JP2023013411A - 透明導電性積層体および透明導電性フィルム - Google Patents

透明導電性積層体および透明導電性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】高温環境下での抵抗変化を抑制するのに適した透明導電性積層体および透明導電性フィルムを提供する。【解決手段】本発明の透明導電性積層体Xは、透明基材フィルム10と、透明導電層20と、粘着剤層30と、カバーガラス40とを厚さ方向Hにこの順で備える。透明導電層20は、厚さ方向Hと直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する。本発明の透明導電性フィルムYは、透明基材フィルム10と透明導電層20とを厚さ方向Hにこの順で備え、透明導電層20が、厚さ方向と直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電性積層体および透明導電性フィルムに関する。
車載用途のディスプレイパネルは、例えば、画素パネル、偏光板、およびタッチパネルを含む積層構造を有する。タッチパネルは、例えば、透明基材と、当該基材上の透明導電層と、カバーガラスとを含む積層構造部(透明導電性積層体)を備える。この透明導電性積層体の透明導電層では、例えば、透明電極および透明配線がパターン形成されている。カバーガラスは、例えば、透明な粘着剤層を介して透明導電層および透明基材に対して接合されている。透明導電性積層体に関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
特開2016-157297号公報
車載用途のディスプレイパネルが組み付けられた車載ディスプレイ装置は、車両内において、高温環境にさらされることがある。車載ディスプレイ装置が高温環境にさらされると、従来、当該ディスプレイ装置内の透明導電性積層体における透明導電層の抵抗が、変化しやすい。透明導電層におけるこのような抵抗変化は、タッチパネルのセンシング特性の信頼性低下を引き起こし、好ましくない。
本発明は、高温環境下での抵抗変化を抑制するのに適した透明導電性積層体および透明導電性フィルムを提供する。
本発明[1]は、透明基材フィルムと、透明導電層と、粘着剤層と、カバーガラスとを厚さ方向にこの順で備え、前記透明導電層が、前記厚さ方向と直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する、透明導電性積層体を含む。
本発明[2]は、前記透明導電層がインジウム含有導電性酸化物を含む、上記[1]に記載の透明導電性積層体を含む。
本発明[3]は、前記透明導電層が、3.0×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有する、上記[1]または[2]に記載の透明導電性積層体を含む。
本発明[4]は、前記透明導電層が20nm以上の厚さを有する、上記[1]から[3]のいずれか一つに記載の透明導電性積層体を含む。
本発明[5]は、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の透明導電性積層体に用いられる透明導電性フィルムであって、透明基材フィルムと透明導電層とを厚さ方向にこの順で備え、前記透明導電層が、前記厚さ方向と直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する、透明導電性フィルムを含む。
本発明の透明導電性積層体では、上記のように、透明基材フィルムと、透明導電層と、粘着剤層と、カバーガラスとを含む積層構造を有する。そして、当該積層構造中の透明導電層が、厚さ方向と直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する。このような構成は、高温環境下において、透明導電層の直下の層からの透明導電層の剥離、および、透明導電層でのクラックの発生を、抑制するのに適し、従って、透明導電層の抵抗変化を抑制するのに適する。
本発明の透明導電性フィルムは、上記のように、面方向の圧縮残留応力が800MPa以下の透明導電層を備える。このような構成は、高温環境下の透明導電性積層体において、透明導電層の直下の層からの透明導電層の剥離、および、透明導電層でのクラックの発生を、抑制するのに適し、従って、透明導電層の抵抗変化を抑制するのに適する。
本発明の透明導電性積層体の一実施形態の断面模式図である。 図1に示す透明導電性積層体の変形例の断面模式図である。本変形例において、透明導電層は、第1領域と第2領域とを透明基材フィルム側からこの順で含む。 図1に示す透明導電性積層体の製造方法の一部の工程を表す。図3Aは、樹脂フィルムを用意する工程を表し、図3Bは、樹脂フィルム上に硬化樹脂層を形成する工程を表し、図3Cは、硬化樹脂層上に非晶質の透明導電層を形成する工程を表し、図3Dは、透明導電層を結晶化させる工程を表す。 本発明の透明導電性積層体の変形例の断面模式図である。本変形例では、透明導電層とカバーガラスとの間に硬化樹脂層が配置されている。 スパッタリング法により透明導電層を形成する際の酸素導入量と、形成される透明導電層の比抵抗との関係を示すグラフである。
図1は、本発明の透明導電性積層体の一実施形態である透明導電性積層体Xの断面模式図である。透明導電性積層体Xは、透明導電性フィルムYと、粘着剤層30と、カバーガラス40とを厚さ方向Hにこの順で備える。透明導電性フィルムYは、透明基材フィルム10と透明導電層20とを厚さ方向Hにこの順で備える。すなわち、透明導電性積層体Xは、透明基材フィルム10と、透明導電層20と、粘着剤層30と、カバーガラス40とを厚さ方向Hにこの順で備える。透明導電性積層体Xは、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がる形状を有する。透明導電性積層体Xは、例えば、車載用ディスプレイパネルに備えられる一要素である。
透明基材フィルム10は、本実施形態では、樹脂フィルム11と、硬化樹脂層12とを、厚さ方向Hにこの順で備える。透明基材フィルム10は、面方向に広がる形状を有する。透明基材フィルム10は、本実施形態では、樹脂フィルム11の製造過程での樹脂流れ方向(MD方向)に所定の長さを有し、MD方向および厚さ方向Hのそれぞれと直交する方向(TD方向)に幅を有する。
樹脂フィルム11は、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。樹脂フィルム11の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。アクリル樹脂としては、例えばポリメタクリレートが挙げられる。樹脂フィルム11の材料としては、透明性および強度の観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも一つが用いられ、より好ましくは、COPおよびPETからなる群より選択される少なくとも一つが用いられる。
樹脂フィルム11における硬化樹脂層12側表面は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
樹脂フィルム11の厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上である。樹脂フィルム11の厚さは、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは75μm以下である。樹脂フィルム11の厚さに関するこれら構成は、透明導電性積層体Xの取り扱い性を確保するのに適する。
樹脂フィルム11の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、車載用ディスプレイパネルに透明導電性積層体Xが備えられる場合に当該透明導電性積層体Xに求められる透明性を確保するのに適する。樹脂フィルム11の全光線透過率は、例えば100%以下である。
