JP2023035551A - ドリル - Google Patents
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Abstract
【課題】 実用性の高いドリルを提供する。【解決手段】 本体10と、その本体の先端に取付けられて切れ刃が形成されたチップ14とを備えたドリルにおいて、そのチップのすくい面30に、切削屑を分断するための分断溝32を形成する。単体であるチップに分断溝を形成し、そのチップを本体に取付けることによって、当該ドリルを作製することができる。つまり、例えば、相当に小径のドリルであっても、簡便に、すくい面に分断溝が形成されたドリルを得ることができ、そのドリルによれば、穴あけ加工において生じる切削屑が、微細化される。【選択図】 図1
Description
本発明は、穴あけ工具であるドリルに関する。
ドリルによる穴あけ作業では、切削屑(切粉)が発生する。この切削屑を細かくするために、例えば、下記特許文献に記載されているように、ドリルの先端において、切削屑排出溝(以下、「フルート」という場合がある)に、詳しくは、切れ刃(「切り刃」とも呼ばれる)のすくい面(回転方向の後方側の側面)に、分断溝を設けることも検討されている。
上記特許文献に記載されたような分断溝を形成する場合、特に、ドリルが小径である場合には、その形成が困難となる。つまり、上記特許文献に記載されたドリルの実用性は、必ずしも高いとは言い難い。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いドリルを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のドリルは、
本体と、その本体の先端に取付けられて切れ刃が形成されたチップとを備えたドリルであって、そのチップのすくい面に、切削屑を分断するための分断溝が形成されたことを特徴とする。
本体と、その本体の先端に取付けられて切れ刃が形成されたチップとを備えたドリルであって、そのチップのすくい面に、切削屑を分断するための分断溝が形成されたことを特徴とする。
本発明のドリルでは、単体であるチップに分断溝を形成し、そのチップをドリル本体に取付けることによって、当該ドリルを作製することができる。つまり、簡便に、すくい面に分断溝が形成されたドリルを得ることができるのである。その結果、本発明のドリルは、実用性が高いものとなる。
本発明のドリルは、切れ刃の数が特に限定されない。一般的な2刃のものは勿論、ガンドリルのような1刃のものや、3刃以上のものであってもよい。チップは、例えば、切れ刃1つに、1つ取付けるようにすればよい。フルートが捩じれた捩じれドリル(スパイラルドリル)であってもよく、フルートが真直ぐな直刃ドリル(ストレートドリル)であってもよい。すくい角、すなわち、本発明のドリルでは、チップのすくい面と当該ドリルの軸線(以下、「ドリル軸線」という場合がある)に直角な平面とのなす角についても、特に限定されない。具体的には、例えば、ドリル軸線を含む平面と、チップのすくい面とが一致するように、チップを取付けることができる。
本発明のドリルにおける本体およびチップの材料についても特に限定されない。本体の材料として、例えば、炭素鋼,工具鋼,高速度鋼,切削工具用超硬合金(いわゆる「超硬」であり、以下、単に、「超硬合金」という場合がある)等を採用することができ、チップの材料として、例えば、上記超硬合金や、高速切削用セラミック,サーメット,強靭炭化チタン基合金等、種々のものを採用することが可能である。
分断溝は、詳しくは、切削屑を主に幅方向において分断するためのものであり、いわゆるチップブレーカとして機能する。1つのチップにおいて分断溝は、1つだけ形成されていてもよく、例えば、当該ドリルの径方向に間隔をおいて複数形成されていてもよい。複数の分断溝が形成されていれば、分断溝が1つだけしか形成されていないものと比較して、より、切削屑が微細化されることになる。
分断溝は、切削屑を分断するという機能からすれば、先端刃となる箇所から延びる必要があるが、その延びる方向については、特に限定されない。例えば、分断溝は、ドリル軸線からの距離が変化しない方向に延びるようにされていてもよい。端的に言えば、直刃ドリルの場合に、ドリル軸線に平行に延びるようにされていてもよい。そのような分断溝であれば、先端を再研磨した場合でも、先端刃における分断溝の径方向の位置、つまり、分断溝のドリル軸線からの距離が変化しないというメリットを享受することが可能である。
