JP2023032498A - メスコネクタ - Google Patents
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Abstract
【課題】スリットが形成された隔壁部材を備えたメスコネクタにおいて、大径のオス部材を挿入したときに液体の流量を増大させる。【解決手段】隔壁部材10の内面21に凸部22が設けられ、凸部22内に、隔壁部材10をその厚さ方向に貫通するスリット13が設けられている。スリット13は、隔壁部材10の中心1aから放射状に延びた複数のスリットセグメント13a,13bで構成される。隔壁部材10を内面21側から見た凸部13の形状は、複数のスリットセグメント13a,13bの延び方向に沿った中心1aから凸部22の外周端までの距離を半径とする仮想円22aに内接する非円形である。【選択図】図5
Description
本発明は、オス部材を挿抜可能なメスコネクタに関する。特に、軟質材料からなり、スリットが形成された隔壁部材を備えたメスコネクタに関する。
医療の分野において、薬液や血液などの各種液体が流れる流路を構成するために、オス部材とメスコネクタとからなる接続具が用いられる。流路を流れる液体の種類によっては、液体が外界へ漏れ出るのを防ぐことが要望されることがある。特許文献1,2には、この要望に対応したメスコネクタが記載されている。このメスコネクタは、軟質材料からなる薄板状の隔壁部材を備える。隔壁部材には、その厚さ方向に隔壁部材を貫通する直線状のスリット(切り込み)が形成されている。メスコネクタに棒状のオス部材を挿入することができる。オス部材は、メスコネクタに挿入されると、隔壁部材を変形させてスリットを開かせる。オス部材はスリットを貫通し、オス部材とメスコネクタとが連通する。オス部材をメスコネクタから引き抜くと、隔壁部材は直ちに初期状態に復帰し、スリットが閉じられる。隔壁部材は、オス部材がメスコネクタに挿入(接続)されたときのみ開口する自閉式の弁として機能する。
メスコネクタに挿入されるオス部材の径(外径)は様々である。オス部材の径が大きくなるほど、オス部材をメスコネクタに挿入したときに隔壁部材はより大きく変形する。相対的に太いオス部材(以下「大径のオス部材」という)をメスコネクタに強引に押し込むと、隔壁部材が大きく変形され、スリットの延び方向の端を起点とする亀裂が隔壁部材に発生する可能性が高くなる。
特許文献3には、スリットが形成された円形の中央部の回りに環状の薄肉部を形成した隔壁部材を備えたメスコネクタが記載されている。大径のオス部材をこのメスコネクタに挿入すると、オス部材の先端が隔壁部材の中央部に当接した状態で、オス部材は中央部をメスコネクタの内腔内に押し込む。このとき、中央部の回りの薄肉部が選択的に伸ばされる。薄肉部に発生する弾性復元力が、中央部を半径方向外向きに引っ張り、スリットが開く。オス部材とメスコネクタとが連通する(特許文献3の図4参照)。スリットは、オス部材が貫通できるほど大きくは開かれない。中央部は、大径のオス部材がスリットを貫通するほどに大きく変形しないので、スリットの端を起点とする亀裂が隔壁部材に発生する可能性は低い。
特許文献3では、大径のオス部材をメスコネクタに挿入したとき、隔壁部材のスリットは大きく開かれない。このためオス部材とメスコネクタとの間を流れる液体の流量が小さいという課題がある。
本発明の目的は、スリットが形成された隔壁部材を備えたメスコネクタにおいて、大径のオス部材を挿入したときに液体の流量を増大させることにある。
本発明のメスコネクタは、軟質材料からなる薄板状の隔壁部材と、保持筒を有するメスコネクタ本体と、中央に開口が形成されたキャップとを備える。前記隔壁部材が前記メスコネクタ本体の前記保持筒と前記キャップとによって前記隔壁部材の厚さ方向に保持されている。前記隔壁部材は、互いに反対側を向いた外面及び内面と、前記隔壁部材の前記内面に設けられた、前記メスコネクタ本体の内腔に向かって突出した凸部と、前記凸部内に設けられた、前記隔壁部材をその厚さ方向に貫通するスリットとを備える。前記スリットは、前記隔壁部材の中心から放射状に延びた複数のスリットセグメントで構成される。前記隔壁部材を前記内面側から見た前記凸部の形状は、前記複数のスリットセグメントの延び方向に沿った前記中心から前記凸部の外周端までの距離を半径とする仮想円に内接する非円形である。
本発明によれば、隔壁部材の内面に設けられた凸部が、スリットの形状に応じた非円形形状を有する。このため、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたとき、スリットはより大きく開かれ、液体の流量を増大させることができる。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記隔壁部材をその厚さ方向に透視したとき、前記凸部は、前記キャップの前記開口より内側に配置されていてもよい。かかる態様は、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたときに、液体の流量を増大させるのに有利である。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記隔壁部材の前記内面は、前記凸部に隣接して前記凸部を取り囲む環状平坦面を有していてもよい。前記凸部は、前記環状平坦面より前記メスコネクタ本体の内腔に向かって突出していてもよい。かかる態様によれば、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されときに、環状平坦面が形成された領域に、スリットを開かせるための力(引張り力)を効果的に発生させることができる。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記メスコネクタ本体の前記保持筒は、前記隔壁部材の前記環状平坦面を支持してもよい。かかる態様は、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたときに、液体の流量を増大させるのに有利である。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記保持筒の頂面から環状リブが突出していてもよい。かかる態様は、第1に、メスコネクタ本体の内腔内の液体が隔壁部材と保持筒との間を通って外界に漏れ出るのを防止するのに有利であり、第2に、メスコネクタにオス部材が挿入されたときに、隔壁部材が保持筒に対して位置ずれしたり、保持筒から脱落したりするのを防止するのに有利である。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記複数のスリットセグメントは、前記隔壁部材の前記中心に対して等角度間隔で配置されていてもよい。かかる態様は、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたときに、液体の流量を増大させるのに有利である。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記スリットは、ただ2つのスリットセグメントで構成されてもよい。前記隔壁部材を前記内面側から見た前記凸部の形状は略楕円形であってもよい。スリットがただ2つのスリットセグメントで構成されることは、メスコネクタに小径のオス部材が挿入されたときに、外界への液漏れを防止するのに有利である。また、凸部の形状が略楕円形であることは、メスコネクタに対するオス部材の繰り返しの挿抜に対する隔壁部材の耐久性の向上に有利である。
