JP2023007629A - 深溝玉軸受用冠型樹脂保持器 - Google Patents

深溝玉軸受用冠型樹脂保持器 Download PDF

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通之 上地
Michiyuki Uechi
康弘 楢崎
Yasuhiro Narasaki
将吾 深田
Shogo Fukada
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Abstract

【課題】高剛性材料からなる深溝玉軸受用冠型樹脂保持器において、振れ回りによる異音の発生等を防止し、深溝玉軸受に前記保持器を組み込む際における前記保持器の白化及び破損を抑制する。【解決手段】保持器1の樹脂材料は、曲げ弾性率が8,000MPa以上である。ボール径Dに対するポケット開口径Aの比A/Dは、0.89≦A/D<0.93、基部2の軸方向一側面2Aに対する弾性片3の軸方向高さHtと、ポケットPの中心に対する弾性片3の軸方向高さHpは、Hp×0.6≦Ht≦Hpである。弾性片3の内径側には、基部2の内周面2Cを延長した面よりも外径方向Kに位置する切欠部Fがある。切欠部Fは、周方向から見て四角形状である。切欠部Fの径方向長さW1は、基部2の径方向長さをWとして、W×0.1≦W1≦W×0.5で、切欠部Fの軸方向長さH1は、Ht×0.6≦H1≦Hpである。【選択図】図2B

Description

本発明は、深溝玉軸受の転動体であるボールが互いに接触しないように前記ボールを等間隔に分離した状態に保持する、合成樹脂製の冠型保持器に関する。
円環状基部(特許文献1では「基体部」、特許文献2では「リング」、特許文献3では「主部」)と、前記基部の軸方向一側面から軸方向へ突出する複数の片持ち状弾性片(特許文献1及び2では「爪部」、特許文献3では「弾性片」)とを備え、周方向に隣り合う前記弾性片間の球面状のポケットに転動体であるボールを保持する深溝玉軸受用冠型樹脂保持器がある(例えば、特許文献1ないし3参照)。
特許文献1の発明は、特に高温での高剛性が要求される玉軸受用冠型樹脂保持器において、従来の前記保持器における片持ち状弾性片の剛性不足により、前記保持器を組み込んだ玉軸受の回転作動中に前記弾性片の変形が生じて保持器抜けやポケット面の磨耗が発生する恐れがあることに着目している。特許文献1の発明は、冠型樹脂保持器の樹脂材料の曲げ弾性率に応じて、ボールの直径に対するボールを挿入するポケットの開口部の開口径の比である開口比(特許文献1の図1のk)を選定しており、前記曲げ弾性率が大きい場合に、前記開口比を大きくしている。例えば、前記曲げ弾性率が8000MPa以上である場合に、前記開口比を、94±1%にしている(特許文献1の[0007])。
特許文献2の発明は、玉軸受に従来形状の冠型樹脂保持器を組み込む際に、前記保持器の片持ち状弾性片の内径側がボールに当たることにより(特許文献2の図13)、前記保持器が外側に倒れにくくなって余分な挿入力が必要になるため、前記弾性片の根元の白化、破損の原因となることに着目している。特許文献2の発明は、軸受に冠型樹脂保持器を組み込む際における片持ち状弾性片の内径側とボールとの干渉をなくして前記保持器が外側に倒れる動きを妨げないようにするべく、前記弾性片におけるポケットの内周面の内径側の一部を平面としている(特許文献2の[0013]及び図2-4の平面12a)。
特許文献3の発明は、玉軸受を組み込んだ各種回転機械装置の性能が向上し、玉軸受及び冠型樹脂保持器の回転速度が高くなった結果、前記保持器に加わる遠心力が大きくなり、従来の前記保持器における片持ち状弾性片の弾性変形量が無視できなくなることに着目している。特許文献3の発明は、片持ち状弾性片の先端部の軽量化を図り、前記弾性片の先端部に加わる遠心力及び加減速時に加わる円周方向の力を低減して前記弾性片を弾性変形しにくくすべく、前記弾性片の径方向に関する肉厚を基部側よりも先端側を小さくしている(特許文献3の[0011])。
特開2004-156687号公報 特開2017-101729号公報 特開2002-147463号公報
特許文献1の発明の玉軸受用冠型樹脂保持器のように冠型樹脂保持器の樹脂材料の曲げ弾性率が大きい場合に、ボールの直径に対するボールを挿入するポケットの開口部の開口径の比である開口比を大きくすると、ボールと保持器の隙間が大きくなる。それにより、保持器の振れ回りによって回転中に異音が発生したり、保持器と深溝玉軸受の外輪若しくは内輪又はシールとの干渉によって前記軸受が昇温したり摩耗するおそれがある。
