JP2023026191A - 蛍光部材およびその製造方法、並びに発光装置 - Google Patents

蛍光部材およびその製造方法、並びに発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高温焼成プロセス(250℃を超える高温プロセス)を必須とせずに、熱伝導性および蛍光性を兼備し、更に機械加工性の向上を図り、蛍光部材の形状や寸法の設計自由度を高められる蛍光部材およびその製造方法並びに発光装置を提供する。【解決手段】波長変換用の焼結体である蛍光部材であって、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とし、酸化マグネシウム粒子間の隙間に、キレート剤が存在し、且つ水酸化マグネシウムが充填されているマトリックスと、前記マトリックス中に分散された蛍光体粒子と、を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光部材およびその製造方法に関する。また、半導体発光素子および前記蛍光部材を備えてなる発光装置に関する。
発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)、レーザーダイオード(LD:Laser Diode)等の半導体発光素子を搭載した発光装置は、低消費電力化および高寿命化の点で優れており、照明装置、液晶表示装置用バックライト、レーザー装置の光源などに利用されている。中でも、白色LEDは蛍光灯の代替照明として広く普及されつつある。
白色LEDは、一次光源である発光ダイオードと蛍光部材とを組み合わせて白色発光させる方式が知られている。この蛍光部材として、樹脂中に蛍光体粒子を分散させてなる成形物が開発されている。しかし、樹脂は熱伝導率が小さいので、一次光源である発光ダイオードから発生する熱、および蛍光部材における励起-発光プロセスの際のエネルギー変換ロスにより発生する熱などによって高温になりやすいので、高出力のLEDやレーザー等には適用できないという問題がある。
この問題を解決する蛍光部材として、透明YAGセラミックス中に蛍光体粒子を分散させた蛍光体分散YAGセラミックスが開発されている。更に、蛍光体分散サイアロンセラミックス(特許文献1)や、無機蛍光体粒子を酸化マグネシウム中に分散させた波長変換部材(特許文献2)が提案されている。しかし、これらの方法は、耐熱性に優れるものの、製造プロセスにおいて1000℃以上の高温焼成が必要であり、蛍光体粒子が劣化しやすいという問題がある。
熱伝導性に優れ、蛍光体粒子の劣化を抑制できる蛍光部材として、本発明者らは、先般、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とするマトリックス、およびこのマトリックス中に分散された蛍光体粒子を含有する蛍光部材を提案した(特許文献3)。
なお、蛍光部材の例ではないが、セラミックスの加工方法として、摩砕処理によりセラミックス粉体表面を活性化し、これに繊維を混合し、その後、アルカリ処理によりセラミックス固化体を得る方法が提案されている(特許文献4)。また、50μm未満の少なくとも1種の無機化合物と、その無機化合物を部分的に溶解して混合物を形成することができる溶媒とを組合せ、混合物に200℃以下で、且つ溶媒の沸点を上回る温度で圧力を加えながら前記溶媒を蒸発させることにより、緻密化した焼結材料を形成する方法が開示されている(特許文献5)。また、含水非晶物質を出発原料とし、水熱ホットプレスにより加圧および加熱することにより、含水非晶物質の水分を除去して硬化させる多孔質固化体が提案されている(特許文献6)。また、後述する「課題を解決するための手段」において特定する酸化マグネシウムとキレート剤の併用例が報告されている(非特許文献1)。
国際公開第2018/38259号 特開2018-180271号公報 国際公開第2021/015261号 特開2009-203102号公報 米国公開2017/0088471号公報 国際公開第2021/015261号
L.F. Amaral et al., Ceramics International, 37, (2011) 1537-1542
上記特許文献3の蛍光部材、即ち、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とするマトリックスを用いた蛍光部材において、機械加工性の向上を図り、蛍光部材の形状や寸法の設計自由度を高めることができれば、例えば、より薄型化することも可能となり、実用化を加速して様々な用途への応用展開が期待できる。
なお、上記においては白色LED等における課題について述べたが、蛍光部材全般に対して同様の課題が生じ得る。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであって、高温焼成プロセス(250℃を超える高温プロセス)を必須とせずに、熱伝導性および蛍光性を兼備し、更に機械加工性の向上を図り、蛍光部材の形状や寸法の設計自由度を高められる蛍光部材およびその製造方法並びに発光装置を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]: 酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とし、酸化マグネシウム粒子間の隙間に、キレート剤が存在し、且つ水酸化マグネシウムが充填されているマトリックスと、
前記マトリックス中に分散された蛍光体粒子と、を含有する波長変換用の焼結体である蛍光部材。
[2]: 少なくとも前記マトリックスの原料粉体である酸化マグネシウムおよび前記蛍光体粒子の混合物の予備成形体を得、
前記予備成形体に水およびキレート剤を含浸させ、その後、加圧下で焼結することにより得られた焼結体であり、前記水を含浸させた後の前記予備成形体に対して250℃を超える高温プロセスを行わずに得られたことを特徴とする[1]に記載の蛍光部材。
[3]: 前記原料粉体から粒子径が50μm以上の粒子を除去する工程を含むことを特徴とする[2]に記載の蛍光部材。
