JP2023026045A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐電圧特性と良好な周波数特性を両立する固体電解コンデンサの製造方法を提供する。【解決手段】固体電解コンデンサの製造方法には、コーティング層形成工程、電圧印加工程及び導電性高分子形成工程を含む。コーティング層形成工程では、陽極箔を導電性高分子でコーティングする。電圧印加工程は、コーティング層形成工程よりも後工程であり、導電性高分子がコーティングされた陽極箔に対して電圧を印加する。導電性高分子層形成工程は、電圧印加工程よりも後工程であり、導電性高分子層を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解コンデンサの製造方法に関する。
アルミニウムのような弁作用金属を利用した電解コンデンサは、陽極電極としての弁作用金属をエッチングして陽極電極の表面積を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができる。特に、誘電体酸化皮膜を固体電解質で覆った固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であり、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせない。
固体電解質としては、二酸化マンガンや7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られている。近年は、反応速度が緩やかで、また誘電体酸化皮膜との密着性に優れたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等の、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された導電性高分子が固体電解質として急速に普及している。導電性高分子には、化学酸化重合又は電解酸化重合の際に低分子アニオンやポリアニオン等をドーパントとして用いることで、導電性を発現する外部ドーパントを用いた導電性高分子、または、モノマー分子内にドーパントとして作用する部分構造を有することで、導電性の発現と溶媒への溶解性を付与した自己ドープ型導電性高分子が挙げられる。
但し、固体電解コンデンサは、コンデンサ素子に電解液を含浸させ、導電性高分子層を有さない液体型の電解コンデンサと比べて、誘電体酸化皮膜の欠陥部の修復作用に乏しく、漏れ電流が増大する虞がある。そこで、一対の電極箔を対向させたコンデンサ素子に導電性高分子層を形成すると共に、コンデンサ素子の空隙に電解液を含浸させた所謂ハイブリッドタイプの固体電解コンデンサも注目されている。
ここで、中高圧用途の陽極箔に誘電体酸化皮膜を形成する際、化成処理の前に沸騰純水中にアルミニウム箔を浸漬する水和処理を行うことで疑似ベーマイト皮膜層を形成することがある。疑似ベーマイト皮膜層を形成した上で化成処理を行うと、疑似ベーマイト皮膜層が結晶性の高いγ-アルミナにより成る誘電体酸化皮膜層に変質していく。結晶性の高い誘電体酸化皮膜は、厚みに比して耐電圧が高く、高耐電圧及び高静電容量の固体電解コンデンサを成立させ得る。
特開2019-161158号
誘電体酸化皮膜層は、疑似ベーマイト皮膜層と弁作用金属の境界から疑似ベーマイト皮膜層と弁作用金属の両面に向けて成長していき、この成長に連れて疑似ベーマイト皮膜層は薄くなっていく。しかしながら、疑似ベーマイト皮膜層の全てが誘電体酸化皮膜層に置き換わることは稀である。そのため、陽極箔の構造は、誘電体酸化皮膜層の上に疑似ベーマイト皮膜層が残る構造となる。
疑似ベーマイト皮膜層は内部が緻密である。そのため、疑似ベーマイト皮膜層に阻まれて導電性高分子が浸透し難く、誘電体酸化皮膜層に対する導電性高分子の密着性が低下する。誘電体酸化皮膜層に対する導電性高分子の密着性の低下は、真の陰極となっている導電性高分子層と誘電体酸化皮膜層との間の導電パスを減少させ、周波数特性を悪化させてしまう。尚、ここでいう周波数特性とは各周波数領域における静電容量及び等価直列抵抗(ESR)をいう。汎用性のある固体電解コンデンサは、低周波数領域から中高周波領域まで良好な静電容量と等価直列抵抗を要求される。
疑似ベーマイト皮膜層を除去する工程を挿入することも考え得る。疑似ベーマイト皮膜層を除去すれば、誘電体酸化皮膜層に導電性高分子が取り付き易くなり、誘電体酸化皮膜と導電性高分子の密着性が向上する。しかしながら、疑似ベーマイト皮膜層の存在によって固体電解コンデンサの耐電圧が向上するメリットもあり、疑似ベーマイト皮膜層が除去されてしまうと、中高圧用途に耐え得る耐電圧特性を失ってしまう。
誘電体酸化皮膜層を非晶質のアルミナとしたい場合もあり、この場合には陽極箔の厚み方向に沿って細孔を有するポーラス皮膜層を形成してから、この細孔を埋めるように非晶質のアルミナに変質させていく。このポーラス皮膜層も内部が緻密であり、誘電体酸化皮膜層の表層側にポーラス皮膜層が残った陽極箔についても、疑似ベーマイト皮膜層と同様に、固体電解コンデンサに良好な耐電圧特性をもたらすが、周波数特性を悪化させてしまう。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、高い耐電圧特性と良好な周波数特性を両立する固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子層を介在させた電解コンデンサの製造方法であって、前記陽極箔を導電性高分子でコーティングするコーティング層形成工程と、前記コーティング層形成工程よりも後工程であり、前記導電性高分子がコーティングされた前記陽極箔に対して電圧を印加する電圧印加工程と、前記電圧印加工程よりも後工程であり、前記導電性高分子層を形成する導電性高分子層形成工程と、を含むこと、を特徴とする。
前記陽極箔を形成する陽極箔製造工程を更に含み、前記陽極箔製造工程では、弁作用金属箔上に誘電体酸化皮膜層が位置し、当該誘電体酸化皮膜層上に疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層が位置する前記陽極箔を形成するようにしてもよい。
前記陽極箔と前記陰極箔とを巻回する素子巻回工程を含み、前記コーティング層形成工程は、前記素子巻回工程の後に行われ、前記コーティング層形成工程と前記電圧印加工程とが連続するようにしてもよい。
前記陽極箔と前記陰極箔とを巻回する素子巻回工程を含み、前記コーティング層形成工程は、前記陽極箔製造工程の後、前記素子巻回工程の前に介在し、前記電圧印加工程と前記導電性高分子層形成工程は、前記素子巻回工程の後に行われるようにしてもよい。
前記陽極箔と前記陰極箔とを巻回する素子巻回工程を含み、前記コーティング工程及び前記電圧印加工程は、前記陽極箔製造工程の後、前記素子巻回工程の前に介在し、前記導電性高分子層形成工程は、前記素子巻回工程の後に行われるようにしてもよい。
前記陽極箔を拡面化する拡面化工程を含み、前記拡面化工程では、前記陽極箔に箔厚み方向に延びるトンネル状のエッチングピットを形成するようにしてもよい。
