がある。なお、このグラフト率は下記式で求めることができる。
グラフト率(%)=(重合したグラフトポリマーの重量)/(重合前のセルロース繊維の重量)×100(但し、この重量は絶乾時重量である。)
本発明の抗ウイルス性編織物では、上記のセルロース繊維を他の汎用繊維と混用して編織物にしてもよい。混用形態としては、混繊、混紡、交撚、交織、交編等の方法を用いることができるが、本発明では混紡して紡績糸を作成し、この紡績糸を用いて編織物を作成することが好ましい。他の混用繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、半合成繊維、シルク、羊毛等の天然繊維などを挙げることができる。但し、本発明の抗ウイルス性編織物中のセルロース繊維の含有量は、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。含有量が上記範囲未満であると、付着したベンゼンスルホン酸化合物が編織物から脱落しやすく、この化合物の本来の抗ウイルス性を発揮できないおそれがある。
本発明の抗ウイルス性編織物に使用する紡績糸の総繊度は、特に限定しないが、英式綿番手15~100番手(70~400dtex)であることが好ましい。衣料用途の場合では20~80番手がより好ましい。中でも、インナー用途の場合は、15~50番手がさらに好ましく、衛生材料(マスク)用途の場合は、50~80番手にすることがさらに好ましい。上記範囲未満では、生地が厚くなりすぎることと、編織物表面の凹凸が大きくなることで抗ピリング性や着心地が低下しやすい。上記範囲を超えると、用途によっては編織物の強力が低くなり過ぎる場合がある。
本発明の抗ウイルス性編織物に使用する紡績糸の繊維長(化学繊維はカット長、天然繊維は有効繊維長)は、紡績糸の毛羽数や毛羽絡み度合、風合、糸質面から28~51mmとするのが好ましい。より好ましくは33~42mmである。繊維長が上記下限に満たない場合には、紡績品位が悪くなり、上記上限を超える場合には、通常の紡績設備では紡績することができず、ローラー間のゲージ変更やパーツ変更などの紡績設備の改造が必要となるおそれがある。木綿を用いる場合、例えば、15~40番手の糸までは、有効繊維長が22~28mmのアップランド綿やオーストラリア綿のような中繊維綿、50~100番手の糸には、有効繊維長が32~41mmのスーピマ綿やGIZA45、スビン綿、新彊綿、海島綿等の超長綿を含むことが好ましい。ポリエステル繊維等の化学繊維の場合は、カット長が38mm程度のものが好ましい。
紡績糸の紡績方法としては、例えば、リング紡績、オープンエンド紡績、結束紡績(例えば、ムラタボルテックススピナー)、等の各種方法が挙げられる。中でも、紡績糸の表面毛羽を後述する適正な数に調整しやすく、風合いも良いことから、リング紡績が好ましい。より好ましくはコーマ糸である。また、紡績糸を前述した各種方法で精紡する前に、一般的な方法により、混打綿、カード、コーマ、練条、粗紡等の各種処理を施すことができる。
本発明の抗ウイルス性編織物に使用する紡績糸の作成において上記のセルロース繊維を主体とした原綿を使用する場合には、まず原綿の繊維塊を開き、原綿から大きい雑物を落とす混打綿工程、繊維を一本、一本に分離し、その中に含まれている雑物や短い繊維を取り除き、残った長い繊維をできるだけ平行に揃えて集束し、紐状(カードスライバー)にする梳綿工程、さらに短い繊維を徹底的に取り除き、残った長い繊維を集束し、紐状(コーマスライバー)にする精梳綿工程、コーマスライバーを引き伸ばしながら繊維を真っ直ぐに伸ばし、長さ方向の太さむらを無くし、紐状(練条スライバー)にする練条工程を施し、得られた練条スライバーに撚りをかけながら繊維相互の滑脱を防ぎ、ボビンに捲き取る粗紡工程を通過させて粗糸を形成する。セルロース繊維以外の他の繊維を併用する場合には、混打綿工程や練条工程などにおいて加えることが望ましい。得られた粗糸を精紡機にて精紡することで最終的に紡績糸(コーマ糸)が生産される。
紡績糸の撚係数は、2.8~4.5であることが好ましい。より好ましくは3.0~4.0である。撚係数が上記範囲にあると、風合いが柔らかく、かさ高な編織物にすることができる。撚係数が上記範囲未満であると、糸の強度が低くなり、編織物の生産性が低下したり、編織物強度が目的の用途に適さなくなる場合がある。撚係数が上記範囲を超える場合は、編織物の風合いが硬くなり過ぎたり、斜行が起こる場合がある。撚係数Kは、JIS-L1095-9.15.1 A法に準じて撚り数を求め、この撚り数から下記式に基づいて算出される。
撚係数K=[T]/[NE]1/2
上記式中、[T]は撚り数(回/2.54cm)、[NE]は英式綿番手である。
本発明の抗ウイルス性編織物では、ベンゼンスルホン酸化合物が編織物に付着されていることを特徴とする。ベンゼンスルホン酸化合物は、スルホン酸系であることによってセルロース繊維と強く結合し、従って消費段階の洗濯等の処理によっても脱落しにくく、繊維上に多く残留することができるため、抗ウイルス性の洗濯耐久性が維持されやすい。
