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図1は、最長ヒトタウアイソフォーム(2N4R)の模式図を示す。このアイソフォームのN末端(N末端)、中間ドメイン、MTBRおよびC末端(C末端)が特定され、他のタウアイソフォーム(例えば、2N3R、1NR4、1N3R、0N4Rおよび0N3R)について予測可能な方法で変化する。
図2Aは、本発明のいくつかの方法を説明する模式図である。青色ボックス(右)内に詳述された方法は、一つの方法である。赤色ボックス(左)と青色ボックス(右)の組み合わせはその他の方法である。
図2Bは、本発明のいくつかの方法を説明する模式図である。青色ボックス(右)内に示された方法は、一つの方法である。赤色ボックス(左)と青色ボックス(右)の組み合わせはその他の方法である。
図3Aは、CSFの一試験サンプルからタウペプチドを定量する能力について、3つのサンプル処理方法の効果を比較したグラフである。CSFの試験サンプルは一個体からではなく、CSFに関連する疾患状態は入手不可能あった。タウ-441ペプチドをx軸に、14N/15N比をy軸に示す。抗体HJ8.5およびTau1により認識されるエピトープの相対的位置(各々「Y」として示す)が示される。IP方法で処理したサンプルにおいて(緑色三角)、MTBR領域からのタウのトリプシン消化ペプチドは、検出可能ではあるものの、N末端~中間ドメインのタウのトリプシン消化ペプチドよりはるかに低いシグナルであり、ADを含む慢性神経変性疾患および健常ボランティアからのヒトCSFで定量不可能であった。対照的に、これらのペプチドは、CX方法(青色丸)またはPostIP-CX方法(赤色四角)で処理したサンプルで容易に検出できた。
図3Bは、サンプル処理が下流方法により検出されたタウタンパク質の集団にどのように影響し得るかを示す図である。IP方法において(緑色点線で囲む)、抗体(それぞれHJ8.5およびTau1により例示)により認識されるN末端および中間ドメインエピトープを有するタウ種は、免疫沈殿する。PostIP-CX方法において(赤色点線で囲む)、免疫沈殿および沈殿後に存在するタウ種は、免疫沈殿(「MTBR-C」図により例示)で使用した抗体により認識されるエピトープを有さず、またはエピトープは接近可能ではない(線形形態タウの図により例示)。免疫沈殿を予めすることなく行うCX方法(青色点線で囲む)は、IP方法およびPostIP-CX方法に由来するタウ種を含むサンプルをもたらす。
図4は、LOAD100およびLOAD60 CSFサンプルで評価したpT217%(x軸)対Aβ42/40濃度(y軸)のグラフである。水平点線は、CSF Aβ42/40濃度により規定したアミロイド状態を画定する(CSF Aβ42/40>0.1389=アミロイド陽性およびCSF Aβ42/40<0.1389=アミロイド陰性)。示されるとおり、p217%は、このカットオフにより規定されたアミロイド状態と極めて良好に相関する。
図5は、実施例1に記載のIP方法(IP_TPPS、左側グラフ)または実施例1および2に記載のPostIP-CX方法(PostlP_HVPG、右側グラフ)により処理されたCSFサンプルにおける、マススペクトロメトリーにより定量した2種のタウのトリプシン消化ペプチド、TPPSおよびHVPGのグラフを示す。CSFサンプルは、CDRスコアおよびアミロイド状態により同定される。2グラフ間のグラフは、タウ-441におけるトリプシン消化ペプチドの相対的位置を示す。NS - 非有意。
図6Aは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおけるタウのトリプシン消化ペプチド、HVPG対Aβ42/40の量を示すグラフである。CSFサンプルをアミロイド状態により特定した - アミロイド陽性(赤色)またはアミロイド陰性(青色)。データは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルのHVPGの測定が、Aβ42/40の観点でのアミロイド状態との強い相関により証明されるとおり、脳におけるアミロイド状態を再現することを示す。
図6Bは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチド、HVPG対pT217%の量を示すグラフである。CSFサンプルをアミロイド状態により特定した - アミロイド陽性(赤色)またはアミロイド陰性(青色)。データは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルのHVPGの測定が、pT217%の観点でのアミロイド状態との強い相関により証明されるとおり、脳におけるアミロイド状態を再現することを示す。
図7A、図7Bおよび図7Cは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける3種のタウのトリプシン消化ペプチド、LQTA(図7A)、HVPG(図7B)およびIGSL(図7C)を示すグラフである。CSFサンプルを、CDRスコアおよびアミロイド状態によりグループ分けする。データは、LQTAが、症候性段階であっても、アミロイド陰性対象と比較して、アミロイド陽性対象で増加する;HVPGが、特に無症候性段階で、アミロイド陰性対象と比較して、アミロイド陽性対象で増加する;そして、IGSLが、アミロイド陰性対象と比較して、アミロイド陽性対象で増加し、症候性段階後に減少することを示す。
図8A、図8Bおよび図8Cは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける、3種のタウのトリプシン消化ペプチド、LQTA(図8A)、HVPG(図8B)およびIGSL(図8C)の量をそれぞれ示すグラフである。個々の患者からの長期的サンプルを、記号により示すアミロイド状態と共に示す(CDR0=黒色丸、CDR0.5=青色三角、CDR1=赤色四角、CDR2=紫色逆三角)。対応ありt検定を、個々の参加者の1回目および2回目の来院結果に使用した。アミロイド陽性群は、各患者で方向の有意な変化を示した。タウ-PETシグナルが高であり(>2 SUVR)、CDRスコアがCDR1からCDR2に変わった参加者A(赤色太線により示す)で観察された変化も注目に値した。この患者について、タウ病理進行により、LQTAは増加し(図8A)、HVPGは減少し(図8B)、そしてIGSLは減少した(図8C)。
図9A、図9Bおよび図9Cは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける3種のタウのトリプシン消化ペプチドの量対サンプルを得た対象におけるCDR-SBスコアを示すグラフである。3種のタウのトリプシン消化ペプチドは、それぞれ、LQTA、HVPGおよびIGSLである。アミロイド陽性対象は青色丸であり、アミロイド陰性対象は赤色四角である。付随する統計解析により示されるとおり、LQTAのみがCDR-SBと有意に相関する。
図10A、図10Bおよび図10Cは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける3種のタウのトリプシン消化ペプチドの量対サンプルを得た対象におけるミニメンタルステート試験(MMSE)スコアを示すグラフである。3種のタウのトリプシン消化ペプチドは、それぞれ、LQTA、HVPGおよびIGSLである。アミロイド陽性対象は青色丸であり、アミロイド陰性対象は赤色四角である。付随する統計解析により示されるとおり、LQTAのみがMMSEと有意に相関する。
図11A、図11Bおよび図11Cは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける3種のタウのトリプシン消化ペプチドの量対サンプルを得た対象におけるタウ-PETスコアを示すグラフである。3種のタウのトリプシン消化ペプチドは、それぞれ、LQTA、HVPGおよびIGSLである。アミロイド陽性対象は青色丸であり、アミロイド陰性対象は赤色四角である。付随する統計解析により示されるとおり、LQTAのみがタウ-PETと有意に相関する。MTBRタウの他のトリプシン消化ペプチドは有意に相関しなかった。
図12Aおよび図12Bは、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおけるタウのトリプシン消化ペプチド、LQTAの量対CDR-SB(図12A)およびMMSE(図12B)を示すグラフである。データは、認知機能障害の2種の異なる測定により評価して、LQTAは認知機能と有意な相関を示した。
図13Aは、IP方法(x軸)およびPostIP-CX方法(y軸)により処理したサンプルにおけるタウのトリプシン消化ペプチド、LQTAの量を示すグラフである。アミロイド陽性対象を赤色記号で特定し、アミロイド陰性対象を青色記号で特定する。付随する統計解析により示されるとおり、「MTBR関連LQTA」(PostIP-CX方法で処理したサンプルで測定)のみが、アミロイド陽性群でアミロイド陰性群よりも増加した。
図13Bおよび図13Cは、それぞれ、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法またはIP方法で処理したCSFサンプルにおけるタウのトリプシン消化ペプチド、LQTAの量を示すグラフである。CSFサンプルを、CDRスコアおよびアミロイド状態によりグループ分けする。データは、LQTA特異的特徴(すなわち、症候性段階後の直線的増加)が「MTBR関連LTQA」でのみ観察されたことを示す。データは、個々の結果(プロット)および平均(バー)として示す。統計試験における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。NS=非有意。統計的差異を、ベンジャミン・ホッシュバーグ偽陽性率(FDR)方法を使用する複数比較補正を伴う一元配置ANOVAで、FDRを5%で設定して評価した。
図14は、アミロイド状態を決定するための、IP方法(青色(下部)線)またはPostIP-CX方法(赤色(上部)線)に従うマススペクトロメトリーにより測定した、タウのトリプシン消化ペプチド、LQTAの感受性および特異性を比較する受信者動作特性曲線(ROC)を示すグラフである。曲線は、PostIP-LQTA(MTBR関連LQTA)がIP-LQTAよりもアミロイド状態を良好に識別することを示す。
図15Aおよび図15Bは、IGSL対HVPG比が、識別力を押し上げることを示す。図15Aは、実施例1および2に記載するPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける、比(IGSL/LQTA)として示す、タウのトリプシン消化ペプチド、IGSLおよびLQTAの量を示すグラフである。CSFサンプルを、CDRスコアおよびアミロイド状態によりグループ分けする。図15Bは、IGSL/LQTA比とpT205%の相関を示すグラフである。pT205%を、先に記載のとおり測定した(Barthelemy, N.R., Li, Y, Joseph-Mathurin, N. et al. Nat Med 26, 398-407 (2020))。IGSL/LQTAは、pT205と極めて密接な相関を示し、これは、発症AD発症近くで調節される。
図15Cおよび図15Dは、IGSL対HVPG比が識別力を押し上げることを示す。図15Cは、実施例1および2に記載するPostIP-CX方法により処理したCSFサンプルにおける、比(IGSL/HVPG)として示すタウのトリプシン消化ペプチド、IGSLおよびHVPGの量を示すグラフである。CSFサンプルを、CDRスコアおよびアミロイド状態によりグループ分けする。図15Dは、IGSL/LQTA比とpT217%の相関を示すグラフである。IGSL/HVPGはpT217と極めて密接な相関を示し、これは、アミロイド状態を再現する。
図16は、タウ病理がアルツハイマー病の異なる相を通して進展することを示す、図である。確定的アルツハイマー病変異を有する参加者群における4種の異なる可溶性タウ種および不溶性タウの測定により、約40年にわたる経過における(x軸)、タウ関連変化を明らかにし(y軸)、疾患段階および他の測定可能バイオマーカーに基づき、異なることを示した。原線維アミロイド病理の進展から開始して、217位(紫色)および181位(青色)でのリン酸化が増加し始める。ニューロン機能不全が増加するに連れ(代謝変化に基づく)、205位でのリン酸化(緑色)が可溶性タウ(橙色)と共に増加する。最後に、神経変性の発症に伴い(脳萎縮および認知低下に基づく)、Tau-PET濃縮体(赤色)が進展し始め、217位および181位のリン酸化は減少し始める。まとめると、これにより、疾患経過における可溶性および凝集タウの動的および分岐パターンおよびアミロイド病理との密接な相関が強調される。
図17は、アルツハイマー病(AD)進行の間に、MTBRタウの種々の領域の切断に対する接近性がどのように変わり得るかおよびなぜ配列番号3のアミノ酸配列(LQTAPVPMPDLK)を含むMTBRタウ種が、全AD段階にわたりタウ病理の良好なサロゲートであるかを示す理論的モデルの図である。発症前AD段階において、脳タウ凝集体は未成熟であり、プロテアーゼのより広範な接近を可能とする。MTBRタウ243、MTBRタウ299およびMTBRタウ354を含むMTBRタウ種は、CSFに分泌される。しかしながら、疾患進行に連れてタウ凝集体が成熟し、堅さを増していくコアを形成し、MTBRタウ354、次いでMTBRタウ299へのプロテアーゼ接近は減少し、MTBRタウ354、次いでMTBRタウ299を含むMTBR種はCSFで安定化される。しかしながら、MTBRタウ243は、全疾患段階で暴露されたままであり、プロテアーゼ消化およびCSFへの放出が可能である。CSFにおけるこれら3種の不均衡が、脳タウ凝集体形成の兆候として観察される。註:この図において、MTBRタウ種間のサイズ差は描かれていない。
図18Aは、実施例3で定量し、図18Bおよび図18Cにさらに記載するタウ(灰色バー)からのトリプシン消化ペプチドの模式図である。
図18Bおよび図18Cは、対照脳抽出物と比較して、凝集アルツハイマー病脳不溶性抽出物でMTBRタウ243、299および354を含む脳MTBRタウ種が富化され、MTBRタウがアルツハイマー病脳で特異的に沈着されることを示す、グラフである。グラフは、(図18B)対照およびアルツハイマー病脳(n=2で、発見コホートにおける6~8脳領域サンプル/群)および(図18C)対照(アミロイド陰性、n=8)、極軽度乃至中程度アルツハイマー病(AD)(アミロイド陽性、CDR=0.5~2、n=5)および重度AD脳(アミロイド陽性、CDR=3、n=7)からのタウペプチドの富化プロファイルを示す(検証コホートで計n=20)。タウペプチドの相対的存在量を、内部正規化のために中間ドメイン(残基181~190)ペプチドに対して定量した。微小管結合領域(MTBR)ドメインの上流領域(残基243~254、MTBRタウ243)および反復領域2(R2)からR3およびR4(残基299~317それぞれ、MTBRタウ299および354~369、MTBRタウ354)を含む種は、CDRにより評価して、対照に比してアルツハイマー病脳の不溶性フラクションで高度に富化され、疾患進行の臨床病期までに特に富化された。MTBRタウ299およびMTBRタウ354は線維コア内部に位置し、一方、MTBRタウ243はアルツハイマー病凝集体コアの外部に位置する(Fitzpatrick et at., 2017)。注目すべきことには、残基195~209は、おそらく高度なリン酸化により、アルツハイマー病脳で減少する。データを、中央、四分位間間隔、最小、最高および外れ値の個々の点を示すテューキー法での箱ひげ図として表わす。統計試験における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図19Aは、実施例3で定量し、図19Bおよび図19Cにさらに記載するタウ(灰色バー)からのトリプシン消化ペプチドならびに抗体HJ8.5およびTau1の一般的結合部位の模式図である。
図19Bは、対照ヒトCSFにおけるタウプロファイルを示すグラフである。アミロイド陰性およびCDR=0患者の横断的コホート(n=30)からの対照ヒトCSFにおけるタウペプチドを、N末端~中間ドメインタウに焦点を絞ったTau1/FIJ8.5免疫沈殿により定量した。微小管結合領域(MTBR)およびC末端領域を含む種の定量のために、免疫沈殿後CSFサンプルを化学的に抽出し、連続して分析した。Tau1/FIJ8.5免疫沈殿方法(青色丸)を使用して、ペプチド回収は、残基222後劇的に減少し、従って、N末端~中間ドメインタウ(残基6~23から243~254)ペプチドのみをこの方法で定量した(Sato et at., 2018)。対照的に、免疫沈殿後CSFの化学抽出方法(赤色四角)は、0.4~7ng/mL濃度でMTBRからC末端領域を含む領域全体の定量を可能とする。データを平均として示す。
図20A、図20Bおよび図20Cは、横断的コホートからのPostlP-CX CSFにおける中間ドメイン非依存的MTBRタウ243(図20A)、中間ドメイン非依存的MTBRタウ299(図20B)および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354(図20C)の量を示すグラフである。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243、中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354は、アミロイドプラークおよび臨床的認知症段階に対して異なるプロファイルを示す。アミロイド陰性CDR=0(対照、n=30)、アミロイド陽性CDR=0(発症前AD、n=18)、アミロイド陽性CDR=0.5(極軽度AD、n=28)、アミロイド陽性CDR>1(軽度~中程度AD、n=12)およびアミロイド陰性CDR>0.5(非AD認知機能障害、n=12)。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243は、全臨床病期をとおして、アルツハイマー病進行と共に増加し続ける。中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354濃度は、極軽度アルツハイマー病段階(アミロイド陽性およびCDR=0.5)まで増加し続けるが、その後CDR>1で飽和(MTBRタウ299)または減少(MTBRタウ354)する。赤色または青色文字のp値は、それぞれ有意な増加または減少を示す。データは、個々の結果(プロット)および平均(バー)として示す。統計試験における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。NS=非有意。
図21A、図21Bおよび図21Cは、アミロイド陰性(-)または陽性(+)患者のCSFにおける(図21A)中間ドメイン非依存的MTBRタウ243、(図21B)中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および(図21C)中間ドメイン非依存的MTBRタウ354の長期的変化率(ng/mL/年)を示すグラフを示す(長期的コホートから計n=28)。アミロイド陽性群を、CDR=0~0(n=7)、CDR=0~0.5(n=2)、CDR=0~1(n=1)、CDR=0.5~0.5(n=2)、CDR=0.5~1(n=1)およびCDR=1~2(n=1、参加者A)を含む種々のCDR変化にさらに分ける。アミロイド陰性群の参加者は、有意な長期的変化を示さなかったが(平均値は0に近い)、アミロイド陽性群の大部分の参加者は、長期的にMTBRタウ濃度増加を示した。顕著なことに、アルツハイマー病臨床的発症後認知変化が最大に変化した(CDR=1~2)参加者Aは、軽度AD(CDR=1)から中程度AD(CDR=2)進行のCSF MTBRタウ243増加しか示さず、MTBRタウ299および354は減少した。これらのデータは、CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ種が、アルツハイマー病臨床病期進行に伴い、長期的に増加することを示す。
図22A、図22Bおよび図22Cは、PostIP-CX CSFにおける(x軸)Tau-PET(AV-1451)SUVRおよび(y軸)中間ドメイン非依存的(図22A)MTBRタウ-243、(図22B)MTBRタウ-299および(図22C)MTBRタウ-354濃度を示すグラフである(対照n=15およびアルツハイマー病(AD)Tau-PETコホートからn=20)。白色丸:対照、黒色四角:AD。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243は、Tau-PET SUVRと最も有意な相関を示した(r=0.7588、p<0.0001)。これらのデータは、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)を含むCSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ種が、タウ富化体のTau-PET SUVR測定値と高度に相関し、一方他の中間ドメイン非依存的MTBRタウ領域は、タウ富化体との相関が低いことを示す。
図23Aおよび図23Bは、対照脳抽出物と比較して、アルツハイマー病脳可溶性抽出物で脳MTBRタウ243、MTBRタウ299およびMTBRタウ354が富化されていないことを示す、グラフである。図23Aは、対照およびアルツハイマー病脳からのタウペプチドの富化プロファイルを示し(n=2と発見コホートにおける8~10脳領域サンプル/群)、図23Bは、検証コホート(計n=20)における対照(アミロイド陰性、n=8)、極軽度乃至中程度アルツハイマー病(AD)(アミロイド陽性、CDR=0.5~2、n=5)および重度AD脳(アミロイド陽性、CDR=3、n=7)からのタウペプチドの富化プロファイルを示す。タウペプチドの相対的ペプチド存在量を、内部正規化のために中間ドメイン(残基181~190)ペプチドに対して定量した。可溶性タウ種における微小管結合領域(MTBR)ドメイン含有タウ種で変化は観察されず、アルツハイマー病脳で増加した不溶性MTBRタウ種と対照的であった(図18)。データを、中央、四分位間間隔、最小、最高および外れ値の個々の点を示すテューキー法での箱ひげ図として表わす。統計試験における有意性:**p<0.01、*p<0.05。
図24は、MTBRタウ354が脳不溶性抽出物におけるタウ368と相関することを示すグラフであり、各種がタウ病理の進行により識別されないことを示唆する。対照およびアルツハイマー病患者からの脳不溶性抽出物におけるMTBRタウ354およびタウ368種のマススペクトロメトリー分析を、発見コホートサンプルを使用して実施した(計23脳サンプル、アルツハイマー病#1参加者から6脳領域、アルツハイマー病#2参加者から8脳領域、対照#1参加者から5脳領域、対照#2参加者から4脳領域)。MTBRタウ354(残基354~369)およびその切断形態、タウ368(残基354~368)は、脳不溶性抽出物で密接な相関を示した(スピアマンr=0.9783)。
図25A、図25B、図25C、図25D、図25Eおよび図25Fは、PostIP-CX方法による処理、続くマススペクトロメトリー(MS)分析後のヒトCSFサンプルにおけるMTBRタウのトリプシン消化ペプチドの定量を示すグラフである。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243(図25A、図25D)、中間ドメイン非依存的MTBRタウ299(図25B、図25E)および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354(図25C、図25F)の抽出MSクロマトグラムが示される。ヒトCSFを、横断的コホートからのアミロイド陽性およびCDR=0.5極軽度アルツハイマー病参加者から得た。図25A、図25Bおよび図25Cは、内因性トリプシン消化ペプチドからのピークを示し、一方図25D、図25Eおよび図25Fは、内部標準(15N標識タウ)からのピークを示す。X軸およびY軸は、それぞれ、各ピークの保持時間およびMS強度を示す。
