JP2023006747A - ギヤ部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】PEEK成形体で構成され、歯元部における破壊が発生しにくいギヤ部材を提供する。【解決手段】ギヤ部材は、3重量%以上35重量%以下の炭素繊維と、2重量%以上20重量%以下のPTFEと、0.1重量%以上10重量%以下のナノカーボンとを含有するPEEK成形体で構成される。このギヤ部材では、歯元部における局所破壊と摺動破壊との両方の発生を効果的に抑制することができる。【選択図】図5
Description
本発明は、樹脂成形体からなるギヤ部材に関する。
自動車部品等に用いられるギヤ部材は、軽量化の観点などから金属部品から樹脂成形体への代替が求められている。このようなギヤ部材として、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に代表される、特に優れた耐熱性及び機械的強度を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、PEEKを用いた従来のギヤ部材では、駆動時に応力が集中しやすい歯元部における機械的強度が充分に得られにくい。このため、このようなギヤ部材では、駆動時に歯元部で折れなどの破壊が生じやすい。したがって、PEEKを用いたギヤ部材において機械的強度を向上させる技術が望まれる。
以上のような事情に鑑み、本発明は、PEEK成形体で構成され、歯元部における破壊が発生しにくいギヤ部材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係るギヤ部材は、3重量%以上35重量%以下の炭素繊維と、2重量%以上20重量%以下のPTFEと、0.1重量%以上10重量%以下のナノカーボンとを含有するPEEK成形体で構成される。
このギヤ部材では、耐疲労特性の優れた高分子PEEK成形体で構成しつつも、歯元部における局所破壊と摺動破壊との両方の発生を効果的に抑制することができる。
このギヤ部材では、耐疲労特性の優れた高分子PEEK成形体で構成しつつも、歯元部における局所破壊と摺動破壊との両方の発生を効果的に抑制することができる。
上記ナノカーボンのアスペクト比が100以上であってもよい。
上記ギヤ部材は、10重量%以上30重量%以下の炭素繊維を含有してもよい。
上記ギヤ部材では、最大ピーク分子量が5万以上の範囲に存在する分子量分布を有するPEEK成形体で構成されてもよい。
上記ギヤ部材は、外周に沿って連接された複数の歯の各歯元部の径方向の断面において上記炭素繊維が上記複数の歯の表面に沿って配向していてもよい。
これらの構成では、歯元部における局所破壊及び摺動破壊の発生をより効果的に抑制することができる。
上記ギヤ部材は、10重量%以上30重量%以下の炭素繊維を含有してもよい。
上記ギヤ部材では、最大ピーク分子量が5万以上の範囲に存在する分子量分布を有するPEEK成形体で構成されてもよい。
上記ギヤ部材は、外周に沿って連接された複数の歯の各歯元部の径方向の断面において上記炭素繊維が上記複数の歯の表面に沿って配向していてもよい。
これらの構成では、歯元部における局所破壊及び摺動破壊の発生をより効果的に抑制することができる。
以上のように、本発明では、PEEK成形体で構成され、歯元部における破壊が発生しにくいギヤ部材を提供することができる。
<ギヤ部材の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るギヤ部材Gの平面図である。ギヤ部材Gには、外周に沿って連接された複数の歯Tが設けられている。複数の歯Tはそれぞれ、歯先部Tt及び歯元部Tbで構成されている。ギヤ部材Gでは、歯Tが他の部材の歯と噛み合った状態で回転駆動する際に、他の部材の歯の歯先部Ttから加わる外力によって歯元部Tbに応力が集中しやすい。このため、ギヤ部材Gでは、特に歯元部Tbにおいて折れなどの破壊が発生しやすい。また、高温高圧の過酷な動作環境下で使用されるギヤ部材Gの歯元部Tbには、瞬間的に加わる局所的な外力による破壊(以下、「局所破壊」とも呼称する。)のみならず、摺動が繰り返されることによる破壊(以下、「摺動破壊」とも呼称する。)が発生しやすい。