本発明のメスコネクタの一態様では、前記キャップの前記開口の開口端に嵌合することができる外周面を備えた棒状のオス部材を前記キャップの前記開口に挿抜することができてもよい。前記オス部材を、前記外周面が前記開口の前記開口端に嵌合するまで前記キャップの前記開口に挿入したとき、前記隔壁部材の前記外面が前記オス部材の先端に前記メスコネクタの軸方向に密着し、前記スリットを規定するリップが離間して、前記オス部材と前記メスコネクタとが連通されてもよい。かかる態様は、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたときに、スリットの端を起点とする亀裂が隔壁部材に発生するのを防止するのに有利である。
前記オス部材の前記外周面に、前記オス部材の先端に向かって外径が小さくなるオステーパ面が設けられていてもよい。前記キャップの前記開口を規定する内周面に、前記内腔に向かって内径が小さくなるメステーパ面が設けられていてもよい。前記メステーパ面は、前記オステーパ面より大きなテーパ角度を有していてもよい。かかる態様は、オス部材がキャップの開口の開口端に嵌合した状態を安定的に維持するのに有利である。
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
図1は、本発明の一実施形態にかかるメスコネクタ1の斜視図である。図2及び図3は、メスコネクタ1の断面図である。図4は、メスコネクタ1の分解斜視断面図である。図2及び図3において、一点鎖線1aは、メスコネクタ1の軸(即ち、中心軸)である。軸1aは、メスコネクタ1に含まれる円の中心を通り、且つ/又は、メスコネクタ1に含まれる円筒もしくは円錐(テーパ)の中心軸と一致する。図2及び図4の断面は、軸1aを含みスリット13(図1参照)の延び方向に垂直である。図3の断面は、軸1aを含みスリット13の延び方向に平行である。以下の説明の便宜のために、軸1aに平行な方向を「上下方向」という。メスコネクタ1の先端側(図2及び図3において上側)を「上」側、メスコネクタ1の基端側(図2及び図3において下側)を「下」側という。軸1aに垂直な平面に平行な方向を「水平方向」という。但し、「上」、「下」、「水平」は、メスコネクタ1の実際の使用時の向きを意味するものではない。軸1aに直交する直線に沿った方向を「半径方向」又は「直径方向」という。半径方向において、軸1aに近い側を「内側」、軸1aから遠い側を「外側」という。軸1aの周りを回転する方向を「周方向」という。
図4に示されているように、メスコネクタ1は、隔壁部材(「セプタム」と呼ばれることがある)10、メスコネクタ本体(以下「本体」という)30、及び、キャップ60を備える。本体30及びキャップ60は、隔壁部材10を上下方向に挟持し固定する。
隔壁部材10は、全体として円形の薄板形状を有する。隔壁部材10は、外力によって比較的容易に変形可能であり、且つ、外力を取り除くと直ちに変形前の状態(初期状態)に復帰するように、弾性(あるいは可撓性)を有する軟質材料(いわゆるエラストマー)からなる。使用しうる軟質材料としては、制限されないが、軟質ポリ塩化ビニルや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム等を例示することができる。隔壁部材10は、上記の材料を用いて、全体を一部品として一体的に製造することができる。
隔壁部材10は、隔壁部材10の厚さ方向(または軸1a方向)に互いに反対側を向いた外面(または上面)11及び内面(または下面)21を有する。
隔壁部材10の外面11には、中央部12、環状溝16、環状凸部18が、半径方向の内側から外側に向かってこの順に同軸に設けられている。中央部12は、円形の平面視形状(軸1aに沿って見た形状)を有し、その頂面(上方を向いた面)は水平方向に沿った平坦面である。中央部12は、キャップ60の開口62を介して外界に露出される(図1参照)。好ましくは、中央部12は、キャップ60の開口62内に嵌入される(図2及び図3参照)。中央部12に、隔壁部材10をその厚さ方向に貫通するスリット(切り込み)13が形成されている。本実施形態では、スリット13は、軸1aと交差し、直線状に(直径方向に)延びている。スリット13の長さは、中央部12の直径より短い。環状溝16は、円形の平面視形状を有し、中央部12を取り囲んで円環状に延びている。環状凸部18は、環状溝16に対して半径方向外側に、環状溝16に隣接している。環状凸部18は、円形の平面視形状を有し、隔壁部材10の外周端に沿って円環状に延びている。中央部12及び環状凸部18は、環状溝16の底部(環状溝16の最も深い部分)よりも上方に向かって突出している。
図5Aは、隔壁部材10の、その内面21側から見た斜視図である。図5Bは、隔壁部材10の、その内面21側から見た平面図である。隔壁部材10の内面21には、凸部22、環状平坦面26、環状凸部28が、半径方向の内側から外側に向かってこの順に同軸に設けられている。凸部22は、略楕円形の平面視形状を有し、その長軸は、スリット13の延び方向に沿っている。凸部22の長軸方向寸法は、スリット13の長さより長い。凸部22の頂面(メスコネクタ1において下方または本体30の内腔35(図2及び図3参照)を向いた面)は、水平方向に沿った平坦面である。環状平坦面26は、凸部22に対して半径方向外側に、凸部22に隣接している。環状平坦面26は、凸部22を取り囲むように周方向に連続して延びている。環状平坦面26は、水平方向に沿った平坦面である。環状凸部28は、環状平坦面26に対して半径方向外側に、環状平坦面26に隣接している。環状凸部28は、円形の平面視形状を有し、隔壁部材10の外周端に沿って円環状に延びている。環状凸部28は、環状凸部18と半径方向において略同一位置に設けられている(図4参照)。凸部22及び環状凸部28は、環状平坦面26よりも下方に向かって突出している。
図5Bにおいて、二点鎖線22aは、凸部22に外接する仮想円(即ち、外接円)である。仮想円22aの中心は、隔壁部材10の中心と一致し、これはメスコネクタ1の軸1aとも一致する。換言すれば、凸部22は、隔壁部材10と同心の仮想円22aに内接する。スリット13は、隔壁部材10(または仮想円22a)の中心1aから放射状に(半径方向に)延びた2つのスリットセグメント13a,13bで構成される。スリットセグメント13aとスリットセグメント13bとは、同一長さを有し、中心1aから反対側に向かって一直線に沿って延びている。仮想円22aは、スリットセグメント13a,13bの延び方向に沿った隔壁部材10の中心1aから凸部22の外周端までの距離を半径とする円である。凸部22は、スリットセグメント13a,13bの延長線が凸部22の外周端に交差する点(交差点)において、仮想円22aに内接する。
