JP2023035886A - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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拓馬 松尾
Takuma Matsuo
宏伸 秋積
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Abstract

【課題】 製造初期からのペースト性状、操作性の経時変化が小さく、全量を使用することが可能な硬化性組成物を提供すること。特にエナメル修復材用重合性組成物と組み合わせることで象牙質修復材用硬化性組成物として象牙質の修復に好適に使用できること。【解決手段】 重合性単量体成分(A):100質量部、平均粒子径が0.1~5μmである無機粒子(B):200~1900質量部及び重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物において、重合性単量体成分の重合体の25℃における屈折率が1.53~1.60であるとともに、重合性単量体成分と無機粒子の疎水性度の差が50~70の範囲となるものを組み合わせて使用すること。【選択図】 なし

Description

本発明は、歯科用硬化性組成物に関する。
齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復は、コンポジットレジン(以下、CRと略記することもある。)と呼ばれる、ペースト状の重合性組成物からなる修復材料が操作の簡便さから広く用いられている。CRを用いた歯牙の修復においては、審美性が重要であるが、修復対象となる窩洞の状態によっては審美性の高い修復が困難である。たとえば前歯IV級窩洞のような唇側から舌側に突き抜ける大きな窩洞の審美修復では、硬化体の透明性の低い象牙質部分修復用CRと、硬化体の高いエナメル質部分修復用CRと、を窩洞内部に積層充填して修復を行う必要があるが、修復後においてエナメル質修復用CRの硬化体からなる部分材が背景色の影響を受け、暗く見える(明度が低下する)ことで審美性が低下するという問題があった。
このような問題を解決するために、夫々特定の象牙質部分修復用CR及びエナメル質部分修復用CRの組み合わせからなる歯科用充填修復材料キットが知られている。すなわち、特許文献1には、色調適合性が良好で、かつ明度の低下が少ない歯科用充填修復材料キットとして、「(A)象牙部分を修復するための象牙質修復材用重合性組成物と、(B)象牙質修復材の上に積層されるエナメル質修復材重合性組成物とを含み、(A)象牙質修復材用重合性組成物と(B)エナメル質修復材用重合性組成物との色調が異なり、かつ、(A)象牙質修復材用重合性組成物中の(a)重合性単量体のポリマーの屈折率n と(B)エナメル質修復材用重合性組成物中の(b)重合性単量体のポリマーの屈折率n との差(n -n )が0.005以上であることを特徴とする歯科用充填修復材料キット」が開示されている。
特許第6258919号公報
特許文献1に開示されている歯科用充填修復材料キットは、象牙質修復材用重合性組成物とエナメル質修復材用重合性組成物とからなるものであり、通常、各重合性組成物は、夫々複数回使用できる量をシリンジタイプの容器内に保持され、1回使用するごとに残部を保管する操作を繰り返す使用形態(以下、「小出し使用形態」ともいう。)とされている。ところが、本発明者らの検討により、これら重合性組成物のうち象牙質修復材用重合性組成物については、使用と保管を比較的長いインターバルで繰り返した場合には、ペーストが徐々に硬くなり、操作性が低下するという、保存安定性上の問題が生じることが判明した。なお、エナメル質修復材用重合性組成物においては操作性の経時変化が小さく、このような問題は発生しない。
そこで本発明は、特許文献1に開示されている歯科用充填修復材料キットにおける象牙質修復材用重合性組成物として使用でき、且つ上記のような(小出し)使用形態で使用した場合に、操作性の経時変化が小さい歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、波長589nmの光に対する25℃における屈折率が1.53~1.60である硬化体を与える重合性単量体成分(A):100質量部、レーザー回折-散乱法による粒度分布をもとに求めたメディアン径より得られる平均粒子径が0.1~5μmである無機粒子(B):200~1900質量部、及び重合開始剤(C)を含み、前記重合性単量体(A)中に前記無機粒子(B)が分散したペースト状の歯科用硬化性組成物であって、
前記重合性単量体成分(A):1質量部、水:2質量部及びメタノール:任意の質量部からなる3成分混合液系において、25℃において均一溶液となる前記3成分混合液のうち、メタノール含有量が最も少ない3成分混合液に含まれるメタノール量(質量部)の数値で定義される、前記重合性単量体成分(A)の疎水性度:M値をMとし、
水及びメタノールからなり、メタノール濃度を任意に設定できる2成分系水溶液において、所定量の前記無機粒子(B)を過剰量の前記2成分系水溶液に分散させてから静置したときに、前記無機粒子の全量が沈降する前記2成分系水溶液のうち、メタノール濃度が最も低い水溶液におけるメタノールの濃度(容量%)の数値で定義される、前記無機粒子(B)の疎水性度:M値をMとしたときに、
50≦M-M≦70 で表される関係を満足する、
ことを特徴とする前記歯科用硬化性組成物である。
上記形態の歯科用硬化性組成物(以下、「本発明の歯科用硬化性組成物」ともいう。)においては、前記Mが10~20であり、前記Mが60~80であることが好ましく、前記Mが10~20であり、前記Mが65~77であり、50≦M-M≦65 で表される関係を満足することが特に好ましい。
また、象牙質部分を修復するための象牙質修復材用硬化性組成物である歯科用硬化性組成物であることが好ましい。
本発明の第二の形態は、“プランジャー”と、一方端に吐出孔が形成され、他方端に前記プランジャーを挿入するための開口が形成された、筒状部を有する“シリンジ”と、前記吐出孔に着脱自在に装着できる“キャップ”と、を有し、前記開口より前記プランジャーの一部を挿入して前記筒状部内に収容空間を形成した容器と、
前記容器の前記収容空間内に保持される歯科用硬化性組成物と、を含み、
前記キャップを前記吐出孔に装着した状態で前記収容空間に保持された歯科用硬化性組成物を保管できるようにすると共に、前記キャップを外してから前記プランジャーを押し込むことにより前記歯科用硬化性組成物保持部内に保持されている歯科用硬化性組成物の一部を前記吐出孔より押出して使用した後に、前記キャップを再装着することにより前記歯科用硬化性組成物の残部を保管できるようにした、シリンジ充填型歯科用充填修復材料において、
前記収容空間内に本発明の歯科用硬化性組成物を保持した、ことを特徴とする前記シリンジ充填型歯科用充填修復材料(以下、「本発明のシリンジ型CR」ともいう。)である。
本発明の第三の形態は、象牙質修復材用硬化性組成物と、該象牙質修復材用硬化性組成物又はその硬化体上に積層して使用されるエナメル質修復材用硬化性組成物と、を含んでなる歯科用充填修復材料キットであって、
前記象牙質修復材用硬化性組成物は、本発明の歯科用硬化性組成物からなり、