図26A、図26B、図26C、図26D、図26E、図26F、図26G、図26H、図26I、図26Jおよび図26Kは、IP方法によるサンプル処理、続くMS分析後のヒトCSFにおけるN末端タウおよび中間ドメインタウのトリプシン消化ペプチドの濃度を示すグラフである。N末端および中間ドメインCSFタウ種は、極早期認知症と正常を識別するが、認知症段階と相関しない。横断的コホート内の群からのCSFにおけるタウ種、残基(図26A)6~23、(図26B)25~44、(図26C)45~67、(図26D)68~87、(図26E)88~126、(図26F)151~155、(図26G)181~190、(図26H)195~209、(図26I)212~221、(図26J)226~230および(図26K)243~254濃度(残基ナンバリングはタウ441に基づく)。アミロイド陰性CDR=0(対照、n=29)、アミロイド陽性CDR=0(発症前AD、n=18)、アミロイド陽性CDR=0.5(極軽度AD、n=27)、アミロイド陽性CDR>1(軽度~中程度AD、n=12)およびアミロイド陰性CDR>0.5(非AD臨床的機能障害、n=12)。これらタウ種を、Tau1/FIJ8.5免疫沈殿方法(IP方法)を使用して単離した。赤色文字のp値は、有意を示す。データは、個々の結果(プロット)および平均(バー)として示す。統計試験における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。NS=非有意。
図27A、図27B、図27C、図27D、図27E、図27F、図27Gおよび図27Hは、PostIP-CX方法によるサンプル処理、続くMS分析後の、ヒトCSFにおけるMTBRタウのトリプシン消化ペプチドの濃度を示すグラフである。特有のアルツハイマー病アミロイドおよび臨床病期パターンは、CSFにおける中間ドメイン非依存的MTBRタウ種に特異的である。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243のみが、さらに進行した臨床病期を識別する。横断的コホート内の参加者からの免疫沈殿後サンプルから化学抽出を使用して得たCSFにおけるタウ種、残基(図27A)243~254(MTBRタウ243)、(図27B)260~267、(図27C)275~280、(図27D)282~290、(図27E)299~317(MTBRタウ299)、(図27F)354~369(MTBRタウ354)、(図27G)386~395および(図27H)396~406濃度(残基ナンバリングはタウ441に基づく)。アミロイド陰性CDR=0(対照、n=30)、アミロイド陽性CDR=0(発症前AD、n=18)、アミロイド陽性CDR=0.5(極軽度AD、n=28)、アミロイド陽性CDR>1(軽度~中程度AD、n=12)およびアミロイド陰性CDR>0.5(非AD臨床的機能障害、n=12)。赤色または青色文字のp値は、それぞれ有意な増加または減少を示す。データは、個々の結果(プロット)および平均(バー)として示す。統計試験における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。NS=非有意。
図28A、図28B、図28C、図28D、図28E、図28F、図28G、図28H、図28Iおよび図28Jは、PostIP-CX方法によるサンプル処理、続くMS分析後の、ヒトCSFにおけるN末端タウおよび中間ドメインタウのトリプシン消化ペプチドの濃度を示すグラフである。N末端および中間ドメインCSFタウ種は、精製方法に関わらず、認知症段階と相関しない(図26も参照)。横断的コホート内の群からのCSFにおけるタウ種、残基(図28A)6~23、(図28B)25~44、(図28C)45~67、(図28D)68~87、(図28E)88~126、(図28F)151~155、(図28G)181~190、(図28H)195~209、(図28I)212~221および(図28J)226~230濃度。アミロイド陰性CDR=0(対照、n=29)、アミロイド陽性CDR=0(発症前AD、n=18)、アミロイド陽性CDR=0.5(極軽度AD、n=27)、アミロイド陽性CDR>1(軽度~中程度AD、n=12)およびアミロイド陰性CDR>0.5(非AD臨床的機能障害、n=12)。これらタウ種を、Tau1/FIJ8.5免疫沈殿方法、続いて免疫沈殿後CSFの化学抽出(PostIP-CX)を使用して単離した。免疫沈殿方法および免疫沈殿後CSFの化学抽出方法からの濃度の合計を、N末端~中間ドメインタウ種について示す(総濃度として)。赤色文字のp値は、統計的有意を示す。データは、個々の結果(プロット)および平均(バー)として示す。統計試験における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。NS=非有意。
図28Kは、残基243~254を含むタウ種の総濃度を示すグラフである(IP方法およびPostIP-CX方法からの総和濃度)。
図29は、CSFにおいて中間ドメイン非依存的MTBRタウ354が中間ドメイン非依存的タウ368と相関することを示す、グラフである。CSFを、実施例3に一般的に記載するとおり、PostIP-CX方法により処理した。中間ドメイン非依存的MTBRタウ354(残基354~369)およびその切断形態、タウ368(残基354~368)は、密接な相関を示す(スピアマンr=0.8382)。結果を横断的コホートサンプルから得た(全臨床病期を含むn=100)。
図30A、図30Bおよび図30Cは、CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243が臨床的認知症等級 - ボックス総和(CDR-SB)と高度に依存し、一方中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354はしないことを示す、グラフである。CSFにおける(図30A)中間ドメイン非依存的MTBRタウ243、(図30B)中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および(図30C)中間ドメイン非依存的MTBRタウ354濃度とのCDR-SB相関。アミロイド陽性群からのCSFにおける中間ドメイン非依存的MTBRタウ243は、CDR-SBとの高度の相関を示した(r=0.5562、p<0.0001)。結果を横断的コホートサンプルから得た(アミロイド陰性n=42およびアミロイド陽性n=58)。
図31A、図31Bおよび図31Cは、CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243が、中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354よりもミニメンタルステート試験(MMSE)と高度に相関することを示す、グラフである。CSFにおける(図31A)中間ドメイン非依存的MTBRタウ243、(図31B)中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および(図31C)中間ドメイン非依存的MTBRタウ354濃度とのMMSE相関。アミロイド陽性群からのCSFにおける中間ドメイン非依存的MTBRタウ243は、MMSEと高度の相関を示した(r=0.5433、p<0.0001)。結果を横断的コホートサンプルから得た(アミロイド陰性n=42およびアミロイド陽性n=58)。
図32A、図32Bおよび図32Cは、アルツハイマー病臨床病期進行に伴う、CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243、中間ドメイン非依存的MTBRタウ299、中間ドメイン非依存的MTBRタウ354の長期的増加を示す、グラフである。アミロイド陰性(-)または陽性(+)患者におけるCSFの中間ドメイン非依存的(図32A)MTBRタウ243、(図32B)MTBRタウ299および(図32C)MTBRタウ354タウ濃度の長期的変化が示される。黒色丸:CDR=0、青色三角:CDR=0.5、赤色四角:CDR=1、紫色逆三角:CDR=2。CDR軌道が安定した(または減少している)参加者を点線で示す。1回目と2回目の来院の間にCDRが増加した参加者を実線で示す。アミロイド陽性群における赤色太線は、アルツハイマー病発症後認知変化が最大であった(CDR=1~2)特定の参加者(参加者A)の長期的軌道を示し、CSF MTBRタウ243が軽度AD(CDR=1)から中程度AD(CDR=2)でも増加することが示唆される。統計的有意性を、1回目および2回目の来院について対応ありt検定により評価した(アミロイド陰性n=14およびアミロイド陽性n=14)。**p<0.01。NS=非有意。
図33は、本発明の方法を示す模式図である。
図34A、図34Bおよび図34Cは、PostIP-CX方法(上部)対PostIP-CX方法(下部)で処理したCSFサンプルにおいて測定した、トリプシン消化ペプチドLQTA(図34A)、HVPG(図34B)およびIGSL(図34C)の量を示す、グラフである。
図35Aは、PostIP-IP方法(y軸)対PostIP-CX方法(x軸)で処理したサンプルで測定したトリプシン消化ペプチドLQTA(左)、IGST(中央)およびVQII(右)の量を示すグラフである。グラフ上部の画は、タウ441における各トリプシン消化ペプチドの相対的位置を示す。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。
図35Bは、PostIP-IP方法(y軸)対PostIP-CX方法(x軸)で処理したサンプルで測定したトリプシン消化ペプチドLDLS(左)、HVPG(中央)およびIGSL(右)の量を示す、グラフである。グラフ上部の画は、タウ441における各トリプシン消化ペプチドの相対的位置を示す。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。
図36Aは、PostIP-IP方法(y軸)対PostIP-CX方法(x軸)で処理したサンプルで測定したトリプシン消化ペプチドLQTA(左)、IGST(中央)およびVQII(右)の量を示す、グラフである。グラフ上部の画は、タウ441における各トリプシン消化ペプチドの相対的位置を示す。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。対照対象から得たサンプルは青色丸であり;認知機能障害のないアミロイド陽性対象(CDR<0.5)から得たサンプルは赤色四角であり;そして認知機能障害を有するアミロイド陽性対象(CDR>0.5)から得たサンプルは、黒色三角である。
図36Bは、PostIP-IP方法(y軸)対PostIP-CX方法(x軸)で処理したサンプルで測定したトリプシン消化ペプチドLDLS(左)、HVPG(中央)およびIGSL(右)の量を示す、グラフである。グラフ上部の画は、タウ441における各トリプシン消化ペプチドの相対的位置を示す。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。対照対象から得たサンプルは青色丸であり;認知機能障害のないアミロイド陽性対象(CDR<0.5)から得たサンプルは赤色四角であり;そして認知機能障害を有するアミロイド陽性対象(CDR>0.5)から得たサンプルは、黒色三角である。
図37Aは、種々の完全長タウアイソフォームの図である。数種のタウのトリプシン消化ペプチドの相対的位置を示す(例えば、LQTA、IGST、VQII、LDLS、HVPG、IGSL、VQIV)。各「Y」は、N末端(左)および中間ドメイン(中央)およびMTBR(右)領域に特異的に結合する抗体を表す。タウ441のアミノ酸224であるタウの主切断部位を、点線として示す。
図37Bは、実施例1に記載のIP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(左、青色丸)および非ADタウオパチーを有する対象(右、緑色丸)から得たサンプルにおける、トリプシン消化ペプチドVQIVおよびLDLSの量を、比として表わすグラフである。ns 非有意;テューキーの多重比較検定。
図37Cは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(左、青色丸)および非ADタウオパチーを有する対象(右、緑色丸)から得たサンプルにおける、トリプシン消化ペプチドVQIVおよびLDLSの量を、比として表わすグラフである。
図38は、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(青色丸)および非ADタウオパチーを有する対象(緑色三角)から得たサンプルにおける、トリプシン消化ペプチドVQIV(x軸)およびLDLS(y軸)の量を示す、グラフである。**** p<0.0001;テューキーの多重比較検定。
図39は、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(左、青色丸)、ADを有する対象(中央、赤色丸)および非ADタウオパチーを有する対象(右、緑色丸)から得たサンプルにおける、トリプシン消化ペプチドVQIVおよびLDLSの量を、比として表わすグラフである。ns 非有意;**** p<0.0001;テューキーの多重比較検定。
図40A、図40B、図40C、図40D、図40Eおよび図40Fは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(青色丸)、ADを有する対象(赤色四角)および非ADタウオパチーを有する対象(緑色三角)から得たサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチドの比較を示す、グラフである。タウのトリプシン消化ペプチドは、図40AではIGST(x軸)およびVQII(y軸)、図40BではLDLS(x軸)およびVQII(y軸)、図40CではIGSL(x軸)およびHVPG(y軸)、図40EではIGST(x軸)およびHPVG(y軸)、図40EではVQII(x軸)およびHPVG(y軸)ならびに図40FではIGST(x軸)およびHPVG(y軸)である。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。
図41は、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、非ADタウオパチーを有する対象から得たサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチドIGST対HVPG(上部左)、VQII対HVPG(上部右)およびLDLS対HVPG(下部)の量の比較を示すグラフである。右側のキー凡例は、各対象の非ADタウオパチー診断を示す。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。
図42A、図42Bおよび図42Cは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(青色丸)、ADを有する対象(赤色四角)および非ADタウオパチーを有する対象(緑色三角)から得たサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチドIGST対IGSL(図42A)、VQII対IGSL(図42B)およびLDLS対IGSL(図42C)の量の比較を示す、グラフである。両軸とも絶対的濃度を示す(ng/mL)。
図43Aは、タウのMTBR領域の図である。トリプシン消化ペプチドIGST、VQII、LDLS、HVPGおよびIGSLの相対的位置を、抗体77G7が特異的に結合するエピトープの相対的位置として示す。
図43B、図43C、図43Dおよび図43Eは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、非AD対象(左バー)、ADを有する対象(右バー)から得たサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチドIGSL/IGST(図43B)、IGSL/VQII(図43C)、IGSL/LDLS(図43D)およびIGSL/HVPG(図43E)の比を示す、グラフである。非AD対象について、青色はPSPを有する対象を示し、緑色はFTDを有する対象を示し、赤色はCBDを有する対象を示し、紫色は連続的PSP-CBDを有する対象を示す。統計的有意は、対応のないt検定とウェルチ補正により決定した。
図44A、図44B、図44C、図44Dおよび図44Eは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定して、非AD対象(青色)およびADを有する対象(赤色)から得たサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチドIGSL対IGST(図44A)、IGSL対VQII(図44B)、IGSL対LDLS(図44C)、VQII対IGST(図44D)、VQII対LDLS(図44E)、IGSL対HVPG(図43E)の量の比較を示す、グラフである。図44A、図44Bおよび図44Cにおいて、非AD対象は散布図を示し、一方、図44D、図44Eおよび図44Fにおいて、ADおよび非ADは同一の相関を示した。
図45は、ADおよび非ADタウオパチーを有する対象からのCSFにおいて測定した種々のタウのトリプシン消化ペプチドの相関を示す。ボックスで協調したデータは、ADおよび非ADタウオパチーを識別する分岐点を示唆する。
図46は、CSFタウがどのように非ADタウオパチーを機別するかの仮説を示す図である。記載するとおり、CSFにおいて、非ADタウオパチーは、脳タウ沈着の兆候として、ADより含まれる(1)R1-R2が少ないおよび(2)R3-R4が多い。
図47は、脳不溶性タウの種々のトリプシン消化ペプチドの量を示すグラフである。
図48A、図48B、図48Cおよび図48Dは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(左バー)、ADを有する対象(中央バー)および非AD対象(右バー)から得たサンプルにおけるタウのトリプシン消化ペプチドIGSL/IGST(図48A)、IGSL/VQII(図48B)、IGSL/LDLS(図48C)およびIGSL/HVPG(図48D)の比を示すグラフである。非AD対象について、黒色三角は、遺伝的に確認されたP301L FTLD(4R-タウオパチー)を有する対象を示し、黒色四角は、遺伝的に確認されたR406W FTLD(3R/4R mix)を有する対象を示す。
図49A、図49B、図49C、図49D、図49Eおよび図49Fは、実施例4に記載するPostIP-IP方法によるサンプル処理後のLC-MSにより決定した、対照対象(青色)、ADを有する対象(赤色)および非AD対象(緑色)からのCSFサンプルにおける、タウのトリプシン消化ペプチドIGSL対IGST(図49A)、IGSL対VQII(図49B)、IGSL対LDLS(図49C)、VQII対IGST(図49D)、VQII対LDLS(図49E)、IGSL対HVPG(図43F)の量の比較を示す、グラフである。図49A、図49Bおよび図49Cにおいて、非AD対象は散布図を示し、一方、図49D、図49Eおよび図49Fにおいて、対照、ADおよび非ADは同一の相関を示した。
詳細な記載
MTBRタウは、血液およびCSFにおいて複数のペプチドとして存在する。これら生物学的サンプル中のMTBRタウの検出および定量は、これらのポリペプチドがごく少量であるため、妨げられている。ここに開示する方法は、生物学的サンプルを、MTBRタウおよび他のタウ種の定量に適するサンプルに変換する処理工程の特有の組み合わせを用いる。例えば、本発明のある方法において、処理工程はあるタンパク質を枯渇させ、同時に複数のタウタンパク質を富化する。本発明の他の方法において、処理工程はあるタンパク質を枯渇させ、同時に複数のMTBRタウタンパク質を富化する。ここに開示するある方法は、特に中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の定量に適する。タウオパチーの臨床徴候および症状評価、タウオパチー診断およびタウオパチー処置指示のための、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の使用も記載される。本発明のこれらおよび他の態様およびイテレーションは、下により徹底的に記載する。
I. 定義
本発明がより容易に理解され得るように、まず一部用語を定義する。異る定義がされていない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明の実施態様が属する分野の当業者に共通して理解されるのと同じ意味を有する。ここに記載するものに類似する、改変されたまたは等価な多くの方法および材料を、過度の実験なく本発明の実施態様の実施に使用でき、好ましい材料および方法がここに記載される。本発明の実施態様の記載および請求に際し、次の用語を、以下のように定義し、使用する。
ここで使用する用語「約」は、質量、体積、時間、距離および量を含むが、これらに限定されないあらゆる数量的変動に関して、例えば、一般的測定技術および装置で生じ得る、数量の変動を含める表現である。さらに、現実に使用されているある固体および液体の操作方法を仮定するとき、一定の不注意による誤りならびに組成物の製造または方法の実施に使用される成分の製造、供給源または純度の差よる変動の可能性がある。用語「約」はまた、最大±5%であり得て、±4%、3%、2%、1%などでもあり得る、これらの変動を含む。用語「約」による修飾の有無にかかわらず、特許請求の範囲は、数量の均等値を含む。
ここで使用する抗体は、当分野で理解される完全、すなわち、2個の重鎖および2個の軽鎖からなる抗体をいい、また、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、Fvおよび一本鎖Fvなどの抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない、抗原結合領域を有するあらゆる抗体様分子もいう。用語抗体はまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体もいう。種々の抗体ベースの構築物およびフラグメントを製造および使用するための技術は、当分野で周知である。抗体の製造および特徴づけの手段も、当分野で周知である(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988参照;引用によりその全体として本明細書に包含させる)。
ここで使用する用語「アプタマー」は、生化学的活性、分子認識または結合属性の観点で、有用な生物学的活性を有するポリヌクレオチド、一般にRNAまたはDNAをいう。通常、アプタマーは、特異的エピトープ(領域)で標的分子に結合するなどの分子活性を有する。ポリペプチドへの結合に特異的であるアプタマーを、インビトロ進化方法により合成および/または同定し得ることは一般に認識される。インビトロ進化方法によるものを含むアプタマーの製造および特徴づけの手段は、当分野で周知である。例えば、引用によりその全体として本明細書に包含させるUS7,939,313参照。
用語「Aβ」は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と称される大型タンパク質のカルボキシ末端における領域に由来するペプチドをいう。APPをコードする遺伝子は染色体21に位置する。毒性効果を有し得る、多数のAβ形態がある:Aβペプチドは、一般に37~43アミノ酸配列長であるが、全体的サイズを変化させる短縮化および修飾を有し得る。細胞内または細胞外で、モノマー、オリゴマーおよび凝集形態で可溶性および不溶性区画に見られ得て、他のタンパク質または分子と複合体化し得る。Aβの有害または毒性効果は、上記形態の何れかまたは全てならびに特には記載していないその他に起因し得る。例えば、2つのこのようなAβアイソフォームはAβ40およびAβ42を含み、Ap42アイソフォームは特に線維素生成性または不溶性であり、疾患状態と関連する。用語「Aβ」は、一般に個々のAβ種を区別することなく、複数のAβ種をいう。特異的Aβ種は、ペプチドサイズ、例えば、Aβ42、Aβ40、Aβ38などにより同定される。
ここで使用する用語「Aβ42/Aβ40値」は、対象から得たサンプルにおけるAβ42の量と同サンプルにおけるAβ40の量を比較した比をいう。
