JP2023013418A - 筆記具用インキ組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、隠蔽性および耐沈降性に優れる筆記具用インキ組成物を提供することにある。前記インキ組成物には、適度な粒子径を有し、溶剤よりも小さい比重を有し、それ自体で隠蔽性を示す中空ガラス粒子が含まれる。このようなインキ組成物は、長期間が経過しても、筆記具軸筒内の中綿や繊維に引っかかり、濃度差が生じにくい。また、仮に繊維との引っかかりが外れても、インキ組成物が軸筒内で上向きに移動する。よって、このようなインキ組成物を搭載した本発明の筆記具はかすれにくく、安定した描線を実現することができる。【解決手段】平均粒径が1~10μmの中空ガラスと、溶媒とを含有する筆記具用インキ組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、隠蔽性および耐沈降性を備える筆記具用インキ組成物に関する。
従来から、隠蔽性を有する筆跡を得るために、酸化チタンなどの白色顔料や、意匠性の高い顔料を用いた筆記具用水性インキ組成物が用いられている。また、これらの隠蔽性の高いインキ組成物に補色顔料などを併用することで、下地を隠蔽しながらパステル調や有彩色の筆跡が得られることから、隠蔽性を有しかつ発色性に優れたインキ組成物が開発されている。
しかしながら、隠蔽剤として酸化チタンやアルミニウムなどを用いると、ペン体を上向きに放置して時間が経過すると、顔料が沈降したり、顔料粒子が凝集して色むらを起こしたりするという課題があった。このような課題を解決するために、特許文献1では、着色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、ポリブテン、パラフィン系炭化水素油、オレフィン系炭化水素油およびアルキルナフテン系炭化水素油よりなる群から選ばれる油脂類を混合した非水溶性の油状物質とからなる水性インキ組成物において、前記非水溶性の油状物質がインキ中に分散された状態にすることが行われている。また、顔料粒子、湿式シリカ、含水カオリン、凝集コントロール剤および水を含む水性インキ組成物では、湿式シリカや含水カオリンが目止めの効果を強く発揮し、顔料粒子が紙の繊維間に入ることを防ぎ、隠蔽性や、筆跡の発色性を高めることが報告されている(特許文献2)。会合型増粘剤、着色剤、シリカの3種間で巨視的な会合体構造を形成することにより、インキ組成物中で着色剤およびシリカの分散性を向上し、安定化させた報告例もある(特許文献3)。
顔料が経時的に沈降または凝集するのを防止するため、インキ組成物に有機系または無機系の中空粒子を添加したり、中空粒子と分散剤とを併用することも行われている。特許文献4では、軸筒内に直接油性インキと、油性インキ後端部にインキ逆流防止体組成物とを充填した油性筆記具において、ペン先を下向きに放置したときに、インキ逆流防止体組成物がペン先に移動して目詰まり等を起こすのを防止するため、インキ逆流防止体組成物中に平均粒子径0.1~10μmの中空粒子を添加することが開示されている。また、平板状顔料および平均粒子径が0.1~10μmの中空粒子を含有する水性インキ組成物では、前記中空粒子がスペーサーとして作用して、粒子径の大きな平板状顔料の凝集を防止するとともに、平板状顔料の光輝性を損なわないことが報告されている(特許文献5)。
しかしながら、これまでに報告されている中空粒子では、インキ組成物中に分散しているときは、溶剤を内包しているため、比重が溶剤より大きく、沈降速度を遅くすることはできるものの、それでもなお長期的には沈降または凝集するという課題があった。また、内部が真空または空気層の中空粒子のなかには、粒子径が大きく、ペン先から吐出しないものもある一方、粒子径の小さな中空粒子では十分な隠蔽性が得られないものもあった。
本発明では、より好適な中空粒子を見出し、顔料を長期に渡って安定的に分散させることができる、隠蔽性および耐沈降性に優れる筆記具用インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明では、より好適な中空粒子を見出し、顔料を長期に渡って安定的に分散させることができる、隠蔽性および耐沈降性に優れる筆記具用インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明の筆記具用インキ組成物は、平均粒径が1.0μmを超え10μm以下の中空ガラスと、溶媒とを含有することを特徴とする。
前記溶媒は、水、エタノール、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルであることが好ましい。
前記溶媒は、水、エタノール、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルであることが好ましい。
前記インキ組成物は、前記中空ガラスおよび溶媒に加えて、さらに、顔料および/または染料を含有することが好ましい。
前記顔料は、有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、光輝性顔料、または着色樹脂粒子であることが好ましい。
前記顔料は、平均粒子径が0.2~2μmの酸化チタン、平均粒子径が1~30μmの光輝性顔料、および平均粒子径が0.1~10μmの着色樹脂粒子からなる群より選ばれる一種以上であることが好ましい。
