JP2023029191A - SARS-CoV-2変異株検出用オリゴヌクレオチド - Google Patents

SARS-CoV-2変異株検出用オリゴヌクレオチド Download PDF

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Tetsudai Kobayashi
麻紀 日比野
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Abstract

【課題】SARS-CoV-2の変異株、具体的にはSARS-CoV-2のSタンパク質におけるN501Y変異、E484K変異、L452R変異、L452Q変異を特定・検出できる方法を提供すること。【解決手段】夾雑物を含みうる試料から事前に核酸の単離精製作業を実施することなくSARS-CoV-2のN501Y変異、E484K変異、L452R変異、及び/又はL452Q変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法を提供する:(1)核酸の単離処理を行っていない試料と、特定の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるSARS-COV-2変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び(2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。【選択図】なし

Description

本発明は、核酸増幅によりSARS-CoV-2変異株、具体的にはSARS-CoV-2のSタンパクにおけるN501Y、E484K、L452R、L452Qのような変異を検出できるオリゴヌクレオチド、並びにそれらを利用した検出方法及び検出キット等に関する。本発明により、例えば、咽頭および鼻腔ぬぐい液、喀痰、唾液等の生体試料から核酸精製せずにSARS-CoV-2変異株を高感度で検出することが可能である。本発明は、生命科学研究、臨床診断や食品衛生検査、環境検査等にも利用できる。
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、遺伝子診断、臨床検査といった医療分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられている。代表的な核酸増幅法は、PCR(Polymerase Chain Reaction)である。PCRは、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって、試料中の標的核酸を増幅する方法である。アニーリングと伸長を同温度で、2ステップで行う場合もある。
RNAを分析する場合、このPCRの前段として、鋳型RNAをcDNAに変換する逆転写(Reverse Transcription;RT)を実施する。これをRT-PCRという。このRT-PCRは、(1)RT、PCRを非連続に実施する2ステップRT-PCR、(2)RT、PCRを、単一酵素を利用して連続して実施する一酵素系1ステップRT-PCR、(3)逆転写酵素とDNAポリメラーゼの2種類の酵素を利用して、RT、PCRを連続的に実施する二酵素系1ステップRT-PCRの3つに大別される。
PCRおよびRT-PCRは、遺伝子検査やウイルス検査にも広く用いられている。このような検査の対象となるRNAウイルスの代表例としては、コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの病原性RNAウイルスが挙げられる。
コロナウイルスは、風邪を含む呼吸器感染症引き起こす原因ウイルスであり、風邪の流行期において約10~35%程度はコロナウイルスが原因と言われている。変異型ウイルスが発生することも知られており、稀にSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスやMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)コロナウイルスF(SARS-nCOV-2、又はSARS-CoV-2などと呼ばれる)など致死性の重篤な呼吸器疾患を齎すものが発生することが知られている。
このSAR-CoV-2は、2019年に中国武漢で発生して以来、世界各国で感染が広がり、パンデミックとなっている。感染が続く中で、より感染性が高い変異株や重症化しやすい変異株も発生している。感染拡大防止の観点や診断用途において、このように感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される変異株(VOC;Variant of Concern)を簡便、迅速、高感度に検出および特定することが重要であることは言うまでもない。VOCに関連するSARS-CoV-2変異としてはこれまでにL501Y、E484K、L452R、L452Qなどが知られているが、今後も変化し、増加していく可能性がある。
ウイルスの変異の特定方法としては、一般的なSNP解析方法が通常用いられる。例えば変異を含む領域を増幅できるPCRプライマーと、異なる蛍光で標識された野生株と変異株それぞれに相補的なTaqManプローブを用い、これらのプライマーとTaqManプローブとウイルスRNAとを混合し、RT-PCRを行うことで、野生株、変異株を区別することができる。その他にも、変異株のみを増幅できるようなプライマーを設計し、増幅の有無で変異株の特定を行う手法(ASP)、増幅産物に蛍光プローブを反応させ融解曲線解析で変異の有無を判定する手法、SYBRなどのインタカーレター色素を用い、増幅産物の融解曲線解析で変異の有無を判定する手法など、様々な手法が知られている(非特許文献1)。これらの方法は組み合わせることも可能であり、複数の箇所の変異を同時に検出するマルチプレックスの手法も開発されている。
しかしながら、TaqManプローブとRT-PCR反応を用いて変異株を特定する場合、野生株と変異株で異なるシグナルを得る必要があり、反応条件の最適化が非常に重要となる。すなわち、上記のように野生株と変異株で異なるTaqManプローブを用いて特定する場合は、わずか1塩基の違いで蛍光シグナルを変化させる必要があり、プローブの長さや配列の選定等の条件設定が重要となる。また同様に、変異株のみを増幅できるようなプライマーを用いる場合も、わずか1塩基しか違わない野生型では増幅しないようにプライマーの長さや配列等を調整する必要があり容易でない。
また、呼吸器感染症の遺伝子検査では、咽頭および鼻腔ぬぐい液、喀痰、唾液等の生体試料をサンプルとしRT-PCRによる遺伝子検査が行われる。生体試料は、RT-PCR反応を阻害する夾雑物や、非特異的な増幅を引き起こすウイルス由来以外の核酸を多く含んでいる。従って、核酸の単離処理をせずに、このような生体試料を夾雑物を含む状態でそのまま用いてRT-PCR反応を行う場合、反応が阻害されて増幅不良で検出不能となったり、反応系が複雑となることで非特異反応が生じ、検出感度が低下することなどが懸念される。このような検出感度の低下は、わずか1塩基の違いで蛍光シグナルを変化させて野生株と変異株を判定する必要があるような場合に、それらの識別を困難にするので特に問題となり得る。
現在、感染拡大防止の観点から、迅速かつ簡便にSARS-CoV-2変異株を判定する方法が強く求められている。特に咽頭および鼻腔ぬぐい液や唾液、糞便試料、ふき取り環境試料等より、核酸の単離処理を行わずにそのままRT-PCR反応を行い判定できる有用な方法の開発が望まれていた。
YAKUGAKU ZASSHI 122(7) 451―463(2002)
本発明は上記従来技術に鑑みてなされたものであり、SARS-CoV-2の変異株、具体的にはSARS-CoV-2のSタンパクにおけるN501位、E484位、L452位での変異(特には、N501Y、E484K、L452R、L452Q変異)を野生型配列と区別して特定・検出できる蛍光プローブ、及びそれらの蛍光プローブを用いることで前記変異を野生型配列と区別して特定・検出できる方法を提供することを目的とする。また本発明は、検査をより迅速・簡便化するため、核酸の単離処理をせずに、例えば、唾液、咽頭および鼻腔ぬぐい液等の生体試料に由来する夾雑物を含む状態の試料から、SARS-CoV-2のSタンパクにおけるN501位、E484位、L452位での変異(特には、N501Y、E484K、L452R、L452Q変異)を有する変異株を、それらの変異を有さない野生株等から特定・検出できる蛍光プローブ、及びそれらの蛍光プローブを用いることで前記変異株を、それらの変異を有さない野生株等から区別して特定・検出できる方法を提供することを更なる目的とする。
本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意研究を行った結果、数多の候補配列の中から野生株と変異株を高感度に区別して特定・検出できるプローブ配列を見出した。また、このプローブを用いることにより、夾雑物を含みうる唾液等の生体試料から事前に核酸の単離精製作業を実施することなくRT-PCR反応を行う場合であっても、SARS-CoV-2のN501位、E484位、L452位における変異(特には、N501Y変異株、E484K変異株、L452R変異株、L452Q変異株)を野生株と区別した特定・検出が可能であることを見出し、本発明に到達した。
代表的な本願発明は、以下の通りである。
[項1] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のN501Y変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
(1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号2~6のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるN501Y変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
(2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
[項2] 前記工程(1)において、配列番号7に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、項1に記載の方法。
[項3] 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において23063番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、項1又は2に記載の方法。
[項4] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項1~3のいずれかに記載の方法。
[項5] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のN501Y変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
(1)配列番号2~6のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるN501Y変異検出蛍光プローブを含む;及び
(2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
[項6] 前記検出キットが、配列番号7に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、項5に記載の検出キット。
