JP2023012810A - 銅基粉、その製造方法、および銅基粉を用いた光造形物の製造方法 - Google Patents

銅基粉、その製造方法、および銅基粉を用いた光造形物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粉末床溶融結合法等の金属光造形法に適したレーザー光吸収性と流動性を有するとともに、硬度の高い造形物が得られる銅基粉を提供する。【解決手段】平均粒径が1μm以上、100μm以下の粒子からなる銅基粉であって、前記粒子は、銅粒子と、前記銅粒子の表面の少なくとも一部に付着した炭化物とを含み、波長1070nmにおける反射率が60%以下である、銅基粉とする。【選択図】なし

Description

本発明は銅基粉に関し、より詳細には、レーザー光などのエネルギー線の照射により三次元形状の造形物を得る金属光造形法に使用される銅基粉に関する。
三次元の造形物を簡単に成形することができる三次元造形装置、所謂3Dプリンターの普及が進んでいる。このような三次元造形装置を用いた造形物の製造方法のなかでも、金属造形物を得る方法として粉末床溶融結合(L-PBF)法が知られている。L-PBF法は、粉体を敷き詰めた層の表面に、高エネルギーのレーザー光を照射して粉体粒子どうしを焼結ないし溶融固化させ、それを数十ミクロンごとの層としたものを積層し、繰り返し接合することにより、三次元の造形物を得る方法である。金属基粉を用いたL-PBFの実用化も進み、Co-Cr合金、マルエージング鋼、ステンレス、ニッケル基超合金などの金属基粉を用いたL-PBFでは、得られる造形物の加工精度や製品としての完成度が高く、実用化され始めている。しかしながら、現状のL-PBF法では使用可能な金属基粉が限られており、得られる金属製品も一定の範囲のものに限られる。
その主な理由として、原料とする金属基粉の光吸収性の問題が挙げられる。即ち、L-PBF法は金属基粉がレーザー光の光エネルギーを吸収し加熱されることで、金属基粉粒子どうしが焼結ないし溶融固化することを利用している。このため、金属基粉は光エネルギーを効率的に吸収できるものであることが必要である。L-PBF法で使用される汎用的なレーザー光の波長は近赤外ないし遠赤外領域であり、レーザー光の波長帯域での光吸収率が低い金属(例えば、アルミニウム、金、銀、銅など)はレーザー光等から十分な熱量を受け取ることができないため、得られた金属光造形物の焼結密度が低くなってしまう。また、熱伝導性の高い金属は、レーザー光のエネルギー線を熱として一旦吸収しても、十分な焼結や溶融固化がなされる前に短時間で放熱してしまうため、密度が高い金属光造形物を得ることが困難である。さらに、銅については、その融点が約1084℃と比較的高いことも、焼結を難しくする要因になっている。そのため、銅は、熱伝導性や電気伝導度が高く加工性にも優れた金属であるにもかかわらず、L-PBF法への適用が困難とされていた。
そのため、銅基粉をL-PBF法に適用すべく、種々の検討が試みられている。例えば、レーザー光の吸収率を高めるために銅粒子の表面にガドリニウム(Gd)等の特定の金属被膜を形成すること(特許文献1)、酸化銅の被膜を形成すること(特許文献2、3)、さらには、銅粒子やアルミニウム粒子の表面に有機化合物由来の炭素被覆を形成すること(特許文献4)等が提案されている。
上記のように、銅粉の表面にレーザー光吸収率の高い金属または金属酸化物を被覆した銅基粉を用いて得られた金属光造形物は、銅以外の物質(被覆物)が含有しているため、銅本来が備えている諸特性(例えば、熱伝導性、電気伝導性、加工適性)に加えて、純銅が備えていない特性を付与することも可能である。例えば、特許文献5には、銅に所定量のクロムを含有した銅合金基粉とすることで、レーザー光の吸収率を高めながら、熱伝導性、電気伝導性および強度に優れた銅合金造形物が得られることが提案されている。
国際公開第2019/064745号パンフレット 国際公開第2019/017467号パンフレット 特開2020-94271号公報 特開2018-199862号公報 特開2019-70169号公報
上記のように、銅は優れた熱伝導性、電気伝導性、加工性を有する金属であり、種々の産業用途に用いられている。そのなかでも、例えば抵抗溶接用の電極材や射出成形用金型等のように硬度が要求される産業用途があり、このような用途にL-PBF法による銅造形物を適用したいという潜在的な希求がある。
