この発明に係るコネクタ用弁体は、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、例えば、患者に留置されたカテーテルに連結されたチューブ等と輸液管等とを接続する医療用コネクタ、特に、前記チューブと、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等(この発明において針無し管体と称する。)を接続する医療用コネクタに、好適に用いられる。以下に医療用コネクタを例に挙げてこの発明を説明する。
この発明に係るコネクタについての詳細は後述するが、この発明に係るコネクタ用弁体の理解を容易にするため簡単に説明すると、この発明に係るコネクタの好適な一例である医療用コネクタ1は、図3(a)に示されるように、平面視略TY字状のコネクタ管4とコネクタ管4に内蔵されるコネクタ用弁体5Aとを備えている。このコネクタ管4は、例えば針無し管体81を接続可能な第1の接続口12、患者に留置されたカテーテル等に連結された、図示しない管体が接続される第2の接続口13、及び、患者に投与する流体を収納したバッグ等に連結された、図示しない管体が接続される第3の接続口14と、これらの接続口12〜14を連通させる内部空間としての流路15と、第1の接続口12の軸線に沿ってこの接続口12に隣接するように配置された弁体収納部16とを有している。このコネクタ管4においては、弁体収納部16は流路15の一部になっている。コネクタ用弁体5Aはその被保持部が弁体収納部16の保持部17に狭圧保持された状態で弁体収納部16に収納される。
この発明に係るコネクタ用弁体は、この発明に係るコネクタ、例えばコネクタ1におけるコネクタ管4に設けられた弁体収納部16の保持部17に狭圧保持された状態で弁体収納部16に収納される。弁体収納部16に収納されたこの発明に係るコネクタ用弁体はその頭部外周に弁体収納部16の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を形成すると共に、流体をこの流通路から第2の接続口13に向けてこの発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向に沿って空隙部を通過するように流通させる。したがって、この発明に係るコネクタ用弁体は弁体収納部16に収納可能で弁体収納部16を支持傾倒部で前記軸線方向に連通した2つの空間に形成可能な形状及び寸法を有している。
まず、この発明に係るコネクタ用弁体の概要を簡単に説明する。この発明に係るコネクタ用弁体は、コネクタ管4の1つの接続口12に露出する頂面が平坦な表面又は外側に膨出する湾曲面を有し、この接続口12を密閉する栓部を有する頭部と、頭部の端面から放射状に延在する少なくとも1つの頭部支持部、及び、頭部支持部に隣接するように切欠された少なくとも1つの空隙部を有し、この発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向に作用する圧力によって頭部を傾倒させる支持傾倒部と、頭部支持部の先端に配置され、コネクタ管4の弁体収納部16に設けられた保持部17に狭圧保持される被保持部とを有している。
後に詳述するように、また図3(b)に示されるように、この支持傾倒部は、この発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向に作用する圧力によって自身の軸線に対して特定の方向、例えばこの発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向を中心とする1つの半径方向に傾倒するように伸張して、頭部を前記特定の方向に傾倒させるように構成されている。したがって、支持傾倒部は流体を複数回注入する場合に前記軸線方向に複数回の圧力が作用したとしても前記特定の方向すなわち一半径方向に伸張する。このように支持傾倒部が方向性を持って伸張することによって、傾斜したこの発明に係るコネクタ用弁体の頭部と流体を注入するために接続口に圧入された略垂直な針無し管体81の先端面83との間に生じた空間84を経て流体がコネクタ管4内に注入され、次いで支持傾倒部の空隙部を通過して第2の接続口13に流入する。そして、針無し管体81をコネクタ管4から抜脱すると、前記軸線方向に作用する圧力が解除されて、伸張した支持傾倒部の反発力又は復元力でこの発明に係るコネクタ用弁体が元の状態に復帰して接続口12をシールする。この発明に係るコネクタ用弁体のこのような傾倒及び復元は針無し管体81の挿脱が複数回であっても同様に再現性よく繰り返されてこの発明に係るコネクタ用弁体は高い傾倒性及びシール性を発揮する。なお、後述するように、この発明に係るコネクタ用弁体は支持傾倒部によって自ら積極的に傾倒するように構成されており、他の部材又は要素と協働することなく、例えば、弁体収納部の内面に接触することなく、また頭部形状による頭部の偏倚変形によらずに、傾倒する。
