JP2023005279A - 伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置 - Google Patents

伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】伝熱管のクリープ余寿命を正確に予測することができる、伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置を提供することを目的とする。【解決手段】精度の高いクリープ余寿命の推定を行うために、水蒸気酸化スケール厚さの成長に伴う温度上昇、及びスケール成長の加速を考慮するとともに、伝熱管の内外面の温度勾配を考慮する。伝熱管の内外面の温度勾配を考慮するにあたっては、伝熱管から水蒸気側へ流れる熱負荷(熱流束)を水蒸気酸化スケール厚さから推定するとともに、将来の水蒸気酸化スケールの成長、及びそれに伴う管壁中央温度の上昇曲線を推定する。これにより、高クロム鋼や低合金鋼等の信頼性の高いクリープ余寿命を推定することが可能となる。【選択図】図2

Description

本発明は、伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置に関する。詳しくは、伝熱管のクリープ余寿命を正確に予測することができる伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置に係るものである。
従来より、火力発電設備において、動力用蒸気配管等の伝熱管には、低合金鋼や高クロム鋼等の耐食性、耐熱性に優れた金属材料が多用されている。そして、このような金属材料は、火力発電設備の運転中は、長時間に渡って高温、高圧下に置かれることから、徐々にクリープが進行し、クリープ寿命に達すると破断する。そこで、火力発電設備を安全かつ経済的に運転するために、クリープに対する余寿命を精度良く予測する技術が強く求められている。
このクリープに対する余寿命予測技術としては、例えば余寿命を予測する対象となる伝熱管を実機からその一部を切り出して所定のクリープ試験片に加工し、このクリープ試験片に対して、実験設備において温度、負荷応力を加速させた条件下で破断するまで試験することでクリープ損傷を評価する技術が知られている。
しかしながら、従来のように実機から採取した試験片を用いる方法においては、試験結果を得るのに数千時間を要するだけでなく、評価対象材が使用されてきた温度が不明な場合には、適切な温度で評価しないと信頼性のある余寿命を求めるのが難しいという課題がある。
即ち、伝熱管は使用時間の増大とともに、伝熱管の内面に水蒸気酸化スケールが成長することにより熱伝導特性が低下する結果、伝熱管の管壁温度が上昇することが知られており、この点を考慮した水蒸気酸化スケール厚さによる非破壊の予測方法に関する技術が公知となっている。
例えば特許文献1には、ガス下流側伝熱管のメタル温度を推定し、推定したメタル温度をガス上流側伝熱管の初期メタル温度として推定する。そして、推定した初期メタル温度、ガス上流側伝熱管の酸化スケールの実測厚さ、及び実測ボイラ運転時間に基づいて所定の関係式からガス上流側伝熱管の酸化スケールによるメタル温度上昇を求めたうえでガス上流側伝熱管のメタル温度を推定する。さらに、ガス上流側伝熱管のメタル温度、応力、及び実測ボイラ時間から、ガス上流側伝熱管のクリープ余寿命を推定している。
特開2011-64381号公報
しかしながら、前記した特許文献1に開示されているクリープ余寿命評価方法によれば、水蒸気酸化スケール厚さの成長を考慮し、熱負荷が高いガス上流側伝熱管のメタル温度を推定することによりクリープ余寿命を評価しているが、メタル温度を演算する過程において肉厚方向における温度勾配については全く考慮されていない。
即ち、一般的に伝熱管外表面の温度は伝熱管内面の温度よりも高いため、伝熱管の内外面には温度勾配が生じる。そのため、より正確なクリープ余寿命の評価を行うには、伝熱管壁面の肉厚中央部の温度に基づいて演算する必要がある。但し、伝熱管の肉厚中央部の温度を演算するには、伝熱管を通過する熱流速の情報が必要となる。この点、特許文献1においては、下流側の水蒸気酸化スケール厚さから求めた温度を、初期のガス上流側伝熱管のメタル温度として推定していることからもわかる通り、伝熱管内外面の温度勾配を考慮したものとなっていない。そのため、クリープ余寿命として必ずしも信頼性の高いものとはいえない。