したがって、本発明の目的は、L-PBF法に適したレーザー光吸収性と流動性を有するとともに、硬度の高い造形物が得られる銅基粉を提供することである。
本発明の発明者らは、銅粉を構成する銅粒子(一次粒子)の表面に炭化物を付着させることにより、L-PBF法に適したレーザー光吸収性と流動性を有するとともに、硬度の高い造形物が得られるとの知見を得た。本発明は係る知見に基づくものである。
本発明による銅基粉は、
平均粒径が1μm以上、100μm以下の粒子からなる銅基粉であって、
前記粒子は、
銅粒子と、
前記銅粒子の表面の少なくとも一部に付着した炭化物と
を含み、
波長1070nmにおける反射率が60%以下である。
本発明によれば、銅基粉を構成する銅粒子の表面に、レーザー光の反射率が60%以下となる程度まで炭化物を付着させることにより、L-PBF法に適したレーザー光吸収性を備えるだけでなく、L-PBF法を実施する際に必要とされる銅基粉の流動性を改善しながら、硬度の高い造形物を得ることができる。
[定義]
本明細書において、「銅粒子」とは、銅または銅合金からなる粒子を示し、「銅粉」とは、該銅粒子が複数個集まったものを示す。また「銅基粉」とは、該銅粒子の表面の少なくとも一部に炭化物が付着した粒子が複数個集まったものを示す。
また、「付着」とは、炭化物が物理的に銅粒子の表面に接触している状態や固着している状態のみならず、化学的に結合した状態や、炭化物の一部が銅粒子に埋設して一体化(合金化)した状態も含むものとする。
[本発明の銅基粉]
本発明の銅基粉は、銅粒子と該銅粒子の表面の少なくとも一部に付着した炭化物とを含む粒子からなり、該粒子の平均粒径が1μm以上、100μm以下であり、波長1070nmにおける反射率が60%以下としたものである。本発明においては、銅基粉の波長1070nmにおける反射率が60%以下となるように、銅基粉を構成する粒子の表面に炭化物が付着していることによって、L-PBF法に適したレーザー光吸収性を有するものである。即ち、銅の光吸収率は、金属光造形法において使用される一般的なYbファイバーレーザー光の波長領域(1030nm以上、1070nm以下)において数%程度であり、レーザー光を吸収しにくい性質を持つ金属である。また、熱伝導度もチタン、鉄、ニッケル等と比較して非常に高いため、そのままではレーザー光の照射によって加熱することが容易でない。これに対し、本発明においては、波長1070nmにおける反射率が60%以下となるように、銅粒子の表面に炭化物を付着させることで、レーザー光吸収性を向上させたものである。本発明において、反射率の上限は60%であり、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下である。一方、反射率の下限値は特に定めるものではなく、レーザー光吸収性の観点からは低い方が好ましいが、炭化物を付着させた銅基粉の実現可能性の観点から、典型的には10%以上であり、より典型的には15%以上であり、さらに典型的には20%以上である。
なお、本明細書において「反射率」とは、積分球ユニットを備えた分光光度計を用いて測定される分光反射率を意味し、特定波長の光に対して測定された被測定面(銅基粉)における全反射光量をもとに、分光反射率等が既知の標準反射板(例えば硫酸バリウム標準反射板)の特定の波長領域における全反射光量を基準として算出された比率を意味する。通常使用されている銅粒子からなる基粉は、波長1070nmにおける反射率が70%~80%程度である。
また、本発明の銅基粉によれば、銅粒子の表面に炭化物が付着していることにより、銅粒子を使用して製造した造形物と比較して硬度の高い造形物を得ることができる。また、炭化物が微量含まれる銅造形物となるため、造形物が高温環境下に置かれた際の強度低下も抑制できるものと考えられる。そのため、抵抗溶接用の電極材や射出成形用金型等の用途に特に適した造形物を得ることができる。
さらに、本発明によれば、銅粒子の表面に炭化物を付着させることにより粉体の流動性が向上する。この理由は定かではないが、銅粒子の表面に炭化物が付着していることにより、粒子表面に微小な凹凸が形成されるため流動性が向上するものと考えられる。銅基粉が優れた流動性を有することで、L-PBF法による光造形の際のスキージングが容易となり、均一で平坦な粉体床を準備することができる。なお、L-PBF法に適した基粉は、流動度が5秒/50g以上、30秒/50g以下とされているが、本発明の銅基粉によれば、30秒/50g以下の流動度とすることができる。なお、流動度は、JIS Z 2502に準拠して測定された値を意味する。
