JP2023007150A - 電気化学デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】本開示は、一酸化炭素を含む水素含有ガスに酸素を混入させた場合、電気化学デバイスにおける水素含有ガスが供給される入口部近傍の電解質膜の局所的な薄膜化を抑制し、経時的に水素純度が低下し難い電気化学デバイスを提供する。【解決手段】本開示における電気化学デバイスは、電解質膜と、電解質膜の第1主面に配置されるアノード触媒層と、電解質膜の第2主面に配置されるカソード触媒層と、アノード触媒層を挟んで電解質膜と反対側に配置されるアノードガス拡散層と、カソード触媒層を挟んで電解質膜と反対側に配置されるカソードガス拡散層と、水素含有ガスおよび酸素をアノードガス拡散層に供給するように形成されたアノードガス流路と、を備える電気化学デバイスであって、アノードガス拡散層は、アノードガス流路の上流部分に対向する第1領域を有し、第1領域は親水性樹脂を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、水素精製システムで利用する電気化学デバイスに関する。
特許文献1は、高純度の水素を精製する水素精製システムと、前記水素精製システムにおいて、アノードに、一酸化炭素を含む水素含有ガスを供給する場合には、酸素を水素含有ガスに混入させることによって、一酸化炭素による触媒被毒を抑制して水素を精製する方法とを開示する。この水素精製システムは、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードとを設けた積層セル(本開示では、電気化学デバイスと記載、以下同じ)と、アノードに、一酸化炭素と酸素とを含む水素含有ガスを供給するガス供給装置と、アノードとカソードとの間に直流電流を流す電源と、を備える。
特開2015-117139号公報
本開示は、一酸化炭素を含む水素含有ガスに酸素を混入させた場合において生じ得る、水素含有ガスが供給される入口近傍の電解質膜の局所的な薄膜化を抑制し、経時的に水素純度が低下し難い電気化学デバイスを提供する。
本開示における電気化学デバイスは、電解質膜と、電解質膜の第1主面に配置されるアノード触媒層と、電解質膜の第2主面に配置されるカソード触媒層と、アノード触媒層を挟んで電解質膜と反対側に配置されるアノードガス拡散層と、カソード触媒層を挟んで電解質膜と反対側に配置されるカソードガス拡散層と、水素含有ガスおよび酸素をアノードガス拡散層に供給するように形成されたアノードガス流路と、を備える電気化学デバイスであって、アノードガス拡散層は、アノードガス流路の上流部分に対向する第1領域を有し、第1領域は親水性樹脂を含むことを特徴とする。
本開示における電気化学デバイスは、アノード入口を含む上流部分において酸素ガスの触媒への拡散が出口付近と比べて抑制されるため、アノード入口を含む上流部分に配置される触媒層で生成される過酸化水素が減少する。そのためアノード入口を含む上流部分に配置される触媒層の局所的な薄膜化が抑制され、経時的な精製水素純度の低下をし難くする効果を奏し得る。
実施の形態1に係る電気化学デバイスを含む水素精製システムの構成図 実施の形態2に係る電気化学デバイスを含む水素精製システムの構成図
(本開示の基礎となった知見等)
本発明を想到するに至った当時、一酸化炭素を含む水素含有ガスをアノードに供給しアノードとカソードとの間に電流を流し、カソードから純度の高い水素を取り出す電気化学デバイスは、カソードから排出される水素の純度を高く保つことが求められていた。
そのため、当概業界では、アノードに供給するガスに一酸化炭素が含まれる場合、アノード触媒へのCO被毒が起こり、電気化学反応において熱力学的に求められる反応の理論電位(平衡電極電位)と、実際に反応が進行するときの電極の電位との差である過電圧が上昇してしまうことを課題とし、一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を生成するための酸素をアノードへ同時に供給するという製品設計をすることが一般的であった。