図1は、本発明の一実施形態に係るギヤ部材Gの平面図である。ギヤ部材Gには、外周に沿って連接された複数の歯Tが設けられている。複数の歯Tはそれぞれ、歯先部Tt及び歯元部Tbで構成されている。ギヤ部材Gでは、歯Tが他の部材の歯と噛み合った状態で回転駆動する際に、他の部材の歯の歯先部Ttから加わる外力によって歯元部Tbに応力が集中しやすい。このため、ギヤ部材Gでは、特に歯元部Tbにおいて折れなどの破壊が発生しやすい。また、高温高圧の過酷な動作環境下で使用されるギヤ部材Gの歯元部Tbには、瞬間的に加わる局所的な外力による破壊(以下、「局所破壊」とも呼称する。)のみならず、摺動が繰り返されることによる破壊(以下、「摺動破壊」とも呼称する。)が発生しやすい。
これに対し、本実施形態に係るギヤ部材Gは、歯元部Tbに対して局所破壊と摺動破壊とのいずれも生じにくくなるように構成されている。具体的に、本実施形態に係るギヤ部材Gは、主成分としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含み、充填材として炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びナノカーボンを更に含むPEEK複合材を成形して得られるPEEK成形体として構成される。つまり、本実施形態に係るギヤ部材Gでは、耐熱性及び機械的強度が高いPEEKを主成分とすることに加え、上記の3種類の充填材を組み合わせて用いることで、歯元部Tbにおいて局所破壊及び摺動破壊の両方が生じにくい構成を実現することができる。
炭素繊維は、材料強度の向上によってギヤ部材Gに局所破壊を生じにくくする作用を有する。また、PTFEは、摺動性の向上によってギヤ部材Gに、温度上昇による強度低下が原因の摺動破壊を生じにくくする作用を有する。このため、ギヤ部材Gでは、充填材として炭素繊維及びPTFEを併用することで局所破壊及び摺動破壊を生じにくくする作用が得られる。しかしながら、ギヤ部材Gでは、炭素繊維及びPTFEによる作用のみでは、歯元部Tbにおける局所破壊及び摺動破壊を充分に防止することが難しい。これに対し、本実施形態に係るギヤ部材Gでは、炭素繊維及びPTFEに加えてナノカーボンを用いることで、局所破壊及び摺動破壊を生じにくくする作用が更に高まり、歯元部Tbにおける局所破壊及び摺動破壊を効果的に防止することができる。
本実施形態に係るナノカーボンは、炭素で構成されている直径がナノメートルオーダーの一次元構造物質(線状ナノカーボン)である。本実施形態に係るナノカーボンの直径は、例えば、0.4nm以上800nm以下とすることができる。本実施形態に係るナノカーボンは、アスペクト比が100以上であることが好ましく、内部に中空空間を有するカーボンナノチューブであっても、内部に中空空間を有さないカーボンナノワイヤであってもよい。また、ナノカーボンは、複数に分岐した分岐構造や、コイル状などの三次元構造などであってもよい。ナノカーボンは、NC7000(Nanocyl社製)、CNTs40(Sinotech New Materials社製)、HCNTs10(Sinotech New Materials社製)、等が挙げられる。
また、本実施形態に係るギヤ部材Gは、最大ピーク分子量が5万以上の範囲に存在する分子量分布を有するPEEK成形体で構成されることが好ましい。つまり、本実施形態に係るギヤ部材Gでは、ギヤとしての疲労性を向上させるため高分子量の原料PEEKを使用することが好ましい。原料PEEKとしては、Victrex PEEK 450(Victrex社製)、Victrex PEEK 650(Victrex社製)、ベスタキープ 4000(ダイセル・エボニック製)、ベスタキープ 5000(ダイセル・エボニック製)等が挙げられる。一方、高い成形性を得るために原料PEEKに各種充填材を加えたPEEK複合材の粘度が上昇しすぎないように構成することが好ましい。また、ギヤ部材Gでは、PEEK複合材の粘度を低く抑えることで、成形の際に歯元部Tbの径方向に沿った断面において炭素繊維が表面Sに沿って配向しやすくなる。このような炭素繊維の配向によって、ギヤ部材Gでは、歯元部Tbを含む領域において歯Tの表面Sに沿って延びる炭素繊維によって歯元部Tbが補強されることで、歯元部Tbにおける局所破壊及び摺動破壊が更に生じにくくなる。
