JP2023094043A - 二輪車用タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低燃費性能とグリップ性能の総合性能に優れた二輪車用タイヤを提供すること。【解決手段】一対のビード部および一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なり、最表面を構成するゴム層を少なくとも含む1以上のゴム層からなるトレッド部とを備え、タイヤ外径Dt(mm)が580mm以上である二輪車用タイヤであって、前記Dtと、前記トレッド部の最表面を構成するゴム層を形成するゴム組成物の70℃におけるtanδの値70℃tanδおよび40℃におけるtanδの値40℃tanδとが、次式を満たす二輪車用タイヤ。(Dt/450)-0.50≦70℃tanδ/40℃tanδ (1)【選択図】図1

Description

本開示は、二輪車用タイヤに関する。
二輪車用タイヤは旋回時のグリップ性能が重要であることから、この要求を満たすべく、種々のタイヤが開発されている(特許文献1)。
特開2016-222247号公報
しかし、一般に、グリップ性能を上げれば、燃費性能が犠牲となり、両者を同時に高めることは困難である。また、外径の大きいタイヤでは、直線走行時と旋回時とで、接地部分が異なるため、それぞれの状況に応じた性能が必要になる。
本開示は、低燃費性能とグリップ性能の総合性能に優れた二輪車用タイヤを提供することを目的とする。
本開示は以下の二輪車用タイヤに関する。
一対のビード部および一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なり、最表面を構成するゴム層を少なくとも含む1以上のゴム層からなるトレッド部とを備え、タイヤ外径Dt(mm)が580mm以上である二輪車用タイヤであって、
前記Dtと、前記トレッド部の最表面を構成するゴム層を形成するゴム組成物の70℃におけるtanδの値70℃tanδおよび40℃におけるtanδの値40℃tanδとが、次式を満たす二輪車用タイヤ。
(Dt/450)-0.50≦70℃tanδ/40℃tanδ (1)
本開示によれば、低燃費性能とグリップ性能の総合性能に優れた二輪車用タイヤを提供することができる。
本開示の二輪車用タイヤのタイヤ回転軸を含む平面による断面図の一例である。 本開示の二輪車用タイヤのトレッド部の展開図の一例である。 本開示の二輪車用タイヤのトレッド部の展開図の一例である。
理論に拘束されることは意図しないが、本開示において低燃費性能とグリップ性能の総合性能を高めることができるメカニズムとしては、以下が考えられる。すなわち、二輪車では、直進走行時にはそのトレッド部のクラウン領域が温められる一方、ショルダー領域は空冷される。外径が580mm以上の大径のタイヤでは、このクラウン領域とショルダー領域との温度差がより大きくなる。この状態から旋回により車体をバンクさせると、クラウン領域とショルダー領域の双方が接地するが、このとき高温(70℃)tanδと低温(40℃)tanδの差が小さいと接地する全領域でグリップが得られるため、全体としてグリップ性能を高めることができる。一方、バンク状態から車体を起こし直進走行する際には、旋回時に急激に温められた旋回時の接地領域の転がり抵抗が増大するが、このとき高温(70℃)tanδと低温(40℃)tanδの差が小さいと転がり抵抗の急激な上昇を抑えることができるので、低燃費性能を高めることができる。以上により、グリップ性能と低燃費性能の総合性能を高めることができるものと考える。
前記70℃tanδと前記40℃tanδとは次式を満たすことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
70℃tanδ/40℃tanδ≧0.80 (2)
前記70℃tanδは次式を満たすことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
70℃tanδ≧0.20 (3)
前記40℃tanδは次式を満たすことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
40℃tanδ≦0.25 (4)
前記トレッド部の最表面を構成するゴム層はタイヤ幅方向で実質的に分割されていないことが好ましい。実質的に分割されていないことで、グリップ性能と低燃費性能の総合性能という本開示の効果をより発揮し易いからである。
前記ゴム組成物はゲル化剤と、オイルと、樹脂とを含み、前記ゲル化剤の、前記オイルおよび前記樹脂の合計に対する比率(質量%)が5.0質量%以上であることが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
前記ム組成物は充填剤を含み、前記充填剤はシリカ40.0質量%以上を含むことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
前記ゴム組成物はゴム成分を含み、前記ゴム成分はスチレンブタジエンゴム70質量%以上を含むことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
前記樹脂は芳香族系石油樹脂を含むことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
前記ゴム組成物は加硫促進剤を含み、前記加硫促進剤はスルフェンアミド系加硫促進剤およびグアニジン系加硫促進剤を含むことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
前記ゴム組成物は硫黄を含むことが好ましい。本開示の効果がより達成し易くなるからである。
前記トレッド部のトレッド面に浅溝があることが好ましい。新品タイヤのトレッド部の摩耗を助長し、その性能を早期に発揮させることができるとともに、性能が発揮できるまで摩耗したことを目視により確認することができること、および/または、排水性が向上する他、溝に区画された陸部が動きやすく発熱を助長するため、グリップ性能を向上させることができるからである。
本開示において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「~」にかかる上限および下限の数値は任意に組合せできる数値であり、加えて、実施例における数値を該上限および下限と組合せることもできる。また、「~」によって数値範囲を特定する場合、特に断りのない限り、その両端の数値も含む意味である。さらに、本開示において、両端の値を含むものとして示される数値範囲は、本開示の趣旨に反しない限り、その両端の値のうちいずれか一端の値を含まない数値範囲、さらには両端の値の双方を含まない数値範囲をも同時に示すものと解される。
[定義]
「タイヤの各部の寸法等」は、特に断りがない限り、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態において特定される値とする。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている「Measuring Rim」、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている「Design Rim」を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」とする。
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、およびETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
「タイヤ外径(Dt)」とは、正規状態におけるタイヤの差し渡しの長さ(mm)である。
「クラウン領域」とは、直進走行時にトレッド面が接地するトレッド部の領域をいう。