前記顔料は、有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、光輝性顔料、または着色樹脂粒子であることが好ましい。
前記顔料は、平均粒子径が0.2~2μmの酸化チタン、平均粒子径が1~30μmの光輝性顔料、および平均粒子径が0.1~10μmの着色樹脂粒子からなる群より選ばれる一種以上であることが好ましい。
前記中空ガラスの表面は、着色して使用することもできる。顔料および/または染料で着色する場合、該中空ガラスと、顔料および/または染料とで共凝集体を形成してもよい。
本発明の筆記具は、前記筆記具用インキ組成物を搭載したものである。
本発明の筆記具は、前記筆記具用インキ組成物を搭載したものである。
本発明によれば、隠蔽性および耐沈降性に優れる筆記具用インキ組成物を提供することができる。前記インキ組成物には、適度な粒子径を有し、溶剤よりも小さい比重を有し、それ自体で隠蔽性を示す中空ガラス粒子が含まれる。このようなインキ組成物は、長期間が経過しても、筆記具軸筒内の中綿や繊維に引っかかり、濃度差が生じにくい。また、仮に繊維との引っかかりが外れても、インキ組成物が軸筒内で上向きに移動する。よって、このようなインキ組成物を搭載した本発明の筆記具は上向き品でも隠蔽性を保持しつつ、安定した描線を実現することができる。
以下、本発明の筆記具用インキ組成物について、詳細に説明する。
本発明の筆記具用インキ組成物(以下単に「インキ組成物」ともいう。)は、平均粒径が1.0μmを超え10μm以下の中空ガラスと、溶媒とを含有する。
前記中空ガラスは略球形であり、内部に空洞を有する。また、表面が平滑であるため、インキ組成物中で凝集しにくく、均一に分散しやすい。
中空ガラスは、入手容易な汎用品でよく、例えば、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびホウケイ酸ナトリウムガラスなどが挙げられる。汎用品には、例えば、シリナックス(中空ナノシリカ、日鉄鉱業(株)製)、あるいはセルスフィアーズ(中空ガラス、太平洋セメント(株)製)が挙げられる。
中空ガラスの平均粒径は1.0μmを超え10μm以下、好ましくは2.0μm以上8.0μm以下、より好ましくは3.0μm以上7.0μm以下である。平均粒径が前記範囲であると、インキ組成物中で溶剤よりも比重を小さくすることができるだけでなく、中空ガラスの粒子自体で隠蔽性を持つことができる。
本発明の筆記具用インキ組成物(以下単に「インキ組成物」ともいう。)は、平均粒径が1.0μmを超え10μm以下の中空ガラスと、溶媒とを含有する。
前記中空ガラスは略球形であり、内部に空洞を有する。また、表面が平滑であるため、インキ組成物中で凝集しにくく、均一に分散しやすい。
中空ガラスは、入手容易な汎用品でよく、例えば、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびホウケイ酸ナトリウムガラスなどが挙げられる。汎用品には、例えば、シリナックス(中空ナノシリカ、日鉄鉱業(株)製)、あるいはセルスフィアーズ(中空ガラス、太平洋セメント(株)製)が挙げられる。
中空ガラスの平均粒径は1.0μmを超え10μm以下、好ましくは2.0μm以上8.0μm以下、より好ましくは3.0μm以上7.0μm以下である。平均粒径が前記範囲であると、インキ組成物中で溶剤よりも比重を小さくすることができるだけでなく、中空ガラスの粒子自体で隠蔽性を持つことができる。
前記溶媒は、中空ガラスを分散できるものであれば、特に限定されることはなく水系または有機系の種々の溶媒が用いられる。つまり、本発明のインキ組成物は、水性インキおよび油性インキのいずれでもよい。具体的には、極性の高い溶媒が好ましく、例えば、水、エタノール、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
中空ガラスの含有量は、インク組成物の全量に対して、通常は0.1~40重量%、好ましくは0.2~40重量%である。
また、中空ガラスの含有量は、中空ガラスおよび溶媒の合計100重量%に対して、通常は0.2~50重量%、好ましくは0.3~45重量%である。
また、中空ガラスの含有量は、中空ガラスおよび溶媒の合計100重量%に対して、通常は0.2~50重量%、好ましくは0.3~45重量%である。
前記インキ組成物は、前記中空ガラスおよび溶媒に加えて、さらに、顔料および/または染料を含有することが好ましい。また、表面を染料および/または顔料で着色したプラスチック粒子を用いてもよい。
前記顔料は、有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、光輝性顔料、または着色樹脂粒子であることが好ましい。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ならびにニトロソ顔料などが挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ならびにニトロソ顔料などが挙げられる。
酸化チタンは、平均粒子径0.2~2μmであることが好ましく、0.2~1.0μmであることがより好ましい。
光輝性顔料としては、例えば、ガラスフレークまたはその他の塊状フレークを母材とした上に、金属もしくは金属酸化物をコートした金属被覆フレーク状ガラス顔料、金属酸化物被覆フレーク状ガラス顔料、金属粉顔料、金属酸化物粉顔料、またはパール顔料などが挙げられる。光輝性顔料の平均粒子径は1~30μmが好ましい。