本実施形態に係るギヤ部材Gを構成するPEEK成形体における炭素繊維の含有量は、上記の効果を良好に得るために、3重量%以上35重量%以下であることが必要であり、10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。つまり、ギヤ部材Gでは、炭素繊維の含有量を3重量%以上、更に10重量%以上とすることで、材料強度を向上でき、局所破壊を効果的に抑制することができる。また、ギヤ部材Gでは、炭素繊維の含有量を35重量%以下、更に30重量%以下とすることで、PEEK複合材の粘度の上昇が抑えられる。これにより、ギヤ部材Gでは、良好な成形性が得られ、上記のような歯元部Tbの表面Sに沿った炭素繊維の配向が更に得られやすくなる。なお、本実施形態に係る炭素繊維は、少なくとも90重量%以上の炭素から構成される直径がマイクロメートルオーダー以上の繊維状の物質を指すものとする。本実施形態に係る炭素繊維の直径は、例えば、3μm以上15μm以下とすることができる。炭素繊維としては、HT C413 6MM(帝人製)、HT C227 6MM (帝人製)、IM C702 6MM(帝人製)、TR06U(三菱ケミカル製)、K223SE(三菱ケミカル製)等が挙げられる。
本実施形態に係るギヤ部材Gを構成するPEEK成形体におけるPTFEの含有量は、上記の効果を良好に得るために、2重量%以上20重量%以下であることが必要であり、5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。つまり、ギヤ部材Gでは、PTFEの含有量を2重量%以上、更に5重量%以上とすることで、温度上昇を抑制し摺動破壊を効果的に抑制することができる。また、ギヤ部材Gでは、PTFEの含有量を20重量%以下、更に10重量%以下とすることで、強度低下が抑えられる。PTFEは、KTL-620(喜多村製)、KTL-450A(喜多村製)、KT-600M(喜多村製)、ルブロンL-5(ダイキン工業製)、L-2(ダイキン工業製)、L150J(AGC製)、L169J(AGC製)、L170J(AGC製)、L172J(AGC製)、TLP-10F-1(三井・ケマーズ・フロロプロダクツ製)等が挙げられる。
本実施形態に係るギヤ部材Gを構成するPEEK成形体におけるナノカーボンの含有量は、上記の効果を良好に得るために、0.1重量%以上10重量%以下であることが必要であり、1重量%以上5重量%以下であることが好ましい。つまり、ギヤ部材Gでは、ナノカーボンの含有量を0.1重量%以上、更に1重量%以上とすることで、局所破壊及び摺動破壊を効果的に抑制することができる。また、ギヤ部材Gでは、ナノカーボンの含有量を10重量%以下、更に5重量%以下とすることで、PEEK複合材の粘度の上昇が抑えられる。これにより、ギヤ部材Gでは、良好な成形性が得られ、上記のような歯元部Tbの表面Sに沿った炭素繊維の配向が更に得られやすくなる。
<実施例及び比較例>
[ギヤ部材の作製]
上記実施形態の実施例及び比較例について説明する。
実施例及び比較例では、各組成を有するPEEK成形体から構成されるギヤ部材Gのサンプルを作製し、作製した各サンプルの評価を行った。
実施例及び比較例では、上記に挙げられる原料PEEK、炭素繊維、PTFEを用いた。
また、実施例及び比較例では、ナノカーボンとして、以下の3種類を用いた。
・ナノカーボンA:直径30~50nm、長さ5000~12000nm、アスペクト比100~400
・ナノカーボンB:直径10~20nm、長さ5000~12000nm、アスペクト比250~1200
・ナノカーボンC:直径200~800nm、長さ1000~15000nm、アスペクト比1~75
[ギヤ部材の作製]
上記実施形態の実施例及び比較例について説明する。
実施例及び比較例では、各組成を有するPEEK成形体から構成されるギヤ部材Gのサンプルを作製し、作製した各サンプルの評価を行った。
実施例及び比較例では、上記に挙げられる原料PEEK、炭素繊維、PTFEを用いた。
また、実施例及び比較例では、ナノカーボンとして、以下の3種類を用いた。
・ナノカーボンA:直径30~50nm、長さ5000~12000nm、アスペクト比100~400
・ナノカーボンB:直径10~20nm、長さ5000~12000nm、アスペクト比250~1200
・ナノカーボンC:直径200~800nm、長さ1000~15000nm、アスペクト比1~75
[評価方法]
(i)局所破壊に対する強度
各サンプルについて局所破壊に対する強度を評価するために、歯元部Tbに局所的に加わる荷重により歯元部Tbが破壊されたときのトルク(以下、「一発破壊トルク」と呼称する。)を測定した。
具体的には、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、回転しないように固定された相手材と噛み合った状態の各サンプルに対してトルクレンチで加える荷重を増加させていき、各サンプルの歯元部Tbが破壊したときのトルクを一発破壊トルクとした。
(i)局所破壊に対する強度