特許文献2及び3の発明の玉軸受用冠型樹脂保持器は、前記開口比以外の形状の工夫はあるが、一般的な樹脂材料では対応が困難な高速回転環境下で使用するために高剛性材料で成形された深溝玉軸受用冠型樹脂保持器において、深溝玉軸受に前記保持器を組み込む際における前記保持器の白化及び破損を抑制するための最適形状を開示するものではない。
本発明は、一般的な樹脂材料では対応が困難な高速回転環境下で使用するために高剛性材料で成形された深溝玉軸受用冠型樹脂保持器において、前記保持器の振れ回りによる異音の発生、並びに前記保持器と前記保持器以外の部品との干渉による深溝玉軸受の昇温及び摩耗を防止しながら、深溝玉軸受に前記保持器を組み込む際における前記保持器の白化及び破損を抑制することを目的とする。
本発明に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器は、前記課題解決のため、
円環状基部と前記基部の軸方向一側面から軸方向へ突出する複数の片持ち状弾性片とを備え、周方向に隣り合う前記弾性片間の球面状のポケットに転動体であるボールを保持する深溝玉軸受用冠型樹脂保持器であって、
前記保持器の樹脂材料は、曲げ弾性率が8,000MPa(23℃・絶乾時のデータ)以上であり、
前記ボールの直径Dに対する前記ボールを挿入する前記ポケットの開口部の開口径Aの比A/Dは、
0.89≦A/D<0.93
で、
前記基部の前記軸方向一側面に対する前記弾性片の軸方向高さHtと、前記ポケットの中心に対する前記弾性片の軸方向高さHpの関係は、
Hp×0.6≦Ht≦Hp
であり、
前記弾性片の内径側には、前記基部の内周面を延長した面よりも外径方向に位置する切欠部があり、
前記切欠部の形状は、前記弾性片の爪先を切欠いた部分を含む、周方向から見て四角形状であり、
前記弾性片の爪先の前記切欠部の径方向長さW1は、
前記基部の径方向長さをWとして、
W×0.1≦W1≦W×0.5
であり、
前記切欠部の軸方向長さH1は、
Ht×0.6≦H1≦Hp
である。
また、本発明に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器は、前記課題解決のため、
円環状基部と前記基部の軸方向一側面から軸方向へ突出する複数の片持ち状弾性片とを備え、周方向に隣り合う前記弾性片間の球面状のポケットに転動体であるボールを保持する深溝玉軸受用冠型樹脂保持器であって、
前記保持器の樹脂材料は、曲げ弾性率が8,000MPa(23℃・絶乾時のデータ)以上であり、
前記ボールの直径Dに対する前記ボールを挿入する前記ポケットの開口部の開口径Aの比A/Dは、
0.89≦A/D<0.93
で、
前記基部の前記軸方向一側面に対する前記弾性片の軸方向高さHtと、前記ポケットの中心に対する前記弾性片の軸方向高さHpの関係は、
Hp×0.6≦Ht≦Hp
であり、
前記弾性片の内径側には、前記基部の内周面を延長した面よりも外径方向に位置する切欠部があり、
前記切欠部の形状は、前記弾性片の爪先を切欠いた部分を含む、周方向から見て三角形状であり、
前記弾性片の爪先の前記切欠部の径方向長さW1は、
前記基部の径方向長さをWとして、
W×0.15≦W1≦W×0.5
であり、
前記切欠部の軸方向長さH1は、
Ht≦H1≦Hp
である。
本発明の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器によれば、一般的な樹脂材料では対応が困難な高速回転環境下で使用するために高剛性材料で成形された深溝玉軸受用冠型樹脂保持器において、四角形状又は三角形状の前記大きさの切欠部を弾性片の内径側に設けることで、弾性片の根元の応力集中箇所の応力を適切に緩和している。したがって、特許文献1のように前記開口比を大きくする必要がないので、前記保持器の振れ回りによる異音の発生、並びに前記保持器と前記保持器以外の部品との干渉による深溝玉軸受の昇温及び摩耗を防止できるとともに、深溝玉軸受に前記高剛性材料で成形された前記保持器を組み込む際における前記保持器の白化及び破損を抑制できる。
本発明の実施の形態の実施例1に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図1の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図1の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 図1の保持器をボールのピッチ円直径で切断したものを径方向外方からみた断面図である。 