硬化樹脂層12は、本実施形態では、樹脂フィルム11における厚さ方向Hの一方面上に位置する。硬化樹脂層12は、例えば、透明導電層20の露出表面(図1では上面)に擦り傷が形成されにくくするためのハードコート層である。また、硬化樹脂層12は、透明導電層20側に表面12aを有する。
硬化樹脂層12は、硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化性樹脂組成物が含有する硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられる。これら硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。硬化樹脂層12の高硬度の確保の観点からは、硬化性樹脂としては、好ましくはアクリルウレタン樹脂が用いられる。
また、硬化性樹脂組成物としては、例えば、紫外線硬化型の樹脂組成物、および、熱硬化型の樹脂組成物が挙げられる。高温加熱せずに硬化可能であるために透明導電性積層体Xの製造効率向上に役立つ観点から、硬化性樹脂組成物としては、好ましくは、紫外線硬化型の樹脂組成物が用いられる。紫外線硬化型の樹脂組成物には、紫外線硬化型モノマー、紫外線硬化型オリゴマー、および紫外線硬化型ポリマーからなる群より選択される少なくとも一種類が含まれる。紫外線硬化型の樹脂組成物の具体例としては、特開2016-179686号公報に記載のハードコート層形成用組成物が挙げられる。
硬化性樹脂組成物は、微粒子を含有してもよい。硬化性樹脂組成物に対する微粒子の配合は、硬化樹脂層12における硬さの調整、表面粗さの調整、屈折率の調整、および防眩性の付与に、役立つ。微粒子としては、例えば、金属酸化物粒子、ガラス粒子、および有機粒子が挙げられる。金属酸化物粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および酸化アンチモンが挙げられる。有機粒子の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル・スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、およびポリカーボネートが挙げられる。
硬化樹脂層12の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上である。このような構成は、透明導電層20において充分な耐擦過性を発現させるのに適する。硬化樹脂層12の厚さは、硬化樹脂層12の透明性を確保する観点からは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
硬化樹脂層12の表面12aの、ナノインデンテーション法により測定される25℃での硬度は、好ましくは0.4GPa以上、より好ましくは0.5GPa以上、更に好ましくは0.6GPa以上、特に好ましくは0.7GPa以上である。このような構成は、硬化樹脂層12上の透明導電層20におけるクラックの発生を抑制するのに適する。硬化樹脂層12の表面12aの、ナノインデンテーション法により測定される25℃での硬度は、好ましくは10GPa以下、より好ましくは5GPa以下、更に好ましくは3GPa以下である。このような構成は、硬化樹脂層12の可撓性を確保するのに適し、従って、透明導電性積層体Xの取り扱い性を確保するのに適する。硬化樹脂層12の表面12aの硬度を調整する方法としては、例えば、硬化樹脂層12における無機粒子の添加量の調整、硬化樹脂層12形成用の硬化性樹脂組成物における反応促進剤の添加量の調整、および、硬化条件の調整が挙げられる。硬化樹脂層12の表面12aの硬度を調整する方法としては、硬化性樹脂組成物に2以上の異種の硬化性樹脂を配合し、その配合比を調整することも、挙げられる。
ナノインデンテーション法とは、試料の諸物性をナノメートルスケールで測る技術である。本実施形態において、ナノインデンテーション法は、ISO14577に準拠して実施される。ナノインデンテーション法では、ステージ上にセットされた試料に圧子を押し込む過程(荷重印加過程)と、それより後に試料から圧子を引き抜く過程(除荷過程)とが実施されて、一連の過程中、圧子-試料間に作用する荷重と、試料に対する圧子の相対変位とが測定される(荷重-変位測定)。これにより、荷重-変位曲線を得ることが可能である。この荷重-変位曲線から、測定試料について、ナノメートルスケール測定に基づく硬さや弾性率などの物性を求めることが可能である。ナノインデンテーション法による硬化樹脂層表面の荷重-変位測定には、例えば、ナノインデンター(商品名「Triboindenter」,Hysitron社製)を使用できる。その測定において、測定モードは単一押込み測定とし、測定温度は25℃とし、使用圧子はBerkovich(三角錐)型のダイヤモンド圧子とし、荷重印加過程での測定試料に対する圧子の最大押込み深さ(最大変位H1)は50nmとし、当該圧子の押込み速度は5nm/秒とし、除荷過程での測定試料からの圧子の引抜き速度は5nm/秒とする。本測定によって得られる荷重-変位曲線に基づき、最大荷重Pmax(最大変位H1にて圧子に作用する荷重)、接触投影面積Ap(最大荷重時における圧子と試料との間の接触領域の投影面積)、接触剛性S(除荷過程開始時における荷重-変位曲線(除荷曲線)の接線の傾き)、および、除荷過程後の試料表面における塑性変形量H2(試料表面から圧子を離した後に当該試料表面に維持される凹部の深さ)を得ることができる。そして、最大荷重Pmaxと接触投影面積Apから、試料表面の硬度(=Pmax/Ap)を算出することができる。接触剛性Sと接触投影面積Apから、試料表面の弾性率(=π1/2S/2Ap1/2)を算出することができる。また、最大変位H1と塑性変形量H2から、荷重印加とその後の除荷とを経た試料表面の弾性回復率(=(H1-H2)/H1)を算出することができる。
硬化樹脂層12の表面12aの、ナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性率は、好ましくは7GPa以上、より好ましくは8GPa以上、更に好ましくは9GPa以上、特に好ましくは10GPa以上である。このような構成は、硬化樹脂層12上の透明導電層20におけるクラックの発生を抑制するのに適する。硬化樹脂層12の表面12aの、ナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性率は、好ましくは20GPa以下、より好ましくは17GPa以下、更に好ましくは15GPa以下である。このような構成は、硬化樹脂層12の可撓性を確保するのに適し、従って、透明導電性積層体Xの取り扱い性を確保するのに適する。硬化樹脂層12の表面12aの弾性率を調整する方法としては、例えば、硬化樹脂層12における無機粒子の添加量の調整、硬化樹脂層12形成用の硬化性樹脂組成物における反応促進剤の添加量の調整、および、硬化条件の調整が挙げられる。硬化樹脂層12の表面12aの弾性率を調整する方法としては、硬化性樹脂組成物に2以上の異種の硬化性樹脂を配合し、その配合比を調整することも、挙げられる。
硬化樹脂層12の表面12aの、ナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性回復率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上、更に好ましくは77%以上である。このような構成は、表面12aにおける凹みの形成など、硬化樹脂層12における塑性変形を、抑制する観点から好ましい。硬化樹脂層12の表面12aの、ナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性回復率は、例えば100%以下である。硬化樹脂層12の表面12aの弾性回復率を調整する方法としては、例えば、硬化樹脂層12を形成する硬化性樹脂の種類の選択、硬化樹脂層12における無機粒子の添加量の調整、硬化樹脂層12形成用の硬化性樹脂組成物における反応促進剤の添加量の調整、および、硬化条件の調整が挙げられる。硬化樹脂層12の表面12aの弾性回復率を調整する方法としては、硬化性樹脂組成物に2以上の異種の硬化性樹脂を配合し、その配合比を調整することも、挙げられる。