前記陽極箔と前記陰極箔との間に前記導電性高分子層を介在させた後、電解液を含浸させる電解液含浸工程を更に含むようにしてもよい。
電解液を含浸させず、前記陽極箔と前記陰極箔との間には電解質として前記導電性高分子層のみを介在させるようにしてもよい。
本発明によれば、固体電解コンデンサの高い耐電圧と良好な周波数特性が両立する。
固体電解コンデンサの第1の製造方法を全体的に示すフローチャートである。 固体電解コンデンサの第2の製造方法を全体的に示すフローチャートである。 固体電解コンデンサの第3の製造方法を全体的に示すフローチャートである。 実施例1と比較例1における周波数と静電容量の関係を示すグラフである。 実施例1と比較例4における周波数と静電容量の関係を示すグラフである。 実施例1と比較例1における周波数とESRの関係を示すグラフである。 実施例1と比較例4における周波数とESRの関係を示すグラフである。 実施例1、比較例1及び比較例4における耐電圧を示すグラフであり、(a)が実施例1を示し、(b)が比較例1を示し、(c)が比較例4を示す。 実施例2と比較例5における周波数と静電容量の関係を示すグラフである。 実施例2と比較例5における周波数とESRの関係を示すグラフである。 実施例2及び比較例5における耐電圧を示すグラフである。
(固体電解コンデンサ)
固体電解コンデンサは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。この固体電解コンデンサは、例えば巻回型又は積層型の形状を有する。本実施形態では、巻回型を例示して説明するが、本発明の固体電解コンデンサはこれに限定されるものではなく、またその他説明する実施形態にも限定されるものではない。
巻回型の固体電解コンデンサは、一対の電極箔が巻回された円筒形状のコンデンサ素子を有する。コンデンサ素子は、一対の電極箔として陽極箔及び陰極箔、セパレータ並びに導電性高分子層を備えている。陽極箔の表面には誘電体酸化皮膜が形成されている。この陽極箔及び陰極箔は、セパレータを介して巻回される。導電性高分子層は、導電性高分子を含み、陽極箔と陰極箔との間に形成され、少なくとも陽極箔表面の誘電体酸化皮膜層の一部を覆うように形成されている。この導電性高分子層が固体電解コンデンサの真の陰極となっている。電解質として導電性高分子を用いた導電性高分子層の他、電解液が併用されていてもよく、電解液は、導電性高分子層が形成されたコンデンサ素子の空隙部に充填される。
(製造方法)
この固体電解コンデンサは、陽極箔を製造する陽極箔製造工程、陰極箔を製造する陰極箔製造工程、陽極箔と陰極箔とセパレータを巻回する素子巻回工程、コーティング層を形成するコーティング層形成工程、導電性高分子がコーティングされた陽極箔に対して電圧を印加する電圧印加工程、導電性高分子層を形成する導電性高分子層形成工程、電解液を含浸させる電解液含浸工程、及びコンデンサ素子を外装ケースに封止する最終製造工程を経て製造される。これら各工程の順番は、可能な限り自由に組み替えができ、また並行処理が可能である。また、一つの工程は、複数の細工程を含み、そのうちの一部の細工程は、他の工程中に行われ、あるいは他の工程の一つの細工程と次の細工程との間に組み込まれていてもよい。
(陽極箔製造工程)
陽極箔は弁作用金属を材料とする長尺の箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、酸化ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。純度は、陽極箔に関して99.9%以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
この陽極箔は、弁作用金属を延伸した箔に対する拡面化工程を経る。拡面化工程では、箔の表面を多孔質化して比表面積を拡大する。この拡面化工程では、延伸した箔を芯部として表面に弁作用金属の紛体を蒸着若しくは焼結し、又はエッチング処理を施す。エッチング処理では、延伸した箔に中高圧用途として、箔表面から厚み方向に掘り込まれるトンネル状のピットを多数形成する。このエッチング処理では、典型的には、塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で直流電流を流してピットを形成し、硝酸等の酸性水溶液中で直流電流を流してピットを拡径する。
陽極箔は、拡面化工程を経た後、疑似ベーマイト皮膜層やポーラス皮膜層などを形成する化成前処理工程、及び誘電体酸化皮膜層を形成する化成処理工程を経る。誘電体酸化皮膜層は、拡面化した陽極箔の表層に形成される皮膜であり、陽極箔がアルミニウム製であれば、拡面化工程を経て多孔質化された領域を酸化させた酸化アルミニウムの層である。誘電体酸化皮膜層よりも箔表層には、疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層が存在する。
疑似ベーマイト皮膜層は、弁作用金属の水和酸化物を含み、弁作用金属がアルミニウムであれば、Al・xHOである。この疑似ベーマイト皮膜層は、内部が緻密であり、固体電解質の導電性高分子の陽極箔への含浸性を悪化させるが、一方で抵抗層として機能して固体電解コンデンサの耐電圧を向上させる。疑似ベーマイト皮膜層が存在する場合、誘電体酸化皮膜層は、結晶性酸化物であるγ-アルミナを含む。
誘電体酸化皮膜層よりも表層に疑似ベーマイト皮膜層が存在する構造は、化成前処理工程と化成工程とを、この順序で経ることによって形成される。化成前工程では、陽極箔の表面に疑似ベーマイト皮膜層を形成する。化成工程では、未酸化の弁作用金属との境界面から疑似ベーマイト皮膜層と弁作用金属の両面に向けて成長し、疑似ベーマイト皮膜層を誘電体酸化皮膜層に変質させていく。
この化成前処理工程で疑似ベーマイト皮膜層を形成する場合、拡面化した陽極箔を80℃以上又は沸騰した純水に浸漬する。浸漬時間は、疑似ベーマイト皮膜層の目的の厚みに応じ、耐電圧と静電容量とのバランスにより決すればよい。化成工程では、ハロゲンイオン不在の化成液中で陽極箔に電圧印加する。化成液としては、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができる。印加電圧は、目的の耐電圧に応じればよい。
ポーラス皮膜層は、箔表面から厚み方向へ延びた円柱状の細孔が形成された酸化皮膜の層であり、このポーラス皮膜層も、内部が緻密であり、固体電解質の導電性高分子の陽極箔への含浸性を悪化させるが、一方で抵抗層として機能して固体電解コンデンサの耐電圧を向上させる。ポーラス皮膜層が存在する場合、誘電体酸化皮膜層は、非晶質のアルミナを含む。尚、疑似ベーマイト皮膜層もポーラス皮膜層も誘電体酸化皮膜層より低抵抗の層である。
誘電体酸化皮膜層よりも表層に疑似ベーマイト層の代わりにポーラス皮膜層が存在する構造は、ポーラス化成工程を経ることによって形成される。ポーラス化成工程では、シュウ酸、リン酸、クロム酸及び硫酸等の酸溶液中で陽極箔に電圧印加する。このポーラス化成工程では、無数の微細な細孔が生成されたポーラス皮膜層が出現して成長していく。その後、化成工程により、弁作用金属の表面からポーラス皮膜層と弁作用金属の両面に向けて成長して細孔が埋まっていき、誘電体酸化皮膜層が弁作用金属の表面に印加電圧に応じた厚みで形成される。
