JP2023039563A - プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法 - Google Patents

プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プードル種の筋ジストロフィーを簡便に検査する方法を提供すること。【解決手段】プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法であって、(1)被検体から採取された被検試料のジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出すること、を含む、方法。【選択図】なし

Description

本発明は、プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法等に関する。
筋ジストロフィーは、筋線維の変性及び壊死を特徴とする遺伝性筋疾患である。筋ジストロフィーを発症すると、筋力が徐々に低下し、運動機能障害、呼吸不全等に至る。ヒトでは50以上の原因遺伝子が発見されている。
イヌでは、いくつかの品種で筋ジストロフィー症例の報告がある。例えば、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ジャック・ラッセル・テリア、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル等で、筋ジストロフィー症例が報告されている(例えば非特許文献1)。
Brinkmeyer-Langford, et al., Expression profiling of disease progression in canine model of Duchenne muscular dystrophy, PLOS ONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0194485 March 19, 2018
本発明者は研究を進める中で、トイプードルにおける筋ジストロフィー症例を初めて見出した。トイプードルではこれまで筋ジストロフィーの報告例が無く、見過ごされていた可能性があると考えられる。このため、既に国内にキャリアが多数存在している可能性が高い。
そこで、本発明は、プードル種の筋ジストロフィーを簡便に検査する方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、被検体から採取された被検試料のジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出することにより、プードル種の筋ジストロフィーを簡便に検査できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法であって、
(1)被検体から採取された被検試料のジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出すること、
を含む、方法。
項2. 前記塩基変異が塩基挿入である、項1に記載の方法。
項3. 前記塩基変異が1塩基挿入である、項1又は2に記載の方法。
項4. 前記塩基変異が、配列番号1で示される塩基配列の5´末端から207番目の塩基(チミン)~211番目の塩基(チミン)の領域内又は当該領域の末端への1塩基挿入である、項1~3のいずれかに記載の方法。
項5. 前記塩基変異の有無を検出することが、プライマー及びプローブからなる群より選択される少なくとも1種を前記被検体のゲノムDNA又はそれに由来する核酸分子にハイブリダイズさせること、並びに前記被検体のゲノムDNAをシーケンス解析することからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~4のいずれかに記載の方法。
項6. (2a)被検体が雄であり、且つ前記塩基変異が検出された場合に、前記被検体が筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い或いは現在発症していると判定すること、又は
(2b)被検体が雌であり、且つ前記塩基変異が検出された場合に、前記被検体が筋ジストロフィーキャリアである、筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い、或いは現在発症していると判定すること
を含む、項1~5のいずれかに記載の方法。
項7. 前記被検試料が体液又は粘膜である、項1~6のいずれかに記載の方法。
項8. 前記被検体がトイプードル種である、項1~7のいずれかに記載の方法。
項9. ジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出するためのプライマー及びプローブからなる群より選択される少なくとも1種を含む、プードル種の筋ジストロフィーの検査薬。
本発明によれば、プードル種の筋ジストロフィーを簡便に検査する方法を提供することができる。
被検体(トイプードル)の写真像を示す。背湾姿勢、及び肩関節や膝関節に関節拘縮が認められる。 被検体の筋組織切片のヘマトキシリン・エオジン染色像を示す。筋線維の大小不同、筋線維の変性、及び筋線維の壊死が認められる。 被検体の筋組織切片のジストロフィン抗体による免疫染色像を示す。縦軸は使用したジストロフィン抗体(DYSA:C末端側領域に対する抗体、DYSB:N末端側領域に対する抗体)を示す。 被検体の全ゲノムシーケンス解析及び結果の概要を示す。エクソン45中に1塩基の挿入が存在し、その結果としてフレームシフトが起こり、エクソン46中で終始コドンが出現することが分かった。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.検査方法
