JP2022157763A - 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体 - Google Patents

機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体 Download PDF

Info

Publication number
JP2022157763A
JP2022157763A JP2021062183A JP2021062183A JP2022157763A JP 2022157763 A JP2022157763 A JP 2022157763A JP 2021062183 A JP2021062183 A JP 2021062183A JP 2021062183 A JP2021062183 A JP 2021062183A JP 2022157763 A JP2022157763 A JP 2022157763A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
printing plate
lithographic printing
particles
group
plate precursor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021062183A
Other languages
English (en)
Inventor
加奈 栢木
Kana Kashiwagi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2021062183A priority Critical patent/JP2022157763A/ja
Publication of JP2022157763A publication Critical patent/JP2022157763A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Printing Plates And Materials Therefor (AREA)
  • Photosensitive Polymer And Photoresist Processing (AREA)
  • Materials For Photolithography (AREA)
  • Manufacture Or Reproduction Of Printing Formes (AREA)

Abstract

【課題】 優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できる機上現像型平版印刷版原版、機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、及び構造体を提供する。【解決手段】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に画像記録層を有する機上現像型平版印刷版原版であって、上記平版印刷版原版は端部にダレ形状を有し、上記画像記録層がバインダーポリマーと粒子を含み、上記バインダーポリマーと上記粒子の合計量に対して、上記粒子の比率が5~40質量%である、機上現像型平版印刷版原版、機上現像型平版印刷版原版を用いた印刷版の作製方法、及び構造体。【選択図】 なし

Description

本発明は、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体
に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキとが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
現在、平版印刷版原版から平版印刷版を作製する製版工程においては、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術による画像露光が行われている。即ち、画像露光は、リスフィルムを介することなく、レーザーやレーザーダイオードを用いて直接平版印刷版原版に走査露光などにより行われる。
一方、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版の製版に関して、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境問題がクローズアップされ、これに伴い、現像処理の簡易化又は無処理化が指向されている。簡易な現像処理の一つとして、「機上現像」と呼ばれる方法が提案されている。機上現像は、平版印刷版原版を画像露光後、従来の湿式現像処理を行わず、そのまま印刷機に取り付け、画像記録層の非画像部の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
近年、機上現像型平版印刷版原版は、新聞印刷用としても知られており(例えば特許文献1など)、このような平版印刷版原版は、通常、多数の平版印刷版原版を厚み方向に積層してなる積層体として新聞社の印刷工場などに提供されている。
国際公開第2019/151447号
ここで、平版印刷版原版の製造工場や新聞社の印刷工場内などにおける上記積層体の搬送は、搬送中における平版印刷版原版の損傷などを抑制するために、しばしば、積載台(スキッド)上に積層体及び天板を配置し、積層台と天板とで上記積層体を挟み込むようにバンドにて結束した状態の構造物を搬送することによりなされる。
しかしながら、このような搬送を経た機上現像型平版印刷版原版を用いて印刷を行うと、バンド結束位置に対応する形で、印刷物にバンド様の不良印刷領域(本明細書において、「バンド跡汚れ」とも言う)が発生しやすいという、問題があった。
従来より、種々の機上現像型平版印刷版原版が知られているが、優れた機上現像性を得つつ、バンド跡汚れを改善することは非常に困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できる機上現像型平版印刷版原版、機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、及び構造体を提供することである。
上記課題を解決するための手段を以下に記載する。
[1]
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に画像記録層を有する機上現像型平版印刷版原版であって、
上記平版印刷版原版は端部にダレ形状を有し、
上記画像記録層がバインダーポリマーと粒子を含み、
上記バインダーポリマーと上記粒子の合計量に対して、上記粒子の比率が5~40質量%である、
機上現像型平版印刷版原版。
[2]
上記バインダーポリマーと上記粒子の合計量に対して、上記粒子の比率が5~30質量%である、[1]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[3]
上記バインダーポリマーと上記粒子の合計量に対して、上記粒子の比率が10~20質量%である、[1]又は[2]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[4]
上記粒子が、ポリマー粒子である[1]~[3]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[5]
上記ポリマー粒子が、スチレンに由来する繰り返し単位及びアクリロニトリルに由来する繰り返し単位を含む共重合体の粒子である[4]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[6]
上記ポリマー粒子が、ミクロゲルである[4]又は[5]に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[7]
上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び重合性化合物を含有する[1]~[6]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[8]
上記ダレ形状が、ダレ量Xが25~150μm、ダレ幅Yが70~300μmのダレ形状である[1]~[7]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[9]
上記平版印刷版原版が支持体吸着性を有する化合物を含有する層を有する[1]~[8]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[10]
端部から1cm以内の領域に親水化層を有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
[11]
[1]~[10]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、赤外線レーザーにより画像露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水から選ばれる少なくとも1つにより、上記画像記録層の未露光部分を除去する工程とを含む平版印刷版の作製方法。
[12]
積載台と、
[1]~[10]のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を複数枚積層してなる機上現像型平版印刷版原版積層体と、
天板と
をこの順で備える構造体であって、
上記構造体は、更に、
上記積載台、上記構造体、及び、上記天板を結束する結束バンド
を有する構造体。
[13]
上記構造体は、更に、
(i)上記天板と上記積層体との間の位置、及び、(ii)上記天板を基準として上記積層体とは反対側の位置の少なくとも一方、に設けられた緩衝材
を有し、
上記結束バンドは、上記積載台、上記構造体、及び、上記天板、及び、上記緩衝材を結束する[12]に記載の構造体。
本発明によれば、優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できる機上現像型平版印刷版原版、機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、及び構造体を提供することができる。
電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 平版印刷版原版の端部の断面形状を示す模式図である。 スリッター装置の裁断部の一例を示す概念図である。 アルミニウム支持体の作製における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。 構造体の一例を示す概略側面図である。 構造体の一例を示す概略斜視図である。 機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体の作成における一例を示す概略図である。 機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体の作成における一例を示す概略図である。 機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体の作成における一例を示す概略図である。 機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体の一例を示す概略図である。 機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体の一例を示す概略図である。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[機上現像型平版印刷版原版]
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に画像記録層を有する機上現像型平版印刷版原版であって、
上記平版印刷版原版は端部にダレ形状を有し、
上記画像記録層がバインダーポリマーと粒子を含み、
上記バインダーと上記粒子の合計量に対して、上記粒子の比率が5~40質量%である、機上現像型平版印刷版原版である。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版(以下、平版印刷版原版ともいう)は、上記構成をとることにより、優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できるという効果が得られる。
このような構成で本発明の効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。
平版印刷版原版は、バインダーと粒子とを含む画像記録層を有しており、バインダーと粒子の合計量に対して、粒子の比率が5~40質量%となっている。
画像記録層から脱離しやすい成分としての粒子の比率を5質量%以上とすることで、平版印刷版原版の未露光部が現像時にインキ及び湿し水の少なくとも一方により除去されやすくなるため、優れた機上現像性を得ることができる。また、上記粒子の比率を40質量%以下とすることにより、画像記録層において、粒子の量が多くなりすぎないため、換言すれば、バインダーが充分な量で存在するため、画像記録層は充分な強度を有している。これにより、バンドからの結束力を大きく受ける領域においても、粒子の変形、粒子などの各成分の移動や成分配合比の意図しない変動等の不具合を抑制できるため、所望の画像記録がされ、最終的に、印刷物におけるバンド跡汚れが低減されるものと考えられる。
一方で、上記粒子の比率が5質量%未満となると、画像記録層から脱離しやすい成分が少なくなり、未露光部が現像時にインキ及び湿し水の少なくとも一方により除去され難くなるため、機上現像性が低下するものと考えられる。
また、上記粒子の比率が40質量%超となると、画像記録層に存在する粒子が多くなるため、換言すれば、バインダーが充分な量で存在しなくなるため、画像記録層の強度は不充分な傾向となる。そのため、特に、バンドからの結束力を大きく受ける領域において、上記不具合が発生しやすく、ひいては、印刷物におけるバンド跡汚れが発生しやすくなる。
このように、本発明によれば、上記構成とすることで、優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できるという効果が得られるものと考えられる。
〔陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体〕
機上現像型平版印刷版原版を構成する陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体について記載する。
アルミニウム支持体に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属、即ちアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板から選ばれることが好ましい。
アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは製錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有する合金板でもよい。アルミニウム支持体に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来から公知のアルミニウム板、例えばJIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することが出来る。
アルミニウム板の厚さは、0.1~0.6mm程度が好ましい。
(陽極酸化皮膜)
陽極酸化皮膜は、陽極酸化処理によってアルミニウム板の表面に作製される、極微細孔(マイクロポアともいう)を有する陽極酸化アルミニウム皮膜を意味する。マイクロポアは、アルミニウム板とは反対側の陽極酸化皮膜表面から厚み方向(アルミニウム板側、深さ方向)に沿ってのびている。
マイクロポアの陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、調子再現性、耐刷性及びブラン汚れ性の観点から、7nm~150nmであることが好ましく、10nm~100nmであることがより好ましく、10nm~60nmであることが更に好ましく、15nm~60nmであることが特に好ましく、18nm~40nmであることが最も好ましい。
陽極酸化皮膜中のマイクロポアは、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、大径孔部の底部と連通し、連通位置から更に深さ20~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成されることが好ましい。
以下に、大径孔部及びと小径孔部について詳述する。
-大径孔部-
大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、調子再現性、耐刷性及びブラン汚れ性の観点から、7nm~150nmであることが好ましく、15nm~150nmであることがより好ましく、15nm~60nmであることが更に好ましく、18nm~40nmであることが特に好ましい。
大径孔部の平均径は、陽極酸化皮膜表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部)の径(直径)を測定し、径の算術平均値として算出される。
なお、大径孔部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
大径孔部の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ70nm~1,000nm(以後、深さAとも称する)に位置することが好ましい。つまり、大径孔部は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(厚み方向)に70nm~1,000nmのびる孔部であることが好ましい。中でも、平版印刷版原版の製造方法の効果がより優れる点で、深さAは、90nm~850nmがより好ましく、90nm~800nmが更に好ましく、90nm~600nmが特に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜の断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部の深さを測定し、算術平均値として算出される。
大径孔部の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。また、大径孔部の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
大径孔部の内径は特に制限されないが、開口部の径と同程度の大きさか、又は開口部の径よりも小さいことが好ましい。なお、大径孔部の内径は、開口部の径よりも1nm~10nm程度の差があってもよい。
-小径孔部-
小径孔部は、大径孔部の底部と連通して、連通位置より更に深さ方向(厚み方向)に延びる孔部である。ひとつの小径孔は、通常ひとつの大径孔部と連通するが、2つ以上の小径孔部がひとつの大径孔部の底部と連通していてもよい。
小径孔部の連通位置における平均径は、13nm以下であることが好ましく、11nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されないが、5nm以上であることが好ましい。
小径孔部の平均径は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400×600nmの範囲に存在するマイクロポア(小径孔部)の径(直径)を測定し、径の算術平均値を求めることにより算出される。なお、大径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜上部(大径孔部のある領域)を切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE-SEMで観察して、小径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、小径孔部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
小径孔部の底部は、上記の大径孔部との連通位置(上述した深さAに該当)から更に深さ方向に20nm~2,000nmのびた場所に位置することが好ましい。言い換えると、小径孔部は、上記大径孔部との連通位置から更に深さ方向(厚み方向)にのびる孔部であり、小径孔部の深さは、20nm~2,000nmであることが好ましく、100nm~1,500nmであることがよち好ましく、200nm~1,000nmであることが特に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜の断面の写真(5万倍)をとり、25個以上の小径孔部の深さを測定し、算術平均値として算出される。
小径孔部の形状は特に限定されず、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。また、小径孔部の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
小径孔部の内径は特に制限されないが、連通位置における径と同程度の大きさか、又は上記径よりも小さくても大きくてもよい。なお、小径孔部の内径は、通常、開口部の径よりも1nm~10nm程度の差があってもよい。
大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径と小径孔部の連通位置における平均径の比、(大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径)/(小径孔部の連通位置における平均径)は、1.1~13であることが好ましく、2.5~6.5であることがより好ましい。
また、大径孔部の深さと小径孔部の深さの比、(大径孔部の深さ)/(小径孔部の深さ)は、0.005~50が好ましく、0.025~40がより好ましい。
機上現像型平版印刷版原版においては、画像視認性向上の観点から、アルミニウム支持体の陽極酸化皮膜表面(画像記録層が形成される側の表面)における明度が高いことが有用である。
平版印刷版の印刷工程においては、通常、版を印刷機に取り付ける前に目的通りの画像記録がなされているかを確認する目的で、検版作業が行われる。機上現像型平版印刷版原版においては、画像露光された段階で画像を確認することが必要となるため、画像露光部にいわゆる焼き出し画像を生じさせる手段が適用される。
画像露光された機上現像型平版印刷版原版の画像部の見易さ(画像視認性)を定量的に評価する方法として、画像露光部の明度と未露光部の明度を測定し、両者の差を求める方法が挙げられる。ここで、明度としては、CIEL*a*b*表色系における明度L*の値を用いることができ、測定は、色彩色差計(Spectro Eye、エックスライト(株)製)を用いて行うことができる。測定により得られた画像露光部の明度と未露光部の明度との差が大きい程、画像部が見易いこととなる。
画像露光部の明度と未露光部の明度との差を大きくするためには、陽極酸化皮膜表面のCIEL*a*b*表色系における明度L*の値が大きいことが有効であることが判明した。即ち、明度L*の値は70~100であることが好ましい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体は、必要に応じて、画像記録層が形成される側とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物などを含むバックコート層を有していてもよい。
(陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造)
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体は公知の方法を用いて製造することができる。陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は、特に限定されるものではない。陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法の好ましい形態としては、アルミニウム板に粗面化処理を施す工程(粗面化処理工程)、粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程(陽極酸化処理工程)、陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程(ポアワイド処理工程)を含む方法が挙げられる。
以下に、各工程を詳細に説明する。
<粗面化処理工程>
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。粗面化処理工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、実施しなくてもよい。
粗面化処理は、電気化学的粗面化処理のみを施してもよいが、電気化学的粗面化処理と機械的粗面化処理および/または化学的粗面化処理とを組み合わせて施してもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を施すのが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、硝酸や塩酸の水溶液中で施すのが好ましい。
機械的粗面化処理は、一般的には、アルミニウム板の表面を表面粗さRa:0.35~1.0μmとする目的で施される。
機械的粗面化処理の諸条件は特に限定されないが、例えば、特公昭50-40047号公報に記載されている方法に従って施すことができる。機械的粗面化処理は、パミストン懸濁液を使用したブラシグレイン処理により施したり、転写方式で施したりすることができる。
また、化学的粗面化処理も特に限定されず、公知の方法に従って施すことができる。
機械的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を施すのが好ましい。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、平版印刷版の耐汚れ性を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子などの不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチングやアルカリによるエッチングが知られているが、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダなどが好適に挙げられる。
また、アルカリ剤は、アルミニウムイオンを含有してもよい。アルカリ溶液のアルカリ剤の濃度は、0.01質量%以上であるのが好ましく、3質量%以上であるのがより好ましく、また、30質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがより好ましい。
更に、アルカリ溶液の温度は室温以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、80℃以下であるのが好ましく、75℃以下であるのがより好ましい。
エッチング量は、0.1g/m以上であるのが好ましく、1g/m以上であるのがより好ましく、また、20g/m以下であるのが好ましく、10g/m以下であるのがより好ましい。
また、処理時間は、エッチング量に対応して2秒~5分であるのが好ましく、生産性向上の点から2~10秒であるのがより好ましい。
機械的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を施した場合、アルカリエッチング処理により生じる生成物を除去するために、低温の酸性溶液を用いて化学エッチング処理(以下、「デスマット処理」ともいう。)を施すのが好ましい。
酸性溶液に用いられる酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。酸性溶液の濃度は、1~50質量%であるのが好ましい。また、酸性溶液の温度は、20~80℃であるのが好ましい。酸性溶液の濃度および温度がこの範囲であると、アルミニウム支持体を用いた平版印刷版の耐ポツ状汚れ性がより向上する。
粗面化処理工程の好ましい態様を以下に例示する。
-態様SA-
(1)から(8)に示す処理をこの順に実施する方法。
(1)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(2)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(3)硝酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(4)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(5)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(6)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(7)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(8)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第3デスマット処理)
-態様SB-
(11)から(15)に示す処理をこの順に実施する方法。
(11)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第4アルカリエッチング処理)
(12)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第4デスマット処理)
(13)塩酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第3電気化学的粗面化処理)
(14)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第5アルカリエッチング処理)
(15)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第5デスマット処理)
上記態様SAの(1)の処理前、又は、態様SBの(11)の処理前に、必要に応じて、機械的粗面化処理を実施してもよい。
第1アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.5g/m~30g/mが好ましく、1.0g/m~20g/mがより好ましい。
態様SAにおける第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液としては、直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1g/L~100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、又は、硝酸アンモニウムなどを添加して得られる水溶液が挙げられる。
態様SAにおける第2電気化学的粗面化処理及び態様SBにおける第3電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液としては、直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1g/L~100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0g/L~30g/L添加して得られる水溶液が挙げられる。なお、この溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、及び、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、及び、塩化アンモニウムなどの塩酸イオンを更に添加してもよい。
電気化学的粗面化処理の交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、及び、三角波などを用いることができる。周波数は0.1Hz~250Hzが好ましい。
図1は、電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
図1において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1msec~10msecが好ましい。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比tc/taが1~20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3~20、アノード反応時間taが5msec~1,000msec、の範囲にあるのが好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10~200A/dmが好ましい。
Ic/Iaは、0.3~20が好ましい。電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は、25C/dm~1,000C/dmが好ましい。
交流を用いた電気化学的な粗面化には図2に示した装置を用いることができる。
図2は、交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図2において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a及び53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a及び53bにより電解処理される。電解液55は、電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a及び53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは、次いで、補助陽極槽60で電解処理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の平版印刷版原版が製造しやすい点で、1.0g/m以上が好ましく、2.0g/m~10g/mがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の平版印刷版原版が製造しやすい点で、0.01g/m~0.8g/mが好ましく、0.05g/m~0.3g/mがより好ましい。
酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1~第5デスマット処理)では、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、又は、これらの2以上の酸を含む混酸を含む酸性水溶液が好適に用いられる。
酸性水溶液の酸の濃度は、0.5質量%~60質量%が好ましい。
<陽極酸化処理工程>
陽極酸化処理工程は、上記粗面化処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、アルミニウム板の表面にアルミニウムの酸化皮膜を形成する工程である。陽極酸化処理によりアルミニウム板の表面に、マイクロポアを有するアルミニウムの陽極酸化皮膜が形成される。
陽極酸化処理は、この分野で従来から知られている方法に従って、所望とするマイクロポアの形状などを考慮して、適宜製造条件を設定することにより行うことができる。
陽極酸化処理工程においては、硫酸、リン酸、シュウ酸などの水溶液を主に電解浴として用いることができる。場合によっては、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルフォン酸などまたはこれらの二種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液を用いることもできる。電解浴中でアルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。なお、電解浴にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1~10g/Lが好ましい。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、一般的には、電解液の濃度が1~80質量%(好ましくは5~20質量%)、液温5~70℃(好ましくは10~60℃)、電流密度0.5~60A/dm(好ましくは5~50A/dm)、電圧1~100V(好ましくは5~50V)、電解時間1~100秒(好ましくは5~60秒)の範囲が適当である。
英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中にて高電流密度で陽極酸化する方法は陽極酸化処理の好ましい一例である。
陽極酸化処理は複数回行うこともできる。各陽極酸化処理において使用する電解液の種類、濃度、液温、電流密度、電圧、電解時間などの条件の1つ以上を変更することができる。陽極酸化処理の回数が2の場合、最初の陽極酸化処理を第1陽極酸化処理、2回目の陽極酸化処理を第2陽極酸化処理と称することもある。第1陽極酸化処理と第2陽極酸化処理を行うことにより、異なる形状を有する陽極酸化皮膜を作製することができ、印刷性能に優れた平版印刷版原版を提供することが可能となる。
更に、陽極酸化処理に引き続いて下記のポアワイド処理を行い、その後再度陽極酸化処理を行うこともできる。この場合、第1陽極酸化処理、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理を行うこととなる。
陽極酸化処理によって形成されるマイクロポアの形状は、通常マイクロポアの径が深さ方向(厚み方向)に向かってほぼ変わらない略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が連続的に小さくなる円錐状であってもよい。また、深さ方向(厚み方向)に向かって径が不連続で小さくなる形状であってもよい。
深さ方向(厚み方向)に向かって径が不連続で小さくなる形状のマイクロポアとしては、具体的には、陽極酸化皮膜表面から深さ方向に延びる大径孔部と、大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ方向に延びる小径孔部とから構成されるマイクロポアが挙げられる。このような形状のマイクロポアを形成するためには、上記の第1陽極酸化処理、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理を行う方法が利用できる。
<ポアワイド処理工程>
ポアワイド処理工程は、上記陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。このポアワイド処理により、マイクロポアの径が拡大され、より大きな平均径を有するマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成される。
ポアワイド処理は、上記陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
ポアワイド処理工程においてアルカリ水溶液を使用する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%であるのが好ましい。なお、アルカリ水溶液のpHを11~13に調整した後、10~70℃(好ましくは20~50℃)の条件下で、アルミニウム板をアルカリ水溶液に1~300秒(好ましくは1~50秒)接触させることが適当である。この際、アルカリ処理液中に炭酸塩、硼酸塩、燐酸塩などの多価弱酸の金属塩を含んでもよい。
ポアワイド処理工程において酸水溶液を使用する場合、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸などの無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は、1~80質量%が好ましく、より好ましくは5~50質量%である。なお、酸水溶液の液温5~70℃(好ましくは10~60℃)の条件下で、アルミニウム板を酸水溶液に1~300秒(好ましくは1~150秒)接触させることが適当である。なお、アルカリ水溶液または酸水溶液中にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1~10g/Lが好ましい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造においては、上記ポアワイド処理工程の後、親水化処理を施す親水化処理工程を行ってもよい。親水化処理としては、特開2005-254638号公報の段落0109~0114に開示される公知の方法が使用できる。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリなどのアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬させる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法などにより、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリなどのアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
以下に、本発明に係る機上現像型平版印刷版原版について記載する。
平版印刷版原版は、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に画像記録層を有する。
〔画像記録層〕
画像記録層は、バインダーポリマーと粒子を含む。
<バインダーポリマー>
本明細書において、バインダーポリマーとは、ポリマー粒子(後に詳述する)に該当しない、重量平均分子量が2000以上のポリマーを表す。
バインダーポリマーとしては、重量平均分子量が2000以上のポリマーであって、ポリマー粒子に該当するものでなければ特に限定されないが、皮膜性を有するポリマーが好ましく、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられる。
画像記録層に用いられるバインダーポリマーとしては、アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。
また、ポリ(アルキレンオキサイド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキサイド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
アルキレンオキサイドとしては炭素数が2~6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが特に好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2~120が好ましく、2~70がより好ましく、2~50が更に好ましい。
アルキレンオキサイドの繰返し数が120以下であれば、摩耗による耐刷性、インキ受容性による耐刷性の両方が低下することがなく好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、バインダーポリマーの側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂の側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることがより好ましい。
Figure 2022157763000001
式(AO)中、yは2~120を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
式(AO)において、yは2~70が好ましく、2~50がより好ましい。Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。Rは水素原子又はメチル基が特に好ましい。
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。ポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合などの架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、ポリマー反応により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ-1,4-ブタジエン、ポリ-1,4-イソプレンなどが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(-COOR又は-CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、-(CHCR1A=CR2A3A、-(CHO)CHCR1A=CR2A3A、-(CHCHO)CHCR1A=CR2A3A、-(CHNH-CO-O-CHCR1A=CR2A3A、-(CH-O-CO-CR1A=CR2A3A及び-(CHCHO)-X(式中、RA1~RA3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、RA1とRA2又はRA3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1~10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、-CHCH=CH、-CHCHO-CHCH=CH、-CHC(CH)=CH、-CHCH=CH-C、-CHCHOCOCH=CH-C、-CHCH-NHCOO-CHCH=CH及び-CHCHO-X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、-CHCH=CH、-CHCH-Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)及び-CHCH-OCO-CH=CHが挙げられる。
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、良好な感度と良好な保存安定性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、0.1~10.0mmolが好ましく、1.0~7.0mmolがより好ましく、2.0~5.5mmolが更に好ましい。
以下にバインダーポリマーの具体例1~11を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例示化合物中、各繰返し単位に併記される数値(主鎖繰返し単位に併記される数値)は、繰返し単位のモル百分率を表す。側鎖の繰返し単位に併記される数値は、繰返し部位の繰返し数を示す。また、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
Figure 2022157763000002
Figure 2022157763000003

