JP2022531814A - 改変細胞の増幅およびその応用 - Google Patents

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Abstract

本開示は、インビボおよび/またはインビトロでのT細胞応答および/またはCAR細胞増幅および/または維持を増強する組成物および方法に関する。例えば、T細胞による療法を増強する方法は、第1のキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変T細胞と、第2のCARを含む改変T細胞とを含む混合T細胞集団を投与することを含み、ここで、前記第1のCARの結合ドメインは第1の抗原に結合し、前記第2のCARの結合ドメインは第2の抗原に結合する。前記第1の抗原は、前記第2の抗原と異なる。実施形態では、前記第1のCARは、白血球の表面分子または抗原に結合する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月19日に提出された米国特許出願第16/445,965号、および2019年4月17日に提出された米国特許出願第16/387,166号の一部継続出願である。本出願はさらに、2019年11月8日に提出された米国仮出願第62/932,587号、2019年9月19日に提出された米国仮出願第62/902,766号、2019年8月23日に提出された米国仮出願第62/891,131号、2019年8月21日に提出された米国仮出願第62/889,926号、2019年5月16日に提出された米国仮出願第62/848,961号、2019年5月10日に提出された米国仮出願第62/846,563号、2019年3月12日に提出された米国仮出願第62/817,322号、2019年3月11日に提出された米国仮出願第62/816,497号、2019年1月31日に提出された米国仮出願第62/799,462号、および2019年1月10日に提出された米国仮出願第62/790,783の優先権の利益を主張し、そのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
配列表の情報
2020年1月6日頃に作成された、ファイルサイズが約1.20 MBの「Sequence Listing_ST25.txt」と題するコンピューターで読み取り可能なテキストファイルには、本出願の配列表が含まれており、そのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は、遺伝子改変細胞を含む改変細胞を増幅および維持するための組成物および方法、ならびに癌を含む疾患の治療におけるそれらの用途に関するものである。
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)やリンパ腫などの癌に対して良好な臨床効果を示している。しかしながら、固形腫瘍に対する治療は比較的ゆっくりと進んでいる。CAR T細胞療法を効果にするために、CAR T細胞を患者に長期的に維持することは、腫瘍治療における患者の予後にとって重要である。例えば、CAR T細胞を長時間維持できれば、この技術は腫瘍の再発を効果的に減らすことができる。
癌は悪性腫瘍とも呼ばれ、細胞が異常に増殖し、体の他の部位に侵入または転移する可能性がある。人間には、100種類を超える癌がある。一例は、乳房の上皮組織に存在する乳腺癌である。乳腺癌細胞が正常細胞の特性を失うため、乳腺癌細胞間のつながりが失われる。癌細胞が脱落すると、それらは血液および/またはリンパ系を介して全身に転移し、したがって、生命を脅かす可能性がある。現在、乳腺癌は、女性の心身の健康に対する一般的な脅威の1つになっている。免疫療法、例えば、CAR T細胞療法は、癌の治療に効果的であることが証明されているが、固形腫瘍を伴う癌などの特定の癌に対してより効果的にするため、その免疫療法を改善する必要がある。
患者はB細胞枯渇の状態でも生きられるため、第1の抗原結合ドメインを使用して患者のB細胞を患者におけるCAR T細胞の増幅に使用され得る。したがって、患者のより多くのCAR T細胞を適時に増幅し、CAR T細胞の効力を高めることができる。患者の適時に増幅したCAR T細胞は、CAR T細胞が腫瘍細胞、特に第2のCARと結合する抗原を有する固形腫瘍細胞と接触する可能性を高めることができる。
本開示は遺伝子改変細胞を記載し、前記遺伝子改変細胞は、1つ以上の異なる抗原結合ドメインを含む。遺伝子改変細胞は、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメイン、すなわち、遺伝子改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞(例えば、腫瘍細胞)を殺すための第2の抗原結合ドメインを含むことができる。例えば、第1の抗原結合ドメインは、白血球(WBC)の細胞表面分子などの表面マーカーに結合し、第2の抗原結合ドメインは腫瘍細胞の標的抗原に結合する。実施形態では、細胞表面分子はWBCの表面抗原である。CARは、第1または第2の抗原結合ドメインを含むことができる。改変細胞は、第1および第2の抗原結合ドメインを含む。実施形態では、改変細胞は、(1)第1の抗原結合ドメインを含む第1群の改変細胞、および(2)第2の抗原結合ドメインを含む第2群の改変細胞を含む。実施形態では、改変細胞は、2つの異なる群の改変細胞を含む混合群である。
CARは二重特異性CARであり得る。例えば、2つの抗原結合ドメインは、同じCAR上(二重特異性CARまたはタンデムCAR(tanCAR))、異なるCAR分子上、またはCARとT細胞受容体(TCR)上に存在する。単一のCARは少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを含んでもよいし、2つの異なる抗原結合ドメインがそれぞれ別のCAR上に存在してもよい。
本開示はさらに、第1のCAR分子および第2のCAR分子またはTCRをコードする1つ以上の核酸を記載している。第1のCARは第1の抗原結合ドメインを含み、第2のCARまたはTCRは第2の抗原結合ドメインを含む。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARまたはTCRは、個別のポリペプチドとして発現され、かつ少なくとも2つの個別の核酸によってコードされる。実施形態では、単一のCARは少なくとも、本明細書に記載される第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含み、かつ単一の核酸によってコードされる。実施形態では、2つの異なる抗原結合ドメインは、2つ以上の核酸によってコードされてもよい。さらに、本開示は、本明細書に記載される核酸を含むベクター、および本明細書に記載される核酸を含む細胞を記載している。実施形態では、細胞は、遺伝子改変細胞、例えばCAR T細胞などの遺伝子によって改変されたT細胞を含む。
本開示はさらに、患者における遺伝子改変細胞の増幅および/または維持に有効な改変細胞集団(例えば、改変T細胞の混合集団)について記載している。実施形態では、遺伝子改変細胞混合集団は、少なくとも2つの異なる遺伝子改変細胞、すなわち、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを発現する第1の遺伝子改変細胞と、腫瘍細胞などの標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを発現する第2の遺伝子改変細胞とを含む。2つの抗原結合ドメインは、異なる分子であり、異なる抗原に結合する。実施形態では、遺伝子改変細胞混合集団はさらに、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを発現する第3の遺伝子改変細胞を含み、前記2つの異なる抗原結合ドメインは、遺伝子改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞上で発現される)である。
実施形態では、改変細胞混合集団は、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを発現する遺伝子改変細胞を含み、前記2つの異なる抗原結合ドメインは、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞上で発現される)である。
実施形態では、改変細胞混合集団は、標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを発現する改変細胞と、少なくとも2つの抗原結合ドメインを発現する改変細胞とを含み、前記2つの抗原結合ドメインは、改変T細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ改変細胞上で発現される)である。
実施形態では、改変細胞混合集団は、改変T細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを発現する改変細胞と、少なくとも2つの抗原結合ドメインを発現する改変細胞とを含み、前記2つの抗原結合ドメインは、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ改変細胞上で発現される)である。
本開示は、本明細書に記載される改変細胞混合集団からなる組成物を記載している。
実施形態では、改変細胞は、改変T細胞、改変NK細胞、改変マクロファージまたは改変樹状細胞である。実施形態では、改変T細胞はCAR T細胞である。実施形態では、2つの異なる抗原結合ドメインを発現する改変細胞は、単一のCAR T細胞であり得る。実施形態では、単一のCAR T細胞は、二重特異性CAR T細胞であり得る。
実施形態では、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインは、WBCの表面抗原に結合し、標的細胞を殺すための抗原結合ドメインは、腫瘍抗原に結合する。実施形態では、WBCはB細胞である。実施形態では、B細胞の表面抗原はCD19であり、腫瘍抗原は、tMUC1、TSHR、GUCY2C、ACPP、CLDN18.2(18.2)、PSMA、UPK2または他の腫瘍抗原である。
さらに、本開示は、本明細書に記載される組成物または改変細胞混合集団を、それを必要とする患者におけるCAR T細胞の増幅および/または維持を増強するために使用することを記載している。CAR T細胞の増幅および維持が増強されることで、CAR T細胞療法の治療効果を高めることができる。本開示は、本明細書に記載される改変細胞混合集団を使用して、腫瘍を有する患者を治療する方法を記載している。実施形態では、遺伝子改変細胞混合集団は、患者における改変細胞を増幅および/または維持し、かつ腫瘍成長を効果的に阻害することができる。実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。
さらに、本開示は、改変細胞混合集団の導入に応答してサイトカインが放出されることを記載している。
本発明の概要は、主張された主題の主な特徴または必要な特徴を特定することを意図しておらず、主張された主題の範囲を制限するために使用されることも意図していない。
図面と組み合わせて具体的な実施形態について説明する。異なる図面で使用される同じ参照番号は、類似または同一の項目を示す。
2つのCAR分子を含む改変細胞の細胞膜の例示的な部分を示す概略図である。 異なるCAR分子を有する2つの改変細胞を含む、改変細胞混合集団を示す概略図である。 CAR分子およびTCR分子を含む細胞膜の例示的な部分を示す概略図である。 CAR分子を含む改変細胞と、T細胞受容体(TCR)を含む改変細胞とを含む、改変細胞混合集団を示す概略図である。 二重特異性CAR分子を含む細胞膜の例示的な部分を示す概略図である。 マウスからの末梢血サンプルのサイトカインデータを示す。 二重特異性CARの設計と発現アッセイの結果を示す。 二重特異性CARを発現するT細胞のサイトカイン放出を示す。 二重特異性CARを発現するT細胞と、対応する標的細胞との共培養アッセイの結果を示す。 二重特異性CARの別の設計と発現アッセイの結果を示す。 図10のアッセイで使用される二重特異性CARの発現アッセイの結果を示す。 CAR分子の核酸構築物を示す概略図である。 図12に示されるCAR分子の発現を示す。 CAR T細胞を腫瘍細胞と共培養してIFNγ(IFNg)を放出した結果を示す。 CAR T細胞と腫瘍細胞を共培養したCD137発現を示したフローサイトメトリーアッセイの結果を示す。 単一のCAR(tMUC1 CARまたはTSHR CAR)を発現するT細胞を注入した後の日数に対する、患者のCARコピー数の変化を示す。 tMUC1 CARおよびCD19 CARを発現するT細胞を注入した後の日数に対する、患者のCARコピー数の変化を示す。 tMUC1 CARを発現するT細胞を注入した後の日数に対する、患者のCAR T細胞数の変化を示す。 tMUC1 CARおよびCD19 CARを発現するCAR T細胞混合集団を注入した後の日数に対する、患者のCAR T細胞数の変化を示す。 MUC1 CARおよびCD19 CARを発現する混合CAR T細胞を注入した後の日数に対する、数名の患者のCAR T細胞数の変化を示す。 MUC1 CARおよびCD19 CARを発現する混合CAR T細胞を注入した後の日数に対する、数名の患者のCAR T細胞数の変化を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入に応答した患者の様々なアッセイの結果を示す。 混合CAR T細胞の注入前と注入後の、患者のCTおよび/またはPET CTのスキャン画像を示す。 混合CAR T細胞の注入前と注入後の、患者のCTおよび/またはPET CTのスキャン画像を示す。 混合CAR T細胞の注入前と注入後の、患者のCTおよび/またはPET CTのスキャン画像を示す。 K19細胞の存在下または非存在下でCD19 CAR T細胞とtMUC1 CAR T細胞とを共培養したフローサイトメトリー分析の結果を示す。 図36のアッセイで使用される細胞培養物におけるPBMCおよび単球の活性化を示す。 tMUC1 CAR T細胞およびCD19 CAR T細胞によるIFNγの放出を示す。 tMUC1CAR T細胞およびCD19 CAR T細胞によるGZMBの放出を示す。 様々な実施形態におけるMUC1CAR T細胞の増殖を示す。 様々な実施形態におけるMUC1CAR T細胞の増殖を示す。 様々な実施形態におけるCD19 CAR T細胞の増殖を示す。 実施形態におけるサイトカインの放出を示す。 様々な細胞培養物におけるCD137の発現を示す。 細胞活性化のフローサイトメトリー分析の結果を示す。 図44に記載の細胞培養物におけるPBMCおよび単球の活性化を示す。 CD19 CAR T細胞の活性化により、ACPP CAR T細胞が細胞内IFNγを放出することを示す。 細胞培養物で細胞を24時間共培養した後のサイトカインの放出を示す。 細胞培養物で細胞を24時間共培養した後のサイトカインの放出を示す。 様々な細胞培養物におけるCD137の発現を示す。 KATO3+細胞と48時間共培養した各種CAR T細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。 図50に記載のシステムにおけるPBMCおよび単球の活性化を示す。 CLDN18.2 CAR T細胞の活性化により、CD19 CAR T細胞が細胞内IFNγを放出することを示す。 CLDN18.2 CAR T細胞の活性化により、CD19 CAR T細胞が細胞内IFNγを放出することを示す。 様々な細胞培養物の殺傷アッセイの結果を示す。 CLDN18.2 CAR T細胞の増殖を示す。 CLDN18.2 CARおよびCD19 CARシステムにおけるCD19 CAR T細胞の増殖を示す。 様々な細胞培養物におけるサイトカインの放出を示す。 様々な細胞培養物におけるサイトカインの放出を示す。 様々な細胞培養物におけるサイトカインの放出を示す。 免疫療法システムを示す概略図である。 図61の免疫療法システムの実施形態を示す概略図である。 図61の免疫療法システムの別の実施形態を示す概略図である。 例示的な条件付き遺伝子発現系の概略図である。 樹状細胞の活性化の例示的な実施形態の概略図である。 フローサイトメトリー分析を用いた、CAR T細胞およびTanCAR T細胞におけるいくつかのマーカーの発現を示す。 CAR T細胞およびTanCAR T細胞のサイトカイン放出を示す。 対応する基質細胞で5日間刺激した後の、各群の細胞の増幅を示す。 6917がMCF-7を阻害し、かつ6921がPC3-ACPPを阻害したことを示す殺傷アッセイの結果を示す。 フローサイトメトリー分析を用いて測定した、CAR T細胞およびTanCAR T細胞におけるいくつかのマーカーの発現、ならびにCAR T細胞およびTanCAR T細胞のサイトカイン放出を示す。 基質細胞に応答した、様々なCAR T細胞およびTanCAR T細胞のサイトカイン放出を示す。 患者009の単球のPDL1発現を示す。 改変T細胞の注入に応答した、患者011のCAR T細胞の増幅を示す。 改変T細胞の注入に応答した、患者011のCAR T細胞の増幅を示す。 改変T細胞の注入に応答した、患者011のCAR T細胞の増幅を示す。 改変T細胞の注入に応答した、患者011のサイトカイン放出を示す。 図77Aおよび図77Bは、結合分子の例示的な構造を示す。 フローサイトメトリーを用いて、目的遺伝子の表現型および発現を決定することを示す。 フローサイトメトリーを用いて共培養された細胞を識別することを示す。 CD19 CAR T細胞およびNYESO-1 TCRTSを含む共培養細胞の活性化に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。矢印114および116、ならびにボックス102、104、106および108は、比較群を指す。 CD19 CAR T細胞およびNYESO-1 TCRTSを含む共培養細胞の増殖に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。矢印208、ならびにボックス202、204および206は、比較群を指す。 CD19 CAR T細胞およびAFP TCRTSを含む共培養細胞の活性化に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。矢印314および316、ならびにボックス302、304、306および308は、比較群を指す。 CD19 CAR T細胞およびAFP TCRTSを含む共培養細胞の増殖に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。矢印408、ならびにボックス402、404および406は、比較群を指す。 様々な細胞培養物におけるCD137発現の他のヒストグラムを示す。 GUCY2C CAR T細胞の増殖を示す。 細胞培養物において、細胞を24時間共培養した後のサイトカイン放出を示す。 図87A~Dは、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドの例示的な構築物、および抗体の例示的な構造を示す。
以下、具体的な実施例と併せて、本発明をさらに説明する。
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解しているものと同じ意味である。本開示の実施または試験において本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料も依然として記載されている。本開示の目的のために、以下の用語は次のように定義される。
冠詞「1つ(a/an)」は、1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の文法的対象を指すために本明細書で使用される。例として、「ある要素」は1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
「約」とは、参照数、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対する数、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さの変化が20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%に及ぶことを意味する。
本明細書で使用される「活性化」という用語は、検出可能な細胞の増殖を誘導するのに十分に刺激されている細胞の状態を指す。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能と関連し得る。「活性化されたT細胞」という用語は、特に、細胞分裂しているT細胞を指す。
「抗体」という用語は最も広く使用されており、望ましい生物学的活性または機能を有するモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを指す。本開示における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、Fab’とF(ab’)2フラグメント、並びに一本鎖抗体とヒト化抗体(Harlowら, 1999, 書名:Using Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlowら, 1989, 書名:Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houstonら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Birdら, 1988, Science 242:423-426)を含む様々な形態で存在し得る。
「抗体フラグメント」という用語は、全長抗体の一部、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域を指す。抗体フラグメントの他の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2とFvフラグメント、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を含む。
「Fv」という用語は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントを指す。このフラグメントは、緊密で、非共有結合性会合による1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインを折り畳むことにより、6つの超可変ループ(H鎖からの3つのループとL鎖からの3つのループ)が生じ、抗原結合に使用されるアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの相補性決定領域(CDR)のみを含むFvの半分)であっても、その親和性が結合部位全体(二量体)よりも低いが、抗原を認識して結合する能力がある。
本明細書で使用される「抗体重鎖」は、天然に存在するコンフォメーションですべての抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。本明細書で使用される「抗体軽鎖」は、天然に存在するコンフォメーションですべての抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。Κおよびλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
「合成抗体」という用語は、例えば、バクテリオファージによって発現される抗体などの、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を指す。前記用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成、および抗体を得るためまたは抗体をコードするアミノ酸を得るためのDNA分子の発現によって生成された抗体を含む。合成DNAは、当技術分野で利用可能でよく知られている技術を使用して得られる。
「抗原」という用語は、抗体産生、または特異的免疫機能を持つ細胞の活性化、またはその両方を含み得る、免疫応答を誘発する分子を指す。抗原は、すべてのタンパク質やペプチドを含む任意の高分子、または組換えやゲノムDNAに由来する分子を含む。例えば、DNAは、免疫応答を誘発するタンパク質またはペプチドをコードするヌクレオチド配列または一部のヌクレオチド配列を含むため、本明細書で使用される用語「抗原」をコードする。抗原は、遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はない。抗原は、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞または生体液を含む生体サンプルから生成、合成、または誘導することができる。
本明細書で使用される、「抗腫瘍作用」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存数の減少、腫瘍細胞を有する対象の平均余命の増加または癌性病態に関連する様々な生理学の症状の改善に関連する生物学の作用を指す。「抗腫瘍作用」は、そもそも腫瘍の発生を予防する際のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の能力によって明らかにすることができる。
