JP2023009018A - 光起電力素子の製造方法および光起電力素子 - Google Patents

光起電力素子の製造方法および光起電力素子 Download PDF

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Tomohiro Mayumi
陽一 青木
Yoichi Aoki
伸博 渡辺
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Kenjiro Fukuda
恭兵 中野
Kyohei Nakano
隆夫 染谷
Takao Someya
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Abstract

【課題】成膜工程数が少なく、優れた光電変換効率および耐湿性を有する光起電力素子およびその製造方法を提供すること。【解決手段】基材1、陰極2、光電変換層4および陽極5をこの順に有する光起電力素子の製造方法であって、光電変換層4に陽極5を積層した後、酸素と接触させる工程を含む光起電力素子の製造方法。光起電力素子は、陽極5の少なくとも一部が光電変換層4に直接積層されてなり、陽極5の光電変換層4との界面に、陽極5を構成する金属の酸化物を含む。【選択図】図1

Description

本発明は光起電力素子の製造方法、光起電力素子およびそれを用いた電子デバイスに関する。
太陽電池は、現在深刻さを増すエネルギー問題に対して有力な環境に優しいエネルギー源として注目されている。現在、太陽電池などの光起電力素子の半導体材料としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体などの無機物が使用されている。しかし、無機半導体を用いて製造される太陽電池は、火力発電などの発電方式と比べてコストが高いために、一般家庭に広く普及するには至っていない。コスト高の要因は、主として真空かつ高温下で半導体薄膜を形成するプロセスにある。そこで、製造プロセスの簡略化が期待される半導体材料として、共役系高分子や有機結晶などの有機半導体や有機色素を用いた有機太陽電池が検討されている。このような有機太陽電池においては、半導体材料層を塗布法で作製することが可能なため、製造プロセスを大幅に簡略化することができる。
しかし、共役系重合体などを用いた有機太陽電池は、従来の無機半導体を用いた太陽電池と比べて光電変換効率および湿熱安定性が低いために、まだ実用化には至っていない。有機太陽電池の実用化のためには、高い光電変換効率とともに、それを長時間持続できる耐湿性の向上が求められている。
有機太陽電池の光電変換効率を向上させる方法として、基材、陰極、光電変換層、陽極をこの順に有する光電変換素子において、正孔輸送層を光電変換層と陽極の間に設置する方法が挙げられる。このような構成を有する光起電力素子として、基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有する光電変換素子であって、前記正孔取り出し層が、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する光電変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2015-191965号公報
特許文献1に記載された、正孔取り出し層を有する光電変換素子は、優れた光電変換効率が得られるものの、成膜工程数が増えることが課題であった。また、正孔取り出し層の導電性化合物としては、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSが用いられるものの、PEDOT:PSSが水分により劣化しやすいために、光起電力素子の耐湿性が低下することが課題であった。
本発明は正孔取り出し層を必要とすることなく、光電変換効率かつ耐湿性に優れた光起電力素子を提供することを目的とするものである。
本発明は、基材、陰極、光電変換層および陽極をこの順に有する光起電力素子の製造方法であって、光電変換層に陽極を積層した後、酸素と接触させる工程を含む光起電力素子の製造方法である。また、本発明は、基材、陰極、光電変換層および陽極をこの順に有する光起電力素子であって、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなり、陽極の光電変換層との界面に、陽極を構成する金属の酸化物を含む光起電力素子である。
本発明によれば、優れた光電変換効率および耐湿性を有する光起電力素子を得ることができる。
本発明の光起電力素子の一態様を示す概略断面図である。
本発明は、基材、陰極、光電変換層、陽極をこの順に有する光起電力素子に関する。本発明の光起電力素子は、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなり、陽極の光電変換層との界面に、陽極を構成する金属の酸化物を含み、本発明の光起電力素子の製造方法は、光電変換層に陽極を積層した後、酸素と接触させる工程を含む。
従来の光起電力素子においては、陽極と光電変換層の間に、正孔輸送層や正孔取り出し層を設けることにより、両層の界面状態を正孔輸送に適したものとし、光電変換層から陽極に効率的に正孔を輸送することができる一方、正孔輸送層や正孔取り出し層の形成のために製造工程が増えることや、耐湿性に課題があった。そこで、本発明者らは、陽極と光電変換層の界面状態について検討し、一般的に金属を酸化させると仕事関数が増加することに着目した。陽極を構成する金属を、陽極/光電変換層界面において酸化させることにより、光電変換層に含まれる電子供与性有機半導体のHOMO準位に近づき、正孔輸送層や正孔取り出し層を必要とすることなく、光電変換層から陽極に正孔を効率的に輸送できる優れた界面状態が得られるのではないかと着想した。そして、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなり、かかる直接積層部位において、陽極の光電変換層との界面に、陽極を構成する金属の酸化物を含む構成とすることにより、光起電力素子の優れた光電変換効率と耐湿性を両立することができることを見出した。また、光電変換層に陽極を積層した後、酸素と接触させる工程により、陽極の光電変換層との界面において、陽極を構成する金属が酸化されること、これにより、光電変換効率と耐湿性に優れる光電変換素子を、生産性良く得ることができることを見出した。
<光起電力素子>
本発明の光起電力素子は、基材、陰極、光電変換層、陽極をこの順に有する。かかる構成により、光電変換効率を向上させることができる。さらに、必要に応じて、電子輸送層、バリア層、反射防止層などを有してもよい。本発明の光起電力素子は、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなり、陽極の光電変換層との界面に、陽極を構成する金属の酸化物を含むことにより、前述のとおり、陽極/光電変換層の界面状態を、効率的な正孔輸送に適した状態とし、光電変換効率を向上させることができる。ここで、界面とは、組成が不連続的に変わる面から10nm以内の領域を指す。
陽極の光電変換層との界面における酸化物の存在は、素子の深さ方向の元素組成比を分析することにより観察することができる。深さ方向の元素組成比を分析する手法としては、例えば、二次イオン質量分析(SIMS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、エッチング併用X線光電子分光法(XPS)、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)、断面走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)などが挙げられる。これらの分析のいずれかにより、陽極の光電変換層との界面において酸素が検出されれば、金属酸化物が存在すると結論づけることができる。
図1に、本発明の光起電力素子の一態様の概略断面図を示す。光起電力素子は、基板1上に、陰極2、電子輸送層3、光電変換層4および陽極5をこの順に有し、陽極5の光電変換層4との界面6に、陽極5を構成する金属の酸化物を含む。
本発明の光起電力素子において、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなる。すなわち、かかる直接積層部位において、正孔輸送層や正孔取り出し層を有しない。ここで、正孔輸送層または正孔取り出し層とは、陽極と光電変換層の間に配置され、陽極と光電変換層との間で正孔輸送性を高める機能を有する、陽極を構成する金属元素を含まない層を指す。
