JP2023041425A - ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法 - Google Patents

ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023041425A
JP2023041425A JP2021148798A JP2021148798A JP2023041425A JP 2023041425 A JP2023041425 A JP 2023041425A JP 2021148798 A JP2021148798 A JP 2021148798A JP 2021148798 A JP2021148798 A JP 2021148798A JP 2023041425 A JP2023041425 A JP 2023041425A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oxide film
base material
stainless steel
molten metal
tundish
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021148798A
Other languages
English (en)
Inventor
和久 ▲高▼橋
Kazuhisa Takahashi
金雄 佐藤
Kaneo Sato
隆之 辻
Takayuki Tsuji
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Proterial Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Proterial Ltd filed Critical Proterial Ltd
Priority to JP2021148798A priority Critical patent/JP2023041425A/ja
Publication of JP2023041425A publication Critical patent/JP2023041425A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
  • Continuous Casting (AREA)

Abstract

【課題】耐溶損性の高いステンレス部材を提供する。【解決手段】本開示の一態様は、フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材と、母材の表面に配置されたSi酸化膜と、Si酸化膜の表面に配置されたCr酸化膜と、Cr酸化膜の表面に付着したCeO2粒子と、を備えるステンレス部材である。【選択図】図3

Description

本開示は、ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法に関する。
金属線材の製造方法として、鋳型と圧延機とを用いた連続鋳造圧延法が公知である(特許文献1参照)。この方法では、タンディッシュに貯留された溶融金属(つまり溶湯)を鋳型に送り出し、棒状に冷却した後、圧延機によって圧延する。
タンディッシュから鋳型への溶融金属の送り出し量は、タンディッシュ内においてノズルの近傍に配置された調整ピンによって調整される。調整ピンは、一般にステンレス鋼で構成される。
調整ピンは、溶融金属と接触するため溶損し易い。そのため、調整ピンの溶損による製品品質の低下を抑制するために、母材の表面に酸化膜を設けたステンレス部材が開発されている(特許文献2参照)。
特許第3552043号 特開昭63-86826号公報
従来のステンレス部材では、母材の表面に設けられた酸化膜によって母材の溶損が抑制できるが、酸化膜の剥離が発生する可能性がある。そのため、酸化膜の剥離と、酸化膜の剥離に伴う母材の溶損に起因する製品品質の低下が発生するおそれがある。
本開示の一局面は、耐溶損性の高いステンレス部材を提供することを目的とする。
本開示の一態様は、フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材と、母材の表面に配置されたSi酸化膜と、Si酸化膜の表面に配置されたCr酸化膜と、Cr酸化膜の表面に付着したCeO粒子と、を備えるステンレス部材である。