図4に戻り、本体30は、その上側に、台座31を備える。台座31は、外筒33及び保持筒(下保持筒)36からなる二重筒構造を有する。外筒33及び保持筒36は、いずれも軸1aと同軸の略円筒形状を有する。外筒33は、保持筒36に対して、半径方向外側に、半径方向に離間して配置されている。外筒33は保持筒36よりも、上方に向かって、より高い位置まで延びている。外筒33の内周面には、周方向に沿って延びた凸条(環状リブ)及び/又は凹条(環状溝)からなる嵌合構造34が設けられている。保持筒36の頂面(上方を向いた面)は、水平方向に沿った平坦面である。保持筒36の頂面から、環状リブ37が上方に向かって突出している。環状リブ37は、軸1aと同心の円に沿って周方向に連続している。環状リブ37の軸1aを含む面に沿った断面形状は、制限されないが、先細の略台形、三角形(楔形)、半円形等から任意に選択しうる。環状リブ37の半径方向寸法は、保持筒36の頂面の半径方向寸法より小さく、好ましくは2分の1以下、更に好ましくは3分の1以下である。
本体30は、その下側に、接続部40を備える。接続部40は、軸1aと同軸の、接続筒41及びスカート部45からなる。接続筒41は中空の略円筒形状を有する。流路42が、軸1aに沿って接続筒41を貫通している。流路42は、メスコネクタ1(または本体30若しくは保持筒36)の内腔35と連通している。接続筒41の外周面43は、その先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。スカート部45は、中空の略円筒形状を有し、接続筒41を取り囲み、且つ、接続筒41から半径方向に離間している。スカート部45の内周面には雌ネジ46が設けられている。接続筒41には、液体(例えば血液、薬液、生理食塩水等)が流れる回路を構成する柔軟なチューブが、直接的に又は他の部材(図示せず)を介して間接的に接続される。
図1に示されているように、本体30の外周面には、一対の凹部51(図1では1つの凹部51のみが見える)及び環状溝53が設けられている。凹部51は、外筒33の上端から下方に向かって延びた鉤形状(略「J」字形状又は略「L」字形状状)を有する。一対の凹部51は軸1aに対称である。環状溝53は、外筒33とスカート部45との境界に沿って周方向に連続している。
図4に戻り、キャップ60は、円板形状を有する天板61を備える。天板61の中央には円形の開口(貫通孔)62が形成されている。嵌合筒63及び保持筒(上保持筒)66が、天板61の下面から下方に向かって延びている。嵌合筒63及び保持筒66は、いずれも略円筒形状を有する。天板61、開口62、嵌合筒63、保持筒66は、いずれも軸1aと同軸である。開口62、保持筒66、及び嵌合筒63が、半径方向の内側から外側に向かって、互いに離間して、この順に配置されている。嵌合筒63は、隔壁部材10の外径より大きな内径を有する。嵌合筒63の外周面には、周方向に連続する凸条(環状リブ)及び/又は凹条(環状溝)からなる嵌合構造64が設けられている。
本体30及びキャップ60は、硬質の材料からなることが好ましい。本体30及びキャップ60の材料として、制限されないが、例えば、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。本体30及びキャップ60のそれぞれは、これらの樹脂材料を用いて射出成形法等により全体を一部品として一体的に製造することができる。
図2及び図3に示されているように、隔壁部材10は、本体30の外筒33内に収納される。隔壁部材10の環状平坦面26は、本体30の保持筒36上に載置される。保持筒36は、環状平坦面26の半径方向外側端近傍の部分(環状凸部28近傍の部分)を支持する。内腔35は、隔壁部材10で塞がれる。キャップ60の嵌合筒63が、外筒33に嵌入される。隔壁部材10は、嵌合筒63内に収納される。本体30の外筒33に設けられた嵌合構造34と、キャップ60の嵌合筒63に設けられた嵌合構造64とが嵌合する。キャップ60の保持筒66が、隔壁部材10の外面11の環状溝16に嵌入する。キャップ60の保持筒66は本体30の保持筒36に上下方向にほぼ対向する位置に設けられている。隔壁部材10は、保持筒36と保持筒66とによって厚さ方向(上下方向)に圧縮されながら保持される。保持筒36から突出した環状リブ37が、隔壁部材10を局所的に圧縮変形させながら環状平坦面26に食い込む。環状凸部28は、保持筒36に対して半径方向外側に、保持筒36に半径方向に対向し且つ近接して配置される。環状凸部18は、保持筒66に対して半径方向外側に、保持筒66に半径方向に対向し且つ近接して配置される。隔壁部材10の中央部12及びスリット13が、キャップ60の開口62を介して上方に向かって露出される(図1参照)。メスコネクタ1にオス部材(例えば後述するオス部材80,90)が挿入されていない初期状態では、隔壁部材10(特にその中央部12)は実質的に変形しておらず、スリット13を規定する対向する一対のリップ13xは互いに密着し、スリット13は実質的に液密に閉じられる(図2参照)。内腔35が液体で満たされても、スリット13を介して液体が外界に漏れ出ることはない。
メスコネクタ1は、キャップ60の開口62にオス部材を挿入することによって、オス部材と接続される。オス部材は、真っ直ぐに延びた棒状部材である。オス部材内には、その長手方向に沿って流路が設けられている。流路は、オス部材の先端又はその近傍において外界に向かって開口している。メスコネクタ1にオス部材を接続すると、オス部材の流路と本体30(またはメスコネクタ1)の内腔35(更には流路42)とが連通される。
本発明において、オス部材に制限はない。オス部材の径(特に外径)にも制限はない。
図6は、小径のオス部材80が挿入されたメスコネクタ1の断面図である。図6の断面は、図2の断面と同じである。図6は、オス部材80が挿入されたメスコネクタ1をX線CT撮影した断面画像を模式的に示したものである。オス部材80は、細長い棒状部材である。流路81が、オス部材80の長手方向に沿ってオス部材80内に設けられている。流路81は、オス部材80を貫通し、オス部材80の先端において開口している。オス部材80の外周面83は、オス部材80の長手方向において外径が略一定である円筒面である。但し、外周面83の形状は、これ限定されず、例えばオス部材80の先端に向かって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)や、これ以外の任意の形状であってもよい。オス部材80の外径は、キャップ60の開口62の内径より小さい。
オス部材80は、隔壁部材10のスリット13(図1、図2参照)を貫通している。オス部材80は、隔壁部材10よりもメスコネクタ1の内腔35側に突出している。オス部材80の流路81は内腔35と連通する。
隔壁部材10は、オス部材80によって変形されている。具体的には、オス部材80がスリット13を貫通する際のオス部材80と隔壁部材10との間の摩擦力によって、隔壁部材10の中央部12及び環状平坦面26は、メスコネクタ1の内腔35側に曲げ変形されている。スリット13のリップ13xが互いに離間され、その間にオス部材80が挿入されている。リップ13xはオス部材80の外周面83に密着している。リップ13xとオス部材80の外周面83との間に液密なシールが形成される。このため、内腔35内の液体が、リップ13xとオス部材80との間を通って外界に漏れ出る可能性は低い。
