JP2022542866A - 非晶質レミマゾラムベシル酸塩を得るための方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、非晶質レミマゾラムベシル酸塩を得るための凍結乾燥法であって、前記産物への結晶質物質の混入がない、方法に関する。【選択図】 なし
Description
本発明は、非晶質レミマゾラムベシル酸塩を得るための方法に関する。
レミマゾラム、CNS7056またはメチル3-{(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル}プロパノエートは、パイオン社(Paion)によって開発されたベンゾジアゼピンであり、下記の化学構造を有する。
レミマゾラムは短時間作用性の中枢神経系抑制薬である。レミマゾラムは抗不安性、健忘性、鎮静性、筋弛緩性、および抗痙攣性の性質を示す。これらの性質により、レミマゾラムは麻酔の実践や集中治療で使用する場合に適しており、術前鎮静、不安緩解、周術期症例に対する健忘性用途、短い診断的処置、手術的処置、または内視鏡的処置の間の意識下鎮静においては、例えば、全身麻酔を誘導し維持するための成分として、他の麻酔剤の投与前および/または投与と同時に使用され、さらに、集中治療においては鎮静用に使用される。この化合物の最も好適な投与は静脈内経路によるものである。
欧州特許第1183243(B1)号明細書では、実施例Ic-8においてレミマゾラムとその調製法が開示されている。
国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットでは、レミマゾラム(遊離塩基形態)が、5℃で保存された場合は安定であるが、40℃、75%相対湿度(開放バイアル内)で、または60℃、周囲湿度(密閉バイアル内)で保存された場合、潮解性固体のように振る舞い、初期レミマゾラム含有量を顕著に減少させ、黄色~オレンジ色に変色することが開示されている。国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットによれば、レミマゾラムの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)研究によって、メチルエステルの加水分解に該当する不純物形成の結果として分解が起こっていることが示唆されている。
国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットでは、ベシル酸塩(ベンゼンスルホン酸塩)を、容易に単離可能であり、且つ、良好な熱特性、低い吸湿性、および良好な水溶解度を有する、高度結晶質固体の形態で、上記産物から形成させることによって、上述のレミマゾラムの保存安定性の問題を解決することが提唱されている。国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットでは、特に、形態1、形態2、形態3、および形態4と名付けられたいくつかの結晶形態の、ベンゼンスルホン酸およびレミマゾラムのモル比が1:1であるレミマゾラム一ベシル酸塩を、開示している。
国際公開第2008/007071(A1)号パンフレット(実施例5)は、レミマゾラムベシル酸塩の多形性試験を記載しており、その試験では、当該塩の結晶形態1が、15種類の異なる溶剤およびそれらの対応する水性混合物中での成熟試験にかけられた。ほとんどの場合で、形態1または油が得られた。レミマゾラムベシル酸塩は、イソプロパノール、ジクロロメタン、またはTHF水溶液が用いられた場合に非晶質固体形態で得られただけであった。しかし、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットには、得られた非晶質形態の特徴に関連するデータも、その純度や安定性に関連するデータも含まれていない。国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットにおける、レミマゾラムベシル酸塩の非晶質形態を得た実施例を再現したところ、本発明者らは、この固体形態ではなく、固体の結晶形態、具体的には形態2を得た。
欧州特許第2852389(B1)号明細書は、レミマゾラムを含む安定な凍結乾燥ベンゾジアゼピン組成物に関する。上記文書において、凍結乾燥は水不安定性の化合物を安定化するための公知の技術であると説明されている。しかし、レミマゾラムベシル酸塩単独(賦形剤なし)の凍結乾燥では、上記塩の満足な安定性が得られなかったとも説明されている。欧州特許第2852389(B1)号明細書は、吸湿性の賦形剤および/またはデキストランを含む凍結乾燥された組成物であって、部分的に非晶質である凍結乾燥製剤を準備することによって、レミマゾラムベシル酸塩の安定性の欠如に関する問題を解決することを提唱している。
欧州特許第2852389(B1)号明細書の実施例では、レミマゾラムベシル酸塩とラクトース一水和物との凍結乾燥製剤中の結晶質物質が評価されている。上記製剤に対して行われた研究によって、この凍結乾燥製剤中に、結晶質物質、具体的には結晶形態のレミマゾラムベシル酸塩、が存在することが明らかとなった。
非晶質固体形態の産物のその結晶質相当物に対する主な利点は、向上した溶解性および生物学的利用能を示す点である。しかし、非晶質固体の主な欠点として、結晶質固体よりも安定性が低く、長期的には結晶形態になってしまう点がある。非晶質レミマゾラムベシル酸塩のマトリックス中に結晶質レミマゾラムベシル酸塩が存在することから生じる問題が、まさしく、この非晶質化合物が保存の際に安定した状態を維持せず、ベシル酸塩の結晶形態のうちの1つになってしまうことである。
すなわち、当該技術分野の状況においては、非晶質形態のレミマゾラムベシル酸塩を作製するための方法であって、結晶形態のベシル酸塩を混入させることなく上記産物を得ることを可能にする方法が、求められている。結晶形態の混入がない非晶質レミマゾラムベシル酸塩は、保存の際により安定な状態を維持するため有益である。
実施例に示されるように、本発明者らは、非晶質レミマゾラムベシル酸塩を、結晶形態の当該産物を混入させることなく得ることを目的として、溶剤の組み合わせおよび各種条件を用いた種々の結晶化/沈殿試験、並びに噴霧乾燥試験を含む、いくつかの実験を行ったが、結晶質物質を含まない非晶質産物を得ることはできなかった。欧州特許第2852389(B1)号明細書に記載された、凍結乾燥されたレミマゾラムベシル酸塩の安定性に関する結果は満足のいくものではなかったが、本発明者らは、驚くべきことに、安定な非晶質レミマゾラムベシル酸塩を、当該産物の結晶形態を混入させることなく作製するための凍結乾燥法を発見した。