本開示の別の態様は、フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材の表面にCeO粒子を塗布する工程と、CeO粒子が塗布された母材を熱処理する工程と、を備えるステンレス部材の製造方法である。
本開示の別の態様は、タンディッシュに溶融金属を注入する工程と、タンディッシュから溶融金属を鋳型に送り出す工程と、鋳型に注入された溶融金属を冷却して鋳造材を形成する工程と、鋳造材を圧延する工程と、を備える金属線材の製造方法である。送り出す工程では、タンディッシュが有するノズルからの溶融金属の流出量を、タンディッシュ内の溶融金属に浸漬された調整ピンで調整する。
調整ピンは、フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材と、母材の表面に配置されたSi酸化膜と、Si酸化膜の表面に配置されたCr酸化膜と、Cr酸化膜の表面に付着したCeO粒子と、を備える。
図1は、実施形態における金属線材の製造装置の模式図である。 図2は、図1のタンディッシュの構成を示す模式図である。 図3Aは、図2の調整ピンを構成するステンレス部材の模式的な断面図であり、図3Bは、図3Aのステンレス部材の断面写真である。 図4は、実施形態におけるステンレス部材の製造方法のフロー図である。 図5は、熱処理時間と膜厚との関係を示すグラフである。 図6は、実施形態における金属線材の製造方法のフロー図である。 図7A、図7B及び図7Cは、CeO粒子を塗布せずに熱処理を行ったステンレス部材の模式的な断面図であり、図7D及び図7Eは、CeO粒子を塗布して熱処理を行ったステンレス部材の模式的な断面図である。 図8Aは、比較例におけるステンレス部材の模式的な断面図であり、図8Bは、図8Aのステンレス部材の断面写真である。 図9A及び図9Bは、耐溶損性を確認するための試験装置の模式図である。
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す金属線材(つまり荒引線)の製造装置10は、連続鋳造圧延装置(SCR)の一種である。
金属線材の製造装置10は、溶解炉20と、保持炉30と、添加部40と、タンディッシュ50と、調整ピン60(図2参照)と、鋳造機70と、圧延機80と、コイラ90とを備える。
<溶解炉>
溶解炉20は、金属線材の原料となる金属を加熱して溶融させる。金属線材の原料となる金属としては、銅、アルミニウム等が挙げられる。
溶解炉20は、炉本体と、バーナとを有する。溶解炉20は、溶融金属(つまり溶湯)を連続的に生成する。溶解炉20が生成した溶融金属は、上樋25を介して、保持炉30に移送される。
<保持炉>
保持炉30は、溶解炉20が生成した溶融金属を所定の温度で貯留する。保持炉30内の溶融金属は、一定量で下樋35を介してタンディッシュ50に移送される。
<添加部>
添加部40は、保持炉30内の溶融金属に合金成分を添加する。合金成分としては、例えば、錫(Sn)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、銀(Ag)等の金属元素が挙げられる。
添加部40は、例えば、溶融金属に添加される合金成分で構成されたワイヤを溶融金属に投入する機器で構成される。また、添加部40は、下樋35内の溶融金属に合金成分を添加してもよい。
<タンディッシュ>
タンディッシュ50は、鋳造機70に溶融金属を連続的に供給するための貯留槽である。図2に示すように、タンディッシュ50の底面には、内部に貯留された溶融金属Mを鋳造機70に送り出すノズル51(つまりスパウト)が設けられている。
<調整ピン>
調整ピン60は、図2に示すように、タンディッシュ50内に少なくとも一部が配置され、タンディッシュ50内の溶融金属に浸漬されている。
調整ピン60は、軸方向に移動することで、タンディッシュ50のノズル51からの溶融金属Mの流出量を調整する。具体的には、ノズル51への流入口52の近傍に配置された調整ピン60の先端が流入口52の実質的な開口面積を変化させることで、溶融金属Mのノズル51への流入量が調整される。調整ピン60の材質については後述する。
<鋳造機>
図1に示す鋳造機70は、溶融金属を鋳造する鋳型を有する。鋳造機70は、棒状の鋳造材Cを連続的に形成する。
本実施形態の鋳造機70は、ホイール71と、ベルト72とを有する公知のベルトホイール式の鋳造機である。なお、鋳造機70として、双ベルト式の鋳造機が用いられてもよい。