光輝性顔料としては、例えば、ガラスフレークまたはその他の塊状フレークを母材とした上に、金属もしくは金属酸化物をコートした金属被覆フレーク状ガラス顔料、金属酸化物被覆フレーク状ガラス顔料、金属粉顔料、金属酸化物粉顔料、またはパール顔料などが挙げられる。光輝性顔料の平均粒子径は1~30μmが好ましい。
着色樹脂粒子は、例えば、前記顔料を内包したマイクロカプセル顔料から構成される。前記着色樹脂粒子は、前記顔料を含むものを、所定の粒子径となるように、マイクロカプセル化、具体的には、壁膜形成物質(壁材)から構成されるシェル層(殻体)に内包することにより製造することができる。着色樹脂粒子の平均粒子径は0.1~10μmが好ましい。
これらの顔料は、単独または二種以上を混合して用いてもよい。
これらの顔料は、単独または二種以上を混合して用いてもよい。
有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、光輝性顔料、および着色樹脂粒子のうち、描線の発色性に優れる点から、酸化チタンおよび有機顔料などが好ましい。
顔料の含有量は、インク組成物の全量に対して、通常は1~30重量%、好ましくは2~20重量%である。
顔料の含有量は、インク組成物の全量に対して、通常は1~30重量%、好ましくは2~20重量%である。
染料としては、塩基性染料、油溶性染料、直接染料、酸性染料、アゾイック染料、水性染料、および反応染料などが用いられる。これらのうち、発色性および安定性の点から、塩基性染料および油溶性染料が好ましい。また、筆記具用インキ組成物に通常使用されている染料、例えば、クマリン系、ペリレン系、ジシアノピニル系、アゾ系(例えば、ピリドンアゾ系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンゼンアゾ系、ヘテロ環アゾ系など)、キノフタロン系、アミノピラゾール系、メチン系、ジシアノイミダゾール系、インドアニリン系、およびフタロシアニン系の染料を用いてもよい。
これらの染料は、単独または二種以上を混合して用いてもよい。
染料の含有量は、インク組成物の全量に対して、通常は1~20重量%、好ましくは2~15重量%である。
これらの染料は、単独または二種以上を混合して用いてもよい。
染料の含有量は、インク組成物の全量に対して、通常は1~20重量%、好ましくは2~15重量%である。
前記中空ガラスの表面は、顔料および/または染料で着色することもでき、該中空ガラスと、顔料および/または染料との共凝集体を形成させることもできる。共凝集体を形成するには凝集剤が用いられる。凝集剤としては、アルミニウム系凝集剤、高分子系凝集剤などが用いられる。アルミニウム凝集剤には、例えば、硫酸アルミニウムが用いられ、高分子系凝集剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸エステル、およびポリアクリル酸エステルなどが用いられる。
従来の酸化チタンやアルミニウムのように沈降しやすい顔料と、中空ガラスとを共凝集させることによって、全体的な比重を小さくすることにより、前記顔料の沈降を遅らせることもできる。
前記インキ組成物には、顔料および/または染料に加えて、必要に応じて、分散剤、増粘剤、固着樹脂、濡れ剤およびpH調整剤などを含有してもよい。
分散剤には、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体エマルションおよびスチレン-マレイン酸共重合体エマルションなどが用いられる。スチレン-アクリル酸共重合体エマルションとしては、例えば、ジョンクリル52J、ジョンクリル57J、ジョンクリル60J、ジョンクリル63J(以上、BASFジャパン(株)製)、およびRS-1191、VS-1047、YS-1274(以上、星光PMC(株)製)が挙げられる。スチレン-マレイン酸共重合体エマルションとしては、例えば、アラスター700、アラスター703S(以上、荒川化学工業(株)製)、SMA-1440、SMA-2625、およびSMA-17352(以上、川原油化(株)製)などが挙げられる。これらのうち、インク組成物の経時安定性などの理由から、スチレン-アクリル酸共重合体エマルションが好ましい。
分散剤の含有量は、インク組成物全量に対して、固形分濃度で、通常は0.2~10重量%、好ましくは0.3~4重量%である。分散剤の含有量が0.2重量%未満であると、インク組成物が経時的に不安定となる場合がある。一方、10重量%を超える場合は、インク組成物の粘度が高いことがある。
増粘剤には、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、発酵セルロース、結晶セルロースおよび多糖類などが用いられる。多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、およびタラガムなどが挙げられる。
固着樹脂には、例えば、ロジン、エステルガム、マレイン酸変成ロジンおよびフェノール変成ロジンなどのロジン系樹脂、アルキル-フェノール樹脂、ポリビニルブチラール、および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂などのビニル系樹脂、石油系樹脂、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、アルデヒドと尿素の縮合物、マレイン酸樹脂、テルペンフェノール、アクリル酸樹脂、スチレン・アクリル酸樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ならびにメラミン樹脂などが用いられる。