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、伝熱管のクリープ余寿命を正確に予測することができる伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明の伝熱管の余寿命推定方法は、伝熱管の管内表面に形成される水蒸気酸化スケール厚と該水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を所定の熱流束を与えることで演算できる演算表に基づいて、伝熱管の評価対象部位における水蒸気酸化スケールの実測厚さの成長に要する成長時間がボイラの実運転時間に略一致する熱流束を実熱流束として決定するステップと、該熱流束に基づいて前記評価対象部位の管壁中央部の温度を求めるステップと、該管壁中央部の温度、及び応力から前記評価対象部位におけるクリープ余寿命を推定するステップと、を備える。
ここで、伝熱管の管内表面に形成される水蒸気酸化スケール厚と該水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を、熱流束を変数として求められるようにしておくことで、熱流束に応じた水蒸気酸化スケール厚と水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を示すテーブルデータ、或いは熱流束に応じた水蒸気酸化スケール厚と水蒸気酸化スケール厚の成長時間がプロットされたスケール成長推定カーブからなる演算表を得ることができる。
また、予め準備をした演算表に基づいて、伝熱管の評価対象部位における水蒸気酸化スケールの実測厚さの成長に要する成長時間がボイラの実運転時間に略一致する熱流束を実熱流束として決定するステップを備えることにより、評価対象部位の水蒸気酸化スケールの実測値、及びボイラの実運転時間と一致する熱流束を実熱流束として決定することができる。
また、熱流束に基づいて評価対象部位の管壁中央部の温度を求めるステップを備えることにより、伝熱管の管内外表面の温度勾配を推定し、該温度勾配に基づいて管壁中央部の温度を演算することができる。
また、管壁中央部の温度、及び応力から評価対象部位におけるクリープ余寿命を推定するステップを備えることにより、管壁中央部の温度を考慮することで、クリープ余寿命の推定精度を高めることができる。
また、演算表は、伝熱管を流れる水蒸気の温度を取得するステップと、水蒸気酸化スケール厚がゼロの場合における伝熱管内を流れる水蒸気に起因する伝熱管内表面の上昇温度である第1の温度を演算するステップに基づいて作成される場合には、水蒸気酸化スケール厚がゼロの場合における伝熱管の管内表面温度を演算することができる。
また、演算表は、水蒸気の温度に第1の温度を加算した温度を伝熱管内表面の初期温度として水蒸気酸化スケール厚がゼロから所定のスケール厚に成長するまでの成長時間の演算を1回目の演算とした場合に、以後、所定のスケール厚単位毎の成長時間の演算をn回目(nは2以上の整数)まで繰り返すステップにより作成される場合には、2回目以降、n回目までの成長時間は、成長した水蒸気酸化スケールのスケール厚による温度上昇を考慮して演算することができるため、より精度の高い成長時間を算出することができる。
なお、水蒸気酸化スケール厚のスケール厚単位として、例えば1μm毎の成長に要する成長時間をn回目まで繰り返し演算した結果を積算することで、水蒸気酸化スケール厚の総スケール厚の成長に要する時間を算出することができる。なお、スケール厚単位としては1μmに限定されるものではなく、より詳細なデータの取得のために、例えば0.1μm毎の成長時間を演算するようにしてもよい。
また、n回目の演算は、n-1回目の演算までに成長した水蒸気酸化スケール厚に起因する伝熱管内表面の上昇温度である第2の温度を初期温度に加算した温度に基づいて水蒸気酸化スケールの成長時間を演算する場合には、前記した通り、特定時点までに成長した水蒸気酸化スケールのスケール厚による温度上昇を考慮して水蒸気酸化スケールの成長時間を演算することができるため、より精度の高い成長時間の演算を行うことができる。
また、第1の温度は水蒸気の伝熱管への熱伝達率、及び熱流束から算出される実熱流束を考慮した温度である場合には、水蒸気の熱伝達率、及び熱流束を考慮することで、伝熱管の水蒸気による温度上昇を正確に推定することができる。
また、第2の温度はスケール厚に応じた伝熱管の温度上昇であり、スケールの熱伝導率、及び熱流束を考慮した温度である場合には、水蒸気酸化スケールの熱伝導率、及び熱流束を考慮することで、伝熱管の水蒸気酸化スケールによる温度上昇を正確に推定することができる。