図6の状態においてオス部材80をメスコネクタ1から引き抜くと、隔壁部材10は直ちに初期状態(図1~図3参照)に復帰する。リップ13xが互いに密着し、スリット13は液密に閉じられる。隔壁部材10は、オス部材80がメスコネクタ1に挿入(接続)されたときのみ開口する自閉式の弁として機能する。
オス部材80の外径は比較的小さいので、図6のようにオス部材80が隔壁部材10を貫通したときのスリット13の開度(リップ13x間の間隔)は比較的小さい。このため、オス部材80が隔壁部材10を貫通しても、スリット13の延び方向の端(即ち、スリット13のうち中心1aから最も遠い箇所。以下、「スリット端」という)を起点とする亀裂が隔壁部材10に発生する可能性は低い。
オス部材80は隔壁部材10を貫通することができるので、オス部材80の流路81は、隔壁部材10に遮られることなく、内腔35に向かって開放される。オス部材80とメスコネクタ1との間で、流路81の断面積に応じた流量の液体を流すことができる。
図7は、大径のオス部材90が挿入されたメスコネクタ1の断面図である。図7の断面は、図2の断面と同じである。図7は、オス部材90が挿入されたメスコネクタ1をX線CT撮影した断面画像を模式的に示したものである。オス部材90は、太くて長い棒状部材である。流路91が、オス部材90の長手方向に沿ってオス部材90内に設けられている。流路91は、オス部材90を貫通し、オス部材90の先端において開口している。オス部材90の外周面93は、オス部材90の先端に向かって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面、例えば6%テーパ面)である。但し、外周面93の形状は、これ限定されず、例えばオス部材90の長手方向において外径が略一定である円筒面や、これ以外の任意の形状であってもよい。オス部材90の外径は、小径のオス部材80(図6参照)より大きい。
図7に示されているように、オス部材90は、その外周面93がキャップ60の開口62を規定する開口端に嵌合するまで挿入される。外周面93と開口端とが接触し、両者間に摩擦力が発生する。この摩擦力は、オス部材90がメスコネクタ1に、所定の深さに挿入されて接続された状態を維持する。オス部材90の先端は、メスコネクタ1の内腔35内に達している。
小径のオス部材80を挿入した状態を示した図6と比較すれば容易に理解できるように、図7では、オス部材90は、隔壁部材10のスリット13を貫通していない。オス部材90の先端は、隔壁部材10の中央部12の頂面(上方を向いた面、図2参照)に上下方向(軸1a方向)に当接している。中央部12は、オス部材90の先端が当接したままで、オス部材90によって内腔35に向かって押し込まれている。隔壁部材10は、環状平坦面26が形成された比較的薄い部分(図2及び図5A参照、以下「薄肉部」という)が、保持筒36とオス部材90との間に半径方向に挟まれるように、下方に向かって屈曲されている。そして、薄肉部は、オス部材90の外周面93に沿って上下方向に伸ばされている。薄肉部の弾性復元力(反発力)が、環状平坦面26で囲まれた凸部22を引っ張る。このため、スリット13を規定する対向するリップ13xが互いに離間し、スリット13が開かれる。オス部材90の流路94は、スリット13(またはリップ13x間の隙間)を介してメスコネクタ1の内腔35と連通する。
薄肉部の弾性復元力が、隔壁部材10の中央部12の頂面をオス部材90の先端に軸1a方向に押し付け密着させる。中央部12とオス部材90の先端との間に液密なシールが形成される。このため、内腔35内の液体が、隔壁部材10とオス部材90との間を通って外界へ漏れ出る可能性は低い。
図7の状態においてオス部材90をメスコネクタ1から引き抜くと、隔壁部材10は直ちに初期状態(図1~図3参照)に復帰する。リップ13xが互いに密着し、スリット13は液密に閉じられる。隔壁部材10は、オス部材90がメスコネクタ1に挿入(接続)されたときのみ開口する自閉式の弁として機能する。
スリット13の長さは、大径のオス部材90をメスコネクタ1に挿入したとき、オス部材90がスリット13を貫通しないように設定されている。オス部材90をメスコネクタ1に挿入したとき、リップ13xは、オス部材90の外径ほどに大きく離間しない。リップ13x間の間隔は、オス部材90の先端での外径より小さい。オス部材90をメスコネクタ1に挿入したとき、スリット13の開度がこのように比較的小さいので、スリット13の延び方向の端(スリット端)を起点とする亀裂が隔壁部材10に発生する可能性は低い。また、スリット13が形成された中央部12の変形が比較的小さいので、中央部12とオス部材90の先端との間に形成されるシールの液密性が向上する。
本実施形態では、隔壁部材10の内面12に形成された凸部22の平面視形状が、スリット13に沿った長軸を有する略楕円形である(図5A及び図5B参照)。これは、大径のオス部材90をメスコネクタ1に接続したとき、スリット13の開度を大きくし、オス部材80とメスコネクタ1との間での液体の流量を増大させるのに有利である。以下に、これを説明する。
図8は、比較例にかかるメスコネクタ901の、その中心軸を含む面での断面図である。図8の断面は、図2と同様に、メスコネクタ901の軸1aを含みスリット13の長手方向に垂直である。図8において、メスコネクタ1(図2参照)と同じ部材には同じ符号が付してあり、それらについて重複する説明を省略する。メスコネクタ901は、隔壁部材910に関して、本実施形態のメスコネクタ1と異なる。図9Aは、隔壁部材910の、その内面21側から見た斜視図である。図9Bは、隔壁部材910の、その内面21側から見た平面図である。図9A及び図9Bを図5A及び図5Bと比較すれば分かるように、隔壁部材910は、凸部922の平面視形状が隔壁部材910の中心(またはメスコネクタ910の軸)1aと同心の円形である点で、凸部22の平面視形状が略楕円形である隔壁部材10と異なる。
図10は、図7と同様に、大径のオス部材90が挿入されたメスコネクタ901をX線CT撮影した断面画像を模式的に示した断面図である。図10の断面は、図8の断面と同じである。図7と同様に、オス部材90は、その外周面93がキャップ60の開口62を規定する開口端に嵌合するまで挿入されている。図7及び図10は、メスコネクタ(1,901)に対するオス部材90の挿入深さが同じであるにもかかわらず、スリット13の開度(リップ13x間の間隔)は、図7の方が図10より大きい。この理由を、本発明者らは、概略以下のように考えている。