[4]: 第一光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の出射光側に設置され、前記第一光が励起光となり第二光を発光する、[1]~[3]のいずれかに記載の蛍光部材と、を備える発光装置。
[5]: 少なくともマトリックスの原料粉体および蛍光体粒子の混合物を得、
前記混合物を予備成形して予備成形体を得、
前記予備成形体に水およびキレート剤を含浸させ、その後、加圧下で焼結により焼結体を得る工程を含み、且つ前記水を含浸させた後の前記予備成形体に対して250℃を超える高温で処理するプロセスを含まず、
前記マトリックスは、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とする、蛍光部材の製造方法。
[6]: 前記原料粉体から粒子径が50μm以上の粒子を除去する工程を含むことを特徴とする[5]に記載の蛍光部材の製造方法。
本発明によれば、高温焼成プロセス(250℃を超える高温プロセス)を必須とせずに、熱伝導性および蛍光性を兼備し、更に機械加工性の向上を図り、蛍光部材の形状や寸法の設計自由度を高められる蛍光部材およびその製造方法並びに発光装置を提供できるという優れた効果を奏する。
本実施形態に係る発光装置の一例を示す模式的断面図。 変形例に係る発光装置の一例を示す模式的断面図。 本実施例に係る蛍光部材の蛍光スペクトル。 参考例1の走査透過電子顕微鏡(STEM)像。 参考例1の酸素マッピング図。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。また、本明細書において特に言及していない本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
1.蛍光部材
本実施形態に係る蛍光部材は、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とし、酸化マグネシウム粒子間の隙間に、キレート剤が分散され、且つ水酸化マグネシウムが充填されているマトリックスと、前記マトリックス中に分散された蛍光体粒子とを含有する、波長変換用の焼結体からなる。蛍光部材の形状は、例えば、円盤状、平板状、凸レンズ状、凹レンズ状、球状、半球状、立方体状、直方体状、角柱や円柱などの柱状、角筒や円筒などの筒状が挙げられる。白色LEDに適用する場合、本実施形態の蛍光部材は、励起光源となる例えば青色LEDの出射光側に配置して用いることができる。
蛍光部材において、半導体発光素子等から発光される第一光の少なくとも一部を励起光として蛍光体粒子が吸収し、第二光を発光する。なお、本明細書における蛍光体粒子には所謂蛍光を発光する粒子の他、燐光を発光する粒子も含む。なお、第一光とは、特定の波長の光または特定の帯域の光をいい、第一光は一種類でも複数種あってもよい。複数種ある場合の一例として、青色光の第一光を発光する半導体発光素子と、紫外光の第一光を発光する半導体発光素子を有する場合が挙げられる。第二光は、第一光の少なくとも一部が蛍光体粒子の励起光となり、蛍光体粒子から発光される光をいう。第二光も一種類でも複数種あってもよい。複数種ある場合の一例として、同一の蛍光部材に複数種の発光帯域の異なる蛍光体粒子が分散されている場合がある。また、異なる蛍光部材に、それぞれ発光帯域の異なる蛍光体粒子が分散されている態様も例示できる。
白色光を得るために蛍光部材を用いる場合、例えば励起光である青色光によって赤色光を発光する蛍光体粒子と、励起光である青色光によって緑色光を発光する蛍光体粒子とを蛍光部材に含有させる。さらに、蛍光部材は、励起光である青色光のうち励起に寄与しなかった光を透過する透過性を有するものとする。これにより、蛍光部材を透過した青色光と、蛍光部材から発光した赤色光および緑色光とが混ざり合い、白色光が得られる。
また、別の例では、紫外光または紫色光を励起光とし、蛍光部材に青色光を発光する蛍光体粒子と、紫外光または紫色光の励起光によって赤色光を発光する蛍光体粒子と、紫外光または紫色光の励起光によって緑色光を発光する蛍光体粒子とを含有させる。これにより、蛍光部材から発光した青色光、赤色光および緑色光が混ざり合う。その結果、本実施形態の蛍光部材により白色光を得ることができる。この場合、励起光の一部が蛍光部材を透過する設計とする態様の他、励起光の全部が蛍光部材に吸収される設計としてもよい。
本実施形態の蛍光部材は、蛍光の発光が偏りなく均一であるとともに、励起光の全透過率を偏りなく均一とする観点から、全体にわたって蛍光体粒子が均一に存在する態様が好ましい。このようにすることにより蛍光部材を透過した励起光と、蛍光部材から発光した蛍光とが混ざり合って、蛍光部材の出射光の色味を調整することが容易となる。前記態様に代えて、蛍光体粒子の分布に濃度勾配を設けたり、領域により異なる蛍光体粒子を含む蛍光部材を用いたりしてもよい。このような蛍光部材は、製造工程時のプロセス変更により容易に得られる。種類の異なる蛍光部材を接合することも可能である。
蛍光部材の厚みの好適な例は用途により変動し得るが、例えば、100μm以上である。蛍光部材の入射面側および出射面側の少なくとも一方に光学フィルムを設けることができる。例えば、光学フィルムとして反射防止フィルムを設けることができる。
本実施形態の蛍光部材によれば、後述するように高温焼成プロセス(250℃を超える高温プロセス)を必須とせずに、蛍光部材を得ることができる。このため、蛍光体粒子の劣化や変質の問題を根本的に解決し、適用できる蛍光体粒子の種類を顕著に増やすことができる。また、蛍光体粒子の劣化を防止できる。その結果、蛍光性に優れた波長変換用の蛍光部材を提供できる。
1-1.マトリックス