本発明は、その一態様において、プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法であって、(1)被検体から採取された被検試料のジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出すること(以下、「工程(1)」と示すこともある。」)、を含む、方法(本明細書において、「本発明の検査方法」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
1-1.工程(1)
検査対象である筋ジストロフィーの種類は、特に制限されない。筋ジストロフィーの各種分類基準における全ての種類、クラス、グレード、ステージが検査対象となる。筋ジストロフィーとしては、例えばジストロフィン異常症(デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー)、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー等が挙げられる。
被検体は、プードル種のイヌである。プードル種とは、品種の1つであるプードルであるイヌ、又は当該イヌの子孫(雑種も含む)である。プードルとしては、例えばトイプードル、ミニチュアプードル、ミディアムプードル、スタンダードプードル、ティーカッププードル等が挙げられ、特に好ましくはトイプードルが挙げられる。あるイヌがプードルの子孫であるか否かは、公知の方法に従って判定することができ、例えば既報(Parker et al., 2017, Cell Reports 19, 697-708)に記載の方法に従って判定することができる。
被検体の状態は、特に制限されない。被検体としては、例えば筋ジストロフィーを発症しているかどうか不明な検体、筋ジストロフィーを発症していると既に別の方法により判定されている検体、筋ジストロフィーを発症していないと既に別の方法により判定されている検体、筋ジストロフィーの治療中の検体等が挙げられる。
イヌのジストロフィン遺伝子は公知であり、例えばEnsembl(https://asia.ensembl.org/index.html?mobileredirect=no)のコード番号ENSCAFG00000023562で登録されている。当該遺伝子の各イントロン及び各エクソンの塩基配列は、例えば上記登録情報から入手することができる。
工程(1)で塩基変異の有無を検出する「エクソン45」は、ゲノムDNA(=染色体DNA)中のイヌのジストロフィン遺伝子において、当該遺伝子のプロモーター側からエクソンを数えていった場合の45番目のエクソンである。エクソン45及びその周辺の塩基配列を配列番号1に示す。
工程(1)ではエクソン45中の塩基変異の有無を検出する。塩基変異としては、例えば塩基挿入、塩基欠失、塩基置換等が挙げられるが、本発明では特に好ましくは塩基挿入、中でも1塩基挿入を対象とすることができる。イヌのジストロフィン遺伝子変異の過去の報告においては、塩基欠失の報告例が多く、これまで塩基挿入の報告例は無かった。
塩基変異は、特に好ましくは、配列番号1で示される塩基配列の5´末端から207番目の塩基(チミン)~211番目の塩基(チミン)の領域内又は当該領域の末端への1塩基挿入である。
207番目の塩基(チミン)~211番目の塩基(チミン)の領域内又は当該領域の末端への1塩基挿入とは、すなわち、207番目の塩基(チミン)の5´側(206番目の塩基(グアニン)と207番目の塩基(チミン)との間)、207番目の塩基(チミン)と208番目の塩基(チミン)との間、208番目の塩基(チミン)と209番目の塩基(チミン)との間、209番目の塩基(チミン)と210番目の塩基(チミン)との間、210番目の塩基(チミン)と211番目の塩基(チミン)との間、又は211番目の塩基(チミン)の3´側(211番目の塩基(チミン)と212番目の塩基(シトシン)との間)への1塩基挿入である。
工程(1)は、より具体的には、被検試料中に存在する被検体のゲノムDNAを解析することにより行うことができる。
被検試料は、ゲノムDNAを含み得る試料である限り、特に制限されない。簡便性の観点から、被検試料は、侵襲性が低い方法で採取できる試料が望ましい。このような被検試料としては、例えば体液(例えば全血、血清、血漿、リンパ液、唾液、尿、組織液(気管支肺胞洗浄液を含む)、汗、涙、喀痰、鼻汁等)、粘膜(例えば口腔粘膜、鼻腔粘膜等)等が挙げられる。
体液及び粘膜は、当業者に公知の方法で被検体から採取することができる。例えば、全血は、注射器などを用いた採血によって採取することができる。血清は、全血から血球及び特定の血液凝固因子を除去した部分であり、例えば、全血を凝固させた後の上澄みとして得ることができる。血漿は、全血から血球を除去した部分であり、例えば、全血を凝固させない条件下で遠心分離に供した際の上澄みとして得ることができる。また、体液及び粘膜は、スワブ等と粘膜組織に接触させる(好ましくは擦る)ことにより、採取することができる。
塩基変異の有無を検出することは、特に制限されず、公知の方法に従って又は準じた方法、或いは公知の方法の原理を利用して実行することができる。塩基変異の有無を検出することは、例えば、プライマー及びプローブからなる群より選択される少なくとも1種を前記被検体のゲノムDNA又はそれに由来する核酸分子(例えばゲノムDNAの制限酵素断片、ゲノムDNAのPCR増副産物等)にハイブリダイズさせること、並びに前記被検体のゲノムDNAをシーケンス解析することからなる群より選択される少なくとも1種、を含むことができる。塩基変異の有無の検出は、対象となる塩基変異の位置周辺の配列決定を行って、塩基変異の有無を検出することもできるし、PCR法をベースとした手法、DNAプローブを用いた手法、質量分析を用いた手法を用いて検出することもできる。PCRをベースとした手法として、例えばSNPタイピング法、TaqMan PCR法、一塩基伸長法、Pyrosequencing法、Exonuclease Cycling Assay法などが挙げられる。DNAプローブを用いた手法としては、例えばInvader法などが挙げられる(網羅的遺伝子多型解析(SNP)日薬理誌、125, 148-152, 2005)。