「ショルダー領域」とは、クラウン領域のタイヤ幅方向外側にある、トレッド部の領域をいう。ショルダー領域は、クラウン領域の外側に一対ある。
「トレッド部の最表面を構成するゴム層がタイヤ幅方向で実質的に分割されていない」とは、タイヤ幅方向の90%以上の領域において、トレッド部の最表面が当該ゴム層で構成されていることをいう。
[測定方法]
「70℃tanδ」は、各試験用タイヤのトレッド部のゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの粘弾性測定サンプルを採取し、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で、損失正接tanを測定する。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とする。
「40℃tanδ」は、測定温度を温度40℃とする以外は、70℃tanδの場合と同様にして、測定する。
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される。
「ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017によって測定される。
「ガラス転移温度」は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定される値である。
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017によって測定される。
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017によって求められる値である。
「カーボンブラックのDBP」は、JIS K 6217-4:2017に準拠して測定される。
「軟化点」は、JIS K 6220-1:2015に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
「樹脂のSP値」は、その構造に基づいてHoy法によって算出される溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”,Solvent and Coatings Materials Research and Development Department,Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
[二輪車用タイヤ]
以下、本開示の二輪車用タイヤについて説明する。ここで、二輪車用タイヤとは、二輪自動車に装着されることを前提としたタイヤである。適宜、図面を用いて説明するが、当該図面は実施形態についての一例であり、本開示は、これら図面によって限定的に解釈されるものではない。
本開示の二輪車用タイヤは、一対のビード部および一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なり、最表面を構成するゴム層を少なくとも含む1以上のゴム層からなるトレッド部とを備え、タイヤ外径Dt(mm)が580mm以上である二輪車用タイヤである。
図1は、二輪車用タイヤのタイヤ回転軸を含む平面による断面図の一例である。二輪車用タイヤ1は、一対のビード部4および一対のサイドウォール部3と、両サイドウォール部に連なり、最表面を構成するゴム層からなるトレッド部2とを備えている。上記断面において、トレッド部2の路面と接地するトレッド面2Aは、タイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲してのびている。また、トレッド面2Aのタイヤ軸方向の外端がトレッド端2eである。トレッド部2には、ベルト層5の半径方向外側にトレッドゴム2Bが配される。該トレッドゴム2Bは、本実施形態では、ベルト層5の外面からトレッド面2Aまでを構成している。また、タイヤ外径をDtとして示している。
<タイヤ外径>
本開示の二輪車用タイヤは、タイヤ外径Dt(mm)が580mm以上である。このように外径の大きい二輪車用タイヤでは、直線走行時と旋回時とで、接地部分が異なるため、それぞれの状況に応じた性能が必要になるが、本開示は、タイヤ外径が大きくても、低燃費性能とグリップ性能の総合性能を高めることを目的とするものである。タイヤ外径は、好ましくは585mm以上、より好ましくは590mm以上、さらに好ましくは595mm以上、さらに好ましくは600mm以上、さらに好ましくは620mm以上である。一方、本開示のタイヤ外径の上限について特に制限はないが、通常、700mm程度である。
<トレッド部>
(式(1))
本開示の二輪車用タイヤのトレッド部は、Dt(mm)と、トレッド部の最表面を構成するゴム層を形成するゴム組成物の70℃におけるtanδの値70℃tanδおよび40℃におけるtanδの値40℃tanδとが、次式を満たすものである。
(Dt/450)-0.50≦70℃tanδ/40℃tanδ (1)
式(1)において、左辺の値は、Dt(mm)の値に応じて定まる値である。例えば、式(1)の左辺の値は、Dtが580mmの場合0.79であり、Dtが620mmの場合0.88である。したがって、タイヤ外径(Dt)が大きくなるにつれて、式(1)の右辺の値はより大きい値となることが求められるが、本開示においては、70℃tanδと40℃tanδとの差が小さくなること、すなわち、右辺の値が1近辺の値になることが、本開示の効果の観点から好ましい。
70℃tanδと40℃tanδとの差は、常法により、調節することができる。本開示では、例えば、ゲル化剤の量を増やすことにより、当該差を小さくすることができる。また、例えば、オイルの量を増やすこと、カーボンブラックの量を増やすこと、ゴム成分と非相溶な石油樹脂の如き樹脂の量を増やすこと等によっても、当該差を小さくし得る。
上記式(1)において、右辺と左辺との差は、0.01以上であることが好ましく、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.10以上である。当該差が大きくなることで、よりグリップ性能が向上する傾向がある。
(式(2))
70℃tanδと40℃tanδとは次式を満たすことが好ましい。
70℃tanδ/40℃tanδ≧0.80 (2)
70℃tanδ/40℃tanδの値は、本開示の効果の観点から、より好ましくは0.82以上、さらに好ましくは0.84以上、さらに好ましくは0.86以上、さらに好ましくは0.88以上さらに好ましくは0.90以上である。一方、同値の上限は、約1.00である。ここで、「約」とは、±2%の変動を許容する趣旨である。
(式(3))
70℃tanδは次式を満たすことが好ましい。
70℃tanδ≧0.20 (3)
70℃tanδの値は、グリップ性能の観点から、0.21以上であることが好ましく、または0.22以上であることが好ましく、または0.23以上であることが好ましく、または0.24以上であることが好ましい。一方、同値の上限は、グリップ性能の観点から特に制限はないが、通常、0.40以下である。
70℃tanδの値は、常法により、調節することができ、本開示においては、例えば、カーボンブラックの配合量を増やすこと、石油樹脂の量を増やすこと等により、大きくすることができる。
(式(4))
40℃tanδは次式を満たすことが好ましい。
40℃tanδ≦0.25 (4)
40℃tanδの値は、低燃費性能の観点から、0.24以下であることが好ましく、または0.23以下であることが好ましく、または0.22以下であることが好ましい。一方、同値の下限は、低燃費性能の観点から特に制限はないが、通常、0.15以上である。
40℃tanδの値は、常法により、調節することができ、本開示においては、例えば、オイルの配合量を増やすこと、充填剤のうちシリカの配合比率を増やすこと等により、小さくすることができる。
(トレッド部のゴム層)