メスコネクタ1及びメスコネクタ901のいずれにおいても、大径のオス部材90をメスコネクタ(1,901)に挿入したとき、オス部材90によって隔壁部材(10,910)の薄肉部(隔壁部材(10,910)のうち、環状平坦面(26)が形成された比較的薄い部分)が選択的に伸ばされる。薄肉部に発生する弾性復元力(反発力)が、環状平坦面(26)で囲まれた凸部(22,922)を半径方向外向きに引っ張る。この引張り力が、リップ13xを互いに離間させ、スリット13を開かせる。スリット13が開くとき、スリット13を取り囲む比較的厚い凸部(22,922)が変形する。変形した凸部(22,922)には、変形前の初期状態に復帰しようする弾性復元力(反発力)、即ち、スリット13を閉じようとする力(以下「閉じ力」という)が発生する。凸部(22,922)の変形は、概して水平面に沿った曲げ変形であることから、閉じ力の大きさは、スリット13(またはスリットセグメント13a,13b)の延び方向に直交する方向に沿った凸部(22,922)の寸法に依存する。スリット13の延び方向に直交する方向に沿った凸部(22,922)の寸法は、凸部22が略楕円形である本実施形態(図5B参照)の方が、凸部922が円形である比較例(図9B参照)より小さい。このため、略楕円形の凸部22に発生する閉じ力は、円形の凸部922に発生する閉じ力よりも小さい。したがって、本実施形態(図7)は、メスコネクタに対するオス部材90の挿入深さに関して比較例(図10)と同じであるにもかかわらず、スリット13の開度(リップ13x間の間隔)に関しては比較例(図10)より大きくなるのである。
上述したように、本実施形態では、スリット13が、隔壁部材10の中心1aから放射状に延びた2つのスリットセグメント13a,13bで構成されている(図5B参照)。隔壁部材10の内面21側から見た凸部22の形状は、スリットセグメント13a,13bの延び方向に沿った中心1aから凸部22の外周端までの距離を半径とする仮想円22aに内接する略楕円形である。換言すれば、凸部22の形状は、中心1aから凸部22の外周端までの距離が、スリットセグメント13a,13bの延び方向において最大となる略楕円形である。このように、凸部22が、スリット13の形状(またはスリットセグメント13a,13bの延び方向)に応じた非円形形状を有するので、大径のオス部材90が挿入されたとき、スリット13は、本実施形態のメスコネクタ1(図7)においては、比較例のメスコネクタ901(図10)よりも、より大きく開かれるのである。液体は、スリット13(またはリップ13x間の隙間)を通って流れる。このため、図7を図10と比較すれば容易に理解できるように、本実施形態のメスコネクタ1は、大径のオス部材90が挿入されたときに、オス部材90とメスコネクタ1との間を流れる液体の流量を増大させることができる。
図5Bにおいて、二点鎖線62は、メスコネクタ1を軸1aに沿って透視したときのキャップ60の開口62(特にその開口端、図1~図3参照)を示す。開口62の開口端は、隔壁部材10の上面11に設けられた中央部12の外周端に一致する。本発明では、開口62(または中央部12)と凸部22との大小関係に制限はない。例えば、凸部22が開口62(または中央部12)よりも半径方向外側にはみ出していてもよい。但し、好ましくは、本実施形態のように、凸部22は開口62(または中央部12)より内側に配置される。これは、隔壁部材10を平面視したときの凸部22の面積が比較的小さいことを意味する。凸部22の面積が小さいと、メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入したときに凸部22に発生する上記閉じ力が小さくなり、スリット13の開度(リップ13x間の間隔)が大きくなる。したがって、凸部22が開口62より内側に配置されることは、メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入したときに、オス部材90とメスコネクタ1との間を流れる液体の流量を増大させるのに有利である。なお、開口62を規定する内周面が円筒面以外の形状を有する場合(例えば、後述する図15A参照)には、凸部22との関係においては、開口62は、当該内周面の最小内径部に基づいて定義される。
本発明では、隔壁部材10の内面21において、凸部22の周囲の構成は任意である。但し、好ましくは、本実施形態のように、内面21に、凸部22に隣接して凸部22を取り囲む環状平坦面26が設けられる(図5A及び図5B参照)。凸部22は、環状平坦面26より本体30(またはメスコネクタ1)の内腔35に向かって突出する(図2及び図3参照)。隔壁部材10のうち環状平坦面26が形成された領域は、メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入したときに選択的に延ばされる薄肉部として機能する(図7参照)。したがって、隔壁部材10の内面21が環状平坦面26を備えることは、メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入したときに、スリット13を開かせるための力(引張り力)を効果的に発生させるのに有利である。
本発明では、隔壁部材10は、本体30の略円筒形状の保持筒36とキャップ60とによって軸1a方向に保持される。本発明では、保持筒36及びキャップ60が隔壁部材10を保持する構造に制限はない。但し、好ましくは、保持筒36は、隔壁部材10の内面21の環状平坦面26を支持する(図2及び図3参照)。この構成では、初期状態において、保持筒36から半径方向内側に向かって環状平坦面26が延びる。メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入すると、環状平坦面26が保持筒36の内周面に半径方向に対向しながら、環状平坦面26が形成された領域(薄肉部)が上下方向に伸ばされる(図7参照)。突起がない環状平坦面26が保持筒36に対向するので、環状平坦面26が保持筒36に半径方向に当接したとしても、その当接が薄肉部の伸びに悪影響を及ぼさない。メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入したときに、隔壁部材10の伸びが容易であり、これは、スリット13の開度(リップ13x間の間隔)を大きくするのに有効である。したがって、保持筒36が、隔壁部材10の環状平坦面26を支持することは、メスコネクタ1に大径のオス部材90を挿入したときに、オス部材90とメスコネクタ1との間を流れる液体の流量を増大させるのに有利である。
本実施形態では、保持筒36の頂面から環状リブ37が突出している。環状リブ37は、隔壁部材10の環状平坦面26に食い込む(図2、図3、図6、図7参照)。環状リブ37は、隔壁部材10と保持筒36との間のシール性を向上させ、内腔35内の液体が隔壁部材10と保持筒36との間を通って外界に漏れ出るのを防止するのに有利である。また、環状リブ37は、メスコネクタ1にオス部材80,90が挿入されたとき、隔壁部材10が保持筒36に対して位置ずれしたり、保持筒36から脱落したりするのを防止するのに有利である(図6及び図7参照)。
上記の実施形態は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
隔壁部材に設けられる凸部やスリットの平面視形状は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、上記の実施形態では、隔壁部材10の内面21に設けられた凸部22の形状は略楕円形であったが(図5A及び図5B参照)、本発明において内面21側から見た凸部の形状はこれに限定されない。例えば、図11A及び図11Bに示すように、隔壁部材110の内面21に、両端の2つの半円(円弧)とこれらをつなぐ2本の直線とで構成された長円形(陸上競技場のトラック形状)を有する凸部122が形成されていてもよい。凸部122内に、上記実施形態と同様の直線状のスリット13が形成されている。凸部122は、上記実施形態の凸部22(図5B参照)と同様に、スリット13を構成する2つのスリットセグメント13a,13bの延び方向に沿った中心1aから凸部122の外周端までの距離を半径とする仮想円122aに内接する非円形である。