ホイール71は、外周面に溝を有する。ベルト72は、ホイール71の外周面の一部に接触するように循環移動する。ホイール71及びベルト72は、それぞれ、例えば冷水によって冷却される。
タンディッシュ50内の溶融金属は、ノズル51からホイール71の溝とベルト72との間の鋳造空間に注入される。鋳造空間に注入された溶融金属は、ホイール71及びベルト72によって冷却され、棒状に固化する。
<圧延機>
圧延機80は、鋳造機70が鋳造した鋳造材Cを圧延する。圧延機80とコイラ90との間で酸化膜除去などの表面清浄化処理が行われることで、所定の外径(例えば、6mm以上)を有する金属線材Wが連続的に形成される。
<コイラ>
コイラ90は、金属線材Wを連続的に巻き取る。
<調整ピンの材質>
調整ピン60は、図3A,3Bに示すステンレス部材1によって構成されている。ステンレス部材1は、母材2と、Si酸化膜3と、Cr酸化膜4と、CeO粒子5とを備える。なお、図3A,3Bは、ステンレス部材1(つまり調整ピン60)の断面を示している。
(母材)
母材2は、フェライト系ステンレス鋼、又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成されている。
フェライト系ステンレス鋼は、質量%で、Cr:20%以上30%以下、及びSi:0.25%以上2%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である。このようなフェライト系ステンレス鋼としては、例えば、JIS-G-4311:2011に規定されるSUH446が挙げられる。
オーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、Cr:20%以上30%以下、及びSi:0.25%以上2%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である。このようなオーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、JIS-G-4303:2012に規定されるSUS309Sが挙げられる。
母材2のCrの含有量が上記下限よりも小さいと、Cr酸化膜4の成長が不十分となるおそれがある。一方、母材2のCrの含有量が上記上限よりも大きいと、母材2の硬度が高くなることで耐衝撃性が不十分となるおそれがある。
母材2のSiの含有量が上記下限よりも小さいと、Cr酸化膜4の成長が過大となるおそれがある。一方、母材2のSiの含有量が上記上限よりも大きいと、母材2の内部にSi酸化物が生成され易くなるおそれがある。
母材2は、少なくとも溶融金属に浸漬される部位の表面全体が、後述するSi酸化膜3及びCr酸化膜4を含む保護性酸化膜によって被覆されている。
(保護性酸化膜)
保護性酸化膜は、母材2を溶融金属から保護し、母材2の溶融金属への溶損を抑制する。保護性酸化膜は、Si酸化膜3とCr酸化膜4との二層構造を有する。
Si酸化膜3は、ケイ素(Si)の酸化物(例えば、SiO、SiO(クリストバライトなど)等)を主成分とし、残部が不可避的不純物からなる膜である。「主成分」とは、膜において、例えば、85質量%以上含有される成分である。
Si酸化膜3に含有される「不可避的不純物」とは、例えば、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等である。Si酸化膜3に含有されるケイ素の酸化物の含有量は、例えば、85質量%以上である。
Si酸化膜3は、母材2の表面に配置されている。Si酸化膜3は、Cr酸化膜4の母材2に対する密着強度を高める機能を有する。また、Si酸化膜3は、Cr酸化膜4の過度の成長を抑制する機能も有する。
Cr酸化膜4は、クロム(Cr)の酸化物(例えば、Cr、CrO、CrO、CrO、Cr、Cr12、Cr15等)を主成分とし、残部が不可避的不純物からなる膜である。Cr酸化膜4に含有されるクロムの酸化物の含有量は、例えば、98質量%以上である。
Cr酸化膜4に含有される「不可避的不純物」とは、例えば、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、銅(Cu)等である。Cr酸化膜4は、Si酸化膜3の表面に配置されている。溶融金属として溶銅を用いた場合、Cr酸化膜4が溶銅中で安定して存在することで、母材2の溶損が的確に抑制される。
したがって、Cr酸化膜4を有する調整ピン60は、銅線材の製造に好適に使用できる。なお、銅線材の製造工程において、タンディッシュ50内の溶銅の温度は、例えば、1083℃以上1200℃以下であり、酸素濃度は、例えば、100ppm以上450ppm以下である。
