JP6051245B2 - 荷電粒子顕微鏡内で試料を検査する方法 - Google Patents

荷電粒子顕微鏡内で試料を検査する方法 Download PDF

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Description

本発明は、走査透過型荷電粒子顕微鏡内で試料を検査する方法に関する。当該方法は:
− 前記試料に照射するように、線源から照射体を介するように導かれる荷電粒子ビームを供する段階;
− 前記試料を通り抜ける荷電粒子束を検出する検出器を供する段階;
− 前記試料の表面全体にわたって前記ビームを走査させ、かつ、走査位置の関数として前記検出器の出力を記録することで、前記試料の荷電粒子画像を蓄積する段階;
を有する。
本発明はまた、当該方法が実行可能な荷電粒子顕微鏡にも関する。
本願全体を通じて用いられるように、以下の用語は以下のような説明で一貫して解釈されなければならない。
− 「荷電粒子」という用語は、電子又はイオンを指称する(一般的には、たとえばガリウムイオン又はヘリウムイオンのような正のイオンだが、負イオンも可能である。問題のイオンは電荷を有する原子又は分子であって良い)。この語はまたたとえば陽子をも指称して良い。
− 「顕微鏡」という用語は、一般に裸眼で満足できるように詳細を見るには小さすぎる対象物、特徴部位、又は部材の拡大像を生成するのに用いられる装置を指称する。荷電粒子顕微鏡(CPM)では、荷電粒子の撮像ビームが、照射体から試料へ向かうように案内される。透過型CPM(TCPM)では、検出器は、前記試料を通り抜ける荷電粒子束を捕らえるのに用いられる。前記検出器は、一般的には前記検出器上で前記束(の一部)を集束させるのに用いられる結像系に補助される。前記TCPMは走査モードで用いられて良い(STCPM)。その場合、前記照射体からの荷電粒子ビームは前記試料全体にわたって走査され、かつ、前記検出器の出力が走査位置の関数として記録される。撮像機能を有することに加えて、CPMはまた他の機能−たとえば分光、回折、(局在化した)表面改質(たとえばミリング、エッチング、堆積)等−を有して良い。
− 「照射体」という用語は、たとえば前記荷電粒子ビームにある焦点又は偏向を与え、並びに/又は、1つ以上の収差を緩和するように機能する、ビーム源(たとえばショットキー源又はイオン銃)からの「生の」荷電粒子ビームを操作するのに用いられ得る1つ以上の静電及び/若しくは磁気レンズを有する粒子光学鏡筒を指称する。必要な場合には、照射体には、前記ビームに被調査試料全体にわたる走査運動を実行させ得る偏向システムが供されて良い。
以降では、本発明は、例示によって、電子顕微鏡の具体的文脈において説明されることがある。しかしそのような単純化は、簡明を期すため/例示目的を意図しているに過ぎず、限定と解されてはならない。
荷電粒子顕微鏡−具体的には電子顕微鏡−は、微少な対象物を撮像する周知で重要性を増している方法である。歴史的には、電子顕微鏡の基本的性質は、多数の周知の装置−たとえば透過型電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、及び走査型透過電子顕微鏡(STEM)−及び様々な付属装置−たとえば支援活動(たとえばイオンビームミリング又はイオンビーム誘起堆積(IBID))を可能にするように「加工用」集束イオンビーム(FIB)をさらに用いることのできる所謂「デュアルビーム」装置(たとえばFIB-SEM)−へ発展してきた。TEMでは、前記電子ビームを構成する電子が前記試料の深さまで完全に侵入することが可能となるように、試料への照射に用いられる前記電子ビームのエネルギーは概して、SEMの場合よりも顕著に高い(たとえば300keV vs 10keV)。関連する理由として、TEM内で調査される試料はまた概して、SEM内で調査される試料よりも薄い必要がある。従来の電子顕微鏡では、撮像ビームは、所与の撮像期間中の拡張された期間「オン」状態である。しかし相対的に短い「フラッシュ」又は「バースト」に基づいて撮像が行われる電子顕微鏡も利用可能である。係る方法はたとえば、動く試料又は放射線感受性を有する試料の撮像を試みるときに潜在的な利点がある。上で説明した話題の一部に関するさらなる情報はたとえば、以下の非特許文献1〜4からわかる。
それに加えて、非電子系CPMに関する情報はたとえば非特許文献5,6から得ることができる。
(S)TEMは比較的多目的の装置で、かつ、様々なモードで試料を調査するのに用いられ得る。「従来の」TEM撮像とは別に、たとえば非特許文献7,8に記載されているような特殊なSTEM手法−たとえばBF(明視野)イメージング、ADF(環状暗視野)イメージング、及びHAADF(高角度ADF)イメージング−が存在する。
そのような手法が固有の利点を有するが、そのような手法は様々な課題を抱えている。たとえば「従来の」TEMイメージングの場合、すぐに解釈可能な画像は、生のデータに比較的やっかいなMTF(変調伝達関数)/CTF(コントラスト伝達関数)で処理しなければ得ることができない。他方、特殊なSTEM手法−たとえばBF(明視野)イメージング、ADF(環状暗視野)イメージング、及びHAADF(高角度ADF)イメージング−は所望の程度のコントラストを実現するため、前記特殊なSTEM手法は、試料から検出される束中の信号粒子の角度範囲を相対的に狭くしなければならなくなる点で比較的「むだ」である。イメージングに利用できる電子の数は少なくなるので、前記特殊なSTEM手法は、最適とは言えない信号対雑音比(SNR)に悩まされがちである。これはささいな問題ではない。多くの試料(たとえば生体試料及び/又は極低温試料)は放射線が誘起する損傷に非常に敏感である。その結果、画像蓄積時間を長くする及び/又は照射ビーム電流を大きくすることによってSNRを改善しようとする余裕は一般的にはない。なぜならそのような試みによって許容できないほどの試料の損傷が引き起こされる恐れがあるからである。そのような場合、試料からの利用可能な価値ある束の相対的大部分を破棄しなければならないことは欲求不満となる。前記束の角度範囲を広くして収集することによってこの問題を緩和しようとする如何なる試みも、一般的には不十分なコントラストを生じさせる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Electron_microscope http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_electron_microscope http://en.wikipedia.org/wiki/Transmission_electron_microscopy http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_transmission_electron_microscopy http://en.wikipedia.org/wiki/Scanning_Helium_Ion_Microscope W.H.Escovitz, T.R. Fox and R. Levi-Setti, Scanning Transmission Ion Microscopewith a Field Ion Source, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 72(5), pp 1826-1828(1975) http://en.wikipedia.org/wiki/Position_sensitive_device Robert T.Frankot, Rama Chellappa, IEEE Transactions On Pattern Analysis And MachineIntelligence, 10(4) (1988) AmitAgrawal, Rama Chellappa, Ramesh Raskar, Computer Vision, ICCV, 10thIEEE International Conference (2005) http://en.wikipedia.org/wiki/Vector_calculus