「自己抗原」という用語は、免疫系によって外来であると誤認される内因性抗原を指す。自己抗原には、細胞表面受容体を含む、細胞タンパク質、リンタンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、糖タンパク質が含まれる。
「自己」という用語は、後に同じ被検体に再導入される、被検体に由来する材料を説明するために使用される。
「同種異系」という用語は、同じ種の異なる被検体に由来する移植片を説明するために使用される。一例として、ドナー被検体は、レシピエント被験体に関連または非関連し得るが、ドナー被検体はレシピエント被験体と同様の免疫系マーカーを有する。
「異種の」という用語は、異なる種に由来する被検体の移植片を説明するために使用される。一例として、ドナー被検体はレシピエント被験体とは異なる種に由来し、ドナー被検体およびレシピエント被験体は遺伝的および免疫学的に不適合なものであり得る。
「癌」という用語は、異常な細胞の急速で制御されない成長を特徴とする疾患を指すために使用される。癌細胞は、局所的に転移し、または血流とリンパ系を介して体の他の部位に転移する可能性がある。様々な癌の例としては、乳腺癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌などが含まれる。
明細書全体において、文脈によって別段の解釈が必要でない限り、「備える(comprise)」、「含む(includes)」および「含む(including)」という言葉は、前記ステップや要素或いはステップや要素の群を含むことを示唆するが、他のステップや要素或いはステップや要素の群を除外しないものと理解される。
「・・・からなる」という語句は、「・・・からなる」という語句の後のあらゆるものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「・・・からなる」という語句は、リストされた要素が必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
「基本的には・・・からなる」という語句は、語句の後にリストされた任意の要素を含み、かつ本開示においてリストされた要素に対して指定された活動または動作を妨害しない、または寄与する他の要素を含み得ることを意味する。したがって、「基本的には・・・からなる」という語句は、リストされた要素が必要または必須であるが、他の要素は選択可能であり、リストされた要素の活動または動作に影響するかどうかに応じて、存在し得る場合と存在し得ない場合があることを示す。
「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対形成法則によって関連付けられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)を指す。例えば、配列「A-G-T」は配列「T-C-A」と相補的である。相補性は、核酸の一部の塩基のみが塩基対形成法則に従って一致する「部分的な」相補性であってもよく、核酸間に存在する「完全な」または「全体的な」相補性であってもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率と強度に大きな影響を与える。
「対応する(corresponds to)」または「対応する(corresponding to)」という用語は、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部と実質的に同一または相補的であるか、ペプチドまたはタンパク質におけるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または(b)参照ペプチドまたはタンパク質におけるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチド、を指す。
「共刺激リガンド」という用語は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を指し、それがT細胞上の同族の共刺激分子に特異的に結合し、それによって、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが担持されたMHC分子との結合によって提供される一次シグナルのほかに、増殖、活性化、分化および他の細胞応答のうちの少なくとも1つを含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、CD7のリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体およびB7-H3と特異的に結合するリガンドを含むことができる。共刺激リガンドは、特に、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3およびCD83と特異的に結合するリガンドなど、T細胞に存在する共刺激分子と特異的に結合するアゴニストまたは抗体、をさらに含む。
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それによって増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、MHC クラスI分子、BTLAおよびToll様受容体を含む。
「共刺激シグナル」という用語は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせて、T細胞の増殖および/または主要分子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを引き起こすシグナルを指す。
「疾患」および「病状」という用語は、互換的に使用されることもあり、特定の疾患または病状の病原性物質が分からない(したがって、病因がまだ解明されていない)可能性があるため、疾患としてまだ周知されておらず、臨床医によって多かれ少なかれ特定の症状が特定されている望ましくない状態または症候群としてのみ認識されているという点で、異なることもある。「疾患」とは、被検体の健康状態が恒常性を維持できない状態であり、疾患が改善されなければ、被検体の健康が悪化し続ける状態である。対照的に、被検体の「病症」とは、動物が恒常性を維持できる健康状態であるが、その動物の健康状態が、病症がない場合よりも好ましくない状態である。無治療のまま放置しても、病症があるからといって、動物の健康状態がさらに低下するとは限らない。
「有効」という用語は、望ましい、期待された、または意図された結果を達成するのに十分であることを指す。例えば、治療設定における「有効量」は、治療上または予防上の有益性をもたらすのに十分な化合物の量であり得る。
「コード化」という用語は、決定されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)、または決定されたアミノ酸配列およびその結果として生じる生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして機能するための、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチドにおける特定ヌクレオチド配列の固有特性を指す。したがって、遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合に、前記遺伝子は前記タンパク質をコードする。(「U」で「T」が置換されている場合を除き)mRNA配列と同一であり、そのヌクレオチド配列が通常は配列表に記載されているコード化鎖と、遺伝子またはcDNA転写のテンプレートとして使用される非コード化鎖は、いずれも、前記遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物コード化と称呼することができる。
「外因性」という用語は、野生型の細胞または生体に天然に存在しないが、通常は分子生物学的技術によって細胞内に導入される分子を指す。外因性ポリヌクレオチドの例には、所望のタンパク質をコードするベクター、プラスミドおよび/または人工核酸構築物が含まれる。ポリヌクレオチドおよびタンパク質に関して、「内因性」または「自然的」という用語は、所与の野生型の細胞または生体内に見られる天然に存在するポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列を指す。同様に、分子生物学的技術によって、第1の生体から単離して第2の生体に転移された特定のポリヌクレオチド配列は、通常は第2の生体に対して「外因性」のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列と見なされる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、分子生物学的技術によって、そのようなポリヌクレオチド配列をすでに含んでいる微生物に「導入」することができ、例えば、本来なら天然に存在するポリヌクレオチド配列の1つ以上の他のコピーを作成して、コードされたポリペプチドの過剰発現を促進する。
「発現または過剰発現」という用語は、例えばそのプロモーターによって駆動される、特定のヌクレオチド配列の前駆体または成熟タンパク質への転写および/または翻訳を指す。「過剰発現」は、形質転換された生体または細胞における遺伝子産物の産生量が、正常または形質転換されていない生体または細胞における産生量を超えることを意味する。本明細書で定義されるように、「発現」という用語は、発現または過剰発現を指す。
「発現ベクター」という用語は、発現されるヌクレオチド配列に動作可能に連結された発現制御(調節)配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用要素を含み、発現のための他の要素は、宿主細胞によって提供され、またはインビトロ発現系において提供され得る。発現ベクターは、当技術分野で知られている、組換えポリヌクレオチドを組み込んだすべてのもの、例えば、(例えば、裸の、またはリポソームに含まれている)コスミド、プラスミドおよびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む。
ウイルスは、インビトロおよびインビボ(被検体内)で核酸を細胞内に送達するために使用することができる。核酸を細胞内に送達し得るウイルスの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが含まれる。
また、核酸を細胞内に送達するための非ウイルス性の方法もあり、例えば、エレクトロポレーション、ジーンガン、ソノポレーション、マグネトフェクション、およびオリゴヌクレオチド、リポプレックス、デンドリマーや無機ナノ粒子の使用が挙げられる。
「相同」という用語は、2つの比較される配列の1つの位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、2つのポリペプチド間または2つのポリヌクレオチド間の配列類似性または配列同一性を意味し、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンによって占められている場合、分子は前記位置で相同である。2つの配列間の相同性の割合は、2つの配列が共有している一致する、または相同な位置の数を、比較された位置の数で割った値×100の関数である。例えば、2つの配列における10個の位置のうち6個の位置が一致し、または相同であれば、2つの配列は60%の相同性を有する。例えば、DNA配列ATTGCCとTATGGCは50%の相同性を有する。最大の相同性を与えるために、2つの配列が整列されたときに比較が行われる。
「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスを指す。このようなタンパク質に含まれるメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEの5つである。IgAは、唾液、涙、母乳、消化管分泌物、呼吸器や生殖器の粘液分泌物などの体内分泌物に存在する一次抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、ほとんどの被検体における一次免疫応答で産生される主な免疫グロブリンである。それは、凝集、補体固定および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌やウイルスからの防御に重要な役割を果たしている。IgDは、既知の抗体機能を有しないが、抗原受容体として機能し得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンへの暴露時に、肥満細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことにより、即時型の過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
「単離」という用語は、基本的または実質的には、通常、その自然状態でそれに付随する成分を含まないコンポーネントを指す。前記コンポーネントは、細胞、またはタンパク質や核酸などの高分子であり得る。例えば、本明細書で使用される「単離ポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、フラグメントに通常隣接する配列から除去されたDNAフラグメントを指す。あるいは、本明細書で使用される「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、ペプチドまたはポリペプチド分子を、その自然な細胞環境から、および細胞の他の成分との会合から、インビトロで単離および/または精製したペプチドを指す。
「実質的に精製された」という用語は、通常、その自然状態でそれに会合する成分を基本的に含まないコンポーネントを指す。例えば、実質的に精製された細胞は、その天然に存在する状態または自然状態で通常関連している他の細胞種類から単離された細胞を指す。いくつかの場合には、実質的に精製された細胞集団は均質な細胞集団を指す。他の場合には、この用語は単に、天然状態でそれと自然に会合している細胞から単離された細胞を指す。実施形態では、細胞はインビトロで培養される。実施形態では、細胞はインビトロで培養されない。
本開示の文脈では、一般的に存在する核酸塩基の以下の略語が使用される。「A」はアデノシン、「C」はシトシン、「G」はグアノシン、「T」はチミジン、「U」はウリジンを表す。
特に指定のない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮退バージョンであり、かつ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は、さらに、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がある形態で1つ以上のイントロンを含んでもよい程度でイントロン(1つ以上)を含み得る。
「レンチウイルス」という用語は、レトロウイルス科の1属を指す。レンチウイルスは、レトロウイルスの中でも独特であり、非分裂細胞に感染することができ、また、大量の遺伝子情報を宿主細胞のDNAに送り込むことができるため、遺伝子送達ベクターとしては最も効率的な方法の1つである。さらに、レンチウイルスを用いることで、遺伝情報を宿主染色体に組み込むことができ、安定して形質導入された遺伝情報が得られる。HIV、SIVおよびFIVはすべてレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、有意なレベルの遺伝子導入をインビボで達成する手段を提供する。
「調節」という用語は、治療をしない、または化合物を使用しない場合の被検体における応答レベルと比較して、および/またはそれ以外は同一であるが未治療の被検体における応答レベルと比較して、被検体における応答レベルの検出可能な増加または減少を媒介することを指す。前記用語は、天然のシグナルや応答を干渉し、および/または影響を与え、それによって被検体、好ましくはヒトにおいて有益な治療応答を媒介することを包含する。
核酸は、別のポリヌクレオチドと機能的な関係に置かれたときに、「動作可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現している場合には、ポリペプチドのDNAに動作可能に連結されており、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を与える場合には、コード配列に動作可能に連結されており、または、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合には、コード配列に動作可能に連結されている。
「転写制御下」という用語は、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御(調節)するために、プロモーターがポリヌクレオチドに動作可能に連結され、且つポリヌクレオチドに対して正しい位置および配向にあることを指す。
「過剰発現された」腫瘍抗原または腫瘍抗原の「過剰発現」という用語は、特定の組織または臓器からの正常な細胞における発現レベルに対する、患者の前記組織または臓器の固形腫瘍などの疾患領域からの細胞における腫瘍抗原の異常な発現レベルを示すことを意図する。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする固形腫瘍または血液悪性腫瘍を有する患者は、当技術分野で知られている標準的なアッセイによって確定することができる。
固形腫瘍は、通常、嚢胞や液状の部分を含まない異常な組織の塊である。固形腫瘍には、良性のものと悪性のものがある。様々な種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類に応じて命名される(肉腫、癌腫やリンパ腫など)。肉腫や癌腫などの固形腫瘍の例として、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳腺癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫およびCNS(中枢神経系)腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫や混合神経膠腫など)、膠芽腫(多形性膠芽腫とも称される)、星細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫や脳転移など)が含まれる。
固形腫瘍抗原は、固形腫瘍で発現される抗原である。実施形態では、固形腫瘍抗原はまた、健康な組織において低レベルで発現される。固形腫瘍抗原およびその関連する疾患腫瘍の例を表1に提供する。
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組成物の「非経口投与」という用語は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、胸骨内注射または注入技術を含む。
「患者」、「被検体」や「個体」などの用語は、本明細書で互換的に使用可能であり、かつ、本明細書に記載される方法に適合する任意のヒトまたは動物を指す。特定の非限定的な実施形態では、患者、被検体または個体は、ヒトまたは動物である。実施形態では、「被検体」という用語は、免疫応答が誘発され得る生体(例えば、哺乳動物)を含むことが意図される。被検体の例には、ヒト、およびイヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらの遺伝子組み換え種などの動物が含まれる。
治療を必要とする被検体または治療が必要な被検体には、治療を必要とする疾患、病状または病症を有する被検体が含まれる。治療が必要な被検体は、疾患、病状または病症の予防のために治療を必要とする被検体も含まれる。
「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、mRNA、RNA、cRNA、rRNA、cDNAまたはDNAを指す。前記用語は、通常、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、またはいずれかの種類のヌクレオチドの改変された形態の、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドの重合体形態を指す。前記用語は、一本鎖や二本鎖形態を含む核酸のすべての形態を含む。
「ポリヌクレオチド変異体」および「変異体」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または以下に定義される厳密な条件で参照配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、さらに少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失または置換によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを含む。したがって、「ポリヌクレオチド変異体」および「変異体」という用語は、1つ以上のヌクレオチドが付加または欠失されたか、異なるヌクレオチドに置換されたポリヌクレオチドを含む。この点に関して、当技術分野でよく理解されるように、参照ポリヌクレオチド対して、突然変異、付加、欠失および置換を含む特定の変異を生じさせることができ、それにより、変異されたポリヌクレオチドは参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持するか、参照ポリヌクレオチドに対して活性が増加する(すなわち、最適化される)。ポリヌクレオチド変異体は、例えば、本明細書に記載された参照ポリヌクレオチド配列と少なくとも50%(少なくとも51%~少なくとも99%およびその間のすべての整数パーセンテージ、例えば、90%、95%または98%)の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。「ポリヌクレオチド変異体」および「変異体」という用語は、天然に存在する対立遺伝子変異体およびオルソログをも含む。
「ポリペプチド」、「ポリペプチドフラグメント」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、アミノ酸残基のポリマーならびにその変異体および合成類似体を指す。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が合成の天然に存在しないアミノ酸であるアミノ酸ポリマー、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体、および天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。特定の態様において、ポリペプチドは、通常、様々な化学反応を触媒する(すなわち、その速度を上げる)酵素ポリペプチドまたは「酵素」を含み得る。
「ポリペプチド変異体」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって参照ポリペプチド配列と区別されるポリペプチドを指す。特定の実施形態では、ポリペプチド変異体は、保存的または非保存的であり得る1つ以上の置換によって参照ポリペプチドと区別される。特定の実施形態では、ポリペプチド変異体は保存的置換した変異体を含み、この点において、いくつかのアミノ酸は、ポリペプチド活性の性質を変えることなく、類似する特性を有する他のアミノ酸に変更され得ることは、当技術分野でよく理解されている。ポリペプチド変異体はまた、1つ以上のアミノ酸が付加または欠失されたか、異なるアミノ酸残基によって置換されたポリペプチドを含む。
「プロモーター」という用語は、細胞の合成機構が認識され、または合成機構の導入によって、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要なDNA配列を指す。「発現制御(調節)配列」という用語は、特定の宿主生物において動作可能に連結されたコード化配列を発現させるために必要なDNA配列を指す。原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーター、任意選択的なオペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