本発明の実施の形態の実施例2に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図4の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図4の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 本発明の実施の形態の実施例3に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図6の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図6の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 本発明の実施の形態の実施例4に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図8の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図8の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 比較例1の保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図10の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図10の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 比較例2の保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図12の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図12の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 比較例3の保持器がボールを保持している状態を示す斜視図である。 図14の保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図14の保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 切欠部又は平面の径方向長さによる、ポケットにボ-ルを挿入する際における弾性片の根元の最大主応力の変化を示すグラフである。 比較例1の保持器における弾性片の根元の最大主応力のコンター図である。 実施例2(W1/W=0.25)の保持器における弾性片の根元の最大主応力のコンター図である。 第1変形例の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図19Aの保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 第2変形例の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図20Aの保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。 第3変形例の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器の要部拡大縦断面斜視図である。 図21Aの保持器のポケット内から周方向を見た縦断面概略図である。
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
以下の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1,1A,1B,1Cの回転中心軸Cと平行な方向を「軸方向」(図中矢印J)、回転中心軸Cに直交する方向を「径方向」(図中矢印Kは径方向外方)という。
本発明の実施の形態に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1は、高速回転環境下で使用するために高剛性材料で成形したものである。
すなわち、保持器1の樹脂材料は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド9T(PA9T)、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の母材に、ガラス繊維又はカーボン繊維等の強化材を添加した高剛性材料であり、曲げ弾性率は8,000MPa(23℃・絶乾時のデータ)以上である。
[深溝玉軸受用冠型樹脂保持器]
図1、図4、図6、及び図8の斜視図は、実施例1ないし実施例4の保持器1が転動体であるボールBを保持している状態を示している。すなわち、それらの保持器1は、深溝玉軸受に組み込まれた状態に相当する。