各サンプルについて局所破壊に対する強度を評価するために、歯元部Tbに局所的に加わる荷重により歯元部Tbが破壊されたときのトルク(以下、「一発破壊トルク」と呼称する。)を測定した。
具体的には、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、回転しないように固定された相手材と噛み合った状態の各サンプルに対してトルクレンチで加える荷重を増加させていき、各サンプルの歯元部Tbが破壊したときのトルクを一発破壊トルクとした。
(ii)摺動破壊に対する強度
また、各サンプルについて摺動破壊に対する強度を評価するために、各サンプルの回転駆動時に歯元部Tbに繰り返し加わる摺動摩擦により歯元部Tbが破壊されたときのトルク(以下、「摺動破壊トルク」と呼称する。)を測定した。
具体的には、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、相手材と噛み合った状態で各サンプルを回転駆動させ、荷重を2N・mから3分毎に1N・mずつ増加させ、各サンプルが破壊したときのトルクを摺動破壊トルクとした。摺動破壊トルクの測定では、回転速度を1000rpmとし、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、回転駆動時の各サンプルと相手材との間にグリース(スミテックF931-01、住鉱潤滑剤株式会社製)を介在させた。
また、各サンプルについて摺動破壊に対する強度を評価するために、各サンプルの回転駆動時に歯元部Tbに繰り返し加わる摺動摩擦により歯元部Tbが破壊されたときのトルク(以下、「摺動破壊トルク」と呼称する。)を測定した。
具体的には、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、相手材と噛み合った状態で各サンプルを回転駆動させ、荷重を2N・mから3分毎に1N・mずつ増加させ、各サンプルが破壊したときのトルクを摺動破壊トルクとした。摺動破壊トルクの測定では、回転速度を1000rpmとし、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、回転駆動時の各サンプルと相手材との間にグリース(スミテックF931-01、住鉱潤滑剤株式会社製)を介在させた。
(iii)効率安定性評価
さらに、各サンプルの効率安定性を評価するために、時間経過によるトルク伝達効率の変化を測定し、トルク伝達効率の安定性(以下、「効率安定性」と呼称する。)を評価した。ここで、トルク伝達効率とは、入力トルクに対する出力トルクの比率を意味する。
具体的には、トルク伝達効率の測定では、5N・mのトルク(入力トルク)を加えたときの出力トルク(N・m)を測定した。トルク伝達効率の測定では、回転速度を2000rpmとし、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、回転駆動時の各サンプルと相手材との間の潤滑状態はグリース(スミテックF931-01、住鉱潤滑剤株式会社製)を介在させた。
そして、時間経過によるトルク伝達効率の変化から、以下のA,Bの2段階で評価した。
A:トルク伝達効率が一定時間経過後も一定に保たれ、安定であり、効率安定性が良好であった。
B:トルク伝達効率が一定時間経過とともに低下し、不安定であり、効率安定性が不良であった。
さらに、各サンプルの効率安定性を評価するために、時間経過によるトルク伝達効率の変化を測定し、トルク伝達効率の安定性(以下、「効率安定性」と呼称する。)を評価した。ここで、トルク伝達効率とは、入力トルクに対する出力トルクの比率を意味する。
具体的には、トルク伝達効率の測定では、5N・mのトルク(入力トルク)を加えたときの出力トルク(N・m)を測定した。トルク伝達効率の測定では、回転速度を2000rpmとし、相手材としてギヤ部材(S45C製)を用い、回転駆動時の各サンプルと相手材との間の潤滑状態はグリース(スミテックF931-01、住鉱潤滑剤株式会社製)を介在させた。
そして、時間経過によるトルク伝達効率の変化から、以下のA,Bの2段階で評価した。
A:トルク伝達効率が一定時間経過後も一定に保たれ、安定であり、効率安定性が良好であった。
B:トルク伝達効率が一定時間経過とともに低下し、不安定であり、効率安定性が不良であった。
[評価結果]
(各充填材の有無について)
