JP2023013925A - 自動二輪車用タイヤ - Google Patents

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Takuma Igai
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Abstract

【課題】ドライ条件やウェット条件にかかわらず、剥離やクラックの生じにくい自動二輪車用タイヤを提供すること。【解決手段】トレッド部がタイヤ軸方向において中央に位置するクラウン部と前記クラウン部の外側に位置する一対のショルダー部とを備えた自動二輪車用タイヤであって、前記クラウン部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδCr)が前記ショルダー部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδSh)よりも大きく、前記クラウン部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδCr)が前記ショルダー部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδSh)よりも小さく、前記トレッド部のトレッド面が溝を備え、前記溝が前記クラウン部と前記ショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない自動二輪車用タイヤ。【選択図】図1

Description

本開示は、自動二輪車用タイヤに関する。
自動二輪車用タイヤにおいて、そのトレッドゴムは、直線走行時は主にセンター部(クラウン部)が路面と接し、旋回時は主にショルダー部が路面と接するため、それぞれの部分で、状況に応じた性能が必要となる。このため、自動二輪車用タイヤのトレッドゴムは、センター部とショルダー部で、これらを構成するゴム組成物の性質を変えることが多い。(特許文献1)。
特開2019-127184号公報
しかし、センター部とショルダー部でゴム組成物の性質を変えると、それらの界面に応力が集中し、剥離が生じやすくなるという課題が生ずる。この場合、センター部とショルダー部とを跨ぐ溝を設けると、ドライ条件では当該溝が界面への応力集中を防ぐため剥離の抑制につながることが期待できるが、ウェット条件では逆に当該溝が破壊の起点となりクラックが生じやすくなるという課題がある。
本開示は、ドライ条件やウェット条件にかかわらず、剥離やクラックの生じにくい自動二輪車用タイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、クラウン部と一対のショルダー部とを有するトレッドを備えた自動二輪車用タイヤにおいて、70℃tanδがショルダー部よりもクラウン部で大きくかつ0℃tanδがショルダー部よりもクラウン部で小さくなるように調節し、かつ、トレッド面がクラウン部とショルダー部との境界を跨ぎかつ赤道を跨がない溝を有するものとすることで、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて、本開示を完成した。
すなわち、本開示は、
トレッド部がタイヤ軸方向において中央に位置するクラウン部と前記クラウン部の外側に位置する一対のショルダー部とを備えた自動二輪車用タイヤであって、
前記クラウン部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδSh)よりも大きく、
前記クラウン部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδSh)よりも小さく、
前記トレッド部のトレッド面が、溝を備え、
前記溝が、前記クラウン部と前記ショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない、自動二輪車用タイヤ
に関する。
本開示によれば、ドライ条件やウェット条件にかかわらず、剥離やクラックの生じにくい自動二輪車用タイヤを提供することができる。
自動二輪車用のタイヤのタイヤ回転軸を含む平面による断面図の一例である。 自動二輪車用のタイヤが路面に接した状態を示す、タイヤ回転軸を含む平面による断面図の一例である(クラウン部が接地面内に収まる場合)。 自動二輪車用のタイヤが路面に接した状態を示す、タイヤ回転軸を含む平面による断面図の一例である(クラウン部が接地面外まで及ぶ場合)。 自動二輪車用のタイヤのトレッド部の展開図の一例である。 自動二輪車用のタイヤのトレッド部の展開図の一例である。 図4のトレッドパターンをもつ図1の自動二輪車用のタイヤを、タイヤ重心を通る図4上の切断線Yで切断したときの断面図である。
本開示は、トレッド部がタイヤ軸方向において中央に位置するクラウン部と前記クラウン部の外側に位置する一対のショルダー部とを備えた自動二輪車用タイヤであって、前記クラウン部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδCr)が前記ショルダー部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδSh)よりも大きく、前記クラウン部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδCr)が前記ショルダー部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδSh)よりも小さく、前記トレッド部のトレッド面が溝を備え、前記溝が前記クラウン部と前記ショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない、自動二輪車用タイヤに関する。
理論に拘束されることは意図しないが、本開示において、ドライ条件やウェット条件にかかわらず、剥離やクラックが生じにくくなるメカニズムとしては、以下が考えられる。
すなわち、自動二輪車をドライ条件の下直進走行させる場合、接地による摩擦から、トレッドのクラウン部でショルダー部よりも温度が高くなりやすいが、さらに、クラウン部の70℃tanδをショルダー部よりも高めておくと、その発熱性が増し、クラウン部の温度がより高くなる。これにより、クラウン部の方がショルダーよりも柔らかくなりやすい状況となる。自動二輪車では旋回時にクラウン部からショルダー部に向かって摩擦力が働くが、こうしてクラウン部の方がショルダーよりも柔らかくなっていると、クラウン側界面がショルダー側界面に沿いやすくなるので、クラウン-ショルダー間での剥離が生じにくくなると考えらえる。さらに、前記溝を設けることで、界面だけでなく溝部分にも応力が発生するため、界面への応力集中を防ぎ、界面剥離をより防止できるようになると考えられる。
なお、クラウン部のみならず、ショルダー部も柔らかくすることでも一定の剥離防止効果は得られるが、その場合はドレッド全体の剛性が低くなるため旋回時の安定性が保ちにくい。また、温度に関係なくクラウン部を柔らかくすることでも一定の剥離防止効果は得られるが、その場合は直進安定性が保ちにくい。これに対し、本開示では、ドライ条件の下、旋回時や直進時の安定性を保ちつつ、界面剥離を防止する効果を得ることができる。
一方、ウェット条件の場合はドライ条件の場合よりも路面との摩擦が減るため、クラウン部とショルダー部とが同程度の硬さになっていても界面剥離は生じにくいが、前記溝が存在することで、これが破壊の起点になることが懸念される。そこで、ショルダー部の0℃tanδをクラウン部よりも高めて発熱性を高めておくことで、ショルダー部の温度を、接地機会の多いクラウン部と同程度になるようにして、界面間の温度差を生じにくくする。これにより、旋回時に、路面からの入力がクラウン部に遅れずに伝わりやすくなるので、クラウン部の破壊が抑制されると考えられる。さらに、前記溝は、赤道に至らないため赤道上の周方向において溝で挟まれる部分が生じないので、より破壊が抑制されると考えられる。特に、対称パターンにしたときでも、破壊が抑制されると考えられる。
前記溝のうち、溝深さが最大の溝の溝深さD(mm)は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1):D×70℃tanδCr>1.20
70℃tanδCrが小さくなる場合には、ドライ路面での溝による応力集中防止の効果を大きくしなければならない傾向がある。そこで、70℃tanδCrが小さくなる場合には、溝深さを深くすることが好ましい。
前記溝のうち、溝幅が最大の溝の溝幅W(mm)は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
式(2):W×70℃tanδCr>0.80
70℃tanδCrが小さくなる場合には、ドライ路面での溝による応力集中防止の効果を大きくしなければならない傾向がある。そこで、70℃tanδCrが小さくなる場合には、溝幅は広くすることが好ましい。
前記溝のうち、周方向の長さ成分が最大の溝の周方向の長さ成分LC(mm)は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3):LC×(70℃tanδCr-70℃tanδSh)>0.05
70℃tanδCrと70℃tanδShとの差が小さくなる場合には、ドライ路面での溝による応力集中防止の効果を大きくしなければならない傾向がある。そこで、70℃tanδCrと70℃tanδShとの差が小さくなる場合には、溝の周方向長さ成分を長くすることが好ましい。
前記溝のうち、溝底の厚さが最小の溝の溝底の厚さH(mm)は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(4):H/0℃tanδCr>1.3
0℃tanδCrが大きくなる場合には、ウェット路面で界面間の温度差を生じにくくするのが難しくなる傾向があるが、溝底厚さ(溝底におけるトレッド部のゴムの厚さ)が厚いと柔軟に動いて応力緩和できるので破壊されにくくなる。そこで、0℃tanδCrが大きくなる場合には、溝底の厚さを厚くすることが好ましい。
