JP2023018814A - スタティック吹錬制御方法、温度補正項・酸素補正項推定装置、及び、転炉制御装置 - Google Patents

スタティック吹錬制御方法、温度補正項・酸素補正項推定装置、及び、転炉制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 溶銑の脱炭精錬において、熱収支計算及び酸素収支計算における適切な温度補正項及び酸素補正項を求めることができるスタティック吹錬制御方法を提供する。【解決手段】 本発明のスタティック吹錬制御方法は、吹錬終了時の溶鋼成分及び溶鋼温度を目標値にする供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とを、熱収支計算及び酸素収支計算を用いて算出する制御方法であって、熱収支計算及び酸素収支計算は、温度補正項及び酸素補正項を含み、吹錬の操業条件及び転炉の状態を反映した値から温度補正項を出力する学習モデルに、吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値とを入力して温度補正項を出力するとともに、吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値及び過去の吹錬で出力された温度補正項から酸素補正項を出力する学習モデルに、吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値と過去の吹錬で計算された温度補正項とを入力して酸素補正項を出力する。【選択図】 図1

Description

本発明は、転炉吹錬における溶鋼温度及び溶鋼成分濃度を目標値とするのに必要となる供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量との予測を、吹錬開始時点で行なうスタティック吹錬制御方法、このスタティック制御で使用する温度補正項・酸素補正項推定装置、及び、転炉制御装置に関する。
溶銑の脱炭精錬を行う転炉操業は、溶銑や鉄スクラップなどからなる主原料に酸素を供給して酸化精錬(「吹錬」または「酸素吹錬」という)を行ない、溶鋼を得る製鋼工程である。転炉操業では、吹錬終点(吹止め)における溶鋼温度や溶鋼中炭素濃度などの成分濃度を目標値に適中させるために、スタティック制御とダイナミック制御とを組み合わせた吹錬制御が行われている。
スタティック制御は、酸素収支及び熱収支に基づいた数式モデルにより、上記目標値の的中に必要な供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とを、吹錬の開始前に決定する制御方法である。一方、ダイナミック制御は、吹錬中にサブランスで溶鋼の温度及び炭素濃度を測定し、スタティック制御で決定しておいた供給酸素量や、冷材または昇熱材の投入量を、酸素収支、熱収支、反応モデルに基づいた数式モデルに基づき修正し、吹止めまでの酸素量、及び、冷材または昇熱材の投入量を最終的に決定する制御方法である。
スタティック制御とダイナミック制御とを組み合わせた転炉操業の制御方法では、スタティック制御における誤差が大きすぎると、ダイナミック制御での修正が困難になり、吹止めにおける溶鋼温度や溶鋼中炭素濃度などの成分濃度を目標値に適中させることができなくなる場合がある。このため、スタティック制御における誤差をなるべく小さくする必要がある。
スタティック制御の数式モデルは、熱収支計算と酸素収支計算の2種類から構成されている。このうち熱収支計算では、下記の(1)式に示すように、炉内への入熱量の総和と炉内からの出熱量の総和とが等しくなるように、冷材または昇熱材の投入量(Wore)を算出する。
Figure 2023018814000002
上記(1)式において、Qinは入熱確定項である。ΔQは入熱誤差項である。Kはオペレーターによる温度補正項である。Qoutは出熱確定項である。ΔHoreは冷却項または昇熱項である。これらは既知項であり、当該既知項を用いて冷材または昇熱材の投入項(Wore)を算出する。このように、熱収支計算は、入熱確定項(Qin)、出熱確定項(Qout)、冷却項または昇熱項(ΔHore)、入熱誤差項(ΔQ)、冷材または昇熱材の投入項(Wore)及びオペレーターによる温度補正項(K)により構成される。
熱収支計算における入熱確定項(Qin)は、装入される溶銑の顕熱や脱炭反応による発熱量などと対応し、出熱確定項(Qout)は、吹止め時の溶鋼顕熱や鉄スクラップの融解熱、スラグ滓化などによる吸熱量などと対応し、物性値や熱力学データに基づいて定まる理論値項である。ここで、反応による発熱量は、溶銑成分(炭素、リンなど)の濃度を目標値まで除去するために必要な酸素量も算出し、その酸素量に対して発生する熱量として取り扱う。冷却項または昇熱項(ΔHore)は、冷材または昇熱材の単位質量当たりの冷却能または昇熱能と、冷材または昇熱材の投入量との積で与えられ、冷材または昇熱材の投入量が熱収支計算の解となる。
また、酸素収支計算では、下記の(2)式に示すように、炉内への入酸素量の総和と、炉内からの出酸素量の総和とが等しくなるように吹錬酸素量(VO2)を算出する。
Figure 2023018814000003
上記(2)式において、Vinは入酸素確定項である。Voutは出酸素確定項である。ΔVは出酸素誤差項である。Lはオペレーターによる酸素補正項である。これらを用いて、吹錬酸素項(VO2)を算出する。
酸素収支計算における出酸素確定項(Vout)は、脱炭反応などにより消費される酸素量であり、吹錬前の溶銑量及び吹錬前後の成分変化に対応して化学量論的に定まる値である。一方、入酸素確定項(Vin)は、熱収支計算にて決定された酸素量を対応させる。出酸素確定項(Vout)と出酸素誤差項(ΔV)と酸素補正項(L)とを加えた出酸素量の総和から、入酸素確定項(Vin)を差し引いた値が吹錬酸素量(VO2)となる。この意味で、酸素収支計算は、熱収支計算に従属であるといえる。尚、酸素収支計算にて算出された吹錬酸素量(VO2)に基づいて熱収支計算を再実行(収束計算)することができるが、してもよいし、しなくてもよい。
入熱誤差項(ΔQ)及び出酸素誤差項(ΔV)は、炉号、炉回数といった理論項では表せないが吹錬に影響する因子を重回帰項としてまとめた統計モデル項である。オペレーターによる温度補正項(K)及びオペレーターによる酸素補正項(L)は、確定項でも誤差項でも表せない因子をオペレーターが定性的に評価し、スタティック計算モデルを補正するための項である。