保護性酸化膜は、母材2の熱処理によって形成される。保護性酸化膜の厚みは、ステンレス部材1の使用前(つまり、調整ピン60が溶融金属に投入される前)の状態で、例えば0.5μm以上1μm以下である。
保護性酸化膜は、溶融金属中でのSi酸化膜3及びCr酸化膜4の成長によって、ステンレス部材1の使用に伴って厚くなる。Si酸化膜3及びCr酸化膜4は、母材2に含まれるSi及びCrの溶融金属中の酸素との反応によって成長する。
(CeO粒子)
CeO(酸化セリウム)粒子5は、Cr酸化膜4の表面に付着している。CeO粒子5は、母材2の熱処理前に、母材2の表面に塗布される。
熱処理による保護性酸化膜の形成に伴って、CeO粒子5は、ステンレス部材1の最外面であるCr酸化膜4の表面に付着した状態となる。CeO粒子5の最大粒子径は、例えば5μmである。
CeO粒子5の中には、その一部がCr酸化膜4に埋まったものも存在する。ステンレス部材1は、CeO粒子5がCr酸化膜4の表面に付着した状態で使用される。つまり、CeO粒子5は、保護性酸化膜と一体化した状態で溶融金属内に投入される。
<ステンレス部材の製造方法>
図4に、ステンレス部材1の製造方法のフローを示す。本実施形態のステンレス部材の製造方法は、塗布工程S110と、熱処理工程S120と、拭き取り工程S130とを有する。
(塗布工程)
本工程では、母材2の表面に、CeO粒子5を塗布する。CeO粒子5の塗布方法としては、例えば、CeO粒子5を分散させたエタノールを母材2に噴霧する方法が挙げられる。母材2に付着したエタノールは、常温にて蒸発する。
(熱処理工程)
本工程では、CeO粒子5が塗布された母材2を熱処理する。熱処理温度は、例えば、700℃以上1500℃以下である。熱処理時間は、例えば、0.5時間(30分)以上36時間以下である。
熱処理により、母材2に含まれるSiが外部の酸素と反応してSi酸化膜3が形成されると共に、母材2に含まれるCrが外部の酸素と反応してCr酸化膜4が形成される。このとき、CeO粒子5によって、Si酸化物が層状に成長することにより、形成されるSi酸化膜3が薄くなりすぎず、かつ、母材2の表面からSi酸化膜3が剥離しにくくなる。
また、このように形成されるSi酸化膜3によって、Cr酸化膜4の過剰成長が抑えられ、Cr酸化膜4が薄膜化される。図5は、CeO粒子5を塗布した母材(「塗布あり」)と、CeO粒子5を塗布していない母材(「塗布なし」)とに対し、900℃で36時間(「熱処理時間」)の条件で熱処理したときのCr酸化膜の厚み(「膜厚」)の比較結果である。CeO粒子5を塗布した母材では、塗布していない母材に比べて、Cr酸化膜が薄膜化されている。
すなわち、母材2の表面にCeO粒子5が存在することで、熱処理によって形成されるSi酸化膜3が層状となり、母材2に含まれるCrが外部の酸素と反応しにくくなるため、Cr酸化膜4の厚みを小さくすることができる。
(拭き取り工程)
本工程では、熱処理後の母材2及び保護性酸化膜の表面から布等によってCeO粒子5を拭き取る。CeO粒子5の一部は、拭き取り後も保護性酸化膜の表面に残存する。
<金属線材の製造方法>
図6に、金属線材の製造装置10を用いた金属線材の製造方法のフローを示す。本実施形態の金属線材の製造方法は、溶解工程S210と、注入工程S220と、送出工程S230と、鋳造工程S240と、圧延工程S250とを備える。
(溶解工程)
本工程では、溶解炉20において、金属線材の原料となる金属を溶解し、溶融金属を連続的に生成する。
(注入工程)
本工程では、タンディッシュ50に、溶解炉20で生成された溶融金属を連続的に注入する。
(送出工程)
本工程では、タンディッシュ50から溶融金属を連続的に鋳造機70の鋳型に送り出す。本工程では、タンディッシュ50が有するノズル51からの溶融金属の流出量を、タンディッシュ50内の溶融金属に浸漬された調整ピン60で調整する。
(鋳造工程)
本工程では、鋳造機70の鋳型に注入された溶融金属を冷却して鋳造材Cを連続的に形成する。
(圧延工程)
本工程では、圧延機80により鋳造材Cを圧延する。圧延機80とコイラ90との間で酸化膜除去などの表面清浄化処理が行われることで、所定の外径(例えば、6mm以上)を有する金属線材Wが連続的に形成される。