本蛍光部材は、蛍光体粒子が分散されたマトリックスを有する。このマトリックスは、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とし、酸化マグネシウム粒子間の隙間に、キレート剤が存在し、且つ水酸化マグネシウムが充填されている。なお、本明細書においてマトリックスとは、前述の主成分およびキレート剤、任意に添加される添加剤も含み得る。マトリックスには、蛍光部材中の蛍光体粒子およびキレート剤を除く1質量%未満の微量成分は含まない。また、主成分とは、マトリックス中に90質量%以上含まれる成分をいう。本実施形態では、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムをマトリックスの主成分とする。酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの比率は問わない。主成分以外のマトリックス成分として、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、炭酸カルシウム(CaCO)が例示できる。また、分散剤を添加してもよい。
本実施形態に係る蛍光部材のマトリックス中の酸化マグネシウムに対する水酸化マグネシウムの質量比([水酸化マグネシウム]/[酸化マグネシウム])は用途により適宜設計可能であるが、熱伝導性を効果的に高める観点からは0.4以下とすることが好ましく、0.3以下とすることがより好ましく、0.25以下とすることが更に好ましい。酸化マグネシウムに対する水酸化マグネシウムの質量比の下限は緻密化できればよく特に限定されないが、緻密化プロセスを低温で容易に行う観点からは0.1以上とすることが好ましい。
マトリックス中の酸化マグネシウムの平均粒子径は特に限定されないが、熱伝導性の観点からは、0.1μm~10μmであることが好ましい。マトリックス中の酸化マグネシウムの平均粒子径は、ISO13383-1:2012に準拠したリニア・インターセプト法等を用いて、次のように測定することにより求められる。即ち、観察面を鏡面研磨し、プラズマエッチングして結晶粒子を明瞭にした後、走査型電子顕微鏡で結晶粒子の組織写真を得る。得られた組織写真上に直線を引き、直線と粒子界面の交点距離を測定することで粒子径とする。この粒子径の測定を繰り返し、得られた値を平均して、酸化マグネシウムの平均粒子径とする。
本マトリックスのキレート剤は、Mg2+と複座で配位結合をすることができる化合物であればよく特に限定されない。キレート剤を用いることにより、酸化マグネシウム粒子間の隙間に充填される水酸化マグネシウムの微細化および分布の均質化を図り、残留応力の低下を図ることができる。その結果、機械加工性の向上および蛍光部材の形状や寸法の設計自由度を高めることが可能となる。
キレート剤の含有量は、酸化マグネシウム粒子間の隙間の体積により適宜設計すればよい。例えば、酸化マグネシウム粒子間の隙間の全体積100%に対し、前記隙間の全体積の、キレート剤が溶解した溶液を導入することができる。このときのキレート剤の添加量は、予備成形体中の酸化マグネシウム100質量部に対して、例えば、0.01~3.0質量部添加することができる。高密度化の観点からは0.01~1.0質量部がより好ましく、0.05~0.2質量部が更に好ましい。
キレート剤の配位数は特に限定されないが、Mg2+とキレート剤が形成する錯体の安定度の観点から2配位~6配位であることが好ましく、3配位~6配位がより好ましい。
キレート剤の好適例として、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸、メチルグリシン二酢酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩;ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が例示できる。キレート剤は一種単独または二種以上を併用して用いることができる。
ところで、蛍光部材のマトリックスとして樹脂を用いた場合の熱伝導率は0.1W/(m・K)程度であり、ガラスを用いた場合の熱伝導率は1W/(m・K)程度である。これに対し、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを主成分とするマトリックスを用いた本実施形態の蛍光部材によれば、熱伝導率を大幅に改善できる。蛍光部材の製造プロセスを最適化することにより、熱伝導率を5W/(m・K)以上とすることも容易である。
本実施形態の蛍光部材の熱伝導率は、熱伝導性をより優れたものとする観点から、熱伝導率が5W/(m・K)以上であることが好ましく、より好ましくは6W/(m・K)以上であり、更に好ましくは8W/(m・K)以上である。熱伝導率の上限は限定されないが、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを主成分とするマトリックスの場合、理論的には50W/(m・K)となることから、プロセスを変更して熱伝導の経路を制御することにより、さらに高い熱伝導率が実現できる。なお、本明細書でいう熱伝導率とは、JISR1611に則って測定される蛍光部材の熱伝導率をいい、具体的には、実施例に記載した方法により測定される値をいう。
1-2.蛍光体粒子
本実施形態によれば、後述するように加温せずに室温で焼結することも可能であることから、あらゆる蛍光体粒子を用いることが可能である。蛍光体粒子を構成する蛍光体として、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体、KSF(KSiF:Mn)系蛍光体、CASN蛍光体、SCASN蛍光体、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体、セリウムで付活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG系蛍光体、ユウロピウムおよび/またはクロムで付活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO-Al-SiO)系蛍光体、ユウロピウムで付活されたシリケート((Sr,Ba)SiO)系蛍光体などが挙げられる。レーザー励起等による温度上昇に伴う発光強度の低下を抑制させる観点から、窒化物蛍光体粒子が好ましい。窒化物蛍光体粒子を構成する蛍光体としては、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体、CASN蛍光体、SCASN蛍光体等が例示できる。