前記溝のうち、溝断面積が最大の溝の溝断面積S(mm2)は、下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5):S/(0℃tanδSh-0℃tanδCr)<150
0℃tanδShと0℃tanδCrとの差が小さくなる場合には、ウェット路面で界面間の温度差を生じにくくするのが難しくなる傾向があるが、溝断面積は小さい方が剛性が高くなり破壊されにくくなる。そこで、0℃tanδShと0℃tanδCrとの差が小さくなる場合には、溝断面積は小さい方が好ましい。
前記クラウン部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TCr)は、前記ショルダー部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TSh)よりも低いことが好ましい。路面接地時に弾性変形しやすくなるため、路面にゴムが食い込み易くなり、ウェットグリップ性能の向上が期待できるからである。
前記クラウン部を構成するゴム組成物の硬度は、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の硬度よりも大きいことが好ましい。旋回時のショルダー部でのグリップ性の向上が期待できるからである。
前記クラウン部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Cr)は、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Sh)よりも大きいことが好ましい。直進時の高速耐久性と高速旋回時のグリップ性とを両立させることが期待できるからである。
<定義>
本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態において特定される値とする。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている「Measuring Rim」、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている「Design Rim」を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば “INFLATION PRESSURE”とする。
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
「溝深さD」は、トレッド面に備わった溝のうち、溝深さが最大の溝の溝深さ(mm)である。溝深さは、当該溝における深さの最大値を意味する。溝深さDは、例えば、図6に示すとおりである。
「溝幅W」は、トレッド面に備わった溝のうち、トレッド面における溝幅が最大の溝のトレッド面における溝幅(mm)である。溝幅は、当該溝の長手方向に垂直な方向における溝幅の最大値を意味する。溝幅Wは、例えば、図4および図5に示すとおりである。
「溝の周方向の長さ成分LC」は、トレッド面に備わった溝のうち、周方向の長さ成分が最大の溝の周方向の長さ成分(mm)である。周方向の長さ成分LCは、例えば、図4および図5に示すとおりである。
「溝底の厚さH」は、トレッド面に備わった溝のうち、溝底の厚さが最小の溝の溝底におけるトレッドゴムの厚さ(mm)である。溝底の厚さは、当該溝における溝底の厚さの最小値を意味する。溝底の厚さHは、例えば、図6に示すとおりである。
「溝断面積S」は、トレッドに備わった溝のうち、溝断面積が最大の溝の溝断面積(mm2)である。溝断面積は、当該溝の長手方向に垂直な方向でタイヤ重心を通る切断面で切断した断面図における溝の断面積を意味する。溝断面積Sは、例えば、図6に示すとおりである。
「クラウン部」は、トレッド部の中央に位置し、タイヤ赤道を中心にトレッド幅の±5%の位置よりもタイヤ軸方向外側にまで達し、かつ、トレッド縁までは達しないトレッド部の部分である。但し、通電用ゴム部材が設けられている場合の当該通電用ゴム部材の部分は除く。
「ショルダー部」は、クラウン部のタイヤ軸方向外側に位置し、トレッド縁まで達するトレッド部の部分である。
「トレッド幅」は、トレッド部の、路面と接地する部分であるトレッド面において、タイヤ軸方向の外端である一のトレッド縁から他のトレッド縁までの距離である。
「通電用ゴム部材」は、タイヤの走行時に発生した静電気を効果的に接地面に放出すべく、トレッド部に埋設され、その一部がタイヤ接地面に露出した部材である。ベースペンと称されるものを含む。
<測定方法>
「ゴム組成物のtanδピーク温度」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用い、周波数10Hz、初期歪10%、動歪み±0.5%および昇温速度2℃/minの条件下で、tanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度(tanδピーク温度)として決定する。測定用サンプルは、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤのトレッド部から切り出して作製する場合には、長さ方向はタイヤの周方向である。
「0℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度0℃、周波数10Hz、初期歪み10%、および、動歪み2.5%、伸長モードの条件下で測定する損失正接である。損失正接測定用サンプルは、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤのトレッド部から切り出して作製する場合には、長さ方向はタイヤの周方向である。
「70℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪み10%、および、動歪み1%、伸長モードの条件下で測定する損失正接である。損失正接測定用サンプルは0℃tanδの場合と同様にして作製される。
「M300」は、各試験用タイヤのトレッド部のゴム層内部からタイヤ周方向が引張方向となる様に切り出した厚さ1mmの7号ダンベル形状の試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、300%伸張時応力(M300)(MPa)を求める。
「ゴム組成物の硬度」は、試験タイヤの接地面を形成するトレッド部からタイヤ半径方向が厚さ方向となる様にトレッド部を切りだし、硬度測定サンプルを作成し、JIS K 6253に準拠して23℃でタイプAデュロメータを接地面側からサンプルに押し付けて硬度を測定する。
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される。例えば、SBR等のスチレン含有ゴムに適用される。
「ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。例えば、SBR、BR等に適用される。
「ゴム成分のガラス転移温度」は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定される値である。例えば、SBR、BR等に適用される。
「シス1,4-結合含有率(シス含量)」は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。例えば、BR等に適用される。
「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。例えば、SBR、BR、樹脂、液状ポリマー等に適用される。
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定される。
「カーボンブラックのDBP」は、JIS K 6217-4:2001に準拠して測定される。
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
「軟化点」は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。例えば、樹脂等に適用される。
「SP値」は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法は、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”, Solvent and Coatings Materials Research and Development Department, Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。SP値は、例えば、樹脂等に適用される。
<自動二輪車用タイヤ>
本開示の自動二輪車用タイヤについて、以下説明する。
以下、本開示の一実施形態として、適宜、図面に基づき説明する。図1は、自動二輪車用タイヤのタイヤ回転軸(「タイヤ軸」ともいう。)を含む平面による断面図の一例である(但し、トレッド面に備えられた溝の表示は省略している。図2および図3において同様。)。自動二輪車用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7とを備える。上記断面において、トレッド部2の路面と接地するトレッド面2Aは、タイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲してのびている。また、トレッド面2Aのタイヤ軸方向の外端がトレッド縁2eである。
[トレッド部]
前記自動二輪車用タイヤは、トレッド部が、タイヤ軸方向において中央に位置するクラウン部と前記クラウン部の外側に位置する一対のショルダー部とを備えている。また、前記一対のショルダー部は、それぞれ、さらに分割されたものであってもよい。また、前記クラウン部は、さらに分割されたものであってもよい。
