JP2023020769A - 機上現像型平版印刷版原版、及び印刷版の作製方法 - Google Patents

機上現像型平版印刷版原版、及び印刷版の作製方法 Download PDF

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【課題】 平版印刷版による印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制可能な機上現像型平版印刷版原版、及び機上現像型平版印刷版原版を用いた印刷版の作製方法を提供する。【解決手段】 支持体上に画像記録層を有し、上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下である、機上現像型平版印刷版原版、及び印刷版の作製方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、機上現像型平版印刷版原版、及び印刷版の作製方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキとが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
現在、平版印刷版原版から平版印刷版を作製する製版工程においては、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術による画像露光が行われている。即ち、画像露光は、リスフィルムを介することなく、レーザーやレーザーダイオードを用いて直接平版印刷版原版に走査露光などにより行われる。
一方、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版の製版に関して、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境問題がクローズアップされ、これに伴い、現像処理の簡易化又は無処理化が指向されている。簡易な現像処理の一つとして、「機上現像」と呼ばれる方法が提案されている。機上現像は、平版印刷版原版を画像露光後、従来の湿式現像処理を行わず、そのまま印刷機に取り付け、画像記録層の非画像部の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
平版印刷版を用いて印刷する場合、新聞印刷では、一般的に、版胴に巻き付けた平版印刷版を輪転機を用いてロール状の紙に連続して印刷する。
特許文献1には、アルミニウム合金版に粗面化処理を施した、引張強度が180Mpa以上300Mpa以下である支持体上に、有機ホウ素化合物と、重合開始剤と、重合性化合物と、を含有する感光層を設けたことを特徴とする平版印刷版原版が記載されている。
特許文献2には、親水化されたアルミニウム支持体上に、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層を有し、前記画像記録層を有する側と反対の側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20μm以下であり、前記画像記録層に含まれる粒子形状を有する高分子化合物が、疎水性主鎖を有し、i)前記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む平版印刷版原版が記載されている。
特開2008-250104号公報 特許6454057号公報
新聞印刷では、版胴に巻き付けた平版印刷版が印刷中にずれる現象(「版ずれ」)が生じることがある。例えば、多色印刷の場合は、版ずれが発生すると、紙面上にて設定した絵柄が狙い通りに重ならず、絵柄の位置にずれが生じることで、版の交換を含む再度の印刷が必要となり、印刷における時間がかかる場合があった。
そして、例えば上記した特許文献1や特許文献2に記載の従来の技術によっても、版ずれを抑制することは困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、平版印刷版による印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制可能な機上現像型平版印刷版原版、及び機上現像型平版印刷版原版を用いた印刷版の作製方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段を以下に記載する。
[1]
支持体上に画像記録層を有し、
上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下である、機上現像型平版印刷版原版。
[2]
上記支持体がアルミニウム支持体であって、上記アルミニウム支持体がマグネシウムを0.020質量%以上含む、[1]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[3]
上記支持体がアルミニウム支持体であって、上記アルミニウム支持体は、上記アルミニウム支持体を構成するアルミニウム板が圧延工程において、250℃以上で熱処理された後に冷間圧延の圧下率を80%以上としたものである、[1]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[4]
支持体上に画像記録層を有し、
上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である、機上現像型平版印刷版原版。
[5]
上記画像記録層を有する側とは反対側にバックコート層を有する、[4]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[6]
上記バックコート層が粒子を含み、
バックコート層の平均厚みT[μm]、粒子の平均粒子径D[μm]が、下記式(1)を満たす、[5]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
D > T ・・・式(1)
[7]
上記バックコート層が薄膜部と厚膜部を有する、[5]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[8]
支持体上に画像記録層を有し、
上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーが60mJ/m以下である、機上現像型平版印刷版原版。
[9]
上記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
上記陽極酸化皮膜におけるマイクロポアが、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が、15nmより小さい、[1]~[8]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[10]
上記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
上記陽極酸化皮膜におけるマイクロポアが、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる小径孔部と、上記小径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる大径孔部とから構成され、上記小径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、35nm以下であり、上記大径孔部の平均径が、40~300nm以下である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[11]
上記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
上記陽極酸化皮膜が、陽極酸化皮膜の表面から深さ方向に向かって順に、
平均径が20~100nmのマイクロポアを有する、厚さ30~500nmの上層、
平均径が上記マイクロポア上層におけるマイクロポアの平均径の1/2~5倍のマイクロポアを有する、厚さ100~300nmの中間層、及び
平均径が15nm以下のマイクロポアを有する、厚さ300~2000nmの下層
を有する、[1]~[8]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[12]
上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、高分子化合物を含有する[1]~[11]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[13]
上記画像記録層が、発色剤を含有する、[1]~[12]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[14]
上記画像記録層が、水溶性又は水分散性を有する、[1]~[13]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[15]
上記高分子化合物が粒子形態の高分子化合物である、[12]~[14]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[16]
上記粒子形態の高分子化合物が、疎水性主鎖を有し、
i) 上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び
ii) 親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニット
の両方を含む、[15]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[17]
上記粒子形態の高分子化合物が、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、並びに、活性水素を有する化合物との反応により得られる、[15]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[18]
上記平版印刷版原版の端部が、ダレ量Xが25~150μm、ダレ幅Yが70~300μmのダレ形状を有する、[1]~[17]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[19]
上記平版印刷版原版の対向する2辺の側面の一部又は全部に撥インク剤を有する[18]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[20]
上記画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である、[1]~[19]のいずれか1項に機上現像型平版印刷版原版。
[21]
[1]~[20]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を画像露光する工程、並びに、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとものいずれかを供給して、上記機上現像型平版印刷版原版における画像記録層の未露光部を除去する工程を含む印刷版の作製方法。
本発明によれば、平版印刷版による印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制可能な機上現像型平版印刷版原版、及び機上現像型平版印刷版原版を用いた印刷版の作製方法を提供することができる。
電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 平版印刷版原版の端部の断面形状を示す模式図である。 スリッター装置の裁断部の一例を示す概念図である。 アルミニウム支持体の作製における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。 撥インク剤を塗布する方法を説明する図である。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書における質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[機上現像型平版印刷版原版]
本発明に係る第1の機上現像型平版印刷版原版(以下、単に、第1の平版印刷版原版ともいう)は、支持体上に画像記録層を有し、
上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下である、機上現像型平版印刷版原版である。
また、本発明に係る第2の機上現像型平版印刷版原版(以下、単に、第2の平版印刷版原版ともいう)は、支持体上に画像記録層を有し、
上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である、機上現像型平版印刷版原版である。
更に、本発明に係る第3の機上現像型平版印刷版原版(以下、単に、第3の平版印刷版原版ともいう)は、支持体上に画像記録層を有し、
上記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーが60mJ/m以下である、機上現像型平版印刷版原版である。
本発明に係る第1~第3の機上現像型平版印刷版原版(以下、纏めて、機上現像型平版印刷版原版、又は、単に平版印刷版原版ということもある)によれば、上記構成をとることにより、平版印刷版による印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制することが可能になる。
その理由は明らかではないが、以下の通りと推測される。
新聞印刷を行う際には、一般的にオフセット輪転機が使用される。ある種のオフセット輪転機の版胴への版の装着は、印刷用版の天地両先端部を版曲機で所定形状に折り曲げ、この折り曲げ部の一端を版胴の咥え部に引っ掛け、他端を版締装置で引っ張って版胴の表面に装着させる。具体的には、支持体を基準に画像記録層を有する側とは反対側の面を版胴に接触させる状態で巻き付ける。この様な印刷機では、咥え部が引っ掛けられているだけであるために、咥え側の締め付け力が不十分であり、印刷時にブランケットから版に押圧が加わった場合に、咥え部から印刷版がズレてしまう現象(以下、「版ずれ」と称す)が発生する。
平版印刷版と版胴との密着を維持し続ける必要があるが、上述の通り、平版印刷版の両端は、版胴の咥えに引っかけて固定するものであり、咥えにおいて、平版印刷版と咥えとの摩擦により、平版印刷版の位置が若干ずれ得ることを本発明者らは見出した。
本発明者らは、鋭意検討を進めたところ、平版印刷版における支持体の特性、及び平版印刷版における支持体を基準に画像記録層を有する側とは反対側の面と版胴との摩擦力に着目した。
本発明の第1の機上現像型平版印刷版原版では、支持体の引張強度が160MPa以上であり、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下である。
このように支持体が特定の引張強度を有している場合、新聞印刷において、支持体の伸びに起因する版ずれを抑制できる。また、画像記録層を有する側とは反対側の面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下であり、平版印刷版原版から得られる平版印刷版と版胴との摩擦力を大きくなり過ぎず、咥え部において、平版印刷版の位置が移動したとしても、修正されて基に戻り得るものと考えられる。一般的に、接触する2つの摩擦が大きくなると位置ずれが抑制され得るが、本発明では逆に、静摩擦係数を特定の値以下とすることが版ずれの抑制に寄与することを本発明者らは見出したものである。
したがって、印刷版の印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制することが可能になるものと考えられる。
本発明の第2の機上現像型平版印刷版原版においては、支持体が上記引張強度を有しており、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である。算術平均高さを特定の値とすることで、第1の機上現像型平版印刷版原版における場合と同様に、平版印刷版原版から得られる平版印刷版と版胴との摩擦力を大きくなり過ぎず、第1の平版印刷版原版と同様に、平版印刷版の印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制することが可能になるものと考えられる。
また、本発明の第3の機上現像型平版印刷版原版においては、支持体が上記引張強度を有しており、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーが60mJ/m以下である。表面自由エネルギーを特定の値以下とすることで、第1の機上現像型印刷版原版における場合と同様に、平版印刷版原版から得られる平版印刷版と版胴との摩擦力を大きくなり過ぎず、第1の平版印刷版原版と同様に、平版印刷版の印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制することが可能になるものと考えられる。
以下に、本発明に係る機上現像型平版印刷版原版について詳細に説明する。
(第1の機上現像型平版印刷版原版)
まず、本発明の第1の平版印刷版原版について説明する。
本発明の第1の平版印刷版原版において、支持体の引張強度は160MPa以上である。
引張強度の測定は、引張強度測定機としてオートグラフAGC-H5KN(島津製作所製)を使用し、サンプル:JIS 金属材料引張試験片 5号型により、引張速度:2mm/分にて実施する。
支持体の引張強度は、160Mpa以上であり、好ましくは170MPa以上であり、より好ましくは190MPaである。
また、支持体の引張強度の最大値は、特に限定されないが、通常300MPa以下であり、好ましくは250MPa以下であり、より好ましくは220MPa以下である。
支持体の引張強度を160Mpa以上とするには、特に限定されないが、例えば、後述のように、支持体中に特定量のマグネシウムを含有させることや、支持体の圧延工程における圧下率を特定量以上とすることが挙げられる。
支持体としては、アルミニウム支持体が好ましい。このようなアルミニウム支持体に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属、即ちアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金から選ばれることが好ましい。
アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは製錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有する合金でもよい。アルミニウム支持体に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来から公知のアルミニウム板、例えばJIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを上記の引張強度としたものを適宜利用することが出来る。
上記支持体がアルミニウム支持体であって、上記アルミニウム支持体がマグネシウムを0.020質量%以上含むことが好ましい。アルミニウム支持体におけるマグネシウム含有量(含有率)を0.020質量%以上とすることにより、引張強度が160Mpa以上の支持体を好適に得ることができる。
支持体におけるマグネシウム含有量は、0.020質量%以上であることが好ましく、0.040質量%以上がより好ましく、0.060質量%以上であることが更に好ましい。
また、支持体におけるマグネシウム含有量は、特に限定されないが、通常、0.200質量%以下であり、0.150質量%以下であることが好ましく、0.100質量%以下であることがより好ましい。
支持体における、マグネシウム含有率は、測定装置として発光分析装置(PDA-5500、島津製作所社製)を用い、測定した。
また、上記支持体がアルミニウム支持体であって、上記アルミニウム支持体は、上記アルミニウム支持体を構成するアルミニウム板が圧延工程において、250℃以上で熱処理された後に冷間圧延の圧下率を80%以上としたものであることが好ましく、これにより、引張強度が160Mpa以上の支持体を好適に得ることができる。
熱処理後の冷間圧延工程での圧下率を制御することによって、支持体(好ましくはアルミニウム支持体)の引張強度を制御することができる。ここでの圧下率とは、圧延前後の材料の板厚をそれぞれh1,h2とするとき,(h1-h2)/h1で算出される量で,圧延の加工度を表しており、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。
また、圧下率は、通常、99%未満が好ましく、98%以下であることがより好ましい。
支持体(好ましくは、アルミニウム板)の厚さは、0.1~0.6mm程度が好ましい。
(陽極酸化皮膜)
上記支持体は、陽極酸化皮膜を有することが好ましい。
陽極酸化皮膜は、陽極酸化処理によって支持体(好ましくは、アルミニウム板)の表面に形成される、極微細孔(マイクロポアともいう。)を有する陽極酸化皮膜(好ましくは、陽極酸化アルミニウム皮膜)を意味する。マイクロポアは、支持体とは反対側の陽極酸化皮膜表面から厚み方向(支持体側、深さ方向)に沿ってのびている。
マイクロポアの陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、調子再現性、耐刷性及びブラン汚れ性の観点から、7nm~150nmが好ましく、10nm~100nmがより好ましく、10nm~60nmが更に好ましく、15nm~60nmが特に好ましく、18nm~40nmが最も好ましい。
マイクロポアの深さは、10nm~3,000nmが好ましく、10nm~2,000nmがより好ましく、10nm~1,000nmが更に好ましい。
マイクロポアの形状は、通常、マイクロポアの径が深さ方向(厚み方向)に向かってほぼ変わらない略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が連続的に小さくなる円錐状であってもよい。また、深さ方向(厚み方向)に向かって径が不連続で小さくなる形状であってもよい。
深さ方向(厚み方向)に向かって径が不連続で小さくなる形状のマイクロポアとしては、陽極酸化皮膜表面から深さ方向に延びる大径孔部と、大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ方向に延びる小径孔部とから構成されるマイクロポアが挙げられる。
具体的には、陽極酸化皮膜表面から深さ方向に10nm~1,000nmのびる大径孔部と、大径孔部の底部と連通し、連通位置から更に深さ方向に20~2,000nmのびる小径孔部とから構成されるマイクロポアが好ましい。