そうした状況下において、水素含有ガスに一酸化炭素と酸素が含まれる場合に、一酸化炭素と酸素を含む水素含有ガスをアノードに供給しアノードとカソードとの間に電流を流し、カソードから純度の高い水素を取り出す電気化学デバイスの水素純度が長期運転時に低下するという課題があった。発明者らが鋭意検討した結果、アノードに添加された酸素ガスがアノード内においてヒドロキシラジカルを生成させて電解質膜を分解し、酸素が投入される入口近傍の電解質膜を経時的に薄膜化することが原因であることを突き止めた。薄膜化した電解質膜が水素以外の不純物ガスをカソード側に多く混入させるため水素純度を低下させるわけである。そこで、酸素が投入される水素含有ガス入口近傍の局所的な膜の薄膜化を抑制することにより、不純物ガスの透過量を減らし、水素純度の低下を防ぐという着想を得た。そして発明者らは、その着想を実現するために、本開示の主題を構成するに至った。
本開示は、アノードガス拡散層におけるアノードガス入口を含む上流部分に対向する領域が親水性樹脂を含み、アノードガス拡散層におけるアノードオフガス出口を含む下流部分に対向する領域が撥水性樹脂を含む電気化学デバイスを提供する。
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
(実施の形態1)
以下、図1を用いて、実施の形態1に係る電気化学デバイス10を説明する。
[1-1.構成]
図1において電気化学デバイス10は、電解質膜5と、電解質膜5の第1主面に配置されるアノード触媒層16と、電解質膜5の第2主面に配置されるカソード触媒層18と、アノード触媒層16を挟んで電解質膜5と反対側に配置されるアノードガス拡散層8と、カソード触媒層18を挟んで電解質膜5と反対側に配置されるカソードガス拡散層7と、水素含有ガスおよび酸素をアノードガス拡散層8に供給するように形成されたアノードガス流路15と、を備える。また電気化学デバイス10は、アノードガス拡散層8が、アノードガス流路15の上流部分に対向する第1領域6を有し、第1領域6は親水性樹脂を含む。アノードガス拡散層8は、アノードガス流路15の下流部分に対向する第2領域9を有し、第2領域は、撥水性樹脂を含む。
アノード触媒層16は、第1触媒粒子と、イオン交換樹脂と、を含む。具体的にアノード触媒層16は、アノードガス流路15からアノード触媒層16に供給される水素含有ガスに含まれる水素を水素イオンに解離する電気化学反応を促進する機能を果たし、第1触媒粒子として、例えばPt(白金)及びRu(ルテニウム)を担持したカーボン粒子を含み、イオン交換樹脂である高分子電解質樹脂を含んでよい。
カソード触媒層18は、第2触媒粒子と、イオン交換樹脂と、を含む。具体的にカソード触媒層18は、アノード触媒層16から電解質膜5を通ってカソード触媒層18に移動する水素イオンから水素を生成する電気化学反応を促進する機能を果たし、第2触媒粒子として、例えばPt(白金)を担持したカーボン粒子を含み、イオン交換樹脂である高分子電解質樹脂を含んでよい。
なお親水性樹脂は、アノード触媒層16またはカソード触媒層18で使用されているイオン交換樹脂と同一のイオン交換樹脂を含む樹脂であってよい。
アノード側セパレータ11とカソード側セパレータ13は、ガス透過性のない導電性部材である圧縮カーボンによって構成されている。アノード側セパレータ11には、水素含有ガスであるアノードガスが水素含有ガス供給配管43を介して水素含有ガス供給部30から供給されるアノードガス入口19が設けられる。またアノード側セパレータ11には、アノードオフガスを排出するカソードオフガス出口21が設けられ、アノードガス入口19とカソードオフガス出口21の間には、水素含有ガスをアノードに供給するアノードガス流路15がアノード側セパレータ11によって形成される。
また、カソード側セパレータ13には、精製水素ガスを排出するカソードオフガス出口21が設けられる。カソードガス拡散層7とカソード側セパレータ13の間にはカソードガス流路17が形成され、精製水素ガスをカソードオフガス出口21に導く。
アノードガス拡散層8は、アノード触媒層16への水素含有ガス及び酸素の供給と、アノード触媒層16との間で電子の授受を行う機能を果たす。アノードガス拡散層8は、ガス透過性と電子伝導性を併せ持つ導電性カーボンペーパーで構成されてよい。
カソードガス拡散層7は、カソード触媒層18で生成される精製水素ガスの排出と、カソード触媒層18との間で電子の授受を行う機能を果たす。カソードガス拡散層7は、ガス透過性と電子伝導性を併せ持つ導電性カーボンペーパーで構成されてよい。
アノードガス拡散層8とカソードガス拡散層7は、導電性多孔質基材であるカーボン繊維からなるカーボンペーパーに樹脂がコーティングされている。