前記エナメル質修復材用硬化性組成物は、前記象牙質修復材用硬化性組成物とは異なる色調を有し、且つ波長589nmの光に対する25℃における屈折率が、前記象牙質修復材用硬化性組成物に含まれる前記重合性単量体(A)の硬化体の屈折率よりも0.005以上小さい硬化体を与える重合性単量体(A´)を含む、
ことを特徴とする前記歯科用充填修復材料キット(以下、「本発明のキット」ともいう。)である。
本発明の歯科用硬化性組成物は、小出し使用形態で長期にわたって使用した場合でも、ペースト性状が変化し難く、長期間安定して使用できるという特徴を有している。また、前記特許文献1に開示された歯科用充填修復材料キットにおける象牙質修復材用硬化性組成物として使用することで、より審美性の高い歯牙の修復を行うことが可能になる。
既に述べたように、特許文献1に開示されている歯科用充填修復材料キットにおける前記保存安定上の問題は、象牙質修復材用重合性組成物(以下、「象牙質用CR」ともいう。)に特有の問題であり、エナメル質修復材用重合性組成物(以下、「エナメル質用CR」ともいう。)においてはこのような問題は発生しない。両者の差は、基本的には使用する重合性単量体の硬化体(ポリマー)の屈折率の違いであり、象牙質用CRでは、ポリマーの屈折率が高い(具体的には1.53~1.60である)重合性単量体が用いられている。また、上記象牙質用CRは、通常、シリンジタイプの容器内に保持されて使用されるが、未使用の状態で保管した場合には、長期間保管した場合であっても初回の使用時には良好なペースト性状を示し、また、初回の使用後に短期間で使い切るときにはペースト性状の悪化は殆ど見られない。したがって、前記保存安定性上の問題は、シリンジ(保管)タイプの上記象牙質用CRを小出し使用形態で、使用のインターバルが長く、長期に亘って使用するときに起こる、特有の問題であるといえる。
本発明者らは、具体的に使用される重合性単量体の違いから上記問題が起こる原因は、重合性単量体の疎水性度と無機粒子の疎水性度の関係にあるのではないかと考え、検討を行った。その結果、無機粒子の疎水性の度合いと重合性単量体の疎水性の度合いとの差がペースト性状の安定性に影響を与えることを確認するに至った。すなわち、重合性単量体成分と無機粒子の疎水性の差が小さすぎる場合には、使用を繰り返すたびに残存するペーストが硬くなって行くこと、逆に前記疎水性の差が大きすぎる場合には、ぼそぼそ感の強い不均一なペーストとなり、結果としてペーストが硬く感じることを確認するに至った。本発明は、このような知見に基づき成されたものである。
上記したような現象が起こる理由及び本発明においてこのような現象が起こり難くなる理由は、必ずしも明らかではなく、また、本発明は何ら論理に拘束されるものではないが、本発明者らは、次のようなものであると推定している。すなわち、前者(疎水性の差が小さすぎる場合)においては、両者の馴染みが良く、無機粒子の重合性単量体中における移動性が高いために、一時的な使用によって系内に乱れが生じた後に重い無機粒子と軽い重合性単量体成分とが徐々に分離して、使用を繰り返すたびに残存するペースト中の無機粒子濃度が高くなったものと考えられる。また、後者(疎水性の差が大きすぎる場合)には、両者の馴染みが悪いため各成分同士が集まり易いことに起因して、一時的な使用によって系内が乱れる毎に、無機粒子の凝集が進行したことによると思われる。そして、本発明では、両者の疎水性差が適度であるので、上記いずれの現象も起こり難く、ペースト性状が安定したものと推定している。
このように、本発明においては無機粒子と重合性単量体の疎水性の差を一定の範囲内とすることが重要である。そこで、まず、これら疎水性の指標となる疎水度:M値及びその測定方法について説明する。
1.疎水度:M値及びその測定方法について
一般に、重合性組成物や無機粒子の疎水性は、親和性が良好となるメタノール水溶液におけるメタノール濃度を指標とする疎水性度:M値で表すことが多い。すなわち、メタノールと、水と、重合性組成物又は無機粒子と、を混合した3元系において、メタノールと水との混合系であるメタノール水溶液中におけるメタノール濃度を徐々に上げていったときに、メタノール水溶液と重合性組成物又は無機粒子とが馴染まない状態(溶解しない又は均一に分散せずに分離した状態)から馴染む状態(溶解する又は均一に分散した状態を保つ状態)に変化し始める時の遷移点となる臨界的なメタノール濃度で表すことが多い。
本発明でもこれに倣い、重合性単量体成分及び無機粒子の疎水性を、夫々以下に定義される疎水度:M値を用いて表している。なお、M値が低いほど親水性が高い(疎水性が低い)ことを意味する。
(1)疎水度:M値の定義について
(1-1)重合性単量体の疎水度:M値の定義
重合性単量体の疎水度:M値とは、重合性単量体成分:1質量部、水:2質量部及びメタノール:任意の質量部からなる(重合性単量体:1質量部、水:2質量部及びメタノールを含み、メタノールの含有質量部を任意に変更できる)3成分混合液系において、25℃において均一溶液と成り得る前記3成分混合液の中で、メタノール含有量が最も少ない3成分混合液に含まれるメタノール量(質量部)の数値を意味する。
(1-2)無機粒子の疎水性度:M値の定義
無機粒子の疎水性度:M値とは、水及びメタノールからなり、メタノール濃度を任意に設定できる2成分系水溶液において、所定量の無機粒子を過剰量の前記2成分系水溶液に分散させてから静置したときに、前記無機粒子の全量が沈降する前記2成分系水溶液の中で、メタノール濃度が最も低い水溶液におけるメタノールの濃度(容量%)の数値を意味する。
(2)M値の測定方法について
(2―1)重合性単量体の疎水度:M値の測定方法
重合性単量体の疎水度:M値は、次のような滴定法に類似した方法により測定することができる。すなわち、先ず、M値測定の対象となる重合性単量体1質量部と水2質量部を混合し、液温25℃混合液を得る。次に25℃の恒温室内において、撹拌下の当該混合液にメタノールを滴下していく。このとき、メタノールの滴下は、メタノール滴下後の混合液の状態が確認できるように(均一溶液となるか否かを判別できるように)ゆっくり行い、重合性単量体が溶解して均一な溶液となるまで行う。そして、このとき、滴下されたメタノールの総滴下量(質量部)を量り(或いは滴下容積を質量換算することにより実量部を求め)、その値が前記重合性単量体成分のM値となる。
(2―2)無機粒子の疎水度:M値の測定方法
疎水性の高い無機微粒子は水と混合しても水中に分散せず、粉末が水面上に浮いた状態となるが、水にメタノールを配合して、メタノール量を増やしてゆくと疎水的な微粒子粉末でも徐々に溶液中に分散するようになる。疎水化度は、このような原理に基づいて決定されるもので、数値が高いほど疎水性が高いことを意味する。
上記M値は、重合性単量体成分(A)のM値測定と同様に、滴定法に類似した方法で測定することができる。すなわち、測定対象となる無機微粒子(粉末)を分散させるに十分な量(例えば40ml)の蒸留水を25℃の恒温室にて容器内に導入した後に所定量(例えば0.5g)の測定対象となる無機微粒子を加え、メタノールを数滴滴下する。その後液相を緩やかに撹拌して均一化した後に静置して無機粒子粉末の沈降状態を確認する。この操作を、無機粒子粉末の全量が沈降するまで続けて行い、それまでに滴下したメタノール濃度(容積濃度:vol.%)を求めればよい。その値が測定対象となる無機粒子の疎水性度M値となる。また、疎水性度は、たとえば次のような方法で測定してもよい。すなわち、メタノール濃度を細かく変化させた蒸留水/メタノール混合溶液を複数調製し、それぞれの混合溶液40mlを容量50mlのガラス製サンプル瓶内に導入する。次いで各サンプル瓶に測定対象となる無機粒子粉末0.5gを導入してから蓋を閉めて振盪機で1時間振盪した後に1時間静置し、無機粒子粉末の全量が沈降したサンプルを確認し、その中で最もメタノール濃度が低い溶液におけるメタノール濃度の値をM値とする方法によって測定してもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、使用する重合性単量体成分と無機粒子の疎水性の差が一定の範囲内と制御される点を除けば、特許文献1に開示される象牙質用CRと特に変わる点はなく、使用される成分も重合性単量体成分及び無機粒子について上記条件を満足し得るものを選択して使用する他は、該象牙質用CRにおいて使用可能とさせる各成分物質が特に制限なく使用できる。以下、これらを踏まえて、本発明について詳しく説明する。
