JP2023025211A - 妊娠状態を改善するための薬剤及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】妊娠状態を改善するための薬剤を提供する。【解決手段】タクロリムス、又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、妊娠状態を改善するための薬剤及びその利用を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の免疫抑制成分を含んでなる、不妊及び/又は不育を含む妊娠状態を改善するための薬剤とその利用とに関するものである。
挙児を望みながら、正常な妊娠や出産に至らないことによって、最終的に挙児を断念している人々は多数存在する。正常な妊娠や出産に至らない状態をその段階で分類した場合、
子宮内膜への受精卵の着床が適切に進行せず、妊娠が成立しない状態(広義の不妊)と、子宮内膜への受精卵の着床は適切に進行するが、流産、死産等により挙児を得ない状態(広義の不育)とに分けられる。
不妊や不育は、その状態が定着した場合に、いわゆる不妊症、不育症として治療の対象となりうる。現状では、不妊症や不育症の治療には、その原因に応じて最適と考えられる治療法を選択している。例えば、血液凝固異常を原因とする不妊症や不育症の場合は、診断方法や治療の指標が存在し、治療方法はほぼ確立している。しかしながら、原因が明確に特定できない不妊症や不育症も一定の割合で存在することも一因となって、治療に苦慮する場合も少なくない。例えば、重症不妊症の中には体外受精による治療を何度施行しても妊娠に至らない着床障害症例が存在し、重症不育症の中には現在行われている不育症治療に抵抗性の症例が少なからず存在する。原因不明とされる重症不妊症に関しては特別な治療法は無いが、重症不育症に関しては、例えば、抗血小板療法(低用量アスピリン投与)、抗凝固療法(ヘパリン投与)、ステロイド療法(PSL; prednisolone)、大量ガンマグロブリン療法(IVIG)等が行われることがある。
Uemura Y, Suzuki M, Liu TY, Narita Y, Hirata S, Ohyama H, Ishihara O, Matsushita S. Int Immunol. 2008;20:405-12. Saito S, Nakashima A, Shima T, Ito M. Am J Reprod Immunol. 2010;63:601-10. Kwak-Kim JY, Chung-Bang HS, Ng SC, Ntrivalas EI, Mangubat CP, Beaman KD, Beer AE, Gilman-Sachs A. Hum Reprod. 2003;18:767-73. Ng SC, Gilman-Sachs A, Thaker P, Beaman KD, Beer AE, Kwak-Kim J. Am J Reprod Immunol. 2002 Aug;48 (2):77-86. Yamaguchi K, Hisano M, Isojima S, Irie S, Arata N, Watanabe N, Kubo T, Kato T, Murashima A. J Med Virol. 2009;81:1923-8.
受精卵又は胎児は、母体にとって異物(一種の外来抗原)である。従って、受精卵の着床、妊娠の維持から出産に至るまでの期間中、受精卵又は胎児を母体から排除せずに受け入れ続けるために、母体の免疫機構に変化が生じると考えられている。例えば、子宮内脱落膜では、受精卵又は胎児が異物として排除されないように、細胞性免疫を中心とした免疫機構の抑制が促されることが、妊娠を継続するために重要な因子の一つであるという考えがある(非特許文献1~5)。しかしながら、免疫機構は非常に複雑であり、受精卵の着床から出産に至るまでの母体での免疫機構の変化の詳細については未だ解明されていない部分が多く残っている。
かかる事情もあり、既存の治療方法としては、不妊症治療に対する免疫抑制療法は存在していない。
不育症治療では、上述のステロイド(PSL)療法や大量ガンマグロブリン療法(IVIG)が、免疫機構に抑制的に作用しうると考えられる。しかし、何れの治療法も母体や胎児への様々な望ましくない影響が報告されている。さらに、IVIG療法では、血漿分画製剤(1000人以上のプール血漿から精製)を用いることに起因する未知の感染症の危険性があることや、作用期間が短い等の問題点もある。
ところで、不妊症の患者の中には、妊娠前より細胞性免疫が亢進しており、着床時に受精卵に対する拒絶反応が起こっていると推定される者が存在すること、不育症の患者の中には、着床前の免疫状態に異常はないが、着床後(妊娠成立後)に細胞性免疫が著しく亢進することにより、胎児に対する拒絶反応が起こっていると推定される者が存在することが、本発明者らの予備研究によって徐々に明らかとなってきた。いずれの場合も、受精卵又は胎児を攻撃する免疫の抑制機構(免疫寛容)が不十分であったことが主要な原因であると考えられる。
これらの知見をもとに、本願発明者らは、同種抗原を持つ受精卵や胚の子宮内膜上での受け入れが、臓器移植と非常に類似した免疫応答ではないかとの推定をし、様々な角度から検証を行った結果、不妊や不育の状態を充分に改善する効果を示し、かつ、母体や胎児への望ましくない影響が抑制されている薬剤を見出し、本願発明に想到するに至った。さらには、この薬剤が、不妊や不育以外の妊娠状態の改善にも役立ちうることを見出し、本願発明に想到するに至った。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の態様を包含する。
Figure 2023025211000001
上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、妊娠状態を改善するための薬剤(式中、R及びR、R及びR、R及びRの隣接するそれぞれの対は、各々独立して、(a)2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはRはアルキル基であってもよく、又は(b)結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;Rは水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、もしくはアルキルと共になってオキソ基を表わしてもよく;R及びRは独立して、水素原子、ヒドロキシ基を;R10は水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、又はオキソ基によって置換されたアルキル基を;Xはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、又は式-CHO-で表わされる基を;Yはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、又は式N-NR1112もしくはN-OR13で表わされる基を;R11及びR12は独立して水素原子、アルキル基、アリール基又はトシル基を;R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22及びR23は独立して水素原子又はアルキル基を;R24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環;nは1又は2を表わし、上記の意味に加え、さらにY、R10及びR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子及び/もしくは酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよいが、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式-CHSe(C)で表わされる基、及び1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)。
本発明によれば不妊及び/又は不育を含む妊娠状態を改善することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔1.薬剤(医薬組成物)〕
(有効成分)
本発明に係る薬剤は有効成分として、下記一般式(I)で表される化合物(以下、これらを総称して化合物(I)と称する場合もある)又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む。
なお、化合物(I)は、マクロライド系化合物である。マクロライド系化合物とは大環状ラクトンであり、環の員数が12又はそれ以上の化合物の総称である。
Figure 2023025211000002
(式中、R及びR、R及びR、R及びRの隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
(a)2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはRはアルキル基であってもよく、又は
(b)結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、もしくはアルキルと共になってオキソ基を表わしてもよく;
及びRは独立して、水素原子、ヒドロキシ基を;
10は水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、又はオキソ基によって置換されたアルキル基を;
Xはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、又は式-CHO-で表わされる基を;
Yはオキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、又は式N-NR1112もしくはN-OR13で表わされる基を;
11及びR12は独立して水素原子、アルキル基、アリール基又はトシル基を;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22及びR23は独立して水素原子又はアルキル基を;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環;
nは1又は2を表わす。
上記の意味に加え、さらにY、R10及びR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子及び/もしくは酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよいが、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式-CHSe(C)で表わされる基、及び1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)。
好ましいR24としては、適当な置換基を有していてもよいシクロ(C)アルキル基を挙げることが出来るが、例えば次のような基を例示することが出来る。
(a)3,4-ジオキソ-シクロヘキシル基;
(b)3-R20-4-R21-シクロヘキシル基、
その中で、R20はヒドロキシ、アルキルオキシ、オキソ、又はOCHOCHCHOCH、及びR21はヒドロキシ、-OCN、アルキルオキシ、適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ、-OCHOCHCHOCH、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基、p-トリルオキシチオカルボニルオキシ、又はR2526CHCOO-(式中、R25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、又は保護されたアミノ基、及びR26は水素原子又はメチル、又はR20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成する);又は
(c)シクロペンチル基であって、そのシクロペンチル基は、メトキシメチル、所望により保護されたヒドロキシメチル、アシルオキシメチル(その中において、アシル部分は、所望により4級化されていてもよいジメチルアミノ基又はエステル化されていてもよいカルボキシ基)、1個又はそれ以上の保護されていてもよいアミノ及び/又はヒドロキシ基、又はアミノオキザリルオキシメチルで置換されている。好ましい例は、2-ホルミル-シクロペンチル基である。
一般式(I)において使用されている各定義及びその具体例、並びにその好ましい実施態様を以下に詳細に説明する。
「低級」とは特に指示がなければ、炭素原子1~6個を有する基を意味するものとする。
「アルキル基」及び「アルキルオキシ基」のアルキル部分の好ましい例としては、直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の低級アルキル基が挙げられる。