本発明の目的はこれらの問題を解決することである。特に本発明の目的は、STCPMによって試料を調査する根源的に新規な方法を供することである。しかも本発明の目的は、当該方法が、利用可能な資源を効率的に利用し、かつ、従来技術に係る方法では現在のところ到達不可能な結果を与えることである。
上記及び他の目的は、「技術分野」で述べた方法によって実現される。当該方法は以下の段階を有することを特徴とする。
− 前記検出器を複数の検出セグメントを含むように実装する段階
− 各走査位置での前記検出器からのベクトル出力を生成するように前記検出器の各異なるセグメントからの信号を結合し、かつ、このデータをまとめることでベクトル場を得る段階
− 前記ベクトル場に2次元積分操作を施すことによって前記ベクトル場を数学的に処理することで、積分ベクトル場画像を生成する段階
本開示では、以下の追加説明が与えられる。
− 前記検出器からの「ベクトル」出力は、大きさしか有しないスカラー出力とは対照的に大きさと方向を有するものとみなすことのできる出力である。前記ベクトル出力は一般的に座標系−たとえば直交座標(X,Y)又は極座標(r,θ)−で表されて良い。そのようなベクトル出力の例は、大きさ(傾斜値)と方向(最大傾斜線)の両方を有する静電場勾配又は電場である。前記検出器を個々のセグメント(領域)に分割し、かつ、前記セグメントからの出力を結合/処理することで、前記検出器に衝突する荷電粒子束からベクトル量を取り出すことが可能となる。
− 前項での操作は、前記試料上の2次元走査領域内の各位置のベクトル値を生成する。よってこのデータをまとめることで、前記試料の走査領域のベクトル場−つまり各点でのベクトル値を有する「マップ」−が生成される。
− 使用される積分操作は2次元である。なぜなら前記ベクトル場は2次元であるからである。この文脈では、2次元積分操作は、2つの独立する線(つまり1次元)積分を単に一緒にしたものと考えることはできない。そうではなく前記積分操作は、一の方向での積分が他の方向での積分結果へ同時に生じる効果を有する点で「畳み込まれる(convoluted)」(すなわち縮退している)。前記積分は、前記STCPM内での前記荷電粒子ビームの走査運動によって追跡/ラスタライズされた前記2次元走査領域にわたって実行される。この経路中の各点については、前項で説明したように位置に固有なベクトル値が存在する。
− 上述のベクトル場の2次元積分は、スカラーの結果(スカラー場)を生成する。
これらの点については以降でより詳細に説明する。
本発明による方法は多数の魅力的な利点を有する。そのような魅力的な利点とはたとえば以下のようなものである。
− 本発明の積分ベクトル場画像は、入力としてベクトル場を利用する。これは各点で大きさと方向を有する。この方向(位相)情報が存在することで、従来技術に係るイメージング方法によって生成されない深さや他の新たな画像の詳細が生成される。
− ベクトル場を積分することによって、本発明は、前記の検出された束内の荷電粒子を所定の角度範囲に限定することを必要とせずに画像コントラストを実現する。「従来の」STEMとは対照的に、たとえば本発明は原則的に、前記試料を通り抜ける荷電粒子束のすべてを検出しながらも、高コントラスト画像を供することができる。本発明は、前記束の様々な角度範囲を同時に「処理」することができるので、前記試料画像のフーリエスペクトル中の高周波成分と低周波成分の両方を同時に明らかにすることができる。
− 過去の点はSNRの劇的な改善を可能にする。これによりたとえば、放射線感受性を有する試料をはるかに有効に調査することが可能となる。それは以下のような理由のためである。
・ 所与の放射線照射量で、従来技術に係る方法よりも多くの情報を得ることができる。あるいはその代わりに、
・ 所与のデータ量を得るために必要とされる放射線照射量が、従来技術よりも低い。
− 当該方法は基本的に、相対的に豊富なコントラストを供するので、(より高い)分解能に対して(過剰な)コントラストを利用する現実的可能性がある。このため、得られた分解能は、前記試料に衝突する荷電粒子ビームの照射モードを変更する−たとえば入射ビーム開口角/収束角を調節し、充填錐体(所謂「軸上(on-axis)」)照射と中空錐体(所謂「軸外し(off-axis)」又は「環状」)照射とを切り換える−ことによって調節されて良い。前記試料に衝突する荷電粒子ビームの照射モードを変更することは実効的に、照射ビームの開口数(NA)を変化させるように機能する。たとえば二段階(又は多段階)調査を実行するように選ばれて良い。
・ たとえば前記試料に関して一般的な形状の情報を得るため、相対的に低い分解能(小さなNA)だが相対的に高いコントラストが最初は利用される。
・ その後さらなる試料分析のため、高分解能(大きなNA)で低いコントラストに切り換えられて良い。
前記衝突するビームの選ばれた照射モードに関する一般的注意事項として、上述の前記照射ビームの実効NAの調節に加えて、たとえば前記ビームの焦点/焦点外しを調節することで、前記ビームの焦点(交差点)は、試料内部の様々な深さに到達し得ることに留意して欲しい。これは、厚い試料を調査するときに特に興味深いと考えられる。様々な画像の一連の焦点が得られ、その後(数学的)線形逆問題を解くことによる前記試料の3次元再構成において用いられ得る。荷電粒子顕微鏡では、前記試料に衝突するビーム(の照射モード)は通常、「プローブ」と呼ばれる。
− 当該方法は、たとえばMTF/CTF補正のような手法の適用を必要とすることなく直接的に解釈可能なイメージング結果を生成し得る。たとえば上述のベクトル量が静電場勾配又は電場である場合、前記ベクトル量を2次元で積分することで、前記試料の静電場のマップが得られる。荷電粒子波が前記試料を通り抜ける(ことで弾性散乱される)際の位相シフトの大きさに直接比例する点で、前記静電場は、荷電粒子顕微鏡における直接的に解釈可能な/意味のある物理量である。
− 本発明による方法は、(校正/位置合わせに関する)複雑な画像取得手法−たとえばタイコグラフィやホログラフィのような手法によって表される手法−を必要としない。
本発明の上記及び他の態様について以降で詳述する。
本発明の特定の実施例では、使用される検出器は四分円を含むように実装され、かつ、前記ベクトル出力は、四分円の相補的な対間での差分信号を計算することによって生成される。