以下に、大径孔部及びと小径孔部について詳述する。
-大径孔部-
大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、調子再現性、耐刷性及びブラン汚れ性の観点から、7nm~150nmが好ましく、10nm~100nmがより好ましく、15nm~100nmが更に好ましく、15nm~60nmが特に好ましく、18nm~40nmが最も好ましい。
大径孔部の平均径は、陽極酸化皮膜表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部)の径(直径)を測定し、径の算術平均値を求めることにより算出される。
なお、大径孔部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
大径孔部の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ70nm~1,000nm(以後、深さAともいう。)に位置することが好ましい。つまり、大径孔部は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(厚み方向)に70nm~1,000nmのびる孔部であることが好ましい。中でも、平版印刷版原版の製造方法の効果がより優れる点で、深さAは、90nm~850nmがより好ましく、90nm~800nmが更に好ましく、90nm~600nmが特に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜の断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部の深さを測定し、算術平均値として算出される。
大径孔部の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。また、大径孔部の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
大径孔部の内径は特に制限されないが、開口部の径と同程度の大きさか、又は開口部の径よりも小さいことが好ましい。なお、大径孔部の内径は、開口部の径と1nm~10nm程度の差があってもよい。
-小径孔部-
小径孔部は、大径孔部の底部と連通して、連通位置より更に深さ方向(厚み方向)に延びる孔部である。ひとつの小径孔は、通常ひとつの大径孔部と連通するが、2つ以上の小径孔部がひとつの大径孔部の底部と連通していてもよい。
小径孔部の連通位置における平均径は、15nmより小さいことが好ましく、13nm以下がより好ましく、11nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。下限は特に制限されないが、5nmが好ましい。
小径孔部の平均径は、陽極酸化皮膜表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(小径孔部)の径(直径)を測定し、径の算術平均値を求めることにより算出される。なお、大径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜上部(大径孔部のある領域)を切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜表面を上記FE-SEMで観察して、小径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、小径孔部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
小径孔部の底部は、上記の大径孔部との連通位置(上述した深さAに該当)から更に深さ方向に20nm~2,000nmのびた場所に位置することが好ましい。言い換えると、小径孔部は、上記大径孔部との連通位置から更に深さ方向(厚み方向)にのびる孔部であり、小径孔部の深さは20nm~2,000nmが好ましく、100nm~1,500nmがより好ましく、200nm~1,000nmが特に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜の断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の小径孔部の深さを測定し、算術平均値として算出される。
小径孔部の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。また、小径孔部の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
小径孔部の内径は特に制限されないが、連通位置における径と同程度の大きさか、又は上記径よりも小さくても大きくてもよい。なお、小径孔部の内径は、通常、開口部の径と1nm~10nm程度の差があってもよい。
大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径と小径孔部の連通位置における平均径の比、(大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径)/(小径孔部の連通位置における平均径)は、1.1~13が好ましく、2.5~6.5がより好ましい。
また、大径孔部の深さと小径孔部の深さの比、(大径孔部の深さ)/(小径孔部の深さ)は、0.005~50が好ましく、0.025~40がより好ましい。
また、マイクロポアの形状は、マイクロポアの径が深さ方向(厚み方向)に向かってほぼ変わらない略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が連続的に大きくなる円錐状であってもよい。また、深さ方向(厚み方向)に向かって径が不連続で大きくなる形状であってもよい。
深さ方向(厚み方向)に向かって径が不連続で大きくなる形状のマイクロポアとしては、陽極酸化皮膜表面から深さ方向に延びる小径孔部と、小径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ方向に延びる大径孔部とから構成されるマイクロポアが挙げられる。
具体的には、陽極酸化皮膜表面から深さ方向に10nm~1,000nmのびる小径孔部と、小径孔部の底部と連通し、連通位置から更に深さ方向に20~2,000nmのびる大径孔部とから構成されるマイクロポアが好ましい。
-小径孔部-
小径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、特に限定されないが、35nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下が特に好ましい。下限は特に制限されないが、15nmが好ましい。
小径孔部の平均径は、陽極酸化皮膜表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部)の径(直径)を測定し、径の算術平均値を求めることにより算出される。
なお、小径孔部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
小径孔部の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ70nm~1,000nm(以後、深さA’ともいう。)に位置することが好ましい。つまり、小径孔部は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(厚み方向)に70nm~1,000nmのびる孔部であることが好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜の断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部の深さを測定し、算術平均値として算出される。
小径孔部の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向(厚み方向)に向かって径が大きくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。また、小径孔部の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
小径孔部の内径は特に制限されないが、開口部の径と同程度の大きさか、又は開口部の径よりも小さいことが好ましい。なお、小径孔部の内径は、開口部の径と1nm~10nm程度の差があってもよい。
-大径孔部-
大径孔部は、小径孔部の底部と連通して、連通位置より更に深さ方向(厚み方向)に延びる孔部である。ひとつの大径孔は、通常、2つ以上の小径孔部がひとつの大径孔部の底部と連通していてもよい。
大径孔部の連通位置における平均径は、20nm~400nmが好ましく、40nm~300nmがより好ましく、50nm~200nmが更に好ましく、50nm~100nmが特に好ましい。
大径孔部の平均径は、陽極酸化皮膜表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部)の径(直径)を測定し、径の算術平均値を求めることにより算出される。なお、小径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜上部(小径孔部のある領域)を切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜表面を上記FE-SEMで観察して、大径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、大径孔部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
大径孔部の底部は、上記の小径孔部との連通位置(上述した深さA’に該当)から更に深さ方向に20nm~2,000nmのびた場所に位置することが好ましい。言い換えると、大径孔部は、上記小径孔部との連通位置から更に深さ方向(厚み方向)にのびる孔部であり、大径孔部の深さは20nm~2,000nmが好ましく、100nm~1,500nmがより好ましく、200nm~1,000nmが特に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜の断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部の深さを測定し、算術平均値として算出される。
大径孔部の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。また、大径孔部の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
大径孔部の内径は特に制限されないが、連通位置における径と同程度の大きさか、又は上記径よりも小さくても大きくてもよい。なお、大径孔部の内径は、通常、開口部の径と1nm~10nm程度の差があってもよい。
上記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
上記陽極酸化皮膜が、陽極酸化皮膜の表面から深さ方向に向かって順に、
平均径が20~100nmのマイクロポアを有する、厚さ30~500nmの上層、
平均径が上記マイクロポア上層におけるマイクロポアの平均径の1/2~5倍のマイクロポアを有する、厚さ100~300nmの中間層、及び
平均径が15nm以下のマイクロポアを有する、厚さ300~2000nmの下層
を有することが好ましい。
機上現像型平版印刷版原版においては、画像視認性向上の観点から、支持体の陽極酸化皮膜表面(画像記録層が形成される側の表面)における明度が高いことが有用である。
平版印刷版の印刷工程においては、通常、印刷版を印刷機に取り付ける前に目的通りの画像記録がなされているかを確認する目的で、検版作業が行われる。機上現像型平版印刷版原版においては、画像露光された段階で画像を確認することが求められるため、画像露光部にいわゆる焼き出し画像を生じさせる手段が適用される。
画像露光された機上現像型平版印刷版原版の画像部の見易さ(画像視認性)を定量的に評価する方法として、画像露光部の明度と未露光部の明度を測定し、両者の差を求める方法が挙げられる。ここで、明度としては、CIEL*a*b*表色系における明度L*の値を用いることができ、測定は、色彩色差計(SpectroEye、エックスライト(株)製)を用いて行うことができる。測定により得られた画像露光部の明度と未露光部の明度との差が大きい程、画像部が見易いこととなる。
画像露光部の明度と未露光部の明度との差を大きくするためには、陽極酸化皮膜表面のCIEL*a*b*表色系における明度L*の値が大きいことが有効であることが判明した。即ち、明度L*の値は60~100であることが好ましい。
陽極酸化皮膜を有する支持体は、必要に応じて、2つ以上の水酸基を有するヒドロキシ酸化合物を含有する構成層が形成される側とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物などを含むバックコート層を有していてもよい。
(陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造)
支持体の例として、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法について記載する。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体は公知の方法を用いて製造することができる。陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は、特に限定されるものではない。陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法の好ましい形態としては、アルミニウム板に粗面化処理を施す工程(粗面化処理工程)、粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程(陽極酸化処理工程)、陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程(ポアワイド処理工程)を含む方法が挙げられる。
以下に、各工程を詳細に説明する。
<粗面化処理工程>
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。粗面化処理工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、実施しなくてもよい。
粗面化処理は、電気化学的粗面化処理のみを施してもよいが、電気化学的粗面化処理と機械的粗面化処理及び化学的粗面化処理の少なくとも一つとを組み合わせて施してもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を施すことが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、硝酸や塩酸の水溶液中で施すことが好ましい。
機械的粗面化処理は、一般的には、アルミニウム板の表面を表面粗さRa:0.35~1.0μmとすることを目的として施される。
機械的粗面化処理の諸条件は特に限定されないが、例えば、特公昭50-40047号公報に記載されている方法に従って施すことができる。機械的粗面化処理は、パミストン懸濁液を使用したブラシグレイン処理により施したり、転写方式で施したりすることができる。
また、化学的粗面化処理も特に限定されず、公知の方法に従って施すことができる。
機械的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を施すことが好ましい。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、平版印刷版の耐汚れ性を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子などの不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチングやアルカリによるエッチングが知られているが、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダなどが好適に挙げられる。
アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有してもよい。アルカリ溶液のアルカリ剤の濃度は、0.01質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
更に、アルカリ溶液の温度は室温以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、また、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
エッチング量は、0.01g/m以上が好ましく、0.05g/m以上がより好ましく、また、30g/m以下が好ましく、20g/m以下がより好ましい。
処理時間は、エッチング量に対応して2秒~5分が好ましく、生産性向上の点から2~10秒がより好ましい。
機械的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を施した場合、アルカリエッチング処理により生じる生成物を除去するために、低温の酸性溶液を用いて化学エッチング処理(以下、「デスマット処理」ともいう。)を施すことが好ましい。
酸性溶液に用いられる酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。酸性溶液の濃度は1~50質量%が好ましい。酸性溶液の温度は20~80℃が好ましい。酸性溶液の濃度および温度がこの範囲であると、アルミニウム支持体を用いた平版印刷版における耐ポツ状汚れ性能がより向上する。
粗面化処理工程の好ましい態様を以下に例示する。
-態様SA-
(1)から(8)に示す処理をこの順に実施する態様。
(1)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(2)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(3)硝酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(4)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(5)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(6)塩酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(7)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(8)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第3デスマット処理)
-態様SB-
(11)から(15)に示す処理をこの順に実施する態様。
(11)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第4アルカリエッチング処理)
(12)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第4デスマット処理)
(13)塩酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第3電気化学的粗面化処理)
(14)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第5アルカリエッチング処理)
(15)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第5デスマット処理)
上記態様SAの(1)の処理前、又は、態様SBの(11)の処理前に、必要に応じて、機械的粗面化処理を実施してもよい。
第1アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.5g/m~30g/mが好ましく、1.0g/m~20g/mがより好ましい。
態様SAにおける第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液としては、直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1g/L~100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、又は、硝酸アンモニウムなどを添加して得られる水溶液が挙げられる。
態様SAにおける第2電気化学的粗面化処理及び態様SBにおける第3電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液としては、直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1g/L~100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0g/L~30g/L添加して得られる水溶液が挙げられる。なお、この水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、又は硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、又は塩化アンモニウムなどの塩化物イオンを更に添加してもよい。
電気化学的粗面化処理の交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、又は三角波などを用いることができる。周波数は0.1Hz~250Hzが好ましい。
図1は、電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
図1において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1msec~10msecが好ましい。電気化学的粗面化処理に用いる交流の1サイクルの条件は、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比tc/taが1~20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3~20、アノード反応時間taが5msec~1,000msecの範囲にあることが好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia及びカソードサイクル側Icが共に10~200A/dmが好ましい。Ic/Iaは0.3~20が好ましい。電気化学的粗面化処理が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は25C/dm~1,000C/dmが好ましい。