アノードガス流路15における、例えば流路の上流から1/4までの領域に対向するアノードガス拡散層8には第1領域6が設けられ、第1領域6のコーティング樹脂には、親水性樹脂を用いる。親水性樹脂には、高分子の末端に、ヒドロキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、スルホン酸基などの、極性の高い官能基を持つ樹脂を用いることができる。親水性樹脂としては、例えばパーフルオロスルホン酸(ナフィオン)を用いてよい。アノード触媒層16で使用する高分子電解質樹脂は、極性の高い官能基を持つ同様の樹脂を用いてよい。
アノードガス流路15における、例えば流路の上流から1/4の位置より下流の領域に対向するアノードガス拡散層8には第2領域9が設けられ、第2領域のコーティング樹脂には、撥水性樹脂を用いる。撥水性樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いてよい。
また、電気化学デバイス10には、アノード触媒層16から電解質膜5を介してカソード触媒層18に電流を流すための直流電源25が接続されている。
水素含有ガス供給部30は、例えば都市ガスから改質反応を利用して加湿された水素と二酸化炭素と一酸化炭素とからなる水素含有ガスを生成し供給する燃料改質器と、酸素含有ガスを供給する装置を含む。水素含有ガス供給部30は、水素含有ガス供給配管43を通してアノードガス入口19に接続される。
また水素精製システム1は本実施の形態に係る電気化学デバイス10を制御する制御部40を備え、制御部40は水素含有ガス供給部30からの水素含有ガスの供給量の制御等をおこなう。
ここで本開示における制御部40は、本開示における装置を制御できるものであればよい。制御部40は様々な態様で実現可能である。例えば、制御部40としてプロセッサを用いてもよい。制御部40としてプロセッサを用いれば、プログラムを格納している記憶媒体からプログラムをプロセッサに読み込ませ、プロセッサによりプログラムを実行することで、各種処理を実行することが可能となる。このため、記憶媒体に格納されたプログラムを変更することで処理内容を変更できるので、制御内容の変更の自由度を高めることができる。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、及び、MPU(Micro-Processing Unit)などがある。記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、及び、光ディスクなどがある。また、制御部40としてプログラムの書き換えが不可能なワイヤードロジックを用いてもよい。制御部40としてワイヤードロジックを用いれば、処理速度の向上に有効である。ワイヤードロジックとしては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などがある。また、制御部40として、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現してもよい。制御部40を、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現すれば、ソフトウェア設計の自由度を高めつつ、処理速度を向上することができる。また、制御部40と、制御部40と別の機能を有する回路とを、1つの半導体素子で構成してもよい。別の機能を有する回路としては、例えば、A/D・D/A変換回路などがある。また、制御部40は、1つの半導体素子で構成してもよいし、複数の半導体素子で構成してもよい。複数の半導体素子で構成する場合、特許請求の範囲に記載の各制御を、互いに異なる半導体素子で実現してもよい。さらに、半導体素子と抵抗またはコンデンサなどの受動部品とを含む構成によって制御部40を構成してもよい。
[1-2.動作]
以上のように構成された電気化学デバイス10について、その動作と作用を以下で説明する。
まず、電気化学デバイス10の温度を摂氏60度に設定し、水素含有ガス供給部30から水素80%、二酸化炭素18.5%、一酸化炭素30ppm、酸素1%の濃度の水素含有ガスを100cc/minの流量で供給する。ここで水素含有ガスは摂氏60度における飽和水蒸気圧を満たす量の水蒸気を含む。水素含有ガスは、アノードガス入口19に供給され、直流電源25によってアノード触媒層16から電解質膜5を介してカソード触媒層18に、例えば15Aの電流を流す。
