JP2023023918A - 半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、半導体装置の製造方法に関するものである。
従来より、自己発熱する半導体素子が形成された半導体装置において、自己発熱していない無発熱状態での飽和電流特性を導出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この導出方法では、まず、自己発熱状態での電流、電圧特性を取得する。そして、過渡熱抵抗等を考慮して導出した数式に取得した電流、電圧を代入することにより、無発熱状態での飽和電流特性を導出している。
しかしながら、上記の導出方法では、自己発熱状態での電流、電圧特性を取得する際、電圧および電流が小さい状態での電流、電圧特性を取得している。このため、上記の導出方法を用いて高電圧、大電流(High Voltage High Current:以下では、HVHCともいう)領域における無発熱状態での飽和電流特性を導出しようとした場合、誤差が大きくなる可能性がある。
本発明は上記点に鑑み、HVHC領域での誤差を低減できる飽和電流特性の導出方法を含む半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1では、半導体装置の製造方法であって、第1電極(19)、第2電極(23)、第1電極と第2電極との間に流れる電流を制御するための制御電極(15)を有し、自己発熱によって特性が変化する半導体素子が形成された被対象物を用意することと、被対象物の無発熱状態での飽和電流特性を導出することと、を行い、飽和電流特性を導出することでは、条件を変更しながら被対象物の半導体素子を短絡させて複数の短絡過渡波形を取得することと、複数の短絡過渡波形において所定タイミングでの電流に関する値および電圧に関する値を取得することと、半導体素子の短絡期間に基づく所定期間の過渡熱抵抗を導出することと、短絡過渡波形から取得した電流に関する値および電圧に関する値と、導出した過渡熱抵抗とを用い、被対象物が無発熱状態での飽和電流特性を導出することと、を行う。
これによれば、条件を変更しながら半導体素子を短絡させて複数の短絡過渡波形を取得し、複数の短絡過渡波形を用いて無発熱状態での飽和電流特性を導出している。このため、HVHC領域における無発熱状態での飽和電流特性を導出した際の誤差を小さくできる。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置S1は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。まず、本実施形態の製造方法で製造される半導体装置S1の構成について説明する。
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置S1は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。まず、本実施形態の製造方法で製造される半導体装置S1の構成について説明する。
本実施形態の半導体装置S1は、図1に示されるように、IGBT素子が形成されたIGBT領域1と、FWD素子が形成されたFWD領域2とが共通の半導体基板10に形成されたRC(すなわち、Reverse Conducting)-IGBTとされている。本実施形態では、IGBT素子が半導体素子に相当している。また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、IGBT領域1およびFWD領域2は、一方向に沿って延設されていると共に、延設方向と交差する方向に交互に形成されている。
なお、図1中では、IGBT領域1およびFWD領域2は、紙面上下方向に沿って延設され、紙面左右方向に交互に形成されている。また、具体的には後述するが、本実施形態では、後述するコレクタ層21上の部分がIGBT領域1とされ、後述するカソード層22上の部分がFWD領域2とされている。そして、IGBT領域1およびFWD領域2と異なる領域は、外周領域3とされ、複数のパッド4等が形成されている。パッド4は、後述するゲート電極15と接続されてゲート駆動回路と接続されるゲートパッドや、図示しない温度センス等と接続される温度センスパッド等である。