蛍光体粒子は、窒素を蛍光体組成に含む窒化物蛍光体粒子が好適である。具体例として、ストロンチウムおよびケイ素を結晶相に含む窒化物蛍光体(例えば、SCASN、SrSi)、カルシウムおよびケイ素を結晶相に含む窒化物蛍光体(例えばSCASN、CASN、CASON)、ストロンチウム、ケイ素を結晶相に含む窒化物蛍光体(例えばSCASN)、バリウム、ケイ素を結晶相に含む窒化物蛍光体(例えばBSON)、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムを結晶相に含む窒化物蛍光体(例えば、SCASN、CASN、CASON)、が挙げられる。
窒化物蛍光体の別の側面からの分類としては、ランタンニトリドシリケート(例えばLSN)、アルカリ土類金属ニトリドシリケート(例えばSrSi)、アルカリ土類金属ニトリドシリケート(CASN、SCASN、(Ca,Sr)AlSi)などが挙げられる。
さらに、具体的には、例えば、
次の一般式で表すことができるβサイアロン;
Si6-zAl8-z:Eu(式中0<z<4.2)、
次の一般式で表すことができるαサイアロン;
(M1,M2,Eu)(Si12-(m+n)Alm+n)(O16-n)(式中、M1は1価の元素であり、M2はMg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く)からなる群から選ばれる1種以上の2価の元素、0≦x<2.0、0≦y<2.0、0<z≦0.5、0<x+y、0.3≦x+y+z≦2.0、0<m≦4.0、0<n≦3.0)、
次の一般式で表されるLSN;LnSi (式中、Lnは付活元素として用いる元素を除いた希土類元素から選ばれる1種以上の元素を表し、Mは付活元素から選ばれる1種以上の元素を表し、x、y、zは、各々独立に下記式を満たす値である。2.7≦x≦3.3、10≦y≦12、0<z≦1.0)
次の一般式で表されるCASN;CaAlSiN:Eu、
次の一般式で表すことができるSCASN;(Ca,Sr,Ba,Mg)AlSiN:Euおよび/又は(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、
次の一般式で表すことができるCASON;(CaAlSiN1-x(SiO):Eu(式中0<x<0.5)、
次の一般式で表すことができるCaAlSi;Euy(Sr,Ca,Ba)1-y:Al1+xSi4-x7-x(式中、0≦x<4、0≦y<0.2)、
次の一般式で表すことができるSrSi;(Sr,Ca,Ba)AlSi5-x8-x:Eu(式中0≦x≦2)、
次の一般式で表すことができるBSON;MBa(Sr,Ca,Mg,Zn)12(式中、MはCr、Mn、Fe、ランタノイド(La、Pm、Gd、Luは除く)から選ばれる付活元素を表し、LはSiを含有する周期律表第4族又は第14族に属する金属元素を表し、x、y、zは、各々独立に下記式を満たす値である。
0.03≦x≦0.9、0.9≦y≦2.95、x+y+z=3)等の蛍光体が挙げられる。
これらの蛍光体の中でも、焼結したときの輝度が低下しないという観点からは、構成元素として酸素を含まない窒化物蛍光体(不可避的に混入する酸素は含む)、即ち、LSN、CASN、SCASN、SrSi、βサイアロン、BSON等の窒化物蛍光体を用いることが好ましい。
添加する蛍光体粒子の種類は、特に限定されず、目的に応じて複数種類を添加してもよい。
蛍光部材中の蛍光体粒子の含有量は、蛍光部材の形状(厚み等)、求められる透明性(励起光の全透過率)、蛍光性(蛍光強度、発光波長)に応じて適宜調整できる。
マトリックス中の蛍光体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、励起光の透過性、良好な蛍光特性および分散性をバランスよく得る観点からは500nm~30μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。マトリックス中の蛍光体粒子の平均粒子径は、ISO13383-1:2012に準拠したリニア・インターセプト法を用いて求められる。具体的な測定方法は、酸化マグネシウムと同様である。
2.蛍光部材の製造方法
次に、本実施形態に係る蛍光部材の製造方法の一例を説明するが、本発明の蛍光部材の製造方法は以下に限定されない。
本実施形態の蛍光部材の製造方法は、少なくとも蛍光体粒子およびマトリックスの原料粉体を混合して混合物を得、この混合物を予備成形し、前記予備成形体に水、キレート剤を含浸させる。キレート剤は、水に溶解させて含浸させることができる。また、水に代えて他の溶媒に溶解させたキレート剤を含浸させることもできる。添加するキレート剤は、予備成形体の体積に対して極めて少量であることから、MgO粒子の隙間にキレート剤を均質に分散させるために、水に溶解させたキレート剤を予備成形体の含浸させる方法が好適である。なお、水を含浸させる工程に代えて、又は併用して、原料粉体および蛍光体粒子の混合物形成時に、キレート剤を添加することを排除するものではない。
その後、加圧下で焼結プロセスを経て焼結体を得る。本実施形態の製造方法によれば、250℃を超える高温プロセスを必須とせずに、優れた熱伝導性および蛍光性を兼ね備えた蛍光部材を製造することができる。
ここで本明細書において焼結とは、粉体の表面積が減っていく現象をいい、予備成形体を得て、水を含浸させた後の焼結プロセスにおいて、加圧下において、250℃以下の温度で蛍光部材を固着させる方法をいう(以下、「低温焼結」ともいう)。所謂コールドシンタリングと同義である。低温焼結を行うことにより、後述するように、予備成形体に含浸された水(液相)とキレート剤が粒子-粒子界面に導入され、粒子は適量の水で均一に膨潤される。そして、加圧条件下で、液相を介した物質拡散を促し、酸化マグネシウムの一部と水の反応による水酸化マグネシウムの生成を伴う緻密化したバルクセラミックスが得られる。
キレート剤を用いることにより、Mg2+イオンの錯体形成による核の微小化を促進することができる。また、キレート剤を用いることにより、酸化マグネシウム粒子表面にキレート化剤が吸着し、酸化マグネシウムの溶解速度を制御して、酸化マグネシウム粒子間の隙間における水酸化マグネシウムの分散性を高めることができる。これらの結果、蛍光部材を高品質化して、飛躍的な機械加工性の向上を実現でき、例えば、薄型化することが可能になり、蛍光部材の形状や寸法の設計自由度を高めることができる。