上記の実施形態では、隔壁部材10に設けられるスリット13は、隔壁部材10の中心1aを通る一直線に沿っていたが(図5B参照)、本発明においてスリットの平面視形状はこれに限定されない。
例えば、図12A及び図12Bに示すように、隔壁部材210に、略「Y」字の平面視形状を有するスリット213が形成されていてもよい。スリット213は、隔壁部材210の中心1aから放射状に延びた3つのスリットセグメント213a,213b,213cで構成されている。3つのスリットセグメント213a,213b,213cは、隔壁部材210の中心1aに対して等角度間隔で配置されている。隔壁部材210の内面21には、スリット213に応じた形状を有する凸部222が形成されている。具体的には、内面21側から見た凸部222の形状は、3つのスリットセグメント213a,213b,213cの延び方向に沿った中心1aから凸部222の外周端までの距離を半径とする仮想円222aに内接する非円形である。
図13A及び図13Bに示すように、隔壁部材310に、略「X」字(または略十字)の平面視形状を有するスリット313が形成されていてもよい。スリット313は、隔壁部材310の中心1aから放射状に延びた4つのスリットセグメント313a,313b,313c,313dで構成されている。4つのスリットセグメント313a,313b,313c,313dは、隔壁部材310の中心1aに対して等角度間隔で配置されている。隔壁部材310の内面21には、スリット313に応じた形状を有する凸部322が形成されている。具体的には、内面21側から見た凸部322の形状は、4つのスリットセグメント313a,313b,313c,313dの延び方向に沿った中心1aから凸部322の外周端までの距離を半径とする仮想円322aに内接する非円形である。
以上のように、本発明では、隔壁部材に設けられたスリットは、隔壁部材の中心から放射状に延びた複数のスリットセグメントで構成されていることが必要である。各スリットセグメントは、半径方向に沿って、隔壁部材の中心からまっすぐに延びる。隔壁部材の内面に設けられる凸部の平面視形状は、スリットの平面視形状に応じて変更しうる。具体的には、隔壁部材の内面側から見た凸部の形状(平面視形状)は、複数のスリットセグメントの延び方向に沿った隔壁部材の中心から凸部の外周端までの距離を半径とする仮想円に内接する非円形である。換言すれば、凸部の平面視形状は、各スリットセグメントの延長線が凸部の外周端に交差する点(交差点)において、隔壁部材と同心の共通する仮想円に内接する非円形である。更に換言すれば、凸部の平面視形状は、各スリットセグメントの延長線が隔壁部材と同心の仮想円に交差する点において当該仮想円に内接する非円形である。したがって、隔壁部材の中心から凸部の外周端までの距離は、スリットセグメントの延び方向において最大(最大距離)となり、これと異なる少なくとも一方向においては当該最大距離より短い。凸部が仮想円に内接する点(接点)の数は、好ましくは、スリットを構成するスリットセグメントの数に一致する。このようなスリット及び凸部が設けられた隔壁部材(110,210,310)を備えたメスコネクタは、上記実施形態のメスコネクタ1と同様に、大径のオス部材が挿入されたときに、当該オス部材とメスコネクタとの間を流れる液体の流量を増大させることができる。
本発明では、隔壁部材の内面側から見たとき、凸部は、各スリットセグメントの延長線が凸部の外周端に交差する点(交差点)において、半径方向外向きに最も大きく突出する。好ましくは、凸部の外周端は、各交差点において、半径方向外向きに突出した凸曲線を備える。凸曲線の曲率半径は、制限されないが、好ましくは、交差点において凸部が内接する仮想円の半径より小さい。周方向に隣り合う交差点間においては、凸部の外周端は、半径方向外向きに突出した凸曲線を備えていてもよく(図5B参照)、半径方向に垂直な直線を備えていてもよく(図11B参照)、あるいは、半径方向内向きに後退した凹曲線を備えていてもよい(図12B、図13B参照)。一般には、スリットを構成するスリットセグメントの数が2つである場合には、凸部の外周端は、周方向に隣り合う交差点間に、凸曲線または半径方向に垂直な直線を備えることが好ましく(図5B、図11B参照)、スリットを構成するスリットセグメントの数が3つ以上である場合には、凸部の外周端は、周方向に隣り合う交差点間に凹曲線を備えることが好ましい(図12B、図13B参照)。
スリットを構成する複数のスリットセグメントは、制限されないが、隔壁部材の中心に対して等角度間隔で配置されることが好ましい。複数のスリットセグメントが隔壁部材の中心に対して等角度間隔で配置されていないと、例えばメスコネクタに大径のオス部材が挿入されたとき、スリットがメスコネクタの軸に対して均一に(または回転対称に)開かない可能性が高い。この場合、開いたスリットの開口中心が、メスコネクタの軸から偏心し、スリットを介して流れる液体の流量が低下しうる。複数のスリットセグメントが隔壁部材の中心に対して等角度間隔で配置されていれば、このような問題を防止でき、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたとき、当該オス部材とメスコネクタとの間を流れる液体の流量を増大させることができる。
また、複数のスリットセグメントの長さは、制限されないが、同じであることが好ましい。複数のスリットセグメントの長さが不均一であると、例えばメスコネクタに大径のオス部材が挿入されたとき、スリットがメスコネクタの軸に対して均一に(または回転対称に)開かない可能性が高い。この場合、上記の複数のスリットセグメントが等角度間隔で配置されていない場合と同様に、スリットを介して流れる液体の流量が低下しうる。複数のスリットセグメントの長さが同じであれば、このような問題を防止でき、メスコネクタに大径のオス部材が挿入されたとき、当該オス部材とメスコネクタとの間を流れる液体の流量を増大させることができる。
スリットの延び方向の端(スリット端)は、小径のオス部材80をメスコネクタ1に挿入したときに(図6参照)、オス部材80と隔壁部材との間に、内腔35内の液体が外界へ漏れ出る通路を形成しうる。したがって、スリット端の数、即ちスリットを構成するスリットセグメントの数、は少ない方が好ましい。本発明では、隔壁部材に設けられるスリットを構成するスリットセグメントの数は、制限されないが、6以下、更には4以下、特に2または3であることが好ましい。隔壁部材10(図5A及び図5B参照)のように、スリットがただ2つのスリットセグメントで構成されることは、小径のオス部材80をメスコネクタ1に挿入したときに、外界への液漏れを防止するのに有利である。また、この場合、凸部の形状が略楕円形である場合には、凸部の外周端の全てがなめらかな凸曲線で構成されるため、メスコネクタ1にオス部材80,90を挿入したときに凸部の外周端に応力集中が生じにくい。これは、メスコネクタ1に対するオス部材80,90の繰り返しの挿抜に対する隔壁部材の耐久性の向上に有利である。
本発明のメスコネクタの構成は、上記の実施形態に限定されない。