バインダーポリマーとしては、スチレンに由来する繰り返し単位、及び、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位の少なくとも一つを含むバインダーポリマーも好ましい。
スチレンとしては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシ-β-メチルスチレンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
スチレン及びアクリロニトリルを繰り返し単位として含むバインダーポリマーにおいては、スチレン由来の繰り返し単位及びアクリロニトリル由来の繰り返し単位の組成比が4:1~1:4であることが好ましい。
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であり、5,000以上が好ましく、10,000~300,000がより好ましい。
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
バインダーポリマーは、1種単独で使用してよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分中、1~80質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましい。
なお、上述したように、バインダーポリマーには、ポリマー粒子は含まれないものする。
<粒子>
粒子としては、特に限定されないが、ポリマー粒子、無機粒子、又は有機樹脂無機複合粒子が挙げられる。粒子としては、ポリマー粒子が好ましい。
粒子の存在により、非露光領域の現像性が高まると考えられる。
ポリマー粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリウレア類、ポリエステル類などの合成樹脂からなる粒子、及び、キチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロース等の天然高分子からなる粒子などが挙げられる。
また、ポリマー粒子は、機上現像性の向上に寄与することができる。好ましい一態様として、ポリマー粒子は、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できるポリマー粒子であることが好ましい。ポリマー粒子は、疎水性熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲルから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー粒子が好適に挙げられる。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。疎水性熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01~2.0μmが好ましい。
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性基を有するポリマー粒子は、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよく、重合性基が好ましい。その例としては、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好適に挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報及び特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層としては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
マイクロカプセルを調製する方法としては、公知の方法を使用することができる。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01~3.0μmが好ましく、0.06~3.0μmがより好ましく、0.06~2.0μmがさらに好ましく、0.10~1.0μmが特に好ましい。
〔ミクロゲル〕
ミクロゲルは、水性媒体に分散された反応性又は非反応性の樹脂粒子である。このミクロゲルは、その粒子中に、又は、好ましくは、粒子表面に、重合性基を有することにより、反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
ミクロゲルを調製する方法としては、公知の方法を使用することができる。
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、架橋反応性を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、ポリウレア及びポリウレタンがより好ましく、ポリウレタンが特に好ましい。
ミクロゲルの製造方法を例示する。油性成分として、多価アルコールとジイソシアネートの付加体にエチレン性不飽和基を有する1 価アルコールを反応させて、少量の界面活性剤と共に酢酸エチルに溶解する。水性成分として、ポリビニルアルコールの水溶液を調製する。油性成分及び水性成分を混合して、機械式撹拌機により高速撹拌して乳化分散する。固形分濃度を調整して所望のミクロゲルが得られる。
ミクロゲルの平均粒径は、0.01~3.0μmが好ましく、0.06~3.0μmがより好ましく、0.06~2.0μmが更に好ましく、0.10~1.0μmが特に好ましい。
ポリマー粒子としては、スチレンに由来する繰り返し単位及びアクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する含む共重合体の粒子が好ましい。
また、ポリマー粒子は、ミクロゲルであることが好ましい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、カーボンブラック、グラファイト、BaSO、ZnS、MgCO、CaCO、ZnO、CaO、WS、MoS、MgO、SnO、α-Fe、α-FeOOH、SiC、CeO、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイヤモンド、石榴石、ガーネット、珪石、トリボリ、珪藻土、ドロマイトなどが挙げられる。
無機粒子としては、シリカが好ましい。
上記粒子の平均粒径は、0.01~3.0μmが好ましく、0.06~3.0μmがより好ましく、0.06~2.0μmがさらに好ましく、0.10~1.0μmが特に好ましい。
粒子の平均粒径(平均粒子径)は、体積平均粒径を意味し、体積平均粒径の測定は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定する。具体的には、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)を用いて測定する。
また、本発明において、特に断りのない限り、他の粒子についても、上記測定方法により平均粒径を測定するものとする。
なお、ミクロゲルの平均粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を表す。
上記の、レーザー回折・散乱式粒度分布計、及び動的光散乱式粒径分布測定装置にて粒径を測定することできないポリマーは、粒子ではない。
上記バインダーポリマーと上記粒子の合計量に対して、上記粒子の比率(含有量)は、5~40質量%であり、好ましくは5~30質量%であり、さらに好ましくは、10~20質量%である。
上記粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記粒子の含有量は、画像記録層の全固形分中、2~45質量%が好ましく、2~40質量%がより好ましく、2~30質量%が更に好ましい。
また、上記バインダーポリマーの含有量及び上記粒子の含有量の合計は、画像記録層の全固形分中、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、10~70質量%が更に好ましい。
平版印刷版原版における画像記録層の一つの好ましい形態によれば、画像記録層は赤外線吸収剤、重合開始剤、及び重合性化合物を含有する。画像記録層は、更に、連鎖移動剤を含有することが好ましい。
(赤外線吸収剤)
赤外線吸収剤は、赤外線により励起して重合開始剤などに電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。また、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。赤外線吸収剤は、750~1,400nmの波長域に極大吸収を有することが好ましい。赤外線吸収剤としては、染料又は顔料が挙げられ、染料が好ましく用いられる。
染料としては、市販の染料、及び、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)などの文献に記載されている公知の染料が利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体などの染料が挙げられる。
染料のうち、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩が好ましく、シアニン色素がより好ましく、インドレニンシアニン色素が特に好ましい。
シアニン色素としては、下記式(a)で表されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2022157763000004
式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、-N(R)(R10)、-X-L又は以下に示す基を表す。ここで、R及びR10は、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子を表すか、あるいは、RとR10とが互いに結合して環を形成してもよい。炭素数6~10の芳香族炭化水素基又は炭素数1~8のアルキル基は置換基を有していてもよい。RとR10は共にフェニル基が好ましい。Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Lは、炭素数1~12の炭化水素基又はヘテロ原子を含む炭素数1~12の炭化水素基を表す。
ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。以下に示す基において、Xaは後述するZaと同義であり、Raは、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
Figure 2022157763000005
式(a)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基を表す。
画像記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素数2以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R及びRとは互いに結合して、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
式(a)中、Ar、Arは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環基及びナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ硫黄原子又は炭素数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R、Rは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ炭素数20以下の炭化水素基を表す。炭素数20以下の炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数12以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R、R、RおよびRは、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数12以下の炭化水素基を表す。原料の入手容易性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを表す。ただし、式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。Zaは、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はスルホン酸イオンが好ましく、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はアリールスルホン酸イオンがより好ましい。
式(a)で表されるシアニン色素において、Xがジフェニルアミノ基であることがより好ましい。また、Xがジフェニルアミノ基であり、Y及びYが共にジメチルメチレン基であることが更に好ましい。
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
赤外線吸収剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.05~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.2~10質量%が更に好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオンなどの重合開始種を発生する化合物であり、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤は、電子受容性重合開始剤及び電子供与性重合開始剤のいずれであってもよい。
<電子受容性重合開始剤>
電子受容性重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化物、カルボニル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、メタロセン化合物、アジド化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、及び、オニウム塩化合物が挙げられる。
有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物などが挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノンなどの化合物が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
電子受容性重合開始剤の中でも、より好ましいものとして、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましい。ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に、電子供与性基を置換基として有する、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。
具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
スルホニウム塩の例としては、トリアリールスルホニウム塩が好ましく、特に電子求引性基を置換基として有する、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
電子受容性重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子受容性重合開始剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.1~50質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、0.8~30質量%が更に好ましい。
<電子供与性重合開始剤>
電子供与性重合開始剤は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版の耐刷性向上に寄与する。電子供与性重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物などが挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)などが挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)などが挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウムなどが挙げられる。
電子供与性重合開始剤の中で、ボレート化合物が好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。
ボレート化合物の具体としては、以下に示す化合物が挙げられる。ここで、X は一価のカチオンを表し、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。また、Buはn-ブチル基を表す。
Figure 2022157763000006
Figure 2022157763000007
Figure 2022157763000008
Figure 2022157763000009
電子供与性重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子供与性重合開始剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.01~30質量%が好ましく、0.05~25質量%がより好ましく、0.1~20質量%が更に好ましい。
(重合性化合物)
重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物がより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態を持つことができる。
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基などの求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物なども好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基などの親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基などの脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテルなどに置き換えた化合物群を使用することもできる。これら化合物は、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報などに記載されている。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタンなどが挙げられる。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミドなどが挙げられる。
また、重合性化合物として、以下のウレタン系付加重合性化合物も好適に用いることができる。
<<ウレタン系付加重合性化合物>>
ウレタン系付加重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物が好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させて得られる1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物などが挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
また、ウレタン系付加重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物との反応により得られる化合物が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、2官能~5官能のポリイソシアネート化合物が挙げられ、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、9H-フルオレン-2,7-ジイソシアネート、9H-フルオレン-9-オン-2,7-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、トリレン-2,4-ジイソシアナート、トリレン-2,6-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、これらのポリイソシアネートのダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)等が好ましく挙げられる。また、上記のポリイソシアネート化合物と公知のアミン化合物とを反応させたビウレット体を用いてもよい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、1つのヒドロキシ基と、1以上の重合性基とを有する化合物が好ましく、1つのヒドロキシ基と、2以上の重合性基とを有する化合物がより好ましい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン系付加重合性化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
Figure 2022157763000010