ベンゼンスルホン酸化合物は、ベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる。ベンゼンスルホン酸化合物は、アルキルベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれるアルキルベンゼンスルホン酸化合物であることが好ましい。また、アルキルベンゼンスルホン酸化合物は、アルキル基の炭素数が10~15であることが好ましく、12~14であることがより好ましい。アルキル基は親油性が高いため、ウイルスのエンベローブ脂質膜との親和性が高く、ウイルスと接触した際にエンベロープ脂質膜の構造を不安定化させ、抗ウイルス性に寄与することができる。
ベンゼンスルホン酸化合物の好ましい例としては、下記一般式(I)で示される構造を持つ化合物が挙げられる:
Figure 2023042761000003
式中、Rは炭素数10~15のアルキル基を表し、Mn+はn価カチオンを表し、nは1又は2である。
一般式(I)中、Rのアルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってよいが、生分解性を良好とするためには直鎖が好ましい。より好ましいアルキル基の炭素数は12~14である。また、Mは、n価カチオンであり、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択される。
一般式(I)の構造を持つ化合物としては、直鎖型のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)や、分岐型のアルキルベンゼンスルホン酸とその塩(ABS)が挙げられる。代表的な市販品としては、例えば、テイカ製 テイカパワーシリーズ、ライオンスペシャルティケミカルズのライポンシリーズがある。具体的には、テイカワパワーB120、B121、ライポンLW-250、LH-900等がある。
ベンゼンスルホン酸化合物のさらに好ましい例としては、下記一般式(II)に示される構造を持つ化合物、特にアルキルジフェニルオキシドスルホナートが挙げられる:
Figure 2023042761000004
式中、R,Rは、各々独立して炭素数10~15の直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基から選択され、各mは、独立して0又は1であり、各Mは、独立して水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択され、式(II)の化合物が少なくとも1個のスルホナート基を含むことを条件として各wは、独立して0又は1である。
一般式(II)の構造を持つ化合物の製造方法は、従来から良く知られており、例えば米国特許第3,264,242号、第3,634,272号、第3,945,437号、第2,990,375号、第5,015,367号に開示されている。代表的な市販品としては、概してモノアルキル、モノスルホナート、ジアルキル又はジスルホナートである。ただし、単体に単離されたものは少なく、これらの混合物が販売されている。本発明では、モノアルキル化の百分率割合が75~95%であるものを便宜上モノアルキルジフェニルオキシドスルホナートとして扱う。市販品としては、例えば、ナトリウム(直鎖デシル)ジフェニルオキシドスルホナート(ダウケミカル製DOWFAX(商標)Ag);ナトリウム(直鎖デシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)Ag-D);ナトリウム(直鎖ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(実験用界面活性剤XUS8174.00);ナトリウム(ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)2A1);ナトリウム(分枝ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)2A1-D)、ナトリウム(線状ヘキサデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)Detergent)、ナトリウム(線状ヘキサデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(ダウケミカル製 DOWFAX(商標)Detergent-D)などが例示されるが、これらの中でも洗濯後の残留性が高いものがよく、(直鎖ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート、別名ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS/CAS.28519-02-0)が特に好ましく用いられる。
さらに、本発明の抗ウイルス性編織物では、硫黄元素の含有量が好ましくは0.02~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらに好ましくは0.1~2重量%である。硫黄元素は、抗ウイルス性編物に付着したベンゼンスルホン酸化合物に由来するので、硫黄元素の含有量は、本発明の抗ウイルス性編織物中のベンゼンスルホン酸化合物の含有量の指標となるものである。硫黄元素の含有量が上記範囲未満の場合には、ベンゼンスルホン酸化合物の含有量が少ないために十分な抗ウイルス性能が得られ難くなり、上記範囲を超える場合には、べたつきや粉末が発生しやすい。