この発明に係るコネクタ用弁体において、支持傾倒部はコネクタ用弁体の軸線に垂直な断面形状が前記軸線に対するn回回転非対称性(nは1以外の整数)を有しているのが好ましい。換言すると、支持傾倒部及び/又はその前記断面形状は前記軸線に対するn回回転対称性(nは2以上の整数)を有していない、すなわち、1回回転対称性のみを有しているのが好ましい。このように、この発明に係るコネクタ用弁体の断面形状は、ある軸線通常支持傾倒部の軸のまわりに360°すなわち1回転させたときに初めてもとの回転前の断面形状と一致する。ここで、「対称性」及び「非対称性」は幾何学的に正確な対称性又は非対称性に加えて、この発明の目的を逸脱しない範囲での実質的な対称性又は非対称性をも含む。このように支持傾倒部がn回回転非対称性(nは1以外の整数)を有していると、支持傾倒部には軸線方向に作用する圧力に対する抵抗の強い強抵抗部とこの圧力に対する抵抗の弱い弱抵抗部とが存在する。そして、この発明に係るコネクタ用弁体にその軸線方向に圧力を作用させると、強抵抗部はわずかに伸張するのに対して弱抵抗部は大きく伸張して、この発明に係るコネクタ用弁体の少なくとも頭部が弁体収納部16内で弱抵抗部側に傾倒する。この発明に係るコネクタ用弁体において、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有する断面形状すなわち強抵抗部及び弱抵抗部は支持傾倒部に存在していればよく、その軸線方向に沿って支持傾倒部の全体に存在していてもよく、その一部の領域に存在していてもよい。この発明において、「傾倒」とはこの発明に係るコネクタ用弁体、少なくともその頭部が自身の軸線に対して傾斜することを意味し、斜倒とも別言でき、作用する圧力の大小によって頭部が湾曲(座屈又は湾屈とも称する。)することもある。
支持傾倒部は、頭部支持部又は頭部支持脚の数、特に頭部支持脚が1つである場合、配置位置例えば間隔、形状及び寸法例えば幅又は厚さからなる群より選択される少なくとも1つが相違することによって、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有しているのが好ましい。すなわち、支持傾倒部は、空隙部の数、切欠位置例えば間隔、切欠形状及び切欠寸法からなる群より選択される少なくとも1つが相違することによって、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有しているのが好ましい。支持傾倒部のn回回転非対称性が前記群より選択される少なくとも1つが異なる頭部支持脚又は空隙部で成立していると、この発明に係るコネクタ用弁体はその構造が簡単であるにもかかわらず、特定の方向性を持って再現性よく傾倒する。
このような支持傾倒部は、前記のように傾倒するように頭部支持部と空隙部とで構成されていればよく、例えば、頭部支持部としてこの発明に係るコネクタ用弁体の頭部の端面から水平に放射状に延在すなわち張り出す柱状又は扇状の少なくとも1つの頭部支持脚、前記端面から軸線方向の上方又は下方に向かって放射状に延在すなわち貼り出す柱状又は扇状の少なくとも1つの頭部支持脚を有しているのが好ましい。
支持傾倒部は、頭部支持部に隣接するように切欠された少なくとも1つの空隙部を有しており、この頭部支持部に隣接するように頭部支持部と同様に放射状に切欠された少なくとも1つの空隙部を有しているのが好ましい。支持傾倒部がこのような空隙部を有していると、頭部をより一層傾倒させやすくなると共に、弁体収納部16に注入された流体を第2の接続口13に向けてこの発明に係るコネクタ用弁体を通過させることができる。したがって、この空隙部は流体通過部又は流体通過孔と称することができる。この空隙部は頭部支持部と被保持部、後述する特に環状被保持部とで囲繞された、この発明に係るコネクタ用弁体の軸線方向に貫通しているのが好ましく、貫通部又は貫通孔とも称することができる。空隙部がこのように構成されていると、支持傾倒部が特定の方向性を持って再現性よく傾倒するうえ流体を第2の接続口13に向けて流通させることができる。
この発明において、空隙部が頭部支持部と同様に放射状に切欠されている場合には、頭部支持部と空隙部とで形成される支持傾倒部は、空隙部を有する円盤状体、空隙部を有する上又は下に凸状となる湾曲面で形成される尖形体、球面状体、楕円球面状体若しくはドーム状体、又は、空隙部を有する上又は下に凸状となるテーパ面で形成される錐台状体を構成する。
この発明に係るコネクタ用弁体において支持傾倒部が傾倒する限り、頭部支持脚及び空隙部の形状及び寸法は適宜に設定できる。
この発明に係るコネクタ用弁体において支持傾倒部が前記のように比較的簡単に構成されていると、この発明に係るコネクタ用弁体は高い傾倒性を有し、コネクタ管に収納されたときに、コネクタが所期の機能を発揮すること、すなわち接続口の開閉性に優れ流体の流通を高度に制御することに大きく貢献できる。したがって、この発明に係るコネクタ用弁体は、コネクタの所期の機能を損なうことなく、コネクタの接続口に臨む又は露出する頭部を拭き取り性に優れた形状にすることができ、コネクタ管に収納されたときにコネクタの衛生面を高めることができる。拭き取り性に優れた頭部の形状としては、例えば、頭部に流体を流通させる凹部若しくは溝又は突起等のない形状が挙げられ、より具体的には、例えば、接続口に露出する頂面が平坦な表面である形状、又は、接続口に露出する頂面がその外側に膨出する湾曲面である形状が挙げられる。