交流を用いた電気化学的粗面化処理には図2に示した装置を用いることができる。
図2は、交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図2において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a及び53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a及び53bにより電解処理される。電解液55は、電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a及び53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは、次いで、補助陽極槽60で電解処理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の平版印刷版原版が製造しやすい点で、1.0g/m~20g/mが好ましく、2.0g/m~10g/mがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理及び第5アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の平版印刷版原版が製造しやすい点で、0.01g/m~0.8g/mが好ましく、0.05g/m~0.3g/mがより好ましい。
酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1~第5デスマット処理)では、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、又は、これらの2以上の酸を含む混酸を含む酸性水溶液が好適に用いられる。
酸性水溶液における酸の濃度は0.5質量%~60質量%が好ましい。
<陽極酸化処理工程>
陽極酸化処理工程は、上記粗面化処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、アルミニウム板の表面にアルミニウムの酸化皮膜を形成する工程である。陽極酸化処理によりアルミニウム板の表面に、マイクロポアを有するアルミニウムの陽極酸化皮膜が形成される。
陽極酸化処理は、この分野で従来から知られている方法に従って、所望とするマイクロポアの形状などを考慮して、適宜製造条件を設定することにより行うことができる。
陽極酸化処理工程においては、硫酸、リン酸、シュウ酸などの水溶液を主に電解液として用いることができる。場合によっては、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸などまたはこれらの二種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液を用いることもできる。電解液中でアルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。電解液にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが1~10g/Lが好ましい。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、一般的には、電解液の濃度が1~80質量%(好ましくは5~20質量%)、液温5~70℃(好ましくは10~60℃)、電流密度0.5~60A/dm(好ましくは5~50A/dm)、電圧1~100V(好ましくは5~50V)、電解時間1~100秒(好ましくは5~60秒)の範囲が適当である。
英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中にて高電流密度で陽極酸化する方法は陽極酸化処理の好ましい一例である。
陽極酸化処理は複数回行うこともできる。各陽極酸化処理において使用する電解液の種類、濃度、液温、電流密度、電圧、電解時間などの条件の1つ以上を変更することができる。陽極酸化処理の回数が2の場合、最初の陽極酸化処理を第1陽極酸化処理、2回目の陽極酸化処理を第2陽極酸化処理ということもある。第1陽極酸化処理と第2陽極酸化処理を行うことにより、異なる形状を有する陽極酸化皮膜を形成することができ、印刷性能に優れた平版印刷版原版を提供することが可能となる。
更に、陽極酸化処理に引き続いて下記のポアワイド処理を行い、その後再度陽極酸化処理を行うこともできる。この場合、第1陽極酸化処理、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理を行うこととなる。
上記の第1陽極酸化処理、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理を行う方法を利用することにより、前述の陽極酸化皮膜表面から深さ方向に延びる大径孔部と、大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ方向に延びる小径孔部とから構成されるマイクロポアを形成することができる。
<ポアワイド処理工程>
ポアワイド処理工程は、上記陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。このポアワイド処理により、マイクロポアの径が拡大され、より大きな平均径を有するマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成される。
ポアワイド処理は、上記陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
ポアワイド処理工程においてアルカリ水溶液を使用する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%が好ましい。アルカリ水溶液のpHを11~13に調整し、10~70℃(好ましくは20~50℃)の条件下で、アルミニウム板をアルカリ水溶液に1~300秒(好ましくは1~50秒)接触させることが適当である。この際、アルカリ処理液中に炭酸塩、硼酸塩、燐酸塩などの多価弱酸の金属塩を含んでもよい。
ポアワイド処理工程において酸水溶液を使用する場合、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸などの無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は、1~80質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。酸水溶液の液温5~70℃(好ましくは10~60℃)の条件下で、アルミニウム板を酸水溶液に1~300秒(好ましくは1~150秒)接触させることが適当である。
アルカリ水溶液又は酸水溶液中にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1~10g/Lが好ましい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は、上記ポアワイド処理工程の後に親水化処理を施す親水化処理工程を含んでいてもよい。親水化処理には、特開2005-254638号公報の段落0109~0114に記載される公知の方法を使用することができる。
親水化処理は、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリなどのアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬する方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成する方法などにより行うことが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリなどのアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
本発明の第1の平版印刷版原版において、上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下である。
ここで、画像記録層を有する側とは反対側とは、上記支持体を基準として、画像記録層を有する側とは反対側を意味する。画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面は、反対側にバックコート層を有する場合には、バックコート層の表面であり、反対側に層を有さない場合には、支持体表面である。
静摩擦係数の測定は、JIS P8147に記載の方法に準じて行った。すなわち、新東科学(株)製の静摩擦係数測定機TYPE:10を用いて、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数を3回測定し、それらの平均値を、静摩擦係数とした。なお、測定は温度25℃湿度50%に保たれた恒温室の中で実施した。
上記の静摩擦係数が0.50以下であり、0.30以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましい。
また、上記の静摩擦係数は、通常0より大きく、0.03以上であることが好ましい。
上記の静摩擦係数が0.50以下とするには、例えば、上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaを、0.3~20.0μmとすることや、上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーを60mJ/m以下とすることが好適に挙げられる。
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaを、0.3~20.0μmとすること、及び、上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーを60mJ/m以下とすることは、それぞれ後述する。
(第2の平版印刷版原版)
本発明の第2の平版印刷版原版について説明する。
支持体は、上述の第1の機上現像型平版印刷版原版における支持体と同様である。
ここで、上述の通り、画像記録層を有する側とは反対側とは、上記支持体を基準として、画像記録層を有する側とは反対側を意味する。画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面は、反対側にバックコート層を有する場合には、バックコート層の表面であり、反対側に層を有さない場合には、支持体表面である。
例えば、後述する突起物を形成する場合、平版印刷版原版は、上記バックコート層が、最外層であり、かつ上記バックコート層の外側に高分子化合物を含む複数の突起物を有していてもよいし、上記支持体が、最外層であり、かつ上記支持体の外側に高分子化合物を含む複数の突起物を有していてもよい。
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である。
版ズレ抑止の観点から、上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3~20.0μmであることが好ましく、0.3~10.0μmであることがより好ましく、0.3~3.0μmであることが更に好ましい。
上記平版印刷版原版は、上記画像記録層を有する側とは反対側にバックコート層を有することが好ましい。
最外層表面における算術平均高さSaの測定は、ISO 25178に記載の方法に準じて行う。具体的には、菱化システム(株)製のマイクロマップMM3200-M100を用いて、同一サンプルから3か所以上選択して測定し、それらの平均値を算術平均高さSaとする。測定範囲に関しては、サンプル表面からランダムに選んだ400μm×400μmの範囲を測定する。
最外層表面の算術平均高さSaが0.3~20.0μmとの要件を達成するためには、最外層が凹凸を有する形状を形成することが好ましい。
具体的には、例えば、最外層が、平均粒子径が0.5~20.0μmである粒子を含む態様(態様1)、及び最外層の外側に高分子化合物を主成分として含む複数の突起物を有する態様(態様2)が挙げられる。ここで、主成分とは、含有比率(質量%)が最も高い成分を意味する。
態様2において、最外層と最外層の外側に含まれる複数の突起物は、バックコート層を構成するものである。
最外層の外側とは、上記支持体を基準として、画像記録層を有する側とは反対側における最外層の外側を意味する。
態様1において、平均粒子径が0.5~20.0μmである粒子は、特に制限はないが、有機樹脂粒子及び無機粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
有機樹脂粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリウレア類、ポリエステル類などの合成樹脂からなる粒子、及び、キチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロースなどの天然高分子からなる粒子などが好ましく挙げられる。
中でも、合成樹脂粒子は、粒子サイズ制御が容易であること、表面改質により所望の表面特性を制御し易いことなどの利点がある。
有機樹脂粒子の製造方法については、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような比較的に硬い樹脂では、破砕法による微粒子化も可能であるが、乳化懸濁重合法により粒子を合成する方法が、粒子径制御の容易性、精度から好ましく採用されている。
有機樹脂粒子の製造方法は、「超微粒子と材料」日本材料科学会編、裳華房、1993年発刊、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版、2005年発刊などに詳細に記載されている。
有機樹脂粒子は市販品としても入手可能であり、例えば、綜研化学(株)製、架橋アクリル樹脂MX-40T、MX-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-1000、MX-1500H、MR-2HG、MR-7HG,MR-10HG、MR-3GSN、MR-5GSN、MR-7G、MR-10G、MR-5C、MR-7GC、スチリル樹脂系のSX-350H、SX-500H、積水化成品工業(株)製アクリル樹脂MBX-5、MBX-8、MBX-12MBX-15、MBX-20,MB20X-5、MB30X-5、MB30X-8、MB30X-20、SBX-6、SBX-8、SBX-12、SBX-17、三井化学(株)製ポリオレフィン樹脂、ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W405、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100などが挙げられる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、カーボンブラック、グラファイト、BaSO、ZnS、MgCO、CaCO、ZnO、CaO、WS、MoS、MgO、SnO、α-Fe、α-FeOOH、SiC、CeO、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイヤモンド、石榴石、ガーネット、珪石、トリボリ、珪藻土、ドロマイトなどが挙げられる。
上記粒子は、親水性表面を有する粒子であることが好ましい。親水性表面を有する粒子は、親水性表面を有する有機樹脂粒子及び親水性表面を有する無機粒子を含む。
親水性表面を有する有機樹脂粒子は、シリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機化合物で被覆された有機樹脂粒子が好ましく、シリカで被覆された有機樹脂粒子が特に好ましい。
親水性表面を有する有機樹脂粒子を構成する有機樹脂は、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
以下に、親水性表面を有する有機樹脂粒子について、シリカで被覆された有機樹脂粒子(以下、「シリカ被覆有機樹脂粒子」ともいう。)を例として詳細に説明するが、親水性表面を有する有機樹脂粒子はこれに限定されるものではない。
シリカ被覆有機樹脂粒子は、有機樹脂からなる粒子をシリカで表面被覆した粒子である。コアを構成する有機樹脂粒子は、空気中の湿分や、温度によって、軟化したり、べとついたりすることがないことが好ましい。
シリカ被覆有機樹脂粒子における有機樹脂粒子を構成する有機樹脂としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の表面を被覆するシリカ層を形成する材料としては、アルコキシシロキサン系化合物の縮合物などのアルコキシシリル基を有する化合物、特に、シロキサン系材料、具体的には、シリカゾル、コロイダルシリカ、シリカナノ粒子などのシリカ粒子などが好ましく挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の構成は、有機樹脂粒子表面にシリカ粒子が固体成分として付着している構成であっても、アルコキシシロキサン系化合物を縮合反応させて有機樹脂粒子表面にシロキサン系化合物層を形成した構成であってもよい。
シリカは必ずしも有機樹脂粒子表面全域を被覆している必要はなく、少なくとも有機樹脂粒子の全質量に対し、0.5質量%以上の量で表面を被覆していることが好ましい。すなわち、有機樹脂粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在することで、有機粒子表面における、共存する水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)との親和性の向上が達成され、外部応力を受けた場合でも粒子の脱落が抑制され、優れた耐キズ性、合紙なし積層時の剥離容易性を維持することができる。このため、「シリカ被覆」とは、このように有機樹脂粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在する状態をも包含するものである。
シリカの表面被覆状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)などによる形態観察により確認することができる。また、シリカの被覆量は、蛍光X線分析などの元素分析によりSi原子を検知し、そこに存在するシリカの量を算出することで確認することができる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法は特に制限はなく、シリカ粒子あるいはシリカ前駆体化合物を、有機樹脂粒子の原料となるモノマー成分と共存させて有機樹脂粒子形成と同時にシリカ表面被覆層を形成させる方法であってもよく、また、有機樹脂粒子を形成した後、シリカ粒子を物理的に表面に付着させ、その後、固定化する方法であってもよい。
以下に、シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法の1例を挙げる。まず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸などの水溶性高分子やリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機系懸濁剤などから適宜選択される懸濁安定剤を含む水中に、シリカと、原料樹脂(より具体的には、上記有機樹脂を構成する、懸濁重合が可能なモノマー、懸濁架橋が可能なプレポリマー、又は樹脂液などの原料樹脂)とを添加、撹拌、混合して、シリカと原料樹脂とを分散させた懸濁液を調製する。その際、懸濁安定剤の種類、その濃度、撹拌回転数などを調節することにより、目的の粒径を有する懸濁液を形成することができる。次いで、この懸濁液を加温して反応を開始させ、樹脂原料を、懸濁重合又は懸濁架橋させることにより樹脂粒子を生成させる。このとき、共存するシリカが重合或いは架橋反応により硬化する樹脂粒子に、特に、その物性に起因して樹脂粒子表面近傍に、固定化される。その後、懸濁液を固液分離し、洗浄により粒子に付着している懸濁安定剤を除去し、乾燥させる。かくして、シリカが固定化された所望粒径の略球状のシリカ被覆有機樹脂粒子が得られる。
このように、懸濁重合又は懸濁架橋の際に条件を制御して所望の粒径のシリカ被覆有機樹脂粒子を得ることもできるし、このような制御を厳密に行うことなくシリカ被覆有機樹脂粒子を生成した後、メッシュ濾過法などにより所望の大きさのシリカ被覆有機粒子を得ることもできる。
上記方法によりシリカ被覆有機粒子を製造する際の混合物における原料の添加量などについては、例えば、原料樹脂とシリカとの総量が100質量部の場合、まず、分散媒である水200~800質量部に懸濁安定剤0.1~20質量部を添加し、十分に溶解又は分散させ、その液中に、上記100質量部の原料樹脂とシリカとの混合物を投入し、分散粒子が所定の粒度になるように撹拌速度を調整しながら撹拌し、この粒度調整を行った後に液温を30~90℃に昇温し、1~8時間反応させる態様が好ましく挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法については、上記した方法はその1例であり、例えば、特開2002-327036号公報、特開2002-173410号公報、特開2004-307837号公報及び特開2006-38246号公報などに詳細に記載された方法により得られるシリカ被覆有機樹脂粒子も本発明に好適に使用することができる。
また、シリカ被覆有機樹脂粒子は市販品としても入手可能である。具体的には、シリカ/メラミン複合粒子としては、日産化学工業(株)製オプトビーズ2000M,オプトビーズ3500M、オプトビーズ6500M、オプトビーズ10500M、オプトビーズ3500S、オプトビーズ6500Sが挙げられる。シリカ/アクリル複合粒子としては、根上工業(株)製アートパールG-200透明、アートパールG-400透明、アートパールG-800透明、アートパールGR-400透明、アートパールGR-600透明、アートパールGR-800透明、アートパールJ-7Pが挙げられる。シリカ/ウレタン複合粒子としては、根上工業(株)製アートパールC-400透明、C-800透明、P-800T、U-600T、U-800T、CF-600T、CF800T、大日精化工業(株)製ダイナミックビーズCN5070D、ダンプラコートTHUが挙げられる。
以上、シリカ被覆有機樹脂粒子を例として、有機樹脂粒子について説明したが、アルミナ、チタニア又はジルコニアで被覆された有機樹脂粒子についても、シリカの代りにアルミナ、チタニア又はジルコニアを用いることにより同様に実施することができる。
