JP2023037980A - 炭素含有Cr系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化物が均一かつ微細に分布し、表面性状が良好な炭素含有Cr系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】本発明においては、所定の成分を有する合金を溶解、鋳造し、400℃以上に保持する鋳造工程、前記鋳造工程に続いて、前記合金を必要に応じて加熱し、950℃以上1300℃以下にて長手方向の垂直断面における断面減少率10%以上の熱間加工を施す熱間加工工程、熱間加工を施した前記合金に軟質化焼鈍を施す軟質化焼鈍工程を備える製造方法により、炭素含有Cr系ステンレス鋼を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法に関する。特にかみそりや包丁などの刃物に適したマルテンサイト系ステンレス鋼製品の製造に好適な、鋳塊と製品の中間材料の製造方法について開示する。
カミソリの刃や包丁などの刃物用途の素材には、SUS420J1、SUS420J2、EN1.4116(非特許文献1)に代表される0.16%以上の炭素を含有したCr系ステンレス鋼が使用されている。これらは、JIS G43034やG43035にも記載される鋼である。
炭素含有Cr系ステンレス鋼では、比較的高い濃度の炭素が固溶可能な高温のオーステナイト相の状態から、水冷や油冷などの急速な冷却により、室温にて過飽和な炭素が固溶した硬質なマルテンサイト相が得られる。
マルテンサイト相の硬さは高温加熱時のオーステナイト相での固溶C量に対応しており、一般的にも添加C量が多いほど焼入れ後に高硬度が得られる。SUS420J1では0.16%以上0.25%以下、SUS420J2では0.26%以上0.40%以下、EN1.4116では0.45%以上0.55%以下のCが添加されている。
汎用刃物にはSUS420J1、SUS420J2が使用される一方で、さらに高硬度・高耐食が要求される高級刃物には、Cr含有量が多く、しかもV、Mo添加をして耐食性を高めたEN1.4116が使用される。
これらのSUS420J1、SUS420J2、EN1.4116に代表される炭素含有Cr系ステンレス鋼は、鋳造時の中心偏析に起因して中心部に非常に粗大な炭化物が晶出する。粗大炭化物を一般的な熱間圧延や焼入れ熱処理での加熱により消失させることは難しく、消失させるための工程はコストを上昇させる原因となる。
また、製品となる焼入れ前後にも未固溶の粗大炭化物として残存し、所定の特性が得られない。具体的には、鋳塊と製品の中間材料の加工性を劣化させる原因となり、焼入れ後の製品の硬さが目標値を達成しない、変動することも多い。さらに、粗大炭化物に起因して、刃物製品にて好ましくない表面模様として現出したり、刃こぼれを生じたりする原因になることも多い。
すなわち、炭化物が均一かつ微細に分布し、表面性状の良好な炭素含有Cr系ステンレス鋼を安価かつ安定的に製造する方法が求められていた。
このような課題を解決する先行技術として、特許文献1には液相線から固相線にかけての温度範囲の冷却速度を制御して鋳造し、その後球状化焼鈍することを特徴とする均一微細な炭化物組織を有する高炭素ステンレス鋼の製造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された技術では液相線から固相線の温度範囲を急速に冷却する必要がある。厚みのある鋼片においてこのような冷却速度に調整して冷却することは非常に困難である。
特許文献2には連続鋳造法により製造したステンレス鋼スラブ鋳片に対して均質化熱処理をすることにより、粗大炭化物を微細化する炭素含有Cr系ステンレス熱延鋼板の製造方法が開示されている。
しかしながら、粗大炭化物を固溶するためにはその周囲のCr偏析も解消する必要があり、高温・長時間の均質化熱処理が必要となり、製造コストが上昇する場合がある。また、酸化スケールの厚みが場所ごとに異なる不均一酸化を生じやすく、スラブ鋳片の表面品質が悪くなる可能性がある。
さらに、凹が形成され、鋼板とした際、前記凹が筋状模様となって現れ、製品の外観を損ねてしまう可能性がある。その場合、前記筋状模様を研削して除去することは可能であるが、歩留りの低下や工賃の上昇により、前記マルテンサイト系ステンレス鋼製品の製造コストが上昇してしまう可能性もあった。
他方、特許文献3には、炭化物微細化を目的として、C:0.5~1.5%、Cr:10~25%を含有するステンレス鋼の熱間圧延にて、1250℃以上1450℃以下の固液共存温度域にて全圧下率で少なくとも10%以上圧延し、次いで1250℃未満の固相域にて全圧下率で少なくとも50%以上圧延することを特徴とする炭化物の微細なマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法が開示されている。