この発明に係るコネクタ用弁体は、屈曲性及びシール性を効率よく発現できる点で、弾性材料で作製され、弾性を有しているのが好ましい。例えば、この発明に係るコネクタ用弁体は、JIS A硬度が30〜70のJIS A硬度を発現させる弾性を有しているのが好ましい。このような硬度を発現させる弾性材料として、例えば、各種ゴム、各種エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この発明に係るコネクタ用弁体はこれら弾性部材を定法によって成形又は加工することで製造できる。
この発明に係るコネクタ用弁体を、図面を参照して、具体的に説明する。この発明に係るコネクタ用弁体の一例であるコネクタ用弁体(以下、弁体と称することがある。)5Aは、前記範囲のJIS A硬度を発現するように弾性材料で形成され、図1(a)及び図1(b)に示されるように、コネクタ管、例えば図3に示される、管体を接続可能な3つの接続口12〜14とこれらの接続口12〜14を連通する流路15と第1の接続口12の軸線に沿ってこの接続口12に隣接するように配置された弁体収納部16とを有するコネクタ管4に収納され、コネクタ管4内を流通する流体の流通を制御、換言すると、第1の接続口12を針無し管体81の挿脱によって開閉する。
この弁体5Aは、第1の接続口12を密閉する栓部21aを有する頭部21と、頭部21の栓部21aが配置された端部の反対側の端面から略水平方向に放射状に延在(突出)する頭部支持部31a及び32a、並びに、頭部支持部31a及び32aに隣接するように頭部支持部31a及び32aと同様に水平方向に向かって放射状に切欠された空隙部34a及び35aを有する支持傾倒部22aと、頭部支持部31a及び32aの先端に配置され、頭部支持部31a及び32aの側方に膨出して頭部支持部31a及び32aの先端を環状に連結する被保持部すなわち環状被保持部23aとを有している。
頭部21は、図1(a)及び図3(a)に示されるように、コネクタ管4の第1の接続口12を液密にシールできる形状及び寸法を有していればよく、コネクタ1に収納されたときに第1の接続口12に露出する先端側に半径方向に張り出した栓部21aを有している。この栓部21aは第1の接続口12の内周面に密着するように、外径が内周面の内径よりも僅かに大きくなっており、シール部とも称される。この栓部21aは、図1(a)及び図3(a)に示されるように、第1の接続口12に露出する表面すなわちその頂面21bに流体を案内する溝又はスリット等の形成されていない平坦面になっている。このように頭部21すなわち栓部21aの頂面21bが平坦面になっていると、第1の接続口12及び頂面21bを清掃しやすく、バクテリア等の繁殖を抑制できるから、衛生面に優れる。弁体5Aにおいて、頂面21bは弁体5Aの軸線Cに対して水平になっているがこの軸線Cに対して傾斜していてもよく、また、溝又はスリット等の形成されていない外側に膨出する湾曲面であってもよい。
この頭部21は栓部21aを含めて、自身の軸線方向に作用する圧力によって、この軸線方向に圧縮されても軸線方向に対して半径方向に湾曲しない形状になっている。具体的には、頭部21は、周方向に延在する溝又は凹部(notchとも称する。)を有していない平坦な外周面を有する中実の円筒状になっている。頭部21がこのような形状を有していると、弁体5Aの軸線C方向に作用する針無し管体81による圧力を支持傾倒部22aにロスなく伝達することができ、支持傾倒部22aの特定の方向への傾斜がより一層速やかかつ容易になる。
支持傾倒部22aは、図1(a)及び図1(b)に示されるように、頭部21及び環状被保持部23aを水平方向に連結する頭部支持部31a及び32aと、隣接する頭部支持部31a及び32a並びに環状被保持部23aの間に切欠された第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aとを有し、後述する環状被保持部23aと共に円盤状体になっている。具体的には、支持傾倒部22aは、図1(b)に明確に示されるように、軸線Cの半径方向であって略水平に等間隔(中心角約120°)で配列された2本の第1の頭部支持部31a及び1本の第2の頭部支持部32aと、第1の頭部支持部31a同士の間に軸線Cの半径方向であって略水平に切欠された第1の空隙部34a並びに第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aの間に軸線Cの半径方向であって略水平に切欠された第2の空隙部35aとで構成されている。このように構成された支持傾倒部22aは図1(b)に明確に示されるように弁体5Aの軸線Cに対してn回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。
