JP2023007646A - 鋼板中の磁区観察方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鋼材中の磁区構造に関する情報として高精度な情報を容易に得ることができるようにする。【解決手段】 EBSD検出器120の中心よりも上下左右の少なくとも一部の領域ごとに試料Sの反射電子像を作成して上側反射電子像および下側反射電子像のうちの少なくとも一方と、左側反射電子像および右側反射電子像とを含む反射電子像を作成し、当該反射電子像よりも、±X方向または±Y方向における磁区コントラストが強調され、且つ、凹凸コントラストが緩和された反射電子像として、X方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を作成し、作成したX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を用いて試料Sの磁区構造を取得する。【選択図】 図1

Description

本発明は、鋼板中の磁区観察方法に関する。
電磁鋼板では低鉄損特性を達成すること、および、磁歪による騒音問題を制御することが求められている。鉄損とは、鉄心を交流磁場で励磁した場合に、熱エネルギとして消費される電力損失であり、省エネルギの観点から、鉄損はできるだけ低いことが求められる。磁歪とは、電磁鋼板を交流で励磁したときに、その磁化の強さの変化に伴って電磁鋼板の外形がわずかに変化することを指し、これが電磁鋼板を振動させて騒音に繋がることが予想されている。これらの磁気特性を制御するためには、電磁鋼板中の結晶方位や磁区構造を制御することが重要であると知られている。従って、結晶方位や磁区構造を解析する分析方法・装置が求められている。特に方向性電磁鋼板ではGOSS方位と呼ばれる集合組織を発達させるが、GOSS方位からずれてしまうと、ずれ角度に応じてランセット磁区が生成されることにより磁気特性が劣化することから、結晶方位と磁区構造との関係についての詳細な知見が求められている。
磁区構造を観察する手法として特許文献1ではいわゆるビッター法が用いられている。ビッター法は、磁性コロイド粒子を含む液体を磁性材料上に塗布し乾燥させたのちに粒子位置を観察する手法である。磁性コロイド粒子が磁壁に集まる性質を利用したもので、乾燥後に粒子位置を観察することで磁壁位置が分かることから、磁区のサイズに関する知見を得ることができる。
磁区のサイズのみならず、磁区内の磁化方向まで決定できる手法として特許文献2では磁気光学カー効果を使ったカー効果顕微鏡による磁区観察方法が提案されている。カー効果顕微鏡では、観察表面の面内二次元磁化方向を観察することができる一方で、結晶方位に関する情報までは取得できない。
また特許文献3では傾斜した試料に電子線を照射して反射電子像を得て、傾斜軸の直交方向に平行な磁化成分を磁区コントラストとして観察する手法が開示されている。この手法では電子線を用いることで磁区を観察することが可能であるが、特許文献2と同様に結晶方位に関する情報を併せて取得することはできない。
これに対し、非特許文献1では走査型電子顕微鏡内で試料を傾斜し電子線を照射して得た電子線後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction: EBSD)像から結晶方位に関する情報を取得し、かつ、EBSD像の画像輝度から反射電子像を構築することで磁区コントラストを得る手法が公開されている。この手法を用いれば観察領域内の磁区の分布と結晶方位とを関係づけることが可能である。しかしながら、非特許文献1の技術では、磁区内の磁化方向に関する情報が得られない問題があった。
また、一般に走査型電子顕微鏡で得られる反射電子像や二次電子像は試料表面の凹凸によるコントラストを含む。このため、凹凸によるコントラストが、磁区によるコントラストと重畳し、磁区によるコントラストが判別しにくくなる。これを防ぐためには試料表面を平らで、かつ、試料調整による表面ダメージが無いように準備する必要があるものの、現実的には試料表面の多少の凹凸形成は避けられない。
特開平11-211805号公報 特開2010-203989号公報 特開2010-92646号公報
Gallaugher et al. Ultramicroscopy 142 (2014) 40
前述の通り、従来、鋼板中の磁区構造(磁区のサイズや磁区内の磁化方向)に関する情報として高精度な情報を得ることは容易では無かった。
本発明は、鋼材中の磁区構造として高精度な情報を容易に得ることができるようにすることを目的とする。
鋼板が体心立方(Body Centered Cubic:BCC)構造を有する鉄であって、磁化方向が<100>方向に平行、あるいは反平行になる性質を利用し、試料の表面を(001)面に調整することで、分析面内の磁化方向の候補を4方向、即ち、[100],[-100],[010],[0-10]方向、に限定する。本発明者らが鋭意検討した結果、EBSD画像の特定領域における画素強度から反射電子像を構築することで反射電子像内の磁区コントラストを変化させ、磁化方向を判別する手法を構築できることを見出した。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
BCC(Body Centered Cubic)構造を有する鋼板を用いて構成される試料の測定点に対して電子顕微鏡内で電子線を照射することによりEBSD(Electron BackScatter Diffraction)検出器に到達した反射電子の回折パターンを示すEBSD画像を用いて、前記鋼材中の磁区および磁化方向を観察する鋼板中の磁区観察方法であって、
前記EBSD検出器において、前記電子線を前記EBSD検出器に射影した場合に、当該射影された前記電子線の照射方向に平行な方向を照射平行方向、当該照射平行方向に反平行な方向を照射反平行方向、当該照射平行方向に垂直な互いに反平行となる2つの方向をそれぞれ第1照射側方向、第2照射側方向とし、
前記試料表面が前記BCC構造の(001)面に対応するように前記試料を調整する試料調整工程と、
結晶の[100]方向および[-100]方向が、前記照射平行方向および前記照射反平行方向と、前記第1照射側方向および前記第2照射側方向と、のうちの一方に対応し、且つ、結晶の[010]方向および[0-10]方向が、他方に対応するように、前記試料を前記電子顕微鏡内にセットする試料セット工程と、
前記試料セット工程でセットされた前記試料に対する前記EBSD画像の一部の領域の反射電子の強度を算出することを、前記測定点を異ならせて実行することにより、当該EBSD画像の一部の領域における反射電子像を作成する第1反射電子像作成工程と、
前記第1反射電子像作成工程で作成された反射電子像に基づいて、当該反射電子像よりも、[100]方向および[-100]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストと、[010]方向および[0-10]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストと、が強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像を作成する第2反射電子像作成工程と、
前記第2反射電子像作成工程で作成された反射電子像を用いて、前記試料中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を取得する磁区構造取得工程と、
を有し、
前記第1反射電子像作成工程では、前記EBSD画像の、前記測定点に対応する位置よりも前記照射反平行方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である照射反平行方向側反射電子像と、前記EBSD画像の、前記測定点に対応する位置よりも前記照射平行方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である照射平行方向側反射電子像と、のうち少なくとも一方の反射電子像と、前記EBSD画像の領域の、前記測定点に対応する位置よりも前記第1照射側方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である第1照射側方向側反射電子像と、前記EBSD画像の領域の、前記測定点に対応する位置よりも前記第2照射側方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である第2照射側方向側反射電子像と、を作成する、鋼板中の磁区観察方法。
[2]
前記第1反射電子像作成工程では、前記照射反平行方向側反射電子像と、前記照射平行方向側反射電子像と、前記第1照射側方向側反射電子像と、前記第2照射側方向側反射電子像と、を作成する、[1]に記載の鋼板中の磁区観察方法。
[3]
前記第2反射電子像作成工程では、前記照射反平行方向側反射電子像の画素値と、前記照射平行方向側反射電子像の画素値と、の加算を実行することにより、[100]方向および[-100]方向と、[010]方向および[0-10]方向と、のうちの一方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である第1照射方向磁区コントラスト強調画像を作成し、前記第1照射側方向側反射電子像の画素値と、前記第2照射側方向側反射電子像の画素値と、の減算を実行することにより、他方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である照射側方向磁区コントラスト強調画像を作成する、[2]に記載の鋼板中の磁区観察方法。
[4]
前記反射電子像作成工程では、前記照射反平行方向側反射電子像と、前記第1照射側方向側反射電子像と、前記第2照射側方向側反射電子像と、を作成し、前記照射平行方向側反射電子像を作成しない、[1]に記載の鋼板中の磁区観察方法。
[5]
前記第2反射電子像作成工程では、前記第1照射側方向側反射電子像の画素値と前記第2照射側方向側反射電子像の画素値との加算を実行した後に前記照射反平行方向側反射電子像の画素値の減算を実行することにより、[100]方向および[-100]方向と、[010]方向および[0-10]方向と、のうちの一方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である第2照射方向磁区コントラスト強調画像を作成し、前記第1照射側方向側反射電子像の画素値と、前記第2照射側方向側反射電子像の画素値と、の減算を実行することにより、他方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である照射側方向磁区コントラスト強調画像を作成する、[4]に記載の鋼板中の磁区観察方法。
[6]