(基材)
基材は、光電変換素子の各層を保持する機能を有し、光電変換素子を構成する材料や用途に応じて選択することができる。例えば、無アルカリガラス、石英ガラス、アルミニウム、鉄、銅、ステンレスなどの合金等の無機材料、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレンポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂やフッ素系樹脂等の有機材料から構成されるフィルムや板などが挙げられる。基材側から光を入射して用いる場合、基材は、400nm以上900nm以下の全ての波長領域において、80%以上の光透過率を有することが好ましい。
(陰極)
陰極を構成する材料としては、例えば、金、白金、銀、銅、鉄、亜鉛、錫、アルミニウム、インジウム、クロム、ニッケル、コバルト、スカンジウム、バナジウム、イットリウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、モリブデン、タングステン、チタンなどの金属や、これらの合金、金属酸化物、複合金属酸化物(インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)など)、アルカリ金属やアルカリ土類金属(リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)、グラファイト、グラファイト層間化合物、カーボンナノチューブ、グラフェン、ポリアニリンやその誘導体、ポリチオフェンやその誘導体などの導電性材料が好ましく用いられる。これらを2種以上用いてもよく、これらを積層してもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層は、光電変換層から陰極に効率的に電子を輸送するとともに、陰極/陽極間の短絡を抑制する機能を有する。電子輸送層を構成する材料としては、例えば、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、N,N’-ジオクチル-3,4,9,10-ペリレンジカルボキシミド(PTCDI-C8H)、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ホスフィンスルフィド誘導体、キノリン誘導体、フラーレン化合物、カーボンナノチューブ(CNT)、CN-PPVなどのn型半導体特性を示す有機材料(電子受容性有機材料)や、イオン性の置換フルオレン系ポリマー(「アドバンスド マテリアルズ(Advanced Materials)」、2011年、23巻、4636-4643頁;「オーガニック エレクトロニクス(Organic Electronics)」、2009年、10巻、496-500頁)や、イオン性の置換フルオレン系ポリマーと置換チオフェン系ポリマーの組み合わせ(「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー(Journal of American Chemical Society)」、2011年、133巻、8416-8419頁)、ポリエチレンイミン、エトキシ化ポリエチレンイミン(「サイエンス(Science)」、2012年、336巻、327-332頁)、ポリエチレンオキサイド(「アドバンスド マテリアルズ(Advanced Materials)」、2007年、19巻、1835-1838頁)などのイオン性基を有するポリマー、TiOなどの酸化チタン(TiO)、ZnOなどの酸化亜鉛(ZnO)、SiOなどの酸化ケイ素(SiO)、SnOなどの酸化錫(SnO)、WOなどの酸化タングステン(WO)、Taなどの酸化タンタル(TaO)、BaTiOなどのチタン酸バリウム(BaTi)、BaZrOなどのジルコン酸バリウム(BaZr)、ZrOなどの酸化ジルコニウム(ZrO)、HfOなどの酸化ハフニウム(HfO)、Alなどの酸化アルミニウム(AlO)、Yなどの酸化イットリウム(YO)、ZrSiOなどのケイ酸ジルコニウム(ZrSi)のような金属酸化物、Siなどの窒化ケイ素(SiN)のような窒化物、CdSなどの硫化カドミウム(CdS)、ZnSeなどのセレン化亜鉛(ZnSe)、ZnSなどの硫化亜鉛(ZnS)、CdTeなどのテルル化カドミウム(CdTe)のような半導体などの無機材料、国際公開公報第2020/07710号に記載の、ポリエチレンイミン、エトキシ化ポリエチレンイミンなどのイオン性基を有するポリマーと亜鉛、チタンなどを有する無機材料がキレート結合した化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、これらを積層してもよい。
本発明の光起電力素子は後述の酸素と接触させる工程を有することから、電子輸送層の材料は酸素により劣化しないことが好ましく、そのような例として酸化亜鉛などの無機材料や、エトキシ化ポリエチレンイミンと亜鉛がキレート結合した化合物などのポリマーと金属がキレート結合した化合物が挙げられる。
(光電変換層)
光電変換層は、電子供与性有機半導体と電子受容性有機半導体を含むことが好ましい。これらを含む光電変換層の構成としては、例えば、電子供与性有機半導体と電子受容性有機半導体の混合物からなる層、電子供与性有機半導体からなる層と電子受容性有機半導体からなる層の積層構造、かかる積層構造間に、さらにこれらの混合物からなる層を有する積層構造などが挙げられる。
電子供与性有機半導体とは、p型半導体特性を示すか、正孔輸送性を有する有機化合物であり、例えば、ポリチオフェン系重合体、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-チオフェン系共重合体、キノキサリン-チオフェン系共重合体、チエノチオフェン-ベンゾジチオフェン系共重合体、チエノピロールジオン系共重合体、イソインジゴ系共重合体、ジケトピロロピロール系共重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体などの共役系重合体、Hフタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン(TPD)、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン(NPD)等のトリアリールアミン誘導体、4,4’-ジ(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体(ターチオフェン、クウォーターチオフェン、セキシチオフェン、オクチチオフェンなど)等の低分子有機化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ポリチオフェン系重合体とは、チオフェン骨格を主鎖に有する共役系重合体を指し、側鎖を有するものも含む。具体的には、ポリ-3-メチルチオフェン、ポリ-3-ブチルチオフェン、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリ-3-オクチルチオフェン、ポリ-3-デシルチオフェンなどのポリ-3-アルキルチオフェン、ポリ-3-メトキシチオフェン、ポリ-3-エトキシチオフェン、ポリ-3-ドデシルオキシチオフェンなどのポリ-3-アルコキシチオフェン、ポリ-3-メトキシ-4-メチルチオフェン、ポリ-3-ドデシルオキシ-4-メチルチオフェンなどのポリ-3-アルコキシ-4-アルキルチオフェンなどが挙げられる。
2,1,3-ベンゾチアジアゾール-チオフェン系共重合体とは、チオフェン骨格と2,1,3-ベンゾチアジアゾール骨格を主鎖に有する共役系共重合体を指す。2,1,3-ベンゾチアジアゾール-チオフェン系共重合体として、具体的には下記のような構造が挙げられる。下記式において、nは1~1000の整数を示す。
Figure 2023009018000002
キノキサリン-チオフェン系共重合体とは、チオフェン骨格とキノキサリン骨格を主鎖に有する共役系共重合体を指す。キノキサリン-チオフェン系共重合体として、具体的には下記のような構造が挙げられる。下記式において、nは1~1000の整数を示す。
Figure 2023009018000003
チエノチオフェン-ベンゾジチオフェン系重合体とは、チオフェン骨格とベンゾジチオフェン骨格を主鎖に有する共役系共重合体を指す。チオフェン-ベンゾジチオフェン系共重合体として、具体的には下記のような構造が挙げられる。下記式において、nは1~1000の整数を示す。
Figure 2023009018000004