トレッド部は、その最表面のゴム層を形成するゴム組成物が、上記式(1)を満たすものである限り特に限定されない。したがって、トレッド部がタイヤ半径方向において複数のゴム層から構成されている場合であっても、少なくともその最外層(トレッド部の最表面を構成するゴム層)が上記式(1)を満たすものであればよく、また、トレッド部の最表面のゴム層がタイヤ幅方向で実質的に分割されている場合であっても、最表面のゴム層を構成するすべてのゴムが上記式(1)を満たすものであればよい。このうち、本開示において、トレッド部はタイヤ半径方向において1層のゴム層から構成されているものが好ましく、また、トレッド部の最表面のゴム層は、タイヤ幅方向で実質的に分割されていないことが好ましい。本開示の効果を発揮することができる態様だからである。
(トレッド面)
トレッド部のトレッド面には浅溝が形成されていてもよい。ここで、浅溝とは、幅が0.1~2.0mmで、深さが0.1~2.0mmの溝をいう。当該浅溝の形成される方向は、特に限定されず、タイヤ周方向でもよいし、タイヤ幅方向でもよいし、それ以外の方向であってもよいし、また、異なる2以上の方向であってもよい。タイヤ周方向の浅溝は環状に形成されたものであってもよい。浅溝の幅は一定であってもよいし、延在方向において変化していてもよい。一方、浅溝の深さは一定であることが好ましい。
好ましい態様において、当該浅溝は、タイヤ周方向やタイヤ幅方向などの一の方向に形成されたものである他、異なる2以上の方向に形成されている場合は互いに交差しないものである。このような浅溝は、新品タイヤのトレッド部の摩耗を助長し、その性能を早期に発揮させることができるとともに、性能が発揮できるまで摩耗したことを目視により確認することができる。
他の好ましい態様において、当該浅溝は、トレッド部のショルダー領域に異なる2つの方向において形成され、これら浅溝のうち少なくとも一部が交差し、かつ、これら浅溝のうち少なくとも一部がトレッド端で開口しているものであることが好ましい。このような浅溝は、排水性を向上させる他、溝に区画された陸部が動きやすく発熱を助長するため、グリップ性能を向上させることができる。
図2は、本開示の二輪車用タイヤのトレッド部の展開図の一例である。図2では、タイヤ周方向に、環状の周方向浅溝2aが、タイヤ幅方向に幅方向浅溝2bが形成されている。周方向浅溝2aと幅方向浅溝2bとは互いに交差しておらず、また、幅方向浅溝2bはトレッド端で開口していない。このような浅溝は、前記のとおり、新品タイヤのトレッド部の摩耗を助長し、その性能を早期に発揮させることができるとともに、性能が発揮できるまで摩耗したことを目視により確認することができる。
図3は、本開示の二輪車用タイヤのトレッド部の展開図の一例である。図3では、トレッド部のショルダー領域に、異なる2つの方向に延びる格子状浅溝2cと格子状浅溝2dとが形成され、これら浅溝は互いに交差し、かつ、これら浅溝はトレッド端で開口している。このような浅溝は、前記のとおり、排水性を向上させる他、溝に区画された陸部が動きやすく発熱を助長するため、グリップ性能を向上させることができる。
[ゴム組成物]
以下、トレッド部の最表面を構成するゴム層を形成するゴム組成物の配合および製造方法について説明する。
<ゴム成分>
前記ゴム組成物はゴム成分を含むものであることが好ましく、前記ゴム成分はジエン系ゴムを含むものであることが好ましい。ゴム成分におけるジエン系ゴムの含有率は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
(ジエン系ゴム)
ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン系ゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムは、SBRを含むものであることが好ましく、SBRのみからなるものであってもよい。
≪SBR≫
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。SBRは1種または2種以上を用いることができる。
また、SBRとしては、非変性SBRを用いることもできるし、変性SBRを用いることもできる。変性SBRとしては、タイヤ工業において一般的なものをいずれも使用することができ、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を導入したものが挙げられる。そのようなSBRとしては、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性した末端変性SBRや、主鎖に下記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に下記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に下記官能基を有し、少なくとも一方の末端を下記官能基を有する化合物(変性剤)で変性した主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基が導入されたものを挙げることができる。
さらに、変性SBRとしては、上記の非変性SBRや変性SBRを、さらに水素添加したもの、エポキシ化したもの、スズ変性したもの等を挙げることができる。中でも、上記変性SBRをさらに水素添加したSBR(変性水添SBR)が好ましい。水添SBRは、二重結合を減らして単結合を増やすことで、分子鎖の運動性を向上せしめたものであり、ポリマー同士の絡み合い効果が向上し、補強性が増す傾向があるので、本開示の効果の観点から好ましい。
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
SBRのスチレン含量は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、該スチレン含量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、SBRのスチレン含量は前記測定方法で求められる。
SBRのビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。また、該ビニル結合量は、80モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。なお、SBRのビニル結合量は前記測定方法で求められる。
SBRのガラス転移温度(Tg)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは-90℃以上、より好ましくは-70℃以上、さらに好ましくは-60℃以上である。また、該Tgは、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-25℃以下である。なお、SBRのガラス転移温度は前記測定方法で求められる。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、20万以上が好ましく、30万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましく、45万以上がさらに好ましい。また、該Mwは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、80万以下がさらに好ましく、70万以下がさらに好ましい。なお、SBRの重量平均分子量(Mw)は前記測定方法で求められる。
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。また、SBRは100質量%であってもよい。SBRの含有量とは、油展SBRの場合には、油展オイルを除いたSBR自体の含有量である。
≪BR≫
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率(シス含量)が90モル%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。このうち、ハイシスBRが好ましい。BRは1種または2種以上を用いることができる。