硬化樹脂層12の表面12aは、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
透明基材フィルム10の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、特に好ましくは30μm以上である。透明基材フィルム10の厚さは、好ましくは310μm以下、より好ましくは210μm以下、更に好ましくは110μm以下、特に好ましくは80μm以下である。透明基材フィルム10の厚さに関するこれら構成は、透明導電性積層体Xの取り扱い性を確保するのに適する。
透明基材フィルム10の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、車載用ディスプレイパネルに透明導電性積層体Xが備えられる場合に当該透明導電性積層体Xに求められる透明性を確保するのに適する。透明基材フィルム10の全光線透過率は、例えば100%以下である。
透明導電層20は、本実施形態では、透明基材フィルム10における厚さ方向Hの一方面上に位置する。透明導電層20は、光透過性と導電性とを兼ね備える結晶質膜である。また、透明導電層20には、透明電極および透明配線がパターン形成されていてもよい(図示略)。
透明導電層20は、透明導電材料から形成された層である。透明導電材料は、主成分として、例えば導電性酸化物を含有する。
導電性酸化物としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも一種類の金属または半金属を含有する金属酸化物が挙げられる。具体的には、導電性酸化物としては、インジウム含有導電性酸化物およびアンチモン含有導電性酸化物が挙げられる。インジウム含有導電性酸化物としては、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、およびインジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)が挙げられる。アンチモン含有導電性酸化物としては、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。高い透明性と良好な導電性とを実現する観点からは、導電性酸化物としては、好ましくはインジウム含有導電性酸化物が用いられ、より好ましくはITOが用いられる。このITOは、InおよびSn以外の金属または半金属を、InおよびSnのそれぞれの含有量より少ない量で含有してもよい。
ITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計量に対する酸化スズの量の割合(酸化スズ含有割合)は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上である。ITOにおけるインジウム原子数に対するスズ原子数の比率(スズ原子数/インジウム原子数)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.07以上である。このような構成は、透明導電層20の耐久性を確保するのに適する。また、上記酸化スズ含有割合は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。上記比率(スズ原子数/インジウム原子数)は、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.14以下、更に好ましくは0.13以下である。これら構成は、加熱により結晶化しやすい透明導電層20を得るのに適する。上記比率(スズ原子数/インジウム原子数)は、例えば、測定対象物について、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)によってインジウム原子とスズ原子の存在比率を特定することにより、求められる。上記酸化スズ含有割合は、例えば、そのようにして特定されたインジウム原子とスズ原子の存在比率から、求められる。酸化スズ含有割合は、スパッタ成膜時に用いるITOターゲットの酸化スズ(SnO)含有割合から判断してもよい。
透明導電層20は、希ガス原子を含有してもよい。希ガス原子としては、例えば、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)が挙げられる。透明導電層20における希ガス原子は、本実施形態では、透明導電層20を形成するための後述のスパッタリング法においてスパッタリングガスとして用いられる希ガス原子に由来する。本実施形態において、透明導電層20は、スパッタリング法で形成された膜(スパッタ膜)である。
透明導電層20における希ガス原子の含有割合(例えば、KrとArの合計量の割合)は、厚さ方向Hの全域において、好ましくは1.2原子%以下、より好ましくは1.1原子%以下、一層好ましくは1.0原子%以下、より一層好ましくは0.8原子%以下、更に好ましくは0.5原子%以下、殊更に好ましくは0.4原子%以下、とても好ましくは0.3原子%以下、特に好ましくは0.2原子%以下である。このような構成は、透明導電性積層体Xの製造過程において、非晶質透明導電層(後記の透明導電層20’)を加熱により結晶化させて透明導電層20を形成する時に、良好な結晶成長を実現して大きな結晶粒を形成するのに適し、従って、低抵抗の透明導電層20を得るのに適する(透明導電層20内の結晶粒が大きいほど、透明導電層20の抵抗は低い)。また、透明導電層20は、希ガス原子含有割合が例えば0.0001原子%以上である領域を、厚さ方向Hの少なくとも一部に含む。透明導電層20における希ガス原子含有割合は、好ましくは、厚さ方向Hの全域において例えば0.0001原子%以上である。
透明導電層20形成時に良好な結晶成長を実現して大きな結晶粒を形成する観点からは、透明導電層20は、希ガス原子として、好ましくはKrおよび/またはArを含有し、より好ましくはKrのみを含有する。透明導電層20において大きな結晶粒を形成するのに適する当該構成は、透明導電層20の低抵抗化を実現するのに適する。また、透明導電層20において大きな結晶粒を形成するのに適する当該構成は、形成される透明導電層20において圧縮残留応力を低減するのに適する。
透明導電層20は、組成が異なる領域を厚さ方向Hに複数含んでもよい。図2は、透明導電層20が、組成が異なる第1領域31および第2領域32を含む場合を、例示的に図示する。
透明導電層20を形成する導電性酸化物としてITOが用いられる場合、第1領域31と第2領域32とは、例えば、ITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計量に対する酸化スズの量の割合(酸化スズ含有割合)が異なる。好ましくは、第1領域31の酸化スズ含有割合は、第2領域32の酸化スズ含有割合より大きい。このような構成は、透明導電層20の低抵抗化の観点から好ましい。第1領域31の酸化スズ含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは13質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは11質量%以下である。第2領域32の酸化スズ含有割合は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、特に好ましくは8質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