図2に示されるように、半導体基板10は、n-型のドリフト層11を有している。なお、半導体基板10は、例えば、シリコン基板で構成される。また、本実施形態のドリフト層11は、不純物濃度が1.0×1015cm-3以下とされている。そして、ドリフト層11上には、p型のベース層12が形成されている。以下では、半導体基板10のうちのドリフト層11よりもベース層12側の面を半導体基板10の一面10aとし、半導体基板10のうちの一面10aと反対側の面を10bとして説明する。
半導体基板10には、ベース層12を貫通してドリフト層11に達するように複数のトレンチ13が形成されている。これにより、ベース層12は、トレンチ13によって複数個に分離されている。本実施形態では、複数のトレンチ13は、IGBT領域1およびFWD領域2にそれぞれ形成され、半導体基板10の一面10aの面方向のうちの一方向に沿って等間隔に形成されたストライプ状とされている。なお、図2中では、各トレンチ13は、紙面垂直方向に沿って形成されている。
各トレンチ13は、各トレンチ13の壁面を覆うように形成されたゲート絶縁膜14と、このゲート絶縁膜14の上に形成されたポリシリコン等により構成されるゲート電極15とにより埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。なお、本実施形態では、ゲート電極15が制御電極に相当している。
IGBT領域1におけるベース層12の表層部(すなわち、半導体基板10の一面10a側)には、ドリフト層11よりも高不純物濃度とされたn+型のエミッタ領域16、およびベース層12よりも高不純物濃度とされたp+型のコンタクト領域17が形成されている。具体的には、エミッタ領域16は、ベース層12内において終端し、かつ、トレンチ13の側面に接するように形成されている。また、コンタクト領域17は、エミッタ領域16と同様に、ベース層12内において終端するように形成されている。
より詳しくは、エミッタ領域16は、トレンチ13間の領域において、トレンチ13の長手方向に沿ってトレンチ13の側面に接するように棒状に延設され、トレンチ13の先端よりも内側で終端する構造とされている。また、コンタクト領域17は、2つのエミッタ領域16に挟まれてトレンチ13の長手方向(すなわち、エミッタ領域16)に沿って棒状に延設されている。なお、コンタクト領域17は、半導体基板10の一面10aを基準としてエミッタ領域16よりも深く形成されている。
FWD領域2におけるベース層12の表層部には、IGBT領域1と同様のコンタクト領域17が形成されている。なお、本実施形態では、FWD領域2にエミッタ領域16が形成されていない例を説明するが、FWD領域2にIGBT領域1と同様のエミッタ領域16が形成されていてもよい。
半導体基板10の一面10a上には、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glassの略)等で構成される層間絶縁膜18が形成されている。層間絶縁膜18には、IGBT領域1において、エミッタ領域16およびコンタクト領域17を露出させる第1コンタクトホール18aが形成されている。層間絶縁膜18には、FWD領域2において、ベース層12およびコンタクト領域17を露出させる第2コンタクトホール18bが形成されている。
層間絶縁膜18上には、上部電極19が形成されている。上部電極19は、層間絶縁膜18に形成された第1コンタクトホール18aを通じてエミッタ領域16およびコンタクト領域17と電気的に接続されるように形成されている。また、上部電極19は、層間絶縁膜18に形成された第2コンタクトホール18bを通じてベース層12およびコンタクト領域17と電気的に接続されるように形成されている。つまり、層間絶縁膜18上には、IGBT領域1においてエミッタ電極として機能し、FWD領域2においてアノード電極として機能する上部電極19が形成されている。
なお、本実施形態では、上部電極19が第1電極に相当している。また、本実施形態では、FWD領域2に形成されたゲート電極15は、図2とは別断面において上部電極19と接続され、上部電極19の電位に維持される。
ドリフト層11のうちのベース層12側と反対側(すなわち、半導体基板10の他面10b側)には、ドリフト層11よりも高不純物濃度とされたn型のフィールドストップ層(以下では、FS層という)20が形成されている。