式(Ac-1)中、Lは、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
としては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(Ac-2)中、Lは3価の連結基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
としての3価の連結基は、特に限定されないが、2価の連結基から1つの水素原子を除してなる基を挙げることができる。2価の連結基について以下に記載する。
2価の連結基としては、特に限定されないが、直鎖又は分岐状のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシド基を挙げることができ、直鎖又は分岐状のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシド基と、エステル結合、アミド結合又はウレタン結合を組み合わせた基であってもよい。
直鎖又は分岐状のアルキレン基としては、特に限定されないが、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。
また、ポリアルキレンオキシド基としては、特に限定されないが、-(X-O)-で表される基を挙げることができる。Xは、アルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。
Xのアルキレン基は、上記直鎖又は分岐状のアルキレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
nとしては、10~100が好ましく、10~50がより好ましい。
2価の連結基が、直鎖又は分岐状のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシド基と、エステル結合、アミド結合又はウレタン結合を組み合わせた基である場合は、ウレタン結合を組み合わせることが好ましい。
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
Figure 2022157763000011
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
また、ウレタン系付加重合性化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
耐薬品性、耐刷性及び機上現像性を向上させる観点から、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する上記ウレタン系付加重合性化合物の含有量は、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量などの使用方法の詳細は、平版印刷版原版の最終的な用途などを考慮して任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全固形分中、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
画像記録層は、連鎖移動剤、低分子親水性化合物、感脂化剤、その他の成分を含有することができる。
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
Figure 2022157763000012
Figure 2022157763000013
Figure 2022157763000014
Figure 2022157763000015
連鎖移動剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.01~50質量%が好ましく、0.05~40質量%がより好ましく、0.1~30質量%が更に好ましい。
(低分子親水性化合物)
低分子親水性化合物は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版の耐刷性を低下させることなく、平版印刷版原版の機上現像性の向上に寄与する。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどのポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどの有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸などの有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸などの有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸などの有機ホスホン酸類及びその塩、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アミノ酸類などの有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類などが挙げられる。
低分子親水性化合物は、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n-ブチルスルホン酸ナトリウム、n-ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n-オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11-トリオキサペンタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、13-エチル-5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14-テトラオキサテトラコサン-1-スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム、1-ナフチルスルホン酸ナトリウム、4-ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007-276454号公報の段落0026~0031及び特開2009-154525号公報の段落0020~0047に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1~4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007-276454号公報の段落0034~0038に記載の化合物がなどが挙げられる。
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1~5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニオブチラート、4-(1-ピリジニオ)ブチラート、1-ヒドロキシエチル-1-イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3-トリメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホナートなどが挙げられる。
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さく、界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
低分子親水性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.5~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
(感脂化剤)
感脂化剤は、平版印刷版原版から作製される平版印刷版におけるインキの着肉性(以下、単に「着肉性」ともいう)の向上に寄与する。感脂化剤としては、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどが挙げられる。特に、平版印刷版原版が保護層に無機層状化合物を含有する場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制する機能を有する。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナートなどが挙げられる。
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物などが挙げられる。
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5~80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
アンモニウム基含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,0000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート/2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分中、0.01~30質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、1~10質量%が更に好ましい。
(その他の成分)
画像記録層は、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物などを含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~0159に記載の各成分を用いることができる。
画像記録層は、後述の支持体吸着性を有する化合物を含有することができる。この場合、画像記録層は支持体吸着性を有する化合物を含有する層に該当する。
(画像記録層の形成)
画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~0143に記載のように、必要な上記各成分を適宜公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液をバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3~3.0g/m程度が好ましい。
機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある)を有することができる。
〔下塗り層〕
下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、当該極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1~10.0mmol、より好ましくは0.2~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)などを含有してもよい。
下塗り層は、後述の支持体吸着性を有する化合物を含有することができる。この場合、下塗り層は支持体吸着性を有する化合物を含有する層に該当する。
下塗り層は、公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。乾燥後における下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1~100mg/mが好ましく、1~30mg/mがより好ましい。
〔保護層〕
保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを含む)、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
ポリビニルアルコールとしては、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールが好適である。ポリビニルアルコールのけん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、けん化度は100%以下であればよい。
けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定することができる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
水溶性ポリマーの中で、ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母などの雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母などの雲母群が挙げられる。
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)Fなどの非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si0)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)Fなどの膨潤性雲母などが挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、膨潤性合成雲母は、10~15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+などの陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。
従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3~20μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは1~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1~50nm程度、面サイズ(長径)が1~20μm程度である。
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、0~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機微粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
保護層は、後述の支持体吸着性を有する化合物を含有することができる。この場合、保護層は支持体吸着性を有する化合物を含有する層に該当する。
保護層は、公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。乾燥後における保護層の塗布量(固形分)は、0.01~10g/mが好ましく、0.02~3g/mがより好ましく、0.02~1g/mが特に好ましい。
(支持体吸着性を有する化合物を含有する層)
本発明の平版印刷版原版は、支持体吸着性化合物を含有する層を有することが好ましい。
支持体吸着性を有する化合物(以下、支持体吸着性化合物、又は化合物Aともいう)を含有する層(以下、支持体吸着性化合物含有層、又は化合物A含有層ともいう)は、支持体吸着性を有する化合物を含有する。端部の画像形成性、機上現像性などの特性を低下させることなく、エッジ汚れ防止性を有効に発現させる観点から、化合物A含有層は印刷機上で印刷インキ及び湿し水から選ばれる少なくとも1つにより除去される性質を有する層であることが好ましい。化合物A含有層は、化合物Aを容易に溶出させるために、水溶性であることがより好ましい。
化合物A含有層は、化合物Aを含有する連続した層である形態のみならず、化合物Aが非連続に島状に点在するような形態も包含する。
<支持体吸着性を有する化合物>
化合物A含有層が含有する支持体吸着性を有する化合物(化合物A)は、支持体吸着性を有することが、1つの特徴である。ここで、「支持体吸着性」とは、アルミニウム支持体が有する陽極酸化皮膜に対する吸着性を意味する。陽極酸化皮膜に対する吸着性の有無は、以下の方法により、容易に判定することができる。
即ち、試験化合物を易溶性溶媒(例えば、水)に溶解した溶液を調製する。この溶液を乾燥後の塗布量が30mg/mとなるように陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に塗布し乾燥させる。次に試験化合物を塗布したアルミニウム支持体を、上記易溶性溶媒を用いて洗浄と乾燥を5回繰り返した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定する。残存量の測定は、残存する試験化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量し、この値を用いて残存する試験化合物量を算出してもよい。試験化合物の定量は、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定などで実施することができる。
残存量が、1mg/m以上であれば、試験化合物は、支持体吸着性を有すると判定される。
化合物Aは、支持体吸着性を有するために、アルミニウム支持体が有する陽極酸化皮膜に対して吸着性を示す基を有することが好ましい。アルミニウム支持体が有する陽極酸化皮膜に対して吸着性を示す基としては、陽極酸化皮膜の表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)又は官能基(例えば、水酸基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合)を形成することができる官能基が挙げられる。このような官能基は当業界でよく知られている。
このような官能基の中で、酸基が好ましい。酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHなどが挙げられる。特に、-OPO及び-POが好ましい。酸基は、塩を形成していてもよい。酸基が形成する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
化合物Aの分子量は、1,000以下であることが好ましい。分子量が1,000以下であることにより、機上現像時に特定化合物が特定化合物含有層から平版印刷版原版の端部における陽極酸化皮膜の表面に移動しやすく、優れたエッジ汚れ防止効果が得られると考えられる。分子量は、好ましくは50~1,000、より好ましくは50~800、更に好ましくは50~600である。
化合物Aとしては、オキソ酸を用いることができる。オキソ酸は、同じ原子にヒドロキシル基(-OH)とオキソ基(=O)が結合し、且つそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物を指す。オキソ酸は塩の形で用いてもよい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
化合物Aとしては、下記式1で表される化合物も用いることができる。
Figure 2022157763000016
式1中、nは、2~10の整数を表し、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキル基又はアルキレンオキシド基を表す。
式1におけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基が更に好ましい。式1におけるアルキレンオキシド基は、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1~10個有するアルキレンオキシド基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1~5個有するアルキレンオキシド基がより好ましく、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1~3個有するアルキレンオキシド基が更に好ましい。
化合物Aの具体例としては、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ホスフィン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、i-プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルホスホン酸メチル、エチルホスホン酸メチル、2-ヒドロキシエチルホスホン酸メチルなどのアルキルホスホン酸モノアルキルエステル及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等のアルキレンジホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ポリビニルホスホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホフタル酸、クエン酸などが挙げられる。
化合物Aとしては、陽極酸化皮膜への吸着性の観点から、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸及びホスフィン酸並びにこれらの塩が特に好ましい。
化合物Aは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
化合物A含有層における化合物Aの含有量は、20~150mg/mが好ましく、30~100mg/mがより好ましく、50~100mg/mが更に好ましい。
化合物A含有層は、界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
化合物A含有層は、例えば、必要な各成分を適宜水などの溶剤に溶解して塗布液を調製し、塗布液を公知の方法で塗布、乾燥することにより形成することができる。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaが、0.3~20μmであることが好ましい。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaが、0.3~20μmであることが好ましい。
このような特性を有する最外層表面を設けることにより、本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、原版と原版の間に合紙を挟まない形態(合紙レスともいう)で集積した場合でも、集積体から原版を取り出す工程における多重給版の防止性、原版の最外層表面に付与された凸部に起因する擦れ傷防止性、原版の最外層表面に付与された凸部に起因する現像遅れ防止性などの性能にいて優れる。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面は、バックコート層を有する場合は、バックコート層の表面であり、支持体の特定ポリマー含有層を有する側とは反対側に層を有さない場合には、支持体表面である。
例えば、後述する突起物を形成する場合、平版印刷版原版は、上記バックコート層が、最外層であり、かつ上記バックコート層の上に高分子化合物を含む複数の突起物を有していてもよいし、上記支持体が、最外層であり、かつ上記支持体の上に高分子化合物を含む複数の突起物を有していてもよい。
画像記録層を有する側における最外層表面は、画像記録層又は保護層が最外層の場合、画像記録層表面又は保護層表面である。
例えば、後述する突起物を形成する場合、平版印刷版原版は、上記画像記録層又は保護層が、最外層であり、かつ上記画像記録層又は保護層の上に高分子化合物を含む複数の突起物を有していてもよい。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面の算術平均高さSaは、より好ましくは0.5~10μm、更に好ましくは0.5~7μmである。
画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaは、より好ましくは0.5~10μm、更に好ましくは0.5~7μmである。
最外層における算術平均高さSaの測定は、ISO 25178に記載の方法に準じて行う。具体的には、菱化システム(株)製のマイクロマップMM3200-M100を用いて、同一サンプルから3か所以上選択して測定し、それらの平均値を算術平均高さSaとする。測定範囲に関しては、サンプル表面からランダムに選んだ1cm×1cmの範囲を測定する。
最外層表面の算術平均高さSaが0.3~20μmとの要件を達成するためには、最外層が凹凸を有する形状を形成することが好ましい。
具体的には、例えば、最外層が、平均粒子径が0.5~20μmである粒子を含む態様(態様1)、及び最外層の上に高分子化合物を主成分として含む複数の突起物を有する態様(態様2)が挙げられる。ここで、主成分とは、含有比率(質量%)が最も高い成分を意味する。
態様1において、平均粒子径が0.5~20μmである粒子は、特に制限はないが、有機樹脂粒子及び無機粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
有機樹脂粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリウレア類、ポリエステル類などの合成樹脂からなる粒子、及び、キチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロースなどの天然高分子からなる粒子などが好ましく挙げられる。
中でも、合成樹脂粒子は、粒子サイズ制御の容易さや、表面改質により所望の表面特性を制御し易いなどの利点がある。
有機樹脂粒子の製造方法については、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような比較的に硬い樹脂では、破砕法による微粒子化も可能であるが、乳化懸濁重合法により粒子を合成する方法が、粒子径制御の容易性、精度から好ましく採用されている。
有機樹脂粒子の製造方法は、「超微粒子と材料」日本材料科学会編、裳華房、1993年発刊、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版、2005年発刊などに詳細に記載されている。
有機樹脂粒子は市販品としても入手可能であり、例えば、綜研化学(株)製、架橋アクリル樹脂MX-40T、MX-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-1000、MX-1500H、MR-2HG、MR-7HG,MR-10HG、MR-3GSN、MR-5GSN、MR-7G、MR-10G、MR-5C、MR-7GC、スチリル樹脂系のSX-350H、SX-500H、積水化成品工業(株)製アクリル樹脂MBX-5、MBX-8、MBX-12MBX-15、MBX-20,MB20X-5、MB30X-5、MB30X-8、MB30X-20、SBX-6、SBX-8、SBX-12、SBX-17、三井化学(株)製ポリオレフィン樹脂、ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W405、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100などが挙げられる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、カーボンブラック、グラファイト、BaSO、ZnS、MgCO、CaCO、ZnO、CaO、WS、MoS、MgO、SnO、α-Fe、α-FeOOH、SiC、CeO、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイヤモンド、石榴石、ガーネット、珪石、トリボリ、珪藻土、ドロマイトなどが挙げられる。
上記粒子は、親水性表面を有する粒子であることが好ましい。親水性表面を有する粒子は、親水性表面を有する有機樹脂粒子及び親水性表面を有する無機粒子を含む。
親水性表面を有する有機樹脂粒子は、シリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機化合物で被覆された有機樹脂粒子が好ましく、シリカで被覆された有機樹脂粒子が特に好ましい。
親水性表面を有する有機樹脂粒子を構成する有機樹脂は、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
以下に、親水性表面を有する有機樹脂粒子について、シリカで被覆された有機樹脂粒子(以下、「シリカ被覆有機樹脂粒子」ともいう。)を例として詳細に説明するが、本発明における親水性表面を有する有機樹脂粒子はこれに限定されるものではない。
シリカ被覆有機樹脂粒子は、有機樹脂からなる粒子をシリカで表面被覆した粒子である。コアを構成する有機樹脂粒子は、空気中の湿分や、温度によって、軟化したり、べとついたりすることがないことが好ましい。
シリカ被覆有機樹脂粒子における有機樹脂粒子を構成する有機樹脂としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の表面を被覆するシリカ層を形成する材料としては、アルコキシシロキサン系化合物の縮合物などのアルコキシシリル基を有する化合物、特に、シロキサン系材料、具体的には、シリカゾル、コロイダルシリカ、シリカナノ粒子などのシリカ粒子などが好ましく挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の構成は、有機樹脂粒子表面にシリカ粒子が固体成分として付着している構成であっても、アルコキシシロキサン系化合物を縮合反応させて有機樹脂粒子表面にシロキサン系化合物層を形成した構成であってもよい。
シリカは必ずしも有機樹脂粒子表面全域を被覆している必要はなく、少なくとも有機樹脂粒子の全質量に対し、0.5質量%以上の量で表面を被覆していることが好ましい。すなわち、有機樹脂粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在することで、有機粒子表面における、共存する水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)との親和性の向上が達成され、外部応力を受けた場合でも粒子の脱落が抑制され、優れた耐キズ性、合紙なし積層時の剥離容易性を維持することができる。このため、本発明における「シリカ被覆」とは、このように有機樹脂粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在する状態をも包含するものである。
シリカの表面被覆状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)などによる形態観察により確認することができる。また、シリカの被覆量は、蛍光X線分析などの元素分析によりSi原子を検知し、そこに存在するシリカの量を算出することで確認することができる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法は特に制限はなく、シリカ粒子あるいはシリカ前駆体化合物を、有機樹脂粒子の原料となるモノマー成分と共存させて有機樹脂粒子形成と同時にシリカ表面被覆層を形成させる方法であってもよく、また、有機樹脂粒子を形成した後、シリカ粒子を物理的に表面に付着させ、その後、固定化する方法であってもよい。