これを受けて、第一の態様において、本発明は、非晶質レミマゾラムベシル酸塩を作製するための方法であって、
a)レミマゾラムベシル酸塩と、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤とから主としてなる溶液を提供する工程、並びに
b)工程a)で提供された上記溶液を凍結乾燥する工程、
を含み、上記凍結乾燥は、
b1)工程a)で提供された溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、並びに
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力において、上記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、上記溶剤を除去すること、
を含む、方法に関する。
a)レミマゾラムベシル酸塩と、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤とから主としてなる溶液を提供する工程、並びに
b)工程a)で提供された上記溶液を凍結乾燥する工程、
を含み、上記凍結乾燥は、
b1)工程a)で提供された溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、並びに
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力において、上記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、上記溶剤を除去すること、
を含む、方法に関する。
第二の態様において、本発明は、その粉末X線回折データが10~40°2θ±2°θの間にブロードなピークを示すことを特徴とする、安定な非晶質レミマゾラムベシル酸塩に関する。
第一の態様において、本発明は、非晶質レミマゾラムベシル酸塩を調製するための方法であって、
a)レミマゾラムベシル酸塩と、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤とから主としてなる溶液を提供する工程、並びに
b)工程a)で提供された上記溶液を凍結乾燥する工程、
を含み、上記凍結乾燥は、
b1)工程a)で提供された上記溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、並びに
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力において、上記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、上記溶剤を除去すること、
を含む、方法に関する。
a)レミマゾラムベシル酸塩と、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤とから主としてなる溶液を提供する工程、並びに
b)工程a)で提供された上記溶液を凍結乾燥する工程、
を含み、上記凍結乾燥は、
b1)工程a)で提供された上記溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、並びに
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力において、上記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、上記溶剤を除去すること、
を含む、方法に関する。
本発明との関連において、「非晶質」または「非晶質固体」という用語は、固体の物質、特にレミマゾラムベシル酸塩の固体であって、固体を形成している粒子が組織化された構造を持たないものを指す。これらの固体は明確な形態を持たない。この分類は結晶質固体の分類とは対照的であり、結晶質固体の原子は規則的且つ組織的に配置され、結晶格子を形成する。結晶質固体において、その原子は対称的に配置される。そのため、そのX線回折図では、特定の角度にいくつかの非常に明確なピークが示される。非晶質固体では、各原子はランダムに配置され、そのため、その回析図には、角度幅が大きいことを特徴とする、通常は1つの、少数のピークが確認される。特に、非晶質レミマゾラムベシル酸塩は、粉末X線回折データが10~40°2θ±2°θの間にブロードなピークを示すことを特徴とする。X線回析データは、1.541838Åの波長を有するCuKα放射線を発する銅陽極を備えた粉末回折系を用いて、特には実施例に記載の方法に従って、記録できる。
「結晶質レミマゾラムベシル酸塩」という表現は、結晶質固体の形態にある、すなわち、各原子が規則的且つ組織的に配置され、結晶格子を形成している、レミマゾラムベシル酸塩を指す。そのため、上記結晶形態のX線回折図では、特定の角度にいくつかの非常に明確なピークが示される。特に、結晶質レミマゾラムベシル酸塩は、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットにおいて定められた形態1、形態2、形態3、および形態4のことを指す。
本発明との関連において、「レミマゾラムベシル酸塩と溶剤とから主としてなる溶液」という表現は、レミマゾラムベシル酸塩および溶剤の重量基準の各含有量の和が、当該溶液の少なくとも95重量%である溶液を記述するために用いられ、より好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、より好ましくは少なくとも99.9重量%である。
