JP2023037491A - 分岐デキストラン、整腸剤、コレステロール低下剤、血糖値上昇抑制剤、澱粉老化抑制剤、パンの食感改良剤、原料、及び分岐デキストランの製造方法 - Google Patents

分岐デキストラン、整腸剤、コレステロール低下剤、血糖値上昇抑制剤、澱粉老化抑制剤、パンの食感改良剤、原料、及び分岐デキストランの製造方法 Download PDF

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健司 松本
Kenji Matsumoto
裕司 本多
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亘 栗山
Wataru Kuriyama
秀飛 阿部
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Abstract

【課題】本発明の課題は、水溶性食物繊維含量が所定以上であるデキストランを提供することである。【解決手段】本発明は、ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌由来の分岐デキストランであって、前記分岐デキストランのグリコシド結合が、グリコシド結合全体に対して、50%以上99%未満のα-1,6結合、1%以上40%未満のα-1,2結合、及び0.1%以上20%未満のα-1,3結合を含み、前記分岐デキストランの重量平均分子量を前記分岐デキストランの数平均分子量で除した値が、100以上1500未満であり、前記分岐デキストランが、80質量%以上の水溶性食物繊維を含む、分岐デキストランを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、分岐デキストラン、整腸剤、コレステロール低下剤、血糖値上昇抑制剤、澱粉老化抑制剤、パンの食感改良剤、原料、及び分岐デキストランの製造方法に関する。
乳酸菌が菌体外に産生する多糖類は、菌体外多糖(EPS;exopolysaccharide)と呼ばれる。
菌体外多糖としては、デキストラン等が挙げられる。デキストランは、スクロースを原料として乳酸菌によって産生され、グルコースを唯一の構成成分とし、α-1,6グリコシド結合を主体とした構造を有する。
デキストランを産生する乳酸菌としては、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)が挙げられる。
特許文献1には、ロイコノストック・メセンテロイデスに属する菌株の培養によるデキストラン生産について開示されている。
デキストランの用途としては、代用血漿、化粧料等が知られる(特許文献2~4)。
特開平11-187892号公報 特開平9-110701号公報 特開2004-59473号公報 特許第4794722号公報
しかし、ロイコノストック・メセンテロイデス以外の乳酸菌が産生し、かつ、機能性に優れるデキストランに対するニーズがある。
ロイコノストック・メセンテロイデス以外の乳酸菌としては、ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌が挙げられる。また、デキストランに要求される機能としては、水溶性食物繊維含量が高いことが挙げられる。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、水溶性食物繊維含量が所定以上であるデキストランの提供を目的とする。
本発明者らが検討した結果、ロイコノストック・シトレウムが産生する分岐デキストランについて、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率を調整することで上記課題を解決できることを新規に見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1) ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌由来の分岐デキストランであって、
前記分岐デキストランのグリコシド結合が、グリコシド結合全体に対して、50%以上99%未満のα-1,6結合、1%以上40%未満のα-1,2結合、及び0.1%以上20%未満のα-1,3結合を含み、
前記分岐デキストランの重量平均分子量を前記分岐デキストランの数平均分子量で除した値が、100以上1500未満であり、
前記分岐デキストランが、80質量%以上の水溶性食物繊維を含む、
分岐デキストラン。
(2) 前記分岐デキストランの保水率が、10質量%以上である、(1)に記載の分岐デキストラン。
(3) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを含む、整腸剤。
(4) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを含む、コレステロール低下剤。
(1) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを含む、血糖値上昇抑制剤。
(6) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを含む、澱粉老化抑制剤。
(7) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを含む、パンの食感改良剤。
(8) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを含む、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品又は工業用の原料。
(9) (1)又は(2)に記載の分岐デキストランを製造するための、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)からなる原料。
(10) ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌を培養する培養工程と、
前記培養工程後、培養物を濾過することで分岐デキストランを含む濾液を回収する濾過工程と、を含み、
前記濾過工程において、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上を含み、かつ、孔径が0.01μm以上1.00μm以下である多孔性濾過膜を使用する、
分岐デキストランの製造方法。
(11) 前記ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌が、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)である、(10)に記載の分岐デキストランの製造方法。
本発明によれば、水溶性食物繊維含量が所定以上であるデキストランが提供される。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<分岐デキストラン>
本発明の分岐デキストランは、以下の要件を全て満たす。
(要件1)ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌由来の分岐デキストランである。
(要件2)分岐デキストランのグリコシド結合が、50%以上99%未満のα-1,6結合、1%以上40%未満のα-1,2結合、及び0.1%以上20%未満のα-1,3結合を含む。
(要件3)分岐デキストランの重量平均分子量を分岐デキストランの数平均分子量で除した値が、100以上1500未満であり、かつ、分岐デキストランが、80質量%以上の水溶性食物繊維を含む。
(1)(要件1)について
本発明の分岐デキストランは、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)に属する乳酸菌に由来するものである。
本発明において「ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌に由来する分岐デキストラン」とは、ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌が産生した分岐デキストラン及びその分解物等を包含する。
ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌の好ましい例としては、「ロイコノストック・シトレウム KD3」株が挙げられるが、これに限定されない。
この乳酸菌株は、本発明者らによって発見されたものであり、令和2年2月10日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託し、「受託番号NITE P-03378」として受託されたものである。
(2)(要件2)について
本発明の分岐デキストランは、主に、グルコースがα-1,6グルコシド結合に連結した構造を有する。さらに、本発明の分岐デキストランは、α-1,2グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合による分岐構造を有する。
この特徴的な糖鎖構造は、少なくとも3種類の酵素(デキストランスクラーゼ1、デキストランスクラーゼ2、アルタナンスクラーゼ)が合成に関与することにより形成されるものと推察される。
本発明者らは、ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌由来の分岐デキストランのうち、(要件2)を後述する(要件3)とともに満たす分岐デキストランが、意外にも、水溶性食物繊維量が高い傾向にあるという意外な知見を見出した。
具体的に、本発明の分岐デキストランは、そのグリコシド結合が、グリコシド結合全体に対して、50%以上99%未満のα-1,6結合、1%以上40%未満のα-1,2結合、及び0.1%以上20%未満のα-1,3結合を含む。
本発明の分岐デキストランにおけるα-1,6結合の下限は、グリコシド結合全体に対して、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
本発明の分岐デキストランにおけるα-1,6結合の上限は、グリコシド結合全体に対して、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
本発明の分岐デキストランにおけるα-1,2結合の下限は、グリコシド結合全体に対して、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。
本発明の分岐デキストランにおけるα-1,2結合の上限は、グリコシド結合全体に対して、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
本発明の分岐デキストランにおけるα-1,3結合の下限は、グリコシド結合全体に対して、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。
本発明の分岐デキストランにおけるα-1,3結合の上限は、グリコシド結合全体に対して、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
分岐デキストランのグリコシド結合の組成は、実施例に示した糖鎖構造解析(NMRを用いたH-NMRプロファイル)に基づき特定される。
(3)(要件3)について
本発明の分岐デキストランの重量平均分子量(Mw)を、該分岐デキストランの数平均分子量(Mn)で除した値(以下、「Mw/Mn」ともいう。)は、100以上1500未満である。かつ、該分岐デキストランは、80質量%以上の水溶性食物繊維を含む。
「Mw/Mn」とは、分子量分布を意味する。
通常、単一分子であれば「Mw」及び「Mn」の値が一致するため、分子群の「Mw/Mn」が1に近いほど、単一分子の割合が高いことを意味する。
本発明者の検討の結果、分岐デキストランの分子量分布を所定範囲内に調整すること、すなわち、「Mw/Mn」を100以上1500未満にすることで、水への可溶化度が特に高まりやすいことを見出した。
その結果、「Mw/Mn」が100以上1500未満であれば、分岐デキストラン中の水溶性食物繊維量が、80質量%以上という高い値となることも見出した。
本発明の分岐デキストランにおける「Mw」の下限は、好ましくは200,000以上、より好ましくは300,000以上である。
本発明の分岐デキストランにおける「Mw」の上限は、好ましくは1,700,000以下、より好ましくは1,500,000以下である。
本発明の分岐デキストランにおける「Mn」の下限は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上である。
本発明の分岐デキストランにおける「Mn」の上限は、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下である。
本発明の分岐デキストランにおける「Mw/Mn」の下限は、好ましくは100以上、より好ましくは110以上である。
本発明の分岐デキストランにおける「Mw/Mn」の上限は、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,300以下である。
本発明の分岐デキストラン中の水溶性食物繊維量の下限は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
本発明の分岐デキストラン中の水溶性食物繊維量は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、100質量%以下、95質量%以下である。
分岐デキストランの「Mw」、「Mn」及び「Mw/Mn」は、実施例に示したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づき特定される。
分岐デキストラン中の水溶性食物繊維量は、実施例に示した「栄養表示基準」(平成8年5月厚生省告示第146号)における「栄養成分等の分析方法等」(栄養表示基準別表第1の第3欄に掲げる方法)、「8.食物繊維」、「(2)高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)」に記載された方法に基づき特定される。
(4)その他の要件
本発明の分岐デキストランは、より機能性を高める観点から、下記の要件のいずれか又は全てを満たしていてもよく、満たしていなくともよい。
本発明の分岐デキストランの保水率の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり得る。
本発明の分岐デキストランの保水率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、100質量%以下、50質量%以下であり得る。
本発明の分岐デキストランの保水率は、実施例に示した条件での加熱前後の試料重量に基づき特定される。
本発明の分岐デキストランの固有粘度(η)の下限は、好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。
本発明の分岐デキストランの固有粘度(η)の上限は、好ましくは140以下、より好ましくは110以下である。
本発明の分岐デキストランの固有粘度は、実施例に示した条件で特定される比粘度(ηsp)及び還元粘度(ηred)に基づき特定される。
本発明の分岐デキストランの粘度平均分子量(Mv)の下限は、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上である。
本発明の分岐デキストランの粘度平均分子量(Mv)の上限は、好ましくは650,000以下、より好ましくは500,000以下である。
本発明の分岐デキストランの粘度平均分子量(Mv)は、実施例に示した条件で特定される固有粘度(η)に基づき特定される。
<分岐デキストランの用途>
本発明の分岐デキストランは水溶性食物繊維量が高く、優れた機能性を有する。
例えば、本発明の分岐デキストランは下記の用途に使用し得る。
本発明の分岐デキストランを各種用途に使用する際における、分岐デキストランの形態は、単離された分岐デキストランであってもよく、乳酸菌の菌体や培養物の濾過物等であってもよい。
本発明の分岐デキストランを各種用途に使用する際には、配合しようとする対象(製剤、飲食品等)に適宜配合すればよい。配合の方法や条件等は、対象の種類に応じて従来知られるものを採用できる。