保持器1は、円環状基部2と基部2の軸方向Jの一側面2Aから軸方向Jへ突出する複数の片持ち状弾性片3とを備え、図2A、図5A、図7A、及び図9Aの要部拡大縦断面斜視図に示す弾性片3,3間の球面状のポケットPにボールBを保持する。
(弾性片の軸方向高さ)
図3の保持器1をボールPのピッチ円直径で切断したものを径方向外方からみた断面図に示すHt,Hpの関係について説明する。本発明が対象とする深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1において、円環状基部2の軸方向一側面2Aに対する弾性片3の軸方向高さHtと、ポケットPの中心Oに対する弾性片3の軸方向高さHpとの関係は、Hp×0.6≦Ht≦Hpである。すなわち、本発明が対象とする深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1は、特許文献1の図1に見られるような弾性片(特許文献1の爪部14)の高さが一般的な冠型樹脂保持器である。
(切欠部)
図2B、図5B、図7B、及び図9Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示すように、保持器1には、弾性片3の内径側に、基部2の内周面2Cを延長した面よりも外径方向Kに位置する切欠部Fがある。切欠部Fにより、深溝玉軸受に保持器1を組み込んでポケットPにボールを挿入した際における弾性片3の根元部の応力集中箇所の応力を適切に緩和している。
実施例1(図2B)、実施例3(図7B)、及び実施例4(図9B)の切欠部Fの形状は、弾性片3の爪先Eを切欠いた部分を含む、周方向から見て矩形である。実施例2(図5B)の切欠部Fの形状は、弾性片3の爪先Eを切欠いた部分を含む、周方向から見て三角形である。
(肉盗み部)
保持器1をボールBのピッチ円直径で切断したものを径方向外方からみた図3の断面図に示すように、保持器1には、軸方向他側面2Bに、肉盗み部Gがある。肉盗み部Gにより、成形時の樹脂収縮による寸法変化の抑制、ボイド発生の回避、軽量化等が図られる。このような肉盗み部Gは必須ではなく、小径保持器等では肉盗み部Gがなくてもよい。
[数値解析]
(解析条件)
深溝玉軸受用冠型樹脂保持器の樹脂材料の曲げ弾性率を、21000MPa、開口比(図3の開口径A/ボール径D)を0.89、Ht=Hp×0.69とし、ポケットPにボ-ルBを挿入する際における弾性片3の根元の最大主応力をコンピュータによる数値解析により評価する。
(実施例)
実施例は、図1、図4、図6、図8の実施例1ないし4の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1とし、切欠部Fの径方向長さW1をパラメータとする。切欠部Fの形状は、前記のとおり、実施例1、実施例3、及び実施例4は矩形、実施例2は三角形である。
切欠部Fの軸方向長さH1は、実施例1は、H1=Ht×0.6、実施例2及び3は、H1=Ht、実施例4は、H1=Hpである。
(比較例)
比較例は、図10の比較例1の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1A、図12の比較例2の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1B、及び図14の比較例3の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1Cとする。
すなわち、比較例1は、図10の斜視図、図11Aの要部拡大縦断面斜視図、及び図11Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示す深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1Aであり、実施例1ないし4のような切欠部Fがない従来形状である。
また、比較例2は、図12の斜視図、図13Aの要部拡大縦断面斜視図、及び図13Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示す深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1Bであり、弾性片3におけるポケットPの内周面の内径側の一部を平面Lとした特許文献2と同様の従来形状である。比較例2については、平面の径方向長さW2をパラメータとする。
さらに、比較例3は、図14の斜視図、図15Aの要部拡大縦断面斜視図、及び図15Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示す深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1Cであり、実施例2と同様の三角形の切欠部Fを有する。比較例3は、H1=Ht×0.6であり、切欠部Fの径方向長さW1をパラメータとする。