本発明の方法は、結晶形態が存在しないことにより長期的に安定である、非晶質レミマゾラムベシル酸塩を得ることを可能にする。上記の安定性とは、上記生成物が、保存の際、特に40℃、80%相対湿度で保存される際に、且つ/または25℃、60%相対湿度で保存される際に、少なくとも15日間、好ましくは少なくとも30日間、結晶形態にならない、より好ましくは、保存の際、40℃、80%相対湿度において、少なくとも15日間、さらにより好ましくは少なくとも30日間、最も好ましくは少なくとも6か月間結晶形態にならないことをいう。結晶形態の有無は、粉末X線回折分析によって判定することができ、特に1.541838Åの波長を有するCuKα放射線を発する銅陽極を備えた粉末回折系を用いて、実施例に記載の実験プロトコルに従って、判定することができる。特に、非晶質レミマゾラムベシル酸塩は、粉末X線回折データが10~40°2θ±2°θの間にブロードなピークを示すことを特徴とし、一方、結晶形態のX線回折図では、特定の角度にいくつかの非常に明確なピークが示され、特に、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに示された粉末X線回折データによれば、結晶質レミマゾラムベシル酸塩の形態1、形態2、形態3、および形態4のピークが示される。
本発明の方法の第一工程である工程a)は、レミマゾラムベシル酸塩と、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤とから主としてなる溶液を提供するものである。
国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットで形態1、形態2、形態3、および形態4と称されたもの、並びに上記固体形態のいずれの混合物など、非晶質固体でも結晶質固体でも、いかなる形態のレミマゾラムベシル酸塩も使用できる。この文書は上記の各結晶形態を得るための方法についても記載している。好ましくは、本発明の工程a)では、(国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットで命名されたような)形態1のレミマゾラムベシル酸塩が使用される。
工程a)の溶液に使用される溶剤は、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
「水混和性有機溶剤」という表現は、炭素を含有する液状化合物であって、20~25℃の温度で任意の比で水と混合された場合に、単一の液相を有する混合物が得られるものを指す。水混和性有機溶剤の例としては、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールがあり、好ましくはアセトニトリルである。
溶剤の混合物は、2種類以上の溶剤を含んでいてもよく、例えば、2種類、3種類、または4種類の溶剤を含んでいるものなどであり、好ましくは2種類の溶剤を含んでいるものであり、より好ましくは混合物の溶剤のうちの1種類が水またはアセトニトリルであるものであり、さらにより好ましくは混合物の溶剤のうちの1種類が水であるものである。混合物の溶剤は互いに任意の体積比とすることができる。特に、水とアセトニトリルおよびジメチルスルホキシドから選択される別の溶剤との混合物が使用される場合、水の含有量は少なくとも5体積%である。特に、水とメタノール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される別の溶剤との混合物が使用される場合、水の含有量は少なくとも70体積%である。
好ましくは、工程a)の溶剤は、水、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものであり、より好ましくは溶剤は水である。
水とアセトニトリルとの混合物中で、当該各溶剤は互いに任意の体積比をとることができ、例えば、0.1:1~10:1の水:アセトニトリル体積比をとることができ、好ましくは0.2:1~5:1、より好ましくは0.25:1~4:1、より好ましくは0.3:1~3:1、より好ましくは0.5:1~2:1、より好ましくは0.6:1~1.5:1、より好ましくは0.8:1~1.2:1、さらにより好ましくは0.9:1~1.1:1、最も好ましくは1:1である。
より好ましくは、工程a)の溶剤は、水、アセトニトリル、および体積比が0.5:1~2:1の水とアセトニトリルとの混合物からなる群から選択される。
特定の実施形態では、工程a)で提供された溶液中のレミマゾラムベシル酸塩の濃度は5~15mg/mL(レミマゾラムベシル酸塩のmg数/溶液1mL)であり、より好ましくは7~13mg/mLである。
本発明の方法の次に工程である工程b)は、先の工程、工程a)で提供された溶液を凍結乾燥するものである。
「凍結乾燥する」または「凍結乾燥」という用語は、水、有機溶剤、またはそれらの混合物を、本発明においてはレミマゾラムベシル酸塩を溶質として含有する溶液から分離することを目的とした、当該溶液を凍結した後に凍結した溶剤(固体)を昇華させることによる、工程を指す。「昇華」または「昇華させる」という用語は、液体を経ずに固体から気体へ変化させる工程を指す。凍結乾燥は、溶液をその共融点(溶液の全ての成分が凍結する最低温度)未満に凍結する工程と、上記凍結物の溶剤(水、有機溶剤、またはそれらの混合物)を昇華させ、昇華した溶剤を除去する工程と、を含む。通常、溶剤の昇華と除去は、減圧下、すなわち101325Pa未満の圧力で行なわれる。
本発明の方法の凍結乾燥工程b)は、
b1)工程a)で提供された溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、並びに
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力において、上記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、溶剤を除去すること、
を含む。
b1)工程a)で提供された溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、並びに
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力において、上記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、溶剤を除去すること、
を含む。
工程a)で提供された溶液を-45℃未満の温度で凍結する工程b1)は、溶液が完全に凍結するまで、液体窒素またはドライアイス(固体CO2)とアセトンとの混合物を用いるなどにより、工程a)の溶液を-45℃未満の温度で冷却することにより、実行できる。