本発明の分岐デキストランは、配合しようとする対象の製造工程のいずれの段階で配合してもよい。例えば、分岐デキストランが乳酸菌の菌体に含まれるものである場合、分岐デキストランを配合した後に発酵工程を行ってもよい。
本発明の分岐デキストランが、乳酸菌の菌体の形態である場合、乳酸発酵のスターターとして利用することができる。
具体的には、該菌体を原料に添加し、発酵させることで、乳酸菌発酵物を調製することができる。かかる操作により、所望の原料中に本発明の分岐デキストランを配合することができる。
発酵条件は、乳酸菌を生育でき、代謝物(分岐デキストラン等)が生じる条件であれば特に限定されない。例えば、原料の種類(乳、野菜等)等に応じて、発酵温度や発酵時間を適宜設定することができる。
(整腸剤)
本発明の分岐デキストランは、整腸剤として調製し得る。
本発明の分岐デキストランを含む整腸剤によれば、例えば、大腸内で短鎖脂肪酸(プロピオン酸等)を特異的に産生し、悪玉菌の増殖を抑制することができる。
その結果、該整腸剤によれば、胃や腸の状態が整えられ、腸のぜん動運動が促進されるため、便通が促進され、便秘を改善し得る。
本発明の整腸剤中の本発明の分岐デキストランの含有量は、得ようとする効果や、投与しようとする対象の状態に応じて適宜調整できる。
本発明の整腸剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の下限は、整腸剤に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
本発明の整腸剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の上限は、整腸剤に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
(コレステロール低下剤)
本発明の分岐デキストランは、コレステロール低下剤として調製し得る。
本発明の分岐デキストランを含むコレステロール低下剤によれば、例えば、悪玉コレステロール(non-HDLコレステロール)を特異的に減少させ、血中の総コレステロール濃度を低下させ得ることから、脂質異常症や動脈硬化症等の脂質代謝の異常を改善し得る。
本発明のコレステロール低下剤は、コレステロールの低減を目的とする任意の態様で使用でき、例えば、脂質吸収抑制剤、コレステロール排泄促進剤、体脂肪低減剤、脂肪蓄積抑制剤等としても機能する。
本発明のコレステロール低下剤中の本発明の分岐デキストランの含有量は、得ようとする効果や、投与しようとする対象の状態に応じて適宜調整できる。
本発明のコレステロール低下剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の下限は、コレステロール低下剤に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
本発明のコレステロール低下剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の上限は、コレステロール低下剤に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
(血糖値上昇抑制剤)
本発明の分岐デキストランは、血糖値上昇抑制剤として調製し得る。
本発明の分岐デキストランを含む血糖値上昇抑制剤によれば、例えば、食前、食間又は食後に摂取することで、血糖値が上昇する程度を抑制し得る。
本発明の血糖値上昇抑制剤中の本発明の分岐デキストランの含有量は、得ようとする効果や、投与しようとする対象の状態に応じて適宜調整できる。
本発明の血糖値上昇抑制剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の下限は、血糖値上昇抑制剤に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
本発明の血糖値上昇抑制剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の上限は、血糖値上昇抑制剤に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
(澱粉老化抑制剤)
本発明の分岐デキストランは、澱粉老化抑制剤として調製し得る。
本発明の分岐デキストランを含む澱粉老化抑制剤によれば、例えば、澱粉を主成分とする食品(パン、米等)の老化を抑制できるため、風味や食感が良好な食品が得られやすい。
したがって、本発明の分岐デキストランは、食感改良剤(パンの食感改良剤等)としても機能する。
本発明の澱粉老化抑制剤や、本発明の食感改良剤における分岐デキストランの形態は、単離された分岐デキストランであってもよく、乳酸菌の菌体や培養物の濾過物等であってもよい。
本発明の澱粉老化抑制剤や、本発明の食感改良剤は、配合対象物中に添加してもよいし、本発明の分岐デキストランを培養等によって産生させることで配合してもよい。
後者の態様においては、乳酸菌の菌体や培養物の濾過物等をスターターとして用いることで、配合対象物中に本発明の澱粉老化抑制剤や、本発明の食感改良剤を配合できる。
例えば、パンを製造する場合、強力粉に対して等量の水を混合し、得られた混合物に対し、乳酸菌の生菌をスターターとして添加し、発酵させることで、本発明の澱粉老化抑制剤や、本発明の食感改良剤を含む種(サワー種等)が得られる。
本発明の澱粉老化抑制剤中の本発明の分岐デキストランの含有量は、得ようとする効果や、配合しようとする対象の種類(パン、米等)に応じて適宜調整できる。
本発明の澱粉老化抑制剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の下限は、澱粉老化抑制剤に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。
本発明の澱粉老化抑制剤中の本発明の分岐デキストランの含有量の上限は、澱粉老化抑制剤に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
(その他の用途)
本発明の分岐デキストランは、デキストランの用途として知られる任意のその他の用途に使用できる。
例えば、本発明の分岐デキストラン、飲食品(健康志向の飲食品を含む、例えば、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)、化粧品組成物、医薬用組成物(医薬品、医薬部外品等)等に配合し得る。
飲食品としては、ヒト用食品、乳児用食品(乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード)、非ヒト動物又は養魚用飼料、ペットフード、ペット用ガム等が挙げられる。具体的には、以下が挙げられる:
発酵食品(乳酸菌飲料、発酵乳等)、及びそのスターター、
飲料類(日本茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ジュース、加工乳、スポーツドリンク等)、
ベーカリー類(パン、ピザ、パイ等)、
洋菓子類(クッキー、クラッカー、ビスケット、ケーキ、カステラ等)、
麺類(うどん、そば、ラーメン等)、
パスタ類(スパゲティー、マカロニ等)、
スナック菓子類(おかき、ポテトチップス、スナック等)、
菓子類(ハードキャンディー、ソフトキャンディー、キャラメル、ガム、チョコレート等)、
冷菓(アイスクリーム、シャーベット等)、
乳製品(クリーム、チーズ、ムース、粉乳、練乳、乳飲料等)、
洋生菓子類(ゼリー、プリン、ムース、ヨーグルト、バタークリーム、カスタードクリーム等)、
和菓子類(求肥、ういろう、もち、おはぎ、どら焼き等)、
果実・野菜の加工食品類(ジャム、マーマレード、シロップ漬け、糖果等)、
ペースト類(フラワーペースト、フルーツペースト、ピーナッツペースト等)、
漬物類(らっきょ漬け、福神漬け、キムチ等)、
複合調味料(醤油、ソース、たれ、麺つゆ、だしの素、スープの素等)、
調味料類(シチューの素、スープの素、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ等)、
レトルト食品又は缶詰食品(カレー、シチュー、スープ等)、
冷凍食品又は冷蔵食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり等)、