プライマーとしては、例えば目的の塩基変異部位及びその周辺配列を含む領域を増幅するプライマー、目的の塩基変異部位を含む領域にハイブリダイズするプライマー等が挙げられる。プローブとしては、例えば目的の塩基変異部位を含む領域にハイブリダイズするプライマーが挙げられる。
プライマー及びプローブは、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドであることが好ましい。該オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、例えば15bp~100bpであり、好ましくは17bp~30bpである。プライマーは、目的の塩基変異部位を含むDNAの少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されない。プライマーが増幅することができるDNAの長さは、例えば15~1000bp、好ましくは20~500bp、より好ましくは20~200bpである。
プローブとして用いる場合、その長さは、例えば5bp~200bpであり、好ましくは7bp~100bpであり、より好ましくは7bp~50bpである。プローブは、目的の塩基変異部位を含むDNAとハイブリダイズしうるものであれば、特に制限されない。
プライマーには、目的の塩基変異部位を含む領域の塩基配列と同一又は相補的な塩基配列に加え、任意の塩基配列を付加することができる。例えば、IIs型の制限酵素を利用した多型の解析方法のためのプライマーにおいては、IIs型制限酵素の認識配列を付加したプライマーが利用される。更に、プライマーは修飾されてもよい。例えば、蛍光物質や、ビオチン又はジゴキシンのような結合親和性物質で標識したプライマーを利用してもよい。
目的の塩基変異部位を含む領域にハイブリダイズすることができるプローブは、目的の塩基変異部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるものであればよく、目的の塩基変異部位を含む領域の塩基配列を有するDNAに特異的にハイブリダイズするものが好ましい。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、目的の塩基変異部位を含む領域の塩基配列を有するDNA以外のDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。より具体的には、プローブの塩基配列中に目的の塩基変異部位を含むプローブが好ましい。あるいは、目的の塩基変異部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が目的の塩基変異部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。従って、プローブ自身の塩基配列には目的の塩基変異部位が含まれないが、目的の塩基変異部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、使用することが可能である。
例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
プローブには、プライマーと同様に、塩基配列の改変、塩基配列の付加、あるいは修飾が許される。例えば、Invader法に用いるプローブは、フラップを構成するゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、目的の塩基変異部位を含む領域にハイブリダイズする限り、本実施形態のプローブに含まれる。本実施形態のプローブを構成する塩基配列は、ゲノムにおける本実施形態の目的の塩基変異部位の周辺DNA領域の塩基配列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。
当業者であれば、目的の塩基変異部位を含む周辺DNA領域についての塩基配列情報を基に、解析手法に応じたプライマー及びプローブをデザインすることができる。プライマー及びプローブを構成する塩基配列は、ゲノムの塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列のみならず、適宜改変することができる。
工程(1)を含む本発明の検査方法によれば、筋ジストロフィーの検出指標である塩基変異の有無に関する情報を提供することができ、これにより筋ジストロフィーの発症リスク評価、筋ジストロフィーの診断などを補助することができる。
1-2.工程(2)
本発明の検査方法は、一態様として、
(2a)被検体が雄であり、且つ前記塩基変異が検出された場合に、前記被検体が筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い或いは現在発症していると判定すること(以下、「工程(2a)」と示すこともある。)、又は
(2b)被検体が雌であり、且つ前記塩基変異が検出された場合に、前記被検体が筋ジストロフィーキャリアである、筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い、或いは現在発症していると判定すること(以下、「工程(2b)」と示すこともある。)
を含むことが好ましい。
工程(2a)、工程(2b)(以下、これらをまとめて「工程(2)」とする)を含む本発明の検査方法によれば、筋ジストロフィーの発症リスク、筋ジストロフィーの発症の有無、筋ジストロフィーキャリアか否かを判定することが可能となる。
2.より高い精度での診断