「アルケニル基」の好ましい例としては、1個の二重結合を含有する直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばビニル、プロペニル(アリル等)、ブテニル、メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等の低級アルケニ
ル基が挙げられる。
「アリール基」の好ましい例としては、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル等が挙げられる。
「保護されたヒドロキシ基」及び「保護されたアミノ」における好ましい保護基としては、例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、ヘキシルチオメチル等の低級アルキルチオメチル基のような1-(低級アルキルチオ)(低級)アルキル基、さらに好ましいものとしてC~Cアルキルチオメチル基、最も好ましいものとしてメチルチオメチル基;
例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、第三級ブチル-ジメチルシリル、トリ第三級ブチルシリル等のトリ(低級)アルキルシリル、例えばメチル-ジフェニルシリル、エチル-ジフェニルシリル、プロピル-ジフェニルシリル、第三級ブチル-ジフェニルシリル等の低級アルキル-ジアリールシリル等のようなトリ置換シリル基、さらに好ましいものとしてトリ(C~C)アルキルシリル基及びC~Cアルキルジフェニルシリル基、最も好ましいものとして第三級ブチル-ジメチルシリル基及び第三級ブチル-ジフェニルシリル基;
カルボン酸、スルホン酸及びカルバミン酸から誘導される脂肪族アシル基、芳香族アシル基及び芳香族基で置換された脂肪族アシル基のようなアシル基;
等が挙げられる。
脂肪族アシル基としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、カルボキシアセチル、カルボキシプロピオニル、カルボキシブチリル、カルボキシヘキサノイル等の、カルボキシのような適当な置換基を1個以上有していてもよい低級アルカノイル基;
例えばシクロプロピルオキシアセチル、シクロブチルオキシプロピオニル、シクロヘプチルオキシブチリル、メンチルオキシアセチル、メンチルオキシプロピオニル、メンチルオキシブチリル、メンチルオキシペンタノイル、メンチルオキシヘキサノイル等の、低級アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいシクロ(低級)アルキルオキシ(低級)アルカノイル基;
カンファースルホニル基;
例えばカルボキシメチルカルバモイル、カルボキシエチルカルバモイル、カルボキシプロピルカルバモイル、カルボキシブチルカルバモイル、カルボキシペンチルカルバモイル、カルボキシヘキシルカルバモイル等のカルボキシ(低級)アルキルカルバモイル基、又は例えばトリメチルシリルメトキシカルボニルエチルカルバモイル、トリメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリエチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、第三級ブチルジメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリメチルシリルプロポキシカルボニルブチルカルバモイル基等のトリ(低級)アルキルシリル(低級)アルキルオキシカルボニル(低級)アルキルカルバモイル基等の、カルボキシもしくは保護されたカルボキシのような適当な置換基を1個以上有する低級アルキルカルバモイル基等が挙げられる。
芳香族アシル基としては、例えばベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ニトロナフトイル等の、ニトロのような適当な置換基を1個以上有してもよいアロイル基;
例えばベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、キシレンスルホニル、ナフタレンスルホニル、フルオロベンゼンスルホニル、クロロベンゼンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ヨードベンゼンスルホニル等の、ハロゲンのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアレーンスルホニル基等が挙げられる。
芳香族基で置換された脂肪族アシル基としては、例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルブチリル、2-トリフルオロメチル-2-メトキシ-2-フェニルアセチル、2-エチル-2-トリフルオロメチル-2-フェニルアセチル、2-トリフルオロメチル-2-プロポキシ-2-フェニルアセチル等の、低級アルキルオキシ又はトリハロ(低級)アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアル(低級)アルカノイル基等が挙げられる。
上記アシル基中、さらに好ましいアシル基としては、カルボキシを有してもよいC~Cアルカノイル基、シクロアルキル部分に(C~C)アルキルを2個
有するシクロ(C~C)アルキルオキシ(C~C)アルカノイル基、カンファースルホニル基、カルボキシ(C~C)アルキルカルバモイル基、トリ(C~C)アルキルシリル(C~C)アルキルオキシカルボニル(C~C)アルキルカルバモイル基、ニトロ基を1個又は2個有していてもよいベンゾイル基、ハロゲンを有するベンゼンスルホニル基、C~Cアルキルオキシとトリハロ(C~C)アルキルを有するフェニル(C~C)アルカノイル基が挙げられ、それらのうち、最も好ましいものとしては、アセチル、カルボキシプロピオニル、メンチルオキシアセチル、カンファースルホニル、ベンゾイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ヨードベンゼンスルホニル及び2-トリフルオロメチル-2-メトキシ-2-フェニルアセチルが挙げられる。
「飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子及び/もしくは酸素原子を含有する複素環基」の好ましい例としては、ピロリル基、テトラヒドロフリル基等が挙げられる。
「適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ」の中の「適当な置換基を有していてもよいヘテロアリール」部分とは、EP-A-532,088中の式で表される化合物の基R1として例示のものが挙げられるが、例えば、1-ヒドロキシエチルインドール-5-イルが好ましい。その開示を引用して明細書記載の一部とする。
本発明において使用される化合物(I)及びその薬学的に許容される塩は、優れた免疫抑制作用、抗菌活性、及びその他の薬理活性を有し、その為、臓器あるいは組織の移植に対する拒絶反応、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、及び感染症等の治療及び予防に有用であることが、例えば、EP-A-184162、EP-A-323042、EP-A-423714、EP-A-427680、EP-A-465426、EP-A-480623、EP-A-532088、EP-A-532089、EP-A-569337、EP-A-626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059等に記載されており、また、それらの化合物の製造法も開示されている。それらの開示を引用して明細書記載の一部とする。
特に、FR900506(=FK506、タクロリムス)、FR900520(アスコマイシン)、FR900523及びFR900525と呼称される化合物は、ストレプトミセス(Streptomyces)属、例えばストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No.9993(寄託機関:日本国茨城県つくば市東1丁目1-3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名称:通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)、寄託日:1984年10月5日、受託番号:微工研条寄第927号)もしくは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス・サブスペシース・ヤクシマエンシス(Streptomyces hygroscopicussubsp.yakushimaensis)No.7238(寄託機関:日本国茨城県つくば市町東1丁目1-3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所、寄託日:1985年1月12日、受託番号:微工研条寄第928号)(EP-A-0184162)により産生される物質であり、特に下記構造式で示されるFK506(一般名:タクロリムス)は、代表的な化合物である。
Figure 2023025211000003
化学名:17-アリル-1,14-ジヒドロキシ-12-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル)-1-メチルビニル]-23,25-ジメトキシ-13,19,21,27-テトラメチル-11,28-ジオキサ-4-アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス-18-エン-2,3,10,16-テトラオン。
化合物(I)のうち、より好ましいものは、R及びR、R及びRの隣接するそれぞれの対が、それらが結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間に形成されたもう一つの結合を形成しており、
とR23は独立して水素原子、
はヒドロキシ基、R10はメチル、エチル、プロピル又はアリル基、
Xは(水素原子、水素原子)又はオキソ基、
Yはオキソ基、
14、R15、R16、R17、R18、R19とR22はそれぞれメチル基、
24は、3-R20-4-R21-シクロヘキシル基、
その中で、R20はヒドロキシ、アルキルオキシ、オキソ、又は
-OCHOCHCHOCH、及び
21はヒドロキシ、-OCN、アルキルオキシ、適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ、1-テトラゾリル又は2-テトラゾリル、-OCHOCHCHOCH、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基、p-トリルオキシチオカルボニルオキシ、
又はR2526CHCOO-(式中、R25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、又は保護されたアミノ基、及びR26は水素原子又はメチル)、又は
20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成し、そしてnは1又は2で示される化合物である。
好ましい化合物(I)としては、タクロリムス、アスコマイシン又はその誘導体、例えばEP427,680の実施例66aに記載の33-エピ-クロロ-33-デスオキシアスコマイシンが挙げられる。他の好ましい化合物(I)としては、例えばEP569337の実施例6dに記載の化合物及びEP626385の実施例8に記載の化合物が挙げられる。
EP-0184162、EP323042、EP424714、EP427680、EP465426、EP474126、EP480623、EP484936、EP532088、EP532089、EP569337、EP626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059、WO96/31514等に記載の化合物もまた、マクロライド系化合物(I)の好ましい例として挙げられ、その開示を引用して明細書記載の一部とする。
本発明の別の態様として、本発明に係る薬剤は有効成分として、以下に示す化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
本発明の薬剤において、有効成分として作用する化合物としては、上記化合物(I)やその塩に代えて使用される又は上記化合物(I)やその塩と組み合わせて使用される、サイクロスポリン、例えばサイクロスポリンA、B、D等が挙げられ、これらはメルクインデックスMERCK INDEX(12版)No.2821に記載されており、その開示を引用して明細書記載の一部とする。