(陰極箔製造工程)
陰極箔についても弁作用金属を材料とする長尺の箔体であり、純度は99%以上が望ましい。この陰極箔は、弁作用金属を延伸して箔状にした後、必要に応じて拡面化工程に移してもよい。また、拡面化工程の後、陰極箔には薄い酸化皮膜の層を意図的に形成してもよい。この酸化皮膜の層は、γ-アルミナの層の上に疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層を備えていてもよい。即ち、陰極箔製造工程においても、化成前処理工程と化成工程、又はポーラス皮膜層も形成される化成工程が組み込まれてもよい。
(素子巻回工程)
陽極箔製造工程と陰極箔製造工程とを経て作製された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介在させて巻回し、円筒状の巻回体を作製する。セパレータは、その一端が陽極箔と陰極箔の一端よりも飛び出すように重ね合わせておき、飛び出したセパレータを先に巻き始めて巻芯部を作製し、続けてその巻芯部を巻軸にすることで巻回していく。尚、巻回前には、陽極箔と陰極箔に対して、例えばアルミニウム製の引出端子をステッチ、コールドウェルド、超音波溶接又はレーザー溶接などにより接続しておく。
セパレータは、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等があげられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
セパレータは、陽極箔と陰極箔のショート防止のために、陽極箔と陰極箔を隔て、また陰極箔と陽極箔との間の導電性高分子層を保持する。電解液が併用される場合、セパレータは電解液も保持する。導電性高分子層の形状が自力で保持され、導電性高分子層によって陽極箔と陰極箔を隔離できる場合、セパレータを固体電解コンデンサから排除できる。
なお、素子巻回工程の後に誘電体酸化皮膜層が形成された陽極箔を所望の幅に切断した際に露出した弁作用金属の地金部分および巻回等の物理的ストレスによって生じた陽極箔及び陰極箔の欠陥を修復する素子化成工程を設けるようにしてもよい。素子化成工程では、巻回体を化成液に浸漬し、電圧を印加する。化成液としては、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液、ホウ酸とクエン酸などのジカルボン酸を混合した化成液を用いることができる。電圧は、例えば、化成電圧に対して0.1~1.2倍の値を素子化成時の印加電圧とすることが好ましい。また、素子化成時の電圧印加方法として、素子化成開始から一定電圧を印加する方法、または、一定の間隔で段階的に印加電圧を上昇させる方法などが適宜選択される。
陽極箔製造工程を終えた陽極箔、陰極箔製造工程を終えた陰極箔及びセパレータの各々に導電性高分子を含むコーティング層および導電性高分子層を形成し、又は素子巻回工程を終えたコンデンサ素子に対し、コーティング層形成工程、電圧印加工程及び導電性高分子層形成工程をこの順番で行う。即ち、コーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程間に電圧印加工程を挟む。
コーティング層形成工程及び導電性高分子層形成工程では、導電性高分子で陽極箔の両面又は片面を覆う。このコーティング層形成工程及び導電性高分子層形成工程では、導電性高分子が添加された分散液に陽極箔、陰極箔及びセパレータの各々又はコンデンサ素子を浸漬し、陽極箔、陰極箔及びセパレータの各々又はコンデンサ素子に導電性高分子を含浸させる。このコーティング層形成工程及び導電性高分子層形成工程では、導電性高分子の含浸の促進を図るべく、必要に応じて減圧処理や加圧処理を施してもよい。また、浸漬の他にも、導電性高分子の分散液を滴下塗布したり、スプレー塗布してもよい。
浸漬後は、乾燥工程により分散液の溶媒を除去する。乾燥工程では、陽極箔、陰極箔及びセパレータの各々又はコンデンサ素子を例えば40℃以上200℃以下の温度環境下に3分以上180分以下の範囲で晒す。この乾燥工程は複数回繰り返してもよい。減圧環境下で乾燥してもよく、例えば5kPa以上100kPa以下の圧力で減圧する。
尚、コーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程では、含浸させる導電性高分子が異なっていてもよい。また、コーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程では、含浸させる導電性高分子の量が異なっていてもよい。ただし、コーティング層を形成する導電性高分子としては、水や各種溶媒に対して透過性を有する材料であることが求められる。コーティング層形成工程後の電圧印加工程では、陽極箔やコンデンサ素子を化成液に浸漬して電圧印加を行う。このとき、化成液で用いられる水や各種溶媒がコーティング層を透過し、誘電体酸化皮膜層や疑似ベーマイト皮膜層若しくはポーラス皮膜層と接触させる必要があるからである。
電圧印加工程では、陽極箔、陽極箔と陰極箔の両方、又はコンデンサ素子を化成液に浸漬し、電圧を印加する。化成液としては、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液、ホウ酸とクエン酸などのジカルボン酸を混合した化成液を用いることができる。電圧は、例えば、化成電圧に対して0.1~1.2倍の値を電圧印加時の印加電圧とすることが好ましい。また、電圧印加時の電圧印加方法としては、電圧印加開始から一定電圧を印加する方法、または、一定の間隔で段階的に印加電圧を上昇させる方法などが適宜選択される。
このように、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ることにより、固体電解コンデンサの良好な耐電圧特性と周波数特性とが両立する。即ち、固体電解コンデンサの高い耐電圧と広汎な周波数帯域に亘って高い静電容量と低い等価直列抵抗(ESR)とが両立する。
この理由は推測であり、このメカニズムに限定されるものではないが、次の通り考えられる。まず、コーティング層形成工程により、内部が緻密な疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層を導電性高分子が透過し、誘電体酸化皮膜層に密着する。これにより、導電性高分子層と誘電体酸化皮膜層との間に導電パスが多くなり、周波数特性が向上する。一方、この導電パスの発生により耐電圧は低下するはずであるが、電圧印加工程によって誘電体酸化皮膜層と密着した導電性高分子の絶縁化が図られ、耐電圧が向上する。これにより、固体電解コンデンサの良好な耐電圧特性と周波数特性とが両立する。但し、導電性高分子層形成工程を省いたり、電圧印加工程を介在させずにコーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程とを連続させると、固体電解コンデンサの良好な耐電圧特性と周波数特性とを両立させることができない。
