JP2023023418A - ブランク及び玉の柄 - Google Patents
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Abstract
【課題】損傷時に分断を回避する玉の柄及びブランクを提供する。【解決手段】玉の柄を構成するブランク17は、カーボン繊維により強化された樹脂からなる。ブランク17は円筒状を呈し、4層構造を有する。ブランク17の内側から外側に向かって順に第1繊維強化樹脂層31、中間層33、第2繊維強化樹脂層32及び表面被覆層34が積層されている。第1繊維強化樹脂層31及び第2繊維強化樹脂層32では、カーボン繊維が周方向に沿っている。分断防止線材35が中間層33に埋設され、固着されている。分断防止線材35は、複数のポリエチレン繊維が編み込まれた撚糸からなる。分断防止線材35は、軸方向21に沿って真直に配置されている。【選択図】図2
Description
この発明は、主として釣用竿の構成部品となるブランクの構造並びにこのブランクを備えた玉の柄に関するものである。
本明細書において「釣用竿」とは、仕掛けの操作やヒットした魚を取り込むための釣竿のほか、たとえばヒットした魚を取り込むために使用される玉の柄も含まれる。
釣用竿は、一般に複数のブランクからなり、これらが所定の継ぎ構造を介して長手方向に連結される。釣り場には、釣人が釣用竿を操作するに際して障害となる物(典型的には、大きく張り出した磯)が存在し、場合によっては、釣用竿がかかる障害物と接触することがある。たとえば、磯釣りにおいて、ヒットした魚を取り込む作業は、釣人が玉の柄を操作して伸長させ、この玉の柄に装着した玉網で魚を掬う。このとき、魚を掬った玉網や玉の柄が磯際のうねり波に煽られ、玉の柄が磯に打ち付けられて破損ないし分断することがある。このような事故が生じると、釣人は、玉の柄のみならず、魚及び玉網をも同時に失うことになり、特に一旦玉網に取り込んだ魚のサイズが大きい場合は、精神的ショックも含めて重大な悲劇に見舞われる。
釣用竿の分断等の事故を防止するためには、障害物との衝突によっても容易に損傷しないように、実用的な機械的強度に加えて損傷を防止する補強設計がなされればよい。ところが、釣用竿は、一般にいわゆるCFRPからなるため、たとえば厚肉構造の設計により強度がある程度向上されたとしても、絶対的な強度アップに限界がある。しかも、玉の柄は、一方の手で釣竿を操作する釣人が他方の手で操作できる程度の重量となるように設計される必要があるため、許容される重量に上限があり、たとえば玉の柄を金属で構成することは非現実的である。すなわち、玉の柄の損傷を防止する設計は、事実上きわめて困難である。
従来、玉の柄の損傷防止は困難であるとしても、損傷した玉の柄が分断することを防止する手段が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された釣竿は、ブランクの成形時においてマンドレルにプリプレグが巻回される際に、分断防止糸状体が螺旋状に巻き付けられる。このようにして成形されたブランクは、破損した場合であっても、分断防止糸状体により分断されることがないとされている。
ところで、ブランクの実用的な機械的強度は、プリプレグに含有される繊維の方向が重要な役割りを果たす。すなわち、成形されたブランクの周方向に繊維が揃って延びていること(いわゆる逆目層が形成されていること)が重要であり、一般に、この逆目層は、ブランクの最内層及び最外層に配置される。
前記文献に開示された釣竿では、分断防止糸状体がプリプレグの上側あるいは下側(マンドレルとプリプレグとの間)に螺旋状に配置される。つまり、分断防止糸状体が、逆目層と隣接して外側あるいは内側に配置される。そのため、加圧成形時に、分断防止糸状体がブランクの周方向に延びる繊維を異方向に変位、蛇行させ、成形されたブランクの実用的な強度が極端に低下する。
そこで、本発明の主目的は、実用的な機械的強度の低下を防止しつつ損傷した場合であっても分断を回避できる軽量なブランクを提供することである。
(1) 本発明に係るブランクは、径方向内側に設けられ、強化繊維が周方向に延びる第1繊維強化樹脂層と、前記第1繊維強化樹脂層の径方向外側に設けられ、強化繊維が周方向に延びる第2繊維強化樹脂層と、軸方向に沿って延びる分断防止線材を有し、前記第1繊維強化樹脂層及び前記第2繊維強化樹脂層の間に設けられた中間層と、を備えている。