「Aβアミロイド症」は、脳における臨床的に異常なAβ沈着として定義される。Aβアミロイド症を有するとして決定される対象は、ここでは「アミロイド陽性」といい、一方Aβアミロイド症を有しないとして決定される対象は、ここでは、「アミロイド陰性」という。当分野において認識されたAβアミロイド症の指標がある。本発明の時点で、Aβアミロイド症は、アミロイド造影(例えば、PiB PET、フロルベタピルまたは当分野で知られる他の造影方法)により直接測定または脳脊髄液(CSF)Aβ42減少またはCSF Aβ42/40比減少により間接的に測定される。平均皮質結合能(MCBP)スコア>0.18の[11C]PIB-PET造影は、Aβアミロイド症の指標であり、免疫沈降およびマススペクトロメトリー(IP/MS)により測定された脳脊髄液(CSF)Aβ42濃度約1ng/mlと同様である。あるいは、PIB-PETにより決定されたアミロイド陽性予測の精度を最大化するCSF Aβ42/40のカットオフ比を使用できる。これらのまたは当分野で知られるその他および/または実施例で使用される値を単独で、または組み合わせて、Aβアミロイド症の臨床的確認に使用し得る。例えば、各々、引用によりその全体として本明細書に包含させる、Klunk W E et al. Ann Neurol 55(3) 2004, Fagan A M et al. Ann Neurol, 2006, 59(3), Patterson et. al, Annals of Neurology, 2015, 78(3): 439-453またはJohnson et al., J. Nuc. Med., 2013, 54(7): 1011-1013参照。Aβアミロイド症を有する対象は、症状があってもなくてもよく、症候性対象は、Aβアミロイド症に関連する疾患の臨床的基準を満たしていても、いなくてもよい。Aβアミロイド症と関連する症状の非限定的例は、認知機能障害、行動変化、異常言語機能、感情調節不全、発作、認知症および神経系構造または機能障害を含み得る。Aβアミロイド症と関連する疾患は、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管障害(CAA)、レヴィー小体認知症および封入体筋炎を含むが、これらに限定されない。Aβアミロイド症を有する対象は、Aβアミロイド症と関連する疾患発症のリスクが増加している。
「Aβアミロイド症の臨床徴候」は、当分野で知られる、Aβ沈着の測定をいう。Aβアミロイド症の臨床徴候は、アミロイド造影(例えばPiB PET、フロルベタピルまたは当分野で知られる他の造影方法)または脳脊髄液(CSF)Aβ42またはAβ42/40比減少により同定されたAβ沈着を含み得るが、これに限定されない。例えば、引用により全体として本明細書に包含させる、Klunk WE et al. Ann Neurol 55(3) 2004, and Fagan AM et al. Ann Neurol 59(3) 2006参照。Aβアミロイド症の臨床徴候は、各々引用によりその全体として本明細書に包含させる米国特許出願14/366,831、14/523,148および14/747,453に記載の、Aβの代謝の測定、特にAβ42代謝単独の測定または他のAβバリアント(例えばAβ37、Aβ38、Aβ39、Aβ40および/または総Aβ)の代謝と比較した測定も含み得る。さらなる方法は、各々引用によりその全体として本明細書に包含させる、Albert et al. Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 170-179; McKhann et al., Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 263-269;およびSperling et al. Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 280-292に記載される。重要なことに、Aβアミロイド症の臨床徴候を有する対象は、Aβ沈着と関連する症状を有しても、有していなくてもよい。それでも、Aβアミロイド症の臨床徴候を有する対象は、Aβアミロイド症と関連する疾患発症のリスクが増加している。
「アミロイド造影の候補」は、アミロイド造影が臨床的に正当であり得る個体として医師により同定されている対象をいう。非限定的例として、アミロイド造影の候補は、1以上のAβアミロイド症の臨床徴候、1以上のAβプラーク関連症状、1以上のCAA関連症状またはこれらの組み合わせを有する対象であり得る。医師は、このような対象に対するアミロイド造影を推奨し、臨床ケアを指示し得る。他の非限定的例として、アミロイド造影の候補は、Aβアミロイド症と関連する疾患についての潜在的治験参加者(対照対象または試験対象)であり得る。
「Aβプラーク関連症状」または「CAA関連症状」は、アミロイド原線維と称される規則的に配列された原線維凝集体からなる、それぞれ、アミロイドプラークまたはCAAの形成により引き起こされるまたはそれと関連するあらゆる症状をいう。Aβプラーク関連症状の例は、ニューロン変性、認知機能障害、記憶障害、行動変化、感情調節不全、発作、神経系構造または機能障害およびアルツハイマー病またはCAA発症もしくは悪化のリスク増加を含み得るが、これらに限定されない。ニューロン変性は、ニューロン構造変化(毒性タンパク質、タンパク質凝集体など細胞内蓄積などの分子変化および軸索または樹状突起の形または長さの変化などのマクロレベル変化、髄鞘組成変化、髄鞘喪失などを含む)、ニューロン機能変化、ニューロン機能喪失、ニューロン死またはこれらの何れかの組み合わせを含み得る。認知機能障害は、記憶、注意、集中、言語、抽象的思考、創造性、実行機能、計画および秩序の困難を含み得るが、これらに限定されない。行動変化は、乱暴な動作および言葉、衝動性、抑制減少、無関心、着手減少、人格変化、アルコール、タバコまたは薬物濫用および他の耽溺関連行動を含み得るが、これらに限定されない。感情調節不全は、うつ病、不安、躁病、易怒性および感情失禁を含み得るが、これらに限定されない。発作は、全身性強直性間代性発作、複雑部分発作および非てんかん性、心因性発作を含み得るが、これらに限定されない。神経系構造または機能障害は、水頭症、パーキンソン病、睡眠障害、精神病、平衡および協調の機能障害を含み得るが、これらに限定されない。これは、単不全麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺、運動失調、バリズムおよび振戦などの運動機能障害を含み得る。これはまた嗅覚、触知、味覚、視覚および聴覚感覚を含む、感覚消失または機能不全も含み得る。さらに、これは、腸および膀胱機能不全、性機能不全、血圧および体温調節不全などの自律神経系機能障害を含み得る。最後に、これは、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、プロラクチンおよび多数の他のホルモンおよびモジュレーターの欠如および調節不全などの視床下部および下垂体の機能不全に起因するホルモン機能障害を含み得る。
ここで使用する用語「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトをいう。哺乳動物は、ヒト、霊長類、家畜、齧歯類およびペットを含むが、これらに限定されない。対象は、医療または処置を待っているかもしれない、医療または処置下にあるかもしれないまたは医療または処置を受けているかもしれない。
ここで使用する用語「対照集団」、「正常集団」または「健常」対象からのサンプルは、定性的または定量的試験結果に基づき、タウオパチーまたはAβアミロイド症または臨床的Aβアミロイド症と関連する疾患(アルツハイマー病を含むが、これに限定されない)を有しないことが臨床的に決定された対象または対象群をいう。
ここで使用する用語「血液サンプル」は、血液、好ましくは末梢(または循環)血液に由来する生物学的サンプルをいう。血液サンプルは、全血、血漿または血清であってよいが、血漿が一般に好ましい。
ここで使用する用語「アイソフォーム」は、タンパク質をコードするmRNAの選択的スプライシング、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質のタンパク分解性処理、遺伝的変異および体細胞組み換えに起因する同じタンパク質バリアントの数種の異なる形態の何れかをいう。用語「アイソフォーム」および「バリアント」は相互交換可能に使用される。
用語「タウ」は、遺伝子MAPT(またはそのホモログ)によりコードされる、複数のアイソフォームおよびインビボでC末端切断、インビボでN末端切断、インビボで翻訳後修飾またはこれらの何れかの組み合わせを受けているその種をいう。ここで使用する用語「タウ」および「タウタンパク質」および「タウ種」は、相互交換可能に使用され得る。ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、魚類、ウシ、カエル、ヤギおよびニワトリを含むが、これらに限定されない多くの動物において、タウは遺伝子MAPTによりコードされる。遺伝子がMAPTとして同定されていない動物について、ホモログを、当分野で周知の方法により同定し得る。
ヒトにおいて、MAPTのエクソン2、3および10の選択的スプライシングにより産生される、タウの6種のアイソフォームがある。これらのアイソフォームは、352~441アミノ酸長の範囲である。エクソン2および3は、各々N末端(Nと称する)に29アミノ酸インサートをコードし、完全長ヒトタウアイソフォームは両インサート(2N)、1インサート(1N)を有するかまたはインサートを有しない(0N)ことがある。全完全長ヒトタウアイソフォームはまた微小管結合ドメインの3反復(Rと称する)も有する。C末端へのエクソン10の挿入は、エクソン10によりコードされる4番目の微小管結合ドメインの挿入に至る。故に、完全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメインの4反復(エクソン10はR1、R2、R3およびR4を含む)または微小管結合ドメインの3反復(エクソン10はR1、R3およびR4を含む)。ヒトタウは、翻訳後修飾されていても、されていなくてもよい。例えば、タウがリン酸化、ユビキチン化、グリコシル化および糖化され得ることは、当分野で知られる。ヒトタウはまたC末端、N末端またはC末端およびN末端でインビボでタンパク分解処理され得るまたはされ得ない。従って、用語「ヒトタウ」は、2N3R、2N4R、1N3R、1N4R、0N3Rおよび0N4RアイソフォームならびにインビボでC末端切断、インビボでN末端切断、インビボで翻訳後修飾またはこれらの何れかの組み合わせを受けているその種を含む。タウをコードする遺伝子の選択的スプライシングは、他の動物で同様に起こる。
ここで使用する用語「タウ-441」は、441アミノ酸長である最長ヒトタウアイソフォーム(2N4Rをいう。タウ441のアミノ酸配列は、配列番号1として提供される。N末端(N term)、中間ドメイン、MTBRおよびC末端(C term)は、このアイソフォームについて図1に示される。これらの領域は、他のタウアイソフォーム(例えば、2N3R、1NR4、1N3R、0N4Rおよび0N3R)について、予測可能な方法でかわる。従って、アミノ酸位置がタウ441に対して特定されるとき、当業者は、他のアイソフォームの対応するアミノ酸位置を決定できる。
ここで使用する用語「N末端タウ」は、タウのN末端の2以上のアミノ酸(例えば、タウ441のアミノ酸1~103など)を含む、1個のタウタンパク質または複数のタウタンパク質をいう。
ここで使用する用語「中間ドメインタウ」は、タウの中間ドメインの2以上のアミノ酸(例えば、タウ441のアミノ酸104~243など)を含む、1個のタウタンパク質または複数のタウタンパク質をいう。
ここで使用する用語「MTBRタウ」は、タウの微小管結合領域(MTBR)の2以上のアミノ酸(例えば、タウ441のアミノ酸244~368など)を含む、1個のタウタンパク質または複数のタウタンパク質をいう。
ここで使用する用語「C末端タウ」は、タウのC末端の2以上のアミノ酸(例えば、タウ441のアミノ酸369~441など)を含む、1個のタウタンパク質または複数のタウタンパク質をいう。
「タウのタンパク分解ペプチド」は、インビトロタンパク分解性切断により産生されたタウタンパク質のペプチドフラグメントをいう。「タウのトリプシン消化ペプチド」は、トリプシンでのインビトロ切断により産生された、タウタンパク質のペプチドフラグメントをいう。タウのトリプシン消化ペプチドは、ここでは、その最初の4アミノ酸により示され得る。例えば、「LQTA」は、トリプシン消化ペプチドLQTAPVPMPDLK(配列番号3)をいう。最初の4アミノ酸により同定される他のトリプシン消化ペプチドの非限定的例は、IGST(配列番号2)、VQII(配列番号4)、LDLS(配列番号5)、HVPG(配列番号6)、IGSL(配列番号7)、VQIV(配列番号9)およびTPPS(配列番号10)を含む。
脳におけるタウ沈着と関連する疾患は、ここでは、「タウオパチー」と称する。用語「タウ沈着」は、変性神経突起における神経原線維濃縮体、神経絨毛糸およびタウ凝集体を含むが、これらに限定されない病理学的タウ沈着物の全形態を含む。当分野で知られるタウオパチーは、進行性核上性麻痺(PSP)、拳闘家痴呆、慢性外傷性脳症、染色体17に関連する前頭側頭骨性認知症およびパーキンソン病、リティコ・ボディグ病、グアムのパーキンソン認知症複合、神経原線維変化型認知症、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーホルデン・スパッツ病、リポフスチン沈着症、ピック病、大脳皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒病(AGD)、前頭側頭葉変性(FTLD)、アルツハイマー病(AD)および前頭側頭骨性認知症(FTD)を含むが、これらに限定されない。
タウオパチーは、病理学的タウ沈着物に見られるタウアイソフォームの優性により分類される。主に3個のMTBRを有するタウからなるタウ沈着物のタウオパチーは、「3R-タウオパチー」と称される。ピック病は、3R-タウオパチーの非限定的例である。明確にするために、一部3R-タウオパチーの病理学的タウ沈着物は、3Rアイソフォーム優性で3Rおよび4Rタウアイソフォームの混合であり得る。アルツハイマー病を有する対象の脳における細胞内神経原線維富化体(すなわちタウ沈着物)は、一般に3Rおよび4Rアイソフォーム両者をほぼ等量で含むと考えられる。主に4個のMTBRを有するタウからなるタウ沈着物のタウオパチーは、「4R-タウオパチー」と称される。PSP、CBDおよびAGDは4R-タウオパチーの非限定的例であり、FTLDの一部形態もそうである。顕著なことに、一部V334MおよびR406W変異キャリアなどの遺伝的に確認されたFTLD症例を有する一部対象の脳における病理学的タウ沈着物は、3Rと4Rアイソフォームの混合を示す。
タウオパチーの臨床徴候は、神経原線維濃縮体を含むが、これに限定されない、脳におけるタウの凝集体であり得る。脳におけるタウ凝集体を検出および定量する方法は、当分野で知られる(例えば、[18F]THK5317、[18F]THK5351、[18F]AV1451、[11C]PBB3、[18F]MK-6240、[18F]RO-948、[18F]PI-2620、[18F]GTP1、[18F]PM-PBB3および[18F]JNJ64349311、[18F]JNJ-067などのタウ特異的リガンドを使用するTau-PETなど)。
ここで使用する用語「処置」または「処置する」は、それを必要とする対象への、訓練され、免許を受けた専門家による医療の提供をいう。医療は、診断試験、治療処置および/または予防的または防止的手段であり得る。治療および予防処置の目的は、望ましくない生理学的変化または疾患/障害の予防または減速(低減)である。治療または予防処置の有益なまたは所望の臨床的結果は、検出可能であっても、検出可能でなくても、症状軽減、疾患の程度低減、疾患状態安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行緩徐化または減速、疾患状態改善または緩和および寛解(部分的であれ合計であれ)を含むが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けないときの余命と比較した生存延長も意味し得る。処置を必要とするものは、既に疾患、状態または障害を有するものならびに疾患、状態または障害を有する素因にあるものまたは疾患、状態または障害を予防すべきものを含む。従って、処置を必要とする対象は、疾患の何らかの症状または臨床徴候を有していても、有していなくてもよい。
用語「タウ治療」は、集合的に、タウオパチーを発症するリスクのある対象または臨床的にタウオパチーを有すると診断された対象について意図される、または使用される、あらゆる造影剤、治療処置および/または予防的または防止的手段をいう。造影剤の非限定的例は、機能的造影剤(例えばフルオロデオキシグルコースなど)および分子造影剤(例えば、ピッツバーグ化合物B、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射標識タウ特異的リガンド、放射性核種標識抗体など)を含む。治療剤の非限定的例は、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環式抗うつ剤など)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む)、抗タウ抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む)、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ-3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物など)、セロトニン受容体6アンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組み換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動的免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513など)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニニウムなど)、血糖管理を改善するための治療(例えば、インスリン、エキセナチド、リラグルチド、ピオグリタゾンなど)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ-1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼアクティベーター、ホスファターゼ阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、b-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチンアセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP生成選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経増殖因子刺激因子、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤、ムスカリンM1受容体アゴニスト、GABA受容体モジュレーター、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質モジュレーター、カルシウムチャネルブロッカー、抗高血圧剤、スタチンおよびこれらの何れかの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
II. タウ測定方法
本発明は、マススペクトロメトリーによる生物学的サンプルにおけるタウ測定方法を提供する。一般的に言うと、生物学的サンプルにおける本発明のタウ測定方法は、生物学的サンプルを準備し、1以上のタンパク質を枯渇させ、次いでタウを精製することにより生物学的サンプルを処理し、プロテアーゼで精製タウを開裂し、次いで所望により得られた切断生成物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て、タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを実施して、タウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出し、濃度(相対的または絶対的)を測定することを含む。故に、実際には、開示する方法は、生物学的サンプルに存在するタウを検出し、かつ量を測定するためにタウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を使用する。
一例において、本発明の方法は、(a)血液サンプルまたはCSFサンプルから選択される生物学的サンプルを準備し;(b)タンパク質沈殿により生物学的サンプルからタンパク質を除去し、沈降タンパク質を分離して、上清を得て;(c)固相抽出によりタウを上清から精製し;(d)プロテアーゼで精製タウを開裂し、次いで所望により得られた切断生成物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て;そして(e)タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを実施して、タウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出しかつ濃度を測定することを含む。
他の例において、本発明の方法は、(a)血液サンプルまたはCSFサンプルである生物学的サンプルにおいて、N末端タウ、中間ドメインタウまたはN末端タウおよび中間ドメインタウを親和性枯渇により減少させ;(b)(i)タンパク質沈殿および沈殿タンパク質の分離により生物学的サンプルからさらなるタンパク質を除去して上清を得て、次いで固相抽出によりタウを上清から精製するまたは(ii)MTBRタウを親和性精製し、それにより(i)または(ii)富化タウを産生することを含む方法により、N末端非依存的タウおよび/または中間ドメイン非依存的タウと称し得る、親和性枯渇後残存するタウを富化し;(c)富化タウをプロテアーゼで開裂し、次いで所望により固相抽出により得られた切断生成物を脱塩して、タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て;そして(d)タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー(LC/MS)を実施して、タウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出し、かつ濃度を測定することを含む。
他の例において、本開示の方法は、(a)血液サンプルまたはCSFサンプルである生物学的サンプルにおいて、N末端タウ、中間ドメインタウまたはN末端タウおよび中間ドメインタウを親和性枯渇により減少させ;(b)タンパク質沈殿および沈降タンパク質の分離により生物学的サンプルからさらなるタンパク質を除去して上清を得て;(c)固相抽出によりタウを上清から精製し;(d)プロテアーゼで精製タウを開裂し、次いで所望により得られた切断生成物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て;そして(e)タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを実施して、タウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出し、かつ濃度を測定することを含む。
他の例において、本発明の方法は、(a)血液サンプルまたはCSFサンプルである生物学的サンプルにおいて、N末端タウ、中間ドメインタウまたはN末端タウおよび中間ドメインタウを親和性枯渇により減少させ;(b)MTBRタウを親和性精製し;(c)精製MTBRタウをプロテアーゼで開裂し、次いで所望により得られた切断生成物を固相抽出により脱塩して、MTBRタウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て;そして(d)MTBRタウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを実施して、MTBRタウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出しかつ濃度を測定することを含む。
他の例において、本発明の方法は、(a)血液サンプルまたはCSFサンプルである生物学的サンプルからMTBRタウを親和性精製し;(b)精製MTBRタウをプロテアーゼで開裂し、次いで所望により得られた切断生成物を固相抽出により脱塩して、MTBRタウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て;そして(c)MTBRタウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリーを実施して、MTBRタウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出しかつ濃度を測定することを含む。