[項7] 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において23063番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、項5又は6に記載の検出キット。
[項8] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項5~7のいずれかに記載の検出キット。
[項9] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のE484K変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
(1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号13~18のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるE484K変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
(2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
[項10] 前記工程(1)において、配列番号19~25のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、項9に記載の方法。
[項11] 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において23012番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、項9又は10に記載の方法。
[項12] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項9~11のいずれかに記載の方法。
[項13] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のE484K変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
(1)配列番号13~18のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるE484K変異検出蛍光プローブを含む;及び
(2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
[項14] 前記検出キットが、配列番号19~25のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、項13に記載の検出キット。
[項15] 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において23012番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、項13又は14に記載の検出キット。
[項16] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項13~15のいずれかに記載の検出キット。
[項17] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452R変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
(1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号33~39のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452R変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
(2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
[項18] 前記工程(1)において、配列番号40~43のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、項17に記載の方法。
[項19] 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、項17又は18に記載の方法。
[項20] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項17~19のいずれかに記載の方法。
[項21] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452R変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
(1)配列番号33~39のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452R変異検出蛍光プローブを含む;及び
(2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
[項22] 前記検出キットが、配列番号40~43、若しくは48~51のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、項21に記載の検出キット。
[項23] 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、項21又は22に記載の検出キット。
[項24] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項21~23のいずれかに記載の検出キット。
[項25] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452Q変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
(1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号48~51のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452Q変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
(2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
[項26] 前記工程(1)において、配列番号33~43のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、項25に記載の方法。
[項27] 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、項25又は26に記載の方法。
[項28] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項25~27のいずれかに記載の方法。
[項29] 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452Q変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
(1)配列番号48~51のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452Q変異検出蛍光プローブを含む;及び
(2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
[項30] 前記検出キットが、配列番号33~43のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、項29に記載の検出キット。
[項31] 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、項29又は30に記載の検出キット。
[項32] 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、項29~31のいずれかに記載の検出キット。
本発明によって、SARS-CoV-2の変異株を迅速・簡便に特定・検出することができる。とりわけ、本発明によれば、唾液等の生体試料を各変異検出蛍光プローブと共にRT-PCR反応液に添加後、RT-PCR反応を実施するだけで、SARS-CoV-2の変異株の検出ができるため、事前に生体試料から核酸単離処理を行う必要がなく、よって、核酸の単離処理時のコンタミネーションリスクの減少や検査時間の短縮に貢献できる。このような検査業務の効率化は、患者に対して正確な治療を行えるまでの時間が短縮できるとともに、感染防止の迅速な対応につながり感染症予防にも大いに寄与し得る。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。
本発明は、核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2の変異を検出する方法、および該方法を実施するためのキット等に関する。本発明におけるSARS-CoV-2の変異とは、SARS-CoV-2のSタンパクにおけるN501位、E484位、L452位での変異を指し、特には、N501Y、E484K、L452R変異、L452Q変異をいう。具体的には、配列番号1で示される野生型SARS-CoV-2の塩基配列において、23063番目の塩基のAがTに置換されたものがN501Y変異、23012番目の塩基のGがAに置換されたものがE484K変異、22917番目の塩基のTがGに置換されたものがL452R変異、22917番目の塩基のTがAに置換されたものがL452Q変異として知られている。本発明では、前記のような変異を有するSARS-CoV-2の変異株を野生株と区別して検出することができる。
一つの実施形態において、本発明は、核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のN501Y変異、E484K変異、L452R変異、及び/又はL452Q変異を検出する方法であって、
少なくとも以下の(1)及び(2)の工程を含む方法を提供する:
(1)核酸の単離処理を行っていない試料と、特定塩基配列からなるN501Y変異検出蛍光プローブ、E484K変異検出蛍光プローブ、L452R変異検出蛍光プローブ、及び/又はL452Q変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;並びに
(2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
本発明は、前記工程(1)において、特定領域に結合するように設計された特定の塩基配列から構成される蛍光検出プローブを用いることにより、SARS-CoV-2のSタンパク質におけるN501位、E484位、L452位での変異(特には、N501Y変異、E484K変異、L452R変異、及び/又はL452Q変異)を有する変異株を、これらの変異を有さないSARS-CoV-2から高度に識別して検出でき、また例えば、唾液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液等の夾雑物質を含む生体試料をそのまま用いる場合であっても、これらのSARS-CoV-2変異を高感度に検出できることを見出したことに基づく。