上記粒子の形状は、真球状形状が好ましいが、平板形状又は投影図が楕円形状となるような、いわゆる紡錘形状であってもよい。
態様1において、上記粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5~10.0μm、より好ましくは0.5~5.0μmである。
粒子の平均粒子径は、体積平均粒径を意味し、体積平均粒径の測定は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定する。具体的には、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)を用いて測定する。
他の粒子についても、特に断りのない限り、上記測定方法により平均粒径を測定する。
態様1において、平均粒子径が0.5~20.0μmである粒子の面内密度は10,000個/mm以下であることが好ましい。面内密度は、より好ましくは100~5000個/mm、更に好ましくは100~3000個/mmである。
面内密度は、平版印刷版原版の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することによって確認することができる。具体的には走査型電子顕微鏡(SEM)で平版印刷版原版の表面を5箇所観察して粒子の個数をカウントし、観察視野面積mm当たりの粒子個数に変換し、その平均値を求めることにより算出することができる。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層は、平均粒子径が0.5~20.0μmである粒子に加えて、バインダーを含むことが好ましい。
バインダーとしては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,又はm-/p-混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂やレゾール樹脂、ピロガロール、アセトン樹脂、エポキシ樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。機上現像時に湿し水での溶解の懸念を防ぐために非水溶性の樹脂が好ましい。
また、上記バインダーとしては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン及びポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記態様1において、上記粒子及び上記バインダーがそれぞれ独立に、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン及びポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層は、上記粒子及びバインダー以外に他の成分を含んでもよい。他の成分としては、公知の添加剤が挙げられ、例えば、界面活性剤などが挙げられる。
上述の通り、上記平版印刷版原版は、上記画像記録層を有する側とは反対側にバックコート層を有することが好ましい。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層の厚さは、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μm、更に好ましくは0.5~3μmである。
なお、「最外層の厚さ」における最外層はバックコート層である。また、「最外層の厚さ」における「厚さ」は、平均厚さであり、後述の平均厚さTに相当する。
上記バックコート層が粒子を含み、
バックコート層の平均厚さT[μm]、粒子の平均粒子径D[μm]が、下記式(1)を満たすことが好ましい。上記の態様(1)に相当する。
D > T ・・・式(1)
なお、平均厚さは、バックコート層のランダムに選択した5箇所について、×10000の倍率で断面SEM画像を取得し、画像より読み取ったバックコート層の厚さを平均した値を、平均厚さとした。
態様2における高分子化合物を主成分として含む複数の突起物を構成する高分子化合物としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,又はm-/p-混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂やレゾール樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、エポキシ樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物が好ましい。
上記バックコート層が薄膜部と厚膜部を有することが好ましい。上記厚膜部は、上記の突起物により形成されることが好ましい。
突起物の形状及び高さは、特に制限はないが、算術平均高さSaが0.3~20.0μmであることが好ましい。
突起物は、バックコート層塗布液として、粒子及び高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む組成物を適宜選択して、それをバー塗布方式、インクジェット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、スプレー塗布方式、及び、スロットダイ塗布方式よりなる群から選ばれる少なくとも1種の方式によって塗布することにより形成することができる。
また、突起物は、ストライプ状、ドット状、破線状のものが挙げられるが、突起物を形成する方法としては、例えば、国際公開第2017/170391号の[0074]~[0092]に記載されている方法に基づき、形成することができる。
このように、薄膜部と厚膜部を有するバックコート層を形成することできる。
態様2における最外層に含まれるバインダーとしては、上記突起物に含まれる高分子化合物と同様の高分子化合物が挙げられ、好ましい態様も同様である。
態様2において、突起物の脱離を防ぐ観点からは、最外層に含まれるバインダーと、突起物に含まれる高分子化合物とが、同種の樹脂を含むことが好ましい。ここで、樹脂が同種であるとは、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンといった樹脂種が同種であることを意味し、樹脂中のすべての構成単位が同一であることを要しない。
(第3の機上現像型平版印刷版原版)
本発明の第3の平版印刷版原版について説明する。
支持体は、上述の第1の機上現像型平版印刷版原版における支持体と同様である。
ここで、上述の通り、画像記録層を有する側とは反対側とは、上記支持体を基準として、画像記録層を有する側とは反対側を意味する。画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面は、反対側にバックコート層を有する場合には、バックコート層の表面であり、反対側に層を有さない場合には、支持体表面である。
上記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーが60mJ/m以下である
表面自由エネルギーはOwens Wedent理論を用い、純水、およびヨードメタンとの接触角から算出した。具体的には、画像記録層を有する側とは反対側の面と、純水、ヨードメタンとの接触角を測定し、下記式(1)の2元1次方程式を解くことで、γsvとγsvを求め、それぞれの和を表面エネルギーγsとした。
Figure 2023020769000001
γsv:測定面の表面自由エネルギー分散項
γsv:測定面の表面自由エネルギー水素結合項
γLv:滴下液体の表面自由エネルギー分散項
γLv:滴下液体の表面自由エネルギー水素結合項
θ:滴下2秒後の接触角
γL=γLv+γLv
Figure 2023020769000002
版ズレ抑止の観点から、表面自由エネルギーは60mJ/m以下であり、好ましくは50mJ/m以下であり、より好ましくは45mJ/m以下である。
上記表面自由エネルギーは、通常0mJ/mより大きく、好ましくは5mJ/m以以上であり、より好ましくは40mJ/m以上である。
第3の平版印刷版原版においては、表面自由エネルギーを上記の範囲とできれば特に限定されないが、画像記録層を有する側とは反対側にバックコート層を設けることが好ましい。
バックコート層は、バインダーを含むことが好ましい。
ポリマー樹脂は、バインダーとしては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,又はm-/p-混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やレゾール樹脂、ピロガロール、アセトン樹脂、エポキシ樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。機上現像に用いられる平版印刷版原版の場合には、機上現像時に湿し水での溶解の懸念を防ぐために非水溶性の樹脂が好ましい。
また、上記バインダーとしては、版ズレ抑止の観点から、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン及びポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
[機上現像型平版印刷版原版]
以下に、本発明に係る機上現像型平版印刷版原版(以下、「平版印刷版原版」ともいう。)について記載する。
平版印刷版原版は、上記陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に画像記録層を有することが好ましい。
機上現像は、平版印刷版原版を画像露光後、従来の湿式現像処理を行わず、そのまま印刷機に取り付け、画像記録層の非画像部の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法であり、機上現像を行うことができる平版印刷版原版が機上現像型平版印刷版原版である。
〔画像記録層〕
平版印刷版原版における画像記録層の一つの好ましい形態によれば、画像記録層は赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び高分子化合物を含有する。画像記録層は、更に、連鎖移動剤を含有することが好ましい。
画像記録層のもう一つの好ましい形態によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、熱融着性粒子、及びバインダーポリマーを含有する。
(赤外線吸収剤)
赤外線吸収剤は、赤外線により励起して重合開始剤などに電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。また、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。赤外線吸収剤は750~1,400nmの波長域に極大吸収を有することが好ましい。赤外線吸収剤としては、染料又は顔料が挙げられ、染料が好ましく用いられる。
染料としては、市販の染料、及び、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)などの文献に記載されている公知の染料が利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体などの染料が挙げられる。
染料のうち、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩が好ましく、シアニン色素がより好ましく、インドレニンシアニン色素が特に好ましい。
シアニン色素としては、下記式(a)で表されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2023020769000003
式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、-N(R)(R10)、-X-L又は以下に示す基を表す。ここで、R及びR10は、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子を表すか、あるいは、RとR10とが互いに結合して環を形成してもよい。炭素数6~10の芳香族炭化水素基又は炭素数1~8のアルキル基は置換基を有していてもよい。RとR10は共にフェニル基が好ましい。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Lは、炭素数1~12の炭化水素基又はヘテロ原子を含む炭素数1~12の炭化水素基を表す。ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。以下に示す基において、Xaは後述するZaと同義であり、Raは、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
Figure 2023020769000004
式(a)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基を表す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素数2以上の炭化水素基であることが好ましく、R及びRが互いに結合して5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
式(a)中、Ar及びArは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環基及びナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y及びYは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ硫黄原子又は炭素数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R及びRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ炭素数20以下の炭化水素基を表す。炭素数20以下の炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数12以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R、R、RおよびRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数12以下の炭化水素基を表す。原料の入手容易性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを表す。ただし、式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。Zaは、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はスルホン酸イオンが好ましく、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はアリールスルホン酸イオンがより好ましい。
式(a)で表されるシアニン色素において、Xがジフェニルアミノ基であることがより好ましい。また、Xがジフェニルアミノ基であり、Y及びYが共にジメチルメチレン基であることが更に好ましい。
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
赤外線吸収剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.05~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.2~10質量%が更に好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオンなどの重合開始種を発生する化合物であり、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤は、電子受容性重合開始剤及び電子供与性重合開始剤のいずれであってもよい。
電子受容性重合開始剤及び電子供与性重合開始剤については、国際公開第2020/137919号の[0085]~[0103]に記載のものを使用することができる。
電子受容性重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子受容性重合開始剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、0.8~20質量%が更に好ましい。
電子供与性重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子供与性重合開始剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.01~30質量%が好ましく、0.05~25質量%がより好ましく、0.1~20質量%が更に好ましい。
(重合性化合物)
重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物がより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態を持つことができる。
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基などの求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物なども好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基などの親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基などの脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテルなどに置き換えた化合物群を使用することもできる。これら化合物は、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報などに記載されている。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタンなどが挙げられる。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミドなどが挙げられる。
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させて得られる1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物などが挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量などの使用方法の詳細は、平版印刷版原版の最終的な用途などを考慮して任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全固形分中、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
(高分子化合物)
高分子化合物は、画像記録層のバインダーポリマーとして機能してもよいし、粒子形態の高分子化合物(ポリマー粒子)として画像記録層中に存在していてもよい。
<バインダーポリマー>
バインダーポリマーとしては、皮膜性を有するポリマーが好ましく、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられる。
画像記録層に用いられるバインダーポリマーとしては、アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)部位含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキサイド)部位非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
アルキレンオキサイドとしては炭素数が2~6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが特に好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2~120が好ましく、2~70がより好ましく、2~50が更に好ましい。
アルキレンオキサイドの繰返し数が120以下であれば、摩耗による耐刷性の低下及びインキ受容性悪化による耐刷性の低下が抑制され好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、バインダーポリマーの側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂の側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることがより好ましい。
Figure 2023020769000005
式(AO)中、yは2~120を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
式(AO)において、yは2~70が好ましく、2~50がより好ましい。Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。Rは水素原子又はメチル基が特に好ましい。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。ポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合などの架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、ポリマー反応により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ-1,4-ブタジエン、ポリ-1,4-イソプレンなどが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(-COOR又は-CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、-(CHCR1A=CR2A3A、-(CHO)CHCR1A=CR2A3A、-(CHCHO)CHCR1A=CR2A3A、-(CHNH-CO-O-CHCR1A=CR2A3A、-(CH-O-CO-CR1A=CR2A3A及び-(CHCHO)-X(式中、RA1~RA3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、RA1とRA2又はRA3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは1~10の整数を表す。Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステルの残基の具体例としては、-CHCH=CH、-CHCHO-CHCH=CH、-CHC(CH)=CH、-CHCH=CH-C、-CHCHOCOCH=CH-C、-CHCH-NHCOO-CHCH=CH及び-CHCHO-X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミドの残基の具体例としては、-CHCH=CH、-CHCH-Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)及び-CHCH-OCO-CH=CHが挙げられる。