スタティック制御によって温度的中率を向上させるには、入熱誤差項(ΔQ)及び出酸素誤差項(ΔV)や、オペレーターによる温度補正項(K)及びオペレーターによる酸素補正項(L)に適切な値を与えて熱収支計算及び酸素収支計算を行なう必要がある。
このような技術として、特許文献1には、転炉の内張耐火物の厚さ方向温度分布を溶銑装入直前時点で求め、精錬中の内張耐火物による奪熱量を、測定された温度分布に基づいて算出し、スタティック制御因子に組み込む方法が開示されている。
特許文献2には、放射温度計によって転炉の内張耐火物の表面温度を測定し、当該測定温度と時刻情報とから放冷曲線を求め、その後の吹錬での温度降下量を予測してスタティック制御における熱収支計算に取り入れる方法が開示されている。
また、特許文献3には、転炉製鋼における操業情報を入力とし、スタティック吹錬制御方法における不明熱量及び不明酸素量を出力とするニューラルネットワークを構築し、当該ニューラルネットワークを用いて当該不明熱量及び不明酸素量を推定するスタティック吹錬制御方法が開示されている。
特開昭63-171821号公報 特開2012-87345号公報 特開平6-200312号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
即ち、特許文献1に開示された方法では、温度分布測定に時間を要するという問題があった。また、温度分布や奪熱量をスタティック制御要素に組み込み計算する際、炉体の比熱などの定数を用いるが、炉体耐火物などの耐火物は、時間の経過に伴い損耗が進行するなどして状態が変化するため、これらを定期的に更新しなければ計算と実態とで乖離が発生してしまうという課題があった。
特許文献2に開示された方法では、スタティック計算の適中精度は依然として大きな誤差を生じる場合があった。
特許文献3に開示された方法では、入力を転炉製鋼における操業情報として構築されたニューラルネットワークであり、後述する転炉の状態を反映した値を考慮していないので、不明熱量及び不明酸素量を精度良く推定できるものではなかった。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱収支計算及び酸素収支計算における適切な温度補正項及び酸素補正項を求めることができるスタティック吹錬制御方法、このスタティック制御で使用する温度補正項・酸素補正項推定装置、及び、転炉制御装置を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]溶銑の脱炭精錬を転炉で行うに際し、吹錬終了時の溶鋼成分及び溶鋼温度を目標値にするための供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とを、熱収支計算及び酸素収支計算を用いて算出するスタティック吹錬制御方法であって、
前記熱収支計算及び酸素収支計算は、それぞれ温度補正項及び酸素補正項を含み、
吹錬の操業条件及び転炉の状態を反映した値を用いて前記温度補正項を出力する学習済の学習モデルに、前記算出を行う吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値とを入力して前記温度補正項を出力するとともに、
吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値及び過去の吹錬に対して出力された温度補正項を用いて前記酸素補正項を出力する学習済の学習モデルに、前記算出を行う吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値と過去の吹錬に対して計算された温度補正項とを入力して前記酸素補正項を出力する、
スタティック吹錬制御方法。
[2]前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、炉口地金の付着量及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上である、上記[1]に記載のスタティック吹錬制御方法。
[3]前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び転炉炉内耐火物の残厚から選ばれる1種以上を更に含む、上記[2]に記載のスタティック吹錬制御方法。
[4]前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、底吹き羽口の状態を示す値及び転炉炉内耐火物の温度から選ばれる1種以上である、上記[1]から上記[3]のいずれかに記載のスタティック吹錬制御方法。
[5]前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び炉口地金の付着量である、上記[1]から上記[3]のいずれかに記載のスタティック吹錬制御方法。
[6]前記炉口地金の付着量は、前記付着量を複数の段階で示す指数で表される、上記[2]または上記[5]に記載のスタティック吹錬制御方法。
[7]前記炉口地金の付着量は、主原料装入前における前記転炉の炉口部を撮像して生成された画像データから算出される、上記[2]、上記[5]、上記[6]のいずれかに記載のスタティック吹錬制御方法。
[8]前記転炉炉内耐火物の温度は、主原料装入前における前記転炉の出鋼口下方の転炉炉内耐火物の表面温度である、上記[3]から上記[5]のいずれかに記載のスタティック吹錬制御方法。
[9]前記表面温度は放射温度計で測定される、上記[8]に記載のスタティック吹錬制御方法。
[10]吹錬の操業条件と、転炉の状態を反映した値と、吹錬終了後に算出される実績温度補正項及び実績酸素補正項とを、用いて前記学習モデルを機械学習する、上記[1]から上記[9]のいずれかに記載のスタティック吹錬制御方法。
[11]転炉での溶銑の脱炭精錬における吹錬終了時の溶鋼成分及び溶鋼温度を目標値にするための供給酸素量と冷材または昇熱材の投入量とを算出するスタティック吹錬制御における温度補正項及び酸素補正項を、それぞれ出力する温度補正項・酸素補正項推定装置であって、
吹錬の操業条件、及び、転炉の状態を反映した値を学習済の学習モデルに入力して温度補正項を出力する温度補正項・酸素補正項推定部を有し、
且つ、吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値、及び、過去の吹錬に対して出力された温度補正項を学習済の学習モデルに入力して酸素補正項を出力する温度補正項・酸素補正項推定部を有する、
温度補正項・酸素補正項推定装置。