(解析結果)
表1、及び図16のグラフは、ポケットPにボ-ルBを挿入する際における弾性片3の根元の最大主応力について、切欠部F及び平面Lがない比較例1を「1」とし、比較例2及び3、並びに実施例1ないし4について、平面Lの径方向長W2又は切欠部Fの径方向長さW1による前記最大主応力の変化を示したものである。
また、比較例1の保持器における弾性片の根元の最大主応力のコンター図を図17に、実施例2(W1/W=0.25)の保持器における弾性片の根元の最大主応力のコンター図を図18に示す。これらのコンター図から、比較例1よりも実施例2(W1/W=0.25)の方が、弾性片の根元の最大主応力が大幅に緩和していることが分かる。
表1及び図16の解析結果から、比較例2(平面L)において、円環状基部2の径方向長さWに対する平面Lの径方向長W2の比(W2/W)が、(W2/W)>0.25では、前記最大主応力が小さくなる傾向が大きくなる。しかし、比較例2において、0≦(W2/W)≦0.25の範囲では、前記最大主応力があまり小さくならないことが分かる。
比較例3(切欠部F:三角形、H1=Ht×0.6)において、円環状基部2の径方向長さWに対する切欠部Fの径方向長W1の比(W1/W)が、0≦(W1/W)≦0.25の範囲で、前記最大主応力は比較例2よりも小さいが、前記最大主応力はあまり小さくならないことが分かる。また、比較例3において、(W1/W)>0.25では、前記最大主応力は略一定であり、前記最大主応力は殆ど小さくならないことが分かる。
Figure 2023007629000002
比較例2及び3に対して、実施例1(切欠部F:矩形、H1=Ht×0.6)、実施例3(切欠部F:矩形、H1=Ht)、実施例4(切欠部F:矩形、H1=Hp)において、(W1/W)=0.1で、実施例1の前記最大主応力は0.70、実施例3の前記最大主応力は0.69、実施例4の前記最大主応力は0.70である。すなわち、矩形の切欠部Fを有する、実施例1、3及び4(H1=Ht×0.6、H1=Ht、H1=Hp)では、(W1/W)が0.1以上の(W1/W)が小さい範囲でも前記最大主応力が大幅に小さくなる。
矩形の切欠部Fを有する、実施例1、3及び4(H1=Ht×0.6、H1=Ht、H1=Hp)において、(W1/W)≦0.25であれば、比較例2及び3よりも前記最大主応力が大幅に小さくなることが分かる。
また、比較例2及び3に対して、実施例2(切欠部F:三角形、H1=Ht)では、(W1/W)=0.15で、前記最大主応力は0.70である。すなわち、三角形の切欠部Fを有する、実施例2(Ht=Ht)では、(W1/W)が0.15以上の(W1/W)が小さい範囲でも前記最大主応力が大幅に小さくなる。
三角形の切欠部Fを有する実施例2(H1=Ht)において、(W1/W)≦0.25であれば、比較例2及び3よりも前記最大主応力が大幅に小さくなることが分かる。
(開口比)
以上の数値解析における開口比(図3の開口径A/ボール径D)は0.89である。比較例1において、開口比を0.89、0.95、0.96にした場合の弾性片3の根元の最大主応力を数値解析により求めた結果を表2に示す。
Figure 2023007629000003
表2から分かるとおり、平面Lや切欠部Fがない比較例1において、開口比(A/D)を大きくすれば、弾性片3の根元の最大主応力が小さくなり、A/D=0.95では前記最大主応力が0.82であるが、A/D=0.96では、前記最大主応力は0.7未満になる。したがって、本発明のように切欠部Fを設けることで弾性片3の根元の主応力を小さくする発明は、開口比(A/D)が0.89≦A/D≦0.95である深溝玉軸受用冠型樹脂保持器に対して有効であるが、開口比(A/D)が0.93以上である場合は、ボールと保持器の隙間が大きくなる。それにより、保持器の振れ回りによって回転中に異音が発生したり、保持器と深溝玉軸受の外輪若しくは内輪又はシールとの干渉によって前記軸受が昇温したり摩耗するおそれがある。よって本発明では、開口比(A/D)が0.89≦A/D<0.93である深溝玉軸受用冠型樹脂保持器を対象とする。
[実験による破損の有無の確認]
(実験条件)
曲げ弾性率が21000MPaの樹脂材料で成形した開口比(図3のA/D)が0.89、Ht=Hp×0.69の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器のポケットにボールを挿入した際における破損の有無を確認する。
(実験結果)