なお、本明細書においては特に断らない限り、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。また、本明細書において、「(メタ)アクリル系」との用語は「アクリル系」及び「メタクリル系」の両者を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」との用語は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を意味し、「(メタ)アクリロイル」との用語は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両者を意味する。
1.本発明の歯科用硬化性組成物
本発明の歯科用硬化性組成物は、波長589nmの光に対する25℃における屈折率が1.53~1.60である硬化体を与える重合性単量体成分(A):100質量部、レーザー回折-散乱法による粒度分布をもとに求めたメディアン径より得られる平均粒子径が0.1~5μmである無機粒子(B):200~1900質量部、及び重合開始剤(C)を含み、前記重合性単量体(A)中に前記無機粒子(B)が分散したペースト状の歯科用硬化性組成物であって、
を前記重合性単量体成分(A)の疎水性度:M値とし、Mを前記無機粒子(B)の疎水性度:M値としたときに、記式(1):50≦M-M≦70 で表される関係を満足する、ことを特徴とする前記歯科用硬化性組成物である。
硬化の観点からは、式(2):50≦M-M≦65 の関係を満足することが好ましい。
以下、上記各成分について説明する。
(1)重合性単量体成分(A)
本発明の歯科用硬化性組成物では、重合性単量体成分として、波長589nmの光に対する25℃における屈折率が1.53~1.60である硬化体を与える重合性単量体成分を使用する。重合性単量体成分がこのような条件を満足しない場合には、そもそも前記保存安定性上の問題が発生せず、本発明の効果を得ることができない。特許文献1に開示されている歯科用充填修復材料キットにおける象牙質用CRとして使用する場合には、硬化体の前記屈折率が1.54~1.58である重合性単量体成分を使用することが好ましい。なお、本実施形態の歯科用硬化性組成物における屈折率は25℃雰囲気下においてアッベ屈折率計にて測定した値を指す。
重合性単量体成分は、1種類の重合性単量体からなっていてもよいが、通常は複数の重合性単量体(化合物)の混合物からなる。後者の場合、混合物全体の硬化体の屈折率が上記条件を満足すればよく、化合物を単独で硬化させたときの屈折率が上記条件を満足しない重合性単量体(化合物)を含んでいてもよい。重合性単量体(化合物)としては、(メタ)アクリレート系重合性単量体が好ましく、硬化速度や硬化体の機械的物性、耐水性、耐着色性等の観点から、これらは多官能のものがより好ましい。
一般に、多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体は、硬化体の屈折率は通常、1.45~1.60の範囲にある。また、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、D2.6Eと略記する。単独硬化体の屈折率:1.567)、2,2-ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(3メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン(以下、bis-GMAと略記する。単独硬化体の屈折率:1.570)等の芳香系(メタ)アクリレートは、高屈折率の硬化体を与え、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略記する。単独硬化体の屈折率:1.510)や1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン(以下、「UDMA」と略す。単独硬化体の屈折率:1.509)等の(メタ)アクリレートは、低屈折率の硬化体を与える傾向がある。一般に、重合性単量体成分(全体の)硬化体の屈折率は、該成分を構成する各重合性単量体(化合物)の単独硬化体の屈折率の加重平均に対応するので、これらに基づき重合性単量体成分(A)の組成を決定することができる。
本発明の本発明の歯科用硬化性組成物における本発明の歯科用硬化性組成物は、硬化体の屈折率が上記条件を満足するだけでなく、使用する無機粒子(B)との関係で、Mが前記式(1)を満足する必要がある。該関係を満足しやすいという理由から、Mは、10~20であることが好ましい。なお、M値が疎水性の指標であることから容易に理解できるように、重合性単量体の分子構造において、水酸基などの親水性の基を多く含む重合性単量体のM値は低くなり、これとは逆に、フェニル基やアルキル基、アルキレン基等の疎水性の基を多く含む重合性単量体のM値は高くなる。例えば、高屈折率の硬化体を与えるbisGMAのM値は9.3で、D2.6EのM値は25.2であり、低屈折率の硬化体を与える3G:M値は2.0であり、UDMAのM値は3.7である。また、重合性単量体の混合物においては、成分となる各重合性単量体のM値に基づき、含有割合で重みづけした加重平均を求めることによりM値を求めることができる。
重合性単量体成分(A)として好適に使用できる重合性単量体を例示すれば、上に例示したものの他、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(M値:4.5、単独硬化体の屈折率:1.488)、1,9-ノナンジオールジメタクリレート(M値:9.3、単独硬化体の屈折率:1.502)やトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(M値:10.8、単独硬化体の屈折率:1.529)等を挙げることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物においては、重合性単量体成分(A)として、高屈折率を与え且つM値が20以上であるD2.6E等の多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有率が15質量%以上で且つM値が8以上の多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有率が70質量%以上で、M値が8未満の(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有率が30質量%以下である重合性単量体組成物を使用することが好ましい。