好ましい実施形態では、工程b1)の凍結を行う温度は、-55℃未満であり、好ましくは、工程b1)の凍結を行う温度は-55℃~-85℃、より好ましくは-55℃~-65℃または-75℃~-85℃であり、さらにより好ましくは-58℃~-62℃または-78℃~-82℃である。
好ましくは、工程b1)の温度は10分間~36時間維持され、より好ましくは10分間~1時間または15時間~30時間、さらにより好ましくは10分間~40分間または20時間~25時間維持される。
好ましくは、工程b1)の凍結を行う温度は-55℃~-65℃であり、この温度範囲に15時間~30時間維持され、あるいは、工程b1)の凍結を行う温度は-75℃~-85℃であり、この温度範囲に10分間~1時間維持される。
好ましくは、工程b1)の凍結を行う温度は-58℃~-62℃であり、この温度範囲に20時間~25時間維持され、あるいは、工程b1)の凍結を行う温度は-78℃~-82℃であり、この温度範囲に10分間~40分間維持される。
工程b1)が終わると、溶剤(上記で定められた水、水混和性有機溶剤、またはそれらの混合物)が、工程b1)で得られた(凍結された)産物から、当該産物の温度から10℃~40℃の温度に、101325Pa(1.01325バール)未満の圧力下、5日間未満の期間、加熱することによって除去される、凍結乾燥の次の工程である工程b2)が実行される。
「除去する」という用語は、工程b1)で得られた凍結物の溶剤含有量を完全または部分的に低減させることを意味する。上記の溶剤除去により、5重量%未満の溶剤含有量を有する産物が得られ、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の溶剤含有量を有する産物が得られ、ここで、重量パーセントは、工程b2)で得られた産物の総重量に対する、工程b2)後に得られた産物中に存在する溶剤の重量である。工程b2)で得られた産物中に存在する溶剤の割合は、熱重量分析またはカールフィッシャー容量滴定分析によって求めることができる。
熱重量分析によって工程b2)で得られた産物中に存在する溶剤の割合を求める方法は、熱天秤(例えば、メトラー・トレド社(Mettler Toledo)製モデルTGA/SDTA851e)を用いて、分析される試料は70マイクロリットルアルミナるつぼ内に配置し、50mL/分の窒素流を試料上に流して、実施できる。試料が30℃から300℃に加熱され、温度上昇は10℃/分の傾きで行われる。試料を分析する前に、試料の分析結果から減産されるブランクが、同じ条件下で行われる。
あるいは、上記溶剤が水である場合の、工程b2)で得られた産物中に存在する溶剤の割合を求める方法も、カールフィッシャー滴定分析によって実施できる。この場合、容量滴定装置(例えば、メトラー・トレド社製モデルV30)を使用することができ、滴定用ビーカー内に正確に秤量された分析試料を配置し、既知mg/mL濃度を有する対応試薬(例えば、Hydranal Composite 5K)を用いて、滴定終点に達するまで滴定を行う。
好ましくは、工程b2)の圧力は0.01Pa(0.0001ミリバール)~101000Pa(1.01バール)であり、より好ましくは、工程b2)の圧力は0.01Pa(0.0001ミリバール)~100Pa(1ミリバール)または50000Pa(0.5バール)~101000Pa(1.01バール)であり、さらにより好ましくは、工程b2)の圧力は0.05Pa(0.0005ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)または90000Pa(0.9バール)~101000Pa(1.01バール)である。
好ましくは、工程b2)の加熱は15~30℃の温度まで実行され、より好ましくは20~25℃の温度まで実行される。
好ましくは、本発明の方法の工程b2)における温度変化は0.5~1.5℃/分であり、より好ましくは0.8~1.2℃/分、さらにより好ましくは0.9~1.1℃/分である。
工程b2)は全ての溶剤が完全に除去されるまで行われ、ただし、5日間未満の期間である。好ましくは、工程b2)は4日間未満の期間行われ、より好ましくは3日間未満、より好ましくは20~60時間、さらにより好ましくは20~30時間または40~60時間、行われる。
好ましい実施形態では、工程b2)は、50000Pa(0.5バール)~101000Pa(1.01バール)の圧力下、20~30時間行われ、より好ましくは、90000Pa(0.9バール)~101000Pa(1.01バール)の圧力下、20~30時間、行われる。
特定の実施形態では、工程b1)の凍結を行う温度は、-75℃~-85℃であり、この温度範囲内に10分間~1時間維持され、工程b2)は、50000Pa(0.5バール)~101000Pa(1.01バール)の圧力下、20~30時間、15~30℃の温度へ加熱しながら、行われる。
別の好ましい実施形態では、工程b2)は、0.01Pa(0.0001ミリバール)~100Pa(1ミリバール)の圧力下、40~50時間行われ、より好ましくは、0.05Pa(0.0005ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力下、40~50時間、行われる。
特定の実施形態では、工程b1)の凍結を行う温度は、-55℃~-65℃であり、この温度範囲内に20分間~30時間維持され、工程b2)は、0.01Pa(0.0001ミリバール)~100Pa(1ミリバール)の圧力下、40~50時間、15~30℃の温度、より好ましくは15~25℃の温度へ加熱しながら、行われる。
好ましくは、本発明の方法の工程b2)は、
(i)-30℃~-20℃の温度および10Pa(0.1ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力を15~24時間維持すること、
(ii)-5℃~5℃の温度および10Pa(0.1ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力を6~18時間維持すること、
(iii)8℃~15℃の温度および10Pa(0.1ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力を12~24時間維持すること、
(iv)15℃~25℃の温度および0.01Pa(0.0001ミリバール)~1Pa(0.01ミリバール)の圧力を3~18時間維持すること、