前記第1反射電子像作成工程では、前記照射平行方向および前記照射反平行方向に対応する方向と、前記第1照射側方向および前記第2照射側方向に対応する方向と、のそれぞれにおいて少なくとも3つの領域が存在するように前記EBSD画像の領域を複数の領域に分割した分割領域のうち、少なくとも前記EBSD画像の、前記測定点に対応する位置に最も近い位置にある前記分割領域の画素値を用いずに、前記EBSD画像の端に最も近い位置にある前記分割領域の画素値を用いて、前記EBSD画像の一部の領域における反射電子像をそれぞれ作成する、[1]~[5]のいずれか1に記載の鋼板中の磁区観察方法。
[7]
前記第1反射電子像作成工程で作成される反射電子像は、前記EBSD画像に基づいて解析される前記試料の結晶方位の観察領域を含む画像であり、
前記試料中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報は、前記試料の結晶方位の観察領域を含む領域の情報である、[1]~[6]のいずれか1に記載の鋼板中の磁区観察方法。
本発明によれば、鋼材中の磁区構造に関する情報として高精度な情報を容易に得ることができる。
分析システムの構成の一例を示す図である。 鋼板中の磁区観察方法の一例を説明するフローチャートである。 情報処理装置における処理の概要の一例を示す図である。 上側に向かう反射電子と下側に向かう反射電子との試料中の移動距離の違いを概念的に示す図である。 試料表面の凹凸により下側に向かう反射電子が少なくなることを概念的に示す図である。 測定点が+X方向、-X方向を磁化方向とする磁区である場合の反射電子BEの挙動の一例を概念的に説明する図である。 測定点が+Y方向、-Y方向を磁化方向とする磁区である場合の反射電子BEの挙動の一例を概念的に説明する図である。 上側反射電子像の画素値と、下側反射電子像の画素値とを加算することによるコントラストの変化の一例を概念的に示す図である。 左側反射電子像の画素値と、右側反射電子像の画素値とを減算することによるコントラストの変化の一例を概念的に示す図である。 左側反射電子像の画素値と、右側反射電子像の画素値とを加算した後上側反射電子像の画素値を減算することによるコントラストの変化の一例を概念的に示す図である。 結晶方位マップの一例を示す図である。 EBSD検出器の分割領域の一例を示す図である。 上側反射電子像の一例を示す図(写真)である。 下側反射電子像の一例を示す図(写真)である。 第1X方向磁区コントラスト強調画像の一例を示す図(写真)である。 第1X方向磁区コントラスト強調画像と対比される反射電子像の一例を示す図(写真)である。 左側反射電子像の一例を示す図(写真)である。 右側反射電子像の一例を示す図(写真)である。 Y方向磁区コントラスト強調画像の一例を示す図(写真)である。 Y方向磁区コントラスト緩和画像の一例を示す図(写真)である。 第2X方向磁区コントラスト強調画像の一例を示す図(写真)である。 磁区構造マップの一例を示す図である。 全領域反射電子像の一例を示す図(写真)である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
尚、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図において〇の中に●を示している記号は、試験の奥側から手前側を示すものとする。例えば、+Xの傍らに〇の中に●を示している記号を付している場合、+X方向が、紙面の奥側から手前側に向かう方向であることを示す。
図1は、EBSD分析を実行する分析システムの構成の一例を示す図である。図2は、鋼板中の磁区観察方法の一例を説明するフローチャートである。
図1において、分析システムは、BCC構造を有する鋼板中の磁区および磁化方向を観察(分析)するためのシステムである。本実施形態では、鋼板が二方向性電磁鋼板である場合を例示するが鋼板は二方向性電磁鋼板に限定されず、例えば、一方向性電磁鋼板であっても、無方向性電磁鋼板であっても良く、また、電磁鋼板でなくても良い。分析システムは、走査型電子顕微鏡110と、EBSD検出器120と、撮像装置130と、情報処理装置140と、を備える。
試料SがBCC構造を有する鋼板である場合、鉄の磁化容易軸は結晶の主軸に平行であり、鉄中の一つの磁区における磁化方向は[100],[-100],[010],[0-10],[001],[00-1]方向のどれかに限定される。更に試料Sの表面を(001)面に限定すれば、試料S表面から観察可能な磁化方向は[100],[-100],[010],[0-10]方向のみに絞られる。そこで、試料S表面が(001)面に対応するように試料Sを調整する(ステップS201の試料調整工程)。試料S表面が(001)面に対応するようにするためには、観察対象となる試料Sの結晶方位を予めEBSD法やX線を用いたラウエ法で測定しておき、(001)面が試料S表面となるように試料Sの表面を調製(加工)すれば良い。試料S表面に加工歪が存在すると本来の磁区構造が変わってしまうため、電解研磨等を用いて表面加工歪を取り除く仕上げ処理を施すのが好ましい。また、(001)面からのずれ角度は±5°程度に抑えることが好ましい。ずれ角度が大きくなると試料S表面で漏れ磁場が生成され、試料S表面における磁区構造が大きく変わる虞があるからである。このように、試料S表面は(001)面に完全に平行になることだけでなく、このようなずれを許容する。試料S表面が(001)面に対応するとは、試料S表面が(001)面に完全に平行になることだけでなく、このようなずれを許容しても良いことを意味する。
EBSD分析は、走査型電子顕微鏡110内で実施される。走査型電子顕微鏡内の光学系111によって、電子線プローブEPが集束、走査される。走査型電子顕微鏡内の光学系111は、電子銃、集束レンズ、走査偏向器などを備える。走査型電子顕微鏡内の光学系111は、市販される既知の走査型電子顕微鏡内に設置されているものであればよく特に限定されない。試料Sは、その表面(電子線プローブEPが照射される面)が光学系111およびEBSD検出器120の方を向き、且つ、光学系111から発生する電子線プローブEPに対して傾斜するように試料ホルダー112セットされる(ステップS202の試料セット工程)。図1では、傾斜角度θが水平面(走査型電子顕微鏡110の設置面)に対する傾斜角度である場合を例示する。EBSD法において回折パターン(菊池パターン)を鮮明に得るための傾斜角度θとして70°が一般的に用いられているが、40~80°程度でも問題ない。
図1では、電子線プローブEPの照射方向が鉛直下方である場合を例示する。ここで、電子線プローブEPをEBSD検出器120(の反射電子BEの検出面)に射影した場合に、当該射影された電子線プローブEPの照射方向に平行な方向を照射平行方向とし、当該照射平行方向に反平行な方向を照射反平行方向とする。すなわち、照射平行方向は、例えば、電子線プローブEPを、電子線プローブEPの進行方向を向くベクトルと見立てて当該ベクトルをEBSD検出器120(の反射電子BEのの検出面)に正射影することにより得られる正射影ベクトルが向く方向である。また、当該照射平行方向に垂直な互いに反平行となる2つの方向をそれぞれ第1照射側方向、第2照射側方向とすることとする。図1では、EBSD検出器120が電子線プローブEPと平行となるようにEBSD検出器120が配置されている場合を例示する。また、EBSD検出器120が上下方向(鉛直上下方向)沿って配置されていている場合を例示する。したがって、電子線プローブEPをEBSD検出器120に射影することは、電子線プローブEPをEBSD検出器120の位置まで平行移動させることに対応する。よって、EBSD検出器120に射影された電子線プローブEPの照射方向に平行な方向(照射平行方向)は下方向(鉛直下方向)であり、照射反平行方向は上方向(鉛直上方向)であり、第1照射側方向および第2照射側方向は左右方向である。より具体的に本実施形態では、照射反平行方向(上方向)を上としてEBSD検出器120を通して試料S側を見た場合の左方向が第1照射側方向であり、右方向が第2照射側方向であるものとする。なお、図1において、下方向(鉛直下方向)は、電子線プローブEPの進行方向(電子線プローブEPを示す直線に付している>の先端側の方向)であり、上方向(鉛直上方向)は、その反対方向である。また、図1の紙面に向かって手前側から奥側に向かう方向側が左側であり、奥側から手前側に向かう方向側が右側である。以下の説明において、上下左右は、以上のようにして表現される上下左右であるものとする。
なお、EBSD検出器120(の電子線の検出面)が電子線プローブEPと平行になる状態であるとした場合のEBSD検出器120(の電子線の検出面)における電子線プローブEPの照射方向に平行な方向を照射平行方向として、照射平行方向、照射反平行方向、第1照射側方向、および第2照射側方向を定義しても、照射平行方向、照射反平行方向、第1照射側方向、および第2照射側方向は、前述した電子線プローブEPの射影を用いて表現した方向と同じ方向になる。このようにして照射平行方向、照射反平行方向、第1照射側方向、および第2照射側方向を定義する場合であって、EBSD検出器120が電子線プローブEPと平行でない場合には、EBSD検出器120は、電子線プローブEPと平行となるようにEBSD検出器120の電子線プローブEPに対する傾斜角度を変更したと仮定して、前述したように、照射平行方向、照射反平行方向、第1照射側方向、および第2照射側方向が定められる。
また、電子線プローブEBの照射方向は、鉛直下方に限定されない。照射平行方向、照射反平行方向、第1照射側方向、および第2照射側方向は、それぞれ、電子線プローブEBの照射方向に応じて、前述した定義に従って定められる。
以下の説明では、表記を簡単化するため、電子線プローブEPを試料S表面に射影した場合に、当該射影された電子線プローブEPの照射方向に平行な方向を-Y方向と称することとする。すなわち、-Y方向は、例えば、電子線プローブEPを、電子線プローブEPの進行方向を向くベクトルと見立てて当該ベクトルを試料S表面に正射影することにより得られる正射影ベクトルが向く方向である。また、当該試料S表面における当該照射平行方向に反平行な方向を+Y方向と称することとする。また、当該試料S表面における当該照射平行方向に垂直な互いに反平行となる2つの方向のうち+Y方向を上としてEBSD検出器120側から試料S表面を見た場合の左向き、右向きの方向をそれぞれ-X方向、+X方向と称することとする。
図1に示す例では、上方向が+Y方向に対応する方向であり、下方向が-Y方向に対応する方向であり、右方向が+X方向となり、左方向が-X方向となる。なお、上方向が+Y方向に対応するとは、試料SとEBSD検出器120とが平行に配置されている場合に上方向が+Y方向になることを意味し、下方向が-Y方向に対応するとは、試料SとEBSD検出器120とが平行に配置されている場合に下方向が-Y方向になることを意味する。また、試料S表面が電子線プローブEPと平行になる状態であるとした場合の試料S表面における電子線プローブEPの照射方向に平行な方向を-Y方向として、±X方向および±Y方向を表しても、±X方向および±Y方向は、前述した電子線プローブEPの射影を用いて表現した方向と同じ方向になる。