そして、IGBT領域1では、FS層20を挟んでドリフト層11と反対側にp+型のコレクタ層21が形成され、FWD領域2では、FS層20を挟んでドリフト層11と反対側にn+型のカソード層22が形成されている。つまり、FS層20を挟んでドリフト層11と反対側には、コレクタ層21とカソード層22とが隣接して形成されている。そして、IGBT領域1とFWD領域2とは、半導体基板10の他面10b側に形成される層がコレクタ層21であるかカソード層22であるかによって区画されている。すなわち、本実施形態では、コレクタ層21上の部分がIGBT領域1とされ、カソード層22上の部分がFWD領域2とされている。
コレクタ層21およびカソード層22を挟んでドリフト層11と反対側(すなわち、半導体基板10の他面10b)には、コレクタ層21およびカソード層22と電気的に接続される下部電極23が形成されている。つまり、IGBT領域1においてはコレクタ電極として機能し、FWD領域2においてはカソード電極として機能する下部電極23が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極23が第2電極に相当している。
このように構成されることにより、IGBT領域1においては、ベース層12をベースとし、エミッタ領域16をエミッタとし、コレクタ層21をコレクタとするIGBT素子が構成される。また、FWD領域2においては、ベース層12およびコンタクト領域17をアノードとし、ドリフト層11、FS層20、カソード層22をカソードとしてPN接合されたFWD素子が構成される。
以上が本実施形態における半導体装置S1の構成である。本実施形態では、このようにして共通の半導体基板10にIGBT領域1およびFWD領域2が形成されている。なお、本実施形態では、n型、n+型、n-型が第1導電型となり、p型、p+型が第2導電型となる。また、上記のように構成されていることにより、半導体基板10は、ドリフト層11、ベース層12、エミッタ領域16、コンタクト領域17、FS層20、コレクタ層21、カソード層22等を含んで構成される。そして、このような半導体装置S1では、ゲート電極15に所定の電圧が印加されると、ベース層12のうちのトレンチ13と接する部分に反転層が形成され、反転層を通じてドリフト層11の厚さ方向に電流が流れる。
次に、上記半導体装置S1の製造方法について説明する。
まず、一般的な半導体製造プロセスを行い、上記のIGBT素子が形成されたIGBT領域1およびFWD素子が形成されたFWD領域2が形成された被対象物としての半導体装置S1を用意する。
その後、上記被対象物における無発熱状態での飽和電流特性を導出する。具体的には、無発熱状態での、ゲート電圧-コレクタ電流の特性(以下では、Vg-Ic特性ともいう)、およびコレクタ電圧-コレクタ電流の特性(以下では、Vc-Ic特性ともいう)を導出する。
以下、無発熱状態での飽和電流特性を導出する導出方法について、図3~図12を参照しつつ具体的に説明する。
まず、図3に示されるように、ステップS101にて、被対象物に対して短絡試験を行い、コレクタ電流Ic、コレクタ-エミッタ間電圧Vce、ゲート-エミッタ間電圧Vgeに関する短絡過渡波形を取得する。
具体的には、ステップS101では、図4に示されるように、電源50に対して半導体装置S1とコンデンサCとが並列に配置された短絡試験装置を用いて行う。また、この短絡試験装置では、駆動回路51からゲート電極15に調整抵抗52を介してゲート駆動電圧が印加されるようになっている。なお、図4中のLbus、Ls、Lgは、回路上の寄生インダクタンス成分を示している。
そして、ステップS101では、図5に示されるような、コレクタ電流Ic、コレクタ-エミッタ間電圧Vce、ゲート-エミッタ間電圧Vgeの短絡過渡波形(すなわち、損失波形)を取得する。また、ステップS101では、電源50の電圧、ゲート駆動電圧、環境温度等をそれぞれ変化させ、条件を変更した状態での複数の短絡過渡波形を取得する。なお、短絡過渡波形を取得する際には、ゲート電極15に印加されるゲート駆動電圧が安定し始める、または安定した後に短絡する短絡過渡波形を取得することが好ましい。