チエノピロールジオン系共重合体とは、チエノピロールジオン骨格を主鎖に有する共役系共重合体を指す。チエノピロールジオン系共重合体として、具体的には下記のような構造が挙げられる。下記式において、nは1~1000の整数を示す。
Figure 2023009018000005
ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体とは、p-フェニレンビニレン骨格を主鎖に有する共役系重合体を指し、側鎖を有するものも含む。具体的には、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]などが挙げられる。
電子供与性有機半導体としては、後述の酸素と接触させる工程における劣化を極力抑えられ、高い光起電力特性が得られることから、広い光吸収波長領域と深いHOMO準位を有することが好ましい。このような電子供与性有機半導体として、下記一般式(a)~(c)のいずれかで表される骨格を有する共役系重合体が挙げられる。
Figure 2023009018000006
上記一般式(a)中、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいチオアルコキシ基を示す。Xはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子、セレン原子または酸素原子を表す。上記一般式(b)中、Rは置換されていてもよいアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルカノイル基を表す。Yは水素原子またはハロゲン原子を表す。上記一般式(c)中、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいチオアルコキシ基、置換されていてもよいヘテロアリール基または置換されていてもよいアリール基を示す。
上記の骨格構造を有する共役系重合体の中でも、後述の陽極を構成する金属の酸化物のエネルギー準位との関係から、HOMO準位が4.5eV~6.0eVであることが好ましく、そのような電子供与性有機半導体として、下記一般式(1)または(2)で表される共役系重合体が挙げられる。
Figure 2023009018000007
上記一般式(1)および(2)中、R、R、R、X、Yは、上記一般式(a)~(c)と同様である。nは、2以上1,000以下の範囲を表す。
HOMO準位は、光電子分光法により求めることができる。より具体的には、電子供与性有機半導体から形成した薄膜について、大気中、光電子分光装置を用いてイオン化ポテンシャルを測定することにより、HOMO準位を算出することができる。
平面性が高く、電荷輸送性をより高められることから、Rは置換されてもよい5員環のヘテロアリール基が好ましく、置換基としては、炭素数1~15、更には炭素数4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基、チオアルコキシ基、ハロゲンが好ましく、また、Xは硫黄が好ましく、Rはアルキル基部分が炭素数1~15、好ましくは炭素数4~12の直鎖状であるアルコキシカルボニル基またはアルカノイル基が好ましい。Rは平面性が高く、電荷輸送性をより高められることから、炭素数1~15、更には炭素数4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基が好ましい。
電子受容性有機半導体材料とは、n型半導体特性を示す有機化合物物であり、例えば、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、N,N'-ジオクチル-3,4,9,10-ナフチルテトラカルボキシジイミド、オキサゾール誘導体(2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ジ(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール等)、トリアゾール誘導体(3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等)、フェナントロリン誘導体、カーボンナノチューブ、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体にシアノ基を導入した誘導体(CN-PPV)、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94などの無置換のフラーレンやこれらのフラーレン誘導体、下記の一般式(3)~(7)のいずれかで表される化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
Figure 2023009018000008
Figure 2023009018000009
一般式(3)~(7)において、RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基、置換されてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基または水素原子を示す。Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基を示す。R、RおよびRの置換基としては、炭素数1~15、更には炭素数4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。Zはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。
フラーレン誘導体としては、例えば[6,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([6,6]-C61-PCBMまたは[60]PCBM)、[5,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル、[6,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドヘキシルエステル、[6,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドドデシルエステル、フェニル C71 ブチリックアシッドメチルエステル([70]PCBM)などの置換基を有するものなどが挙げられる。なかでも[70]PCBMがより好ましい。
安定でキャリア移動度の高いn型半導体であることから、フラーレン誘導体や上記一般式(3)~(7)のいずれかで表される化合物が好ましく用いられる。
本発明においては、後述の酸素と接触させる工程における劣化を抑制するために、非フラーレン系化合物である、上記一般式(3)~(7)のいずれかで表される化合物がより好ましく、より高い変換効率が得られることから、下記化学式で表される化合物が特に好ましい。
Figure 2023009018000010
Figure 2023009018000011
光電変換層における電子供与性有機半導体:電子受容性有機半導体の重量分率が、1~99:99~1の範囲であることが好ましく、より好ましくは10~90:90~10の範囲であり、さらに好ましくは20~60:80~40の範囲である。
光電変換層の厚さは、電子供与性有機半導体および電子受容性有機半導体が光吸収によって光起電力を生じるために十分であればよい。好ましい厚さは材料によって異なるが、一般的には10nm~1000nmが好ましく、より好ましくは50nm~500nmである。また、光電変換層は、界面活性剤やバインダー樹脂、フィラー等の他の成分を含んでもよい。
(陽極)
陽極は、光電変換層から正孔を回収する機能を有し、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなる。陽極を構成する材料としては、例えば、金、白金、銀、銅、鉄、亜鉛、錫、アルミニウム、インジウム、クロム、ニッケル、コバルト、スカンジウム、バナジウム、イットリウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、モリブデン、タングステン、チタン、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの金属やその合金などの導電性材料が挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、これらを積層してもよい。