透明導電層20の厚さは、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm、更に好ましくは28nm以上、特に好ましくは30nm以上である。このような構成は、透明導電層20の低抵抗化を図るのに好ましい。また、透明導電層20の厚さは、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは200nm以下である。このような構成は、透明導電性フィルムYの反りを抑制するのに好ましい。
透明導電層20が第1領域31および第2領域32を含む場合、透明導電層20の総厚さにおける第1領域31の厚さの割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上であり、また、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下である。すなわち、透明導電層20の総厚さにおける第2領域32の厚さの割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、また、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。このような構成は、透明導電層20の低抵抗化の観点から好ましい。
透明導電層20の表面抵抗値は、好ましくは100Ω/□以下、より好ましくは90Ω/□以下、更に好ましくは80Ω/□以下、特に好ましくは75Ω/□以下である。透明導電層20の表面抵抗値は、例えば1Ω/□以上である。表面抵抗値に関するこれらの構成は、車載用ディスプレイパネルに透明導電性積層体Xが備えられる場合に透明導電層20に求められる低抵抗性を、確保するのに適する。表面抵抗値は、JIS K7194(1994年)に準拠した四端子法によって測定できる。
透明導電層20の比抵抗は、好ましくは3.0×10-4Ω・cm以下、より好ましくは2.5×10-4Ω・cm以下、更に好ましくは2.0×10-4Ω・cm以下、特に好ましくは1.8×10-4Ω・cm以下である。透明導電層20の比抵抗は、好ましくは0.1×10-4Ω・cm以上、より好ましくは0.5×10-4Ω・cm以上、更に好ましくは1.0×10-4Ω・cm以上である。比抵抗に関するこれらの構成は、車載用ディスプレイパネルに透明導電性積層体Xが備えられる場合に透明導電層20に求められる低抵抗性を、確保するのに適する。比抵抗は、表面抵抗値に厚さを乗じて求められる。比抵抗は、例えば、透明導電層20をスパッタ成膜する時の各種条件の調整により、制御できる。当該条件としては、例えば、透明導電層20が成膜される下地(本実施形態では透明基材フィルム10)の温度、スパッタリングガスの種類および量、成膜室内への酸素導入量、成膜室内の気圧、並びに、ターゲット上の水平磁場強度が挙げられる。
透明導電層20の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、透明導電層20において透明性を確保するのに適する。また、透明導電層20の全光線透過率は、例えば100%以下である。
透明導電層が結晶質であることは、例えば、次のようにして判断できる。まず、透明導電層を、濃度5質量%の塩酸に、20℃で15分間、浸漬する。次に、透明導電層を、水洗した後、乾燥する。次に、透明導電層の露出平面において、離隔距離15mmの一対の端子の間の抵抗(端子間抵抗)を測定する。この測定において、端子間抵抗が10kΩ以下である場合、透明導電層は結晶質である。また、透過型電子顕微鏡により透明導電層における結晶粒の存在を平面視で観察することによっても、当該透明導電層が結晶質であることを判断できる。
透明導電層20は、厚さ方向Hと直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する。すなわち、透明導電層20の面方向の最大圧縮残留応力は、800MPa以下である。この圧縮残留応力は、好ましくは750MPa以下、より好ましくは700MPa以下、更に好ましくは650MPa以下、特に好ましくは600MPa以下である。透明導電層20は、例えば、上述のMD方向に最大圧縮残留応力を有する。この場合、MD方向と直交するTD方向における透明導電層20の圧縮残留応力は、最大圧縮残留応力より小さい。透明導電層20は、例えば、TD方向に最大圧縮残留応力を有する。この場合、MD方向における透明導電層20の圧縮残留応力は、最大圧縮残留応力より小さい。透明導電層20の圧縮残留応力が最大である方向は、透明導電層20の面内において任意の方向に延びる軸を基準軸(0°)として、当該基準軸から15°刻みの各軸方向の圧縮残留応力を測定することによって、求めることができる。
粘着剤層30は、透明導電性フィルムXとカバーガラス40とを接合する。粘着剤層30は、粘着剤組成物から形成された感圧接着剤層である。粘着剤層30は、透明性(可視光透過性)を有する。粘着剤層30は、少なくともベースポリマーを含有する。
ベースポリマーは、粘着剤層30において粘着性を発現させる粘着成分である。ベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、シリコーンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、ポリビニルエーテルポリマー、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィンポリマー、エポキシポリマー、フッ素ポリマー、およびゴムポリマーが挙げられる。ベースポリマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。粘着剤層30における良好な透明性および粘着性を確保する観点から、ベースポリマーとしては、好ましくはアクリルポリマーが用いられる。
粘着剤層30は、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、およびシランカップリング剤を含有してもよい。
粘着剤層30の厚さは、透明導電性フィルムXおよびカバーガラス40に対する充分な粘着性を確保する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましく15μm以上である。粘着剤層30の厚さは、透明導電性積層体Xの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
粘着剤層30の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、車載用ディスプレイパネルに透明導電性積層体Xが備えられる場合に当該透明導電性積層体Xに求められる透明性を確保するのに適する。粘着剤層30の全光線透過率は、例えば100%以下である。
カバーガラス40は、車載用ディスプレイパネルの表面保護機能を担う要素である。カバーガラス40は、粘着剤層30側の表面41と、当該表面41とは反対側の表面42(露出面)とを有する。
カバーガラス40の材料としては、透明性、表面平滑性、熱安定性、水分遮断性、および光学的等方性に優れるものが好ましい。そのような材料としては、例えば、ソーダライムガラスおよびホウケイ酸ガラスが挙げられる。
カバーガラス40の表面41,42には、アルカリ溶出防止層が形成されていてもよい。また、表面41には、粘着剤層30の接着性向上のため、シランカップリング剤によって処理されていてもよい。
カバーガラス40の厚さは、好ましくは100μm以上、より好ましくは300μm以上、更に好ましくは500μm以上である。このような構成は、カバーガラス40において破損を抑制して表面保護機能を確保するのに好ましい。カバーガラス40の厚さは、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、更に好ましくは1000μm以下である。このような構成は、透明導電性積層体Xの薄型化の観点から好ましい。