実施例1-1及び比較例1-1~1-3では、表1に示す組成(重量%)のサンプルを作製した。具体的に、実施例1-1では炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンの全てを用いるのに対して、比較例1-1~1-3では炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれか1つを用いない。実施例1-1及び比較例1-2,1-3では、ナノカーボンとして、ナノカーボンAを用いた。
各サンプルについて評価を行った結果を表1に示す。表1中の「(1)一発破壊トルク(%)」、「(2)摺動破壊トルク(%)」は、比較例1-1を基準とした一発破壊トルク(N・m)及び摺動破壊トルク(N・m)の増減率(%)を示す。「破壊トルク(%)」は、(1)と(2)の合計値である。
図2は、実施例1-1及び比較例1-1~1-3の破壊トルク(%)の結果をグラフに示したものである。
(各充填材の有無について)
実施例1-1及び比較例1-1~1-3では、表1に示す組成(重量%)のサンプルを作製した。具体的に、実施例1-1では炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンの全てを用いるのに対して、比較例1-1~1-3では炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれか1つを用いない。実施例1-1及び比較例1-2,1-3では、ナノカーボンとして、ナノカーボンAを用いた。
各サンプルについて評価を行った結果を表1に示す。表1中の「(1)一発破壊トルク(%)」、「(2)摺動破壊トルク(%)」は、比較例1-1を基準とした一発破壊トルク(N・m)及び摺動破壊トルク(N・m)の増減率(%)を示す。「破壊トルク(%)」は、(1)と(2)の合計値である。
図2は、実施例1-1及び比較例1-1~1-3の破壊トルク(%)の結果をグラフに示したものである。
表1に示されるように、炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれも含む実施例1-1では、比較例1-1~1-3のいずれよりも(1)一発破壊トルク(%)及び(2)摺動破壊トルク(%)が高く、効率安定性が良好であった。
これに対して、炭素繊維及びPTFEを含むが、ナノカーボンを含まない比較例1-1、炭素繊維及びナノカーボンを含むが、PTFEを含まない比較例1-2、PTFE及びナノカーボンを含むが、炭素繊維を含まない比較例1-3では、実施例1-1よりも(1)摺動破壊トルク(%)及び(2)一発破壊トルク(%)が低く、効率安定性が良好でなかった。
そして、図2に示されるように、炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれも含む実施例1-1では、比較例1-1よりも20%以上も破壊トルクが向上することがわかった。
これに対して、炭素繊維及びPTFEを含むが、ナノカーボンを含まない比較例1-1、炭素繊維及びナノカーボンを含むが、PTFEを含まない比較例1-2、PTFE及びナノカーボンを含むが、炭素繊維を含まない比較例1-3では、実施例1-1よりも(1)摺動破壊トルク(%)及び(2)一発破壊トルク(%)が低く、効率安定性が良好でなかった。
そして、図2に示されるように、炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれも含む実施例1-1では、比較例1-1よりも20%以上も破壊トルクが向上することがわかった。
さらに、実施例1-2及び比較例1-4として、実施例1-1及び比較例1-1について炭素繊維の含有量を10重量%から30重量%に増加させたサンプルを作製し、効率安定性評価を行った。尚、炭素繊維の含有量の増加分については、PEEKの含有量を減少させ、全体で100重量%とした。
図3は、実施例1-4及び比較例1-4における時間経過によるトルク伝達効率の変化を示すグラフである。図3では、横軸が時間を示し、縦軸が実施例1-1及び比較例1-4のトルク伝達効率を相対値として示す。
炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれも含む実施例1-4では、トルク伝達効率が安定しており、60分経過後もトルク伝達効率が維持された。これに対して、ナノカーボンが含まれていない比較例1-4では、トルク伝達効率が安定せず、時間経過とともにトルク伝達効率が徐々に減少した。
このように、実施例1-2では、炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンを含むことで、高い効率安定性が得られることがわかった。