しかしながら、固液共存での圧下の制御は難しく、専用設備の導入が必要なためコストがかかる。
また、特許文献4には、鋳塊での冷却時の変態による割れ防止を目的として、C:0.4%以下、Cr:10~15%他を含有するステンレス鋼を、連続鋳造後、オーステナイト温度域から300℃まで20℃/Hr以下の冷却速度で冷却した後、1200~1250℃に加熱して熱間圧延し、次いで10℃/Hr以下の速度で冷却することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼片の製造方法が開示されている。
特許文献4は鋳片の割れ防止の効果について示しているが、炭化物微細化の効果には言及していない。
特開平5-209252号公報 特開2005-82838号公報 特開平1-230714号公報 特開平4-276014号公報
ステンレス鋼欧州規格 EN10088-2
本発明は、従来技術の課題を解決するものであって、C含有量の多いステンレス鋼において、炭化物が均一かつ微細に分布し、表面性状が良好な炭素含有Cr系ステンレス鋼及びその製造方法を提供することを目的とする。
ここで、炭化物が均一かつ微細に分布するとは、粗大な炭化物が無い状態、すなわち、炭化物の板厚中央部における投影面積円相当直径の最大値が5μm以下であることを意味する。
本発明者らは、鋳造材を室温まで冷却することなく、引続いて実施される、熱間加工(以下「ブレークダウン」という)に着目し、炭素含有Cr系ステンレス鋼の金属組織に及ぼす影響について調査した。
その結果、鋳造材の中心部が核生成の優勢な温度域まで冷却されると炭化物の析出が母相の粒界に加えて粒内からも起こり、その後の昇温中に核成長の優勢な温度域を通過する際、前記母相の粒内に析出した炭化物が成長して、鋳造時に晶出した炭化物と凝集し、クラスターが形成されることを発見した。
一方で、核成長が優勢な温度域の範囲内で冷却停止して再昇温する場合には、前記クラスターは形成されないことも確認した。
また、本発明者らは、前記ブレークダウンを検討した際、鋳造材の中心部にて表面部よりも高温となる温度分布が得られ、加工による歪が中心部に集中することにより、中心部での粗大な炭化物の破砕やCrなどの置換型元素の偏析領域の圧縮が効果的になされ、偏析解消に必要な置換型元素の拡散距離を短くできることを発見した。それにより、その後の均質化熱処理において炭化物の再固溶が促進されることも見出した。
さらに、再固溶の促進により高温・長時間の均質化熱処理が不要となるため、不均一酸化に起因する筋状模様の発生を抑制でき、製造コストを抑制できることも見出した。
本発明者らは、上記の効果が得られる製造方法の条件を明確にすることで本発明を完成した。その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下を含有する炭素含有Cr系ステンレス鋼の化学組成を有する合金を溶解、鋳造し、400℃以上に保持する鋳造工程、前記鋳造工程に続いて、前記合金を必要に応じて加熱し、950℃以上1300℃以下にて長手方向の垂直断面における断面減少率10%以上の熱間加工を施す熱間加工工程、熱間加工を施した前記合金に軟質化焼鈍を施す軟質化焼鈍工程を備えることを特徴とする炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
(2)前記熱間加工工程の後で、前記軟質化焼鈍工程の前に、さらに、前記合金を1100℃以上1300℃以下、かつ、4時間以上30時間以下保持する均質化熱処理工程を備えることを特徴とする前記(1)の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
(3)前記炭素含有Cr系ステンレス鋼が、厚さが4.0mm以上の、スラブ、板、又は帯の形状を有することを特徴とする前記(1)又は(2)の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
(4)前記合金が、質量%で、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下、Si:0~1.00%、Mn:0~1.00%、Ni:0~1.0%、Mo:0~1.00%、V:0~1.00%、N:0~0.10%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、残部:Fe及び不純物を含有することを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかの炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