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のもの、宇部興産(株)製のもの、JSR(株)製のもの等が挙げられる。ハイシスBRのシス含量は、好ましくは、95モル%以上、より好ましくは96モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上である。なお、BRのシス含量は前記測定方法で求められる。
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル結合量(1,2結合ブタジエン単位量)が好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.6モル%以下、さらに好ましくは1.2%モル以下であり、シス含量(シス-1,4結合含有率)が好ましくは95モル%以上、より好ましくは96%モル以上、より好ましくは97モル%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス社製のものなどを用いることができる。
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のもの等を用いることができる。
変性BRとしては、上記SBRで説明したのと同様の変性を受けたBRが挙げられる。また、変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られるもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、ZSエラストマー(株)製のもの等を用いることができる。
BRのガラス転移温度(Tg)は、本開示の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは-130℃以上、より好ましくは-120℃以上、さらに好ましくは-110℃以上である。また、該Tgは、好ましくは0℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-60℃以下、さらに好ましくは-80℃以下、さらに好ましくは-90℃以下である。なお、BRのガラス転移温度は前記測定方法で求められる。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。BRの含有量の下限について特に限定はなく、0質量%でもよいし、例えば、5質量%以上であってもよい。
≪イソプレン系ゴム≫
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
イソプレン系ゴムのゴム成分中の含有量は、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。イソプレン系ゴムの含有量の下限について特に限定はなく、0質量%でもよいし、例えば、5質量%以上であってもよい。
≪その他のジエン系ゴム≫
ゴム成分は、前記のSBR、BR、イソプレン系ゴム以外のその他のジエン系ゴム成分を含有してもよい。その他のジエン系ゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリノルボルネンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(ジエン系ゴム以外のゴム成分)
ゴム成分は非ジエン系ゴムを含むことができる。非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<充填剤>
前記ゴム組成物は充填剤を含むものであることが好ましい。充填剤は、ゴム工業で一般的に使用される充填剤をいずれも使用することができる。そのような充填剤としては、シリカ、カーボンブラック等が挙げられる他、さらに、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、クレー、炭酸カルシウム、マイカ等を挙げることができる。充填剤は1種または2種以上を使用することができる。
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g以上が好ましく、160m2/g以上がより好ましく、170m2/g以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは前記測定方法で求められる。
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、本開示の効果の観点から、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
本開示において、充填剤がシリカを含む場合、本開示の効果の観点から、当該充填剤はシリカ40.0質量%以上を含むことが好ましく、より好ましくは50.0質量%以上、さらに好ましくは60.0質量%以上、さらに好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは80.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上、さらに好ましくは94.0質量%以上である。シリカは、100質量%でもよいし、例えば、97.0質量%以下でもよいし、95.0質量%以下でもよい。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、ゴム工業において一般的なものを適宜利用することができ、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等を挙げることができ、あるいは、N110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を挙げることができる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐摩耗性能、グリップ性能等の観点から、40m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、70m2/g以上がさらに好ましく、100m2/g以上がさらに好ましく、120m2/g以上がさらに好ましい。また、該N2SAは、良好な分散の観点から、300m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下がさらに好ましく、160m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは前記測定方法で求められる。
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、十分な補強性の観点から、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのDBPは、ウェットグリップ性能の観点から、200ml/100g以下が好ましく、150ml/100g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックのDBPは前記測定方法で求められる。
カーボンブラックの含有量は、良好な紫外線クラック性能、良好な耐摩耗性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、加工性や発熱性の観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、充分な補強性の観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。一方、該含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは250質量部以下、より好ましくは180質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。