本開示において、クラウン部とショルダー部は所定の関係を満たすが、クラウン部およびショルダー部の少なくとも一つが分割されたものである場合、タイヤ赤道を中心にトレッド幅の±5%の位置よりもタイヤ軸方向外側の領域で、それぞれ、少なくとも一組の隣接する二つの部分が、本開示のクラウン部と本開示のショルダー部とが満たすべき所定の関係を満たしていればよい。
すなわち、タイヤ赤道を中心にトレッド幅の+5%の位置よりもタイヤ軸方向外側の領域で、少なくとも一組の隣接する二つの部分が、本開示のクラウン部と本開示のショルダー部とが満たすべき所定の関係を満たし、また、反対側の、タイヤ赤道を中心にトレッド幅の-5%の位置よりもタイヤ軸方向外側の領域で、少なくとも一組の隣接する二つの部分が、本開示のクラウン部と本開示のショルダー部とが満たすべき所定の関係を満たしていればよい。この場合、これら隣接する二つの部分は、タイヤ軸方向内側の部分が本開示のクラウン部であり、タイヤ軸方向外側の部分が本開示のショルダー部である。
本開示において、クラウン部およびショルダー部の少なくとも一つが分割されたものである場合、すべてのクラウン部とすべてのショルダー部とが、本開示のクラウン部と本開示のショルダー部とが満たすべき所定の関係を満たしていることが好ましい。
トレッド部2には、ベルト層7の半径方向外側にトレッドゴム9が配される。該トレッドゴム9は、本実施形態では、ベルト層7の外面からトレッド面2Aまでを構成している。トレッドゴム9は、タイヤ赤道Cを中心とするクラウン部9Aと、クラウン部9Aに隣接し、トレッド縁2eまで延びる一対のショルダー部9Bとから構成される。すなわち、タイヤ赤道C付近からタイヤ軸方向両側に向かって、クラウン部9A、ショルダー部9Bの2種類の部材が並んで配されている。なお、図1において、クラウン部9Aとショルダー部9Bとは、トレッド面2Aに立てた法線12によって区分けされているが、例えば、トレッド面2Aからベルト層7に向かって、タイヤ軸方向外側または内側に傾斜する境界線で区分されたものなど、区分けの様式は限定されない。
クラウン部9Aとショルダー部9Bとの分割位置(境界線)は、図2に示すように、接地面(正規内圧が充填されるとともに、正規荷重が負荷された状態でトレッドゴム9が路面100に接する部分)の幅Xの内側であっても良いし、あるいは、外側(図3参照)であっても良い。図2に示した状態を「接地面内」にある状態、図3に示した状態を「接地面外」にある状態という。トレッド配合の耐摩耗性の差から生じる段差摩耗を防ぐ観点からは、分割位置は、幅Xの外側であることが好ましい。
[トレッド部を構成するゴム組成物]
(70℃tanδ)
本開示において、前記クラウン部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδCr)は前記ショルダー部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδSh)よりも大きい。本開示において、70℃tanδは、ドライ路面を走行する際のゴム組成物の発熱性に関する指標である。70℃tanδCrが70℃tanδShよりも大きいことで、直進走行中路面から受ける摩擦が大きいクラウン部において、発熱性の面からもより温度が高まり易くなり、その結果、クラウン部がショルダーよりも柔らかくなりやすい状況となる。本開示において、70℃tanδCrと70℃tanδShとの差は、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましく、0.03以上であることがさらに好ましい。一方、該差について特に上限は規定されないが、通常、0.10以下であり、または、0.09以下、または、0.08以下、または、0.07以下である。
70℃tanδCrは0.19以上が好ましく、より好ましくは0.20以上であり、さらに好ましくは0.21以上であり、さらに好ましくは0.22以上であり、さらに好ましくは0.23以上であり、さらに好ましくは0.24以上であり、さらに好ましくは0.25以上である。これにより、本開示の効果が得られやすい。一方、70℃tanδShは、0.22以下が好ましく、より好ましくは0.21以下であり、さらに好ましくは0.20以下であり、さらに好ましくは0.19以下であり、さらに好ましくは0.18以下である。これにより、本開示の効果が得られやすい。
70℃tanδは、ゴム組成物に配合される成分の種類や量によって調節することが可能であり、例えば、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)やオイルの量を増量することで大きくなる傾向があり、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)やオイルの量を減らすことで小さくなる傾向がる。70℃tanδは前記方法により測定される。
(0℃tanδ)
本開示において、前記クラウン部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδCr)は前記ショルダー部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδSh)よりも小さい。本開示において、0℃tanδは、ウェット路面を走行する際のゴム組成物の発熱性に関する指標である。0℃tanδCrが0℃tanδShよりも小さいことで、ショルダー部の発熱性がクラウン部よりも高まり、ショルダー部の温度が接地機会の多いクラウン部と同程度になって、界面間の温度差が生じにくくなる。本開示において、0℃tanδShと0℃tanδCrとの差は、0.10以上であることが好ましく、0.18以上であることがより好ましく、0.20以上であることがさらに好ましい。一方、該差について特に上限は規定されないが、通常、0.50以下であり、または、0.40以下、または、0.38以下、または、0.37以下である。
0℃tanδCrは0.88以下が好ましく、より好ましくは0.80以下であり、さらに好ましくは0.70以下であり、さらに好ましくは0.65以下であり、さらに好ましくは0.60以下であり、さらに好ましくは0.58以下である。これにより、本開示の効果が得られやすい。一方、0℃tanδShは、0.75以上が好ましく、より好ましくは0.78以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、さらに好ましくは0.81以上である。これにより、本開示の効果が得られやすい。
0℃tanδは、ゴム組成物に配合される成分の種類や量によって調節することが可能であり、例えば、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)やオイルの量を増量することで大きくなる傾向があり、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)やオイルの量を減らすことで小さくなる傾向がる。0℃tanδは前記方法により測定される。
(tanδピーク温度)
本開示において、前記クラウン部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TCr)は、ウェットグリップ性能の観点から、前記ショルダー部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TSh)よりも低いことが好ましい。TShとTCrとの差は1℃以上であることが好ましい。一方、該差は、10℃以下であることが好ましく、7℃以下であることが好ましい。
Crは、-20℃以上であることが好ましく、より好ましくは-15℃以上、さらに好ましくは-12℃以上である。また、一方、TCrは、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下である。また、TShは、好ましくは-15℃以上、より好ましくは-10℃以上、さらに好ましくは-5℃以上である。一方、TShは、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下、さらに好ましくは3℃以下である。
ゴム組成物のtanδピーク温度は、ゴム組成物に配合される成分の種類や量によって調節することが可能であり、例えば、充填剤を増量したり、軟化剤を減量することで大きくなる傾向があり、充填剤を減量したり、軟化剤を増量することで小さくなる傾向がある。tanδピーク温度は前記方法により測定される。
(硬度)
本開示において、前記クラウン部を構成するゴム組成物の硬度は、旋回時のグリップ性能の観点から、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の硬度よりも大きいことが好ましい。前記クラウン部を構成するゴム組成物の硬度と前記ショルダー部を構成するゴム組成物の硬度との差は、3以上であることが好ましく、5以上であることが好ましい。当該差について上限は特に限定されないが、通常は、10以下である。
ゴム組成物の硬度は、ゴム組成物に配合される成分の種類や量によって調節することが可能であり、例えば、軟化剤の量を増量すると硬度は小さくなる傾向があり軟化剤の量を減量すると硬度は大きくなる傾向があり、充填材の量を増量すると硬度は大きくなる傾向があり、充填材の量を減量すると硬度は小さくなる傾向があり、硫黄や加硫促進剤の量を減らすと硬度は小さくなる傾向があり、硫黄や加硫促進剤の量を増やすと硬度は大きくなる傾向がある。硬度は前記方法により測定される。
(M300)
本開示において、前記クラウン部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Cr)は、直進時の高速耐久性と高速旋回時のグリップ性との両立の観点から、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Sh)よりも大きいことが好ましい。M300Crは、M300Shに対して、110%以上であることが好ましく、120%以上であることがさらに好ましい。M300Crは、通常、M300Shの150%以下、または、140%以下、または、130%以下である。