「結合(bind)」、「結合(binds)」または「・・・と相互作用する」という用語は、サンプルまたは生体中の第2の分子を認識して付着するが、サンプル中の他の構造的に無関係な分子を基本的に認識または付着しない分子を指す。本明細書で抗体に関して使用される「特異的に結合する」という用語は、特異的な抗原を認識するが、サンプル中の他の分子を基本的に認識または結合しない抗体を指す。例えば、1つの種からの抗原と特異的に結合する抗体は、1つ以上の種からのその抗原にも結合し得る。しかし、このような種間の反応性は、それ自体が抗体の特異的な分類を変えるものではない。別の例では、抗原と特異的に結合する抗体は、異なる対立遺伝子型の抗原に結合してもよい。しかしながら、このような交差反応性は、それ自体が抗体の特異的な分類を変えるものではない。特定の場合には、「特異的結合(specific binding)」または「特異的に結合する(specifically binding)」という用語は、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して使用することができ、その相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する;例えば、抗体は、任意のタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識「A」および抗体を含む反応において、エピトープA(または遊離の非標識A)を含む分子が存在すると、抗体に結合する標識Aの量が減少する。
「統計的に有意」とは、その結果が偶然に発生する可能性が低いことを意味する。統計的に有意性は、当技術分野で知られている任意の方法で決定することができる。一般的に使用される有意性の尺度は、帰無仮説が真であった場合に観測された事象が発生する頻度や確率を表すp値を含む。得られたp値が有意性レベルよりも小さい場合、帰無仮説は棄却される。単純な場合に、有意レベルは0.5以下のp値と定義される。「減少した」または「低下した」または「より少ない」量は、通常、「統計的に有意な」または生理学的に有意な量であり、本明細書に記載の量またはレベルの約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40または50倍以上(例えば、100、500、1000倍)(1以上のすべての整数および小数点、例えば1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の減少を含む。
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその同族リガンドと結合することにより、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達などのシグナル伝達イベントを媒介することで誘導される一次応答を指す。刺激は、特定の分子の発現の変化、例えば、TGF-βのダウンレギュレーションおよび/または細胞骨格構造の再編成を媒介することができる。
「刺激分子」という用語は、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を指す。例えば、刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体複合体に会合するζ鎖である。刺激分子には、シグナル伝達を担うドメインが含まれる。
「刺激リガンド」という用語は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞などの細胞上の同族結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称する)に特異的に結合でき、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖など、T細胞による一次応答を媒介するリガンドを指す。刺激リガンドは当技術分野で周知であり、特に、ペプチドを搭載したMHC クラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗-CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗-CD2抗体を包含する。
「治療的」という用語は、治療および/または予防を指す。治療効果は、病状の抑制、寛解、根絶または病状の緩和によって得られる。
「治療上有効な量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医が求めている組織、系または被検体の生物学的または医学的応答を誘発する本発明の化合物の量を指す。「治療上有効な量」という用語は、化合物を投与することにより、治療される病症または疾患の1つ以上の徴候または症状の進行を防止するか、またはある程度軽減するのに十分な量を含意する。治療上有効な量は、化合物、疾患とその重症度、ならびに治療される被検体の年齢、体重などの要因によって異なる。
「疾患を治療する」という用語は、被検体が経験する疾患または病症の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を減少させることを指す。
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に転移または導入されたプロセスを指す。「トランスフェクトの」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞である。前記細胞は、一次被験細胞およびその子孫を含む。
「ベクター」という用語は、単離核酸を含み、かつ単離核酸を細胞内部に送達し得るポリヌクレオチドを指す。線状ポリヌクレオチド、イオンまたは両親媒性化合物と会合するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含む、数多くのベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。前記用語はまた、細胞への核酸の転移を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどを含む。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、腺伴随ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれる。例えば、レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構成機能を持つ他の遺伝子をさらに含む。レンチウイルスベクターは当技術分野で周知である。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1、HIV-2およびサル免疫不全ウイルス:SIVが含まれる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重に弱毒化することによって産生されており、例えば、env、vif、vpr、vpuやnefといった遺伝子を削除することで、生物学的に安全なベクターとなる。
範囲:本開示全体を通して、本開示の様々な態様を範囲形態で提示することができる。理解されるように、範囲形態の説明は、単に利便性と簡潔性のためのものであり、本開示の範囲を融通性なく制限するものとして解釈されるべきではない。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能なすべてのサブ範囲を具体的に開示しているものと考えるべきである。例えば、1から6までのような範囲の説明は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までのサブ範囲と、その範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、6が具体的に開示されていると考えるべきである。範囲の広さに関係なく適用される。
「キメラ抗原受容体(CAR)」分子とは、少なくとも細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメインまたは細胞内ドメインを含む組換えポリペプチドのことである。実施形態では、CARのドメインは同じポリペプチド鎖、例えば、キメラ融合タンパク質上にある。実施形態では、前記ドメインは異なるポリペプチド鎖上にあり、例えば、ドメインは連続していない。
CAR分子の細胞外ドメインは抗原結合ドメインを含む。抗原結合ドメインは、CAR T細胞などの改変細胞を増幅および/または維持するため、あるいは固形腫瘍などの腫瘍細胞を殺すために使用され得る。実施形態では、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインは、抗原、例えばWBCの表面にある細胞表面分子またはマーカーと結合し得る。実施形態では、WBCは、GMP(顆粒球マクロファージ前駆体)、MDP(単球-マクロファージ/樹状細胞前駆体)、cMoP(共通単球前駆体)、好塩基球、好酸球、好中球、SatM(セゲレート核を含む非定型単球)、マクロファージ、単球、CDP(共通樹状細胞前駆体)、cDC(従来のDC)、pDC(形質細胞様DC)、CLP(共通リンパ球前駆体)、B細胞、ILC(自然リンパ球)、NK細胞、巨核球、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、バンド細胞、リンパ芽球、前リンパ球、単芽球、巨核球、前巨核球、巨核球、血小板またはMSDC(骨髄由来サプレッサー細胞)のうちの少なくとも1つである。実施形態では、WBCは、顆粒球、単球および/またはリンパ球である。実施形態では、WBCは、B細胞などのリンパ球である。実施形態では、WBCはB細胞である。実施形態では、B細胞の細胞表面分子はCD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13を含む。実施形態では、B細胞の細胞表面分子はCD19、CD20、CD22またはBCMAである。実施形態では、B細胞の細胞表面分子はCD19である。
CAR細胞や改変T細胞などの改変細胞を含む、本明細書に記載される細胞は、幹細胞に由来することができる。幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髓幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞、または造血幹細胞であり得る。改変細胞はさらに、樹状細胞、NK細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球またはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であってもよい。実施形態では、改変細胞は、CD4+ Tリンパ球およびCD8+ Tリンパ球からなる群に由来し得る。本発明の細胞の増幅および遺伝子改変に先立って、細胞の供給源は、様々な非限定的な方法によって被検体から得ることができる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髓、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含む多くの非限定的な供給源から得ることができる。本発明の特定の実施形態では、利用可能で、かつ当業者に知られている任意の数のT細胞株を使用することができる。実施形態では、改変細胞は、健康なドナー、癌と診断された患者、または感染症と診断された患者に由来し得る。実施形態では、改変細胞は、異なる表現型特性を示す細胞混合集団の一部である。
細胞集団とは、2つ以上の細胞が集まった群を指す。細胞集団における細胞は、同じであってよく、その場合、細胞集団は細胞の均質な集団となる。細胞集団における細胞は、異なってもよく、その場合、細胞集団は細胞混合集団または細胞の異種集団となる。例えば、細胞混合集団は、第1のCARを含む改変細胞、および第2のCARを含む細胞を含み得、第1のCARおよび第2のCARは異なる抗原に結合する。
「幹細胞」という用語は、自己複製能力と他の種類の細胞に分化する能力を持つ、特定の種類の細胞のいずれかを指す。例えば、幹細胞は、2つの娘幹細胞(インビトロで胚性幹細胞と培養した場合に発生)、または1つの幹細胞および分化した細胞(血液細胞を生成できる造血幹細胞で発生)を生成する。幹細胞は、その由来および/または他の種類の細胞に分化する能力の程度に応じて、異なるカテゴリーに分類され得る。例えば、幹細胞は、胚性幹(ES)細胞(すなわち、多能性幹細胞)、体性幹細胞、人工多能性幹細胞、およびその他の任意の種類の幹細胞を含み得る。
多能性胚性幹細胞は、胚盤胞の内部の細胞塊に存在し、生来の高い分化能力を有し得る。例えば、多能性胚性幹細胞は、体内であらゆる種類の細胞を形成する可能性がある。インビトロで長期間成長した場合、ES細胞は多能性を維持し、子孫細胞は多系統に分化する可能性がある。
体性幹細胞は、(胎児からの)胎児幹細胞および(骨髓などの様々な組織に存在する)成体幹細胞を含み得る。これらの細胞は、多能性ES細胞よりも分化能力が低いと見なされ、中で胎児幹細胞の能力が成体幹細胞の能力よりも高い。体性幹細胞は明らかに限られた種類の細胞にしか分化せず、多能性と見なされてきた。「組織特異的」な幹細胞は、通常、1種類の細胞しか生じない。例えば、胚性幹細胞は、血液幹細胞(例えば、造血幹細胞(HSC))に分化することができ、さらに様々な血液細胞(例えば、赤血球、血小板、白血球)に分化することもできる。
人工多能性幹細胞(すなわち、iPS細胞またはiPSC)は、特定の遺伝子の発現を誘導することにより、非多能性細胞(例えば、成人の体細胞)から人工的に誘導された多能性幹細胞の1種類を含み得る。人工多能性幹細胞は、特定の幹細胞遺伝子やタンパク質の発現、クロマチンメチル化パターン、倍加時間、胚様体形成、奇形腫形成、生存可能なキメラ形成、力価や分化能など、多くの点で、胚性幹細胞(ES細胞)などの天然に存在する多能性幹細胞と類似している。人工多能性細胞は、成人の胃、肝臓、皮膚、および血液細胞から得ることができる。
実施形態では、腫瘍を殺すための抗原結合ドメインは、腫瘍の表面にある抗原、例えば腫瘍抗原または腫瘍マーカーと結合する。腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞を介した免疫応答を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。腫瘍抗原は、当技術分野ではよく知られており、例えば、腫瘍関連MUC1(tMUC1)、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロスタイン、PSMA、Her2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、CD19およびメソテリンを含む。例えば、腫瘍抗原がCD19の場合、そのCARをCD19 CARまたは19CARと称することができ、前記CD19 CARまたは19CARは、CD19に結合する抗原結合ドメインを含むCAR分子である。
実施形態では、CARの細胞外抗原結合ドメインは、少なくとも1つのscFvまたは少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む。一例として、1つのCARには2つのscFvsが存在し得る。scFvは、柔軟なリンカーによって連結された標的抗原特異的モノクローナル抗体の軽鎖可変(VL)領域および重鎖可変(VH)領域を含む。一本鎖可変領域フラグメントは、短い連結ペプチドを用いて軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を連結することにより形成することができる(Birdら,Science 242:423-426,1988)。連結ペプチドの例としては、アミノ酸配列(GGGGS)3(配列番号278)を有するGSリンカーがあり、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端の間を約3.5 nm架橋している。他の配列のリンカーが設計して使用されている(Birdら,1988,上記と同様)。一般的に、リンカーは、短くて柔軟性のあるポリペプチドであり得、約20個以下のアミノ酸残基を含むことが好ましい。一本鎖変異体は、組換えまたは合成によって産生することができる。scFvの合成産生には、自動合成機を使用することができる。scFvの組換え産生には、scFvをコードするポリヌクレオチドを含む適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫、哺乳類細胞などの真核生物、または大腸菌などの原核生物のいずれかの適切な宿主細胞に導入することができる。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの慣習的な操作で作ることができる。得られたscFvは、当技術分野で知られている標準的なタンパク質精製技術を用いて単離することができる。
本明細書に記載されるCAR分子の細胞質ドメインは、1つ以上の共刺激ドメインおよび1つ以上のシグナル伝達ドメインを含む。共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインは、抗原結合に応答して、シグナルを伝達し、T細胞などの分子を活性化する機能を持つ。1つ以上の共刺激ドメインは、刺激分子および/または共刺激分子に由来し、シグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインなどの一次シグナル伝達ドメインに由来する。実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激分子に由来する1つ以上の機能的なシグナル伝達ドメインをさらに含む。実施形態では、共刺激分子は、抗原に対する細胞応答の活性化に必要な細胞表面分子(抗原受容体またはそのリガンド以外のもの)である。
実施形態では、共刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドの細胞内ドメイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体に由来するCD3ζドメインを含む。
本明細書に記載されるCAR分子は、膜貫通ドメインをさらに含む。CAR分子に膜貫通ドメインを組み込むことで、分子を安定させることができる。実施形態では、CAR分子の膜貫通ドメインは、CD28または4-1BB分子の膜貫通ドメインである。
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間には、スペーサードメインが組み込まれる場合がある。本明細書では、「スペーサードメイン」という用語は、一般的に、ポリペプチド鎖上の膜貫通ドメインと細胞外ドメインおよび/または細胞質ドメインを連結する機能を持つ任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、最も好ましくは25~50個のアミノ酸を含み得る。
本開示は、インビトロで細胞を調製するための方法を記載し、前記方法は、細胞を準備することと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞集団を得ることと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なる。
本開示はさらに、癌を有する被検体における細胞増幅を増強するための方法を記載し、前記方法は、被検体または健康なドナーから細胞を得ることと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の改変細胞を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なり、有効量の改変細胞を投与した被検体における細胞増幅のレベルは、第2のベクターではなく第1のベクターと接触する有効量の細胞を投与した被検体における細胞増幅のレベルよりも高い。
本開示はさらに、癌を有する被検体を治療するための方法を記載し、前記方法は、被検体または健康なドナーから細胞を得ることと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の改変細胞を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なる。
本開示はさらに、癌を有する被検体の治療を増強するための方法を記載し、前記方法は、被検体または健康なドナーから細胞を得ることと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の改変細胞を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なり、有効量の改変細胞による腫瘍成長の阻害レベルは、第1のベクターではなく第2のベクターと接触する有効量の細胞による腫瘍成長の阻害レベルよりも高い。
本開示はさらに、インビトロで細胞を調製するための方法を記載し、前記方法は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを第1の細胞集団に導入することと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを第2の細胞集団に導入することと、第1の細胞集団および第2の細胞集団を培養することと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なる。
本開示はさらに、癌を有する被検体における細胞増幅を増強するための方法を記載し、前記方法は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを、第1の細胞集団に導入して第1の改変細胞集団を得ることと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを、第2の細胞集団に導入して第2の改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なり、第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における細胞増幅のレベルは、第1の改変細胞集団ではなく第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における細胞増幅のレベルよりも高い。
本開示はさらに、癌を有する被検体を治療するための方法を記載し、前記方法は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを、第1の細胞集団に導入して第1の改変細胞集団を得ることと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを、第2の細胞集団に導入して第2の改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なる。
本開示はさらに、癌を有する被検体の治療を増強するための方法を記載し、前記方法は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを、第1の細胞集団に導入して第1の改変細胞集団を得ることと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを、第2の細胞集団に導入して第2の改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を投与することと、含み、ここで、第1の抗原は第2の抗原と異なり、第1の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における腫瘍成長の阻害レベルは、第1の改変細胞集団ではなく第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における腫瘍成長の阻害レベルよりも高い。
本開示はさらに、T細胞応答を増強するための方法を記載し、前記方法は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを第1の細胞集団に導入することと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを第2の細胞集団に導入することと、第2の抗原を発現する細胞を第1の細胞集団および第2の細胞集団と接触させることと、T細胞応答のレベルを測定することと、を含み、ここで、第1の細胞集団および第2の細胞集団と接触した細胞に応答するT細胞応答のレベルは、第1の細胞集団ではなく第2の細胞集団と接触した細胞に応答するT細胞応答のレベルよりも高い。
本開示はさらに、T細胞応答を増強するための方法を記載し、前記方法は、細胞集団を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターと接触させて改変細胞集団を得ることと、第2の抗原を発現する細胞を改変細胞集団と接触させることと、T細胞応答のレベルを測定することと、を含み、ここで、第1のベクターおよび第2のベクターと接触させて得られた改変細胞集団と接触した細胞におけるT細胞応答のレベルは、第1のベクターではなく第2のベクターと接触した細胞集団と接触した細胞におけるT細胞応答のレベルよりも高い。
細胞は、マクロファージ、樹状細胞、またはT細胞やNK細胞などのリンパ球を含む。実施形態では、細胞はT細胞である。実施形態では、第1の抗原結合分子は、WBCの細胞表面分子に結合する。実施形態では、WBCは、顆粒球、単球またはリンパ球である。実施形態では、WBCはB細胞である。実施形態では、WBCの細胞表面分子はCD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である。実施形態では、WBCの細胞表面分子は、CD19、CD20、CD22またはBCMAである。実施形態では、WBCの細胞表面分子は、CD19である。