以下に、シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法の1例を挙げる。まず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸などの水溶性高分子やリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機系懸濁剤などから適宜選択される懸濁安定剤を含む水中に、シリカと、原料樹脂(より具体的には、上記有機樹脂を構成する、懸濁重合が可能なモノマー、懸濁架橋が可能なプレポリマー、又は樹脂液などの原料樹脂)とを添加、撹拌、混合して、シリカと原料樹脂とを分散させた懸濁液を調製する。その際、懸濁安定剤の種類、その濃度、撹拌回転数などを調節することにより、目的の粒径を有する懸濁液を形成することができる。次いで、この懸濁液を加温して反応を開始させ、樹脂原料を、懸濁重合又は懸濁架橋させることにより樹脂粒子を生成させる。このとき、共存するシリカが重合或いは架橋反応により硬化する樹脂粒子に、特に、その物性に起因して樹脂粒子表面近傍に、固定化される。その後、懸濁液を固液分離し、洗浄により粒子に付着している懸濁安定剤を除去し、乾燥させる。かくして、シリカが固定化された所望粒径の略球状のシリカ被覆有機樹脂粒子が得られる。
このように、懸濁重合又は懸濁架橋の際に条件を制御して所望の粒径のシリカ被覆有機樹脂粒子を得ることもできるし、このような制御を厳密に行うことなくシリカ被覆有機樹脂粒子を生成した後、メッシュ濾過法などにより所望の大きさのシリカ被覆有機粒子を得ることもできる。
上記方法によりシリカ被覆有機粒子を製造する際の混合物における原料の添加量などについては、例えば、原料樹脂とシリカとの総量が100質量部の場合、まず、分散媒である水200質量部~800質量部に懸濁安定剤0.1質量部~20質量部を添加し、十分に溶解又は分散させ、その液中に、上記100質量部の原料樹脂とシリカとの混合物を投入し、分散粒子が所定の粒度になるように撹拌速度を調整しながら撹拌し、この粒度調整を行った後に液温を30℃~90℃に昇温し、1時間~8時間反応させる態様が好ましく挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法については、上記した方法はその1例であり、例えば、特開2002-327036号公報、特開2002-173410号公報、特開2004-307837号公報、及び、特開2006-38246号公報などに詳細に記載された方法により得られるシリカ被覆有機樹脂粒子も本発明に好適に使用することができる。
また、シリカ被覆有機樹脂粒子は市販品としても入手可能であり、具体的には、シリカ/メラミン複合粒子としては、日産化学工業(株)製オプトビーズ2000M,オプトビーズ3500M、オプトビーズ6500M、オプトビーズ10500M、オプトビーズ3500S、オプトビーズ6500Sが挙げられる。シリカ/アクリル複合粒子としては、根上工業(株)製アートパールG-200透明、アートパールG-400透明、アートパールG-800透明、アートパールGR-400透明、アートパールGR-600透明、アートパールGR-800透明、アートパールJ-7Pが挙げられる。シリカ/ウレタン複合粒子としては、根上工業(株)製アートパールC-400透明、C-800透明、P-800T、U-600T、U-800T、CF-600T、CF800T、大日精化工業(株)製ダイナミックビーズCN5070D、ダンプラコートTHUが挙げられる。
以上、シリカ被覆有機樹脂粒子を例として、本発明に用いられる有機樹脂粒子について説明したが、アルミナ、チタニア又はジルコニアで被覆された有機樹脂粒子についても、シリカの代りにアルミナ、チタニア又はジルコニアを用いることにより同様に実施することができる。
上記粒子の形状は、真球状形状が好ましいが、平板形状又は投影図が楕円形状となるような、いわゆる紡錘形状であってもよい。
態様1において、上記粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μmである。
粒子の平均粒子径は、体積平均粒径を意味し、体積平均粒径の測定は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定する。具体的には、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)を用いて測定する。
また、本発明において、特に断りのない限り、他の粒子についても、上記測定方法により平均粒径を測定するものとする。
なお、態様1において、最外層が画像形成層であり、画像形成層が平均粒子径が0.5~20μmである粒子を含む場合は、上記粒子は、上記画像記録層に含まれる上記粒子に含まれる。
態様1において、平均粒子径が0.5~20μmである粒子の面内密度は10,000個/mm以下であることが好ましい。面内密度は、より好ましくは100~5000個/mm、更に好ましくは100~3000個/mmである。
本発明における面内密度は、平版印刷版原版の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することによって確認することができる。具体的には走査型電子顕微鏡(SEM)で平版印刷版原版の表面を5箇所観察して粒子の個数をカウントし、観察視野面積mm当たりの粒子個数に変換し、その平均値を求めることにより算出することができる。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層は、平均粒子径が0.5~20μmである粒子に加えて、バインダーを含むことが好ましい。
バインダーとしては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,又はm-/p-混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂やレゾール樹脂、ピロガロール、アセトン樹脂、エポキシ樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。機上現像型平版印刷版原版の場合には、機上現像時に湿し水での溶解の懸念を防ぐために非水溶性の樹脂が好ましい。
また、上記バインダーとしては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン及びポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記態様1において、上記粒子及び上記バインダーがそれぞれ独立に、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン及びポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層は、上記粒子及びバインダー以外に他の成分を含んでもよい。他の成分としては、公知の添加剤が挙げられ、例えば、界面活性剤などが挙げられる。
画像記録層を有する側とは反対側における最外層の厚さは、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μm、更に好ましくは0.5~3μmである。
態様2における高分子化合物を主成分として含む複数の突起物を構成する高分子化合物としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p-クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m-/p-混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m-,p-,又はm-/p-混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂やレゾール樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、エポキシ樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物であることが好ましい。
中でも、脱離した突起物が画像記録層に移動した場合であっても現像性に優れる観点から、水溶性高分子がより好ましい。具体的に、例えば、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アクリル系樹脂共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号、特開2006-259137号の公報に記載の変性ポリビニルアルコールが好適である。
突起物の形状及び高さは、特に制限はないが、算術平均高さSaが0.3~20μmであることが好ましい。
ストライプ状の突起物(ストライプ塗膜)を形成する方法としては、特に制限はないが、バー塗布方式、インクジェット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、スプレー塗布方式、及び、スロットダイ塗布方式よりなる群から選ばれる少なくとも1種の方式によって粒子及び高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む組成物を塗布し容易に形成することができる。
ドット状の突起物(ドット塗膜)を形成する方法としては、特に制限はないが、スプレー塗布方式、インクジェット印刷方式、及びスクリーン印刷方式よりなる群から選ばれる少なくとも1種の方式によって粒子及び高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む組成物を塗布し容易に形成することができる。
破線状の突起物(破線塗膜)を形成する方法としては、特に制限はないが、インクジェット印刷方式、及びスクリーン印刷方式よりなる群から選ばれる少なくとも1種の方式によって粒子及び高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む組成物を塗布し容易に形成することができる。
態様2における最外層に含まれるバインダーとしては、上記突起物に含まれる高分子化合物と同様の高分子化合物が挙げられ、好ましい態様も同様である。
態様2において、突起物の脱離を防ぐ観点からは、最外層に含まれるバインダーと、突起物に含まれる高分子化合物とが、同種の樹脂を含むことが好ましい。ここで、樹脂が同種であるとは、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンといった樹脂種が同種であることを意味し、樹脂中のすべての構成単位が同一であることを要しない。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版は、端部に、ダレ形状を有する。
図3は、平版印刷版原版の端部の断面形状を示す模式図である。
図3において、平版印刷版原版1はその端部にダレ2を有している。平版印刷版原版1の端面1cの上端(ダレ2と端面1cとの境界点)と、画像記録層面(保護層が形成されている場合には保護層面)1aの延長線との距離Xを「ダレ量」といい、平版印刷版原版1の画像記録層面1aがダレ始める点と端面1cの延長線上との距離Yを「ダレ幅」という。
端部のダレ量は25μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。ダレ量の上限は、端部表面状態の悪化による機上現像性の劣化を防止する観点から150μmが好ましい。機上現像性が劣化すると残存する画像記録層にインキが付着しエッジ汚れ発生の原因となる。ダレ量が少な過ぎると、端部に付着したインキがブランケットに転写しやすくなりエッジ汚れ発生の原因となる場合がある。ダレ量の範囲が25~150μmの場合、ダレ幅が小さいと、端部におけるクラックの発生が増大し、そこに印刷インキが溜まることによりエッジ汚れの原因となる。このような観点から、ダレ幅は70~300μmの範囲が好ましく、80~250μmの範囲がより好ましい。なお、上記ダレ量とダレ幅の範囲は、平版印刷版原版1の支持体面1bのエッジ形状には関わらない。
通常、平版印刷版原版1の端部において、画像記録層と支持体との境界B、及び、支持体面1bも、画像記録層面1aと同様に、ダレが発生している。
好ましい一態様として、上記ダレ形状が、ダレ量Xが25~150μm、ダレ幅Yが70~300μmのダレ形状であることが好ましい。
上記ダレ形状を有する端部の形成は、例えば、平版印刷版原版の裁断条件を調整することにより行うことができる。
具体的には、平版印刷版原版の裁断時に使用するスリッター装置における上側裁断刃と下側裁断刃の隙間、噛み込み量、刃先角度などを調整することにより行うことができる。
例えば、図4は、スリッター装置の裁断部の1例を示す概念図である。スリッター装置には、上下一対の裁断刃10、20が左右に配置されている。裁断刃10、20は円板上の丸刃からなり、上側裁断刃10a及び10bは回転軸11に、下側裁断刃20a及び20bは回転軸21に、それぞれ同軸上に支持されている。上側裁断刃10a及び10bと下側裁断刃20a及び20bとは、相反する方向に回転される。平版印刷版原版30は、上側裁断刃10a、10bと下側裁断刃20a、20bとの間を通されて所定の幅に裁断される。スリッター装置の裁断部の上側裁断刃10aと下側裁断刃20aとの隙間及び上側裁断刃10bと下側裁断刃20bとの隙間を調整することによりダレ形状を有する端部を形成することができる。
(親水化層)
本発明の平版印刷版原版は、端部から1cm以内の領域に親水化層を有することが好ましい。
親水化層は、例えば、親水化剤を含有する親水化塗布液を画像記録層の一部の領域と重なるように塗布することにより形成される。
以下、親水化塗布液が塗布された領域を「塗布領域」ともいう。
上記支持体上の一部の領域とは、支持体上の画像記録層側の一部の領域であり、支持体の全面に塗布されていないことを意味している。上記のように親水化塗布液を支持体の全面ではなく、一部の領域に塗布することにより、画像記録層の密着性及び耐刷性の低下を防ぐことができる。また、通常画像部のない端部から1cm以内の領域の全て又は一部に塗布することにより、画像部へのダメージを防止することができる。
「端部から1cm以内の領域」とは、端部から1cm以内の領域の全て又は一部を表す。
本発明において用いられる親水化塗布液(以下、単に「塗布液」ともいう。)は、後述する親水化剤及びその他の成分を水に溶解して調製する。
親水化塗布液の塗布方法としては、ダイコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、スプレー法等の公知の方法を利用することができるが、塗布液を支持体上の一部に塗布する必要がある点から、インクジェット法、又は、ディスペンサー法が好ましい。
本発明において用いられる親水化塗布液の塗布量は、0.1~2.0g/mが好ましく、0.2~1.0g/mがより好ましい。塗布量がこの範囲であれば、良好なエッジ汚れ防止性能を有する平版印刷版原版を得ることができる。
また、塗布領域は裁断後の平版印刷版原版の対向する2辺にあることが好ましい。
親水化塗布液は、支持体の端部から塗布してもよいし、支持体の端部以外の位置に塗布してもよく、これらの塗布位置を組み合わせてもよい。
また、支持体の端部から塗布する場合と、支持体の端部以外の位置に塗布する場合のどちらの場合でも、一定の幅を持った帯状に塗布することが好ましい。
好ましい塗布幅は、1~50mmである。塗布幅の塗布領域上を裁断し、裁断後の端部より1cm以内に塗布領域が存在することが好ましい。裁断は、親水化塗布液の塗布領域上の1箇所を裁断してもよいし、親水化塗布液の同一塗布領域上の2箇所で裁断してもよい。
〔親水化剤を含有する塗布液〕
本発明において用いられる親水化剤を含有する塗布液(上記のように、「親水化塗布液」ともいう。) は必須成分として親水化剤を含有する。好ましい任意成分として、可塑剤、画像記録層を膨潤するための有機溶剤などがある。その他の任意成分としては防腐剤、消泡剤などがある。
これらの親水化塗布液は水溶液であってもよく、油相成分と水相成分とを乳化した液体であってもよいが、水溶液であることが好ましい。
また、本発明において用いられる親水化塗布液は、親水化剤としてリン酸化合物及び/又はホスホン酸化合物を含むことが好ましく、親水化剤としてリン酸化合物及び/又はホスホン酸化合物並びに界面活性剤を含むことがより好ましい。
更に、上記2つの態様において、少なくともリン酸化合物を含むことが好ましい。
また、親水化塗布液の粘度は0.5~1,000mPa・sであることが好ましく、1~100mPa・sであることがより好ましい。粘度が上記範囲内であると、ビード破断が起きにくくなり、塗布開始時の塗り付けが良好となる。
親水化塗布液の表面張力は25~70mN/mであることが好ましく、40~65mN/mであることがより好ましい。表面張力が上記範囲内であると、塗布幅の制御がしやすく、ビード破断が起きにくくなる。
<親水化剤>
-界面活性剤-
本発明において用いられる親水化塗布液の親水化剤としては、界面活性剤を使用することが好ましい。本発明に使用できる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた、少なくとも一つの界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤がより好ましい。上記態様によれば、塗布性に優れた親水化塗布液を得ることができる。
なお、フッ素系、シリコーン系等のアニオン性、非イオン性界面活性剤(典型的には、フッ素系又はシリコーン系のアニオン性又は非イオン性界面活性剤)は、本発明におけるアニオン性又は非イオン性界面活性剤としては好ましくない。これらの界面活性剤を使用すると親水化塗布液の塗布性が劣り好ましくない。
上記の界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、親水化塗布液の全質量に対し0.0 1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量% であることがより好ましく、1.0~10質量%であることが更に好ましい。界面活性剤の使用量が上記範囲内である場合、機上現像性が促進される。
その他、カチオン性界面活性剤の従来公知のものを併用することができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。
-リン酸化合物-
本発明において用いられる親水化塗布液の親水化剤としては、リン酸化合物を使用することが好ましい。リン酸化合物としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好適に使用できる。
本発明に使用する親水化塗布液におけるリン酸化合物の含有量は、親水化塗布液の全質量に基づいて、0.5~3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~2.5質量%である。この範囲内であれば、塗布後の結晶析出抑制に優れた親水化塗布液を得ることができる。
リン酸化合物としてリン酸モノエステル化合物、リン酸ジエステル化合物が使用できる。
本発明に用いられるリン酸化合物としては、高分子化合物を用いることが好ましく、リン酸モノエステル基を有する高分子化合物がより好ましい。上記態様によれば、支持体への塗布性に優れた親水化塗布液が得られる。
上記高分子化合物としては、分子内にリン酸エステル基を有する単量体の1種以上からなる重合体又は、リン酸エステル基を含む1 種以上の単量体及びリン酸エステル基を含まない1種以上の単量体との共重合体、リン酸エステル基を有さない高分子に後からリン酸エステル基を導入した高分子等が挙げられる。
リン酸エステル基を有する単量体としては、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-メタクリロイルオキシポリオキシエチレングリコール) アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、3-クロロ-2-アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、アリルアルコールアシッドホスフェート、などが挙げられる。上記単量体の中でも、エッジ汚れ防止性能の観点から、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートが好ましく用いられる。代表的な製品としては、ライトエステルP-1M(共栄化学(株)製)、ホスマーPE(ユニケミカル(株)製)が挙げられる。
上記高分子化合物としては、リン酸エステル基を有する単量体の単独重合体、共重合体のどちらも用いられる。共重合体としては、例えば、リン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体や、リン酸エステル基を有する単量体とリン酸エステル基とアニオン性基のどちらも含まない単量体との共重合体が使用できる。
上記高分子化合物の好ましい態様は、分子内にリン酸エステル基を有するモノマー単位の割合が、1~100モル%、より好ましくは5~100モル%、更に好ましくは10~100モル%の、共重合体又は単独重合体である。
リン酸エステル基とアニオン性基のどちらも含まない単量体としては、親水性基を有する単量体が好ましい。親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、が挙げられ、中でも、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミド基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1~20個有するアルキレンオキシド構造がより好ましく、エチレンオキシド単位を2~10個有するポリエチレンオキシド構造が更に好ましい。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリ(オキシエチレン)メタクリレート、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、等が挙げられる。
また、リン酸化合物として、上記分子内にリン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体を用いることが好ましい。上記態様によれば、塗布性が高く、エッジ汚れ防止性能が高い親水化塗布液が得られる。
上記分子内にリン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体中、分子内にリン酸エステル基を有するモノマー単位の割合は、全モノマー単位に対し、2~99モル% であることが好ましく、2~80モル%であることがより好ましく、5~70モル% であることが更に好ましく、5~50モル% であることが特に好ましい。
上記高分子化合物の重量平均分子量は、5,000~1,000,000が好ましく、7,000~700,000がより好ましく、10,000~500,000が特に好ましい。
-ホスホン酸化合物-
本発明において用いられる親水化塗布液の親水化剤としては、ホスホン酸化合物を使用することが好ましい。ホスホン酸化合物としては、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、i-プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2 - ヒドロキシエチルホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルホスホン酸メチル、エチルホスホン酸メチル、2-ヒドロキシエチルホスホン酸メチルなどのアルキルホスホン酸モノアルキルエステル及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等のアルキレンジホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。
中でも、ポリビニルホスホン酸を用いることが好ましい。
本発明に使用する親水化塗布液におけるホスホン酸化合物の含有量は、親水化塗布液の全質量に基づいて、0.5~3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~2.5質量%である。この範囲内であれば、塗布後の結晶析出抑制に優れた親水化塗布液を得ることができる。
本発明に用いられるホスホン酸化合物としては、高分子化合物が好ましい。上記態様により、支持体への塗布性に優れた親水化塗布液が得られる。
ホスホン酸化合物として好ましい高分子化合物は、ポリビニルホスホン酸の他、分子内にホスホン酸基又はホスホン酸モノエステル基を有する1種以上の単量体からなる重合体又は、ホスホン酸基又はホスホン酸モノエステル基を有する1種以上の単量体及びホスホン酸基又はホスホン酸モノエステル基を含まない1種以上の単量体との共重合体、等が挙げられる。
ホスホン酸基を有する単量体としては、ビニルホスホン酸、エチルホスホン酸モノビニルエステル、アクリロイルアミノメチルホスホン酸、3-メタクリロイルオキシプロピルホスホン酸などが挙げられる。
上記高分子化合物としては、ホスホン酸エステル基を有する単量体の単独重合体、共重合体のどちらも用いられる。共重合体としては、例えば、ホスホン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体や、リン酸エステル基を有する単量体とリン酸エステル基とアニオン性基のどちらも含まない単量体との共重合体が使用できる。
ホスホン酸エステル基とアニオン性基のどちらも含まない単量体としては、親水性基を有する単量体が好ましい。親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、が挙げられ、中でも、ヒドロキシ基、アルキレンオキシド構造、アミド基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1~20個有するアルキレンオキシド構造がより好ましく、エチレンオキシド単位を2~10個有するポリエチレンオキシド構造が更に好ましい。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリ(オキシエチレン) メタクリレート、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、などが挙げられる。
上記高分子化合物の好ましい態様は、分子内にリン酸エステル基を有するモノマー単位の割合が、1~100モル%、より好ましくは3~100モル%、更に好ましくは5~100モル%の、共重合体あるいは単独重合体である。
また、ホスホン酸化合物として、上記分子内にホスホン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体を用いることもできる。上記態様によれば、塗布性が高く、エッジ汚れ防止性能が高い親水化塗布液が得られるため好ましい。
上記分子内にホスホン酸エステル基を有する単量体と上記アニオン性基を有する単量体との共重合体中、分子内にホスホン酸エステル基を有するモノマー単位の割合は、全モノマー単位に対し、2~99モル%であることが好ましく、2~80モル% であることがより好ましく、5~70モル%であることが更に好ましく、10~50モル%であることが特に好ましい。
上記高分子化合物の重量平均分子量は、5,000~1,000,000が好ましく、7,000~700,000がより好ましく、10,000~500,000が特に好ましい。
-水溶性樹脂-
本発明において用いられる親水化塗布液の親水化剤としては、水溶性樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂としては、多糖類として分類される水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
多糖類としては、澱粉誘導体( 例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉、サイクロデキストリン)、セルロース類( 例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)、その他、カラギーナン、アルギン酸、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、大豆多糖類などを挙げることができる。
中でもデキストリン、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉といった澱粉誘導体、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類などが好ましく用いられる。
これらの水溶性樹脂は2種以上組み合わせても使用でき、親水化塗布液の全質量に基づいて好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%の範囲で含有させることができる。この範囲内で、親水化塗布液が高粘性のため塗布しにくくなることなく、良好な親水化保護膜が得られる。
本発明において用いられる親水化塗布液の親水化剤は、1種単独で使用してもよいが、2種以上の親水化剤を組み合わせて使用することが好ましく、1~4種の親水化剤を組み合わせて使用することがより好ましく、1~3種の親水化剤を組み合わせて使用することが更に好ましく、2種の親水化剤を組み合わせて使用することが特に好ましい
複数の親水化剤を組み合わせて使用する場合、界面活性剤とリン酸化合物又はホスホン酸化合物とを組み合わせて使用することが好ましく、アニオン性界面活性剤とリン酸化合物又はホスホン酸化合物とを組み合わせて使用することがより好ましい。
また、親水化剤を1種単独で使用する場合は、分子内にリン酸エステル基又はホスホン酸エステル基を有する単量体と分子内にアニオン性基を有する単量体との共重合体を使用することが好ましく、分子内にリン酸エステル基を有する単量体と分子内にアニオン性基を有する単量体との共重合体を使用することがより好ましく、分子内にリン酸エステル基を有する単量体と分子内にスルホン酸基を有する単量体との共重合体を使用することが更に好ましい。
<有機溶剤>
また、本発明において用いられる親水化塗布液は、更に有機溶剤を含有することが好ましい。
本発明で用いられる有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、及び炭化水素系溶剤を挙げることができる。中でもアルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤が好ましい。
特に好ましいのはベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フルフリルアルコール、グリセリンである。
炭化水素系溶剤としては、石油留分の芳香族、脂肪族化合物(ミネラルスピリット)、スクワラン等が挙げられる。
有機溶剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。有機溶剤の使用量は親水化塗布液の全質量に基づいて、0.5~10質量%が好ましく、より好ましくは1~5質量%である。この範囲内であれば、親水化塗布液塗布部分がべたつくことなく、良好な画像記録層への浸透性に優れる。