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)CeO粒子5を塗布した状態での熱処理によって形成された層状のSi酸化膜3によって、母材2に含まれる元素の外方拡散と、酸素の母材2への内方拡散とが抑制される。
すなわち、CeO粒子5を塗布せずに熱処理をした場合、図7Aに示すように、母材2とCr酸化膜4との間に粒状のSi酸化物3Aが生成される。このようなステンレス部材が溶融金属に浸漬されると、図7Bに示すように、酸素が母材2の外部から母材2の内部に侵入して拡散する内方拡散と同時に、母材2に含まれる母材元素が母材2の外部側へ拡散する外部拡散が生じる。その結果、母材2の表層にMn酸化物6が多く生成されると共に、Cr酸化膜4が過剰成長する。
さらに浸漬が続くと、図7Cに示すように、Cr酸化膜4がMnによって還元され、Fe-Cr-Mn系酸化物Fが異物として生成される。このような図7Bの状態と図7Cの状態とが繰り返されることで、溶損が進行する。
一方、母材2の表面にCeO粒子5を塗布した状態で熱処理した場合では、図7Dに示すように、CeO粒子5によって層状のSi酸化膜3が生成され、母材2に含まれる元素の外方拡散と、酸素の母材2の内部への内方拡散とが抑制される。その結果、図7Eのように、Mn酸化物6の生成と、Fe-Cr-Mn系酸化物の生成とが抑制される。また、Cr酸化膜4の過剰成長の抑制(すなわち、Cr酸化膜4の膜厚を小さくすること)によって、Cr酸化膜4の剥離が抑制される。
このように、CeO粒子5の塗布及び熱処理によって、溶融金属に対する耐溶損性の高いステンレス部材1(つまり調整ピン60)が得られる。
(1b)耐溶損性の高い調整ピン60の使用により、金属線材に対する調整ピン60由来の成分(例えばFe-Cr-Mn系酸化物)の混入が抑制できる。そのため、金属線材の品質を高められる。
また、タンディッシュ50から溶融金属を送り出すノズル51(つまりスパウト)内部へのFe-Cr-Mn系酸化物の付着が抑制される。そのため、金属線材の製造における鋳造速度の低下が抑制される。
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
(2a)上記実施形態のステンレス部材は、金属線材の製造装置において使用される調整ピン以外の部品にも使用できる。また、上記実施形態のステンレス部材は、金属線材以外の金属製品の製造装置にも使用できる。
(2b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
[3.実施例]
以下に、本開示の効果を確認するために行った試験の内容とその評価とについて説明する。
<実施例1>
SUH446(JIS-G-4311:2011)で構成された母材の表面にCeO粒子を塗布し、その後900℃で4時間熱処理した。
<比較例1>
SUH446(JIS-G-4311:2011)で構成された母材の表面にCeO粒子を塗布せずに、そのまま900℃で4時間熱処理した。
<酸化膜の確認>
実施例1のステンレス部材では、図3A,3Bに示すような断面が観察された。一方、比較例1のステンレス部材では、図8A,8Bに示すような断面が観察された。比較例1では、母材102の表面に粒状のSi酸化膜103が形成された上で、厚みの大きいCr酸化膜104が形成されていた。
<X線回析>
実施例1及び比較例1のステンレス部材に対し、X線回析を行った。その結果、実施例1は、比較例1に対し、SiO(主にクリストバライト)のピークが大きく、かつ、Mn系酸化物及びFe系酸化物のピークが小さかった。
したがって、実施例1では、CeO粒子の塗布によってSi酸化膜の成長が促進されたと推測される。また、実施例1では、Si酸化膜が層状に形成されたことで、母材に含まれる元素の外方拡散が抑制され、その結果、Mn系酸化物及びFe系酸化物の生成が減少されたと推測される。
<溶銅中における耐溶損性>
図9Aに示すように、実施例1及び比較例1のステンレス部材のサンプルSをそれぞれ、Ar雰囲気中で、酸素濃度300ppm及び1150℃の溶銅TPCの表面に配置した。この状態で3時間保持した後、サンプルSの溶銅TPCに接触させた部分の断面、及びサンプルSの溶銅TPCに接触させていない部分の断面のそれぞれを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した。
実施例1では、ステンレス部材とAr雰囲気との間において、Cr酸化膜と母材とが密着し、Fe-Cr-Mn系酸化物の生成が抑制されていた。また、ステンレス部材と溶銅との間においてもCr酸化膜と母材とが密着し、Fe-Cr-Mn系酸化物は生成されていなかった。