図14Aは、メスコネクタ1の図2の部分14Aの拡大断面図である。キャップ60の開口62を規定する開口端に、軸1aに対向する内周面62aが設けられている。内周面62aは、軸1a(図2参照)と同軸の円筒面である。図14Bは、図7の部分14Bの拡大断面図である。大径のオス部材90が開口62に嵌入している。オス部材90の外周面93は、オス部材90の先端に向かって外径が小さくなるオステーパ面である。オス部材90が開口62に強く押し込まれている。これにより、オス部材90の外周面93がキャップ60の内周面62aに当接し、内周面62aが半径方向に弾性的に圧縮変形される。内周面62aの軸1a方向の略全領域が外周面93に接触している。上述したように、オス部材90がメスコネクタ1に挿入されると、オス部材90は、伸ばされた隔壁部材10の弾性復元力によって上方へ押し返される。外周面93と内周面62aとの間に発生する摩擦力が、隔壁部材10のこの弾性復元力に対抗して、オス部材90が開口62に嵌入した状態を維持することができる。
本発明では、開口62の内周面の形状は、図14Aの円筒面62aに限定されない。例えば、図15Aに示すように、キャップ60の開口62を規定する開口端に、内腔35に向かって内径が小さくなるテーパ面(メステーパ面)162aが形成されていてもよい。図15Bは、図15Aの開口62に大径のオス部材90が嵌入された状態を示す。図14Bと同様に、オス部材90が開口62に強く押し込まれている。メステーパ面162aのテーパ角度は、オステーパ面である外周面93のテーパ角度より大きい。このため、図14Bとは異なり、メステーパ面162aの軸1a方向の全領域のうち内腔35側の一部(以下、「内腔側端部」)のみが、オス部材90の外周面93に当接し、半径方向に弾性的に圧縮変形される。オステーパ面162aのうち内腔側端部のみが外周面93に接触している。図14Bと比較すると、図15Bでは、オス部材90を開口62に挿入するとき、オス部材90はメステーパ面162aに案内されて開口62により深く挿入される。更に、大径のオス部材90が開口62に嵌入したとき、オス部材90の外周面93は、より狭い面積でキャップ60に当接する。これらの結果、外周面93とメステーパ面162aとの間には、図14Bよりも大きな摩擦力が発生する。この大きな摩擦力は、隔壁部材10の弾性復元力に対抗して、オス部材90が開口62に嵌入した状態を安定的に維持するのに有利である。
メステーパ面162aのテーパ角度は、オス部材90の外周面93のテーパ角度より大きいことが好ましい。これにより、オス部材90が開口62に嵌入したときに、オス部材90に対するキャップ60の接触面積が小さくなる。これは、オス部材90とキャップ60との間により大きな摩擦力を発生させるので、オス部材90が開口62に嵌入した状態を安定的に維持するのに有利である。大径のオス部材90の外周面93は一般に6%のテーパ面であることから、メステーパ面162aのテーパ角度は、8%以上、更には10%以上であることが好ましい。メステーパ面162aのテーパ角度の上限は、制限されないが、30%以下、更には20%以下が好ましい。
キャップ60の開口62の内周面は、円筒面62a(図14A参照)及びメステーパ面162a(図15A参照)に限定されない。例えば、開口62の内周面に、内腔35に向かって内径が大きくなるテーパ面が設けられていてもよい。あるいは、開口62の内周面に、軸1aを含む面での断面形状が軸1aに向かって突出した曲線である凸曲面が設けられていてもよい。これらの場合、メステーパ面162aが設けられた場合(図15A及び図15B参照)と同様に、オス部材90を開口62に嵌入したときに、オス部材90に対するキャップ60の接触面積が小さくなる。したがって、図14A及び図14Bに比べて、オス部材90が開口62に嵌入した状態をより安定的に維持することができる。
図14B及び図15Bでは、オス部材90をキャップ60の開口62に嵌入したとき、キャップ60が弾性的に変形したが、本発明はこれに限定されない。オス部材90及びキャップ60のいずれが変形するかは、それらの材料に依存する。本発明では、オス部材90をキャップ60の開口62に嵌入したときオス部材90の外周面93が弾性的に変形してもよく、上記の説明はこの場合にも同様に適用される。
本体30とキャップ60とが隔壁部材を軸1a方向に保持する構造は、任意に変更しうる。例えば、本体30の保持筒36の頂面に2条以上の環状リブ37が設けられていてもよい。環状リブ37に代えて、周方向に不連続な少なくとも1つの突起が、保持筒36の頂面に設けられていてもよい。保持筒36の頂面にリブ及び突起が設けられていなくてもよい。キャップ60の保持筒66の頂面(隔壁部材に軸1a方向に当接する面)に、環状リブ37と同様の少なくとも1つの環状リブや、周方向に不連続な少なくとも1つの突起が設けられていてもよい。本体30の保持筒36と、キャップ60の保持筒66とが、半径方向に位置ずれしていてもよい。キャップ60が保持筒66を備えていなくてもよい。この場合、隔壁部材は、キャップ60の天板61と保持筒36とによって隔壁部材の厚さ方向に保持される。
上記の実施形態では、本体30の保持筒36が隔壁部材の環状平坦面26を支持したが、本発明はこれに限定されない。例えば、環状平坦面26の外周部分(環状凸部28の近傍部分)に周方向に連続する環状の溝が形成され、保持筒36は、この溝に嵌入して隔壁部材を支持してもよい。
隔壁部材の外面11の環状溝16を省略し、中央部12と環状凸部18との間の部分が、水平方向に沿った平坦面(環状平坦面)であってもよい。この場合、キャップ60の保持筒66はこの平坦面に当接してもよい。
本体30の台座31が、外筒33及び保持筒36からなる二重筒構造を有していなくてもよい。例えば、外筒33を省略してもよい。この場合、キャップ60の嵌合筒63は、本体30に外嵌してもよい。
メスコネクタの隔壁部材及びその近傍を除く部分の構成は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更しうる。本発明のメスコネクタは、本発明の範囲内において、従来のメスコネクタで公知の任意の構成を有しうる。例えば、本体30の外周面の凹部51及び環状溝53のうちの一方または両方が省略されてもよい。
上記の実施形態のメスコネクタ1は、メスコネクタ1をチューブの末端に接続するために本体30が接続部40を備えていた。接続部40の構成は、上記の実施形態に限定されず、任意に変更できる。本発明のメスコネクタは、チューブの末端に設けられるものに限定されない。本発明のメスコネクタは、チューブの途中に、いわゆる混注ポート(例えば特許文献1参照)として設けられていてもよい。あるいは、本発明のメスコネクタは、3つのポート間の連通状態を、回転するコックで切り替えることができる三方活栓において、当該3つのポートのうちの一つとして設けられていてもよい。
本発明のメスコネクタに接続されるオス部材は、上記のオス部材80,90に限定されない。例えば、オス部材の外径や外周面の形状は、上記オス部材80,90に限定されない。大径のオス部材が、キャップ60の開口62の開口端に嵌合しなくてもよい。オス部材の流路が、オス部材の先端面において、オス部材の長手方向に開口している必要はない。例えば、オス部材の流路が、オス部材の先端近傍において半径方向に開口していてもよい(例えば特許文献2参照)。オス部材は、任意のオスコネクタ(例えば特許文献2参照)に設けられていてもよく、あるいは、シリンジの筒先に設けられていてもよい。