本発明の薬剤において、上記化合物(I)やその塩に代えて有効成分として使用される又は上記化合物(I)やその塩と組み合わせて有効成分として使用される、好ましいマクロライド系化合物としては、メルク インデックス(MERCK INDEX)(12版)No.8288に記載のラパマイシンやその誘導体を挙げることができる。好ましい例としては、WO95/16691の1頁の式Aの40位のヒドロキシが-OR(ここで、Rはヒドロキシアルキル、ヒドロアルキルオキシアルキル、アシルアミノアルキル及びアミノアルキル)で置換されているO-置換誘導体、例えば、40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン、40-O-(3-ヒドロキシ)プロピル-ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシン及び40-O-(2-アセトアミノエチル)-ラパマイシンで挙げられる。
これらのO-置換誘導体は、好適な反応条件下でのラパマイシン(又はジヒドロ又はデオキソラパマイシン)と脱離基(例えば、RX(ここで、Rは、アルキル、アリル又はベンジル部分のようなO-置換基として望ましい有機ラジカル及びXはCCl3C(NH)O又はCF3SOのような脱離基))に結合した有機ラジカルとの反応により、製造し得る。
条件は、XがCCl3C(NH)Oである場合、酸性又は中性条件、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、p-トルエンスルホン酸又はそれらの対応するピリジニウム又は置換ピリジニウム塩の存在下、又はXがCF3SOである場合、ピリジン、置換ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン又はペンタメチルピペリジンのような塩基の存在下であり得る。最も好ましいラパマイシン誘導体は、WO94/09010に記載のような40-O-(2-ヒドロキシ)エチル ラパマイシンであり、前記文献の開示を引用して明細書記載の一部とする。
化合物(I)並びにラパマイシン及びその誘導体は、類似の基本骨格、すなわちトリシクロマクロライド骨格と少なくとも一つの類似の生物学的特性(例えば、免疫抑制作用)を有する。
化合物(I)並びにシクロスポリン、ラパマイシン及びその誘導体の医薬として許容される塩としては、無毒の、医薬として許容される慣用の塩であり、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、例えばトリエチルアミン塩、N-ベンジル-N-メチルアミン塩等のアミン塩のような無機又は有機塩基との塩が挙げられる。
本発明の化合物(I)においては、コンホーマーあるいは不斉炭素原子及び二重結合に起因する光学異性体及び幾何異性体のような1対以上の立体異性体が存在することがあり、そのようなコンホーマーあるいは異性体も本明の化合物の範囲に包含される。
また、化合物(I)は溶媒和物を形成することも出来るが、その場合も本願発明の範囲に含まれる。好ましい溶媒和物としては、水和物及びエタノレートが挙げられる。
(その他の任意の成分)
本発明に係る薬剤は、上記の有効成分の他に、有効成分の活性を阻害する虞がなく、投与対象(以下、患者ともいう))にとって有害でないものである限り、他の疾病、疾患及び状態に対して治療作用を有する治療活性物質を1つ以上含んでいてもよい。
また、投与対象に有害でない、薬学的に受容可能な担体を含んでいてもよい。用いることが可能な担体は、固体、半固体、又は液体型の何れであってもよく、例えば、水、電解質液、及び、糖液等から選択される何れかが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、治療薬は、補助剤を含んでいてもよい。補助剤としては、潤滑剤、安定化剤、防腐剤、乳化剤、増粘剤(粘稠剤)、着色剤、香料(着香剤)、賦形剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、及び滑沢剤などが挙げられる。
(剤型)
剤型としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、トローチ剤、ペレット、エマルジョン、懸濁液、及び、公知のその他の形態が挙げられる。これらの中でも、例えば、経口投与製剤として、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、及び、ゼリー剤のうちのいずれかであることが好ましく、錠剤、カプセル剤、及び、顆粒剤のうちのいずれかであることがより好ましく、錠剤であることがさらに好ましい。なお、後述する通り、例えば、注射剤、坐剤、及び、経皮吸収型製剤のような非経口投与製剤として製剤されてもよい。
(薬剤の製造方法)
本発明に係る薬剤は、公知の製造方法を利用して製造することができる。一例として、有効成分と任意のその他の成分とを成分毎に別途に製造したのち、それぞれの成分を所望の含有量となるように混合することによって製造される。
(薬剤の投与対象)
=対象生物種=
本発明の薬剤の投与対象は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類などが挙げられ、中でも哺乳動物が好ましい。哺乳類としては、ヒトならびにヒト以外の動物として、ウシ、ウマ、ブタ及びヒツジなどのような家畜、並びに、犬、猫、ラット及びウサギなどのような愛玩動物が挙げられ、好ましくはヒトが挙げられる。また、鳥類としてはニワトリ、カモ、アヒルなどの家禽類が挙げられる。
=妊娠状態の不良=
本発明の薬剤の投与対象は、妊娠状態の不良を伴っている上記対象である。ここで、妊娠状態の不良とは、疾患又は疾病に分類されるものの他にも、正常な妊娠状態と比較して不良な状態にあることも包含する概念である。すなわち、妊娠状態の不良とは、母体における受胎及び胎児の状態の不良のみならず、妊娠中における母体自体の健康状態の不良等も包含する。妊娠中とは、妊娠確立(妊娠成立と同義)から出産までの期間のうちの任意の期間を指し、妊娠初期、妊娠中期及び妊娠後期の全期間を含む。ここで、妊娠初期とは、妊娠成立から第13週までを指し、妊娠中期とは、妊娠第14週から第27週までを指し、妊娠後期とは第28週から出産日までを指す。さらに妊娠状態の不良とは、出産後の母体の健康状態の不良及び出産後に出生児に障害として現れる妊娠中及び産後の母体の健康状態も包含する。
妊娠状態の不良の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、1)不妊、2)不育、及び、3)不妊や不育以外の妊娠状態の不良(例えば、妊娠合併症等)、から選択される少なくとも一つが挙げられ、これらの中でも、後述するように、投与対象の免疫異常に起因する妊娠状態の不良が、本発明の薬剤の投与によって改善の対象とすべき不良としてより好適である。
=不妊、不育=
本明細書において「不妊」とは、広義な意味で用いられており、正常な状態と比較して母体が妊娠困難な状態にあることを指し、不妊症を含む概念である。ここで不妊症とは、挙児を希望したのち避妊なしで1年以内に妊娠が成立しない場合を指す。
一実施形態において、本発明の薬剤の投与対象となる、不妊を伴う対象は、既存の不妊症の治療を受けていてもよい。かかる不妊症の治療方法としては、人工授精、体外授精、及び排卵誘発剤の投与などが挙げられる。
このうち、体外授精の具体的な方法としては、採取した卵子と精子をシャーレ内で受精させて受精卵を子宮に戻す胚移植(In Vitro Fertilization Embryo Transfer: IVF-ET)、及び顕微鏡下で精子を直接卵子に注入することによって授精を行う、顕微授精(Intracytoplasmic Sperm Injection: ICSI)などの方法が挙げられる。IVF-ETはさらに、新鮮な胚を移植に用いる新鮮胚移植(新鮮ET)及び採取後凍結保存した胚を凍結融解して移植に用いる凍結融解胚移植(FET)が挙げられる。対象は、胚移植や顕微授精等を複数回行っても妊娠が成立しない(hCGの明らかな上昇が見られない)者でもよく、3回以上、4回以上、或いは5回以上の治療を行っても妊娠が成立しない者にも好適に適用可能である。
不妊症を含む不妊の原因としては、卵因子、卵管因子、子宮因子、頸管因子及び免疫因子などがある。卵因子の具体例として、抗プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群、各種ストレス、ダイエット及び早発性卵巣機能症不全などによって生じる排卵障害がある。また、卵管因子の具体例として、クラジミア性卵管炎及び卵管周囲炎などによって生じる、卵管の閉塞、狭窄又は癒着などがあり、子宮因子の具体例としては、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮の先天奇形、子宮内腔癒着症(アッシャーマン症候群)などがある。頸管因子の具体例としては、子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常又は粘液分泌不全などがある。免疫因子の具体例としては、抗精子抗体の産生などがある。ここで原因不明な不妊とは、上記された因子のいずれも該当せず、原因が特定されないものを指す。原因不明な不妊の中には、免疫異常(免疫細胞の異常や、抗リン脂質抗体症候群等の自己免疫疾患も含む)に起因する不妊が含まれると考えられ、かかる原因不明な不妊を伴う対象も、本発明の薬剤の投与対象として好適である(実施例も参照のこと)。特に、自己免疫疾患を伴う場合又は伴わない場合において、免疫異常に起因して、受精卵又は胚の子宮内膜への着床が阻害されていることが主因と考えられる不妊を伴う対象は、本発明の薬剤の投与対象として好適である。
本明細書において「不育」とは、妊娠した後に母体の子宮内において胎児が発達不能な状態又は胎児の発達遅延もしくは発達不良がみられる状態を指し、不育症を含む概念である。ここで、不育症とは、妊娠(自然妊娠の他、人工授精や体外受精の場合も含む)は成立するものの、流産又は死産を2回以上繰り返し、挙児に至らない場合を指す。なお、流産、早産又は死産を1回経験していることや2回繰り返すことも、本明細書における「不育」の概念には含まれる。
不育症を含む不育の原因としては、遺伝的因子、解剖的因子、内分泌的因子、凝固的因子及び自己免疫的因子などがある。遺伝的因子の具体例として、夫婦染色体異常及び胎児染色体異常などがある。解剖的因子の具体例として、筋腫及び子宮形体異常などがある。分泌的因子の具体例として、黄体機能不全、高プロラクチン血症、甲状腺機能異常及び血糖異常などがある。凝固的因子の具体例として、血液凝固異常がある。自己免疫的因子の具体例として、抗リン脂質抗体の産生(抗リン脂質抗体症候群)がある。ここで原因不明な不育とは、上記された因子のいずれも該当せず、原因が特定されないものを指す。原因不明な不育の中には、免疫異常(免疫細胞の異常や、抗リン脂質抗体症候群以外の自己免疫疾患も含む)に起因する不育が含まれると考えられ、かかる原因不明な不育を伴う対象や、自己免疫的因子(抗リン脂質抗体症候群)に起因した不育を伴う対象も、本発明の薬剤の投与対象として好適である(実施例も参照のこと)。特に、1)免疫異常に起因して、受精卵又は胚が母体から異物として排除される免疫機構が亢進していることが主因と考えられる不育を伴う対象、及び/又は、2)免疫異常に起因して、胎盤構築が不良になることが主因と考えられる不育を伴う対象は、本発明の薬剤の投与対象として好適である。
なお、上述の通り、抗リン脂質抗体症候群以外の自己免疫疾患を伴う不妊及び不育も、本発明の薬剤の投与対象である。このような自己免疫疾患としては、例えば、全身性エリテマトーデス、ANCA関連血管炎(クリオグロブリン血症性血管炎、IgA血管炎、低補体血症性蕁麻疹様血管炎、結節性多発動脈炎、川崎病、抗GBM病、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、及び、悪性関節リウマチ等が挙げられる。抗リン脂質抗体症候群を含む自己免疫疾患は、血栓の形成等を通じて胎盤の構築不良を引き起こしうる。胎盤の構築の不良は、血栓の形成の他、胎盤の血管炎、及び胎盤の炎症等も伴い得る。本発明の薬剤を投与することによって、自己抗体の不所望な活動を抑制することや、胎盤構築の不良を改善することが期待できる。
=不妊や不育以外の妊娠状態の不良=
本明細書において「不妊や不育以外の妊娠状態の不良」には、例えば、妊娠高血圧症候群、血栓症、梗塞、心不全(周産期心筋症等)、及び、肺水腫等の、妊娠に伴い生じる疾患又は疾病(妊娠合併症等)も含まれるが、疾患又は疾病に分類されるものの他にも、正常な妊娠状態と比較して不良な状態にあることも包含する概念である。これらの中では、妊娠高血圧症候群を発症する可能性が高い(例えば、妊娠高血圧症候群の発症履歴を有する)対象が、本発明の薬剤の投与対象としてより好適である。メカニズムは必ずしも定かではないが、この治療により母子間での免疫学的な関係が良好になるため、胎盤構築がスムーズとなり、母体のストレスも軽減されるため、妊娠合併症の回避への可能性も期待できる。