を含む。
(i)-30℃~-20℃の温度および10Pa(0.1ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力を15~24時間維持すること、
(ii)-5℃~5℃の温度および10Pa(0.1ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力を6~18時間維持すること、
(iii)8℃~15℃の温度および10Pa(0.1ミリバール)~50Pa(0.5ミリバール)の圧力を12~24時間維持すること、
(iv)15℃~25℃の温度および0.01Pa(0.0001ミリバール)~1Pa(0.01ミリバール)の圧力を3~18時間維持すること、
を含む。
特に、工程(i)~(iv)は順次実行され、すなわち、第一工程(i)が実行され、次に工程(ii)が実行され、次に工程(iii)が実行され、最後に工程(iv)が実行される。
特定の実施形態では、工程b1)の凍結を行う温度は-55℃~-65℃であり、この温度範囲内に20~30時間維持され、工程b2)は上記の工程(i)~(iv)を含む。
好ましくは、本発明の方法の工程b2)における温度変化は0.5~1.5℃/分であり、より好ましくは0.8~1.2℃/分、さらにより好ましくは0.9~1.1℃/分である。
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程b)の凍結乾燥は、ラクトース、マンニトール、トレハロース、スクロース、マルトース、デキストラン、ポビドン、グリシン、およびそれらの混合物からなる群から選択される吸湿性の賦形剤の非存在下で実行され、すなわち、上記の吸湿性の賦形剤は、工程a)で提供されたレミマゾラムベシル酸塩溶液中にも、工程b1)で凍結されたレミマゾラムベシル酸塩溶液中にも、工程b2)で処理されたレミマゾラムベシル酸塩溶液中にも存在しない。
特定の実施形態では、本発明の方法の工程b)の凍結乾燥は、炭水化物および/または有機高分子からなる群から選択される吸湿性の賦形剤の非存在下で実行される。
「炭水化物」という用語は、実験式Cm(H2O)nの有機化合物を指す。構造的には、炭水化物は、ポリヒドロキシル化されたケトンおよびアルデヒドとして記述できる。炭水化物は4種類の化学物質群、単糖類、二糖類、少糖類、および多糖類に分類される。本明細書で定義される炭水化物は、カルボキシル基、リン酸基、および/または硫酸エステル基を含有する酸性糖類など、炭水化物の修飾体、誘導体、および類似体を全て包含する。炭水化物の例としては、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、デキストラン、デンプン、単糖、二糖、および少糖などである。二糖類の例としては、ラクトース、マルトース、スクロース、およびトレハロースなどである。多糖類の例としては、デキストランなどである。上記の有機高分子は、好ましくはポリアクリレートまたはビニルポリマーであり、より好ましくはポリビニルピロリドン(またはポビドン)である。
凍結乾燥は、通常は下記の要素を含んでなる装置、凍結乾燥器内で実行できる:乾燥チャンバ、冷却回路を有する冷却器、および真空系。
乾燥チャンバまたは凍結乾燥チャンバは、凍結乾燥される溶液が配置される場所である。上記チャンバにおいて、昇華が実行される区画は様々な形状を取り得て、水は固体を経て蒸気となる。栓は気密性であり、且つ減圧下で作動するものである。
冷却回路を有する冷却器が乾燥チャンバと連絡しており、この冷却器は、昇華中に生成されている蒸気が凝縮する場所である。冷却液が冷却器を乾燥チャンバよりも低い温度に維持する(通常、-50~-125℃)。
真空系は、溶剤からの蒸気が真空系に侵入しないようにトラップに接続されて作動する油ポンプにより、真空(減圧、すなわち、101325Pa未満の圧力)を生み出す。真空系は、凍結乾燥工程が開始されると、まず乾燥チャンバから空気を除去し、その後に昇華を支援する。
また、凍結乾燥器は、凍結乾燥される産物の所望の凍結温度の達成を可能にする温度調節系と、少なくとも40℃までの到達を可能にする温度調節系とを含む。
本発明のさらなる態様は、粉末X線回折データが10~40°2θ±2°θの間にブロードなピークを示すことを特徴とし、好ましくは、粉末X線回折データが図1、図2、または図3に示されるものと実質的に同様である、安定な非晶質レミマゾラムベシル酸塩に関する。
「安定な」という用語は、非晶質レミマゾラムベシル酸塩が、保存の際、特に40℃、80%相対湿度で保存される際に、且つ/または25℃、60%相対湿度で保存される際に、少なくとも15日間、好ましくは少なくとも30日間、結晶形態にならない、より好ましくは、保存の際、40℃、80%相対湿度において、少なくとも15日間、さらにより好ましくは少なくとも30日間、最も好ましくは少なくとも6か月間結晶形態にならないことをいう。
結晶形態の有無は、粉末X線回折分析によって判定することができ、特に1.541838Åの波長を有するCuKα放射線を発する銅陽極を備えた粉末回折系を用いて、実施例に記載の実験プロトコルに従って、判定することができる。特に、非晶質レミマゾラムベシル酸塩は、粉末X線回折データが10~40°2θ±2°θの間にブロードなピークを示すことを特徴とし、一方、結晶形態のX線回折図では、特定の角度にいくつかの非常に明確なピークが示され、特に、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに示された粉末X線回折データによれば、結晶質レミマゾラムベシル酸塩の形態1、形態2、形態3、および形態4のピークが示される。
好ましくは、安定な非晶質レミマゾラムベシル酸塩は、結晶形態1のピーク特徴がない、すなわち、7.3、7.8、9.4、12.1、14.1、14.7、および/または15.6°2θ±0.2°にピークがない、結晶形態2のピーク特徴がない、すなわち、8.6、10.5、12.0、13.1、14.4、15.9、および/または16.2°2θ±0.2°にピークがない、結晶形態3のピーク特徴がない、すなわち、7.6、11.2、12.4、14.6、15.2、16.4、および/または17.7°2θ±0.2°にピークがない、且つ、結晶形態4のピーク特徴がない、すなわち、7.6、10.8、15.2、15.9、および/または22.0°2θ±0.2°にピークがない、X線回析データを特徴とする。