本発明の抗ウイルス性編織物は、セルロース繊維に強固に付着したベンゼンスルホン酸化合物がウイルスのエンベローブ脂質膜の構造を不安定化させることで、ウイルスの構造に対して強力に不可逆的変化を引き起こすことができる。
本発明の編織物が編物の場合は、丸編のシングルニットでもダブルニットでも、経編みのトリコット、ラッシェルのいずれでも構わないが、好ましくは丸編みである。。編組織としては、天竺、カノコ、サッカー、片畦編、両畦編、フライス、2×1、2×2、3×3等のゴム編などが挙げられるが、天竺、、カノコ、又はフライスが好ましい。ウレタン繊維のベアヤーンやFTY(フィラメントツイステッドヤーン)が添え糸編みや交編されていても構わない。本発明の編織物が織物の場合、織組織は特に限定されるものではなく、平織、綾織(ツイル)、朱子織、ドビー織、二重織、三重織などが採用できる。本発明の編織物にあっては、単層又は二層以上の構造を有することが好ましい。
本発明の編織物の密度は、生地の用途に応じて適宜調整するとよいが、編物の場合、コース密度は、15~60本/2.54cmが好ましく、より好ましくは30~50本/2.54cmである。また、ウエール密度は、15~55本/2.54cmが好ましく、より好ましくは25~50本/2.54cmである。また、織物の場合、経糸密度は、90~200本/2.54cmが好ましく、より好ましくは110~180本/2.54cmである。また、緯糸密度は、50~130本/2.54cmが好ましく、より好ましくは60~115本/2.54cmである。
本発明の編織物が編物の場合、面積密度(2.54cmあたりのタテループの密度とヨコループの密度を乗じた単位面積当たりのループ密度)は、染色加工後の仕上がった状態で800~3500にすることが好ましい。より好ましくは1000~2500である。本発明の編織物が織物の場合、単位面積内の経緯糸の交点合計が2500~20000個/(2.54cm)にすることが好ましい。より好ましくは5000~20000個/(2.54cm)である。この範囲の面積密度又は交点合計にすると、抗ウイルス性の洗濯耐久性が高い編織物を安定的に得ることができる。合計密度が上記範囲未満であると、洗濯後の寸法安定性が低下しやすくなる。また、毛羽立ち易くなるためか、洗濯耐久性が若干低下する傾向にある。合計密度が上記範囲を越えると、風合いが硬くなったり、通気性が低下しやすくなり、着用快適性が低下しやすくなる。
本発明の編織物の目付は、80~270g/mであることが好ましい。より好ましくは100~220g/mである。更に好ましくは110~180g/mであることがより好ましい。目付を上記範囲とすることにより、衣料品として好適な編織物にすることができる。
次に、本発明の編織物の染色加工方法について説明する。染色加工の製造過程の各工程においては、従来の綿やレーヨン等のセルロースを混用した編織物の一般的な条件で加工すればよいが、本発明の課題に関わる工程について以下に説明する。
本発明の編織物は、染色加工の任意の工程で、編織物に上述したベンゼンスルホン酸化合物を付着させる。付着させる方法としては、パディング法、浸漬法、スプレー法、印捺法、キスロール法、コーティング法等が挙げられるが、ベンゼンスルホン酸化合物の水溶液に編織物を浸漬して付着させる方法が好ましい。ベンゼンスルホン酸化合物が編織物に存在することで編織物の抗ウイルス性が高まる。
本発明の編織物の抗ウイルス性の洗濯耐久性が高い理由は、ベンゼンスルホン酸化合物の多くが界面活性剤であり、通常は殆どが洗濯で脱落するが、セルロース繊維とベンゼンスルホン酸化合物の親和性が高いため、繰り返し洗濯を受けても繊維中に残留し続けるためと考えられる。また、DPOS及びLASのような特定のベンゼンスルホン酸化合物を使用すると、セルロースへの残留性をさらに高くすることができる。
なお、水溶液におけるベンゼンスルホン酸化合物の含有量は所望量を付与できるように適宜設定すればよいが、編織物の繊維重量に対して0.05~20重量%(%owf)含有する水溶液とすることが好ましい。より好ましくは0.2~10重量%とするのが良い。編織物上のベンゼンスルホン酸化合物の実際の付着量は、編織物からエタノールを溶媒としてベンゼンスルホン酸化合物を抽出して、LC-MS等で抽出液を定量することによって測定することができる。編織物への付着量は、好ましくは0.05~10%owf、より好ましくは0.1~3%owfである。なお、付着手段としては上述のように浸漬、吸尽、噴霧、塗布、印捺などを挙げることができるが、吸尽の場合は、液温は常温から130℃の温度域で加温すると、ベンゼンスルホン酸化合物が糸の内部まで浸透して洗濯耐久性が高まるため好ましい。好ましくは50~70℃程度に加温するのがよい。