銅基粉を構成する銅粒子は、一次粒子の平均粒径が1μm以上、100μm以下のものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、ヒドラジン等の各種の還元剤を用い、酢酸銅や硫酸銅などの銅化合物を湿式で還元することで銅粒子を得ることができる。また、銅の溶湯を用い、アトマイズ法によっても銅粒子を得ることができる。
銅粒子の形状は特に制限されるものではないが、L-PBF法等の金属光造形法に使用する場合、スキージングによって粉体の充填密度の高い基粉床を形成する観点からは、球状に近い形状であることが好ましい。そのため、アトマイズ法によって得られた銅粒子を使用することが好ましい。アトマイズ法としては、ガスアトマイズ法と水アトマイズ法が挙げられるが、銅粒子をより球状に近いものとする簡単からは、ガスアトマイズ法が好ましい。高圧ガスアトマイズ法によれば、より一層、球形に近い粒子形状の揃った銅粒子を得ることができる。
上記のようにして得られる銅粒子は、銅粒子の大きさを揃えるために必要に応じて分級することができる。 この分級は、目標とする平均粒径のものとなるように、適切な分級装置を用いて、得られた銅粉から粗粉や微粉を分離することにより容易に実施することができる。
本発明においては、上記したような一次粒子の平均粒径が1μm以上、100μm以下の銅粒子を使用することで、一次粒子の平均粒径が1μm以上、100μm以下である銅基粉とすることができる。一次粒子の平均粒径が上記範囲にある銅基粉を使用することで、L-PBF法等の金属光造形法において充填密度の高い粉体床を形成できるとともに、銅基粉を焼結または溶融固化させて得られた造形物の焼結密度も高くすることができる。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径(D50)を意味する。精細で稠密な光造形物を得る観点、銅基粉の流動性の観点から、使用する銅粒子の平均粒径は、2μm以上、80μm以下であることが好ましく、3μm以上、64μm以下であることが特に好ましい。
次に、上記した銅粒子の表面に、炭化物を付着させる方法について説明する。本発明の銅基粉に使用される炭化物としては、波長1070nmにおける光吸収性が高い金属炭化物であれば特に制限なく使用することができるが、これらの中でも、本発明の効果の観点からは、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化マンガン、炭化コバルト、炭化ニッケル、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化タングステンが好ましく、特に、銅の導電性を維持しながら本発明の効果が得る観点からは、炭化クロムがより好ましい。
炭化物の付着は、銅粒子に炭化物を接触さることにより行われる。具体的には、プラズマCVD法、原子層堆積法(ALD)等の化学気相堆積法、スパッタリング等の物理堆積法、炭化物含有ペーストを銅粒子表面に塗布して焼成する塗布法、ハイブリダイゼーション法等の種々の方法によって、銅粒子の表面に炭化物を付着させることができる。これらの方法のなかでも、真球度が高く流動性に富む銅基粉が得られる観点から、ハイブリダイゼーション法により炭化物を付着させることが好ましい。ハイブリダイゼーション法は、高速気流中衝撃法とも呼ばれ、高速気流中に複数種の粉体どうしを乾式で分散させながら、衝撃力を主体とする力によって、粒子の表面を他種の粒子を用いて改質または複合化する技術である。本発明においては、銅粒子と炭化物からなる粒子とを、高速気流中衝撃法により混合することによって、銅粒子の表面のすくなくとも一部に炭化物を付着させることができる。
上記した高速気流中衝撃法を採用する場合、炭化物は粒子の形態を有していることが好ましい。炭化物粒子は、炭化物の付着性の観点、および真球度の高い銅基粉を得る観点から、平均粒径は1nm以上、300nm以下であることが好ましく、50nm以上、150nm以下であることがより好ましい。上記したような平均粒径を有する炭化物を高速気流中衝撃法により銅粒子の表面に付着させると、銅表面は炭化物粒子の存在により微小な凹凸が形成されるものと考えられる。また、高速気流中衝撃法によれば、銅粒子自体の真球度も向上する。その結果、得られた銅基粉の流動性が向上するものと考えられる。上記した炭化物粒子は、従来公知の方法により得ることができ、例えば静的合成法、動的合成方、気相合成法等の方法により得ることができる。なお、本明細書において、炭化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に選択した20個の粒子の粒子径を測定した、それらの平均値として定義される。