ここで、導電性高分子は、分子内のドーパント分子によりドーピングされた自己ドープ型又は外部ドーパント分子によりドーピングされた共役系高分子であり、共役系高分子は、π共役二重結合を有するモノマー又はその誘導体を化学酸化重合または電解酸化重合することによって得られる。共役系高分子にドープ反応を行うことで導電性高分子は高い導電性を発現する。即ち、共役系高分子に電子を受け入れやすいアクセプター、もしくは電子を与えやすいドナーといったドーパントを少量添加することで導電性を発現する。
共役系高分子としては、公知のものを特に限定なく使用することができる。例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これら共役系高分子は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせても良く、更に2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
上記の共役系高分子のなかでも、チオフェン又はその誘導体が重合されて成る共役系高分子が好ましく、3,4-エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン)、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3-アルキル-4-アルコキシチオフェン、3,4-アルキルチオフェン、3,4-アルコキシチオフェン又はこれらの誘導体が重合された共役系高分子が好ましい。チオフェン誘導体としては、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択された化合物が好ましく、チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は1~16が適している。
特に、EDOTと呼称される3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体、即ち、PEDOTと呼称されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。また、3,4-エチレンジオキシチオフェンにアルキル基が付加された、アルキル化エチレンジオキシチオフェンでもよく、例えば、メチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-メチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)、エチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-エチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)などが挙げられる。
ドーパントは、公知のものを特に限定なく使用することができる。ドーパントは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、高分子又は単量体を用いてもよい。例えば、ドーパントとしては、ポリアニオン、ホウ酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、スクアリン酸、ロジゾン酸、クロコン酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシ-3,5-ベンゼンジスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ボロジサリチル酸、ビスオキサレートボレート酸、スルホニルイミド酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。
ポリアニオンは、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。具体的には、ポリアニオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などが挙げられる。
この導電性高分子が添加され、コーティング層形成工程及び導電性高分子層形成工程において陽極箔等に含浸される分散液の溶媒としては、導電性高分子の粒子または粉末が分散するものであれば良く、例えば水や有機溶媒又はそれらの混合物が用いられる。有機溶媒としては、極性溶媒、アルコール類、エステル類、炭化水素類、カーボネート化合物、エーテル化合物、鎖状エーテル類、複素環化合物、ニトリル化合物等が挙げられる。
極性溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。エーテル化合物としては、ジオキサン、ジエチルエーテル等が挙げられる。鎖状エーテル類としては、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。複素環化合物としては、3-メチル-2-オキサゾリジノン等が挙げられる。ニトリル化合物としては、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
分散液には、溶媒、導電性高分子の他に、多価アルコールを含んでいてもよい。多価アルコールとしては、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、グリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。多価アルコールは沸点が高いために乾燥工程後も導電性高分子層に残留させることができ、ESR低減や耐電圧向上効果が得られる。
この導電性高分子の分散液には、他の化合物を含んでもよい。例えば、有機バインダー、界面活性剤、分散剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の慣用の添加剤を添加してもよい。導電性高分子の分散液に添加剤を添加したり、導電性高分子の分散液をコンデンサ素子へ含浸する回数を増やすことでESRを大幅に低下させることも可能である。
(電解液含浸工程)
この導電性高分子層形成工程を経て作成された固体電解コンデンサは、電解液が併用されず、導電性高分子層のみによって良好な周波数特性を備え、良好な耐電圧と良好な周波数特性を両立するものである。電解液を併用しない場合又は電解液を少なくする場合には、内圧上昇やドライアップに起因する固体電解コンデンサの劣化を抑制することができる。
もっとも、電解液を併用する場合には、120Hz前後の周波数領域において更にESRが低減させることができ、ESR低減の観点から電解液を併用するようにしてもよい。電解液を併用する場合、電解液は、導電性高分子層が形成されたコンデンサ素子の空隙部に充填される。電解液のコンデンサ素子への含浸時には、含浸を促進させるべく、必要に応じて減圧処理や加圧処理を行ってもよい。含浸工程は複数回繰り返してもよい。