前記四分円を含む検出器は以下のように使用されて良い。前記検出器は、前記試料に衝突する粒子光学ビームの(外挿された)光軸に沿って設けられて良い。このとき、この(外挿された)光軸は、(前記試料(の背面)と対向するように配置される)前記四分円の中心共通角部で前記検出器と交差する。あるいはその代わりに、前記検出器は、中心孔(開口部)を有するように実装され、かつ、この孔は前記(外挿された)光軸を中心にとって良い。この軸に沿って伝播し、かつ、前記試料中で偏向を受けない荷電粒子は前記検出器の中心で衝突する。他方前記試料中で偏向(散乱)を受ける荷電粒子は、前記軸から外れて、前記検出器の四分円のうちの1つ(以上)へ向かう軌跡を有する。実際には、前記試料を通り抜けて前記試料から放出される荷電粒子束は、(擬似)錐体形状となるように広がる。このとき(前記光軸からの)平均偏向はとりわけ前記試料の構造/組成に依存する。前記検出器の各異なる四分円(からの検出された電流)間での差分信号を計算することによって、前記平均偏向の(基礎的な)定量化を行うことができる。なぜなら前記計算は、一の四分円に到達する前記束が、他の四分円に到達する前記束よりも相対的にどの程度多いのかを明らかにするからである。ここで、(たとえば)一の(対向する)四分円の対がX軸上に存在し、かつ、他の(対向する)四分円の対がY軸上に存在するように直交座標系(X,Y)が選ばれて良い。その場合、上述の差分計算を実行することで、(X,Y)座標で勾配ベクトルを得ることができる。このベクトルは、前記試料/検出器上で走査される経路中での各座標について所与の値(大きさ/方向)を有することで、(気象学において風の場がプロットされるのと同様に、所謂「針のマップ」としてプロットすることによって視覚化可能となる)ベクトル場を定める。このベクトル場は、本発明の新規な積分ベクトル場画像を得るように、XとYについて2次元的に積分されて良い。このささいではない積分操作を実行するのに適切な数学的アルゴリズムについては以降で詳細に説明する。
本発明のまさにこれまで論じられてきた実施例だけではなく他の実施例(たとえば以降で論じられる2つの実施例)においても、本発明において用いられるベクトルには、本発明の要点に影響を及ぼすことなく1つ以上の比例定数を乗じられて良いことに留意して欲しい。たとえばセグメント化された検出器上での(選ばれた領域に対する)(粒子)放射線スポットの位置自体はベクトルである。しかし前記検出器の動作原理に関して、前記ベクトルには特定の物理的意味−たとえば同じくベクトルである静電場の勾配(電場)−が与えられ得る。数学上、どのベクトルが2次元的に積分されても差異はない。つまり単純な(結果として得られる)比例定数によって一のベクトルから他のベクトルへ(一の積分結果から他の積分結果へ)変換され得る。
これまで論じた実施例の精緻化(すなわち「より高分解能」である実施例)とみなされ得る本発明の代替実施例では、以下のことが適用される。
− 使用される検出器は、複数の画素からなるアレイを含む画素化された検出器として実装される。
− 前記ベクトル出力は、画素値を比較することで前記検出器上の束の重心の位置を決定する段階と、前記検出器上の重心の座標位置を表す段階を含む処理を用いて生成される。
この実施例に関して、以下のことに留意して欲しい。
− 複数の画素からなる前記アレイ(マトリックス配列)はたとえば、たとえば直交グリッド(デカルト座標)又は複数の同心円からなる入れ子の組(極座標)に従って配列されて良い。係る配列はそれぞれ、デカルト座標又は極座標における上述の重心座標の表現に役立ち得る。
− 前記検出器の例には、たとえば1024×1024画素(の整数倍又は分数倍)を有するCMOS、CCD、及びSSPM(固体光電子増倍管)が含まれる。
− 前記アレイ中の検出器セグメント(画素)は一般的には、これまでの実施例における検出セグメント(四分円)よりもはるかに小さく、かつ、多数であるため、前記検出器セグメントは一般的に、上述の平均偏向−前記重心の位置によって表される−の特定をはるかに正確に行うことを可能にする。
− 画素が上述の粒子束の衝突によって励起される検出器領域(パッチ)内では、前記重心は、前記領域の中央の(相対的に局在化した)「明るいスポット」として及び/又は前記領域の計算された「中心」位置として現れる。
− 様々な励起された画素からの(電気信号の)値同士を比較し、かつ、前記値同士の比較から重心位置を決定することは、相対的に簡単なことである。これは自動(たとえばパターン/画像認識ソフトウエアの助けを借りる)及び/又は手動(たとえば前記検出器出力のレンダリングを視覚的に表示し、かつ、コンピュータマウス、スタイラス、又はタッチペンを用いてオペレータに重心位置を選ばせることを可能にすることによって)で行われて良い。
本発明のさらに他の実施例では、使用される検出器は位置に敏感な検出器(PSD)である。係る検出器はたとえば以下のように様々な形態で利用可能である。
− 放射線感受性を有する半導体シート(たとえばpinダイオード)が複数(たとえば4つ)の周辺電極に隣接する境界所謂「等方性センサ」。前記シートに衝突する放射線スポットは局在化した抵抗変化を引き起こす。その結果、前記電極内で各異なる電流が生じる。前記スポットの位置は、前記電流(のある部分)の差及び和を含む相対的に単純な幾何学方程式から導かれる。前記検出器は、電極の分布を利用することで、前記放射線感受性を有するシートを各異なる「電気検出領域」へ実効的に分割するので、係る検出器は、「セグメント化」されているとみなされる。
− たとえばこれまで述べた実施例で説明したような型の画素アレイを用い、かつ、写真測量法を用いて衝突する放射線スポットの位置を得る所謂「離散型センサ」。
いずれの場合でも、(たとえば(X,Y)座標における)スポット位置(の中心)は、本発明によって規定されているようにベクトルである。PSDに関する一般的な情報については非特許文献7を参照のこと。
本発明によって規定されている2次元積分に関しては、ベクトル場の積分(ベクトル解析の一部)は、使用されるセグメント化された検出器から取り出されるベクトル場を適切に処理するのに必要な基本的な数学的枠組みを与える。注目するベクトルが勾配である(積分可能性に関してはある単純化によって可能となると推定される)特定の場合では、勾配の場の積分のより特定の領域の方法が適用されて良い。取得された画像データに関してそのような勾配の場の積分を実行するのに用いられ得るアルゴリズムの例はたとえば、(光)マシンビジョン/フォトメトリックステレオに関する非特許文献8,9から得ることができる。
それに加えてベクトル解析に関するより一般的な性質についての情報は非特許文献10から得ることができる。
一旦本発明による2次元ベクトル場積分が実行されると、結果として得られる「生の」積分されたベクトル場画像は、必要な場合には、さらなる数学的操作を施すことによって後処理(つまり「仕上げ」)されて良い。そのような操作はたとえば、(i)フィルタリング(たとえば低パスフィルタリング、高パスフィルタリング、バンドパスフィルタリング)、(ii)開口角補正、(iii)デコンボリューション補正、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1つの操作を含んで良い。係る手法についてさらに説明する。
・(i)(a)低パスフィルタリング
低パスフィルタリングは、画像(のフーリエ変換)における低周波情報を改善するのに用いられ得るフィルタリング手法で、かつ、(たとえば)ガウシアンフィルタを用いて実現され得る。これが有用となり得る例は、原子又は原子列等の高周波情報をも含む画像中での内部(コンタクト)ポテンシャル又は試料の厚さに関心があるときである。
・(i)(b)高パスフィルタリング
高パスフィルタリングは、画像(のフーリエ変換)における高周波情報を改善するのに用いられ得るフィルタリング手法で、かつ、(たとえば)対応する元の画像から低パスフィルタリングされた画像を減じることによって実現され得る。これが有用となり得る状況の例は、内部(コンタクト)ポテンシャル、厚さ等の低周波数情報をも示す画像中で原子又は原子列を見ることに関心があるときである。
・(i)(c)バンドパスフィルタリング
バンドパスフィルタリングは、低パスフィルタと高パスフィルタの組み合わせとみなすことができる。バンドパスフィルタリングは、所与の範囲外の周波数を減衰/排除し、かつ、その範囲内に属する周波数を通過させる。
・(ii)開口角補正
開口角補正は、以下のような数学的関係式を助けを借りることによって表され得る洗練された補正である。