カバーガラス40の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。このような構成は、車載用ディスプレイパネルに透明導電性積層体Xが備えられる場合に当該透明導電性積層体Xに求められる透明性を、確保するのに適する。カバーガラス40の全光線透過率は、例えば100%以下である。
透明導電性積層体Xは、例えば以下のように製造される。
まず、図3Aに示すように、樹脂フィルム11を用意する。
次に、図3Bに示すように、樹脂フィルム11の厚さ方向Hの一方面上に硬化樹脂層12を形成する。樹脂フィルム11上への硬化樹脂層12の形成により、透明基材フィルム10が作製される。
硬化樹脂層12は、樹脂フィルム11上に、硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を硬化させることによって形成できる。硬化性樹脂組成物が紫外線化型樹脂を含有する場合には、紫外線照射によって前記塗膜を硬化させる。硬化性樹脂組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合には、加熱によって前記塗膜を硬化させる。
樹脂フィルム11上に形成された硬化樹脂層12の表面12aは、必要に応じて、表面改質処理される。表面改質処理としてプラズマ処理する場合、不活性ガスとして例えばアルゴンガスを用いる。また、プラズマ処理における放電電力は、例えば10W以上であり、また、例えば5000W以下である。
次に、図3Cに示すように、透明基材フィルム10上に、非晶質の透明導電層20’を形成する。具体的には、スパッタリング法により、透明基材フィルム10における硬化樹脂層12上に材料を成膜して非晶質の透明導電層20’を形成する。透明導電層20’は、光透過性と導電性とを兼ね備える非晶質膜である(透明導電層20’は、後述の結晶化工程において、加熱によって結晶質の透明導電層20に転化される)。
スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置を使用するのが好ましい。透明導電性積層体Xの製造において、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置を使用する場合、長尺形状の透明基材フィルム10を、装置が備える繰出しロールから巻取りロールまで走行させつつ、当該透明基材フィルム10上に材料を成膜して透明導電層20’を形成する。また、当該スパッタリング法では、一つの成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよいし、透明基材フィルム10の走行経路に沿って順に配置された複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよい(上述の第1領域31および第2領域32を含む透明導電層20’を形成する場合には、2以上の複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用する)。
スパッタリング法では、具体的には、スパッタ成膜装置が備える成膜室内に真空条件下でスパッタリングガス(不活性ガス)を導入しつつ、成膜室内のカソード上に配置されたターゲットにマイナスの電圧を印加する。これにより、グロー放電を発生させてガス原子をイオン化し、当該ガスイオンを高速でターゲット表面に衝突させ、ターゲット表面からターゲット材料を弾き出し、弾き出たターゲット材料を透明基材フィルム10における硬化樹脂層12上に堆積させる。
成膜室内のカソード上に配置されるターゲットの材料としては、透明導電層20に関して上述した導電性酸化物が用いられ、好ましくはインジウム含有導電性酸化物が用いられ、より好ましくはITOが用いられる。上述の第1領域31および第2領域32を含む透明導電層20’を形成する場合には、第1領域31形成用の第1ターゲットと、第2領域32形成用の第2ターゲット(第1ターゲットとは組成が異なる)とが用いられる。
スパッタリング法は、好ましくは、反応性スパッタリング法である。反応性スパッタリング法では、スパッタリングガスに加えて反応性ガスとしての酸素が、成膜室内に導入される。
スパッタリングガスとしては、本実施形態では希ガス原子が用いられる。希ガス原子としては、Ar、Kr、およびXeが挙げられ、好ましくはKrおよび/またはArが用いられ、より好ましくはKrのみが用いられる。スパッタリングガスがKr以外の不活性ガスを含有する場合、スパッタリングガスにおける、Kr以外の不活性ガスその含有割合は、好ましくは80体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
反応性スパッタリング法において成膜室に導入されるスパッタリングガスおよび酸素の合計導入量に対する、酸素の導入量の割合は、例えば0.01流量%以上であり、また、例えば15流量%以下である。
スパッタリング法による成膜(スパッタ成膜)中の成膜室内の気圧は、例えば0.02Pa以上であり、また、例えば1Pa以下である。
スパッタ成膜中の透明基材フィルム10の温度は、例えば100℃以下である。スパッタ成膜中、透明基材フィルム10からのアウトガスや透明基材フィルム10の熱膨張を抑制するには、当該透明基材フィルム10を冷却するのが好ましい。アウトガスの抑制および熱膨張の抑制は、透明導電層20において高い結晶安定性を実現するのに役立つ。このような観点から、スパッタ成膜中の透明基材フィルム10の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下、特に好ましくは0℃以下であり、また、例えば-50℃以上、好ましくは-20℃以上、より好ましくは-10℃以上、更に好ましくは-7℃以上である。
ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、例えば、DC電源、AC電源、MF電源、およびRF電源が挙げられる。電源としては、DC電源とRF電源とを併用してもよい。スパッタ成膜中の放電電圧の絶対値は、例えば50V以上であり、また、例えば500V以下である。
本製造方法では、次に、図3Dに示すように、加熱によって透明導電層20を非晶質から結晶質へと転化(結晶化)させる(結晶化工程)。加熱の手段としては、例えば、赤外線ヒーターおよび加熱オーブンが挙げられる。加熱オーブンとしては、例えば、熱媒加熱式オーブンおよび熱風加熱式オーブンが挙げられる。加熱時の環境は、真空環境および大気環境のいずれでもよい。好ましくは、酸素存在下での加熱が実施される。加熱温度は、高い結晶化速度を確保する観点からは、例えば100℃以上であり、好ましくは120℃以上である。加熱温度は、透明基材フィルム10への加熱の影響を抑制する観点から、例えば200℃未満であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは165℃以下である。加熱時間は、例えば10時間以下であり、好ましくは200分以下、より好ましくは90分以下、更に好ましくは60分以下であり、また、例えば1分以上、好ましくは5分以上である。
以上のようにして、透明導電性フィルムYを製造できる。
この後、透明導電性フィルムYの透明導電層20をパターニングしてもよい。当該パターニングより、透明導電層20において透明電極および透明配線が形成される。所定のエッチングマスクを介して透明導電層20をエッチング処理することにより、透明導電層20をパターニングできる。
次に、透明導電性フィルムYとカバーガラス40とを粘着剤層30を介して接合する。例えば、透明導電性フィルムYにおける透明導電層20側に、光学粘着シートとして予め用意された粘着剤層30を貼り合わせた後、当該粘着剤層30を介して、透明導電性フィルムYとカバーガラス40とを貼り合わせる。
以上のようにして、透明導電性積層体Xを製造できる。