オス部材がメスコネクタに接続された状態を安定的に維持するためのロック機構が、オス部材に一体的に設けられていてもよい。オス部材がメスコネクタのキャップ60の開口62に嵌合することができないほどに小径である場合(図6参照)には、オス部材にロック機構を一体的に設けることは特に有効である。ロック機構の構成は、任意である。例えば、ロック機構が、メスコネクタの外周面に設けられた略L字状の凹部51に係合する突起で構成されていてもよい。あるいは、ロック機構が、メスコネクタの環状溝53に係合する爪が設けられた、揺動可能なロックレバーで構成されていてもよい(例えば特許文献2参照)。
本発明の利用分野は特に制限はないが、棒状のオス部材が挿入されるメスコネクタとして広範囲に利用することができる。本発明のメスコネクタは、オス部材の接続時及び非接続時のいずれにおいても液体が外界に漏れ出ないように構成されている。このため、本発明は、危険な薬液(例えば抗がん剤)や血液などを取り扱う医療分野で特に好ましく利用することができる。更に、本発明は、医療用以外の例えば化学や食品などの任意の液体を取り扱う分野においても利用することもできる。
1 メスコネクタ
1a メスコネクタの軸(隔壁部材の中心)
10,110,210,310 隔壁部材
11 隔壁部材の外面
13,213,313 スリット
13a,13b スリットセグメント
13x スリットのリップ
213a,213b,213c スリットセグメント
313a,313b,313c,313d スリットセグメント
21 隔壁部材の内面
22,122,222,322 凸部
22a,122a,222a,322a 仮想円
26 環状平坦面
30 メスコネクタ本体(本体)
35 内腔
36 保持筒(下保持筒)
37 環状リブ
60 キャップ
62 開口
162a 開口の内周面(メステーパ面)
80 小径のオス部材
83 オス部材の外周面
90 大径のオス部材
93 オス部材の外周面(オステーパ面)
1a メスコネクタの軸(隔壁部材の中心)
10,110,210,310 隔壁部材
11 隔壁部材の外面
13,213,313 スリット
13a,13b スリットセグメント
13x スリットのリップ
213a,213b,213c スリットセグメント
313a,313b,313c,313d スリットセグメント
21 隔壁部材の内面
22,122,222,322 凸部
22a,122a,222a,322a 仮想円
26 環状平坦面
30 メスコネクタ本体(本体)
35 内腔
36 保持筒(下保持筒)
37 環状リブ
60 キャップ
62 開口
162a 開口の内周面(メステーパ面)
80 小径のオス部材
83 オス部材の外周面
90 大径のオス部材
93 オス部材の外周面(オステーパ面)
Claims (9)
- 軟質材料からなる薄板状の隔壁部材と、保持筒を有するメスコネクタ本体と、中央に開口が形成されたキャップとを備え、前記隔壁部材が前記メスコネクタ本体の前記保持筒と前記キャップとによって前記隔壁部材の厚さ方向に保持されたメスコネクタであって、
前記隔壁部材は、
互いに反対側を向いた外面及び内面と、
前記隔壁部材の前記内面に設けられた、前記メスコネクタ本体の内腔に向かって突出した凸部と、
前記凸部内に設けられた、前記隔壁部材をその厚さ方向に貫通するスリットと
を備え、
前記スリットは、前記隔壁部材の中心から放射状に延びた複数のスリットセグメントで構成され、
前記隔壁部材を前記内面側から見た前記凸部の形状は、前記複数のスリットセグメントの延び方向に沿った前記中心から前記凸部の外周端までの距離を半径とする仮想円に内接する非円形であることを特徴とするメスコネクタ。 - 前記隔壁部材をその厚さ方向に透視したとき、前記凸部は、前記キャップの前記開口より内側に配置されている請求項1に記載のメスコネクタ。
- 前記隔壁部材の前記内面は、前記凸部に隣接して前記凸部を取り囲む環状平坦面を有し、
前記凸部は、前記環状平坦面より前記メスコネクタ本体の内腔に向かって突出している請求項1又は2に記載のメスコネクタ。 - 前記メスコネクタ本体の前記保持筒は、前記隔壁部材の前記環状平坦面を支持する請求項3に記載のメスコネクタ。
- 前記保持筒の頂面から環状リブが突出している請求項1~4のいずれか一項に記載のメスコネクタ。
- 前記複数のスリットセグメントは、前記隔壁部材の前記中心に対して等角度間隔で配置されている請求項1~5のいずれか一項に記載のメスコネクタ。
- 前記スリットは、ただ2つのスリットセグメントで構成され、
前記隔壁部材を前記内面側から見た前記凸部の形状は略楕円形である請求項1~6のいずれか一項に記載のメスコネクタ。 - 前記キャップの前記開口の開口端に嵌合することができる外周面を備えた棒状のオス部材を前記キャップの前記開口に挿抜することができ、
前記オス部材を、前記外周面が前記開口の前記開口端に嵌合するまで前記キャップの前記開口に挿入したとき、前記隔壁部材の前記外面が前記オス部材の先端に前記メスコネクタの軸方向に密着し、前記スリットを規定するリップが離間して、前記オス部材と前記メスコネクタとが連通される請求項1~7のいずれか一項に記載のメスコネクタ。 - 前記オス部材の前記外周面に、前記オス部材の先端に向かって外径が小さくなるオステーパ面が設けられており、
前記キャップの前記開口を規定する内周面に、前記内腔に向かって内径が小さくなるメステーパ面が設けられており、
前記メステーパ面は、前記オステーパ面より大きなテーパ角度を有する請求項8に記載のメスコネクタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021138665A JP2023032498A (ja) | 2021-08-27 | 2021-08-27 | メスコネクタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021138665A JP2023032498A (ja) | 2021-08-27 | 2021-08-27 | メスコネクタ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023032498A true JP2023032498A (ja) | 2023-03-09 |
Family
ID=85415602
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021138665A Pending JP2023032498A (ja) | 2021-08-27 | 2021-08-27 | メスコネクタ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2023032498A (ja) |
-
2021
- 2021-08-27 JP JP2021138665A patent/JP2023032498A/ja active Pending
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