また、クリープ余寿命を推定するステップは、水蒸気酸化スケールの所定のスケール厚単位におけるクリープ寿命に対する消費割合であるクリープ寿命消費率を演算するステップを有する場合には、所定のスケール厚単位毎(例えば1μm毎)のクリープ寿命消費率を演算することができる。
また、クリープ寿命消費率を、水蒸気酸化スケール厚がゼロから所定のスケール厚まで積算することでボイラ運転時間とクリープ寿命消費率の関係性を演算するステップを有する場合には、前記したスケール厚単位毎のクリープ寿命消費率を積算することで、ボイラ運転時間に応じたクリープ寿命消費率の関係性を演算して、例えばボイラ運転時間に対するクリープ寿命消費率の推定曲線として得ることができる。
また、クリープ寿命消費率100%に対応するボイラ運転時間から、評価時点におけるボイラ運転時間を減算するステップを有する場合には、前記したボイラ運転時間に対するクリープ寿命消費率の推定曲線から、現在のボイラ運転時間を対応付けることで、クリープ寿命消費率100%に到達するまでの残り時間を推定することができる。
前記の目的を達成するための、本発明の伝熱管の余寿命評価装置は、伝熱管の管内表面に形成される水蒸気酸化スケール厚と該水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を演算する演算部と、伝熱管の評価対象部位における水蒸気酸化スケールの実測厚さの成長に要する成長時間がボイラの実運転時間となる実熱流束を前記演算部に基づいて決定する熱流束決定部と、前記実熱流束に基づいて前記評価対象部位の管壁中央部の温度を演算する温度演算部と、前記管壁中央部の温度、及び応力から前記評価対象部位におけるクリープ余寿命を演算するクリープ余寿命演算部とを備える。
ここで、伝熱管の管内表面に形成される水蒸気酸化スケール厚と該水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を演算する演算部を備えることにより、熱流束に応じた水蒸気酸化スケール厚と水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係を演算することができる。
また、伝熱管の評価対象部位における水蒸気酸化スケールの実測厚さの成長に要する成長時間がボイラの実運転時間となる実熱流束を前記演算部に基づいて決定する熱流束決定部を備えることにより、ボイラの実運転時間において評価対象部位の水蒸気酸化スケールの実測値となる熱流束を決定することができる。
また、実熱流束に基づいて評価対象部位の管壁中央部の温度を演算する温度演算部を備えることにより、伝熱管の管壁中央部の温度を演算することができる。
また、管壁中央部の温度、及び応力から評価対象部位におけるクリープ余寿命を演算するクリープ余寿命演算部を備えることにより、管壁中央部の温度を考慮することで、より精度の高いクリープ余寿命の推定精度を高めることができる。
本発明に係る伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置は、伝熱管のクリープ余寿命を正確に予測することが可能となる。
本発明の実施形態に係る伝熱管の余寿命評価装置の全体構成図である。 本発明の実施形態に係る伝熱管の余寿命評価方法の全体フローを示す図である。 水蒸気酸化スケールの成長に要する時間算出のイメージ図である。 運転時間に対するスケール厚みの関係を示すグラフ(スケール成長推定カーブ)である。 運転時間に対するメタル温度の関係を示すグラフ(メタル温度上昇カーブ)である。 運転時間に対するクリープ寿命消費率の関係を示すグラフ(クリープ寿命消費率カーブ)である。 クリープ余寿命計算フォーマットの一例である。 本発明の余寿命評価方法の検証結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明の実施形態に係る伝熱管(以下、単に「管」表現する場合もある。)の余寿命評価装置の全体構成図である。伝熱管の余寿命評価装置1は、制御部10、記憶部20、入力部30、表示部40、及びメモリ部50から主に構成されている。
制御部10は、例えばCPU(中央演算処理装置)であり、記憶部20に記憶されているクリープ余寿命評価プログラムに従って余寿命評価装置1全体の制御、及びクリープ余寿命の演算を行うものであり、熱流束決定部11、温度演算部12、及びクリープ余寿命演算部13から主に構成されている。熱流束決定部11、温度演算部12、及びクリープ余寿命演算部13における演算方法等については後記する。