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、良好な感度と良好な保存安定性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、0.1~10.0mmolが好ましく、1.0~7.0mmolがより好ましく、2.0~5.5mmolが更に好ましい。
以下にバインダーポリマーの具体例1~11を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例示化合物中、各繰返し単位に併記される数値(主鎖繰返し単位に併記される数値)は、繰返し単位のモル百分率を表す。側鎖の繰返し単位に併記される数値は、繰返し部位の繰返し数を示す。また、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
Figure 2023020769000006
Figure 2023020769000007
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として質量平均分子量(Mw)が、2,000以上であり、5,000以上が好ましく、10,000~300,000がより好ましい。
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
バインダーポリマーは、1種単独で使用してよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分中、1~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましい。
<粒子形態の高分子化合物(ポリマー粒子)>
画像記録層は、ポリマー粒子を含有することが好ましい。ポリマー粒子は、機上現像性の向上に寄与する。ポリマー粒子は、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できるポリマー粒子であることが好ましい。ポリマー粒子は、疎水性熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー粒子が好適に挙げられる。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。疎水性熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01~2.0μmが好ましい。
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性基を有するポリマー粒子は、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよく、重合性基が好ましい。その例としては、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好適に挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報及び特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層としては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その内部及び表面の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するためには、公知の方法を用いることができる。
マイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01~3.0μmが好ましく、0.05~2.0μmがより好ましく、0.10~1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
ポリマー粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全固形分中、5~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、10~75質量%が更に好ましい。
好ましい一態様として、粒子形状の高分子化合物としては、疎水性主鎖を有し、
i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、
ii)親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CHCH(C≡N)-]又は-[CHC(CH)(C≡N)-]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-50 3365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
好ましい一態様として、上記粒子形態の高分子化合物が、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、並びに、活性水素を有する化合物との反応により得られることが好ましい。
ポリマー粒子の平均粒径は、0.01~3.0μmが好ましく、0.05~2.0μmがより好ましく、0.10~1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
ポリマー粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全固形分中、5~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、10~75質量%が更に好ましい。
画像記録層に含有される高分子化合物としては、スチレン化合物に由来する構成単位、及び/又は、アクリロニトリル化合物に由来する構成単位を含む高分子化合物も好ましい。この高分子化合物は、機上現像性への寄与の観点から、バインダーポリマーとして又はポリマー粒子として好適に使用することができる。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシ-β-メチルスチレンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
アクリロニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
スチレン化合物及びアクリロニトリル化合物を構成単位として含む高分子化合物においては、スチレン化合物由来の構成単位及びアクリロニトリル化合物由来の構成単位の組成比が4:1~1:4であることが好ましい。
画像記録層は、発色剤、連鎖移動剤、低分子親水性化合物、感脂化剤、その他の成分を含有することができる。画像記録層は、発色剤を含有することが好ましい。
(発色剤)
発色剤としては、発色性の観点から、酸発色剤を含むことが好ましい。発色剤としては、発色性の観点から、ロイコ化合物を含むことが好ましい。
また、「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
中でも、好ましい一態様として、発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
Figure 2023020769000008
Figure 2023020769000009
Figure 2023020769000010
Figure 2023020769000011
連鎖移動剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.01~50質量%が好ましく、0.05~40質量%がより好ましく、0.1~30質量%が更に好ましい。
(低分子親水性化合物)
低分子親水性化合物は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版の耐刷性を低下させることなく、平版印刷版原版の機上現像性の向上に寄与する。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどのポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどの有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸などの有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸などの有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸などの有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類などの有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類などが挙げられる。
低分子親水性化合物は、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
低分子親水性化合物については、国際公開第2020/137919号の[0145]~[0147]に記載のものを使用することができる。
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さく、界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
低分子親水性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.5~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
(感脂化剤)
感脂化剤は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版におけるインキの着肉性(以下、単に「着肉性」ともいう。)の向上に寄与する。感脂化剤としては、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどが挙げられる。特に、平版印刷版原版が無機層状化合物を含有する保護層を有する場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制する機能を有する。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
感脂化剤については、国際公開第2020/137919号の[0151]~[0155]に記載のものを使用することができる。
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.01~30質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、1~10質量%が更に好ましい。
(その他の成分)
画像記録層は、その他の成分として、界面活性剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物などを含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~0159に記載されている上記各成分を用いることができる。
(画像記録層の形成)
画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~0143に記載のように、必要な上記各成分を適宜公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液をバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3~3.0g/m程度が好ましい。
機上現像性付与の観点から、画像記録層は、水溶性又は水分散性を有することが好ましい。ここで、「水溶性」とは、20℃の水100gに0.1g以上溶解することを意味し、「水分散性」とは、20℃の水に一様に分散することを意味する。
機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある)を有することができる。
〔下塗り層〕
下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下することを防ぐ効果も有する。
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、当該極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号公報、特開2005-125749号公報、特開2006-239867号公報及び特開2006-215263号公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1~10.0mmol、より好ましくは0.2~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの質量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)などを含有してもよい。
下塗り層は、公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。乾燥後における下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1~100mg/mが好ましく、1~30mg/mがより好ましい。
〔保護層〕
保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを含む)、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
ポリビニルアルコールとしては、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールが好適である。ポリビニルアルコールのけん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、けん化度は100%以下であればよい。
けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定することができる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
水溶性ポリマーの中で、ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母などの雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれかであり、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母などの雲母群が挙げられる。
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)Fなどの非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)Fなどの膨潤性雲母などが挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、膨潤性合成雲母は、10~15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+などの陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3~20μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは1~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1~50nm程度、面サイズ(長径)が1~20μm程度である。
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、0~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機微粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
保護層は、公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。乾燥後における保護層の塗布量(固形分)は、0.01~10g/mが好ましく、0.02~3g/mがより好ましく、0.02~1g/mが特に好ましい。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、端部にダレ形状を有する。
図3は、平版印刷版原版の端部の断面形状を示す模式図である。
図3において、平版印刷版原版1はその端部にダレ2を有している。平版印刷版原版1の端面1cの上端(ダレ2と端面1cとの境界点)から端面1cの延長線と画像記録層面(保護層が形成されている場合には保護層面)1aの延長線との交点までの距離Xを「ダレ量X」といい、平版印刷版原版1の画像記録層面1aがダレ始める点から上記交点までの距離Yを「ダレ幅Y」という。
端部のダレ形状において、ダレ量Xは25μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。ダレ量Xの上限は、端部表面状態の悪化による機上現像性の劣化を防止する観点から150μmが好ましい。機上現像性が劣化すると残存する画像記録層にインキが付着しエッジ汚れ発生の原因となる場合がある。ダレ量Xが少な過ぎると、端部に付着したインキがブランケットに転写しやすくなりエッジ汚れ発生の原因となる場合がある。ダレ量Xの範囲が25~150μmの場合、ダレ幅Yが小さいと、端部におけるクラックの発生が増大し、そこに印刷インキが溜まることによりエッジ汚れの原因となる場合がある。このような観点から、ダレ幅Yは70~300μmの範囲が好ましく、80~250μmの範囲がより好ましい。なお、上記ダレ量とダレ幅の範囲は、平版印刷版原版1の支持体面1bのエッジ形状には関わらない。
通常、平版印刷版原版1の端部において、画像記録層と支持体との境界B、及び、支持体面1bも、画像記録層面1aと同様に、ダレが発生している。
上記ダレ形状を有する端部の形成は、例えば、平版印刷版原版の裁断条件を調整することにより行うことができる。
具体的には、平版印刷版原版の裁断時に使用するスリッター装置における上側裁断刃と下側裁断刃の隙間、噛み込み量、刃先角度などを調整することにより行うことができる。
図4は、スリッター装置の裁断部の1例を示す概念図である。スリッター装置には、上下一対の裁断刃10、20が上下に配置されている。裁断刃10、20は円板上の丸刃からなり、上側裁断刃10a及び10bは回転軸11に、下側裁断刃20a及び20bは回転軸21に、それぞれ同軸上に支持されている。上側裁断刃10a及び10bと下側裁断刃20a及び20bとは、相反する方向に回転される。平版印刷版原版30は、上側裁断刃10a、10bと下側裁断刃20a,20bとの間を通されて所定の幅に裁断される。スリッター装置の裁断部の上側裁断刃10aと下側裁断刃20aとの隙間及び上側裁断刃10bと下側裁断刃20bとの隙間を調整することによりダレ形状を有する端部を形成することができる。
上記平版印刷版原版の対向する2辺の側面の一部又は全部に撥インク剤を有することが好ましい。このダレ形状を有する端部の対向する2辺の側面の一部又は全部に撥インク剤を塗布することで、エッジ端部のエッジ汚れを抑制することができる。撥インク剤は、インクをはじくことができれば特に限定されないが、例えば、親水化剤、又は、不感脂化液を用いることができる。以下に、撥インク剤として用いられる材料を説明する。
(親水化剤)
親水化剤の好適態様の1つとしては、リン酸化合物が挙げられる。リン酸化合物は、リン酸、その塩、及び、そのエステル等を含む。例えば、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、及び、ヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、又は、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好ましい。
リン酸化合物としては、高分子化合物が好ましく、リン酸エステル基を有する高分子化合物がより好ましい。リン酸エステル基を有する高分子化合物としては、分子内にリン酸エステル基を有する単量体の1種以上からなる重合体、又は、リン酸エステル基を含む1種以上の単量体及びリン酸エステル基を含まない1種以上の単量体との共重合体、並びに、リン酸エステル基を有さない高分子にポリマー反応によりリン酸エステル基を導入した高分子等が挙げられる。
リン酸エステル基を有する高分子化合物において、リン酸エステル基を有する繰り返し単位の含有量は、高分子化合物の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、5~100モル%がより好ましく、10~100モル%がさらに好ましい。リン酸エステル基を有する高分子化合物の質量平均分子量は、5,000~1,000,000が好ましく、7,000~700,000がより好ましく、10,000~500,000がさらに好ましい。
親水化剤の好適態様の1つとしては、ホスホン酸化合物が挙げられる。ホスホン酸化合物は、ホスホン酸、その塩、及び、そのエステルを含む。例えば、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2 - ヒドロキシエチルホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルホスホン酸メチル、エチルホスホン酸メチル、及び、2 - ヒドロキシエチルホスホン酸メチル等のアルキルホスホン酸モノアルキルエステル及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸等のアルキレンジホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、並びに、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。