焼結温度の下限値は特に限定されないが好ましくは室温である。なお、本明細書で予備成形とは、粒状などの無定形状態から、例えば加圧による一定の形の固体形状への成形をいい、水を含浸する前の成形体をいうものとする。なお、予備成形体の形成プロセスは250℃を超える温度で行うことも可能である。また、予備成形体を得る工程においては、粒子同士は互いに点接触し、表面積は大きくは変化しないことから、本明細書で「焼結」とは、水を含浸させた後のプロセスをいうものとし、予備成形体の形成プロセスは含まない。以下、詳細に説明する。
まず、原料粉体および蛍光体粒子を秤量して混合する。原料粉体の酸化マグネシウムの比表面積Sと密度ρから6/(S・ρ)として計算した平均粒子径は、20~1000nmであることが好ましく、30~800nmであることがより好ましく、40~700nmであることが更に好ましい。なお、比表面積は、ISO9277に則って測定した。原料粉体の酸化マグネシウムの平均粒子径が20~1000nmの範囲にあることにより、良好な熱伝導性および機械的特性の両立を図ることができる。マトリックスの原料粉体は、緻密性をより効果的に促進させるために、平均粒子径が異なる複数の酸化マグネシウムを用いてもよい。例えば、第一粒子同士に形成された隙間を充填する、相対的にサイズの小さい第二粒子を用いることにより緻密性を高められる場合がある。
原料として用いる蛍光体粒子の平均粒子径は本発明の目的を逸脱しない範囲で特に限定されないが、透光性、分散性および蛍光性をバランスよく兼ね備える観点からは、500nm~30μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。なお、本実施形態の蛍光体粒子の原料粉体の平均粒子径は、比表面積と密度より計算して求められる。
マトリックスを形成する原料粉体と蛍光体粒子の配合比は特に限定されず、目的とする蛍光部材の透明性と蛍光性に応じて適宜調整される。マトリックスを形成する原料粉体を100vol%としたときの蛍光体粒子の含有量は、例えば0.1~30vol%であり、緻密性の観点からは0.5~20vol%であることが好ましく、1~15vol%であることがより好ましい。励起光の蛍光部材の全透過率は、光路方向において例えば10%以上とすることが好ましい。
マトリックスの原料粉体および蛍光体粒子は、それぞれ独立に、混合前に粉砕処理または/および解砕処理を行ってもよい。本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、原料粉体から50μm以上の粒子(例えば、粗大粒子、凝集粒子)を除外することにより、蛍光部材の緻密化を促進できることが明らかとなった。
マトリックスの原料粉体および蛍光体粒子の少なくとも一種を所定のモル比となるように秤量する。蛍光部材のマトリックスの形成の妨げとならない範囲において、添加剤を加えてもよい。添加剤としては例えば塩化マグネシウム、塩酸、酢酸、アンモニアなどが挙げられる。原料粉体として酸化マグネシウムを少なくとも用い、酸化マグネシウムおよび蛍光体粒子を含む予備成形体に水を含浸させた後に低温焼結することにより、酸化マグネシウムと水との反応により水酸化マグネシウムが得られる。
混合物を得る方法は特に限定されず、例えば乾式または/および湿式工程を経て得られる。乾式の場合、例えば、原料を乳鉢に入れ混合する方法がある。このとき分散剤を添加してもよい。混合物の粉体のサイズを均質化する観点から、目開きの大きさが異なる2つ以上のふるいを段階的に用い、所定の粒径を有する混合物としてもよい。
予備成形体は、混合物を得た後、若しくは混合物を得る工程と同時に形成できる。湿式により混合する場合には、ボールミル等により溶剤(エタノール等)を用いて混合してスラリーを調製し、その後、溶剤を留去することにより混合物を得ると同時に予備成形体を得ることもできる。この場合、更に、圧力等により予備成形を行うこともできる。予備成形法は、既存の方法を制限無く利用できる。例えば、混合物を金型に充填し、加圧により予備成形体が得られる。加圧は、等方的であっても異方的(例えば一軸方向)であってもよい。また、加温してもよい。蛍光体粒子の劣化を防止する観点から、加温する場合には250℃以下とすることが好ましく、装置の簡便性の観点からは、室温で冷間静水圧加圧等により実施することがより好ましい。高品質の蛍光部材を得る観点からは、予備成形体の段階で内部構造の均質化を達成するように加圧することが好ましい。内部構造の均質化のためには、原料粉体の凝集体解砕や予備成形体のプロセス条件(加圧条件等)が重要となる。
予備成形の一例を挙げると、圧力50MPaで30秒間、一軸加圧成形を行ってプレ成形体を得、プレ成形体の面取りを行った後に真空パックに袋詰めを行い、圧力200MPaで、1分間、1回または複数回、冷間静水圧加圧(Cold Isostatic Pressing、CIP)成形することにより予備成形体を得る方法が例示できる。予備成形の最大圧力は、予備成形体の内部構造の均質化を達成する観点から、5~1000MPaとすることが好ましく、200~1000MPaとすることがより好ましく、500~1000MPaとすることが更に好ましい。
続いて、予備成形体に水およびキレート剤を含浸させる。キレート剤は、水または水以外の溶媒に溶解させて含浸させる。水には、キレート剤以外にも本発明の目的を損なわない範囲で添加剤が含まれていてもよく、中性の他、酸性またはアルカリ性を示していてもよい。水の添加は大気圧化で行うことができるが、真空または減圧下で行ってもよい。真空または減圧下で行うことにより、水を均質に短時間で行き渡らせることができる。予備成形体の厚みがある場合に特に有効である。
水の添加量は予備成形体の隙間を埋める分量があればよく、予備成形体の相対密度により最適値が変わり得る。物質移動の促進は、次のステップの低温焼結のプロセス温度によっても促すことができるので、プロセス温度によっても水の添加量の最適値は変わり得る。水は蛍光部材の緻密化を達成するために必要な量を上限とすればよい。例えば、予備成形体中の酸化マグネシウムを100質量部としたときに、水の添加量は例えば1~20質量部とすることができる。