<可塑剤>
本発明において用いられる親水化塗布液には可塑剤を含有させることができる。可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル) フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸ジエステル類、例えばジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2-エチルヘキシル) セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えばエポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド類、例えばトリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェートなどの燐酸エステル類、例えば安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類などの凝固点が15℃以下の可塑剤が含まれる。
可塑剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。可塑剤の使用量は親水化塗布液の全質量に基づいて、0~10質量% が好ましく、より好ましくは0~5質量%である。
<その他の任意成分>
本発明に用いる平版印刷版原版の端部を処理する親水化塗布液は、上記成分の他に、硝酸塩、硫酸塩などの無機塩、防腐剤、消泡剤等を含有できる。無機塩としては、例えば硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケル等が挙げられる。
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4-イソチアゾリン-3-オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン-3-オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-エタノール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-プロパノール等が挙げられる。
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、界面活性剤非イオン系のHLB5以下等の化合物を使用することができる。
[印刷版の作製方法]
本発明に係る印刷版の作製方法は、本発明に係る平版印刷版原版を画像露光する工程(露光工程)、及び、画像露光後の平版印刷版原版を印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくとも一方により、画像記録層の未露光部を除去する工程(機上現像工程)を含む。
〔露光工程〕
画像露光は、デジタルデータを赤外線レーザーなどにより走査露光する方法により行うことが好ましい。
露光光源の波長は、750~1,400nmが好ましく用いられる。750~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式などのいずれでもよい。
露光工程はプレートセッターなどにより公知の方法で行うことができる。また、露光装置を備えた印刷機を用いて、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で露光を行ってもよい。
〔機上現像工程〕
機上現像工程においては、画像露光後の平版印刷版原版に何らの現像処理を施すことなく、印刷機上において印刷インキ及び湿し水を供給して印刷を開始すると、印刷途上の初期の段階で平版印刷版原版の未露光部分が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出し非画像部が形成される。印刷インキ及び湿し水としては、公知の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が用いられる。最初に平版印刷版表面に供給されるのは、印刷インキでも湿し水でもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給することが好ましい。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
本発明に係る印刷版の作製方法は、上記工程以外に、公知の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、各工程の前に平版印刷版原版の位置や向きなどを確認する検版工程や、機上現像工程の後に、印刷画像を確認する確認工程などが挙げられる。
[構造体]
また、本発明は以下の構造体にも関する。
本発明に係る構造体は、積載台と、上記した本発明に係る機上現像型平版印刷版原版を複数枚積層してなる機上現像型平版印刷版原版積層体と、天板とをこの順で備える構造体であって、
構造体は、更に、
上記積載台、上記構造体、及び、上記天板を結束する結束バンドを有している。
本発明の好ましい実施形態に係る構造体を、以下、図面を参照して説明する。
図7の概略側面図、及び、図8の概略斜視図に示すように、本発明の実施形態に係る構造体100は、積載台101と、積載台101の上に載置された包装体110と、包装体110の上に配置された天板106とを有している。
ここで、包装体110は、後に詳述するように、機上現像型平版印刷版原版積層体が包装材により包装されたものである。
積載台(スキッドともいう)101は、略長方形状の積載板101aと、積載板101aの下面に取り付けられた複数の脚部101bとで構成されている。
これにより、複数の脚部の間には、フォークリフトやハンドリフトのフォークを挿入するための空間を形成することができる。また、この空間に結束バンド107を挿入することができるので、以下に説明する結束バンド107による各部材の結束を容易に行うことができる。
脚部101bの形状は特に限定されるものではなく、剛直な棒状部材(例えば、鉄)を折り曲げた形状や、ブロック形状などを挙げることができる。
天板106は、特に限定されないが、剛直な部材で構成されていることが好ましい。
このような剛直な部材は変形し難く、変形による応力集中を抑制することができるため、好ましい。
天板は、具体的には、ステンレス板(SUS板)、木材等が好ましく、矩形の板状に形成されている。
また、天板の幅寸法は、平版印刷版原版積層体の幅寸法と同じか、あるいは若干大きく形成されていることが好ましい。天板における、平版印刷版原版のサイズに対するはみ出し部が小さい方が、変形しにくいため、好ましい。
天板の厚みは特に限定されないが、通常、5~30mmであり、好ましくは、7~12mmである。
なお、天板106は、矩形の板状で形成されているが、更に例えば短手方向に沿って隆起した天板補強部106aを有している。なお、天板補強部106aは、天板106と一体で構成されていることが好ましい。
このように天板補強部を有することで、結束バンドで結束した際に、天板がたわむのを防止することができ、天板の形状を変化するのを防止することができるため、好ましい。
天板補強部の厚みは特に限定されないが、通常、10~40mmであり、好ましくは、20~30mmである。
また、天板の長手方向における天板補強部の長さは特に限定されない。
積載台101、包装体110、及び、天板106は、結束ベルト107により結束されている。より具体的には、積載台101と、天板106とで、包装体110を挟み込むように結束バンド107を巻き付けることにより、これらの部材を結束しており、より詳細には、天板106の天板補強部106aに沿って結束バンドを巻き付けている。
本発明の構造体は、機上現像型平版印刷版原版を複数枚積層してなる機上現像型平版印刷版原版積層体を有するが、本実施形態によれば、機上現像型平版印刷版原版積層体は、図7及び図8に示すように、包装材で包装された包装体110の形態をなしている。
本発明に係る機上現像型平版印刷版原版積層体(以下、平版印刷版原版積層体ともいう)は、本発明に係る平版印刷版原版を積層してなる積層体であり、本発明に係る平版印刷版原版を複数枚積層してなり、上記画像記録層を有する面における最外層と、上記画像記録層を有する側と反対側における最外層とを直接接触させて積層させた積層体であることが好ましい。
上述の通り、画像記録層を有する側とは反対側における最外層表面は、バックコート層を有する場合は、バックコート層の表面であり、支持体の画像記録層を有する側とは反対側に層を有さない場合には、支持体表面である。
本発明に係る平版印刷版原版積層体は、本発明の係る平版印刷版原版を、合紙を介して、又は、合紙を介さずに直接、複数(通常、2~500枚)重ねてなる積層体である。
次に、機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体110を形成する一態様について、図9~図13を用いて説明する。
まず、図9に示すように、積載台101の上に平版印刷版原版積層体103を設置して、平版印刷版原版積層体の周りに、長尺状の包装材104を用意する。
図9に示すように、平版印刷版積層体103は、平版印刷版原版103aが複数枚積層されたものである。
図10に示すように、上記平版印刷版原版積層体103の周りに、上記包装材104を巻き付ける。次に、図11に示すように、上記平版印刷版原版積層体103の周りに、上記包装材104を密着させ、包装材の短手方向の端部と、包装材の短手方向の他の端部とが重なるように、包装材104を短手方向に沿って切断する。この状態において、長尺状の包装材104の短手方向長さは、平版印刷版原版積層体103の高さよりも大きくなっているため、包装材104には、2つの短手方向の折り込み部104aと2つの長手方向の折り込み部104bとが形成されている。
次に、図12に示すように、2つの短手方向の折り込み部104aと2つの長手方向の折り込み部104bとをそれぞれ、平版印刷版原版積層体103の上面に向かって折り込み、折り込まれ得た部分にテープ110aを貼付して、平版印刷版原版積層体の包装体110を形成する(この包装方法を「タイプ1」という)。
また、図11に示す包装材104は、別の方法による折り込みと、テープ110aによる貼付とを実施してもよい。
具体的には、図11に示す内装材104が切断された平版印刷版原版積層体103において、図13に示すように、まず、2つの長手方向の折り込み部104bをそれぞれ、平版印刷版原版積層体103の上面に向かって折り込み、折り込まれた部分にテープ110aを貼付する。次に、2つの短手方向の折り込み部104aをそれぞれ、平版印刷版原版積層体103の上面とは離れる方向に折りたたみ、折りたたまれた部分にテープ110aを貼付して、平版印刷版原版積層体の包装体110を形成する(この包装方法を「タイプ2」という)。
タイプ1、タイプ2のいずれの包装方法も使用することができるが、タイプ1は、包装材104の折り目が全て上側を向いており、包装体110の上面に包装材104の折り目が集中して存在する。この場合、構造体100を製造する際に、包装体110の上面に応力が集中し易くなるとともに、構造体100を搬送する際に、平版印刷版原版積層体103の上面が空気に触れる虞れがある。したがって、タイプ2が示すように、包装材104の折り目を包装体110の側面に配置し、包装体110の上面への応力を分散させることで、応力を分散させることができるため、タイプ2が好ましい。
上記包装材104としては、特に限定されないが、黒色ポリエチレンフィルム、又は、クラフト紙にアルミニウム箔もしくはポリエチレンフィルムをラミネートしたものなどが使用される。テープ110aは、特に限定されないが、紙テープ及びクラフトテープなどが挙げられる。
上記結束バンドとしては、上記積載台、上記構造体、上記天板、及び、上記緩衝材を結束することができるバンドであれば、特に限定されないが、例えば、エステルバンド、ラッシングベルトなどが挙げられる。
また、結束バンドの幅は特に限定されないが、天板の長手方向の長さ、又は天板の長手方向における天板補強部の長さに応じて、適宜選択することができる。
図7、図8では、使用される結束バンドは3本であるが、構造体に使用されるベルトの本数は特に限定されない。
図7、図8では、天板補強部は3つ存在するが、上記天板が天板補強部を有する場合、使用される天板補強部の数は特に限定されない。
図7、図8では、緩衝材は記載されていないが、好ましい一態様として、(i)上記天板と上記積層体との間の位置、及び、(ii)上記天板を基準として上記積層体とは反対側の位置の少なくとも一方、に緩衝材を設けることが好ましい。
具体的には、上記構造体は、更に、
(i)上記天板と上記積層体との間の位置、及び、(ii)上記天板を基準として上記積層体とは反対側の位置の少なくとも一方、に設けられた緩衝材を有し、
上記結束バンドは、上記積載台、上記構造体、及び、上記天板、及び、上記緩衝材を結束する構造体であることが好ましい。
上記のように、上記位置(i)及び上記位置(ii)の少なくとも一方に緩衝材が設けられているので、上記のバンドからの結束力をさらに分散して、積層体に伝えることができるので、バンド跡汚れを更に低減しやすいものとなる。
緩衝材としては、応力を分散することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、紙、ラミネート紙、発泡スチロール、又は、ポリプロピレン、ポリエチレン、もしくはポリウレタンを用いた発泡ブロック、又はスポンジ等が好適に使用できる。
上記緩衝材のサイズは、特に限定されないが、包装体110(平版印刷版原版積層体103)の上面を網羅できる大きさであることが好ましい。
緩衝材の厚みは特に限定されないが、通常、0.01~30mmであり、好ましくは、0.5~10mmである。
なお、緩衝材を上記位置(i)に配置してもよく、上記(ii)に配置してもよい。上記位置(ii)に、すなわち、天板106の上に配置しても良い。この場合、結束バンド107は緩衝材に接触して、緩衝材を押圧することになるが、結束ベルト107からの結束力は、緩衝材にて分散された上で、積層体に伝わるため、緩衝材を上記位置(i)に配置した場合と同様の効果を発現することができる。
あるいは、緩衝材を上記位置(i)及び上記位置(ii)の両方に配置しても良い。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。バインダーポリマーにおいて、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
〔実施例1~15及び、比較例1~6〕
<支持体1の作製>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム板(アルミニウム合金板)に対し、下記(J-a)~(J-m)の処理を施し、支持体1を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(J-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
図5に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図5において、31はアルミニウム板、32及び34はローラ状ブラシ(本実施例においては、束植ブラシ)、33は研磨スラリー液、35、36、37及び38は支持ローラである。
機械的粗面化処理では、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は、300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(J-b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、10g/mであった。
(J-c)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸の廃液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-d)硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図1に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図2に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。
(J-e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%及びアルミニウムイオン濃度2.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。アルミニウム溶解量は、3.5g/mであった。
(J-f)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温30℃の硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-g)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図1に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図2に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。
(J-h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度60℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/mであった。
(J-i)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/L)の水溶液をアルミニウム板にスプレーにて4秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-j)第1段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度30A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量0.3g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(J-k)ポアワイド処理
陽極酸化処理したアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に、40℃で3秒間浸漬し、ポアワイド処理を行った。
(J-l)第2段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度13A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量2.1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(J-m)親水化処理
非画像部の親水性を確保するため、アルミニウム板を、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液に50℃で7秒間浸漬してシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/mであった。マイクロポアの平均径は30nmであった。
支持体1の陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*の値は72.3であった。
<支持体2の作製>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム板(アルミニウム合金版)に対し、下記(F-a)~(F-g)の処理を施し、支持体2を作製した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(F-a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
(F-b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温30℃の硫酸濃度150g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(F-c)電気化学的粗面化処理
塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を空けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。
(F-d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。
(F-e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
酸性水溶液として、液温35℃の硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けてデスマット処理を行った。
(F-f)第1段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液として150g/Lリン酸水溶液を用い、液温35℃、電流密度4.5A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
図6に示す陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図6中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(-)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424及びローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424及び428により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
(F-g)第2段階の陽極酸化処理
図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度13A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量2.1g/mの陽極酸化皮膜を形成した。その後、スプレーによる水洗を行った。支持体2のマイクロポアの平均径は40nmであった。
支持体2の陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*の値は83.7であった。
<下塗り層1の形成>
支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層1を形成した。
(下塗り層塗布液(1))
・下塗り層用化合物(2)(下記構造) 0.13部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.05部
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 0.05部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.03部
・水 61.39部
Figure 2022157763000017
上記下塗り層用化合物(2)における各構成単位の括弧の右下の数値は、質量比を表し、エチレンオキシ単位の括弧の右下の数値は、繰り返し数を表す。
<下塗り層2の形成>
支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(2)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層2を形成した。
(下塗り層塗布液(2))
上記下塗り層塗布液(1)に、リン酸を0.50部追加して調製した。
<画像記録層1の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層1を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(1))
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(下記構造) 0.661部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(下記構造) 1.044部
・赤外線吸収剤(1)(下記構造) 0.0278部
・ボレート化合物(1)(テトラフェニルホウ酸ナトリウム)0.015部
・重合開始剤(1)(下記構造) 0.2348部
・重合性化合物(1)(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA-9300 40% 2-ブタノン溶液、新中村化学工業(株)製)
0.2875部
・低分子親水性化合物(1)(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
0.0287部
・低分子親水性化合物(2)(トリメチルグリシン) 0.0147部
・アニオン性界面活性剤1 30質量%水溶液(下記構造) 0.25部
・紫外線吸収剤(1)(TINUVIN405、BASF(株)社製)(下記構造)
0.04部
・フッ素系界面活性剤(1)(下記構造) 0.004部
・ホスホニウム化合物(1)(下記構造) 0.020部
・2-ブタノン 5.346部
・1-メトキシ-2-プロパノール 3.128部
・メタノール 0.964部
・純水 0.036部
(ミクロゲル液(1))
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 1.212部
・1-メトキシ-2-プロパノール 1.631部
(ミクロゲル(1)の作製)
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
イソホロンジイソシアネート17.78部(80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)7.35部(20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成(株)製)0.043部を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
Figure 2022157763000018
<ミクロゲル(1)の調製>
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20部を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を21.8質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
(油相成分)
(成分1)酢酸エチル 12.0部
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製)
3.76部
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として)
15.0部
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液 11.54部
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液 4.42部
(水相成分)
蒸留水 46.87部
<バインダーポリマー(6)の合成>
三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.0gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.1g、メチルメタクリレート:21.8g、メタクリル酸:14.2g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:2.15g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):0.38g、1-メトキシ-2-プロパノール:54gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。V-601:0.04g、1-メトキシ-2-プロパノール:4gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:137.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.24g、グリシジルメタクリレート:26.0g、テトラエチルアンモニウムブロミド:3.0gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、1-メトキシ-2-プロパノール:99.4gを加えて希釈した。
こうして得られたバインダーポリマー(6)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は3.5万であった。
Figure 2022157763000019
<バインダーポリマー(7)の合成>
三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.00gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.8g、メチルメタクリレート:2.8g、メタクリル酸:25.0g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.4g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):1.1g、1-メトキシ-2-プロパノール:55gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。2時間後、V-601:0.11g、1-メトキシ-2-プロパノール:1gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:177.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.28g、グリシジルメタクリレート:46.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド:3.4gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、4-メトキシフェノールを0.06g、1-メトキシ-2-プロパノール:114.5gを加えて希釈した。
こうして得られたバインダーポリマー(7)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は1.5万であった。
Figure 2022157763000020
Figure 2022157763000021
Figure 2022157763000022