電解液の溶媒は、特に限定されるものではないが、プロトン性の有機極性溶媒又は非プロトン性の有機極性溶媒を用いることができる。プロトン性の極性溶媒として、一価アルコール類、及び多価アルコール類、オキシアルコール化合物類、水などが代表として挙げられ、例えばエチレングリコール又はプロピレングリコールである。非プロトン性の極性溶媒としては、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、スルホキシド系などが代表として挙げられ、例えばスルホラン、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートである。
電解液に含まれる溶質は、アニオン及びカチオンの成分が含まれ、典型的には、アジピン酸や安息香酸等の有機酸若しくはその塩、ホウ酸やリン酸等の無機酸若しくはその塩、又はボロジサリチル酸等の有機酸と無機酸との複合化合物若しくはそのイオン解離性のある塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。これら有機酸の塩、無機酸の塩、ならびに有機酸と無機酸の複合化合物の少なくとも1種の塩としては、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を溶質成分として別々に電解液に添加してもよい。
さらに、電解液には他の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、ポリエチレングリコール、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物、ホウ酸エステル、ニトロ化合物、リン酸エステル、コロイダルシリカなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ニトロ化合物は、電解コンデンサ内の水素ガスの発生量を抑制する。ニトロ化合物としては、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール等が挙げられる。
(最終製造工程)
導電性高分子層形成工程又は電解液含浸工程を経たコンデンサ素子は、有底筒状の外装ケースに挿入される。外装ケースは、一端有底及び他端開口の金属製容器であり、材質としてはアルミニウム、アルミニウムやマンガンを含有するアルミニウム合金、又はステンレスが挙げられる。コンデンサ素子を外装ケースに収容した後は、外装ケースの開口端部を封口体で封止する。封口体は、ゴム又はゴムと硬質基板の積層体であり、ゴムとしてはエチレンプロピレンゴムやブチルゴム等が挙げられる。この封口体を外装ケースの端部に嵌め込み、外装ケースの開口端部を加締め加工することにより、封止される。封口体からは、陽極箔及び陰極箔に接続された引出端子が引き出される。
外装ケースにコンデンサ素子を封止した後、固体電解コンデンサは、最終製造工程内でエージング工程を経て作製が完了する。エージング工程では、固体電解コンデンサに直流電圧を印加し、電解液が誘電体酸化皮膜層等の欠陥箇所を修復する。また、電解液を含まない固体電解コンデンサにおいては、エージング工程で直流電圧を印加することにより、誘電体酸化皮膜層の欠陥箇所またはその近傍に存在する導電性高分子の絶縁化がなされる。
(製造方法全工程)
以上のような固体電解コンデンサの製造方法によると、コーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程間に電圧印加工程を挟むようにしたことで、固体電解コンデンサが高い耐電圧と良好な周波数特性とを両立して備えることができる。
ここで、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程は、他の工程間で連続して行われてもよいし、複数の他の工程間に分散させて行われてもよい。
図1は、固体電解コンデンサの第1の製造方法を全体的に示すフローチャートである。図1に示すように、例えば、陰極箔製造工程と陽極箔製造工程とにより、陰極箔と、表層に疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層が残る誘電体酸化皮膜層が形成された陽極箔とを製造する。これら陽極箔と陰極箔とセパレータとを素子巻回工程により巻回する。この素子巻回工程の最後には、必要に応じて素子化成印加工程を組み込む。
そして、素子巻回工程が終わった後、コーティング層形成工程を行い、コーティング層形成工程の後に電圧印加工程を行い、電圧印加工程の後に導電性高分子層形成工程を行う。導電性高分子の分散液は予め用意しておく。導電性高分子層形成工程が終わった後は、電解液含浸工程に移り、最後に最終製造工程を経て、固体電解コンデンサの製造が完了する。なお、電解液を含まない固体電解コンデンサを作製する場合は、電解液含浸工程を省略する。
図2は、固体電解コンデンサの第2の製造方法を全体的に示すフローチャートである。図2に示すように、例えば、陰極箔製造工程と陽極箔製造工程とにより、陰極箔と、表層に疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層が残る誘電体酸化皮膜層が形成された陽極箔とを製造する。
そして、陽極箔製造工程を経た陽極箔に対し、素子巻回工程に移る前に、コーティング層形成工程を行う。コーティング層形成工程を経た後に、これら陽極箔と陰極箔とセパレータとを素子巻回工程により巻回する。陰極箔にも薄い酸化皮膜層が形成されている場合、陰極箔製造工程を経た後に、陰極箔に対し、コーティング層形成工程を行ってもよい。
そして、素子巻回工程が終わった後、コーティング層が形成された素子に電圧印加工程を行い、電圧印加工程の後に導電性高分子層形成工程を行う。尚、この場合、素子巻回工程の素子化成工程は、コーティング層形成工程後の電圧印加工程と重複するために省略できる。導電性高分子層形成工程が終わった後は、電解液含浸工程に移り、最後に最終製造工程を経て、固体電解コンデンサの製造が完了する。なお、電解液を含まない固体電解コンデンサを作製する場合は、電解液含浸工程を省略する。
図3は、固体電解コンデンサの第3の製造方法を全体的に示すフローチャートである。図3に示すように、例えば、陰極箔製造工程と陽極箔製造工程とにより、陰極箔と、表層に疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層が残る誘電体酸化皮膜層が形成された陽極箔とを製造する。
そして、陽極箔製造工程を経た陽極箔に対し、素子巻回工程に移る前に、コーティング層形成工程及び電圧印加工程を行う。コーティング層形成工程及び電圧印加工程を経た後に、これら陽極箔と陰極箔とセパレータとを素子巻回工程により巻回する。陰極箔にも薄い酸化皮膜層が形成されている場合、陰極箔製造工程を経た後に、陰極箔に対し、コーティング層形成工程及び電圧印加工程を行ってもよい。
そして、素子巻回工程が終わった後、導電性高分子層形成工程を行う。尚、この場合、素子巻回工程では素子化成工程を行うようにしてもよい。導電性高分子層形成工程が終わった後は、電解液含浸工程に移り、最後に最終製造工程を経て、固体電解コンデンサの製造が完了する。なお、電解液を含まない固体電解コンデンサを作製する場合は、電解液含浸工程を省略する。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