キレート剤の添加量は、酸化マグネシウムの粒子径や予備成形体の相対密度により最適値が変わり得る。物質移動の促進は、キレート剤の種類によっても変わり、最適値は変わり得る。また次のステップの低温焼結のプロセス温度によっても促すことができるので、プロセス温度によってもキレート剤の添加量の最適値は変わり得る。蛍光部材の緻密化を達成するために必要な量を上限とすればよい。予備成形体中の酸化マグネシウムを100質量部としたときに、キレート剤の添加量は例えば0.01~3.0質量部とすることができる。高密度化の観点からは0.01~1.0質量部がより好ましく、0.05~0.2質量部が更に好ましい。
予備成形体に水およびキレート剤を含浸させた後、加圧下で低温焼結を行って焼結体を得る。水の含浸により予備成形体中の酸化マグネシウムのマグネシウムイオンが溶解する。溶解したマグネシウムイオンは、キレート剤により錯体が形成される。その結果、水中におけるマグネシウムイオンの濃度分布が局所的に高くならずに均質化し、水酸化マグネシウムの生成核が微小化する。また、酸化マグネシウム粒子表面にキレート剤が吸着し、酸化マグネシウムからマグネシウムイオンが溶解する速度を、キレート剤によって制御することが可能となる。
低温焼結に伴う加圧下で液相を介して、錯体形成されたマグネシウムイオンの物質移動を促し、水酸化マグネシウムもしくは酸化マグネシウムとして析出される。その結果、蛍光部材の緻密化を達成できる。このため、液相を介して物質移動を促すのに充分な圧力が必要である。最大圧力は緻密化を充分に行う観点から、200~1500MPaとすることが好ましく、300~1200MPaとすることがより好ましく、500~1000MPaとすることが更に好ましい。200~1500MPaとすることにより、高温焼成なしにマトリックス部を構成する粒子の液相への溶解析出の促進と、塑性変形とに起因する高密度化を促進できる。圧力を加える手段としては、公知の方法を適用できる。静水圧による加圧は、等方的に加圧できることから特に好適である。加圧時間は、緻密化に寄与する化学反応のメカニズムや圧力によって異なるが、1~60minが好ましい。
室温で行う場合、予備成形体に水を含浸させた後に真空パックに袋詰めを行い、冷間静水圧加圧装置を用いて、例えば、圧力1000MPaで60分間、1回または複数回、CIP成形することにより焼結体を得る方法が例示できる。また、加温する場合には、WIP加温等方圧加圧加工(Warm Isostatic Pressing、WIP)装置を用いて成形することができる。
熱伝導性の観点からは、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの比率は、前者が多い方が好ましく、蛍光部材の緻密化の観点からは水を多く添加して酸化マグネシウムと水の反応により水酸化マグネシウムを生成することが好ましい。蛍光部材の緻密化は加温により促すことができるので、250℃以下の温度で高温プロセスを行って緻密化を促進させてもよい。省エネルギー化および装置の簡便性の観点からは、室温で低温焼結を行うことが望ましい。
なお、上記製造方法は一例であって、種々の製造方法により本実施形態の蛍光部材を製造できる。例えば、蛍光体粒子、少なくとも酸化マグネシウムを含む原料粉体および氷の粒の混合物を得、これを氷点下で予備成形後に上記低温焼結を行うことにより、または予備成形を行わずに上記低温焼結を行うことにより、蛍光部材を得てもよい。また、凍結乾燥法と低温焼結を組み合わせて蛍光部材を得ることもできる。具体的には、蛍光体粒子、少なくとも酸化マグネシウムを含む原料粉体、および水と水より昇華点が低い溶剤(メタノール等)の混合物を得、これを凍結乾燥法により、スプレーで噴霧して液滴を形成し、水を残しつつ溶剤を除去した造粒体を得、これを上記低温焼結することにより蛍光部材を得る方法が例示できる。
蛍光部材の相対密度は発光効率を効果的に高める観点からは85%以上とすることが好ましい。ここで、相対密度とは、JIS Z 2501:2000に準拠のアルキメデス法に則って測定される蛍光部材の密度を、マトリックス成分(蛍光体粒子を含まない)の原料粉体の真密度で割ることにより得られる値(質量比)を指すものとする。蛍光部材の相対密度のより好ましい範囲は88%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
本実施形態によれば、液相を介して固体中の物質移動を促す固液反応の促進によって高温焼成なしに高度に緻密化した、蛍光体粒子含有の蛍光部材を提供できる。緻密化により、気孔を低減させ、透光性に優れた蛍光部材を提供できる。しかも、酸化マグネシウムをマトリックス成分として用いることにより高熱伝導性を実現できる。更に、250℃を超える高温焼成を必須としないので、多様な蛍光体粒子を用いることが可能となる。その結果、高温焼成による蛍光体粒子の劣化や変質、マトリックス部との不本意な反応といった従来の課題を根本的に解決し、より自由度の高い材料設計が可能となる。その結果、高品質な蛍光部材を提供することができる。そして、高熱伝導性と蛍光性を兼備した蛍光部材を提供できる。本実施形態の蛍光部材は、高出力LED等のみならず、様々な部材への応用展開が期待できる。
3.発光装置
本実施形態の発光装置は、第一光を発光する半導体発光素子と、この半導体発光素子の出射光側に設置され、第一光が励起光となり第二光を発光する本実施形態の蛍光部材を具備する。発光装置において、半導体発光素子および蛍光部材は、それぞれ独立に少なくとも一つ又は複数含まれている。
図1に、本実施形態に係る発光装置の一例である白色LEDの模式図を示す。白色LED10は、基板1上に一次光源として青色LED2が設けられ、この青色LED2の出射光路の少なくとも一部に蛍光部材5が設置されている。青色LED2の形状に応じて蛍光部材5を任意の形状に形成すればよい。青色LED2の出射光の一部は、蛍光部材5のマトリックス3に分散せしめられた蛍光体粒子4、例えば黄色蛍光体粒子を励起し、黄色の光を発光する。また、青色LED2のうち、蛍光部材中の蛍光体粒子の励起に寄与しなかった光は蛍光部材5を透過して、青色光として白色LED10から出射される。複数の出射光が混ざり合って、白色LED10から白色光が作り出される。