濡れ剤には、筆記時のインク組成物がハジキを抑制する観点から、リン酸エステル、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が用いられる。
pH調整剤には、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリポリリン酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムなどの炭酸またはリン酸のアルカリ金属塩、ならびに、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水和物などが用いられる。
前記インキ組成物は、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、溶媒と、中空ガラスと、顔料および/または染料と、任意成分とを所定量配合し、ホモミキサーもしくはディスパーなどの攪拌機により攪拌混合することによって得られる。必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物に生じた粗大粒子を除去するとよい。
本発明の筆記具は、前記インキ組成物を搭載したものである。本発明において、前記インキ組成物は、ボールペン用、サインペン用および筆ペン用の水性インキ、油性インキ、ならびにゲルインキに好適に用いられる。或いは、油性の修正液として用いることもできる。
前記インキ組成物を充填する筆記具については、本発明の効果が発揮できるように筆記できるものであれば、その構造は限定されるものではない。ただし、低粘度であり、隠蔽性を有する中空ガラス粒子を長期間安定に分散できるという点から、本発明のインキ組成物は、好適には、該インキ組成物を吸蔵するインキ吸蔵体を収容した中綿式筆記具用のフェルトペン用インキとして用いられる。本発明のインキ組成物は、中空粒子の作用により、軸筒内の中綿に引っかかるため、該インキ組成物を搭載した筆記具を長期間保存しても濃度差が生じにくい。仮に繊維との引っかかりが外れても、インキ組成物が軸筒内で上向きに移動していく。よって、本発明の筆記具を用いれば、隠蔽性を保持しつつ、安定して描線を実現することができる。
[インキ組成物の調製]
実施例1~8および比較例1~9に記載した方法で水性および油性インキ組成物を調製した。
[インキ組成物の評価]
実施例1~8および比較例1~9に記載した方法で水性および油性インキ組成物を調製した。
[インキ組成物の評価]
(1)隠蔽性
インキ組成物をペンに充填した直後の隠蔽性と、ペンを上向きに放置し、2週間経過した後の隠蔽性を評価した。
隠蔽性の評価は、特開2013-32454号公報に記載された方法により行った。すなわち、インキ組成物をペンの軸筒内に6.0g充填し、ペン先に太字・細字がある場合は、細字側を用いて、所定の黒画用紙(NTラシャ日清紡ペーパープロダクツ社製)に「らせん」を筆記し、文字が下地の黒に対しての隠蔽性を目視にて下記評価基準で評価した。
インキ組成物をペンに充填した直後の隠蔽性と、ペンを上向きに放置し、2週間経過した後の隠蔽性を評価した。
隠蔽性の評価は、特開2013-32454号公報に記載された方法により行った。すなわち、インキ組成物をペンの軸筒内に6.0g充填し、ペン先に太字・細字がある場合は、細字側を用いて、所定の黒画用紙(NTラシャ日清紡ペーパープロダクツ社製)に「らせん」を筆記し、文字が下地の黒に対しての隠蔽性を目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:はっきりと文字が読める
B:文字がくすんでしまい文字が薄い
C:黒画用紙の色に隠れてしまい、文字が判読できない
A:はっきりと文字が読める
B:文字がくすんでしまい文字が薄い
C:黒画用紙の色に隠れてしまい、文字が判読できない
[実施例1]
中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)4質量部、脂肪酸処理アルミニウム(商品名0670TS、東洋アルミニウム(株)製)5質量部、テルペンフェノール(商品名 YPポリスターS145、ヤスハラケミカル(株)製)5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量部およびエタノール56質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物をペン軸筒(品名 PNA-125、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式油性サインペンを作製した。
中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)4質量部、脂肪酸処理アルミニウム(商品名0670TS、東洋アルミニウム(株)製)5質量部、テルペンフェノール(商品名 YPポリスターS145、ヤスハラケミカル(株)製)5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量部およびエタノール56質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物をペン軸筒(品名 PNA-125、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式油性サインペンを作製した。