次に、電気化学デバイス内での物質の反応と膜劣化との関係について説明する。アノード触媒層16では、(化1)に示す、水素が水素イオン(H+)と電子に解離する酸化反応が起こり、カソード触媒層18では、(化2)に示す、水素イオン(H+)と電子が結びついて水素が生成される還元反応が起こる。
Figure 2023007150000002
Figure 2023007150000003
(化1)と(化2)に示す電気化学反応によりアノード触媒層16に供給された水素含有ガスから、カソード触媒層18において水素を生成することができる。このとき、水素含有ガス中の水素のみがアノード側からカソード側へ移動するため、カソード側で高純度の水素を得ることができる。
(化1)と(化2)の反応と並行して、アノード触媒層16では、(化3)に示す、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素が酸素と反応して二酸化炭素ができる酸化反応が起こる。
Figure 2023007150000004
(化3)の反応によって消費されなかった一酸化炭素は、アノード触媒層16に吸着し、(化1)の水素反応が起こる触媒の反応面積を減少させる。水素反応の反応面積の減少が進むと、過電圧が上昇して水素精製のために必要な電力が多く必要となるので、一酸化炭素のアノード触媒層16への吸着が起こらないように運転条件を設定する必要がある。
(化3)で一酸化炭素と反応しなかった残りの酸素は、(化4)で示す4電子反応、および(化5)で示す2電子反応に従って還元される。
Figure 2023007150000005
Figure 2023007150000006
(化5)で生成する過酸化水素(H)は、電解質膜を劣化させることが知られている。アノードガス流路15に存在する酸素はアノードガス拡散層8の中を拡散し、アノード触媒層16へ到達して(化5)で示す反応により酸素が消費され過酸化水素を生成する。したがってアノードガス流路15の上流から下流へ行くほど酸素は消費されて濃度が低下し、アノードガス流路15からアノード触媒層16へ拡散する酸素の量も上流から下流へ行くほど減少する。アノードガス入口19を含むアノードガス流路15の上流部分に対向するカソードガス拡散層7の細孔には親水性樹脂が存在する。この親水性樹脂に水が吸着し細孔が吸着水によって塞がれることにより、アノードガス流路15からアノード触媒層16への酸素の拡散が抑制される。最も酸素濃度の高いアノードガス入口19において、アノードガス流路15からアノード触媒層16への酸素の拡散を抑制することができるので、アノードガス入口19に対向する領域に配置されるアノード触媒層16において局所的な過酸化水素の生成を抑え、電解質膜5で局所的に起こり得る薄膜化を抑制することができる。その結果、水素純度が経時的の低下を抑制することができる。
上記の動作説明に基づいて電気化学デバイス10の運転を行った。電気化学デバイス10のカソードオフガス出口21から排出される精製水素ガスのガス組成を分析したところ、運転開始時と、3000時間運転後と比較してガス組成に変化は生じないという実験結果が得られた。
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態に係る電気化学デバイス10は、電解質膜と5、電解質膜5の第1主面に配置されるアノード触媒層16と、電解質膜5の第2主面に配置されるカソード触媒層18と、アノード触媒層16を挟んで電解質膜5と反対側に配置されるアノードガス拡散層8と、カソード触媒層18を挟んで電解質膜5と反対側に配置されるカソードガス拡散層7と、水素含有ガスおよび酸素をアノードガス拡散層8に供給するように形成されたアノードガス流路15と、を備える電気化学デバイスであって、アノードガス拡散層8は、アノードガス流路15の上流部分に対向する第1領域6を有し、第1領域6は親水性樹脂を含む。
これにより、アノードガス入口19を含むアノードガス流路15の上流部分において、酸素ガスのアノード触媒層16への拡散が、アノードオフガス出口23を含む下流部分と比べて抑制される。したがってアノードガス入口19を含むアノードガス流路15の上流部分のアノード触媒層16で生成される過酸化水素の量が減少するため、局所的な薄膜化が抑制される。そのため、経時的な精製水素ガスの純度の低下を抑制することができる。
また本実施の形態において、アノードガス拡散層8は、アノードガス流路15の下流部分に対向する第2領域9を有し、第2領域9は撥水性樹脂を含んでよい。