− FTはフーリエ変換を表し、IFTは逆フーリエ変換を表す。
− Filtは特殊な開口角補正フィルタ関数である。
− q=√(qx 2+qy 2)は周波数(フーリエ)領域における強度である。
− qmaxは、(前記試料上での)衝突ビームスポットの最高周波数である。qmaxは、qmax=α/λに従って前記ビームの開口角αに依存する。ここでλは前記衝突ビームの荷電粒子波長である。
− 因子Kは調節パラメータである。Kの値は(たとえば)経験的に得られて良い。たとえばK=1.5
基本的には、前記開口角補正の目的は、前記試料に衝突する粒子ビームのNAを許容することである。
・(iii)デコンボリューション補正
上で得られた生の画像IiVFは、次式のように交差相関として書くことができる(実施例7を参照のこと)。
IiVF=(1/2π)|Probe|2*Orig
− Origは元の画像をあらわす関数で、荷電粒子ビームが試料を通り抜けることで各走査位置で弾性散乱を起こす際の位相シフトを定量化する。
− Probeは、問題の前記試料を照射するのに用いられる照射構成/粒子光学ビームを表す関数である。Probeは一般的に起こりうる不完全性−たとえば収差、インコヒーレンス等−を含む。プローブ関数は、経験的に決定されて良いし、又は、理論的に予測/モデル化されても良い。
フーリエ領域では、これは次式のようになる。