記憶部20は、少なくとも各種のデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部30は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部10に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボード、マウス、或いはタッチパネルである。なお、例えばキーボードとマウス、或いはタッチパネルのように複数種類のインターフェイスを入力部30として構成するようにしても良い。
表示部40は、制御部10の制御によって文字や図形、或いは画像等の描画や表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ50は、制御部10が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memoryの略)である。
そして、記憶部20に記憶されているクリープ余寿命評価プログラムが実行されることにより、管の対象部位におけるクリープ余寿命の評価のための演算が実行される。図2には水蒸気酸化スケールの成長に基づく伝熱管の余寿命評価方法の全体フローを示す。最初に基礎データとして、管の評価対象部位の蒸気温度、圧力、蒸気流量、管の本数の情報を取得する(S1)。
次に、管の蒸気温度、圧力、及び管1本あたりの流量から、蒸気表(1999 日本機械学会蒸気表)で得られる蒸気物性値を利用し、水蒸気の管に対する熱伝達率を求める(S2)。
また、管-蒸気界面に対して所定の熱負荷を与えることで、管-蒸気界面の熱伝達率から管内表面の温度を算出し(S3)、水蒸気酸化スケールの成長速度定数から水蒸気酸化スケール成長厚さ(成長速度)を算出する(S4)。
さらに、成長した水蒸気酸化スケールによる温度上昇分を管内表面の初期温度に加算し、水蒸気酸化スケール成長速度を再計算することを繰り返すことで、時間の経過に伴う水蒸気酸化スケールの成長、及びメタル温度の上昇曲線を求め(S5)、新材のクリープ破断データからクリープ寿命消費率を算出する(S6)。
以上が本発明の実施形態に係る伝熱管の余寿命評価方法の全体の流れとなるが、以下では、各演算フローについて詳細に説明する。
[基礎データの取得]
基礎データのうち、評価対象部位の蒸気温度については、ボイラの炉外の管出入口(入口非加熱部、及び出口非加熱部)に設置されたメタル温度計により取得したメタル温度に基づいて推定することができる。メタル温度計は、熱交換を伴わない管の外表面に取り付けられており、メタル温度計で計測した管のメタル温度を、管内部を流れる水蒸気の温度とみなすことができる。
なお、炉内の温度は、「入口非加熱部のメタル温度」、「炉内の蒸気温度」、「出口非加熱部のメタル温度」の順に高温となるため、炉内で熱交換が行われる過程で蒸気温度も徐々に上昇する。従って、評価対象部位の管内を流れる蒸気温度を推定する場合には、出口非加熱部のメタル温度をそのまま採用すると誤差が生じる。そのため、評価対象部位の管が炉内に延在する管の全長(全体を10合目とする)の何合目に位置するかを確認したうえで、所定の按分率を設定したうえで蒸気温度を推定する。
例えば、炉内において延在する管のうち、評価対象部位が入口側から出口側の中で下流側にあり、蒸気温度の按分率として0.6と設定すれば、以下の(1)式により蒸気温度を推定することができる。
=Tin+0.6(Tout-Tin) (1)
(T:蒸気温度、Tin:入口非加熱部のメタル温度、Tout:出口非加熱部のメタル温度)
また、蒸気温度の推定方法として、入口非加熱部のメタル温度と出口非加熱部のメタル温度が不明な場合には、入口非加熱部と出口非加熱部の水蒸気酸化スケール厚の実測値から求めることも可能である。その場合、水蒸気酸化スケールの成長は放物線則で表されるのが一般的であるため、スケール厚さをδとすると、以下の(2)式が成り立つ。
δ=K×t0.5 (2)
(K:スケール成長速度定数、t:ボイラ運転時間)
また、スケール成長速度定数Kは以下の(3)式で近似できる。
LogK=A(1/T)+B (3)
ここで、A、Bは材質毎の係数であり、ボイラ運転時間tとスケール厚がわかれば(2)式よりKを得ることができ、さらに(3)式より蒸気温度Tを求めることができる。
[熱伝達率の算出]