親水化剤の好適態様の1つとしては、水溶性樹脂が挙げられる。水溶性樹脂としては、多糖類として分類される水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、並びに、スチレン/無水マレイン酸共重合体が挙げられる。多糖類としては、澱粉誘導体( 例えば、デキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉、及び、サイクロデキストリン)、セルロース類( 例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及び、メチルプロピルセルロース) 、カラギーナン、アルギン酸、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、並びに、大豆多糖類が挙げられる。水溶性樹脂としては、デキストリン、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉等の澱粉誘導体、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、又は、大豆多糖類が好ましい。
親水化剤の好適態様の1つとしては、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、特開2014-104631号公報の番号[0022]に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。アニオン性界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩類、又は、アルキルナフタレンスルホン酸塩類が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、一般式(I-A) 又は一般式(I-B)で表されるアニオン性界面活性剤が好ましい。
Figure 2023020769000012
一般式(I-A)中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20のアルキル基を表し、pは0、1又は2を表し、Arは炭素数6~10のアリール基を表し、qは、1、2又は3を表し、M は、Na、K、Li又はNH を表す。pが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(I-B)中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~20のアルキル基を表し、mは0、1又は2を表し、Arは炭素数6~10のアリール基を表し、Yは単結合又は炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキレン基を表し、nは1~100の整数を表し、M は、Na、K、Li又はNH
を表す。mが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(I-A)及び一般式(I-B)中、R及びRは、CH、C、C又はCが好ましい。Rは、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、又は、-CHCH(CH)-が好ましく、-CHCH-がより好ましい。p及びmは0又は1が好ましく、pは0がより好ましい。Yは、単結合が好ましい。
nは1~20の整数が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、特開2014-104631号公報の段落[0031に記載のものが挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、及び、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体類が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、一般式(II-A)で表される非イオン性界面活性剤が好ましい。
Figure 2023020769000013
一般式(II-A)中、Rは水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表し、sは0、1又は2を表し、Arは炭素数6~10のアリール基を表し、t及びuはそれぞれ0~100の整数を表し、t及びuの双方が0であることはない。sが2の場合、複数存在するR4は互いに同じでも異なっていてもよい。
なお、親水化剤としては、有機樹脂微粒子(例えば、ミクロゲル)を用いてもよい。ミクロゲルは、水性媒体に分散された反応性又は非反応性の樹脂粒子である。ミクロゲルは、その粒子中又は粒子表面に、粒子表面に重合性基を有することが好ましい。
親水化剤を含む塗布液は、主として水からなる媒体中に親水化剤が溶解又は分散した水溶液の形態であることが好ましい親水化剤を含む塗布液における親水化剤の含有量は、0.05~50質量%が好ましく、0.1~30質量%がより好ましい。親水化剤を含む塗布液の粘度は、25℃において、0.5~1000mPa・sが好ましく、1~100mPa・sがよりに好ましい。親水化剤を含む塗布液の表面張力は、25℃において、25~70mN/mが好ましく、40~65mN/mがより好ましい。
親水化剤を含む塗布液は、親水化剤以外にも、有機溶媒、可塑剤、防腐剤、消泡剤、並びに、硝酸塩及び硫酸塩等の無機塩、を含んでいてもよい。
(不感脂化液)
不感脂化液としては、親水性有機高分子化合物、ヘキサメタリン酸及びその塩、フイチン酸及びその塩の少なくとも1 種を含有する水溶液が挙げられる。具体的な親水性有機高分子化合物としては、アラビアガム、デキストリン、例えばアルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸塩、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド単位を含む水溶性共重合体、ポリアクリル酸、アクリル酸単位を含む共重合体、ポリアクリル酸、アクリル酸単位を含む共重合体、ポリメタクリル酸、メタクリル酸単位を含む共重合体、ビニルメチルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルと無水マレイン酸との共重合体、燐酸変性澱粉などを挙げることができ、中でもアラビアガムが不感脂化作用が強いので好ましい。これらの親水性高分子化合物は、必要に応じて二種以上組み合わせて使用することができ、約1~40重量%、より好ましくは3~30重量%の濃度で使用される。
具体的なヘキサメタリン酸塩としては、ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩又はアンモニウム塩としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウム等を挙げることができる。具体的なフイチン酸又はその塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等がある。アミン塩としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、n - ブチルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、ラウリルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アリルアミン、アニリン等の塩を挙げることができる。フイチン酸塩は12個の酸の水素がすべて置換された正塩、酸の水素の一部が置換された水素塩(酸性塩) でもよく、また1 種類の塩基の塩からなる単純塩、2種以上の塩基が成分として含まれる複塩のいずれの形態のものも使用できる。これらの化合物は単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本実施形態に使用される不感脂化液には、さらに強酸の金属塩を含有させておくことが好ましく、これにより不感脂化作用を高めることができる。具体的な強酸の金属塩としては、硝酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩、硫酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩、クロム酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩、並びに弗化ナトリウム及び弗化カリウムなどを挙げることができる。これらの強酸の金属塩は二種以上を組み合わせて使用することができ、その量は不感脂化液の総重量を基準に約0.01~5重量%が好ましい。本発明に使用される不感脂化液は、pH値を酸性域、より好ましくは1~5、最も好ましくは1.5~4.5に調整される。従って、水相のpHが酸性でない場合には、水相にさらに酸が加えられる。かかるpH調整剤として加えられる酸としては、例えば燐酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、例えばくえん酸、たんにん酸、りんご酸、氷酢酸、乳酸、蓚酸、p-トルエンスルホン酸、有機ホスホン酸などの有機酸が例示できる。この内、燐酸は、pH調整剤として機能するだけでなく、不感脂化作用を強化する作用もあるので特に優れており、不感脂化液の総重量に対して0.01~20重量%、最も好ましくは0.1~10重量% の範囲で含有させておくと好ましい。
本実施形態に使用される不感脂化液には湿潤剤及び/ 又は界面活性剤を含有させておくことが好ましく、これにより不感脂化液の塗布性を向上させることができる。具体的な湿潤剤としては低級多価アルコールが好ましく、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、特に好ましいものはグリセリンである。また、界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン界面活性剤、例えば脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホこはく酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などのアニオン界面活性剤、例えばベタイン型、グリシン型、アラニン型、スルホベタイン型の両性界面活性剤が使用できる。これらの湿潤剤及び/又は界面活性剤は不感脂化液の総重量に対して約0.5~10重量%、より好ましくは1~5重量%の範囲で含有させられる。本発明に使用される不感脂化液には、さらに二酸化珪素、タルク、粘土などの充填剤を2重量%までの量で、また染料や顔料などを1重量%までの量で含有させることもできる。
本実施形態に使用される不感脂化液は、上述の如き親水性の水溶液からなるものであるが、画像記録層への悪影響がある場合を考慮して、例えば米国特許第4253999号、同第4268613号、同第4348954号などの各明細書に記載されているような乳化型の不感脂化液も使用することができる。
撥インク剤としては、例えば、HN-G5(富士フイルム株式会社製)を用いることができる。
(撥インク剤の塗布方法)
撥インク剤を塗布する塗布方法は特に限定されない。図7は、撥インク剤を塗布する塗布方法を説明する図である。図7に示すように、撥インク剤を含有する塗布液は、ワイヤーバー138により塗布することができる。なお、図7においては、撥インク剤を塗布する方法について説明するため、支持体を基準に特定構成層側における最外層表面122を有する平版印刷版原版100aについては簡略化して記載し、端部のダレ形状については記載していない。撥インク剤をワイヤーバー138で塗布する際は、まず、ワイヤーバー138に撥インク剤を含有する塗布液をまとわせる。塗布液をまとわせたワイヤーバー138を平版印刷版原版100aの端面120(アルミニウム支持体の側面) に沿うように、ワイヤーバー138を移動させる。ワイヤーバー138の移動速度として、例えば、20mm/sで移動させることができる。塗布後、塗布液の乾燥を行う。乾燥条件として、例えば、80℃の風を、風速6m/sで、30秒当てることで、乾燥を行うことができる。
なお、ワイヤーバーのサイズとしては、平版印刷版原版100aのアルミニウム支持体の厚さにより適宜変更することができるが例えば、アルミニウム支持体の厚みが0.3mmである場合、#10番手のワイヤーバーを用いることができる。
また、塗布液を塗布する際、図7に示すようにワイヤーバー138を、平版印刷版原版100aの端面120に対して角度θで傾けて塗布してもよい。
上記平版印刷版原版の対向する2辺の側面の一部または全部に撥インク剤を塗布する方法としては、特許第6628949号に記載の方法を好適に用いることができる。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaが、0.3~20.0μmであることが好ましい。ここで、画像記録層を有する側とは、上記支持体を基準として、画像記録層を有する側を意味する。
画像記録層を有する側における最外層表面は、画像記録層又は保護層が最外層の場合、画像記録層の表面又は保護層の表面である。
例えば、後述する突起物を形成する場合、平版印刷版原版は、上記画像記録層又は保護層が、最外層であり、かつ上記画像記録層又は保護層の外側に高分子化合物を含む複数の突起物を有していてもよい。
画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaは、より好ましくは0.5~10.0μm、更に好ましくは0.5~7.0μmである。
最外層表面の算術平均高さSaが0.3~20.0μmとの要件を達成するためには、最外層が凹凸を有する形状を形成することが好ましい。
具体的には、例えば、最外層が、平均粒子径が0.5~20.0μmである粒子を含む態様(態様1A)、及び最外層の外側に高分子化合物を主成分として含む複数の突起物を有する態様(態様2A)が挙げられる。ここで、主成分とは、含有比率(質量%)が最も高い成分を意味する。
態様1Aは、上記態様1と同様であり、好ましい範囲も同様である。
態様1における最外層表面は画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面であり、態様1Aにおける最外層表面は、画像記録層を有する側における最外層表面である。
態様2Aにおける高分子化合物を主成分として含む複数の突起物を構成する高分子化合物としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,又はm-/p-混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂やレゾール樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、エポキシ樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物が好ましい。
中でも、脱離した突起物が画像記録層に移動した場合であっても現像性に優れる観点から、水溶性高分子がより好ましい。具体的に、例えば、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが好適である。
突起物の形状及び高さは、特に制限はないが、算術平均高さSaが0.3~20.0μmであることが好ましい。
突起物を形成する方法としては、バックコート層における上記記載の方法を採用することができる。
態様2Aにおける最外層に含まれるバインダーとしては、上記突起物に含まれる高分子化合物と同様の高分子化合物が挙げられ、好ましい態様も同様である。
態様2Aにおいて、突起物の脱離を防ぐ観点からは、最外層に含まれるバインダーと、突起物に含まれる高分子化合物とが、同種の樹脂を含むことが好ましい。ここで、樹脂が同種であるとは、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンといった樹脂種が同種であることを意味し、樹脂中のすべての構成単位が同一であることを要しない。
[印刷版の作製方法]
本発明に係る印刷版の作製方法を、本発明に係る平版印刷版原版を用いて説明する。印刷版の作製方法は、平版印刷版原版を画像露光する工程(露光工程)、及び、画像露光後の平版印刷版原版を印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、画像記録層の未露光部を除去する工程(機上現像工程)を含む。
〔露光工程〕
画像露光は、デジタルデータを赤外線レーザーなどにより走査露光する方法により行うことが好ましい。
露光光源の波長は、750~1,400nmが好ましく用いられる。750~1,400nmの波長を有する光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式などのいずれでもよい。
露光工程はプレートセッターなどにより公知の方法で行うことができる。また、露光装置を備えた印刷機を用いて、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
〔機上現像工程〕
機上現像工程においては、画像露光後の平版印刷版原版に何らの現像処理を施すことなく、印刷機上において印刷インキ及び湿し水を供給して印刷を開始すると、印刷途上の初期の段階で平版印刷版原版の未露光部分が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出し非画像部が形成される。印刷インキ及び湿し水としては、公知の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が用いられる。最初に印刷版原版表面に供給されるのは、印刷インキでも湿し水でもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給することが好ましい。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
本発明に係る印刷版の作製方法は、上記工程以外に、公知の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、各工程の前に平版印刷版原版の位置や向きなどを確認する検版工程や、機上現像工程の後に、印刷画像を確認する確認工程などが挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は質量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
〔実施例1~31及び、比較例1~3〕
<支持体1-1の作製>
(アルミニウム合金1-1の作製)
マグネシウムを0.020質量%含有するアルミニウム溶湯を用いて、DC鋳造法により鋳塊を作製した。次いで、面削加工を行い、その後550℃で5時間保持することにより均熱処理を行った。均熱処理後、温度が440℃に下がったところで、熱間圧延処理を行い、さらに、中間焼鈍処理、冷間圧延処理(圧下率96%)、強制を適宜行って、厚さ0.30mmに仕上げ、アルミニウム合金1-1を得た。
圧下率とは、圧延前後の材料の板厚をそれぞれh1、h2とするとき、(h1-h2)/h1で算出される量で、圧延の加工度を表している。
(支持体1-1の作製)
上記アルミニウム合金1-1に対し、下記(F-a)~(F-g)の処理を施し、支持体1-1を作製した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(F-a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
(F-b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温30℃の硫酸濃度150g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(F-c)電気化学的粗面化処理
塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を空けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。
(F-d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。
(F-e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けてデスマット処理を行った。
(F-f)第1段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液として150g/Lリン酸水溶液を用い、液温35℃、電流密度4.5A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(F-g)第2段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度13A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量2.1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。その後、スプレーによる水洗を行った。支持体1-1のマイクロポアの平均径は40nmであった。
支持体1-1の陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*の値は83.7であった。
得られた支持体1-1の引張強度は、160MPaであった。
引張強度の測定は、引張強度測定機としてオートグラフAGC-H5KN(島津製作所製)を使用し、サンプル:JIS 金属材料引張試験片 5号型により、引張速度:2mm/分にて実施した。
また、支持体1-1におけるマグネシウム含有率は、0.020質量%であった。マグネシウム含有率は、上述のように測定した。
<支持体1-2~支持体1-10の作製>
上記支持体1-1の作成において、圧下率、マグネシウム含有量をそれぞれ表1のように変更した以外は、支持体1-1と同様にして、アルミニウム合金1-2~1-10を作製して、支持体1-2~1-10を作製した。
<支持体2の作製>
(アルミニウム合金2の作製)
上記アルミニウム合金1-1の作製において、マグネシウム含有量、圧下率を表1に記載のように変更した以外は、上記アルミニウム合金1-1と同様に、アルミニウム合金2を作製した。