分断溝の断面形状についても、特に限定されない。例えば、コ字形状,U字形状,V字形状等、種々の断面形状を採用することが可能である。分断溝は、具体的には、例えば、チップのすくい面に対して傾斜して繋がる傾斜側面を有するような形状(V字形状がその一種である)とされていてもよい。このような分断溝とすれば、その溝の開口付近、つまり、すくい面に近い傾斜側面の部分も、切れ刃の一部として機能することで、穴あけにおける負荷、つまり、穴あけに対する抵抗を小さくすることができる。さらに言えば、例えば、分断溝を、互いに向かい合う2つの側面を有し、それら側面のうちの一方が、傾斜側面となり、他方が、すくい面に対して直角に繋がる直角側面となるようにすることができる。解りやすく言えば、鋸刃の間に存在する谷のような形状である。そのような形状の場合、傾斜側面のすくい面に近い部分が切れ刃として機能することに鑑みれば、ドリル軸線に近い方の側面が直角側面に、ドリル軸線から遠い方の側面が傾斜側面となるようにすることが望ましい。
複数のチップを備えたドリルでは、複数のチップのうちの1つのものの分断溝と、別の1つのものの分断溝とが、ドリル軸線からの距離において互いに異なる位置に形成されることが望ましい。このような分断溝を形成することで、切削屑の微細化が、充分に担保されることになる。
分断溝の形成方法も特に限定されない。例えば、砥石による研削,レーザ加工,ワイヤ放電加工等の放電加工等、種々の方法を採用可能である。チップが超硬合金である場合、微細な加工を精度よく簡便に行えるという観点から、ワイヤ放電加工を採用することが望ましい。なお、ワイヤ放電加工の場合、チップの一端から別の一端に亘って分断溝が形成されるように行えばよい。
チップの本体への取付けについても、特に限定されないが、いわゆるインサートドリルのように、締結具によってチップを本体に締結することで、取付けてもよい。また、ロウ付け等によってチップを本端に接合することで、取付けてもよい。ロウ付けの場合、ロウ材としていわゆる銀ロウを採用することができる。
以下、請求可能発明を実施するための形態として、本発明の実施例であるドリルを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
実施例のドリルは、図1に示すようなものである。ちなみに、図1(a)は、正面図であり、図1(b)は、基端側からの視点で示す図である。図1(c)は、先端側からの視点で示す図であり、図1(a),図1(b)よりも拡大して示されている。
図から解るように、実施例のドリルは、直刃ドリル(ストレートドリル)であり、本体10の先端側の部分に、当該ドリルの軸線であるドリル軸線Lに平行に、2つのフルート(切削屑排出溝)12が設けられており、先端に2つの切れ刃を有している。先端には、それら2つの切れ刃を形成するように、2つのチップ14がロウ付けによって取付けられている。詳しく言えば、本体10の先端部には、チップ14を取付けるための座が形成されており、その座に、チップ14が接合されている。本体10は、超硬合金であり、チップ14も、同じ超硬合金である。ロウ材は、銀ロウである。
2つのフルート12の周方向の間には、両側にマージン16を挟んで逃がし面18が形成されており、実施例のドリルは、いわゆるダブルマージンのドリルとなっている。また、本ドリルには、軸線方向に貫通する2つのクーラント供給孔20が設けられている。
本ドリルの先端部分を拡大して模式的に示す図2(a)、および、チップ14を先端側からの視点で示す図2(b)をも参照しつつ説明すれば、2つの切れ刃の各々は、先端刃22と外周刃24とを有しており、チップ14は、本ドリルの先端刃22の外周側の部分と、外周刃24とを形成するようにされている。ちなみに、図2(a)では、反対側のチップ14が、破線で示されている。
チップ14は、1つの面30が、本ドリルの切れ刃のすくい面となるように、取付けられている。本ドリルでは、その面30(以下、「すくい面30」と呼ぶ場合がある)と、ドリル軸線Lを含む平面とが一致するように、チップ14が取付けられている。言い換えれば、すくい面30が、ドリル軸線Lに直角な平面に対して直角となるように、チップ14が取付けられている。
各チップ14には、すくい面30において、切削屑を分断するための分断溝32が、互いに同じ幅で、2つずつ形成されている。それら分断溝32は、いわゆるチップブレーカとして機能する。各分断溝32は、先端刃22となる部分、つまり、本ドリルの先端から、ドリル軸線Lからの距離が変化しない方向に延びている。本ドリルは直刃ドリルであるため、簡単に言えば、各分断溝32は、ドリル軸線Lに平行に延びている。一般的に、ドリルの再研磨は、先端面を研磨することによって行われるため、そのような方向に延びている分断溝32であれば、再研磨によっても、ドリル軸線Lからの距離(後述するところの図2(a)におけるd1,d2,d1’,d2’)は、変化しない。