本発明は、さらに上記方法の何れにおいても、生物学的サンプルにおける1以上のタンパク質の存在/非存在の決定および/または生物学的サンプルにおける1以上のさらなるタンパク質の濃度測定を意図する。ある実施態様において、1以上のタンパク質は、タウ精製前に生物学的サンプルから枯渇させたタンパク質であり得る。例えば、ある実施態様において、N末端タウおよび/または中間ドメインタウ種を、ここに開示する定量により、タウ種(例えば、MTBRタウ、C末端タウ)と別に同定および/または定量し得る。これとは別にまたはこれに加えて、Aβ、ApoEまたは何れかの興味ある他のタンパク質を、平行して生物学的サンプルの一部の処理により、ここに開示する方法で利用する前に生物学的サンプルから興味あるタンパク質を枯渇させることによりまたはここに開示するサンプル処理工程中に生物学的サンプルから興味あるタンパク質を枯渇させることにより、同定および/または定量し得る。
生物学的サンプル、適当な内部標準および1以上のタンパク質の枯渇、タウ精製、プロテアーゼでの精製タウの開裂およびマススペクトロメトリーの工程を、下にさらに詳述する。
生物学的サンプル
適当な生物学的サンプルは、対象から得た血液サンプルまたは脳脊髄液(CSF)サンプルを含む。ある実施態様において、対象はヒトである。ヒト対象は、医療または処置を待っているかもしれない、医療または処置下にあるかもしれないまたは医療または処置を受けているかもしれない。種々の実施態様において、ヒト対象は、健常対象、神経変性疾患を発症するリスクのある対象、神経変性疾患の徴候および/または症状を有する対象または神経変性疾患を有すると診断された対象であり得る。さらなる実施態様において、神経変性疾患はタウオパチーであり得る。具体例として、タウオパチーはアルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)または前頭側頭葉変性症(FTLD)であり得る。他の実施態様において、対象は実験動物である。さらなる実施態様において、対象はヒトタウおよび所望により1以上のさらなるヒトタンパク質(例えば、ヒトAβ、ヒトApoEなど)を発現するよう遺伝子操作された実験動物である。
CSFは、留置CSFカテーテルを用いるまたは用いない腰部穿刺により得ることができる。対象から同時に集めた複数の血液またはCSFサンプルを貯留し得る。血液は、静脈カテーテルを用いまたは用いない静脈穿刺または指腹採血(またはその同等手技)で集められていてよい。集められたら、血液またはCSFサンプルを、当分野で知られる方法に従い処理し得る(例えば、全細胞および細胞破片を除去するための遠心分離;分析試験前に検体を安定化および保存するために用意された添加剤の使用など)。血液またはCSFサンプルはすぐに使用してよくまたは凍結し、無限に保存してよい。ここに開示する方法で使用する前に、生物学的サンプルを、必要または所望であれば、プロテアーゼ阻害剤、同位体標識内部標準、界面活性剤およびカオトロピック剤の添加および/または他の成分(例えばタンパク質ペプチド、代謝物)の枯渇のために、処理してもよい。
使用するサンプルサイズは、サンプルタイプ、サンプルを得た対象の健康状態および分析すべき検体(タウに加えて)に依存して変わり得る。CSFサンプル体積は、約0.01mL~約5mLまたは約0.05mL~約5mLであり得る。具体例において、サンプルサイズは、約0.05mL~約1mL CSFであり得る。血漿サンプル体積は、約0.01mL~約20mLであり得る。
(b)同位体標識、内部タウ標準
同位体標識タウを、サンプル処理中の変動の説明および所望により絶対的濃度の計算のための内部標準として使用し得る。一般に、同位体標識、内部タウ標準を、有意ななサンプル処理の前に加え、必要であれば1回以上加えてよい。例えば、図2および図33に記載する方法参照。
複数の同位体標識内部タウ標準をここに記載する。全て、少なくとも1個のアミノ酸残基に重同位体標識が取り込まれている。1以上の完全長アイソフォームが使用され得る。これとは別にまたはこれに加えて、翻訳後修飾されたタウアイソフォームおよび/またはタウのペプチドフラグメントも、当分野で知られるとおり、使用し得る。一般的に、取り込まれた標識アミノ酸残基は、化学的性質に影響することなく、ペプチドの質量を増加し、同位体標識の存在に起因する質量シフトは、マススペクトロメトリー方法で内部標準(IS)と内因性タウ検体シグナルの識別が可能となるのに十分でなければならない。ここに示すとおり、適当な重同位体標識は、2H、13Cおよび15Nを含むが、これらに限定されない。一般に、約1~10ngの内部標準が十分である。
(c)1以上のタンパク質の枯渇
本発明の方法は、サンプルから1以上のタンパク質を枯渇させる工程を含む。用語「枯渇」は、量的または数的減少を意味する。従って、タンパク質を枯渇させたサンプルは、タンパク質の量が、元のサンプルの量より測定可能に少ない何れかの量のタンパク質を有し得る。
タンパク質は、1以上のタンパク質を特に標的とする方法、例えば親和性枯渇、固相抽出または当分野で知られる他の方法により、サンプルから枯渇され得る。1つのタンパク質または複数タンパク質の標的枯渇は、そのタンパク質の下流分析が所望である状況で、使用し得る(例えば、翻訳後修飾の同定、定量、分析など)。例えば、Aβペプチドを、適当なエピトープ結合剤とのAβの親和性枯渇後に、当分野で知られる方法により同定および定量し得る。他の非限定的例として、アポリポタンパク質E(ApoE)状態を、ApoEの親和性枯渇およびApoEアイソフォームの同定後、当分野で知られる方法により決定し得る。標的枯渇は、アポリポタンパク質J、シヌクレイン、可溶性アミロイド前駆体タンパク質、アルファ-2マクログロブリン、S100B、ミエリン塩基性タンパク質、インターロイキン、TNF、TREM-2、TDP-43、YKL-40、VILIP-1、NFL、プリオンタンパク質、pNFHおよびDJ-1を含むが、これらに限定されない他のタンパク質のその後の分析のための単離にも使用し得る。あるタウタンパク質の標的枯渇も、他のタウタンパク質の富化および/またはマススペクトロメトリー分析を妨害するタンパク質の除去のために、ここで使用する。例えば、本発明のある実施態様において、N末端タウタンパク質および/または中間ドメインタウタンパク質を、マススペクトロメトリーによる分析のためのさらなるサンプル処理前にサンプルから枯渇させる。枯渇タウタンパク質の下流分析をやってもやらなくてもよいが、両選択肢は、本発明の方法において考慮される。
ある実施態様において、標的枯渇を親和性枯渇により実施し得る。親和性枯渇は、分子への特異的結合性を利用して、サンプルから興味あるタンパク質を枯渇させる方法をいう。一般に、分子は、ビーズ、樹脂、組織培養プレートなどの固体支持体に結合したリガンド(固定化リガンドと称する)である。固体支持体へのリガンドの固定化は、リガンド-タンパク質相互作用が生じた後にも生じ得る。適当なリガンドは、抗体、アプタマーおよび他のエピトープ結合剤を含む。分子は、ポリマーまたは興味あるタンパク質を選択的に吸収する他の材料でもあり得る。非限定的例として、脂肪オキシエチル化アルコール置換ポリヒドロキシメチレン(例えば、PHM-L LIPOSORB、Sigma Aldrich)を、血清からリポタンパク質(ApoEを含む)を選択的に吸収し得る。2以上の親和性枯渇剤を組み合わせて、複数タンパク質を連続的にまたは同時に枯渇させ得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ-441のアミノ酸1~243(両端を含む)内のエピトープ(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合する、少なくとも1個のエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。種々の実施態様において、1個、2個、3個またはそれ以上のエピトープ結合剤が使用され得る。2以上のエピトープ結合剤を使用するとき、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウのN末端(例えば、タウ441のアミノ酸1~103(両端を含む))内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤およびタウの中間ドメイン(例えば、タウ441のアミノ酸104~243(両端を含む))内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441(両端を含む)のエピトープアミノ酸1~35内に特異的に結合するエピトープ結合剤およびタウ441のエピトープアミノ酸104~243内(両端を含む)(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441のエピトープアミノ酸1~103内(両端を含む)(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合するエピトープ結合剤;タウ441のエピトープアミノ酸104~243内(両端を含む)(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441(両端を含む)のエピトープアミノ酸1~35内に特異的に結合するエピトープ結合剤(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内);タウ441のエピトープアミノ酸104~243内(両端を含む)(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441のエピトープアミノ酸1~103内(両端を含む)(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441(両端を含む)のエピトープアミノ酸1~35内に特異的に結合するエピトープ結合剤(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内);およびアミロイドベータエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441のエピトープアミノ酸104~243内(両端を含む)(または0Nもしくは1Nアイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、サンプルから1以上のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、連続的にまたは同時に使用し得る。
上記実施態様の何れにおいても、エピトープ結合剤は、抗体またはアプタマーを含み得る。ある実施態様において、アミロイドベータに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ5.1またはHJ5.1と同じエピトープに結合するおよび/またはHJ5.1を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。ある実施態様において、タウ441のエピトープアミノ酸1~103内(両端を含む)に特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5またはHJ8.5と同じエピトープに結合するおよび/またはHJ8.5を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。ある実施態様において、タウ441のエピトープアミノ酸104~221内(両端を含む)に特異的に結合するエピトープ結合剤は、Tau1またはTau1と同じエピトープに結合するおよび/またはTau1を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。抗体が特異的に結合するエピトープを同定する方法および2抗体間の競合的阻害を評価するアッセイは、当分野で知られる。
あるいは、タンパク質は、より一般的な方法、例えば限外濾過または酸、有機溶媒もしくは塩でのタンパク質沈殿によりサンプルから枯渇され得る。一般的に言うと、これらの方法の使用は、高存在量および高分子量タンパク質を確実に減少し、次いで、これが低分子量および/または少量のタンパク質およびペプチド(例えば、タウ、Aβなど)を富化する。
ある実施態様において、タンパク質を、沈殿によりサンプルから枯渇させ得る。すなわち、沈殿は、沈殿剤をサンプルに加え、徹底的に混合し、サンプルと沈殿剤をインキュベトとして、タンパク質を沈殿させ、遠心分離または濾過により沈殿タンパク質を分離することを含む。次いで、得られた上清を下流適用に使用し得る。必要な薬剤の量は、当分野で知られる方法により実験的に決定され得る。適当な沈殿剤は、過塩素酸、トリクロロ酢酸、アセトニトリル、メタノールなどを含む。例示的実施態様において、タンパク質を、酸沈殿によりサンプルから枯渇させる。さらなる実施態様において、タンパク質を、を、過塩素酸を使用する酸沈殿によりサンプルから枯渇させる。
非限定的例として、タンパク質を、過塩素酸を使用する酸沈殿によりサンプルから枯渇させ得る。ここで使用する「過塩素酸」は、特に断らない限り70%過塩素酸をいう。ある実施態様において、過塩素酸を最終濃度約1%v/v~約15%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度約1%v/v~約10%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度約1%v/v~約5%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度約3%v/v~約15%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度約3%v/v~約10%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度約3%v/v~約5%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度3.5%v/v~約15%v/v、3.5%v/v~約10%v/vまたは3.5%v/v~約5%v/vまで加える。他の実施態様において、過塩素酸を最終濃度約3.5%v/vまで加える。過塩素酸添加後、サンプルを良く混合し(例えば、ボルテックスミキサーにより)、一般に約10分間以上、低温に維持して、沈殿を促進する。例えば、サンプルを、約10分間~約60分間、約20分間~約60分間または約30分間~約60分間維持し得る。他の例において、サンプルを約15分間~約45分間または約30分間~約45分間維持し得る。他の例において、サンプルを約15分間~約30分間または約20分間~約40分間維持し得る。他の例において、サンプルを約30分間維持する。次いで、サンプルを低温で遠心分離して、沈殿タンパク質をペレット化し、可溶性タウを含む上清(すなわち、酸可溶性フラクション)を新しい容器に移す。上記で使用する、「低温」は、10℃以下の温度をいう。例えば、低温は、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃または約10℃であり得る。ある実施態様において、狭い温度範囲、例えば、約3℃~約5℃または約4℃が好ましい。ある実施態様において、サンプルを氷に乗せることにより、低温を達成し得る。
上記アプローチの一方または両方からの2以上の方法を組み合わせて、複数のタンパク質を連続的にまたは同時に枯渇させ得る。例えば、1以上のタンパク質を選択的に枯渇(標的枯渇)させ、続いて高存在量/分子量タンパク質を枯渇させ得る。あるいは、高存在量/分子量タンパク質をまず枯渇させ、続いて1以上のタンパク質を標的枯渇させ得る。なおさらに他の選択肢において、高存在量/分子量タンパク質をまず枯渇させ、1以上のタンパク質の第一ラウンドの標的枯渇、次いで第一ラウンドの標的と異なる1以上のタンパク質の第二ラウンドの標的枯渇が続き得る。他のイテレーションは、当業者には容易に明らかである。
(d)タウ精製
ここに開示する方法の他の工程は、タウ、特にMTBRタウの精製を含む。ある例において、MTBRタウは、N末端非依存的および/または中間ドメイン非依存的MTBRタウである。タウの精製は、部分精製でも完全精製でもよい。
ある実施態様において、本発明の方法は、固相抽出によるタウの精製を含む。固相抽出によるタウの精製は、タウを含むサンプルと、タウを吸着する吸着剤を含む固相の接触、1以上の洗浄工程および吸着剤からのタウの溶出を含む。適当な吸着剤は、逆相吸着剤を含む。適当な逆相吸着剤は当分野で知られ、アルキル結合シリカ、アリール結合シリカ、スチレン/ジビニルベンゼン材、N-ビニルピロリドン/ジビニルベンゼン材を含むが、これらに限定されない。例示的実施態様において、逆相材料は、N-ビニルピロリドンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーまたはスチレンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーである。例示的実施態様において、吸着剤は、Oasis HLB(Waters)である。タウを含む上清との接触前、吸着剤を、一般に、製造者の指示に従いまたは当分野で知られるとおり、プレコンディショニングする(例えば、水混和性有機溶媒、次いで移動相含有緩衝液で)。さらに、上清を、ある逆相材料が、イオン化検体をその他のものより強く保持するために、所望により酸性化し得る。移動相においておよび溶出のために揮発成分を使用することが、サンプル乾燥が促進されるため、好ましい。例示的実施態様において、洗浄工程は、約0.05%v/v トリフルオロ酢酸(TFA)~約1%v/v TFAまたはその等価物を含む液体相の使用を含み得る。ある例において、洗浄は、約0.05%v/v~約0.5%v/v TFAまたは約0.05%v/v~約0.1%v/v TFAを含む液体相を用い得る。ある例において、洗浄は、約0.1%v/v~約1.0%v/v TFAまたは約0.1%v/v~約0.5%v/v TFAを含む液体相を用い得る。次いで、結合タウを、約20%v/v~約50%v/vアセトニトリル(ACN)またはその等価物を含む液体相で溶出する。ある例において、タウを、約20%v/v~約40%v/v ACNまたは約20%v/v~約30%v/v ACNを含む液体相で溶出し得る。ある例において、タウを、約30%v/v~約50%v/v ACNまたは約30%v/v~約40%v/v ACNを含む液体相で溶出し得る。溶離液を、当分野で知られる方法で乾燥させ得る(例えば、真空乾燥(例えば、Speed-vac)、凍結乾燥、窒素流下の蒸発など)。
ある実施態様において、本発明の方法は、親和性精製によるMTBRタウの精製を含む。親和性精製は、ある分子への特異的結合性により興味あるタンパク質を富化する方法である。一般に、分子は、ビーズ、樹脂、組織培養プレートなどの固体支持体に結合するリガンドで(固定化リガンドと称する)ある。固体支持体へのリガンドの固定化は、リガンド-タンパク質相互作用が生じた後にも生じ得る。適当なリガンドは、抗体、アプタマーおよび他のエピトープ結合剤を含む。親和性精製によるMTBRタウの精製は、タウを含むサンプルと適当な固定化リガンドの接触、1以上の洗浄工程および固定化リガンドからのMTBRタウの溶出を含む。
ある実施態様において、本発明の方法は、タウ441のエピトープアミノ酸235~368内(両端を含む)またはタウ441のアミノ酸244~368内(両端を含む)(または他の完全長アイソフォームの同様に規定された領域内)に特異的に結合する少なくとも1個のエピトープ結合剤を使用する親和性精製によるMTBRタウの精製を含む。種々の実施態様において、1個、2個、3個またはそれ以上のエピトープ結合剤が使用され得る。2以上のエピトープ結合剤を使用するとき、連続的にまたは同時に使用し得る。適当なエピトープ結合剤の非限定的例は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載される抗体77G7、RD3、RD4、UCB1017およびPT76ならびにRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載される抗体E2814および7G6ならびにこれら抗体と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤を含む。さらなる実施態様において、本発明の方法は、MTBRタウのR1内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR2内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR3内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR4内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、3Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、4Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR1およびR2に伸びるエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR2およびR3に伸びるエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR3およびR4に伸びるエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤またはこれらの何れかの組み合わせを使用する親和性精製による、MTBRタウの精製を含む。具体例において、本発明の方法は、タウ441のアミノ酸316~355(または他の完全長アイソフォームの同じ領域)を含むエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用する親和性精製による、MTBRタウの精製を含む。種々の実施態様において、1個、2個、3個またはそれ以上のエピトープ結合剤が使用され得る。2以上のエピトープ結合剤を使用するとき、連続的にまたは同時に使用し得る。
上記実施態様の何れにおいても、エピトープ結合剤は、抗体またはアプタマーを含み得る。ある実施態様において、MTBRタウのR3およびR4内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は77G7または77G7と同じエピトープに結合するおよび/または77G7(BioLegend)を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。ある実施態様において、3Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤はRD3(de Silva et al., Neuropathology and Applied Neurobiology, 2003, 29: 288-302)またはRD3と同じエピトープに結合するおよび/またはRD3を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。ある実施態様において、4Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤はRD4(de Silva et al., Neuropathology and Applied Neurobiology, 2003, 29: 288-302)またはRD4と同じエピトープに結合するおよび/またはRD4を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。
(e)プロテアーゼでの精製タウの開裂
ここに開示する方法の他の工程は、プロテアーゼでの精製タウの開裂を含む。プロテアーゼでの精製タウの開裂は、精製タウを含むサンプルとプロテアーゼを、タウの消化に適する条件下で接触させることを含む。親和性精製を使用するとき、消化は、固定化リガンドからのタウ溶出後にまたはタウが結合している間に行ってよい。適当なプロテアーゼは、トリプシン、Lys-N、Lys-CおよびArg-Nを含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、プロテアーゼはトリプシンである。得られた切断生成物は、タウのタンパク分解ペプチドを含む組成物である。プロテアーゼがトリプシンであるとき、得られた切断生成物はタウのトリプシン消化ペプチドを含む。タンパク分解性切断後、得られた切断生成物は、一般に固相抽出により脱塩される。
(f)LC-MS