評価対象部位の蒸気温度、圧力、及び管1本あたりの流量から、蒸気表(1999 日本機械学会蒸気表)の蒸気物性値を用いて水蒸気の管に対する熱伝達率αを算出する(具体的な算出方法については説明を省略する。)。なお、熱伝達率の算出においては、ボイラの運転データから得られる蒸気温度、圧力、蒸気流速、及び蒸気物性値をもとに所定の論理式を用いて算出するようにしてもよい。
[水蒸気酸化スケール厚がゼロの場合の管内表面温度の算出]
次に、水蒸気酸化スケールがゼロ(即ち水蒸気酸化スケールを考慮しない場合)における管の管内表面の温度を算出する。管内表面の温度は、水蒸気酸化スケールが存在しない場合においても管-蒸気界面で温度上昇が生じる。このとき、管内表面における温度上昇ΔTαは、以下の(4)式で求めることがでる。
ΔTα=q×α (4)
(q:管内表面の熱流束、α:管-蒸気界面での熱伝達率)
そして、前記の温度上昇ΔTαを考慮して、水蒸気酸化スケールがゼロの場合における管内表面の温度Ti1は、以下の(5)式で求めることができる。
i1=T+ΔTα (5)
[水蒸気酸化スケール成長速度、及び成長に要する時間の算出]
水蒸気酸化スケールの成長速度は放物線測で近似でき、前記した(2)式、及び(3)式の関係式に基づいて計算することができる。このとき、スケール成長速度定数Kは、管の材質に応じて温度依存性を有する。そして、前記した(5)式に基づいて、水蒸気酸化スケールがゼロの場合における管内表面温度Ti1における該当する材質の水蒸気酸化スケールの成長速度定数から、スケール成長に要する時間を算出することができる。
[水蒸気酸化スケールを考慮した管内表面温度の算出]
次に、水蒸気酸化スケールの生成に伴う管内表面の温度を算出するために、水蒸気酸化スケールによる温度上昇ΔTλsを、以下の(6)式で求めることができる。
ΔTλs=q×δ/λ (6)
(λs:水蒸気酸化スケールの熱伝導率、δ:水蒸気酸化スケール厚)
そして、前記の温度上昇ΔTλsを考慮して、水蒸気酸化スケール厚がδの場合における管内表面の温度Ti2は、以下の(7)式で求めることができる。
i2=T+ΔTα+ΔTλs (7)
[水蒸気酸化スケールの成長に要する時間の算出]
水蒸気酸化スケールの成長とともに管内表面温度も上昇し、さらにスケールの成長速度定数も変化する(スケールの成長に応じて成長速度も速くなる)。従って成長するスケール厚として、所定のスケール厚(本発明の実施形態においては1μm)の成長に要する成長時間Δtを繰り返し演算し、Δtの積算により最終的なスケール厚までの成長時間を計算した(図3参照)。なお、Δtは以下の(8)式で求めることができる。
Δt=t-td-1 (8)
(t:スケール厚dμmの成長に要する時間、td-1:スケール厚d-1μmの成長に要する時間)
本発明の実施形態においては、スケール厚として1μm毎の成長に要する時間を繰り返し計算し、それらを積算することで、トータルの成長に要する時間を演算しているが、例えばスケール厚単位として0.1μm単位で計算をしてもよく、計算に使用するスケール厚単位は任意に変更することができる。
以上の計算フローで求めた水蒸気酸化スケールの成長に要する時間とスケール厚との関係を熱流束に応じて計算できる演算表を記憶部20に格納しておき、後記する管壁中央温度の算出、及びクリープ余寿命の推定において使用する。
図4には演算表により求めた所定の熱流束の場合におけるスケール成長推定カーブの一例を示す。演算表により所定の熱流束を与えると、横軸を時間、縦軸を水蒸気酸化スケールのスケール厚みとして、時間に応じたスケール厚みを曲線で描いたスケール成長推定カーブとして表すことができる。
[実熱負荷の決定]
次に、前記した演算表を使用して評価対象部位における実熱流束を決定する。実熱流束は、まず評価対象となる管の水蒸気酸化スケール厚の実測値を計測する。スケール厚の実測の計測においては、例えば超音波法による非破壊により外表面から計測することができる。そして、演算表に基づいて、熱流束決定部11において現在のボイラの運転時間で水蒸気酸化スケール厚の実測値に合致する熱流束を検索し、検索された熱流束を実熱流束として決定する。
[管壁中央温度の算出]
管壁中央温度Tの算出においては、まず前記した演算表に基づいて決定された実熱流束qを算出する。この熱流束qを使用して、以下の(9)式を用いて管壁中央温度Tを算出する。なおTi2は、前記した(7)式により算出される水蒸気酸化スケール厚を考慮した管内表面温度である。
=Ti2+(r/λ)・q・ln(r/r) (9)
(r:管の中心から管壁中央までの半径、λ:管の熱伝導率)