前述したように観察対象となる試料Sの結晶方位を予めEBSD法やX線を用いたラウエ法で測定しておくことにより、試料Sの結晶の主軸の方向は容易に特定される。本実施形態では、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の+X方向、-X方向に対応するようにすると共に、試料Sの[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の+Y方向、-Y方向に対応するようにする。[100],[010]方向と試料Sの+X方向、+Y方向とのずれ角度は±5°程度に抑えることが好ましい。このように、試料Sの結晶軸の方向([100],[-100],[010],[0-10]方向)が、±X方向、±Y方向に完全に平行になることだけでなく、このようなずれを許容する。試料Sの結晶軸の方向([100],[-100],[010],[0-10]方向)が、±X方向、±Y方向に対応するとは、試料Sの結晶軸の方向が、±X方向、±Y方向に完全に平行になることだけでなく、このようなずれを許容しても良いことを意味する。なお、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の-X方向、+X方向に対応するようにしても、[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の-Y方向、+Y方向に対応するようにしても良い。また、[100],[-100]方向を試料S表面の-Y方向、+Y方向のいずれかに対応するようにしても、[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の-X方向、+X方向のいずれかに対応するようにしても良い。
以上のようにして試料ホルダー112にセットした試料Sに対して電子線プローブEPが集束、走査される。走査型電子顕微鏡内の光学系とは電子銃、集束レンズ、走査偏向器などから成り、市販される既知の走査型電子顕微鏡内に設置されているものであればよく特に限定しない。
電子線プローブEBを傾斜した試料Sの測定点に対して照射した際に、試料S表面からEBSD検出器120に向けて飛び出す反射電子BEは、EBSD検出器120に到達する。EBSD検出器120は、例えば、反射電子の検出面として蛍光スクリーンを備える。EBSD検出器120に到達した反射電子がEBSD検出器120(蛍光スクリーン)にヒットすると光が発生する。発生した光は、撮像装置130内の集光レンズを介して撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Device)検出器あるいはCMOS(Complementary MOS)検出器に到達し、電気信号に変換される。電気信号は、撮像素子の画素数で規定される解像度で、EBSD検出器120に到達した反射電子の回折パターンを示す画像であるEBSD画像として保存される。EBSD画像は、画素毎に規格化した電気信号強度を画素値として有する。例えば、各画素の画素値を8bitのデータで保存する場合、画素値は、256階調の輝度値として表される。
なお、走査型電子顕微鏡110、EBSD検出器120、および撮像装置130自体は、公知のもので実現すれば良く、前述した構成に限定されない。
情報処理装置140は、EBSD画像に基づいて、鋼板の試料S中の結晶方位および磁区構造(各磁区のサイズ、形状、および磁化方向)に関する情報を取得するための情報処理を実行する装置である。情報処理装置140は、その機能として画像取得部141と、結晶方位取得部142と、第1反射電子像作成部143と、第2反射電子像作成部144と、磁区構造取得部145と、を備える。なお、情報処理装置140のハードウェアは、特に限定されず、例えば、中央処理装置、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、および出力装置を備えるコンピュータで実現される。図3は、情報処理装置140における処理の概要の一例を示す図である。
画像取得部141は、図3に示すようなEBSD画像310を取得する(ステップS203のEBSD画像取得工程)。図3に示すように、本実施形態では、画像取得部141が、試料Sの観察領域に設定された複数の測定点MPのそれぞれにおけるEBSD画像310を取得する場合を例示する。本実施形態では、試料Sの結晶方位の観察領域と試料Sの磁区構造の観察領域とが同じであり、試料Sの結晶方位を観察するための測定点MPと、試料Sの磁区構造の観察するための測定点MPと、が同じであるものとする。ただし、試料Sの結晶方位を観察するための測定点と、試料Sの磁区構造を観察するための測定点とは異なっていても良い。例えば、試料Sの磁区構造を試料Sの結晶方位の観察領域の観察領域よりも広くしても良いし、試料Sの磁区構造を観察するための測定点の数を、試料Sの結晶方位を観察するための測定点の数よりも多くしても良い。
結晶方位取得部142は、試料Sの各測定点MPにおけるEBSD画像310に基づいて、試料S中の結晶方位を示す情報を取得する(ステップS204の結晶方位取得工程)。図3では、試料S中の結晶方位を示す情報が結晶方位マップ320である場合を例示する。結晶方位マップ320は、試料Sの測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310から算出した結晶方位に対応する値を示す画素値(色)を、当該測定点MPに対応する領域(画素)321に格納することを、各測定点MPに対して実行することにより作成される画像である。結晶方位の解析は、EBSD分析(例えば、菊池バンドの位置の解析など)により実現され、公知の技術で実現されるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。また、情報処理装置140は、例えば、試料中Sの各測定点MPにおける複数のEBSD画像310同士の画像シフトに基づいて、試料中Sの残留応力(残留ひずみ)を取得しても良い。試料中Sの残留応力(残留ひずみ)を解析する手法も、公知の技術で実現されるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
第1反射電子像作成部143は、試料Sの各測定点MPにおけるEBSD画像310に基づいて、反射電子像330を作成する(図2のステップS205の第1反射電子像作成工程)。反射電子像330は、試料Sの測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310から算出した反射電子の強度を示す画素値を、当該測定点MPに対応する領域(画素)331に格納することを、各測定点MPに対して実行することにより作成される画像である。前述したようにEBSD画像310には、画素毎に規格化した電気信号強度が画素値として保存されている。このため、画素値を積算するとEBSD検出器120に届いた反射電子の数(反射電子の強度)に比例する値を計算することができる。そこで、本実施形態では、反射電子の数(反射電子の強度)が、EBSD画像310の画素値の積算値で表される場合を例示する。
ただし、本実施形態では、第1反射電子像作成部143は、EBSD画像310の全ての領域の画素値の積算値を算出せずに、EBSD画像310の領域の一部の領域の積算値を算出して、反射電子像を作成する。具体的に本実施形態では、第1反射電子像作成部143が、、測定点MPに対応する位置よりも上方向の領域の画素値を積算して、照射反平行方向側反射電子像の一例として上側反射電子像を作成することと、測定点MPに対応する位置よりも下方向の領域の画素値を積算して、照射平行方向側反射電子像の一例として下側反射電子像を作成すること、測定点MPに対応する位置よりも左方向の領域の画素値を積算して、第1照射側方向側反射電子像の一例として左側反射電子像を作成することと、測定点MPに対応する位置よりも右方向の領域の画素値を積算して、第2照射側方向側反射電子像の一例として右側反射電子像を含む反射電子像を作成することと、を実行する場合を例示する。ただし、後述するように、第1反射電子像作成部143は、上側反射電子像および下側反射電子像については少なくともいずれか一方のみを作成しても良い。ここで、EBSD画像310の領域の、測定点MPに対応する位置とは、電子線プローブEPと試料Sとの交点(測定点MP)からEBSD検出器120に降ろした垂線の足に対応するEBSD画像310内の座標位置である。図1に示す例においては、測定点MPの上下左右方向の座標位置と、EBSD検出器120の上下左右方向の座標位置とは同じである。
上側反射電子像は、EBSD画像310の領域の、測定点MPに対応する位置よりも上側の少なくとも一部の領域の反射電子の強度を算出することを、測定点MPを異ならせて実行することにより得られる。本実施形態では、測定点MPに対応する位置が、EBSD画像310の中心である場合を例示する。従って、上側反射電子像は、測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310の上半分の少なくとも一部の画素値の積算値が、当該測定点MPに対応する領域(画素)331に格納された画像になる。
左側反射電子像は、EBSD画像310の領域の、測定点MPに対応する位置よりも左側の少なくとも一部の領域の反射電子の強度を算出することを、測定点MPを異ならせて実行することにより得られる。具体的に、左側反射電子像は、測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310の左半分の少なくとも一部の画素値の積算値が、当該測定点MPに対応する領域(画素)331に格納された画像である。
右側反射電子像は、EBSD画像310の領域の、測定点MPに対応する位置よりも右側の少なくとも一部の領域の反射電子の強度を算出することを、測定点MPを異ならせて実行することにより得られる。具体的に、右側反射電子像は、測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310の右半分の少なくとも一部の画素値の積算値が、当該測定点MPに対応する領域(画素)331に格納された画像である。
下側反射電子像は、EBSD画像310の領域の、測定点MPに対応する位置よりも下側の少なくとも一部の領域の反射電子の強度を算出することを、測定点MPを異ならせて実行することにより得られる。具体的に、下側反射電子像は、測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310の下半分の少なくとも一部の画素値の積算値が、当該測定点MPに対応する領域(画素)331に格納された画像である。