[12]前記学習済の学習モデルを更新するための更新部を更に有し、前記更新部は、吹錬終了後に、前記吹錬の操業条件と、前記転炉の状態を反映した値と、実績温度補正項と、実績酸素補正項とを用いて前記学習モデルを機械学習する、上記[11]に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
[13]前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、炉口地金の付着量及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上である、上記[11]または上記[12]に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
[14]前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び転炉炉内耐火物の残厚から選ばれる1種以上を更に含む、上記[13]に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
[15]前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、底吹き羽口の状態を示す値及び転炉炉内耐火物の温度から選ばれる1種以上である、上記[11]から上記[14]のいずれかに記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
[16]前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び炉口地金の付着量である、上記[15]に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
[17]上記[11]から上記[16]のいずれかに記載の温度補正項・酸素補正項推定装置と、
前記温度補正項・酸素補正項推定装置によって出力された温度補正項を含む熱収支計算と、前記温度補正項・酸素補正項推定装置によって出力された酸素補正項を含む酸素収支計算とを実施して、前記供給酸素量と前記冷材または昇熱材の投入量とを算出するプロセスコンピュータと、
を有する転炉制御装置。
[18]転炉の炉口部を撮像して画像データを生成するカメラと、
前記画像データを用いて前記炉口部の地金付着量を算出する地金付着量算出装置と、を更に有する、上記[17]に記載の転炉制御装置。
[19]転炉の出鋼口下方の転炉炉内耐火物の表面温度を測定する放射温度計を更に有する、上記[17]または上記[18]に記載の転炉制御装置。
本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、吹錬の操業条件に加え、転炉の状態を反映した値を用いて機械学習を行った学習済の学習モデルを用いて、熱収支計算に含まれる温度補正項、及び、酸素収支計算に含まれる酸素補正項を推定するので、オペレーターの経験年数や能力に依らず、適切な温度補正項及び酸素補正項を設定できる。このようにして設定された温度補正項及び酸素補正項を用いてスタティック吹錬制御を実施することで、溶鋼温度及び溶鋼成分濃度を目標値により一層近づけられる供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とが算出できる。
本実施形態に係るスタティック吹錬制御方法を実施できる転炉制御装置の構成を説明する機能ブロック図である。 比較例1及び発明例1~5の温度補正項が許容誤差範囲内となる割合を示すグラフである。 比較例1及び発明例1~5の酸素補正項が許容誤差範囲内となる割合を示すグラフである。
溶銑の脱炭精錬を行う転炉操業において、スタティック吹錬制御方法は、吹錬終了時の溶鋼成分及び溶鋼温度を目標値にするための供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とを算出するために用いられる。スタティック吹錬制御方法では、供給酸素量と、冷材または昇熱材(以後、冷材または昇熱材を「冷材等」とも記載する)の投入量とを、熱収支計算及び酸素収支計算を用いて算出する。
熱収支計算は、従来、例えば、入熱確定項、出熱確定項、冷却項または昇温項、入熱誤差項、冷材または昇熱材の投入項、及び、オペレーターによる温度補正項により構成される((1)式を参照)。このうち、オペレーターによる温度補正項は、熱収支に対する影響を定量的に測定できない、または、熱収支に対する影響を定量的に把握することが現実的ではない因子をまとめて熱収支計算に反映させる項として、オペレーターが設定している項である。
また、酸素収支計算は、従来、例えば、入酸素確定項、出酸素確定項、吹錬酸素項、出酸素誤差項及びオペレーターによる酸素補正項により構成される((2)式を参照)。このうち、オペレーターによる酸素補正項は、酸素収支に対する影響を定量的に測定できない、または、酸素収支に対する影響を定量的に把握することが現実的ではない因子をまとめて酸素収支計算に反映させる項として、オペレーターが設定している項である。
このように、オペレーターによる温度補正項及びオペレーターによる酸素補正項は定量的に把握することが現実的でない因子を含むことから、オペレーターの経験年数や能力に依るところが大きく、吹錬を担当するオペレーターによってばらつきが生じる場合があった。
これに対し、本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、過去の吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値、及び、実績温度補正項を用いて機械学習した学習済の学習モデルを用いて温度補正項を推定するとともに、過去の吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値、過去の吹錬に対して出力された温度補正項、及び、実績酸素補正項を用いて機械学習した学習済の学習モデルを用いて酸素補正項を推定する。
つまり、本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、オペレーターによる温度補正項の代わりに学習モデルで推定される温度補正項を用いて熱収支計算を行い、且つ、オペレーターによる酸素補正項の代わりに学習モデルで推定される酸素補正項を用いて酸素収支計算を行う。したがって、本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、オペレーターの経験年数や能力によらず、適切な温度補正項及び酸素補正項を推定することができる。