なお、管壁中央温度Tの算出においては、例えば管外表面の温度を関係式により算出したうえで、管壁部分の温度勾配を考慮した中央値を管壁中央温度Tとして算出するようにしてもよい。
図5は運転時間に対する管内表面温度Ti2、及び管壁中央温度Tをプロットすることにより作成されたメタル温度上昇カーブを示す。図5に示すように、運転時間の経過とともに水蒸気酸化スケールのスケール厚みが成長することにより、メタル温度も上昇する。また、管内外面における温度勾配により、管内表面温度Ti2よりも管壁中央温度Tの方が全運転期間において高くなることが確認できる。
以上のように、管内表面温度Ti2よりも管壁中央温度Tの温度が相対的に高くなるため、例えば前記した特許文献1に開示がされているように、クリープ余寿命の演算において管内表面温度を採用すると、本来であればクリープ余寿命が十分ないにも関わらず、クリープ余寿命が十分あると判断される可能性があるが、本発明においては、実際のクリープ余寿命に至るまで管の使用時間を的確に推定することが可能となる。以下、具体的なクリープ余寿命の推定方法について説明する。
[クリープ寿命消費率の算出]
クリープ寿命消費率は、あるスケール厚さdμmにおいて、d-1μmからdμmに要した時間Δtを管壁中央温度T、内圧による管に加わるフープ応力σ、及び新材のクリープ破断データから求めたクリープ破断時間で除したものを積算することにより算出する。なお、クリープ破断データとしては、応力とラーソン・ミラー・パラメータ(以下、「LMP」という。)の関係を用いることができる。
ここで、LMPとは、異なる温度におけるクリープ破断データを統一的に整理するためのパラメータであり、以下の(10)式で整理することができる。
LMP=T×(C+logT) (10)
(T:温度、C:材料定数、T:破断時間)
なお、材料毎のクリープ破断LMP、及び材料定数Cについては、応力とクリープ破断LMPの近似式から算出している。
フープ応力σは以下の(11)式より算出することができる。
σ=P(D-w)/2/w (11)
(P:内圧、D:管の外径、w:管の肉厚)
以上より、あるスケール厚さd-1μmからdμmに要する成長時間をΔtとするとクリープ寿命消費率φは以下の(12)式により算出することができる。
φ=Δt/10(LMP/(273.15+TM)-C)×100 (12)
(TM:スケール厚さdμmの管壁中央温度)
前記した(12)式に基づいて単位スケール厚毎のクリープ寿命消費率φを算出し、さらに水蒸気酸化スケール厚がゼロから積算することにより、図6に示す運転時間とクリープ寿命消費率φの関係を曲線で描いたクリープ寿命消費率カーブとして表すことができる。
クリープ余寿命は、各クリープ寿命消費率φの積算値が100%に至る時間から現在の運転時間を差し引くことにより得られる。即ち、図6のクリープ寿命消費率カーブにおいてはクリープ寿命消費率φの積算値が100%に至る運転時間が約260,000時間となる。そして、現在の運転時間が200,000時間である場合、260,000時間から200,000時間を差し引いた60,000時間がクリープ余寿命となる。
[スケール成長に基づく余寿命評価計算フォーマット]
図7には、実際にクリープ余寿命を算出する際に使用するクリープ余寿命計算フォーマットの一例を示す。クリープ余寿命計算フォーマットは、例えば記憶部20に記憶されており、作業者はクリープ寿命の計算に必要な情報を入力部30から入力することで、自動計算によりクリープ余寿命の算出が可能となる。
クリープ余寿命計算フォーマットでは、まず評価対象部位における項目NO.1~NO.11、及びNO.13~NO.15の基本情報(例えば伝熱管の管寸法、運転時間、測定スケール厚さ、入口蒸気温度、出口蒸気温度、高さレベル等による蒸気温度補正値、蒸気圧力、及び蒸気流量等)を入力することで、計算に必要なデータが整う。
クリープ余寿命計算フォーマットの項目NO.1~NO.11、及びNO.13~NO.15が入力されると、項目NO.12、及び項目NO.16~NO.27が自動計算される。このとき、実測スケール厚さの成長に要する計算時間(NO.31)が運転時間となるように実熱流束(NO.28)を探索し、スケール成長推定カーブ(図4)、メタル温度上昇カーブ(図5)、及びクリープ寿命消費率カーブ(図6)が得られ、これらから現時点での寿命消費率、及び余寿命を推定することができる。
以上のように、クリープ余寿命を算出する際には、必要な情報をクリープ余寿命計算フォーマットに入力するだけで、評価対象となる伝熱管のクリープ余寿命を簡単に算出することができる。