ここに開示する方法の他の工程は、タウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出し、かつ濃度を測定するためのタウを含むサンプルのタンパク分解ペプチドで液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー(LC-MS)を実施することを含む。故に、実際には、開示する方法は、生物学的サンプルに存在するタウタンパク質の検出および量の測定のための1以上のタウのタンパク分解ペプチドの使用を含む。
トリプシンがプロテアーゼである実施態様において、MTBRタウの存在を示すタウのタンパク分解ペプチドは、表Aに挙げたペプチドを含むが、これらに限定されない。消化のために別の酵素を使用するとき、得られたタンパク分解ペプチドは、わずかに異なるかもしれないが、当業者には容易に決定できる。理論に拘束されることを望まないが、2つの同じタイプの生物学的サンプル間のトリプシン消化ペプチドの量の変動は、これら生物学的サンプルを構成するMTBRタウ種の差異を反映すると考えられる。ここに開示するとおり、MTBRタウの特定のタンパク分解ペプチドの量およびMTBRタウの特定のタンパク分解ペプチドの比は、処置決定の指針となる臨床上有意義な情報を提供する。故に、MTBRタウのトリプシン消化ペプチドの検出および定量を可能とする方法は、多くの神経変性疾患の診断および処置に有用である。
タウのタンパク分解ペプチドは、高解像度マススペクトロメーターに適合した液体クロマトグラフィー系で分離できる。適当なLC-MS系は、<1.0mm IDカラムおよび約100μl/分未満の流速の使用を含み得る。好ましい実施態様において、ナノフローLC-MS系が使用される(例えば、約50~100μm IDカラムおよび流速<1μL/分、好ましくは約100~800nL/分、より好ましくは約200~600nL/分)。例示的実施態様において、LC-MS系は、0.05mM IDカラムおよび流速約400nL/分の使用を含み得る。
当分野で知られるとおりタンデムマススペクトロメトリーを使用して解像度を改善できまたは単一質量アナライザーを用いるタンデムマススペクトロメトリーの解像度を達成するためのテクノロジーを改善し得る。適当なタイプのマススペクトロメーターは、当分野で知られる。これらは、四重極、飛行時間型、イオントラップおよびOrbitrapならびに種々のタイプの質量アナライザーを一つの構造に合わせたハイブリッドマススペクトロメーター(例えば、各々ThermoFisher ScientificのOrbitrap FusionTM TribridTMマススペクトロメーターまたはOrbitrap FusionTM LumosTMマススペクトロメーター、Orbitrap TribridTM EclipseTMマススペクトロメーター、Q Exactiveマススペクトロメーター)を含むが、これらに限定されない。例示的実施態様において、LC-MS系は、Orbitrap FusionTM TribridTMマススペクトロメーター、Orbitrap FusionTM LumosTMマススペクトロメーター、Orbitrap TribridTM EclipseTMマススペクトロメーターまたは四重極と類似のまたは改善されたイオン集束およびイオン透過率を有するマススペクトロメーターから選択されるマススペクトロメーターを含み得る。適当なマススペクトロメトリープロトコールを、分析前に集めたイオンの数(例えばまたはバイトラップを使用するAGC設定)および/または注入時間を最適化することにより展開され得る。例示的実施態様において、実施例に概説したマススペクトロメトリープロトコールが使用される。
III. MTBRタウ測定の使用
本発明はまた診断、病期分類、ある疾患段階に適する処置の選択およびある処置レジメン修飾(例えば、用量変更、異なる薬物または処置モダリティへの切り替えなど)のためのタウオパチーの病理学的特徴および/または臨床症状のバイオマーカーとしての、血液またはCSFにおけるMTBRタウ種、特に中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の測定の使用を含む。病理学的特性は、タウ病理の態様(例えば、タウ沈着の量、翻訳後修飾の存在/非存在、翻訳後修飾の量など)であり得る。タウ沈着とは別にまたはそれに加えて、病理学的特性は、タウ非依存的であり得る。例えば、タウオパチーがアルツハイマー病であるとき、脳または脳の動脈におけるアミロイドベータ(Aβ)沈着である。臨床症状は、臨床的に検証された装置(例えば、MMSE、CDR-SBなど)またはタウオパチーと関連する何らかの他の臨床症状により評価して、認知症であり得る。3R-および4R-タウオパチーとして当分野で知られる他の病理学的特徴および臨床症状のバイオマーカーとして、血液またはCSFにおけるMTBRタウ種、特に中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の評価もまた意図される。有利に、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種を含むが、これに限定されないMTBRタウ種は、疾患状態と健常状態を識別するだけでなく、種々のタウオパチー間も識別する。
従って、ある態様において、本発明は、対象におけるタウオパチー関連病理を評価するであって、血液サンプルまたはCSFサンプルなどの対象から得た生物学的サンプルにおける1以上のMTBRタウ種を定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量が対象の脳におけるタウオパチー関連病理を表すものである、方法を提供する。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチーまたは4R-タウオパチーであり得る。疾患関連病理は、タウ沈着、タウ翻訳後修飾、脳および/または脳の動脈におけるアミロイドプラークまたは当分野で知られる他の病理学的特性であり得る。対象は、タウオパチーの臨床症状を有していても、有していなくてもよい。好ましい実施態様において、少なくとも1個のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。さらなる実施態様において、2以上のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。なおさらなる実施態様において、各MTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。
他の態様において、本発明は、対象におけるタウオパチーを診断する方法であって、血液サンプルまたはCSFサンプルなどの対象から得た生物学的サンプルにおける1以上のMTBRタウ種を定量し、定量したMTBRタウ種が約1.5σ以上であるときタウオパチーと診断することを含み、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さず、PET造影および/またはCSFにおけるAβ42/40測定で評価してアミロイド陰性である対照集団で測定した正規分布により規定される標準偏差である、方法を提供する。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチーまたは4R-タウオパチーであり得る。対象は、疾患の臨床症状を有していても、有していなくてもよい。好ましい実施態様において、少なくとも1個のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。さらなる実施態様において、2以上のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。なおさらなる実施態様において、各MTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。
他の態様において、本発明は、対象におけるタウオパチー疾患の安定性を測定する方法であって、対象から得た第一生物学的サンプル、次いで後の時点(例えば、数日、数週、数カ月または数年後)で同じ対象から得た第二生物学的サンプルにおける1以上のMTBRタウ種を定量し、サンプル間の定量したMTBRタウ種の差異を計算することを含み、ここで、第二サンプルにおける定量したMTBRタウ種の統計的に有意な増加は疾患進行を示し、第二サンプルにおける定量したMTBRタウ種の統計的に有意な減少は疾患改善を示し、そして変化なしは疾患安定を示すものである、方法を提供する。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチーまたは4R-タウオパチーであり得る。対象は、疾患の臨床症状を有していても、有していなくてもよく、タウ治療を受けていても、いなくてもよい。ある例において、タウ治療は、第一および第二生物学的サンプルの取得の間の期間に対象に1回以上投与され、疾患安定性評価は、タウ治療の有効性または有効性欠如を示す。好ましい実施態様において、少なくとも1個のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。さらなる実施態様において、2以上のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。なおさらなる実施態様において、各MTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。
他の態様において、本発明は、タウオパチーを有する対象を処置する方法であって、血液サンプルまたはCSFサンプルなどの対象から得た生物学的サンプルにおける1以上のMTBRタウ種を定量し;そして疾患関連病理または臨床症状の評価を改善するために対象にタウ治療を提供することを含み、ここで、対象の定量したMTBRタウ種が平均より少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差またはより好ましくは少なくとも2標準偏差上または下である(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σ異なり、ここで、σはタウオパチーの臨床徴候または症状を有さずかつPET造影および/またはCSFにおけるAβ42/40測定で評価してアミロイド陰性である対照集団で評価した正規分布により規定される標準偏差であるである)、方法を提供する。閾値(例えば平均より少なくとも1標準偏差上または下)の使用に加えて、ある実施態様において平均の上または下の変化の程度を、対象を処置するための基準として使用し得る。タウオパチーは、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチーまたは4R-タウオパチーであり得る。疾患関連病理の測定値は、PET造影により測定したタウ沈着、マススペクトロメトリーまたは他の適当な方法により測定したタウ翻訳後修飾、PET造影により測定した脳または脳の動脈におけるアミロイドプラーク、CSFにおけるAβ42/40により測定したアミロイドプラークまたは当分野で知られる他の病理学的特徴であり得る。臨床症状は、臨床的に検証された装置(例えば、MMSE、CDR-SBなど)により評価した、認知症または3R-および4R-タウオパチーについて当分野で知られる他の臨床症状である。好ましい実施態様において、少なくとも1個のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。さらなる実施態様において、2以上のMTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。なおさらなる実施態様において、各MTBRタウ種定量は中間ドメイン非依存的MTBRタウ種である。多くのタウ治療は、特異的病態生理学的変化を標的とする。例えば、Aβターゲティング治療は、一般にAβ産生減少、Aβ凝集拮抗または脳Aβクリアランス増加のために設計される;タウターゲティング治療は、一般にタウリン酸化パターン改変、タウ凝集拮抗(タウの一般的拮抗作用または特異的タウアイソフォームの拮抗作用)またはNFTクリアランス増加のために設計される;多様な治療が、CNS炎症または脳インスリン抵抗性減少などのために設計される。しかしながら、全てのタウオパチーが同じ病態生理学的変化を共有するわけではない。従って、これら種々のタウ治療の有効性は、3R-タウオパチー、混合型3R/4R-タウオパチーまたは4R-タウオパチーを有すると正確に同定された対象に投与することにより、改善され得る。
用語「中間ドメイン非依存的MTBRタウ」は、タウの中間ドメイン領域の全てまたは実質的に全ておよび故にまたN末端領域を欠く、複数のMTBRタウ種をいう。これらの中間ドメイン非依存的MTBRタウ種は、中間ドメインタウを含むタウ種が、生物学的サンプル、好ましくは血液またはCSFサンプルから、部分的にまたは完全に、枯渇された後も残る。適当な生物学的サンプルはセクションII(a)に記載され、その開示は、引用により本セクションに包含させる。中間ドメインタウの枯渇は、例えば、タウのN末端または中間ドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用する親和性枯渇により、これらタウ種の標的枯渇により実施し得る。複数のエピトープ結合剤も使用され得る- 例えば、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第一エピトープ結合剤およびタウの中間ドメイン内のエピトープに特異的に結合する第二エピトープ結合剤。さらなる詳細はセクションII(c)に見ることができ、その開示は、引用により本セクションに包含させる。一般に、出発物質における標的タンパク質の少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)が枯渇される。ある実施態様において、出発物質における標的タンパク質の約70%またはそれ以上、約80%またはそれ以上または約90%またはそれ以上が枯渇される。生物学的サンプルからの中間ドメインタウの枯渇後、(1)例えば、沈殿による他のタンパク質除去および/または固相抽出によるタウタンパク質精製による、中間ドメイン非依存的MTBRタウを含む残存タウ種の富化または(2)例えば、MTBR内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用する親和性精製による、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の選択的富化の工程を実施し得る。用語「富化」は、量または数の増加を意味する。さらなる詳細はセクションIIに見ることができ、その開示は、引用により本セクションに包含させる。好ましくは、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種は、CSFにおける量の少なくとも100倍富化される。ある例において、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種は、約100倍~約1000倍 - 例えば、約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約600倍、約700倍、約800倍、約900倍、約1000倍富化され得る。ある例において、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種は、約500倍~約1000倍またはそれ以上富化され得る。MTBRタウは、対象から得た処理CSFまたは血液サンプルで定量でき、ここで、セクションIIまたは実施例に記載のとおりまたは当分野で知られる他の方法により(例えば、多重化アッセイ(例えばLuminexによるxMAPテクノロジー、一分子タンパク質検出(例えばSimoa(登録商標)ビーズテクノロジー)など)、CSFまたは血液サンプルは中間ドメインタウが枯渇され、次いでLC-MSによりMTBRタウが富化される。生物学的サンプルから中間ドメインタウが枯渇されない実施態様において、タウは、一般に、上記方法で、かつ上記の程度まで富化される。
上記態様の各々において、適当なMTBRタウ種は、配列番号2(IGSTENLK)、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)、配列番号4(VQIINK)、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)またはこれらの組み合わせのアミノ酸
配列を含むMTBRタウ種および/または中間ドメイン非依存的MTBR種を含み得るが、これらに限定されない。評価するMTBR種の選択は、方法の意図する目的に依存し得る。例えば、タウオパチーが3R-タウオパチーであるとき、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)を含むMTBRタウ種が混合型3R/4R-タウオパチーまたは4R-タウオパチーと比較して減少し得て、一方配列番号2(IGSTENLK)、配列番号4(VQIINK)、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)および/または配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)を含むMTBRタウ種は、他のタウオパチーと比較して、変化しないかまたは増加し得る。逆に、タウオパチーが4R-タウオパチーであるとき、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)を含むMTBR種は混合型3R/4R-タウオパチーまたは3R-タウオパチーと比較して増加し得て、一方配列番号2(IGSTENLK)、配列番号4(VQIINK)、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)および/または配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)を含むMTBRタウ種は、他のタウオパチーと比較して、変化しないかまたは減少し得る。さらなる例として、4Rタウオパチーは、配列番号2(IGSTENLK)、配列番号4(VQIINK)、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)および/または配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)を含むMTBRタウ種の定量によりADと識別し得る。中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の使用は識別力を押し上げることができ、これは、2種の異なる中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の比の使用によりさらに押し上げられ得る。例えば、タウオパチーが3R-タウオパチーまたは混合型3R/4R-タウオパチーであるとき、配列番号3対配列番号6、配列番号3対配列番号8または配列番号6対配列番号8の比が使用され得る。タウオパチーが4R-タウオパチーであるとき、配列番号2、4、5または9対配列番号6、7または8の比が使用され得る。比以外の数学的手法も使用され得る。
中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の使用の例は、上記の種々の態様の説明に役立ち得るが、このような記載は本発明の範囲を限定しない。「中間ドメイン非依存的MTBRタウ243」は実施例3に詳述される。配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を有し、全て配列番号3のアミノ酸配列を含む複数の中間ドメイン非依存的MTBRタウ種のトリプシン消化ペプチドである。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量の測定は、あるサンプルにおける、中間ドメイン非依存的MTBRタウ種のこの特定の群の量を測定する、一手段である。実施例2および3に示すとおり、CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量の増加は、アルツハイマー病(AD)と関連する脳におけるAβ沈着およびタウ沈着増加の直接測定を再現する。換言すると、CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量(およびそれ故に配列番号3を含むCSF中間ドメイン非依存的MTBRタウの量)は、AD関連病理(例えば、脳におけるタウ沈着、脳におけるAβ沈着など)を表す。これらの量を、それ故に使用して、AD関連病理の評価、対象のアミロイド状態の決定および疾患の臨床症状がない対象におけるADの診断をし得る。CSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量はまた、例えばMMSEまたはCDR-SB試験の結果により定義したADの臨床病期間に測定した変化も再現する。従って、中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量(およびそれ故に配列番号3を含む中間ドメイン非依存的MTBRタウの量)を使用して、疾患スペクトラム全体(例えば、前臨床から臨床)にわたる対象におけるADを診断および病期分類できる。疾患スペクトラム全体にわたる対象におけるADの診断および病期分類のための有用性は、中間ドメイン非依存的MTBRタウの全トリプシン消化ペプチドで観察された。例えば、実施例3における中間ドメイン非依存的MTBRタウ299および中間ドメイン非依存的MTBRタウ354データ参照。これは、「配列番号3を含む中間ドメイン非依存的MTBRタウ」を構成するペプチド群が、「配列番号6を含む中間ドメイン非依存的MTBRタウ」を構成するペプチド群と異なり得て(重複しているかもしれないが)、測定法(例えば、マススペクトロメトリー、ELISAなど)と無関係に、AD(およびおそらく他のタウオパチー)の疾患特異的バイオマーカーとしての配列番号3の存在量(とりわけ)の使用を支持する。疾患診断および/または病期分類後、CSFにおける中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量の減少またはさらなる増加の阻止および/またはADの他の臨床徴候または症状の減少またはさらなる増加の阻止のために、対象に処置を施し得る。処置の選択は、中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量により情報提供される特異的疾患段階の知識により、さらに方向づけられる - 例えば、Aβ沈着予防、Aβ沈着逆転、予防タウ沈着、タウ沈着逆転および疾患の臨床徴候改善のために設計された治療は、おそらくは重複するであろうが、異なる中間ドメイン非依存的MTBRタウ243の量の対象に使用される。実施例は、さらにCSF中間ドメイン非依存的MTBRタウ243がADのバイオマーカーとして極めて有用であるが、非ADタウオパチーには有用ではないことを示す。非ADタウオパチーは、配列番号2(IGSTENLK)、配列番号4(VQIINK)、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)または配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)を含む中間ドメイン非依存的MTBRタウ種の定量およびそれらの比率により区別される。実施例は、CSFサンプルで上記原理を示すが、血液サンプルは、適当な代替として意図される。