[実施例2]
中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)4質量部、酸化チタン(商品名R900、デュポン(株)製)15質量部、スチレン・アクリル樹脂(商品名 ジョンクリル70J、BASFジャパン(株)製)10量部および水71質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物をペン軸筒(品名 PC-5M、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性サインペンを作製した。
中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)4質量部、酸化チタン(商品名R900、デュポン(株)製)15質量部、スチレン・アクリル樹脂(商品名 ジョンクリル70J、BASFジャパン(株)製)10量部および水71質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物をペン軸筒(品名 PC-5M、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性サインペンを作製した。
[実施例3]
実施例1で調製したインキ組成物をペン軸筒(品名 PX-20、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式油性サインペンを作製した。
実施例1で調製したインキ組成物をペン軸筒(品名 PX-20、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式油性サインペンを作製した。
[実施例4]
実施例2において、水71質量部に代えて、水66質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル5質量部を使用した以外は、実施例2と同様にして、インキ組成物を調製した。
前記インキ組成物を軸筒(品名 PIN-03A、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式水性サインペンを作製した。
実施例2において、水71質量部に代えて、水66質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル5質量部を使用した以外は、実施例2と同様にして、インキ組成物を調製した。
前記インキ組成物を軸筒(品名 PIN-03A、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式水性サインペンを作製した。
[実施例5]
中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)4質量部、酸化チタン(商品名R900、デュポン(株)製)15質量部、プラスチック着色粒子(商品名 C800T、根上工業(株)社製)2質量部、カルボマー(商品名 ハイビスワコー105、和光純薬工業(株)製)0.05質量部、リン酸エステル(商品名RS710、東邦化学工業(株)製)0.2質量部、トリエタノールアミン1質量部および水77.8質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物をペン軸筒(品名 UMR-1、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性ボールペンを作製した。
中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)4質量部、酸化チタン(商品名R900、デュポン(株)製)15質量部、プラスチック着色粒子(商品名 C800T、根上工業(株)社製)2質量部、カルボマー(商品名 ハイビスワコー105、和光純薬工業(株)製)0.05質量部、リン酸エステル(商品名RS710、東邦化学工業(株)製)0.2質量部、トリエタノールアミン1質量部および水77.8質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物をペン軸筒(品名 UMR-1、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性ボールペンを作製した。
[実施例6]
実施例4で調製したインキ組成物をペン軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式水性筆ペンを作製した。
実施例4で調製したインキ組成物をペン軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式水性筆ペンを作製した。
[実施例7]
実施例1で調製したインキ組成物をペン軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式油性筆ペンを作製した。
実施例1で調製したインキ組成物をペン軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式油性筆ペンを作製した。
[実施例8]
実施例2において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)に染料で着色済みの中空ガラス(商品名セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、インキ組成物を調製した。