仮にアノードガス拡散層8の全体が親水性であると、水素含有ガスが含む水蒸気が液体の状態になってアノードガス拡散層8の細孔を塞ぐため、水素含有ガスの拡散が抑制されてアノード触媒層16まで到達し難くなる。アノードガス流路15の下流部分に対向するアノードガス拡散層8における第2領域9が撥水性樹脂を含むと、アノードガス拡散層8の細孔が開放状態のままになる。これによりアノードガスである水素含有ガスがアノードガス拡散層8からアノード触媒層16へ拡散することが可能になるそのため電気化学反応により水素を精製することが可能になるというという効果を奏し得る。具体的にはアノードガス流路15の上流部分に相対するアノードガス拡散層8は親水性樹脂を含むため、水蒸気が吸着して酸素の拡散を抑制するので電解質膜の劣化が抑えられる。そしてアノードガス流路15の下流部分に相対するアノードガス拡散層8では、酸素濃度自体が低くなるため過剰な酸素拡散による電解質膜の劣化が生じにくい。
また本実施の形態において、アノード触媒層16は、第1触媒粒子と、イオン交換樹脂と、を含み、カソード触媒層18は、第2触媒粒子と、イオン交換樹脂と、を含み、親水性樹脂は、アノード触媒層16またはカソード触媒層18で使用されているイオン交換樹脂と同一のイオン交換樹脂を含む樹脂であってよい。
これにより、アノードガス拡散層8に用いた親水性樹脂が、長期運転中に微量に溶出しても触媒を被毒しない。そのため、電気化学デバイス10の経時的な消費電力増加の要因となる懸念がない。
(実施の形態2)
以下、図2を用いて、実施の形態2に係る電気化学デバイス10を説明する。
[2-1.構成]
実施の形態2に係る電気化学デバイス10は、アノードガス拡散層8が、電解質膜5と逆側に配置される導電性多孔質基材からなるアノード導電性基材層12と、第1導電性多孔質層であるアノード導電性多孔質層第1領域27と、第2導電性多孔質層であるとアノード導電性多孔質層第2領域29、を有し、アノード導電性多孔質層第1領域27は第1領域にあって、導電性粒子と親水性樹脂を含み、アノード導電性多孔質層第2領域29は第2領域にあって、導電性粒子と撥水性樹脂を含んでよい。また電気化学デバイス10は、カソード触媒層18を挟んで電解質膜5と反対側に配置されるカソード導電性基材層14を有する。
具体的にアノード導電性多孔質層28は、アノード触媒層16への水素含有ガスおよび酸素の供給と、アノード触媒層16との間で電子の授受を行う機能を果たす。ガス透過性と電子伝導性を併せ持つ導電性カーボンペーパーをアノード導電性基材層12として用い、アノード導電性多孔質層第1領域27において、導電性粒子として例えばカーボン粒子を、親水性樹脂として例えばパーフルオロスルホン酸を用いてよい。
アノード導電性多孔質層第1領域27とアノード導電性多孔質層第2領域29を形成する方法の一例を以下に挙げる。
パーフルオロスルホン酸の10%のエタノールの懸濁液をカーボン粒子に対して重量比10倍入れて混合し、超音波分散器で5分間分散させて、親水層インクを作成する。この親水層インクを導電性カーボンペーパーにスプレー塗工器で塗布し、乾燥させることでアノード導電性多孔質層第1領域27を形成してよい。この方法によって親水性樹脂を導電性粒子に対して均一に形成することができるので、アノード導電性多孔質層第1領域27により多くの水を吸着できるようになる。またカーボン粒子と親水性樹脂の混合比が変えられるので、アノード導電性多孔質層第1領域27の親水樹脂の割合を自由に調整できる。したがってアノードガス入口19を含むアノードガス流路15の上流部分における酸素ガスのアノード触媒層16への拡散量を抑制しやすい。
また、疎水性樹脂としてPTFEを用い、PTFEの10%のエタノールの懸濁液をカーボン粒子に対して10倍入れて混合し、超音波分散器で5分間分散させ、撥水層インクを作成する。この撥水層インクをスプレー塗工器で塗布し、乾燥させることでアノード導電性多孔質層第2領域29を形成してよい。
カソード導電性多孔質層26は、カソード触媒層18で生成する水素の排出と、カソード触媒層18との間で電子の授受を行う機能を果たす。またガス透過性と電子伝導性を併せ持つ導電性カーボンペーパーをカソード導電性基材層14として用いてよい。
カソード導電性多孔質層26を形成する方法の一例を以下に挙げる。
導電性粒子としてカーボン粒子を疎水性樹脂としてPTFEを用い、PTFEの10%のエタノールの懸濁液をカーボン粒子に対して10倍入れて混合し、超音波分散器で分散させ、撥水層インクを作成する。このインクを導電性カーボンペーパーに塗布し、乾燥させてカソード導電性多孔質層26を形成してよい。