本発明の織編物は、無地染めや捺染等の染色を行ってもよいし、染色せずに生成や晒でもよいが、ベンゼンスルホン酸化合物で加工する前後の工程にて、カチオン系アミン化合物を編織物に付着させることが好ましい。カチオン系アミン化合物は、セルロース繊維とベンゼンスルホン酸化合物の両方にイオン結合する。そのため、カチオン系アミン化合物を併用すると、ベンゼンスルホン酸化合物を単独でセルロース繊維に付着させるよりもセルロース繊維への付着力が上がり、更に洗濯耐久性を高めることができる。カチオン系アミン化合物とは、アミン(アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物)のうち、第四級アンモニウム基を含むものであり、具体的には、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、モノアリルアミン塩酸塩重合物、ジアリルアミン塩酸塩重合物等である。例えば、市販品としては、センカ株式会社製の商品名チェーエルカットCF-2、一方社油脂工業株式会社製の商品名パンフィックスHF-2、ニットーボーメディカル株式会社の商品名ダンフィックスRE等が挙げられる。カチオン系アミン化合物を織編物に付着させる方法は、例えば染色品の場合は、染色終了後の染色機中で、カチオン系アミン化合物をセルロース繊維重量当たり0.5~30%owfで40~60℃にて20分間浴中処理を行えばよい。また、晒や生成り等の染色しない場合は、パディング法にて付着させることができる。マングル絞り率が100%の場合なら、パディング浴として5~100g/Lの濃度液を作製して、浸漬後に絞って乾燥させればよい。
また、本発明では、染色加工上りの編織物の抽出液pHは、4~6の範囲の弱酸性に調整されることが好ましい。編織物を弱酸性にする方法として、例えば、蟻酸、シュウ酸、りんご酸、リン酸、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等の無機又は有機酸を適宜濃度を調整した水溶液として、編織物を浸漬すればよい。また、この処理は前述のベンゼンスルホン酸化合物の処理と同時に行ってもかまわない。
本発明の抗ウイルス性編織物は、セルロース繊維とベンゼンスルホン酸化合物の親和性によりセルロース繊維とベンゼンスルホン酸化合物が強く結合しており、そのため、洗濯等の外部からの作用を受けてもベンゼンスルホン酸化合物がセルロース繊維から脱落しにくく、優れた抗ウイルス性能を維持することができる。
かかる本発明の抗ウイルス性編織物の対象となるウイルスは、特に限定されないが、エンベロープを有するウイルスに効果的であり、特にインフルエンザウイルスに対して優れた不活性化効果を示す。
本発明の抗ウイルス性編織物は、洗濯を必要とする用途で抗ウイルス性の効果を強く発揮する。例えば、インナー衣料、アウター衣料、寝具、又は衛生材料の用途が挙げられる。より具体的には、インナー衣料としては、肌着、スポーツシャツ、ブラウス、ワイシャツ、ナイトウエアー、靴下、タイツ、ストッキングなど、アウター衣料では、コート、ジャケット、ズボン、スカート、スーツ、白衣、作業着、セーター、トレーナーなどがある。また、衛生材料では、衛生マスク、サポーターなど、寝具では、シーツ、布団カバー、枕カバー、或いは毛布などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をより具体的に示すが、本発明は、これらによって制限されるものではない。なお、実施例中、部及び百分率は、特に断りのない限り重量基準で示す。また、実施例・比較例で用いた特性の評価方法は、以下の通りである。
<抗ウイルス性試験>
JIS-L1922:2016.繊維製品の抗ウイルス性試験方法に従って評価した。試験対象ウイルスはインフルエンザウイルス(H3N2、H1N1)とし、宿主細胞はMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)とした。
試料(0.4g)をバイアル瓶に入れ、ウイルス液0.2mlを接種し、25℃で2時間放置する(作用)。2.SCDLP培地20mlを加え、試料からウイルスを洗い出し、洗い出した液のウイルス感染価(感染性ウイルス量)を、プラーク法又はTCID50法により測定する。
下記式の抗ウイルス活性値が3.0以上であれば十分な抗ウイルス性の効果ありと判断する。
抗ウイルス活性値=log(対照試料・2時間作用後感染価)-log(加工試料・2時間作用後感染価)または
抗ウイルス活性値=log(標準布・接種直後感染価)-log(加工試料・2時間作用後感染価)
<洗濯方法>
一般財団法人繊維評価技術協議会製品認証部発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」(2020年10月30日改定版・文書番号JEC326)に従い、下記の条件で洗濯処理を実施した。
・標準洗濯法(1995年度版JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施し、乾燥は吊り干しで行い、洗濯10回行った評価試料を作成した。
<単繊維繊度>
化学繊維については、JIS-L1015-8.5.1正量繊度A法に基づいて単糸繊度(単繊維繊度)を求めた。天然繊維については、JIS-L1019-7.4.2ソータ法による方法に基づいて単繊維繊度を求めた。
<繊維長>
化学繊維の繊維長は、JIS-L1015-8.4.1ステープルダイヤグラム法(A法)に基づいて平均繊維長を求めた。天然繊維の繊維長は、JIS-L1019-7.2.1ダブルソータ法(A法)に基づいて有効繊維長を求めた。
<繊維の糸混率>
JIS-L1030-2 5.9.2(正量混用率)に準じて測定した。
<英式綿番手>
JIS-L1095:2010 9.4.2の方法に従って見掛けの綿番手(Ne)を測定した。
<撚係数>
JIS-L-1095:2010 9.15.1の撚数A法に準拠して撚回数を測定して、下記式に当てはめて撚係数(K)を求めた。
撚係数(K)=インチ当たりの撚回数(T)/(英式綿番手)1/2