また、使用時に操作し易い粘度の歯科用硬化性組成物が得られるという観点から、重合性単量体成分の粘度は0.7~5Pa・sであることが好ましい。なお、重合性単量体成分の粘度は、CSレオメーターを用いた測定により決定することができる。
(2)無機粒子(B)
本発明の歯科用硬化性組成物は、平均粒子径が0.1~5μmである無機粒子(B)を使用する。上記平均粒子径とはレーザー回折-散乱法による粒度分布をもとに求めたメディアン径であり、具体的には、0.1gの無機粒子をエタノール10mlに分散させ均一に調製したサンプルについて測定されるものである。
また、無機粒子の形状については、特に制限されないが、耐摩耗性、表面滑沢性、光沢持続性に特に優れた歯科用硬化性組成物が得られることから、球形状(球状又は略球状)であることが特に好ましい。
無機粒子(B)の材質は、歯科用硬化性組成物において無機フィラーとして一般的に用いられているものが特に限定なく使用できる。好適に使用できるものを例示すれば、非晶質シリカ、石英、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化イッテルビウム等の金属酸化物、シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-チタニア-ジルコニア等のシリカ系複合酸化物、ホウ珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等のガラス、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化イットリウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム等の金属フッ化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の無機炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩等が採用される。
これらのうち、金属酸化物及びシリカ系複合酸化物は、緻密な材質にするために、高温で焼成されたものが好ましく、シリカ系複合酸化物粒子は、屈折率の調整が容易であり、更に、粒子表面にシラノール基を多量に有するため、シランカップリング剤等を用いて表面改質が行い易いため、特に好ましい。
無機粒子(B)の、重合性単量体成分(A)100質量部に対する配合量は、200~1900質量部である必要があり、300~900質量部であることがより好ましい。
本発明における無機微粒子(B)のM値は、重合性単量体成分(A)のM値との関係で前記式(1)を満足すれば特に限定はされないが、ペースト調製時の粉の扱いやすさ、ペーストにした際の操作性が良く、前記式(1)に示される関係を満足し易いという理由から60~80であることが好ましく、前記式(2)に示される関係を満足しやすいという理由から、65~77であることがより好ましい。
無機粒子(B)のM値は無機粒子の種類、表面処理に用いる疎水化処理剤の種類や量、疎水化処理条件等の因子によって変化する。このことは、市販されている疎水性シリカ微粒子について疎水化度を測定して見ると有意の差を持って測定値が異なることからも明らかである。これら因子と疎水化度の関係は必ずしも明らかではないが、疎水化処理剤で十分に(無機部粒子の表面シラール基量に対して過剰量の疎水化処理剤を用いて)処理した場合には、疎水化度をほぼ確実に60~80とすることができる{青木等.「フュームドシリカの表面解析」.日本画像学会誌(2015),第54巻第2号,p.140-147}。
(3)重合開始剤(C)
重合開始剤としては、上記重合性単量体を重合、硬化させることができるものであれば、公知のものが何ら制限なく使用できる。通常は、光重合開始剤が使用されることが多いが、化学重合開始剤(常温レドックス開始剤)や熱重合開始剤等であっても使用可能である。重合開始剤は、単独で使用する他に、2種以上を併用して用いてもよい。
光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサントン等のジアリールケトン類、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、9,10-フェナントラキノン等のα-ジケトン類、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
上記光重合開始剤は、還元性化合物と組合せて用いるのが好ましい。還元性化合物としては、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの第3級アミン類、2-メルカプトベンゾオキサゾール、1-デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物、N-フェニルアラニンなどを挙げることができる。
また、前記の光重合開始剤の活性をより高めるために、光酸発生剤を加えるのも好ましい態様である。光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換-S-トリアジン有導体、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられる。光酸発生剤を用いる場合、光重合開始剤としてはカンファーキノン等のα-ジケトン類が好ましく、4-ジメチルアミノ安息香酸等の還元性化合物を併用することがさらに好ましい。
一方、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を挙げることができる。
また、化学重合開始剤としては、例えば、上記の熱重合開始剤で使用される過酸化物と、光重合開始剤において還元性化合物として例示した第3級アミン類とを組み合わせた系等が挙げられる。
重合開始剤の配合量は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部である。この範囲内で、且つ所望する硬化性組成物の色調が実現可能な量で使用される。
(4)その他任意成分
本発明の歯科用硬化性組成物は、通常、着色剤を配合することにより、所望の色調に調整される。使用される着色剤としては、顔料であっても良く、染料であっても良い。顔料であれば、白色顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の白色顔料;べんがら、モリブデンレッド、クロモフタールレッド等の赤色顔料;黄酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、クロモフタールイエロー等の黄色顔料;コバルトブルー、群青、紺青、クロモフタールブルー、フタロシアニンブルー等の青色顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック等の黒色顔料を挙げることができる。他方、染料としては、KAYASET RED G(日本化薬)、KAYASET RED B(日本化薬)の赤色染料;KAYASET Yellow 2G、KAYASET Yellow GN等の黄色染料;KAYASET Blue N、KAYASET Blue G、KAYASET Blue B等の染料等を挙げることができる。口腔内での色調安定性を考慮すると、水溶性の染料よりも不水溶性の顔料を使用することが好ましい。