1つのチップ14における2つの分断溝32の各々のドリル軸線Lからの距離をd1,d2と、もう1つのチップ14における2つの分断溝32の各々のドリル軸線Lからの距離をd1’,d2’とすれば、分断溝32どうしの間隔は等しいものの(d2-d1=d2’-d1’)、距離d1と距離d1’とは異なり、距離d2と距離d2’とが異なっている。つまり、2つのチップ14のうちの1つのものの分断溝32と、別の1つのものの分断溝32とが、ドリル軸線Lからの距離において互いに異なる位置に形成されているのである。さらに端的に言えば、径方向において互いに異なる位置に形成されているのである。このことによって、分断溝32による切削屑の微細化効果が充分に担保されることになる。
各分断溝32は、図2(c)に断面を示すように、すくい面30に対して傾斜して繋がる傾斜側面34を有している。詳しく言えば、各分断溝32は、互いに向かい合う2つの側面を有し、それら側面のうちの一方が傾斜側面34であり、他方が、すくい面30に対して直角に繋がる直角側面36とされている。分断溝32の先端における側面は、すくい面30に近い部分が先端刃として機能する。そのことに鑑みれば、傾斜側面34を有することは、穴あけにおける加工負荷を小さくするのに役立っている。なお、本ドリルでは、より周速の高い外周側の側面が傾斜側面34とされており、内周側の側面が傾斜側面とされている場合と比較して、加工負荷を小さくすることに対して有利である。
分断溝32は、チップ14が単体の状態で、つまり、本体10に取付けられる前に、ワイヤ放電加工によって、形成される。したがって、チップ14が本体10に取付けられた後に何らかの加工によって形成される場合と比較して、より簡便に、かつ、精度よく、分断溝32を形成することが可能である。
分断溝32が形成されたチップ14を、本体10に形成された座40にロウ付けによって接合するのであるが、先に説明したように、2つのチップ14は、分断溝32の形成されている位置が異なるため、同じチップ14を本体10に取付けてしまうことが懸念される。そこで、本ドリルでは、2つのチップ14の外形形状を互いに異ならせている。具体的には、コーナ円弧R,コーナ円弧R’を異ならせており、同じチップ14が1つのドリルに取付けられることが防止されている。チップ14がロウ付けで本体に接合された後に、最終研磨がなされる。また、2つのチップ14の内周側の端面のドリル軸線Lからの距離d3,d3’が、互いに異なっている。このことにより、切れ刃(先端刃)における本体10とチップ14との境界α,βが互いに異なることで、切れ刃の切削抵抗が小さくされている。つまり、切れ刃への負担が小さくされているのである。
なお、実施例のドリルでは、先に説明したように、ドリル軸線Lからの距離が変化しない方向に延びた分断溝32が形成されたチップ14が取付けられているが、図2(d)に示すようなチップ、つまり、ドリル軸線Lからの距離が変化する方向に延びた分断溝32’が形成されたチップ14、端的に言えば、ドリル軸線Lに対して傾斜して延びる分断溝32’が形成されたチップを採用することも可能である。
ドリルによって生じる切削屑は、図3の写真で示すようなものである。ちなみに、図3(a)は、分断溝が形成されてないドリルによる穴あけで生じる切削屑であり、図3(b)は、実施例のドリルによる穴あけで生じる切削屑である。ドリルの直径は、いずれも12mmφであり、ドリルの回転速度,ドリルの送り速度は、いずれも同じ速度である。
図3の写真から解るように、分断溝32を設けることによって、切削屑が細かくされる。このように微細化された切削屑は、被加工物(ワーク)に付き残り難い。言い換えれば、簡単に被加工物から除去することが可能である。
10:本体 12:フルート(切削屑排出溝) 14:チップ 30:すくい面 32:分断溝
Claims (4)
- 本体と、その本体の先端に取付けられて切れ刃が形成されたチップとを備えたドリルであって、
前記チップのすくい面に、切削屑を分断するための分断溝が形成されたことを特徴とするドリル。 - 前記分断溝が、前記すくい面に対して傾斜して繋がる傾斜側面を有する請求項1に記載のドリル。
- 前記チップが、複数取付けられ、それら複数のチップのうちの1つのものの前記分断溝と、別の1つのものの分断溝とが、当該ドリルの軸線からの距離において互いに異なる位置に形成された請求項1または請求項2に記載のドリル。
- 前記分断溝が、ワイヤ放電加工によって形成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のドリル。
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