シリカ以外の充填剤としては、カーボンブラックが好ましい。充填剤としては、例えば、シリカを含むもの、シリカのみからなるもの、シリカとカーボンブラックを含むもの、シリカとカーボンブラックのみからなるものを好適に使用することができる。
(シランカップリング剤)
ゴム組成物は、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来から使用される任意のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系のシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系のシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系のシランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、およびチオエステル基を有するシランカップリング剤が好ましく、スルフィド基を有するシランカップリング剤がより好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、充分な耐チッピング性能の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。また、シランカップリング剤の含有量は、含有量に見合った配合効果の観点から、シリカ100質量部に対し、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。
(ゲル化剤)
本開示において、ゲル化剤は、オイル中で、70℃未満の温度ではゲル化する一方、70℃以上の温度では液状化する性質を有する成分であれば、特に限定なく使用することができる。ゲル化剤を配合する場合、ゲル化剤のこの性質により、トレッドゴムは、トレッド温度が60℃程度になる直線走行時にはゲル化剤がオイル中でゲル化して低発熱化する一方、トレッド温度が80~100℃になるコーナリング時にはゲル化剤がオイル中で液状化して高発熱化し得るものとなる。したがって、40℃tanδと70℃tanδの差を小さくすることに寄与し得る。
ゲル化剤としては、ゲル化のメカニズムがいずれのものであっても使用できるが、例えば、水素結合などの分子間相互作用によりゲル化/液状化が切り替わる化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、分子内に存在するOH基やCOOH基が当該分子間相互作用を担う化合物が挙げられる。例えば、分子内にOH基およびCOOH基を有する化合物は、低温側では、OH基とCOOH基とが会合することで網目状の高次構造を形成して、ゲル化する。一方、高温側では、該会合が乖離して、液状化する。
ゲル化剤の具体例としては、例えば、イソフォロンジイソシアネート-2-エチルヘキシルアミン付加体;1,2,3,4-ジベンジリデン-D-ソルビトール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸およびこれらヒドロキシステアリン酸のトリグリセリド;N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-ビス-n-ブチルアミド;スピンラベル化ステロイド;コレステロール誘導体;ジアルキルリン酸アルミニウム;脂肪酸アルミニウム;フェノール系環状オリゴマー;2,3-ビス-n-ヘキサデシロキシアントラセン;および環状デプシペプチド等が挙げられる。このうち、12-ヒドロキシステアリン酸、およびそのトリグリセリドが好ましい。ゲル化剤は1種または2種以上を使用することができる。
ゲル化剤としては、ライオンハイジーン(株)製の油凝固剤、ジョンソン(株)製の油凝固剤などの、本開示のゲル化剤を含む市販品を使用することができる。
ゲル化剤の含有量は、本開示の効果の観点から、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、より好ましくは2.5質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上である。一方、ゲル化剤の含有量は、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは13質量部以下である。
本開示のゴム組成物が、ゲル化剤とオイルおよび/または樹脂とを含む場合において、ゲル化剤の、オイルおよび/または樹脂の合計量に対する比率(質量%)は、本開示の効果の観点から、5.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上である。また、同比率(質量%)は、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
(オイル)
前記ゴム組成物は、オイルを含有することができる。オイルとしては、特に限定されず、例えば、プロセスオイル、植物油脂、およびそれらの混合物などを用いることができる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどを挙げることができる。また、植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などを挙げることができる。このうち、芳香族系プロセスオイルが好ましい。オイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルの含有量は、本開示の効果の観点から、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上である。該含有量は、操縦安定性の観点から、100質量部以下が好ましく、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
(樹脂)
前記ゴム組成物は、樹脂を含有することができる。樹脂は、タイヤ工業で慣用される樹脂成分を用いることができる。そのような樹脂成分としては、例えば、石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロン系樹脂等が挙げられる。なかでも、本開示の効果の観点から、石油樹脂が好ましい。樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪石油樹脂≫
石油樹脂としては、特に限定されないが、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脂肪族系石油樹脂としては、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂(C5系石油樹脂とも称される。)を用いることができる。芳香族系石油樹脂としては、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂(C9系石油樹脂とも称される。)を用いることができる。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂としては、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂(C5C9系石油樹脂とも称される。)が用いられる。また、前記の石油樹脂を水素添加したものを使用してもよい。なかでも芳香族系石油樹脂が好適に用いられる。芳香族系石油樹脂としては、例えば、α-メチルスチレン樹脂が挙げられる。α-メチルスチレン樹脂としては、α-メチルスチレンのホモポリマー(ポリ-α-メチルスチレン)、α-メチルスチレンと芳香族化合物やフェノール系化合物を含む他の化合物とのコポリマーが挙げられる。このコポリマーを構成し得る他の化合物としては、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。α-メチルスチレン樹脂としては、クレイトン社製のものなどが好適に用いられる。