本発明において、陽極は、光電変換層との界面に、陽極を構成する金属の酸化物を有する。本発明において、陽極の光電変換層との界面とは、光電変換層と陽極の間で組成が不連続的に変わる面から10nm以内の陽極内の領域を指す。これにより、光電変換層内の電子供与性有機半導体のHOMO準位との整合性が良くなり、正孔を効率的に回収することができることから、光電変換効率を向上させることができる。電子供与性有機半導体のHOMO準位との関係から、陽極の光電変換層との界面における仕事関数は4.5eV~7.0eVであることが好ましい。このような金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化銀(AgO)、酸化銅(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化クロム(CrO)、酸化バナジウム(VO)、酸化コバルト(CoO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化鉄(FeO)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(TaO)などが挙げられる。金属酸化物の存在量は特に限定されないが、仕事関数が電子供与性有機半導体のHOMO準位と整合するように調整することが好ましい。
仕事関数の算出方法は、紫外光光電子分光法(UPS)が挙げられる。陽極最表面から陽極/光電変換層界面までエッチングを行う、または、テープ剥離などの剥離により陽極/光電変換層界面を露出させることにより、界面における仕事関数を測定することができる。仕事関数は照射光のエネルギーと光電子スペクトルのエネルギー幅の差から算出される。ただし、陽極を構成する材料が既知である場合、仕事関数は、既知の材料の文献値を用いてもよい。
陽極は、光電変換層との界面に前記金属酸化物を有していればよく、さらに、光電変換層内部や、光電変換層とは逆の界面にも金属酸化物を有してもよい。ただし、正孔を効率的に回収する観点から、陽極内部において、金属に対する金属酸化物の存在比率は、光電変換層との界面における金属酸化物の存在比率と同じかより低いことが好ましく、導電性の観点から、低いことが好ましい。また、金属酸化物の存在比率が、陽極内部から光電変換層との界面に連続的に増えていく深さプロファイルも好ましい形態である。また、その他の金属化合物(例えば、硫化物や窒化物、ハロゲン化物など)が含まれていても構わない。
金属酸化物の存在比率は、例えば、エッチングを併用したX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。光起電力素子に対して、測定(ワイドスキャンおよび陽極を構成する金属元素のナロースキャン)とエッチングを繰り返し行う。ワイドスキャンの結果から金属と酸素を含めた元素組成、ナロースキャンからは金属元素の結合状態(例えば、酸化数の異なる金属元素の存在比率)を求めることができ、両者の結果から陽極中の任意の深さにおける金属酸化物の存在比率を求めることができる。
光起電力素子の陰極または陽極のうち少なくとも一方は、光透過性を有するものである。少なくともいずれか一方が光透過性を有すればよいが、両方が光透過性を有してもよい。ここで、光透過性を有するとは、光電変換層に入射光が到達して起電力が発生する程度に光を透過することを意味する。すなわち、光透過率として0%を超える値を有する場合、光透過性を有するという。この光透過性を有する電極は、400nm以上900nm以下の全ての波長領域において60-100%の光透過率を有することが好ましい。また、光透過性を有する電極の厚さは十分な導電性が得られればよく、材料によって異なるが、20nm~300nmが好ましい。なお、光透過性を有しない電極は、導電性があれば十分であり、厚さも特に限定されない。
本発明の光起電力素子は、1つ以上の電荷再結合層を介して2層以上の光電変換層を積層(タンデム化)して直列接合を形成してもよい。例えば、基板/陰極/第1の電子輸送層/第1の光電変換層/電荷再結合層/第2の電子輸送層/第2の光電変換層/陽極という積層構成を挙げることができる。この場合、電荷再結合層は隣接する光電変換層の陰極および陽極を兼ねていると考えることができる。このように積層することにより、開放電圧を向上させることができる。
ここで用いられる電荷再結合層は、複数の光電変換層が光吸収できるようにするため、光透過性を有する必要がある。また、電荷再結合層は、十分に正孔と電子が再結合するように設計されていればよいので、必ずしも膜である必要はなく、例えば、光電変換層上に一様に形成された金属クラスターであってもかまわない。従って、電荷再結合層には、上述の金、白金、クロム、ニッケル、リチウム、マグネシウム、カルシウム、錫、銀、アルミニウムなどから成る数オングストロームから数十オングストローム程度の光透過性を有する非常に薄い金属膜や金属クラスター(合金を含む)、ITO、IZO、AZO、GZO、FTO、酸化チタンや酸化モリブデンなどの光透過性の高い金属酸化物膜およびクラスター、PSSが添加されたPEDOTなどの導電性有機材料膜、またはこれらの複合体等が用いられる。例えば、銀を、真空蒸着法を用いて水晶振動子膜厚モニター上で数オングストローム~1nmとなるように蒸着すれば、一様な銀クラスターが形成できる。その他にも、酸化チタン膜を形成するならば、アドヴァンスト マテリアルズ(Advanced Materials)、2006年、18巻、572-576頁に記載のゾルゲル法を用いればよい。ITO、IZOなどの複合金属酸化物であるならば、スパッタリング法を用いて製膜すればよい。これら電荷再結合層形成法や種類は、電荷再結合層形成時の光電変換層への非破壊性や、次に積層される光電変換層の形成法等を考慮して適当に選択すればよい。
次に、本発明の光起電力素子の製造方法について説明する。本発明の光起電力の製造方法は、光電変換層に陽極を積層した後、酸素と接触させる工程を含む。以下に、基材上に、陰極、電子輸送層、光電変換層、陽極をこの順に有する光起電力の製造方法の例を説明する。
まず、基材上に陰極を形成する。陰極の形成方法としては、例えば、スパッタリング法などが挙げられる。
次に、陰極上に、必要に応じて電子輸送層を形成する。電子輸送層の形成方法としては、例えば、電子輸送層を構成する材料やその前駆体の溶液または分散液を塗布し、加熱する方法が挙げられる。電子輸送層を構成する材料が前述の金属の場合、前駆体としては、その金属塩や金属アルコキシドなどが挙げられる。溶液や分散液には、イオン性基を有する化合物やシランカップリング剤など、任意の添加剤を添加してもよい。前駆体の溶液または分散液を陰極上に塗布した後、ホットプレートやオーブンなどを用いて加熱することにより、電子輸送層を形成する。このとき、加熱温度や時間、およびナノ粒子の合成条件により、完全には反応が進行しておらず、部分的に加水分解したり、部分的に縮合したりすることで、中間生成物となったり、前駆体と中間生成物、最終生成物などの混合物となったりしてもよい。
溶液または分散液の塗布方法としては、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法などが挙げられる。膜厚調整や配向調整など、目的の膜質に応じて塗布方法を選択することができる。スリットダイコート塗布、印刷転写法、インクジェット法、スプレー法などが、大面積化などの量産適用の観点から好ましい。
次に、光電変換層を形成する。電子供与性有機材料および電子受容性有機材料を混合して光電変換層を形成する場合は、電子供与性有機材料と電子受容性有機材料を所望の比率で溶媒に添加し、加熱、撹拌、超音波照射などの方法を用いて溶解させた溶液を、陰極または電子輸送層上に塗布することが好ましい。また、電子供与性有機材料および電子受容性有機材料を積層して光電変換層を形成する場合は、例えば、電子供与性有機材料の溶液を塗布して電子供与性有機材料を有する層を形成した後に、電子受容性有機材料の溶液を塗布して層を形成することが好ましい。電子供与性有機材料および電子受容性有機材料が、分子量が1,000以下程度の低分子量体である場合には、蒸着法を用いて光電変換層を形成することもできる。
前述の溶媒としては、有機溶媒が好ましく、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、テトラリン、アニソール、フェネトールベラトロール、1,3-ジメトキシベンゼン、1,2,4-トリメトキシベンゼン、2-メトキシトルエン、2,5-ジメチルアニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレンなどの芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジブロモプロパン、1,3-ジブロモプロパン、1,2,3-トリブロモプロパン、1,4-ジブロモブタン、1,6-ジブロモヘキサン、1,8-ジブロモオクタン、1,3-ジヨードプロパン、1,4-ジヨードブタン、1,5-ジヨードペンタン、1,6-ジヨードヘキサン、1,7-ジヨードヘプタン、1,8-ジヨードオクタンなどのハロゲン炭化水素類などが挙げられる。