バーは複素共役を表す。補正された元の画像を得るため(理想的にはOrig)、たとえば次式のようにデコンボリューション段階が適用されて良い。



Epsは調節因子である。
この段階を完了させるため、Probe関数の振幅はよくわかっていなければならない。この種類の明示的なデコンボリューション段階は、|Probe|2関数がディラックのデルタ関数によって近似され得る場合には必要ない。単純に次式が得られる。
IiVF=(1/2π)Orig
当業者は、一般的に、上記(i)-(iii)の手法が個別的又は組み合わせて適用されて良いことを理解する。
本発明の他の実施例では、上述した本発明の積分ベクトル場画像は、ラプラシアン操作を施すことによってさらに操作される。ラプラシアン演算子は、関数fに作用するときに2次元ユークリッド空間内において以下の形式をとる2回微分演算子である。



本願の場合、fは、これまでの実施例で述べた本発明によって生成される「生の」積分ベクトル場画像(iVF)又は後処理された積分ベクトル場画像(PiVF)のいずれかであって良い。このラプラシアン操作を実行することで、一部の特徴について、(他の画質を犠牲にすることで)改善された輪郭を得ることのできる画像(LiVF又はLPiVF)が生成される。たとえば以降の実施例3,4で与えられる例を参照のこと。ここで述べたラプラシアン操作の実効は、比例定数/スケール定数/補正定数−たとえば1−を乗じることによって実現されて良く、かつ、これはたとえば、ラプラシアン操作の結果を、ある物理的解釈と整合させるように行われ得ることに留意して欲しい。
本発明は、所謂微分位相コントラスト(DPC)法とは根源的に異なることに留意して欲しい。DPC法では、四分円検出器が、後述する図5Cと図5Dに図示されるスカラー差分画像−たとえばS1-S3画像又はS2-S4画像−を生成するのに用いられる。本発明とは異なり、DPC法は、係るスカラー画像からベクトル値を取り出さず、かつ、係るベクトル場をまとめない。従ってDPCは、本発明に固有な方向(位相)(及びそれに関する深さ)の情報を失う。DPC法はまた、本発明のベクトル積分を実行しないので、本発明の有利となる角度独立性とノイズ減少を実現しない。DPCは積分画像を生成しないので、上述した(i)-(iii)の後処理方法を許容しない。
本発明の実施例が実行可能なSTCPMの長手方向断面図を示している。 本発明による図1の対象物において利用可能なセグメント化された検出器(四分円検出器)の特別な実施例の正面図を示している。 本発明による図1の対象物において利用可能なセグメント化された検出器(四分円検出器)の特別な実施例の他の正面図を示している。 特に使用される検出器によって捕獲及び利用される荷電粒子束の角度範囲について、従来技術(左)と本願発明(右)との間での差異を表している。 A-Hは、従来技術及び本願発明の各異なる態様によるGaN結晶の様々な種類のSTEM画像を示している。 A-Dは、従来技術及び本願発明の各異なる態様によるアモルファスカーボンキャリア上に乳液の小球体の集まりを有する試料の様々な種類のSTEM画像を示している。 従来技術及び本願発明の各異なる態様による氷の母体中にミミズのヘモグロビンを含む極低温試料の様々な種類の電子顕微鏡画像を示している。 A-Cは、従来技術及び本願発明の各異なる態様によるグラフェン基板上にアモルファスカーボン不純物を有する試料の様々な種類のSTEM画像を示している。 本発明の特別な態様によって得られた図8A-図8Cと同一の試料の画像を示している。
ここで本発明について、典型的実施例と添付図面に基づいてより詳細に説明する。
図中、関連する場合には、対応部品は対応する参照符号を用いて示されて良い。一般的には、図は正しい縮尺ではないことに留意して欲しい。
図1は、本発明との併用に役立つSTCPM1の実施例の概略図である。図中、真空筐体2はSTCPMを封止する。この場合STCPMはSTEM(つまり走査機能を備えるTEM)である。図示されたSTEMでは、電子源4(たとえばショットキー銃)が、電子光学照射体6を通り抜ける電子ビームを生成する。電子光学照射体6は、(実質的に平坦な)試料Sの選ばれた領域に電子ビームを案内/集束する役割を果たす。この照射体6は、電子光学軸8を有し、かつ、一般的には様々な静電/磁気レンズ、偏向子、補正器(たとえばスティグメータ)等を有する。典型的には照射体6は収束系をも有して良い。
試料Sは、設置装置(台)12によって多重自由度で位置設定可能な試料ホルダ10上に保持されている。たとえば試料ホルダ10は、(とりわけ)XY平面(図示された直交座標系を参照のこと)で移動可能な指部を有して良い。係る移動は、軸8に沿って(Z方向に)進行する電子ビームによる試料Sの様々な領域の照射/撮像/検査(及び/又はビーム走査の代わりに走査運動を実行すること)を可能にする。任意の冷却装置14は、試料ホルダ10と緊密に熱的接触をし、かつ、たとえば循環極低温冷媒を用いて所望の低温を実現及び維持することによって試料ホルダ10を極低温に維持することが可能である。
軸8に沿って進行する集束電子ビームは、様々な種類の「誘導」放射線−(たとえば)2次電子、後方散乱電子、X線、及び光放射線(カソードルミネッセンス)を含む−が試料Sから放出されるように試料Sと相互作用する。必要な場合には、これらの放射線の種類のうちの1種類以上が検出器22によって検出されて良い。検出器22はたとえば、結合されたシンチレータ/光電子増倍管又はEDX(エネルギー分散型X線分光)検出器であって良い。しかし本発明における主要な関心は、試料を通り抜け(通過し)、試料から放出され、かつ、(実質的には多少偏向/散乱するが)軸8に沿って伝播し続ける電子である。係る透過電子は結像系(組み合わせられた対物/投影レンズ)24へ入射する。結像系24は一般的に、様々な静電/磁気レンズ、偏向子、補正器(たとえばスティグメータ)等を有する。通常の(非走査)TEMモードでは、この結像系24は、透過電子を蛍光スクリーン26へ集束させて良い。蛍光スクリーン26は、必要な場合には、(矢印28によって概略的に示されているように)軸8から外れるように引き出され/引き込められてよい。試料S(の一部)の画像はスクリーン26上で結像系24によって生成される。これは、壁2の適切な部分に設けられたビューポート30を介して見ることができる。スクリーン26用の引き込み機構はたとえば、基本的には機械及び/又は電気によるものであって良い(図示されていない)。
スクリーン26上で画像を閲覧する代わりとして、特にSTEMモードでは電子検出器Dが利用されて良い。このため、アジャスタレンズ24’が、結像系24から放出される電子の焦点を移動させ、かつ、その電子を(引っ込められたスクリーン26の面ではなく)検出器Dへ再案内/集束させるように機能して良い(上を参照のこと)。検出器Dでは、電子は、制御装置50によって処理され、かつ、表示装置(図示されていない)−たとえばフラットパネルディスプレイ−上に表示される画像(回折像)を生成して良い。たとえばSTEMモードでは、検出器Dからの出力は、試料S上の走査ビーム位置(X,Y)の関数として記録され、かつ、X,Yの関数としての検出器出力のマップである画像が再構成されて良い。当業者は、これらの様々な可能性について非常によく知っているので、ここではこれ以上の説明は不要である。
制御装置(コンピュータプロセッサ)50は、制御ライン(バス)50’を介して様々な図示された部品に接続されることに留意して欲しい。この制御装置50は、様々な機能−たとえば作用の同期、設定点の提供、信号処理、計算の実行、及び表示装置(図示されていない)上でのメッセージ/情報の表示−を供して良い。言うまでもないことだが、(概略的に図示された)制御装置50は、(部分的に)筐体2の内部又は外部に存在し、かつ、必要に応じて単一構造又は複合構造を有して良い。当業者は、筐体2の内部が厳密な真空状態に維持される必要がないことを理解する。たとえば所謂「環境制御型TEM」では、所与の気体のバックグラウンド環境圧力が、故意に筐体2の内部に導入/維持される。
本発明の文脈においては、以下の追加点についてさらに説明する。
− 検出器Dはセグメント化された検出器として実装される。前記セグメント化された検出器はたとえば、四分円センサ、画素化されたCOMS/CCD/SSPM検出器であって良い。係る検出器の具体的実施例の正面図が図2及び図3において示されている。係る検出器の具体的実施例については以降で論じる。
− 粒子光学軸8に沿って伝播する荷電粒子ビームが、試料S中で如何なる散乱/偏向を起こすことなく試料Sを通り抜ける場合、その荷電粒子ビームは、検出器Dの中心/原点O上で(実質的に)対称的に衝突し、かつ、(基本的に)「ゼロ」の読み取りを与える。この状況は、点Oを原点とするデカルト座標軸X,Yを有する図2及び図3においてより詳細に示される。点Oは、C’を重心とする(ゴースト)荷電粒子ビームの衝突跡B’を概略的に表す点線の円の中心となる。その際以下のようになる。
・ 図2では、この跡B’は、検出四分円(電極)Q1、Q2、Q3、Q4上で対称的に重なっている。これらの四分円からの検出信号(電気信号)がそれぞれS1、S2、S3、S4と表される場合、この状況は、四分円の対向する対間でゼロ差分信号S1-S3とS2-S4を与える。
・ (たとえば場合によっては重ねられたシンチレーション層を備えるCMOS内において)検出画素Pの直交するマトリックスを表す図3では、前記画素のマトリックスの選ばれた原点Oと重心C’との間にはずれが存在しない。
− 他方荷電粒子ビームが試料S中で散乱/偏向を起こす場合、その荷電粒子ビームは、検出器D上の原点Oから変位した位置に到達する。この文脈では、図2と図3は、もはやOを中心にとらない重心Cを有するビーム跡Bを示している。Oに対する地点Cの位置は、大きさ(長さ)と方向(たとえばX軸に対する指示角)を有するベクトルVを定める。このベクトルVは、地点Cの座標(Xc,Yc)で表されて良い。これは以下のようにして取り出すことができる。
・ 図2では、次式を用いてXc,Ycを(大雑把に)推定することができる。
Xc〜(S1-S3)/(S1+S2+S3+S4)、Yc〜(S2-S4)/(S1+S2+S3+S4) (1)
・ 図3では、様々な画素Pからの出力信号を検査することによってXc,Ycの値を導くことができる。なぜならビーム跡Bが衝突する画素Pは、跡Bの外部の画素Pとは異なる出力信号(たとえば電気抵抗、電圧、又は電流)を与えるからである。よってCの位置は、外部信号を与える特定の画素の座標を知ることによって直接的に導くことができるし、又は、Bが衝突する画素Pのクラスタの重心を数学的に計算することによって若しくはたとえば両手法を組み合わせたハイブリッド手法間接的に決定することもできる。
当業者は、ビーム跡Bのサイズは、たとえば図1のSTCPMの所謂「カメラ長」を調節することによって変更可能であることを理解する。
− 入射荷電粒子ビームが、2次元走査経路(領域)を追跡するように試料S全体にわたって走査されることで、前項で述べた方法は、前記走査経路に沿って各座標位置のVの値を得るのに用いられて良い。これにより、試料S上の走査位置の関数としてベクトルVの「マップ」をまとめることが可能となる。これは結局数学の領域である(ベクトルVに、たとえば静電場ベクトルのような(比例する)物理的意味が与えられる点では物理の領域でもある)。
− これまでの段階の結果として得られるベクトル場は、本発明による積分ベクトル場画像を得るように2次元的に積分されて良い。本発明のこの態様は、次の実施例(STEMについて具体的に言及しているが、汎用STCPMにも適用可能である)でより詳細に説明する。
[勾配の積分]
上述したように、各座標地点(x,y)での測定されたベクトル場(チルダ)E(x,y)=((チルダ)E(x,y),(チルダ)E(x,y))Tは(たとえば)、次式を用いることによって検出器セグメントの差異から各座標地点(x,y)から得ることができる。



ここで簡明を期すため、スカラー場(チルダ)Ex、(チルダ)Ey、及びSi=1,..,4における空間指標付け(x,y)は省略される。添え字Tは行列の転置を表す。
(チルダ)Eが、撮像された試料の関心領域内での実際の電場Eの測定値であることは、STEMコントラスト情報の理論から既知である。この測定は、光学系、検出器、電子機器等の不完全性に起因するノイズや信号のゆがみによって妨害されることが避けられない。基礎的な電磁気学から、静電ポテンシャル関数φ(x,y)(以降ではポテンシャルマップとも呼ばれる)は次式によって電場と関連づけられる。
E=-∇φ (3)
ここでの目標は、試料の各被走査位置でのポテンシャルマップを得ることである。しかしノイズを含む形式(チルダ)Eにおける測定された電場は「積分可能」でない可能性が高い(つまり勾配演算子によって滑らかなポテンシャル関数から得ることができない)。ポテンシャルマップの推定(ハット)φを探索することができる場合、ノイズを含む測定(チルダ)Eは、フィッティング問題として定式化されて良い。その結果、次式で定義される目的関数Jが最小となる。