(5)質量%で、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下を含有し、板厚中央部における炭化物の投影面積円相当直径の最大値が5μm以下であることを特徴とする炭素含有Cr系ステンレス鋼。
(6)質量%で、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下、Si:0~1.00%、Mn:0~1.00%、Ni:0~1.0%、Mo:0~1.00%、V:0~1.00%、N:0~0.10%、P:0.040%以下、S:0.030%以下、残部:Fe及び不純物を含有することを特徴とする前記(5)の炭素含有Cr系ステンレス鋼。
本発明により、炭化物が均一かつ微細に分布し、表面性状が良好な炭素含有Cr系ステンレス鋼を安価かつ安定的に製造することができる。
本発明の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法に関して、詳細に説明する。以下、元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
1.炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法
本発明の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
<鋳造工程>
はじめに、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下を含有する炭素含有Cr系ステンレス鋼の成分を有する合金を溶解し、鋳造する。
マルテンサイト系ステンレス鋼の鋳造では、スラブ割れ防止のため、鋳造後のスラブは室温まで徐冷される。これに対して、本発明では、合金を鋳造して冷却する際に、核成長が優勢な温度範囲である400℃以上に保持することが重要である。400℃未満になると、核生成が優勢となり、その結果、炭化物のクラスターが形成され粗大な炭化物となる。420℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。冷却の際に400℃未満にならなければ、400℃以上に保持する時間は、特に限定されない。また、後述のとおり、鋳造後、次の工程の加工温度である950℃以上に保持してもよい。
なお、本発明は前記のように鋳造時の中心偏析に起因する粗大な炭化物の抑制を目的とする発明であり、特許文献4に示すマルテンサイト変態による割れの防止を目的とする方法とは異なる。ただし、300℃前後で開始すると考えられる変態による割れ防止を除外するものではない。
前述の温度で保持した後、950℃以上1300℃以下の範囲まで、材料の加熱を行う。加熱温度が950℃未満では変形抵抗が高く、加工負荷が増してしまう。一方で1300℃を超えると酸化が著しく進行するとともに不均一酸化を生じて、表面性状を損ねるとともに、製品での表面に筋状模様が生じる可能性も高くなる。そのため、ブレークダウンの加熱温度は950℃以上1300℃以下とする。970℃以上、1280℃以下がさらに好ましく、980℃以上、1250℃以下が最も好ましい。
なお、前述のとおり、950℃未満400℃以上に冷却される必要はなく、鋳造後の冷却にて950℃以上1300℃以下に達した際に後述する加工を行ってもよい。この場合、材料を加熱する必要はない。中心部の温度が表面よりも高温に維持され、中心部への歪の導入が促進されるため好ましい。
加熱時間は、材料が均一な温度となり、ブレークダウンにて中心部が冷却の進む表面よりも高温となる温度分布であることが望ましく、950℃以上1300℃以下の範囲で0.5h以上保持することが好ましく、1h以上の保持がさらに好ましい。なお、本発明は、凝固時の中心偏析に起因する粗大な炭化物を固相状態にて破砕、Crなどの置換型元素の偏析領域の圧縮が効果的になされることを目的としたものであり、中心部の温度が表面よりも高温となり、中心部への歪導入が促進されることが望ましい。
<熱間加工工程>
加熱に引続いて加工を行う。加工率(断面減少率)が10%未満であると、偏析解消のために置換型元素が拡散すべき距離を短くする効果が不十分となり、粗大な炭化物が残存する。12%以上が好ましく、15%以上が最も好ましい。一方で加工率が高いほど偏析解消の効果が大きく、炭化物をさらに微細化できる。圧延設備の能力に応じて決定してよく、上限は特に限定しない。なお、実験室レベルの設備においては、上限は40%前後であった。加工の終了温度は、(後述する均質化熱処理温度の下限である)1100℃未満が好ましく、変形抵抗が高くなる950℃がさらに好ましい。なお、その後の冷却は特に限定されるものではない。室温まで冷却してもよい。