以下、本発明に係るスタティック吹錬制御方法を、その実施形態を通じて説明する。尚、以下の実施形態では、転炉の状態を反映した値として、炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値を用いた例で説明するが、転炉の状態を反映した値はこれに限らず、炉口地金の付着量、炉内耐火物の温度、炉内耐火物の残厚及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上を用いてよい。
図1は、本実施形態に係るスタティック吹錬制御方法を実施できる転炉制御装置10の構成を説明する機能ブロック図である。転炉制御装置10は、プロセスコンピュータ12と、温度補正項・酸素補正項推定装置14と、を有する。尚、図1において、符号50はオペレーター、符号100は転炉設備、符号102は転炉、符号104は転炉炉口、符号106は底吹き羽口である。
プロセスコンピュータ12は、転炉設備100における吹錬の操業制御やデータ処理・蓄積を行う装置である。スタティック吹錬制御方法における熱収支計算及び酸素収支計算はプロセスコンピュータ12で実施され、これにより、供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とが算出される。
温度補正項・酸素補正項推定装置14は、吹錬の操業条件、転炉炉口104の地金付着量や底吹き羽口106の状態を示す値から、熱収支計算における温度補正項、及び、酸素収支計算における酸素補正項を出力する装置である。温度補正項・酸素補正項推定装置14は、制御部20と、格納部30と、入力部40とを有する。制御部20は、温度補正項・酸素補正項推定部22と更新部24とを有する。制御部20は、例えば、CPUなどであって、格納部30に保存されたプログラムやデータを用いて、温度補正項・酸素補正項推定部22、及び、更新部24における所定の処理を実行する。
格納部30は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵またはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカードなどの情報記録媒体及びその読み書き装置である。格納部30には、温度補正項・酸素補正項推定部22及び更新部24における所定の処理を実現するためのプログラムや、当該プログラムを実行中に使用するデータなどが予め格納されている。更に、格納部30には、吹錬の操業条件及び炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値などを入力として温度補正項及び酸素補正項を出力する学習済の学習モデル32と、データベース34とが格納されている。本実施形態では学習モデル32の構築に「DataRobot」というDataRobot社製の機械学習ツール及び「dotData」というdotData社製の機械学習ツールを用いた。
データベース34には、過去に実施した吹錬の操業条件、炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値、計算温度補正項、計算酸素補正項、実績温度補正項及び実績酸素補正項のデータが、例えば、出鋼チャージごとに割り当てられる通し番号に対応つけられて所定数格納されている。尚、「チャージ」とは、転炉への主原料の装入から、吹錬によって溶製した溶鋼の転炉から排出までの工程を差す。
ここで、データベース34に格納される計算温度補正項及び計算酸素補正項とは、当該吹錬実施時に算出され、当該吹錬の熱収支計算及び酸素収支計算に使用された温度補正項及び酸素補正項である。また、実績温度補正項及び実績酸素補正項とは、吹錬終了後に確定した供給酸素量及び冷材等の投入量の実績値と、熱収支計算及び酸素収支計算とから逆算される温度補正項及び酸素補正項である。実績温度補正項及び実績酸素補正項は、プロセスコンピュータ12によって算出される。
学習モデル32は、温度補正項を出力する学習済の学習モデル32aと、酸素補正項を出力する学習済の学習モデル32bとからなり、それぞれ、データベース34に格納されているこれらのデータを教師データとして機械学習されることで学習済の学習モデルとされ、格納部30に格納されている。
温度補正項を出力する学習済の学習モデル32aは、データベース34に格納されているデータのうち、過去に実施した吹錬の操業条件、炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値、及び、実績温度補正項を含むデータを教師データとして機械学習する。
酸素補正項を出力する学習済の学習モデル32bは、データベース34に格納されているデータのうち、過去に実施した吹錬の操業条件、炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値、計算温度補正項、及び、酸素温度補正項を含むデータを教師データとして機械学習する。酸素補正項を出力する学習済の学習モデル32bの教師データに計算温度補正項を含むのは、酸素収支計算が熱収支計算に従属していることを反映させるためである。
過去に実施した吹錬の操業条件、炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値のデータは、温度補正項を出力する学習済の学習モデル32aと酸素補正項を出力する学習済の学習モデル32bとで共通のものを用いる。
本実施形態において、学習モデルの構築に用いた吹錬の操業条件を下記の表1に示す。
Figure 2023018814000004
炉口地金の付着量は、吹錬の主原料装入前にオペレーター50が転炉炉口104を目視することによって推定した値を用いる。本実施形態では、炉口地金の付着量として、例えば、3つの段階(早急に地金落としを実施する必要がある付着量:3、転炉操業に余裕があれば地金落としを実施する付着量:2、地金落としを実施する必要がない付着量:1)で示した指数(1~3)を用いる。尚、炉口地金の付着量を示す指数は3に限らず、2以上の複数であればよい。
炉口地金は、吹錬中に発生した溶鋼の飛沫が炉口耐火物に付着し、凝固して成長したものである。この炉口地金の付着量が少ないと、炉口部への熱放散が大きくなる。また、炉口地金の付着量が多いと、吹錬中に落下した地金が溶解するので溶鋼温度が上昇しにくくなる。このように、炉口地金の付着量は吹錬の熱収支に影響を及ぼすことから、少なくとも熱収支計算で考慮すべき因子である。しかしながら、熱収支への影響を定量化することが困難であることから、従来、炉口地金の付着量を熱収支計算に反映できていなかった。