透明導電性積層体Xでは、上述のように、透明基材フィルム10と、透明導電層20と、粘着剤層30と、カバーガラス40とを含む積層構造を有する。そして、当該積層構造中の透明導電層20の面方向の圧縮残留応力が、800MPa以下であり、好ましくは750MPa以下、より好ましくは700MPa以下、更に好ましくは650MPa以下、特に好ましくは600MPa以下である。このような構成は、高温環境下において、透明導電層20の下地(本実施形態では硬化樹脂層12)からの透明導電層20の剥離、および、透明導電層20でのクラックの発生を、抑制するのに適し、従って、透明導電層20の抵抗変化を抑制するのに適する。また、透明導電性フィルムYは、上述のように、透明導電層20の面方向の圧縮残留応力が、800MPa以下であり、好ましくは750MPa以下、より好ましくは700MPa以下、更に好ましくは650MPa以下、特に好ましくは600MPa以下である。このような構成は、高温環境下の透明導電性積層体において、透明導電層20の下地(本実施形態では硬化樹脂層12)からの透明導電層20の剥離、および、透明導電層20でのクラックの発生を、抑制するのに適し、従って、透明導電層20の抵抗変化を抑制するのに適する。このような抵抗変化抑制効果は、具体的には、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。
透明導電性積層体Xは、図4に示すように、透明導電性フィルムYとカバーガラス40との間に機能性光学フィルム50を備えてもよい。図4では、透明導電性積層体Xは、透明導電性フィルムYと、粘着剤層30Aと、機能性光学フィルム50と、粘着剤層30Bと、カバーガラス40とを厚さ方向Hにこの順で備える。すなわち、透明導電性積層体Xは、透明基材フィルム10と、透明導電層20と、粘着剤層30Aと、機能性光学フィルム50と、粘着剤層30Bと、カバーガラス40とを厚さ方向Hにこの順で備える。
機能性光学フィルム50としては、例えば、透明防水フィルムが挙げられる。透明防水フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが挙げられる。
機能性光学フィルム50の厚さは、防水性など機能の確保の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、更に好ましくは10μm以上である。機能性光学フィルム50の厚さは、透明導電性積層体Xの透明性および取り扱い性の確保の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
粘着剤層30Aは、透明導電性フィルムXと機能性光学フィルム50とを接合する。粘着剤層30Bは、機能性光学フィルム50とカバーガラス40とを接合する。粘着剤層30A,30Bは、粘着剤層30と同様に、透明な粘着剤組成物から形成された感圧接着剤層である。粘着剤層30A,30Bの材料としては、例えば、粘着剤層30に関して上記した材料が挙げられる。粘着剤層30A,30Bは、同じ組成を有してもよいし、異なる組成を有してもよい。粘着剤層30A,30Bは、同じ厚さを有してもよいし、異なる厚さを有してもよい。
図4に示す透明導電性積層体Xを製造するには、透明導電性フィルムYを作製した後、透明導電性フィルムYと機能性光学フィルム50とを粘着剤層30Aを介して接合する。例えば、透明導電性フィルムYにおける透明導電層20側に、光学粘着シートとして予め用意された粘着剤層30Aを貼り合わせた後、当該粘着剤層30Aを介して、透明導電性フィルムYと機能性光学フィルム50とを貼り合わせる。その後、機能性光学フィルム50とカバーガラス40とを粘着剤層30Bを介して接合する。例えば、機能性光学フィルム50の露出面に、光学粘着シートとして予め用意された粘着剤層30Bを貼り合わせた後、当該粘着剤層30Aを介して、透明導電性フィルムYと機能性光学フィルム50とを貼り合わせる。例えば以上のようにして、図4に示す透明導電性積層体Xを製造できる。
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
〔実施例1〕
樹脂フィルムとしての長尺のシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(商品名「ゼオノア ZF16」,厚さ40μm,日本ゼオン社製)の一方の面に、第1硬化性組成物を塗布して第1塗膜を形成した。第1硬化性組成物は、第1紫外線硬化性樹脂組成物(品名「ユニディック ELS888」,DIC社製)80質量部と、第2紫外線硬化性樹脂組成物(品名「ユニディック RS28-605」,DIC社製)20質量部と、架橋アクリル・スチレン樹脂粒子(商品名「SSX105」,粒子径3μm,積水樹脂社製)0.07質量部と、光重合開始剤(品名「イルガキュア184」,BASF社製)4質量部とを含有する。次に、第1塗膜を乾燥させた後、紫外線照射により、第1塗膜を硬化させてアンチブロッキング(AB)層(厚さ1μm)を形成した。次に、COPフィルムの他方の面に、第2硬化性組成物を塗布して第2塗膜を形成した。第2硬化性組成物は、架橋アクリル・スチレン樹脂粒子(商品名「SSX105」)を含有させなかったこと以外は第1硬化性組成物と同様に調整した組成物である。次に、第2塗膜を乾燥させた後、紫外線照射により、第2塗膜を硬化させて、硬化樹脂層としてのハードコート(HC)層(厚さ1μm)を形成した。以上のようにして、透明基材フィルムを作製した。
次に、反応性スパッタリング法により、透明基材フィルムにおけるHC層上に、厚さ32nmの非晶質の透明導電層を形成した(透明導電層形成工程)。反応性スパッタリング法では、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置(巻取式のDCマグネトロンスパッタリング装置)を使用した。スパッタ成膜装置は、ロールトゥロール方式で透明基材フィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる成膜室を備える。装置内での透明基材フィルムの走行速度は4.0m/分とし、透明基材フィルムの走行方向に作用する走行張力(フィルム幅方向の単位長さあたりの張力)は125N/mとした。スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。
ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの第1焼結体(酸化スズ濃度は10質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用い、DC電源の出力は15.7kWとした。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。成膜温度(透明導電層が積層される透明基材フィルムの温度)は-5℃とした。また、成膜室内の到達真空度が0.9×10-4Paに至るまで成膜室内を真空排気した後、成膜室内に、スパッタリングガスとしてのKrと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.2Paとした。成膜室に導入されるKrおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約2流量%であり、その酸素導入量は、図5に示すように、表面抵抗値-酸素導入量曲線の領域R内であって、形成されるITO膜の表面抵抗値が220Ω/□になるように調整した。図5に示す表面抵抗値-酸素導入量曲線は、酸素導入量以外の条件は上記と同じ条件で透明導電層を反応性スパッタリング法で形成した場合の、透明導電層の表面抵抗値の酸素導入量依存性を、予め調べて作成できる。
次に、透明基材フィルム上の透明導電層を、熱風オーブン内での加熱によって結晶化させた(結晶化工程)。本工程において、加熱温度は130℃とし、加熱時間は90分間とした。