なお、図1の例は一例であり、青色LEDに代えて、又は併用して赤色LEDまたは/および緑色LEDを用い、白色光の色味の品質を高めるために蛍光部材を用いてもよい。また、黄色蛍光体粒子は一例であり、黄色蛍光体粒子に代えて、又は併用して赤色蛍光体粒子または/および緑色蛍光体粒子を用いることができる。無論、その他の色の蛍光体粒子を用いてもよい。更に、LEDに代えてレーザーダイオード等の半導体発光素子を用いてもよいことは言うまでもない。
白色LED10の場合には、青色LED2の青色光が蛍光部材5を透過する光量、蛍光部材5の蛍光体粒子が青色光を吸収して別の波長の光(緑色光、赤色光等)を発光する光量を最適化するために、蛍光部材5の厚みおよび蛍光部材5中の蛍光体粒子の濃度を適宜設計する。青色LEDからの励起光は、例えば、波長300nm~500nmの光(紫外領域の光から青色領域の光)である。
図1の白色LED10の蛍光部材5に代えて、図2に示すように、第一蛍光部材21と第二蛍光部材22からなる蛍光部材20を用いてなる白色LED10aを用いてもよい。第一蛍光部材21は、第一マトリックス11中に、青色LED2からの第一光を吸収して発光する第一蛍光体粒子12が含有されている。一方、第二蛍光部材22は、第二マトリックス13中に第一蛍光部材21から発光された光を吸収して、更に長波長光を発光する第二蛍光体粒子14が含有されている。第一蛍光部材21と第二蛍光部材22が接合された蛍光部材20を用いることにより、蛍光部材20の発光光の一部を第二の励起光として、更に長波長の光を出射させることができる。このような構成により、白色の色味を調整することも可能である。
≪実施例≫
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(a)相対密度
相対密度は、JIS Z 2501:2000に準拠のアルキメデス法に則って測定される蛍光部材の密度を、マトリックス成分(蛍光体粒子を含まない)の原料粉体の真密度で割ることにより得た。
(b)内部量子効率
量子効率は、量子効率測定システムQE-2000(大塚電子社製)を用いて、反射モードにて、励起波長455nmに対する量子効率を求めた。
(c)熱伝導率
熱伝導率は、レーザフラッシュ法熱定数測定装置 TC-9000(アドバンス理工社製)を用いて、JIS R 1611に則って各サンプルの熱伝導率を求めた。
(d)発光スペクトル
測定は、量子効率測定システムQE-2000(大塚電子社製)を用い、反射モードで、455nm励起光とし、500nm~800nmの発光スペクトルの測定を行った。
(e)走査透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(STEM-EDX)
蛍光部材の断面の構造観察のため、低温焼結後のバルク状試料を小片状に切り出して、イオンミリング装置(Gatan社製 Model 691 PIPS)で薄片化することにより測定試料を作製した。そして、EDX付き走査透過電子顕微鏡(多機能分析透過電子顕微鏡 JEOL製 JEM-F200)を用いて断面の電子顕微鏡観察を行い、酸素マッピング処理を行った。
以下、蛍光部材の実施例および比較例の一例を示す。
(実施例1)
原料粉として市販の酸化マグネシウム粉体(宇部マテリアルズ社製、2000A)を用意した。原料粉体に含まれる凝集粒子や粗大粒子を除去するために、目開き250μm,100μm,75μm,50μmのナイロン製の篩で、この順に通篩を行った。次いで、MgO粉体90vol%,蛍光体粒子10vol%となるように、赤色蛍光体CASN(サイアロン社製)を添加し,自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)で混合した。
そして、混合粉体1gを直径15mmの円筒形状のステンレス製金型に充填し、室温下、一軸加圧成形機(商品名:Hydraulic Shop Press,Woodward Fab社製)で50MPa、30secの条件で仮成形体を作製した。次いで、真空パックに封入して冷間静水圧加圧装置(商品名:Dr.CHEF、神戸製鋼所社製)により、1000MPa、常温、保持時間1minの条件で予備CIP処理を行い、プレ成形体を得た。そして、得られたプレ成形体に、MgO粉体100質量部に対して、0.5MのEDTA水溶液(ナカライテスク社製,0.5mol/L,pH8.0)を1質量部、水5質量部(合計6質量部)添加し、アスピレーターで減圧してプレ成形体にキレート剤を含む水溶液を含浸させた。
その後、真空パックに封入して、室温下で、前述の冷間静水圧加圧装置により、1000MPa、保持時間60minの条件で静水圧を印加し、低温焼結を行うことにより円柱状の焼結体を得た。
(実施例2)
蛍光体粒子として、赤色蛍光体CASN(RE-650YMDB、デンカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2に係る焼結体を得た。
(実施例3)
キレート剤として、NTA(ニトリロ三酢酸ナトリウム一水和物、富士フィルム和光純薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3に係る焼結体を得た。
(実施例4)
キレート剤として、IDA(イミノ二酢酸二ナトリウム一水和物、富士フィルム和光純薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4に係る焼結体を得た。
(比較例1)
キレート剤を用いない以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1に係る焼結体を得た。
(比較例2)
原料粉体に含まれる凝集体や粗大粒子を除去するプロセスを行わない以外は、比較例1と同様の原料・工程により、比較例2に係る焼結体を得た。
(参考例1)