これに対し、本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、吹錬の操業条件に加え、炉口地金の付着量を指数化し、当該指数を含む教師データで機械学習させた学習済の学習モデルを用いて温度補正項を推定する。酸素収支計算は、熱収支計算に従属しているので、炉口地金の付着量の影響を機械学習により考慮した温度補正項を推定すると、酸素補正項の値にも影響を及ぼす。これにより、推定される温度補正項及び酸素補正項には炉口地金の付着量の影響が反映されるので、推定される温度補正項及び酸素補正項の精度が高くなる。
底吹き羽口の状態を示す値は、例えば、下記の(3)式で算出されるノズル定数を用いることができる。
Figure 2023018814000005
(3)式におけるQは、底吹き羽口から吹き込む不活性ガスの総和(NL/min)である。Pは、羽口前圧力(MPa)であり、転炉の底部に設けられた各底吹き羽口に分岐する前の配管内ガス圧力である。
ノズル定数は、同じ羽口前圧力で流すことのできる不活性ガスの流量を示す値といえる。つまり、換言すれば、底吹き羽口の詰まり具合を示す値である。底吹き羽口の詰まり具合により、底吹きガスによる溶鋼撹拌力が変化し、脱炭反応効率に影響を及ぼすと考えられる。
このように、底吹き羽口の状態を示す値は、吹錬の酸素収支に影響を及ぼすことから、酸素収支計算で考慮すべき因子である。また、供給した酸素が脱炭に消費されず、他の反応に消費された場合(例えば鉄の酸化に消費された場合など)、脱炭反応の反応熱と、鉄の酸化の反応熱とは異なるので、熱収支計算にも影響を及ぼす。しかしながら、熱収支計算及び酸素収支計算への底吹き羽口の状態の影響を定量化することが困難であることから、従来、底吹き羽口の状態を示す値を熱収支計算及び酸素収支計算に反映できていなかった。
これに対し、本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、吹錬の操業条件に加え、底吹き羽口の状態を示す値を上記のノズル定数などによって指数化し、当該指数を含む教師データで機械学習させた学習済の学習モデルを用いて温度補正項及び酸素補正項を推定する。これにより、推定される温度補正項及び酸素補正項には底吹き羽口の状態を示す値の影響が反映されるので、推定される温度補正項及び酸素補正項の精度が高くなる。
入力部40は、オペレーター50からの入力を受け付ける。入力部40は、オペレーター50からの入力を受け付けると、受け付けた入力値を制御部20に出力する。入力部40は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置である。
次に、温度補正項及び酸素補正項の算出方法について説明する。
供給酸素量や冷材等の投入量を算出するスタティック計算を実施するタイミングは、当該チャージの吹錬直前である。オペレーター50は、このタイミングで入力部40から炉口地金の付着量を示す指数や底吹き羽口の状態を示す値を入力するとともに、プロセスコンピュータ12から当該チャージの操業条件を温度補正項・酸素補正項推定部22に伝送させる。入力部40は、入力された当該指数を温度補正項・酸素補正項推定部22に出力する。
温度補正項・酸素補正項推定部22は、吹錬の操業条件と、炉口地金の付着量を示す指数や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値とを受け付けると、格納部30から温度補正項を出力する学習済の学習モデル32aを読み出す。温度補正項・酸素補正項推定部22は、学習モデル32aに操業条件と炉口地金付着量の指数や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値とを入力して温度補正項を出力させる。
次に、温度補正項・酸素補正項推定部22は、吹錬の操業条件及び炉口地金の付着量を示す指数や底吹き羽口の状態を示す値を受け付けるとともに、計算温度補正項を受け付ける。ここで受け付ける計算温度補正項は、先に出力したばかりの温度補正項であってもよいし、データベース34に格納された過去の吹錬における計算温度補正項のうちで、吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値とが対象とする吹錬に近いチャージで使用された温度補正項を用いてもよい。また、吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値とが対象とする吹錬に近いチャージの温度補正項を複数読み出して、対象とする吹錬に近いタイミングのものに重みをつけて平均した値を用いることもできる。
そして温度補正項・酸素補正項推定部22は、格納部30から酸素補正項を出力する学習済の学習モデル32bを読み出し、学習モデル32bに操業条件、炉口地金付着量の指数や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値及び計算温度補正項を入力して酸素補正項を出力させる。
このようにして、温度補正項・酸素補正項推定部22は、熱収支計算に用いられる温度補正項、及び、酸素収支計算に用いられる酸素補正項を推定する。
温度補正項・酸素補正項推定部22は、推定した温度補正項及び酸素補正項をプロセスコンピュータ12へ出力する。プロセスコンピュータ12は、当該温度補正項及び当該酸素補正項を含む熱収支計算と酸素収支計算とを実施し、供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とを算出する。
温度補正項・酸素補正項推定部22で推定された温度補正項及び酸素補正項は、転炉操業の熱収支に影響を及ぼす炉口地金の付着量や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値の影響が考慮された精度の高い温度補正項及び酸素補正項となる。このため、当該温度補正項及び当該酸素補正項を用いてスタティック吹錬制御を実施することで、吹錬終了時の溶鋼温度及び溶鋼成分濃度をより一層目標値に近づけることができる。
次に、学習モデル32の更新について説明する。
本実施形態に係るスタティック吹錬制御方法において、学習済の学習モデル32は吹錬終了後に更新されてもよい。学習済の学習モデル32は、吹錬終了後に当該吹錬の操業条件、炉口地金の付着量を示す指数や底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値、実績温度補正項及び実績酸素補正項を用いて更新部24によって更新される。