≪テルペン系樹脂≫
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでもテルペンスチレン樹脂は、SBRとBRの両方に対して特に相溶性がよく、ゴム成分中に硫黄が分散しやすくなることから、好適に用いられる。
ポリテルペン樹脂は、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種を原料とする樹脂である。テルペンフェノール樹脂は、前記テルペン化合物およびフェノール系化合物を原料とする樹脂である。テルペンスチレン樹脂は、前記テルペン化合物およびスチレンを原料とする樹脂である。
テルペン系樹脂は、水素添加処理を行った樹脂(例えば、水添ポリテルペン樹脂、水添テルペンスチレン樹脂)であってもよい。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができ、また市販の水添樹脂を使用することもできる。
本開示では、テルペン系樹脂は市販品が用いられてもよい。このような市販品は、ヤスハラケミカル(株)等によって製造販売されるものが例示される。
≪ロジン系樹脂≫
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪フェノール系樹脂≫
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪クマロン系樹脂≫
クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪樹脂の含有量≫
樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、接着性能およびグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能およびグリップ性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、25質量部以下が特に好ましい。
≪樹脂の軟化点≫
樹脂の軟化点は、グリップ性能の観点から、160℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。また、軟化点は、グリップ性能の観点から、20℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上がさらに好ましい。なお、樹脂の軟化点は前記測定方法で求められる。
≪樹脂の重量平均分子量≫
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、揮発しにくく、グリップ性能が良好である点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、該Mwは、15000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、8000以下がさらに好ましい。樹脂のMwは前記測定方法により測定される値である。
≪樹脂のSP値≫
樹脂のSP値は、ゴム成分(特にSBR)との相溶性が優れる点から、8.0以上が好ましく、8.3以上がより好ましく、8.6以上がさらに好ましく、8.9以上がさらに好ましい。一方、樹脂のSP値は11.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、9.5以下がさらに好ましい。上記範囲内のSP値を持つ樹脂を使用することでSBRおよびBRとの相溶性が向上し、耐摩耗性能および破断伸びを改善できる。樹脂のSP値は前記測定方法により測定される値である。
<その他配合剤>
前記ゴム組成物は、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、無機カリウム塩、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
(ワックス)
ワックスは、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができる。ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化の抑制の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。ワックスは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(加工助剤)
加工助剤は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができ、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
(老化防止剤)
老化防止剤は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができる。具体的には、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系、フェニレンジアミン系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられる。このうち、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、あるいは、1質量部以上であっても好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(ステアリン酸)
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(酸化亜鉛)
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
(無機カリウム塩)
無機カリウム塩は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができる。無機カリウム塩としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび四ホウ酸カリウムからなる群から選ばれる1種以上のカリウム塩等が挙げられ、これらのうち、四ホウ酸カリウムが好ましい。無機カリウム塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機カリウム塩の含有量は、押出し加工性の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また、耐摩耗性の観点からは、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
(加硫剤)
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。加硫剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。硫黄以外の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のもの、フレクシス社製のもの、ランクセス社製のものなどを用いることができる。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保し、良好なグリップ性能および耐摩耗性能を得るという観点から、0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましい。また、劣化の抑制の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系の少なくとも一つが好ましく、スルフェンアミド系およびグアニジン系を併用することがより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)が好ましい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