第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aは、図1(a)及び図1(b)に示されるように、頭部21の端部から環状被保持部23aに向かって軸線Cの半径方向に延在する、延在方向の全体にわたって一定の幅と一定の軸線C方向の厚さとを有する柱状の頭部支持脚とされている。これらの第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aは、協働して、頭部21を軸線C方向に支持すると共に軸線C方向に作用する圧力によって支持傾倒部22aが軸線Cに対して傾倒するように伸張して頭部21を傾倒させる。第1の頭部支持部31aはその幅が第2の頭部支持部32aのそれよりも大きくなっている。すなわち、支持傾倒部22aは頭部支持部22aの寸法、具体的には、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aの幅が異なることによって、その軸線方向の全体にわたって、n回回転非対称性(nは1以外の整数)すなわち1回回転対称性のみを有しており、n回回転対称性(nは2以上の整数)を有していない。
第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aは、頭部21から環状被保持部23aまで延在する中実の円盤体から切欠形状が扇形となるように等間隔で切欠された空隙部であり、具体的には、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aの間に切欠形状が扇形となるように軸線C方向に貫通形成され、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aと交互に配置されている。すなわち、支持傾倒部22aは、環状被保持部と共に、第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aを貫通孔として有し、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aをリブとして有する概略円盤状体になっている。したがって、第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aは、支持傾倒部22aで隔てられる弁体収納部16における軸線C方向の2つの空間を連通させる。第1の空隙部34aはその中心角が第2の空隙部35aのそれよりも小さくなっている。すなわち、支持傾倒部22aは頭部支持部22aの寸法、具体的には、第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aの切欠寸法が異なることによって、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。
環状被保持部23aは、弁体収納部16の保持部17に狭圧保持される形状及び寸法を有していればよく、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aの各先端を連結する環状になっている。したがって、第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aは第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32a並びに環状被保持部23aで囲繞されている。この環状被保持部23aは支持傾倒部22aと共に弁体5Aを支持するため、ある程度の剛性を有しているのが好ましく、この弁体5Aにおいては中実になっている。
支持傾倒部22aは、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aと第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aとで構成され、平坦面な頂面21bを有する中実の頭部21を支持している。このように構成された支持傾倒部22aは、第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aが周方向に等間隔に配置されているものの、第1の頭部支持部31aと第2の頭部支持部32aとはその幅が異なっており、また第1の空隙部34aと第2の空隙部35aとはその中心角が異なっているから、2本の第1の頭部支持部31aが隣接配列された領域が軸線C方向に作用する圧力に対する抵抗の強い強抵抗部25aとなり、第2の頭部支持部32aがこの圧力に対する抵抗の弱い弱抵抗部25bとなる、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。したがって、このような中実の頭部21及び支持傾倒部22aを有する弁体5Aは頂面21bの衛生面に優れるうえ、弁体5Aにその軸線C方向の圧力が作用すると、この圧力がロスなく直接的に支持傾倒部22aに作用し、n回回転非対称性(nは1以外の整数)の支持傾倒部22aは、例えば図3(b)に示されるように、強抵抗部25aがわずかに伸張するのに対して弱抵抗部25bが大きく伸張することによって、一半径方向すなわち弱抵抗部25b側に傾倒し、頭部21も同様に傾倒する。