妊娠高血圧症候群とは、妊娠中、主に妊娠後期及び産後12週までの期間にみられる、高血圧、又は高血圧と高血圧に付随して生じる浮腫及び蛋白尿などの症状とを生じる症候群を指す。妊娠高血圧症候群は、詳細には、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、加重型妊娠高血圧腎症及び子癇にさらに病型分類される。妊娠高血圧症候群は反復性があり、以前の妊娠時に妊娠高血圧症候群の既往を有する場合、次の妊娠においても妊娠高血圧症候群を発症するリスクが非常に高い。
妊娠高血圧症候群の原因としては、胎盤の虚血及び低酸素状態による血管内皮障害などがある。よって、妊娠高血圧症候群を有する場合、胎盤構築の不良が生じ得る。さらに結果として胎児発育不全、胎盤早期剥離、胎児機能不全及び胎児死亡が生じる可能性がある。
妊娠高血圧症候群の患者の場合、本発明の薬剤を投与することによって胎児成分であるトロホブラストへの拒絶が抑制され(一種の免疫異常の抑制)、子宮内膜らせん動脈をより太いらせん動脈への再構築が促進されることが期待できる。そのため良好な胎盤の構築を促進することができる。
=薬剤の投与対象の年齢=
投与対象の年齢は、妊娠可能な年齢であればよい。投与対象がヒトの場合は、例えば、16歳~50歳までが好ましく、16歳~45歳までがより好ましく、16歳~40歳までがさらに好ましい。16歳以上であれば、本人の承諾が得られる。また、不妊の患者である場合には、40歳以下であれば、妊娠の確立の可能性がより高いため、本発明にかかる薬剤の効果をより効率的に得ることができる。投与対象の年齢は、これに限定されるものではないが、一例では、30歳~45歳までであり、33歳~43歳までであり、33歳~41歳までであり、33歳~39歳までである。
=薬剤の投与対象のより好ましい一例=
上述の薬剤の投与対象は、上述した妊娠状態の不良以外の疾病、疾患又は状態を有していないことが好ましく、特に、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔癒着、子宮における先天的な異常及び卵管留水などの子宮に関連する疾病、疾患又は異常を有していないことがより好ましい。また、本発明の薬剤によって重篤な影響を受けるリスクが高い疾病、疾患又は状態を有していないことが好ましい。このような疾患等としては、例えば、慢性感染症などがあげられる。
=薬剤の投与対象とTh1/Th2細胞比率=
また、一実施形態では、上記した薬剤の投与対象におけるTh1/Th2細胞比率を決定して、当該対象への薬剤の投与の要否や、薬剤の投与量の決定に用いてもよい(このプロセスの詳細は実施例も参照のこと)。例えば、薬剤の投与対象におけるTh1/Th2細胞比率は、健常者と比較して上昇している。より具体的な一例では、Th1/Th2細胞比率が、健常者と比較して、10%~800%上昇している対象が、本発明の薬剤投与の好ましい対象であり、10%~400%上昇している対象が本発明の薬剤投与のより好ましい対象であり、10%~200%上昇している対象が本発明の薬剤投与のさらに好ましい対象であり得る。具体的なTh1/Th2細胞比率の数値としては、Th1/Th2細胞比率が10~50である対象が本発明の薬剤投与の好ましい対象であり、10~40である対象が本発明の薬剤投与のより好ましい対象であり、10~30である対象がさらに好ましい本発明の薬剤投与の対象であり得る。なお、後述する実施例に関すれば、健常者のTh1/Th2細胞比率の平均値は7~8程度であり、治療を受けた群のTh1/Th2細胞比率の最高値は30~40程度であった。
ここで、健常者とは、改善の目的となる妊娠状態の不良を伴っていない個体であり、例えば不妊の改善を目的とする場合は、少なくとも不妊を伴っていない個体を指し、不育を改善の目的とする場合は、少なくとも不育を伴っていない個体を指す。健常者とは、好ましくは、改善の目的となる妊娠状態の不良を伴わず、かつ、既知の他の疾患や疾病を発症していない個体を指す(改善の目的外の妊娠状態の不良は伴う場合があってもよい)。より好ましくは、健常者とは、上述した全ての妊娠状態の不良を伴っていない個体を指し、さらに好ましくは、上述した全ての妊娠状態の不良を伴わず、かつ、既知の他の疾患や疾病を発症していない個体を指す。
Th1/Th2細胞比率の決定は、特に限定されないが、薬剤の投与を行う予定日の直前(当日、前日、又は2日前)~6カ月の間に行うことが好ましく、薬剤の投与を行う予定日の直前~3カ月がより好ましく、薬剤の投与を行う予定日の直前~2カ月がさらに好ましく、薬剤の投与を行う予定日の直前~1カ月が特に好ましい。より具体的な一例では、薬剤の投与対象が、IVF-ETやICSI等の治療を受ける場合においては、治療を受ける直前、2回前、3回前、4回前、5回前、又は6回前の生理周期において、Th1/Th2細胞比率の決定を行うことが好ましく、直前又は2回前の生理周期において、Th1/Th2細胞比率の決定を行うことがより好ましく、直前の生理周期において、Th1/Th2細胞比率の決定を行うことがさらに好ましい。なお、生理周期が免疫状態に与える影響を考慮すると、Th1/Th2細胞比率の決定は、健常者と薬剤投与の対象とで、生理周期上の同じタイミングで行うことが好ましい。また、Th1/Th2細胞比率の決定は、生理周期上の低体温期(月経~排卵まで)に行うことが好ましい。
特に限定されないが、より具体的には例えば、不妊を伴う対象におけるTh1/Th2細胞比率の決定は、少なくとも受精卵又は移植胚の着床する好ましくは1または2日前~180日前までの期間、より好ましくは1または2日前~60日前までの期間、さらに好ましくは2日前~30日前までの期間であって、薬剤の投与を行う予定日の前に行うことができる。特に限定されないが、より具体的には例えば、不妊以外の妊娠状態の不良(不育など)を伴い得る対象におけるTh1/Th2細胞比率の決定は、妊娠確認後の、好ましくは0日~60日までの期間、より好ましくは0日~30日までの期間、さらに好ましくは0日~20日或いは0日~15日までの期間、特に好ましくは0日~10日までの期間であって、薬剤の投与を行う予定日の前に行うことができる。
Th1/Th2細胞比率は、薬剤の投与対象の体内のいずれの組織中の値でもよいが、好ましくは末梢血中の値である。
=薬剤の投与対象の特に具体的な一例=
<不妊症>
特に好ましい患者の一例は、下記1)~2)に合致する患者であり、3)にも合致することがより好ましく、4)~6)にも合致することがさらに好ましい。
1)明らかな原因を認めない重症不妊症例のうち形態が良好であることが確認できる受精卵(新鮮胚、凍結胚、初期胚、胚盤胞を問わない)の胚移植を4回以上行っても科学的な妊娠(hCGの上昇)にもいたらない着床障害の患者。
2)40歳未満の患者。
3)対象者に対し妊娠前の体調良好な低体温期(月経~排卵まで)に免疫学的検査(スクリーニング)を行い、Th1/Th2細胞比率が高値である患者。
4)活動性のある感染症をもっていない患者。
5)HBV、HCV、HIVの持続感染症をもっていない患者。
6)タクロリムスの成分に対し過敏症の既往歴のない患者。
<不育症>
特に好ましい患者の一例は、下記1)又は2)に合致する患者(この中に原因不明の不育症の患者が含まれる)であり、3)~5)にも合致することがより好ましい。
1)血清学的検査で不育に関連した明らかな異常所見を認めない重症不育症患者。
2)治療に抵抗性の習慣性流産(抗リン脂質抗体症候群を含む)患者。
3)活動性のある感染症をもっていない患者。
4)HBV、HCV、HIVの持続感染症を持っていない患者。
5)タクロリムスの成分に対し過敏症の既往歴のない患者。
<全般>
特に限定されないが、本発明の薬剤の投与対象からは、妊娠状態の改善以外の医療上の目的においてタクロリムス又はその誘導体の投与を継続的に受けている患者(例えば臓器移植を受けて、タクロリムスを継続的に投与されている患者等)は除外されてもよい。
(投与経路/投与方法)
本発明の薬剤の投与方法(投与経路)は、投与対象の年齢、状態、及び、治療期間等により適宜決定することができる。具体的には、経口投与又は非経口投与の何れであってもよいが、経口投与であることが好ましい(実施例は経口投与)。非経口投与としては、注射投与、坐剤としての投与、経皮吸収型製剤としての投与などの方法が挙げられる。注射投与の種類としては、例えば、筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内、及び、局所注射が挙げられる。また、本発明の薬剤は、経皮、経鼻、経膣、及び、直腸経由などの様々な経路を介して投与することができる。
(投与量)
薬剤の投与量は、薬剤投与を受ける患者の疾病、疾患又は状態の種類、重篤度、各種検査結果、及び薬剤の有効成分の種類などによって異なる。さらに、薬剤の投与量は、処置されるべき患者の年齢、本発明の治療方法による治療の実施回数、及び、各種検査結果などに依存しても異なる。一例として、本発明の薬剤は、薬剤に含まれる有効成分の含有量の観点で、生体移植及び免疫系疾患等の治療において免疫抑制剤として用いられる場合の投与量よりも低用量となる用量において投与される。例えば、薬剤の投与対象がヒトである場合は、特に限定されるわけではないが、一日につき、有効成分の量として、好ましくは0.5~5mgか1~5mgの範囲内、より好ましくは0.5~4.5mgか1~4.5mgの範囲内、さらにより好ましくは0.5~4mgか1~4mgの範囲内、さらにより好ましくは0.5~3.5mgか1~3.5mgの範囲内、さらに好ましくは0.5~3mgか1~3mgの範囲内、最も好ましくは1~2mgの範囲内の量を投与する。なお、以下、特に断りが無い限り、薬剤の投与量に関する記載はヒトが対象である場合に適用され、投与量は有効成分の量として表されているものとする。
また、特に限定されないが、経口による投与の場合、一日当たりの投与回数は、好ましくは1~4回、より好ましくは1~3回さらに好ましくは1~2回である。
また、必要に応じて、上述したTh1/Th2細胞比率(実施例も参照)をあらかじめ決定し、その比率の数値に基づいて投与量を決定してもよい。また、不育の治療を含む、妊娠中及び出産後のある期間以上の持続的投与においては、治療期間中、Th1/Th2細胞比率を一定の間隔で測定し、新たに測定するごとに測定結果に基づいて投与量を決定してもよい。
Th1/Th2細胞比率の数値に基づいて投与量を決定する一例として、Th1/Th2細胞比率が、10以上である場合に一日につき、有効成分の量として、好ましくは0.5~5mgか1~5mgの範囲内、より好ましくは0.5~4.5mgか1~4.5mgの範囲内、さらにより好ましくは0.5~4mgか1~4mgの範囲内、さらにより好ましくは0.5~3.5mgか1~3.5mgの範囲内、さらに好ましくは0.5~3mgか1~3mgの範囲内、最も好ましくは1~2mgの範囲内の量を投与する。他の例として、Th1/Th2細胞比率が、10以上で13以下の範囲内の場合に一日につき、有効成分の量として、好ましくは0.5~3mgか1~3mgの範囲内、より好ましくは0.5~2mgか1~2mgの範囲内、さらに好ましくは0.5~1mgの範囲内の量を投与する。他の例として、Th1/Th2細胞比率が、13を超え16以下(例えば15.8以下)の範囲内の場合に一日につき、有効成分の量として、好ましくは0.5~4mgか1~4mgの範囲内、より好ましくは0.5~3.5mgか1~3.5mgの範囲内、さらに好ましくは1~3mgか1.5~2.5mgの範囲内の量を投与する。他の例として、Th1/Th2細胞比率が、15以上の場合(例えば15.8を超える場合)に一日につき、有効成分の量として、好ましくは0.5~5mgか1~5mgの範囲内、より好ましくは0.5~3.5mgか1~3.5mgの範囲内、さらに好ましくは2~3.5mgか2.5~3.5mgの範囲内の量を投与する。
また、本発明に係る改善方法を行った回数(妊娠の回数)に応じて、薬剤の投与量を増加させることもできる。例えば、不妊の治療(改善の一態様)において、治療回数を追うごとに、一日当たりの投与量を前回の治療時の投与量より、好ましくは0.5~3mg(有効成分の量。以下同じ。)ずつ、より好ましくは0.5~2mgずつ、さらにより好ましくは0.5~1mgずつ増量させる。つまり最初の治療期間の開始から終了までに投与する薬剤の一日当たりの投与量に対し、最初の治療期間に続けて行われる2回目の治療期間における一日当たりの投与量を0.5~3mg増加する。これを妊娠が成立するまでの単一の治療期間毎に毎回繰り返す。
不妊の治療(改善の一態様)において治療回数は、好ましくは2回~5回の繰り返しが許容され、より好ましくは2回~4回の繰り返しが許容される。なお、治療繰り返しにおいて、最終的な治療期間の終了時における一日当たりの投与量が、本発明の治療方法において好ましい投与量(一日、有効成分量で5mgまで)を超えないことが好ましい。
また、不育の治療(改善の一態様)においては、妊娠期間中、Th1/Th2細胞比率を一定期間ごとに測定し、Th1/Th2細胞比率が上昇した場合毎に毎回一日当たりの投与量を、好ましくは0.5~3mg(有効成分の量。以下同じ。)、より好ましくは0.5~2mg、さらに好ましくは0.5~1mgずつ増量させてもよい。