光電変換層材料の溶液の塗布方法としては、前述の電子輸送層の形成方法において例示した塗布方法が挙げられる。膜厚調整や配向調整など、目的とする光電変換層特性に応じて形成方法を選択すればよい。例えば、スピンコート塗布を行う場合には、電子供与性有機材料および電子受容性有機材料が1~20g/lの濃度(電子供与性有機材料と電子受容性有機材料と溶媒を含む溶液の体積に対する、電子供与性有機材料と電子受容性有機材料の重量)であることが好ましく、この濃度にすることにより、厚さ5~200nmの均質な光電変換層を容易に形成することができる。形成した光電変換層に対して、溶媒を除去するために、減圧下または不活性雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)などでアニーリング処理を行ってもよい。アニーリング処理温度は、好ましくは40℃~300℃、より好ましくは50℃~200℃である。このアニーリング処理は、陽極の形成後に行ってもよい。
次に、陽極を形成する。(a)光電変換層上に陽極を積層する工程(成膜工程)の後に、(b)酸素と接触させる工程を有することが好ましい。
成膜工程としては、乾式成膜法と湿式成膜法が挙げられる。乾式成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。湿式成膜法としては、例えば、金属ナノ粒子分散液や金属ナノワイヤ分散液を塗布する方法、前駆体を含むインクを塗布した後、還元反応等により金属層を形成する方法などが挙げられる。塗布方法としては、前述の電子輸送層の形成方法において例示した塗布方法が挙げられる。
本発明の光起電力素子の製造方法は、積層工程の後に、酸素と接触させる工程を含む。積層した陽極の表面を酸素と接触させる工程により、陽極の光電変換層との界面に、陽極酸化物が生成し、高い光電変換効率が得られる。不活性雰囲気や真空下では、陽極酸化物を十分に生成させることができず、光電変換素子を素子外部に存在する酸化剤と接触させることが必要であるが、酸素以外の酸化剤、例えば、オゾン、酸素ラジカル、過酸化水素、水、濃硫酸などは素子の劣化を引き起こすため、使用できなかった。また、通常、外部の酸化剤と接触させると、接触部位(露出している箇所)から酸化されるが、本発明の光起電力素子の製造方法においては、陽極の表面を酸素と接触させることにより、陽極の光電変換層との界面を酸化させることができることが、本発明者らの検討により判明した。この理由は、陽極の光電変換層界面が、陽極内部よりも酸化されやすい状態になっており、陽極中を拡散した酸素が反応したためと考えられる。
酸素と接触させる工程は、陽極の表面を酸素存在雰囲気下に曝す工程であることが好ましく、酸素存在雰囲気は、大気であることが好ましい。酸化反応を促進させる観点から、陽極の表面を酸素存在雰囲気下で加熱する工程が特に好ましい。ここで、酸素存在雰囲気とは、酸素が100ppm以上含まれる雰囲気のことを指す。酸素以外の成分については特に限定されないが、酸化性の強い酸化剤(オゾンなど)など、素子劣化の要因となる成分は含まれないことが好ましい。酸素濃度は、酸化反応を促進させるため、1000ppm以上であることが好ましい。酸素存在雰囲気の圧力は特に限定されないが、酸化反応を促進させるため、1Pa以上が好ましく、100Pa以上であることが特に好ましい。圧力制御の手間を省く観点から、大気圧がさらに好ましい。加熱温度および加熱時間は、酸素濃度や用いる金属によるが、酸化反応を促進させる観点と加熱による素子の劣化を防ぐ観点から適切に決められる。例えば、陽極に銀を用い、大気下で加熱する場合であれば、加熱温度は、50℃以上115℃以下が好ましく、光電変換効率をより向上させる観点から、60℃以上85℃以下がより好ましく加熱時間は、2時間以上10000時間以下が好ましく、20時間以上1000時間以下がより好ましい。大気下で加熱する方法としては、例えば、所定の温度に設定したホットプレート上に、陽極を形成した素子を載置する方法、所定の温度に設定したオーブンに、陽極を形成した素子を投入する方法などが挙げられる。また、光電変換素子の劣化を抑制する観点から、加熱は暗所で行うことが好ましい。
陽極の成膜工程(a)と酸素と接触させる工程(b)の間に別の工程を有していても構わない。例えば、不活性雰囲気または真空下での加熱処理や溶媒蒸気に曝す処理を行ってもよく、光電変換層の配向性や相分離構造を調整することができる。
本発明の光起電力素子は、光電変換機能、光整流機能などを利用した種々の光電変換デバイスへの応用が可能である。例えば光電池(太陽電池など)、電子素子(光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタなど)、光記録材(光メモリなど)、撮像素子などの電子デバイスに有用である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。また実施例等で用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
Isc:短絡電流密度
Voc:開放電圧
FF:フィルファクター
η:光電変換効率
ITO:インジウム錫酸化物
PM6:下記式で表される化合物(一般式(2)の電子供与性有機半導体)
IEICO-4F:下記式で表される化合物(一般式(3)の電子受容性有機半導体)
Y6:下記式で表される化合物(一般式(7)の電子受容性有機半導体)
Figure 2023009018000012
(合成例1)
化合物A-1(一般式(1)の電子供与性有機半導体)を式1に示す方法で合成した。なお、合成例1記載の化合物(1-i)は「ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサエティ(Journal of the American Chemical Society)」、2009年、131巻、7792-7799頁に記載されている方法を参考に、化合物(1-p)は「アンゲバンテケミ インターナショナルエディション(Angewandte Chem Internatioal Edition)」、2011年、50巻、9697-9702頁に記載されている方法を参考にして合成した。
Figure 2023009018000013
メチル-2-チオフェンカルボキシレート(東京化成工業(株)製)38g(0.27mol)およびクロロメチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)108g(1.34mol)を0℃で撹拌しているところに、四塩化スズ(和光純薬工業(株)製)125g(0.48mol)を1時間かけて加え、その後室温で8時間撹拌した。撹拌終了後、水100mlを0℃でゆっくり加え、クロロホルムで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで溶媒を乾燥後、溶媒を減圧除去した。得られた茶褐色固体をメタノールから再結晶することにより化合物(1-b)を薄黄色固体(24.8g、収率39%)として得た。化合物(1-b)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.71(s,1H),4.79(s,1H),4.59(s,1H),3.88(s,3H)ppm。
上記化合物(1-b)24.8g(0.10mmol)をメタノール(佐々木化学工業(株)製)1.2Lに溶解させ、60℃で撹拌しているところに硫化ナトリウム(アルドリッチ社製)8.9g(0.11mol)のメタノール溶液100mlを1時間かけて滴下し、さらに60℃で4時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧除去し、クロロホルム200mlと水200mlを加え、不溶物をろ別した。有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧除去した。粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、クロロホルム)で精製することにより化合物(1-c)を白色固体(9.8g、収率48%)として得た。化合物(1-c)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.48(s,1H),4.19(t,J=3.0Hz,2H),4.05(t,J=3.0Hz,2H),3.87(s,3H)ppm。