工程(2a)を含む本発明の検査方法により、被検体が筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い或いは現在発症していると判定された場合、本発明の検査方法に、さらに獣医師による筋ジストロフィーの診断を適用する工程を組み合わせることによって、より高い精度で筋ジストロフィーを将来発症するリスク或いは現在発症しているか否かを診断することができる。
3.判定・診断後の対処
工程(2)を含む本発明の検査方法により被検体が筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い、現在発症している、或いは筋ジストロフィーキャリアであると判定された場合は本発明の検査方法に対してさらに、
(3a)被検体を繁殖に使用しないように処置すること
によって、将来におけるプードル種の筋ジストロフィーの発生を抑制することができる。繁殖に使用しないような処置としては、例えば不妊手術、雄/雌間での飼育場所の隔離等が挙げられる。
工程(2a)を含む本発明の検査方法により被検体が筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い或いは現在発症していると判定された場合は本発明の検査方法に対してさらに、
(3)筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い或いは現在発症していると判定又は診断された被検体に対して、該疾患の発症の予防又は該疾患の治療を行うこと
によって、被検体の該疾患の発症を予防すること又は該疾患を治療することが可能となる。
予防(発症を遅らせる概念も含む)及び治療法としては、例えばリハビリテーション療法、薬物療法等が挙げられる。薬物療法において使用する治療薬としては、例えばエクソンスキッピング治療薬等が挙げられる。
4.検査薬
本発明は、その一態様において、ジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出するためのプライマー及びプローブからなる群より選択される少なくとも1種を含む、プードル種の筋ジストロフィーの検査薬(本明細書において、「本発明の検査薬」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
プライマー、プローブについては、上記「1-1.工程(1)」の記載を援用する。
プライマー、プローブは、任意の固相に固定化して用いることもできる。このため本発明の検査薬は、プライマー、プローブを固定化した基板(例えばプローブを固定化したマイクロアレイチップ等。)の形態として提供することができる。
固定化に使用される固相は、ポリヌクレオチド等を固定化できるものであれば特に制限されることなく、例えばガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ、キャピラリーまたはその他の基板等を挙げることができる。固相への検出剤の固定は、特に制限されない。固定方法は、例えばマイクロアレイであれば、市販のスポッター(Amersham社製など)を利用するなど、固定化プローブの種類に応じて当該技術分野で周知である〔例えば、photolithographic技術(Affymetrix社)、インクジェット技術(Rosetta Inpharmatics社)によるオリゴヌクレオチドのin situ合成等〕。
本発明の検査薬には、プライマー及びプローブ以外の、他の検出剤(例えば、他の遺伝子変異を検出するためのプローブや、抗体等)が含まれていてもよい。この場合の本発明の検査薬は、筋ジストロフィーの他に、他の疾患や状態も検査することができる検査薬であってもよい。
本発明の検査薬は、組成物の形態であってもよい。該組成物には、必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
本発明の検査薬は、キットの形態であってもよい。該キットには、上記プライマー及びプローブ或いはこれを含む上記組成物の他に、遺伝子変異の検出に使用し得るものを含んでいてもよい。このようなものの具体例としては、各種試薬(例えば緩衝液等)、容器、器具(例えば被検試料の採取器具)等が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例1.筋ジストロフィー検査
<1-1.表現型解析>
トイプードル(未去勢雄、8カ月令)(以下、「被検体」と示す。)について、背湾姿勢、及び肩関節や膝関節に関節拘縮が認められた(図1)。また、被検体には、歩様異常、歩行時の疼痛が認められたが、姿勢反応、脊髄反射、脳神経機能に異常は認められなかった。
筋線維の断面を観察すべく、被検体の筋組織の切片を作製した。切片を常法に従ってヘマトキシリン・エオジン染色した結果、筋線維の大小不同、筋線維の変性、及び筋線維の壊死が認められた(図2)。
上記で明らかになった表現型から、ジストロフィンの発現を調べることに着目した。筋組織の切片を、ジストロフィンN末端側領域に対する抗体(DYSB、Leica Biosystems社製)又はジストロフィンC末端側領域に対する抗体(DYSA、Leica Biosystems社製)を1次抗体として用いて常法に従って免疫染色した結果、健常イヌではジストロフィンの発現が認められたのに対して、被検体(症例)ではジストロフィンの発現は認められなかった(図3)。
以上の結果より、被検体は、筋ジストロフィーを発症していると診断された。イヌの筋ジストロフィーは、いくつかの品種で報告されているものの、トイプードルではこれまで報告されたことがなかった。
<1-2.遺伝子解析>