この発明に係るコネクタ用弁体の別の一例である弁体5Bは、図1(c)及び図1(d)に示されるように、支持傾倒部22bが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体5Bは、頭部21と支持傾倒部22bと環状被保持部23aと有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図1(c)及び図1(d)中同じ符号を付与する。
支持傾倒部22bは、図1(c)及び図1(d)に示されるように、頭部支持部及び空隙部が異なること以外は支持傾倒部22aと基本的に同様である。すなわち、支持傾倒部22bは、頭部支持部30bと、頭部支持部30bの周方向両端部に隣接するように頭部支持部30bと同様に水平方向に向かって放射状に切欠された空隙部33bとで構成され、その軸線方向の全体にわたって、軸線Cに対するn回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。頭部支持部30bは頭部21の端面から水平方向に向かって放射状に延在する扇状の頭部支持脚となっていること以外は第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32aと基本的に同様である。この頭部支持部30bは中心角が約120°の扇形となっているが、この発明において、頭部支持部は頭部21を支持できれば扇形の中心角は特に限定されない。空隙部30bはその切欠位置、切欠形状及び切欠寸法が異なること以外は第1の空隙部31a及び第2の空隙部32aと基本的に同様である。このように支持傾倒部22bは1つの頭部支持部30bと1つの空隙部33bとで構成されていること以外は支持傾倒部22aと基本的に同様である。
支持傾倒部22bは、1つの頭部支持部30bと1つの空隙部33bとで構成されているから、頭部支持部30bが強抵抗部25aとなり、空隙部33bが弱抵抗部25bとなる回転非対称性を有している。したがって、弁体5Bはその衛生面に優れるうえ、弁体5Bにその軸線C方向の圧力が作用すると、支持傾倒部22b及び頭部21が弁体5A及び支持傾倒部22aと基本的に同様に一半径方向すなわち弱抵抗部25b側に傾倒する。
この発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例である弁体5Cは、図1(e)及び図1(f)に示されるように、被保持部23cが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体5Cは、頭部21と支持傾倒部22cと被保持部23cと有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図1(e)及び図1(f)中同じ符号を付与する。
被保持部23cは、図1(e)及び図1(f)に示されるように、第1の頭部支持部31c及び第2の頭部支持部32cそれぞれの先端に、第1の頭部支持部31c及び第2の頭部支持部32cそれぞれの両側方すなわち軸線Cを中心とする両周方向に隣接する頭部支持部31c又は32cの被保持部23cに接触しないように膨出している。したがって、第1の空隙部34c及び第2の空隙部35cは、第1の頭部支持部31c及び第2の頭部支持部32cの間に隣接され、かつその軸線Cの半径方向に開いた状態すなわち空隙部31c及び32cを中実と仮定したときに自由端になっている。
このように概略Y字状の弁体5Cは弁体5Aと基本的に同様の支持傾倒部22cを有しているから、2本の第1の頭部支持部31cが隣接配列された領域が軸線C方向に作用する圧力に対する抵抗の強い強抵抗部25aとなり、第2の頭部支持部32cがこの圧力に対する抵抗の弱い弱抵抗部25bとなる、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。したがって、弁体5Cはその衛生面に優れるうえ、弁体5Cにその軸線C方向の圧力が作用すると、支持傾倒部22c及び頭部21が弁体5A及び支持傾倒部22aと基本的に同様に一半径方向すなわち弱抵抗部25b側に傾倒する。
この発明に係るコネクタ用弁体の別の一例である弁体6Aは、図2(a)及び図2(b)に示されるように、頭部41及び支持傾倒部43aが異なること以外は弁体5Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体6Aは、頭部41と支持傾倒部43aと環状被保持部23aとを有している。弁体5Aと同様の構成についての説明は省略し、図2(a)及び図2(b)中同じ符号を付与する。
頭部41は、図2(a)及び図2(b)に示されるように、その軸線長さ等が異なること以外は頭部21と基本的に同様である。したがって、頭部41は、先端側に配置された栓部21aと第1の接続口12に露出する平坦な頂面21bと軸線C方向の略中央寄りに半径方向に膨出する拡径部41aとを有している。この頭部41は頭部21よりの長い軸線長さを有し、その外周面に環状被保持部23aが対面するように環状被保持部23aに貫通した状態に配置されている。この頭部41はもちろん頭部21と同様に軸線方向に対して半径方向に湾曲しない形状になっている。