実施形態では、第2の抗原結合分子は、固形腫瘍抗原に結合する。実施形態では、固形腫瘍抗原は、腫瘍関連MUC1(tMUC1)、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、CLDN 18.2、KISS1R、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIIIまたはEGFRである。
実施形態では、第1の結合分子および第2の結合分子は、CARである。実施形態では、CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、細胞外ドメインは腫瘍抗原に結合する。実施形態では、細胞内ドメインは共刺激ドメインを含み、前記共刺激ドメインはCD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及それらの任意の組み合わせからなる群から選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含んでいる。実施形態では、細胞内ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
実施形態では、第1の結合分子はCARであり、第2の結合分子はTCRである。実施形態では、T細胞は、改変T細胞受容体(TCR)を含む。実施形態では、TCRは、患者において自然に発生した腫瘍特異的T細胞に由来する。実施形態では、TCRは腫瘍抗原に結合する。実施形態では、腫瘍抗原は、CEA、gp100、MART-1、p53、MAGE-A3またはNY-ESO-1を含む。実施形態では、TCRは、TCRγとTCRδ鎖、またはTCRαとTCRβ鎖、またはそれらの組み合わせを含む。
実施形態では、第2の細胞集団は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に由来する。実施形態では、標的抗原に対して高い親和性を有するTCRを発現するT細胞クローンは、単離され得る。TILまたは末梢血単核細胞(PBMC)は、定義されたHLA対立遺伝子の背景で提示された場合に優性T細胞応答を誘発可能なであることが知られているエピトープを表すペプチドでパルスされた抗原提示細胞(APC)の存在下で培養することができる。次に、MHC-ペプチドテトラマー染色および/また低滴定濃度の同族ペプチド抗原でパルスされた標的細胞を認識および溶解する能力に基づいて、高親和性クローンを選択することができる。クローンが選択された後、TCRα鎖とTCRβ鎖、またはTCRγ鎖とTCRδ鎖は、分子クローニングによって同定および単離される。例えば、TCRα鎖およびTCRβ鎖の場合、TCRαおよびTCRβの遺伝子配列を使用して、ヒトT細胞における両TCR鎖の安定した高レベルの発現を理想的に促進する発現構築物を生成する。次に、形質導入媒体、例えば、ガンマレトロウイルスまたはレンチウイルスを生成して、その機能性(抗原特異性および機能親和性)について試験を行い、かつ臨床用ベクターを多く製造するために使用することができる。最終生成物のアリコートを使用して、被検体への注入前に増幅される標的T細胞集団(通常、患者のPBMCから精製)に形質導入することができる。
腫瘍反応性TCRをコードする遺伝子を得るために、様々な方法を実行し得る。詳細は、Kershawら,Clin Transl Immunology.2014年5月; 3(5):e16に提供されている。実施形態では、特異的TCRは、患者において自然に発生した腫瘍特異的T細胞に由来することができる。このカテゴリーに含まれる抗原は、メラノサイト分化抗原MART-1およびgp100、さらにMAGE抗原およびNY-ESO-1を含み、それらはより広範囲の癌で発現する。ウイルスタンパク質が形質転換細胞によって発現される限り、ウイルス関連悪性腫瘍に特異的なTCRも単離することができる。このカテゴリーの悪性腫瘍は、肝炎と乳頭腫ウイルスに関連する肝臓癌と子宮頸癌、およびエプスタインバーウイルスに関連する悪性腫瘍を含む。実施形態では、TCRの標的抗原は、CEA(例えば、結腸直腸癌を対象にする)、gp100、MART-1、p53(例えば、黒色腫を対象にする)、MAGE-A3(例えば、黒色腫、食道肉腫および滑膜肉腫を対象にする)およびNY-ESO-1(例えば、黒色腫、肉腫および多発性骨髄腫を対象にする)を含む。
実施形態では、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の調製および注入は、以下のように実施され得る。例えば、無菌状態で外科手術や生検標本からの腫瘍組織を採取し、且つ、アイスボックスの細胞培養室に輸送する。壊死組織や脂肪組織を取り除く。腫瘍組織を約1-3立方ミリメートルの小片に切り分ける。コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼおよびDNA酵素を加えて、4℃で一晩で消化する。0.2 μmフィルターでろ過し、リンパ球分離液を用いて1500 rpmで5 min遠心分離し、細胞を分離および収集する。PHA、2-メルカプトエタノールおよびCD3モノクローナル抗体を含む培地で細胞を増幅し、活性化および増幅を誘導するために少量のIL-2(10-20 IU / ml)を添加し得る。37℃、5% COの条件で、細胞密度を注意深く測定し、それを0.5-2×106/mlの範囲で7ー14日間維持する。相同癌細胞を殺す能力を有するTIL陽性細胞は、共培養によって選別することができる。TIL陽性細胞は、1×1011を超えるTILが得られるまで、高用量のIL-2(5000-6000 IU / ml)を含む無血清培地で増幅することができる。TILを投与するために、まず連続遠心分離で生理食塩水に収集し、次に血小板投与装置で、5%のアルブミンおよび450000 IUのIL-2を含む200-300 mLの体積になるまでろ過する。TILは、中心静脈カテーテルを介して、30-60分かけて患者に注入してもよい。実施形態では、TILは、2~4個の別々のバッグに分けて注入してもよく、注入は、数時間間隔で行ってもよい。
実施形態では、改変細胞集団は、第1の結合分子を含む細胞、および第2の結合分子を含む細胞を含む。実施形態では、改変細胞集団は、第1の結合分子を含む細胞、第2の結合分子を含む細胞、および第1の結合分子と第2の結合分子の両方を含む細胞を含む。
実施形態では、T細胞応答の増加は、CARコピー数の増加、および/または放出されるサイトカイン(例えばIL-6とIFN-γ)量の増加に基づく。実施形態では、T細胞応答は、サイトカイン放出、細胞増幅および/または活性化レベルを含む。実施形態では、第1のベクターはさらに、IL-6またはIFNγまたはそれらの組み合わせをコードするポリヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のベクターはさらに、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含む。実施形態では、ポリヌクレオチドは、NFATおよび/またはVHLをコードするポリヌクレオチドを含む。実施形態では、改変細胞集団は、第1の結合分子およびIL-6またはIFNγまたはそれらの組み合わせを発現する細胞、第2の結合分子を発現する細胞、第1の結合分子および第2の結合分子を発現する細胞、および/または第1の結合分子およびIL-12を発現する細胞を含む。実施形態では、改変細胞集団は、第2の結合分子およびIL-6またはIFNγまたはそれらの組み合わせを発現する細胞、第2の結合分子を発現する細胞、第1の結合分子および第2の結合分子を発現する細胞、および/または第1の結合分子およびIL-12を発現する細胞を含む。実施形態では、改変細胞集団は、第2の結合分子およびIL-6またはIFNγまたはそれらの組み合わせを発現する細胞、第2の結合分子を発現する細胞、第1の結合分子および第2の結合分子を発現する細胞、および/または第2の結合分子およびIL-12を発現する細胞を含む。実施形態では、改変細胞集団は、PD-1のドミナントネガティブ形態を発現する細胞を含む。
本開示は、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインをコードする核酸を記載する。実施形態では、WBCの表面上の抗原に結合する第1の抗原結合ドメインが存在し、かつ、WBCの表面上の抗原と異なる腫瘍上の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインが存在する。第1の抗原結合ドメインは、第1の抗原結合ドメインが導入された細胞を増幅するように機能するが、第2の抗原結合ドメインは、標的抗原に結合すると、標的腫瘍抗原を含む腫瘍細胞の成長を阻害するか、またはそれを殺すように機能する。実施形態では、本明細書に記載される核酸は、同じ核酸分子上の第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインの両方をコードする。実施形態では、2つの抗原結合ドメインは、2つの個別の核酸分子によってコードされる。例えば、第1の核酸は第1の抗原結合ドメインをコードし、第2の核酸は第2の抗原結合ドメインをコードする。
実施形態では、本開示は、結合分子の第1の抗原結合ドメインおよび結合分子の第2の抗原結合ドメインをコードする核酸を記載し、ここで、第1の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子に結合し、第2の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子と異なる抗原に結合する。実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、B細胞の細胞表面抗原またはB細胞マーカーに結合する。実施形態では、第2の結合ドメインはB細胞マーカーに結合しない。実施形態では、第2の結合ドメインは、配列番号264または265のアミノ酸配列を含むscFvを含む。例えば、第2の抗原結合ドメインは、配列番号271-277のアミノ酸配列の1つを含むCAR上に存在する。
実施形態では、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、第1のCARおよび第2のCARのような2つの異なる結合分子(第1の結合分子および第2の結合分子)上に存在する。一例として、第1のCARは、B細胞の表面上のマーカーに結合する細胞外結合ドメインを含み、第2のCARは、腫瘍細胞の標的抗原に結合する細胞外結合ドメインを含む。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARは、異なる核酸によってコードされる。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARは、2つの異なる結合分子であるが、単一の核酸によってコードされる。
実施形態では、2つの異なる抗原結合ドメインは、同じ結合分子、例えば二重特異性CAR上に存在し、かつ単一の核酸によってコードすることができる。実施形態では、二重特異性CARは、リンカーによって連結された2つの異なるscFv分子を有してもよい。二重特異性CARの例を表2に提供する。
二重特異性CARの一例を図5に示す。図5に示すように、二重特異性CAR(またはタンデムCAR(tanCAR))は、scFv1およびscFv2の2つの結合ドメインを含み得る。実施形態では、scFv1は、白血球抗原(例えば、CD19)に結合し、scFv2は、固形腫瘍抗原(例えば、tMUC1)に結合する。実施形態では、scFv1は固形腫瘍抗原に結合し、scFv2は、別の固形腫瘍抗原(例えば、tMUC1およびCLDN 18.2)に結合する。クローディン18.2(CLDN 18.2)は、クローディン-18の胃特異的アイソフォームである。CLDN 18.2は、胃癌および膵臓癌で高度に発現している。実施形態では、scFv1は、腫瘍細胞に発現するが正常組織に発現しない抗原(例えば、tMUC1)に結合し、scFv2は、固形腫瘍に関連する非必須組織に発現する抗原に結合し、かつ組織の正常細胞を殺すことは、被検体(例えば、TSHR、GUCY2C)に生命を脅かす事象(例えば、合併症)を引き起こさない。非必須組織の例には、前列腺や乳腺などの臓器、またはメラノサイトが含まれる。実施形態では、scFv1およびscFv2は、同じ非必須組織に発現する異なる抗原(例えば、前立腺癌の場合のACPPとSLC45A3、尿路上皮癌の場合のSIGLEC15とUPK2)に結合する。二重特異性CARおよびその成分の配列は、表2に記載されている。
Figure 2022531814000004

Figure 2022531814000005
実施形態では、2つの異なる抗原結合ドメインは、CARおよびT細胞受容体(TCR)の上に存在し、個別の核酸によってコードすることができる。TCRの結合ドメインは、腫瘍細胞上の特異的な腫瘍抗原または腫瘍マーカーを標的とすることができる。実施形態では、TCR結合ドメインは、特異的な腫瘍抗原を標的とするTCRα結合ドメインまたはTCRβ結合ドメインである。実施形態では、TCRは、TCRγおよびTCRδ鎖またはTCRαおよびTCRβ鎖を含む。
本開示はさらに、本明細書に記載される核酸を含むベクターを記載する。実施形態では、単一のベクターは、第1のCARおよび第2のCARまたはTCR(第2の抗原結合ドメインを含む)をコードする核酸を含む。実施形態では、第1のベクターは第1のCARをコードする第1の核酸を含み、第2のベクターは第2のCARまたはTCRをコードする核酸を含む。実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを含む二重特異性CARをコードする核酸を含む。実施形態では、本明細書に記載される核酸を含むベクターは、レンチウイルスベクターである。
さらに、本開示は、本明細書に記載される核酸またはベクターを含む改変細胞を記載する。細胞には、本明細書に記載される核酸またはベクターが導入され、少なくとも1つ以上の異なる抗原結合ドメインを発現する。実施形態では、細胞は、1つの抗原結合ドメインを発現する。実施形態では、細胞は、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含み、ここで、第1の抗原結合ドメインはWBCの細胞表面分子に結合し、第2の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子と異なる抗原に結合する。実施形態では、第2の抗原結合ドメインは、腫瘍抗原に結合する。実施形態では、細胞は、改変T細胞である。実施形態では、改変T細胞は、第1の抗原結合ドメインおよび/または第2の抗原結合ドメインをコードする1つ以上の核酸を含むCAR T細胞である。実施形態では、改変細胞は、第2の抗原結合ドメインを含むTCRを含むT細胞を含む。
さらに、本開示は、本明細書に記載される改変細胞混合集団を含む組成物を記載する。実施形態では、改変細胞は、改変リンパ球、改変樹状細胞および改変マクロファージを含む。実施形態では、改変リンパ球は、改変T細胞または改変NK細胞である。実施形態では、改変T細胞はCAR T細胞である。
本開示はさらに、患者において改変細胞を増幅および/または維持することに有効な改変細胞混合集団を記載する。実施形態では、改変細胞混合集団の例としては、以下が含まれる:(1)改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを発現する第1の改変細胞、および腫瘍細胞などの標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを発現する第2の改変細胞;(2) (1)の改変細胞、および少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを発現する他の改変細胞であって、前記2つの異なる抗原結合ドメインは、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞で発現される)である;(3)少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを発現する改変細胞であって、前記2つの異なる抗原結合ドメインは、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞で発現される)である;(4)標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを発現する改変細胞、および少なくとも2つの抗原結合ドメインを発現する改変細胞であって、前記2つの抗原結合ドメインは、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞で発現される)である;または(5)改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを発現する改変細胞、および少なくとも2つの抗原結合ドメインを発現する改変細胞であって、前記2つの抗原結合ドメインは、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメイン(ここで、2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞で発現される)である。実施形態では、2つの抗原結合ドメインは、異なる分子である。実施形態では、改変細胞を増幅するための抗原結合ドメイン(第1の抗原結合ドメイン)は、B細胞などのWBCに結合する抗原結合ドメインであり、腫瘍細胞などの標的細胞を殺すための抗原結合ドメイン(第2の抗原結合ドメイン)は、腫瘍に結合する抗原結合ドメインである。実施形態では、B細胞に結合する抗原結合ドメインは、B細胞の表面抗原、例えばCD19に結合し、腫瘍に結合する抗原結合ドメインは、腫瘍抗原、例えばtMUC1に結合する。実施形態では、腫瘍細胞は固形腫瘍細胞である。
実施形態では、改変細胞混合集団は、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを発現する第1の改変細胞と、腫瘍細胞などの標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを発現する第2の改変細胞と、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメイン、および標的細胞を殺すための抗原結合ドメインの両方を発現する第3の改変細胞のうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、改変細胞混合集団は、第1の改変細胞および第2の改変細胞、第1の改変細胞および第3の改変細胞、または第2の改変細胞および第3の改変細胞を含む。実施形態では、第1の改変細胞は、WBC抗原(例えば、CD19)に結合するCARを発現し、第2の改変細胞は、固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRを発現し、第3の改変細胞は、WBC抗原に結合するCAR、および固形腫瘍抗原に結合するCAR/TCRを発現する。持続的な抗原曝露は、T細胞の枯渇を引き起こす可能性があることが報告されている。したがって、第3の改変細胞を含む改変細胞集団の枯渇率は、改変細胞混合集団よりも高い。例えば、WBC抗原の存在下では、第3の改変細胞のみを含む改変細胞集団の枯渇率は、第1の改変細胞および第2の改変細胞を含む改変細胞混合集団よりも高い。TCRの固形腫瘍抗原の例には、TPO、TGM3、TDGF1、TROP2、LY6K、TNFSF13B、HEG1、LY75、HLA-G、CEACAM8、CEACAM6、EPHA2、GPRC5D、PLXDC2、HAVCR1、CLEC12A、CD79B、OR51E2、CDH17、IFITM1、MELTF、DR5、SLC6A3、ITGAM、SLC44A1、RHOC、CD109、ABCG2、ABCA10、ABCG8、5t4、HHLA2、PRAME、CDH6、ESR1、SLC2A1、GJA5、ALPP、FGD2、PMEL、CYP19A1、MLANA、STEAP1、SSX2、PLAC1、ANKRD30A、CPA2、TTN、ZDHHC23、ARPP21、RBPMS、PAX5、MIA、CIZ1、AMACR、BAP31、IDO1、PGR、RAD51、USP17L2、OLAH、IGF2BP3、STS、IGF2、ACTA1、またはCTAG1が含まれる。
本明細書に記載される改変細胞混合集団は、第1の抗原結合ドメインを発現する約1%~10%の改変細胞、第2の抗原結合ドメインを発現する50%~60%の改変細胞、および第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインの両方を発現する約10%の改変細胞(ここで、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは単一の細胞で発現される)を含む。
本開示はさらに、本明細書に記載される細胞を培養する方法を記載する。本明細書に記載される方法は、第1の抗原結合ドメインおよび/または第2の抗原結合ドメインを含む細胞を得ることと、ここで、第1の抗原結合ドメインはWBCの細胞表面分子に結合し、第2の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子と異なる抗原に結合し、WBCの細胞表面分子、または第2の抗原結合ドメインが結合する抗原に由来する試薬の存在下で細胞を培養することと、を含む。実施形態では、試薬は、WBCの細胞表面分子の細胞外ドメインである。
本開示はさらに、本明細書に記載される細胞混合集団を培養する方法を記載する。本明細書に記載される方法は、第1の抗原結合ドメインおよび/または第2の抗原結合ドメインを含む細胞混合集団を得ることと、ここで、第1の抗原結合ドメインはWBCの細胞表面分子に結合し、第2の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子と異なる抗原に結合し、WBCの細胞表面分子、または第2の抗原結合ドメインが結合する抗原に由来する試薬の存在下で細胞を培養することと、を含む。実施形態では、試薬は、WBCの細胞表面分子の細胞外ドメインである。
本開示は、インビトロで細胞を調製するための方法を記載し、ここで、前記方法は、細胞を提供することと、第1の抗原結合ドメインおよび/または第2の抗原結合ドメインをコードする、本明細書に記載の1つ以上の核酸を細胞に導入することと、ここで、第1の抗原結合ドメインはWBCの細胞表面分子に結合し、第2の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子と異なる抗原に結合し、WBCの細胞表面分子、または第2の抗原結合ドメインが結合する抗原に由来する試薬の存在下で細胞を培養することと、を含む。方法は、第1の抗原結合ドメインを含む遺伝子改変細胞と、第2の抗原結合ドメインを含む細胞と、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインの両方を含む細胞とを提供する。方法は、単一の抗原結合ドメインを含む細胞、および2つの抗原結合ドメインを発現する細胞を提供する。方法はさらに、単一の抗原結合ドメインを含む細胞と、2つの抗原結合ドメインを発現する細胞とを含む細胞混合集団を提供する。さらに、方法は、本明細書に記載される細胞混合集団を含む組成物を提供する。