水産加工食品(ちくわ、かまぼこ等)、
米飯類(リゾット、寿司等)。
化粧品組成物としては、例えば、洗浄剤(石けん、ボディーシャンプー、クレンジングクリーム、洗顔料等)、化粧品(ローション、乳液、美容液等)、クリーム(洗顔フォーム、バニシングクリーム、コールドクリーム、エモリエントクリーム、マッサージクリーム等)、パック、浴用剤等が挙げられる。
医薬用組成物としては、経口投与剤、血管内投与剤、経腸投与剤、経皮投与剤、腹腔内投与剤等が挙げられる。
医薬用組成物の剤形としては、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。
また、医薬用組成物には、得ようとする効果に応じた添加剤(賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等)を配合してもよい。
(原料としての分岐デキストランの使用)
上記のとおり、本発明の分岐デキストランは、各種製剤や飲食品に配合し得る。
したがって、本発明は、本発明の分岐デキストランを含む、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品又は工業のために用いられる原料も包含する。
<分岐デキストランの原料>
本発明の分岐デキストランは、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)の培養物から得られやすい。
したがって、本発明は、本発明の分岐デキストランを製造するための、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)からなる原料も包含する。
<分岐デキストランの製造方法>
本発明の分岐デキストランは、ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌から得られる。
該乳酸菌からの分岐デキストランの調製方法は特に限定されないが、通常、乳酸菌を培養し、その培養物を回収することで本発明の分岐デキストランが得られる。
得られた培養物は、必要に応じて精製してもよく、精製しなくともよい。
(乳酸菌の培養方法)
ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌の培養方法は特に限定されないが、乳酸菌の培養に用いられる任意の条件を採用できる。
培養に用いる乳酸菌は、生菌であっても休止菌であってもよく、生菌及び休止菌の両方であってもよい。
培養に用いる乳酸菌としては、本発明の分岐デキストランが得られやすいという観点から、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)が好ましい。
培養培地中の炭素源としては、例えば、糖類(ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、ソルボース、マンニトールマルトース、スクロース、トレハロース、澱粉加水分解物、廃糖蜜等)を資化性に応じて使用できる。
培養培地中の窒素源としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩類(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等)、硝酸塩類を使用できる。
培養培地中の無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄、有機成分(ペプトン、酒粕、乳清(ホエイ)、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等)等を使用することができる。
培養培地としては、調製済みの培地(MRS培地、及びその修正培地等)を使用することができる。
培養温度は、乳酸菌が生育する範囲であればよく、通常、20~40℃の範囲が好適である。
培養時のpHは、好ましくは5.0~8.0である。
培養時間は、好ましくは10~30時間程度である。
(培養物の精製)
培養物を精製する場合、膜濾過により、菌体、乳酸菌発酵物、培地成分の全て又は一部を培養物から除去する方法が好ましい。
得られた濾液を、分岐デキストランを含む分画として回収する。
膜濾過による精製の方法としては特に限定されないが、限外濾過、精密濾過、粗濾過、逆浸透等が挙げられる。
膜濾過を行う際には、濾過対象を20~50℃で循環させることが好ましい。
膜濾過の種類としては特に限定されないが多孔性濾過膜、中空糸膜等が挙げられる。
これらのうち、本発明の分岐デキストランが得られやすいという観点から、多孔性濾過膜を少なくとも用いることが好ましい。
膜濾過による精製は、1種類の方法で行ってもよく、2種類以上の方法を組み合わせて行ってもよい。また、同じ種類の方法を複数回行ってもよい。
例えば、多孔性濾過膜による限外濾過を行う前又は後に中空糸膜による限外濾過を行ってもよい。
多孔性濾過膜の成分は、限外濾過等に使用され得るものであれば特に限定されないが、本発明の分岐デキストランが得られやすいという観点から、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上を含むものが好ましい。このような多孔性濾過膜は、「セラミック膜」とも称され得る。
多孔性濾過膜としてセラミック膜を用いると、濾過対象に圧力がかかりやすく、濾過時に剪断力が加えられる。そして、かかる剪断力が分岐デキストランに加えられる結果、分岐デキストランの分子量分布がブロードになり、本発明の要件を満たす分岐デキストランが得られやすくなる。
なお、以下、「酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上」を「セラミック成分」ともいう。
多孔性濾過膜は、多孔性濾過膜全体に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上のセラミック成分を含み得る。
多孔性濾過膜が2種以上のセラミック成分を含む場合、その総量が上記範囲内にあればよい。
多孔性濾過膜の構造としては特に限定されず、濾過膜として機能するものであればよい。例えば、多孔性濾過膜は単層であってもよく、多層であってもよい。多孔性濾過膜が多層である場合、例えば、濾過膜層や支持層を備えるものであってもよい。
多孔性濾過膜の孔径は、本発明の分岐デキストランが得られやすいという観点から、各孔の孔径が0.01μm以上1.00μm以下の範囲にあることが好ましい。
多孔性濾過膜の孔径の下限は、より好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。
多孔性濾過膜の孔径の上限は、より好ましくは0.9μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下である。
中空糸膜の成分は、限外濾過等に使用され得るものであれば特に限定されないが、本発明の分岐デキストランが得られやすいという観点から、ポリアクリロニトリル及び/又はポリスルホンを含むものが好ましい。
中空糸膜の分画分子量は、本発明の分岐デキストランが得られやすいという観点から、1,000以上100,000以下範囲にあることが好ましい。
中空糸膜の分画分子量の下限は、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。
中空糸膜の分画分子量の上限は、より好ましくは90,000以下、さらに好ましくは80,000以下である。
(その他の処理)
培養物やその精製物は、必要に応じて各種処理に供してもよい。
このような処理としては、濃縮処理(限外濾過等)、分離処理(有機溶媒による沈殿分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、遠心分離等)、水熱処理、超音波破砕処理、酵素(デキストラン分解酵素等)添加、夾雑物の除去(活性炭、イオン交換樹脂、合成吸着剤等による)、乾燥処理(凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等)が挙げられる。
上記の各処理の方法や条件は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