上記の実施態様において、本発明の方法は、核酸の単離処理を行っていない試料を使用することを一つの特徴とする。例えば、本発明は、各種試料から市販の核酸精製キットで核酸を単離したり、あるいはウイルスのゲノム核酸をキャプシド構造などから露出させるための事前の熱処理等をしていない未処理試料を用いることができる。手間のかかる精製等の前処理が不要となるため簡便であるという観点から、これらの未処理試料を用いることが好ましい。また、夾雑物質を除去するような分離精製を伴わない核酸抽出を行った試料であってもよい。ここで、分離精製を伴わない核酸抽出を行った試料とは、試料中で核酸を露出させた状態にすることを意味し、例えば、試料中で細胞膜やカプシド、エンベロープ等を破壊し、これらに内包されていた核酸を抽出して露出させること(但し、破壊後に残存する細胞膜やカプシド、エンベロープの断片等は除去しないこと)をいう。本発明では、このような単離精製の手間を省いて用意した試料であっても良好に核酸増幅でき、安定してSARS-CoV-2変異を検出ことが可能である。このような分離精製を伴わない核酸抽出処理は、前記工程(1)に先立って行うことができる。
本発明において用いられる試料は、核酸の単離処理を行っていないものであれば特に限定されない。本発明に用いる試料が、唾液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液等の夾雑物質および不溶性物質を含みうる試料である場合、当該試料は事前に水または緩衝液等にて懸濁した懸濁液であってよく、唾液試料等であればそのまま使用してもよく、糞便試料等の固形試料をPCR反応液に直接添加してもよい。例えば咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液、喀痰、嘔吐物、唾液、うがい液、涙液、糞便(排泄便、直腸便)などが挙げられるが、特に限定されるものではなく、生体に由来するもの全般に用いることが可能である。特には、咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液、喀痰、肺吸引物、脳脊髄液、うがい液、唾液、涙液、糞便、培養細胞、培養上清からの検出に有用であり、なかでも唾液試料、喀痰試料、うがい液、涙液、咽頭ぬぐい液試料、鼻咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液試料、糞便試料の検出に有用である。本発明によれば、これら試料から市販のRNA精製キット等を用いてRNAを単離してRT-PCR反応に供する必要がないという利点がある。前記試料は直接検出に供してもよいし、夾雑物の反応への影響を低減し、より安定した検査結果を得るために、水、生理食塩水または緩衝液に前記試料を懸濁した試料であってもよい。前記緩衝液としては、特に限定されるものではないが、ハンクス緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、トリシン緩衝液などが挙げられる。また、粘性の強い生体試料(例えば、粘性の強い喀痰を含む試料)の場合は、特に限定されないが、スプタザイム酵素液で処理した試料であってもよい。
更に、本発明において用いられる試料は、キャプシドや細胞壁などの堅牢な構造からRNAまたはDNAを抽出しやすくするために、前記試料を緩衝液や、酸またはアルカリ性溶液、有機溶媒などを含む溶液と混合した試料であってもよい。前記溶液に含まれるものとして、酸性溶液としては、酸性の溶液であれば特に限定されない。酸性溶液としては、例えば、ギ酸水溶液、酢酸水溶液、酪酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液、クエン酸水溶液、乳酸水溶液、リン酸水溶液、安息香酸水溶液、シュウ酸水溶液、酒石酸水溶液、アスコルビン酸水溶液、スルホン酸水溶液などが挙げられ、1種単独又は2種以上組み合わせて使用できる。アルカリ性溶液においても、アルカリ性の溶液であれば特に限定されない。アルカリ性溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸マグネシウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、トリス緩衝液、グリシン緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液(TAPSO,POPSO、HEPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPS)などが挙げられ、1種単独又は2種以上組み合わせて使用できる。有機溶媒として、具体的にはエタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ピリジン等が挙げられるがこれに限られるものではない。さらには、本発明に用いられる試料は、前記溶液と混合後熱処理に供されたものであっても良い。熱処理の条件は、特に限定されないが、60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更により好ましくは90℃以上で、1秒以上処理されたものであってよい。
本発明のSARS-CoV-2の変異を検出する方法は、変異部位にハイブリダイズする特定の塩基配列からなる蛍光プローブを用いることを一つの特徴とする。所定の変異があるときに強いシグナルを発生するプローブであれば特に限定されないが、例えば、TaqManプローブ(米国特許第5,210,015号公報、米国特許第5,538,848号公報、米国特許第5,487,972号公報、米国特許第5,804,375号公報)、モレキュラービーコン(米国特許第5,118,801号公報)、FRETハイブリダイゼーションプローブ(国際公開第97/46707号パンフレット,国際公開第97/46712号パンフレット,国際公開第97/46714号パンフレット)などが挙げられる。好ましくは、TaqManプローブである。
プローブに用いられ得る蛍光化合物は、当該分野で公知の任意のものを使用することができ、例えば、使用したいqPCR機器に合わせて選択することができる。蛍光化合物の具体例としては、例えば、ローダミン(ROX)若しくはその誘導体(例えば、5-カルボキシ-X-ローダミン、6-カルボキシ-X-ローダミン、5-カルボキシローダミン6G(CR6G)、テトラメチルローダミン(TAMRA))、又はそれらの塩などのローダミン系化合物;フルオロセイン又はその誘導体(例えば、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5’-ヘキサクロロ-フルオレセイン-CEホスホロアミダイト))、VIC(登録商標)、BODIPY(登録商標)シリーズ、ローダミン又はその誘導体(例えば、5-カルボキシローダミン6G(CR6G)やテトラメチルローダミン(TAMRA))、Cy(登録商標)色素(例えば、Cy3、Cy5)、若しくはそれらの誘導体、又はそれらの塩等の非ローダミン系化合物等があげられるが、これらに限定されない。蛍光化合物は、必要に応じて、使用する蛍光物質にあった消光物質を使用することができる。上記のような蛍光物質に対応した消光物質としては、例えば、TAMRA(テトラメチル-ローダミン)、DABCYL(4-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)、BHQ1(BHQ:Black Hole Quencher(登録商標))、BHQ2、BHQ3等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明におけるN501Yを検出するプローブ(N501Y変異検出蛍光プローブともいう)としては、配列番号2~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであり得る。なかでも、配列番号2、3、若しくは6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであることが好ましい。
本発明におけるE484Kを検出するプローブ(E484K変異検出蛍光プローブともいう)としては、配列番号13~18のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであり得る。なかでも、配列番号13、14、17~18のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであることが好ましく、配列番号14、17、若しくは18のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであることがより好ましい。
本発明におけるL452Rを検出するプローブ(L452R変異検出蛍光プローブともいう)としては、配列番号33~39のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであり得る。なかでも、配列番号34~39のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであることが好ましい。
本発明におけるL452Qを検出するプローブ(L452Q変異検出蛍光プローブともいう)としては、配列番号48~51のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであり得る。なかでも、配列番号48~50のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであることが好ましく、配列番号49若しくは50のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブであることがより好ましい。
上記のようなプローブを選択して用いることにより、後述の試験例の結果に示されるように、唾液等の夾雑物質を含む生体試料から直接検出する場合でも、より高感度にSARS-CoV-2のSタンパク質変異を検出できる。上記のような特定塩基配列からなるN501Y変異検出蛍光プローブ、E484K変異検出蛍光プローブ、L452R変異検出蛍光プローブ、及び/又はL452Q変異検出蛍光プローブは、一つを選択して使用してもよいし、二以上を組み合わせて使用してもよい。
一つの実施形態において、本発明のSARS-CoV-2の変異を検出する方法は、野生株を検出するプローブをさらに組み合わせて用いることが好ましい。ここで野生株を検出するプローブとは、国立感染症研究所が発表している「病原体検出マニュアル2019-nCoV」、アメリカ疾病予防管理センターが発表する「2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV)Real-time RT-PCR Panel Primers and Probes」および「Research Use Only CDC Influenza SARS-CoV-2 (Flu SC2)Multiplex Assay Real-Time RT-PCR Primers and Probes」「Research Use Only 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-time RT-PCR Primers and Probes」およびパスツール研究所が発表している「Protocol:Real-time RT-PCR assays for the detection of SARS-CoV-2」などに記載されるSARS-CoV-2遺伝子の塩基配列(配列番号1)、もしくはその逆相補鎖にハイブリするプローブであれば特に限定されないが、N501位、E484位、L452位に変異(例えば、N501Y、E484K、L452R、L452Qのそれぞれに変異)があるときにはシグナルを生じにくく設計されたものが好ましい。このような野生株を検出するプローブを、SARS-CoV-2変異株検出プローブと組み合わせて使用することにより、試料中にSARS-CoV-2が含まれている場合に、そのSARS-CoV-2がSタンパク質においてN501位、E484位、L452位に変異(例えば、N501Y変異、E484K変異、L452R変異、又はL452Q変異)を有するものか、或いはこれらの変異を有していないもの(例えば、野生株)であるかを、より明確に判別することができ誤判定を回避することが容易になる。