<均質化熱処理工程>
その後、前記ブレークダウンが完了した鋼片を再度加熱して、均質化熱処理をすることが望ましい。前記均質化熱処理の加熱温度が1100℃未満であると、置換型元素の拡散速度が不十分で偏析解消が進まず、さらに炭化物を微細化する効果を発揮できない。一方で1300℃を超えると不均一酸化して、鋼板の表面に筋状模様が現れて外観を損ねる。そのため均質化熱処理の加熱温度は1100℃以上1300℃以下とする。1100℃以上、1280℃以下がさらに好ましく、1120℃以上、1250℃以下が最も好ましい。
均質化熱処理の時間は、置換型元素を偏析させずに十分に拡散させて炭化物の溶解を促進する観点から、また、鋼板表面の外観の観点から、4時間以上、40時間以下とすることが好ましい。5時間以上、37時間以下がより好ましく、6時間以上、30時間以下がさらに好ましい。
均質化熱処理後の冷却速度については、特に限定されるものではない。たとえば、0.05℃/s以上の冷却速度としてもよいし、空冷としてもよい。前記均質化熱処理後は熱間圧延を行う。前記熱間圧延は炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造において一般的な製造条件でよい。
<軟質化焼鈍工程>
熱間圧延の完了後は軟質化焼鈍をする。軟質化焼鈍は炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造において一般的な製造条件でよい。たとえば、700~900℃の範囲で、1~100時間の処理とすることができる。
軟質化焼鈍後は、必要に応じて酸洗、冷間圧延、最終熱処理を繰り返し行って、所定の板厚の鋼板を得ることができる。酸洗は表面の酸化スケールを除去する工程、冷間圧延は所定の板厚を得る工程で、最終熱処理は前記冷間圧延で導入された歪を開放し、再結晶により軟化させる工程であり、炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造において一般的な条件でよい。
ブレークダウン後の炭素含有Cr系ステンレス鋼の形状は、汎用の板工程にて製造する場合が多く、効率的でもあるため、厚さが100mm以上のスラブ形状が好ましい。厚さは200mm以上がより好ましく、250mm以上がさらに好ましい。なお、熱間圧延後の板厚は4.0mm以上6.0mm以下、その後の冷延段階での板厚は0.4mm以上4.0mm未満であることが好ましい。それらの形状は板ないし帯が一般的である。
本発明の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法においては、熱間圧延を併せて実施することが効率的かつ合理的であり、鋳塊と製品の中間材料の板厚は4.0mm以上を好ましい範囲とする。製品板厚は、0.4mm以上6.0mm以下を好ましい対象範囲とする。ただし、これらは汎用の板工程を想定したものであり、棒、管、形鋼、あるいはそれらの中間素材でなるビレットなどの形状を排除するものではない。
2.炭素含有Cr系ステンレス鋼の化学成分
本発明の製造方法は、Cを多量に含有する高Cマルテンサイト系ステンレス鋼において、粗大炭化物を形成させないための製造方法であり、Cを0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下含有する炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造に適用でき、炭化物を均一かつ微細に分布させ、表面性状を良好とする効果を得ることができる。そのため、他の成分は特に問わない。以下、本発明の製造方法が適用できる、炭素含有Cr系ステンレス鋼の成分の一例を説明する。
Cはマルテンサイトの硬さや耐摩耗性を確保するために重要な元素である。C含有量が0.40%未満では、刃物用途で必要な焼入れ硬さや耐摩耗性が得られない。好ましいC含有量の下限は0.45%である。焼入れ後の残留オーステナイト量や耐食性、靭性を考慮して、C含有量の上限は1.00%とすることが好ましく、0.60%とすることがより好ましい。
Crは耐食性を向上させる元素である。耐食性、焼入れ後の残留オーステナイト量を考慮して、Cr含有量の下限は10.5%とすることが好ましく、13.0%とすることがより好ましい。Cr含有量の上限は18.0%とすることが好ましく、16.0%とすることがより好ましい。