(分岐デキストランの好ましい製造方法)
本発明の分岐デキストランの好ましい製造方法は、
ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌を培養する培養工程と、
培養工程後、培養物を濾過することで分岐デキストランを含む濾液を回収する濾過工程と、を含み、
濾過工程において、セラミック成分(酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上)を含み、かつ、孔径が0.01μm以上1.00μm以下である多孔性濾過膜を使用する。
培養工程や濾過工程の条件は上述の条件を適宜採用できる。
上記製造方法におけるロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌は、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)が好ましい。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験例1:ロイコノストック・シトレウムの単離及び評価>
以下の方法でロイコノストック・シトレウムを単離し、その性質を評価した。なお、本試験は、「微生物の分類と同定」(長谷川武治編、学会出版センター、1985年)に準じて行った。
(1)菌株の単離
様々な野菜及び漬物を0.85%滅菌食塩水に懸濁した。
得られた懸濁液を、de Man,Rogosa,and Sharpe(MRS)寒天培地(「Difco(登録商標)ラクトバシラスMRSブロス」、ベクトン・ディッキンソン製)に塗布し、「アネロパック・ケンキ」(三菱ガス化学社製)を用いて30℃で2~3日の嫌気性培養を行った。培養後、生育した微生物集落をランダムに釣菌した。
採取した微生物集落を、寒天培地(「BCP加プレートカウントアガール」、日水製薬株式会社製)上に画線し、形成された集落周辺の黄変に基づき酸産生の有無を確認した。
酸産生が確認された菌株を乳酸菌候補株として以下の試験に供した。
(2)菌株の同定
各乳酸菌候補株において、ゲノム上の16SリボソームRNA遺伝子の部分塩基配列(V1-V3超可変領域を含む600bp程度)を解読した。
各部分塩基配列を、「Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)」(URL:https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で検索することによって、乳酸菌であるかの判定を行った。
その結果、92株を乳酸菌として同定した。これらの乳酸菌の大部分は、ロイコノストック属の乳酸菌であると推察された。
得られた菌株のうち、Leuconostoc citreum KD3株(受託番号NITE P-03378)を選定し、以下の試験に供した。
(3)乳酸菌の菌学的性質
Leuconostoc citreum KD3株は、以下の菌学的性質を有することを確認した。
de Man,Rogosa,and Sharpe(MRS)寒天培地(「Difco(登録商標)ラクトバシラスMRSブロス」、ベクトン・ディッキンソン製)上の集落の形状は、平滑な円形白色集落だった。
5%スクロース含有MRS寒天培地上の集落の形状は、粘稠性を示した。
細胞形状は、ロイコノストック属に典型的な乳酸球菌の形状(少し楕円形を帯びた球菌形状)だった。
そのほか、絶対的ヘテロ乳酸発酵(顕著なガス生成あり)、グラム染色陽性、カタラーゼ試験陰性、胞子非形成等の性質が認められた。
(4)乳酸菌の糖類資化能力
Leuconostoc citreum KD3株について、糖類(49種類)に対する資化能力を確認した。
Leuconostoc citreum KD3株をMRS液体培地10mlで増殖の定常期まで静置培養した。培養物を遠心分離し、得られた菌体を適量の滅菌水で洗浄した後、再度の遠心分離により菌体を回収した。
回収した菌体に滅菌水10mlを加え懸濁し、得られた懸濁液(1ml)を「アピ 50CHL培地」(ビオメリュー社製)に添加した。
各懸濁液を、「アピ 50CHキット」(ビオメリュー社製)の各ウェルに適量分注した。なお、各ウェルの底にはそれぞれ49種類の糖類が塗り付けられている。
次いで、33℃で72時間培養した後、各ウェルにおける色調の変化を観察することで、資化性の有無を判断した。その結果を表1に示す。
表中、「陽性率」の項は、Leuconostoc citreumに属する菌を36℃±2、48±6時間で培養した後に、対象の糖類に対する資化能力を有する確率を示す。
「資化能力」の項において、「+」はLeuconostoc citreum KD3株が対象の糖類を資化できることを示し、「-」は対象の糖類を資化できないことを示す。
Figure 2023037491000001
<試験例2:分岐デキストランの作製>
以下の方法で、ロイコノストック・シトレウム KD3株を用い、5種の分岐デキストランを作製した。
(1)「分岐デキストラン-1」の作製
ロイコノストック・シトレウム KD3株の凍結ストックを種培養液に1%添加し、33℃で9時間以上静置培養した。次いで、培養液を、前培養液(種培養液と同組成)に1%添加し、種培養と同条件でさらに培養を行った。
得られた培養液を、分岐デキストラン産生用培地(2L)に植菌した後、30℃、150rpmの速度で24時間撹拌培養した。培養中のpHは、24%苛性ソーダを用いて、6.5以上となるように制御した。
培養液を90℃で1時間加熱処理を行い、25℃以下まで冷却した。
冷却後、培養液を、セラミック膜(0.05μmUF)を備える限外濾過装置を用いて限外濾過を行った。濾液を、濾過側排出液がBrix0.1%以下になるまで加水洗浄し、セラミック膜(0.05μmUF)で濃縮した。濃縮物を90℃で1時間加熱処理して、冷凍庫で凍結した後、凍結乾燥機で凍結乾燥した。乾燥物を粉砕機(60メッシュパス)で粉砕することで、「分岐デキストラン-1」を粉末として得た。なお、収量は、培養液1Lあたり約12gだった。
なお、本例の限界濾過で用いたセラミック膜は、多孔性濾過膜に相当し、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上を含み、孔径が約0.05μmであるものである。
(2)「分岐デキストラン-2」の作製
限外濾過を行う前に、培養液に対して精密濾過を行った点以外は、「(1)「分岐デキストラン-1」の作製」と同様の操作を行い、「分岐デキストラン-2」を粉末として得た。収量は、培養液1Lあたり約12gだった。
精密濾過は、培養液に対して水(培養液量の3倍量以上)を添加し、セラミック膜(0.8μmMF)を用いて行った。得られた濾液を限外濾過に供した。
なお、本例の精密濾過で用いたセラミック膜は、多孔性濾過膜に相当し、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上を含み、孔径が約0.8μmであるものである。
(3)「分岐デキストラン-3」の作製
培養液を分岐デキストラン産生用培地(2L)に植菌する際にケタマカビ属Chaetomium erraticum由来のデキストラン分解酵素(デキストラナーゼ)を添加した点、及び、限外濾過及びその後の濃縮を中空糸膜によって行った点以外は、「(2)「分岐デキストラン-2」の作製」と同様の操作を行い、「分岐デキストラン-3」を粉末として得た。収量は、培養液1Lあたり約7gだった。
中空糸膜としては、分画分子量3,000の「マイクローザUF」(旭化成株式会社)を用いた。限外濾過後、濾過側排出液がBrix0.1%以下になるまで加水洗浄し、「マイクローザUF」で分岐デキストランを濃縮した。
(4)「分岐デキストラン-4」の作製
限外濾過を行う前に、培養液に対して超音波処理及び精密濾過を行った点以外は、「(1)「分岐デキストラン-1」の作製」と同様の操作を行い、「分岐デキストラン-4」を粉末として得た。収量は、培養液1Lあたり約10gだった。
超音波処理は、超音波破砕機を用いて行い、処理後に遠心分離によって菌体を除去し、上清を精密濾過に供した。
精密濾過は、培養液に対して水(培養液量の3倍量以上)を添加し、セラミック膜(0.8μmMF)を用いて行った。得られた濾液を限外濾過に供した。