本発明はまた、上記の第一の態様の凍結乾燥法によって得ることができる非晶質レミマゾラムベシル酸塩に関する。
上述の観念を理解しやすくするために、本発明の実験法および実施形態の例を以下にいくつか記載する。これらの例は単なる例示である。
分析法
XRPD分析は、銅陽極を備えたシーメンス社(Siemens)製モデルD-5000粉末X線回折計を用いて行った。用いた放射線は1.541838Åの波長を有するCuKαである。走査パラメータ:4~50°2θ、連続走査、割合:1.2°/分。
XRPD分析は、銅陽極を備えたシーメンス社(Siemens)製モデルD-5000粉末X線回折計を用いて行った。用いた放射線は1.541838Åの波長を有するCuKαである。走査パラメータ:4~50°2θ、連続走査、割合:1.2°/分。
示差走査熱量測定(DSC)分析は、STARe SW15.00ソフトウェアを備えたメトラー・トレド社製822e装置において行った。パラメータ:加熱範囲25~300℃、傾斜20℃/分、N2流50mL/分。測定は密封型有孔カプセルを用いて行った。
水の重量パーセントを得るための熱重量分析は、メトラー・トレド社製TGA/STDA851e熱天秤において、約3mgの分析対象試料および50mL/分の窒素流を用いて行った。試料を、10℃/分の傾斜で30から300℃に加熱した。ブランクを最初に同じ分析条件下で実行しておき、試料について得られた結果からそれを減算した。
得られた産物の純度は、フォトダイオード検出器とカラム用の恒温槽とを備えたウォーターズ社ブランドAcquityモデル装置において、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)法によって分析した。CSH C18(3×50mmおよび1.7μm)カラム、並びに移動相A(KH2PO4 5mM pH2)および移動相B(アセトニトリル)は、以下の分析条件で用いた:
流速:(mL/分):0.5
カラム温度(℃):40
波長(nm):230
注入量(μL):1
収集時間(分):10
希釈剤:アセトニトリル/水(1:1)
勾配:
流速:(mL/分):0.5
カラム温度(℃):40
波長(nm):230
注入量(μL):1
収集時間(分):10
希釈剤:アセトニトリル/水(1:1)
勾配:
実施例1. 凍結乾燥による非晶質レミマゾラムベシル酸塩の入手
国際公開第2019/072944(A)号パンフレットの実施例7で開示された方法によって得られたレミマゾラムベシル酸塩が、形態1に対応し、これを凍結乾燥試験の出発物質として使用した。
国際公開第2019/072944(A)号パンフレットの実施例7で開示された方法によって得られたレミマゾラムベシル酸塩が、形態1に対応し、これを凍結乾燥試験の出発物質として使用した。
凍結乾燥アッセイは、テルスター社ブランドLyoQuestシリーズ凍結乾燥器において(プロトコルA)、またはテルスター社ブランドLyoBeta35シリーズ凍結乾燥器において(プロトコルB)、行った。
プロトコルAにおいて、凍結を行う温度は-80℃とした。乾燥時間は24時間とし、その間に温度を-80℃から25℃まで上げた。温度変化の傾斜は1℃/分とした。乾燥中の真空圧は100000Pa(1.0バール)とした。
プロトコルBにおいて、凍結を行う温度は-60℃とした。乾燥時間は、一次乾燥(-25℃で18時間、0℃で8時間、10℃で15時間)および二次乾燥(20℃で5時間)に分割した。温度変化の傾斜は1℃/分に設定した。乾燥中の真空圧は、一次乾燥中は20Pa(0.2ミリバール)とし、二次乾燥中は0.1Pa(0.001ミリバール)とした。
各試験で得られた固体はN2雰囲気下に保持した。
アッセイ1.1~1.5の特定の条件、および得られた結果を表1に示す。表1において、RMはレミマゾラムを指し、RM-酸はレミマゾラムメチルエステルの加水分解によって得られたカルボン酸生成物を指す。使用された溶剤、溶液中のレミマゾラムベシル酸塩の濃度、および溶液の体積を溶剤のカラムに示す。
実行された全てのアッセイで、レミマゾラムベシル酸塩の非晶質形態が得られ、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに記載の形態1、形態2、形態3、または形態4である、いずれの結晶形態の存在も検出されなかった。さらに、プロトコルBと溶剤としての水とを用いるアッセイにおいて、水の含有量が0.1重量%~0.4重量%間で変動するレミマゾラムベシル酸塩の非晶質形態が得られた。特に、アッセイ1.6では、0.22%に相当する水の割合が得られた。
比較例2. 沈殿によって非晶質形態を得る試み
国際公開第2019/072944(A)号パンフレットの実施例7で開示された方法によって得られたレミマゾラムベシル酸塩は、形態1に対応しているが、これを沈殿試験の出発物質として使用した。
国際公開第2019/072944(A)号パンフレットの実施例7で開示された方法によって得られたレミマゾラムベシル酸塩は、形態1に対応しているが、これを沈殿試験の出発物質として使用した。
下記の方法プロトコルC、D、およびEに従ってレミマゾラムベシル酸塩の非晶質形態を得る目的で、様々な沈殿試験を行った。
プロトコルC:xgのレミマゾラムベシル酸塩を、約50℃の温度の、表2に示される量の溶剤または溶剤の混合物(1Volは初期レミマゾラムベシル酸塩1mg当たり1mLの対応する溶剤を指す)に溶解した。そのようにして得られた溶液を、約50℃の温度に事前加熱した貧溶媒(antisolvent)に添加した。沈殿した固体がほぼすぐに確認され、そのようにして得られた混合物を約0℃の温度に冷却した。各試験で得られた固体は濾過し、オーブンで乾燥させ、そのXRPD分析までN2雰囲気下で保存した。
プロトコルD:xgのレミマゾラムベシル酸塩を、約50℃の温度の、表2に示される量の溶剤または溶剤の混合物(1Volは初期レミマゾラムベシル酸塩1mg当たり1mLの対応する溶剤を指す)に溶解した。そのようにして得られた溶液を、約0℃の温度に事前冷却した貧溶媒に添加した。沈殿した固体がほぼすぐに確認され(アッセイ10は除く)、そのようにして得られた混合物を約0℃の温度に30分間保持した。各アッセイで得られた固体は濾過し、オーブンで乾燥させ、そのXRPD分析までN2雰囲気下で保存した。