支持傾倒部43aは、図2(a)及び図2(b)に示されるように、環状被保持部23aの軸線C方向の下方に位置する頭部41の端面から環状被保持部23aに向かって斜め上方に向かって配置されている。支持傾倒部43aは、第1の頭部支持部44a及び第2の頭部支持部45a並びに第1の空隙部46a及び第2の空隙部47aで形成され、これらが全体として、図2(a)に明確に示されるように、下に凸となる尖形、半球面形、半楕円球面形、ドーム状、錐形になっており、具体的には、正面視又は側面視概略逆円錐状又は逆三角錐状になっている。支持傾倒部43aがこのように形成されていると、支持傾倒部43aによる頭部41を軸線C方向に支持する支持力が大きくなり、第1の接続口12のシール性をさらに高めることができる。
支持傾倒部43aを構成する第1の頭部支持部44a及び第2の頭部支持部45a並びに第1の空隙部46a及び第2の空隙部47aは頭部41の端面から環状被保持部23aに向かう延在方向が水平ではなく斜め上方に直線的であること以外は第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32a並びに第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aと基本的に同様である。したがって、支持傾倒部43aは2本の第1の頭部支持部44aが隣接配列された領域が軸線C方向に作用する圧力に対する抵抗の強い強抵抗部25aとなり、第2の頭部支持部45bがこの圧力に対する抵抗の弱い弱抵抗部25bとなる、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。
このようにn回回転非対称性(nは1以外の整数)を有する支持傾倒部43aは、弁体6Aにその軸線C方向の圧力が作用すると、弁体5A及び支持傾倒部22aと基本的に同様に一半径方向すなわち弱抵抗部25b側に傾倒して頭部41を同方向に傾倒させる。
この発明に係るコネクタ用弁体のまた別の一例である弁体6Bは、図2(c)及び図2(d)に示されるように、頭部42及び支持傾倒部43bが異なること以外は弁体5A及び弁体6Aと基本的に同様である。すなわち、この弁体6Bは、頭部42と支持傾倒部43bと環状被保持部23aとを有している。弁体5A及び弁体6Aと同様の構成についての説明は省略し、図2(c)及び図2(d)に中同じ符号を付与する。
頭部42は、図2(c)及び図2(d)に示されるように、栓体21a以外の外径が軸線方向に一定であること以外は頭部21と基本的に同様である。したがって、頭部42は、先端側に配置された栓部21aと第1の接続口12に露出する平坦な頂面21bとを有している。この頭部42は栓体21aから端部にわたって一定の外径を有する中実体であって、頭部21と同様に軸線方向に対して半径方向に湾曲しない形状になっている。この頭部42は、図2(c)及び図2(d)に示されるように、後述する支持傾倒部43aを介して、環状被保持部23aに対して軸線C方向の上流側延長線上に配置されている。
支持傾倒部43bは、図2(c)及び図2(d)に示されるように、頭部42の端面から頭部42に対して軸線Cの下流側延長線上に配置された環状被保持部23aに向かって斜め下方に向かって配置されている。支持傾倒部43bは、第1の頭部支持部45b及び第2の頭部支持部45b並びに第1の空隙部46b及び第2の空隙部46bで形成され、これらが全体として、図2(c)に明確に示されるように、上に凸となる尖形、半球面形、半楕円球面形、ドーム状、錐形になっており、具体的には、正面視又は側面視概略逆円錐状又は逆三角錐状になっている。支持傾倒部43bがこのように形成されていると、支持傾倒部43bによる頭部42を軸線C方向に支持する支持力が大きくなり、第1の接続口12のシール性をさらに高めることができる。
支持傾倒部43bを構成する第1の頭部支持部45b及び第2の頭部支持部45b並びに第1の空隙部46b及び第2の空隙部46bは頭部42の端面から環状被保持部23bに向かう延在方向が水平ではなく斜め下方に直線的であること以外は第1の頭部支持部31a及び第2の頭部支持部32a並びに第1の空隙部34a及び第2の空隙部35aと基本的に同様である。したがって、支持傾倒部43bは2本の第1の頭部支持部45bが隣接配列された領域が軸線C方向に作用する圧力に対する抵抗の強い強抵抗部25aとなり、第2の頭部支持部45bがこの圧力に対する抵抗の弱い弱抵抗部25bとなる、n回回転非対称性(nは1以外の整数)を有している。
このようにn回回転非対称性(nは1以外の整数)を有する支持傾倒部43bは、弁体6Bにその軸線C方向の圧力が作用すると、弁体5A及び支持傾倒部22aと基本的に同様に一半径方向すなわち弱抵抗部25b側に傾倒して頭部42を同方向に傾倒させる。
この発明に係る弁体は前記した例に限定されることはなくこの発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、弁体5A及び5C並びに6A及び6Bの支持傾倒部はいずれも3本の頭部支持部と3つの空隙部とで構成され、弁体5Bの支持傾倒部は1つの頭部支持部と1つの空隙部とで構成されているが、この発明において、弁体の支持傾倒部は2つの頭部支持部と2つの空隙部とで構成されてもよく、また、4以上の頭部支持部と4以上の空隙部とで構成されていてもよい。