(支持体2の作製)
上記アルニニウム合金2に対し、下記(F-a)~(F-f)の処理を施し、支持体2を作製した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(F-a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
(F-b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温30℃の硫酸濃度150g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(F-c)電気化学的粗面化処理
塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を空けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。
(F-d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。
(F-e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けてデスマット処理を行った。
(F-f)第1段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液として150g/Lリン酸水溶液を用い、液温35℃、電流密度4.5A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
支持体2のマイクロポアの平均径は40nmであった。
支持体2の陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*の値は83.7であった。
得られた支持体2の引張強度は、188MPaであった。
また、支持体2におけるマグネシウム含有率は、0.064質量%であった。
<支持体3の作成>
(アルミニウム合金3の作製)
上記アルミニウム合金1-1の作製において、マグネシウム含有量、圧下率を表1に記載のように変更した以外は、上記アルミニウム合金1-1と同様に、アルミニウム合金3を作製した。
(支持体3の作製)
アルミニウム合金3を用いて、国際公開第2021/67054号の実施例5の支持体の製造方法に準じて、支持体3を作製した。
得られた支持体3の引張強度は、188MPaであった。
また、支持体3におけるマグネシウム含有率は、0.064質量%であった。
<支持体4の作製>
(アルミニウム合金4の作製)
上記アルミニウム合金1-1の作製において、マグネシウム含有量、圧下率を表1に記載のように変更した以外は、上記アルミニウム合金1-1と同様に、アルミニウム合金4を作製した。
(支持体4の作製)
上記のアルミニウム合金4に対し、下記(J-a)~(J-m)の処理を施し、支持体4を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(J-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
図5に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図5において、31はアルミニウム板、32及び34はローラ状ブラシ(本実施例においては、束植ブラシ)、33は研磨スラリー液、35、36、37及び38は支持ローラである。
機械的粗面化処理では、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は、300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(J-b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、10g/mであった。
(J-c)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸の廃液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-d)硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図1に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図2に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。
(J-e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%及びアルミニウムイオン濃度2.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。アルミニウム溶解量は、3.5g/mであった。
(J-f)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温30℃の硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-g)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図1に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図2に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。
(J-h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度60℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/mであった。
(J-i)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/L)の水溶液をアルミニウム板にスプレーにて4秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-j)第1段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度30A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量0.3g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(J-k)ポアワイド処理
陽極酸化処理したアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に、40℃で3秒間浸漬し、ポアワイド処理を行った。
(J-l)第2段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度13A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量2.1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(J-m)親水化処理
非画像部の親水性を確保するため、アルミニウム板を、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液に50℃で7秒間浸漬してシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/mであった。マイクロポアの平均径は30nmであった。
支持体4の陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*の値は72.3であった。
得られた支持体4の引張強度は、200MPaであった。
また、支持体4におけるマグネシウム含有率は、0.075質量%であった。
<支持体5の作製>
(アルミニウム合金5の作製)
上記アルミニウム合金1-1の作製において、マグネシウム含有量、圧下率を表1に記載のように変更した以外は、上記アルミニウム合金1-1と同様に、アルミニウム合金5を作製した。
(支持体5の作製)
-アルカリエッチング処理-
上記アルミニウム合金5に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度55℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、3g/mであった。
-酸性水溶液を用いたデスマット処理(第1デスマット処理)-
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸170g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
-電気化学的粗面化処理-
次に、塩酸濃度電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は40℃であった。交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で300C/dmで行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
-アルカリエッチング処理-
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度35℃でスプレーにより吹き付けてエッチング量が0.1g/m以下となるようエッチング処理を行った。その後、水洗処理を行った。
-酸性水溶液を用いたデスマット処理-
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸170g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
-陽極酸化処理-
硫酸液170g/L、液温度40℃にて、直流電流を用いて、陽極酸化皮膜量が3g/mとなるよう陽極酸化処理を行い、支持体5を得た。
得られた支持体5の引張強度は、188MPaであった。
また、支持体5におけるマグネシウム含有率は、0.064質量%であった。
<支持体1-1C~支持体1-2Cの作製>
上記支持体1-1の作成において、圧下率、マグネシウム含有率をそれぞれ表1にように変更した以外は、支持体1-1と同様にして、アルミニウム合金1-2~1-10を作製して、支持体1-1C~1-2Cを作製した。
支持体1-1~1-10、2~5、及び1-1C~1-2Cの引張強度、圧下率、各支持体におけるマグネシウム含有量について、表1に示す。
Figure 2023020769000014
<下塗り層1の形成>
支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が0.03mg/mになるよう塗布して、下塗り層1を形成した。
(下塗り層塗布液(1))
・ポリアクリル酸水溶液(40質量%)
Jurymer AC-10S (東亜合成株式会社製) 3.0部
・水 27.0部
<下塗り層2の形成>
支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(2)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層2を形成した。
(下塗り層塗布液(2))
・下塗り層用化合物(2)(下記構造) 0.013部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.005部
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 0.005部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.0003部
・水 3.15部
Figure 2023020769000015
上記下塗り層用化合物(2)における各構成単位の括弧の右下の数値は、質量比を表し、エチレンオキシ単位の括弧の右下の数値は、繰り返し数を表す。
<画像記録層1の形成>
下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、110℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥重量0.9/mの画像記録層1を形成した。
(画像記録層塗布液(1))
・1-プロパノール 39.75部
・2-ブタノン 39.85部
・γ―ブチルラクトン 0.88部
・ポリマーーエマルションA*1 6.95部
・KLUCEL E*2 0.25部
・ウレタンアクリレート*3 1.65部
・Sartomer SR399*4 0.77部
・ヨードニウム塩A*5 0.15部
・ヨードニウム塩B*6 0.15部
・赤外線吸収剤A*7 0.15部
・3-メルカプト1,2,4-トリアゾール 0.05部
・Black-XV*8 0.15部
・BYK 336*9 0.18部
・テクポリマーSSX-105*10 0.47部
*1:ポリマーエマルションAは、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート/スチレン/アクリロニトリル=10:9:81のグラフトコポリマーのポリマー粒子であり、これを、n-プロパノール/水の質量比が80/20である溶媒中に、24質量%含有している分散体である。また、その体積平均粒径は193nmである。
*2:Klucel Eは、Hercules社製から入手可能なヒドロキシプロピルセルロースを意味する。
*3:DESMODUR(登録商標)N100並びにヒドロキシエチルアクリレート及びペンタトリトールアクリレートをモル比1:1.5:1.5で反応させることにより得られた、2-ブタノン溶液中の濃度80質量%の重合性化合物。
*4:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートエステル(SartomerCompany)
*5:下記式1で表される化合物
*6:下記式2で表される化合物
Figure 2023020769000016
*7:赤外線吸収剤は下記Aで表される化合物
Figure 2023020769000017
*8:Black-XV(山本化成(株)製)
*9:濃度25質量%で修飾ポリジメチルシロキサンコポリマーを含むキシレン/メトキシプロピルアセテート溶液(BYK Chemie社製)
*10:架橋アクリルビーズ、平均粒径5.0μm(積水化成品工業(株))
<画像記録層2の形成>
下記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布し、110℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥重量0.9/mの画像記録層2を形成した。
(画像記録層塗布液(2))
・1-プロパノール 39.75部
・2-ブタノン 39.85部
・γ―ブチルラクトン 0.88部
・ポリマーエマルションA*1 6.95部
・KLUCEL E*2 0.25部
・ウレタンアクリレート*3 1.65部
・Sartomer SR399*4 0.77部
・ヨードニウム塩A*5 0.15部
・ヨードニウム塩B*6 0.15部
・赤外線吸収剤 B*11 0.15部
・赤外線吸収剤 C*12 0.15部
・3-メルカプト1,2,4-トリアゾール 0.05部
・Black-XV*8 0.15部
・BYK 336*9 0.18部
・テクポリマーSSX-105*10 0.47部
*1~*10は、上述の通りである。
*11:赤外線吸収剤は下記Bで表される化合物
*12:赤外線吸収剤は下記Cで表される化合物
Figure 2023020769000018
<画像記録層3の形成>
下記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布し、110℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥重量0.9/mの画像記録層3を形成した。
(画像記録層塗布液(3))
・1-プロパノール 39.75部
・2-ブタノン 39.85部
・γ―ブチルラクトン 0.88部
・ポリマーーエマルションA*1 6.95部
・KLUCEL E*2 0.25部
・ウレタンアクリレート*3 1.65部
・Sartomer SR399*4 0.77部
・ヨードニウム塩A*5 0.15部
・ヨードニウム塩B*6 0.15部
・赤外線吸収剤A*7 0.15部
・3-メルカプト1,2,4-トリアゾール 0.05部
・ロイコ色素A*12 0.15部
・BYK 336*9 0.18部
・テクポリマーSSX-105*10 0.47部
*1~*10は、上述の通りである。
*12:ロイコ色素Aは下記構造で表される化合物である。
Figure 2023020769000019
<画像記録層4の形成>
下記組成の画像記録層塗布液(4)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層4を形成した。
画像記録層塗布液(4)は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(1))
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(下記構造)
0.2891部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(下記構造)
0.4574部
・赤外線吸収剤(1)(下記構造) 0.0278部
・ボレート化合物(1)(テトラフェニルホウ酸ナトリウム)
0.015部
・重合開始剤(1)(下記構造) 0.2348部
・重合性化合物(1)(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA-930040% 2-ブタノン溶液、新中村化学工業(株))製)
0.2875部
・低分子親水性化合物(1)(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
0.0287部
・低分子親水性化合物(2)(トリメチルグリシン)
0.0147部
・アニオン性界面活性剤1 30質量%水溶液(下記構造) 0.25部
・紫外線吸収剤(1)(TINUVIN405、BASF(株)社製)(下記構造)
0.04部
・フッ素系界面活性剤(1)(下記構造) 0.004部
・ホスホニウム化合物(1)(下記構造) 0.020部
・2-ブタノン 5.346部
・1-メトキシ-2-プロパノール 3.128部
・メタノール 0.964部
・純水 0.036部
(ミクロゲル液(1))
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 2.243部
・1-メトキシ-2-プロパノール 0.600部
(ミクロゲル(1)の作製)
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
イソホロンジイソシアネート17.78部(80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)7.35部(20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成(株)製)0.043部を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
Figure 2023020769000020
<ミクロゲル(1)の調製>
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20部を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を21.8質量%になるように調整し、ミクロゲル(4)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
(油相成分)
(成分1)酢酸エチル 12.0部
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製)
3.76部
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として)
15.0部
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液 11.54部
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液 4.42部
(水相成分)
蒸留水 46.87部
<バインダーポリマー(6)の合成>
三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.0gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.1g、メチルメタクリレート:21.8g、メタクリル酸:14.2g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:2.15g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):0.38g、1-メトキシ-2-プロパノール:54gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。V-601:0.04g、1-メトキシ-2-プロパノール:4gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:137.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.24g、グリシジルメタクリレート:26.0g、テトラエチルアンモニウムブロミド:3.0gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、1-メトキシ-2-プロパノール:99.4gを加えて希釈した。
こうして得られたバインダーポリマー(6)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算質量平均分子量は3.5万であった。
Figure 2023020769000021
<バインダーポリマー(7)の合成>