<画像記録層2の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層2を形成した。
画像記録層塗布液(2)は下記感光液(2)及びミクロゲル液(2)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(2))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(2)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.770部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.218部
(ミクロゲル液(2))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(2)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.909部
・1-メトキシ-2-プロパノール 1.934部
<画像記録層3の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層3を形成した。
画像記録層塗布液(3)は下記感光液(3)及びミクロゲル液(3)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(3))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(3)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.881部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.394部
(ミクロゲル液(3))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(3)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.606部
・1-メトキシ-2-プロパノール 2.237部
<画像記録層4の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(4)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層4を形成した。
画像記録層塗布液(4)は下記感光液(4)及びミクロゲル液(4)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(4))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(4)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.994部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.573部
(ミクロゲル液(4))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(4)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.303部
・1-メトキシ-2-プロパノール 2.540部
<画像記録層5の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(5)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層5を形成した。
画像記録層塗布液(5)は下記感光液(5)及びミクロゲル液(5)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(5))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(5)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.052部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.664部
(ミクロゲル液(5))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(5)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.152部
・1-メトキシ-2-プロパノール 2.691部
<画像記録層6の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(6)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層6を形成した。
画像記録層塗布液(6)は下記感光液(6)及び上記ミクロゲル液(3)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(6))
上記感光液(3)において、リン酸(0.050部)を加えたものを感光液(6)とした。
<画像記録層C1の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(C1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層C1を形成した。
画像記録層塗布液(C1)は下記感光液(C1)を用いた。
(感光液(C1))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(C1)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.112部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.760部
<画像記録層C2の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(C2)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層C2を形成した。
画像記録層塗布液(C2)は下記感光液(C2)及びミクロゲル液(C2)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(C2))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(C2)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.084部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.715部
(ミクロゲル液(C2))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(C2)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.030部
・1-メトキシ-2-プロパノール 2.813部
<画像記録層C3の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(C3)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層C3を形成した。
画像記録層塗布液(C3)は下記感光液(C3)及びミクロゲル液(C3)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(C3))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(C3)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.088部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.721部
(ミクロゲル液(C3))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(C3)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.061部
・1-メトキシ-2-プロパノール 2.782部
<画像記録層C4の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(C4)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層C4を形成した。
画像記録層塗布液(C4)は下記感光液(C4)及びミクロゲル液(C4)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(C4))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(C4)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.073部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 1.697部
(ミクロゲル液(C4))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(C4)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 0.091部
・1-メトキシ-2-プロパノール 2.752部
<画像記録層C5の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(C5)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層C5を形成した。
画像記録層塗布液(C5)は下記感光液(C5)及びミクロゲル液(C5)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(C5))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(C5)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.616部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.975部
(ミクロゲル液(C5))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(C5)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 1.334部
・1-メトキシ-2-プロパノール 1.510部
<画像記録層C6の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(C6)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層C6を形成した。
画像記録層塗布液(C6)は下記感光液(C6)及びミクロゲル液(C6)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(C6))
上記感光液(1)において、バインダーポリマー(6)、及びバインダーポリマー(7)の含有量を以下のように変更したものを感光液(C6)とした。
・バインダーポリマー(6) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.282部
・バインダーポリマー(7) 23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液(上記構造) 0.447部
(ミクロゲル液(C6))
上記ミクロゲル液(1)において、ミクロゲル(1)、及び1-メトキシ-2-プロパノールの含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(C6)とした。
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%) 2.243部
・1-メトキシ-2-プロパノール 0.600部
<画像記録層7の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(7)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層7を形成した。
画像記録層塗布液(7)は下記感光液(7)及びミクロゲル液(7)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
〔感光液(7)〕
・バインダーポリマー(1)〔下記構造、Mw:55,000、n:2(EO単位数)〕:0.320部
・赤外線吸収剤(1)〔上記構造〕:0.020部
・ボレート化合物(1) テトラフェニルホウ酸ナトリウム:0.010部
・重合開始剤(1)〔上記構造〕:0.162部
・ラジカル重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(NKエステルA-9300、新中村化学(株)製):0.192部
・アニオン性界面活性剤1〔上記構造〕:0.050部
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)〔上記構造〕:0.055部
・感脂化剤 ベンジル-ジメチル-オクチルアンモニウム・PF塩:0.018部
・アンモニウム基含有ポリマー(1)〔下記構造、Mw:50,000、還元比粘度 45ml/g〕:0.0534部
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記構造〕:0.008部
・2-ブタノン:1.091部
・1-メトキシ-2-プロパノール:8.609部
〔ミクロゲル液(7)〕
・ミクロゲル(7)(固形分濃度15.0質量%):1.696部
・蒸留水:1.147部
Figure 2022157763000023
上記のミクロゲル(7)の合成法は、以下に示す通りである。
<ミクロゲル(7)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD-110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩(竹本油脂(株)製、パイオニンA-41C)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA-205)の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分撹拌後、50℃で3時間撹拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15.0質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを上記ミクロゲル(7)とした。ミクロゲルの体積平均粒子径を上記ミクロゲル(1)と同様に光散乱法により測定したところ、0.2μmであった。
<画像記録層8の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(8)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層8を形成した。
画像記録層塗布液(8)は下記感光液(8)及びミクロゲル液(8)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(感光液(8))
上記感光液(7)において、バインダーポリマー(1)、及びアンモニウム基含有ポリマー(1)の含有量を以下のように変更したものを感光液(8)とした。
・バインダーポリマー(1)〔上記構造、Mw:55,000、n:2(EO単位数)): 0.429部
・アンモニウム基含有ポリマー(1)〔上記構造、Mw:50,000、還元比粘度 45ml/g〕: 0.0715部
(ミクロゲル液(8))
上記ミクロゲル液(7)において、ミクロゲル(7)、及び蒸留水の含有量を以下のように変更したものをミクロゲル液(8)とした。
・ミクロゲル(7)(固形分濃度15.0質量%):0.848部
・蒸留水:1.995部
<画像記録層9の形成>
支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(9)を塗布し、乾燥塗布量2.0g/m2の画像記録層9を形成した。
(画像記録層塗布液(9))
・DESMODUR(登録商標)N100とアクリル酸ヒドロキシエチル及びペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物
0.390部
・グラフトコポリマー2(下記)(粒径60nm)(固形分濃度23質量%)
1.130部
・Sartomer355*1 0.78部
・2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-2-トリアジン
0.42部
・アニリノ-N,N-2酢酸 0.23部
・IR染料*2 0.09部
・Byk 307*3 (Mw=2,300)
0.02部
・n-プロパノール 72.95部
・水 18.24部
*1 多官能性アクリルモノマー(Sartomer Co., Inc製)
*2 2-[2-[2-フェニルチオ-3-[(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム塩化物
*3 変性ポリシロキサン(Byk Chemie製)
グラフトコポリマー2は、特開2013-107399の[0122]にて準じて合成したものを使用した。
<画像記録層10の形成>
支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(10)を塗布し、乾燥塗布量2.0g/m2の画像記録層10を形成した。
(画像記録層塗布液(10))
上記画像記録層塗布液(9)において、上記反応生成物、及びグラフトコポリマー2の含有量を以下のように変更したものを画像記録層塗布液(10)とした。
・DESMODUR(登録商標)N100とアクリル酸ヒドロキシエチル及びペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物
0.528部
・グラフトコポリマー2 (粒径60nm)(固形分濃度23質量%)
0.574部
<保護層1の形成>
下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して厚さ0.18μmの保護層1を形成した。
(保護層塗布液(1))
・無機層状化合物分散液(1)(下記) 2.212部
・ポリビニルアルコール(ゴーセランL-3266、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度85モル%)6質量%水溶液
1.440部
・界面活性剤(パイオニンA-32-B(下記)、竹本油脂(株)製)40質量%水溶液)
0.014部
・界面活性剤(サーフィノール465(下記)、日信化学(株)製)
0.006部
・純水 3.955部
Figure 2022157763000024
(無機層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6部に合成雲母ソマシフME-100(コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて体積平均粒子径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散して無機層状化合物分散液(1)を調製した。分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
<保護層2の形成>
下記組成の保護層塗布液(2)をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して厚さ0.18μmの保護層2を形成した。
(保護層塗布液(2))
上記保護層塗布液(1)に、リン酸を0.050部追加して調製した。
<保護層3の形成>
下記組成の保護層用塗布液(3)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層3を形成した。
(保護層用塗布液(3))
・無機層状化合物分散液(1)(上記で得たもの): 1.5部
・親水性ポリマー(1)(固形分)〔下記構造、Mw:3万〕: 0.55部
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液: 0.10部
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA-405、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液: 0.03部
・界面活性剤(エマレックス710、商品名:日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液: 0.86部
・イオン交換水: 6.0部
Figure 2022157763000025
〔平版印刷版原版の作製〕
上記支持体、下塗り層、画像記録層、及び保護層を表Aに記載のように組み合わせて実施例1~12、14~15の平版印刷版原版、及び比較例1~6の平版印刷版原版を作製した。
実施例13の平版印刷版原版は、上記支持体、下塗り層、画像記録層、及び保護層を表Aに記載のように組み合わせ、更に、下記親水化層1を形成して作製した。
<親水化層1の形成>
(親水化塗布液(1)の調製)
下記に記載した化合物を、0.1質量%のジアルキルスルホコハク酸塩(日本油脂(株)製、ラピゾールA-80)を含む純水に溶解し、親水化塗布液(1)を調製した。
・ニューコールB13 (非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールエーテル、日本乳化剤(株)製) 7.50質量%
・リン酸二水素Na 1.50質量%
親水化塗布液(1)は、実施例13の平版印刷版原版において、下記(1)のタイミングで塗布を行い、親水化層1を得た。
(1)下塗り層まで塗布後、乾燥させないまま親水化塗布液を塗布、80℃30秒間で乾燥させた。親水化塗布液の塗布量は、0.35g/mであった。
(親水化塗布液(1)の塗布方法)
塗布装置として、兵神装備(株)製2NL04を使用した。
クリアランス0.3mmで送液量5cc/分で搬送速度を調整し、固形分塗布量が0.35g/mになるように塗布した。
塗布は、支持体の対向する2辺の両端部からそれぞれ3cmの位置に、内側に向かって幅5mmの領域に行った。
画像記録層、及び保護層を塗布後、ダレ形状を形成するための平版印刷版原版の裁断時に、両端部を3cm切り落とし、端部から1cm以内の領域に親水化層を設けた。
Figure 2022157763000026
表Aにおいて、「粒子比率」は、画像記録層における、バインダーポリマーと粒子の合計量に対する、粒子の比率(質量%)である。
<平版印刷版原版の裁断>
平版印刷版原版を、図4に示すような回転刃を用いて、上側裁断刃と下側裁断刃の隙間、噛み込み量及び刃先角度を調整して裁断し、端部にダレ形状を形成した。
実施例1~13、及び比較例1~6の平版印刷版原版における端部のダレ量Xは50μm、ダレ幅Yは180μmであった。
実施例14の平版印刷版原版における端部のダレ量Xは30μm、ダレ幅Yは80μmであった。
実施例15の平版印刷版原版における端部のダレ量Xは150μm、ダレ幅Yは300μmであった。
〔平版印刷版原版の評価〕
平版印刷版原版について、機上現像性及びバンド跡汚れを以下のように評価した。
<機上現像性>
平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxcel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,4000dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像、50%網点、非画像部を含むチャートを用いた。
画像露光した平版印刷版原版を、(株)東京機械製作所製オフセット輪転印刷機に装着し、新聞用印刷インキとして、インクテック(株)製ソイビーKKST-S(紅)、湿し水としてサカタインクス(株)製エコセブンN-1を用い、新聞用紙に100,000枚/時のスピードで印刷した。画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した新聞用紙の枚数を機上現像枚数として計測し、以下の基準で評価した。5、4が許容レベルである。結果を表Aに記載した。
5:機上現像枚数が25枚以下である。
4:機上現像枚数が26~30枚である。
3:機上現像枚数が31~35枚である。
2:機上現像枚数が36~40枚である。
1:機上現像枚数が41枚以上である。
<バンド跡汚れ>
1)実施例及び比較例に記載の平版印刷版原版を50枚積層して、平版印刷版原版積層体を得た。
2)平版印刷版原版積層体の上下に、表面をポリエチレンラミネート加工した厚紙を1枚ずつ取り付けた。
3)2)の平版印刷版原版積層体を、クラフト紙にアルミニウム箔をラミネートした包装材を用いて、平版印刷版原版積層体の包装体を作成した。
4)包装体の上下をSUS板(50mm×50mm)で挟み、万力を用いて20N・mの力で圧着した。
5)圧着した包装体を36℃環境下で4日間静置した。
6)静置後、圧着を解除し、包装を開封し、平版印刷版原版積層体の一番上の平版印刷版原版を、上記機上現像性の評価と同様に画像露光した。
画像露光した平版印刷版原版を、(株)東京機械製作所製オフセット輪転印刷機に装着し、新聞用印刷インキとして、インクテック(株)製ソイビーKKST-S(紅)、湿し水としてサカタインクス(株)製エコセブンN-1を用い、新聞用紙に100,000枚/時のスピードで印刷して、1000枚まで印刷した。
7)1000枚目までの印刷物をサンプリングし、バンド跡汚れを圧着部分の汚れが消えるまでのレベルとして、以下の基準で評価した。結果を表Aに記載した。
5:100枚以下で汚れ解消。
4:101枚~200枚で汚れ解消。
3:201枚~500枚で汚れ解消。(非許容レベル)
2:501枚~1000枚で汚れ解消。(非許容レベル)
1:1000枚目でも圧着部に汚れあり。(非許容レベル)
表Aに記載の結果から、本発明に係る平版印刷版原版は、優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できることがわかる。これに対して、比較例の平版印刷版原版は、優れた機上現像性とバンド跡汚れの低減とを両立できないことがわかる。
1 平版印刷版原版
1a 画像記録層面
1b 支持体面
1c 端面
2 ダレ
10 裁断刃
10a 上側裁断刃
10b 上側裁断刃
11 回転軸
20 裁断刃
20a 下側裁断刃
20b 下側裁断刃
21 回転軸
30 平版印刷版原版
31 アルミニウム板
32、34 ローラ状ブラシ
33 研磨スラリー液
35、36、37、38 支持ローラ
50 主電解槽
51 交流電源
52 ラジアルドラムローラ
53a、53b 主極
54 電解液供給口
55 電解液
56 スリット
57 電解液通路
58 補助陽極
60 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源
B 画像記録層面と支持体との境界
W アルミニウム板
X ダレ量
Y ダレ幅
100 構造体
101 積層台(スキッド)
101a 積層板
101b 脚部
103 機上現像型平版印刷版原版積層体
103a 機上現像型平版印刷版原版
104 包装材
104a 短手方向の折り込み部
104b 超手方向の折り込み部
106 天板
106a 天板補強部
107 結束バンド
110 機上現像型平版印刷版原版積層体の包装体
110a テープ