また、弁体5A〜5C並びに6A及び6Bはいずれも同数の頭部支持部及び空隙部で構成された支持傾倒部を有していているが、この発明において、弁体は頭部支持部と空隙部とが異なる数で構成された支持傾倒部を有していてもよい。
弁体5A及び5C並びに6A及び6Bの支持傾倒部はいずれも略同一の配置位置(間隔)で3本の頭部支持部が配置されているが、この発明において、弁体の支持傾倒部は異なる配置位置で複数の頭部支持部が配置されていてもよい。
弁体5A〜5C並びに6A及び6Bはいずれも頭部支持部が同一の形状及び厚さを有しているが、この発明において、弁体は複数の頭部支持部が異なる形状又は異なる厚さを有していてもよく、その数、配置位置、形状及び厚さの少なくとも1つが異なることによって支持傾倒部が軸線Cに対する回転非対称性を有していてもよい。
弁体5A〜5C並びに6A及び6Bはいずれも空隙部が同一の切欠形状及び切欠厚さを有しているが、この発明において、弁体は複数の空隙部が異なる切欠形状を有していてもよく、切欠数、切欠置位置(切欠間隔)、切欠形状及び切欠寸法の少なくとも1つが異なることによって支持傾倒部が軸線Cに対する回転非対称性を有していてもよい。
また、弁体5A〜5C並びに6A及び6Bはいずれも頭部の端面すなわち側面から保持部まで切欠形成された空隙部を有しているが、この発明において、空隙部は頭部の側面から保持部までの全体にわたって形成されている必要はなく、その一部に形成されていてもよく、この場合には空隙部は貫通孔と称することもできる。
弁体6A及び6Bの支持傾倒部43a及び43bは斜め上方又は斜め下方に直線的に延在しているが、この発明において、支持傾倒部は斜め上方又は斜め下方に向かって湾曲するフレアー状に延在していてもよい。
この発明において、弁体は、前記した各種の頭部、支持傾倒部及び被保持部を適宜に組み合わせて構成することができる。また、コネクタ用弁体5A〜5C並びに6A及び6Bはいずれも、頂面21aが平坦な表面になっているが、この発明において、頭部の頂面は外側に膨出する湾曲面であってもよい。
この発明に係るコネクタは、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、例えば、前記医療用コネクタ、特に、前記チューブと針無し管体とを接続する医療用コネクタすなわち混注管等として好適に用いられる。そして、この発明に係るコネクタは、コネクタ管とこの発明に係るコネクタ用弁体とを備えており、この発明に係るコネクタ用弁体は、前記したように、拭き取り性に優れた頭部を有する比較的簡単な構造であって、栓部が第1の接続口を密閉する第1姿勢(密閉状態とも称する。)と、コネクタ用弁体の軸線方向に作用する圧力で支持傾倒部が伸張して頭部が傾倒する第2姿勢(開放状態とも称する。)とに移行可能になっている。この発明に係るコネクタ用弁体が第1姿勢にあるとその頭部又は栓部の周側面が第1の接続口の内面に密接してこの接続口を液密にシールする。一方、この発明に係るコネクタ用弁体が前記のように傾倒すると、第1姿勢から第2姿勢に移行して、傾倒した頭部の頂面が傾斜して管体の内腔とコネクタ管の流路とが弁体収納部又は第1の接続口内で連通して管体の内腔からコネクタ管内に流体が供給される。流体の供給が終了した後に管体を第1の接続口から抜脱すなわち退避させると、この発明に係るコネクタ用弁体にかかっていた圧力が解除されて自身の反発力又は復元力で元の状態に復帰して、すなわち第2姿勢から第1姿勢に移行して、第1の接続口を液密にシールする。このようにしてこの発明に係るコネクタは優れた注入性及びシール性を発揮する。
この発明に係るコネクタの一例であるコネクタ1は、図3(a)に示されるように、針無し管体81を接続可能な第1の接続口12、患者に留置されたカテーテル等に連結された、図示しない管体が接続される第2の接続口13、及び、患者に投与する流体を収納したバッグ等に連結された、図示しない管体が接続される第3の接続口14、これらの接続口12〜14を連通させる流路15、並びに、第1の接続口12の軸線に沿ってこの接続口12に隣接するように配置された弁体収納部16を有するコネクタ管4と、コネクタ管4の弁体収納部16又は流路15内に内蔵されるコネクタ用弁体5Aとを備えている。
このようなコネクタ管4は弁体5Aを内蔵できる限り従来公知のコネクタ管を限定されることなく用いることができ、例えば、図3に示されるように平面視略T字状のコネクタ管4、平面視略Y字状のコネクタ管、平面視略十字状のコネクタ管等が挙げられる。コネクタ管4は、その軸線方向の一端側に針無し管体81が接続される第1の接続口12が配置され、他端側にカテーテル等に連結された管体が接続される第2の接続口13が配置され、前記軸線方向に交差する方向に突出し、流体を収納したバッグ等に連結された管体が接続される第3の接続口14が配置されている。そして、キャップ4aの内腔に、第1の接続口12と第2の接続口13との間に軸線方向に沿って弁体5Aを収納可能な弁体収納部16が配置されている。コネクタ管4の各接続口12〜14には必要に応じて、後述する針無し管体と接続可能な構造又は接続を一時的に保持可能な構造、例えば、ルアーロックネジ等が形成されている。このコネクタ管4は、軸孔を有するキャップ4aと、開口端面に大径の環状凹部17及び軸孔を有する本体4bとから成り、これらは超音波溶着されている。