前記中間層は、構造物としてのブランクの中核をなす。この中間層の径方向内側及び外側にそれぞれ第1繊維強化樹脂層及び第2繊維強化樹脂層が配置されており、これらは、いわゆる逆目層を形成している。第1繊維強化樹脂層及び第2繊維強化樹脂層に含有される強化繊維の方向が周方向に揃っていることが所定の強度(主に曲げ強度)を達成するために重要であり、この強化繊維が異方に変位したり蛇行すると、ブランクの機械的強度が低下する。
この発明では、前記分断防止線材がブランクに埋設された状態となるから、仮にブランクが破損したとしても、複数に分断されることがない。加えて、この分断防止線材は、第1繊維強化樹脂層及び第2繊維強化樹脂層の間に位置し、しかも前記中間層に覆われるように軸方向に延びている。したがって、ブランクが焼成される際に、前記分断防止線材によって前記強化繊維が異方に変位したり蛇行したりすることがなく、ブランクの機械的強度の低下が防止される。
(2) 前記中間層は、軸方向に延びる強化繊維を含有していてもよい。
この構成では、ブランクの軸方向の引張強度が向上する。したがって、構造物としてのブランクの曲げ強度が向上する。
(3) 前記中間層は、周方向に延びる強化繊維を含有していてもよい。
この構成では、ブランクの周方向の引張強度が向上する。したがって、構造物としてのブランクのねじり強度がさらに向上する。
(4) 前記中間層は、軸方向と交差する方向に延びる強化繊維を含有していてもよい。
この構成では、構造物としてのブランクの座屈(潰れ)強度がさらに向上する。
(5) 前記中間層は、前記分断防止線材より径方向内側の内側中間層と、前記分断防止線材より径方向外側の外側中間層とを備えていてもよい。
この構成では、前記分断防止線材が中間層に埋設された状態となる。これにより、前記第1繊維強化樹脂層及び第2繊維強化樹脂層に含有される強化繊維の方向が周方向に揃った状態が確実に維持される。したがって、ブランクが焼成される際に、前記分断防止線材によって前記強化繊維が異方に変位したり蛇行したりすることが確実に防止される。
(6) 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか一方は、軸方向に延びる強化繊維を含有しているのが好ましい。
この構成では、ブランクの軸方向の引張強度が向上する。したがって、構造物としてのブランクの曲げ強度が向上する。
(7) 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか他方は、周方向に延びる強化繊維を含有しているのが好ましい。
この構成では、ブランクの周方向の引張強度が向上する。したがって、構造物としてのブランクのねじり強度がさらに向上する。
(8) 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか一方は、軸方向と交差する方向に延びる強化繊維を含有しているのが好ましい。
この構成では、構造物としてのブランクの座屈(潰れ)強度がさらに向上する。
(9) 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか他方は、軸方向に延びる強化繊維を含有しているのが好ましい。
この構成では、ブランクの軸方向の引張強度が向上する。したがって、構造物としてのブランクの曲げ強度が向上する。
(10)前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか他方は、周方向に延びる強化繊維を含有しているのが好ましい。
この構成では、ブランクの周方向の引張強度が向上する。したがって、構造物としてのブランクのねじり強度がさらに向上する。
(11)前記内側中間層及び外側中間層に含有された強化繊維は、互いに交差する方向に延びているのが好ましい。
この構成では、ブランクの軸方向、周方向の引張強度がさらに向上する。これにより、構造物としてのブランクの曲げ強度、ねじり強度及び座屈強度がなお一層向上する。
(12)前記分断防止線材は、軸方向に沿って螺旋状に延びているのが好ましい。
この構成では、前記分断防止線材が構造物としてのブランクの機械的強度をさらに向上させる。
(13)前記ブランクを有する玉の柄が構成され得る。
この発明によれば、ブランクの中核をなす中間層に分断防止線材が設けられるので、ブランクの成形時にいわゆる逆目層を形成する強化繊維が異方に変位したり蛇行することが防止される。したがって、ブランクひいてはこのブランクからなる玉の柄の実用的な機械的強度が維持されつつ、仮にブランクないし玉の柄が損傷した場合であっても、その分断が回避される。