好ましい実施形態では、N501位における変異(特に、N501Y変異)を検出する方法においては、このような野生株を検出できるプローブとして、配列番号7に示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブを用いるのがよい。
E484位における変異(特に、E484K変異)を検出する方法においては、配列番号19~25のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブを用いることが好ましく、配列番号20~25のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブを用いることがより好ましく、配列番号20、23、24、若しくは25のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブを用いることが更に好ましい。
L452位における変異(特に、L452R変異又はL452Q変異)を検出する方法においては、配列番号40~43のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブを用いることが好ましく、配列番号40、42、若しくは43のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸を蛍光標識したプローブを用いることがより好ましい。
本発明のSARS-CoV-2のSタンパク質におけるN501位、E484位、L452位での変異(特には、N501Y変異、E484K変異、L452R変異、及び/又はL452Q変異)を検出する方法では、上記の各変異を含む領域を増幅可能なプライマーを用いてRT-PCR反応を実施する。このようなプライマーとしては、例えばN501Y変異を検出する方法においては、配列番号1で示される野生型SARS-CoV-2の塩基配列において23063番目の塩基を挟み込むように5’側及び3’側に相当する位置にそれぞれ配置されたプライマーであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットであれば特に限定されず、任意のプライマーセットを使用することができる。E484K変異を検出する方法、L452R変異、及び/又はL452Q変異を検出する方法に用いられるプライマーも上記と同様にして、配列番号1で示される野生型SARS-CoV-2の塩基配列において23012番目の塩基を挟み込むように及び/又は22917番目の塩基を挟み込むように設計されたプライマーセットを使用することができる。ここで、これらのプライマーセットに挟み込まれて増幅され得る領域の長さは、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、一例として50~500bp程度であり得、50~300bp程度であることが好ましく、50~150bp程度であることがより好ましい。
好ましい実施形態では、N501Y変異を検出する方法において用いるプライマーセットは、配列番号10に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列から選択される少なくとも一つのプライマーと、配列番号11若しくは12に記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列から選択される少なくとも一つのプライマーとで構成されるプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットであり得る。
また、E484K変異を検出する方法において用いるプライマーセットは、配列番号26~31のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列から選択される少なくとも一つのプライマーと、配列番号32に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列から選択される少なくとも一つのプライマーとで構成されるプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットであることが好ましい。
更に、L452R変異及び/又はL452Q変異を検出する方法において用いるプライマーセットは、配列番号45に記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列から選択される少なくとも一つのプライマーと、配列番号46若しくは47に記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列から選
択される少なくとも一つのプライマーとで構成されるプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットであることが好ましい。
上記のようなプライマーセットを本発明の各変異検出蛍光プローブと組み合わせて使用することで、核酸の単離処理を行っていない試料をそのまま用いる場合であっても、良好にSARS-CoV-2のN501Y変異株、E484K変異株、L452R変異株、又はL452Q変異株を野生株から識別することができる。
本発明のSARS-CoV-2のSタンパク質におけるN501位、E484位、L452位での変異(特には、N501Y変異、E484K変異、L452R変異、及び/又はL452Q変異)を検出する方法では、核酸の単離処理を行っておらず夾雑物質が含まれる試料からであっても、夾雑物質の阻害を受けることなくRT-PCR反応が実施され得るRT-PCR反応液(RT-PCR試薬)を用いてRT-PCR反応を実施する。このようなRT-PCT反応液は、例えば、夾雑物質に対して耐性を示すことが公知のDNAポリメラーゼ等を含むものが好ましいが、特に限定されない。
前記RT-PCR反応液に含まれるDNAポリメラーゼとしては、当該分野で公知の任意のDNAポリメラーゼを用いることができる。好ましくは、夾雑物耐性を持つことが当該分野で公知の任意のDNAポリメラーゼを用いることができる。夾雑物耐性とは、RT-PCR阻害物質の存在下においても、核酸増幅反応に十分なDNAポリメラーゼの高い酵素活性を有する性質を指す。夾雑物耐性を持つDNAポリメラーゼとして、特に限定されるものではないが、Tth,Bst,KOD,Pfu,Pwo、Tbr,Tfi,Tfl,Tma,Tne、Vent,DEEP VENT、HawkZ05やこれらの変異体が挙げられるが、特に限定されない。好ましくは、TthおよびHawkZ05又はこれらの変異体の使用である。特に好ましくはTth又はその変異体の使用である。通常夾雑耐性を有しないTaqなどのDNAポリメラーゼにおいても、アミノ酸変異により夾雑耐性を有する変異体である場合は使用することが可能である。前記PCR反応液に含まれる前記夾雑物耐性を有するDNAポリメラーゼの総量は、一例として、少なくとも4.2ng/μL以上あればよく、5.0ng/μL以上であることが好ましく、5.8ng/μL以上であることがより好ましい。なかでも好ましくは、8.3ng/μL以上である。前記夾雑物耐性を有するDNAポリメラーゼの総量の上限は特に限定されないが、一例として、20ng/μL以下とすることができ、16.7ng/μL以下であっても十分に本発明の効果を得ることができる。ポリメラーゼの量は、Bradford法もしくはNanodrop(サーモフィッシャー社)により定量した値であり、安全データシート(SDS)から概算してもよい。BSAなどのタンパク質を含む場合は、後者の方法で算出することが望ましい。非特異的反応抑制の効果を高めるため、抗DNAポリメラーゼ抗体との併用、あるいは化学修飾により熱不安定ブロック基のDNAポリメラーゼへ導入することで、PCR反応開始までのDNAポリメラーゼの酵素活性を抑制し、ホットスタートRT-PCRへの適用ができることが好ましい。
本発明に用いられるRT-PCR反応液は、DNAポリメラーゼおよび必要に応じて逆転写酵素を含む。前記RT-PCR反応液に含まれる逆転写酵素の由来としては、RNAをDNAに変換できれば特に限定されないが、MMLV(Moloney Murine Leukemia Virus)-RT、AMV-RT(Avian Myeloblastosis Virus)、HIV-RT、RAV2-RT、EIAV-RT、カルボキシドサーマス・ハイドロゲノフォルマン(Carboxydothermus hydrogenoformam)DNAポリメラーゼ)やその変異体が例示される。特に好ましい例としては、MMLV-RT、AMV-RT、またはそれらの変異体が挙げられる。
本発明において用いられるRT-PCR反応液は、逆転写酵素活性を併せ持つDNAポリメラーゼを含むものであっても良い。逆転写活性を有するDNAポリメラーゼとは、RNAをcDNAに変換する能力とDNAを増幅する能力を兼ね備えたDNAポリメラーゼである。逆転写活性を有するDNAポリメラーゼは、逆転写活性及び夾雑物耐性に加えて、耐熱性を有することが好ましい。耐熱性とは、70℃で1分以上の熱処理を実施しても、酵素活性が半分以上低下しないことをいう。由来は特に限定されるものではないが、Taq、Tth,Bst,Bca,KOD,Pfu,Pwo、Tbr,Tfi,Tfl,Tma,Tne、Vent,DEEPVENTやこれらの変異体が挙げられる。これまでに逆転写活性を有するDNAポリメラーゼとして、Thermus aquaticus由来のDNAポリメラーゼ(Taq)、Thermus thermophilus HB8由来のDNAポリメラーゼ(Tth)やThermus sp Z05由来のDNAポリメラーゼ(Z05)、Thermotoga maritima由来のDNAポリメラーゼ(Tma)、Bacillus caldotenax由来のDNAポリメラーゼ(Bca)、Bacillus stearothermophilus由来のDNAポリメラーゼ(Bst)などが挙げられ、これらの逆転写活性と耐熱性DNAポリメラーゼ活性が失われていない変異体であってもよい。また、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ(KOD)の変異体であって、逆転写活性を有するものが知られており(例えば、RTX:reverse transcription xenopolymerase)、本発明にはこのような逆転写酵素活性を併せ持つ耐熱性DNAポリメラーゼも使用できる。特に好ましくは、Tth、Z05及びこれらの変異体からなる群より選択される逆転写活性を有するDNAポリメラーゼが挙げられる。