一般に着色剤として顔料を使用する場合、顔料の平均粒度は、通常、約1μm以下である。必要であれば、市販の顔料を微粉砕により小さい粒径にすることができる。また、歯科用充填修復材料の他の成分との混合を容易にするため、顔料を分散体の形態で配合物に加えることができる。例えば、顔料を反応性希釈剤のような低粘性液体に分散させたり、無機粒子のような粉体に分散させたりしたマスターバッチとして用いることができる。
一般に、着色剤として顔料を使用する場合、その総配合量は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.0005~0.5質量部になり、より好ましくは0.001~0.3質量部になる。
また、本発明の歯科用硬化性組成物は、必要に応じて有機無機複合フィラー、また公知の他の添加剤を配合することができる。具体的には、重合禁止剤、紫外線吸収剤、増粘剤等が挙げられる。なお、本発明の歯科用硬化性組成物は、基本的にはコンポジットレジンとして使用されるものである。歯科用硬化性組成物としては、水や有機溶媒を比較的多く含み、コンポジットレジンと歯質表面との接着性向上という機能・役割を持つ、所謂プライマーやボンディング材としての使用は想定されていない。このため、本発明の歯科用硬化性組成物は、通常、水および有機溶媒を含まない。但し、必要であれば微量の水および/または有機溶媒が含まれていてもよい。この場合の水および/または有機溶媒の含有量は、たとえば、重合性単量体成分100質量部あたり0質量部~1質量部の範囲が好ましく、0質量部~0.5質量部の範囲がより好ましい。
2.本発明のシリンジ型CR
本発明の歯科用硬化性組成物は、一般的な充填用コンポジットレジンの使用方法に従い、修復すべき歯牙の窩洞を適切な前処理材や接着材で処理した後に、本発明の歯科用硬化性組成物を直接充填し、歯牙の形に形成した後に、例えば専用の光照射器にて強力な光を照射する等の方法により、重合硬化させることによって使用される。
このようにして使用する際の操作性及び本発明の効果の有用性の観点から、“シリンジ型容器”に収容された形態とされることが好ましい。ここで、“シリンジ型容器”とは、“プランジャー”と、一方端に吐出孔が形成され、他方端に前記プランジャーを挿入するための開口が形成された、筒状部を有する“シリンジ”と、前記吐出孔に着脱自在に装着できる“キャップ”と、を有し、前記開口より前記プランジャーの一部を挿入して前記筒状部内に収容空間を形成した容器を意味し、本発明の歯科用硬化性組成物は、前記収容空間内に収容・保持される。そして、未使用時においては、前記キャップを前記吐出孔に装着した状態で保管され、前記キャップを外してから前記プランジャーを押し込むことにより前記歯科用硬化性組成物保持部内に保持されている歯科用硬化性組成物の一部を前記吐出孔より押出して使用した後に、前記キャップを再装着することにより前記歯科用硬化性組成物の残部が保管される。本発明の歯科用硬化性組成物は、このような保管・使用形態を採る、上記“シリンジ型容器”に収容された「シリンジ充填型歯科用充填修復材料」として使用することが好ましい。
このようなシリンジ充填型歯科用充填修復材料は、所謂シリンジタイプのCRとして知られる一般的な形態であり、プランジャー、シリンジ、キャップ等は従来のシリンジタイプCRで使用されているものが特に制限されずに使用できる。たとえば、前記吐出孔の内径が2~4mm程度で、歯科用硬化性組成物を3~5g程度保持したもの等が好適に使用できる。
3.本発明のキット
本発明の歯科用硬化性組成物は、前記特許文献1に開示された歯科用充填修復材料キットにおける象牙質修復材用硬化性組成物(象牙質CR)として好適に使用することができ、このような象牙質用CRを用いた本発明のキットにより、特許文献1に開示されたキットを用いた場合と同様に審美性の高い歯牙の修復を行うことが可能になるばかりでなく、象牙質CR及びエナメル質CRをシリンジタイプとしたときに、象牙質CRにおいて前記保存安定性上の問題が起こり難いという特長を有する。
本発明のキットでは、(本発明の歯科用硬化性組成物からなる)象牙質用CRにおける重合性単量体成分の硬化体(ポリマーの)屈折率n と、併用するエナメル質用CRにおける重合性単量体成分の硬化体(ポリマー)の屈折率n と、の差(n -n )は0.005以上である必要がある。このように屈折率を制御することにより、審美性の良好な修復が可能となる。特に、切端部のような象牙質修復材用重合性組成物が薄く充填され、それに比してエナメル質修復材用重合性組成物が厚く積層されるような修復箇所、すなわち、エナメル質修復材が口腔内の背景色の影響を受けやすい部位での修復においても、象牙質の特徴的な構造(マメロン)を再現でき、審美性が良好な修復が可能となる。上記屈折率の差が0.005より小さい場合には、エナメル質修復材が暗い修復物となる傾向にあり、象牙質修復材で形成した象牙質の特徴的構造も視認し難くなり、審美性に劣ってしまう。屈折率の差(n -n )は、好ましくは、0.007以上、より好ましくは0.009以上である。一方、歯科で使用される重合性単量体は、安全性の観点から限られており、一般的に歯科で用いられる重合性単量体で構成できる、上記屈折率の差は0.15がほぼ上限である。また、屈折率差が大きすぎると界面での光の反射も大きくなり、象牙質の特徴的な構造(マメロン)が際立ってしまい、修復歯牙周辺との調和がとれなくなることがある。したがって、屈折率の差(n -n )は0.15以下が好ましく、0.065以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましく、0.03以下が特に好ましい。
なお、天然歯の場合は象牙質の屈折率(1.55程度)よりもエナメル質の屈折率(1.63程度)の方が大きくなっており、上記象牙質修復材用重合性組成物とエナメル質修復材用重合性組成物の屈折率の関係とは逆になっているが、天然歯の模倣では審美的修復が得られにくいことが分かっている。歯牙の修復に用いる歯科用硬化性組成物としては、象牙質修復材を構成するポリマー屈折率を、エナメル質修復材を構成するポリマー屈折率より大きくすることでより審美性の高い修復が可能となる。
次に、色調に関する物性値について説明する。
<明度(L)>
明るさを表す尺度であり、JIS Z8729に規定にしたがって測定される。具体的には、1.0mm厚の試料板に黒背景を接触させ、標準光Cを照射した際の反射光における、CIELab表色系で表されるL*値を読み取る。L値は100に近いほど明るく、0に近いほど暗い材料であることを示す。
<色度(a)(b)>
色相及び彩度を表す指標であり、JIS Z8729の規定にしたがって各測定される。具体的には1.0mm厚の試料板に黒背景を接触させ、標準光Cを照射した際の反射光における、CIELab表色系で表されるa値及びb値を読み取る。a及びbは、色の方向を示しており、aは赤方向、-aは緑方向、bは黄方向、-bは青方向を示し、それぞれ数値が大きいほど、鮮やかな色を示し、数値が小さいほどくすんだ色を示す。
<コントラスト比>
透明性を表す尺度であり、JIS Z8701に規定されるXYZ表色系の三刺激値のうちの明るさに関するY値を用いて算出するものである。具体的には、1.0mm厚の試料板に黒背景、及び白背景を接触させ、標準の光Cを照射した際の反射光におけるY値を読み取る。黒背景の場合のYをY、白背景の場合のYをYとすると、コントラスト比(C)はY/Yから求められる。Cの値が1に近いほど不透明な材料であり、0に近いほど透明な材料であることを示す。