Claims (13)

  1. 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体上に画像記録層を有する機上現像型平版印刷版原版であって、
    前記平版印刷版原版は端部にダレ形状を有し、
    前記画像記録層がバインダーポリマーと粒子を含み、
    前記バインダーポリマーと前記粒子の合計量に対して、前記粒子の比率が5~40質量%である、
    機上現像型平版印刷版原版。
  2. 前記バインダーポリマーと前記粒子の合計量に対して、前記粒子の比率が5~30質量%である、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  3. 前記バインダーポリマーと前記粒子の合計量に対して、前記粒子の比率が10~20質量%である、請求項1又は2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  4. 前記粒子が、ポリマー粒子である請求項1~3のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  5. 前記ポリマー粒子が、スチレンに由来する繰り返し単位及びアクリロニトリルに由来する繰り返し単位を含む共重合体の粒子である請求項4に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  6. 前記ポリマー粒子が、ミクロゲルである請求項4又は5に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  7. 前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び重合性化合物を含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  8. 前記ダレ形状が、ダレ量Xが25~150μm、ダレ幅Yが70~300μmのダレ形状である請求項1~7のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  9. 前記平版印刷版原版が支持体吸着性を有する化合物を含有する層を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  10. 端部から1cm以内の領域に親水化層を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、赤外線レーザーにより画像露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水から選ばれる少なくとも1つにより、前記画像記録層の未露光部分を除去する工程とを含む平版印刷版の作製方法。
  12. 積載台と、
    請求項1~10のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を複数枚積層してなる機上現像型平版印刷版原版積層体と、
    天板と
    をこの順で備える構造体であって、
    前記構造体は、更に、
    前記積載台、前記構造体、及び、前記天板を結束する結束バンド
    を有する構造体。
  13. 前記構造体は、更に、
    (i)前記天板と前記積層体との間の位置、及び、(ii)前記天板を基準として前記積層体とは反対側の位置の少なくとも一方、に設けられた緩衝材
    を有し、
    前記結束バンドは、前記積載台、前記構造体、及び、前記天板、及び、前記緩衝材を結束する請求項12に記載の構造体。
JP2021062183A 2021-03-31 2021-03-31 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体 Pending JP2022157763A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021062183A JP2022157763A (ja) 2021-03-31 2021-03-31 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021062183A JP2022157763A (ja) 2021-03-31 2021-03-31 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022157763A true JP2022157763A (ja) 2022-10-14