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る玉の柄の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
<玉の柄の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る玉の柄10の外観斜視図である。同図では、玉の柄10の使用状態が示されている。
同図が示すように、玉の柄10に玉網12が装着されるようになっており、実釣において両者が組み付けられた状態で使用される。すなわち、玉の柄10は、軸方向21に沿って伸縮自在であり、この玉の柄10の先端に玉網12が着脱自在に取り付けられる。釣人は、ランディングの際に玉の柄10を操作して伸長させ、玉網12にてヒットした魚を掬い取る。
玉網12は、網本体13と、これを支持する枠体14とを有する。枠体14は、軸16を有し、この軸16に雄ネジ15が形成されている。この軸16が玉の柄10の先端に螺合され、玉網12が玉の柄10に固定される。
玉の柄10は、4本のブランク17~20(柄本体11)を有し、これらがいわゆる振出形式で継がれている。すなわち、ブランク17~20は円筒状を呈し、最も大径のブランク20の内側に他のブランク19、18、17が順に入れ子状に配置されている。玉の柄10が使用されるときは、ブランク17~19がブランク20から軸方向21に引き出され、ブランク17が柄本体11の最も先端側に配置される。本実施形態では、柄本体11は4本のブランク17~20からなるが、柄本体11を構成するブランクの数は、特に制限を受けない。
ブランク17の先端部の内側に雌ネジが形成されており、この先端部を囲繞するようにキャップ23が外嵌されている。前記雌ネジは、ブランク17の内周面に直接に形成されていてもよいし、たとえば前記先端部の内側にスリーブが嵌め込まれ、このスリーブに形成されていてもよい。この雌ネジに前記雄ネジ15が螺合し、玉網12が玉の柄10に着脱自在に装着される。前記キャップ23はたとえばゴムからなり、その外形は、ブランク20の先端部に着脱自在に嵌め込まれるように形成されている。ブランク20の後端部に尻栓22が設けられている。この尻栓22は、既知の構造を有し、ブランク20に着脱自在に螺合している。
図2は、ブランク17の断面構造を模式的に示す図である。図3は、図2における要部拡大図である。
ブランク17は樹脂からなり、その外形形状は円筒形である。ブランク17を構成する樹脂は、一般に熱硬化性樹脂(典型的にはエポキシ樹脂)が採用され、後述のように加熱処理がなされることにより円筒状のブランク17が成形される。この樹脂は、繊維により強化されているのが好ましい。樹脂を強化する繊維は、一般にカーボン繊維が採用されるがガラス繊維その他の繊維が採用されてもよい。なお、ブランク18~20もブランク17と同様に樹脂からなる。各ブランク17~20の外形は、所定のテーパを形成するように設計されている。各ブランク17~20の外径は、軸方向21の先端側(図1において左側)が最も小さく、後端側(図1において右側)に向かって漸次拡径されている。ブランク17の後端部の外径は、ブランク18の先端部の内径よりも大きく設定されており、このため、ブランク18の内部に配置されたブランク17は、ブランク18から軸方向21に沿って引き出されると、ブランク18と嵌合する。他のブランク18~20においても、相対的に隣り合うブランク同士の関係は、ブランク17、18と同様である。
図2及び図3が示すように、ブランク17の周壁24は、4層構造を有する。すなわち、ブランク17の径方向に沿って内側から順に、第1繊維強化樹脂層31、中間層33、第2繊維強化樹脂層32及び表面被覆層34が積層されており、これらが一体的に形成されている。第1繊維強化樹脂層31及び第2繊維強化樹脂層32は、それぞれ、ブランク17の径方向の内側及び外側に配置されており、こららの間に中間層33が挟み込まれている。この中間層33に分断防止線材35が設けられている。
本実施形態に係る第1繊維強化樹脂層31は、エポキシ樹脂からなり、強化繊維としてカーボン繊維を使用して強化されている。もっとも、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂が採用されてもよいことは言うまでもない。本実施形態では、第1繊維強化樹脂層31に含まれるカーボン繊維は、ブランク17の周方向に沿って延びている。つまり、第1繊維強化樹脂層31は、いわゆる逆目層を形成している。本実施形態に係る第2繊維強化樹脂層32も第1繊維強化樹脂層31と同様の組成であり、カーボン繊維により強化されたエポキシ樹脂等からなる。第2繊維強化樹脂層32も逆目層であり、第2繊維強化樹脂層32に含まれるカーボン繊維は、ブランク17の周方向に沿って延びている。