以上のようにして、実施例1の透明導電性フィルムを作製した。実施例1の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ32nm)は、Kr含有の結晶質ITOからなる。
〔実施例2〕
透明導電層形成工程における次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例2の透明導電性フィルムを作製した。スパッタ成膜のDC電源出力を19.7kWとした。形成されるITO膜の表面抵抗値が180Ω/□になるように酸素導入量を調整しつつ、厚さ40nmの非晶質の透明導電層を形成した。
実施例2の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ40nm)は、Kr含有の結晶質ITOからなる。
〔実施例3〕
透明導電層形成工程における次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例2の透明導電性フィルムを作製した。透明基材フィルム上に透明導電層の第1領域(厚さ25.6nm)を形成する第1スパッタ成膜と、当該第1領域上に透明導電層の第2領域(厚さ6.4nm)を形成する第2スパッタ成膜とを順次に実施した。本実施例で使用したスパッタ成膜装置(巻取式のDCマグネトロンスパッタリング装置)は、ロールトゥロール方式で透明基材フィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる第1成膜室および第2成膜室を備える。
第1スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの第1焼結体(酸化スズ濃度は10質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用い、DC電源の出力は12.2kWとした。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。成膜温度は-5℃とした。また、第1成膜室内の到達真空度が0.9×10-4Paに至るまで第1成膜室内を真空排気した後、第1成膜室内に、スパッタリングガスとしてのArと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、第1成膜室内の気圧を0.2Paとした。第1成膜室への酸素導入量は、形成されるITO膜の表面抵抗値が220Ω/□になるように調整した。
第2スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの第2焼結体(酸化スズ濃度は3質量%)を用いた。DC電源の出力は3.0kWとした。第2スパッタ成膜における他の条件は、第1スパッタ成膜と同じである。
以上のようにして、実施例3の透明導電性フィルムを作製した。実施例3の透明導電性フィルムの透明導電層は、Ar含有の結晶質ITO(酸化スズ濃度10質量%)からなる第1領域(厚さ25.6nm)と、Ar含有の結晶質ITO(酸化スズ濃度3質量%)からなる第2領域(厚さ6.4nm)とを、透明基材フィルム側から順に有する。
実施例3の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ32nm)は、Ar含有の結晶質ITOからなる。
〔実施例4〕
透明導電層形成工程における次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例4の透明導電性フィルムを作製した。スパッタ成膜のDC電源出力を19.0kWとした。スパッタリングガスとしてArを用いた。形成されるITO膜の表面抵抗値が180Ω/□になるように酸素導入量を調整しつつ、厚さ40nmの非晶質の透明導電層を形成した。
実施例4の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ40nm)は、Ar含有の結晶質ITOからなる。
〔実施例5〕
結晶化工程における次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例5の透明導電性フィルムを作製した。加熱温度を100℃とした。加熱時間を180分間とした。
実施例5の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ32nm)は、Kr含有の結晶質ITOからなる。
〔実施例6〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例6の透明導電性フィルムを作製した。透明導電層形成工程において、スパッタ成膜のDC電源出力を19.7kWとし、形成されるITO膜の表面抵抗値が180Ω/□になるように酸素導入量を調整しつつ、厚さ40nmの非晶質の透明導電層を形成した。結晶化工程において、加熱温度を100℃とした。加熱時間を90分間とした。
実施例6の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ40nm)は、Kr含有の結晶質ITOからなる。
〔比較例1〕
結晶化工程における次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例5の透明導電性フィルムを作製した。加熱温度を150℃とした。加熱時間を90分間とした。
比較例1の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ32nm)は、Kr含有の結晶質ITOからなる。
〔比較例2〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、比較例2の透明導電性フィルムを作製した。透明導電層形成工程において、スパッタ成膜のDC電源出力を19.7kWとした。形成されるITO膜の表面抵抗値が180Ω/□になるように酸素導入量を調整しつつ、厚さ40nmの非晶質の透明導電層を形成した。結晶化工程において、透明導電層付きの透明基材フィルムに対してMD方向(スパッタ成膜時の走行方向)に125N/mの張力を作用させた状態で、透明導電層を加熱して結晶化させた。
比較例2の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ40nm)は、Kr含有の結晶質ITOからなる。
〔比較例3〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、比較例3の透明導電性フィルムを作製した。透明導電層形成工程において、スパッタ成膜時のDC電源出力を23.7kWとした。スパッタリングガスとしてArを用いた。形成されるITO膜の表面抵抗値が140Ω/□になるように酸素導入量を調整しつつ、厚さ50nmの非晶質の透明導電層を形成した。結晶化工程において、透明導電層付きの透明基材フィルムに対してMD方向(スパッタ成膜時の走行方向)に125N/mの張力を作用させた状態で、透明導電層を加熱して結晶化させた。
比較例3の透明導電性フィルムの透明導電層(厚さ50nm)は、Ar含有の結晶質ITOからなる。
〈透明導電層の厚さ〉
実施例1~6および比較例1~3における各透明導電層の厚さを、FE-TEM観察により測定した。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、実施例1~6および比較例1~3における各透明導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(商品名「FB2200」,Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、断面観察用サンプルにおける透明導電層の厚さを、FE-TEM観察によって測定した。FE-TEM観察では、FE-TEM装置(商品名「JEM-2800」,JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。