なお、上記の投与量は、女性全般に適用可能な数値であるが、標準的な体重から極端に離れる女性(例えば、体重が45kg未満の女性や、75kgを越える女性)が対象の場合は、上記投与量を60(kg)で除してkg体重当りの投与量を求め、対象の実体重に応じて実際の投与量を調整してもよい。
また、ラパマイシンまたはこの誘導体を有効成分として含む薬剤を用いる場合は、当該有効成分の種類に応じた適切な投与量を設定可能であるが、一例として、上記した投与量を適用する他に、上記した投与量に2/3をかけた投与量を適用する態様を採用してもよい。シクロスポリンまたはこの誘導体を有効成分として含む薬剤を用いる場合は、当該有効成分の種類に応じた適切な投与量を設定可能であるが、一例として、有効成分の量で一日あたり1000mg以下、好ましくは60mg以下の投与量を適用する態様を採用してもよい。
(薬剤の投与の時期及び期間)
本発明の薬剤の投与の時期及び期間は、改善の対象となる疾病、疾患又は状態によって異なる。ヒト対象が不妊を伴う場合、少なくとも受精卵又は移植胚の子宮内膜への着床の、好ましくは1または2日前~60日前、より好ましくは2~30日前、さらに好ましくは2~15日前から、着床の好ましくは0~100日後、より好ましくは0~15日後(0~1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15日後)までの期間にわたって投与されることが好ましい。対象が人工授精又は体外受精の治療を受けた患者である場合、精子注入又は胚移植の好ましくは1または2日前~60日前、より好ましくは2~30日前から、さらに好ましくは2~15日前から、精子注入又は胚移植の好ましくは0~100日後、より好ましくは0~15日後(0~1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15日後)までの期間にわたって行われる。
また、ヒト対象が不育を伴う場合は、好ましくは妊娠確立の確認当日から200日後まで、より好ましくは妊娠確立の確認当日から300日後まで、さらに好ましくは、妊娠確立の確認当日から出産までであり、連続的に投与されることが好ましい。
また、ヒト対象が妊娠合併症(妊娠高血圧症候群等)を伴う危険性がある場合は、好ましくは妊娠確立の確認当日から200日後まで、より好ましくは妊娠確立の確認当日から300日後まで、さらに好ましくは、妊娠確立の確認当日から出産まで、最も好ましくは妊娠確立の確認当日から出産後60日までであり、連続的に投与されることが好ましい。
また、投与量を妊娠初期、中期及び後期のぞれぞれの時期において適宜変更することも可能である。例えば、妊娠初期、中期及び後期と、下記妊娠期間を経るにつれて段階的に一日当たりの薬剤の投与量を0.5~1mgずつ減らしていってもよい。又は、薬剤を妊娠初期のみ投与し、中期以降は投与を中止する態様であってもよく、妊娠中期までは投与を続けるが、後記以降は投与を中止する態様であってもよく、薬剤を妊娠初期及び後期のみ投与し、中期に投与を休止する態様であってもよい。
さらに、妊娠中の各期間の妊娠状態の検査結果が良好か否かに応じて連続する投与期間を調節してもよい。妊娠確立の100日後以降であれば、母体は妊娠安定期に入る。そのため、薬剤投与量を、十分な治療効果が得られる限り投与量をできるだけ減らすことによって、母体及び胎児への薬剤の副作用の影響を最低限に抑え、投与対象への身体的及び負担を最小にとどめることができる。
〔2.妊娠状態を改善する方法〕
本発明に係る薬剤を用いた妊娠状態を改善する方法(その一態様は妊娠状態の不良を治療する方法である)も本発明の範囲内である。以下、本発明の妊娠状態を改善する方法の詳細について説明する。
一実施形態において本発明の妊娠状態を改善するための方法は、本発明に係る薬剤を対象に投与する工程(投与工程)を包含する。妊娠状態の改善とは、不良な妊娠状態を良好な状態又は正常な状態へ改善することを意味し、不良な妊娠状態となることを防止することも含む概念である。不良な妊娠状態の具体例としては、不妊、不育及び妊娠高血圧症候群等の妊娠合併症等が挙げられる。妊娠状態の不良の概念に包含される疾病、疾患及び状態は、上記の〔1.薬剤(医薬組成物)〕の(薬剤の投与対象)の項目で説明した通りである。また、投与される薬剤は有効成分として、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含むか、シクロスポリン、ラパマイシン又はこれらの誘導体(その薬学的に許容される塩等も包含する)を有効成分として含む。本発明にかかる薬剤についても、上記した〔1.薬剤(医薬組成物)〕の項目で説明したものが包含される。さらに、本発明の治療方法を適用する対象については、上記の〔1.薬剤(医薬組成物)〕の(薬剤の投与対象)の項目で説明したとおりである。
また、さらなる実施形態において本発明の治療方法は、投与工程に加え、1)Th1/Th2細胞比率を測定する工程、及び/又は、2)人工授精(精子の子宮への注入)を行うか、体外受精で得た受精卵又は胚を子宮内膜に移植する工程をさらに包含していてもよい。以下、各工程についてより詳細に説明する。
(投与工程)
投与工程は、本発明に係る薬剤を対象に投与する工程である。
本発明の方法が、ヒト対象における不妊を改善するための方法(治療方法を含む)であるとき、投与工程における薬剤投与期間は、少なくとも受精卵又は移植胚の子宮内膜への着床の、好ましくは1または2日前~60日前、より好ましくは2~30日前、さらに好ましくは2~15日前から、着床の好ましくは0~100日後、より好ましくは0~15日後までの期間にわたって投与されることが好ましい。ヒト対象が人工授精又は体外受精の治療を受けた患者である場合、精子注入又は胚移植の好ましくは1または2日前~60日前、より好ましくは2~30日前から、さらに好ましくは2~15日前から、精子注入又は胚移植の好ましくは0~100日後、より好ましくは0~15日後までの期間にわたって行われる。
本発明の方法が、ヒト対象における不育を改善するための方法(治療方法を含む)であるとき、投与工程における薬剤投与期間は、好ましくは妊娠確立の確認当日から200日後まで、より好ましくは妊娠確立の確認当日から300日後まで、さらに好ましくは、妊娠確立の確認当日から出産までである。
本発明の方法が、ヒト対象における妊娠高血圧症候群等の妊娠合併症を改善する(予防も含む)ための方法であるとき、投与工程における薬剤投与期間は、好ましくは妊娠確立の確認当日から200日後まで、より好ましくは妊娠確立の確認当日から300日後まで、さらに好ましくは、妊娠確立の確認当日から出産まで、最も好ましくは妊娠確立の確認当日から出産後60日までである。
上記期間における投与は、連続的(すなわち、期間中は毎日投与する)であっても、間欠的(すなわち、期間中に投与しない日が含まれていてもよい)であってもよく、詳細には〔1.薬剤(医薬組成物)〕の(薬剤の投与の時期及び期間)の記載が適用される。なお、間欠的な投与の具体的な一例としては、所定の日数(1日、2日、3日)おきの規則性をもって投与する形態や、複数日からなる所定の中止期間を1回もしくは複数回設けて投与する形態などが挙げられる。
投与量については〔1.薬剤(医薬組成物)〕の(投与量)の項目に記載したとおりである。
(Th1/Th2細胞比率を測定する工程)
また、さらなる実施形態において本発明の方法は、Th1/Th2細胞比率を測定する工程をさらに包含していてもよい。決定したTh1/Th2細胞比率は、〔1.薬剤(医薬組成物)〕の欄で記載の通り、当該対象への薬剤の投与の要否や、薬剤の投与量の決定に用いてもよい。Th1/Th2細胞比率を測定する工程は投与工程の前に行われる。ここで、投与工程の前とは、一つの投与期間における投与と投与の間も指すが、一つの投与期間(治療期間)における最初の投与の前も指す。
本発明の方法が不妊を改善するための法であるとき、Th1/Th2細胞比率を測定する工程は、例えば、受精卵又は移植胚の着床する好ましくは1または2日前~180日前までの期間、より好ましくは1または2日前~60日前までの期間、さらに好ましくは2日前~30日前までの期間であって、薬剤の投与を行う予定日の前に行うことができる。
本発明の治療方法が、不育、妊娠高血圧症候群等の妊娠合併症を含む不妊以外の妊娠状態の不良を改善するための治療方法であるとき、Th1/Th2細胞比率を測定する工程は、妊娠確認後の、好ましくは0日~60日までの期間、より好ましくは0日~30日までの期間、さらに好ましくは0日~20日或いは0日~15日までの期間、特に好ましくは0日~10日までの期間であって、薬剤の投与を行う予定日の前に行うことができる。
(人工授精を行うか、体外受精で得た受精卵又は胚を子宮内膜に移植する工程)
本発明に係る薬剤を用いた妊娠状態を改善する方法を適用するに当たり、対象(ヒト対象を含む)は、人工授精(精子の子宮への注入)の治療を受けるか、体外受精で得た受精卵又は胚を子宮内膜に移植する治療を受けていてもよい。係る治療を受けて着床している受精卵や移植胚に関わる妊娠状態を改善することが、本発明の特に好ましい一態様である。体外授精の具体的な方法としては、IVF-ET、ICSIなどの方法が挙げられる。IVF-ETはさらに、新鮮な胚を移植に用いる新鮮胚移植(新鮮ET)及び採取後凍結保存した胚を凍結融解して移植に用いる凍結融解胚移植(FET)が挙げられ、中でもFETを受けていることが好ましい。本発明の薬剤を投与することによって、これら治療を受けた対象の妊娠成立並びに出産の効率を高めることができ、さらには、妊娠合併症の発症等を抑制することもできる。
ただし、不妊又は不育を有する対象における妊娠の成立は自然妊娠によるものであってもよく、自然妊娠における妊娠状態を改善することも、本発明の範疇である。
〔4.その他の態様〕
また、本発明は、妊娠状態を改善するための薬剤の製造における、上述の化合物(I)、ラパマイシン又はその誘導体、シクロスポリン又はその誘導体、及びその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも一種の化合物の使用も、本発明の範疇に包含される。
〔5.まとめ〕
すなわち、本発明の範疇には、以下の態様例が含まれている。
1)上記一般式(I)で表される化合物(化合物(I))又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、妊娠状態を改善するための薬剤。
2)上記化合物がタクロリムス、又はその薬学的に許容される塩である、1)に記載の薬剤。
3)免疫異常に起因する妊娠状態の不良を改善する、1)又は2)に記載の薬剤。
4)不妊、不育、及び、妊娠高血圧症候群からなる群より選択される少なくとも一種の妊娠状態の不良を改善する、1)~3)の何れかに記載の薬剤。
5)上記不妊及び不育が自己免疫疾患を伴うものである、4)に記載の薬剤。
6)上記自己免疫疾患が抗リン脂質抗体症候群である、5)に記載の薬剤。
7)上記有効成分の量として一日あたり5mg以下が、治療の対象に対して投与される、1)~6)の何れかに記載の薬剤。
8)上記有効成分の量が一日あたり1mg以上で3mg以下の範囲内である、7)に記載の薬剤。
9)Th1/Th2細胞比率が健常者と比較して上昇している対象に対して投与される、1)~8)の何れかに記載の薬剤。
10)体外授精によって得た胚の移植を受けている対象に対して投与される、1)~9)の何れかに記載の薬剤。
11)妊娠状態の不良としての不妊を対象とする場合は、少なくとも受精卵又は移植胚の子宮内膜への着床の1日前または2日前から着床後0日の期間において投与され、不妊以外の妊娠状態の不良を対象とする場合は、少なくとも妊娠の確立から200日目までの期間にわたって投与される、1)~9)の何れかに記載の薬剤。
12)上記化合物(I)又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、妊娠状態を改善するための薬剤を投与する工程を含む、妊娠状態を改善する方法。
13)上記薬剤は、上記2)~11)に記載した何れかの形態又は態様によって投与される、12)に記載の方法。
〔実施例1〕
<本実施例の課題>
発明者らは、Tヘルパー(Th)1/Th2サイトカイン産生細胞の比率(以下、「Th1/Th2細胞比率」とも称する)が高い、反復着床不全(RIF)の患者に対する、タクロリムスを用いた免疫抑制治療の効果を評価した。
<本実施例で用いた研究の手法>
この研究は、杉山クリニックにおいて、2011年11月から2013年10月の間に、末梢血中のTh1(CD4+/IFN-γ+)/Th2(CD4+/IL-4+)細胞比率が高いRIF患者(n=42)に対して行った、治療に関する予見的なコホート研究である。25人の患者をタクロリムスで治療し(治療群)、17人の患者は治療を行わなかった(対照群)。
治療群には、胚移植(ET)の2日前から妊娠テストの日まで、合計で16日間、タクロリムスの投与を継続した。タクロリムスの一日投与量(1~3mg)は、Th1/Th2細胞比率に基づいて決定した。
<結果>