本開示は、調製された細胞調製物、細胞混合集団、または細胞混合集団の組成物を使用して、被検体における腫瘍形成細胞を効果的に殺すために、癌を有する被検体におけるT細胞増幅を増強および維持することを記載する。実施形態では、方法は、本明細書に記載される複数の核酸をT細胞に導入して改変T細胞の混合集団を得ることと、ここで、前記複数の核酸は、固形腫瘍抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはTCRをコードし、および/またはWBC抗原に結合するCARをコードし、被検体に有効量の改変細胞混合集団を投与することと、ここで、改変細胞混合集団の例には、以下が含まれる:(1)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRを含むT細胞、およびWBC抗原に結合するCARを含むT細胞;(2) (1)のT細胞、および(i)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含む別のT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある);(3)(i)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含むT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある);(4)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRを含むT細胞、および(i)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含むT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある);または(5)WBC抗原に結合するCARを含むT細胞、および(i)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含むT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある)。実施形態では、WBCはB細胞である。さらに、本開示は、被検体におけるリンパ球(T細胞)応答を導入および/または増強するための方法を記載し、ここで、応答は、治療薬(例えば、サイトカイン)または被検体を治療するための療法に対するものである。本明細書に記載される実施形態は、リンパ球を増幅および/または維持するメカニズムと、腫瘍細胞に対するCARの結合に関連するメカニズムとを含む。実施形態では、第1のメカニズムは、被検体におけるリンパ球の増幅および/または維持に関与する分子を含み、追加のメカニズムは、被検体における腫瘍細胞の成長を阻害するか、または被検体における腫瘍細胞を殺すことを目的とする分子を含む。実施形態では、これらのメカニズムは、シグナル伝達を含み、シグナル伝達を担う分子または分子のドメインは、本明細書に記載されるメカニズムに関与している。例えば、第1のメカニズムは、血球や血漿などの血液、または非必須組織に関連する抗原に結合するCARを含み、追加のメカニズムは、腫瘍細胞に関連する抗原を標的とするCARまたはTCRを含む。非必須組織の例としては、乳腺、結腸、胃腺、卵巣、WBCなどの血液成分および甲状腺が含まれる。実施形態では、第1のメカニズムは、分子の第1の抗原結合ドメインを含み、追加のメカニズムは、分子の第2の抗原結合ドメインを含む。実施形態では、第1のメカニズムおよび追加のメカニズムは、改変細胞混合集団によって実行される。実施形態では、一つのメカニズムは、腫瘍細胞に関連する抗原を発現する細胞を含み、追加のメカニズムは、細胞表面抗原を発現するB細胞などのリンパ球を含む。実施形態では、固形腫瘍抗原に結合するCARは、二重特異性CARである。実施形態では、WBC抗原に結合するCARは、二重特異性CARである。
本明細書に記載される方法は、増幅分子および機能分子を発現するリンパ球を含む。実施形態では、増幅分子は、被検体におけるリンパ球を増幅および/または維持し、機能分子は、被検体における腫瘍細胞の成長を阻害するか、または被検体における腫瘍細胞を殺す。実施形態では、増幅分子および機能分子は、単一のCAR分子、例えば、二重特異性CAR分子上にある。実施形態では、増幅分子および機能分子は、個別の分子、例えば、CARおよびTCRまたは2つの異なるCAR上に存在する。増幅分子は、血液(例えば、血球や血漿)または非必須組織に関連する抗原に結合するCARを含み得、機能分子は、腫瘍細胞に関連する抗原を標的とするCARまたはTCRを含み得る。
被検体におけるリンパ球またはT細胞応答とは、ヘルパー、キラーや調節などのT細胞に関連する細胞媒介性の免疫を指す。例えば、T細胞応答は、免疫学的プロセスにおいて他のWBCを補助すること、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を同定して破壊することなどの活動を含み得る。被検体におけるT細胞応答は、T細胞が殺すウイルス感染細胞および/または腫瘍細胞の数、インビボでおよび/または、ウイルス感染細胞および/または腫瘍細胞との共培養においてT細胞が放出するサイトカイン(例えば、IL-6およびIFN-γ)の量など、様々な指標を介して測定することができ、これは、被検体におけるT細胞の増殖レベル、T細胞の表現型の変化(例えば、記憶T細胞の変化)、および被検体におけるT細胞の寿命または寿命レベルを示す。
実施形態では、本明細書に記載のT細胞応答を増強する方法は、それを必要とする被検体、例えば、腫瘍があると診断された被検体を効果的に治療することができる。腫瘍という用語は塊を指し、血液などの流体の集合体であってよく、固形塊であってもよい。腫瘍は、悪性(癌性)または良性のものであり得る。血液癌の例としては、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病および多発性骨髄腫が含まれる。
固形腫瘍は、通常、嚢胞や液状の部分を含まない。悪性固形腫瘍の主な種類には、肉腫および癌腫がある。肉腫は、血管、骨骼、脂肪組織、靭帯リンパ管、神経、軟骨、筋肉、靭帯または腱に存在可能な間質細胞と呼ばれる軟部組織細胞に発生する腫瘍であり、癌腫は、皮膚や粘膜に存在する上皮細胞に発生する腫瘍である。最も一般的な肉腫には、軟部組織および骨細胞が関与する未分化多形肉腫、血管、消化管や子宮に行き渡る平滑筋細胞が関与する平滑筋肉腫、骨細胞が関与する骨肉腫、および脂肪細胞が関与する脂肪肉腫が含まれる。肉腫のいくつかの例としては、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、軟骨肉腫、中皮腫、線維肉腫および神経膠腫が含まれる。
代表的な5つの癌腫としては、乳房や前立腺など体液や粘液を生成する臓器が関与する副腎癌、皮膚癌など皮膚の最外層の細胞が関与する基底細胞癌、皮膚の基底細胞が関与する扁平上皮癌、および膀胱、腎臓、尿管などの尿路の移行細胞に影響を及ぼす移行細胞癌が含まれる。癌腫の例としては、甲状腺癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、腸癌、皮膚癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌および胆管癌が含まれる。
本明細書に記載の方法は、癌があると診断された被検体を治療するために使用することができる。癌は、血液癌であってもいし、肉腫や癌腫などの固形腫瘍であってもよい。治療方法は、本明細書に記載される混合T細胞集団の有効量を被検体に投与してT細胞応答を提供することを含み、前記混合T細胞集団は、第1の抗原結合ドメインおよび/または第2の抗原結合ドメインを含み、ここで、第1の抗原結合ドメインはWBCの細胞表面分子に結合し、第2の抗原結合ドメインは、WBCの細胞表面分子と異なる抗原に結合する。実施形態では、被検体におけるT細胞応答を増強することは、インビボで第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを発現するT細胞の増殖を選択的に増強することを含む。
被検体におけるT細胞応答を増強するための方法は、CAR、または、2つの異なる抗原結合ドメインを含む二重特異性CARを含むT細胞を被検体に投与することと、第1のCARおよび第2のCARを含むT細胞を投与することを含み、ここで、第1のCARおよび第2のCARは、それぞれ異なる抗原結合ドメインを含む。
実施形態では、本明細書に記載の被検体におけるT細胞応答を増強するための方法は、CAR分子およびTCR分子を含むT細胞を被検体に投与することを含む。CAR分子は、白血球の表面マーカーを標的とし、またはそれに結合し、TCR分子は、腫瘍細胞の表面または内部に発現している腫瘍のマーカーまたは抗原に結合する。
実施形態では、それを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強するための方法は、改変細胞混合集団、または改変細胞混合集団を含む組成物を被検体に投与することを含む。改変T細胞の混合集団の例には、以下が含まれる:(1)WBC抗原に結合するCARを含むT細胞、および腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRを含むT細胞;(2) (1)のT細胞、および(i)腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含む別のT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある);(3)(i)腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含むT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある);(4)腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRを含むT細胞、および(i)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含むT細胞;または(5)WBC抗原に結合するCARを含むT細胞、および(i)固形腫瘍抗原に結合するCARまたはTCRと(ii)WBC抗原に結合するCARの両方を含むT細胞((i)と(ii)の両方が単一の改変T細胞にある)。実施形態では、被検体は、固形腫瘍があると診断されている。実施形態では、腫瘍抗原は、固形腫瘍抗原、例えばtMUC1である。実施形態では、WBCはB細胞であり、抗原はB細胞抗原である。実施形態では、B細胞抗原はCD19である。実施形態では、腫瘍抗原はtMUC1であり、WBCの抗原はCD19である。
本開示は、抗原結合ドメインを発現する細胞をインビボで増幅および/または維持する方法を記載する。方法は、本明細書に記載される改変細胞混合集団、または改変細胞混合集団を含む組成物の有効量を被検体に投与することを含む。本明細書に記載されるこれらの方法は、T細胞、NK細胞、マクロファージおよび/または樹状細胞を増幅するために使用され得る。
本明細書に記載される改変T細胞の混合集団は、第1のCARおよび/または第2のCARまたはTCRを含む。実施形態では、第1のCARは第1の抗原結合ドメインを含み、第2のCARまたはTCRは第2の抗原結合ドメインを含む。例えば、第1のCARおよび第2のCARまたはTCRは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。第1のCARおよび第2のCARの細胞質ドメインは、細胞応答を活性化するためのシグナルを伝達するための共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARまたはTCRは、異なる改変T細胞上で発現される。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARまたはTCRは、同じ改変T細胞上で発現される。
実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞の混合集団において、改変T細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを含む第1のCARの細胞質ドメインは、第1のCARの活性化または刺激が、WBCを標的とする改変T細胞の殺傷機能を導入および/または活性化することなく、リンパ球などのWBCを増幅するように、CD3ζドメインの非存在下で、1つ以上の共刺激ドメインを含む。実施形態では、リンパ球はT細胞である。実施形態では、第1のCARの細胞質ドメインがCD3ζドメインの非存在下で1つ以上の共刺激ドメインを含む場合、第2のCARはCD3ζドメインを含む。
実施形態では、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、同じCAR(第1のCAR)、例えば、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインの二重特異性CAR上にある。細胞外抗原結合ドメインは、少なくとも2つのscFvを含み、scFvの少なくとも1つは、WBCの細胞表面分子に結合する第1の抗原結合ドメインとして機能する。実施形態では、二重特異性CARは、改変T細胞上で発現される。
実施形態では、WBCの細胞表面分子と異なる抗原は、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138、CD13、B7-H3、CAIX、CD123、CD133、CD171、CD171/L1-CAM、CEA、クローディン 18.2、cMet、CS1、CSPG4、Dectin1、EGFR、EGFR vIII、EphA2、ERBB受容体、ErbB T4、ERBB2、FAP、葉酸受容体1、FITC、葉酸受容体1、FSH、GD2、GPC3、HA-1 H/HLA- A2、HER2、IL-11Ra、IL13受容体a2、IL13R、IL13Rα2(ゼタカイン)、Kappa、白血病関連抗原、LewisY、メソテリン、MUC1、NKG2D、NY-ESO-1、PSMA、ROR-1、TRAIL受容体1またはVEGFR2である。
実施形態では、MUC1は、ヒトMUC1の腫瘍専用エピトープであり、第1のCARおよび第2のCARまたはTCRは、個別のポリペプチドとして発現される。実施形態では、MUC1は、ヒトMUC1の腫瘍形態(tMUC1)である。
実施形態では、本明細書に記載される改変細胞混合集団において、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを含む第1のCARは、CD3ζドメインのシグナル伝達ドメインを含まずに共刺激ドメインを含んでもよく、CAR(第2のCAR)は、MUC1結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびCD3ζドメインを含んでもよい。
本明細書で使用されるように、「MUC1」という用語は、以下のように定義される分子を指す。MUC1は、上皮ムチンファミリー分子の1つである。MUC1は、通常、主要な臓器のすべての腺上皮細胞で発現される膜貫通型ムチン糖タンパク質である。正常細胞では、MUC1は、頂端表面にのみ発現し、かつ炭水化物によって隔離されたコアタンパク質で高度にグリコシル化される。細胞が悪性の表現型に変化することにつれ、MUC1の発現は数倍増加し、かつその発現はもはや頂端表面に限定されるものではなく、細胞表面全体および細胞質内に見られるようになる。さらに、腫瘍関連MUC1(tMUC1)のグリコシル化には異常があり、正常組織で発現しているMUC1に比べてペプチドコアの露出度が高い。
MUC1は、多くの上皮癌で広く発現しており、かつ異常にグリコシル化されているため、非悪性細胞で発現するMUC1とは構造的および抗原的に異なる(例えば、Barratt-Boyes, 1996;Priceら, 1998;Petersonら, 1991を参照)。MUC1の主要な形態は、多数の20個のアミノ酸タンデムリピートユニットを有する免疫原性の高い細胞外ムチン様ドメイン、膜貫通領域および細胞質尾部からなる高分子量分子である(Quinら, 2000;McGuckenら, 1995;Dongら, 1997)。
乳房や膵臓を含むほとんどの上皮腺癌では、MUC1が過剰発現し、かつ異常にグリコシル化される。乳房や膵臓の腺癌は、MUC1を過剰発現するだけでなく、MUC1を循環させる。高いMUC1の血清レベルは、進行性疾患に関連している。MUC1は、抗原内で発現するエピトープが複雑で非均一であるため、将来のバイオマーカーとして利用される。癌性組織で合成されたMUC1(例えば、腫瘍関連MUC1)は通常、異常なオリゴ糖プロファイル(profile)を示し、これにより、シアリル-Lea(CA19-9試験で測定)、シアリル-Lex、やシアリル-Tn(TAG-72)などのネオマーカー、およびTnなどの潜在的なエピトープの発現を引き起こす。
MUC1に対する治療用の抗体がいくつか開発されている。ペムツモマブ(Pemtumomab)(HMFG1としても知られる)は、放射性同位元素であるイットリウム-90を卵巣癌の腫瘍内に送達するベクターとして、第III相臨床試験が行われている(Scottら, 2012に掲載)。CA15-3(HMFG1抗体でもある)、CA27-29、およびCA19-9は、いずれもMUC1に対する抗体で、癌患者の循環MUC1レベルを評価するために用いられる。しかしながら、これらの抗体は、正常な上皮細胞と形質転換された腫瘍上皮細胞で発現するMUC1を効果的に区別できないため、治療薬またはバイオマーカーとしての有用性が限られている。言い換えれば、これらの抗体はいずれも腫瘍関連MUC1(tMUC1)エピトープを標的とするように見えない。
腫瘍関連形態のMUC1(tMUC1)に対して高い特異性を持つ新しい抗体は、TAB-004と称され、米国特許出願第8,518,405号に記載されている(Curryら, 2013も参照)。ペムツモマブ(HMFG1)は、抗原としてヒトの乳脂肪球を使用して開発されたが(Parhamら, 1988)、TAB-004は、MUC1の変化した形態を発現している腫瘍を使用して開発された(Tinderら, 2008)。TAB-004は、MUC1のタンデムリピート配列内の変化したグリコシル化エピトープを認識することができる。この領域は、tMUCでの抗原検出に使用され得るが、グリコシル化の大きな分岐により、通常のMUC1では抗原の検出が妨害される(Gendler, 2001;Mukherjeeら, 2003b;Hollingsworth&Swanson, 2004;Kufe, 2009)。重要なことに、TAB-004は、他のMUC1抗体が認識するエピトープとは異なり、重鎖および軽鎖の固有の相補性決定領域(CDR)を有する。その抗体は、3 ng/ml(20 pM)の高い結合親和性で標的抗原に結合し、かつ無関係な抗原に結合しない(Curryら, 2013)。したがって、TAB-004は、MUC1の正常形態と腫瘍形態を区別するが、HMFG1(ペムツモマブ)は区別することができない(米国特許出願第8,518,405号を参照)。
実施形態では、第1のCARは、第1の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含み、および/または第2のCARは、第2の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む。
実施形態では、抗原結合ドメインはFabまたはscFvである。実施形態では、第1のCARは、配列番号5、6および53-58のうちの1つのアミノ酸配列を含み、第2のCARは、配列番号5-17、29、33、37、71、および72のうちの1つのアミノ酸配列、または配列番号41、45、63、67および68のうちの1つの核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。実施形態では、第1のCARをコードする核酸配列は、配列番号59または60の核酸配列を含み、第2のCARをコードする核酸配列は、配列番号61の核酸配列を含む。実施形態では、核酸は、配列番号62-69の核酸配列のうちの1つを含む。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARは、個別のポリペプチドとして発現される。
実施形態では、第1の抗原結合ドメインはCAR上に存在し、第2の抗原結合ドメインはT細胞受容体(TCR)上に存在する。実施形態では、TCRは改変TCRである。実施形態では、TCRは、患者において自然に発生した腫瘍特異的T細胞に由来する。実施形態では、TCRは腫瘍抗原に結合する。実施形態では、腫瘍抗原は、CEA、gp100、tMUC1、MART-1、p53、MAGE-A3またはNY-ESO-1を含む。
本明細書では、「甲状腺抗原」とは、甲状腺細胞上で発現される、または甲状腺細胞によって発現される抗原を指す。甲状腺細胞の例には、濾胞細胞と傍濾胞細胞が含まれる。ヒトTSHRは、甲状腺膜(配列番号20)上に存在する甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体である。下垂体から分泌されたTSHは、甲状腺濾胞細胞膜上のTSHRに結合すると、甲状腺は代謝機能を持つT3およびT4を分泌する。TSHRは、約95,000~100,000ダルトンの分子量を持つ7回膜貫通型の受容体である。ヒト甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)には、ロイシンリッチドメイン(LRD;アミノ酸36-281)、開裂ドメイン(CD;アミノ酸282-409)および膜貫通ドメイン(TMD;アミノ酸410-699)の3つのドメインが含まれることが報告されている。ヒト甲状腺刺激ホルモン(hTSH)α鎖は、LRD表面およびCD表面の多くのアミノ酸に結合することがわかった。本明細書では、「TSHR」は、ヒト甲状腺刺激ホルモン受容体を指す。この用語は、ヒト甲状腺刺激ホルモン受容体を含むだけでなく、本明細書に開示されているヒト甲状腺刺激ホルモン受容体の抗体またはリガンドに結合するヒト甲状腺刺激ホルモン受容体の能力を保持している程度の、その変異体、同族体、フラグメントおよびその一部も含むと解釈されるべきである。
特定の実施形態では、抗原は、胃または結腸の抗原である。例えば、結腸抗原は、配列番号23を有するグアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)である。本明細書では、「結腸抗原」とは、結腸細胞上で発現される、または結腸細胞によって発現される抗原を指す。結腸細胞の例には、杯細胞および腸上皮細胞が含まれる。グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)は、主に小腸上皮細胞で発現される。GUCY2Cは、下痢原性細菌エンテロトキシン(ST)や、腸パラクリンホルモン、グアニリンおよびウログアニリンの受容体である。これらのリガンドは、小腸上皮細胞や腎上皮細胞における水や電解質の輸送を調節し、最終的には急性分泌性下痢の原因となる。本明細書では、「GUCY2C」は、ヒトグアニル酸シクラーゼ2Cを指す。この用語は、ヒトグアニル酸シクラーゼ2Cを含むだけでなく、本明細書に開示されているヒトグアニル酸シクラーゼ2Cの抗体またはリガンドに結合するグアニル酸シクラーゼ2Cの能力を保持している程度の、その変異体、同族体、フラグメントおよびその一部も含むと解釈されるべきであす。実施形態では、GUCY2Cの少なくとも一部のアミノ酸配列は、配列番号23を含む。クローディン18.2(CLDN 18.2)は、クローディン-18の胃特異的アイソフォームであり、胃や膵臓腺癌で高度に発現している。
実施形態では、標的抗原に対して高い親和性を有するTCRを発現するT細胞クローンを単離し得る。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)または末梢血単核細胞(PBMC)は、定義されたHLA対立遺伝子の背景で提示された場合に優性T細胞応答を誘発することが知られているエピトープを表すペプチドでパルスされた抗原提示細胞(APC)の存在下で培養することができる。次に、MHC-ペプチドテトラマー染色および/または低滴定濃度の同族ペプチド抗原でパルスされた標的細胞を認識および溶解する能力に基づいて、高親和性クローンを選択することができる。クローンが選択された後、TCRα鎖とTCRβ鎖、またはTCRγ鎖とTCRδ鎖は、分子クローニングによって同定および単離される。例えば、TCRα鎖およびTCRβ鎖の場合、TCRαおよびTCRβの遺伝子配列を使用して、ヒトT細胞における両TCR鎖の安定した高レベルの発現を理想的に促進する発現構築物を生成する。次に、形質導入媒体、例えば、ガンマレトロウイルスまたはレンチウイルスを生成して、その機能性(抗原特異性および機能親和性)について試験を行い、かつ臨床用ベクターを多く製造するために使用することができる。最終生成物のアリコートを使用して、被検体への注入前に増幅される標的T細胞集団(通常、患者のPBMCから精製)に形質導入することができる。
腫瘍反応性TCRをコードする遺伝子を得るために、様々な方法を実行し得る。詳細は、Kershawら,Clin Transl Immunology.2014年5月; 3(5):e16に提供されている。実施形態では、特異的TCRは、患者において自然に発生した腫瘍特異的T細胞に由来することができる。このカテゴリーに含まれる抗原は、メラノサイト分化抗原MART-1およびgp100、さらにMAGE抗原およびNY-ESO-1を含み、それらはより広範囲の癌で発現する。ウイルスタンパク質が形質転換細胞によって発現される限り、ウイルス関連悪性腫瘍に特異的なTCRも単離することができる。このカテゴリーの悪性腫瘍は、肝炎と乳頭腫ウイルスに関連する肝臓癌と子宮頸癌、およびエプスタインバーウイルスに関連する悪性腫瘍を含む。実施形態では、TCRの標的抗原は、CEA(例えば、結腸直腸癌を対象にする)、gp100、MART-1、p53(例えば、黒色腫を対象にする)、MAGE-A3(例えば、黒色腫、食道および滑膜肉腫)、NY-ESO-1(例えば、黒色腫、肉腫および多発性骨髄腫を対象にする)を含み得る。
実施形態では、第1のCARの結合ドメインは、CD19に結合し、第2のCARの結合ドメインは、腫瘍関連MUC1(tMUC1)に結合する。実施形態では、第2のCARの結合ドメインは、(i)配列番号76または85のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域1と、配列番号77または86のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域2と、配列番号78または87のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域3と、および(ii)配列番号73または82のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1と、TRP-ALA-SER(WAS)または配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖相補的決定領域2と、配列番号75または84のアミノ酸配列を含むscFvを含む。