本明細書において、夾雑物耐性を有するDNAポリメラーゼの変異体とは、その由来である野生型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列に対して、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、なかでも好ましくは99%以上の配列同一性を有し、且つ、夾雑物質の存在下においても高いDNAポリメラーゼ活性を有するものをいう。逆転写活性も兼ね備えたDNAポリメラーゼである場合、夾雑物質の存在下においてもRNAをcDNAに変換する活性及びDNAを増幅する活性を有するものをいう。ここで、アミノ酸配列の同一性を算出する方法としては、当該分野で公知の任意の手段で行うことができる。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができ、一例として、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出することが可能である。また、本発明に用いられ得る変異体は、その由来である野生型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加(以下、これらを纏めて「変異」ともいう)したアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、且つ、野生型DNAポリメラーゼと同様にRNAをcDNAに変換する活性及びDNAを増幅する活性を有するものであってもよい。ここで1又は数個とは、例えば、1~80個、好ましくは1~40個、よりこのましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個であり得るが、特に限定されない。
本発明に用いられるRT-PCR反応液には、DNAポリメラーゼの他、緩衝剤、適当な塩、マグネシウム塩又はマンガン塩、デオキシヌクレオチド三リン酸、さらに必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
本発明で使用される緩衝剤としては、特に限定されないが、トリス(Tris),トリシン(Tricine),ビスートリシン(Bis-Tricine),ビシン(Bicine)などが挙げられる。硫酸、塩酸、酢酸、リン酸などでpHを6~9、より好ましくはpH7~9に調整されたものである。また、添加する緩衝剤の濃度としては、10~200mM,より好ましくは20~150mMで使用される。この際、反応に適当なイオン条件とするために、塩溶液が加えられる。塩溶液としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウムなどが挙げられる。
本発明で使用されるdNTPとしては、dATP,dCTP,dGTP,dTTPがそれぞれ0.1~0.5mM、最も一般的には0.2mM程度加えられる。dTTPの代わり及び/又は一部としてdUTPを使用することによって、クロスコンタミネーションに対する予防処置をとってもよい。クロスコンタミネーションに対する予防処置を講じる場合、Uracil-N-glycosylase(UNG)を含むことが好ましい。
更に、本発明では、RT-PCR反応液に、2価陽イオンを含むことが好ましい。このように2価陽イオンを含むことで、より安定して高い夾雑耐性が得られ高感度な検出が可能となる。2価陽イオンとしては、特に限定されないが、マグネシウムイオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン等を挙げることができる。好ましくは、2価陽イオンとして、マグネシウムイオン、マンガンイオンを含むことが好ましい。本発明において、PCR反応液にマグネシウムイオンやマンガンイオン等を添加する場合は、マグネシウムやマンガンを添加してもよいし、これらの塩を添加してもよい。マグネシウム又はその塩としては、マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が例示され、マンガン又はその塩としては、マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガンなどが例示される。このようなマグネシウム、マンガン、又はこれらの塩は、RT-PCR反応液中に1~10mM程度加えられることが好ましい。本発明の検出方法において、一酵素系RT-PCRを実施する場合、安定的に高い感度が得られ易いという観点からは、マンガン又はその塩を含むことが好ましい。特定の実施態様では、RT-PCR反応液において1mM以上のマンガン又はその塩を含むことが好ましく、1.5mM以上のマンガン又はその塩を含むことが好ましく、2.0mM以上のマンガン又はその塩を含むことがより好ましい。また、二酵素系RT-PCRを実施する場合、安定的に高い感度が得られ易いという観点からは、マグネシウム又はその塩を含むことが好ましい。特定の実施態様では、RT-PCR反応液において1mM以上のマグネシウム又はその塩を含むことが好ましく、1.5mM以上のマグネシウム又はその塩を含むことが好ましく、2.0mM以上のマグネシウム又はその塩を含むことがより好ましい。
さらにRT-PCR反応液に含まれる添加剤として、アミノ酸におけるアミノ基に3個のメチル基を付加した構造を有する第4級アンモニウム塩(以下、「ベタイン様4級アンモニウム」という)、ポリペプチド(ウシ血清アルブミン、セリシン、Blocking peptide fragment(以下BPFともいう)、ゼラチン)、グリセロール、グリコール及び界面活性剤よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでいてもよい。
本発明に用いられる前記ポリペプチドは、分子量が5~500kDaである限り、特に限定されないが、好ましくは、6~400kDaである。本明細書において、分子量を示すときは、他の意味であることが明らかでない限り、SDS-PAGEを用いて決定した値をいう。SDS-PAGEでの分子量の測定は、当該分野で一般的な手法及び装置を用い、市販される分子量マーカー等を用いて行うことができる。例えば、「分子量50kDa」とは、SDS-PAGEで分子量を測定した際に、当業者が、通常50kDaの位置にバンドがあると判断する範囲にあることをいう。また、本発明に用いられるポリペプチドは、上記分子量の範囲内のポリペプチドの混合物であってもよい。
本発明に用いられる前記ポリペプチドは、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、複数のアミノ酸がペプチド結合で連なって形成されたタンパク質をいう。また、本発明に用いられるポリペプチドは、アミノ酸が連結されたポリペプチド構造を有する限り、例えば、熱変性等により三次元構造が解かれたような熱変性ポリペプチド(例えば、ゼラチン)等であってもよい。具体的には、本発明に使用され得るポリペプチドとして、例えば、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン、ラクトアルブミン、ヒト血清アルブミン、卵由来アルブミン)、ゼラチン(例えば、魚ゼラチン、豚ゼラチン)、セリシン、カゼイン、フィブロイン等の天然由来タンパク質(天然由来ポリペプチド);Blocking peptide fragment(以下BPFともいう)、コラーゲン加水分解物、ポリペプトン、酵母エキス、ビーフエキストラクト等の合成・分解等により人為的に製造されたポリペプチド等を用いることができる。より一層優れた本発明の効果が奏されるという観点から、好ましくは、本発明に用いられるポリペプチドは、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、Blocking peptide fragment(以下BPF)、及び/又はセリシンである。少量でも高い効果が発揮され得るという観点から、より好ましくは、ウシ血清アルブミン、ゼラチン(なかでも魚ゼラチン)を用いるのが好適である。これらのポリペプチドは、1種類だけ使用してもよいし、2種類以上を組合わせて使用してもよい。また、これらのポリペプチドは、天然からの抽出や合成等の手段により調製してもよく、また市販品も好適に使用することができる。
本発明において、前記ポリペプチドの使用量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、前記試料と一酵素系1ステップRT-PCR反応液とを混合した混合液中において、終濃度0.0001~200mg/mLとなるような量、好ましくは0.01~150mg/mL、より好ましくは0.1~130mg/mL、更に好ましくは0.5~100mg/mLで使用することができる。より優れた効果を発揮させるために好ましい量は、使用するポリペプチドの種類や所望される効果の程度等によって変動し得るが、例えば、以下のような使用量を例示することができる。
・ウシ血清アルブミンを用いる場合:RT-PCR反応液中終濃度として、例えば0.5mg/mL以上、好ましくは1mg/mL以上、より好ましくは2mg/mL以上、更に好ましくは3mg/mL以上。上限値は特に限定されないが、例えば、10mg/mL以下とすることができる。
・ゼラチンを用いる場合:RT-PCR反応液中終濃度として、例えば0.1mg/mL以上、好ましくは1mg/mL以上、より好ましくは5mg/mL以上、更に好ましくは7.5mg/mL以上、さらにより好ましくは15mg/mL以上。上限値は特に限定されないが、例えば、50mg/mL以下とすることができる。
・セリシンを用いる場合:RT-PCR反応液中終濃度として、例えば1mg/mL以上、好ましくは5mg/mL以上、より好ましくは10mg/mL以上、更に好ましくは20mg/mL以上、更により好ましくは50mg/mL以上。上限値は特に限定されないが、例えば、100mg/mL以下とすることができる。
・BPFを用いる場合:RT-PCR反応液中終濃度として、例えば1mg/mL以上、好ましくは5mg/mL以上、より好ましくは10mg/mL以上、更に好ましくは20mg/mL以上、更により好ましくは30mg/mL以上。上限値は特に限定されないが、例えば、50mg/mL以下とすることができる。
前記RT-PCR反応液に含まれる界面活性剤としては、トリトンX-100(TritonX-100)、トリトンX-114(TritonX-114)、ツイーン20(Tween20),ノニデットP40、Briji35、Briji58、SDS、CHAPS、CHAPSO、Emulgen420などが挙げられるが、特に限定されない。RT-PCR反応液中の前記界面活性剤の濃度も特に限定はされないが、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.002%以上、さらに好ましくは0.005%以上で、良好な検出が可能となる。上限は特に限定されないが、一例として、0.1%以下とすることができる。
前記RT-PCR反応液に含まれるベタイン様4級アンモニウムとしては、ベタイン(トリメチルグリシン)、カルニチンなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。ベタイン構造は分子内に安定な正、負の両電荷を持つ化合物で、界面活性剤のような性質を示し、ウイルス構造の不安定化を引き起こすと考えられる。さらに、DNAポリメラーゼの核酸増幅を促進することが知られる。好ましい前記ベタイン様4級アンモニウム濃度は、0.1M~2M、より好ましくは0.2M~1.2Mである。