本発明のキットにおける象牙質用CRは、修復対象の人歯のエナメル質及び象牙質と適合させるため、該象牙質用CRとエナメル質用CRとは異なる色調となる。ここで色調が異なるとは、CIELab表色系におけるa、b、L、コントラスト比のうち、いずれかの指標に差があることを意味し、例えば、象牙質修復材用重合性組成物の色調がa:-2、b:12、L:60に対し、エナメル修復材用重合性組成物の色調がa:-2、b:12、L:48である場合、a、bは差がなく、Lのみ差がある関係であるが、異なる色調として認識される。
本発明のキットでは、硬化体についてCIELab表色系において測色した時に、aは-5.0~3.0、より好適には-4.0~2.0に調整される。他方、bは-10~20、より好適には-9~19に調整される。そして、両CRのa又はbに差がある場合は、aの差の絶対値は0.1~4、特に0.3~2であることが好ましく、bの差の絶対値は0.1~30、特に0.3~15であることが好ましい。
また、象牙質用CR硬化体の明度Lは、50~75、特に51~74に調整することが好ましい。一方、エナメル質用CR硬化体のLは、40~55、特には41~54となるように調整することが好ましい。そして両重CRのLが異なる場合は、Lの差(象牙質用CR硬化体の明度L-エナメル質用CR硬化体の明度L)が1~30、特に3~20とすることが好ましい。
また、象牙質用CRの厚さ1mmの硬化体の黒背景条件下における色調が、CIELab表色系において測色した時に、コントラスト比が0.55~0.75、特に0.57~0.70とすることが好ましい。さらに、エナメル質用CRは、前記コントラスト比が0.30~0.54、特に0.35~0.52とすることが好ましい。象牙質用CR硬化体とエナメル質用CR硬化体は、異なる透明性であることが好ましく、具体的には、両重合性組成物のコントラスト比の差(象牙質用のコントラスト比-エナメル質用コントラスト比)は、0.05~0.40、特に0.10~0.30であることが好ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。先ず、実施例及び比較例で使用する各成分で使用した原材料について説明する。
1.原材料
(1)重合性単量体成分
(1-1)重合性単量体成分とその原料化合物
以下に示す重合性単量体を、表1に示す組成(表1の重合性単量体の欄における略号の後ろの括弧内の数値は質量部を表わす。)で混合して重合性単量体成分M1~M8を調製した。なお、各重合性単量体(化合物)のM値は、後述の(1-2)に従って測定した値である。
・bisGMA:2,2-ビス[4-(3-メタクリロイルオキシー2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン (M値 9.3)
・D2.6E:2,2-ビス[(4-メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン (M値 25.2)
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート (M値 2.0)
・UDMA:1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン (M値 3.7)。
(1-2)重合性単量体成分の物性測定
重合性単量体成分M1~M8のM値及び粘度、並びに重合性単量体成分M1~M8の硬化体の屈折率を以下に示す方法により測定した、結果を合わせて表1に示す。なお、表中の「↑」は、「同上」を意味する。
[M値(M)の測定方法]
重合性単量体及び重合性単量体成分のM値を次のようにして測定した。先ず、25℃の恒温室にて、蒸留水2.00g、重合性単量体又は重合性単量体成分1.00gを50mlのガラス製サンプル瓶に導入する。次いでそこに、メタノールを数滴(計約0.2ml)滴下し、蓋を閉め、手で振り混ぜて静置し、混合液の状態を目視で確認する。この操作を静置後の混合液において、重合性単量体または重合性単量体成分で溶解して均一な溶液状態になるまで繰り返し行う。均一になるまで滴下したメタノール総質量(g)を求め、求められた値(g)をM値とした。
[粘度の測定方法]
重合性単量体成分の粘度は、コーン/プレートジオメトリ4cm/2°及び温度制御システムを具備した粘弾性測定装置CSレオメーター「CVO120HR」(ボーリン社製)を用いて、測定温度(プレート温度)23℃、ずり速度1rpsの条件で測定した。測定は3回行い、その平均値を重合性単量体成分の粘度とした。
[硬化体屈折率の測定方法]
重合性単量体成分に対し、当該成分の質量を基準としてCQ:0.3質量%。DMBE:1.0質量%、HQME:0.12質量%を混合して得た均一な組成物を0.1mm厚にし、アルファライト(株式会社モリタ)を用いて硬化させた。硬化体をアッベ屈折率計(株式会社アタゴ。測定光波長:589nm)を用いて25℃の恒温室にて測定した。
Figure 2023035886000001
(2)無機粒子
以下に示すF1~F4を使用した。これらは何れも球状シリカジルコニアフィラーをγ-メタクリオイルオキシプロピルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランにて表面処理を行ったものである。
・F1:平均粒子径 150nm、屈折率 1.52、M値 75
・F2:平均粒子径 150nm、屈折率 1.52、M値 67
・F3:平均粒子径 150nm、屈折率 1.52、M値 53
・F4:平均粒子径 150nm、屈折率 1.52、M値 44
各無機粒子のM値(M)、平均粒子径および屈折率の測定方法を以下に示す。
[M値(M)の測定方法]
メタノール濃度を細かく変化させた蒸留水/メタノールの混合溶液を複数調製し、それぞれの混合溶液40(ml)を50(ml)のガラス製サンプル瓶に導入した後に、各サンプル瓶に測定対象となる無機粒子粉末0.5(g)導入し蓋を閉めて振盪機で1時間振盪してから1時間静置し、無機粒子粉末の浮沈状態を確認した。無機粒子粉末の全量が沈降したサンプルの中で最もメタノール濃度が低い溶液におけるメタノール濃度をM値とした。
[平均粒子径の測定方法]
0.1gの無機粒子をエタノール10mlに分散させ、超音波を20分間照射して測定試料を調製した。得られた試料について、レーザー回折-散乱法による粒度分布計(「LS230」、ベックマンコールター製)を用い、光学モデル「フラウンフォーファー」(Fraunhofer)を適用して、体積統計のメディアン径を求めた。
[屈折率の測定方法]
まず、25℃の環境下において、100mlサンプル瓶中、無機粒子1gを無水トルエン50ml中に分散させた。次に、この分散液をスターラーで撹拌しながら1-ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率をアッべ屈折率計(株式会社アタゴ。測定光波長:589nm)を用いて測定し、得られた値を無機粒子の屈折率とした。
(3)重合開始剤及び添加材
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:N,N-ジメチルp-安息香酸エチル(DMBE)
・HQME:ヒドロキノンモノメチルエーテル。
(4)着色材
・白顔料(二酸化チタン)
・黄顔料(ピグメントイエロー)
・赤顔料(ピグメントレッド)