銅基粉の流動性改善の観点からは、用いる銅粒子と炭化物粒子との粒子径比率(炭化物粒子の平均粒径に対する銅粒子の平均粒径の比)が、100~5000であることが好ましく、200~3000であることがより好ましい。
炭化物は、銅基粉の波長1070nmにおける反射率が60%以下となるように、銅粒子の表面に付着させる。炭化物の付着量が多いほど反射率を低減させることができるが、銅本来の特性を維持しながら造形物の硬度を向上させる観点からは、銅基粉全体に対する炭化物の割合が、0.2質量%以上、5.0質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上、2.0質量%以下であることがより好ましい。炭化物の付着量は、銅粒子と炭化物粒子とを混同する際の両者の割合やハイブリダイゼーション時間によって調整することができる。なお、炭化物の付着の有無は、走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)やX線回折法(XRD)等によって確認することができ、炭化物の粒径や付着量に応じて、透過電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光法(XPS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)等を使用すればよい。また、炭化物の付着量の定量的な測定は、X線光電子分光(XPS)装置、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置、炭素分析装置等の公知の手段を用いて行うことができる。
さらに、本発明においては、銅粒子の表面に炭化物が付着していることにより、銅粒子の経時安定性を向上させることができる。即ち、金属銅は空気や湿気により極めて酸化され易く、保管中に粉体物性が変動し易いことが知られている。同一ロットの銅粉を使用していても、保管によって銅粉の特性が経時変化してしまうため、光造形物の物性も変化してしまう可能性がある。本発明によれば、銅粒子の表面に炭化物が付着していることで、大気や湿気との酸化反応の進行が抑制されると考えられ、その結果、より安定的に光造形物を得ることが期待できる。
[銅基粉を用いた光造形物の製造方法]
上記したような銅基粉を用いた光造形物の製造方法について説明する。
先ず、造形用ステージに銅基粉を供給し、スキージング用ブレードを用いて粉体表面をスキージングすることで所定の厚さの粉体床を形成する(工程1)。なお、本発明におけるスキージングとは、金属光造形法において、基粉からなる粉体床の表面にブレードやヘラ、ローラー等を当てて移動させ、粉体床の表面を平滑にし、余剰の基粉を除去することである。
次いで、レーザー光等の光ビームを粉体床の表層の任意の位置に照射する。この照射位置は、造形したい物品の三次元CADデータに基づいて作成された断層平面図から定めることができる。光ビームが照射された位置にある複数の銅粒子どうしが焼結または溶融固化し、第1層が形成される(工程2)。
続いて、第1層の厚さに相当する深さ分だけ、造形用ステージの位置を移動させる(工程3)。この工程1~工程3を繰り返し、第1層に第2層、第3層と複数の層を順に積層させて、銅による光造形物が製造される。
このような金属光造形装置には、光ビームとして赤外線レーザーが一般的に搭載されており、波長が1064nmの赤外線を含む波長帯域である固体レーザー、950nm以上、1900nm以下の波長帯域のファイバーレーザー、10.6μmの波長帯域のCOレーザー等が使用されている。ファイバーレーザーのガラスコアへの増幅媒質としては、Yb(1030nm以上、1070nm以下)、Nd(約950nm)、Tm(約1900nm)、Er(約1550nm)等の希土類元素が一般的である。本発明の銅基粉は波長1070nmにおける反射率が60%以下であることから、中心波長が1070nmのYb添加ファイバーレーザーを使用することが好ましい。レーザーの照射モードはビーム品質や集光性の違いがあるものの、シングルモードとマルチモードのどちらでもよい。また上記造形方法はあくまで光造形法を用いた場合の一例であり、これに限られるものではない。