基本的には滑らかなポテンシャル関数から導かれる勾配の測定値に最も良く適合するもの−最小自乗法において−を探すことになる。
探索されたJの最小値となるには、オイラー−ラグランジュの式を満足しなければならない。


上式は次式のように展開することができる。



最終的には次式のようになる。


これは、(ハット)φを得るために解く必要のあるポアソン方程式である。
[ポアソン方程式の解法]
(7)式の導関数の有限差分を用いることによって、次式が得られる。


ここでΔは所謂グリッドステップサイズである(ここではx方向とy方向とで等しいと仮定する)。(8)式の右辺の量は、測定からわかり、かつ、表式を単純にするためにρi,jの項でまとめられる。


再定式化後、次式のようになる。
φi-1,ji,j-1-4φi,ji,j+1i+1,j2ρi,j (10)
i=2,…,N-1、j=2,…,M-1で、(N,M)は再構成される画像の大きさである。
(10)式の系は次式のような行列となる。
Lφ=ρ (11)
φとρはそれぞれ、ポテンシャルマップと測定値のベクトル形式を表す(これらのベクトルのサイズはN×Mで、画像のサイズである)。所謂ラプラシアン行列Lは、(N×M)2の大きさを有するが、かなり疎であり、上で用いられた離散化法の「2次的な項(fringe)を有する三重対角」と呼ばれる形式を有する。所謂ディリクレとノイマンの境界条件が、ポテンシャルマップの端部での(ハット)φの値を修正するのに広く用いられている。
(11)の一次元系は、典型的なSTEM画像では非常に大きくなりがちで、かつ、一般的には数値解法−たとえば双共役勾配法−を用いて解かれる。同様の方法はこれまで、たとえば非特許文献11で論じられているようにトポグラフィ再構成問題において用いられてきた。他の形式の導関数の離散化がこれまでに述べた方法において用いられて良いし、かつ、全体的な方法はポアソン方程式の解法として従来知られていることに留意して欲しい。係る方法の具体例は、所謂多重グリッドポアソン方程式の解法である。多重グリッドポアソン方程式の解法は、粗いメッシュ/グリッドから始まって精緻なメッシュ/グリッドとなるようにポアソン方程式を数値的に解くことで、積分速度を向上させるのに最適化されている。
[基底関数の再構成]
(7)式を解く他の方法は、非特許文献8に記載されている所謂Frankot-Chellapaアルゴリズムを用いることである。この方法を現在の問題に適合させることで、導関数を空間積分可能なフーリエ基底関数へ射影することによってポテンシャルマップを再構成することができる。実際には、これは、次式を得るように(7)式の両辺にフーリエ変換FT(.)を適用することによって行われる。



上式から、逆フーリエ変換(IFT)によって(ハット)φを得ることができる。


順変換及び逆変換は、所謂離散フーリエ変換(DFT)を用いて実装されて良い。この場合、仮定される境界条件は周期的である。あるいはその代わりに、ディリクレの境界条件(φ=0で境界となる)の利用に対応する所謂離散正弦変換(DST)が用いられて良い。またノイマンの境界条件(∇φ・n=0で境界となる。Nは所与の境界位置での法線ベクトルである。)の利用に対応する所謂離散余弦変換(DCT)が用いられても良い。
[一般化及び改良された解法]
一般的には十分機能するが、ポアソン方程式の解法と基底関数法は、データ中の鋭い不連続性(外れ値)を考慮する方法によってさらに改善され得る。その目的のため、目的関数Jは、各異なる残留誤差R((4)式では、残留誤差はR(ν)=||ν||2である)を組み入れるように修正されて良い。たとえば所謂Lpノルムに基づく目的関数を含む2未満の指数が用いられて良い。



残留誤差はまた、所謂M推定量(ロバスト推定量の広く用いられているクラス)において一般的に用いられる関数の組から選ばれても良い。この場合、Rは、たとえば所謂フーバー、コーシー、及びタッキー関数のような関数から選ばれて良い。繰り返しになるが、目的関数のこの修正からの所望の結果は、過剰に滑らかな再構成を回避し、かつ、データ組中の実際の/物理的な不連続性をより正確に考慮するためである。これを実現する他の方法は、Jにおける異方的重み付け関数wxとwyを用いることである。


ここで重み付け関数は残留誤差に依存する。


上式は、(k-1)回の反復時での式である。
非特許文献9では、フォトメトリックステレオ画像からの深さ再構成の問題について、係る異方的重み−二値又は連続のいずれかであって良い−を利用することで、深さマップ回復処理における結果が改善される。
他の方法では、(ハット)φを解く処理の間に不連続性を保持しながらデータの平滑化の助けを借りることによって、ベクトル場∇φと(チルダ)Eに拡散ベクトルDが適用されても良い。その結果、(4)式は次式のように修正される。


最終的には、規則化法が、解空間を制限するのに用いられて良い。これは一般的に、目的基準Jの定式化においてペナルティ関数を加えることによって行われる。目的基準Jとはたとえば以下のようなものである。