前記インキ組成物を軸筒(品名 PC-5M、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性サインペンを作製した。
実施例2において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)に染料で着色済みの中空ガラス(商品名セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、インキ組成物を調製した。
前記インキ組成物を軸筒(品名 PC-5M、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性サインペンを作製した。
実施例1~8のインキ組成物は、ペンに充填した直後も、ペンを上向きにして2週間放置した後も、黒画用紙の上で文字がはっきりと読め、隠蔽性に優れていた。
[比較例1]
実施例1において、中空ガラス(商品名セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、エタノールの量を56質量部から60質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、インキ組成物を調製し、中綿式油性サインペンを作製した。
実施例1において、中空ガラス(商品名セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、エタノールの量を56質量部から60質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、インキ組成物を調製し、中綿式油性サインペンを作製した。
[比較例2]
実施例2において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、水の量を71質量部から75質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、インキ組成物を調製し、直液式水性サインペンを作製した。
実施例2において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、水の量を71質量部から75質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、インキ組成物を調製し、直液式水性サインペンを作製した。
[比較例3]
実施例3において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、プロピレングリコールモノメチルエーテルの量を30質量部から20質量部に変更し、エタノールの量を56質量部から70質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、インキ組成物を調製し、直液式油性サインペンを作製した。
実施例3において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、プロピレングリコールモノメチルエーテルの量を30質量部から20質量部に変更し、エタノールの量を56質量部から70質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、インキ組成物を調製し、直液式油性サインペンを作製した。
[比較例4]
実施例4において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、水の量を66質量部から70質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして、インキ組成物を調製し、中綿式水性サインペンを作製した。
実施例4において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、水の量を66質量部から70質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして、インキ組成物を調製し、中綿式水性サインペンを作製した。
[比較例5]
実施例5において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、水の量を77.8質量部から81.8質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、インキ組成物を調製し、直液式水性ボールペンを作製した。
比較例5では、ペンを上向きに2週間放置した後では、文字の下の黒画用紙が透けて文字の色がくすんで薄かった。この理由として、比較例5のインキ組成物は中空ガラスを含んでいないため、顔料が経時的に沈降したためと考えられる。
実施例5において、中空ガラス(商品名 セルスフィアーズ、太平洋セメント(株)製)を使用せず、水の量を77.8質量部から81.8質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、インキ組成物を調製し、直液式水性ボールペンを作製した。
比較例5では、ペンを上向きに2週間放置した後では、文字の下の黒画用紙が透けて文字の色がくすんで薄かった。この理由として、比較例5のインキ組成物は中空ガラスを含んでいないため、顔料が経時的に沈降したためと考えられる。
[比較例6]
比較例4で調製したインキ組成物を軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式水性筆ペンを作製した。