[用途]
本開示の二輪車用タイヤは、その形式は特に限定されず、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤのいずれであってもよいが、空気入りタイヤとして用いることが好ましい。また、オンロードタイヤ、オフロードタイヤ、競技用タイヤ等種々の用途に使用することができるが、競技用タイヤであることが好ましい。また、前輪用タイヤとしても、後輪用タイヤとしても用いることができる。
[製造方法]
<ゴム組成物の製造>
本開示のゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、50~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
<タイヤの製造>
上記成分を配合したゴム組成物は、未加硫の段階で所望のトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤとすることができる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧(加硫)することにより、本開示の二輪車用タイヤを得ることができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で5~30分間加硫する方法が挙げられる。
以下、実施例に基づいて、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらのみに限定されるものではない。
<各種薬品>
SBR1:Nipol NS522(ZSエラストマー(株)から入手可能、S-SBR、スチレン含量:39質量%、ビニル結合量:40モル%、Tg:-25℃、Mw:65万、ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部含有)
SBR2:JSR1723(JSR(株)から入手可能、E-SBR、スチレン含量:24質量%、ビニル結合量:15モル%、Tg:-53℃、Mw:48万、ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展ゴム、)
BR:ウベポールBR150B(Co系触媒を用いて合成された、宇部興産(株)のハイシスBR、シス含量:97モル%、ビニル結合量:1モル%、Tg:-107℃)
カーボンブラック:ショウブラックN110(キャボットジャパン(株)から入手可能、N2SA:142m2/g(BET値)、DBP吸油量:115mL/100g)
シリカ:ウルトラシル(ULTRASIL)VN3(エボニックデグサ社から入手可能、N2SA:175m2/g(BET値))
シランカップリング剤:Si69(エボニックデグサ社から入手可能、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド)
オイル:ダイアナプロセスNH-70S(出光興産(株)から入手可能、芳香族系プロセスオイル)
樹脂:Sylvatraxx 4401(クレイトン社から入手可能、芳香族系石油樹脂(α-メチルスチレン樹脂:α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点85℃、SP値:9.1)
ゲル化剤:油っ固(ライオンハイジーン(株)から入手可能、12-ヒドロキシステアリン酸を含む)
ワックス:オゾエース(Ozoace)0355(日本精蝋(株)から入手可能)
老化防止剤:アンチゲン6C(住友化学(株)から入手可能、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:ビーズステアリン酸「つばき」(日油(株)から入手可能)
酸化亜鉛:銀嶺R(東邦亜鉛(株)から入手可能)
硫黄:HK-200-5(細井化学工業(株)から入手可能、5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:ノクセラーNS‐G(大内新興化学工業(株)から入手可能、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤2:ノクセラーD(大内新興化学工業(株)から入手可能、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
<試験用タイヤの製造>
表に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を、排出温度150℃で5分間混練りした。次に、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールで4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。表に示すタイヤ外径に従い、得られた未加硫ゴム組成物を、トレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃で12分間プレス加硫して試験用タイヤを得た。タイヤ外径580mmの試験用タイヤは、前輪用のタイヤサイズを90/90-16、後輪用のタイヤサイズを90/80-17とした。また、タイヤ外径620mmの試験用タイヤは、前輪用のタイヤサイズを130/70ZR17、後輪用のタイヤサイズを150/60ZR17とした。
<測定・評価>
以下に示す方法に従い、各測定および各評価を実施した。結果を表1に示す。
(tanδ)
後輪用の各試験用タイヤのトレッド部のゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmのサンプルを採取し、各サンプルについて損失正接(40℃tanδ、および、70℃tanδ)を、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、温度40℃/70℃、伸長モードの条件下で測定した。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
(転がり抵抗)
各試験用タイヤをリムに組み込み、転がり抵抗試験機を用いて、内圧(前輪用:250kPa、後輪用:290kPa)、荷重(前輪用:1.8kN、後輪用:1.8kN)、速度(前輪用:80km/h、後輪用:80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定した。タイヤ外径580mmの試験用タイヤは、前輪用リムがMT2.15×16、後輪用リムがMT2.75×17であった。また、タイヤ外径620mmの試験用タイヤは、前輪用リムがMT3.50×17、後輪用リムがMT4.00×17であった。前輪の転がり抵抗値と後輪の転がり抵抗値からそれらの平均値を算出し、当該平均値の逆数を、比較例1を100として指数表示した(低燃費性能指数)。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れる。
(グリップ性能)
各試験用タイヤをリムに組み込み、内圧(前輪用:250kPa、後輪用:290kPa)を調節し、排気量750ccの二輪車に装着した。タイヤ外径580mmの試験用タイヤは、前輪用リムがMT2.15×16、後輪用リムがMT2.75×17であった。また、タイヤ外径620mmの試験用タイヤは、前輪用リムがMT3.50×17、後輪用リムがMT4.00×17であった。該二輪車でサーキットを走行した際のグリップ性能を、10点満点でテストライダー20名によって官能評価し、合計点を、比較例1を100として、指数表示した(グリップ性能指数)。数値が大きいほど性能が良好であることを示す。
Figure 2023094043000002