特定の実施態様において、本発明は、対象におけるアルツハイマー病(AD)関連病理を評価する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおける配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるAD関連病理を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象の脳におけるアルツハイマー病(AD)関連タウ沈を測定する方法であって、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおける配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種を定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量が対象の脳におけるAD関連タウ沈殿を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象の脳におけるアルツハイマー病(AD)関連タウ沈着を測定する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおける配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるAD関連タウ沈着を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象のアミロイド状態を決定する方法、方法は、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;処理サンプルにおける配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種を定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量が対象の脳におけるAD関連アミロイドベータ沈着を表し、PIB-PET、例えばAnn Neurol 2016; 80:379-387に記載のPiB-PET SUVRにより決定されるアミロイド陽性を予測するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、アルツハイマー病を診断する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおける配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量し;そして、定量したMTBRタウ種が約1.5σ以上異なるときアルツハイマー病と診断することを含み、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さずPET造影(例えばAnn Neurol 2016; 80:379-387に記載のPiB-PET SUVR)により測定しておよび/またはCSFにおけるAβ42/40測定(例えば、感受性%+特異性%を最大にするPiB-PET SUVR(Ann Neurol 2016; 80:379-387)から計算したCSF Aβ42/40のカットオフ値)によりアミロイド陰性である対照集団で測定した正規分布により規定される標準偏差である、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるアルツハイマー病(AD)進行を評価する方法であって、第一処理CSFまたは血液サンプルおよび第二処理CSFまたは血液サンプルを準備し、ここで、各処理サンプルは一対象から得たものであり、各処理サンプルは中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化されており;そして、各処理サンプルについて、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量し;そして、第二サンプルと第一サンプルにおける定量したMTBRタウ種の差異を計算することを含み、ここで、第二サンプルにおける定量したMTBRタウ種の統計的に有意な増加は対象のアルツハイマー病の進行を示すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、(i)配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(ii)配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種または配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種を定量することを含み;ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおける(i)配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(ii)配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ配列を含むMTBRタウ種またはこれらの何れかの組み合わせを定量することを含み;ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、対象から得た、(a)N末端タウおよび中間ドメインタウが枯渇されているおよび(b)MTBRタウが富化されている処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、(i)配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせおよび(ii)配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、対象から得た、(a)N末端タウおよび中間ドメインタウが枯渇されているおよび(b)MTBRタウが富化されている処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、(i)配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせおよび(ii)配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、対象から得た、(a)N末端タウおよび中間ドメインタウが枯渇されているおよび(b)MTBRタウが富化されている処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、(a)配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(b)配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、(a)および(b)からの定量したMTBR種の比が4R-タウオパチーと他のタウオパチーおよび健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、3R-タウオパチーを識別する方法であって、対象から得た、(a)N末端タウおよび中間ドメインタウが枯渇されているおよび(b)MTBRタウが富化されている処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、(a)配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(b)配列番号2(IGSTENLK)、配列番号4(VQIINK)、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、(a)および(b)からの定量したMTBR種の比が3R-タウオパチーと他のタウオパチーおよび健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるタウオパチー関連病理を評価する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号5(LDLSNVQSK)、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるタウオパチー関連病理を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるタウ沈着を評価する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号5(LDLSNVQSK) のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるタウ沈着を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるタウ沈着を評価する方法であって、対象から得た、中間ドメインタウが枯渇され、MTBRタウが富化された処理CSFまたは血液サンプルを準備し;そして、処理サンプルにおいて、配列番号2(IGSTENLK)のアミ酸配列を含むMTBR種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ配列を含むMTBR種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が、3R-タウオパチーまたは4R-タウオパチー(すなわち、非ADタウオパチー)を有する対象の脳におけるタウ沈着を表すものである、方法を提供する。
次の特定の実施態様は、生物学的サンプルにおけるタウを評価する方法を含む、方法に関する。これらの実施態様の各々において、生物学的サンプルにおけるタウ測定方法は、(a)生物学的サンプルにおけるN末端タウ、中間ドメインタウまたはN末端タウおよび中間ドメインタウを親和性枯渇により減少させ、所望によりアミロイドベータの親和性枯渇により減少させ、ここで、生物学的サンプルは血液サンプルまたはCSFサンプルであり、生物学的サンプルは所望により同位体標識、タウ内部標準を含むものであり;(b)(i)タンパク質沈殿および沈殿タンパク質の分離により生物学的サンプルからさらなるタンパク質を除去して上清を得て、次いで固相抽出によりタウを上清から精製しまたは(ii)MTBRタウを親和性精製し、それにより(i)または(ii)富化タウを産生することを含む方法によりタウを富化し;(c)富化タウをプロテアーゼで開裂し、次いで所望により固相抽出により得られた切断生成物を脱塩して、タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルを得て;そして(d)タウのタンパク分解ペプチドを含むサンプルの液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー(LC/MS)を実施して、タウのタンパク分解ペプチドの少なくとも1種を検出し、かつ量を測定することを含む。工程(a)~(d)の各々のさらなる詳細は、引用によりここに包含させる、セクションIIに見られ得る。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるアルツハイマー病(AD)関連病理を評価する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり、ここで、MTRBタウ種の量が対象の脳におけるAD関連病理を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象の脳におけるアルツハイマー病(AD)関連タウ沈着を測定する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸を含むMTBRタウ種であり、ここで、MTRBタウ種の量が対象の脳におけるAD関連病理を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象の脳におけるアルツハイマー病(AD)関連タウ沈着を評価する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり、ここで、MTRBタウ種の量が対象の脳におけるAD関連病理を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象のアミロイド状態を決定する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種であり、ここで、MTRBタウ種の量が対象の脳におけるAD関連アミロイドベータ沈着を表し、PIB-PETにより決定されるアミロイド陽性を予測するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、アルツハイマー病を診断する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミ酸ノ配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり;そして、定量したMTBRタウ種が約1.5σ以上異なるときアルツハイマー病と診断することを含み、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さず、PET造影および/またはCSFにおけるAβ42/40測定で測定してアミロイド陰性である対照集団で測定した正規分布により規定される標準偏差である、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるアルツハイマー病(AD)進行を評価する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり;、第二サンプルと第一サンプルにおける定量したMTBRタウ種の差異を計算することを含み、ここで、第二サンプルにおける定量したMTBRタウ種の統計的に有意な増加は対象のアルツハイマー病の進行を示すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは(i)配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(ii)配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種または配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種であり;ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは(i)配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(ii)配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの何れかの組み合わせであり;ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは(i)配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせおよび(ii)配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり、ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは(i)配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせおよび(ii)配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり、ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、4R-タウオパチーを識別する方法であって、上記方法で生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み、ここで、測定するタウは(i)配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種および(ii)配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせであり、ここで、(i)および(ii)からの定量したMTBR種の比が、4R-タウオパチーとアルツハイマー病および健常状態を識別するものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、対象におけるタウオパチー関連病理を評価する方法であって、上記方法で中間ドメインタウが枯渇されており、かつMTBRタウが富化されている生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み;そして、処理サンプルにおいて、配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号5(LDLSNVQSK) のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるタウオパチー関連病理を表すものである、方法を提供する。
特定の実施態様において、本発明は、対象におけるタウ沈着を測定する方法であって、上記方法で中間ドメインタウが枯渇されており、かつMTBRタウが富化されている生物学的サンプルにおけるタウを測定することを含み;そして、処理サンプルにおいて、配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ配列を含むMTBR種、配列番号4(VQIINK)のアミノ配列を含むMTBR種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ配列を含むMTBR種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBR種、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ配列を含むMTBR種またはこれらの組み合わせを定量することを含み、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるタウ沈着を表すものである、方法を提供する。
他の特定の実施態様において、本発明は、処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象から得た(i)中間ドメインタウが枯渇されているおよび(ii)MTBRタウが富化されている処理CSFまたは血液サンプルを準備し;(b)処理サンプルにおいて、配列番号2(IGSTENLK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号4(VQIINK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号5(LDLSNVQSK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種、配列番号9(VQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量し;そして(c)対象にタウ病理を変えるために処置を投与することを含み、ここで、対象の処理CSFまたは血液サンプルは、定量したMTBRMTBRタウ種の量または定量したMTBRMTBRタウ種の比率が1.5σ以上異なり、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さず、PET造影および/またはCSFにおけるAβ42/40測定で評価してアミロイド陰性である対照集団で測定した正規分布により規定される標準偏差であり、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるタウ病理を表すものである、方法を提供する。ある実施態様において、タウ病理を変えるために対象に処置を投与することは、定量したMTBR種の量を変えるまたは安定化する。ある実施態様において、処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環式抗うつ剤など)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む)、抗タウ抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む)、抗TREM2抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む、TREM2アゴニスト、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ-3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物など)、セロトニン受容体6アンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組み換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動的免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513など)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニニウムなど)、血糖管理を改善するための治療(例えば、インスリン、エキセナチド、リラグルチド、ピオグリタゾンなど)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ-1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼアクティベーター、ホスファターゼ阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、b-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチンアセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP生成選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経増殖因子刺激因子、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤、ムスカリンM1受容体アゴニスト、GABA受容体モジュレーター、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質モジュレーター、カルシウムチャネルブロッカー、抗高血圧剤、スタチンおよびこれらの何れかの組み合わせを含む医薬組成物である。例示的実施態様において、医薬組成物は、キナーゼ阻害剤を含み得る。適当なキナーゼ阻害剤は、非常に多くのアミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3p、MARK、CDK5またはFynを阻害し得る。他の例示的実施態様において、医薬組成物は、ホスファターゼアクティベーターを含み得る。非限定的例として、ホスファターゼアクティベーターは、タンパク質ホスファターゼ2Aの活性を増加し得る。ある実施態様において、処置は、タウリン酸化パターンを改変する、タウ凝集に拮抗するまたは病理学的タウアイソフォームおよび/または凝集体のクリアランスを増加させる活性医薬成分を含むが、これらに限定されないタウターゲティング治療を含む医薬組成物である。ある実施態様において、処置は、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、抗TREM2抗体、TREM2アゴニスト、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼアクティベーター、ワクチンまたはタウタンパク質凝集阻害剤である。