一方、比較例1では、ステンレス部材とAr雰囲気との間において、ステンレス部材の表面全体に多孔質かつ厚みの大きいFe-Cr-Mn系酸化物が生成されていた。また、ステンレス部材と溶銅との間においてもFe-Cr-Mn系酸化物が生成されていた。
さらに、図9Bに示すように、実施例1及び比較例1のステンレス部材のサンプルSをそれぞれ、Ar雰囲気中で、酸素濃度300ppm及び1150℃の溶銅TPC内に浸漬した。この状態で3時間保持した後、さらに300rpmで30分間の条件でサンプルSを回転させ、その後、サンプルSの断面を走査電子顕微鏡にて観察した。
実施例1では、Cr酸化膜と母材とが密着し、Fe-Cr-Mn系酸化物の生成が抑制されていた。一方、比較例1では、ステンレス部材の表面に厚みの大きいFe-Cr-Mn系酸化物が生成されていた。
また、溶銅中で回転させた後の実施例1及び比較例1のステンレス部材における溶銅TPC内に浸漬した部分の断面に対し、X線分析装置を用いて元素マッピングを行った。実施例1では、CrとOとの元素比がおよそ2:3となっており、Cr酸化膜(つまり、Cr)が保持されていると推測される。一方、比較例1では、CrとOとの元素比がおよそ1:1となっており、Cr酸化膜が、母材中のMnによって還元されたと推測される。
さらに、溶銅中での回転後の実施例1及び比較例1のステンレス部材における溶銅TPC内に浸漬した部分の表面に対し、デジタルマイクロスコープを用いて表面粗さ(具体的には中心線平均粗さRa)を測定した。その結果、比較例1の中心線平均粗さRaが10.7μmであったのに対し、実施例1の中心線平均粗さRaは3.65μmであった。この結果から、実施例1は、比較例1よりも耐溶損性が向上していることがわかる。
1…ステンレス部材、2…母材、3…Si酸化膜、4…Cr酸化膜、
5…CeO粒子、6…Mn酸化物、10…金属線材の製造装置、20…溶解炉、
25…上樋、30…保持炉、35…下樋、40…添加部、50…タンディッシュ、
51…ノズル、52…流入口、60…調整ピン、70…鋳造機、71…ホイール、
72…ベルト、80…圧延機、90…コイラ、C…鋳造材、M…溶融金属、
W…金属線材。

Claims (4)

  1. フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材と、
    前記母材の表面に配置されたSi酸化膜と、
    前記Si酸化膜の表面に配置されたCr酸化膜と、
    前記Cr酸化膜の表面に付着したCeO粒子と、
    を備える、ステンレス部材。
  2. 請求項1に記載のステンレス部材であって、
    タンディッシュ内の溶融金属に浸漬されると共に、前記タンディッシュが有するノズルからの前記溶融金属の流出量を調整する調整ピンである、ステンレス部材。
  3. フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材の表面にCeO粒子を塗布する工程と、
    前記CeO粒子が塗布された前記母材を熱処理する工程と、
    を備える、ステンレス部材の製造方法。
  4. タンディッシュに溶融金属を注入する工程と、
    前記タンディッシュから前記溶融金属を鋳型に送り出す工程と、
    前記鋳型に注入された前記溶融金属を冷却して鋳造材を形成する工程と、
    前記鋳造材を圧延する工程と、
    を備え、
    前記送り出す工程では、前記タンディッシュが有するノズルからの前記溶融金属の流出量を、前記タンディッシュ内の前記溶融金属に浸漬された調整ピンで調整し、
    前記調整ピンは、
    フェライト系ステンレス鋼又はオーステナイト系ステンレス鋼で構成される母材と、
    前記母材の表面に配置されたSi酸化膜と、
    前記Si酸化膜の表面に配置されたCr酸化膜と、
    前記Cr酸化膜の表面に付着したCeO粒子と、
    を備える、金属線材の製造方法。