さらには、当該技術分野でPCRまたはRT-PCRを促進することが知られる物質と組み合わせて使用することもできる。本発明において有用な促進物質とは、例えば、グリセロール、ポリオール、プロテアーゼインヒビター、シングルストランド結合タンパク質(SSB)、T4遺伝子32タンパク質、tRNA、硫黄または酢酸含有化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、エクトイン、トレハロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、酢酸テトラメチルアンモニウム(TMAA)、ポリエチレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに反応阻害を低減するように、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-四酢酸(BAPTA)のようなキレート剤を含んでいてもよい。
また、核酸の単離処理を行っておらず夾雑物質が含まれる試料からであっても、夾雑物質の阻害を受けることなくRT-PCR反応が実施され得るRT-PCR反応液(RT-PCR試薬)としては、市販品も使用することができ、例えば、SARS-CoV-2 Detection Kit(東洋紡)、SARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kit(TaKaRa)、2019新型コロナウイルス検出試薬キット(島津)などを使用することができる。好ましくは、SARS-CoV-2 Detection Kit(東洋紡)を使用するのがよい。
前記工程(2)におけるRT-PCR反応のサイクルは、1.熱処理や2.逆転写反応のステップを含んでよい。また、各ステップの前後に、ホットスタート酵素を活性化させるための熱処理工程を含んでもよい。1の熱処理工程では、ウイルスを破砕してウイルス内の核酸を露出させる、及び/もしくは核酸増幅反応においてホットスタート酵素を活性化させる工程を含み得る。前記熱処理工程の温度及び時間は、60℃以上であり、かつ1秒以上であればよく、好ましくは70℃、30秒以上、より好ましくは80℃、30秒以上、特に好ましくは85℃、30秒以上である。2の逆転写反応の温度は、使用する逆転写酵素の逆転写活性と、プライマー及びプローブのTm値によって決定され、少なくとも25℃以上であればよい。より好ましくは37℃以上である。PCRでは、[1]熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、[2]鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、[3]DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、の3ステップを含んでいればよく、[2]と[3]を同一の温度で実施して、2ステップとしてもよい。迅速なRT-PCRを実施するためには、前記RT-PCR反応に使用するサーマルサイクラーは、前記[2]と[3]のステップの伸長時間を合わせて15秒以下、より好ましくは10秒以下の測定プログラムを設定することが望ましい。なお、本明細書において「PCRの伸長時間」とは、サーマルサイクラーでの設定時間を指す。
本発明の別の一態様は、上記のような特定塩基配列からなるSARS-CoV-2変異検出蛍光プローブを含むことを特徴とする、N501Y変異検出キット、E484K変異検出キット、L452R変異及び/又はL452Q変異検出キットである。これらのキットは更に、核酸の単離処理を行っておらず夾雑物質が含まれる試料からであっても、夾雑物質の阻害を受けることなくRT-PCR反応が可能な反応試薬を含むことが好ましい。また、これらのキットは、SARS-CoV-2の野生株を検出するプローブ、N501Y変異、E484K変異、L452R変異、及び/又はL452Q変異の各変異を含む領域をそれぞれ増幅可能なプライマーセット含むことが更に好ましい。その他に含み得る成分は、上記の変異検出方法において詳述されたものと同様であり得る。本発明のキットにおいて、上記の変異検出蛍光プローブ及びRT-PCR反応が可能な反応試薬、並びに必要に応じて含んでいてもよい、野生型検出プローブ、プライマーセットなどは、1つの試薬としてキットに含まれてもよいし、別々の試薬としてキットに含まれ、使用前に混合して用事調製される態様で提供されてもよい。
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
試験例1.SARS-CoV-2コロナウイルスN501Y変異検出プローブの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、N501Yの変異が検出できるプローブを評価した。変異株を検出するプローブはN501Yの変異をもつRNAにのみ反応し、野生株には反応しない、もしくは反応効率が悪いものが好ましい。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号10に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号11に記載のRevプライマー1.2μL、10μM配列番号2~6に記載の変異株検出Cy5―BHQ3標識プローブいずれかを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。なお、ここで用意されたRT-PCR反応液は唾液由来の夾雑物質を取り除く操作を行っていないため、核酸の単離処理を行っていない疑似試料とみなすことができる。以降の試験例でも同様にしてRT-PCR反応液を調製して評価を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表1に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。配列番号2、3、6のプローブは変異株でのみシグナルが得られ、野生株と変異株をうまく分離できていた。配列番号4、5のプローブは野生株にも反応している結果となったが、Ctを比較すると野生型の方がCt値が大きく、変異株の方が野生株より、効率的に反応している結果となった。この結果から、これらのプローブ(特に、配列番号2、3、6で示されるプローブ)が結合する領域(標的核酸領域)に結合するように設計されたプローブを用いることにより、N501位に変異を有するSARS-CoV-2変異株が効率的に検出できることが分かる。
Figure 2023029191000001
試験例2.SARS-CoV-2コロナウイルスN501検出プローブの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、N501の野生株が検出できるプローブを評価した。野生株を検出するプローブはN501Yの変異をもつRNAには反応しない、もしくは反応効率が悪いものが好ましい。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号10に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号11に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号7に記載の野生株検出FAM―BHQ1標識プローブを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表2に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。配列番号7のプローブは野生株でのみシグナルが得られ、野生株と変異株をうまく分離できていた。
Figure 2023029191000002
試験例3.SARS-CoV-2コロナウイルスN501Y検出プライマーの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、N501Yの変異が検出できるプライマーを評価した。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号8及び10に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号9及び11、12に記載のRevプライマー1.2μLをそれぞれ組み合わせ、10μMの配列番号2に記載の変異株検出ROX―BHQ3標識プローブ、10μMの配列番号7に記載の野生株検出FAM―BHQ1標識プローブそれぞれを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表3に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。野生株はFAMのシグナルが、変異株はROXのシグナルが得られればよい。配列番号8と9、10と11、8と11、9と10、10と12の組み合わせを評価し、10と11、8と11、10と12の組み合わせでは変異株、野生株をうまく分離できていた。
Figure 2023029191000003
また、唾液の代わりに鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、糞便懸濁液を用いても同様の結果を示した。
試験例4.SARS-CoV-2コロナウイルスE484K変異検出プローブの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、E484Kの変異が検出できるプローブを評価した。変異株を検出するプローブはE484Kの変異をもつRNAにのみ反応し、野生株には反応しない、もしくは反応効率が悪いものが好ましい。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号27に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号32に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号13~18に記載の変異株検出Cy5―BHQ3標識プローブいずれかを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表4に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。配列番号14、17、18のプローブは変異株でのみシグナルが得られ、野生株と変異株をうまく分離できていた。配列番号15、16のプローブは野生株にも反応している結果となりうまく分離ができなかった。また配列番号13も唾液の影響のためか、2500コピーのRNAを添加してもシグナルが弱く、十分な分離はできなかった。この結果から、これらのプローブ(特に、配列番号14、17、18で示されるプローブ)が結合する領域(標的核酸領域)に結合するように設計されたプローブを用いることにより、E484位に変異を有するSARS-CoV-2変異株が効率的に検出できることが分かる。
Figure 2023029191000004