コネクタ管4は、キャップ4aの軸孔が弁体収納部16として機能し、キャップ4aの開口端面と本体4bの開口端面とで形成される環状凹部17が被保持部23aを保持する保持部17として機能する。この環状凹部すなわち保持部17の軸線C方向の幅は被保持部23aと略同一又は僅かに小さくなっている。すなわち、被保持部23aは保持部17に載置保持若しくは嵌合保持又は圧入保持若しくは狭圧保持される。
コネクタ1に接続される針無し管体81は、内腔81aすなわち流体を流通させる流路を内部に有していれば特に限定されず、前記した各種の管体が挙げられる。図3(a)に示されるように、この管体の先端部82は第1の接続口12に接続可能な形状になっており、通常、第1の接続口12の内径よりも僅かに小さな外径を有する小径環状構造になっている。この先端部82の外周面には第1の接続口12に所望により形成されたルアーロックに螺合するルアー溝を有していてもよい。
コネクタ管4及び針無し管体31は通常剛性のある材料、例えば、各種樹脂、各種ガラス、各種セラミックス、各種金属で形成される。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系樹脂、又はこれら樹脂を1種以上含むブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。
コネクタ1は、図3(a)に示されるように、針無し管体81が第1の接続口12に接続されていないとき、すなわち密閉状態にあるときは、弁体収納部16に収納された弁体5Aはその軸線C方向にほぼ直立した第1姿勢をとっており、頭部21すなわち栓部21aの周側面全体が第1の接続口12の内面に密接して栓部21aが第1の接続口12を液密に密閉すなわちシールしている。このとき頭部21の平坦な頂面21bは第1の接続口12から露出しているから容易に清掃することができ、衛生面に優れる。また、弁体収納部16に収納された弁体5Aは、その頭部21の外周に弁体収納部16の内面と共に流体を流通させる環状の流通路を形成し、かつその空隙部34a及び35aを、軸線C方向に沿って第2の接続口13に向けて流体を流通させる流路として機能させる。したがって、弁体収納部16の内径は頭部21の外径よりも大きく間隙部34a及び35aを塞がない寸法及び形状に設定されている。
コネクタ1を介して患者に流体を供給するには、図3(b)に示されるように、管体81の先端部82を弁体5Aの弾発力、具体的には、支持傾倒部22aの弾発力に反して第1の接続口12に圧入する。そうすると、弁体5Aは伸張して傾倒する支持傾倒部22aを有しているから、第1の接続口12に接続された針無し管体81による弁体5Aの軸線C方向に作用した押圧力によって支持傾倒部22aが軸線Cに対して傾倒し、それに伴って第1の接続口12をシールしていた頭部21が第1の接続口12内、通常弁体収納部16内に傾倒した状態で埋没される。一方、軸線Cに沿って第1の接続口12に圧入された針無し管体81の先端面83は軸線Cに対して垂直になっている。このように傾倒した弁体5Aの頭部21はその頂面21bも軸線Cに対して傾斜しているから、頂面21bと先端面83との間に空間84が形成され、流体はこの空間84を経て針無し管体81からコネクタ管4に注入される。このように管体81の先端部82を第1の接続口12に圧入すると針無し管体81の内腔81aと流路15とが連通した、コネクタ1すなわち第1の接続口12が開放された第2姿勢になる。そして、注入された流体は弁体5Aの外周に形成された環状の流通路並びに空隙部34a及び35aを流通して第2の接続口13に流入する。このとき、弁体5Aは弁体収納部16の内面等の他の部材と協働することもこれら部材に補助されることなく自ら積極的に湾曲する。
このようにして所望の流体を注入した後に針無し管体81を第1の接続口12から抜脱すると、針無し管体81により負荷された押圧力が解除されて、弁体5Aは支持傾倒部22aの反発力又は復元力で第1姿勢に復帰して、栓部21aの外周面が第1の接続口12を液密にシールする。このように弁体5Aを備えたコネクタ1は、たとえ流体を複数回注入する場合であっても、弁体5Aが作用する圧力によって特定の一方向に傾倒すると共に圧力が解除されると第1姿勢に復帰するから、弁体5Aの傾倒及び復元すなわち第1姿勢と第2姿勢との移行は毎回同様に再現性よく繰り返され、頂面21bを容易に清掃できる。したがって、コネクタ1は傾倒性及びシール性並びに衛生面に優れる。
なお、弁体5Aを備えたコネクタ1についてその構造及び作用を説明したが、弁体5Aに代えて弁体5B及び5C並びに6A及び6Bを備えたコネクタであっても同様に機能する。
この発明に係るコネクタは前記した例に限定されることはなく、この発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。