[実施例1]
アメリカ産スーピマ綿(有効繊維長35mm)をOHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、原織機製練条機に2回通して210ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して80ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いでリング精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手で60番手の紡績糸(撚係数3.5)を作製した。該紡績糸を用い福原精機製ダブルニット機(釜径:33インチ、ゲージ:30本/インチ)にて、図1の上側の組織図に示されるようなスムースを編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白-染色を実施した。その後、ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)(CAS.28519-02-0)が3.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした(浴比1:15)。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は44コース/インチ、47ウエール/インチ、目付144g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.3、洗濯10回後3.4であった。
[実施例2]
アメリカ産スーピマ綿(有効繊維長35mm)をOHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけて繊維長の長いものだけを残し、原織機製練条機に2回通して300ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して110ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約36倍のドラフトをかけ、英式綿番手40番手の紡績糸を(撚係数3.7)を作製した。該紡績糸を用い福原精機製シングルニット機(釜径:26インチ、ゲージ:28本/インチ)にて、図1の中央の組織図に示されるような天竺を編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白-染色を実施した。その後、ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)(CAS.28519-02-0)が3.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は42コース/インチ、47ウエール/インチ、目付128g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.3、洗濯10回後3.3であった。
[実施例3]
スーピマ綿をレンチング製マイクロモダール(1.0デシテックス、繊維長38mm)に代えて、100重量%にて実施例1と同様に紡績工程を通して英式番手60番手、撚係数3.7の紡績糸を得た。該紡績糸を用い福原精機製ダブルニット機(釜径:33インチ、ゲージ:30本/インチ)にてスムースを編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練-染色を実施した。その後、ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)が3.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は42コース/インチ、44ウエール/インチ、目付131g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.2、洗濯10回後3.6であった。
[実施例4]
実施例1と同じ紡績糸を用い、実施例1と同じ編成条件にてスムースを編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白-染色を実施した。その後、ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)が6.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は44コース/インチ、47ウエール/インチ、目付145g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.6、洗濯10回後3.8であった。
[実施例5]
実施例1と同じスーピマ綿を100kg用意して、鈴木製作所製オーバーマイヤー染色機中で精練・漂白処理を行った後、引き続きオーバーマイヤー染色機で、下記処方1の水溶液にて80℃で2時間処理した。その後、湯洗、水洗して繊維と反応していないモノマー及びオリゴマーを除去した。その後、炭酸ナトリウムを用いて中和処理を行った上で更に水洗を行った。最後の水洗液のpHは6.5であった。得られた改質繊維のグラフト率は18.3%であった。
(処方1)
30%過酸化水素: 4.5 %owf.