第2反射電子像作成部144は、第1反射電子像作成部143により作成された反射電子像(上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像)に基づいて、当該反射電子像よりも、[100]方向および[-100]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラスト、または、[010]方向および[0-10]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調(増大)され、且つ、試料S表面の形状(凹凸)に由来するコントラストが緩和(低減)された反射電子像を作成する(図2のステップS206の第2反射電子像作成工程)。
反射電子像で認められるコントラストには磁区構造(磁区および磁化方向)だけに由来せずに試料S表面の形状(凹凸)に由来するコントラストも含まれる。このため、真の磁区構造(磁区および磁化方向)に由来するコントラストが得られがたいという課題がある。特に、磁区構造(磁区および磁化方向)に由来するコントラストの大きさから磁化の大きさを定量する場合には非常に問題となる。以下の説明では、試料S表面の形状に由来するコントラストを、凹凸コントラストとも称する。また、磁区構造(磁区および磁化方向)に由来するコントラストを、磁区コントラストとも称する。
以上のような凹凸コントラストが磁区コントラストに重畳されることを防ぐためには試料Sの表面仕上げの際に形成される凹凸をなるべく小さくすることが重要であるが、凹凸のない表面仕上げを行うことは非常に難しい。そこで本発明者らは、不可避的に存在する反射電子像での凹凸コントラストを緩和することができれば、磁区コントラストを強調することができると考えた。
その結果、本発明者らは、上側反射電子像に現れるコントラストが主に凹凸コントラストとして表されることを見出した。この理由として例えば以下の2つが考えられる。図4Aは、上側反射電子像に現れるコントラストが主に凹凸コントラストとして表されることを説明する図である。具体的に図4Aは、上側に向かう反射電子と下側に向かう反射電子との試料中の移動距離の違いを概念的に示す図である。
次に、第1の理由を説明する。
磁束密度Bの磁界が存在する空間中で速度vを持つ電荷qが運動する際に電荷(ここでは電子)に作用する力であるローレンツ力Fは、F=qvBsinθで表される。θは、磁束密度Bのベクトルと速度vのベクトルとがなす角度である。磁区コントラストを増大するためには、ローレンツ力Fを大きくして電子の軌道が試料S中の磁場の影響で大きく変化する必要がある。本実施形態では、電子線プローブEPが下側に向かう場合を例示しているため、図4Aに示すように、傾斜している試料S中から試料Sの表面に向かう反射電子の試料S中の移動距離は、上側に向かう場合の距離DUの方が下側に向かう場合の距離DDよりも短い。このため、反射電子BEがローレンツ力Fを受ける距離は、下側に向かう場合よりも上側に向かう場合の方が小さくなる。このため、上側反射電子像においては、磁区コントラストが緩和されやすくなる。また、凹凸がない試料Sの表面領域では、下側反射電子像の方が上側反射電子像よりも明るくなりやすくなる。これは電線プローブEPが下側に向かっているため、反射電子の発生方向が下側になりやすいことに由来する。
なお、試料S中に入射する入射電子の速度を挙げれば、入射電子および反射電子が受けるローレンツ力Fを大きくすることができるので、図2のステップS203のEBSD画像取得工程において、電子銃の加速電圧は大きいことが好ましい。例えば、電子銃の加速電圧を20kV以上に設定するのが好ましい。電子銃の加速電圧が20kV未満の場合、反射電子が受けるローレンツ力Fが小さく、EBSD検出器120に現れる反射電子像において磁区コントラストが生じにくくなる場合があるからである。
第2の理由として、本実施形態では、電子線プローブEPが下側に向かう場合を例示しているため、上側に向かう反射電子のエネルギは、下側に向かう反射電子のエネルギよりも小さい。このため、上側反射電子像においては、磁区コントラストが緩和されやすくなる。
以上のことから、上側反射電子像に現れるコントラストは、磁区コントラストに対し凹凸コントラストが支配的であり、上側反射電子像に現れるコントラストを試料S表面の形状が強調されたコントラストと見なすことができると考えられる。
また、本発明者らは、凹凸コントラストは上側反射電子像と下側反射電子像とで逆転することを見出した。図4Bを参照しながらその理由を説明する。図4Bは、側反射電子像と下側反射電子像とで凹凸コントラストが逆転することを説明する図である。具体的に図4Bは、試料S表面の凹凸により下側に向かう反射電子が少なくなることを概念的に示す図である。図4Bにおいて、例示した反射電子の発生点から当該発生点よりも上側に向けて進行する反射電子がEBSD検出器120の領域の、当該発生点よりも上側の位置に到達する際は反射電子を遮るものがなく明るく観察される。一方、例示した反射電子の発生点から当該発生点よりも下側に向けて進行する反射電子がEBSD検出器120の領域の、当該発生点よりも下側の位置に到達する際は凸部に遮られ暗く観察される。したがって、上側反射電子像が明るく(画素値が大きく)なる位置では下側反射電子像が暗くなり、上側反射電子像が暗くなる位置では下側反射電子像が明るくなると考えられる。
以上のことから本発明者らは、上側反射電子像と下側反射電子像との少なくともいずれか一方を用いれば、試料S表面において±Y方向に生じる形状(凹凸)に由来するコントラストを凹凸コントラストとして抽出することができることを見出した。以下に、第2反射電子像作成部144が、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像を用いて、[100]方向および[-100]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストと、[010]方向および[0-10]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストと、を抽出する手法の具体例を説明する。
まず、電子線プローブEPを傾斜した試料Sに照射した際に、試料S表面からEBSD検出器120に向けて飛び出す反射電子の軌道に及ぼす試料Sの内部磁場の影響を考える。
図5は、測定点MPが+X方向([100]方向に対応する方向)、-X方向([-100]方向に対応する方向)を磁化方向とする磁区である場合の反射電子BEの挙動の一例を概念的に説明する図である。図6は、測定点MPが+Y方向([010]方向に対応する方向)、-Y方向([0-10]方向に対応する方向)を磁化方向とする磁区である場合の反射電子BEの挙動の一例を概念的に説明する図である。
図5(a)において、試料Sにおいて+X方向に内部磁場が磁化していると、EBSD検出器120に向かう反射電子BEは試料S内部において下側に向かう(下向きの)ローレンツ力Fを受ける。このため、反射電子BEの検出器120への到達位置511は、内部磁場が存在しない場合の到達位置510よりも下側にずれる。逆に図5(b)に示すように試料Sにおいて-X方向に内部磁場が磁化していると、EBSD検出器120に向かう反射電子BEは試料S内部において上側に向かう(上向きの)ローレンツ力Fを受ける。このため、反射電子BEの検出器120への到達位置512は、内部磁場が存在しない場合の到達位置510よりも上側にずれる。この場合、EBSD検出器120の中心よりも上側に到達した反射電子BEのみで反射電子像を作成すれば、磁化方向が-X方向を有する磁区が明るく観察されることになるが、前述した理由から、このような反射電子像では、-X方向の磁化方向の磁区コントラストが緩和され、凹凸コントラストが強調されたものとなる。一方、EBSD検出器120の中心よりも下側に到達した反射電子BEのみで反射電子像を作成すると+X方向の磁化の向きを有する磁区が明るく観察される。
同様に、EBSD検出器120の中心よりも右側に到達した反射電子BEのみで反射電子像を作成すると、試料S中の+Y方向を磁化方向とする磁区が明るく観察される(図6(a)に示す内部磁場が存在しない場合の反射電子BEの到達位置510と、+Y方向に内部磁場が磁化している場合の反射電子BEの到達位置611とを参照)。また、EBSD検出器120の中心よりも左側に到達した反射電子BEのみで反射電子像を作成すると、試料S中の-Y方向を磁化方向とする磁区が明るく観察される(図6(b)に示す内部磁場が存在しない場合の反射電子BEの到達位置510と、-Y方向に内部磁場が磁化している場合の反射電子BEの到達位置612とを参照)。
前述したように本実施形態では、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の+X方向、-X方向に対応させる。したがって、例えば、EBSD検出器120の中心よりも下側に到達した反射電子BEで反射電子像(下側反射電子像)を作成した際に最も明るく観察される領域は、+X方向(すなわち[100]方向に対応する方向)の磁化方向を有する磁区に対応し、最も暗く観察される領域が-X方向(すなわち[-100]方向に対応する方向)の磁化方向を有する磁区に対応する。さらに、EBSD検出器120の中心よりも下側に到達した反射電子BEで反射電子像(下側反射電子像)を作成した場合には、EBSD検出器120の中心よりも上側に到達した反射電子BEで反射電子像(上側反射電子像)を作成した場合に対し、凹凸コントラストが反転する。このため、EBSD検出器120の中心よりも下側に到達した反射電子BEで反射電子像(下側反射電子像)を作成した場合には、±X方向の磁化方向の磁区コントラストに凹凸コントラストが重畳されることになる。また、試料Sの[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の+Y方向、-Y方向に対応させる。したがって、例えば、EBSD検出器120の中心よりも左側に到達した反射電子BEで反射電子像(左側反射電子像)を作成した際に最も明るく観察される領域は-Y方向(すなわち[0-10]方向に対応する方向)の磁化方向を有する磁区に対応し、最も暗く観察される領域が+Y方向(すなわち[010]方向に対応する方向)の磁化方向を有する磁区に対応する。
以上のようにEBSD検出器120の中心よりも下側、左側、右側、のそれぞれに到達した反射電子BEを用いて反射電子像を作成すると特定の磁化方向を有する磁区を明るく(あるいは暗く)表示させることができ、当該磁化方向の磁区のコントラストを強調させることができる。また、EBSD検出器120の中心よりも上側に到達した反射電子BEを用いて反射電子像を作成すると凹凸コントラストを強調させることができる。