表3に示す実験結果のとおり、図1の実施例1(切欠部F:矩形、H1=Ht×0.6)の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1(W1/W=0.1)、及び図4の実施例2(切欠部F:三角形、H1=Ht)の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1(W1/W=0.15)のポケットPにボールBを挿入した際には、保持器1に破損がなかった。それに対して図14の比較例3(切欠部F:三角形、H1=Ht×0.6)の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1C(W1/W=0.2)のポケットPにボールBを挿入した際には、保持器1Cに破損があった。
Figure 2023007629000004
(考察)
図1の実施例1(切欠部F:矩形、H1=Ht×0.6)の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1(W1/W=0.1)、及び図4の実施例2(切欠部F:三角形、H1=Ht)の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1(W1/W=0.15)は、表1及び図16の解析結果において、ポケットPにボ-ルBを挿入する際における弾性片3の根元の最大主応力は、切欠部F及び平面Lがない比較例1を「1」として、0.7である。図14の比較例3(切欠部F:三角形、H1=Ht×0.6)の深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1C(W1/W=0.2)は、表1及び図16の解析結果において、前記最大主応力は0.75である。
したがって、前記実験条件の保持器において、図16の解析結果における前記最大主応力が0.7以下であれば、深溝玉軸受用冠型樹脂保持器の破損を防止できることがわかる。
以上から、表1及び図16の解析結果、並びに前記実験結果を踏まえ、深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1の切欠部Fが矩形である場合は、切欠部Fの径方向長さW1は、W1≧W×0.1とし、切欠部Fの軸方向長さH1は、Ht×0.6≦H1≦Hpとする。また、深溝玉軸受に保持器1を組み込んだ後の前記軸受の回転時における前記保持器1の振れ回りによる異音の発生、並びに前記保持器と前記保持器以外の部品との干渉による深溝玉軸受の昇温及び摩耗を防止するために、W1≦W×0.5とする。
同様に、表1及び図16の解析結果、並びに前記実験結果を踏まえ、深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1の切欠部Fが三角形である場合は、切欠部Fの径方向長さW1は、W1≧W×0.15とするとともに、W1≦W×0.5とし、切欠部Fの軸方向長さH1は、Ht≦H1≦Hpとする。
[変形例]
(矩形の切欠部の変形例)
切欠部Fの形状は、矩形ではなく、図19Aの要部拡大縦断面斜視図、及び図19Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示すような台形等であってもよく、図20Aの要部拡大縦断面斜視図、及び図20Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示すように、隅部が隅Rであってもよい。すなわち、切欠部Fの形状は、四角形状であればよい。
(三角形の切欠部の変形例)
切欠部Fの形状は、三角形ではなく、図21Aの要部拡大縦断面斜視図、及び図21Bのポケット内から周方向を見た縦断面概略図に示すように、辺が曲線状であってもよい。すなわち、切欠部Fの形状は、三角形状であればよい。
[本発明の実施の形態に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器]
本発明の実施の形態に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1の樹脂材料は、前記のとおり曲げ弾性率が8,000MPa(23℃・絶乾時のデータ)以上である高剛性材料である。
深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1の切欠部Fが四角形状である場合、弾性片3の爪先Eの切欠部Fの径方向長さW1は、円環状基部2の径方向長さをWとして、W×0.1≦W1≦W×0.5であり、より望ましくは、W×0.1≦W1≦W×0.25である。切欠部Fの軸方向長さH1は、円環状基部2の軸方向一側面2Aに対する弾性片3の軸方向高さをHt、ポケットPの中心Oに対する弾性片3の軸方向高さをHpとして、Ht×0.6≦H1≦Hpである。