プロトコルE:xgのレミマゾラムベシル酸塩を、約20℃の温度の、表2に示される量の溶剤または溶剤の混合物(1Vまたは1Volは初期レミマゾラムベシル酸塩1mg当たり1mLの対応する溶剤を指す)に溶解した。そのようにして得られた溶液を、約0℃の温度に事前冷却した貧溶媒に添加した。沈殿した固体がほぼすぐに確認され、そのようにして得られた混合物を約0℃の温度に30分間保持した。各アッセイで得られた固体は濾過し、オーブンで乾燥させ、そのXRPD分析までN2雰囲気下で保存した。
どの試験でもレミマゾラムベシル酸塩の非晶質形態が得られなかったことが分かる。上記アッセイのうちの1つ(アッセイ2.10)では固体が得られず、他のアッセイ(アッセイ2.1~2.9および2.11~2.14)では国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに記載された形態1または形態2のいずれかが得られた。
比較例3. 噴霧乾燥によって非晶質形態を得る試み
噴霧乾燥試験は、220℃以下の空気吸入口温度、35m3/時の最大空気流量、800L/時の最大圧縮空気流量を可能にするビュッヒ社製B-290装置において行った。上記システムは、噴霧装置の乾燥用空気の吸入口と排出口の間に除湿器と溶剤冷却器とが挿入された閉塞回路からなる。空気回路を最初に窒素で満たし、酸素が実際に回路から消えてから供給混合物の噴霧を開始した。
噴霧乾燥試験は、220℃以下の空気吸入口温度、35m3/時の最大空気流量、800L/時の最大圧縮空気流量を可能にするビュッヒ社製B-290装置において行った。上記システムは、噴霧装置の乾燥用空気の吸入口と排出口の間に除湿器と溶剤冷却器とが挿入された閉塞回路からなる。空気回路を最初に窒素で満たし、酸素が実際に回路から消えてから供給混合物の噴霧を開始した。
メタノールまたはアセトニトリルを溶剤として用いて、異なる圧縮空気流量(L/時)、並びに異なる吸入口温度および排出口温度(℃)を用いて、様々な実験的試験を行った。乾燥用空気流量は全てのアッセイで一定に38m3/時に維持した。
国際公開第2019/072944(A)号パンフレットの実施例6で開示された方法によって得られたレミマゾラムベシル酸塩は、形態1に対応しているが、これを噴霧乾燥試験の出発物質として使用した。
アッセイ3.2の1例でのみ、非晶質構造を有する産物が得られた。得られた固体は、非晶質構造を有し、図4のX線回折パターンの15.8°2θおよび16.2°2θにシグナルが存在することにより確認できるように、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットの形態2に対応する、結晶形態が微量に混入していた。この固体のDSCは図5に再現されている。このDSCには、非晶質形態の存在が、加熱された際の上記形態の結晶化過程に対応する、130~140℃の範囲に存在する発熱を通じて明確に見られる。続く吸熱は結晶形態1および結晶形態3の融解に対応しており、形態2の吸熱が形態1の吸熱(190℃)の直前(180℃)に現れるはずであるが、この場合、かなり広い吸熱が確認され、これにより、上記手法によって非晶質形態への混入物として存在する結晶形態2の有無に関して結論を出すことが難しくなっている。とはいえ、上述の通り、X線回折パターンで結晶形態の混入が明確に確認された。
比較例4. 欧州特許第2081921(B1)号明細書の実施例5の多形性試験からの非晶質形態の入手の再現
表11(欧州特許第2081921(B1)号明細書の頁12)の項目3、項目5、および項目17に示されるような、非晶質形態の入手を再現するために、上記欧州特許の実施例5の多形性試験で開示された記載を代表するものと見なされる以下の実験を行った。
表11(欧州特許第2081921(B1)号明細書の頁12)の項目3、項目5、および項目17に示されるような、非晶質形態の入手を再現するために、上記欧州特許の実施例5の多形性試験で開示された記載を代表するものと見なされる以下の実験を行った。
レミマゾラムベシル酸塩の結晶形態1(国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットにおける形態1)にそれぞれ対応する、重量5gの3つの異なる試料を、約20℃の温度で、それぞれ、イソプロパノール(アッセイ4.1)10mL、ジクロロメタン(アッセイ4.2)10mL、およびTHFと2.5%の水(V/V)の混合物10mL(アッセイ4.3)と、混合した。そのようにして得られた3つの混合物を、メトラー・トレド社製EasyMax102装置により172時間連続的に実行された以下のサイクルにかけた。
a)30分かけて60~62℃の温度に加熱、
b)60~62℃の温度に10分間維持、
c)20~25℃の温度に15分間冷却、
d)20~25℃の温度に10分間維持。
a)30分かけて60~62℃の温度に加熱、
b)60~62℃の温度に10分間維持、
c)20~25℃の温度に15分間冷却、
d)20~25℃の温度に10分間維持。
指示されたサイクルが終了したら、得られた3つの混合物それぞれの溶剤を、バス温度が約35℃のロータリーエバポレーターで留去し、得られた3つの固体をXRPDおよびUHPLCにより分析した。
アッセイ4.1(図6)、アッセイ4.2(図7)、およびアッセイ4.3(図8)のそれぞれで得られた固体のXRPDから分かるように、これら3つのアッセイでは、レミマゾラムベシル酸塩の結晶形態2(国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットにおける形態2)が得られ、観察対象の上記塩の非晶質形態は存在しなかった。UHPLC分析によって、得られた産物について下記の純度が明らかとなり、ここで、RMはレミマゾラムを指し、RM-酸はレミマゾラムメチルエステルの加水分解によって得られたカルボン酸生成物を指す。
試験4.1:レミマゾラム:99.64%;RM-酸:0.22%
試験4.2:レミマゾラム:99.74%;RM-酸:0.17%
試験4.3:レミマゾラム:90.92%;RM-酸:8.53%
試験4.1:レミマゾラム:99.64%;RM-酸:0.22%
試験4.2:レミマゾラム:99.74%;RM-酸:0.17%
試験4.3:レミマゾラム:90.92%;RM-酸:8.53%
実施例5. 安定性試験