図3は、実施例1-4及び比較例1-4における時間経過によるトルク伝達効率の変化を示すグラフである。図3では、横軸が時間を示し、縦軸が実施例1-1及び比較例1-4のトルク伝達効率を相対値として示す。
炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンのいずれも含む実施例1-4では、トルク伝達効率が安定しており、60分経過後もトルク伝達効率が維持された。これに対して、ナノカーボンが含まれていない比較例1-4では、トルク伝達効率が安定せず、時間経過とともにトルク伝達効率が徐々に減少した。
このように、実施例1-2では、炭素繊維、PTFE、及びナノカーボンを含むことで、高い効率安定性が得られることがわかった。
(カーボンの種類について)
実施例2-1~実施例2-3では、表2に示す組成のサンプルを作製した。実施例2-1ではナノカーボンAを用い、実施例2-2ではナノカーボンBを用い、実施例2-3では、ナノカーボンCを用いた。
各サンプルについて評価を行った結果を表2に示す。表2中の「(1)発破壊トルク(%)」、「(2)摺動破壊トルク(%)」は、表1の比較例1-1を基準とした一発破壊トルク(N・m)及び摺動破壊トルク(N・m)の増減率(%)を示す。
図4は、実施例2-1~実施例2-3の破壊トルク(%)の結果をグラフ化したものである。
実施例2-1~実施例2-3では、表2に示す組成のサンプルを作製した。実施例2-1ではナノカーボンAを用い、実施例2-2ではナノカーボンBを用い、実施例2-3では、ナノカーボンCを用いた。
各サンプルについて評価を行った結果を表2に示す。表2中の「(1)発破壊トルク(%)」、「(2)摺動破壊トルク(%)」は、表1の比較例1-1を基準とした一発破壊トルク(N・m)及び摺動破壊トルク(N・m)の増減率(%)を示す。
図4は、実施例2-1~実施例2-3の破壊トルク(%)の結果をグラフ化したものである。
表2に示されるように、実施例2-1~2-3では、(1)一発破壊トルク及び(2)摺動破壊トルクが向上していた。
また、アスペクト比が100より小さいナノカーボンCを用いた実施例2-3では、効率安定性が低下していたが、アスペクト比が100以上のナノカーボンA,Bを用いた実施例2-1,2-2では、効率安定性が良好であった。
また、図4に示されるように、実施例2-3では、破壊トルクが比較例1-1の基準のギヤ部材Gと比べて3%程度の増加に留まったが、ナノカーボンA,Bを用いた実施例2-1,2-2では、破壊トルクが比較例1-1と比べて15%以上も向上していた。
これは、アスペクト比が高いことで、ナノカーボンと樹脂基材とが十分に絡まり合い、より十分な補強効果が得られたことによるものと考えられる。
また、アスペクト比が100より小さいナノカーボンCを用いた実施例2-3では、効率安定性が低下していたが、アスペクト比が100以上のナノカーボンA,Bを用いた実施例2-1,2-2では、効率安定性が良好であった。
また、図4に示されるように、実施例2-3では、破壊トルクが比較例1-1の基準のギヤ部材Gと比べて3%程度の増加に留まったが、ナノカーボンA,Bを用いた実施例2-1,2-2では、破壊トルクが比較例1-1と比べて15%以上も向上していた。
これは、アスペクト比が高いことで、ナノカーボンと樹脂基材とが十分に絡まり合い、より十分な補強効果が得られたことによるものと考えられる。
(炭素繊維の含有量について)
実施例1-1の組成に対して炭素繊維の含有量を0~40重量%の範囲で変化させたサンプルを作製した。具体的に、比較例3-1、実施例3-1、実施例3-2、実施例3-3、及び比較例3-2として、炭素繊維の含有量がそれぞれ0,10,20,30,40重量%のサンプルを作製した。尚、炭素繊維の含有量の増減分については、PEEKの含有量を増減させ、全体で100重量%とした。また、実施例3-1は、実施例1-1と同じ組成である。
図5は、実施例3及び比較例3に係るギヤ部材Gの炭素繊維の含有量(重量%)に対する破壊トルク(%)のグラフである。「破壊トルク(%)」は、上記と同様に、比較例1-1を基準とした破壊トルクの増減率を示す。
炭素繊維の含有量が3重量%未満の比較例3-1では、破壊トルクを向上させることができなかったのに対して、炭素繊維の含有量が3~35重量%の範囲にある実施例3-1~3-3では、破壊トルクが向上していた。また、炭素繊維の含有量が35重量%を超える比較例3-2では、粘度が高すぎ成形することができなかった。