吹錬終了後、プロセスコンピュータ12は、確定供給酸素量、冷材等の確定投入量、及び、入熱誤差項や出酸素誤差項を用いて実績温度補正項及び実績酸素補正項を算出する。実績酸素補正項の算出に当たっては、確定供給酸素量、冷材等の確定投入量及び出酸素誤差項の他、出鋼時に添加した加炭材の量を考慮して補正を行なってもよい。
プロセスコンピュータ12は、更新部24に操業条件、実績温度補正項及び実績酸素補正項を出力する。炉口地金の付着量を示す指数、底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値、計算温度補正項及び計算酸素補正項は、温度補正項・酸素補正項推定部22から更新部24に出力される。尚、操業条件は、温度補正項・酸素補正項推定部22から更新部24に出力されてもよい。
更新部24は、操業条件、炉口地金付着量の指数、底吹き羽口の状態を示す値などの転炉の状態を反映した値、計算温度補正項、計算酸素補正項、実績温度補正項及び実績酸素補正項を取得すると、これらのデータを出鋼チャージごとに割り当てられる通し番号に対応つけてデータベース34に記録する。尚、これらのデータを記録する際、更新部24は、データベース34に格納されている通し番号の内、最も小さい通し番号のデータを特定して当該データを消去してもよい。更新部24は、データをデータベース34に記録した後、データベース34に格納されているデータを教師データとして学習モデル32に入力して機械学習させる。このようにして、学習済の学習モデル32は、更新部24によって吹錬終了後に更新される。
尚、本実施形態では、オペレーター50が転炉炉口104を目視して炉口地金の付着量を1~3の指数で入力する例を示したが、これに限らない。例えば、炉口部をカメラで撮像して生成された画像データを用いて炉口地金の付着量を測定してもよい。この場合において、転炉制御装置10は、カメラと地金付着量算出装置とを更に有する。カメラは、転炉102の炉口部を撮像して画像データを生成する。地金付着量算出装置は、カメラから取得した画像データを、転炉102の改修後であって転炉炉口104に地金が付着していない状態で撮像された画像データと比較することで、転炉炉口104に付着した地金の画像領域を特定し、特定された地金の画像領域の大きさに基づいて炉口地金の付着量を測定する。地金付着量算出装置は、測定した炉口地金の付着量を温度補正項・酸素補正項推定部22に出力する。
転炉102の状態を反映した値として炉内耐火物の温度を用いる場合、当該温度をサーモビューアーで測定してもよい。この場合において、転炉制御装置10は、当該サーモビューアーを更に有する。サーモビューアーは、転炉102の出鋼口下方の炉内耐火物の表面温度を測定し、当該測定値を温度補正項・酸素補正項推定部22に出力する。
本実施形態では、学習済みの学習モデル32が格納部30に格納される例を示したが、これに限らない。格納部30には学習モデルが格納されており、温度補正項・酸素補正項推定部22が、温度補正項及び酸素補正項を推定する都度、格納部30に格納されているデータベース34のデータを教師データとして学習モデルを機械学習させるとしてもよい。更に、温度補正項・酸素補正項推定装置14が更新部24を有する例を示したが、学習済の学習モデル32を更新しない場合は、更新部24を有しなくてもよい。
本実施形態では、データベース34が格納部30に格納されている例を示したが、これに限らない。データベース34はプロセスコンピュータ12に格納されていてもよい。この場合において、学習モデル32の更新は、吹錬終了後にプロセスコンピュータ12からデータベース34に格納されているデータを更新部24に伝送し、更新部24は当該データを学習モデル32に入力し機械学習させることで実施される。
本実施形態では、プロセスコンピュータ12から吹錬の操業条件を温度補正項・酸素補正項推定部22に伝送させる例を示したが、これに限らない。例えば、吹錬の操業条件は、オペレーター50によって入力部40から温度補正項・酸素補正項推定部22に入力されてもよい。更に、温度補正項・酸素補正項推定部22によって出力された温度補正項及び酸素補正項をプロセスコンピュータ12に出力する例を示したが、これに限らない。例えば、温度補正項・酸素補正項推定部22によって出力された温度補正項及び酸素補正項をディスプレイなどの表示部に表示させてもよい。この場合において、温度補正項・酸素補正項推定装置14は、ディスプレイなどの表示部を更に有する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
また、特許請求の範囲、明細書、及び図面中に示した装置における動作、手順及びステップの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現し得る。
以下、溶銑の脱炭精錬を転炉で行うに際して、温度補正項・酸素補正項推定部22によって推定される温度補正項及び酸素補正項の精度について確認した結果を説明する。
学習モデル32に入力する教師データとして、表1に示した操業条件、炉口地金付着量、実績温度補正項及び実績酸素補正項を用いた場合を発明例1とした。教師データとして、表1に示した操業条件、転炉炉内耐火物温度、実績温度補正項及び実績酸素補正項を用いた場合を発明例2とした。教師データとして、操業条件、転炉炉内耐火物の残厚、実績温度補正項及び実績酸素補正項を用いた場合を発明例3とした。教師データとして、表1に示した操業条件、底吹き羽口の状態及び実績温度補正項、実績酸素補正項を用いた場合を発明例4とした。また、教師データとして、表1に示した操業条件、炉口地金付着量、転炉炉内耐火物温度、実績温度補正項及び実績酸素補正項を用いた場合を発明例5とした。一方、教師データとして、操業条件、実績温度補正項及び実績酸素補正項を用いた場合を比較例1とした。
転炉炉内耐火物温度としては、主原料の装入直前にサーモビューアーで出鋼口下方の炉内耐火物の表面温度を測定した値を用いた。尚、サーモビューアーは放射温度計の一例である。
転炉炉内耐火物温度は、主原料の装入直前に毎回測定しなくてもよく、同一の転炉に対しては1つの炉内耐火物温度の測定値を複数のチャージの吹錬の温度補正項及び酸素補正項の算出に用いてもよい。炉内耐火物温度の測定値を複数のチャージの吹錬で用いる場合には、格納部30に格納されたデータのうち最も近いタイミングで測定された、通し番号が近い炉内耐火物温度の測定値を用いることが好ましい。