上記のようにして銅基粉から得られた光造形物は、銅粉からなる光造形物に近い電気伝導性や熱伝導性を備えながらも、レーザー光吸収による充分な焼結ないし溶融固化が行われているため、稠密で機械強度に優れている。また、造形物は炭化物が含まれることにより高い硬度を有している。具体的には、本発明の銅基粉を用いて得られた光造形物は、JIS Z 2244に準拠して測定されるビッカース硬度(Hv)を40Hv以上とすることができる。また、このようにして得られた光造形物は種々の用途に適用可能であるが、高温環境下において使用される用途(例えば抵抗溶接用の電極材や射出成形用金型等)に特に適している。純銅からなる造形物では、熱処理によって銅の結晶粒が成長するため硬度が低下することが知られているが、本発明においては、銅に炭化物が含まれていることから結晶粒の成長が阻害され、その結果、高温環境下に置かれるような用途であっても造形物の硬度が低下しにくいものと考えられる。
次に本発明の実施形態について以下の実施例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<銅粉の準備>
下記の2種類のガスアトマイズ製銅粉を準備した。
銅粉1:MA-CH-S、三井金属鉱業株式会社製(純銅、1次粒子の平均粒径D50:33μm)
銅粉2:MA-CCR25L、三井金属鉱業株式会社製(Cr1.2wt%含有銅、1次粒子の平均粒径D50:28μm)
<炭化物の準備>
下記の4種類の炭化物を準備した。
炭化物1:NP-SIC-8、イーエムジャパン株式会社製(炭化ケイ素(SiC)99%以上、粒径:<80nm)
炭化物2:NP-CR3C2、イーエムジャパン株式会社製(炭化クロム(Cr)99.7%以上、粒径:30~120nm)
炭化物3:NP-ZRC-3、イーエムジャパン株式会社製(炭化ジルコニウム(ZrC)99%以上、粒径:80nm)
炭化物4:NP-WC-1、イーエムジャパン株式会社製(炭化タングステン(WC)99.9%以上、粒径:55nm)
<銅基粉の調製>
上記した銅粉と炭化物とを、全量で1.5kgとなるように秤量し、両者を混合撹拌機(OMO-3、奈良機械製作所製)を用いて1000rpmで10分間撹拌し、次いで、混合撹拌物を150g秤量して、ハイブリダイザー(HYB-1、奈良機械製作所製)を用いて、6000rpmで5分間循環させて、銅基粉を得た。
なお、銅基粉を取り出した後の混合撹拌機及びハイブリダイザーには炭化物の残存は目視では確認できなかったことから、添加した炭化物のほぼ全量が銅粉に付着したものと推測できる。
<平均粒径の測定>
得られた銅基粉について、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社、MT3300EXII)を用いて、平均粒子径(D50)を測定した。測定結果は下記の表1に示すとおりであった。
<反射率の測定>
銅粉および各銅基粉の反射率は、分光光度計(U-4100、株式会社 日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、銅粉を凹型のホルダーに充填し、石英カバーガラスで封じて、波長を1070nmとして積分球法により測定した。測定結果は下記の表1に示すとおりであった。
<流動性の測定>
流動度測定器(筒井理化学器械株式会社)を用いて、銅粉および銅基粉の各50gをロートに投入し、JIS Z 2502に準拠した方法により、粉体の流動度(秒)の測定を行った。測定結果は下記表1に示すとおりであった。なお、表1中の「NG」は、粉体をロートから落下する際に引っかかりがあり、ロートに投入した粉体(銅粉または銅基粉)の全部が落下しなかったことを示す。また、実施例5および6の銅基粉においては、粉体がロートに引っかかり途中で止まることがあった。
Figure 2023012810000001
上記の表1からも明らかなように、銅粉に炭化物を付着させた銅基粉は、銅粉に比べて流動性が向上していることがわかる。
<光造形物の作製>
銅粉および銅基粉のそれぞれを、金属光造形機(Concept Laser M2、GEアディティブ社製)を用いて、出力370W、積層ピッチ0.03mmの条件にて光造形し、15mm×15mm×10mmの造形物を作製した。レーザー光による単位体積あたりのエネルギー密度は、銅粉1(純銅)を用いた場合は600J/mmとし、銅粉2(銅クロム合金)を用いた場合は160J/mmとした。