C、Cr以外の残部は、Feとすることができる。炭素含有Cr系ステンレス鋼に求められる特性に応じて、他の元素を含有してもよい。また、炭素含有Cr系ステンレス鋼に求められる特性に悪影響を与えない範囲で、不純物を含有してもよい。
以下、C、Cr、Fe以外に、用途に応じて添加することのできる元素の例を説明する。
Siは耐酸化性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。製造時の割れの発生を考慮して、Si含有量は1.00%以下とするのが好ましい。
Mnは脱酸元素として用いられ、必要に応じて添加してもよい。硫化物等の化合物の形成による耐食性の低下を考慮して、Mn含有量は1.0%以下とするのが好ましい。
Niはマルテンサイト相とした際の靭性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。残留オーステナイト量の増加による硬さが低下、合金コストの上昇や製造性の阻害を考慮して、Ni含有量は1.0%以下とするのが好ましい。
Moは耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。添加コストに見合う効果を考慮し、Mo含有量は1.00%以下とするのが好ましい。
Vは耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加してもよい。添加コストに見合う効果を考慮し、V含有量は1.00%以下とするのが好ましい。
Nは、マルテンサイトの硬さや耐食性を確保するための元素であり、必要に応じて添加してもよい。残留オーステナイト量の増加による硬さの低下を考慮し、N含有量は0.10%以下とするのが好ましい。
Pは不可避的に含有される不純物元素であり、成形性及び耐食性を低下させる元素である。その含有量は低い方が好ましい。そのため、P含有量は0.040%以下とするのが好ましい。
Sは不可避的に含有される不純物元素であり、製造時の割れを助長する元素である。そのためS含有量は0.030%以下とするのが好ましい。
その他、炭素含有Cr系ステンレス鋼に求められる特性に応じて、他の元素を含有してもよい。
以下に本発明の実施例を示す。
表1に示す合金を溶解した後、連続鋳造法により厚さ200mmのスラブに鋳造し、その後表2に示す鋳造後の保持温度で保持した。そして前記保持後に再び昇温して表2に示すブレークダウンの加熱温度で2時間加熱し、さらに表2に示す全圧下率を付与した後、室温まで冷却した。
Figure 2023037980000001
Figure 2023037980000002
ブレークダウンの後、実施例の一部では表2に示す条件にて均質化熱処理を実施し、鋼片を空冷した。ブレークダウン又は均質化熱処理を実施した鋼片に対して熱間圧延を行い、板厚5.0mmの鋼板とした。さらに圧延後の鋼板に対して800℃×48時間の軟質化熱処理を実施して熱延鋼板を得た。
その後、No.2~11,16~26,30~38では、硫酸酸洗、全圧下率60%の冷間圧延、700~800℃×2分間の熱処理を施して板厚2.0mmの冷延焼鈍鋼板を得た。
さらに、No.3~11,17~26,30~38では、得られた冷延焼鈍鋼板に対して冷間圧延、冷延板焼鈍、酸洗を再度行って、板厚0.8mmの冷延焼鈍鋼板を作製した。
比較例として、鋳造後の400℃以上での保持及びブレークダウンの両方、又は片方の工程を実施しないで製造した板厚0.8mmの冷延焼鈍鋼板も作製した(No.12~14,27~29,39~41)。
(温度の測定方法)
被測定物の表面温度は、放射温度計により測定した。
(炭化物の粒子径の測定方法、及び粗大な炭化物の有無判定)
炭化物の粒子径は以下の方法で特定した。熱延鋼板、又は冷延焼鈍鋼板のL断面を鏡面研磨後、王水でエッチングして炭化物を現出させ、板厚1/2t位置に存在する炭化物200個を5000倍のSEM観察により撮影した。撮影した組織写真から各炭化物の面積を求め、これを円相当に変換し、その直径を粒子径と定義した。
本発明により製造される炭素含有Cr系ステンレス鋼で確認される炭化物は、(Cr,Fe)236又は(Cr,Fe)73である。炭化物の組成はEDXにより確認できる。
粗大な炭化物の有無は、観察される炭化物の粒子径の最大値により判断した。粒子径が5μmよりも大きい場合は粗大な炭化物が残存すると判断し、不合格(×)とした。一方で粒子径が5μm以下であれば粗大な炭化物は無いと判断し、合格(〇)とした。合格と判断された中で、粒子径が2μmよりも小さいものはさらに優れている(◎)と評価した。
(鋼板の表面の筋状模様の有無を判定する方法)