硫酸第一鉄アンモニウム六水和物: 0.45%owf.
メタクリル酸: 39.0 %owf.
キレストNTB: 0.45%owf.
硫酸(60°Be’): 0.72%owf.
得られた改質綿を混打綿機、カード機、コーマ機を経て改質綿のコーマスライバーを得た。また、改質していないスーピマ原綿を同じく混打綿機、カード機、コーマ機を経て、未改質綿のコーマスライバーを得た。この改質綿のコーマスライバー30重量%と未改質綿のコーマスライバー70重量%とを合わせて常法通りに練条・粗紡・精紡工程を通して英式番手60番手、撚係数3.5の紡績糸を得た。該紡績糸を用い福原精機製ダブルニット機(釜径:33インチ、ゲージ:30本/インチ)にてスムースをドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)が3.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は44コース/インチ、48ウエール/インチ、目付148g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.3、洗濯10回後4.2であった。
[実施例6]
実施例1と同じ紡績糸を用い、実施例1と同じ編成条件にてスムースを編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白-染色を実施した。その後、直鎖アルキル(炭素数12~14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)(CAS.69669-44-9)が5.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は44コース/インチ、47ウエール/インチ、目付145g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.2、洗濯10回後3.0であった。
[実施例7]
一般綿(スーピマ)を100重量%で使用し、常法の紡績工程を通して英式番手60番手、撚係数4.0の紡績糸を得た。この紡績糸を整経・糊付し、また緯糸にも同じ紡績糸を用いてエアジェット織機で生機を製造した。なお、この織物の織組織は、図1の下側の組織図に示されるような2/1ツイル(右上がり)とし、経糸密度を150本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmとした。この生機を通常の綿織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜処理を行ない、引続き精練・漂白処理を行った。その後、反応染料にて染色後、洗浄処理を行った。その後、更にドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)が3.0%owfの水溶液にて、処理時間60℃,20分の浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。出来上った生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであった。抗ウイルス活性値は初期4.3、洗濯10回後3.6であった。
[実施例8]
実施例1と同じ紡績糸を用い、実施例1と同じ編成条件にてスムースを編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白-染色を実施した。染色・洗浄後に、染色機にチューエルカットCF-2(センカ社製:カチオン系アミン化合物 )20g/l(20%owfに相当)の浴濃度で40℃×20分処理して、編物を染色機から取り出し、脱水・乾燥した。その後は実施例1と同様に、ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)が3.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は44コース/インチ、47ウエール/インチ、目付145g/mであった。抗ウイルス活性値は初期4.4、洗濯10回後4.3であった。
[実施例9]
アメリカ産スーピマ綿(有効繊維長35mm)を70重量%とポリエステル短繊維(繊度1.5dtex、繊維長38mm)を30重量%の割合で混綿して、一般的な紡績の前紡工程(混綿-梳綿-練条-粗紡)を経て、80ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いでリング精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手で60番手の紡績糸(撚係数3.7)を作製した。該紡績糸を用い福原精機製ダブルニット機(釜径:33インチ、ゲージ:30本/インチ)にてスムースを編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白-染色を実施した。その後、ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)(CAS.28519-02-0)が3.0%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした(浴比1:15)。最後にファイナルセットして仕上げた。編物の密度は44コース/インチ、46ウエール/インチ、目付138g/m2であった。抗ウイルス活性値は初期3.8、洗濯10回後3.0であった。
[比較例1]
染色後のDPOS処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、編地を作製して仕上げた。仕上がった編物の密度は44コース/インチ、46ウエール/インチ、目付142g/mであった。抗ウイルス活性値は初期0.8、洗濯10回後0.6であった。
[比較例2]