次に、ステップS102にて、所定タイミングにおけるコレクタ電流Ic、コレクタ-エミッタ間電圧Vce、ゲート-エミッタ間電圧Vgeを取得する。本実施形態では、図5に示されるように、コレクタ電流Icが最大となる時点を所定タイミングとして、この時点におけるコレクタ電流Ic、コレクタ-エミッタ間電圧Vce、ゲート-エミッタ間電圧Vgeを取得する。なお、ステップS102は、ステップS101にて得られた各短絡過渡波形に対して行う。但し、ステップS101で得られる短絡過渡波形およびステップS102で得られる各値は、自己発熱の影響を含んだ値となる。
そして、ステップS103では、過渡熱抵抗(すなわち、Transient Thermal Resistance)を導出する。本実施形態では、半導体装置S1が実際に使用される場合のモデルを想定し、当該モデルに基づいた過渡熱シミュレーションを行って過渡熱抵抗を導出する。本実施形態では、図6に示されるように、過渡熱シミュレーションを行うモデルとして、半導体装置S1が一対のリードフレーム61、62の間にはんだで構成される接合部材63、64を介して配置され、これらがモールド樹脂65で封止された半導体モジュールを想定する。なお、このモデルにおけるモールド樹脂65は、各リードフレーム61、62における半導体装置S1側と反対側が露出する両面放熱構造となるようにモールド樹脂65が配置されている。
ここで、上記のように形成されるIGBT素子は、本発明者らの検討によれば、短絡動作時の温度上昇分布および発熱密度分布が図7のようになることが確認された。なお、図7は、上記半導体装置S1を用いたシミュレーション結果であり、温度上昇量をΔTjとし、発熱密度をHeat densityとし、半導体基板10の一面10aからの深さをDepthとして示している。また、図7は、短絡動作時の半導体装置S1における厚さ方向の温度上昇分布と発熱密度分布を示しており、時間1μsにおいて、温度上昇量および発熱密度をxy平面で面積分したz軸方向の温度上昇分布と発熱密度分布を示している。但し、ここでのxy平面とは、半導体基板10の面方向に沿った平面であり、z軸方向とは、半導体基板10の厚さ方向に沿った方向である。また、図7は、電源50の電圧を520V、ゲート駆動電圧を11V、オン時間を11.5μsとした際のシミュレーション結果である。そして、図7は、半導体基板10の一面10aを基準(すなわち、図7中のDepthを0)とし、上部電極19の厚さを5μmとし、半導体基板10の厚さを75μmとした場合のシミュレーション結果である。
図7に示されるように、温度上昇分布および発熱密度分布は、同じ傾向で変化していることが確認される。また、温度上昇分布および発熱密度分布より、IGBT素子では、主にドリフト層11が発熱領域となっていることが確認される。
また、短絡動作時の半導体装置S1の面内温度分布は、図8A~図8Cに示されるようになる。なお、図8A~図8Cは、IGBT素子(すなわち、IGBT領域1)のドリフト層11を発熱領域とし、瞬時電力1MW、パルス幅1μsの条件で過渡熱シミュレーションを行った結果である。
図8Aおよび図8Bに示されるように、10μs以下の短期間では、IGBT領域1のみで一様に温度上昇していることが確認され、発熱部(すなわち、IGBT領域1)で断熱加熱の状態となっていることが確認される。そして、図8Cに示されるように、1msのような長期間となると、IGBT領域1からFWD領域2や外周領域3へと熱が広がることが確認される。つまり、本実施形態のようなIGBT素子は、短期間では、IGBT領域1において断熱過程で加熱する素子(以下では、断熱加熱素子ともいう)であることが確認される。また、本発明者らの検討によれば、本実施形態のようなIGBT素子は、短絡期間が数~数十μm以下となることが確認されている。このため、本実施形態のIGBT素子は、短絡期間では断熱加熱素子であるといえる。
そして、IGBT領域1におけるドリフト層11が1W発熱時の温度の時刻歴から過渡熱抵抗を導出すると、図9に示されるようになる。図9に示されるように、数十μs以下の短期間(すなわち、IGBT素子の短絡期間)では、過渡熱抵抗が時間の1乗に比例することが確認される。
なお、半導体装置S1に形成されるIGBT素子は、上記のように短絡期間においては断熱加熱素子となる。そして、断熱加熱の理論式は、過渡熱抵抗をZthとし、温度上昇量をΔTjとし、発熱量をPとし、発熱密度をρthとし、密度をρとし、比熱をCpとし、パルス時間をtとすると、次式で示される。