規則化関数f(∇φ)は、反復的解法の収束を安定化させる目的でφについて様々な制約を課すのに用いられて良い。規則化関数f(∇φ)はまた、探索されたポテンシャル場に関する従来の知見又は他の試料/イメージング条件を最適化プロセスに組み込むのに用いられても良い。
図4は、特に使用される検出器Dによって捕獲及び使用される荷電粒子束の角度範囲に関する従来技術(左)と本願発明(右)との間でのある差異を(長手断面図で)示している。左右いずれの場合でも、以下の事項が記載されている。
− 粒子光軸8、試料S、及び検出器D(図1を参照のこと)
− 軸8に沿って試料S(の上面)へ伝播する荷電粒子の入射ビームIBが示されている。このビームは、粒子の収束ビーム(充填錐体)となるように、アパーチャAPと粒子光学対物レンズOLを通り抜けるコリメートされたビームとして表されている。
− 試料Sを通り抜けて試料S(の下面)から放出されたビームIBの荷電粒子を含む出力束OF。ここでは出力束OFは、粒子の発散錐体として図示されている、
ここで以下のことに留意して欲しい。
(A)[従来技術]
左側の図では、様々な種類の検出器Dが概略的に表されている。具体的には以下の通りである。
− 明視野(BF)検出器は、軸8に近接するOFの中心成分しか捕獲しない。
− 環状暗視野(ADF)検出器は、軸8から離れたOFの制限された環体(中空錐体)しか捕獲しない。
− ADF検出器素子の周辺の外側に位置する図示されていないHAADF検出器素子へ向かって進むOFのさらに扇形に広がった高角度ADF(HAADF)成分も図示されている。
これらの検出法の各々が、OF中に存在する様々な角度範囲(角度拡がり)相対的に小さな一部だけの検査に限定されることは明白である。
(B)[本願発明]
対照的に右側の図では、本質的にOFの全角度拡がりは、検出器D(ここでは四分円として図示されており、2つの四分円Q1とQ3が表されている。)によって捕獲され使用される。点線は、束OF’の非偏向/非散乱の「参照」錐体を表している。他方実線は、(たとえば図2のビーム跡Bを生じさせるような)OF’’の偏向/散乱された錐体を表している。束の錐体OF’,OF’’の散乱角がここでは強調されていることに留意して欲しい。散乱角は典型的には数mradのオーダーである。
通常出力束OF[状況(B)]のそのような大きな角度範囲を捕獲する結果、コントラストのない画像が生成される。しかしこれは、任意の所与の時刻でOFの大部分を破棄する点で非常に無駄である。しかし本発明は、本願発明者によって表されるベクトル場積分処理のため、コントラストの豊富な画像を生成するのに、状況(B)において非常に効率的な収集シナリオを利用することが可能となる。
図5A-図5Gは、従来技術及び本願発明の各異なる態様によるGaN結晶の様々な種類のSTEM画像を示している。すべての場合において図示された視野は約4.39nm×4.39nmである。より詳細には個々の画像はさらに以下のように説明され得る。
・図5A:これは、たとえば図4の左側に示された装置(の一の部分)に係る暗視野(BF)像である。対角線上に配列した小塊の反復構造を見ることができる。しかしさらなる詳細を確実に認識することはできない。
・図5B:これは、たとえば図4の左側に示された装置(の他の部分)に係る高角度環状暗視野(HAADF)画像である。もう一度繰り返すが、対角線上に配列した小塊の反復構造を見ることができる。しかしさらなる詳細を確実に認識することはできない。
・図5C及び図5D:これらの画像は、たとえば図2の右側及び図2に図示された装置内で四分円検出器を用いた画像である。これらの画像は「差分」又は「勾配」画像である。図5CはS1-S3信号に基づくスカラー画像を示している。図5DはS2-S4信号に基づく対応スカラー画像を示している。これらの画像では、図5Aと図5Bの小塊は、ある程度構造を示すようになり始めるが、依然としてまだはっきりとしない。
・図5E:ここでは図5C及び図5Dの基礎となるデータが、ベクトル(V)のX成分及びY成分に関するものとして処理されたことで、ベクトル場を構築することが可能となった(上の(1)式を参照のこと)。続いてこのベクトル場には、本発明による2次元積分処理が施される。それにより本質的にGaN試料上の静電ポテンシャルのマップである積分ベクトル場(iVF)が生成される。この画像を注意深く検討することで、「小塊」と呼ばれるものが実際に事実上二元になっていることがわかった。すなわち各小塊は相対的に小さな部分(N原子)のそばに相対的に大きな部分(Ga原子)を有している。この画像では、図5A-図5Dとは異なり深さが認識できることに特に留意して欲しい。それに加えて、画像の左上は、図5A-図5Dには存在しない基板損傷(ビーム滞在に起因する放射線損傷)を明らかにしている。
・図5F:ここで図5Eの画像は、開口角補正が施されることによって「浄化」(処理)された。その結果、処理済みiVF(PiVF)画像が得られた。この画像中では、個々のGa原子とN原子はより明確に視認可能である。また構造が事実上繰り返されていることも明確に視認できる。
− 一部の対角線に沿って、N原子がそのN原子に係るGa原子の下に配置されている。
− 他の(隣接する)対角線に沿って、N原子が、そのN原子に係るGa原子の右に配置されている。
図5Eの画像上で実行される開口角補正はその深さを改善するように機能する。画像の左上での基板損傷はさらに明確になっている。
・図5G:この画像は、(LiVF画像を生成するための)ラプラシアン操作を施した後の図5Eの対象物を示し、本質的には、GaN試料における電荷密度のマップを描画している。これまでの2つの画像と比較すると、以下のことがわかる。
− 深さを認識できなくなる。
− N原子は図5Gにおいては明瞭になるが、Ga原子の形態は拡散してしまっている。
− 図5E,5Fの左上隅で視認可能な試料の損傷は図5Gでは視認できない。
・図5H:この画像は、(LPiVF画像を生成するための)ラプラシアン操作を施した後の図5Fの対象物を示している。基礎となるデータは、ラプラシアン操作を実行する前に処理/フィルタリングされるので、その画像は、図5Gの画像よりも明確になる傾向を示す。
図6A-図6Dは、従来技術及び本願発明の各異なる態様によるアモルファスカーボンキャリア上に乳液の小球体の集まりを有する試料の様々な種類のSTEM画像を示している。すべての場合において図示された視野は約198.85nm×198.85nmである。より詳細には、個々の画像についてはさらに以下のことがわかる。
・図6A:これは、たとえば図4の左側に示されたような装置(の一部)に係る明視野(BF)画像である。乳液の小球体は、平坦で拡散した小塊に見える。
・図6B:これは、本発明による積分ベクトル場(iVF)画像である。この画像は、小球体の視認可能な周縁部が暗くなることで、顕著な深さを有している。それにより円盤ではなく回転楕円体であることが明らかになった。
・図6C:ここでは図6CのiVF画像は、高パスフィルタリング操作が施されることによって「浄化」処理された。その結果、はるかに深さが明確になった処理済みiVF(PiVF)画像が得られる。
・図6D:この画像は、ラプラシアン操作が施された後の図6Bの対象物を示し、かつ、本質的には試料
中での電荷密度マップを描画している。小球の概形は、図6AのBF画像と比較して改善されている。しかし図6Bと図6Cの深さ態様は失われた。
図7は、従来技術及び本願発明の各異なる態様による氷の母体中にミミズのヘモグロビン(分子の形態は6回対称性を有する)を含む極低温試料の様々な種類の電子顕微鏡画像を示している。より詳細には個々の画像についてはさらに以下のことがわかる。
・左:従来の(非走査)TEM(CTEM)画像で、(上から下へ)それぞれ0.8μm、1.2μm、2.0μm、2.4μm、及び4.9μmのデフォーカス値を有する一連の画像を表している。使用されているデフォーカス値のうち最大のものはこの一連の画像中で最高のコントラストを与えていることに留意して欲しい。この一連の画像中の各画像の視野は約45nm×45nmである。
・右:本発明による積分ベクトル場(iVF)画像。このiVF画像は、任意のCTEM画像よりもはるかに詳細に描画している。この場合での視野は約30nm×30nmである。合計電子照射量はいずれの場合でも同一(10e/Å2)であることに留意して欲しい。この照射量は、極低温条件下で生体試料を撮像するために一般的に与えられる値としては極端に低い。本発明とは別に、STEMに基づく手法は、そのような低照射量条件下で有意な信号を示さない。
図8A-図8Cは、従来技術及び本願発明の各異なる態様によるグラフェン基板上にアモルファスカーボン不純物を有する試料の様々な種類のSTEM画像を示している。より詳細には個々の画像についてはさらに以下のことがわかる。
・図8A:これは、たとえば図4の左側に示された装置(の一部)に係る環状明視野(ABF)画像である。この画像は相対的に平坦でぼやけている。
・図8B:この画像は、たとえば図4の右側及び図2に図示された装置内で四分円検出器を用いることによって得られた。この画像は、S2-S4信号に基づく「差分」すなわち「勾配」画像である。この画像は、図8Aよりも深さと詳細さに関して上回っている。
・図8C:これは、本発明による積分ベクトル場(iVF)画像である。この画像は顕著な深さと詳細さを有する。
位置に敏感な検出器(PSD)を用いて、薄い非磁性試料を測定することによって、検出器面での電子強度分布ID((ベクトル)k、(ベクトル)rp)の質量中心(COM)の成分としてベクトル場成分が(定義により)得られる。