実施形態では、第2のCARの結合ドメインは、(i)配列番号76のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域1と、配列番号77のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域2と、配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域3と、および(ii)配列番号73のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1と、TRP-ALA-SER(WAS)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2と、配列番号75のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3を含む。
実施形態では、第2のCARの結合ドメインは、(i)配列番号85のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域1と、配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域2と、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖相補的決定領域3と、および(ii)配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖相補的決定領域1と、配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖相補的決定領域2と、配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3を含む。実施形態では、第1のCARの結合ドメインは、配列番号5または6のアミノ酸配列を含む。実施形態では、第2のCARの結合ドメインは、配列番号70-72および79-81のアミノ酸配列のうちの1つを含む。
実施形態では、第1のCARは、第1の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含み、および/または第2のCARは、第2の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む。
実施形態では、第1のCARおよび第2のCARは、個別のポリペプチドとして発現される。
実施形態では、第2のCARの細胞質ドメインまたは膜貫通ドメインは、第2のCARが、CD19を発現する細胞を損傷することなく、CD19を発現する細胞を介して改変T細胞を活性化できるように改変される。
本明細書に記載の実施形態は、第1の抗原結合ドメイン、第2の抗原結合ドメイン、細胞質ドメイン、および膜貫通ドメインを含む二重特異性キメラ抗原受容体に関し、ここで、第1の抗原結合ドメインが第1の抗原を認識し、第2の抗原結合ドメインが第2の抗原を認識し、第1の抗原が第2の抗原と異なる。
実施形態では、第1の抗原および第2の抗原は、同じ細胞で発現されない。実施形態では、第1の抗原は、血液成分の抗原であり、第2の抗原は、固形腫瘍の抗原である。
血球とは、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血小板または他の血球を指す。例えば、RBCは、循環系を流れる血流を介して体組織に酸素(O2)を送達する血球である。血小板は、血栓の形成につながる止血に関与する細胞である。WBCは、感染症および異物から体を守ることに関与する免疫系の細胞である。WBCには様々な種類と亜種があり、それぞれ異なる役割を担っている。例えば、顆粒球、単球およびリンパ球は、白血球の3つの主要な種類である。顆粒球には、好中球、好酸球、好塩基球の3つの異なる形態がある。
WBCの細胞表面分子は、WBC表面に発現される分子を指す。例えば、リンパ球の細胞表面分子は、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56およびCD30を含み得る。B細胞の細胞表面分子は、CD19、CD20、CD22、BCMAを含み得る。単球の細胞表面分子は、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169およびCD1cを含み得る。顆粒球の細胞表面分子は、CD33、CD38、CD138およびCD13を含み得る。
実施形態では、第1の抗原はCD19であり、第2の抗原は腫瘍関連MUC1(tMUC1)である。実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号5および6のアミノ酸配列のうちの1つを含む。実施形態では、第2の抗原結合ドメインは、配列番号70-72および79-81のアミノ酸配列のうちの1つを含む。
実施形態では、本開示は、それを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強する方法、または被検体の腫瘍を治療する方法を記載しており、前記方法は、本明細書に記載される改変T細胞の混合集団、または改変T細胞の混合集団を含む組成物の有効量を被検体に投与することにより、T細胞応答を提供し、CD19を発現する細胞を介して被検体の血液にCAR T細胞を増幅するようになることを含む。実施形態では、方法はさらに、CAR T細胞の活性化および/または増幅を継続するために、B細胞を被検体に注入することを含み得る。例えば、CAR T細胞を注入する前に、被検体のB細胞または健康なドナーからの遺伝子改変B細胞を入手して保存し得る。実施形態では、方法はさらに、CD19を発現する細胞、または少なくともCD19の細胞外ドメインを含むポリペプチド、またはCAR T細胞が認識する抗原を投与することを含み得る。例えば、CD19を発現する細胞は、CD19をコードする核酸配列で形質導入されるK562およびNK92などの細胞株を含み得る。実施形態では、方法はさらに、第1のCARおよび第2のCARの両方を発現するCAR T細胞を認識することと、被検体に識別子のCAR T細胞を投与することとを含み得る。例えば、MUC1は、MUC1を発現するCAR T細胞をタイムリーに認識できるように、ソートマーカーと関連付けられてもよい。
実施形態では、腫瘍関連MUC1(tMUC1)は、腫瘍細胞で発現されるが、対応する非悪性細胞で発現されない。実施形態では、腫瘍関連MUC1に対するscFvは、o-グリコシル化されたGSTAモチーフ(配列番号88)と直接相互作用する。
実施形態では、本開示は、インビボで細胞を増幅および維持する方法を記載する。実施形態では、方法は、T細胞応答を提供するために、本明細書に記載される改変T細胞の混合集団の有効量を、それを必要とする被検体に投与することと、CARの細胞外ドメインが認識する可溶化剤を発現する提示細胞(例えば、T細胞)の有効量を投与することと、を含み得る。実施形態では、方法は、それを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強するために実施され得る。方法は、T細胞応答を提供するために、CARを含む改変T細胞の混合集団の有効量を被検体に投与することと、被検体におけるT細胞応答を増強するために、CARの細胞外ドメインが認識する可溶化剤を発現する提示細胞の有効量を投与することと、を含み得る。特定の実施形態では、提示細胞は、T細胞、樹状細胞および/または抗原提示細胞である。特定の実施形態では、被検体におけるT細胞応答を増強することは、CARを含むT細胞の増殖を選択的に増強することを含み得る。実施形態では、方法は、改変T細胞を用いて被検体の病状の治療を増強するために使用され得る。方法は、薬剤を発現するT細胞集団を投与すること、またはワクチンとして製剤化される薬剤を投与することを含み得る。これらの例では、改変T細胞は、CARをコードする核酸を含み、かつCARの細胞外ドメインが前記薬剤を認識する。実施形態では、方法は、疾患を有する被検体における改変T細胞の増殖を増強するために実施され得る。方法は、CARを含む改変T細胞を調製することと、改変T細胞の有効量を被検体に投与することと、CARの細胞外ドメインが認識する薬剤をコードする核酸を細胞に導入することと、(薬剤をコードする核酸が導入された)細胞の有効量を被検体に投与することと、を含み得る。実施形態では、T細胞増幅は、T細胞ゲノムDNAにおけるCAR分子のコピー数の増加に基づいて測定され得る。実施形態では、T細胞増幅は、T細胞で発現された分子に関するフローサイトメトリー分析に基づいて測定され得る。
本明細書に記載される実施形態は、別々のT細胞および/または同じT細胞での第1のCARおよび第2のCARまたはTCRを含む改変T細胞の混合集団に関し、ここで、第1のCARの抗原結合ドメインは、CD19、CD33、CD14やBCMAなどの抗原に結合し、第2のCARの抗原結合ドメインは、腫瘍関連MUCに結合する。実施形態では、腫瘍関連MUCは、MUC1(例えばtMUC1)またはMUC2である。本明細書に記載される実施形態は、改変T細胞の混合集団を含む組成物、およびそれを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強する方法、または被検体における腫瘍を治療する方法に関し、前記方法は、改変T細胞の混合集団の有効量を投与することを含む。
実施形態では、第1のCARは、配列番号207のアミノ酸配列を含み、第2のCARは、配列番号202のアミノ酸配列を含む。実施形態では、第1のCARは、配列番号203、207、216または219のアミノ酸配列を含み、第2のCARは、配列番号202または205のアミノ酸配列を含む。実施形態では、第2のCARの抗原結合ドメインは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。実施形態では、第2のCARの抗原結合ドメインは、配列番号5または6のアミノ酸配列を含む。実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞は、配列番号201、204、206、208、215、217、218または220の核酸配列を含む。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARのそれぞれは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。
実施形態では、本明細書に記載されるCAR分子の細胞質ドメインは、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む。実施形態では、本明細書に記載されるCAR分子は、CD3ζドメインに対応する成分を有さずに共刺激ドメインを含み得る。実施形態では、本明細書に記載されるCAR分子は、共刺激ドメインを有さずにCD3ζドメインを含み得る。
実施形態では、改変細胞は、プログラム死1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、Bリンパ球およびTリンパ球アッテネーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、リンパ球活性化タンパク質3(LAG-3)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(2B4)またはCD160のドミナントネガティブ変異体を含む。実施形態では、改変細胞は自殺遺伝子をコードする核酸配列をさらに含み、および/または自殺遺伝子はHSV-TK自殺遺伝子系を含む。実施形態では、単離T細胞は、対応する野生型T細胞と比較して、減少した量のTCRを含む。
ドミナントネガティブ突然変異は、野生型対立遺伝子に対して拮抗する遺伝子産物が変化している。これらの突然変異は通常、分子機能の変化(通常は不活性)を引き起こし、優性または半優性表現型を特徴とする。実施形態では、本明細書に記載される改変細胞は、ドミナントネガティブ(DN)形態のPD-1受容体を含む。実施形態では、本明細書に記載される改変細胞におけるDN PD-1受容体の発現は、誘導性遺伝子発現系によって調節される。実施形態では、誘導性遺伝子発現系は、lac系、テトラサイクリン系、またはガラクトース系である。
本開示は医薬組成物を記載している。医薬組成物は、本明細書に記載されるCAR分子、TCR分子、改変CAR T細胞、CARまたはTCRを含む改変細胞、改変細胞混合集団、核酸およびベクターのうちの1つ以上を含む。医薬組成物は、治療(または予防)する疾患に適切な方法で投与される。適切な投与量は臨床試験により決定されるが、投与の数や頻度は、患者の病状、患者の疾患の種類や重症度などの要因によって決定される。
「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府、州政府、EMA(European Medicines Agency)の規制機関によって承認されているか、米国薬局方(米国薬局方-33/米国の処方箋-28再発行、メリーランド州ロックビルの米国薬局方コンベンションコーポレーションが2010年4月に出版される)またはその他の一般に認められた薬局方に記載されていて動物、特にヒトへの使用を可能にすることを意味する。
「ベクター」という用語は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および不完全))、賦形剤または媒体である。薬学的に許容されるベクターは、水や油などの無菌液体であり得て、石油、動物、植物または合成由来の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などを含む。水は、医薬組成物が静脈内に投与される場合に好ましいベクターである。食塩水溶液、水性デキストロースやグリセリン溶液は液体ベクター、特に注射可能な溶液として使用することもできる。
本開示はさらに、本明細書に記載される第1の細胞集団および第2の細胞集団を含む医薬組成物を記載する。本明細書に記載される医薬組成物は、第1の抗原結合分子を含む第1の細胞集団と、第2の抗原結合分子を含む第2の細胞集団とを含み、且つ癌治療に適している。例えば、第1の抗原結合分子が抗原に結合することで、癌治療に適した細胞の増幅が促進される。
本開示はさらに、本明細書に記載される、癌治療に適した細胞を用いて癌治療を増強する方法を記載する。方法は、腫瘍抗原を発現する形態の癌を有する被検体に第1の組成物の有効量を投与することと、ここで、第1の組成物は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子(例えば、CAR)を含む第1の細胞(例えば、T細胞)集団を含み、被検体に第2の組成物の有効量を投与することと、を含み、ここで、第2の組成物は第2の抗原結合分子を含む細胞集団を含む。第1の組成物および第2の組成物の投与は、同時にまたは別々に、例えば順次行うことができる。癌治療に適した細胞についての情報は、Eyiletenら,Immune Cells in Cancer Therapy and Drug Delivery, Mediators Inflamm.2016;2016:5230219に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。
実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原に結合するT細胞(TCRおよびTIL治療で使用されるT細胞)集団の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原に結合するCARを発現するNK細胞集団またはNK細胞の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原に結合するCARを発現するDC細胞集団またはDC細胞の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原に結合するCARを発現するマクロファージ集団またはマクロファージの有効量を投与することと、を含む。実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原に結合するCARを発現する好中球集団または好中球の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、方法は、WBC抗原に結合するCAR T細胞集団の有効量を投与することと、固形腫瘍抗原を結合または標的とするリンパ球集団の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、固形腫瘍抗原は、細胞表面(例えば、TSHR)、腫瘍微小環境の細胞外マトリックス(例えば、αvβ5インテグリン)および/または腫瘍細胞内(例えば、gp100)に位置することができる。
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療有効量」が示される場合、投与される本開示の組成物の正確な量は、患者(被検体)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、および病状の個体差を考慮して、医師が決定できる。本明細書に記載される改変細胞を含む医薬組成物は、104~109個の細胞/kg体重、好ましくは105~106個の細胞/kg体重(前記範囲のすべての整数値を含む)の投与量で投与することができるといえる。改変細胞組成物はまた、これらの投与量で複数回投与され得る。細胞は、免疫療法において一般的に知られている注入技術を使用して投与され得る(例えば、Rosenbergら, New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照)。当業者は、患者の疾患徴候をモニタリングし、それに応じて治療方法を調整することにより、特定の患者に対する最適な投与量および治療レジームを容易に決定することができる。特定の実施形態では、被検体に活性化のT細胞を投与してから、血液を採取し(またはアフェレーシスを実施する)、活性化および増幅されたT細胞を収集し、かつ、これらの活性化および増幅されたT細胞を患者に再注入することが望しい場合がある。このプロセスは、数週間ごとに複数回実施することができる。特定の実施形態では、10 cc~400ccの採血からT細胞を活性化することができる。特定の実施形態では、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90ccまたは100ccの採血からT細胞を活性化することができる。理論に縛られることなく、このような複数回の採血/複数回の再注入の手段を採用すれば特定のT細胞集団を選択することができる。
実施形態では、治療上有効な量の改変細胞混合集団を、それを必要とする被検体に順次または同時に投与することができる。一例として、2つの異なる改変細胞の混合集団の場合、標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを含む改変細胞の治療上有効な量の投与の前、後または同時に、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを含む改変細胞の治療上有効な量を投与することができる。別の例として、2つの異なる改変細胞の混合集団の場合、改変細胞を増幅および/または維持する抗原結合ドメインと標的細胞を殺す抗原結合ドメインとを共に含む改変細胞(単一の改変細胞において)の治療上有効な量の投与の前、後または同時に、標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを含む改変細胞の治療上有効な量を投与することができる。一例として、(1)改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを含む改変細胞、(2)標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを含む改変細胞、および(3)改変細胞を増幅および/または維持する抗原結合ドメインと、標的細胞を殺す抗原結合ドメインの両方を含む改変細胞(単一の改変細胞において)という3つの異なる改変細胞を含む混合集団の場合、任意の順序(1、2、3;2、3、1;3、1、2;1、3、2;2、1、3;または3、2、1)で順次または同時(1+2+3同時)に、(1)、(2)および(3)の有効量を投与することができる。さらに、3つの改変細胞のうちの2つを組み合わせて、その前または後に3つ目の改変細胞を投与することもできる。例えば、(1)と(2)の組み合わせを(3)の前または後に投与することができ、または、(1)と(3)の組み合わせを(2)の前または後に投与することができ、または(2)と(3)の組み合わせを(1)の前または後に投与することができる。
本明細書に記載の医薬組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、注入、インプラントまたは移植を含む、任意の便利な方法で行われ得る。本明細書に記載の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髓内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射または腹腔内投与で患者に投与することができる。実施形態では、本明細書に記載される改変細胞組成物は、皮内または皮下注射によって被検体に投与される。実施形態では、本開示のT細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。改変細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節または感染部位に直接注入され得る。実施形態では、本明細書に記載の方法、またはT細胞を治療レベルまで増幅する当技術分野で知られている他の方法を用いて活性化および増幅された細胞は、任意の数の関連する治療方法、例えば併用療法と組み合わせて(例えば、治療の前に、同時に、または後に)患者に投与され、前記治療方法は、抗ウイルス剤、シドフォビル、インターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても知られる)による治療、またはMS患者に対するナタリズマブ治療、または乾癬患者に対するエファリズマブ治療、またはPML患者に対する他の治療などを含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、本明細書に記載のT細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、マイコフェノレートおよびFK506)、抗体、または他の免疫消失薬(例えば、CAM PATH)、抗CD3抗体または他の抗体療法、サイトキシン、フルダリビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および照射と組み合わせて使用することができる。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリン(シクロスポリンおよびFK506)を阻害するか、または成長因子誘導シグナルの伝達に重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)を阻害する。(Liuら, Cell 66:807-815,1991;Hendersonら,Immun 73:316-321,1991;Biererら,Curr.Opin.Immun 5:763-773,1993;Isoniemi(上記と同様))。実施形態では、本明細書に記載の細胞組成物は、骨髓移植、フルダラビンなどの化学治療薬を使用したT細胞焼灼療法、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3やCAMPATHなどの抗体と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)患者に投与される。実施形態では、B細胞焼灼療法の後に、本明細書に記載の細胞組成物が投与される。例えば、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンを患者に投与し得る。実施形態では、被検体は、高用量化学療法による標準的な治療の後に、末梢血幹細胞移植を受けることができる。特定の実施形態では、移植の後に、被検体は、本開示の増幅された免疫細胞の注入を受ける。実施形態では、増幅された細胞は、手術の前または後に投与される。それを必要とする被検体に投与する上記治療薬の用量は、治療される病状の正確な性質や治療を受ける人によって異なる。ヒトへの投与量のスケーリングは、様々な要因に応じて、医師が当技術分野で周知される慣行に従って実行することができる。改変細胞を使用する癌治療の方法に関する追加の情報は、米国特許出願第US8,906,682号に記載されており、その全体が参照により組み込まれている。