このとき、EBSD検出器120の端に近い領域を選択すると磁区コントラストおよび凹凸コントラストが強調されやすい。ローレンツ力Fによって電子軌道が変化した際、EBSD検出器120の端に向かう電子の方がEBSD検出器120の中心に向かう電子よりもEBSD検出器120上での到達位置の変化が大きく表れるためである。通常のEBSD測定のセットアップにおいては、EBSD画像310の中心よりも上側、下側、左側、右側のそれぞれにおいて、EBSD検出器120(の反射電子像の検出領域)の面積の1/20以上の面積に対応する領域の画素値を積算するのが好ましい。積算する面積が小さいと画素値のカウント数が下がってしまい十分な磁区コントラスト、凹凸コントラストが得られないことがあるからである。また、EBSD検出器120の中心に近い領域を選択しないのが好ましい。例えば、EBSD検出器120の中心に近い領域では、+X方向、-X方向、+Y方向、および-Y方向の磁区による影響が混在している程度が大きい場合があるからである。例えば、EBSD画像310を、上下方向および左右方向のそれぞれにおいて少なくとも3つの領域が存在するように複数の領域に分割した分割領域を設定し、少なくともEBSD画像301の中心に最も近い位置にある分割領域の画素値を用いずに、EBSD画像の端に最も近い位置にある分割領域310の画素値を用いて、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像をそれぞれ作成しても良い。EBSD画像310の分割数は、このようなものに限定されず、例えば、上下左右に4分割しても良い。
また、例えば、EBSD検出器120を上下左右に4分割した4つの分割領域に分けた場合、左上の分割領域、左下の分割領域では、-X方向、+X方向の磁区に加えて-Y方向の磁区も明るくなる。また、反射電子像の左下の分割領域、右下の分割領域では、-Y方向、+Y方向の磁区に加えて+X方向の磁区も明るくなる。したがって、EBSD画像310の中心よりも上側、下側、左側、右側のそれぞれの領域ごとにEBSD画像310の画素値を加算するだけでは(上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、右側反射電子像を作成するだけでは)、磁区構造(磁区および磁区方向)を正確に抽出することは容易ではない。
そこで、本実施形態では、第2反射電子像作成部144は、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを減算することを実行する。また、第2反射電子像作成部144は、上側反射電子像の画素値と下側反射電子像の画素値とを加算することと、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値との加算値から上側反射電子像の画素値を減算することと、のいずれかを実行する。なお、画素値の加算、減算は、互いに同じ画素位置において実行される。以下に、このような計算を実行する理由について説明する。
図4Bを参照しながら説明したように凹凸コントラストが生じている測定点MPにおいて、上側反射電子像が明るい場合には(画素値が大きい場合には)、下側反射電子像は暗く、上側反射電子像が暗い場合には、下側反射電子像は明るくなる。このことから、本発明者らは、上側反射電子像の画素値と、下側反射電子像の画素値とを加算すると、凹凸コントラストが緩和され、且つ、±X方向における磁区コントラストが強調されることを見出した。
図7は、上側反射電子像の画素値と、下側反射電子像の画素値とを加算することによるコントラストの変化の一例を概念的に示す図である。ここでは、説明を簡単にするため、-X方向に磁化している磁区においては、凹凸に由来する画素値のみが反射電子像に現れるものとする。また、+X方向に磁化している磁区においては、+X方向に磁化していることに由来する画素値と凹凸に由来する画素値のみが現れるものとする。また、+X方向に磁化していることに由来する画素値を10とし、凹凸に由来する画素値を1とする。
図7(a)に示すように、-X方向に磁化している磁区701の方が、当該磁区701に隣接する+X方向に磁化している磁区702よりも大きい画素値となる凹凸コントラストが生じる場合、磁区701における上側反射電子像の画素値は1となり、磁区702における上側反射電子像の画素値は0となる。試料S表面の凹凸のみを考慮した場合、磁区701における上側反射電子像が明るいと、磁区701における下側反射電子像は暗くなる。したがって、磁区701における下側反射電子像の画素値は0になる。これとは逆に、試料S表面の凹凸のみを考慮した場合、磁区702における上側反射電子像が暗いと、磁区702における下側反射電子像は明るくなる。したがって、磁区702における下側反射電子像の画素値は、+X方向に磁化していることに由来する画素値(=10)に、凹凸に由来する画素値(=1)を加算した値(=11)となる。よって、上側反射電子像の画素値と下側反射電子像の画素値とを加算すると、下側反射電子像において含まれていた凹凸コントラストを緩和でき、±X方向における本来の磁区コントラスト(=10(=11―1))が得られ、±X方向における磁区コントラストが強調される。
また、図7(b)に示すように、+X方向に磁化している磁区702の方が-X方向に磁化している磁区701よりも大きい画素値となる凹凸コントラストが生じる場合、磁区702における上側反射電子像の画素値は1となり、磁区701における上側反射電子像の画素値は0となる。試料S表面の凹凸のみを考慮した場合、磁区701における上側反射電子像が暗いと、磁区701における下側反射電子像は明るくなる。したがって、磁区701における下側反射電子像の画素値は1になる。これとは逆に、試料S表面の凹凸のみを考慮した場合、磁区702における上側反射電子像が明るいと、磁区702における下側反射電子像は暗くなる。したがって、磁区702における下側反射電子像の画素値は、+X方向に磁化していることに由来する画素値(=10)のみとなる。よって、上側反射電子像の画素値と下側反射電子像の画素値とを加算すると、下側反射電子像において含まれていた凹凸コントラストを緩和でき、±X方向における本来の磁区コントラスト(=10(=11―1))が得られ、±X方向における磁区コントラストが強調される。
本実施形態では、上側反射電子像の画素値と下側反射電子像の画素値とを加算することにより、±X方向における磁区コントラストが強調され、且つ、凹凸コントラストが緩和された反射電子像が、第1照射方向磁区コントラスト強調画像の一例として作成される。以下の説明では、当該反射電子像を、第1X方向磁区コントラスト強調画像とも称する。
また、本発明者らは、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを減算すると、±Y方向における磁区コントラストを強調することができると共に、凹凸コントラストを緩和することができることを見出した。
図8は、左側反射電子像の画素値と、右側反射電子像の画素値とを減算することによるコントラストの変化の一例を概念的に示す図である。ここでは、説明を簡単にするため、+Y方向に磁化している磁区においては、+Y方向に磁化していることに由来する画素値と凹凸に由来する画素値のみが現れるものとし、-Y方向に磁化している磁区においては、-Y方向に磁化していることに由来する画素値と凹凸に由来する画素値のみが現れるものとする。また、±Y方向に磁化していることに由来する画素値をそれぞれ10とし、凹凸に由来する画素値を1とする。
図8(a)に示すように、-Y方向に磁化している磁区801と当該磁区801に隣接する+Y方向に磁化している磁区802とに凹凸コントラストが生じていない場合、左側反射電子像の画素値から右側反射電子像の画素値を減算すると、±Y方向における磁区コントラストは10から20(=10-(-10))になり、±Y方向における磁区コントラストを強調することができる。
図8(b)に示すように、-Y方向に磁化している磁区801の方が、+Y方向に磁化している磁区802よりも大きい画素値となる凹凸コントラストが生じる場合、凹凸に由来する画素値は、左側反射電子像においても右側反射電子像においても磁区801の方が大きくなる。したがって、磁区801における左側反射電子像、右側反射電子像の画素値は、それぞれ、11、1になる。よって、左側反射電子像の画素値から右側反射電子像の画素値を減算すると、±Y方向における磁区コントラストは10から20(=10-(-10))になり、図8(a)に示す凹凸コントラストがない場合の±Y方向における磁区コントラストと同じ値になる。このように、±Y方向における磁区コントラストを強調することができると共に、凹凸コントラストを緩和することができる。
図8(c)に示すように、+Y方向に磁化している磁区802の方が、-Y方向に磁化している磁区801よりも大きい画素値となる凹凸コントラストが生じる場合、凹凸に由来する画素値は、左側反射電子像においても右側反射電子像においても磁区802の方が大きくなる。したがって、磁区802における左側反射電子像、右側反射電子像の画素値は、それぞれ、1、11になる。よって、左側反射電子像の画素値から右側反射電子像の画素値を減算すると、±Y方向における磁区コントラストは10から20(=10-(-10))になり、図8(a)に示す凹凸コントラストがない場合の±Y方向における磁区コントラストと同じ値になる。このように、±Y方向における磁区コントラストを強調することができると共に、凹凸コントラストを緩和することができる。
以下の説明では、上側反射電子像の画素値と下側反射電子像の画素値とを減算することにより、±Y方向における磁区コントラストが強調され、且つ、凹凸コントラストが緩和された反射電子像が、照射側方向磁区コントラスト強調画像の一例として作成される。以下の説明では、当該反射電子像を、Y方向磁区コントラスト強調画像とも称する。なお、上側反射電子像の画素値と下側反射電子像の画素値との減算は、上側反射電子像の画素値から下側反射電子像の画素値を減算することに実現されても、下側反射電子像の画素値から下側反射電子像の画素値を減算することにより実現されても良い。また、画像のコントラスト(画素値(輝度値)の差)が分かれば良いので、減算の結果、負の値になる場合には、減算後の画素値を規格化すれば(例えば、最小値を0とする相対値で表せば)良い。
また、本発明者らは、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを加算すると、±Y方向における磁区コントラストが平均化されるため、±X方向における磁区コントラストが強調されることを見出した。例えば、EBSD画像310の左下または右下の領域においては、+X方向の磁化方向を有する磁区が明るく映し出され、-X方向の磁化方向を有する磁区が暗く映し出されるため、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを加算すると、±X方向における磁区コントラストが強調される。ただし、この場合には、凹凸コントラストが緩和されないため、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを加算した後、上側反射電子像の画素値を減算することで凹凸コントラストを緩和する。