実施例3における透明導電層の第1領域の厚さは、当該第1領域の上に第2領域を形成する前の中間作製物から断面観察用サンプルを作製し、当該サンプルのFE-TEM観察により測定した。実施例3における透明導電層の第2領域の厚さは、実施例3における透明導電層の総厚から第1領域の厚さを差し引いて求めた。実施例3における透明導電層の第1領域の厚さ割合は、80%であった。
〈抵抗測定〉
実施例1~6および比較例1~3の各透明導電性フィルムについて、透明導電層の抵抗値を調べた。具体的には、JIS K 7194(1994年)に準拠した四端子法により、透明導電層の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。そして、表面抵抗値と透明導電層の厚さとを乗じることにより、比抵抗(Ω・cm)を求めた。透明導電層の表面抵抗値(Ω/□)と比抵抗(Ω・cm)とを表1に示す。
〈透明導電層内のKr原子の確認〉
実施例1,2,5,6および比較例1,2における各透明導電層がKr原子を含有することは、次のようにして確認した。まず、走査型蛍光X線分析装置(商品名「ZSX PrimusIV」,リガク社製)を使用して、下記の測定条件にて蛍光X線分析測定を5回繰り返し、各走査角度の平均値を算出し、X線スペクトルを作成した。そして、作成されたX線スペクトルにおいて、走査角度28.2°近傍にピークが出ていることを確認することにより、透明導電層にKr原子が含有されることを確認した。
<測定条件>
スペクトル;Kr-KA
測定径:30mm
雰囲気:真空
ターゲット:Rh
管電圧:50kV
管電流:60mA
1次フィルタ:Ni40
走査角度(deg):27.0~29.5
ステップ(deg):0.020
速度(deg/分):0.75
アッテネータ:1/1
スリット:S2
分光結晶:LiF(200)
検出器:SC
PHA:100~300
〈透明導電層の圧縮残留応力〉
実施例1~6および比較例1~3の各透明導電性フィルムの透明導電層(結晶質ITO膜)の圧縮残留応力を、透明導電層の結晶格子歪みから間接的に求めた。具体的には、次のとおりである。
まず、透明導電性フィルムから、矩形の測定試料(50mm×50mm)を切り出した。次に、粉末X線回折装置(商品名「SmartLab」,株式会社リガク製)により、測定試料の透明導電層について、測定散乱角2θ=60~61.6°の範囲で、0.02°おきに、回折強度を測定した(0.15°/分)。次に、得られた回折像のピーク(ITOの(622)面のピーク)角2θと、X線源の波長λとに基づき、測定試料における透明導電層の結晶格子間隔dを算出し、dを基に格子歪みεを算出した。dの算出には、下記の式(1)を用い、εの算出には、下記の式(2)を用いた。
Figure 2023013411000002
式(1)および式(2)において、λはX線源(Cu Kα線)の波長(=0.15418nm)であり、dは無応力状態のITOの格子面間隔(=0.1518967nm)である。上記のX線回折測定を、フィルム面法線とITO結晶面法線とのなす角Ψが65°、70°、75°、および85°のそれぞれについて実施し、それぞれのΨにおける格子歪みεを算出した。フィルム面法線とITO結晶面法線とのなす角Ψは、測定試料(透明導電性フィルムの一部)における透明基材フィルムのTD方向(面内においてMD方向と直交する方向)を回転軸中心として試料を回転することによって、調整した(角Ψの調整)。ITO膜面内方向の残留応力σは、SinΨと格子歪εとの関係をプロットした直線の傾きから下記の式(3)により求めた。求められた残留応力σ(負の値をとる)の絶対値を、MD方向における第1圧縮残留応力S(MPa)として表1に示す。
Figure 2023013411000003
式(3)において、EはITOのヤング率(=115GPa)、νはITOのポアソン比(=0.35)とした。
また、X線回折測定における上述の角Ψの調整を、測定試料における透明基材フィルムのTD方向に代えてMD方向(面内においてTD方向と直交する方向)を回転軸中心として試料を回転することによって実現したこと以外は、第1圧縮残留応力Sと同様にして、TD方向における第2圧縮残留応力S(MPa)を導出した。その値を表1に示す。
一方、測定試料における透明導電層の面内においてMD方向に延びる軸を基準軸(0°)として、当該基準軸から15°刻みの各軸方向の圧縮残留応力を測定した。これにより、次のことを確認した。実施例1~3および比較例1~3の透明導電性フィルムにおいては、MD方向の第1圧縮残留応力Sが、面方向における圧縮残留応力の最大値(最大圧縮残留応力)である。実施例4~6の透明導電性フィルムにおいては、TD方向の第2圧縮残留応力Sが、面方向における圧縮残留応力の最大値(最大圧縮残留応力)である。
〈抵抗変化〉
実施例1~6および比較例1~3の各透明導電性フィルムの透明導電層について、高温高湿試験を経ることによる抵抗の変化を、次のようにして調べた。
まず、透明導電性フィルム(50mm×50mm)とガラスプレート(厚さ1300μm)とを、粘着シート(品名「CS9864UAS」,厚さ100μm,日東電工社製)を介して接合し、透明導電性積層体を作製した。次に、非接触式表面抵抗値測定器(品名「EC-80」,NAPSON社製)により、透明導電性積層体の表面抵抗値R(Ω/□)を測定した。次に、透明導電性積層体を、オーブン(品名「LHU-123」,ESPEC社製)内で、温度85℃および相対湿度85%の条件で240時間保管した(第1の高温高湿試験)。次に、非接触式表面抵抗値測定器(品名「EC-80」)により、透明導電性積層体の表面抵抗値R(Ω/□)を測定した。Rに対するRの比率(R/R)を、第1抵抗変化率として表1に示す。
一方、第1の高温高湿試験の代わりに第2の高温高湿試験を実施したこと以外は、上述の方法と同様にして、透明導電層の表面抵抗値R(Ω/□)を測定した。第2の高温高湿試験では、透明導電性積層体を、温度85℃および相対湿度85%の条件で500時間、保管した。Rに対するRの比率(R/R)を、第2抵抗変化率として表1に示す。比較例1~3における各透明導電性積層体では、第2の高温高湿試験後において、測定限界値(1000Ω/□)以下の測定値が得られなかった。
Figure 2023013411000004
X 透明導電性積層体
Y 透明導電性フィルム
H 厚さ方向
10 透明基材フィルム
11 樹脂フィルム
12 硬化樹脂層
20 透明導電層
21 第1領域
22 第2領域
30 粘着剤層
40 カバーガラス
50 機能性光学フィルム

Claims (5)

  1. 透明基材フィルムと、透明導電層と、粘着剤層と、カバーガラスとを厚さ方向にこの順で備え、
    前記透明導電層が、前記厚さ方向と直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する、透明導電性積層体。
  2. 前記透明導電層がインジウム含有導電性酸化物を含む、請求項1に記載の透明導電性積層体。
  3. 前記透明導電層が、3.0×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有する、請求項1または2に記載の透明導電性積層体。
  4. 前記透明導電層が20nm以上の厚さを有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の透明導電性積層体。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載の透明導電性積層体に用いられる透明導電性フィルムであって、
    透明基材フィルムと透明導電層とを厚さ方向にこの順で備え、
    前記透明導電層が、前記厚さ方向と直交する面方向において、800MPa以下の圧縮残留応力を有する、透明導電性フィルム。
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