実施例1-1の組成に対して炭素繊維の含有量を0~40重量%の範囲で変化させたサンプルを作製した。具体的に、比較例3-1、実施例3-1、実施例3-2、実施例3-3、及び比較例3-2として、炭素繊維の含有量がそれぞれ0,10,20,30,40重量%のサンプルを作製した。尚、炭素繊維の含有量の増減分については、PEEKの含有量を増減させ、全体で100重量%とした。また、実施例3-1は、実施例1-1と同じ組成である。
図5は、実施例3及び比較例3に係るギヤ部材Gの炭素繊維の含有量(重量%)に対する破壊トルク(%)のグラフである。「破壊トルク(%)」は、上記と同様に、比較例1-1を基準とした破壊トルクの増減率を示す。
炭素繊維の含有量が3重量%未満の比較例3-1では、破壊トルクを向上させることができなかったのに対して、炭素繊維の含有量が3~35重量%の範囲にある実施例3-1~3-3では、破壊トルクが向上していた。また、炭素繊維の含有量が35重量%を超える比較例3-2では、粘度が高すぎ成形することができなかった。
[蛍光顕微鏡による歯元部の炭素繊維及びナノカーボンの観察]
実施例1-1に係るサンプルの炭素繊維及びナノカーボンを蛍光顕微鏡により観察した。
図6は、実施例1-1に係るギヤ部材Gの蛍光顕微鏡画像(a)と、参考例に係るナノカーボンが含まれていないギヤ部材Gの蛍光顕微鏡画像(b)を示す。
ここで、蛍光波長を吸収する炭素繊維は、蛍光観察された場合、例えば、図6(b)に示されるように、黒色で示される。
実施例1-1に係るギヤ部材G(図6(a))では、黒い繊維状の物質がぼやけた状態で観察された。これは、ナノカーボンが炭素繊維の表面を覆っていることによるものと考えられる。これらにより、ナノカーボンの有無が判断できる。
尚、炭素繊維の含有量は、蛍光顕微鏡画像において炭素繊維が占有する面積に比例するため、本実施形態の炭素繊維の含有量は、蛍光顕微鏡画像の炭素繊維の面積比率から算出可能である。
実施例1-1に係るサンプルの炭素繊維及びナノカーボンを蛍光顕微鏡により観察した。
図6は、実施例1-1に係るギヤ部材Gの蛍光顕微鏡画像(a)と、参考例に係るナノカーボンが含まれていないギヤ部材Gの蛍光顕微鏡画像(b)を示す。
ここで、蛍光波長を吸収する炭素繊維は、蛍光観察された場合、例えば、図6(b)に示されるように、黒色で示される。
実施例1-1に係るギヤ部材G(図6(a))では、黒い繊維状の物質がぼやけた状態で観察された。これは、ナノカーボンが炭素繊維の表面を覆っていることによるものと考えられる。これらにより、ナノカーボンの有無が判断できる。
尚、炭素繊維の含有量は、蛍光顕微鏡画像において炭素繊維が占有する面積に比例するため、本実施形態の炭素繊維の含有量は、蛍光顕微鏡画像の炭素繊維の面積比率から算出可能である。
Claims (5)
- 3重量%以上35重量%以下の炭素繊維と、2重量%以上20重量%以下のPTFEと、0.1重量%以上10重量%以下のナノカーボンとを含有するPEEK成形体で構成される
ギヤ部材。 - 請求項1に記載のギヤ部材であって、
前記ナノカーボンのアスペクト比が100以上である
ギヤ部材。 - 請求項1又は2に記載のギヤ部材であって、
10重量%以上30重量%以下の炭素繊維を含有する
ギヤ部材。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のギヤ部材であって、
最大ピーク分子量が5万以上の範囲に存在する分子量分布を有するPEEK成形体で構成される
ギヤ部材。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載のギヤ部材であって、
外周に沿って連接された複数の歯の各歯元部の径方向の断面において前記炭素繊維が前記複数の歯の表面に沿って配向している
ギヤ部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021109497A JP2023006747A (ja) | 2021-06-30 | 2021-06-30 | ギヤ部材 |
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Publications (1)
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JP2021109497A Pending JP2023006747A (ja) | 2021-06-30 | 2021-06-30 | ギヤ部材 |
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