次のようにして実施例1の固体電解コンデンサを製造した。まず、陽極箔としてアルミニウム箔を用意した。このアルミニウム箔を陽極箔製造工程の拡面化工程に移し、アルミニウム箔の両面にトンネル状のエッチングピットを形成した。拡面化工程では、塩酸を含む水溶液中でアルミニウム箔に直流電流を流してピットを形成し、次いで、硝酸を含む水溶液中でアルミニウム箔に直流電流を流してピットを拡径した。
拡面化工程を経たアルミニウム箔を化成前処理工程に移した。化成前処理工程では、15分間、煮沸した純水にアルミニウム箔を浸漬し、アルミニウム箔の表面に疑似ベーマイト皮膜層を形成した。次に、化成処理工程を行った。化成処理工程では、90℃のホウ酸アンモニウム水溶液にアルミニウム箔を浸漬しつつ、当該アルミニウム箔に電流密度25mAcm-2で通電して所定の化成電圧にまで到達させた後、その電圧を20分間保持することで、疑似ベーマイト皮膜層の最表層を残して誘電体酸化皮膜層に変質させた。なお、アルミニウム箔の化成電圧は650Vとした。
この陽極箔の120Hzにおける箔容量は、0.686μFcm-2であった。尚、陽極箔の箔容量は、試料面積を1cmに規定した陽極箔を温度30℃の五ホウ酸アンモニウム水溶液に浸漬し、DCバイアス電圧1.5V、交流振幅1Vとし、Solartron analytical製のポテンショスタットSI1287及び周波数応答アナライザ1252Aを用いて測定した。なお、箔容量測定には、汎用の電気化学インピーダンスアナライザーやLCRメータなどを用いることもできる。
箔片面につき1cm四方の箔表面が4箇所露出するように、陽極箔の両面をイミドテープでマスキングした。そして、コーティング層形成工程に移り、8箇所の露出領域に対して、導電性高分子の分散液を滴下し、乾燥させた。導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)(PEDOT/PSS)である。分散液の溶媒に水を用いた。PEDOT/PSSは、分散液全体に対して2wt%の割合で分散させた。このPEDOT/PSSの分散液を各露出領域に5μL滴下し、室温で5分間静置後、110℃で30分間乾燥させた。
コーティング層形成工程を経た後、電圧印加工程に移った。電圧印加工程では、1Lの水に対して70gのホウ酸を溶解させた60℃のホウ酸水溶液に、コーティング層形成工程を経た陽極箔を浸漬した。そして、この陽極箔に化成電圧を印加した。化成電圧の印加は、100Vから550Vまでは一定間隔での昇圧及び一定時間での電圧保持を繰り返して行い、最終処理電圧となる550Vにおいては10分間電圧保持を行った。化成電圧の印加の際、100mA以下の電流が陽極箔に流れるように、電流制限を行った。
電圧印加工程を経た後、導電性高分子層形成工程に移った。導電性高分子層形成工程では、8箇所の露出領域に対して、更に導電性高分子の分散液を滴下し、乾燥させた。導電性高分子は、コーティング層形成工程と同じく、PEDOT/PSSであり、分散液中、2wt%の割合で分散している。導電性高分子層形成工程で用いられる分散液には、分散液の乾燥後の固形分重量に対して83wt%のソルビトールが更に添加されている。この分散液を各露出領域に35μL滴下し、乾燥させた。具体的には、陽極箔の片面に分散液を滴下した後、室温で5分間放置し、次いで115℃で15分間放置した。次に、陽極箔の他の片面に分散液を滴下したあと、室温で5分間放置し、次いで115℃で15分間放置した。
導電性高分子層形成工程が終了した後、8箇所の露出領域にカーボンペーストを塗工し、130℃の温度環境下に10分間放置することで硬化させた。更に、8箇所の露出領域に対して、カーボン層の上から銀ペーストを塗工すると同時に、引出端子として銅箔を接着した。銀ペーストは、陽極箔の片面に塗工された後、硬化前の銀ペースト部に銅箔を接着した状態で130℃の温度環境下に5分間放置することで仮硬化させた。これにより銀層と銅箔とを接続した。同様の手順により陽極箔の他の片面に銀ペーストの塗工及び片面の銀層に接続された銅箔を折り返して接着した後、130で25分間放置した。このようにして全8箇所の露出領域に対して、銀ペーストで接続した銅箔を介して陽極箔上に形成された片面の露出領域と他の片面に形成された露出領域を接続した。以上のカーボン層、銀層及び銅箔層は、固体電解コンデンサの陰極箔に相当する。
このようにして実施例1の固体電解コンデンサが製造された。この実施例1の固体電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜層の上に疑似ベーマイト皮膜層が形成された陽極箔と、カーボン層、銀層及び銅箔により成る陰極箔と、これら陽極箔と陰極箔との間に介在し、PEDOT/PSSを含む導電性高分子層を備える。そして、この導電性高分子層は、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番に経て形成されている。
(比較例)
比較例1の固体電解コンデンサを製造した。比較例1の固体電解コンデンサには実施例1の陽極箔が用いられている。この陽極箔は、実施例1と同じように、両面8箇所に1cm四方の露出領域が形成されるようにマスキングされ、実施例1と同じ陰極箔が設置される。但し、電圧印加工程が省かれ、コーティング層形成工程の後に導電性高分子層形成工程に移った。コーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程の内容は、実施例1と同じである。
比較例2の固体電解コンデンサを製造した。比較例2の固体電解コンデンサには実施例1の陽極箔が用いられている。この陽極箔は、実施例1と同じように、両面8箇所に1cm四方の露出領域が形成されるようにマスキングされ、実施例1と同じ陰極箔が設置される。但し、コーティング層形成工程が省かれ、実施例1の導電性高分子層形成工程を経た後、実施例1と同じ電圧印加工程に移った。
比較例3の固体電解コンデンサを製造した。比較例3の固体電解コンデンサには実施例1の陽極箔が用いられている。この陽極箔は、実施例1と同じように、両面8箇所に1cm四方の露出領域が形成されるようにマスキングされ、実施例1と同じ陰極箔が設置される。比較例3では、コーティング層形成工程、導電性高分子層形成工程及び電圧印加工程が行われているが、実施例1と順番が異なっている。即ち、比較例3では、コーティング層形成工程、導電性高分子層形成工程及び電圧印加工程をこの順番で経た。コーティング層形成工程、導電性高分子層形成工程及び電圧印加工程の内容は、実施例1と同じである。
比較例4の固体電解コンデンサを製造した。比較例4の固体電解コンデンサには実施例1の陽極箔が用いられている。この陽極箔は、実施例1と同じように、両面8箇所に1cm四方の露出領域が形成されるようにマスキングされ実施例1と同じ陰極箔が設置される。比較例4では、電圧印加工程、コーティング層形成工程及び導電性高分子層形成工程が行われているが、実施例1と順番が異なっている。即ち、比較例4では、電圧印加工程、コーティング層形成工程及び導電性高分子層形成工程をこの順番で経た。コーティング層形成工程、導電性高分子層形成工程及び電圧印加工程の内容は、実施例1と同じである。