本実施形態に係る中間層33は、構造物としてのブランク17の中核をなす。中間層33は、エポキシ樹脂からなり、強化繊維としてカーボン繊維を使用して強化されている。この中間層33を構成する樹脂もエポキシ樹脂に代えて他の熱硬化性樹脂が採用され得る。中間層33に含まれるカーボン繊維は、軸方向21に沿って延びている。つまり、中間層33は、いわゆる順目層を形成している。ただし、中間層33に含まれるカーボン繊維がブランク17の周方向に沿って延びていてもよい。この場合、中間層33は、逆目層を形成する。また、中間層33に含まれるカーボン繊維がブランク17の軸方向21と交差する方向に沿って延びていてもよい。
もっとも、中間層33に含まれるカーボン繊維が異なる二方向に延びていてもよい。すなわち、カーボン繊維の一部がブランク17の周方向に沿って延び、他の一部がブランク17の軸方向21に沿って延び、格子を形成していてもよい。さらに、カーボン繊維の一部が軸方向21と角度(θ)で交差すると共に、他の一部が軸方向21と角度(-θ)で交差していてもよい。つまり、カーボン繊維の一部及び他の一部が、それぞれ、ブランク17の軸方向21を基準として対称に交差する方向に延び、格子状に配置されていてもよい。なお、中間層33がカーボン繊維その他の強化繊維を含んでいなくてもよい。
本実施形態に係る玉の柄10の特徴とするところは、中間層33が分断防止線材35を備えている点である。分断防止線材35は、典型的には複数のポリエチレン繊維が編み込まれた撚糸が採用される。すなわち、釣糸として使用されるいわゆる「PEライン」と称される糸が採用され得る。ただし、分断防止線材35を構成する材料は特に限定されるものではなく、十分な引張強度(80kgf/mm2程度)が確保されれば、アラミド繊維や金属(好ましくは形状記憶合金)も採用され得る。形状記憶合金として、チタン-ニッケル合金のほか、鉄-マンガン-ケイ素合金が採用され得る。分断防止線材35は、ブランク17の先端から後端にわたって軸方向21に沿って真直に延びている。分断防止線材35は、後述のようにブランク17の成形時に中間層33の内部に配置されるので、成形されたブランク17において、中間層33と固着している。
表面被覆層34は、成形されたブランク17の外表面に所定の塗料が付されることにより形成される。この塗料としては、エポシキ系及び/又はウレタン系の塗料が採用され得る。
図3が示すように、ブランク17の肉厚36は、第1繊維強化樹脂層31、第2繊維強化樹脂層32、中間層33及び表面被覆層34のそれぞれの肉厚37~40の合計である。第1繊維強化樹脂層31の肉厚37は、0.02mm~0.30mm、第2繊維強化樹脂層32の肉厚38は、0.02mm~0.30mm、中間層33の肉厚39は、0.15mm~1.50mm、表面被覆層34の肉厚40は、0.02mm~0.50mmに設定される。これら肉厚37~39は、ブランク17の強度設計に応じて適宜設定される。分断防止線材35の外径は、本実施形態では0.7mm程度に設定されているが、中間層33の肉厚39に対応させて0.15mm~1.50mmの範囲で適宜設定され得る。すなわち、分断防止線材35は、中間層33に埋設されている。
なお、ブランク18~20もブランク17と同様の構造である。ただし、柄本体11は振出式に継がれるから、各ブランク18~20の外径及び内径並びに第1繊維強化樹脂層31、第2繊維強化樹脂層32及び中間層33の肉厚37~39については、適宜適切な設計がなされる。
<ブランクの製法>
各ブランク17~20は、次の要領で成形される。図4から図9は、ブランク17の製造工程を模式的に示す図である。
ブランク17は、マンドレルの周囲に巻き付けられたプリプレグが熱処理(硬化)され、その後に、マンドレルが引き抜かれることにより製造される。すなわち、(1) カッティング工程、(2) ローリング工程、(3) テーピング工程、(4) 熱処理工程、(5) 脱芯・テープ除去工程、及び(6) 仕上・裁断工程を経てブランク17が製造される。
(1) カッティング工程