他の特定の実施態様において、本発明は、処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象から得た(i)中間ドメインタウが枯渇されているおよび(ii)MTBRタウが富化されている処理CSFまたは血液サンプルを準備し;(b)処理サンプルにおいて、配列番号3(LQTAPVPMPDLK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号6(HVPGGGSVQIVYKPVDLSK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号7(IGSLDNITHVPGGGNK)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種、配列番号8(IGSLDNITHVPGGGN)のアミノ酸配列を含むMTBRタウ種またはこれらの組み合わせを定量し;そして(c)対象にタウ病理を変えるために処置を投与することを含み、ここで、対象の処理CSFまたは血液サンプルは、定量したMTBRタウ種の量または定量したMTBRタウ種の比率が1.5σ以上異なり、ここで、σは、タウオパチーの臨床徴候または症状を有さず、PET造影および/またはCSFにおけるAβ42/40測定で評価してアミロイド陰性である対照集団で測定した正規分布により規定される標準偏差であり、ここで、定量したMTRBタウ種の量またはそれらの比率が対象の脳におけるタウ病理を表すものである、方法を提供する。ある実施態様において、タウ病理を変えるために対象に処置を投与することは、定量したMTBR種の量を変えるまたは安定化する。ある実施態様において、処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環式抗うつ剤など)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む)、抗タウ抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む)、抗TREM2抗体(その抗原結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含む、TREM2アゴニスト、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ-3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物など)、セロトニン受容体6アンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組み換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動的免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513など)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニニウムなど)、血糖管理を改善するための治療(例えば、インスリン、エキセナチド、リラグルチド、ピオグリタゾンなど)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ-1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼアクティベーター、ホスファターゼ阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、b-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチンアセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP生成選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経増殖因子刺激因子、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤、ムスカリンM1受容体アゴニスト、GABA受容体モジュレーター、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質モジュレーター、カルシウムチャネルブロッカー、抗高血圧剤、スタチンおよびこれらの何れかの組み合わせを含む医薬組成物である。例示的実施態様において、医薬組成物は、キナーゼ阻害剤を含み得る。適当なキナーゼ阻害剤は、非常に多くのアミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3p、MARK、CDK5またはFynを阻害し得る。他の例示的実施態様において、医薬組成物は、ホスファターゼアクティベーターを含み得る。非限定的例として、ホスファターゼアクティベーターは、タンパク質ホスファターゼ2Aの活性を増加し得る。ある実施態様において、処置は、タウリン酸化パターンを改変する、タウ凝集に拮抗するまたは病理学的タウアイソフォームおよび/または凝集体のクリアランスを増加させる活性医薬成分を含むが、これらに限定されないタウターゲティング治療を含む医薬組成物である。ある実施態様において、処置は、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、抗TREM2抗体、TREM2アゴニスト、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼアクティベーター、ワクチンまたはタウタンパク質凝集阻害剤である。
次の実施例は、本発明の種々のイテレーションを説明する。次の実施例に開示する技術は、本発明の実施に際し、十分に機能することが本発明者らにより発見された技術を表すことは、当業者には認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本明細書の記載に基づいて、ここに開示された特定の実施態様を変化させることができ、なお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似する結果が得られることを認識し得る。従って、添付する図面に記載されまたは示される全ての事項は、限定的意味ではなく、説明的であると解釈されるべきである。
実施例1
MTBRタウを富化するためのいくつかのサンプル処理方法が開発されている - Sato et al., 2018に記載のN末端タウおよび中間ドメインタウ(IP)の免疫沈降方法;化学抽出方法(CX);およびIPおよびCX方法の組み合わせ(PostIP-CX)。CXおよびPostIP-CX方法は、MTBRタウの検出および定量のために特に開発された。これらの方法の概要を図2に示す。
簡潔には、CSF(約475μL)を、内部標準として、15Nタウ441(2N4R)均一標識(100pg/μL溶液約10μLまたは200pg/μL溶液約5μL)を含む溶液と混合した。N末端タウおよび中間ドメインタウ種をTau1およびHJ8.5抗体で免疫沈降させ、次いで先に記載のとおり、処理し、トリプシン消化した(Sato et al., 2018)。
CX方法について、CSF(約475μL)を、内部標準として、15Nタウ441(2N4R)均一標識(100pg/μL溶液約10μLまたは200pg/μL溶液約5μL)を含む溶液と混合した。次いで、タウを化学抽出した。高存在量のCSFタンパク質を、25μLの過塩素酸を使用して、沈殿させた。氷上での混合および15分間のインキュベーション後、混合物を20,000gで15分間、4℃で遠心分離し、上清を、次の工程に従い、Oasis HLB 96プレートμElution Plate(Waters)を使用して、さらに精製した。プレートを300μLのメタノールで1回洗浄し、500μLの0.1%FA水溶液で1回平衡化した。上清をOasis HLB 96プレートμElution Plateに加え、固相に吸着させた。次いで、固相を500μLの0.1%FA水溶液で1回洗浄した。溶出緩衝液(100μL;35%アセトニトリルおよび0.1%FA水溶液)を加え、溶離液をSpeed-vacで乾燥させた。乾燥サンプルを、50mM TEABC中50μLのトリプシン溶液(10ng/μL)に溶解し、37℃で20時間インキュベートした。
PostIP-CX方法について、免疫沈降後CSF(すなわち、上記IP方法後残存する上清)を、CX方法に記載のとおり処理した。
トリプシン消化後、全サンプルを、C18 TopTipでの固相抽出により精製した。この精製過程で、残基354~369(MTBRタウ354)および354~368(タウ368)のAQUA内部標準ペプチドの各々5fmolを、識別的定量のために添加した。サンプルの溶出前、3%過酸化水素および3%FA水溶液をビーズに加え、続いて一夜、4℃でインキュベーションして、メチオニン含有ペプチドを酸化した。溶離液を凍結乾燥し、27.5μLの2%アセトニトリルおよび0.1%FA水溶液に再懸濁して、その後PRMモードで操作するOrbitrap Fusion Lumos TribridまたはOrbitrap Tribrid Eclipseマススペクトロメーター(Thermo Scientific)に連結したnanoAcquity UPLC系でMS分析した。
図3Aに示すとおり、CXおよびPostIP-CX方法は、マススペクトロメトリーで検出および定量可能なMTBRタウ含有サンプルをもたらした。MTBRタウの定量可能シグナルは、IP方法で得られなかった。証明されていないが、類似する感受性を有するMTBRタウを検出および定量する方法も使用され得ると考えられる。
実施例2
この実施例において、晩発性アルツハイマー病を有する対象の2つの臨床コホート(LOAD100およびLOAD60)からのCSFサンプルを分析した。この分析に使用するサンプルの臨床的認知症等級(CDR)スコアおよびアミロイド状態を表1および2に示す。CSFサンプル(各約500μl)を、実施例1に記載のとおりPostIP-CX方法で処理し、マススペクトロメトリーで評価した。CSFからのCSF Aβ42およびAβ40免疫沈降は、先に記載のとおり、マススペクトロメトリーにより測定した(Patterson BW, et al., Ann Neurol 2015, 78: 439-453)。pT217%は、先に記載のとおり、マススペクトロメトリーにより測定した(Barthelemy, N.R., et al., Alz Res Therapy, 2020, 12: 26)。
CSF Aβ42/40のカットオフ値を、アミロイド状態を決定するためのPiB-PET SUVR結果から計算した。PiB-PET SUVRで確立されたカットオフ>1.42に基づき(Ann Neurol 2016; 80:379-387)、(感受性%+特異性%)は、CSF Aβ42/40について0.1389で最大化された。特に、pT217%は、一つの外れ値を伴うものの、確立されたカットオフにより定義されるアミロイド状態と優れた相関を示した(図4)。
図5~7に示すとおり、PostIP-CXサンプルで測定してMTBRと関連するタウのトリプシン消化ペプチドは、アミロイド陽性対象で有意に増加した。HVPGは、最も有意に、臨床的に無症候性段階でさえ、増加した(図5~6)。HVPGおよびIGSLの増加は症候性発症後飽和し、一方LQTAは、臨床的発症後も増加し続けた(図7~8)。LQTAの濃度は、タウの陽電子放出断層撮影(PET)で評価されるタウ病理(ピアソンr=0.84、n=35)および認知試験評価と最高の相関を示した(図9~12)。上記分析のいくつかで、アミロイド陽性CDR1およびCDR2サンプルのデータをCDR>1として合わせ、アミロイド陰性CDR0.5およびCDR1のデータをCDR>0.5として合わせた。統計分析を、FDRを5%に設定したベンジャミン・ホッシュバーグFDR方法を使用する複数比較について調節した一元配置ANOVAにより実施した。
特に、サンプル処理は、タウの診断有用性に影響することが示された。一例として、MTBRタウのトリプシン消化ペプチドHVPGは、PostIP-CXサンプルで発症前段階でアミロイド陽性とアミロイド陰性対象を識別するが、この識別力は、IPサンプルの中間ドメインタウのトリプシン消化ペプチドTPPSでは観察されなかった(図5)。TPPSトリプシン消化ペプチドのアミノ酸配列はTPPSSGEPPK(配列番号10)である。サンプル処理は、種々のCSFサンプル間のMTBRタウ量の変化を識別する能力への有意な影響も示した。例えば、トリプシン消化ペプチドLQTAは、PostIP-CXサンプルにおいて症候性段階後CSFサンプルで直線的増加を示すが、IPサンプルでは示さず(図13)、PostIP-LQTA(中間ドメイン非依存的MTBRタウ243)がIP-LQTAより良好にアミロイド状態を識別することを示す(図14)。
上記データは、AD脳凝集体で富化されるMTBRタウが、AD CSFでも増加することを示唆する。トリプシン消化ペプチドLQTAおよびHVPGがファジーコートの一部であり、それぞれタウ線維凝集の出発点であり、一方IGSLはコアの内側であるとの仮説が立てられる。ファジーコートとしての線維表面のLQTAペプチドの位置は常に露出され、CSFへの放出の可能性が増加する。HVPGの凝集における役割を考えると、未成熟線維はなお表面にHPVGを露出し、一方、本ペプチドは、成熟線維のコアに補充され得る。IGSLの線維コアにおける位置は、早期のAD段階で予測され得る。
根柢の機構とは無関係に、データは、CSFにおけるトリプシン消化ペプチドHVPGおよびLQTAを、それぞれADにおけるアミロイド状態およびタウ病理を再現するためのバイオマーカーとして使用し得ることを示唆する。殊に、LQTAのみTau-PETならびにアミロイド状態および認知低下の観点で疾患進行を通した継続的増加が示され、この領域がADにおけるタウ病理の識別に重要であることを示唆する。これらのペプチドとトリプシン消化ペプチドIGSLおよび/または他のバイオマーカーの組み合わせの使用は、対象の疾患軌道のステージ分類のときの識別力を後押しする(図15~17)。さらに、LQTAおよび他のMTBRタウペプチドを、種々のタウオパチーを識別するバイオマーカーとして使用し得る。
実施例3
この実施例において、アルツハイマー病バイオマーカーとしてのMTBRタウ種の存在および潜在的有用性が詳述される。結果は、中間ドメイン非依存的MTBRタウの相当量がCSFに存在することを示す - すなわち、N末端および中間ドメイン領域を欠くC末端フラグメント(「C末端切取り部分」)をもたらすポリペプチド配列中心付近(例えば、タウ441のアミノ酸224前後)で開裂されているタウ種。さらに、CSF MTBRタウの種々の領域が疾患進行をステージ分離し、アルツハイマー病脳内のタウ凝集と相関する。これらの発見は、脳におけるMTBRタウとCSFの相関についての新しい知見を提供し、アルツハイマー病の体液バイオマーカーとしてのCSFタウを支持する。
材料:ヒト脳サンプルの2つの異なるコホートを、この実施例の実験で使用した - 発見コホートおよび検証コホート。発見コホートは、アルツハイマー病病理を有する2参加者および病理がない2対照参加者からの死後凍結脳組織サンプルを含み、これは、Knight ADRC Pathology Core at Washington University School of Medicineから提供された。各サンプルを、National Institute on Aging and Alzheimer's Associationによりアミロイド沈着についてアミロイド段階A3(Thai相)およびタウ凝集についてTau Braak段階VI、B3と分類した。各参加者からのサンプルは、小脳、上前頭回、前頭極、側頭、後頭部、視床、扁桃体、橋、頭頂葉および線条体を含む、6~10脳領域から集めた。検証コホートとして、20参加者(CSF Aβ 42/40比により8アミロイド陰性および12アミロイド陽性)の頭頂葉からのさらなる死後凍結脳組織サンプルを分析した。12アミロイド陽性サンプルを、臨床的認知症等級(CDR)スコアにより臨床群にさらに分け、極軽度乃至中程度アルツハイマー病(アミロイド陽性、CDR=0.5~2、n=5)または重度アルツハイマー病(アミロイド陽性、CDR=3、n=7)として分類した。これらのヒト試験は、Washington University Institutional Review Boardにより承認された。
ヒトCSFサンプルの3つの異なるコホートもこの実施例の実験で使用した - 横断的コホート、長期的コホートおよびTau-PETコホート(表3Aおよび表3B)。100参加者からのCSFサンプルを、横断的コホートとして分析のためにアミロイドベータ(Aβ)安定同位体標識化動態(SILK)試験(Patterson et al., 2015)から集めた。このコホートは、実施例2でLOAD100コホートとも称する。CSF収集を、先に記載のとおり実施した(Patterson et al., 2015)。簡潔には、CSFをベースライン時に集めた。次に、参加者は、10分間かけてロイシンボーラス点滴を受けた。6mLのCSFを、36時間毎時得た。30時間目に採取したCSFアリコートを、この試験でタウ種のMS測定のために使用した。アミロイド状態を、先に報告されたCSF Aβ 42/40比を使用して定義した(Patterson et al., 2015)。対応するカットオフ比(0.1389)は、ピッツバーグ化合物B(PiB)PETにより決定されたアミロイド陽性の予測精度を最大化した。アミロイド群を、表3Aに示すCDRスコアによりさらに臨床群に分けた。横断的コホートから、28参加者(14アミロイド陽性および14アミロイド陰性)を、CSFにおけるタウ種の長期的軌道の評価のために2~9年追跡した。CSFサンプルを、横断的コホートと同じ方法で集め、分析した。CSF収集時点から3年以内にTau-PET AV-1451正規化取り込み値比(SUVR)を測定した35参加者からなるTau-PETコホート(20アミロイド陽性および15アミロイド陰性、長期的コホートからの16参加者を含む)を含んだ。PET走査を先に記載のとおり実施し(Sato et al., 2018)、部分容積効果補正領域拡散関数技術を使用してSUVRに対して実施した(Su et al., 2015)。CSFサンプルを、他のコホートと同じ方法で集め、分析した。
MSによる脳タウ分析:凍結脳組織サンプルをクリオスタットを-20℃で使用してスライスし、チューブに集めた。組織(300~400mg)を、0.3mg/μLの脳組織の濃度で、25mM tris-塩酸塩(pH7.4)、150mM 塩化ナトリウム、10mM エチレンジアミン四酢酸、10mM エチレングリコール四酢酸、ホスファターゼ阻害剤カクテルおよびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む氷冷緩衝液中、超音波処理した。ホモジネートを、20分間、11,000g、4℃での遠心分離により浄化した。上清(全脳抽出物)を新しいチューブに等分し、使用するまで-80℃に維持した。全脳抽出物を、1%サルコシルと60分間、氷上でインキュベートし、続いて100,000g、4℃で60分間超遠心分離して、不溶性ペレットを得た。不溶性ペレットを200μLのPBSに再懸濁し、続いて超音波処理し、不溶性懸濁液を使用するまで-80℃に維持した。
可溶性タウ分析について、全脳抽出物におけるタウ種をTau1およびHJ8.5抗体で免疫沈降させた。免疫沈降可溶性タウ種を、先に記載のとおり、処理し、消化した(Sato et al., 2018)。
不溶性タウ分析について、不溶性懸濁液(総タンパク質2.5μgを含む10~20μL)を、200μLの溶解緩衝液(7M 尿素、2M チオ-尿素、3%3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1プロパンスルホネート、1.5%n-オクチルグルコシド、100mMトリエチル重炭酸アンモニウム(TEABC))と混合し、続いて内部標準として15Nタウ441(2N4R)均一標識(2ng/μL、Dr. Guy Lippens, Lille University, Franceから恵与)を含む5μLの溶液を加えた。5μLの500mM ジチオトレイトールを懸濁液に加え、続いて超音波処理した。得られた溶液を15μLの500mM ヨードアセトアミドと混合し、30分間、室温、暗所でインキュベートした。タンパク質消化を、先に報告されたフィルター支援サンプル調製方法を使用して実施した(Roberts et al., 2020)。簡潔には、各調製溶液を、Nanosep 10Kフィルターユニット(PALL)に充填し、遠心分離した。100mM TEABC溶液中8M 尿素でフィルターユニット上のサンプルを洗浄後、固定化タンパク質を、0.25μgのエンドプロテイナーゼLys-Cを使用して、37℃で60分間、フィルター上で消化した。次いで、サンプルを、37℃で一夜、0.4μgトリプシンを使用してさらに消化した。
消化サンプル(可溶性および不溶性タウ種)を遠心分離により集め、次いでC18 TopTip(Glygen)で脱塩した。この精製過程で、残基354~369(MTBRタウ354)および354~368(タウ368)のAQUA内部標準ペプチドの各々50fmolを、識別的定量のために添加した。サンプルの溶出前、3%過酸化水素および3%ギ酸(FA)水溶液をビーズに加え、続いて一夜、4℃でインキュベーションして、メチオニン含有ペプチドを酸化した。溶離液を凍結乾燥し、27.5μLの2%アセトニトリルおよび0.1%FA水溶液に再懸濁して、その後並列反応モニタリング(PRM)モードで操作するOrbitrap Fusion TribridまたはOrbitrap Tribrid Eclipse(Thermo Scientific)に連結したnanoAcquity UPLC系(Waters)でMS分析した。
可溶性および不溶性タウ種両者からの16脳タウペプチドを、
15NまたはAQUA内部標準からの対応するアイソトポマーシグナルの比較により定量した(表4)。脳サンプルにまたがるペプチドプロファイル比較を、中間ドメインタウペプチド(残基181~190)により各ペプチド量を正規化して実施した。
MSによるCSFタウ分析:CSF(455μL)を、内部標準として10μLの15Nタウ441(2N4R)均一標識(100pg/μL)を含む溶液と混合した。主にN末端~中間ドメイン領域からなるタウ種をTau1およびHJ8.5抗体で免疫沈降させた。免疫沈降タウ種を、先に記載のとおり、処理し、消化した(Sato et al., 2018)。続いて、20μLの15N-タウ内部標準(100pg/μL)を、免疫沈降後CSFに添加した。次いで、タウを、一部改変した先の報告(Barthelemy et al., 2016b)のとおり、化学抽出した。高存在量のCSFタンパク質を、25μLの過塩素酸を使用して、沈殿させた。氷上での混合および15分間のインキュベーション後、混合物を20,000gで15分間、4℃で遠心分離し、上清を、次の工程に従い、Oasis HLB 96プレートμElution Plate(Waters)を使用して、さらに精製した。プレートを300μLのメタノールで1回洗浄し、500μLの0.1%FA水溶液で1回平衡化した。上清をOasis HLB 96プレートμElution Plateに加え、固相に吸着させた。次いで、固相を500μLの0.1%FA水溶液で1回洗浄した。溶出緩衝液(100μL;35%アセトニトリルおよび0.1%FA水溶液)を加え、溶離液をSpeed-vacで乾燥させた。乾燥サンプルを、50mM TEABC中50μLのトリプシン溶液(10ng/μL)に溶解し、37℃で20時間インキュベートした。
免疫沈降および化学抽出サンプル両者をインキュベーション後、各トリプシン消化物を、C18 TopTipの固相抽出により精製した。この精製過程で、残基354~369(MTBRタウ354)および354~368(タウ368)のAQUA内部標準ペプチドの各々5fmolを、識別的定量のために添加した。サンプルの溶出前、3%過酸化水素および3%FA水溶液をビーズに加え、続いて一夜、4℃でインキュベーションして、メチオニン含有ペプチドを酸化した。溶離液を凍結乾燥し、27.5μLの2%アセトニトリルおよび0.1%FA水溶液に再懸濁して、その後PRMモードで操作するOrbitrap Fusion Lumos TribridまたはOrbitrap Tribrid Eclipseマススペクトロメーター(Thermo Scientific)に連結したnanoAcquity UPLC系でMS分析した。19CSFタウペプチドを定量した(表4)。CSFタウ分析の概略手順を図2に示す。
統計分析:バイオマーカー値の差異を、特に断らない限り、一元配置ANOVAで評価した。両側p<0.05を統計的有意とみなし、5%のFDR設定でベンジャミン・ホッシュバーグ偽陽性率(FDR)方法を使用する複数比較について補正した(Benjamini and Hochberg, 1995)。スピアマン相関を使用して、タウバイオマーカーおよび認知試験測定およびTau-PET SUVRの相関を評価した。
結果 - アルツハイマー病脳におけるタウ種の富化プロファイリング:アルツハイマー病脳におけるタウ凝集は、CSFにおけるタウプロファイルに反映されることが仮設立てられた。従って、アルツハイマー病および対照脳からの不溶性抽出物におけるタウプロファイルをまず分析して(図18B:発見コホート)、後にCSFタウプロファイルと比較した。それぞれR2とR3ドメインの間およびR4ドメイン内に位置する残基299~317(MTBRタウ299)および354~369(MTBRタウ354)を含む種が、アルツハイマー病脳からの不溶性抽出物で対照より3~4倍富化された。残基243~254(MTBRタウ243)を含むMTBRの上流領域も、対照と比較してアルツハイマー病脳で約3倍多く、一方それぞれR1およびR2ドメイン内に位置する残基260~267および275~280を含む種は、アルツハイマー病と対照組織間で異ならなかった。タウの他の領域は、対照と比較してアルツハイマー病脳で富化されなかった。顕著なことに、中間ドメイン内の残基195~209を含む種は、対照と比較してアルツハイマー病脳で特に低く、不溶性タウ凝集体における残基199、202、205および208で生ずる広範な過剰リン酸化の結果の可能性がある(Malia et al., 2016)。注目すべきことには、対照およびアルツハイマー病愛で可溶性タウ(全脳抽出物)における同定されたMTBRタウ種で変化は観察されなかった(図23A)。これらの結果は、対照(アミロイド陰性、n=8)、極軽度乃至中程度アルツハイマー病(アミロイド陽性、CDR=0.5~2、n=5)および重度アルツハイマー病(アミロイド陽性、CDR=3、n=7)参加者(図18Cおよび図23B:検証コホート)からの脳サンプルで再現され、MTBRタウ243、299および354種が疾患進行段階をとおして不溶性タウ凝集体に特に富化されたことが示唆される。