上記化合物(1-c)9.8g(49mmol)に水100mlついで3M水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。反応終了後、濃塩酸15mlを0℃で加え、析出した固体をろ取し、水で数回洗浄した。得られた固体を乾燥し、化合物(1-d)を白色固体(8.9g、収率98%)として得た。
H-NMR(270MHz,DMSO-d6):7.46(s,1H),4.18(t,J=3.2Hz,2H),4.01(t,J=3.2Hz,2H)ppm。
上記化合物(1-d)1.46g(7.8mmol)を脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)60mlに溶解し、-78℃で撹拌しているところに、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、和光純薬工業(株)製)10.7ml(17.2mmol)を滴下し、-78℃で1時間撹拌した。次いでN-フルオロベンゼンスルホンイミド(東京化成工業(株)製)4.91g(15.6mmol)の乾燥テトラヒドロフラン溶液20mlを-78℃で10分間かけて滴下し、室温で12時間撹拌した。反応終了後、水50mlをゆっくり加えた。3M塩酸を加えて水層を酸性にした後、クロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、酢酸エチル)で副生成物を除去した後に酢酸エチルから再結晶することで化合物(1-e)を薄黄色粉末(980mg、収率61%)として得た。化合物(1-e)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,DMSO-d6):13.31(brs,1H),4.20(t,J=3.0Hz,2H),4.03(t,J=3.0Hz,2H)ppm。
上記化合物(1-e)800mg(3.9mmol)の脱水ジクロロメタン(和光純薬工業(株)製)溶液10mlに、オキサリルクロリド(東京化成工業(株)製)1ml、次いでジメチルホルムアミド(和光純薬工業(株)製)1滴を加え、室温で3時間撹拌した。溶媒と過剰の塩化オキサリルを減圧除去することで、化合物(1-f)を黄色オイルとして得た。化合物(1-f)はそのまま次の反応に用いた。
上記化合物(1-f、粗精製物)のジクロロメタン溶液10mlを1-オクタノール(和光純薬工業(株)製)1.3g(10mmol)およびトリエチルアミン(和光純薬工業(株)製)800mg(8mmol)のジクロロメタン溶液15mlに室温で加え、6時間室温で撹拌した。反応溶液を1M塩酸で2回、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、クロロホルム)で精製することにより化合物(1-g)を薄黄色固体(1.12g、収率90%)として得た。化合物(1-g)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):4.27(t,J=6.7Hz,2H),4.16(t,J=3.0Hz,2H),4.01(t,J=3.0Hz,2H),1.72(m,2H),1.5-1.3(m,12H),0.88(t,J=7.0Hz,3H)ppm。
上記化合物(1-g)1.1g(3.5mmol)の酢酸エチル溶液40mlに、メタクロロ安息香酸(ナカライテスク(株)製)630mg(3.6mmol)の酢酸エチル溶液10mlを0℃で滴下し、室温で5時間撹拌した。溶媒を減圧除去した後に無水酢酸30mlを加え、3時間加熱還流した。溶媒を再び減圧除去した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製することにより化合物(1-h)を薄黄色オイル(1.03g、収率94%)として得た。化合物(1-h)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.65(d,J=2.7Hz,1H),7.28(dd,J=2.7Hz and 5.4Hz,1H),4.31(t,J=6.8Hz,2H),1.75(m,2H),1.42-1.29(m,12H),0.89(t,J=6.8Hz,3H)ppm。
上記化合物(1-h)1.0g(3.2mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlに、N-ブロモスクシンイミド(和光純薬工業(株)製)1.25g(7.0mmol)を室温で加え、3時間室温で撹拌した。反応終了後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液10mlを加え、5分間撹拌した。酢酸エチル80mlを加え、有機層を水で5回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、クロロホルム:ヘキサン=1:3)で精製することにより化合物(1-i)を薄黄色固体(1.2g、収率79%)として得た。化合物(1-i)の1H-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):4.32(t,J=6.5Hz,2H),1.75(m,2H),1.42-1.29(m,12H),0.89(t,J=6.8Hz,3H)ppm。
ジエチルアミン(和光純薬工業(株)製)110g(1.5mol)のジクロロメタン溶液300mlに、3-チオフェンカルボニルクロリド(和光純薬工業(株)製,化合物(1-j))100g(0.68mol)を0℃で1時間かけて加え、室温で3時間撹拌した。撹拌終了後、水200mlを加え、有機層を水で3回、飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣を減圧蒸留することにより、化合物(1-k)を淡橙色液体(102g、収率82%)として得た。化合物(1-k)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.47(dd,J=3.2Hz and 1.0Hz,1H),7.32(dd,J=5.0Hz and 3.2Hz,1H),7.19(dd,J=5.0Hz and 1.0Hz,1H),3.43(brs,4H),1.20(t,J=6.5Hz,6H)ppm。
上記化合物(1-k)73.3g(0.40mol)の脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)溶液400mlに、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、和光純薬工業(株)製)250ml(0.40mol)を0℃で30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で4時間撹拌した。撹拌終了後、水100mlをゆっくり加えしばらく撹拌した後、反応混合物を水800mlに注いだ。析出した固体をろ取し、水、メタノール、ついでヘキサンの順で洗浄することにより化合物(1-l)を黄色固体(23.8g、収率27%)として得た。化合物(1-l)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.69(d,J=4.9Hz,2H),7.64(d,J=4.9Hz,2H)ppm。
チオフェン(化合物(1-m))42g(0.50mol)の脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)溶液400mlに、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、和光純薬工業(株)製)250ml(0.40mol)を-78℃で30分間かけて滴下した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した後、2-エチルヘキシルブロミド(和光純薬工業(株)製)76.4g(0.40mol)を-78℃で15分間かけて滴下した。反応溶液を室温で30分間撹拌した後、60℃で6時間加熱撹拌した。撹拌終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水200mlおよびエーテル200mlを加えた。有機層を水で2回、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣を減圧蒸留することで化合物(1-n)を無色液体(28.3g、36%)として得た。化合物(1-n)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.11(d,4.9Hz,1H),6.92(dd,4.9Hz and 3.2Hz,1H),6.76(d,J=3.2Hz,1H),2.76(d,J=6.8Hz,2H),1.62(m,1H),1.4-1.3(m,8H),0.88(m,6H)ppm。