本明細書に記載される実施形態は、インビトロで改変細胞を調製するための方法に関する。この方法は、被検体から細胞サンプルを取得することを含み得る。例えば、サンプルは、T細胞またはT細胞前駆細胞を含み得る。方法は、少なくともCARをコードするDNAで細胞のサンプルをトランスフェクトすることと、CARを発現するT細胞の増殖を選択的に強化する培地で細胞のサンプルをエクスビボで培養することと、をさらに含み得る。細胞サンプルは、本明細書に記載される改変細胞混合集団であり得る。
実施形態では、サンプルは、凍結保存されたサンプルである。実施形態では、細胞サンプルは、臍帯血からのものであり、または被検体からの末梢血サンプルである。実施形態では、細胞サンプルは、アフェレシスまたは静脈穿刺によって得られる。実施形態では、細胞サンプルはT細胞亜集団である。
本開示の実施形態は、ジンクフィンガーDNA結合タンパク質を含むDNA結合ドメインと、開裂ドメインおよび/または開裂ハーフドメインを含むDNA開裂ドメインとを含むジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)に関する。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質は、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のジンクフィンガーを含んでもよく、各ジンクフィンガーは、いずれも標的遺伝子中の標的サブ部位に結合する認識スパイラルを有する。実施形態では、ジンクフィンガータンパク質は、3、4、5、6本のフィンガー(ここで、フィンガーはF1、F2、F3、F4、F5、F6と呼ばれ、N末端からC末端に向かってF1からF3、F4またはF5またはF6の順で並んでいる)を含み、かつフィンガーは表5に示す認識領域のアミノ酸配列を含む。開裂ドメインおよび/または開裂ハーフドメインの例としては、野生型または工学的に設計されたFokI開裂ハーフドメインが含まれる。実施形態では、DNA開裂ドメインは、野生型開裂ドメインまたは開裂ハーフドメイン(例えば、FokI開裂ハーフドメイン)を含む。実施形態では、開裂ドメインおよび/または開裂ハーフドメインは、工学的に設計された(非天然に存在する)開裂ドメインまたは開裂ハーフドメイン、例えば、偏性ヘテロダイマーを形成する工学的に設計されたFokI開裂ハーフドメインを含む。実施形態では、遺伝子はヒト遺伝子である。実施形態では、開裂ドメインは、野生型または工学的に設計されたFokI開裂ドメインを含む。実施形態は、本明細書に記載の単離ZFNをコードするポリヌクレオチドに関する。実施形態は、ポリヌクレオチドを含むベクターに関する。実施形態では、ベクターは、アデノウイルスまたはレンチウイルスのベクターである。実施形態は、本明細書に記載の単離ZFNを含む単離細胞または細胞株に関する。実施形態では、単離細胞は、幹細胞、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である。実施形態では、細胞は、ヒトのドナーから単離された一次ヒトT細胞に由来するT細胞である。実施形態では、細胞は、CTLA4、LAG3、BTLA、TIM3、FOXP3、SIVA1またはLGALS9の内因性遺伝子の発現が低下している。実施形態では、様々な遺伝子編集技術または過剰発現技術(例えば、Cas9、TALENおよびZFN)を使用して、1つ以上の遺伝子をノックアウト、ノックダウン、過剰発現、または挿入することにより、T/NK細胞の機能を調節することができる。例えば、改変細胞は、対応する野生型細胞と比較して、リスト1およびリスト2(第268段落を参照)のペプチドの生合成経路または輸送経路の1つ以上の遺伝子の発現が低下または増加する。実施形態では、標的遺伝子はRunx3である。例えば、改変T/NK細胞は、対応する野生型細胞と比較して、Runx3の発現が増加する。一例として、Runx3の発現が増加すると、T細胞の腫瘍細胞内での浸潤や長期滞在が促進されるため、T細胞の殺傷効果が高まる。実施形態では、改変細胞は、改変幹細胞、改変T細胞または改変ナチュラルキラー(NK)細胞である。実施形態では、改変細胞は、ヒトのドナーから単離された一次ヒトT細胞に由来するT細胞である。実施形態では、細胞は、CTLA4、LAG3、BTLA、TIM3、FOXP3、SIVA1和LGALS9の内因性遺伝子の発現が低下する。
CTLA4は、T細胞応答の主要な負の調節因子として作用する阻害性受容体である。Tリンパ球受容体であるCTLA-4は、刺激性の共同受容体であるCD28よりも高い親和性で共刺激分子CD80(B7-1)およびCD86(B7-2)に結合し、かつT細胞活性化に対して負の調節を行う。LAG3は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、活性化されたT細胞およびNK細胞の表面に発現する。LAG3は、B細胞、樹状細胞、TILおよびTregの表面にも検出される。LAG3を遮断すると、T細胞増殖および機能が有意に増加する。TIM3は、CD4+ Tヘルパー1(Th1)、CD8+ T細胞傷害性1細胞(Tc1)およびTh17細胞によって構成的に発現される免疫チェックポイント受容体である。TIM3とそのリガンドであるガレクチン-9 LGALS9との相互作用は、T細胞応答の阻害につながると考えられる。FOXP3は、転写調節因子であるフォークヘッド/ウイングドヘリックスファミリーのメンバーであり、調節性T細胞(Treg)の発生と阻害機能に重要な役割を果たしている。SIVA1は、CD27媒介性アポトーシスを誘導し、BCL2L1アイソフォームBcl-x(L)の抗アポトーシス活性を阻害し、NF-κBの活性化を阻害し、T細胞受容体媒介性アポトーシスを促進する。
実施形態は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸配列を含む改変細胞に関し、ここで、内因性遺伝子がZFNを用いて不活性化される。
実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
実施形態では、改変T細胞は、一次ヒトT細胞の移植片対宿主病(GVHD)応答と比較して、生体不適合ヒトレシピエントにおけるGVHD応答が低下する。
実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、FZD10、TSHR、PRLR、Muc17、GUCY2C、CD207、CD19またはCD20に結合する。
実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、B7、BCMA、CAIX、CD123、CD133、CD138、CD171、CD171/L1-CAM、CD19、CD2、CD22、CD30、CD33、CEA、cMet、CS1、CSPG4、Dectin1、EGFR、EGFR vIII、EphA2、ERBB受容体、ErbB T4、ERBB2、FAP、葉酸受容体1、FITC、葉酸受容体1、GD2、GPC3、HA-1 H/HLA- A2、HER2、IL-11Ra、IL13受容体a2、IL13R、IL13Rα2(ゼタカイン)、Kappa、LewisY、メソテリン、MUC1、NKG2D、NY-ESO-1、PSMA、ROR-1、TRAIL-受容体1またはVEGFR2のうちの少なくとも1つに結合する。
実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及それらの任意の組み合わせからなる群から選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含む。
実施形態では、改変細胞は、hTERTをコードする核酸配列、またはSV40LTをコードする核酸、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、改変細胞は、hTERTをコードする核酸配列およびSV40LTをコードする核酸を含む。実施形態では、hTERTの発現は、誘導性発現系によって調節される。実施形態では、SV40LT遺伝子の発現は、誘導性発現系によって調節される。実施形態では、誘導性発現系はrTTA-TREであり、SV40LT遺伝子またはhTERT遺伝子、またはそれらの組み合わせの発現を増加または活性化する。実施形態では、改変細胞は、自殺遺伝子をコードする核酸配列を含む。実施形態では、自殺遺伝子は、HSV-TK自殺遺伝子系を含む。これらの例では、改変細胞のアポトーシスを誘導することができる。
本開示は、被検体における癌を治療する方法を記載しており、本方法は、本明細書に記載される改変細胞混合集団を被検体に投与することを含み、ここで、癌が、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、骨癌、乳癌、結腸直腸癌、白血病、卵巣癌、リンパ腫および脳癌からなる群から選択される。
本明細書に記載される方法は改変T細胞および/または改変NK細胞を含み、対応する野生型細胞と比較して、前記改変T細胞および/または改変NK細胞は量が減少した1つ以上のペプチドを含み、前記1つ以上のペプチドはPD1、PDL1、PDL2、CTLA4、LRBA、LAG3、Tim3、BILA、CD160、2B4、SOCS1、SOCS3、Foxp3、CCR4、PVRIG、CD16B、SIVA1、CD33、LAGLS9、CD122、IDO1、CD45、Cvp1b1、TNFAIP8L2、ID02、TD02、DNMT3Aおよび/または癌胎児性抗原細胞接着分子-1(Ceacam-1)(リスト1)を含む。実施形態では、被検体における癌を治療する方法は、遺伝子改変T細胞の混合集団を被検体に投与して、これらのT細胞および/またはNK細胞(減少した量の上記に記載した1つ以上のペプチドを有する)の改変T細胞および/またはNK細胞応答を増強することを含む。方法は改変T細胞および/または改変NK細胞を含み、対応する野生型細胞と比較して、前記改変T細胞および/または改変NK細胞は増加した量の1つ以上のペプチドを含み、前記1つ以上のペプチドはRunx3、lexm、PILRA、Ptnns1L3、Fcgr3a、Nat8、Ccl9、Hck、Trem2、Ccl6、Cd36、Igf1、Ctss、Gzmc、Batf、Cxcl2、TNFAIP8L3、Il1b、TRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4、Rgs1、PLSCR1、ITGB2、C3AR1、ITGA3、ITGA5、ITGAL、batf、batf3、Cxcl2、CARD11および/またはCD83(リスト2)を含む。実施形態では、被検体における癌を治療する方法は、改変T細胞および/または改変NK細胞を被検体に投与して、これらのT細胞および/またはNK細胞(増加した量の上記に記載した1つ以上のペプチドを有する)のT細胞および/またはNK細胞応答を増強することを含む。実施形態では、リスト1または2に記載の1つ以上のペプチドをコードする1つ以上の遺伝子をノックアウト/ノックダウン/過剰発現/挿入することにより、T細胞および/またはNK細胞の機能を調節することために、様々な遺伝子編集技術または過剰発現技術(例えば、Cas9、TALENおよびZFN)を使用することができる。例えば、遺伝子改変T細胞は、対応する野生型細胞と比較して、リスト1およびリスト2(上記参照)に記載のペプチドの生合成経路または輸送経路の1つ以上の遺伝子の発現が低下または増加する。
実施形態では、標的遺伝子はRunx3である。例えば、改変T細胞は、対応する野生型細胞と比較して、Runx3の発現が増加する。これらの例では、Runx3発現の増加は、例えば、腫瘍細胞内での改変T細胞の浸潤または長期滞在に寄与することができ、よって、T細胞の殺傷効果が高められる。
例えば、被検体におけるT細胞応答とは、補助、殺傷、調節および他の種類のT細胞に関連する細胞媒介性免疫を指す。例えば、T細胞応答は、免疫学的プロセスにおいて他の白血球を補助すること、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を同定して破壊することなどの活動を含み得る。被検体におけるT細胞応答は、T細胞が殺すウイルス感染細胞および/または腫瘍細胞の数、ウイルス感染細胞および/または腫瘍細胞との共培養においてT細胞が放出するサイトカインの量、被検体におけるT細胞の増殖レベル、T細胞の表現型の変化(例えば、記憶T細胞への変化)、被検体におけるT細胞の寿命または寿命のレベルなど、様々な指標を介して測定することができる。
T細胞応答はまた、サイトカイン放出を含む。サイトカインの放出は、通常、全身性炎症や疾患の合併症と関連しているが、サイトカインの放出は、CAR T細胞療法の治療効果にも関連しているように見える。サイトカインの放出は、CAR T細胞療法などで、養子移植された細胞の増幅および進行性免疫活性化と関連し得る。本開示では、IFN-γなどのエフェクターサイトカイン、IL-6などの促炎性および抗炎性サイトカインの放出が記載されており、この放出は本明細書に記載される改変T細胞の混合集団に応答し、特に、第1のCARおよび第2のCARまたはTCRの存在に応答し、前記第1のCARは細胞を増幅するための抗原結合ドメインを含み、第2のCARまたはTCRは標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを含む。実施形態では、本開示は、本明細書に記載される第1のCARおよび第2のCARまたはTCRを導入した被検体におけるIL-6およびIFN-γの放出を記載する。実施形態では、被検体は、癌治療を必要としており、癌治療は膵臓癌治療である。実施形態では、本開示は、サイトカイン放出のレベルを測定することによって、CAR T細胞療法の治療効果を決定するか、またはその治療効果をモニタリングすることを記載している。実施形態では、本明細書に記載される改変T細胞の混合集団を用いたCAR T細胞療法に応答した被検体におけるサイトカイン(例えば、IL-6および/またはIFN-γ)の放出は、第1のCARを含まずに第2のCARを含むT細胞を用いた場合よりも多い。
実施形態では、本明細書に記載される改変細胞は、プログラム死1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、Bリンパ球およびTリンパ球アッテネーター(BTLA)、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、リンパ球活性化タンパク質3(LAG-3)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(2B4)またはCD 160という受容体のドミナントネガティブ変異体をさらに含み得、これにより、改変細胞混合集団によって誘導されるT細胞応答を増強することができる。実施形態では、本明細書に記載される改変細胞は、改変細胞の運命が制御され得るように、自殺遺伝子をコードする核酸配列、および/またはHSV-TK自殺系を含む自殺遺伝子をさらに含み得る。例えば、治療が被検体にリスクを与える場合、および/または被検体が副作用に遭遇した場合、あるいは、治療が完了した場合、一定の必要条件が満たされた時、および/または所定の時間が経過した場合に、T細胞のアポトーシスを誘導することができる。
本開示は、本明細書に記載される改変細胞混合集団を含む組成物を記載する。実施形態では、第1の抗原に結合する第1のCARを含む第1の改変細胞集団と、第1の抗原と異なる第2の抗原に結合する第2のCARまたはTCRを含む第2の改変細胞集団とが存在する。第1の抗原は、B細胞などのWBCの抗原であってよく、第2の抗原は腫瘍抗原である。本開示は、腫瘍細胞を殺すための第2の改変細胞集団の増幅および維持を増強する方法を記載する。方法は、第2のCARが認識して結合する腫瘍抗原に関連する形態の癌形態を有する被検体に、改変細胞混合集団を含む組成物の有効量を投与することを含む。実施形態は、それを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強する方法、または癌を有する被検体を治療する方法をさらに含む。方法は、第2のCARが認識して結合する腫瘍抗原に関連する形態の癌を有する被検体に、本明細書に記載される組成物の有効量を投与することを含む。別の実施形態は、被検体における改変細胞の増幅および/または維持を増強する方法を含み、この方法は、T細胞を、第1のCARをコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターおよび第2のCARをコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターと接触させて、本明細書に記載される改変細胞混合集団の組成物を得ることと、第2のCARが認識して結合する腫瘍抗原に関連する形態の癌を有する被検体に、組成物の有効量を投与することと、を含む。別の実施形態は、それを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強する方法、または癌を有する被検体を治療する方法を含み、この方法は、T細胞を、第1のCARをコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターおよび第2のCARをコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターと接触させて、本明細書に記載される改変細胞混合集団の組成物を得ることと、第2のCARが認識して結合する腫瘍抗原に関連する形態の癌を有する被検体に、組成物の有効量を投与することと、を含む。実施形態は、被検体における改変細胞の増幅および維持を増強する方法を含み、この方法は、本明細書に記載される改変細胞混合集団の組成物の有効量を投与することを含む。
実施形態では、組成物は、少なくとも第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を含む。第1の改変細胞集団は、第1のCAR(例えば、CD19、CD22およびBCMA CAR)をコードするポリヌクレオチドと、1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-6、IL12およびIFNγ)をコードするポリヌクレオチドとを含む。第2の改変細胞集団は、固形腫瘍抗原に結合する第2のCARをコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、組成物は、第1の改変細胞集団、第2の改変細胞集団、第3の改変細胞集団および第4の改変細胞集団を含む。第1の改変細胞集団は、WBC抗原およびIL-6に結合するCARをコードするポリヌクレオチドを含む(例えば、図87B)。第2の改変細胞集団は、固形腫瘍抗原に結合するCARをコードするポリヌクレオチドを含む(例えば、図87A)。第3の改変細胞集団は、WBC抗原およびIL-12に結合するCARをコードするポリヌクレオチドを含む(例えば、図87B)。第4の改変細胞集団は、WBC抗原およびIFNγに結合するCARをコードするポリヌクレオチドを含む(例えば、図87B)。これらのWBC抗原は、同じもの(例えば、CD19)であっても、異なるもの(例えば、CD19およびBCMA)であってもよい。第1の所定比率に基づいて、第1の改変細胞集団、第3の改変細胞集団と第4の改変細胞集団を混合して、改変細胞群を得ることができ、次に、第2の所定比率に基づいて、前記改変細胞群と第2の改変細胞集団を混合して、改変細胞混合集団を含む組成物を得ることができる。所定比率は、被検体における1つ以上のサイトカインの発現量を制御するために使用され、被検体において制御可能で持続的かつ効率的なサイトカイン効果を達成すると同時に、細胞傷害性を低下させる。実施形態では、第1の改変細胞集団、第3の改変細胞集団および第4の改変細胞集団の第1の所定比率は、IL-12またはIL-6をコードするポリヌクレオチドを含む改変細胞よりもIFNγをコードするポリヌクレオチドを含む改変細胞の方が多くなるように設定されている。例えば、第1の所定比率は、1:1:10である。実施形態では、第2の所定比率は、第1のCARをコードするポリヌクレオチドを含む改変細胞(例えば、第1の改変細胞集団、第3の改変細胞集団および/または第4の改変細胞集団)よりも第2のCARをコードするポリヌクレオチドを含む改変細胞(例えば、第2の改変細胞集団)の方が多くなるように決定されている。例えば、第1の改変細胞集団と第2の改変細胞集団の第2の所定比率は、1:1未満であるが、1:10,000を超える。実施形態では、第2の所定比率は、1:1、1:10、1:100、1:1000および1:104、並びにその範囲内の個々の数値、例えば、1:10、1:100または1:1000である。実施形態では、第2の所定比率は、1:10~1:1000である。実施形態では、第2の所定比率は、1:10~1:100である。実施形態では、第2の所定比率は、1:1~1:100である。実施形態では、細胞(例えば、NK細胞、T細胞、B細胞、ミエロイド由来細胞など)は、被検体または健康なドナーから得られ、且つ少なくとも2群に分けられる。これらの細胞群は、それぞれ2つ以上のベクターで転移することができる。これらの細胞は、健康なドナーから得られた場合、さらに改変することができる。実施形態では、第2の改変細胞集団は、1つ以上のサイトカインを発現しない。
実施形態では、第1のCARをコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA構築物、mRNAまたはウイルスベクターの形態で改変細胞に存在する。実施形態では、ポリヌクレオチドは改変細胞のゲノムに組み込まれていないmRNAであり、よって、改変細胞が有限期間において第1のCAR(例えば、CD19 CAR)を発現するようになる。
実施形態では、改変細胞混合集団は、第3のCARを発現する第3の改変細胞集団および/または第4のCARを発現する第4の改変細胞集団をさらに含み、これにより、異なる改変細胞集団によって引き起こされる免疫応答を結合してCAR T治療を増強することができる。実施形態では、CARは、TCRまたはCARとTCRの組み合わせで置き換えてもよい。
実施形態は、CAR T細胞の複数回の注入をタイムリーに実施することにより、CAR T療法を増強する方法に関する。方法は、被検体または健康なドナーからPBMCを得ることと、得られたPBMCを用いてCAR T細胞を調製することと、CAR T細胞を、例えば所定の時間培養することと、培養したCAR T細胞の一部を被検体に投与することと、被検体の血中のCAR T細胞を観察および/または測定することと、血中のCAR T細胞のレベルが所定値に達したとき、またはCAR T細胞が臓器(例えば、リンパ節)に戻ったとき、第2の部分の培養CAR T細胞を投与することと、を含む。例えば、最初に注入されたCAR T細胞は、臓器内で選択的に活性化および増幅され、被検体の免疫応答を引き起こすことができる。したがって、CAR T細胞の第2の部分の注入は、前記免疫応答と結合して第2のCAR T細胞集団の活性化および/または増幅を増強し、CAR T療法を増強することができる。
本開示は改変細胞集団を含む組成物を記載しており、前記改変細胞集団は、第2のCARを含まずに第1のCARを含む第1の改変細胞集団、およびまたは第1のCARを含まずに第2のCARを含む第2の改変細胞集団を含む。本開示はさらに、第1のCARおよび第2のCAR(単一の改変細胞内にある)を含む改変細胞集団を含む組成物を記載する。実施形態では、組成物は第1の改変細胞集団と、第2の改変細胞集団と、第3の改変細胞集団とを含み、これらの改変細胞集団は、同じ改変細胞における第1のCARおよび第2のCARをコードする1つ以上の核酸配列を含む。実施形態では、組成物は、第2の改変細胞集団と、同じ改変細胞における第1のCARおよび第2のCARをコードする1つ以上の核酸配列を含む第3の改変細胞集団とを含むが、第1の遺伝子改変細胞集団を含まない。
実施形態は、抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドおよび/または治療薬を用いて改変細胞の増幅を増強し、または被検体におけるT細胞応答を増強する方法に関し、または改変細胞の増幅の増強または被検体におけるT細胞応答の増強での抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドおよび/または治療薬の用途に関する。本方法または用途は、ポリヌクレオチドの転写を付与する発現制御要素に動作可能に連結されているポリヌクレオチドを含むベクターゲノムを含むウイルス粒子(例えば、AAV、レンチウイルスまたはそれらの変異体)を提供することと、ポリヌクレオチドを被検体で発現するように、一定量のウイルス粒子を被検体に投与することと、を含む。実施形態では、AAV製剤は、AAVベクター粒子、空のキャプシドおよび宿主細胞の不純物を含んでもよく、それによって、AAV空のキャプシドを実質的に含まないAAV製品が提供される。ウイルス粒子の投与および調製のより詳細な情報は、米国特許出願第9840719号およびMilaniら,Sci.Transl.Med.11,eaav7325(2019)、2019年5月22日、に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