治療群の医学的な妊娠率は64.0%であり、対照群の結果(0%)と比較して著しく高い結果であった(P<0.0001)。治療群において、流産率は6.3%であり、生存出生率は60.0%であった(P<0.0001)。治療群において、タクロリムスによる重篤な副作用は見られなかった。いずれの患者も、妊娠期間中において、出産上の合併症は発症しなかった。
<結論>
タクロリムスを用いた免疫抑制治療によって、反復着床不全でかつ末梢血中のTh1/Th2細胞比率が高い女性の出産成績を改善した。
(イントロダクション)
近年、世界中で、対外授精(IVF)及び胚移植(ET)の発生率が高まっている。これに伴い、反復着床不全を含む、複数回のIVFの失敗を経験する女性の数が増加している。IVF/ETを行う際、受精後2~5日の間に、胚を子宮腔へ移植する。いわば半同種移植片(semi-allograft)たる胚が、母体側の免疫寛容の確立を伴って、母体の脱落膜に成功裏に着床することによって、妊娠が確立される(文献2)。着床時における、適切な免疫応答の確立が、成功裏な着床の鍵である。従って、免疫上の病因学は、IVF/ET後のRIFにおいて重要な役割を果たしていると考えられる。
Tヘルパー(Th)1/Th2細胞は、例えば免疫拒絶や免疫寛容等の免疫応答において重要な役割を果たす(文献3)。妊娠はTh2優勢に関連しており、Th1免疫応答は胚の拒絶に関連していることは、一般的に合意されている(文献4、5)。胚の拒絶の根底にあるメカニズムは、同種移植における拒絶反応に類似していると考えられる(文献6)。IVF/ETの間における移植された胚は、同種移植の拒絶反応と同様の免疫応答によって、着床に失敗しうる。
過去数十年において、移植片の生着率は劇的に改善された(文献7)。この成功は、新規な免疫抑制剤の開発に帰するところが大きい。タクロリムス(プログラフ、アステラス製薬(東京))は、同種異系の器官移植後に用いられてきた主要な免疫抑制剤の一つであり、移植を受ける患者の免疫系における同種への応答性を低下させて、移植された器官が拒絶されるリスクを低減させるために用いられてきた(文献8)。タクロリムスは、同種抗原によって誘導されるリンパ球の増殖を抑制すること、細胞障害性T細胞の生成、IL-2受容体の発現、及び、IL-2及びIFN-γ等のT細胞由来の可溶性メディエータの産生によって、同種移植片に対する免疫拒絶を抑制し、その生着を促進することが報告されている(文献9)。タクロリムスは、異なるTリンパ球のサブセットが関係している症状であるにも関わらず、移植片対宿主間の疾患、又は、リウマチ性関節炎のような他の免疫上の不調を、効果的に制御することが報告されている(文献10、11)。RIFを伴っている女性は、末梢血における上昇したTh1/Th2細胞比率を伴う、増強したTh1免疫応答を有している(文献4)。したがって、タクロリムスのような免疫抑制剤が、ART(生殖補助医療)サイクル後のRIFの履歴を有する女性、特に増強したTh1免疫応答を示す女性における着床率及び妊娠結果を改善する可能性がある。この研究では、本願発明者らは、RIFを伴い、かつ、末梢血における上昇したTh1/Th2細胞比率を伴う女性に対するタクロリムスの治療効果を研究した。
<材料及び方法>
(研究の対象群)
杉山クリニック(東京、日本)の生殖医療科における、IVF/ETサイクル後に5回以上のRIFの履歴がある全81人の患者を、2011年の11月~2014年の2月の間に、継続的に、本研究にエンロールした。本研究は、杉山クリニックの院内審査会によって承認されている。全ての患者から、本研究に参加する事前に、署名されたインフォームドコンセントを取得した。
対象となる患者は、IVF/ETが可能であること、及び、形態学的かつ発達学的に良い品質に達している胚を、適切に準備された子宮内膜(子宮内膜の厚みが8mm以上)へ移植するIVF/ETサイクルを5回以上失敗している履歴を有することを条件に選択した。患者は、インデックスARTサイクルの前に、経膣的超音波検査、卵管疎通性検査、及び子宮鏡検査によって評価した。参加者の中に、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔癒着、子宮における先天的な異常、又は卵管留水を持っているものはいなかった。さらに、これら参加者の中には自己免疫疾患の履歴を有するものはいなかった。また、妊娠している女性、又は、慢性的な医学的症状或いは炎症性症状を呈している女性は、対象から除外した。3か月以内に、前回のIVFサイクルにおいて流産をしたか、IVFサイクルを受けたか、或いはワクチン接種を受けた女性は、対象から除外した。後天的又は先天的な栓友病を伴う女性は、対象から除外した。
Th1/Th2細胞比率のベースライン値を評価する目的で、インデックスARTサイクルに入る前の、生理5日目(cycle day:CD)~10日目の間において血液を採取した。42人の患者が上昇したTh1/Th2細胞比率(10.3以上)を有し、39人の患者が正常なTh1/Th2細胞比率(10.3未満)を有した。正常なTh1/Th2細胞比率の範囲は、自然妊娠又は夫の精子を用いた人工授精によって、正常に出産した履歴を有する28名の女性を用いて確立した。生理周期のCD5(生理5日目)~CD10の間において血液を採取した。Th1/Th2細胞比率のレベルを、平均値+1標準偏差法(mean plus one standard deviation)によって決定し、10.3と等しいかそれを超えるTh1/Th2細胞比率を、上昇したTh1/Th2細胞比率と分類した。
(Th1細胞、及びTh2細胞の分析)
Th1/Th2細胞比率のベースライン値を評価する目的で、全部で10mlの静脈血を採取した。Th1細胞、及びTh2細胞は、細胞内インターフェロン(IFN)-γ及びIL-4の産生を検出することによって決定した。
リンパ球の特異的な染色は、全血を、抗-CD4-PC5又は抗-CD8-PC5-コンジュゲート モノクローナル抗体(mAbs)(Beckman Coulter, Fullerton, Ca, USA)と共にインキュベートすることによって行った。赤血球(RBCs)を溶血によって除去し(FACS Lysing solutionを使用; Becton Dickinson, BD 134 Biosciences, Franklin Lake. NJ, USA)、リンパ球をフローサイトメトリー(FACSCalibur; Becton Dickson)を用いて分析した。活性化された全血サンプルを、抗-CD4-PC5-コンジュゲートmAbsを用いて表面染色した後、製造者の使用説明書に従って、RBCの溶血、及び、FastImmune(商標)IFN‐γ‐FITC/IL‐4‐PE (Becton Dickinson)を用いた特異的な細胞内染色を順次行った。Th1細胞は、細胞内IFN-γを伴うが、細胞内IL-4を伴わないCD4リンパ球として規定された。Th2細胞は、細胞内IL-4を伴うが、細胞内IFN-γを伴わないCD4リンパ球として検出された。細胞内IL-4陽性のTh細胞に対する細胞内IFN-γ陽性のTh細胞の割合を、Th1/Th2細胞比率と表現した。
(タクロリムス(プログラフ(登録商標))による治療)
インデックスIVF/ETサイクルの間、上昇したTh1/Th2サイトカイン比率(10.3以上)を有する42人の患者のうち、25人をタクロリムス(プログラフ(登録商標)、アステラス製薬、東京)で治療し(治療群)、残りの者(n=17)は治療しなかった(対照群)。治療群の患者は、ETの2日前からタクロリムスの投与を開始し妊娠テストまで、合計16日間、投与を継続した。タクロリムスの一日あたりの投与量は、Th1/Th2細胞比率の上昇の度合いに応じて、1~3mg/日とした。すなわち、Th1/Th2細胞比率がやや上昇している(10.3以上で13.0未満)患者(n=12)は、一日あたり1mgのタクロリムスで治療した。Th1/Th2細胞比率が穏やかに上昇している(13.0を超え15.8未満)患者(n=8)は、一日あたり2mgのタクロリムスで治療した。Th1/Th2細胞比率が非常に上昇している(15.8を超える)患者(n=5)は、一日あたり3mgのタクロリムスで治療した。
(IVF-ET治療)
卵巣の刺激と採卵(OPU)とは、発明者らの既報(文献12)に従って通常通り行った。本願発明者らの緩和な刺激プロトコールは次の通りである:患者は、一日あたり50mgのクエン酸クロミフェン(Serophen(登録商標), Merck Serono, Tokyo)を、生理周期の3日目~7日目の間の5日間にわたり投与した。この患者にはさらに、225国際単位(IU)のrec-FSH(Gonal‐F(登録商標), Merk Serono, Tokyo,)を、生理周期の4日目、6日目、及び8日目に投与した。生理周期の10日目、優性卵胞(dominant follicles)が直径17mm以上に達した段階で、10,000IUのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG; Gonadotropin, Mochida, Tokyo)を注射するか、300μgのブセレリン酢酸塩(Buserecur, Fuji Pharma, Tokyo)を経鼻投与し、35時間後にOPUを行った。卵胞の成長に基づき、必要に応じて追加的なrec-FSH(一日あたり150IU)を投与した。精液のパラメータに応じて、細胞質間精子注入(ICSI)又は慣行の共培養法を用いた。柔軟なカテーテル(Kitazato ET catheter, Kitazato Supply, Shizuoka, Japan)を用いて、子宮頚を介して、胚を、患者の子宮に配置した。全ての患者において、1つ又は2つの胚を移植した。新鮮ETを3日目に実施した。残余の胚は、ガラス化によって凍結保存した(文献13)。ETの当日と、ET後5日目とにおいて、125mgのカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン(Progestone Depot‐S, Fuji Pharma, Tokyo)を、黄体支持の目的で注射した。ETから14日後に、酢酸クロルマジノン(Lutoral(登録商標), Shionogi, Osaka)を経口投与した。凍結融解ET(FET)サイクルのために、自然排卵周期、又は、ホルモン補充周期の何れかを、子宮内膜の調整のために用いた。自然排卵周期を用いる場合、ETを行う日は、排卵後3日目とした。新鮮ETサイクルにおける場合と同一の黄体ホルモンを補充投与した。ホルモン補充周期(HRC)を用いる場合、ETのための子宮内膜の調整は、コンジュゲートエストロゲン(Premarin 0.625 mg, Wyeth, Tokyo, Japan)及び経皮エストラジオール(Estrana TAPE 0.72 mg, Hisamitsu Pharmaceutical, Tokyo, Japan)を用いて行った。これらの処置は、出血を伴わない月経周期の3日目又は1日目から尿妊娠反応試験の日まで行った。プロゲステロン(100mg/オイル中; Progestone Depot‐S, Fuji Pharmaceutical, Tokyo, Japan)の投与は、月経周期の12日目から開始した。プロゲステロンの処置を開始してから3日後に、胚を融解し、生存した胚を移植した(文献14)。
全ての患者は、卵母細胞回収から3日後に、一つもしくは二つの、形態的に良好な品質の胚(MGEs)の移植を受けた。凍結胚サイクルのために、日齢3日の凍結融解胚を、自然の排卵周期における排卵から3日後か、HRCにおけるプロゲステロンの投与から3日後かに移植した。MGEsは、卵母細胞回収から3日後の時点で、7以上の卵割球を有し、かつ、フラグメンテーションの発生が10%未満であるものとして定義付けた(文献13)。妊娠テストは、ETから14日後に実施した。臨床的な妊娠は、ETから21日後に、経膣的超音波検査によって胚嚢の発達が認められた場合と判定した。妊娠の12週目において、経膣的超音波検査によって、正常な胎児が観察されたとき、妊娠の継続と判定した。本研究の第一番目のアウトカム及び第二番目のアウトカムはそれぞれ、臨床的な妊娠と生児の出産である。
(統計学的解析)
統計学的解析は、StatView, version 5 (SAS Institute Inc., Cary, NC)を用いて行った。連続変数は、ウィルコクソンの符号順位検定によって解析した。カテゴリー変数は、χ2 解析、又は、フィッシャーの正確確率検定が示唆するままの方法によって解析した。プロバビリティが0.05未満の場合に、統計学的に相違があると見做した。
<結果>
(研究群)
年齢、出産及び不妊の履歴は、治療群と対照群とで相違はなかった(表1)。治療群の平均年齢は、36.2±2.5(mean±SD)であり、対照群(36.1±4.1)と同等であった。両群におけるART治療の指標は同等であった。治療群における約1/4の患者は、妊娠テスト陽性だが新生児出産は無いという履歴を有していた。対照群にも同様の傾向が見られた。治療群における、これまでのETの試みの回数、移植された胚の数、及び移植されたMGEsの数は、平均値と標準偏差(SD)とで表して、それぞれ5.8±2.9、8.6±5.8、及び、5.0±2.1であり、これらも、対照群(それぞれ、5.9±2.7、7.4±3.4、及び、4.9±2.0)と比較して重要な差異は認められなかった。