上記化合物(1-n)17.5g(89mmol)の脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)溶液400mlに、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、和光純薬工業(株)製)57ml(89mmol)を0℃で30分間かけて滴下した。反応溶液を50℃で1時間撹拌した後、上記化合物(1-l)4.9g(22mmol)を50℃で加え、そのまま1時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液を0℃に冷却し、塩化すず二水和物(和光純薬工業(株)製)39.2g(175mmol)を10%塩酸80mlに溶かした溶液を加え、室温で1時間撹拌した。撹拌終了後、水200ml、ジエチルエーテル200mlを加え、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ヘキサン)で精製することにより化合物(1-o)を黄色オイル(7.7g、収率59%)として得た。化合物(1-o)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.63(d,J=5.7Hz,1H),7.45(d,J=5.7Hz,1H),7.29(d,J=3.6Hz,1H),6.88(d,J=3.6Hz,1H),2.86(d,J=7.0Hz,2H),1.70-1.61(m,1H),1.56-1.41(m,8H),0.97-0.89(m,6H)ppm。
上記化合物(1-o)870mg(1.5mmol)の脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)溶液25mlに、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、和光純薬工業(株)製)2.0ml(3.3mmol)を-78℃でシリンジを用いて加え、-78℃で30分間、室温で30分間撹拌した。反応混合物を-78℃まで冷却した後、トリメチルスズクロリド(和光純薬工業(株)製)800mg(4.0mmol)を-78℃で一度に加え、室温で4時間撹拌した。撹拌終了後、ジエチルエーテル50mlおよび水50mlを加え5分間室温で撹拌した後、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで溶媒を乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた橙色オイルをエタノールより再結晶することで、化合物(1-p)を薄黄色固体(710mg、収率52%)として得た。化合物(1-p)のH-NMRの測定結果を以下に示す。
H-NMR(270MHz,CDCl):7.68(s,2H),7.31(d,J=3.2Hz,2H),6.90(d,J=3.2Hz,2H),2.87(d,J=6.2Hz,4H),1.69(m,2H),1.40-1.30(m,16H),1.0-0.9(m,12H),0.39(s,18H)ppm。
化合物(1-i)71mg(0.15mmol)および化合物(1-p)136mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)4mlおよびジメチルホルムアミド(和光純薬工業(株)製)1mlに溶解させたところに、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(東京化成工業(株)製)5mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で15時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)15mgを加え、100℃にて1時間撹拌した。次いで、トリブチル(2-チエニル)すず(東京化成工業(株)製)40mgを加え、100℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)、次いでシリカゲルカラム(遊離液、クロロホルム)に通した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再度クロロホルムに溶解させた後、メタノールに再沈殿し、化合物A-1(85mg)を得た。
各実施例および比較例に用いた電子供与性有機半導体のHOMO準位を以下の方法により測定した。
ガラス基板上に化合物A-1のクロロホルム溶液をスピンコート法により塗布した後、加熱乾燥させ、ガラス基板上に化合物A-1の薄膜を形成した。化合物A-1の薄膜を測定面にして、大気中光電子分光装置(AC-2、理研計器(株)製)によりHOMO準位を求めたところ、-5.0eVであった。同様にして、PM6のHOMO準位を求めたところ、-5.3eVであった。
各実施例および比較例における光電変換効率の評価方法を以下に示す。
各実施例および比較例により得られた光起電力素子の陽極と陰極をケースレー社製2400シリーズソースメータに接続して、大気中でITO層側から擬似太陽光(分光計器株式会社製 OTENTO-SUNIII、スペクトル形状:AM1.5、強度:100mW/cm)を照射し、印加電圧を-1Vから+2Vまで変化させたときの電流値を測定した。
得られた電流値から、次式により光電変換効率を求めた。
η(%)=Isc(mA/cm)×Voc(V)×FF/照射光強度(mW/cm)×100
FF=JVmax/(Isc(mA/cm)×Voc(V))
JVmax(mW/cm)は、印加電圧が0Vから開放電圧までの間で電流密度と印加電圧の積が最大となる点における電流密度と印加電圧の積の値である。
各実施例および比較例における耐湿性の評価方法を以下に示す。
温度60℃、相対湿度90%とした湿熱オーブンに光起電力素子を投入した。100時間後に大気中に取り出して、常温に戻した後に再度、光電変換効率の評価を行い、湿熱オーブンに投入する前の光電変換効率との比を算出することにより、耐湿性評価を行った。
(実施例1)
クロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)0.97mLを、A-1(電子供与性有機半導体に該当)10mg、IEICO-4F(ワンマテリアルズ社製、電子受容性有機半導体に該当)15mgの入ったサンプル瓶の中に加え、撹拌により溶解させた後、1-クロロナフタレン(東京化成工業(株)製)30μLを加え、5分撹拌することにより溶液Aを得た。
エトキシ化ポリエチレンイミン(80%エトキシ化、37重量%水溶液)(Aldrich社製)18mgの入ったサンプル瓶に、2-エトキシエタノール(和光純薬工業(株)製)2mL、酢酸亜鉛2水和物(和光純薬工業(株)製)140mgを加え室温で2時間撹拌し、電子輸送層用の前駆体溶液Bを得た。
スパッタリング法により陰極となるITO透明導電層を125nm堆積させたガラス基板を38mm×46mmに切断した後、ITOをフォトリソグラフィー法により38mm×13mmの長方形状にパターニングした。得られた基板の光透過率を日立分光光度計U-3010で測定した結果、400nm~900nmの全ての波長領域において85%以上であった。この基板をアルカリ洗浄液(フルウチ化学(株)製、“セミコクリーン”(登録商標)EL56)で10分間超音波洗浄した後、超純水で洗浄した。
この基板を5分間プラズマ処理した後に、上記の溶液BをITO層上に滴下し、スピンコート法により3000rpmで塗布し、ホットプレート上で180℃30分間熱処理することにより、膜厚約30nmの電子輸送層を形成した。
次いで、基板を窒素雰囲気下グローブボックスに移し、上記の溶液Aを電子輸送層上に滴下し、スピンコート法により塗布し、加熱真空乾燥させることにより光電変換層を形成した。
その後、光電変換層が形成された基板と蒸着用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱法によって、電極となる銀層を100nmの厚さに蒸着した。
真空蒸着装置から基板を取り出した後、オーブンで85℃24時間加熱した。以上のようにして、ストライプ状のITO層と銀層が交差する部分の面積が2mm×2mmである光起電力素子を作製した。光電変換効率を評価したところ、10.0%であった。耐湿性は80%であった。