転炉炉内耐火物の残厚としては、主原料の装入直前の炉内全周のレーザープロフィールデータを測定し、炉修直後の基準プロフィールデータから測定されたプロフィールデータを減じた差分値を用いた。
炉内耐火物のプロフィール測定も当該吹錬の直前に毎回測定しなくてもよく、同一の転炉に対しては1つの炉内耐火物の残厚の値を複数のチャージの吹錬の温度補正項及び酸素補正項の算出に用いてもよい。炉内耐火物の残厚の値を複数のチャージの吹錬で用いる場合には、格納部30に格納されたデータのうち最も近いタイミングで測定された、炉回数(直近の炉修後、当該転炉で吹錬を行なった回数)が近い炉内耐火物の残厚の値を用いることが好ましい。
転炉炉内耐火物温度及び転炉炉内耐火物の残厚は転炉からの放熱に影響するので、転炉の熱収支に影響を及ぼすと考えられる。このため、これらを教師データとして用いることで、終点温度を的中するための温度補正項及び酸素補正項の算出精度が向上する。
また、底吹き羽口の状態を示す値としては、前述した(3)式で算出されるノズル定数を用いた。
比較例1及び発明例1~5で教師データとして用いたデータ数及び推定用に用いたデータ数を下記の表2に示す。表2に示すように、全データのうち8割のデータを学習モデルの教師用データとして用い、2割のデータを検証用として用いた。
Figure 2023018814000006
吹錬における溶鋼の終点温度が的中したか否かは、「実績温度-目標温度」の絶対値が10℃未満であるか否かで判断した。操業条件を用いて10℃を熱量に換算すると46.8×10kcalとなる。このため、本実施例では、温度補正項・酸素補正項推定部22によって推定された温度補正項と実績温度補正項との差の絶対値が46.8×10kcal以下となった場合に温度補正項が許容誤差内であるとした。一方、温度補正項・酸素補正項推定部22によって推定された温度補正項と実績温度補正項との差の絶対値が46.8×10kcalより大きくなった場合には、温度補正項は許容誤差範囲内ではないとした。
また、終点炭素濃度が的中したか否かは、下記で判断した(Cは炭素を意味する)。
(1) 目標C濃度<0.10質量%の場合;|(実績C濃度)-(目標C濃度)|≦0.01質量%
(2) 0.10質量%≦目標C濃度<0.20質量%の場合;|(実績C濃度)-(目標C濃度)|≦0.03質量%
(3) 0.20質量%≦目標C濃度の場合;|(実績C濃度)-(目標C濃度)|≦0.04質量%
これらの値を酸素量に換算すると下記の値となる。
(1) 目標C濃度<0.10質量%・・・・・・・・・21Nm
(2) 0.10質量%≦目標C濃度<0.20質量%・・・63Nm
(3) 0.20質量%≦目標C濃度・・・・・・・・・84Nm
このため、本実施例では、温度補正項・酸素補正項推定部22によって推定された酸素補正項と実績酸素補正項との差の絶対値が、目標炭素濃度別に上記の値以下となった場合に酸素補正項が許容誤差内であるとした。一方、温度補正項・酸素補正項推定部22によって推定された酸素補正項と実績酸素補正項との差の絶対値が目標炭素濃度別に上記の値より大きくなった場合には酸素補正項は許容誤差範囲内ではないとした。
比較例1及び発明例1~5について、予測用のデータを用いて推定された全温度補正項のうち許容誤差範囲内となった温度補正項の割合を算出した。結果を図2に示す。図2は、比較例1及び発明例1~5の温度補正項が許容誤差範囲内となる割合を示すグラフである。図2に示すように、発明例1~5の温度補正項が許容誤差内となる割合は比較例1よりも高くなった。
この結果から、操業条件に炉口地金付着量、炉内耐火物温度、炉内耐火物の残厚及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上を加えた教師データを用いて機械学習させた学習済みの学習モデルを用いて温度補正項を推定することで、許容誤差内となる温度補正項を高い割合で算出できる、即ち、吹錬における溶鋼の終点温度を的中できる温度補正項を精度良く算出できることが確認された。
また、比較例1及び発明例1~5について、予測用のデータを用いて推定された全酸素補正項のうち許容誤差範囲内となった酸素補正項の割合を算出した。結果を図3に示す。図3は、比較例1及び発明例1~5の酸素補正項が許容誤差範囲内となる割合を示すグラフである。図3に示すように、発明例2、4、5で酸素補正項が許容誤差内となる割合が比較例1よりも高くなった。
この結果から、操業条件に炉内耐火物温度及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上を加えた教師データを用いて機械学習させた学習済みの学習モデル、または、炉内耐火物温度と炉口地金付着量とを同時に選んだ教師データを用いて機械学習させた学習済みの学習モデルを用いて温度補正項を推定することで、許容誤差内となる温度補正項を高い割合で算出できる、即ち、吹錬における溶鋼の炭素温度を的中できる酸素補正項を精度よく算出できることが確認された。
このように、溶銑の脱炭精錬を転炉で行うに際し、本発明に係るスタティック吹錬制御方法では、吹錬の操業条件に加え、転炉の状態を反映した値を用いて機械学習を行った学習済の学習モデルを用いて、熱収支計算に含まれる温度補正項、及び、酸素支計算に含まれる酸素補正項を推定するので、オペレーターの経験年数や能力に依らず、且つ、適切な温度補正項及び酸素補正項を設定することができる。このようにして設定された温度補正項及び酸素補正項を用いてスタティック吹錬制御を実施することで、溶鋼温度及び溶鋼成分濃度を目標値により一層近づけられる供給酸素量及び、冷材または昇熱材の投入量を算出することができる。
10 転炉制御装置
12 プロセスコンピュータ
14 温度補正項・酸素補正項推定装置
20 制御部
22 温度補正項・酸素補正項推定部
24 更新部
30 格納部
32 学習モデル
32a 温度補正項を出力する学習モデル
32b 酸素補正項を出力する学習モデル
34 データベース
40 入力部
50 オペレーター
100 転炉設備
102 転炉
104 転炉炉口
106 底吹き羽口

Claims (19)

  1. 溶銑の脱炭精錬を転炉で行うに際し、吹錬終了時の溶鋼成分及び溶鋼温度を目標値にするための供給酸素量と、冷材または昇熱材の投入量とを、熱収支計算及び酸素収支計算を用いて算出するスタティック吹錬制御方法であって、
    前記熱収支計算及び酸素収支計算は、それぞれ温度補正項及び酸素補正項を含み、