(Th1/Th2細胞比率)
Th1細胞、及びTh2細胞の解析の結果を表1に示す。IFN-γ産生性のCD4+Tリンパ球(Th1)のパーセンテージは、治療群と対照群とにおいてそれぞれ、27.7±9.4及び26.7±7.3(mean±SD)であり、重要な差異はなかった。IL-4産生性のCD4+Tリンパ球(Th2)のパーセンテージは、治療群と対照群とにおいてそれぞれ、1.8±0.6及び1.7±0.6(mean±SD)であり、重要な差異はなかった。Th1/Th2細胞比率は治療群で16.1±7.0であり、対照群のもの(16.7±5.2)と類似していた。
(治療結果)
両群のARTによる治療結果を表2にまとめた。サイクルあたりの移植した胚の数は、治療群で1.4±0.5、対照群で1.4±0.5であった(P=NS)。MGEsのパーセンテージは治療群で68.9%であり、対照群のもの(70.8%)と匹敵した。対照群では妊娠に達したものはおらず、治療群では25人の患者中の16人(64%)が妊娠テスト陽性であり、タクロリムス処置を伴う臨床的な妊娠へと進んだ。生化学的なロスはなく、着床率は45.7%(16/35)であった。一日あたりのタクロリムス処置の量が1mg、2mg、又は3mgの患者はそれぞれ、12人、8人、5人である(表3参照)。一日あたりのタクロリムス処置の量が1mgの患者における、臨床的な妊娠率と出生率とはそれぞれ、83.3%と83.3%とであった。一日あたりのタクロリムス処置の量が2mg、又は3mgの患者における、臨床的な妊娠率と出生率とはそれぞれ、50.0%と37.5%、40.0%と40.0%とであった(表3)。
治療群における妊娠した患者のうち、一人のみ(6.3%)が、妊娠10週で流産した。タクロリムスの処置によって、全部で15名の健康な赤ん坊が出生し、治療群における出生率は60.0%であった。新生児の出生時の情報は、以下の通りである。出生時の体重は(mean±SD)2995±400g、出産までの平均在胎日数は279.5±10.6日、出生後1分及び5分におけるAPGARスコアはそれぞれ、8.3±0.5及び9.2±0.5であり、6人の児は帝王切開で出生し、9人の児は経産道出産で出生した(表4)。
タクロリムスの処置において、凍結融解ETを受けた16人の女性のうち12人(75%)が妊娠し、新鮮ETを受けた9人の女性のうち4人(44.4%)が妊娠した。凍結融解ETサイクルは、新鮮IVF-ETサイクルより成功確率が高かったが、統計的な重要性を示すには至らなかった。FETを受けた16人の女性のうち12人(75%)と、新鮮ETを受けた9人の女性のうち3人(33.3%)とが、生きている新生児を出産した。タクロリムスの処置を受けたRIFの患者においては、新鮮ETサイクルと比較して、FETサイクルの方が、成功率が増す傾向にあった(P<0.1)。
<議論>
反復着床不全(RIF)はしばしば、各回1~2個の高品質な胚が移植される少なくとも3回の連続するIVFの試みにおいて、良好な品質の胚が着床に失敗していること、によって定義付けられている(文献15)。しかしながら、定義に関しては、未だ一般的なコンセンサスはない。着床には、母体側の免疫応答と、胚及び子宮内膜に由来するサイトカイン、ケモカイン並びに様々な増殖因子等の多数のメディエータとが関与している。従い、患者を、例えばRIFのような不妊の履歴に基づいてのみ分類することは、さらなる評価と処置にとって適切でないかもしれない。子宮内膜受容度に関する最近のレビューには、子宮内膜受容度に特異的な単一のバイオマーカーは無いと報告されている(文献16)。本願発明者らは、本研究において、標準的な不妊の検査項目として子宮内膜の厚みを測定しているが、子宮内膜受容度の客観的な診断には、表面上は隔たりがある。本研究ではTh1/Th2細胞比率のみに着目している免疫学的な要因にも、同様のことが当てはまりうる。
上昇したTh1/Th2比率を有するRIF患者のための処置のモダリティについて、既にいくつかの報告がなされている。大量ガンマグロブリンG静注療法(IVIG)が、IVF及び着床不全を反復している女性に効果があるとの報告がある(文献17~19)。IVIgは、末梢血におけるTh1/Th2リンパ球比率を低下させ、このことは、着床及び妊娠の継続における、Th1/Th2免疫制御の重要性を裏付けている(文献17)。Etanercept (Enbrel(登録商標)), 組換えヒトTNF受容体[p75]:Fc 融合タンパク質は、末梢血における上昇したTh1/Th2比率を有するRIF患者において有効であると報告されている(文献20)。IVIg及びadalimumab(Humira(商標))の使用について詳述した最近の論文では、上昇したTh1/Th2比率を伴うRIF患者において、改善した妊娠率をもたらしたことを示している(文献21)。adalimumabは、TNFに特異的な、組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。しかしながら、不妊の女性や妊娠中の女性に対する、etanerceptやadalimumabのような抗TNF薬の安全性は確立されていない(文献22)。タクロリムスは、移植を受けた対象群から、妊娠安全性に関するデータが蓄積されているので、本研究において、発明者らは、IVFサイクル後に相当数(5回かそれ以上)のRIFを経験している女性において、タクロリムスが、免疫応答を制御しかつ出産結果を改善することに適しているか研究をした。
これまでの報告によれば、RIF患者の相当割合が、細胞性免疫エフェクター機構に制御異常が生じており(文献4、23)、RIFを伴う女性において、失敗したARTサイクルの間に、Th1サイトカイン応答の増強が見られたことが報告された(文献24)。本研究では、IL-4及びIFN-γ産生T細胞を調べたときに、RIF(5回を超える)を伴う女性の51.9%が、特にTh1/Th2比率の上昇を示していた。これは、過去の研究と一致していた(文献4、23)。半同種的な胚に対するTh1免疫性の存在は、組織移植における移植片拒絶のプロセスを反映している。タクロリムスのような免疫抑制剤は、組織拒絶のリスクを低減するために、同種的な組織移植を受けるレシピエントに対してしばしば処方される。
タクロリムスは、Tリンパ球シグナル伝達と、IL-2シグナル伝達との両方を阻害する(文献20)。この研究では、CD4+/IFN-γ陽性細胞の比率、及び、Cd4+/IL-4陽性細胞の比率を測定することによって、Th1のシフトが検出された。超生理学的な用量のIFN-γは、動物モデルにおいて、Treg細胞及びTh17細胞が着床部位において局所的に減少することによって、着床前後における失敗を誘導することが報告されている(文献25)。さらに、インシュリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)は、IL-4及びIL-10の下方制御を伴ったIFN-γの上方制御を導き、その結果として、マウスモデルにおいて着床の失敗を導く(文献26)。これとは相反して、IFN-γは、着床部位における適切な動脈修飾を誘導する(文献27)。従って、IFN-γの適切な発現及び制御が、着床及び妊娠の成功に重要な役割を果たしている。IFN-γの持つ、用量依存的な相反する生物学的効果を考慮し、本研究では、タクロリムスの用量を、RIFを伴う女性におけるTh1/Th2細胞比率に基づいて決定した。さらに言えば、研究対象群に対するタクロリムスの用量は、予防的腎移植のスケジュールでの用量(0.1mg/kg/日)の20~60%であった。全ての患者はタクロリムス処置に耐え、タクロリムス処置を行っている間において副作用の報告はなかった。しかし、研究の規模が小規模であるため、この観察結果は、慎重に解釈される必要がある。
タクロリムスは、同種組織移植を受けた女性に対して、妊娠期間中を通して使用されてきており、移植のレシピエントたる多くの女性がタクロリムスを摂取しつつ出産をしている(文献28)。タクロリムスは、イミュノフィリンFKBP12(FK506結合タンパク質)と結合して新たな複合体を形成することによって、ペプチジルプロリルイソメラーゼの活性を低下させる。このFKBP12-FK506複合体は、カルシニューリンに相互作用して阻害し、その結果として、Tリンパ球シグナル伝達と、IL-2シグナル伝達との両方を阻害する(文献29)。この活性はシクロスポリンと類似しているものの、急性の拒絶反応のケースには、シクロスポリンよりもタクロリムスの使用によって拒絶反応が低減されていることが多いことが、研究によって示されている(文献30)。患者における短期間の免疫抑制及び移植片の生着に対する効果に関しては、これら二つの薬剤で類似しているように見えるが、タクロリムスはより良好な脂質プロファイルをもたらし、このことは、拒絶反応に関する予後の影響を考慮した場合に、移植片の生着に関して、重要かつ長期的な意味を持ちうる(文献31)。タクロリムスは、FDA妊娠カテゴリによって、クラスCの薬剤に分類されている。RIFが、生命を危険にさらす疾患ではないことを考慮すれば、IVFサイクルを行っている女性に対してクラスCの薬剤を投与することは、慎重な利益-リスク調査を行った上で決定されるべきである。移植後に妊娠をした、女性の移植レシピエントに関する報告において、母体、及び、胎児/赤ん坊に対するタクロリムスの安全性は、既に確立されている(文献8、32)。妊娠期間中にタクロリムスにさらされていた腎臓移植のレシピエントから生まれた236人の赤ん坊において、死産率は2%であり、新生児死亡率は2%であった(文献33)。他に報告のあった出産上の合併症としては、32%が妊娠高血圧腎症、妊娠中の糖尿病が8%、高血圧が56%、感染症が22%、及び、自然流産が26%であった(文献33)。本研究では、上昇したTh1/Th2比率を伴うRIF患者の60%(n=15)が妊娠し、生きた新生児を出産した。出産上の合併症を持つ者はなく、一人の赤ん坊に新生児一過性多呼吸が見られるのみであった。本研究と、腎移植を受けた群での研究との間で、出産の結果に違いが生じた理由は、それぞれの研究群の元々の健康状態の相違、タクロリムスの用量の相違、及び、薬剤へさらされた期間の相違によるものかもしれない。これらの患者は、5以上のMGEsによるETを受けた後でさえ、妊娠することが出来なかった。
タクロリムスの処置は、上昇したTh1/Th2比率を伴うRIFの女性において、着床率、医学的な妊娠率、及び生存出生率を著しく向上させた。我々のデータによれば、着床期間中におけるタクロリムスの処置から得られる利益は、胎児の発達に及ぼすリスクよりも上回っている。Th1/Th2細胞比率の評価は、タクロリムスを用いた免疫抑制処置に応答して、良好な出産結果を得られうる、RIFを伴う女性を選択するためのバイオマーカーとして使用しうる。本研究では、タクロリムス処置関して、FETを適用した患者(成功率75%)は、新鮮ETを適用した患者(成功率33.3%)より高い成功率を示した。FETサイクルではより受容性の子宮内膜が期待されること、新鮮ETサイクルから誕生した子と比較して凍結融解胚から誕生した子がより健康であること、並びに、FETの成功率が上昇してきており、今では新鮮ETとほぼ同等の成功率であることから、近年では、IVFの拠点において、フリーズオール(freeze‐all)戦略が急速に採用されるようになってきている(文献27)。2011年のCDCレポートによれば、35歳以下の女性での、新鮮ETサイクルの生存出生率は40%で、FETサイクルの生存出生率は39%であった(文献33)。本研究では、研究群の年齢がより高い(平均年齢36歳)にもかかわらず、FETサイクルの成功率は75%であり、35歳以下の女性に関して報告された成功率(39%)の1.9倍高かった(文献27)。したがって、タクロリムスの処置を伴うFETサイクルは、RIFを伴う、より年齢の高い患者群(35歳を超える)にも適用可能である。FETサイクルにおける高い医学的な妊娠率は、タクロリムスによるTh1免疫の制御の効果と、FETサイクルによるより受容性の子宮内膜との組合せによってもたらされた可能性がある。しかしながら、本研究は、ランダム化比較試験でないことや、サンプルサイズの小ささの点で限界がある。さらに、タクロリムスの処置後の、子宮内膜の変化や末梢の免疫応答の変化を評価はしていない。システマティックな免疫応答や子宮内膜の受容性へのタクロリムスの効果に関して、さらなる研究が必要である。結論として、タクロリムスを用いた免疫抑制処置によって、上昇したTh1/Th2比率を伴うRIF患者において、妊娠結果が改善した。Th17及びT制御性細胞、並びに子宮内膜受容度を考慮に入れたさらなる研究が、相応の詳細さで求められる。結論として、本研究は、タクロリムスの処置によって、Th1免疫応答がシフトしたRIF患者において、母体に対する重篤な合併症を増大させることなく、医学的な妊娠率及び生存出生率が著しく向上することを示す。
Figure 2023025211000004