(比較例1)
PEDOT:PSS溶液(CLEVIOS P VP AI4083)4.0mL、水3.5mL、イソプロピルアルコール2.5mL、界面活性剤(花王(株)製 “エマルゲン”(登録商標)103)0.1mgをサンプル瓶に入れて撹拌することにより正孔輸送層形成用の溶液Cを得た。
実施例1と同様にして光電変換層の形成まで行った基板に対して、溶液Cを光電変換層上に滴下し、スピンコート法により2000rpmで塗布し、ホットプレート上で80℃1分間熱処理することにより、40nmの厚さの正孔輸送層を形成した。
その後、正孔輸送層が形成された基板と蒸着用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱法によって、電極となる銀層を100nmの厚さに蒸着した。以上のようにして、ストライプ状のITO層と銀層が交差する部分の面積が2mm×2mmである光起電力素子を作製した。光電変換効率は10.3%であり、耐湿性は0%であった。
(比較例2)
実施例1と同様にして銀の蒸着まで行うことで光起電力素子を作製した。光電変換効率を評価したところ、光電変換効率は0.8%であった。耐湿性は146%であった。
(実施例2)
クロロホルム(ナカライテスク(株)製)1.2mLをPM6(ワンマテリアルズ社製、電子供与性有機半導体に該当)5.4mg、Y6(ワンマテリアルズ社製、電子受容性有機半導体に該当)6.6mgの入ったサンプル瓶の中に加え、超音波洗浄機に照射し、溶解させることにより溶液Bを得た。
溶液Aの代わりに溶液Bを用いた他は、実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。光電変換効率は10.3%であった。耐湿性は84%であった。
(比較例3)
実施例2と同様にして光電変換層の形成まで行った基板に対して、溶液Cを光電変換層上に滴下し、スピンコート法により2000rpmで塗布し、ホットプレート上で80℃1分間熱処理することにより、40nmの厚さの正孔輸送層を形成した。
その後、光電変換層が形成された基板と蒸着用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで再び排気し、抵抗加熱法によって、電極となる銀層を100nmの厚さに蒸着した。以上のようにして、ストライプ状のITO層と銀層が交差する部分の面積が2mm×2mmである光起電力素子を作製した。光電変換効率は12.8%であり、耐湿性は0%であった。
(比較例4)
実施例2と同様にして銀の蒸着まで行い、真空蒸着装置から基板を窒素雰囲気下グローブボックスへ移し、光電変換効率を評価したところ、光電変換効率は0.4%であった。
(比較例5)
実施例1と同様にして銀の蒸着まで行った後、真空蒸着装置から基板を窒素雰囲気下グローブボックスへ移し、ホットプレート上で85℃24時間加熱することで光起電力素子を作製した。光電変換効率は2.0%であった。
(比較例6)
実施例1と同様にして光電変換層の形成まで行った基板をオーブンで85℃24時間加熱した。蒸着用マスクと加熱後の基板を真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで再び排気し、抵抗加熱法によって、電極となる銀層を100nmの厚さに蒸着し、光起電力素子を作製した。光電変換効率は0.6%であった。
(実施例3)
真空蒸着機から基板を取出した後のオーブン加熱の温度を60℃に変更した他は実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。光電変換効率は10.5%であった。耐湿性は82%であった。
(実施例4)
真空蒸着機から基板を取出した後のオーブン加熱の温度を100℃に変更した他は実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。光電変換効率は9.5%であった。耐湿性は84%であった。
(実施例5)
真空蒸着機から基板を取出した後のオーブン加熱の温度を120℃に変更した他は実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。光電変換効率は7.0%であった。耐湿性は87%であった。
(陽極/光電変換層界面の分析)
実施例1、比較例2で作製した光起電力素子について元素組成の深さプロファイルをSIMSで分析した結果、比較例2で作製した光起電力素子では最表面を除いて、銀層に酸素は存在しなかった。一方、実施例1で作製した光起電力素子では銀層の内部および光電変換層との界面において酸素が存在しており、銀内部に比べて光電変換層との界面において酸素の存在量が局所的に多くなっていた。この結果から実施例1で作製した光起電力素子では陽極の光電変換層界面に酸化銀(仕事関数:5.1eV)が形成されていることが確認できた。
各実施例および比較例の概要を表1にまとめた。
Figure 2023009018000014
表1において、実施例1と比較例1、および、実施例2と比較例3を対比すると、陽極成膜後に酸素と接触させる工程を行って作製した光起電力素子(実施例1および実施例2)は、正孔輸送層を有しなくても、正孔輸送層を有する光起電力素子(比較例1および比較例3)と同等の光電変換効率(%)を示すとともに、耐湿性(%)が大幅に向上することが分かる。
1 基材
2 陰極
3 電子輸送層
4 光電変換層
5 陽極
6 界面

Claims (10)

  1. 基材、陰極、光電変換層および陽極をこの順に有する光起電力素子の製造方法であって、光電変換層に陽極を積層した後、酸素と接触させる工程を含む光起電力素子の製造方法。
  2. 前記酸素と接触させる工程が、酸素存在雰囲気下で加熱する工程である請求項1に記載の光起電力素子の製造方法。
  3. 前記酸素雰囲気下で加熱する工程における加熱温度が50~115℃である請求項2に記載の光起電力素子の製造方法。
  4. 前記酸素と接触させる工程が、大気と接触させる工程である請求項1~3のいずれかに記載の光起電力素子の製造方法。
  5. 基材、陰極、光電変換層および陽極をこの順に有する光起電力素子であって、陽極の少なくとも一部が光電変換層に直接積層されてなり、陽極の光電変換層との界面に、陽極を構成する金属の酸化物を含む光起電力素子。
  6. 陽極が銀である請求項5に記載の光起電力素子。
  7. 光電変換層が非フラーレン系電子受容性有機半導体を含む請求項6に記載の光起電力素子。
  8. 光電変換層にHOMO準位が4.5eV~6.0eVである電子供与性有機半導体を含む請求項7に記載の光起電力素子。
  9. 光電変換層が下記(A)および(B)を含む請求項8に記載の光起電力素子。
    (A)下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される電子供与性有機半導体
    (B)下記一般式(3)~(7)のいずれかで表される電子受容性有機半導体
    Figure 2023009018000015
    Figure 2023009018000016
    (上記一般式(1)~(7)中、Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいチオアルコキシ基を示す。Xはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子、セレン原子または酸素原子を表す。Rは置換されていてもよいアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルカノイル基を表す。Yは水素原子またはハロゲン原子を表す。Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいチオアルコキシ基、置換されていてもよいヘテロアリール基または置換されていてもよいアリール基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基または水素原子を示す。Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル基を示す。Zは、同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。nは、2以上1,000以下の範囲を表す。)
  10. 請求項5~9のいずれかに記載の光起電力素子を用いた電子デバイス。
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