試験例5.SARS-CoV-2コロナウイルスE484検出プローブの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、E484の野生株が検出できるプローブを評価した。野生株を検出するプローブはE484Kの変異をもつRNAには反応しない、もしくは反応効率が悪いものが好ましい。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号27に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号32に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号19~26に記載の野生株検出FAM―BHQ1標識プローブいずれかを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表5に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。配列番号20、23、24、25のプローブは野生株でのみシグナルが得られ、野生株と変異株をうまく分離できていた。配列番号21、22のプローブは変異株にも反応している結果となったが、Ctを比較すると変異型の方がCt値が大きく、野生株の方が変異株より、効率的に反応している結果となった。配列番号19のプローブは唾液の影響のためか、625コピーまでしか十分な検出はできず、低コピーでの分離はできなかった。
Figure 2023029191000005
試験例6.SARS-CoV-2コロナウイルスE484K検出プライマーの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、E484Kの変異が検出できるプライマーを評価した。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号26~31に記載のFwdプライマーいずれかを1.2μL、10μMの配列番号32に記載のRevプライマー1.2μLをそれぞれ組み合わせ、10μMの配列番号15に記載の変異株検出HEX―TAMRA標識プローブ、10μMの配列番号21に記載の野株検出FAM―TAMRA標識プローブそれぞれを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表6に示す。野生株はFAMのシグナルが、変異株はHEXのシグナルが得られればよい。すべての組み合わせでは変異株、野生株をうまく分離できていた。
Figure 2023029191000006
試験例7.SARS-CoV-2コロナウイルスE484、E484K検出プローブの組み合わせ評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、E484の野生株を検出できるプローブとE484Kの変異が検出できるプローブの組み合わせを評価した。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号27に記載のFwdプライマーを1.2μL、10μMの配列番号32に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号114及び18に記載の変異株検出Cy5―BHQ3標識プローブ、10μMの配列番号23及び24に記載の野株検出FAM―BHQ1標識プローブそれぞれを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(10、50、25、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表7に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。野生株はFAMのシグナルが、変異株はCy5のシグナルが得られればよい。すべての組み合わせ(配列番号18と24、18と23、14と23)で変異株、野生株をうまく分離できていた。
Figure 2023029191000007
また、唾液の代わりに鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、糞便懸濁液を用いても同様の結果を示した。
試験例8.SARS-CoV-2コロナウイルスL452R変異検出プローブの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、L452Rの変異が検出できるプローブを評価した。変異株を検出するプローブはL452Rの変異をもつRNAにのみ反応し、野生株には反応しない、もしくは反応効率が悪いものが好ましい。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号45に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号46に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号33~39に記載の変異株検出Cy5―BHQ3標識プローブいずれかを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表8に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。配列番号34,35,36、37、38、39のプローブは変異株でのみシグナルが得られ、野生株と変異株をうまく分離できていた。配列番号33のプローブは野生株にも反応している結果となったが、Ctを比較すると野生型の方がCt値が大きく、変異株の方が野生株より、効率的に反応している結果となった。この結果から、これらのプローブ(特に、配列番号34、35、36、37、38、39で示されるプローブ)が結合する領域(標的核酸領域)に結合するように設計されたプローブを用いることにより、L452位に変異を有するSARS-CoV-2変異株が効率的に検出できることが分かる。
Figure 2023029191000008
試験例9.SARS-CoV-2コロナウイルスL452検出プローブの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、L452の野生株が検出できるプローブを評価した。野生株を検出するプローブはL452Rの変異をもつRNAには反応しない、もしくは反応効率が悪いものが好ましい。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μ
L及び酵素液5μL、10μMの配列番号27に記載のFwdプライマー1.2μL、10μMの配列番号32に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号40~43に記載の野生株検出FAM―BHQ1標識プローブいずれかを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表9に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。配列番号40、42、43のプローブは野生株でのみシグナルが得られ、野生株と変異株をうまく分離できていた。配列番号41のプローブは唾液の影響のためか、2500コピーまでしか十分な検出はできず、低コピーでの分離はできなかった。
Figure 2023029191000009
試験例10.SARS-CoV-2コロナウイルスL452R検出プライマーの評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、L452Rの変異が検出できるプライマーを評価した。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号44、45に記載のFwdプライマーいずれかを1.2μL、10μMの配列番号46、47に記載のRevプライマーいずれかを1.2μL、10μMの配列番号33に記載の変異株検出HEX―TAMRA標識プローブを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(2500、625、156、39、10、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表10に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。野生株はシグナルが得られず、変異株はHEXのシグナルが得られればよい。すべての組み合わせでは変異株、野生株をうまく分離できていた。
Figure 2023029191000010
試験例11.SARS-CoV-2コロナウイルスL452、L452R検出のプローブの組み合わせ評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、L452の野生株を検出するプローブとL452Rの変異が検出できるプローブの組み合わせを評価した。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号45に記載のFwdプライマーを1.2μL、10μMの配列番号46に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号34及び36,37に記載の変異株検出Cy5―BHQ3標識プローブ、10μMの配列番号40に記載の野株検出FAM―BHQ1標識プローブそれぞれを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA、野生株RNA1μL(10、50、25、0コピー/μLそれぞれ)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT―PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表11に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。野生株はFAMのシグナルが、変異株はCy5のシグナルが得られればよい。すべての組み合わせ(配列番号34と40、36と40、37と40)で変異株、野生株をうまく分離できていた。
Figure 2023029191000011
また、唾液の代わりに鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、糞便懸濁液を用いても同様の結果を示した。
試験例12.SARS-CoV-2コロナウイルスL452、L452R、L452Q検出のプローブの組み合わせ評価
SARS-CoV-2 Detection Kit -Multi-(東洋紡)に添付の前処理液、反応液、酵素液を用いて、唾液存在下、L452の野生株を検出するプローブ、L452R変異株を検出するプローブ、及びL452Q変異株を検出できるプローブの組み合わせを評価した。上記キットの前処理液3μLに陰性唾液検体8μLを添加し、室温5分、95℃5分反応後、反応液30μL及び酵素液5μL、10μMの配列番号45に記載のFwdプライマーを1.2μL、10μMの配列番号46に記載のRevプライマー1.2μL、10μMの配列番号37に記載のL452R変異株検出Cy5―BHQ3標識プローブを0.3μL、10μMの配列番号48~50に記載のL452Q変異株検出ROX-BHQ2標識プローブを0.3μL、及び10μMの配列番号40に記載の野生株検出FAM-BHQ1標識プローブを0.3μL添加し、滅菌水で最終液量が40μLとなるようにRT-PCR反応液を調製した。そこに変異株RNA(L452R変異株のRNA若しくはL452Q変異株のRNA)又は野生株RNA1μL(それぞれ10、50、25、0コピー/μL)を添加し、RT-PCR反応を行った。RT-PCRは42℃5分、95℃10秒の反応の後、95℃5秒→60℃30秒の繰り返しを45サイクルする条件で実施した。
RT-PCRの結果得られたCt値を表12に示す。N/Aは増幅しなかったことを示す。野生株はFAMのシグナルが、L452R変異株はCy5のシグナルが、L452Q変異株はROXのシグナルが得られればよい。特に配列番号49、50を用いた組み合わせにおいて、野生株のときはFAMのみ、L452R変異株のときはCy5のみ、L452Q変異株のときはROXのみが見られ、野生株と変異株をうまく分離できていることが分かる。配列番号48を用いた組み合わせでは、L452Q変異株を高濃度含有する場合に野生株検出プローブにも多少反応している結果となったが、Ctを比較すると野生株検出プローブの方がCt値が大きく、L452Q変異株検出プローブの方が効率的に反応している結果となった。