    吹錬の操業条件及び転炉の状態を反映した値を用いて前記温度補正項を出力する学習済の学習モデルに、前記算出を行う吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値とを入力して前記温度補正項を出力するとともに、
    吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値及び過去の吹錬に対して出力された温度補正項を用いて前記酸素補正項を出力する学習済の学習モデルに、前記算出を行う吹錬の操業条件と転炉の状態を反映した値と過去の吹錬に対して計算された温度補正項とを入力して前記酸素補正項を出力する、
    スタティック吹錬制御方法。
  2. 前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、炉口地金の付着量及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のスタティック吹錬制御方法。
  3. 前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び転炉炉内耐火物の残厚から選ばれる1種以上を更に含む、請求項2に記載のスタティック吹錬制御方法。
  4. 前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、底吹き羽口の状態を示す値及び転炉炉内耐火物の温度から選ばれる1種以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスタティック吹錬制御方法。
  5. 前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び炉口地金の付着量である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスタティック吹錬制御方法。
  6. 前記炉口地金の付着量は、前記付着量を複数の段階で示す指数で表される、請求項2または請求項5に記載のスタティック吹錬制御方法。
  7. 前記炉口地金の付着量は、主原料装入前における前記転炉の炉口部を撮像して生成された画像データから算出される、請求項2、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載のスタティック吹錬制御方法。
  8. 前記転炉炉内耐火物の温度は、主原料装入前における前記転炉の出鋼口下方の転炉炉内耐火物の表面温度である、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のスタティック吹錬制御方法。
  9. 前記表面温度は放射温度計で測定される、請求項8に記載のスタティック吹錬制御方法。
  10. 吹錬の操業条件と、転炉の状態を反映した値と、吹錬終了後に算出される実績温度補正項及び実績酸素補正項とを、用いて前記学習モデルを機械学習する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のスタティック吹錬制御方法。
  11. 転炉での溶銑の脱炭精錬における吹錬終了時の溶鋼成分及び溶鋼温度を目標値にするための供給酸素量と冷材または昇熱材の投入量とを算出するスタティック吹錬制御における温度補正項及び酸素補正項を、それぞれ出力する温度補正項・酸素補正項推定装置であって、
    吹錬の操業条件、及び、転炉の状態を反映した値を学習済の学習モデルに入力して温度補正項を出力する温度補正項・酸素補正項推定部を有し、
    且つ、吹錬の操業条件、転炉の状態を反映した値、及び、過去の吹錬に対して出力された温度補正項を学習済の学習モデルに入力して酸素補正項を出力する温度補正項・酸素補正項推定部を有する、
    温度補正項・酸素補正項推定装置。
  12. 前記学習済の学習モデルを更新するための更新部を更に有し、前記更新部は、吹錬終了後に、前記吹錬の操業条件と、前記転炉の状態を反映した値と、実績温度補正項と、実績酸素補正項とを用いて前記学習モデルを機械学習する、請求項11に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
  13. 前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、炉口地金の付着量及び底吹き羽口の状態を示す値から選ばれる1種以上である、請求項11または請求項12に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
  14. 前記温度補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び転炉炉内耐火物の残厚から選ばれる1種以上を更に含む、請求項13に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
  15. 前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、底吹き羽口の状態を示す値及び転炉炉内耐火物の温度から選ばれる1種以上である、請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
  16. 前記酸素補正項の出力に用いる前記転炉の状態を反映した値が、転炉炉内耐火物の温度及び炉口地金の付着量である、請求項15に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置。
  17. 請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の温度補正項・酸素補正項推定装置と、
    前記温度補正項・酸素補正項推定装置によって出力された温度補正項を含む熱収支計算と、前記温度補正項・酸素補正項推定装置によって出力された酸素補正項を含む酸素収支計算とを実施して、前記供給酸素量と前記冷材または昇熱材の投入量とを算出するプロセスコンピュータと、
    を有する転炉制御装置。
  18. 転炉の炉口部を撮像して画像データを生成するカメラと、
    前記画像データを用いて前記炉口部の地金付着量を算出する地金付着量算出装置と、を更に有する、請求項17に記載の転炉制御装置。
  19. 転炉の出鋼口下方の転炉炉内耐火物の表面温度を測定する放射温度計を更に有する、請求項17または請求項18に記載の転炉制御装置。
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