(数1)Zth=ΔTj/P={ρth/(ρ×Cp)}×t
したがって、本実施形態のように短絡する半導体素子が短絡期間において断熱加熱素子となる場合には、過渡熱抵抗を上記数式1から導出するようにしてもよい。
したがって、本実施形態のように短絡する半導体素子が短絡期間において断熱加熱素子となる場合には、過渡熱抵抗を上記数式1から導出するようにしてもよい。
続いて、ステップS104にて、HVHC領域における無発熱状態での飽和電流特性を導出する。具体的には、ステップS102にて図5の短絡過渡波形から取得した各値、ステップS103で導出した過渡熱抵抗より、電流、電圧を取得した時点での半導体装置S1のIGBT領域1における温度上昇量ΔTjを算出する。そして、半導体装置S1の温度をTj、環境温度(すなわち、半導体装置S1の初期温度)をTaとし、Tj=ΔTj+Taとしてプロットすると、図10に示されるようになる。
なお、図10は、環境温度およびゲート-エミッタ間電圧Vgeを変化させた場合のシミュレーション結果である。また、図10は、各ゲート-エミッタ間電圧Vgeにおいて4点をプロットしているが、紙面左側のプロットから順に、環境温度が-40℃、25℃、100℃、175℃の場合の値を示している。
図10に示されるように、環境温度が同じ場合では、コレクタ電流Ic(すなわち、ゲート-エミッタ間電圧Vge)が高くなるほど半導体装置S1の温度Tjが高くなっていることが確認され、自己発熱によって初期温度Taからのずれが大きくなることが確認される。そして、各ゲート-エミッタ間電圧Vgeの測定点の近似式の傾き(すなわち、ΔIc/ΔTj)からTj=Taとなるコレクタ電流Icを算出する。その後、算出したコレクタ電流Icより、無発熱状態でのVge-Ic特性を導出すると図11のように示され、無発熱状態でのVce-Ic特性を導出すると図12のように示される。
なお、図11中の各プロットは、導出した無発熱状態でのVge-Ic特性であり、各プロットを結ぶ線がシミュレーションにより導出した無発熱状態でのVge-Ic特性である。同様に、図12中の各プロットは、導出した無発熱状態でのVce-Ic特性であり、各プロットを結ぶ線がシミュレーションにより導出した無発熱状態でのVce-Ic特性である。また、図11は、無発熱状態の特性を示しており、半導体装置S1の温度Tjは、環境温度と等しくなっている。
以上が本実施形態における無発熱状態での飽和電流特性の導出方法である。そして、図13および図14に、本発明者らが実際に導出した飽和電流特性に基づく短絡過渡波形と、実際に測定した測定結果の短絡過渡波形を示す。なお、図13は、図6のような半導体モジュールでの比較を示しており、図14は、実際に使用されるインバータ等のシステムに半導体装置S1を組み込んだ場合の比較を示している。図13および図14に示されるように、本実施形態の製造方法に含まれる導出方法を用いることにより、短絡時の短絡過渡波形を精度よく再現できていることが確認される。
以上説明した本実施形態によれば、条件を変更しながらIGBT素子を短絡させた複数の短絡過渡波形を取得し、複数の短絡過渡波形を用いて無発熱状態での飽和電流特性を導出している。このため、発熱密度が1MW/cm2を超えるようなHVHC領域における無発熱状態での飽和電流特性を導出しても、誤差を小さくできる。これにより、短絡動作時等におけるSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasisの略)シミュレーションの信頼性を向上できると共に、回路保護設計の机上検討等を好適に行うことができる。
(1)本実施形態では、過渡熱抵抗を導出する際、実際に使用される状態に基づいたモデルを用いて過渡熱抵抗を導出する。このため、実際の使用時との誤差が大きくなることを抑制できる。
(2)本実施形態では、半導体素子として、断熱加熱素子としてのIGBT素子が形成されている。このため、過渡熱抵抗を導出する際、断熱加熱の理論式によっても過渡熱抵抗を導出できる。
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
例えば、上記第1実施形態では、IGBT領域1およびFWD領域2を有する半導体装置S1の製造方法について説明した。しかしながら、上記第1実施形態における飽和電流特性の導出方法は、IGBT素子のみを有する半導体装置S1の製造方法に適用することもできるし、他の半導体素子が形成された半導体装置S1の製造方法に適用することもできる。