ゴム組成物のM300は、ゴム組成物に配合される成分の種類や量によって調節することが可能であり、充填剤を増量したり、軟化剤を減量することで大きくなる傾向があり、充填剤を減量したり、軟化剤を増量することで小さくなる傾向がある。M300は前記方法により測定される。
[トレッド面に備えられた溝]
前記トレッド部のトレッド面は溝を備える。該溝は前記クラウン部と前記ショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がないものである。なお、ショルダー部がさらに分割されたものである場合、該溝は、当該分割された境界をも跨ぐものであることが好ましい。
本開示の溝は、クラウン部とショルダー部の境界を跨ぐものである。該溝により、本開示のトレッドでは、界面だけでなく溝部分にも応力が発生するため、界面への応力集中を防ぎ、界面剥離をより防止することができると考えられる。ここで、「溝が境界を跨ぐ」とは、該溝が境界を跨いでいればよくそれ以上限定されない趣旨であるが、当該溝は界面への応力集中を防ぐことを意図したものであることから、境界を跨いだ上で、境界の両側に広がっているものであることが望ましい。境界以外の部分でも応力を発生することができるので、界面剥離防止の観点から望ましいからである。
本開示の溝は、赤道を跨がないものである。赤道を跨がないことで、赤道上の周方向において溝で挟まれる部分が生じないので、溝を設けつつも、タイヤ赤道近傍の周方向剛性を高めることができ、延いては高速安定性を向上し得る。
図4は、本開示の自動二輪車用のタイヤのトレッド部の展開図の一例である。図4には、トレッド部のクラウン部とショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない溝が設けられている。ここで、同図中のRはタイヤ回転方向を表している。図4において、溝は、より長い主溝とより短い副溝からなる。また、主溝と副溝はタイヤ周方向に交互に設けられており、また、タイヤ赤道に対して、対称パターンとなるように設けられている。図5は、本開示の自動二輪車用のタイヤのトレッド部の展開図の、他の一例である。図5には、トレッド部のクラウン部とショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない溝が設けられている。ここで、同図中のRはタイヤ回転方向を表している。図5において、溝は、より長い主溝とより短い副溝からなる。また、主溝と副溝はタイヤ周方向に交互に設けられており、また、タイヤ赤道に対して、対称パターンとなるように設けられている。
本開示において、溝の面積比率(トレッド部の全面積に対する溝の面積の割合)は通常この分野で採用されるものである限り特に限定されないが、例えば、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、また、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下である。
以下、溝深さD、溝幅W、溝の周方向長さ成分LC、溝底の厚さHおよび溝断面積Sについて説明する。これらは図4、図5および図6にも表示している。なお、図6は、図4のトレッドパターンをもつ図1の自動二輪車用のタイヤを、タイヤ重心を通る図4上の切断線Yで切断したときの断面図である。
(溝深さD)
式(1):D×70℃tanδCr>1.20
において、右辺の値は、1.30であることが好ましく、1.40であることがより好ましく、1.50であることがさらに好ましい。D×70℃tanδCrの値の上限は特に限定されないが、通常、3.00未満であり、好ましくは2.50未満、より好ましくは2.00未満である。
溝深さDは、4.0mm以上が好ましく、4.5mm以上がより好ましく、4.8mm以上がさらに好ましい。一方、溝深さDは、6.5mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましい。
(溝幅W)
式(2):W×70℃tanδCr>0.80
において、右辺の値は、0.90であることが好ましく1.00であることがより好ましく、1.10であることがさらに好ましい。W×70℃tanδCrの値の上限は特に限定されないが、通常、2.50未満であり、好ましくは2.00未満、より好ましくは1.50未満である。
溝幅Wは、3.0mm以上が好ましく、3.3mm以上がより好ましく、3.5mm以上がさらに好ましい。一方、溝幅Wは、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がさらに好ましい。
(溝の周方向長さ成分LC
式(3):LC×(70℃tanδCr-70℃tanδSh)>0.05
において、右辺の値は、0.06であることが好ましく、0.07であることがより好ましく、0.08であることがさらに好ましい。LC×(70℃tanδCr-70℃tanδSh)の値の上限は特に限定されないが、通常、4.00未満であり、好ましくは3.50未満、より好ましくは3.00以下である。
周方向長さ成分LCは、30.0mm以上が好ましく、35.0mm以上がより好ましい。一方、周方向長さ成分LCは、50.0mm以下が好ましく、45.0mm以下がより好ましく、40.0mm以下がさらに好ましい。
(溝底の厚さH)
式(4):H/0℃tanδCr>1.3
において、右辺の値は、1.4であることが好ましく、1.5であることがより好ましく、1.6であることがさらに好ましい。H/0℃tanδCrの値の上限は特に限定されないが、通常、6.0未満であり、好ましくは5.0未満、より好ましくは4.0未満である。
溝底の厚さHは、1.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。一方、溝底の厚さHは、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましい。
(溝断面積S)
式(5):S/(0℃tanδSh-0℃tanδCr)<150
において、右辺の値は、140であることが好ましく、130であることがより好ましく、120であることがさらに好ましい。S/(0℃tanδSh-0℃tanδCr)の値の下限は特に限定されないが、通常、200未満であり、好ましくは180未満、より好ましくは160未満である。
溝断面積Sは、14.0mm2以上が好ましく、15.0mm2以上がより好ましく、16.0mm2以上がさらに好ましい。一方、溝断面積Sは、35.0mm2以下が好ましく、29.0mm2以下がより好ましく、26.0mm2以下がさらに好ましい。
<ゴム組成物を構成する成分>
本開示に係るゴム組成物を構成する成分について以下説明する。ここで、本開示に係るゴム組成物とは、トレッド部のクラウン部を構成するゴム組成物、および、トレッド部のショルダー部を構成するゴム組成物のいずれをも含む。
[ゴム成分]
本開示において、ゴム成分はジエン系ゴムを含むことが好ましい。本開示の好ましい一態様において、ゴム成分はジエン系ゴムのみからなるものが好ましい。
(ジエン系ゴム)
ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等が挙げられる。ジエン系ゴムは、SBRとBRを含むものであることが好ましく、SBRとBRのみからなるものであってもよい。
≪SBR≫
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。SBRは1種または2種以上を用いることができる。
また、SBRとしては、非変性SBRを用いることもできるし、変性SBRを用いることもできる。変性SBRとしては、タイヤ工業において一般的なものをいずれも使用することができ、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を導入したものが挙げられる。そのようなSBRとしては、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性した末端変性SBRや、主鎖に下記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に下記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に下記官能基を有し、少なくとも一方の末端を下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性した主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基が導入されたものを挙げることができる。
さらに、変性SBRとしては、上記の非変性SBRや変性SBRを、さらに水素添加したもの、エポキシ化したもの、スズ変性したもの等を挙げることができる。中でも、上記変性SBRをさらに水素添加したSBR(変性水添SBR)が好ましい。水添SBRは、二重結合を減らして単結合を増やすことで、分子鎖の運動性を向上せしめたものであり、ポリマー同士の絡み合い効果が向上し、補強性が増す傾向があるので、本開示の効果の観点から好ましい。
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
SBRのスチレン含量は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、該スチレン含量は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。なお、スチレン含量は前記測定方法により算出される。
SBRのビニル結合量は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましい。また、該ビニル結合量は、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。なお、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は前記方法で測定される。