図9は、左側反射電子像の画素値と、右側反射電子像の画素値とを加算した後上側反射電子像の画素値を減算することによるコントラストの変化の一例を概念的に示す図である。ここでは、-X方向に磁化している磁区901に-Y方向に磁化していることに由来する画素値が含まれ、当該磁区901に隣接する+X方向に磁化している磁区902に+Y方向に磁化していることに由来する画素値が含まれる場合を例示する。また、-X方向に磁化している磁区901の方が、磁区902よりも大きい画素値となる凹凸コントラストが生じる場合を例示する。また、+X方向に磁化していることに由来する画素値を7とし、±Y方向に磁化していることに由来する画素値をそれぞれ3とし、凹凸に由来する画素値を1とする。
図9(a)に示すように、磁区901、902に含まれる±Y方向に磁化していることに由来する画素値のみを取り出して、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを加算すると、±Y方向における磁区コントラストは3(=3-0)から0(=3-3)に緩和される。
図9(b)に示すように、磁区901、902に含まれる±X方向に磁化していることに由来する画素値のみを取り出して、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを加算すると、±X方向における磁区コントラストは6(=7-1)から12(=14-2)になり、±X方向における磁区コントラストが強調される。そして、図9(c)に示すように、このようにして加算した画素値から上側反射電子像の画素値を減算すると、±X方向における磁区コントラストは12から13(=14-1)になり、凹凸コントラスト(=1)を緩和することができる。
本実施形態では、左側反射電子像の画素値と右側反射電子像の画素値とを加算することにより、±Y方向における磁区コントラストが緩和され、且つ、±X方向における磁区コントラストが強調された反射電子像が作成される。以下の説明では、当該反射電子像を、Y方向磁区コントラスト緩和画像とも称する。また、本実施形態では、Y方向磁区コントラスト緩和画像の画素値から上側反射電子像の画素値を減算することにより、±X方向における磁区コントラストが強調され、且つ凹凸コントラストが緩和された反射電子像が、第2照射方向磁区コントラスト強調画像の一例として作成される。以下の説明では、当該反射電子像を、第2X方向磁区コントラスト強調画像とも称する。なお、第2反射電子像作成部144は、必ずしも第1X方向磁区コントラスト強調画像および第2X方向磁区コントラスト強調画像の双方を作成する必要はなく、いずれか一方のみを作成しても良い。第1X方向磁区コントラスト強調画像を作成する場合には、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像が必要になるので、第1反射電子像作成部143は、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像を作成する。一方、第2X方向磁区コントラスト強調画像を作成する場合には、上側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像が必要になるので、第1反射電子像作成部143は、上側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像を作成する。この場合、第1反射電子像作成部143は、下側反射電子像を作成しなくても良い。以下の説明では、第1X方向磁区コントラスト強調画像または第2X方向磁区コントラスト強調画像をX方向磁区コントラスト強調画像とも称する。
第2反射電子像作成部144は、以上のような上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像の画素値の加減算を実行する前に、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像に生じているバックグラウンド(明るさのむら)を低減(好ましくは除去)するバックグランド処理を実行しても良い。前述したように本実施形態では、ステップS202の試料セット工程において、試料Sの表面が試料ホルダー112の表面に平行でない場合には、反射電子像において特定方向にグラデーションが生じることがある。このような場合、第2反射電子像作成部144は、当該グラデーションを低減(好ましくは除去)するバックグラウンド処理を実行するのが好ましい。第2反射電子像作成部144は、例えば、反射電子像においてグラデーションを示す方向において、グラデーションの傾きからバックグラウンドによる画素値(強度)を求めて、これを元の反射電子像の画素値から差し引く処理を実行する。グラデーションの傾きは、例えば、グラデーションを示す方向において、画素位置とグラデーションによる画素値との関係を線形近似した一次関数の傾きで表される。
図1および図2の説明に戻り、磁区構造取得部145は、[100]方向および[-100]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストと、[010]方向および[0-10]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストと、を用いて、試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を取得する(図2のステップS207の磁区構造取得工程)。ここで、試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報は、試料の結晶方位の観察領域を含む領域の情報であり、例えば、試料の結晶方位の観察領域と同一の領域の情報である。試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報は、例えば、磁化方向ごとに異なる濃度または色を付した画像であっても良い。以下の説明では、この画像を磁区構造マップとも称する。磁区構造マップは、結晶方位マップ320と重なるようにするのが好ましい。すなわち、磁区構造マップおよび結晶方位マップ320の相互に対応する画素は、同じ磁区の情報を示すようにするのが好ましい。
磁区構造取得部145は、X方向磁区コントラスト強調画像とY方向磁区コントラスト強調画像とをコンピュータディスプレイに表示しても良い。このようにする場合、解析者は、X方向磁区コントラスト強調画像とY方向磁区コントラスト強調画像とを参照して、試料Sの磁区構造(各磁区のサイズ、形状、および磁区方向)を特定して、試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を作成しても良い。このようにする場合、解析者は、試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を、情報処理装置140に入力しても良い。
また、磁区構造取得部145は、X方向磁区コントラスト強調画像とY方向磁区コントラスト強調画像とに基づいて、試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を自動的に作成しても良い。例えば、磁区構造取得部145は、X方向磁区コントラスト強調画像の各画素の画素値と閾値とを比較した結果と、Y方向磁区コントラスト強調画像の各画素の画素値と閾値とを比較した結果と、に基づいて、各画素における磁区方向を特定して、試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を作成しても良い。磁区構造取得部145は、作成した試料S中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報をコンピュータディスプレイに表示しても良い。
なお、磁区構造マップを作成する際に、X方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像に加えて、これら以外の反射電子像を考慮しても良い。例えば、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および、右側反射電子像のうちの少なくとも1つの反射電子像を考慮しても良い。また、全領域反射電子像を考慮しても良い。全領域反射電子像は、試料Sの測定点MPに電子線プローブEPを照射することにより得られるEBSD画像310の全ての画素の積算値を、当該測定点MPに対応する領域(画素)331に格納することを、各測定点MPに対して実行することにより作成された反射電子像である。
以上のように本実施形態では、EBSD検出器120の中心よりも上下左右の少なくとも一部の領域ごとに試料Sの反射電子像を作成して、上側反射電子像および下側反射電子像のうちの少なくとも一方と、左側反射電子像および右側反射電子像とを含む反射電子像を作成し、各反射電子像に基づいて、当該反射電子像よりも、±X方向または±Y方向における磁区コントラストが強調され、且つ、凹凸コントラストが緩和された反射電子像として、X方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を作成し、作成したX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を用いて試料Sの磁区構造を取得する。したがって、特定の磁化方向を有する磁区を明るく(あるいは暗く)して撮像することが可能になり、更にはそれぞれの反射電子像を加算あるいは減算して凹凸コントラストを緩和しつつ磁区コントラストを強調することができる。したがって、試料S表面を精密に平らにしなくても、磁区構造に関する情報(磁区のサイズおよび形状や磁区内の磁化方向)として高精度な情報を得ることができる。また、EBSD画像における菊池バンド位置の解析結果から結晶方位の情報も併せて取得することが可能になる。したがって、結晶方位マップと磁区を同じ領域で観察することができ鋼板の結晶方位に関する情報と磁区構造に関する情報(磁区のサイズおよび形状や磁区内の磁化方向)とを同一視野で観察することができる。
(変形例)