ここで、(ベクトル)rpは、試料に衝突するプローブ(集束電子ビーム)の位置を表し、かつ、(ベクトル)k=(kx,ky)は検出器面内の座標である。完全なベクトル場画像は次式のように生成され得る。



ここで、(ベクトル)x0と(ベクトル)y0は2つの垂直な方向での単位ベクトルである。検出器での電子強度分布は次式によって与えられる。


ここで、ψin((ベクトル)r-(ベクトル)rp)は位置(ベクトル)rpで試料に照射される衝突電子波(つまりプローブ)で、かつ、exp{iφ((ベクトル)r))}は試料の透過関数である。位相φ((ベクトル)r))は、試料の内部静電ポテンシャル場に比例する。φ((ベクトル)r))のイメージングは、電子顕微鏡イメージング手法の究極の目標である。(19)式は次式のように書き直すことができる。


ここで、(ベクトル)E((ベクトル)r))=-∇φ((ベクトル)r))は、試料の内部電場−これは試料の静電場の負の勾配である−、かつ、演算子「★」は交差相関を表している。得られたベクトル場画像(ベクトル)ICOM((ベクトル)rp)が試料の内部電場(ベクトル)E((ベクトル)r))を表すことは明らかである。その成分は上の(18)式で説明した。次に本発明による積分段階が以下のように実行される。


任意の経路lを用いることが許されている。その理由は、非磁性試料の場合、唯一の場は電場であり、これは保存ベクトル場であるからである。これは数値的に多くの方法によって実行可能である(上を参照のこと)。これは、(22)式へ(21)式を導入することによって解析的に行うことができる。その結果次式が得られる。


この提案された積分段階によって、φ((ベクトル)r))を直接的に表すスカラー画像−これは電子顕微鏡において好ましい対象である−が得られる。
CPM画像は通常、たとえば照射量制限に起因してかなりノイズが入ってしまう。上述(たとえば図5C、図5D、及び図8B参照)の「差分画像」すなわち「勾配画像」を得るように2つのノイズが入った信号を差し引くことで、係るノイズ量が増大する傾向にある。その結果、相対的にSNRは低くなる。この効果を緩和するため、diVF(又はdPiVF)画像を得るように、上述のiVF又はPiVFを(一旦)微分することによって「改善された」差分/勾配画像を得ることができる。そのようにする際、本質的に、ポテンシャルφが測定された電場(チルダ)Eのノイズ成分に適合させる場合には、次式を最小にするようにFrankot-Chelappaアルゴリズム(上を参照のこと)が利用されて良い。
この段階では、自由度の数(つまり画素数)が1/2に減少する(2つの画像が1つの画像となるように結合される)ことからわかるように、ノイズは抑制される。結果として得られたポテンシャルが微分されるとき、自由度の数は同一のままであるので、diVF(又はdPiVF)画像のノイズは元の画像のノイズよりも少なくなる。除去されたノイズの一部は、スカラーポテンシャルの勾配として書き表せない部分である。
上述の一回微分(∇:ナブラ)は、たとえばデカルト座標のX,Y成分を有するベクトルの結果を生成する。
この手法の例が図9に示されている。これは、図8A-図8C及び実施例6と同一の試料に関する。図9は、ここで述べたYについて偏微分されたdiVF(Y)を示し、かつ、図8Bの改善版に相当する(詳細がかなり明確になっている)。
1 荷電粒子顕微鏡
2 真空筐体
4 電子源
6 電子光学照射体
S 試料
8 電子光学軸
10 試料ホルダ
12 設置装置(台)
14 冷却装置
22 検出器
24 結像系
26 蛍光スクリーン
28 矢印
D 電子検出器
24’ アジャスタレンズ
50 制御装置
50’ 制御ライン(バス)

Claims (11)

  1. 走査透過型荷電粒子顕微鏡内で試料を検査する方法であって:
    前記試料に照射するため、線源から照射体を通るように導かれる荷電粒子ビームを提供する段階と、
    前記試料を横断する荷電粒子束を検出する検出器を提供する段階であって、前記検出器は、複数の検出セグメントを有するように構成される、段階と、
    前記試料の表面にわたって前記ビームを走査させ走査位置の関数として前記検出器の出力を記録することで、前記試料の荷電粒子画像を蓄積する段階と、
    前記検出器の異なるセグメントからの信号を結合し各走査位置での前記検出器からのベクトル出力を生成するとともに、このデータをまとめることでベクトル場を得る段階と、
    前記ベクトル場に2次元積分操作を施すことにより、前記ベクトル場を数学的に処理これにより、スカラー場である積分ベクトル場画像を生成する段階と、
    を有することを特徴とする方法。
  2. 前記検出器は、四分円を含むように構成され
    前記ベクトル出力は、四分円の相補的な組の間で差分信号を計算することにより、生成される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記検出器、画素アレイを含む画素化検出器として構成され、
    前記ベクトル出力は、
    画素値を比較することで前記検出器上の前記束の重心の位置を決定する段階、
    前記検出器上の前記重心の座標位置を表す段階、
    を含む処理を用いて生成される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記検出器は、位置感応検出器である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記積分ベクトル場画像フィルタリング、開口角補正、デコンボリューション補正、及び上記の組み合わせを含む群から選ばれる少なくとも1つの操作を実施することにより、後処理される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記積分ベクトル場画像、ラプラシアン操作を実施することにより、さらに操作される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記積分ベクトル画像、一回微分操作を実施することにより、さらに操作される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記ベクトル場(チルダ)Eの数学的処理、デカルト座標(x,y)で、前記試料上での前記ビームの走査経路に沿って、次式
    で定義される目的関数の関数最小化を含むフィッティング問題としてポテンシャルφの推定値(ハット)φを見出す段階を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記関数最小化、ポアソン解法、基底関数の再構成、Lpノルムに基づく目的関数を用いた残差の最小化、M推定量(エスティメータ)を用いた残差の最小化、異方的重み付け、拡散テンソルの適用、規則化関数の適用、およびこれらの組み合わせを含む群から選ばれる少なくとも1つの手法の支援により実現される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記荷電粒子が電子である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 走査透過型荷電粒子顕微鏡であって:
    試料を保持する試料ホルダと、
    荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源と、
    前記試料照射されるように前記ビームを誘導する照射体と、
    前記照射に応じて前記試料を横断する荷電粒子束を検出する検出器であって、複数の検出セグメントを有するように構成された検出器と、
    前記ビームを前記試料の表面に対して走査運動させる走査手段と、
    走査位置の関数として前記検出器の出力を記録することで、前記試料の荷電粒子画像を蓄積する制御装置と、
    を有し、
    前記制御装置は、
    各走査位置前記検出器からのベクトル出力を生成するように前記検出器の異なるセグメントからの信号を結合しこのデータをまとめることでベクトル場を得るとともに、
    前記ベクトル場に2次元積分操作を施すことにより、前記ベクトル場を数学的に処理これにより、スカラー場である積分ベクトル場画像を生成する
    という追加の動作を実行するように構成される、走査透過型荷電粒子顕微鏡。
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