SBRのガラス転移温度(Tg)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは-90℃以上、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは-40℃以上である。また、該Tgは、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-25℃以下である。なお、ガラス転移温度は前記方法で測定される。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、20万以上が好ましく、30万以上がより好ましい。また、該Mwは、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましく、100万以下がより好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は前記方法より求めることができる。
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、SBRは100質量%であってもよい。SBRの含有量とは、油展SBRの場合には、油展オイルを除いたSBR自体の含有量である。
≪BR≫
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率(シス含量)が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。BRは1種または2種以上を用いることができる。このうち、ハイシスBRが好ましい。
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のもの、宇部興産(株)製のもの、JSR(株)製のもの等が挙げられる。ハイシスBRのシス含量は、好ましくは、95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上である。希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル結合量(1,2結合ブタジエン単位量)が好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.8%モル以下であり、シス含量(シス-1,4結合含有率)が好ましくは95モル%以上、より好ましくは96%モル以上、より好ましくは97%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス社製のものなどを用いることができる。なお、シス1,4結合含有率、および、ビニル結合量は前記方法により測定される。
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のもの等を用いることができる。
変性BRとしては、上記SBRで説明したのと同様の変性を受けたBRが挙げられる。また、変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られるもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、ZSエラストマー(株)製のもの等を用いることができる。
BRのガラス転移温度(Tg)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは-130℃以上、より好ましくは-120℃以上、さらに好ましくは-110℃以上である。また、該Tgは、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-60℃以下、さらに好ましくは-70℃以下、さらに好ましくは-80℃以下である。なお、本明細書において、ガラス転移温度は前記方法で測定される。
BRの重量平均分子量(Mw)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、20万以上が好ましく、30万以上がより好ましい。また、該Mwは、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましく、100万以下がより好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は前記方法より求めることができる。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。BRの含有量の下限について特に限定はなく、0質量%でもよいし、例えば、5質量%以上、10質量%以上、または、20質量%以上であってもよい。
≪その他のジエン系ゴム≫
ゴム成分は、前記のSBRおよびBR以外のその他のジエン系ゴム成分を含有してもよい。その他のジエン系ゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリノルボルネンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(ジエン系ゴム以外のゴム成分)
ゴム成分は非ジエン系ゴムを含むことができる。非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[充填剤]
充填剤は、タイヤ工業で一般的に使用されるものを使用することができ、シリカ、カーボンブラックの他、さらに、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、クレー、炭酸カルシウム、マイカ等が挙げられる。充填剤は1種または2種以上を使用することができる。
シリカ以外の充填剤としては、シリカとカーボンブラックを含むもの、シリカとカーボンブラックのみからなるものを好適に使用することができる。
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g以上が好ましく、160m2/g以上がより好ましく、170m2/g以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは前記方法で測定される。
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、本開示の効果の観点から10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、150質量部以下が好ましく、130質量部以下がより好ましく、110質量部以下がさらに好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、ゴム工業において一般的なものを適宜利用することができ、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等を挙げることができ、あるいは、N110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を挙げることができる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐摩耗性能、グリップ性能等の観点から、40m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、70m2/g以上がさらに好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、該N2SAは、良好な分散の観点から、300m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下がさらに好ましく、160m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは前記方法で測定される。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、十分な補強性の観点から、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのDBPは、ウェットグリップ性能の観点から、200ml/100g以下が好ましく、150ml/100g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックのDBPは前記方法で測定される。
カーボンブラックの含有量は、良好な紫外線クラック性能、良好な耐摩耗性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、加工性や発熱性の観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは110質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下である。
充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、充分な補強性の観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。一方、該含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは250質量部以下、より好ましくは180質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。
(シランカップリング剤)