JP2021148798A 2021-09-13 2021-09-13 ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法 Pending JP2023041425A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021148798A JP2023041425A (ja) 2021-09-13 2021-09-13 ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021148798A JP2023041425A (ja) 2021-09-13 2021-09-13 ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023041425A true JP2023041425A (ja) 2023-03-24

Family

ID=85641747

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021148798A Pending JP2023041425A (ja) 2021-09-13 2021-09-13 ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023041425A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1067203B1 (fr) "Procédé de fabrication de bandes en alliage fer-carbone-manganèse, et bandes ainsi produites"
JP5521520B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2006515802A (ja) 低表面粗度及び低多孔性を有する鋼ストリップの鋳造
JP6890104B2 (ja) 溶融金属メッキ浴用部材
KR20080065294A (ko) 높은 오스테나이트 결정 조대화 온도를 갖는 철강재 및 그제조방법
JP5411826B2 (ja) 銅‐ニッケル‐ケイ素二相急冷基体
EP1466024A1 (fr) Procede de fabrication d un produit siderurgique en acier au carbone riche en cuivre, et produit siderurgique ainsi obtenu
JP7243405B2 (ja) 冷却ロール、双ロール式連続鋳造装置、薄肉鋳片の鋳造方法、及び、冷却ロールの製造方法
EP1323837B1 (fr) Procédé de réalisation d'un produit sidérurgique en acier au carbone, notamment destiné à la galvanisation.
JP2023041425A (ja) ステンレス部材、ステンレス部材の製造方法、及び金属線材の製造方法
JP3587351B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体の製造方法
JP2022108439A (ja) ステンレス部材及び金属線材の製造方法
JP7375606B2 (ja) 鋳造用ステンレス鋼部材およびその製造方法、並びに金属線の製造装置
JP2023120817A (ja) ステンレス部材、及び金属線材の製造方法
JP2021035695A (ja) アモルファス金属フォイルおよび急速凝固技術を使用してアモルファス金属フォイルを製造するための方法
KR100529064B1 (ko) 내마모성이 우수한 냉연 롤 제조방법
JPH02125833A (ja) 溶融亜鉛メッキ浴中浸漬部材及びその製造方法
JP2593877B2 (ja) 炭化物析出硬化型Co基合金溶接線及びその製造方法
JP2024043885A (ja) 金属線材の製造方法及び金属線材の製造装置
JP2003211258A (ja) ストリップキャスティング用冷却ロールとその製造方法
JPH06277608A (ja) 塗布装置のドクターブレード
JP3283746B2 (ja) 連続鋳造用鋳型
JP2001219249A (ja) 薄帯連続鋳造用冷却ドラム
JP2003191054A (ja) 溶射被覆用Zn−Al系合金線材の製造方法
FR2639361A1 (fr) Procede et dispositif pour la fabrication d'un materiau en couches pour elements de glissement

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240621