表面性状の評価として、板厚5.0mmの熱延鋼板を酸洗した鋼板、板厚2.0及び0.8mmの冷延板焼鈍鋼板について筋状模様の有無を調査した。筋状模様の有無は以下の方法で特定した。
筋状模様の有無は鋼板の片面全長を目視で確認した。コイル全長を長手方向1mごとに区切った領域(以下、「セグメント」と呼称)の中に筋状模様が確認された場合、前記領域を「筋状模様ありセグメント」と認定した。鋼板全長のセグメント総数に占める「筋状模様ありセグメント」の割合(以下、「欠陥率」と呼称)を求め、欠陥率が5%を超える場合を不合格(×)、5%以下の場合を合格(〇)と評価した。表2に評価結果を示す。
鋳造後の保持温度及びブレークダウンの条件がともに所定範囲内である実施例No.1~8、15~23、30~35では、粗大な炭化物や筋状模様は認められなかった。前記実施例のうち、均質化熱処理を実施したNo.4~8、19~23、31~35では炭化物の粒子径が特に小さく微細化していた。
上記に対して、鋳造後の保持温度が所定範囲よりも低いNo.12、27、39、ブレークダウンを実施しないNo.13、28、40では粗大な炭化物が残存した。
ブレークダウンの加熱温度が所定範囲よりも高いNo.9、24、36では筋状模様が認められた。ブレークダウンの加熱温度と全圧下率が所定よりも低いNo.10、25、37では粗大な炭化物が残存した。ブレークダウンの全圧下率が所定範囲よりも低いNo.11、26、38では粗大な炭化物が残存した。また均質化熱処理の均質化時間が所定範囲よりも長いNo.14、29、41では、筋状模様が認められた。
本開示の製造方法により、炭化物が均一かつ微細に分布し、表面外観が良好な炭素含有Cr系ステンレス鋼板を安定製造することができる。それゆえ、一例として、硬質で耐食性の要求される高級刃物製品を効率良く生産することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下を含有する炭素含有Cr系ステンレス鋼の化学組成を有する合金を溶解、鋳造し、400℃以上に保持する鋳造工程、
    前記鋳造工程に続いて、前記合金を必要に応じて加熱し、950℃以上1300℃以下にて長手方向の垂直断面における断面減少率10%以上の熱間加工を施す熱間加工工程、
    熱間加工を施した前記合金に軟質化焼鈍を施す軟質化焼鈍工程
    を備えることを特徴とする炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
  2. 前記熱間加工工程の後で、前記軟質化焼鈍工程の前に、さらに、前記合金を1100℃以上1300℃以下、かつ、4時間以上30時間以下保持する均質化熱処理工程を備える
    ことを特徴とする請求項1に記載の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
  3. 前記炭素含有Cr系ステンレス鋼が、厚さが4.0mm以上の、スラブ、板、又は帯の形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
  4. 前記合金が、質量%で、
    C:0.40%以上1.00%以下、
    Cr:10.5%以上18.0%以下、
    Si:0~1.00%、
    Mn:0~1.00%、
    Ni:0~1.0%、
    Mo:0~1.00%、
    V:0~1.00%、
    N:0~0.10%、
    P:0.040%以下、
    S:0.030%以下、
    残部:Fe及び不純物
    を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の炭素含有Cr系ステンレス鋼の製造方法。
  5. 質量%で、C:0.40%以上1.00%以下、Cr:10.5%以上18.0%以下を含有し、
    板厚中央部における炭化物の投影面積円相当直径の最大値が5μm以下
    であることを特徴とする炭素含有Cr系ステンレス鋼。
  6. 質量%で、
    C:0.40%以上1.00%以下、
    Cr:10.5%以上18.0%以下、
    Si:0~1.00%、
    Mn:0~1.00%、
    Ni:0~1.0%、
    Mo:0~1.00%、
    V:0~1.00%、
    N:0~0.10%、
    P:0.040%以下、
    S:0.030%以下、
    残部:Fe及び不純物
    を含有する
    ことを特徴とする請求項5に記載の炭素含有Cr系ステンレス鋼。
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