ゴム組成物は、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来から使用される任意のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のメルカプト系シランカップリング剤などのメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系のシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系のシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系のシランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、およびチオエステル基を有するシランカップリング剤が好ましく、スルフィド基を有するシランカップリング剤がより好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、充分な耐チッピング性能の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。また、シランカップリング剤の含有量は、含有量に見合った配合効果の観点から、シリカ100質量部に対し、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。
[オイル]
ゴム組成物は、オイルを含有することができる。オイルとしては、特に限定されず、例えば、プロセスオイル、植物油脂、およびそれらの混合物などを用いることができる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどを挙げることができる。また、植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などを挙げることができる。このうち、芳香族系プロセスオイルが好ましい。オイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルの含有量は、本開示の効果の観点から、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。該含有量は、操縦安定性の観点から、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下がより好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
[その他配合剤]
ゴム組成物は、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、樹脂、液状ポリマー、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、無機カリウム塩、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
(樹脂)
樹脂は、タイヤ工業で慣用される樹脂成分を用いることができる。そのような樹脂成分としては、例えば、石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロン系樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本開示の効果の観点から、石油樹脂が好ましい。
≪石油樹脂≫
石油樹脂としては、特に限定されないが、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脂肪族系石油樹脂としては、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂(C5系石油樹脂とも称される。)を用いることができる。芳香族系石油樹脂としては、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂(C9系石油樹脂とも称される。)を用いることができる。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂としては、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂(C5C9系石油樹脂とも称される。)が用いられる。また、前記の石油樹脂を水素添加したものを使用してもよい。なかでも芳香族系石油樹脂が好適に用いられる。芳香族系石油樹脂としては、例えば、α-メチルスチレン樹脂が挙げられる。α-メチルスチレン系樹脂としては、α-メチルスチレンのホモポリマー(ポリ-α-メチルスチレン)、α-メチルスチレンと芳香族化合物やフェノール系化合物を含む他の化合物とのコポリマーが挙げられる。このコポリマーを構成し得る他の化合物としては、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。α-メチルスチレン系樹脂としては、アリゾナケミカル社製のものなどが好適に用いられる。
≪テルペン系樹脂≫
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでもテルペンスチレン樹脂は、SBRとBRの両方に対して特に相溶性がよく、ゴム成分中に硫黄が分散しやすくなることから、好適に用いられる。
ポリテルペン樹脂は、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種を原料とする樹脂である。テルペン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
テルペンフェノール樹脂は、前記テルペン化合物およびフェノール系化合物を原料とする樹脂である。テルペンスチレン樹脂は、前記テルペン化合物およびスチレンを原料とする樹脂である。ポリテルペン樹脂およびテルペンスチレン樹脂は、水素添加処理を行った樹脂(水添ポリテルペン樹脂、水添テルペンスチレン樹脂)であってもよい。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができ、また市販の水添樹脂を使用することもできる。
本開示では、テルペン系樹脂は市販品が用いられてもよい。このような市販品は、ヤスハラケミカル(株)等によって製造販売されるものが例示される。
≪ロジン系樹脂≫
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪フェノール系樹脂≫
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪クマロン系樹脂≫
クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪樹脂の含有量≫
樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、接着性能およびグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能およびグリップ性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下が特に好ましい。
≪樹脂の軟化点≫
樹脂の軟化点は、グリップ性能の観点から、160℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。また、軟化点は、グリップ性能の観点から、20℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上がさらに好ましい。なお、軟化点は前記方法で測定される。
≪樹脂の重量平均分子量≫
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、揮発しにくく、グリップ性能が良好である点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、該Mwは、15000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、8000以下がさらに好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は前記方法より求めることができる。
≪樹脂のSP値≫
樹脂のSP値は、ゴム成分(特にSBR)との相溶性が優れる点から、8~11の範囲が好ましく、8~10の範囲がより好ましく、8.3~9.5の範囲がさらに好ましい。上記範囲内のSP値を持つ樹脂を使用することでSBRおよびBRとの相溶性が向上し、耐摩耗性能および破断伸びを改善できる。なお、SP値は前記方法により計算方法される。
(液状ポリマー)
液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)等の液状ジエン系重合体が挙げられる。液状ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能の観点から、液状SBRが好ましい。液状ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が1.0×103~2.0×105であることが好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は前記方法より求めることができる。
液状ポリマーを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、グリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
(ワックス)
ワックスは、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化の抑制の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(加工助剤)
加工助剤は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができ、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
(老化防止剤)