Figure 2023025211000005
表1は、反復着床不全(5回以上)でかつ上昇したTh1/Th2細胞比率を伴う、タクロリムスで処置した女性群(treatment group:治療群)と、処置しなかった女性群(control group:対照群)との、年齢(Age)、出産履歴、不妊履歴、及び臨床的特徴を示している。表中で「Body mass index」はBMI、「Unexplained infertility」は原因不明の不妊、「Male infertility」は雄性不妊、「Tubal infertility」は卵管性不妊を指す。「Previous pregnancy history」は過去の妊娠履歴のあり(Yes)・なし(No)を、「Obstetrical history」は出産履歴(Gravidity=妊娠歴、Parity=出産歴、SAB=自然流産)を、「Previous embryo transfer history」は過去の胚移植履歴を指し、「Number of failed embryo transfer cycle (n)」は失敗した胚移植サイクルの数を、「Total number of transferred embryos (n)」は移植された胚の全数を、「Total number of transferred MGEs (n)」は移植されたMGEsの全数を指す。Th1/Th2 ratioは、Th1/Th2細胞比率を指す。
Figure 2023025211000006
表2は、反復着床不全(RIF)を伴う女性に関し、タクロリムスで処置した群(treatment group:治療群)と、処置しなかった群(control group:対照群)との、出産結果を表す。表中で「Number of transferred cycles」は移植サイクルの数を、「Number of transferred embryos per cycle」は1サイクルあたりの移植された胚の数を、「Frozen‐thawed embryo transfer, n」は凍結融解胚移植の数を、「Fresh embryo transfer, n」は新鮮胚移植の数を、「Percentage of MGEs」はMGEsの割合(%)を、「Endometrial lining」は子宮内膜の厚みを、「Positive hCG (%)」はhCG陽性の割合(%)を、「Implantation rate (%)」は着床率(%)を、「Biochemical pregnancy rate (%)」は生化学的妊娠率(%)を、「Clinical pregnancy (n)」は臨床的妊娠に至った個体数を、「Clinical pregnancy of fresh ET (%)」は新鮮ETでの臨床的妊娠率(%)を、「Clinical pregnancy rate per ET (%)」はET1回あたりの臨床的妊娠率(%)を、「Spontaneous abortion rate」は自然流産率(%)を、「Live birth (n)」は生存出生の数を、「Live birth rate of fresh ET (%)」は新鮮ETでの生存出生率(%)を、「Live birth rate of thawed ET (%)」は凍結融解ETでの生存出生率(%)を、「Live birth rate (%)」は生存出生率(%)を指す。
Figure 2023025211000007
表3は、タクロリムスの様々な用量(Treatment dosage)で処置した、反復着床不全(RIF)を伴う女性(treatment group:治療群)の出産結果を示す。表中で、「Number of patients treated with」は所定の用量で処置した患者の数を、「Clinical pregnancy (n)」は臨床的妊娠に至った個体数を、「Live birth (n)」は生存出生の数を指す。タクロリムスの用量は、1mg、2mg又は3mgである。
Figure 2023025211000008
表4は、タクロリムスで処置した、複数回の着床不全(5回以上)を伴う女性の、出産及び新生児誕生の結果を表す。表中で、「Number of newborns (n)」は生まれた新生児の数を、「Mode of delivery」は分娩様式が経膣分娩(vaginal delivery)か帝王切開(Cesarean section)かを、「Gestational days to delivery (days)」は妊娠日齢を、「Birth weight」は出生体重を、「Height」は出生身長を、「Sex of newborn」は新生児の性別が男(boy)か女(girl)かを、「APGAR score at 1(or 5) minutes after birth」は出生1分(5分)後のAPGARスコアを、「Umbilical cord gas analysis (pH)」はへその緒のガス分析(pH)を、「Umbilical cord length」はへその緒の長さを、「Obstetrical complications (n)」は妊娠合併症を発症した個体数を、「Neonatal complications (n)」は、新生児一過性多呼吸(TNN)の発症が一例あったことを指す。
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〔実施例2〕
<材料及び方法>
(研究の対象群)
IVF/ETが可能であり、かつ、連続する3回以上の流産、死産、又は、子宮内胎児発達遅延の履歴がある女性のうち、1回以上既存の治療を行っても挙児を得られなかった11名の不育症患者を対象とした。これらの患者は、事前に行った血清学的検査で不育に関連した明らかな異常所見を認めない患者群である。
患者は、インデックスARTサイクルの前に、経膣的超音波検査、卵管疎通性検査、及び子宮鏡検査によって評価した。参加者の中に、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔癒着、子宮における先天的な異常、又は卵管留水を持っているものはいなかった。また、妊娠している女性、又は、慢性的な医学的症状或いは炎症性症状を呈している女性は、対象から除外した。3か月以内に、前回のIVFサイクルにおいて流産をしたか、IVFサイクルを受けたか、或いはワクチン接種を受けた女性は、対象から除外した。後天的又は先天的な栓友病を伴う女性は、対象から除外した。
(Th1細胞、及びTh2細胞の分析)
実施例1に記載の方法に従って行った。但し、患者におけるTh1/Th2細胞比率の決定は妊娠成立の直後(妊娠成立を確認した日)に行った。Th1/Th2細胞比率のレベルは、実施例1と同様に平均値+1標準偏差法によって決定し、10.3と等しいかそれを超えるTh1/Th2細胞比率を、上昇したTh1/Th2細胞比率と分類した。
(タクロリムスによる治療)
投与の期間を除いて、実施例1と同様にして11名の患者全員に対してタクロリムスによる治療を行った。タクロリムスの投与量はすなわち、Th1/Th2細胞比率が10.3以上で13.0未満の患者(4人)では、一日あたり1mgであり、Th1/Th2細胞比率が13.0を超え15.8未満の患者(3人)では、一日あたり2mgであり、Th1/Th2細胞比率が15.8以上の患者(4人)では、一日あたり3mgであった。タクロリムスの投与の期間は、何れの患者も、妊娠テストによって妊娠の成立を確認し、Th1/Th2細胞比率を確認した直後から出産までであった。
(IVF-ET治療)
実施例1と同様にして行った。
(統計学的解析)
実施例1と同様にして行った。
<結果>
治療を受けた患者の特徴は、表5にまとめて示す。
治療結果は、表6にまとめて示す。治療を受けた患者11名のうち8名が満期産で健常児を得た。ここに示す早産症例1例は背景に記した現在行われているすべての治療法に抵抗性で10回以上の流産歴のある症例である。他の治療法は併用せず、タクロリムス単独治療で挙児を得た。
Figure 2023025211000009
Figure 2023025211000010
〔実施例3〕
<材料及び方法>
(研究の対象群)
IVF/ETが可能であり、かつ、前回妊娠時に妊娠高血圧症候群となった履歴を有するか、妊娠高血圧症候群を発症しやすい臨床的所見を伴う女性を対象とした。妊娠高血圧症候群は一度発症すると、次回以降の妊娠においても発症を繰り返す可能性が非常に高い。
患者は、インデックスARTサイクルの前に、経膣的超音波検査、卵管疎通性検査、及び子宮鏡検査によって評価した。また、妊娠している女性、又は、慢性的な医学的症状或いは炎症性症状を呈している女性は、対象から除外した。3か月以内に、前回のIVFサイクルにおいて流産をしたか、IVFサイクルを受けたか、或いはワクチン接種を受けた女性は、対象から除外した。後天的又は先天的な栓友病を伴う女性は、対象から除外した。
(タクロリムスによる治療)
実施例2と同様にして患者全員に対してタクロリムスによる治療を行っている。タクロリムスの投与量は、一日あたり1mg~3mgである。タクロリムスの投与の期間は、何れの患者も、妊娠テストによって妊娠の成立を確認した直後から出産までである。なお、以下に示す症例1及び症例3では、妊娠の成立を確認した直後から妊娠中期までは一日あたり3mgのタクロリムスを毎日投与し、妊娠後期から出産までは一日あたり2mgのタクロリムスを毎日投与した。以下に示す症例2では、妊娠の成立を確認した直後から出産まで一日あたり2mgのタクロリムスを毎日投与した。
(IVF-ET治療)
実施例2と同様にして行った。
(統計学的解析)
実施例2と同様にして行った。
<結果の確認>
妊娠の中期~後期の間の所定のタイミングにおいて、妊娠高血圧症候群を発症することなく、妊娠状態を良好に維持しているか否かで、タクロリムスの投与の効果を評価する。大凡の評価が終了しているケースを紹介すると以下の通りである。
前回の妊娠において妊娠高血圧症候群により妊娠38週で子宮内胎児死亡した症例(症例1)は、タクロリムスの投与により、血圧の上昇なく、39週で健常児を出産した。また、妊娠高血圧症候群を発症する可能性の高い、不育症かつ抗リン脂質抗体陽性の双胎妊娠の症例(症例2)も、タクロリムスの投与により、血圧の上昇なく、35週で健常児を出産した(咳嗽による早期破水、双胎にて早産)。さらに、前回の妊娠時に25週より浮腫が出現、28週より血圧が上昇し妊娠高血圧症候群と診断され32週で子宮内胎児死亡した症例(症例3)は、タクロリムスの投与により、現在34週であるが、浮腫及び血圧上昇傾向は全く無く順調に経過している。
妊娠経過中いずれも児の成長は良好で、母子ともに異常はみられていない。
本発明は上述した各実施形態並びに各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態並びに異なる実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態並びに各実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。

Claims (10)

  1. タクロリムス、又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、妊娠状態の不良を伴う対象の妊娠状態を改善するための薬剤。
  2. 前記妊娠状態の改善は、対象が妊娠高血圧症候群となることを防止することである、請求項1に記載の薬剤。
  3. 免疫異常に起因する妊娠状態の不良を改善する、請求項1又は2に記載の薬剤。
  4. 不妊、不育、免疫異常に起因する不妊、自然流産、連続性の自然流産、胎児発育不全に起因する習慣性流産、自己免疫性状態を除く免疫亢進状態、からなる群より選択される少なくとも一種の妊娠状態の不良を改善する、請求項1~3の何れか一項に記載の薬剤。
  5. 上記有効成分の量として一日あたり5mg以下が、治療の対象に対して投与される、請求項1~4の何れか一項に記載の薬剤。
  6. 上記有効成分の量が一日あたり1mg以上で3mg以下の範囲内である、請求項5に記載の薬剤。
  7. 末梢血中のTh1/Th2細胞比率が健常者と比較して上昇している対象に対して投与される、請求項1~6の何れか一項に記載の薬剤。
  8. 体外授精によって得た胚の移植を受けている対象に対して投与される、請求項1~7の何れか一項に記載の薬剤。
  9. 妊娠状態の不良としての不妊を対象とする場合は、少なくとも受精卵又は移植胚の子宮内膜への着床の1日前または2日前から着床後0日の期間において投与され、不妊以外の妊娠状態の不良を対象とする場合は、少なくとも妊娠の確立から200日目までの期間にわたって投与される、請求項1~8の何れか一項に記載の薬剤。
  10. 上記の対象はヒト対象であり、当該ヒト対象は、妊娠状態の改善以外の医療上の目的においてタクロリムス又はその誘導体の投与を継続的に受けていない、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤。
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