深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1の切欠部Fが三角形状である場合、弾性片3の爪先Eの切欠部Fの径方向長さW1は、W×0.15≦W1≦W×0.5であり、より望ましくは、W×0.15≦W1≦W×0.25である。切欠部Fの軸方向長さH1は、Ht≦H1≦Hpである。
[作用効果]
本発明の実施の形態に係る深溝玉軸受用冠型樹脂保持器によれば、一般的な樹脂材料では対応が困難な高速回転環境下で使用するために高剛性材料で成形された深溝玉軸受用冠型樹脂保持器1において、四角形状又は三角形状の前記大きさの切欠部Fを弾性片3の内径側に設けることで、弾性片3の根元の応力集中箇所の応力を適切に緩和している。したがって、特許文献1のように開口比(例えば図3のA/D参照)を大きくする必要がないので、保持器1の振れ回りによる異音の発生、並びに保持器1と保持器1以外の部品との干渉による深溝玉軸受の昇温及び摩耗を防止できるとともに、深溝玉軸受に前記高剛性材料で成形された保持器1を組み込む際における保持器1の白化及び破損を抑制できる。
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
1,1A,1B,1C 深溝玉軸受用冠型樹脂保持器
2 円環状基部
2A 軸方向一側面
2B 軸方向他側面
2C 内周面
3 弾性片
A 開口径
B ボール(転動体)
C 保持器の回転中心軸
D ボール径
E 爪先
F 切欠部
G 肉盗み部
H1 切欠部の軸方向長さ
Ht 基部の軸方向一側面に対する弾性片の軸方向高さ
Hp ポケットの中心に対する弾性片の軸方向高さ
J 軸方向
K 外径方向
L 平面
O ポケット中心(ボールの中心)
P ポケット
W 基部の径方向長さ
W1 切欠部の径方向長さ
W2 平面の径方向長さ

Claims (2)

  1. 円環状基部と前記基部の軸方向一側面から軸方向へ突出する複数の片持ち状弾性片とを備え、周方向に隣り合う前記弾性片間の球面状のポケットに転動体であるボールを保持する深溝玉軸受用冠型樹脂保持器であって、
    前記保持器の樹脂材料は、曲げ弾性率が8,000MPa(23℃・絶乾時のデータ)以上であり、
    前記ボールの直径Dに対する前記ボールを挿入する前記ポケットの開口部の開口径Aの比A/Dは、
    0.89≦A/D<0.93
    で、
    前記基部の前記軸方向一側面に対する前記弾性片の軸方向高さHtと、前記ポケットの中心に対する前記弾性片の軸方向高さHpの関係は、
    Hp×0.6≦Ht≦Hp
    であり、
    前記弾性片の内径側には、前記基部の内周面を延長した面よりも外径方向に位置する切欠部があり、
    前記切欠部の形状は、前記弾性片の爪先を切欠いた部分を含む、周方向から見て四角形状であり、
    前記弾性片の爪先の前記切欠部の径方向長さW1は、
    前記基部の径方向長さをWとして、
    W×0.1≦W1≦W×0.5
    であり、
    前記切欠部の軸方向長さH1は、
    Ht×0.6≦H1≦Hp
    である、
    深溝玉軸受用冠型樹脂保持器。
  2. 円環状基部と前記基部の軸方向一側面から軸方向へ突出する複数の片持ち状弾性片とを備え、周方向に隣り合う前記弾性片間の球面状のポケットに転動体であるボールを保持する深溝玉軸受用冠型樹脂保持器であって、
    前記保持器の樹脂材料は、曲げ弾性率が8,000MPa(23℃・絶乾時のデータ)以上であり、
    前記ボールの直径Dに対する前記ボールを挿入する前記ポケットの開口部の開口径Aの比A/Dは、
    0.89≦A/D<0.93
    で、
    前記基部の前記軸方向一側面に対する前記弾性片の軸方向高さHtと、前記ポケットの中心に対する前記弾性片の軸方向高さHpの関係は、
    Hp×0.6≦Ht≦Hp
    であり、
    前記弾性片の内径側には、前記基部の内周面を延長した面よりも外径方向に位置する切欠部があり、
    前記切欠部の形状は、前記弾性片の爪先を切欠いた部分を含む、周方向から見て三角形状であり、
    前記弾性片の爪先の前記切欠部の径方向長さW1は、
    前記基部の径方向長さをWとして、
    W×0.15≦W1≦W×0.5
    であり、
    前記切欠部の軸方向長さH1は、
    Ht≦H1≦Hp
    である、
    深溝玉軸受用冠型樹脂保持器。
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