なお、本例の精密濾過で用いたセラミック膜は、多孔性濾過膜に相当し、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上を含み、孔径が約0.8μmであるものである。
(5)「分岐デキストラン-5」の作製
限外濾過の代わりに遠心分離を行い、得られた上清をそのまま凍結乾燥することで粉末を得た点以外は、「(1)「分岐デキストラン-1」の作製」と同様の操作を行い、「分岐デキストラン-5」を粉末として得た。収量は、培養液1Lあたり約150gだった。
各分岐デキストランの作製において採用した濾過方法等を表2に示す。
Figure 2023037491000002
<試験例3:分岐デキストランの解析>
以下の方法で、試験2で得られた各分岐デキストランの解析を行った。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定
各分岐デキストランをイオン交換水で溶解させた後、フィルター(0.2μm)で濾過し、濾液を試料溶液として準備した。
次いで、下記の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を行った。
市販のプログラムソフトを用いて、分子量標準試料から検量線を作成し、各試料溶液中の分岐デキストランの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。
あわせて、重量平均分子量を前記分岐デキストランの数平均分子量で除した値(Mw/Mn)も算出した。その結果を表3に示す。
[GPC測定条件]
GPC装置:HLC-8220 GPC
本カラム:TSKgel GMPWを3本直列
ガードカラム:PWH
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.5%~2.0%
注入量:100μL
分析時間:40分
分子量標準試料:グルコース、マルトース、マルトペンタオース、マルトヘプタオース、標準プルラン(P-5、P-10、P-20、P-50、P-100、P-200、P-400、P-800(Shodex社製))
(2)水溶性食物繊維量の測定
「栄養表示基準」(平成8年5月厚生省告示第146号)における「栄養成分等の分析方法等」(栄養表示基準別表第1の第3欄に掲げる方法)、「8.食物繊維」、「(2)高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)」に記載された方法を参考に、以下の方法で各分岐デキストラン中の水溶性食物繊維量を測定した。その結果を表3に示す。
(2-1)分析用試料の調製方法
各分岐デキストラン(1g)を量りとり、50mM MES-TRIS緩衝液(pH6.3、24℃)40mlを添加し超音波破砕処理によって分散させた。超音波破砕には、「Sonifier450」(Branson社製、出力メモリ4、10min、1/8”テーパー型マイクロチップ使用)を用いた。
得られた溶液(4ml)を試験管に分注し、食物繊維測定用キット(「Dietary Fiber Assay Kit」、富士フイルム和光純薬社製)付属の熱安定α-アミラーゼ溶液試薬(0.02ml)を加え、アルミ箔で覆った。次いで、沸騰水浴中で5分毎に撹拌しつつ30分間反応させた後、冷却した。
得られた反応液に、試験管の壁を洗い流しながら水(1ml)を加え、60℃に冷却後、キット付属のプロテアーゼ溶液(0.02ml)及びアミログルコシダーゼ溶液(0.02ml)を同時に加え、アルミ箔で覆った。次いで、60℃の水浴中で振盪しつつ30分間反応させ、冷却した。
得られた反応液(約5ml)を、イオン交換樹脂にSV1.0以下で通液することにより脱塩した。イオン交換樹脂としては、「DOWEXTM22(Cl型)」(ダウ・ケミカル社製)及び「DOWEXTM88(Na型)」(ダウ・ケミカル社製)を3:2で混合したものを用いた。さらに、反応液の約3倍量の脱イオン水で溶出し、溶出液の総量を約20mlに調整した。
得られた溶出液をメスフラスコで25mlに定容後、孔径0.22μmのメンブランフィルターによって濾過して得られた濾液を分析用試料として回収した。
(2-2)水溶性食物繊維量の算出
各分析用試料において、酵素処理によっても分解されずに残存する未消化分岐デキストランを水溶性食物繊維とみなした。
かかる前提を踏まえ、分析用試料中のグルコース量(mg)を常法のグルコース・オキシダーゼ法にて定量し、式1及び2に基づき水溶性食物繊維量を算出した。
[式1]
水溶性食物繊維質量(mg)=分析用試料中の固形分質量(mg)-分析用試料中のグルコース質量(mg)
[式2]
水溶性食物繊維量(質量%)=分析用試料中の水溶性食物繊維質量(mg)/分析用試料中の固形分質量(mg)×100
(3)糖鎖構造解析
以下の条件で各分岐デキストランの構造解析を行い、グリコシド結合の組成を測定した。その結果を表4に示す。
(3-1)H-NMR測定条件
H-NMR装置:ECX-400P,JEOL Tokyo,Japan
(3-2)構造解析手法
各分岐デキストランを重水(DO)に溶解させた後、H-NMR spectrometerを用いて、H-NMRスペクトルを測定した。
また、4.8-5.2ppmに現れるα-グリコシド結合特有の下記スペクトルから各分岐デキストランのグリコシド結合の組成と比率を決定した。
4.85ppm;α-1,6
4.98ppm;α-1,2
5.07ppm;α-1,6/2,1
5.20ppm;α-1,3
Figure 2023037491000003
Figure 2023037491000004
表3及び4に示されるとおり、グリコシド結合の組成及び「Mw/Mn」が本発明の要件を満たしていると、各分岐デキストランの水溶性食物繊維含量が90%以上という高い値だった。
<試験例4:分岐デキストランの保水率の算出>
以下の方法に基づき、上記で得られた各分岐デキストランの保水率を算出した。その結果を表5に示す。
各分岐デキストランについて、95℃、5時間加熱乾燥した際の重量(g)である「W0」、相対湿度(RH)100%条件下で35℃、24時間放置した際の重量(g)である「W1」、その後相対湿度(RH)43%条件下で35℃、24時間放置した際の重量(g)である「W2」をそれぞれ測定した。
次いで、各重量(g)の測定結果に基づき、式3によって保水率を算出した。
[式3]
保水率(%)=((W2-W1)/(W1-W0))×100
<試験例5:分岐デキストランの固有粘度及び粘度平均分子量の測定>
以下の方法に基づき、上記で得られた各分岐デキストランの固有粘度(η)及び粘度平均分子量(Mv)を算出した。その結果を表5に示す。
各分岐デキストランを、30℃で0、0.1、0.2、0.3、0.4、及び0.5(w/v)%の水溶液に調製した。
次いで、30℃の水を満たした水槽にウベローデ型粘度計を入れ、各水溶液の流下時間(s)を測定した。
各サンプルの流下時間「t」と、純粋溶媒(水)の流下時間「t0」に基づき、式4によって比粘度を算出した。
[式4]
比粘度(ηsp)=(t-t0)/t0
さらに、比粘度(ηsp)を質量濃度(c)で割り、還元粘度(ηred)を算出した後、溶液濃度、及び還元粘度(ηred)の関係をプロットし、近似直線のy切片値(外挿値)を固有粘度(η)として特定した。
さらに、固有粘度(η)について、式5が成り立つ(式5中、「K」(Flory-Foxの定数)及び「α」は高分子と溶媒との組み合わせや温度に依存する定数)。
[式5]
固有粘度(η)=KMα(Mark-Kuhn-Houwinkの式)
本試験では、アミロースの値(K=0.0132,α=0.68)を使用し、アミロース相当の粘度平均分子量(Mv)を算出した。
Figure 2023037491000005
<試験例6:分岐デキストラン摂取による整腸効果の評価>
以下の方法に基づき、上記で得られた各分岐デキストランによる整腸効果を評価した。その結果を表6に示す。
20歳代から40歳代の健康だが便秘傾向にある男女を、2群(10人ずつ)に無作為で分けた。なお、本試験では、排便日数が週に6日以下である場合を便秘傾向にあるものとみなした。
2週間の前観察期間の後、各群の被験者に、「分岐デキストラン-2」又は「分岐デキストラン-5」のいずれかのみを、2週間にわたって1日あたり6g毎日摂取させた(各群n=10)。