次に、最近報告されたアスパラギンエンドペプチダーゼにより産生された切断タウ368(残基354~368)種(Zhang et al., 2014; Blennow et al., 2020)を、そのペアの非切断種、MTBRタウ354に対して試験し、両種を脳不溶性抽出物で定量した(図24)。タウ368とMTBRタウ354の高相関が判明し(r=0.9783)、残基368での短縮化が、脳病理の種々の段階で同じ割合で起こることが示唆される。
結果 - CSFにおけるMTBRタウの定量:アルツハイマー病脳凝集体におけるMTBRタウ富化がCSFにおける可溶性タウ種のレベルと相関するかを決定するために、CSFにおけるMTBRタウを分析する方法を開発した。方法は、免疫沈降後(Tau1/FIJ8.5)CSFにおけるタウ化学抽出、続いてMS分析を含む(図2A)。この方法は、MTBRペプチド定量のための十分な回収をもたらした(図25)。化学抽出前のTau1/FIJ8.5免疫沈降方法により回収したタウペプチド存在量は、残基222後劇的に減少した(Sato et al., 2018)。対照的に、PostIP-CX方法により定量されたMTBRタウ種濃度は、N末端~中間ドメイン領域と比較して相対的に低かったが、免疫沈降によるタウの他の領域となお同等であった(図19)。正常対照参加者のCSF濃度(免疫沈降および化学抽出方法からの合計値として計算)は、中間ドメイン種(残基151~155、181~190、195~209および212~221)について8.2~32.0ng/mL、MTBRタウ種(残基243~254、260~267、275~280、282~290、299~317および354~369)について0.4~3.7ng/mLおよび非MTBR C末端タウ種(残基386~395および396~406)について6.5~5.1ng/mLの範囲であった。C末端含有切断タウ種のCSF濃度は、中間ドメイン(残基195~209および212~221)を含むものに類似する範囲であり、タウのC末端側もN末端~中間ドメインタウと同じ方法でニューロン細胞で切断され、細胞外に分泌されることを示唆する(Sato et al., 2018)。
結果 - アルツハイマー病横断的コホートにおけるCSF MTBRタウ:細胞外空間に存在するMTBR含有種がアルツハイマー病関連変化を反映するか否かを決定するために、CSFを種々の臨床病期のアミロイド陰性およびアミロイド陽性参加者の横断的コホートで分析した:アミロイド陰性CDR=0(対照、n=30)、アミロイド陽性CDR=0(発症前AD、n=18)、アミロイド陽性CDR=0.5(極軽度AD、n=28)、アミロイド陽性CDR>1(軽度~中程度AD、n=12)およびアミロイド陰性CDR>0.5(非AD認知機能障害、n=12)。
まず、アルツハイマー病脳で特に富化されている3MTBRタウ種のCSFレベル(MTBRタウ243、MTBRタウ299およびMTBRタウ354)を試験した(図20)。全3種は、アルツハイマー病および対照CSF両方に存在し、レベルは、対照群と比較して、無症候性段階(CDR=0)でもアミロイド陽性群で高かった(MTBRタウ243 p=0.0170、MTBRタウ299 p=0.0002およびMTBRタウ354 p=0.0076)。顕著なことに、これらの種は、臨床的疾患発症後、CSFで異なる特徴を有した。MTBRタウ299レベルは、対照と比較して発症前ADで204%高かったが、極軽度AD(CDR=0.5)および軽度~中程度AD(CDR>1)の間に飽和され(p=0.2541)、一方MTBRタウ354レベルは、症状発症後集めたサンプルで有意に低かった(p=0.0345)。対照的に、MTBRタウ243レベルは症状発症後を含む全疾患段階にわたり、徐々に高くなった(p=0.0025)。これらの結果は、MTBRタウ種内の領域的特異性が、種々のアルツハイマー病段階にわたり識別でき、MTBRタウ243が良好なアルツハイマー病段階特異的マーカーであることを示唆する。
次に、CSF MTBRタウ種が他の領域を含むタウ種と比較して、アルツハイマー病ステージ分類に感受性および特異性の増加を提供するか否かを試験した。N末端、中間ドメイン、MTBRおよびC末端ドメインを含む複数種を領域特異的方法により定量した(図26、図27、図28)。N末端および中間ドメイン種を免疫沈降(IP方法)および免疫沈降後CSFについて化学抽出(PostIP-CX方法)により定量し、一方C末端種のMTBRは、免疫沈降で定量可能シグナルが得られなかったため、免疫沈降後CSFの化学抽出方法(PostIP-CX方法)でのみ定量した。免疫沈降方法により定量したN末端ドメインを含む種のレベルは、対照と無症候性段階(残基6~23、p=0.0362以外)または他の近隣疾患段階で異ならなかった。免疫沈降方法による中間ドメイン種レベルは、対照より無症候性アミロイド段階で有意に高かったが(残基212~221、p=0.0762以外)、MTBRタウ種(例えば、MTBRタウ299レベルは、発症前AD段階で対照より>200%大きかった)と比較して有効サイズは相対的に中程度であり(123%~168%対対照)であり、後期疾患段階と異ならなかった。抽出法にかかわらず、MTBRタウ243、299および354種は、N末端~中間ドメイン種(残基6~23~226~230、図28)と比較して、対照と疾患段階間で大きな差を示した。MTBRに対するC末端ドメイン(残基260~267、275~280、282~290、386~395および396~406)を含む他の種からのプロファイルは、中間ドメイン種に類似し、アルツハイマー病臨床的認知症の段階に特異的ではなかった。
まとめると、アルツハイマー病脳で富化されたMTBR(MTBRタウ243、MTBRタウ299およびMTBRタウ354)を含む代表的3種(図18)は、CSFで類似する特徴を有し、MTBRタウ243はアルツハイマー病認知症段階に最高の特異性を示した。注目すべきことには、高相関がCSFにおけるタウ368切断形態とMTBRタウ354非切断形態の間で観察された(r=0.8382)(図29)。アルツハイマー病の臨床病期を信頼可能に識別する唯一の種は、MTBRタウ243であった。
結果 - アルツハイマー病の病期分類のための特異的バイオマーカーとしての中間ドメイン非依存的MTBRタウ243:アルツハイマー病臨床的認知症段階にわたるMTBRタウ-243種の徐々のレベル増加は、疾患進行の信頼可能な予測印紙であり得ることを示唆する。次に、そのMTBRタウ種(MTBRタウ243、MTBRタウ299およびMTBRタウ354)が、CDR-ボックス総和(CDR-SB)およびミニメンタルステート試験(MMSE)などの認知試験の結果と最高の相関を有するかを試験した。アミロイド陽性群の中間ドメイン非依存的MTBRタウ243種がCDR-SBおよびMMSE両方と高度に相関することが判明した(それぞれr=0.5562、p<0.0001およびr=-0.5433、p<0.0001)(図30および図31)。他の種レベルは、認知試験とはるかに低い相関であるかまたは有意な相関がなく(表5)、CSF MTBRタウ243が無症候性段階からアルツハイマー病の臨床病期の進行を通して臨床病期および包括的疾患進行を特異的に識別することを示唆する。
結果 - アルツハイマー病長期的コホートにおけるCSF MTBRタウ:横断的コホートから、参加者(n=28)のサブセットを2~9年追跡して、CSFにおけるMTBRタウの長期的軌道を測定した(表6)。アルツハイマー病脳で富化されるMTBRタウ種(MTBRタウ243、MTBRタウ299およびMTBRタウ354)は、アミロイド陽性群で経時的に有意に増加するが(1回目と2回目の来院間の両側対応ありt検定によりp<0.01)、MTBRタウ243以外アミロイド陰性群では増加しなかった(図32)。アミロイド陰性群は、MTBRタウ243のわずかな長期的増加も示したが、アミロイド陽性群で観察されるより低かった(それぞれアミロイド陰性および陽性群で差異の平均=0.4926および2.208)。
図21は、個々の参加者におけるMTBRタウ種濃度の長期的変化率を示す。顕著なことに、疾患発症後最高CDRを有する1参加者(参加者A)(7年間でCDR=1~2に変化)は、各MTBRタウ種に特異的軌道プロファイルを示した。MTBRタウ243は、軽度AD(CDR=1)~中程度AD(CDR=2)でさえ継続的に増加し、一方MTBRタウ299およびMTBRタウ354は、軽度AD後、この参加者のCSFで減少した。アミロイド陽性群の他の参加者は、1回目の来院時発症前ADまたは極軽度AD(それぞれCDR=0または0.5)と診断され、各種レベルの増加傾向は、大部分の参加者で見られるものであり、横断的コホートからの発見を支持する。
結果 - Tau-PET造影との相関:Tau-PET走査により測定したタウ病理は、アルツハイマー病の認知低下および臨床病期と強く相関した(Arriagada et al., 1992; Johnson et al., 2016; Ossenkoppele et al., 2016; Bejanin et al., 2017; Jack et al., 2018; Gordon et al., 2019)。次に、CSFにおけるMTBRタウがTau-PETにより評価した脳タウ病理と相関するかを試験した(図22)。中間ドメイン非依存的MTBRタウ243はTau-PET SUVRと有意に相関し(r=0.7588、p<0.0001)、一方MTBRタウ299およびMTBRタウ354の相関ははるかに低かった(それぞれr=0.4584、p=0.0056およびr=0.4375、p=0.0086)。残基226~230を含むタウ種も、Tau-PET SUVRとの高相関を示したが(r=0.6248、p<0.0001、表7)、MTBRタウ243で観察されるより低かった。これは、CSF MTBRタウ243および周辺領域が、脳におけるタウ凝集のサロゲートバイオマーカーであり得ることを示す。脳におけるタウ病理を特異的かつ定量的に追跡する能力は、アルツハイマー病臨床的試験で切望されるバイオマーカーである。
考察:タウのMTBR領域は、主に脳凝集体で試験されているが、CSFでは広範囲にはされていない。この試験において、CSFタウを分析するための感受性および抗体非依存的方法を使用して、ヒト参加者からのCSFサンプルにおけるタウのMTBR領域の存在および定量を示した。抗体依存性アッセイを利用した過去の試験(Meredith et at., 2013; Sato et at., 2018)は、抗体特異性または感受性またはCSFにおけるMTBR種により選択される可能性のある形態を回収する能力を含むアッセイ限界により、CSFにおけるMTBR含有タウ種を検出できていない可能性がある。あるいは、MTBRタウは、種々のプロテアーゼにより切断され、慣用の免疫アッセイまたは免疫沈降、続くMSアッセイで検出されないフラグメントを産生し得る(Gamblin et al., 2003; Cotman et al., 2005; Zhang et al., 2014; Zhao et al., 2016; Chen et al., 2018; Quinn et al., 2018)。この試験において、驚くべきことに、PostIP-CX方法、続くマススペクトロメトリーの使用により、中間ドメインタウ種と比較して、約1%~10%で、確固たる濃度のMTBRタウ種が測定された(図19および図2A)。
今日まで、MTBRタウが細胞外タウ増殖に関与するか否か、細胞外レベルが病理の播種および拡散に低すぎると考えられていたため、不明であった。CSFにおけるMTBRの化学量論のこれら新知見は、MTBR含有種が病理学的種と同様細胞外に拡散するとの仮説を支持する。これらの測定は、アルツハイマー病のための抗タウ薬物開発の潜在的標的の情報を提供し、アルツハイマー病患者からのCSFにおけるMTBRタウ種の2~3倍増加により示されるとおり、標的の定量的測定を提供する。しかしながら、病理学的種がCSFではなく間質液(ISF)に存在し得ることが制限である(Colin et al., 2020)。CSFタウが主にISFに由来し(Reiber, 2001)、アルツハイマー病患者からのヒトCSFがトランスジェニックマウスモデルにおけるタウ播種を誘導できることがいくつかの報告で示されているが(Skachokova et al., 2019)、CSFで検出されるタウ種がヒト脳で増殖し得る病理学的タウを反映するか否かの解明には、さらなる研究が必要である。
先の試験は、アルツハイマー病脳タウ凝集体のマウス脳への接種が重度タウ病理を誘導したことを示す(Guo et al., 2016; Narasimhan et al., 2017);しかしながら、ヒトにおける疾患進行にまた結びついた細胞外空間内の病理学的タウ種を同定する報告はない。これにより、アルツハイマー病におけるCSF MTBRタウ種変化の試験および新規アルツハイマー病バイオマーカーとしての適性の探索に至った。CSF MTBRタウレベルはアルツハイマー病で上昇し、アルツハイマー病脳不溶性フラクションで富化される種に一致することが判明した。CSF MTBRタウがアルツハイマー病臨床病期およびタウ病理と相関するとの発見は、MTBRタウがアルツハイマー病におけるタウ増殖と関連することを示唆するが、細胞外CSF MTBRタウの性質(すなわち、モノマー、オリゴマーまたは原線維種)および起源はなお未知である。CSF MTBRタウがモノマー種を能動的に分泌する脳凝集体またはニューロンに由来し得る可能性があり、さらなる試験は、この問題に取り組むために設計されるべきである。
興味深いことに、CSF MTBRタウ種の変化の軌道は、MTBRの種々の領域およびアルツハイマー病の各臨床病期にわたり異なることが判明した。この発見は、最近のCryo-EM発見により決定されたタウの構造変化によるものと仮定した。Cryo-EM分析は、残基306から始まるタウ凝集体の秩序だったβシートコアを示唆する(Fitzpatrick et at., 2017)。故に、MTBRタウ354(残基354~369を含む)、MTBRタウ299(残基299~317を含む)およびMTBRタウ243(残基243~254を含む)は、それぞれ線維コアの内側、境界および外側を示す。MTBRタウ354およびMTBRタウ299両者と対照的に、MTBRタウ243レベルは、全疾患段階にわたり徐々に増加した。CSFにおけるMTBRタウ243および近隣領域(すなわち、残基226~230)レベルも、Tau-PET SUVRパフォーマンスと高度に相関し(図22および表7)、MTBRタウ243およびおそらく近隣領域が脳タウ凝集体に沈着し、細胞外に分泌されるとの仮説を支持する(図17)。
MTBRタウがアルツハイマー病病理および臨床的進行段階と高度に相関するとの発見は、タウオパチー処置のための治療抗タウ薬物の有望な標的の重要な知見を提供する。例えば、MTBRの上流領域(残基235~250)におけるエピトープを認識する新規タウ抗体は、細胞ベースのアッセイにおけるアルツハイマー病および進行性核上性麻痺脳からのタウ播種を軽減する有意かつ選択的能力を示す(Courade et at., 2018)。これらの発見は、MTBRの上流領域が細胞外、病理学的タウと関係することを示す。これは、ヒトアルツハイマー病脳抽出物を注射されているトランスジェニックマウスにおける遠位脳領域へのタウ病理増殖を軽減する抗体により支持される(Albert et al., 2019)。MTBRの上流領域(残基249~258)のエピトープを認識する他の新規タウ抗体は、細胞およびヒトアルツハイマー病脳抽出物を播種されたインビボトランスジェニックマウスモデルにおけるタウ病理の誘導の減少を示す(Vandermeeren et al., 2018)。抗体ターゲティングMTBRタウ299およびMTBRタウ354種も、P301Lタウまたはアルツハイマー病脳抽出物の播種により誘導されたタウ病理を軽減し(Weisova et al., 2019; Roberts et al., 2020)、MTBRの特異的領域を含む種がタウオパチーにおけるタウ病理拡散を担うとの仮説を支持する。
まとめると、CSFにおけるMTBRタウ種がC末端フラグメントとして存在し、アルツハイマー病で特異的に増加し、アルツハイマー病脳凝集体で見られる富化を反映することを示す。発見は、特異的MTBR含有種(MTBRタウ299およびMTBRタウ243)がアルツハイマー病におけるアミロイドおよびタウ病理を評価する有望なCSFバイオマーカーであることを示唆する。特に、中間ドメイン非依存的MTBRタウ243はアルツハイマー病の疾患進行およびタウ病理と平行し、タウ病理のバイオマーカーおよび新規抗タウ抗体治療の標的として利用され得る。
実施例4
「PostIP-IP」と称するさらなるサンプル処理方法を開発し、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法と比較した。PostIP-IP方法の例示的ワークフローを図33に示す。
実施例2に記載するLOAD100コホートから得たCSFサンプルをPostIP-CX方法(実施例1)またはPostIP-IP方法(本実施例)により処理し、次いで実施例2に一般的に記載するLC-MSで分析した。
図34Aに示すとおり、トリプシン消化ペプチドLQTAは、2サンプル間で異なるプロファイルを示した。例えば、PostIP-CX方法で処理したサンプルで測定された臨床的発症でさえ継続的に増加するLQTAの量は、PostIP-IP方法で処理したサンプルでは見られなかった。対照的に、トリプシン消化ペプチドHVPGおよびIGSLは、PostIP-CXおよびPostIP-IP方法により処理したサンプル間で類似のプロファイルを示した(図34Bおよび図34C)。さらなるトリプシン消化ペプチドのさらなる分析は、LQTAとIGSTペプチド間のアミノ酸配列内のR1で生じる重要な切断事象があり得ることを示唆する(図35A)。
LQTA下流(すなわち、C末端)の全トリプシン消化ペプチドの存在量は、サンプル処理方法間で良好な相関を示したが(R2値に基づく、図35参照)、トリプシン消化ペプチドHVPGおよびIGSL間のR2値の顕著な増加があった。これをさらに探索するため、サンプルをCDRスコアでグループ分けした - より具体的に、認知障害対象(Cl、CDR>0.5)および認知非障害対象(CDR<0.5)。図36Bに示すとおり、認知障害対象のみが、HVPGおよびIGSLトリプシン消化ペプチドについて、PostIP-CX対PostIP-IP方法で処理したサンプル間で低相関を示した。これは、凝集体におけるHVPGおよびIGSLトリプシン消化ペプチドを含むタウ領域に補充され、それにより、CSFおよび他の体液でこれらのペプチドを含むタウ種の量の変化に至る、脳のタウ凝集体の発生を反映し得る。
全体として、これらのデータは、サンプル処理方法の選択が、CSFおよび他の体液における、CNSにおけるタウ病理を再現するMTBRタウ種の検出能に影響することを示す。
実施例5
この実施例において、3臨床的コホートの対象からのCSFサンプルを、IP方法(実施例1)およびPostIP-IP方法(実施例4)により処理し、実施例3に一般的に記載するマススペクトロメトリーで評価した。サンプルを、対照対象(n=93)、アミロイド陽性ADを有する対象(n=41)、非ADタウオパチーを有する対象(n=87)から得た。非ADタウオパチーを有する対象は、CBDまたはCBD/PSP(n=20)、FTD(n=29)、FTLD(R406W n=7、P301L n=3)、PSP(n=18)および未確定非AD認知症(n=3)を有すると臨床的に診断された。3Rおよび4Rアイソフォームに特異的なトリプシン消化ペプチドは特に興味深かった。CSF Aβ42/40を、Ovod et al., Alzheimers Dement J. Alzheimers Assoc, 2017, 13:841-849に一般的に記載されるマススペクトロメトリーで測定した。アミロイド状態を、0.085のカットオフ値を使用して定義した(すなわち、アミロイド陽性>0.085、アミロイド陰性<0.085)。pT217%は、先に記載のとおり、マススペクトロメトリーにより測定した。
図37に示すとおり、サンプルにおけるトリプシン消化ペプチドVQIV/LDLS比は、PostIP-IP方法で処理したサンプルにおいて非ADタウオパチーと対照を識別するが(図37C)、IP方法ではしない(図37B)。PostIP-IP方法で処理したサンプルのさらなる分析は、対照対象と比較して、非ADタウオパチーを有する対象からのCSFにおいてLDLSの存在量が低いことを示した(図38)。
VQIV/LDLS比の増加が、非ADタウオパチーを有する対象から得たPostIP-IP処理サンプルで測定されたが、ADを有する対象または対照対象からのサンプルではされなかった(図39)。PostIP-IPサンプル処理後のさらなるトリプシン消化ペプチドの分析は、ADを有する対象または対照対象と比較して、非ADタウオパチーを有する対象におけるR1-R2トリプシン消化ペプチド(例えば、IGST、VQII、LDLSなど)と後期R2-R3トリプシン消化ペプチド(例えば、HVPGなど)の相関が低いことを同定した(図40、表8)。非ADタウオパチー間を比較すると、PSP、CBDおよびFTDを有する特定の対象は外れ値であった(図41)。HPVGではなく、トリプシン消化ペプチドIGSLとの比較で、類似する結果が得られた(図42)。
全体として、これらのデータは、PostIP-IPサンプル処理後測定したCSFタウプロファイルが、脳タウ凝集状態を反映することを示唆する。例えば、4R-タウオパチーは、VQIIトリプシン消化ペプチドを含むR2領域が富化された脳不溶性タウを含み、4R-タウオパチーを有する対象からの一部CSFサンプルは、HVPGまたはIGSLに対して、トリプシン消化ペプチドIGST、VQIIおよびLDLS量の減少を示した。これはADを有する対象で観察されなかった。これらのデータから見て、4R-タウオパチーを識別する方法は、MTBRタウのR2領域についての富化に焦点を絞るべきである。
実施例6
この実施例において、非ADタウオパチーを含む対象の単一臨床的コホートから得たCSFおよび脳サンプルのさらなる分析は、非ADタウオパチーを有する対象から得たCSFサンプルと、ADを有する対象を有する対象から得たCSFサンプルを識別するための中間ドメイン非依存的MTBRタウの有用性のさらなる証拠を提供した。このコホートにおける対象は、ADを有する対象(n=28)、CBDまたはCBD/PSPを有すると臨床的に診断された対象(n=20)、FTDを有すると臨床的に診断された対象(n=22)およびPSPを有すると臨床的に診断された対象(n=11)を含んだ。これら対象から得たCSFサンプルを、実施例4に一般的に記載するPostIP-IP方法で処理し、実施例3に一般的に記載するマススペクトロメトリーで評価した。脳不溶性タウを、実施例3に記載するとおり評価した。
実施例5に記載するとおり、CSFのPostIP-IPサンプル処理後のトリプシン消化ペプチドの分析は、非ADタウオパチーを有する対象におけるR1および早期R2トリプシン消化ペプチド(例えば、IGST、VQII、LDLSなど)と後期R2、R3および/またはR4トリプシン消化ペプチド(例えば、IGSLなど)の低い相関を同定した(図43、図44および図45)。CSFにおいて、非ADタウオパチーのタウ種は、ADのタウ種より(1)少ないR1およびR2および(2)多いR3およびR4を含むことおよびこれが脳タウ沈着の兆候であることが仮設立てられた(図46)。この仮説を試験するために、脳不溶性タウを分析した。図47に示すとおり、トリプシン消化ペプチドVQIIは、4R-タウオパチーの脳タウ凝集体で富化される。トリプシン消化ペプチドFIVPGおよびIGSLも脳タウ凝集体で富化されるが、ADと比較して少ない。これらのデータは、非ADタウオパチーとADを識別する方法としてのR1またはR2対R3またはR4の比をさらに支持する。
次いで、分析をさらに拡大して、遺伝的に確認されたFTLD症例から得たCSFサンプル(R406W、n=7;P301L、n=3)、対照対象から得たCSFサンプル(n=44)およびADを有する対象から得たさらなるCSFサンプル(n=41)を含めた。これら対象から得たCSFサンプルを、実施例4に一般的に記載するPostIP-IP方法で処理し、実施例3に一般的に記載するマススペクトロメトリーで評価した。CSFのPostIP-IPサンプル処理後のトリプシン消化ペプチドの分析は、同様に、非ADタウオパチーを有する対象におけるR1および早期R2トリプシン消化ペプチド(例えば、IGST、VQII、LDLSなど)と後期R2、R3および/またはR4トリプシン消化ペプチド(例えば、IGSLなど)の低い相関を同定した(図48および図49)。これらのデータは、非ADタウオパチーとADを識別する方法としてのR1またはR2対R3またはR4の量の比の用途を確認し、また対照対象と非ADタウオパチーを識別する能力も示す。特に、遺伝的に確認されたFTLD症例から得たCSFサンプルは、分析をさらに厳密にする。