(特性測定試験)
以上の実施例1並びに比較例1乃至4の固体電解コンデンサの周波数毎の静電容量及び等価直列抵抗(ESR)、並びに当該固体電解コンデンサの耐電圧を測定した。実施例1並びに比較例1乃至4の固体電解コンデンサは複数個作製され、それぞれ測定対象とした。もっとも、比較例2及び3の固体電解コンデンサは、電圧印加工程後に導電性高分子層が剥離してしまい、測定ができなかった。比較例2及び比較例3は、35μL滴下して形成された厚みの導電性高分子層が陽極箔に付着した状態で、電圧印加工程に移って液体に当該陽極箔を浸漬させてしまったため、導電性高分子層が剥がれてしまったものである。
初めに、実施例1並びに比較例1乃至4の固体電解コンデンサの周波数特性測定を行った。周波数特性測定は、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製のLCRメータZM2376を用いて測定した。測定は20℃の温度下で行い、測定周波数は10Hzから1MHzの範囲とした。次に、各固体電解コンデンサの耐電圧測定を行った。耐電圧測定には、Tektronix製のソースメータ2410を用いた。測定は、室温下、0Vから印加電圧を1秒間に1V昇圧させて行った。また、測定対象の固体電解コンデンサに20mAの電流が流れた際の電圧を当該固体電解コンデンサの耐電圧として定めた。
静電容量及び等価直列抵抗(ESR)の測定結果を図4乃至図7に示す。各図の横軸は周波数であり、縦軸は耐電圧、静電容量又は等価直列抵抗であり、実線のグラフは実施例1の群を示し、点線のグラフは比較例の群を示す。また、耐電圧の測定結果を図8に示す。横軸は耐電圧であり、縦軸は電流値であり、実線のグラフは実施例1の群を示し、点線のグラフは比較例の群を示す。
図4は、実施例1と比較例1における周波数と静電容量の関係を示すグラフである。図4に示すように、実施例1の群は、120Hz等の低周波数領域から10kHzや100kHz以上の中高周波領域までの全周波数領域で、静電容量が比較例1の群を上回った。実施例1と比較例1の相違は、実施例1がコーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経たのに対し、比較例1がコーティング工程層形成工程後の電圧印加工程が省かれ、コーティング層形成工程、導電性高分子層形成工程の順番で経た点である。
図5は、実施例1と比較例4における周波数と静電容量の関係を示すグラフである。図5に示すように、実施例1の群は、120Hz等の低周波数領域から10kHzや100kHz以上の中高周波領域までの全周波数領域で、静電容量が比較例4の群を上回った。実施例1と比較例4の相違は、実施例1がコーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経たのに対し、比較例4が電圧印加工程、コーティング層形成工程、導電性高分子層形成工程の順番で経た点である。
更に、図6は、実施例1と比較例1における周波数とESRの関係を示すグラフである。図6に示すように、実施例1の群は、低周波数領域から中高周波領域までの全周波数領域でESRが比較例1の群を下回った。図7は、実施例1と比較例4における周波数とESRの関係を示すグラフである。図7に示すように、実施例1の群は、低周波数領域から中高周波領域までの全周波数領域でESRが比較例4の群を下回った。
以上、図4乃至図7に示されるように、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ることによって、固体電解コンデンサの静電容量及びESRが全周波数領域で良好になり、固体電解コンデンサの周波数特性を向上させることが確認できる。
尚、実施例1の固体電解コンデンサは120Hz時の静電容量の平均が0.621μFであり、比較例1の固体電解コンデンサは120Hz時の静電容量の平均が0.438μFであり、比較例4の固体電解コンデンサは120Hz時の静電容量の平均が0.426μFであった。また、実施例1の固体電解コンデンサは10kHzおよび100kHz時の静電容量の平均が0.313μFおよび0.161μFであり、比較例1の固体電解コンデンサは10kHzおよび100kHz時の静電容量の平均が0.099μFおよび0.062μFであり、比較例4の固体電解コンデンサは10kHzおよび100kHz時の静電容量の平均が0.079μFおよび0.040μFであった。
さらに、実施例1の固体電解コンデンサは120Hz時のESRの平均が150Ωであり、比較例1の固体電解コンデンサは120Hz時のESRの平均が1367Ωであり、比較例4の固体電解コンデンサは120Hz時のESRの平均が1681Ωであった。加えて、実施例1の固体電解コンデンサは10kHzおよび100kHz時のESRの平均が24.7Ωおよび4.3Ωであり、比較例1の固体電解コンデンサは10kHzおよび100kHz時のESRの平均が65.5Ωおよび7.9Ωであり、比較例4の固体電解コンデンサは10kHzおよび100kHz時のESRの平均が118Ωおよび18.7Ωであった。
次に、図8は、実施例1、比較例1及び比較例4における耐電圧を示すグラフであり、(a)が実施例1を示し、(b)が比較例1を示し、(c)が比較例4を示す。図8に示すように、実施例1の耐電圧は390Vであり、比較例1の耐電圧は330Vであり、比較例4の耐電圧は451Vであった。即ち、比較例4には劣るものの、実施例1は、耐電圧が比較例1よりも良好であった。もっとも、比較例4は、実施例1に対して周波数特性が大きく劣る。
総じて、図4乃至図8に示すように、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ることによって、固体電解コンデンサの静電容量及びESRが全周波数領域で良好になり、固体電解コンデンサの周波数特性を向上させることが確認でき、固体電解コンデンサの耐電圧が向上していることが確認できる。即ち、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ることによって、固体電解コンデンサの良好な耐電圧と良好な周波数特性が両立することが確認された。更に、電解液を併用しなくとも、良好な周波数特性を兼ね備えることも確認された。
(実施例2)
実施例2の固体電解コンデンサを製造した。実施例2の固体電解コンデンサは、コーティング層形成工程、電圧印加工程及び導電性高分子層形成工程をこの順番で経た後、電解液含浸工程に移り、電解液を含浸させた点を除き、製造方法及び製造条件は実施例1と同じである。電解液の溶媒はエチレングリコールであり、この電解液にはホウ酸アンモニウムとアゼライン酸が添加されている。含浸工程では、室温及び100kPaの減圧環境下で陽極箔を電解液に10分間浸漬した。陰極箔については厚みが50μmのアルミニウム箔を用いた。陽極箔と陰極箔の間には厚みが50μmのマニラ系のセパレータを介在させた。
(比較例)