Family

ID=83559234

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021062183A Pending JP2022157763A (ja) 2021-03-31 2021-03-31 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022157763A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2015119089A1 (ja) 平版印刷版原版及びその製造方法、平版印刷版の製版方法、並びに、印刷方法
US20200166846A1 (en) On-press development type lithographic printing plate precursor and method for producing lithographic printing plate
JP7293356B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7464691B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
WO2019045084A1 (ja) 印刷用原版、及び印刷用原版積層体
US20230384671A1 (en) Laminate of negative tone lithographic printing plate precursor and method of preparing negative tone lithographic printing plate
CN113382870B (zh) 平版印刷版原版、平版印刷版的制作方法及平版印刷方法
CN111051073B (zh) 机上显影型平版印刷版原版及平版印刷版的制作方法
EP2554381B1 (en) Method for producing lithographic printing plate
US20100248138A1 (en) Lithographic printing plate precursor
JP2022157763A (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び構造体
JP7413394B2 (ja) 機上現像型印刷用原版、印刷版の作製方法、及び構造体
CN113474178B (zh) 平版印刷版原版、平版印刷版的制作方法及平版印刷方法
JP7351862B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7321261B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7309741B2 (ja) 印刷用原版、及び印刷版の製版方法
WO2023032868A1 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、及び印刷版の作製方法
WO2021153517A1 (ja) 機上現像型印刷用原版、印刷版の作製方法、及び印刷方法
JP2010253920A (ja) 平版印刷版原版
JP2023020769A (ja) 機上現像型平版印刷版原版、及び印刷版の作製方法
JP2020179567A (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7184931B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
WO2020262695A1 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
WO2019151447A1 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、機上現像型平版印刷版ダミー版、及び印刷方法
JP2024027054A (ja) 平版印刷版原版包装体、平版印刷版ダミー版包装体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231207