[余寿命評価方法の検証]
本発明における伝熱管の余寿命評価方法を検証するために、実物のボイラ装置から噴破した伝熱管(以下、「噴破管」という。)による検証を行った。噴破管の上流側内表面に形成されたスケール厚は実測で略300μm程度であり、運転時間は約14万時間であった。この噴破管の実データに基づいて前記した余寿命評価計算フォーマットにより試算した結果を図8に示す。
図8は、出口蒸気温度が439℃で試算した噴破管について、運転時間約14万時間の時点でのスケール厚さとクリープ寿命消費率の関係を示すグラフである。
図8に示す通り、噴破管はスケール厚さが300μm以上で余寿命が急減しており、スケール厚さが200μm以下では余寿命が十分であることが読み取れる。
以上、本発明に係る伝熱管の余寿命評価方法、及び伝熱管の余寿命評価装置は、伝熱管のクリープ余寿命を正確に予測することが可能となる。
1 余寿命評価装置
10 制御部
11 熱流束決定部
12 温度演算部
13 クリープ余寿命演算部
20 記憶部
21 クリープ余寿命評価プログラム
30 入力部
40 表示部
50 メモリ

Claims (6)

  1. 伝熱管の管内表面に形成される水蒸気酸化スケール厚と該水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を所定の熱流束を与えることで演算できる演算表に基づいて、伝熱管の評価対象部位における水蒸気酸化スケールの実測厚さの成長に要する成長時間がボイラの実運転時間に略一致する熱流束を実熱流束として決定するステップと、
    該熱流束に基づいて前記評価対象部位の管壁中央部の温度を求めるステップと、
    該管壁中央部の温度、及び応力から前記評価対象部位におけるクリープ余寿命を推定するステップと、を備える
    伝熱管の余寿命評価方法。
  2. 前記演算表は、
    前記伝熱管を流れる水蒸気の温度を取得するステップと、
    水蒸気酸化スケール厚がゼロの場合における前記伝熱管内を流れる水蒸気に起因する前記伝熱管内表面の上昇温度である第1の温度を演算するステップと、
    前記水蒸気の温度に前記第1の温度を加算した温度を前記伝熱管内表面の初期温度として水蒸気酸化スケール厚がゼロから所定のスケール厚に成長するまでの成長時間の演算を1回目の演算とした場合に、以後、所定のスケール厚単位毎の成長時間の演算をn回目(nは2以上の整数)まで繰り返すステップと、により作成される
    請求項1に記載の伝熱管の余寿命評価方法。
  3. 前記n回目の演算は、
    n-1回目の演算までに成長した前記水蒸気酸化スケール厚に起因する前記伝熱管内表面の上昇温度である第2の温度を前記初期温度に加算した温度に基づいて前記水蒸気酸化スケール厚の成長時間を演算する
    請求項2に記載の伝熱管の余寿命評価方法。
  4. 前記第1の温度は水蒸気の前記伝熱管への熱伝達率、及び前記熱流束を考慮した温度であり、
    前記第2の温度は水蒸気酸化スケールのスケール厚に応じた前記伝熱管への熱伝導率、及び前記熱流束を考慮した温度である
    請求項2または請求項3に記載の伝熱管の余寿命評価方法。
  5. 前記クリープ余寿命を推定するステップは、
    前記水蒸気酸化スケールの所定のスケール厚単位におけるクリープ寿命に対する消費割合であるクリープ寿命消費率を演算するステップと、
    前記クリープ寿命消費率を、前記水蒸気酸化スケール厚がゼロから所定のスケール厚まで積算することでボイラ運転時間とクリープ寿命消費率の関係性を演算するステップと、
    クリープ寿命消費率100%に対応するボイラ運転時間から、評価時点におけるボイラ運転時間を減算するステップと、を有する
    請求項1から請求項4の何れか一項に記載の伝熱管の余寿命評価方法。
  6. 伝熱管の管内表面に形成される水蒸気酸化スケール厚と該水蒸気酸化スケール厚の成長時間との関係性を演算する演算部と、
    伝熱管の評価対象部位における水蒸気酸化スケールの実測厚さの成長に要する成長時間がボイラの実運転時間となる実熱流束を前記演算部に基づいて決定する熱流束決定部と、
    前記実熱流束に基づいて前記評価対象部位の管壁中央部の温度を演算する温度演算部と、
    前記管壁中央部の温度、及び応力から前記評価対象部位におけるクリープ余寿命を演算するクリープ余寿命演算部と、を備える
    伝熱管の余寿命評価装置。
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