・青顔料(ピグメントブルー)。
2.本発明の歯科用硬化性組成物に関する実施例及び比較例
実施例1
暗所にて、CQを0.2質量部、DMBEを0.5質量部、HQMEを0.15質量部溶解させた重合性単量体成分M1:100質量部と無機粒子F1:300質量部を混合練和し、歯科用硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物を脱泡したもの:5gを、吐出孔の内径が4mmであるシリンジ型容器に充填し、以下に示す方法でペースト硬さ及び操作性の評価を行った。結果を表2に示す。
[ペースト硬さ測定方法]
シリンジ型容器の吐出孔から約0.3gの歯科用硬化性組成物(ペースト)を口径5mm、深さ3mmの孔を有する試料台の孔内に押し出し、直ちに吐出孔にキャップをした。その後、直ちに前記試料台の孔に充填された歯科用硬化性組成物の表面をならし、遮光した。次いで、23℃で2分間静置してから、サンレオメーター(株式会社サン科学)を用いて歯科用硬化性組成物が充填された孔に口径4mmの感圧棒をロード速度240mm/minでロード深さ2mmまで圧縮進入させ、その時の最大荷重を測定し、その値をペースト硬さとした。
ペースト硬さの経時変化を調べるために、ペースト充填シリンジを3本用意し、夫々について上記操作を行いペースト硬さの初期値を測定した(いずれも4.0kg)。次いで、残存歯科用硬化性組成物(ペースト)を内部に保持する吐出孔にキャップをしたシリンジ型容器は23℃恒温室にて保管し、3日置きにシリンジからペーストを0.1g取り出して、キャップした後に保管する操作を所定期間繰り返し、1本目のシリンジについては15日目(5回:計0.5g使用)、2本目のシリンジについては30日目(10回:計1g使用)、3本目のシリンジについては60日目(20回:計2g使用)にそれぞれシリンジを切断し、残存するペーストについて、シリンジ後端側のペーストを取り出してペースト硬さを測定し、各試験日数経過後のペースト硬さとした。
なお、ペースト硬さの初期値からの変化量が+3kgまで、すなわちペースト硬さ7kgまでは初期とほぼ同等の使用感で操作できるが、+3kgを超えると(ペースト硬さが7kgをこえると)ペーストの性状が固く、使用が困難となる。
[操作性の評価方法]
各ペーストの操作性について、シリンジからの押し出し易さと充填器での取り扱い易さについて、下記基準で評価を行った。
○:ペースト粘性が適切であり、軽く押し出せる。また、充填器での取り扱いが容易である。
△:ペーストの粘性が低いため、非常に軽く押し出せる。一方で充填器での取り扱いがし難い。
×:ペーストの粘性が高いため、重く、押し出しにくい。また、充填器での取り扱いがし難い。
具体的には、重合性単量体成分の粘度が低い場合はシリンジから軽く、容易に押し出せるが、充填器で採取した際、ペーストの粘着性が低いために充填器から離れてしまい、窩洞への充填操作がし難くなる。重合性単量体成分の粘度が高い場合は、重く押し出しにくく、ペーストの粘着性が高いため充填器にくっついてしまい窩洞への充填操作がし難くなる。
Figure 2023035886000002
実施例2~6及び比較例1~4
表2に示す重合性単量体成分、無機粒子の組成において、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製し、実施例1と同様にしてペースト硬さを測定した。その結果を合わせて表2に示した。
表2に示される結果から理解されるように、重合性単量体成分と無機粒子のM値の差:M-M=ΔM値が50~70の範囲の本発明の硬化性組成物は60日後もペースト硬さが7kg未満であり、初期同等に使用することが可能であった。一方、ΔM値が50~70の範囲を外れる比較例1~4では、60日後のペースト硬さが7kg以上となっており、使用困難であることを確認した。
3.本発明のキットに関する実施例及び比較例
実施例7
暗所にて、CQを0.2質量部、DMBEを0.5質量部、HQMEを0.15質量部溶解させた重合性単量体成分M1:100質量部と無機粒子F1:300質量部を混合練和し、硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物に、表3に示すコントラスト比C及び色調L,a、bを有するように適量の顔料を添加し、十分混合練和し、脱泡したものを象牙質用CR:PD1とした。
また、PD1と同様にして表4に示す重合性単量体成分と無機粒子を用い、コントラスト比C、色調L,a、bを調整したものをエナメル質用CR:PE1とした。
上記PD1及びPE1を使用し、以下に示す方法で各CR硬化体のコントラスト比及び色調、両CRの積層硬化体の色調の測定を行うと共に審美性評価を行った。
[各CR硬化体のコントラスト比の測定]
直径7mmの貫通孔を開けた厚さ1mmのポリアセタール製型にCRを填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接して、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度700mW/cm)で30秒光照射した。得られた硬化体について、標準光Cを照射した際の反射光における色調を、色差計(東京電色社製:TC-1800MKII)を用い、白背景と黒背景条件下で測定し、得られたそれぞれのY値から下記の式を用いて算出した。
C(コントラスト比)=Y(黒背景でのY値)/Y(白背景でのY値)
[各CR硬化体の色調測定]
JIS Z8729に規定にしたがって測定した。具体的には、直径7mmの貫通孔を開けた厚さ1.0mmのポリアセタール製型にCRを填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接して、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度700mW/cm)で30秒光照射した。得られた硬化体について、標準光Cを照射した際の反射光における色調を、色差計(東京電色社製:TC-1800MKII)を用い、黒背景条件下で測定し、CIELab表色系で表される、明度L*、及び色度a*、b*を夫々得た。
[両CRの積層硬化体の色調測定]
JIS Z8279の規定にしたがって測定した。具体的には、直径7mmの貫通孔をあけた厚さ0.5mmのポリアセタール製型に象牙質用CRを填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接して、歯科用光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマデンタル社製;光出力密度700mW/cm)で30秒光照射した。ポリプロピレンフィルムを剥がし、もう一枚の直径7mmの貫通孔をあけた厚さ0.5mmのポリアセタール製型を重ね、エナメル質用CRを填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接して、歯科用光照射器で30秒光照射した。得られた硬化体のエナメル質用CR硬化体の面について、標準光Cを照射した際の反射光における色調を、色差計(東京電色社製:TC-1800MKII)を用いて、黒背景条件下で測定し、CIELab表色系で表される、明度L*、及び色度a*、b*を夫々得た。
また、象牙質用CRの硬化体の色調の、エナメル質用CR硬化体を積層することによる色調の変化を次の式で算出した。
ΔL*=L* -L*