プリプレグは、前記強化繊維(本実施形態においてはカーボン繊維)に樹脂が含浸されたシートである。樹脂は、エポキシ樹脂が例示される。強化繊維の引張弾性率によってブランク17の機械的強度が決定される。図4が示すように、このプリプレグ41が所定の寸法に裁断され、クロスパターン42が形成される。本実施形態では、第1繊維強化樹脂層31、第2繊維強化樹脂層32、中間層33に対応するクロスパターン42が裁断される。クロスパターン42の寸法、形状は、ブランク17の長さ、外径、剛性等の機械的強度に応じて決定される。
(2) ローリング工程
図5が示すように、第1繊維強化樹脂層31(図3参照)を形成するクロスパターン42aがマンドレル43に対して位置決めされ、マンドレル43の周囲に完全に巻き付けられる。このとき、クロスパターン42aに含まれるカーボン繊維がマンドレル43の周方向(成形されたブランク17の周方向と同方向)に沿うように巻回される。本実施形態では、クロスパターン42aは単一のシートであるが、ブランク17の強度設計に応じて、複数のクロスパターン42aが重ね合わされるようにマンドレル43に巻回されてもよい。
図6が示すように、中間層33(図3参照)を形成するクロスパターン42bがクロスパターン42aの上に重ね合わせるようにして巻き付けられる。このとき、クロスパターン42bに含まれるカーボン繊維がマンドレル43の軸方向(前記軸方向21と同方向)に沿うように巻回される。加えて、分断防止線材35がクロスパターン42aの上に軸方向21に沿って真直に配置される。本実施形態では、クロスパターン42bは、クロスパターン42aの外側を丁度一周するように裁断されている(図3参照)。したがって、クロスパターン42bの端縁同士は、クロスパターン42a上で周方向に沿って対向し、分断防止線材35は、図3が示すように、クロスパターン42bの端縁間に挟み込まれるように配置される。もっとも、クロスパターン42bは、クロスパターン42a上でオーバーラップするように裁断されてもよい。図6では、クロスパターン42bは単一のシートであるが、ブランク17の強度設計に応じて、複数のクロスパターン42bが重ね合わされて巻回されてもよい。
本実施形態では、クロスパターン42bは、前記カーボン繊維が軸方向21に沿うようにマンドレル43に巻回されるが、クロスパターン42bに含まれるカーボン繊維が前記周方向ないし軸方向21と交差する方向に沿うように、クロスパターン42bが巻回されてもよい。また、複数枚のクロスパターン42bが巻回される場合では、前記カーボン繊維が格子を形成するように巻回されてもよい。たとえば、一のクロスパターン42bは、前記カーボン繊維が軸方向21に沿うように、他のクロスパターン42bは、前記カーボン繊維が前記周方向に沿うように、マンドレル43に巻回され得る。さらに、一のクロスパターン42bは、前記カーボン繊維が軸方向21に対して角度(θ)で交差するように、他のクロスパターン42bは、前記カーボン繊維が軸方向21に対して角度(-θ)で交差するように、マンドレル43に巻回され得る。なお、クロスパターン42bがカーボン繊維を含んでいなくてもよい。
図7が示すように、第2繊維強化樹脂層32(図3参照)を形成するクロスパターン42cがクロスパターン42bの上に重ね合わせるようにして巻き付けられる。このとき、クロスパターン42cに含まれるカーボン繊維がマンドレル43の周方向に沿うように巻回される。本実施形態では、クロスパターン42cは単一のシートであるが、クロスパターン42a、42bと同様に、複数のクロスパターン42cが重ね合わされて巻回されてもよい。
(3) テーピング工程
図8が示すように、クロスパターン42がマンドレル43から剥がれないように、クロスパターン42を覆うようにテープ45が巻き付けられる。このテープ45は、たとえばポリプロピレンからなり、クロスパターン42及びマンドレル43を締め付けるように巻かれる。
(4) 熱処理工程
図9(a)が示すように、管状に形成され且つテーピングされたクロスパターン42が、マンドレル43と共に炉46に入れられる。この炉は典型的には電気オーブンであり、クロスパターン42は、たとえば140℃の雰囲気で120分間加熱される。これにより、クロスパターン42に含まれているエポキシ樹脂が前記カーボン繊維により強化されつつ硬化し、引張強度、曲げ強度に優れた軽量のブランク17が焼成される。
(5) 脱芯・テープ除去工程
熱処理工程が終了すると、同図(b)が示すように、マンドレル43がブランク17から引き抜かれる。焼成されたブランク47からテープ45が取り外される。
(6) 仕上・裁断工程