摂取前及び摂取2週間後の各時点の状態について、アンケートによる自己申告(排便日数、排便量、試験後感想(自由記述))をさせた。なお、排便量は、ピンポン玉に見立てた数として計上させた。
Figure 2023037491000006
表6に示されるとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)の摂取により、排便日数が増加し、排便量について増加傾向が認められた。
摂取後感想においても、「分岐デキストラン-2」を摂取した場合、「分岐デキストラン-5」を摂取した場合と比較して、便秘傾向が改善されたという感想が多く得られた。
<試験例7:分岐デキストラン摂取による血糖値変動の評価>
以下の方法に基づき、上記で得られた分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)による血糖値変動効果を評価した。その結果を表7に示す。
試料として、グルコース又は分岐デキストランの1.25g/50ml水溶液を調製した。
次いで、各試料をマウス(C57BL/6JJcl(オス、10週齢))の体重1kgあたり0.5g単回投与した(各群n=6)。
投与後の各時点(投与後0、30、60、90、又は120分)で、「スタットストリップエクスプレス900」(Siemens Healthineers)を用いて尾静脈から直接血糖値の測定を行った。血糖値の統計処理として、対応のある2元配置分散分析後、単純主効果の検定を行った(* p<0.001)。0~120分でのAUC(Area Under the Curve)値についてマンホイットニーのU検定を用いた(* p<0.01)。
Figure 2023037491000007
表7に示されるとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)の摂取により、投与後30分以降の血糖値の上昇が、グルコース投与群と比較して抑制されていた。
特に、投与後120分間のAUC値は、グルコース投与群が約100mg・h/dLであるのに対して、分岐デキストラン投与群はその約40%の値であり、有意に低かった。
<試験例8:分岐デキストラン摂取による機能性評価>
以下の方法に基づき、上記で得られた各分岐デキストランによる機能性を評価した。その結果を表8に示す。
試料として、高脂肪食(D12451)に上記で得られた各分岐デキストランを2.5%(w/w)添加した餌を準備した。対照試料としてコーンスターチを2.5%(w/w)添加した餌を準備した。
次いで、各試料をマウス(C57BL/6J(オス、6週齢))に10週間(予備飼育1週間)にわたり摂取させた(各群n=6、但し、対照群はn=7)。
摂取期間中、下記のデータを収集した。
(糞分析)
糞重量:1日あたりの糞重量(mg)
IgA量:1日あたりの糞中IgA量(μg/day)
(盲腸内容物分析)
内容物量:盲腸内容物重量(mg)
プロピオン酸量:1匹あたりのプロピオン酸量(μmol/mouse)
プロピオン酸濃度:盲腸1gあたりのプロピオン酸濃度(μmol/g)
(血液分析)
TC:総コレステロール量(mg/dL)
non-HDL-C:non-HDLコレステロール濃度(mg/mL)
データは全て平均値±標準誤差で表し、Tukey-Kramer法による検定で有意水準を0.05に設定して有意差の有無を判定した(* p<0.05)。
Figure 2023037491000008
糞分析の結果のとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストランの摂取により、1日あたりの糞中IgA量が、対照群に比べ有意に増加した。
盲腸内容物分析の結果のとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストランの摂取により、1匹あたりのプロピオン酸量、盲腸1gあたりのプロピオン酸量が、対照群に比べ有意に増加した。
血液分析の結果のとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストランの摂取により、総コレステロール濃度及びnon-HDLコレステロール濃度が、対照群に比べ減少傾向にあった。
特に、分岐デキストラン-2の摂取により、non-HDLコレステロール濃度が、対照群に比べ有意に減少した。
<試験例9:分岐デキストランの配合によるパンの品質改良効果>
以下の方法に基づき、上記で得られた分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)をパンに配合した場合の品質改良効果を評価した。その結果を表9に示す。
表9の「組成」の項に示す各材料を混合し、家庭用パン焼き器(「自動ホームベーカリーSD-BT-103」、National製)を用い、ねり、ドライイースト投入、ねかし、ねり、発酵、焼成、及び放冷の各工程を逐次実施し、パン(食パン)を作製した。
なお、表中、「添加成分」の項に示す値は、「強力粉」の重量(g)に対する分岐デキストラン又は市販デキストランの重量(g)の割合(重量%)を示した値である。また、「市販デキストラン」として、平均分子量1,500,000~2,800,000の「Dextran from Leuconostoc mesenteroides」(シグマ アルドリッチ社製)を用いた。
各パンについて、作製当日、及び、1日間室温保存後のそれぞれの時点で、厚さ20mm(5枚)にスライスし、その内部3枚の中央部分を40mm×40mmに切り出したクラム部分を得た。
得られた各クラム部分を以下の各評価に供した。
(クラムの硬さの測定)
円柱状プランジャー(直径30mm)を装着したクリープメータ(RE2-3305(株)山電製)を用いて、圧縮速度1mm/secで、クラム部分の厚さの60%を変形上限として単軸圧縮を行い、歪率30%のときの応力(gf)を、クラムの硬さとして特定した。
(クラムの硬さの変化量の測定)
作製当日、及び、1日間室温保存後のそれぞれのクラムの硬さについて、標準誤差を除した平均値に基づき、式6から保存によるクラムの硬さの変化量を算出した。
[式6]
変化量(Δgf)=1日間室温保存後のクラムの硬さ(gf)-作製当日のクラムの硬さ(gf)
(パンの柔らかさの評価)
パンの作製当日のクラムの硬さの値に基づき、下記の評価基準でパンの柔らかさを評価した。
[パンの柔らかさの評価基準]
70gf以上:×(0点)
60gf以上70gf未満:△(1点)
50gf以上60gf未満:○(3点)
50gf未満:◎(5点)
(パンの膨らみの評価)
作製当日のパンの体積を菜種置換法により測定し、下記の評価基準でパンの膨らみを評価した。
[パンの膨らみの評価基準]
1.50L未満:×(0点)
1.50L以上:△(1点)
1.60L以上:○(3点)
1.70L以上:◎(5点)
(パンの澱粉老化抑制効果の評価)
クラムの硬さの変化量について、対照と比較した場合の減少の程度に基づき、下記の評価基準でパンの澱粉老化抑制効果を評価した。
[パンの澱粉老化抑制効果の評価基準]
30%未満減少:×(0点)
30%以上50%未満減少:△(1点)
50%以上70%未満減少:○(3点)
70%以上減少:◎(5点)
(パンの総合評価)
パンの柔らかさ、膨らみ、及び澱粉老化抑制効果の各評価結果の合計値に基づき、下記の評価基準でパンを総合評価した。
[パンの総合評価基準]
0~3点:×
4~7点:△
8~11点:○、
12~15点:◎
Figure 2023037491000009
表9に示されるとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)の配合により、対照よりも、硬さの変化量が少なく、かつ、さらには柔らかさ、膨らみ、及び澱粉老化抑制効果のいずれもが良好なパンが得られた。
また、本発明の要件を満たす分岐デキストランは、市販デキストランと比べても全ての項目で高い評価だった。
<試験例10:分岐デキストランの配合による米飯の品質改良効果>
以下の方法に基づき、上記で得られた分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)を米飯に配合した場合の品質改良効果を評価した。その結果を表10に示す。
生米(秋田県産あきたこまち、精白米)150gを研いで炊飯窯に移し、水を加えて全量368gとした。