Figure 2023029191000012
また、唾液の代わりに鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、糞便懸濁液を用いても同様の結果を示した。
更に、配列番号50で示される塩基配列と二塩基異なる配列番号51のプローブ(配列番号50で示される塩基配列から3’末端が二塩基短い塩基配列からなるプローブ)を別途設計し、上記と同様の手順で、標的核酸として10コピー/μLの変異株RNA(L452R変異株のRNA又はL452Q変異株のRNA)又は野生株RNA1μLを用いて、L452の野生株を検出するプローブ(配列番号37)、L452R変異株を検出するプローブ(配列番号40)、及びL452Q変異株を検出できるプローブ(配列番号51)の組み合わせを評価した。その結果、高濃度の標的核酸を含む試験において、これらのプローブの組み合わせ(配列番号37-40-51)でも、野生型と変異株(L452R変異株又はL452Q変異株)をうまく分離して検出できることが確認された。
本発明は、臨床検査、感染症拡大防止などを目的とした検査の他、分子生物学研究等においても好適に利用できる。

Claims (32)

  1. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のN501Y変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
    (1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号2~6のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるN501Y変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
    (2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
  2. 前記工程(1)において、配列番号7に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において23063番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のN501Y変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
    (1)配列番号2~6のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるN501Y変異検出蛍光プローブを含む;及び
    (2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
  6. 前記検出キットが、配列番号7に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、請求項5に記載の検出キット。
  7. 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において23063番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、請求項5又は6に記載の検出キット。
  8. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項5~7のいずれかに記載の検出キット。
  9. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のE484K変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
    (1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号13~18のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるE484K変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
    (2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
  10. 前記工程(1)において、配列番号19~25のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において23012番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
  13. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のE484K変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
    (1)配列番号13~18のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるE484K変異検出蛍光プローブを含む;及び
    (2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
  14. 前記検出キットが、配列番号19~25のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、請求項13に記載の検出キット。
  15. 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において23012番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、請求項13又は14に記載の検出キット。
  16. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項13~15のいずれかに記載の検出キット。
  17. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452R変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
    (1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号33~39のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452R変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
    (2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
  18. 前記工程(1)において、配列番号40~43のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、請求項17に記載の方法。
  19. 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、請求項17又は18に記載の方法。
  20. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
  21. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452R変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
    (1)配列番号33~39のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452R変異検出蛍光プローブを含む;及び
    (2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
  22. 前記検出キットが、配列番号40~43、若しくは48~51のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、請求項21に記載の検出キット。
  23. 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、
    請求項21又は22に記載の検出キット。
  24. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項21~23のいずれかに記載の検出キット。
  25. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452Q変異を検出する方法であって、以下の工程を包含する方法:
    (1)核酸の単離処理を行っていない試料と、配列番号48~51のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452Q変異検出蛍光プローブと、RT-PCR反応液とを混合する工程;及び
    (2)前記混合液を用いてRT-PCR反応を実施する工程。
  26. 前記工程(1)において、配列番号33~43のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に混合する、請求項25に記載の方法。
  27. 前記工程(1)において、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に混合する、請求項25又は26に記載の方法。
  28. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項25~27のいずれかに記載の方法。
  29. 核酸の単離処理をせずにSARS-CoV-2のL452Q変異を検出するためのキットであって、以下の特徴を有するキット:
    (1)配列番号48~51のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるL452Q変異検出蛍光プローブを含む;及び
    (2)核酸の単離処理を行っていない試料からRT-PCR反応が可能な反応試薬を含む。
  30. 前記検出キットが、配列番号33~43のいずれかに記載の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる蛍光プローブを更に含む、請求項29に記載の検出キット。
  31. 前記検出キットが、配列番号1で示される塩基配列において22917番目の塩基を含む領域を増幅可能なプライマーセットであって、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるように設計されたプライマーセットを更に含む、請求項29又は30に記載の検出キット。
  32. 前記試料が、唾液、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、及び糞便検体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項29~31のいずれかに記載の検出キット。
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