円筒状に形成されたブランク17は、所定の長さに切断される。ブランク17の表面が研磨され、所要の塗装が施される。この塗装により、前記表面被覆層34が形成される。
なお、他のブランク18~20についても同様の要領で製造される。なお、ブランク17の先端部に前記キャップ23が装着され、後端部に尻栓22が装着される(図1参照)。これらの工程は既知であるため、その説明は省略される。
<玉の柄の作用効果>
このようにして製造されたブランク17~20が振出式に継がれ、柄本体11が構成される。図1が示すように、柄本体11に玉網12が装着され、釣人は、柄本体11を操作して玉網12で魚を掬うことができる。この玉の柄10では、図3が示すように、逆目層である第1繊維強化樹脂層31及び第2繊維強化樹脂層32が中間層33を挟み込んでいる。したがって、第1繊維強化樹脂層31及び第2繊維強化樹脂層32に含まれるカーボン繊維により、ブランク17~20の十分な強度(主に曲げ強度)が確保され、釣人は、実釣において玉の柄10を快適に操作することができる。
実釣において柄本体11が磯に衝突した場合であっても、分断防止線材35が中間層33に埋設されているから、仮にブランク17~20が破損したとしても、ブランク17~20が分断されることがない。したがって、ブランク17~20が折れて分離し、玉網12や、玉網12で掬った魚も失ってしまうことが防止される。しかも、分断防止線材35は、中間層33に覆われて第1繊維強化樹脂層31と第2繊維強化樹脂層32との間に位置し、軸方向21に延びている。このため、ブランク17~20が焼成される際に、分断防止線材35によって第1繊維強化樹脂層31及び第2繊維強化樹脂層32に含まれるカーボン繊維が異方に変位したり蛇行することが防止される。その結果、分断防止線材35を中間層33に組み込むことに起因して、ブランク17~20の機械的強度が低下することが防止される。
中間層33に含まれるカーボン繊維が軸方向21に延びる場合、すなわち中間層33が順目層を形成する場合は、ブランク17~20の軸方向21の引張強度が向上する。したがって、ブランク17~20の曲げ強度が向上する。また、中間層33に含まれるカーボン繊維が周方向に延びる場合、すなわち中間層33が逆目層を形成する場合は、ブランク17~20の周方向の引張強度が向上する。したがって、ブランク17~20のねじり強度がさらに向上する。さらに、中間層33に含まれるカーボン繊維が軸方向21と交差する方向に延びる場合は、ブランク17~20の座屈(潰れ)強度がさらに向上する。
<他の実施形態>
図10は、本発明の他の実施形態に係る玉の柄50の一部拡大断面図である。
本実施形態に係る玉の柄50が前記玉の柄10と異なるところは、中間層51が分断防止線材35を挟んで内側中間層52と外側中間層53に分かれている点である。なお、玉の柄50のその他の構成については、前記玉の柄10と同様である。
図10が示すように、玉の柄50を構成するブランク17~20の周壁24は、5層構造を有する。すなわち、ブランク17~20の径方向に沿って内側から順に、第1繊維強化樹脂層31、内側中間層52、外側中間層53、第2繊維強化樹脂層32及び表面被覆層34が積層されており、これらが一体的に形成されている。分断防止線材35は、内側中間層52と外側中間層53との境界に配置されている。ただし、分断防止線材35は、中間層51に配置されていればよく、分断防止線材35の中心が内側中間層52と外側中間層53との境界に位置していなくてもよい。
内側中間層52は、玉の柄10の中間層33と同様の工程で成形される。すなわち、内側中間層52は、単一又は複数のクロスパターンからなり、内側中間層52を強化するカーボン繊維は、周方向(同図において左右方向)、軸方向21(同図において紙面に垂直な方向)あるいは軸方向21と交差する方向に沿って配置される。特に内側中間層52が複数のクロスパターンからなる場合は、前記カーボン繊維が格子を形成するように配置されてもよい。
外側中間層53も前記中間層33と同様の工程で成形され、単一又は複数のクロスパターンからなる。外側中間層53を強化するカーボン繊維は、前記周方向、軸方向21又は軸方向21と交差する方向に沿って配置される。内側中間層52と同様に、外側中間層53が複数のクロスパターンからなる場合は、前記カーボン繊維が格子を形成するように配置されてもよい。
内側中間層52及び外側中間層53を強化するカーボン繊維の方向は、ブランク17~20の強度設計に応じて適宜適切に選択される。