原料のMgO粉体として、DISPERMAG(登録商標)TN-1(平均粒子径0.57μm、タテホ化学工業株式会社製)、およびPUREMAG(登録商標)FNM-G(平均粒子径0.54μm、タテホ化学工業株式会社製)を質量比が7:3になるように秤量し、ミキサー混合することによりマトリックス粉体の混合物を得た。そして、この混合物に、更に蛍光体粒子として赤色蛍光体(株式会社サイアロン、CASN)を添加した。原料粉体と蛍光体粒子の体積比が9:1になるように乳鉢で充分に混合し、蛍光体粒子含有混合物を得た。この蛍光体粒子含有混合物1gを、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型に充填し、50MPaで30secの条件で一軸加圧成形機(商品名:Hydraulic Shop Press、Woodward Fab製)により一次成形することによりプレ成形体を得た。
次いで、室温下、1000MPaで1minの条件で静水圧を印加し、予備成形体を得た。予備成形体の相対密度は65%であった。予備成形体に減圧下(-0.05MPa)で水を10質量%含浸させた。その後、室温下、冷間静水圧加圧装置(商品名:Dr.CHEF、株式会社神戸製鋼所製)を用いて、1000MPaで60minの条件で静水圧を印加し、低温焼結を行うことにより円柱状の焼結体を得た。蛍光部材の相対密度は88%であった。
図3に、実施例1の蛍光部材の蛍光スペクトルを示す。同図には、CASN蛍光体粒子のスペクトルも合わせて示す。同図より、キレート剤を添加し、焼結した蛍光部材においても蛍光特性が変わらないことを確認した。
図4に参考例1のTEM像を、図5に参考例1の酸素マッピングの結果を示す。図4において、MgO粒子間の粒界には空隙が存在し、空隙中には針状や板状の粒子が多く見られた。また、図5のEDX面分析からは、これらの粒界相はMgO粒子よりも酸素の比率が高いことがわかる。これらの図より、MgO粒子間の隙間にMg(OH)が充填されていることが確認された。図3~5の結果および表1等の結果より、蛍光部材のマトリックスは、酸化マグネシウム粒子間の隙間に、キレート剤が分散され、且つ水酸化マグネシウムが充填されていることがわかる。
<加工性1>
各実施例・比較例の焼結体に対し、光学顕微鏡を用いた内部構造観察を行った。評価基準は以下の通りとした。なお、光学顕微鏡による限界解像度は0.2μmである(以下同様)。
○:内部構造観察にて内部に亀裂が確認されない。
×:内部構造観察にて内部に亀裂が確認される。
<加工性2>
各実施例・比較例の焼結体に対し、機械加工によるドライ研磨処理を行い、加工性を評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:ドライ研磨処理で厚さ0.1mmまでの加工ができ、加工後の試料の外観や内部構造観察で亀裂および欠けが確認されない。
×:ドライ研磨処理で厚さ0.1mmまでの加工を行ったときに、加工中に試料が破壊される。或いは、加工後の試料の外観や内部構造観察において、亀裂および欠けのいずれかが確認される。
各実施例の相対密度(焼結後)、密度、量子効率、熱伝導率、加工性の結果を表1に示す。なお、表1において、予備成形体中の酸化マグネシウム100質量部に対するキレート剤の添加量を示す。また、表1中のブランクは未実施を示す。
Figure 2023026191000002
本発明に係る蛍光部材は、白色LED、高出力LED等の発光装置の部材としての利用の他、高熱伝導性、蛍光性および機械加工性を兼ね備えることから、蛍光表示管(VFD)、PDP等のディスプレイをはじめとする部材と組み合わせて種々の用途に応用展開することができる。また、波長変換用の蛍光部材以外の用途、例えば、応力発光素子、電子線照射発光素子、熱ルミネッセンス発光素子等に適用することも可能である。
1 基板
2 青色LED
3 マトリックス
4 蛍光体粒子
5 蛍光部材
10 白色LED
11 第一マトリックス
12 第一蛍光体粒子
13 第二マトリックス
14 第二蛍光体粒子
21 第一蛍光部材
22 第二蛍光部材

Claims (6)

  1. 酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とし、酸化マグネシウム粒子間の隙間に、キレート剤が存在し、且つ水酸化マグネシウムが充填されているマトリックスと、
    前記マトリックス中に分散された蛍光体粒子と、を含有する波長変換用の焼結体である蛍光部材。
  2. 少なくとも前記マトリックスの原料粉体である酸化マグネシウム、および前記蛍光体粒子の混合物の予備成形体を得、
    前記予備成形体に水およびキレート剤を含浸させ、その後、加圧下で焼結することにより得られた焼結体であり、前記水を含浸させた後の前記予備成形体に対して250℃を超える高温プロセスを行わずに得られたことを特徴とする請求項1に記載の蛍光部材。
  3. 前記原料粉体から粒子径が50μm以上の粒子を除去する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の蛍光部材。
  4. 第一光を発光する半導体発光素子と、
    前記半導体発光素子の出射光側に設置され、前記第一光が励起光となり第二光を発光する、請求項1~3のいずれかに記載の蛍光部材と、を備える発光装置。
  5. 少なくともマトリックスの原料粉体および蛍光体粒子の混合物を得、
    前記混合物を予備成形して予備成形体を得、
    前記予備成形体に水およびキレート剤を含浸させ、その後、加圧下で焼結により焼結体を得る工程を含み、且つ前記水を含浸させた後の前記予備成形体に対して250℃を超える高温で処理するプロセスを含まず、
    前記マトリックスは、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを主成分とする、蛍光部材の製造方法。
  6. 前記原料粉体から粒子径が50μm以上の粒子を除去する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の蛍光部材の製造方法。
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