老化防止剤は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができる。具体的には、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系、フェニレンジアミン系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられる。このうち、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、あるいは、1質量部以上であっても好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(ステアリン酸)
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(酸化亜鉛)
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(無機カリウム塩)
無機カリウム塩は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機カリウム塩としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび四ホウ酸カリウムからなる群から選ばれる1種以上のカリウム塩等が挙げられ、これらのうち、四ホウ酸カリウムが好ましい。
無機カリウム塩の含有量は、押出し加工性の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上である。また、耐摩耗性の観点からは、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.45質量部以下である。
(加硫剤)
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができ、それぞれ、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。硫黄以外の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のもの、フレキシス社製のもの、ランクセス社製のものなどを用いることができる。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保し、良好なグリップ性能および耐摩耗性能を得るという観点から、0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましい。また、劣化の抑制の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系の少なくとも一つが好ましく、スルフェンアミド系およびグアニジン系を併用することがより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)が好ましい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
<製造方法>
[ゴム組成物の製造]
本開示のゴム組成物の製造方法としては、適宜、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、50~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
前記各成分を用いて、本開示のゴム組成物を製造する場合において、各成分の配合は、クラウン部を構成するゴム組成物、および、ショルダー部を構成するゴム組成物のそれぞれの物性に応じて、適宜決定することができる。
[タイヤの製造]
上記で得たゴム組成物は、未加硫の段階で所望のトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとすることができる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧(加硫)することにより、本開示の自動二輪車用タイヤを得ることができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で5~30分間加硫する方法が挙げられる。
<用途>
本開示の自動二輪車用タイヤは、その形式は特に限定されず、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤのいずれであってもよいが、空気入りタイヤとして用いることが好ましい。また、オンロードタイヤ、オフロードタイヤ、競技用タイヤ等種々のいずれの用途にも使用することができる。
以下、実施例に基づいて、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらのみに限定されるものではない。
<各種薬品>
SBR1:タフデン(TUFDENE)4850(旭化成(株)の未変性S-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル結合量:46%、Tg:-25℃、ゴム固形分100質量部に対して油展オイル分50質量部含有)
SBR2:タフデン(TUFDENE)3830(旭化成(株)の未変性S-SBR、スチレン含量:33質量%、ビニル結合量:34%、Tg:-39℃、ゴム固形分100質量部に対して油展オイル分37.5質量部含有)
BR1:ウベポールBR150B(Co系触媒を用いて合成された、宇部興産(株)のハイシスBR、シス含量:97%、ビニル結合量:1%、Tg:-107℃)
カーボンブラック1:ショウブラックN110(キャボットジャパン(株)から入手可能、N2SA:142m2/g(BET値)、DBP吸油量:115mL/100g)
シリカ1:ウルトラシル(ULTRASIL)VN3(エボニッグデグサ社から入手可能、N2SA:175m2/g(BET値))
シランカップリング剤1:Si69(エボニッグデグサ社製、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド)
オイル:ダイアナプロセスNH-70S(出光興産(株)の芳香族系プロセスオイル)
樹脂:Sylvatraxx 4401(クレイトンコーポレーションの芳香族系石油樹脂(α-メチルスチレン樹脂:α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点85℃、SP値:9.1)
ワックス:オゾエース(Ozoace)0355(日本精蝋(株)から入手可能)
老化防止剤:アンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、住友化学(株)から入手可能)
ステアリン酸:ステアリン酸「つばき」(日油(株)から入手可能)
酸化亜鉛:銀嶺R(東邦亜鉛(株)から入手可能)
硫黄:HK-200-5(細井化学工業(株)の5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:ノクセラーNS‐P(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、大内新興化学工業(株)から入手可能)
加硫促進剤2:ノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、大内新興化学工業(株)から入手可能)
<試験用タイヤの製造>
表1に示すクラウン部用ゴム組成物についての配合処方(C1~C7)にしたがい、(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を、排出温度150℃で5分間混練りした。次に、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールで4分間、105℃になるまで練り込み、クラウン部用の未加硫ゴム組成物を得た。
一方、表1に示すショルダー部用ゴム組成物についての配合処方(S1~S6)に従い、クラウン部の場合と同様に処理して、ショルダー部用の未加硫ゴム組成物を得た。
図1の基本構造および図4または図5の基本パターンを有する試験用タイヤを、表2の仕様に基づき作製した。すなわち、上記で得たクラウン部用未加硫ゴム組成物およびショルダー部用未加硫ゴム組成物を、それぞれ、トレッドのクラウン部の形状および1対のショルダー部の形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃で12分間プレス加硫して、試験用タイヤを得た。試験用タイヤは、フロントタイヤのサイズが120/70ZR17、リアタイアのサイズが180/55ZR17であった。
<測定・評価>
以下に示す方法に従い、各測定および各評価を実施した。結果を表1および表3に示す。
[tanδ]
GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、0℃tanδは、温度0℃、周波数10Hz、初期歪み10%、および、動歪み2.5%、伸長モードの条件下で、70℃tanδは、温度70℃、周波数10Hz、初期歪み10%、および、動歪み1%、伸長モードの条件下で測定した。測定用サンプルは、タイヤのトレッド部からタイヤの周方向を長さ方向として切り出して作製した長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物を用いた。
[tanδピーク温度]
加硫ゴム組成物のtanδピーク温度は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用い、周波数10Hz、初期歪10%、動歪み±0.5%および昇温速度2℃/minの条件下で、tanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度(tanδピーク温度)として決定した。測定用サンプルは、タイヤのトレッド部からタイヤの周方向を長さ方向として切り出して作製した長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物を用いた。
[硬度]