たとえば、ブランク17~20の設計において、内側中間層52及び外側中間層53のいずれか一方又は双方について、前記カーボン繊維が軸方向21に沿って延びるように配置される。この設計では、ブランク17~20の軸方向21の引張強度が向上し、構造物としてのブランク17~20の曲げ強度が向上する。
さらに、内側中間層52及び外側中間層53の少なくともいずれか他方について、前記カーボン繊維がブランク17~20の周方向に沿って延びるように配置されると、前記カーボン繊維が格子状に配置され、ブランク17~20の周方向の引張強度が向上する。これにより、ブランク17~20のねじり強度が一層向上する。
ブランク17~20の設計において、内側中間層52及び外側中間層53のいずれか一方又は双方について、前記カーボン繊維が軸方向21と交差する方向に延びるように配置されてもよい。特に、内側中間層52に含まれるカーボン繊維の方向が外側中間層53に含まれるカーボン繊維の方向と交差するのが好ましい。この設計では、ブランク17~20の座屈(潰れ)強度が向上する。
<設計変更例>
図11は、前記各実施形態の設計変更例に係るブランク17~20の断面構造を模式的に示す図である。
本設計変更例に係るブランク17~20では、分断防止線材35が軸方向21に沿って螺旋状に延びている。このように、分断防止線材35がブランク17~20に巻回されることにより、構造物としてのブランク17~20の機械的強度がさらに向上する。
10・・・玉の柄
11・・・柄本体
17・・・ブランク
18・・・ブランク
19・・・ブランク
20・・・ブランク
21・・・軸方向
31・・・第1繊維強化樹脂層
32・・・第2繊維強化樹脂層
33・・・中間層
35・・・分断防止線材
50・・・玉の柄
51・・・中間層
52・・・内側中間層
53・・・外側中間層
54・・・端縁
55・・・端縁
11・・・柄本体
17・・・ブランク
18・・・ブランク
19・・・ブランク
20・・・ブランク
21・・・軸方向
31・・・第1繊維強化樹脂層
32・・・第2繊維強化樹脂層
33・・・中間層
35・・・分断防止線材
50・・・玉の柄
51・・・中間層
52・・・内側中間層
53・・・外側中間層
54・・・端縁
55・・・端縁
Claims (13)
- 径方向内側に設けられ、強化繊維が周方向に延びる第1繊維強化樹脂層と、
前記第1繊維強化樹脂層の径方向外側に設けられ、強化繊維が周方向に延びる第2繊維強化樹脂層と、
軸方向に沿って延びる分断防止線材を有し、前記第1繊維強化樹脂層及び前記第2繊維強化樹脂層の間に設けられた中間層と、
を備えた、ブランク。 - 前記中間層は、軸方向に延びる強化繊維を含有する、請求項1に記載のブランク。
- 前記中間層は、周方向に延びる強化繊維を含有する、請求項1又は2に記載のブランク。
- 前記中間層は、軸方向と交差する方向に延びる強化繊維を含有する、請求項1から3のいずれかに記載のブランク。
- 前記中間層は、
前記分断防止線材より径方向内側の内側中間層と、
前記分断防止線材より径方向外側の外側中間層と、を有する請求項1から4のいずれかに記載のブランク。 - 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか一方は、軸方向に延びる強化繊維を含有する、請求項5に記載のブランク。
- 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか他方は、周方向に延びる強化繊維を含有する、請求項5又は6に記載のブランク。
- 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか一方は、軸方向と交差する方向に延びる強化繊維を含有する、請求項5に記載のブランク。
- 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか他方は、軸方向に延びる強化繊維を含有する、請求項8に記載のブランク。
- 前記内側中間層及び外側中間層の少なくともいずれか他方は、周方向に延びる強化繊維を含有する、請求項8に記載のブランク。
- 前記内側中間層及び外側中間層に含有された強化繊維は、互いに交差する方向に延びている、請求項8に記載のブランク。
- 前記分断防止線材は、軸方向に沿って螺旋状に延びている、請求項1から11のいずれかに記載のブランク。
- 請求項1から12のいずれかに記載のブランクを有する、玉の柄。
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