低燃費性能とグリップ性能の総合性能は、低燃費性能指数とグリップ性能指数の和により表される。上記表より、本開示の二輪車用タイヤである実施例のタイヤでは、低燃費性能指数およびグリップ性能指数の和が200を超えており、比較例のタイヤに比べて、低燃費性能とグリップ性能の総合性能が優れていることがわかる。
<実施形態>
本開示の実施形態の例を以下に示す。
[1]一対のビード部および一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なり、最表面を構成するゴム層を少なくとも含む1以上のゴム層からなるトレッド部とを備え、タイヤ外径Dt(mm)が580mm以上、好ましくは585mm以上、より好ましくは590mm以上、さらに好ましくは595mm以上、さらに好ましくは600mm以上、さらに好ましくは620mm以上である二輪車用タイヤであって、
前記Dtと、前記トレッド部の最表面を構成するゴム層を形成するゴム組成物の70℃におけるtanδの値70℃tanδおよび40℃におけるtanδの値40℃tanδとが、次式を満たすか、好ましくは次式において右辺と左辺との差が0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上である、二輪車用タイヤ、
(Dt/450)-0.50≦70℃tanδ/40℃tanδ (1)
[2]前記70℃tanδと前記40℃tanδとが次式を満たすか、好ましくは次式の右辺の値が0.82、より好ましくは0.84、さらに好ましくは0.86、さらに好ましくは0.88、さらに好ましくは0.90である、上記[1]記載の二輪車用タイヤ、
70℃tanδ/40℃tanδ≧0.80 (2)
[3]前記70℃tanδが次式を満たすか、好ましくは次式の右辺の値が0.21、より好ましくは0.22、さらに好ましくは0.23、さらに好ましくは0.24以上である、上記[1]または[2]記載の二輪車用タイヤ、
70℃tanδ≧0.20 (3)
[4]前記40℃tanδが次式を満たすか、好ましくは次式の右辺の値が0.24、より好ましくは0.23、さらに好ましくは0.22である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
40℃tanδ≦0.25 (4)
[5]前記トレッド部の最表面を構成するゴム層がタイヤ幅方向で実質的に分割されていない、上記[1]~[4]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[6]前記ゴム組成物がゲル化剤と、オイルと、樹脂とを含み、
前記ゲル化剤の、前記オイルおよび前記樹脂の合計に対する比率(質量%)が5.0質量%以上、好ましくは、5.0~30質量%、より好ましくは10~25質量%、さらに好ましくは15~25質量%、さらに好ましくは18~25質量%である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[7]前記ゴム組成物が充填剤を含み、前記充填剤がシリカ40.0質量%以上、好ましくは50.0質量%以上、より好ましくは60.0質量%以上、さらに好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは80.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上、さらに好ましくは94.0質量%以上、を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[8]前記ゴム組成物がゴム成分を含み、前記ゴム成分がスチレンブタジエンゴム70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[9]前記樹脂が芳香族系石油樹脂を含む、上記[6]~[8]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[10]前記ゴム組成物が加硫促進剤を含み、前記加硫促進剤がスルフェンアミド系加硫促進剤およびグアニジン系加硫促進剤を含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[11]前記ゴム組成物が硫黄を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ、
[12]前記トレッド部のトレッド面に浅溝がある、上記[1]~[11]のいずれかに記載の二輪車用タイヤ。
1 二輪車用タイヤ
2 トレッド部
2A トレッド面
2B トレッドゴム
2e トレッド端
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ベルト層
C タイヤ中心線
Dt タイヤ外径
R タイヤ回転方向
TW トレッド幅
2a 周方向浅溝
2b 幅方向浅溝
Cr クラウン領域
Sh ショルダー領域
2c 格子状浅溝
2d 格子状浅溝

Claims (12)

  1. 一対のビード部および一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なり、最表面を構成するゴム層を少なくとも含む1以上のゴム層からなるトレッド部とを備え、タイヤ外径Dt(mm)が580mm以上である二輪車用タイヤであって、
    前記Dtと、前記トレッド部の最表面を構成するゴム層を形成するゴム組成物の70℃におけるtanδの値70℃tanδおよび40℃におけるtanδの値40℃tanδとが、次式を満たす二輪車用タイヤ。
    (Dt/450)-0.50≦70℃tanδ/40℃tanδ (1)
  2. 前記70℃tanδと前記40℃tanδとが次式を満たす、請求項1記載の二輪車用タイヤ。
    70℃tanδ/40℃tanδ≧0.80 (2)
  3. 前記70℃tanδが次式を満たす、請求項1または2記載の二輪車用タイヤ。
    70℃tanδ≧0.20 (3)
  4. 前記40℃tanδが次式を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
    40℃tanδ≦0.25 (4)
  5. 前記トレッド部の最表面を構成するゴム層がタイヤ幅方向で実質的に分割されていない、請求項1~4のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  6. 前記ゴム組成物がゲル化剤と、オイルと、樹脂とを含み、
    前記ゲル化剤の、前記オイルおよび前記樹脂の合計に対する比率(質量%)が5.0質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  7. 前記ゴム組成物が充填剤を含み、前記充填剤がシリカ40.0質量%以上を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  8. 前記ゴム組成物がゴム成分を含み、前記ゴム成分がスチレンブタジエンゴム70質量%以上を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  9. 前記樹脂が芳香族系石油樹脂を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  10. 前記ゴム組成物が加硫促進剤を含み、前記加硫促進剤がスルフェンアミド系加硫促進剤およびグアニジン系加硫促進剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  11. 前記ゴム組成物が硫黄を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
  12. 前記トレッド部のトレッド面に浅溝がある、請求項1~11のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
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