本実施形態では、Y方向磁区コントラスト緩和画像の画素値から上側反射電子像の画素値を減算することにより、凹凸コントラストが緩和され、且つ、±X方向における磁区コントラストが強調された第2X方向磁区コントラスト強調画像を作成する場合を例示した。しかしながら、前述したように、凹凸コントラストは上側反射電子像と下側反射電子像とで逆転する傾向がある。さらに、下側反射電子像では、最も明るく観察される領域が+X方向(すなわち[100]方向に対応する方向)の磁化方向を有する磁区に対応し、最も暗く観察される領域が-X方向(すなわち[-100]方向に対応する方向)の磁化方向を有する磁区に対応する。したがって、下側反射電子像には、±X方向の磁化方向を有する磁区に加えて試料S表面の凹凸の情報が含まれる。そこで、このことを利用して、Y方向磁区コントラスト緩和画像の画素値に下側反射電子像の画素値を加算することによっても、凹凸コントラストが緩和され、且つ、±X方向における磁区コントラストを強調された第3X方向磁区コントラスト強調画像をX方向磁区コントラスト強調画像の一つとして作成しても良い。したがって、第2反射電子像作成部144は、第1X方向磁区コントラスト強調画像および第2X方向磁区コントラスト強調画像の少なくとも一方に加えてまたは代えて第3X方向磁区コントラスト強調画像を作成しても良い。なお、前述したように凹凸コントラストは、上側反射電子像と下側反射電子像とで逆転するので、図9に示す例では、下側反射電子像の磁区901、902における画素値は、それぞれ0、8(=1+7)になる。したがって、図9(a)および図9(b)に示す例では、図9(b)に示す磁区901、902における画素値(2、14)に、下側反射電子像の磁区901、902における画素値(0、8)を加算することにより、第3X方向磁区コントラスト強調画像においては、±X方向における磁区コントラストは12から20(=22-2)になり、±X方向における磁区コントラストをより一層強調すると共に凹凸コントラスを緩和することができる。このような第3X方向磁区コントラスト強調画像を作成する場合には、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像が必要になるので、第1反射電子像作成部143は、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像を作成する。この場合、第1反射電子像作成部143は、上側反射電子像を作成しなくても良い。
また、本実施形態では、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の+X方向、-X方向のいずれかに対応するようにすると共に、試料Sの[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の+Y方向、-Y方向のいずれかに対応するようにするように試料Sを試料ホルダー112にセットして、X方向磁区コントラスト強調画像(第1~第3X方向磁区コントラスト強調画像の少なくとも1つ)と、Y方向磁区コントラスト強調画像を作成し、磁区構造マップを作成する場合を例示した。しかしながら、前述したように、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の+Y方向、-Y方向のいずれかに対応するようにすると共に、試料Sの[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の+X方向、-X方向のいずれかに対応するようにするように試料Sを試料ホルダー112にセットして(すなわち、±X方向と±Y方向とが入れ替わるように試料Sを90°回転させて)、X方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を作成し、磁区構造マップを作成しても良い。また、このように±X方向と±Y方向とが入れ替わるように試料Sを90°回転させた状態のそれぞれにおいてX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を作成し、これらのX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を用いて、磁区構造マップを作成しても良い。このようにすれば、例えば、±X方向と±Y方向とが入れ替わるように試料Sを90°回転させた状態のそれぞれにおいて作成したX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を用いて磁区構造に関する情報(磁区のサイズおよび形状や磁区内の磁化方向)を定めることができるので、磁区構造マップ(磁区構造に関する情報)の精度をより向上させることができる。例えば、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の+X方向、-X方向のいずれかに対応するようにすると共に、試料Sの[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の+Y方向、-Y方向のいずれかに対応するようにするように試料Sを試料ホルダー112にセットして作成したX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像から得られる磁区コントラストが妥当であるか否かを、試料Sの[100],[-100]方向をそれぞれ試料S表面の+Y方向、-Y方向のいずれかに対応するようにすると共に、試料Sの[010],[0-10]方向をそれぞれ試料S表面の+X方向、-X方向のいずれかに対応するようにするように試料Sを試料ホルダー112にセットして作成したX方向磁区コントラスト強調画像およびY方向磁区コントラスト強調画像を用いて確認することができる。
次に、実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
市販のFe-3質量%Si合金を試料として用い、表面を電解研磨後に走査型電子顕微鏡内のEBSD装置を用いて結晶方位を計測した。その後、表面がBCC構造の(001)面に平行となるように試料に対して切り出し加工を行い、表面加工歪を除去するために試料表面を電解研磨で仕上げた。更に図1のEBSD測定のセットアップにおいて+X方向が[100]方向に平行となり、且つ+Y方向が[010]方向に平行となるよう試料を試料ホルダー(EBSDホルダー)に張り付けた。
当該試料ホルダーを走査型電子顕微鏡内に挿入し、70°傾斜させた。走査型電子顕微鏡の電子銃の加速電圧は25kVに設定した。集束した電子線プローブを試料に照射し、走査することで測定点ごとにEBSD画像を得た。EBSD画像は測定点の位置情報と共にデジタル情報として保存した。EBSD画像の解像度は100ピクセル×100ピクセルとした。またEBSD画像は8ビットで保存した。EBSD画像から結晶方位情報(オイラー角)を計算するため、市販のEBSD解析ソフトウェア(EDAX社製 OIM Data Collection 7)を使用した。
図10にEBSD分析により得られた結晶方位マップ1000の一例を示す。前述したように結晶方位マップ1000は、試料表面に平行な結晶面の方位をカラーマップ化したものである。表記の都合上、図10では、グレースケール化されているが、図10に示す結晶方位マップ1000は、赤い単色である。したがって、試料の結晶方位の観察領域内は単結晶であって、表面が(001)面にほぼ平行であることが分かる。
図11に示すように、100ピクセル×100ピクセルのEBSD画像を計算機上で上下方向および左右方向にそれぞれ5等分して25個の分割領域に分け、各領域における画素の画素値(画素強度)を積算した。25個の分割領域に分けたEBSD画像において、上下左右の端における中央部の3マスの分割領域を選択し、この3マスの領域における画素強度を計算し、これを測定点ごとに並べて反射電子像を形成した。図11(a)は、上側反射電子像を作成する際に選択される分割領域を示し、図11(b)は、下側反射電子像を作成する際に選択される分割領域を示し、図11(c)は、左側反射電子像を作成する際に選択される分割領域を示し、図11(d)は、右側反射電子像を作成する際に選択される分割領域を示す。図11(a)~図11(d)において、濃く示している3個の分割領域が選択される分割領域であることを示す。EBSD検出器の分割領域に対応するようにEBSD画像においても分割領域を設定し、図11(a)~図11(d)において濃く示している3個の分割領域に対応するEBSD画像の3個の分割領域の画素値を積算した値を測定点の画素値として格納することを試料の各測定点について実行することにより、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像を作成した。上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像に対して斜め方向のグラデーションを除去するバックグラウンド処理を実行した。以下の説明において、上側反射電子像、下側反射電子像、左側反射電子像、および右側反射電子像は、バックグラウンド処理が実行されたものであるものとする。
EBSD検出器の中心よりも上側(図11(a)に示す上側の端における中央部の3つの分割領域)に届いた反射電子のみで形成した上側反射電子像1200を図12に示す。図12に示す上側反射電子像1200では、試料表面の凹凸に由来する凹凸コントラストが得られており、磁区構造がはっきりとは見えなかった。前述した理由(第1の理由~第2の理由)によるものと考えられる。
EBSD検出器の中心よりも下側(図11(b)に示す下側の端における中央部の3つの分割領域)に届いた反射電子のみで形成した下側反射電子像1300を図13に示す。図13に示す下側反射電子像1300では、樹枝状の磁区構造が明瞭に観察されており、明るく観察される領域は磁化方向が-X方向の磁区に対応し、暗く観察される領域は磁化方向が+X方向の磁区に対応する。ただし、磁区コントラスト以外に凹凸コントラストが重畳していることから磁区コントラストのみで反射電子像のコントラストが形成しているとはいえない。
そこで図12に示す上側反射電子像1200で得られた凹凸コントラストを考慮して、凹凸コントラストを、図13に示す下側反射電子像1300から可能な限り除去した結果が、図14に示す第1X方向磁区コントラスト強調画像1400である。第1X方向磁区コントラスト強調画像1400は、凹凸コントラストを緩和するために、図12に示す上側反射電子像1200の画素値と図13に示す下側反射電子像1300の画素値とを加算することにより得られる。図14に示す第1X方向磁区コントラスト強調画像1400では、図13に示す下側反射電子像1300に比べ、凹凸コントラストが緩和され±X方向における磁区コントラストがより明瞭になっている。一方、図12に示す上側反射電子像1200の画素値から図13に示す下側反射電子像1300の画素値を減算することにより作成した反射電子像を図15に示す。図15に示す反射電子像では、図14に示す第1X方向磁区コントラスト強調画像1400に比べ、凹凸コントラストが緩和されず、±X方向における磁区コントラストが強調されない。
次に、EBSD検出器の中心よりも左側(図11(c)に示す左側の端における中央部の3つの分割領域)に届いた反射電子のみで形成した左側反射電子像1600を図16に示す。また、EBSD検出器の中心よりも右側(図11(d)に示す右側の端における中央部の3つの分割領域)に届いた反射電子のみで形成した右側反射電子像1700を図17に示す。