ここで、アノード導電性多孔質層28とカソード導電性多孔質層26における細孔の測定結果について説明する。カーボンペーパーによって構成されるアノード導電性基材層12及びカソード導電性基材層14の細孔径は数十~数百μmである。これに対してカーボン粒子と樹脂とからなるアノード導電性多孔質層第1領域27、アノード導電性多孔質層第2領域29、カソード導電性多孔質層26の細孔径は、十~百μmの孔径を有する細孔である。導電性多孔質層の細孔径は、カーボンペーパーの細孔径よりも小さい。アノード導電性多孔質層第1領域27では、親水性樹脂により細孔に水が吸着したとき、水により細孔が塞がれ易い形状となることがわかる。
また、電気化学デバイス10には、アノード触媒層16から電解質膜5を介してカソード触媒層18へ電流を流すための直流電源25が接続されている。
その他の構成は実施の形態1に係る電気化学デバイス10と同様なので記載を省略する。
[2-2.動作]
以上のように構成された実施の形態2に係る電気化学デバイス10について、その動作と作用を以下で説明する。
まず、電気化学デバイス10の温度を摂氏60度に設定し、水素含有ガス供給部30から水素80%、二酸化炭素18.5%、一酸化炭素30ppm、酸素1%の濃度の水素含有ガスを100cc/minの流量で供給する。ここで水素含有ガスは摂氏60度における飽和水蒸気圧を満たす量の水蒸気を含む。水素含有ガスは、アノードガス入口19に供給され、直流電源25によってアノード触媒層16から電解質膜5を介してカソード触媒層18に、例えば15Aの電流を流す。
アノードガス流路15に存在する酸素は、アノード導電性多孔質層28の中を拡散しアノード触媒層16へ到達して(化6)で示す反応により酸素が消費され過酸化水素を生成する。
Figure 2023007150000007
アノードガス流路15の上流から下流へ行くほど酸素は消費されて濃度が薄くなり、対向して設けられるアノード触媒層16へ拡散する酸素の量も上流から下流へ行くほど少なくなる。アノードガス入口19を含む上流部分に対向するアノード導電性多孔質層第1領域27には親水性樹脂が存在する。この親水性樹脂に水が吸着し細孔が吸着水によって塞がれることにより、アノードガス流路15からアノード触媒層16への酸素の拡散が抑制される。最も酸素濃度の高いアノードガス入口19において、アノードガス流路15からアノード触媒層16への酸素の拡散を抑制することができるので、アノードガス入口19に対向する領域に配置されるアノード触媒層16において局所的な過酸化水素の生成を抑え、電解質膜5で局所的に起こり得る薄膜化を抑制することができる。その結果、水素純度が経時的の低下を抑制することができる。
上記の動作説明に基づいて電気化学デバイス10の運転を行った。電気化学デバイス10のカソードオフガス出口21から排出される精製水素ガスのガス組成を分析したところ、運転開始時と、5000時間運転後と比較してガス組成に変化は生じないという実験結果が得られた。
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、アノードガス拡散層8は、電解質膜5と逆側に配置される導電性多孔質基材からなる導電性基材層であるアノード導電性基材層12と、アノード導電性多孔質層第1領域27と、アノード導電性多孔質層第2領域29と、を有し、アノード導電性多孔質層第1領域27は導電性粒子と親水性樹脂を含み、アノード導電性多孔質層第2領域29は導電性粒子と撥水性樹脂を含んでよい。
これにより、アノードガス入口19を含むアノードガス流路15の上流部分の酸素の拡散をより抑制できアノードガス入口19近傍に配置されるアノード触媒層16で生成される過酸化水素の量が減少する。したがってアノードガス入口19近傍の電解質膜5の局所的な薄膜化を抑制し得る。そのため、経時的な精製水素純度の低下を抑制することができる。
また本実施の形態において、アノード導電性多孔質層第1領域27およびアノード導電性多孔質層第2領域29が含む導電性粒子はそれぞれ凝集体を含み、アノード導電性多孔質層第1領域27が含む凝集体の大きさは、アノード導電性多孔質層第2領域29が含む凝集体の大きさと比べて小さくてよい。