実施例2の固体電解コンデンサに対応させて、電解液を併用した比較例5の固体電解コンデンサを製造した。比較例5の固体電解コンデンサは導電性高分子層形成工程のみを行い、コーティング層形成工程および電圧印加工程が省かれている点で、実施例2とは異なる。比較例5における導電性高分子層形成工程では、実施例2においてコーティング層形成工程と導電性高分子層形成工程で塗布される合計40μLの分散液が滴下された点を除き、導電性高分子層形成工程と同一手順及び同一条件で行われた。
(特性測定試験)
以上の実施例2及び比較例5の固体電解コンデンサの周波数毎の静電容量及び等価直列抵抗(ESR)、耐電圧を測定した。実施例2並びに比較例5の固体電解コンデンサは複数個作製され、それぞれ測定対象とし、測定結果の平均値を計算した。測定手順及び測定条件は、実施例1と同じである。静電容量及び等価直列抵抗(ESR)の測定結果の平均値を図9乃至図10に示す。各図の横軸は周波数であり、縦軸は耐電圧、静電容量又は等価直列抵抗であり、実線のグラフは実施例2を示し、点線のグラフは比較例5を示す。また、耐電圧の測定結果を図11に示す。横軸は耐電圧であり、縦軸は電流値であり、実線のグラフは実施例1の群を示し、点線のグラフは比較例の群を示す。
図9は、実施例2と比較例5における周波数と静電容量の関係を示すグラフであり、図10は、実施例2と比較例5における周波数とESRの関係を示すグラフである。実施例2及び比較例5の固体電解コンデンサは、導電性高分子層と電解液とを併用している。図9及び図10並びに比較例1乃至4と比べるとわかるように、このような実施例2及び比較例5の固体電解コンデンサにおいては、比較例5の固体電解コンデンサの静電容量の向上及びESRの低減により、静電容量及びESRが全周波数領域に亘って同等となることが確認できる。
ここで、実施例2の固体電解コンデンサは120Hz時の静電容量が0.654μFであり、比較例5の固体電解コンデンサは120Hz時の静電容量が0.665μFであった。また、実施例2の固体電解コンデンサは120Hz時のESRが62Ωであり、比較例5の固体電解コンデンサは120Hz時のESRが101Ωであった。このように、実施例1と比べると、電解液を併用した実施例2の固体電解コンデンサは、ESRが更に低減していることが確認できる。
一方、図11は、実施例2と比較例5における耐電圧を示すグラフであるが、図11に示すように、実施例2の固体電解コンデンサの耐電圧は465Vであり、比較例5の耐電圧は376Vであった。このように、比較例5の固体電解コンデンサは、導電性高分子層と電解液とを併用したことで良好な周波数特性を有するが、耐電圧が大きく劣っており、良好な周波数特性と良好な耐電圧とが両立できていない。一方、実施例2の固体電解コンデンサは、良好な周波数特性と良好な耐電圧が両立していることが確認できる。
以上、図9乃至図11に示されるように、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ることによって、電解液を併用する場合であっても、固体電解コンデンサの静電容量及びESRが全周波数領域で良好になり、固体電解コンデンサの周波数特性を向上させることが確認できる。また、固体電解コンデンサのESRを更に低減させることが確認できる。
更に、図4乃至11に示されるように、電解液を併用せず、コーティング層形成工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ない場合、導電性高分子層のみでは、固体電解コンデンサの周波数特性は悪化してしまう。しかし、電解液を併用せず、コーティング層工程と電圧印加工程と導電性高分子層形成工程とをこの順番で経ていれば、導電性高分子層のみであっても、固体電解コンデンサの周波数特性が良好になり、良好な周波数特性と良好な耐電圧とを両立できることが確認された。

Claims (8)

  1. 陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子層を介在させた電解コンデンサの製造方法であって、
    前記陽極箔を導電性高分子でコーティングするコーティング層形成工程と、
    前記コーティング層形成工程よりも後工程であり、前記導電性高分子がコーティングされた前記陽極箔に対して電圧を印加する電圧印加工程と、
    前記電圧印加工程よりも後工程であり、前記導電性高分子層を形成する導電性高分子層形成工程と、
    を含むこと、
    を特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記陽極箔を形成する陽極箔製造工程を更に含み、
    前記陽極箔製造工程では、弁作用金属箔上に誘電体酸化皮膜層が位置し、当該誘電体酸化皮膜層上に疑似ベーマイト皮膜層又はポーラス皮膜層が位置する前記陽極箔を形成すること、
    を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記陽極箔と前記陰極箔とを巻回する素子巻回工程を含み、
    前記コーティング層形成工程は、前記素子巻回工程の後に行われ、前記コーティング層形成工程と前記電圧印加工程とが連続すること、
    を特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記陽極箔と前記陰極箔とを巻回する素子巻回工程を含み、
    前記コーティング層形成工程は、前記陽極箔製造工程の後、前記素子巻回工程の前に介在し、
    前記電圧印加工程と前記導電性高分子層形成工程は、前記素子巻回工程の後に行われること、
    を特徴とする請求項2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 前記陽極箔と前記陰極箔とを巻回する素子巻回工程を含み、
    前記コーティング工程及び前記電圧印加工程は、前記陽極箔製造工程の後、前記素子巻回工程の前に介在し、
    前記導電性高分子層形成工程は、前記素子巻回工程の後に行われること、
    を特徴とする請求項2記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. 前記陽極箔を拡面化する拡面化工程を含み、
    前記拡面化工程では、前記陽極箔に箔厚み方向に延びるトンネル状のエッチングピットを形成すること、
    を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  7. 前記陽極箔と前記陰極箔との間に前記導電性高分子層を介在させた後、電解液を含浸させる電解液含浸工程を更に含むこと、
    を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  8. 電解液を含浸させず、前記陽極箔と前記陰極箔との間には電解質として前記導電性高分子層のみを介在させること、
    を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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