図16および図17に示す左側反射電子像1600および右側反射電子像1700では、樹枝状の磁区構造が明瞭に観察されているが、図13に示す下側反射電子像1300とはコントラストが異なることが分かる。これは前述したようにEBSD検出器のどの場所に到達した電子を用いて反射電子像を構築するかで、明るく映る磁区を変えることができるためである。図16および図17に示す左側反射電子像1600および右側反射電子像1700において明るく映るコントラストが逆転している領域は、磁化方向が±Y方向で反転している領域(=磁区)に対応している。図16に示す左側反射電子像1600の画素値から図17に示す右側反射電子像1700の画素値を減算することにより作成したY方向磁区コントラスト強調画像1800を図18に示す。図18に示すY方向磁区コントラスト強調画像1800では、図16に示す左側反射電子像1600および図17に示す右側反射電子像1700に比べ、凹凸コントラストが緩和され磁区コントラストが強調されている。Y方向磁区コントラスト強調画像1800において、最も暗く映る磁区が+Y方向の磁化方向の磁区であって、最も明るい領域が-Y方向の磁化方向の磁区である。
次に、図16に示す左側反射電子像1600の画素値と図17に示す右側反射電子像1700の画素値とを加算することにより作成したY方向磁区コントラスト緩和画像1900を図19に示す。図19に示すY方向磁区コントラスト緩和画像1900においては、図16に示す左側反射電子像1600と図17に示す右側反射電子像1700とで反転する磁区コントラスト(磁化方向が+Y方向および-Y方向の磁区)が足し合わされることで磁区コントラストが緩和され、磁化方向が+X方向/-X方向の磁区を強調することができる。しかしながら、Y方向磁区コントラスト緩和画像1900には、±X方向における磁区コントラストに凹凸コントラストが重畳することにより±X方向における磁区コントラストが観察されがたい。そこで、図19に示すY方向磁区コントラスト緩和画像1900の画素値から、図12に示す上側反射電子像1200の画素値を減算すると、図20に示す第2X方向磁区コントラスト強調画像2000が得られ、凹凸コントラストが緩和され±X方向における磁区コントラストがより強調された。
以上の結果から、試料の磁区構造の観察領域内における各磁区の領域と各磁区内の磁化方向とを可視化した図が図21に示す磁区構造マップ2100である。試料の結晶方位の観察領域と磁区構造の観察領域は一致している。したがって、図10に示す結晶方位マップ1000と図21に示す磁区構造マップ2100は、全くの同一領域のものである。よって、結晶方位と磁区構造とを同一視野で観察することができる。
また、EBSD検出器の全体に届いた反射電子のみで反射電子像(通常の反射電子像)を形成した結果を、図22に示す。図22に示す全領域反射電子像2200では、凹凸コントラストが磁区コントラストに重畳しており、且つ、この像のみでは磁区内の磁化方向について知見を得ることができない。
なお、以上説明した本発明の実施形態および実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
110 走査型電子顕微鏡
111 光学系
112 試料ホルダー
120 EBSD検出器
130 撮像装置
140 情報処理装置
141 画像取得部
142 結晶方位取得部
143 第1反射電子像作成部
144 第2反射電子像作成部
145 磁区構造取得部
310 EBSD画像
320 結晶方位マップ
330 反射電子像
510 試料に内部磁場が存在しない場合の反射電子の到達位置
511 試料に+X方向の内部磁場が存在する場合の反射電子の到達位置
512 試料に-X方向の内部磁場が存在する場合の反射電子の到達位置
611 試料に+Y方向の内部磁場が存在する場合の反射電子の到達位置
612 試料に-Y方向の内部磁場が存在する場合の反射電子の到達位置
701~702 相互に隣接する磁化方向が±X方向の磁区
801~802 相互に隣接する磁化方向が±Y方向の磁区
901~902 相互に隣接する磁化方向が±X方向の磁区
1000 結晶方位マップ
1200 上側反射電子像
1300 下側反射電子像
1400 第1X方向磁区コントラスト強調画像
1600 左側反射電子像
1700 右側反射電子像
1800 Y方向磁区コントラスト強調画像
1900 Y方向磁区コントラスト緩和画像
2000 第2X方向磁区コントラスト強調画像
2100 磁区構造マップ
2200 全領域反射電子像
BE 反射電子
DU 上側に向かう反射電子の試料内の移動距離
DD 下側に向かう反射電子の試料内の移動距離
EP 電子線プローブ
S 試料

Claims (7)

  1. BCC(Body Centered Cubic)構造を有する鋼板を用いて構成される試料の測定点に対して電子顕微鏡内で電子線を照射することによりEBSD(Electron BackScatter Diffraction)検出器に到達した反射電子の回折パターンを示すEBSD画像を用いて、前記鋼材中の磁区および磁化方向を観察する鋼板中の磁区観察方法であって、
    前記EBSD検出器において、前記電子線を前記EBSD検出器に射影した場合に、当該射影された前記電子線の照射方向に平行な方向を照射平行方向、当該照射平行方向に反平行な方向を照射反平行方向、当該照射平行方向に垂直な互いに反平行となる2つの方向をそれぞれ第1照射側方向、第2照射側方向とし、
    前記試料表面が前記BCC構造の(001)面に対応するように前記試料を調整する試料調整工程と、
    結晶の[100]方向および[-100]方向が、前記照射平行方向および前記照射反平行方向と、前記第1照射側方向および前記第2照射側方向と、のうちの一方に対応し、且つ、結晶の[010]方向および[0-10]方向が、他方に対応するように、前記試料を前記電子顕微鏡内にセットする試料セット工程と、
    前記試料セット工程でセットされた前記試料に対する前記EBSD画像の一部の領域の反射電子の強度を算出することを、前記測定点を異ならせて実行することにより、当該EBSD画像の一部の領域における反射電子像を作成する第1反射電子像作成工程と、
    前記第1反射電子像作成工程で作成された反射電子像に基づいて、当該反射電子像よりも、[100]方向および[-100]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラスト、または、[010]方向および[0-10]方向に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像を作成する第2反射電子像作成工程と、
    前記第2反射電子像作成工程で作成された反射電子像を用いて、前記試料中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報を取得する磁区構造取得工程と、
    を有し、
    前記第1反射電子像作成工程では、前記EBSD画像の、前記測定点に対応する位置よりも前記照射反平行方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である照射反平行方向側反射電子像と、前記EBSD画像の、前記測定点に対応する位置よりも前記照射平行方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である照射平行方向側反射電子像と、のうち少なくとも一方の反射電子像と、前記EBSD画像の領域の、前記測定点に対応する位置よりも前記第1照射側方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である第1照射側方向側反射電子像と、前記EBSD画像の領域の、前記測定点に対応する位置よりも前記第2照射側方向側の少なくとも一部の領域における反射電子像である第2照射側方向側反射電子像と、を作成する、鋼板中の磁区観察方法。
  2. 前記第1反射電子像作成工程では、前記照射反平行方向側反射電子像と、前記照射平行方向側反射電子像と、前記第1照射側方向側反射電子像と、前記第2照射側方向側反射電子像と、を作成する、請求項1に記載の鋼板中の磁区観察方法。
  3. 前記第2反射電子像作成工程では、前記照射反平行方向側反射電子像の画素値と、前記照射平行方向側反射電子像の画素値と、の加算を実行することにより、[100]方向および[-100]方向と、[010]方向および[0-10]方向と、のうちの一方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である第1照射方向磁区コントラスト強調画像を作成し、前記第1照射側方向側反射電子像の画素値と、前記第2照射側方向側反射電子像の画素値と、の減算を実行することにより、他方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である照射側方向磁区コントラスト強調画像を作成する、請求項2に記載の鋼板中の磁区観察方法。
  4. 前記反射電子像作成工程では、前記照射反平行方向側反射電子像と、前記第1照射側方向側反射電子像と、前記第2照射側方向側反射電子像と、を作成し、前記照射平行方向側反射電子像を作成しない、請求項1に記載の鋼板中の磁区観察方法。
  5. 前記第2反射電子像作成工程では、前記第1照射側方向側反射電子像の画素値と前記第2照射側方向側反射電子像の画素値との加算を実行した後に前記照射反平行方向側反射電子像の画素値の減算を実行することにより、[100]方向および[-100]方向と、[010]方向および[0-10]方向と、のうちの一方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である第2照射方向磁区コントラスト強調画像を作成し、前記第1照射側方向側反射電子像の画素値と、前記第2照射側方向側反射電子像の画素値と、の減算を実行することにより、他方に対応する磁化方向を有する磁区に由来するコントラストが強調され、且つ、前記試料表面の形状に由来するコントラストが緩和された反射電子像である照射側方向磁区コントラスト強調画像を作成する、請求項2または4に記載の鋼板中の磁区観察方法。
  6. 前記第1反射電子像作成工程では、前記照射平行方向および前記照射反平行方向に対応する方向と、前記第1照射側方向および前記第2照射側方向に対応する方向と、のそれぞれにおいて少なくとも3つの領域が存在するように前記EBSD画像の領域を複数の領域に分割した分割領域のうち、少なくとも前記EBSD画像の、前記測定点に対応する位置に最も近い位置にある前記分割領域の画素値を用いずに、前記EBSD画像の端に最も近い位置にある前記分割領域の画素値を用いて、前記EBSD画像の一部の領域における反射電子像をそれぞれ作成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の鋼板中の磁区観察方法。
  7. 前記第1反射電子像作成工程で作成される反射電子像は、前記EBSD画像に基づいて解析される前記試料の結晶方位の観察領域を含む画像であり、
    前記試料中の各磁区のサイズ、形状、および磁化方向を示す情報は、前記試料の結晶方位の観察領域を含む領域の情報である、請求項1~6のいずれか1項に記載の鋼板中の磁区観察方法。
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