これによりアノード導電性多孔質層第1領域27における凝集体同士の間隙が小さくなり、間隙によって形成される細孔が小さくし得る。その結果、アノードガス入口19を含むアノードガス流路15の上流部分に対向するアノード触媒層16への酸素の拡散をより抑制できる。そのためアノードガス入口19近傍に配置されるアノード触媒層16で生成される過酸化水素の量が減少する。したがってアノードガス入口19近傍の電解質膜5の局所的な薄膜化を抑制し得る。そのため、経時的な精製水素純度の低下を抑制することができる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1及び2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1及び2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
本開示は、電解質膜が薄膜化することを抑制する電気化学デバイスに適用可能である。具体的には、一酸化炭素を含む水素含有ガスから純度の高い水素を製造する水素精製システムに用いる電気化学デバイスなどに、本開示は適用可能である。
1 水素精製システム
5 電解質膜
6 第1領域
7 カソードガス拡散層
8 アノードガス拡散層
9 第2領域
10 電気化学デバイス
11 アノード側セパレータ
12 アノード導電性基材層
13 カソード側セパレータ
14 カソード導電性基材層
15 アノードガス流路
16 アノード触媒層
17 カソードガス流路
18 カソード触媒層
19 アノードガス入口
21 カソードオフガス出口
23 アノードオフガス出口
25 直流電源
26 カソード導電性多孔質層
27 アノード導電性多孔質層第1領域
28 アノード導電性多孔質層
29 アノード導電性多孔質層第2領域
30 水素含有ガス供給部
40 制御部
43 水素含有ガス供給配管

Claims (5)

  1. 電解質膜と、
    前記電解質膜の第1主面に配置されるアノード触媒層と、
    前記電解質膜の第2主面に配置されるカソード触媒層と、
    前記アノード触媒層を挟んで前記電解質膜と反対側に配置されるアノードガス拡散層と、
    前記カソード触媒層を挟んで前記電解質膜と反対側に配置されるカソードガス拡散層と、
    水素含有ガスおよび酸素を前記アノードガス拡散層に供給するように形成されたアノードガス流路と、
    を備える電気化学デバイスであって、
    前記アノードガス拡散層は、前記アノードガス流路の上流部分に対向する第1領域を有し、
    前記第1領域は親水性樹脂を含む、
    ことを特徴とする電気化学デバイス。
  2. 前記アノードガス拡散層は、前記アノードガス流路の下流部分に対向する第2領域を有し、
    前記第2領域は撥水性樹脂を含む、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
  3. 前記アノード触媒層は、
    第1触媒粒子と、
    イオン交換樹脂と、
    を含み、
    前記カソード触媒層は、
    第2触媒粒子と、
    前記イオン交換樹脂と、
    を含み、
    前記親水性樹脂は、前記アノード触媒層または前記カソード触媒層で使用されているイオン交換樹脂と同一の前記イオン交換樹脂を含む樹脂である、ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
  4. 前記アノードガス拡散層は、
    前記電解質膜と逆側に配置される導電性多孔質基材からなる導電性基材層と、
    第1導電性多孔質層と、
    第2導電性多孔質層と、
    を有し、
    前記第1導電性多孔質層は前記第1領域にあって、導電性粒子と前記親水性樹脂を含み、
    前記第2導電性多孔質層は前記第2領域にあって、前記導電性粒子と前記撥水性樹脂を含む、
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電気化学デバイス。
  5. 前記第1導電性多孔質層および前記第2導電性多孔質層が含む前記導電性粒子はそれぞれ凝集体を含み、前記第1導電性多孔質層が含む凝集体の大きさは、前記第2導電性多孔質層が含む凝集体の大きさと比べて小さい、ことを特徴とする請求項4に記載の電気化学デバイス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116590728A (zh) * 2023-06-08 2023-08-15 浙江菲尔特过滤科技股份有限公司 Aem电解水制氢电解槽

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