次いで、表10の「添加成分」の項に示す割合で分岐デキストランを添加して軽くかき混ぜた後、炊飯器で炊飯した。
なお、表中、「添加成分」の項に示す値は、生米の重量(g)に対する分岐デキストランの重量(g)の割合(重量%)を示した値である。
炊飯終了後、軽くほぐし、保温状態で15分間蒸らした。130gずつ、厚さが2cm程度となるようにラップで包んで室温で1時間放冷した後、冷蔵保存した。
保存前後の炊飯米飯に対し、以下の評価を行った。
(炊飯米飯の硬さの測定)
円柱状プランジャー(直径20mm)を装着したクリープメータ(RE2-3305(株)山電製)を用いて、圧縮速度1mm/secで、炊飯米飯の厚さの50%を変形上限として単軸圧縮を行った際の最大荷重(gf)を炊飯米飯の硬さとして特定した。
測定は10回繰り返し、最低値及び最大値の測定結果を除外した8回の平均値を算出した。
(炊飯米飯の硬さの変化量の測定)
作製当日、及び、1日間冷蔵保存後のそれぞれの炊飯米飯の硬さについて、標準誤差を除した平均値に基づき、式7から保存による炊飯米飯の硬さの変化量を算出した。
[式7]
変化量(Δgf)=1日間冷蔵保存後の炊飯米飯の硬さ(gf)-作製当日の炊飯米飯の硬さ(gf)
(炊飯米飯の澱粉老化抑制効果の評価)
炊飯米飯の硬さの変化量について、対照と比較した場合の減少の程度に基づき、下記の評価基準で炊飯米飯の澱粉老化抑制効果を評価した。
[炊飯米飯の澱粉老化抑制効果の評価基準]
20%以上減少:△
30%以上減少:○
40%以上減少:◎
Figure 2023037491000010
表10に示されるとおり、本発明の要件を満たす分岐デキストラン(分岐デキストラン-2)の配合により、対照よりも、硬さの変化量が少なく、澱粉老化抑制効果が良好な炊飯米飯が得られた。
特に、特に、本発明の要件を満たす分岐デキストランを0.3重量%添加した場合、顕著な澱粉老化抑制効果が認められた。
<試験例11:サワードウブレッドの作製>
「サワードウブレッド」とは、複数種の微生物を共培養させた生地を用いたパンである。本例では、以下のように乳酸菌(Leuconostoc citreum KD3株)とともに酵母を用いて、サワードウブレッドを作製した。
強力粉50g及び滅菌水50gを均一に混合した後、Leuconostoc citreum KD3株菌体懸濁液を1ml加え、よく撹拌し、初発の生菌数が1×10cfu/ml程度になるように調整した。得られた混合物を30℃で24時間発酵させ、サワー種(サワードウ)を得た。
次いで、上述の「試験例9」の表9に記載のパン組成を参考に、強力粉及び水の総和420gのうち、100gを上記サワー種に置き換え、他の材料と混合し、家庭用パン焼き器(「自動ホームベーカリーSD-BT-103」、National製)を用い、ねり、ドライイースト投入、ねかし、ねり、発酵、焼成、及び放冷の各工程を逐次実施し、サワードウブレッド(食パン)を作製した。
得られたサワードウブレッドは、澱粉質がサワー種に含まれる分岐デキストランにより改質されて老化が抑制され、柔らかさが持続し、また、もちもち感が付与され食感が改良された高品質のパンだった。
<試験例12:漬物の作製>
市販の白菜を5cm角に切り、100ppmに調製した次亜塩素酸ナトリウム(ピューラックスS(オーヤラックス社))に10分間浸漬し、その後、水道水ですすぎ洗いを行い、白菜を殺菌した。
殺菌後、葉の柔らかい部分と堅い部分の比率がおよそ同量になるようにジッパー付きビニール袋に50gずつ入れ、スクロース濃度5%、食塩濃度1%となるように調製した食塩/スクロース含有水150ml、及びLeuconostoc citreum KD3株菌体懸濁液200μlを混合し、15℃にて保温し、発酵を開始した。
発酵開始後、2~3日目においてpH4.0以下に達したことを確認した。
Leuconostoc citreum KD3株を発酵スターターとして接種した漬物は、乳酸発酵特有の風味を有し、さらには本発明の分岐デキストランにより漬け汁にとろみが付与されており、ボディ感が増強された高品質の漬物だった。
<実施例13:甘酒の作製>
米麹200gとご飯200g、水600mlを混合し、ヨーグルトメーカーで60℃に保温し、10~12時間発酵させた。次いで、得られた発酵物にLeuconostoc citreum KD3株菌体懸濁液を1ml加えよく撹拌し、これを30℃で24時間発酵させて乳酸菌発酵甘酒を作製した。
得られた甘酒は、Leuconostoc citreum KD3株を発酵スターターとして使用したことにより、乳酸発酵特有の風味により味のキレが良く、産生された分岐デキストランによりボディ感が増強された高品質の甘酒だった。
<実施例14:ヨーグルトの作製>
牛乳1000mlにLeuconostoc citreum KD3株菌体懸濁液を10ml加え、よく撹拌し、初発の生菌数が1×10cfu/ml程度になるよう調整した。これをヨーグルトメーカーで30℃に保温し、10~15時間発酵させてヨーグルトを作製した。
得られたヨーグルトは、Leuconostoc citreum KD3株を発酵スターターとして使用したことにより、産生された分岐デキストランにより口あたりが滑らかな高品質のヨーグルトだった。

Claims (11)

  1. ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌由来の分岐デキストランであって、
    前記分岐デキストランのグリコシド結合が、グリコシド結合全体に対して、50%以上99%未満のα-1,6結合、1%以上40%未満のα-1,2結合、及び0.1%以上20%未満のα-1,3結合を含み、
    前記分岐デキストランの重量平均分子量を前記分岐デキストランの数平均分子量で除した値が、100以上1500未満であり、
    前記分岐デキストランが、80質量%以上の水溶性食物繊維を含む、
    分岐デキストラン。
  2. 前記分岐デキストランの保水率が、10質量%以上である、請求項1に記載の分岐デキストラン。
  3. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを含む、整腸剤。
  4. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを含む、コレステロール低下剤。
  5. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを含む、血糖値上昇抑制剤。
  6. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを含む、澱粉老化抑制剤。
  7. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを含む、パンの食感改良剤。
  8. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを含む、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品又は工業用の原料。
  9. 請求項1又は2に記載の分岐デキストランを製造するための、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)からなる原料。
  10. ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌を培養する培養工程と、
    前記培養工程後、培養物を濾過することで分岐デキストランを含む濾液を回収する濾過工程と、を含み、
    前記濾過工程において、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選択される1以上を含み、かつ、孔径が0.01μm以上1.00μm以下である多孔性濾過膜を使用する、
    分岐デキストランの製造方法。
  11. 前記ロイコノストック・シトレウムに属する乳酸菌が、ロイコノストック・シトレウム KD3株(受託番号NITE P-03378)である、請求項10に記載の分岐デキストランの製造方法。

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