例えば、半導体装置S1は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)素子等が形成されて構成されていてもよい。なお、本発明者らの検討によれば、MOSFET素子は、短絡期間においては断熱加熱素子とはならないことが確認された。このため、MOSFET素子が形成された半導体装置S1の製造方法に上記第1実施形態の導出方法を適用する場合、ステップS103の過渡熱抵抗を導出する際には、モデルを用いたシミュレーションによって過渡熱抵抗を導出することが好ましい。一方、断熱加熱素子が形成されている半導体装置S1を製造する場合には、上記第1実施形態の導出方法をそのまま適用することができる。短絡期間において断熱加熱素子となるのは、本発明者らの検討によれば、ドリフト層11の厚さ方向(すなわち、被対象物の厚さ方向)に電流を流す縦型半導体素子であって、ドリフト層11の不純物濃度が1.0×1015cm-3以下とされている半導体素子であることが確認された。例えば、このような半導体素子としては、IGBT素子の他に、スーパージャンクション構造を有するMOSFET素子等が挙げられる。なお、スーパージャンクション構造とは、半導体基板10の面方向における一方向において、n型カラム領域とp型カラム領域とが交互に配置された構造である。
また、半導体装置S1は、ドリフト層11の面方向(すなわち、被対象物の面方向)に電流を流す横型半導体素子が形成されて構成されていてもよい。但し、横型半導体素子は、断熱加熱素子とはなり難いため、ステップS103の過渡熱抵抗を導出する際には、モデルを用いたシミュレーションによって過渡熱抵抗を導出することが好ましい。
そして、半導体装置S1としてIGBT素子等を形成する場合、ゲート電極15は、トレンチゲート型であってもよいし、プレーナゲート型であってもよい。
さらに、半導体装置S1を構成する半導体基板10は、シリコン基板ではなく、炭化珪素基板や窒化ガリウム基板で構成されていてもよい。
15 ゲート電極(制御電極)
19 上部電極(第1電極)
23 下部電極(第2電極)
19 上部電極(第1電極)
23 下部電極(第2電極)
Claims (4)
- 半導体装置の製造方法であって、
第1電極(19)、第2電極(23)、前記第1電極と前記第2電極との間に流れる電流を制御するための制御電極(15)を有し、自己発熱によって特性が変化する半導体素子が形成された被対象物を用意することと、
前記被対象物の無発熱状態での飽和電流特性を導出することと、を行い、
前記飽和電流特性を導出することでは、条件を変更しながら前記被対象物の半導体素子を短絡させて複数の短絡過渡波形を取得することと、前記複数の短絡過渡波形において所定タイミングでの電流に関する値および電圧に関する値を取得することと、前記半導体素子の短絡期間に基づく所定期間の過渡熱抵抗を導出することと、前記短絡過渡波形から取得した電流に関する値および電圧に関する値と、導出した前記過渡熱抵抗とを用い、前記被対象物が無発熱状態での飽和電流特性を導出することと、を行う半導体装置の製造方法。 - 前記過渡熱抵抗を導出することでは、前記被対象物が使用される状態に基づいたモデルを用いたシミュレーションによって前記過渡熱抵抗を導出する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記被対象物を用意することでは、不純物濃度が1.0×1015cm-3以下とされたドリフト層(11)を有すると共に前記ドリフト層内を前記被対象物の厚さ方向に沿って電流を流す前記半導体素子が形成された前記被対象物を用意し、
前記過渡熱抵抗を導出することでは、断熱加熱の理論式に基づいて前記過渡熱抵抗を導出する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。 - 前記半導体素子は、IGBT素子またはスーパージャンクション構造を有するMOSFET素子である請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
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