比較例4で調製したインキ組成物を軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式水性筆ペンを作製した。
中空ガラスではなく、酸化チタンを含有する比較例2、4および6の水性インキ組成物では、ペンに水性インキ組成物を充填した直後は、直液式、中綿式、筆ペンともに、良好な隠蔽性を示したが、ペンを上向きに2週間放置した直後では、顔料の沈降による濃度差が生じ、隠蔽性が著しく低下した。
[比較例7]
比較例1で調製したインキ組成物を軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式油性筆ペンを作製した。
比較例1で調製したインキ組成物を軸筒(品名 PFK-302N、三菱鉛筆(株))内に充填して中綿式油性筆ペンを作製した。
中空ガラスではなく、脂肪酸処理アルミニウムを含有する比較例1、3および7の油性インキ組成物では、ペンに油性インキ組成物を充填した直後は、中綿式、直液式および筆ペンともに、良好な隠蔽性を示したが、ペンを上向きに2週間放置した直後では、顔料の沈降による濃度差が生じ、文字が判読できないほど隠蔽性が低下した。
[比較例8]
酸化チタン(商品名 R900、デュポン(株)製)15質量部、中空粒子(商品名ローペイクウルトラE(0.5μ)、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)4質量部、スチレン・アクリル樹脂(商品名 ジョンクリル70J、BASFジャパン(株)製)10量部および水71質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物を軸筒(品名 PC-5M、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性サインペンを作製した。
酸化チタン(商品名 R900、デュポン(株)製)15質量部、中空粒子(商品名ローペイクウルトラE(0.5μ)、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)4質量部、スチレン・アクリル樹脂(商品名 ジョンクリル70J、BASFジャパン(株)製)10量部および水71質量部を攪拌混合してインキ組成物を調製した。
前記インキ組成物を軸筒(品名 PC-5M、三菱鉛筆(株))内に充填して直液式水性サインペンを作製した。
[比較例9]
比較例8において、中空粒子(商品名 ローペイクウルトラE(0.5μ)、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)に代えて、中空セラミック粒子(商品名EスフィアーズSL125(80μ)、太平洋セメント(株)製)に変更した以外は、比較例8と同様にして、直液式水性サインペンを作製した。
比較例8において、中空粒子(商品名 ローペイクウルトラE(0.5μ)、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)に代えて、中空セラミック粒子(商品名EスフィアーズSL125(80μ)、太平洋セメント(株)製)に変更した以外は、比較例8と同様にして、直液式水性サインペンを作製した。
中空粒子ではなく、中空粒子や中空セラミック粒子を含有する比較例8および9のインク組成物では、水性ペンに充填した直後から、文字の下の黒画用紙が透けて文字の色がくすんで薄く、2週間放置した後でも大きな変化がみられなかった。実施例2と比べて、比較例8および9では、中空粒子や中空セラミック粒子は、中空ガラス粒子よりもインキ組成物が凝集しやすく、濃度差を生じて隠蔽性に劣るといえる。
Claims (7)
- 平均粒径が1.0μmを超え10μm以下の中空ガラスと、溶媒とを含有する筆記具用インキ組成物。
- 前記溶媒が水、エタノール、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルである請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
- さらに、顔料および/または染料を含有する請求項1または2に記載の筆記具用インキ組成物。
- 前記顔料が、有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、光輝性顔料、または着色樹脂粒子である請求項1~3のいずれか一項に記載の筆記具用インキ組成物。
- 前記顔料が、平均粒子径が0.2~2μmの酸化チタン、平均粒子径が1~30μmの光輝性顔料、および平均粒子径が0.1~10μmの着色樹脂粒子からなる群より選ばれる一種以上である請求項3または4に記載の筆記具用インキ組成物。
- 前記中空ガラスの表面が、顔料および/または染料で着色され、
前記中空ガラスと、顔料および/または染料との共凝集体が形成された請求項3~5のいずれか一項に記載の筆記具用インキ組成物。 - 請求項1~6のいずれか一項に記載の筆記具用インキ組成物を搭載した筆記具。
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JP2021117581A JP2023013418A (ja) | 2021-07-16 | 2021-07-16 | 筆記具用インキ組成物 |
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