続いて、得られた造形物を、窒素気流中、700℃で3時間の熱処理を行った。
<光造形物の特性評価>
(1)ビッカース硬度
光造形物の熱処理前後でのビッカース硬度(Hv)をJIS Z 2244に準拠して測定した。また、炭化物が付着していない銅粉を用いた光造形物(熱処理後)に対して、各銅基粉を用いた光造形物(熱処理後)の硬度がどの程度増加したかを、下記式により求めた。
硬度増加率(%)=(銅基粉を用いた光造形物の硬度-銅粉を用いた光造形物の硬度)/銅粉を用いた光造形物の硬度×100
測定結果は下記の表2に示される通りであった。なお、実施例5および比較例2については熱処理後のビッカース硬度(Hv)のみ測定した。
(2)相対密度
熱処理後の各光造形物について、銅粉および炭化物の各密度から造形物の理論密度を算出し、嵩密度をJIS-R1634に準拠してアルキメデス法により算出し、理論密度に対する嵩密度の比率により相対密度を算出した。結果は下記の表2に示されるとおりであった。
(3)導電率
熱処理後の各光造形物について、渦電流位相変位感応式測定装置(SIGMASCOPE・SMP350、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて、導電率(100%IACS)を測定した。結果は下記の表2に示されるとおりであった。
Figure 2023012810000002
表2からも明らかなように、銅粉に炭化物を付着させることにより、得られた光造形物の硬度が増加することがわかる。また、光造形物は熱処理により硬度が減少するものの、炭化物が付着していない銅粉(比較例1および比較例2)から得られた光造形物に比べて、炭化物を付着させた銅粉(即ち、銅基粉)から得られた光造形物は、硬度維持率が高いことがわかる。
また、炭化物を付着させた銅粉(即ち、銅基粉)から得られた光造形物であっても、炭化物が付着していない銅粉から得られた光造形物と同等の導電性を有していることがわかる。

Claims (9)

  1. 平均粒径が1μm以上、100μm以下の粒子からなる銅基粉であって、
    前記粒子は、
    銅粒子と、
    前記銅粒子の表面の少なくとも一部に付着した炭化物と
    を含み、
    波長1070nmにおける反射率が60%以下である、銅基粉。
  2. 銅基粉全体に対する炭化物の割合が、0.2質量%以上、5.0質量%以下である、請求項1に記載の銅基粉。
  3. 炭化物が、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化マンガン、炭化コバルト、炭化ニッケル、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化ハフニウム、炭化タンタル、および炭化タングステンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の銅基粉。
  4. 前記銅粒子の表面に前記炭化物からなる粒子が付着することで、該表面の少なくとも一部が前記炭化物により被覆されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の銅基粉。
  5. 前記炭化物粒子の平均粒径が、1nm以上、300nm以下である、請求項4に記載の銅基粉。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の銅基粉を製造する方法であって、
    銅粒子に炭化物を接触させて、前記銅粒子の表面に炭化物を付着させる、
    ことを含む、方法。
  7. 前記銅粒子への炭化物の接触が、
    前記銅粒子と前記炭化物からなる粒子との、高速気流中衝撃法による混合、
    前記銅粒子への前記炭化物のスパッタリング、または
    前記銅粒子表面への前記炭化物含有ペーストの塗布、
    により行われる、請求項6に記載の方法。
  8. 前記銅粒子の平均粒径が1μm以上、100μm以下である、請求項6または7に記載の方法。
  9. 請求項1~5のいずれか一項に記載の銅基粉を、レーザー光により焼結または溶融固化させる工程を含む、銅基粉を用いた光造形物の製造方法。
JP2021116512A 2021-07-14 2021-07-14 銅基粉、その製造方法、および銅基粉を用いた光造形物の製造方法 Pending JP2023012810A (ja)

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