三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.00gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.8g、メチルメタクリレート:2.8g、メタクリル酸:25.0g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.4g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):1.1g、1-メトキシ-2-プロパノール:55gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。2時間後、V-601:0.11g、1-メトキシ-2-プロパノール:1gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:177.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.28g、グリシジルメタクリレート:46.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド:3.4gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、4-メトキシフェノールを0.06g、1-メトキシ-2-プロパノール:114.5gを加えて希釈した。
こうして得られたバインダーポリマー(7)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は1.5万であった。
Figure 2023020769000022
Figure 2023020769000023
Figure 2023020769000024
<画像記録層5の形成>
下記組成の画像記録層塗布液(5)をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥重量1.0/mの画像記録層5を形成した。
画像記録層塗布液(5)は、下記に記載の各成分を含み、かつ1-メトキシ-2-プロパノール(MFG):メチルエチルケトン(MEK):メタノール=4:4:1(質量比)の混合溶媒で固形分が6質量%になるように調製した。
・電子受容型重合開始剤Int-1 0.06部
・赤外線吸収剤IR-1 0.026部
・電子供与型重合開始剤B-1 0.050部
・重合性化合物M-1 0.25部
・重合性化合物M-2 0.25部
・バインダーポリマーP-2 0.15部
・酸発色剤S-3 0.03部
・親水性化合物T-2 0.01部
P-2:ポリビニルアセタール、積水化学工業(株)製エスレックBL10
Figure 2023020769000025
画像記録層1~5は、20℃の水に均一に分散する。画像記録層1~5は、水分散性を有する。
<保護層1の形成>
下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成した。
(保護層塗布液(1))
・無機層状化合物分散液(1)(下記):1.5部
・親水性ポリマー(1)(下記構造、Mw:30,000)(固形分):0.03部
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、CKS50、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液:0.10部
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA-405、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液:0.03部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製、下記構造)1質量%水溶液):0.86部
・イオン交換水:6.0部
Figure 2023020769000026
(無機層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6部に合成雲母ソマシフME-100(コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて体積平均粒子径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
<保護層2の形成>
下記組成の保護層塗布液(2)をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.15g/mの保護層2を形成した。
保護層塗布液(2)は、下記に記載の各成分を含み、かつイオン交換水で固形分が6質量%になるように調製した。
・変色性化合物A 0.02部
・親水性ポリマーWP-1 0.70部
・親水性ポリマーWP-2 0.20部
・親水性ポリマーWP-3 0.20部
・界面活性剤 0.002部
WP-1:ポリビニルアルコール、シグマアルドリッチ社製Mowiol 4-88
WP-2:ポリビニルアルコール、シグマアルドリッチ社製Mowiol 8-88
WP-3:下記樹脂(Mw52,000)
界面活性剤: アニオン性界面活性剤、ラピゾールA-80、日油(株)製
Figure 2023020769000027
<バックコート層1~9の形成>
支持体の画像記録層を有する側とは反対側に、下記組成のバックコート層各塗布液(バックコート層塗布液(1)~(9))をバー塗布し、100℃で30秒間乾燥して、厚さ1.1μmのバックコート層1~9をそれぞれ形成した。
(バックコート層塗布液)
・バインダー(表2に記載) 11.072部
・マット粒子(表2に記載) 0.975部
・フッ素系界面活性剤 (1) 0.250部
・2-ブタノン 74.123部
・1-メトキシ-2-プロパノール 8.720部
・メタノール 4.360部
Figure 2023020769000028
Figure 2023020769000029
<バックコート層10の形成>
支持体の画像記録層を有する側とは反対側に、上記組成のバックコート層塗布液(10)をバックコート層の算術平均高さSaが0.51μmの範囲になるように、国際公開第2017/170391号の[0336]に記載の方法に準じて、バー塗布機によりバー塗布して、厚さ1.1μmのバックコート層10を形成した。
(バックコート層塗布液(10))
・エポキシ樹脂(JER1009:ジャパンエポキシレジン(株))
0.80部
・フッ素界面活性剤(メガファックF-780-F:大日本インキ化学(株))
0.005部
・メチルエチルケトン(MEK) 22.5部
・1-メトキシ-プロパノール 2.5部
<バックコート層11の形成>
支持体の画像記録層を有する側とは反対側に、国際公開第2017/170391号の[0339]に記載の方法に準じて、上記組成のバックコート層塗布液(10)をベタ塗りして、平坦状(フラット状)薄膜部を塗布形成し、その上にスプレー方式の塗布装置で、厚膜部を塗布形成し、乾燥して、厚さ1.1μmのバックコート層11を形成した。
なお、上記各バックコート層の厚さは、平均厚さ(T)であり、平均厚さ(T)は、上述のように測定した。
〔平版印刷版原版の作製〕
上記支持体、下塗り層、画像記録層、保護層、及びバックコート層を表3に記載のように組み合わせて実施例1~31、比較例1~3の平版印刷版原版を作製した。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数を表3に記載する。静摩擦係数は、以下のように測定した。
<静摩擦係数の測定>
静摩擦係数の測定は、JIS P8147に記載の方法に準じて行った。すなわち、新東科学(株)製の静摩擦係数測定機TYPE:10を用いて、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数を3回測定し、それらの平均値を、静摩擦係数とした。なお、測定は温度25℃湿度50%に保たれた恒温室の中で実施した。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaを表3に記載する。算術平均高さSaは以下のように測定した。
<算術平均高さSaの測定>
算術平均高さSaの測定は、ISO 25178に記載の方法に準じて行った。すなわち、菱化システム(株)製のマイクロマップMM3200-M100を用いて、同一サンプルから3か所以上選択して測定し、それらの平均値を算術平均高さSaとした。測定範囲に関しては、サンプル表面からランダムに選んだ400μm×400μmの範囲を測定した。
バックコート層の平均厚さ(T)を厚さとして表3に記載する。
バックコート層の平均厚さ(T)は、上述のように測定した。
粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径であり、上述のように測定した。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーを表3に記載する。表面自由エネルギーは以下のように測定した。
<表面自由エネルギーの測定>
表面自由エネルギーはOwens Wedent理論を用い、純水、およびヨードメタンとの接触角から算出した。具体的には、画像記録層を有する側は反対側の面と、純水、ヨードメタンとの接触角を測定し、下記式(1)の2元1次方程式を解くことで、γsvとγsvを求め、それぞれの和を表面エネルギーγsとした。
Figure 2023020769000030
γsv:測定面の表面自由エネルギー分散項
γsv:測定面の表面自由エネルギー水素結合項
γLv:滴下液体の表面自由エネルギー分散項
γLv:滴下液体の表面自由エネルギー水素結合項
θ:滴下2秒後の接触角
γL=γLv+γLv
Figure 2023020769000031
Figure 2023020769000032
<版ずれ評価>
実施例1~31、比較例1~3の平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxcel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpiの条件で露光した。露光画像にはトンボマーク含むチャートを用いた。
画像露光した平版印刷版原版を、(株)東京機械製作所製オフセット輪転印刷機に装着し、新聞用印刷インキとして、東洋インキ製ヴァンテアンエコー墨N、湿し水にアルキー1質量%混合水を用いて、新聞用紙に100,000枚/時のスピードで印刷した。300枚印刷後に印刷機を止め、紙面上にて版咥え部からトンボマーク中心の距離を測定し[L1]とした。その後、10万枚印刷後の紙面上にて咥え部からトンボマーク中心の距離を測定し[L2]とした。版ズレ量△Lは、下記式(1)から算出し、その値に応じて5段階評価を行った。
△L=L2-L1 ・・・ (1)
5点: △Lの絶対値が50μm未満
4点: △Lの絶対値が50μm以上、100μm未満
3点: △Lの絶対値が100μm以上、150μm未満
2点: △Lの絶対値が150μm以上、200μm未満
1点: △Lの絶対値が200μm以上
<平版印刷版原版の裁断>
実施例1~31の平版印刷版原版を、図4に示すような回転刃を用いて、上側裁断刃と下側裁断刃の隙間、噛み込み量及び刃先角度を調整して裁断し、端部にダレ形状を形成した。
ダレ形状におけるダレ量X及びダレ幅Yを表3に記載する。
<エッジ層1の形成>
以下の塗布条件1により、組成物1を塗布してエッジ層1を形成した。
(塗布条件1)
図7に示す塗布方法により塗布を行った。ワイヤーバーは、平版印刷版原版に対して垂直(θ=0°)となるように、ワイヤーバーを設置し、塗布を行った。塗布は以下の手順により行った。
[1]10番手のワイヤーバーにHN-GV(富士フイルムグローバルグラフィックスシステムズ株式会社製)を均一になるように1cm滴下した。
[2]平版印刷版原版の側面に沿うように、ワイヤーバーを20mm/sで移動させた。
この時、平版印刷版原版に対して垂直(θ=0°)になるようにワイヤーバーを設置した。
[3]80℃、6m/sの風を30秒間当てて乾燥した。
[4]平版印刷版原版の側面のみに塗布することができた。この時、組成物1の塗布量は120mg/mだった。
[5]平版印刷版原版の端部からの塗布幅のバラツキZはZ=0.1mmであった。
組成物1は、下記成分を含むものである。
・脱イオン水 75.00部
・Penon JE66*1 12.95部
・NISSAN ANON BDF-SF*2 9.50部
・ヘキサメタリン酸ナトリウム 2.50部
・Bioden ZNS *3 0.05部
*1: エーテル化デンプン(Nippon Starch Chemical Co.
, Ltd.)
*2: コカミドプロピルベタイン(NOF Corporation)
*3: 消毒剤又は殺生物剤(Daiwa Chemical Industries
Corporation)
上記バラツキZは、特許第6628949号の[0186]~[0187]に基づき求
められる。
端部にダレ形状を有する平版印刷版原版、エッジ層を表3のように組み合わせて、エッジ汚れ防止性の測定用の平版印刷版原版を作製した。
エッジ汚れ防止性を以下のように評価した。
<エッジ汚れ防止性>
得られた平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxcel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像、50%網点、非画像部を含むチャートを用いた。
画像露光した平版印刷版原版を、(株)東京機械製作所製オフセット輪転印刷機に装着し、新聞用印刷インキとして、インクテック(株)製 ソイビーKKST-S(紅)、湿し水として、東洋インキ(株)製東洋ALKYを用いて、新聞用紙に100,000枚/時のスピードで印刷し、地汚れ解消の水目盛から1.1倍の水目盛で、1,000枚目の印刷物をサンプリングし、平版印刷版原版の端部に起因する線状汚れの程度を下記の基準で評価した。結果を、表3に、エッジ汚れ防止性として記載した。
5:全く汚れていない
4:5と3の中間レベル
3:うっすらと汚れているが許容レベル
2:3と1の中間レベル(許容レベル)
1:はっきりと汚れており非許容レベル
表3に記載の結果から、引張強度が160MPa以上であり、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面が所定の特徴を有する本発明に係る機上現像性平版印刷版原版は、は、平版印刷版による印刷中の平版印刷版の版ずれを抑制可能であることができる。
なお、所定のダレ形状を有する平版印刷版原版を用いることで、エッジ汚れ性に優れることがわかる。
1 平版印刷版原版
1a 画像記録層面
1b 支持体面
1c 端面
2 ダレ
10 裁断刃
10a 上側裁断刃
10b 上側裁断刃
11 回転軸
20 裁断刃
20a 下側裁断刃
20b 下側裁断刃
21 回転軸
30 平版印刷版原版
31 アルミニウム板
32、34 ローラ状ブラシ
33 研磨スラリー液
35、36、37、38 支持ローラ
50 主電解槽
51 交流電源
52 ラジアルドラムローラ
53a、53b 主極
54 電解液供給口
55 電解液
56 スリット
57 電解液通路
58 補助陽極
60 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422,428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源
B 画像記録層面と支持体との境界
W アルミニウム板
X ダレ量
Y ダレ幅
100a 平版印刷版原版
120 端面
122 支持体を基準に画像記録層側における最外層表面122
138 ワイヤーバー
θ 角度

Claims (21)

  1. 支持体上に画像記録層を有し、
    前記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
    前記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面と金属SUS316の静摩擦係数が0.50以下である、機上現像型平版印刷版原版。
  2. 前記支持体がアルミニウム支持体であって、前記アルミニウム支持体がマグネシウムを0.020質量%以上含む、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  3. 前記支持体がアルミニウム支持体であって、前記アルミニウム支持体は、前記アルミニウム支持体を構成するアルミニウム板が圧延工程において、250℃以上で熱処理された後に冷間圧延の圧下率を80%以上としたものである、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  4. 支持体上に画像記録層を有し、
    前記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
    前記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である、機上現像型平版印刷版原版。
  5. 前記画像記録層を有する側とは反対側にバックコート層を有する、請求項4に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  6. 前記バックコート層が粒子を含み、
    バックコート層の平均厚さT[μm]、粒子の平均粒子径D[μm]が、下記式(1)を満たす、請求項5に記載の機上現像型平版印刷版原版。
    D > T ・・・式(1)
  7. 前記バックコート層が薄膜部と厚膜部を有する、請求項5に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  8. 支持体上に画像記録層を有し、
    前記支持体の引張強度が160MPa以上であり、
    前記画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の表面自由エネルギーが60mJ/m以下である、機上現像型平版印刷版原版。
  9. 前記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
    前記陽極酸化皮膜におけるマイクロポアが、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、前記大径孔部の前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、前記小径孔部の前記連通位置における平均径が、15nmより小さい、請求項1~8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  10. 前記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
    前記陽極酸化皮膜におけるマイクロポアが、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる小径孔部と、前記小径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる大径孔部とから構成され、前記小径孔部の前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、35nm以下であり、前記大径孔部の平均径が、40~300nm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  11. 前記支持体が陽極酸化皮膜を有し、
    前記陽極酸化皮膜が、陽極酸化皮膜の表面から深さ方向に向かって順に、
    平均径が20~100nmのマイクロポアを有する、厚さ30~500nmの上層、
    平均径が上記マイクロポア上層におけるマイクロポアの平均径の1/2~5倍のマイクロポアを有する、厚さ100~300nmの中間層、及び
    平均径が15nm以下のマイクロポアを有する、厚さ300~2000nmの下層
    を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  12. 前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、高分子化合物を含有する請求項1~11のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  13. 前記画像記録層が、発色剤を含有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  14. 前記画像記録層が、水溶性又は水分散性を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  15. 前記高分子化合物が粒子形態の高分子化合物である、請求項12~14のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  16. 前記粒子形態の高分子化合物が、疎水性主鎖を有し、
    i) 前記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び
    ii) 親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニット
    の両方を含む、請求項15に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  17. 前記粒子形態の高分子化合物が、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、並びに、活性水素を有する化合物との反応により得られる、請求項15に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  18. 前記平版印刷版原版の端部が、ダレ量Xが25~150μm、ダレ幅Yが70~300μmのダレ形状を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  19. 前記平版印刷版原版の対向する2辺の側面の一部又は全部に撥インク剤を有する請求項18に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  20. 前記画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaが0.3μm以上20.0μm以下である、請求項1~19のいずれか1項に機上現像型平版印刷版原版。
  21. 請求項1~20のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を画像露光する工程、並びに、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとものいずれかを供給して、前記機上現像型平版印刷版原版における画像記録層の未露光部を除去する工程を含む印刷版の作製方法。
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