ここで、L*は象牙質用CRの硬化体(厚さ1mm)のL*を表し、L* は象牙質用CRの硬化体(厚さ0.5mm)の上にエナメル質用CRの硬化体を厚さ0.5mmとなるように積層した硬化体のL*を表す。ΔL*は、負に大きいほど積層により明度が低下していることを示し、エナメル質用CR(硬化体)を積層することにより、象牙質用CR硬化体(象牙質修復材)の色調が遮蔽されることを示している。
[審美性評価]
背景色の影響を受けにくい裏打ちのあるI級窩洞と背景色の影響を受けやすい裏打ちのないIV級窩洞に対して修復を行った場合の審美性を評価した。
このとき、I級窩洞修復は、A3の色調(シェード)を有する第1大臼歯の人工歯であるエンデュラポステリオ(商品名 松風社製)のM32の咬合面中央にBox状のI級窩洞(横約4mm、縦約3mm、深さ約2mm)を設け、該窩洞に調整した象牙質用CRを充填し、成形後、硬化させてから、さらにその上にエナメル質用CRを充填・成形後、硬化させてから研磨を行った。
また、IV級窩洞の修復は、A3の色調(シェード)を有する上顎中切歯の人工歯であるVITAPAN classical(商品名 VITA社製)の近心にIV級窩洞(横約3mm、縦約4mm)を作製し、該窩洞に調製した象牙質用CRを充填し、マメロンの形状に成形後、硬化し、その上にエナメル質用CRを充填、硬化し、研磨を行った。なお、マメロンとは、切端部にみられる象牙質で構成される内部構造であり、指状構造としてみられる。マメロンが視認できるとは、象牙質層の切端側がギザギザした形状が表層のエナメル質を透過して目視で確認できることを意味する。
各修復部位の審美性を、I級窩洞については、修復歯牙の色調適合性について、IV級窩洞については、修復歯牙の色調適合性とマメロンの視認性について、それぞれ下記基準で評価を行った。
<修復歯牙との色調適合性>
A:修復材料の色調が周辺部位と良く適合している。
B:修復材料の色調が周辺部位と適合しているが、修復箇所が分かる。
C:修復材料の色調が周辺部位より明確に暗く適合していない。
<マメロンの視認性>
A:マメロンの形状が視認できる。また、下記評価Bと比べて、天然歯により近い修復物となっている。
B:マメロンの形状が視認できる。
C:マメロンの形状が視認できない。
Figure 2023035886000003
Figure 2023035886000004
Figure 2023035886000005
実施例8~10、比較例5~6
表3に示す重合性単量体成分及び無機粒子を用いて表3に示すコントラスト比C、色調L,a、bとなるように調色した他は実施例7におけるPD1と同様にして象牙質用CR:PD2~PD6を調製した。また、表4に示す重合性単量体成分及び無機粒子を用いて表4に示すコントラスト比C、色調L,a、bを調色した他は実施例7におけるPE1と同様にしてエナメル質用CR:PE2を調製した。これらを表5に示す組み合わせで使用して実施例7と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
表5の結果から理解されるように、象牙質用CRの重合性単量体成分の硬化体(ポリマー)の屈折率:nよりエナメル質用CRの重合性単量体成分の硬化体(ポリマー)の屈折率:nが小さく、その差:n-nが0.005以上であると、エナメル質修復材が積層されても象牙質の明度の低下が少なく、裏打ちのないIV級窩洞においても背景の影響を受けることなく審美性の高い修復が可能であった。
一方、n-nが負となる場合を含めて0.005未満である比較例5および6では、エナメル質部分修復材が積層されることにより、象牙質部分の明度が低下し、IV級窩洞を修復した際に背景色の影響を受けて暗い修復物となった。そのためマメロンの視認性が低下した。

Claims (5)

  1. 波長589nmの光に対する25℃における屈折率が1.53~1.60である硬化体を与える重合性単量体成分(A):100質量部、レーザー回折-散乱法による粒度分布をもとに求めたメディアン径より得られる平均粒子径が0.1~5μmである無機粒子(B):200~1900質量部、及び重合開始剤(C)を含み、前記重合性単量体(A)中に前記無機粒子(B)が分散したペースト状の歯科用硬化性組成物であって、
    前記重合性単量体成分(A):1質量部、水:2質量部及びメタノール:任意の質量部からなる3成分混合液系において、25℃において均一溶液となる前記3成分混合液のうち、メタノール含有量が最も少ない3成分混合液に含まれるメタノール量(質量部)の数値で定義される、前記重合性単量体成分(A)の疎水性度:M値をMとし、
    水及びメタノールからなり、メタノール濃度を任意に設定できる2成分系水溶液において、所定量の前記無機粒子(B)を過剰量の前記2成分系水溶液に分散させてから静置したときに、前記無機粒子の全量が沈降する前記2成分系水溶液のうち、メタノール濃度が最も低い水溶液におけるメタノールの濃度(容量%)の数値で定義される、前記無機粒子(B)の疎水性度:M値をMとしたときに、
    50≦M-M≦70 で表される関係を満足する、
    ことを特徴とする前記歯科用硬化性組成物。
  2. 前記Mが10~20であり、前記Mが60~80である、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 象牙質部分を修復するための象牙質修復材用硬化性組成物である、請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. プランジャーと、一方端に吐出孔が形成され、他方端に前記プランジャーを挿入するための開口が形成された、筒状部を有するシリンジと、前記吐出孔に着脱自在に装着できるキャップと、を有し、前記開口より前記プランジャーの一部を挿入して前記筒状部内に収容空間を形成した容器と、
    前記容器の前記収容空間内に保持される歯科用硬化性組成物と、を含み、
    前記キャップを前記吐出孔に装着した状態で前記収容空間に保持された歯科用硬化性組成物を保管できるようにすると共に、前記キャップを外してから前記プランジャーを押し込むことにより前記歯科用硬化性組成物保持部内に保持されている歯科用硬化性組成物の一部を前記吐出孔より押出して使用した後に、前記キャップを再装着することにより前記歯科用硬化性組成物の残部を保管できるようにした、シリンジ充填型歯科用充填修復材料において、
    前記収容空間内に請求項1に記載された歯科用硬化性組成物を保持した、ことを特徴とする前記シリンジ充填型歯科用充填修復材料。
  5. 象牙質修復材用硬化性組成物と、該象牙質修復材用硬化性組成物又はその硬化体上に積層して使用されるエナメル質修復材用硬化性組成物と、を含んでなる歯科用充填修復材料キットであって、
    前記象牙質修復材用硬化性組成物は、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物からなり、
    前記エナメル質修復材用硬化性組成物は、前記象牙質修復材用硬化性組成物とは異なる色調を有し、且つ波長589nmの光に対する25℃における屈折率が、前記象牙質修復材用硬化性組成物に含まれる前記重合性単量体(A)の硬化体の屈折率よりも0.005以上小さい硬化体を与える重合性単量体(A´)を含む、
    ことを特徴とする前記歯科用充填修復材料キット。
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