比較例3で得られたレミマゾラムベシル酸塩(微量の結晶形態2が混入した非晶質形態)を40℃、80%RHで保存した。XRPD(図9)およびDSC(図10)から分かるように、これらの条件下で1週間の保存後、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに記載されている結晶形態2が得られ、観察対象の初期形態は存在していない。
比較例3で得られたレミマゾラムベシル酸塩(微量の結晶形態2が混入した非晶質形態)を40℃、80%RHで保存した。XRPD(図9)およびDSC(図10)から分かるように、これらの条件下で1週間の保存後、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに記載されている結晶形態2が得られ、観察対象の初期形態は存在していない。
また、比較例3で得られたレミマゾラムベシル酸塩(微量の結晶形態2が混入した非晶質形態)を4℃で保存した。XEPD(図11)から分かるように、これらの条件下で1か月間の保存後、国際公開第2008/007071(A1)号パンフレットに記載されている結晶形態2が得られ、観察対象の初期形態は存在していない。
しかし、観察対象の結晶形態が存在しない非晶質形態のレミマゾラムベシル酸塩が得られる場合、上記非晶質形態は長期的に安定であり、結晶形態にならない。このことは、表1に示される、アッセイ1.5(アセトニトリル中の凍結乾燥)およびアッセイ1.6(水中の凍結乾燥)により得られた非晶質形態の産物の安定性に関する結果から判明している。上記安定性を確認するため、上記産物を、2つの異なる条件下の気候チャンバ内で保存した:a)40℃の温度および80%の相対湿度、b)25℃の温度および60%の相対湿度。条件a)下で15日間および30日間保存された産物は、上記の15日間の後に求められたXRPDパターンおよびDSCパターン(図12~図15)並びに上記の30日間の後に求められたXRPDパターンおよびDSCパターン(図16~図19)に示されているように、非晶質形態に関する初期の特徴を維持し続けている。条件a)下で6か月間保存された産物は、上記の6か月間の後に求められたXRPDパターン(図20および図21)に示されているように、非晶質形態に関する初期の特徴を維持し続けている。
Claims (18)
- 非晶質レミマゾラムベシル酸塩を調製するための方法であって、
a)レミマゾラムベシル酸塩と、水混和性有機溶剤、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤とから主としてなる溶液を提供する工程、および
b)工程a)で提供された前記溶液を凍結乾燥する工程、
を含み、前記凍結乾燥は、
b1)工程a)で提供された前記溶液を-45℃未満の温度で凍結すること、および
b2)工程b1)で得られた産物から、5日間未満の期間、101325Pa未満の圧力において、前記産物の温度から10℃~40℃の温度に加熱することによって、前記溶剤を除去すること、を含む、方法。 - 工程a)で提供されたレミマゾラムベシル酸塩溶液の溶剤が、水、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 工程a)で提供された溶液中のレミマゾラムベシル酸塩の濃度が5~15mg/mLである、請求項1または2に記載の方法。
- 工程b1)の凍結を行う温度が-55℃未満である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b1)の凍結を行う温度が-55℃~-85℃である、請求項4に記載の方法。
- 工程b1)の凍結を行う温度が-55℃~-65℃または-75℃~-85℃である、請求項5に記載の方法。
- 工程b1)の温度が10分間~36時間維持される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b1)の温度が10分間~1時間または15時間~30時間維持される、請求項7に記載の方法。
- 工程b1)の凍結を行う温度が-55℃~-65℃であり、この温度範囲に15時間~30時間維持される、または、工程b)の凍結を行う温度が-75℃~-85℃であり、この温度範囲に10分間~1時間維持される、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b2)における圧力が0.01Pa~101000Paである、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b2)における圧力が0.01Pa~100Paまたは50000Pa~101000Paである、請求項10に記載の方法。
- 工程b2)における加熱が15~30℃の温度まで実行される、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b2)が20~60時間実行される、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b2)が50000Pa~101000Paの圧力において20~30時間実行される、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b2)が0.01Pa~100Paの圧力において40~60時間実行される、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法。
- 工程b2)が、
(i)-30℃~-20℃の温度および10Pa~50Paの圧力を15~24時間維持すること、
(ii)-5℃~5℃の温度および10Pa~50Paの圧力を6~18時間維持すること、
(iii)8℃~15℃の温度および10Pa~50Paの圧力を12~24時間維持すること、並びに
(iv)15℃~25℃の温度および0.01Pa~1Paの圧力を3~18時間維持すること、
を含む、請求項15に記載の方法。 - 工程b2)における温度変化が0.5~1.5℃/分である、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の方法。
- 粉末X線回折データが10~40°2θ±2°θの間にブロードなピークを示すことを特徴とする、安定な非晶質レミマゾラムベシル酸塩。
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