加硫ゴム組成物の硬度は、試験タイヤの接地面を形成するトレッド部からタイヤ半径方向が厚さ方向となる様にトレッド部を切りだし、硬度測定サンプルを作成し、JIS K 6253に準拠して23℃でタイプAデュロメータを接地面側からサンプルに押し付けて硬度を測定した。
[M300]
M300は、各試験用タイヤのトレッド部のゴム層内部からタイヤ周方向が引張方向となる様に切り出した厚さ1mmの7号ダンベル形状の試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、300%伸張時応力(M300)(MPa)を求めた。
[ドライ耐剥離性能]
各試験用タイヤを、正規リム(前輪:MT3.50x17、後輪:MT5.50x17)に組み込み、テスト車両(排気量750ccの自動二輪車(4サイクル))に装着した。空気内圧は、フロントタイヤ250kPaに、リアタイヤ290kPaに調節した。
このテスト車両で、乾燥アスファルト路面のテストコースを5000km走行し、トレッドのクラウン部とショルダー部の界面の剥離状況を、目視にて評価した。基準比較例のものを100として、指数表示した。数値が大きいほど優れていることを示す。
[ウェット耐クラック性能]
上記テスト車両で、ウェットアスファルト路面のテストコースを5000km走行し、トレッドにおけるクラックの発生状況を、目視にて評価した。基準比較例のものを100として、指数表示した。数値が大きいほど優れていることを示す。
Figure 2023013925000002
Figure 2023013925000003
Figure 2023013925000004
表3より、本開示の自動二輪車用タイヤでは、ドライ耐剥離性能およびウェット耐クラック性能の指数の総和が向上していることがわかる。
<実施形態>
本開示の実施形態の例を以下に示す。
[1]トレッド部がタイヤ軸方向において中央に位置するクラウン部と前記クラウン部の外側に位置する一対のショルダー部とを備えた自動二輪車用タイヤであって、
前記クラウン部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδSh)よりも大きく、
前記クラウン部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδSh)よりも小さく、
前記トレッド部のトレッド面が、溝を備え、
前記溝が、前記クラウン部と前記ショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない、自動二輪車用タイヤ。
[2]前記溝のうち、溝深さが最大の溝の溝深さD(mm)が、下記式(1)を満たす、好ましくは下記式(1)を右辺の値が1.30で満たす、より好ましくは下記式(1)を右辺の値が1.40で満たす、さらに好ましくは下記式(1)を右辺の値が1.50で満たす、上記[1]記載の自動二輪車用タイヤ。
式(1):D×70℃tanδCr>1.20
[3]前記溝のうち、溝幅が最大の溝の溝幅W(mm)が、下記式(2)を満たす、好ましくは下記式(2)を右辺の値が0.90で満たす、より好ましくは下記式(2)を右辺の値が1.00で満たす、さらに好ましくは下記式(2)を右辺の値が1.10で満たす、上記[1]または[2]記載の自動二輪車用タイヤ。
式(2):W×70℃tanδCr>0.80
[4]前記溝のうち、周方向の長さ成分が最大の溝の周方向の長さ成分LC(mm)が、下記式(3)を満たす、好ましくは下記式(3)を右辺の値が0.06で満たす、より好ましくは下記式(3)を右辺の値が0.07で満たす、さらに好ましくは下記式(3)を右辺の値が0.08で満たす、上記[1]~[3]のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
式(3):LC×(70℃tanδCr-70℃tanδSh)>0.05
[5]前記溝のうち、溝底の厚さが最小の溝の溝底の厚さH(mm)が、下記式(4)を満たす、好ましくは下記式(4)を右辺の値が1.4で満たす、より好ましくは下記式(4)を右辺の値が1.5で満たす、さらに好ましくは下記式(4)を右辺の値が1.6で満たす、上記[1]~[4]のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
式(4):H/0℃tanδCr>1.3
[6]前記溝のうち、溝断面積が最大の溝の溝断面積S(mm2)が、下記式(5)を満たす、好ましくは下記式(5)を右辺の値が140で満たす、より好ましくは下記式(5)を右辺の値が130で満たす、さらに好ましくは下記式(5)を右辺の値が120で満たす、上記[1]~[5]のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
式(5):S/(0℃tanδSh-0℃tanδCr)<150
[7]前記クラウン部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TSh)よりも低い、好ましくはTCrがTShより1℃以上低い、上記[1]~[6]のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[8]前記クラウン部を構成するゴム組成物の硬度が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の硬度よりも大きい、好ましくは3以上大きい、より好ましくは5以上大きい、上記[1]~[7]のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[9]前記クラウン部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Cr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Sh)よりも大きい、好ましくはM300CrがM300Shの110%以上である、より好ましくはM300CrがM300Shの120%以上である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
2A トレッド面
2e トレッド縁
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
8 ビードエイペックス
9 トレッドゴム
9A クラウン部
9B ショルダー部
100 路面
C 赤道
D 溝深さ
H 溝底の厚さ
C 溝の周方向長さ成分
S 溝断面積
W 溝幅
X 接地面の幅
Y 切断線
TW トレッド幅
Cr クラウン部
Sh ショルダー部
R タイヤ回転方向

Claims (9)

  1. トレッド部がタイヤ軸方向において中央に位置するクラウン部と前記クラウン部の外側に位置する一対のショルダー部とを備えた自動二輪車用タイヤであって、
    前記クラウン部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδSh)よりも大きく、
    前記クラウン部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の0℃におけるtanδ(0℃tanδSh)よりも小さく、
    前記トレッド部のトレッド面が、溝を備え、
    前記溝が、前記クラウン部と前記ショルダー部との境界を跨ぎ、かつ、赤道を跨がない、自動二輪車用タイヤ。
  2. 前記溝のうち、溝深さが最大の溝の溝深さD(mm)が、下記式(1)を満たす、請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
    式(1):D×70℃tanδCr>1.20
  3. 前記溝のうち、溝幅が最大の溝の溝幅W(mm)が、下記式(2)を満たす、請求項1または2記載の自動二輪車用タイヤ。
    式(2):W×70℃tanδCr>0.80
  4. 前記溝のうち、周方向の長さ成分が最大の溝の周方向の長さ成分LC(mm)が、下記式(3)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
    式(3):LC×(70℃tanδCr-70℃tanδSh)>0.05
  5. 前記溝のうち、溝底の厚さが最小の溝の溝底の厚さH(mm)が、下記式(4)を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
    式(4):H/0℃tanδCr>1.3
  6. 前記溝のうち、溝断面積が最大の溝の溝断面積S(mm2)が、下記式(5)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
    式(5):S/(0℃tanδSh-0℃tanδCr)<150
  7. 前記クラウン部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TCr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物のtanδピーク温度(TSh)よりも低い、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
  8. 前記クラウン部を構成するゴム組成物の硬度が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の硬度よりも大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
  9. 前記クラウン部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Cr)が、前記ショルダー部を構成するゴム組成物の300%伸長時応力(M300Sh)よりも大きい、請求項1~8のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
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