ポリエステル短繊維として東洋紡製トライクール(1.3デシテックス、38mm)を100重量%で使用し、常法の紡績工程を通して英式番手40番手、撚係数3.7の紡績糸を得た。該紡績糸を用い福原精機製ダブルニット機(釜径:26インチ、ゲージ:28本/インチ)にて天竺を編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練-染色を実施した。その後、ビクセンAG-25(日華化学製)(DPOSの有効成分30%)が10%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編織物の密度は40コース/インチ、42ウエール/インチ、目付110g/mであった。抗ウイルス活性値は初期3.6、洗濯10回後0.5であった。
[比較例3]
日本エクスラン工業製のレギュラータイプのアクリル短繊維(繊度1.5dtex、繊維長38mm)を100重量%で使用し、常法の紡績工程を通して、英式番手40番手、撚係数3.7の紡績糸を得た。該紡績糸を用い福原精機製ダブルニット機(釜径:26インチ、ゲージ:28本/インチ)にて天竺を編成した。この生機を丸編みの一般的な工程条件にて、精練-染色を実施した。その後、ビクセンAG-25(日華化学製)(DPOSの有効成分30%)が10%owfとなる浴中で60℃×20分にて処理をした。最後にファイナルセットして仕上げた。編織物の密度は43コース/インチ、45ウエール/インチ、目付130g/mであった。抗ウイルス活性値は初期3.7、洗濯10回後0.5であった。
実施例1,3,4,5,6,8,9及び比較例1のスムース編地を身生地に使って部屋着(アウター衣料)を作製した。また、実施例2及び比較例2,3の天竺編地を使って女性用肌着を作製した。さらに実施例7の2/1ツイル織物を使って男性用ドレスシャツを作製した。
上述の実施例1~9および比較例1~3の各編織物の詳細と評価結果を表1に示す。
Figure 2023042761000005
表1からわかるように、実施例1~9の編物又は織物は、初期だけでなく洗濯10回後においても抗ウイルス活性値が3.0以上の良好な抗ウイルス性能を維持していた。特に、改質されたスーピマ綿を使用した実施例5や、カチオン系アミン化合物での処理を行なった実施例8は、洗濯10回後であっても初期の抗ウイルス性の低下が極めて少なかった。それに対して、ベンゼンスルホン酸化合物を付着していない比較例1は、洗濯前後ともに低いウイルス活性値しか示さなかった。また、ポリエステル繊維に対してベンゼンスルホン酸化合物を付着した比較例2、及びアクリル繊維に対してベンゼンスルホン酸化合物を付着した比較例3は、初期の抗ウイルス性能には優れていたが、洗濯10回後には抗ウイルス性能をほとんど示さず、抗ウイルス性能の洗濯耐久性に劣っていた。
本発明の抗ウイルス性編織物は、セルロース繊維とベンゼンスルホン酸化合物が強固に結合しているため、洗濯等の外部からの作用を受けても、ベンゼンスルホン酸化合物が編織物から脱落しにくく、高いレベルの抗ウイルス性を維持することができる。従って、本発明は、洗濯を必要とする抗ウイルス性繊維製品の分野で極めて有用である。

Claims (9)

  1. セルロース繊維を50重量%以上含む編織物であって、編織物にベンゼンスルホン酸化合物が付着していることを特徴とする抗ウイルス性編織物。
  2. セルロース繊維が、親水性ビニル系モノマーが5~40重量%グラフト重合された改質セルロース繊維を10~50重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス性編織物。
  3. ベンゼンスルホン酸化合物がアルキルベンゼンスルホン酸化合物であり、アルキルベンゼンスルホン酸化合物のアルキル基の炭素数が10~15であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗ウイルス性編織物。
  4. ベンゼンスルホン酸化合物が、下記一般式(I)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物:
    Figure 2023042761000006
    式中、Rは炭素数10~15のアルキル基を表し、Mn+はn価カチオンを表し、nは1又は2である。
  5. ベンゼンスルホン酸化合物が、下記式(II)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物:
    Figure 2023042761000007
    式中、R,Rは、各々独立して炭素数10~15の直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基から選択され、各mは、独立して0又は1であり、各Mは、独立して水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択され、式(II)の化合物が少なくとも1個のスルホナート基を含むことを条件として各wは、独立して0又は1である。
  6. 編織物にカチオン系アミン化合物がさらに付着していることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物。
  7. カチオン系アミン化合物が、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、モノアリルアミン塩酸塩重合物、ジアリルアミン塩酸塩重合物、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の抗ウイルス性編織物。
  8. SEKマーク繊維製品の洗濯方法(2020年10月30日改訂版・文書番号JEC326)に従い、標準洗濯法(JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施した後の編織物の抗ウイルス性が3.0以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載の抗ウイルス性編織物を使用した繊維製品であって、寝具、衣料品、雑貨、内装材、医療用品、又はインテリア用品から選択される繊維製品。
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