被検体の末梢血からゲノムDNAを抽出し、全ゲノムシーケンス解析(NovaSeq 6000、イルミナ社製)を実施し、野生型ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子:ENSCAFG00000023562)の配列と比較した。その結果、被検体のジストロフィン遺伝子においては、エクソン45中に1塩基の挿入が存在し、その結果としてフレームシフトが起こり、エクソン46中で終止コドンが出現することが分かった(図4)。より具体的には、被検体のジストロフィン遺伝子においては、野生型ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子:ENSCAFG00000023562)の以下のエクソン45及びその周辺の配列(配列番号1)の5´末端から207番目の塩基(チミン)~211番目の塩基(チミン)の領域内又は当該領域の末端、すなわち207番目の塩基(チミン)の5´側(206番目の塩基(グアニン)と207番目の塩基(チミン)との間)、207番目の塩基(チミン)と208番目の塩基(チミン)との間、208番目の塩基(チミン)と209番目の塩基(チミン)との間、209番目の塩基(チミン)と210番目の塩基(チミン)との間、210番目の塩基(チミン)と211番目の塩基(チミン)との間、又は211番目の塩基(チミン)の3´側(211番目の塩基(チミン)と212番目の塩基(シトシン)との間)に1塩基(チミン)が挿入されていることが分かった。
Figure 2023039563000001
続いて、判明した1塩基挿入部位を含む約300bpの領域を増幅させるプライマーセット(フォワードプライマー:AATCTTGGTGCCTTTCACCCTG(配列番号2)、リバースプライマー:TGGTATCTTACAGGAACTCCAGG(配列番号3))を設計し、被検体のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。得られた約300bpの断片の塩基配列をダイレクトシーケンス(サンガ―法)により解読した。シーケンスプライマーとしてフォワードプライマー(配列番号2)を用いた場合に解読された配列(配列1)、及びシーケンスプライマーとしてリバースプライマー(配列番号3)を用いた場合に解読された配列の逆相補鎖配列(配列2)それぞれについて、野生型ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子:ENSCAFG00000023562)の対応領域の配列(野生型配列)と比較した。配列1と野生型配列との比較結果を表1に示し、配列2と野生型配列との比較結果を表2に示す。表1中、Sbjctは配列1(配列番号4)を示し、Queryは配列1の対応領域の野生型配列(配列番号5)を示す。表2中、Sbjctは配列2(配列番号6)を示し、Queryは配列2の対応領域の野生型配列(配列番号7)を示す。
Figure 2023039563000002
Figure 2023039563000003
表1及び表2より、上記全ゲノムシーケンス解析で判明した1塩基挿入が、本試験でも確認できた。
被検体は、日本国内のブリーダーから購入したものである。上記のようにトイプードルではこれまで筋ジストロフィーの報告例が無く見過ごされてきた可能性を考慮すると、既に上記塩基変異を有するプードル種が多数存在している可能性が高い。また、プードル種は国内で最も人気が高く繁殖が盛んに行われていることから、今後、プードル種において検査を進めることにより、本配列異常に基づいた筋ジストロフィー症例と筋ジストロフィーキャリアの発覚が相次ぐ可能性がある。本発明は、簡易な遺伝子検査により筋ジストロフィーの検査が可能であり、上記のような事態に有用である。

Claims (9)

  1. プードル種の筋ジストロフィーを検査する方法であって、
    (1)被検体から採取された被検試料のジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出すること、
    を含む、方法。
  2. 前記塩基変異が塩基挿入である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記塩基変異が1塩基挿入である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記塩基変異が、配列番号1で示される塩基配列の5´末端から207番目の塩基(チミン)~211番目の塩基(チミン)の領域内又は当該領域の末端への1塩基挿入である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記塩基変異の有無を検出することが、プライマー及びプローブからなる群より選択される少なくとも1種を前記被検体のゲノムDNA又はそれに由来する核酸分子にハイブリダイズさせること、並びに前記被検体のゲノムDNAをシーケンス解析することからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
  6. (2a)被検体が雄であり、且つ前記塩基変異が検出された場合に、前記被検体が筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い或いは現在発症していると判定すること、又は
    (2b)被検体が雌であり、且つ前記塩基変異が検出された場合に、前記被検体が筋ジストロフィーキャリアである、筋ジストロフィーを将来発症するリスクが高い、或いは現在発症していると判定すること
    を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記被検試料が体液又は粘膜である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記被検体がトイプードル種である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
  9. ジストロフィン遺伝子のエクソン45中の塩基変異の有無を検出するためのプライマー及びプローブからなる群より選択される少なくとも1種を含む、プードル種の筋ジストロフィーの検査薬。
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