実施形態では、ポリヌクレオチドは改変細胞のゲノムに組み込まれ、かつ改変細胞の子孫もポリヌクレオチドを発現し、その結果、安定的にトランスフェクトされた改変細胞が得られる。実施形態では、改変細胞はCARをコードするポリヌクレオチドを発現するが、ポリヌクレオチドは改変細胞のゲノムに組み込まれず、よって、改変細胞は限られた時間帯(例えば、数日間)に、一過性にトランスフェクトされたポリヌクレオチドを発現すると、ポリヌクレオチドが細胞分裂または他の要因によって失われる。例えば、ポリヌクレオチドは、組換えDNA構築物、mRNAまたはウイルスベクターの形態で改変細胞に存在し、および/またはポリヌクレオチドは改変細胞のゲノムに組み込まれていないmRNAである。
実施形態では、第1の細胞集団は、第1のCARおよび第2のCARを含み、第2の細胞集団は、第1のCARを含むが、第2のCARを含まない。実施形態では、第1の細胞集団は、第1のCARおよび第2のCARを含み、第2の細胞集団は、第1のCARおよび第2のCARを含む。実施形態では、第1の細胞集団は、第1のCARを含むが第2のCARを含まず、第2の細胞集団は、第1のCARおよび第2のCARを含む。実施形態では、第1の細胞集団は、第1のCARを含むが第2のCARを含まず、第2の細胞集団は、第2のCARを含むが第1のCARを含まない。実施形態では、第1の細胞集団は、第2のCARを含むが第1のCARを含まず、第2の細胞集団は、第1のCARおよび第2のCARを含む。実施形態では、第1の細胞集団は、第1のCARを含むが第2のCARを含まず、第2の細胞集団は、第2のCARを含むが第1のCARを含まず、第3の細胞集団は、第1のCARおよび第2のCARを含む。ここに記載されるように、第1のCARは、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを含み、第2のCARは、腫瘍などの標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを含む。
実施形態では、抗原結合ドメインは一つの抗原に結合し、前記抗原は白血球(WBC)の細胞表面分子、腫瘍抗原または固形腫瘍抗原であるか、またはそれらを含む。実施形態では、WBCは、T細胞、NK細胞または樹状細胞である。
実施形態では、WBCは、顆粒球、単球またはリンパ球である。実施形態では、WBCはB細胞である。実施形態では、B細胞の細胞表面分子または抗原は、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である。実施形態では、B細胞の細胞表面分子または抗原は、CD19、CD20、CD22またはBCMAである。実施形態では、B細胞の細胞表面分子または抗原は、CD19である。
実施形態では、腫瘍抗原は、固形腫瘍抗原である。実施形態では、固形腫瘍抗原は、tMUC1、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、KISS1R、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIII、B7-H3またはEGFRである。実施形態では、固形腫瘍抗原は、腫瘍関連MUC1(tMUC1)、TSHR、GUCY2C、ACPP、CLDN18.2(18.2)、PSMAまたはUPK2であるか、またはそれらを含む。
実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む。実施形態では、共刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドの細胞内ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、第2のCARは、tMUC1に結合する結合ドメインと、CD28の細胞内ドメインを含む共刺激ドメインとを含み、および/または、第1のCARは、CD19に結合する結合ドメインと、4-1BBの細胞内ドメインを含む共刺激ドメインとを含む。
実施形態では、第1の細胞集団および/または第2の細胞集団は、T細胞上に存在するドミナントネガティブ形態のチェックポイントタンパク質またはチェックポイントタンパク質受容体(例えば、PD-1)をさらに含む。実施形態では、第1の細胞集団は、第1のCARおよびドミナントネガティブ形態のPD-1をコードする核酸を含むベクターを含む。
実施形態では、第2のCARは、tMUC1に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、CD3ζドメインを含み、第2のCARは、CD19に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、CD3ζドメインを含む。実施形態では、第1のCARは、配列番号5のscFvを含み、第2のCARは、配列番号70のscFvを含む。対応する配列を表5に示す。
実施形態は、癌を有する患者に、tMUC1に結合するscFvを含む第2のCARを含む第2のT細胞集団の有効量を投与することを含む方法に関する。第2のCARはさらに、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、CD3ζドメインを含み得る。実施形態では、方法は、患者に、CD19に結合するscFvを含む第1のCARを含む第1のT細胞集団の有効量を投与することをさらに含み、それによって、患者における第2のT細胞集団の増幅を増強する。前記CARはさらに、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含み得る。
実施形態では、第2のCARは、CD28の細胞内ドメインを含み、第1のCARは、4-1BBの細胞内ドメインを含む。この場合、CD19を含む第1のT細胞集団は、4-1BBの細胞内ドメインを含む第2のCARおよび/またはCD28の細胞内ドメインを含む第1のCARと比較して、患者に対する悪影響(例えば、CRS)が少なくなる可能性があり、および/またはtMUC1を含む第2のT細胞集団は、増強したT細胞応答(例えば、殺傷効果)を引き起こす可能性がある。実施形態では、第2のCARは、CD28の細胞内ドメインを含み、これにより、第2のT細胞集団が、4-1BBの細胞内ドメインを含む第2のCARと比較して、増強したT細胞応答(例えば、殺傷効果)を引き起こすことができる。実施形態では、第1のCARは、4-1BBの細胞内ドメインを含み、これにより、第1のT細胞集団が、CD28の細胞内ドメインを含む第1のCARと比較して、患者に対する悪影響(例えば、CRS)が少なくなる可能性がある。
実施形態では、第2の細胞集団は、固形腫瘍抗原に結合するscFvを含むが、B細胞抗原に結合するscFvを含まず、第1の細胞集団は、固形腫瘍抗原と異なる抗原(例えば、WBC抗原またはB細胞抗原)に結合するscFvを含むが、腫瘍抗原に結合するscFvを含まない。これらの例では、第1のT細胞集団と抗原(例えば、CD19)との間の結合によって誘導される患者T細胞応答は、第1のT細胞集団および第2のT細胞集団の両方を増幅させる可能性がある。したがって、患者に、本質的に第1の細胞集団と第2の細胞集団で構成される遺伝的に操作されたT細胞の混合集団を投与してもよい。実施形態では、遺伝的に操作されたT細胞の第2の集団および1つ以上の組換えタンパク質(例えば、サイトカインIL6および/またはINFγ)または1つ以上の組換えタンパク質を発現および分泌する細胞を患者に投与することで、第1のT細胞集団によって引き起こされるT細胞応答と同様のまたは増強されたT細胞応答を誘導することができる。実施形態では、患者に第2のT細胞集団およびホルモン剤(例えば、フルベストラント)を投与して、第1のT細胞集団によって引き起こされるT細胞応答と同様の、または増強されたT細胞応答を誘導することができる。
実施形態では、第1の改変細胞集団はさらに、tMUC1に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含む第3のCARを含むことができる。実施形態では、第2の細胞集団は、CD19に結合するscFvを含まない。実施形態では、第1の細胞集団は、tMUC1に結合するscFvを含まない。
実施形態では、被検体における細胞増幅および/または細胞応答を増強する本明細書に記載される方法は、被検体が1つのCARのみ(例えば、第1のCARのみまたは第2のCARのみ)で投与される方法、および/または被検体が本明細書に記載される細胞混合集団が投与されない方法と比較される。実施形態では、本明細書に記載される細胞混合集団は、細胞の増幅および/または細胞応答を増強することができる。
実施形態は、癌を有する患者を治療する、または被検体におけるT細胞応答を増強するための組成物および方法に関する。方法は、第1のCARを含む改変細胞集団の有効量を被検体に投与することを含む。第1のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28の共刺激ドメイン、および/またはCD3ζドメインを含む。方法は、改変細胞によって誘導されるT細胞応答の1つ以上のパラメータをモニタリングおよび/または測定することをさらに含むことができる。例えば、1つ以上のパラメータは、サイトカイン放出、リンパ球数、およびCAR T細胞の増幅と枯渇レベルを含む。方法は、所定の時間(例えば、注入後1週間または2週間)および/または、測定されたパラメータ(例えば、CARのコピー数およびCAR T細胞数)に関連する状况に応じて、第2のCARを含む改変細胞集団の有効量を被検体に投与することを含むことができる。第2のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、および/またはCD3ζドメインを含む。CD28 CAR T細胞および4-1BB CAR T細胞は、実験室と臨床で異なる挙動を示すことが報告されている。したがって、前記方法は、強力な初期免疫応答と長く持続する免疫応答を結合することで、2つの共刺激ドメインの利点を組み合わせる。例えば、CD28を含む第1のCARは、強力なT細胞の活性化を誘発し、エフェクター様分化と関連している。第1のCARはT細胞の枯渇を引き起こすことができるが、被検体の免疫系の強力な初始応答を誘導するように設計されている。4-1BBを含む第2のCARは、T細胞の枯渇を抑え、持続性を増強し、かつ中央記憶の分化やミトコンドリアの生合成を増加させることは、持続的なCAR T療法のために設計されている。実施形態では、第1のCARによって誘導される初始応答は、持続的なCAR T療法を増強することができる。実施形態では、第1のCARを含む改変細胞集団と、第2のCARを含む改変細胞集団とを、同時に被検体に投与してもよい。例えば、組成物は、第1のCARを含む改変細胞集団と、第2のCARを含む改変細胞集団とを含み得る。実施形態では、第1のCARはWBCの抗原に結合し、第2のCARは固形腫瘍抗原に結合する。実施形態では、第1のCARおよび第2のCARは、同じまたは異なる固形腫瘍抗原に結合する。例えば、固形腫瘍抗原(例えば、TSHR)に結合し、かつ4-1BB共刺激ドメインを含むCAR改変細胞集団と、固形腫瘍抗原(例えば、TSHR)または別の固形腫瘍抗原(例えば、tMuc1)に結合し、かつCD28共刺激ドメインを含むCARを含む別の改変細胞集団と混合して、混合改変細胞を得る。実施形態では、改変細胞は、さらに被検体に投与されてもよい。実施形態では、改変細胞は、WBC抗原(例えば、CD19)に結合するCARを含む改変細胞集団とともに、被検体に投与されてもよい。
実施形態では、本明細書に記載されるCAR分子は、目的の抗原に結合するための1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む。CDRは、特異的抗原に結合するための免疫グロブリンおよびT細胞受容体の可変ドメインの一部である。各可変ドメインには、3つのCDRがある。可変重鎖ドメインと可変軽鎖ドメインがあるので、抗原に結合するためのCDRは6個ある。さらに、抗体には2本の重鎖および2本の軽鎖があるので、抗原に結合するためのCDRは全部で12個ある。実施形態では、本明細書に記載されるCAR分子は、抗原に結合するための1つ以上のCDRを含む。実施形態では、1つ以上のCDRは、B細胞などのWBCの抗原に結合する。一例として、1つ以上のCDRは、B細胞の細胞表面抗原であるCD19に結合する。実施形態では、1つ以上のCDRは、腫瘍抗原、例えば、tMUC1、TSHR、GUCY2C、ACPP、CLDN18.2(18.2)、PSMAまたはUPK2に結合する。
実施形態は、免疫療法システム、および被検体の癌の治療におけるその用途に関する。図61に示すように、免疫療法システム102は、腫瘍細胞の成長を阻害するように構成された機能性成分104と、被検体の免疫応答と腫瘍細胞の成長阻害を結合するように構成された結合成分106と、阻害および/または結合を制御するように構成された制御成分108とを含む。実施形態では、免疫療法システム102は、癌の治療に適した1つ以上の医薬組成物(例えば、抗体および細胞)を含む組成物である。
機能性成分104の例には、CAR T、TIL、TCRなどの細胞療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、化学療法、腫瘍ワクチン療法、代謝標的療法および標的療法が含まれる。実施形態では、機能性成分104は、免疫代謝を調節する阻害剤(例えば、IDO阻害剤およびアデノシン阻害剤)、免疫調節剤(例えば、IMiD)、単球または樹状細胞に対するアゴニスト(例えば、TLR/STING)、腫瘍溶解性ウイルス療法、腫瘍ワクチン(例えば、DCワクチン)、腫瘍浸潤T細胞(例えば、Til)、マクロファージ再プログラミング剤(例えば、CCR2-CCL2阻害剤、CSF-1R阻害剤、PPAR-γアゴニスト/阻害剤およびCD-40アゴニスト)、化学療法剤(例えば、シクロホスファミド、フルダラビンおよびイブルチニブ)、モノクローナル抗体の標的薬(例えば、抗her2)、または非モノクローナル抗体の標的薬(例えば、ALK阻害剤、EGF/VEGF阻害剤)のうちの少なくとも1つを含む。TCR療法の標的例を表6に示す。実施形態では、機能性成分104は、Bite分子(例えば、TSHR-CD3)によって実施され得る。実施形態では、図77Aに示すように、Bite分子は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含み、ここで、第1の結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合し、第2の結合ドメインは、T細胞CD3受容体複合体またはCD28に結合する。第2の結合ドメインはさらに、4-1BB、OX40、GTTR、ICOS、NKG20などの他のT細胞分子に結合することができる。
結合成分106の例には、CAR T/NK細胞によって引き起こされる免疫応答、DC刺激、T細胞刺激、および抗原/ワクチン刺激が含まれる。CAR T/NK細胞は、本開示に記載の改変細胞を含む。例えば、改変細胞は、WBC抗原(例えば、CD19)、EBV抗原および/またはアルブミンに結合するCARを含む。T細胞刺激は、Bite分子(例えば、CD19-CD3)によって実施され得る。DC細胞刺激は、CAR T/NK細胞を被検体に投与するか、低分子、小ペプチド、ワクチンまたは抗原を被検体のリンパ系臓器(例えばリンパ節)に投与することによって実施することができる。実施形態では、図77Aに示すように、Bite分子は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含み得、ここで、第1の結合ドメインは抗原に結合し、第2の結合ドメインは、例えば、T細胞CD3受容体複合体またはCD28に結合する。第2の結合ドメインは、4-1BB、OX40、GITR、ICOS、NKG20などの他のT細胞分子に結合し得る。第1の結合ドメインは、WBC抗原(例えば、CD19およびBCMA)に結合し得る。実施形態では、CAR T細胞は、Bite分子を発現し得る。実施形態では、CAR T細胞およびBite分子は、同時にまたは別々に被検体に投与され得る。
実施形態では、免疫療法システム102は、癌を治療する様々なBite抗体を含み得る。実施形態では、免疫療法システム102は、第1のBite分子および第2のBite分子を含む。第1のBite分子は、第1の結合ドメインおよび第2の結合ドメインを含み得、ここで、第1の結合ドメインは、固形腫瘍抗原に結合し、第2の結合ドメインは、例えば、T細胞CD3受容体複合体またはCD28に結合する。第2のBite分子は、第3の結合ドメインおよび第4の結合ドメインを含み得、ここで、第3の結合ドメインは、抗原に結合し、第4の結合ドメインは、例えば、T細胞CD3受容体複合体またはCD28に結合する。実施形態では、免疫療法システム102は、改変された二重特異性抗体または三重特異性抗体(例えば、図87Cおよび87D)、ならびに第1のBite抗体および/または第2のBite抗体を含む。これらの例では、腫瘍微小環境内またはその近くで、抗体技術を用いて、1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-6、IL-12、IL-15、IL-7およびIFNγ)を分泌するように細胞を刺激することができる。成分8702は、様々な細胞を刺激してサイトカインの放出を促進する刺激物として機能するように実装することができる。例えば、刺激装置は、被検体に1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-6、IL-12、IL-7、IL-15およびIFNγ)を直接または間接的に分泌させるアゴニストまたはリガンドを含み得る。実施形態では、第1のBite分子および/または第2のBite分子の使用は、1つ以上のヒト組換え形態のサイトカインの投与と組み合わせることができる。実施形態では、治療薬は単離されたヒトサイトカイン、合成されたヒトサイトカイン、天然のヒトサイトカイン、または組み換えられたヒトサイトカインであり得る。実施形態では、有効量のヒト組換えサイトカインを投与することは、体重1キログラム当たり約0.5-50 ug範囲の量のIL-6を静脈内送達することを含む。実施形態では、ヒト組換えサイトカインは、IL-6またはIL-7を含む。組換えIL-15は、所定の期間または日数をかけて、3mcg/kg/日および1mcg/kg/日で、毎日のボーラス注入として投与することができる。組換えIFNγは、所定の期間にわたって、週に5日間、毎日200万単位の用量で投与することができる。実施形態では、ヒト組換えサイトカインの有効量を投与することは、被検体の血液中のIL-6および/またはIFN-γなどのサイトカインの濃度が5-1000倍(例えば、50倍)増加するように、ヒト組換えサイトカインの有効量を投与することを含む。IL-6、IL-15および/またはIFNγの投与方法は、米国特許出願第US5178856A号および癌治療におけるサイトカイン、第00巻、第00号、2018に記載されており、そのすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態では、組換えIL-12は、開始用量として30ng/kgが投与され、そしてCAR T細胞の注入後に週に2回、500ng/kgまで増加させることができる。IL-12の投与方法は、Leuk Res.2009 November; 33(11):1485-1489に記載されており、前記参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態では、ヒト組換えサイトカインは、細胞の投与後、0日、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、または30日目から被検体に投与することができる。
実施形態では、結合成分106と機能性成分104は、被検体の免疫系の過剰な活性化をもたらす固形腫瘍抗原および超抗原に結合するCARをコードするレンチウイルスベクターを用いて結合され、実施されてもよい。例えば、改変細胞集団は、CARをコードするレンチウイルスベクターと超抗原を含み、超抗原は、アラバンウイルス核タンパク質、オーストラリアコウモリリサウイルス核タンパク質、ドゥベンヘイジウイルス核タンパク質、ヨーロッパコウモリリサウイルス1核タンパク質、イルクットウイルス核タンパク質、クジャンドウイルス核タンパク質、トウモロコシモザイクウイルス核タンパク質、モコラウイルス核タンパク質、マウス乳腺腫瘍ウイルスタンパク質PR73、狂犬病ウイルス核タンパク質、イネ黄化葉巻ウイルス核タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス・エンテロトキシン、タロイモ葉緑病ウイルス核タンパク質または西コーカサスコウモリウイルス核タンパク質である。細胞外シグナルペプチドを加えて、これらの核タンパク質を改変してもよい。実施形態では、CAR T細胞は、二重特異性または三重特異性抗体に結合して腫瘍を治療してもよい。CAR T細胞は、固形腫瘍抗原に結合し得る。実施形態では、CAR T細胞と抗体は、同時にまたは別々に被検体に投与してもよい。実施形態では、CAR T細胞は、抗体を発現し得る。二重特異性抗体は、包CD3、CD28、4-1BB、GITR、OX40などを標的とする第1の抗体フラグメント、および固形腫瘍抗原またはWBC抗原を標的とする第2の抗体フラグメントを含む。図77Bに示すように、三重特異性抗体は、例えばCD3、TLR、FcRまたはNKG2Dを標的とする第1の抗体フラグメント、例えばCD28、4-1BB、GITRまたはOX40を標的とする第2の抗体フラグメント、および例えばWBC抗原または固形腫瘍抗原を標的とする第3の抗体フラグメントを含み得る。
本開示はさらに、CAR、上記二重特異性抗体または三重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む改変細胞集団を記載する。本開示はさらに、CARおよび上記二重特異性抗体または三重特異性抗体を発現する改変細胞集団を記載する。
図65に示すように、樹状細胞(DC)を活性化するには3つの方法がある。1つ目の方法は、抗原(例えば、CEA、PSAまたはTERT)をDCに送達することである。例えば、抗原を含む癌ワクチンまたはナノ粒子は、DCを活性化することができ、それによって免疫系を活性化することができる。2つ目の方法は、アゴニスト(例えば、サイトカイン)を送達してDCの成熟を促進し、関連するサイトカインを直接または間接的に放出することである。3つ目の方法は、DC活性化に寄与するサイトカインまたはタンパク質を送達することである。DCを活性化するために、他の方法を実施することもできる。例えば、LPS、各種ウイルス、マラリア原虫抗原、サイトカイン、ワクチンなどの方法でDCを刺激することができる。実施形態では、小分子(例えば、CpGオリゴヌクレオチドおよびイミキモド、原型薬)はアルブミンと結合してリンパ節に送達されて、DCを刺激することができ、これによって、その後、リンパ節にホーミングしたCAR T細胞の増幅を選択的に引き起こすことができる。本開示の実施例では、T細胞上のCCR7やCD62Lなどの分子により、一部のT細胞(例えば、中央記憶T細胞)は、注入後に血液中に安定的に留まらず、リンパ節などのリンパ系臓器に入ることが示されている。したがって、DCを直接および/または間接的に刺激することは、より多くの記憶様の表現型を示すCAR T細胞を選択的に増幅および/または活性化することができ、その結果、T細胞療法の有効性を増強することができる。実施形態のより詳細な情報は、Maら,Science 365,162-168(2019)に記載されており、前記参考文献は以参照により組み込まれる。
抗原/ワクチン刺激は、以下の実施形態によって実施することができる。一例として、方法は、腫瘍(例えば、固形腫瘍)を治療するために、T細胞(例えば、TIL、CAR T、TCR細胞)の有効量を、それを必要とする被検体に投与することと、T細胞を直接または間接的に活性化する薬剤の有効量を投与することと、を含む。実施形態では、薬剤は、T細胞が認識する抗原を含む。実施形態では、薬剤は、CARの細胞外ドメインが認識する可溶性薬剤を発現する提示細胞を含む。実施形態では、薬剤は、抗原に由来するワクチンを含む。例えば、薬剤はアルブミンに結合する抗原を含み、これにより、前記薬剤は例えばリンパ節中のT細胞を活性化してから、DCを活性化してT細胞の増幅を誘発することができる。
制御成分108の例には、自殺系(例えば、自殺遺伝子)、条件付き遺伝子発現系(例えば、lac、テトラサイクリンまたはガラクトース系)、および遺伝子調節系(例えば、Hif1a、NFAT、FOXP3および/またはNFkB)が含まれる。
図62は、免疫療法システム、例えば免疫療法システム102を示す。実施形態では、改変細胞集団は、機能性成分細胞および結合成分細胞の2種類を含む。機能性成分細胞は、腫瘍細胞を阻害することができる。実施形態では、機能性成分細胞は、腫瘍抗原(例えば、固形腫瘍抗原)に結合する結合分子を含む。例えば、結合分子は、固形腫瘍に結合するCARまたはTCRであるか、またはそれらを含む。実施形態では、結合成分細胞は、白血球抗原を標的とするCARを含む。実施形態では、結合成分細胞は、HIF VHL結合ドメインに連結されたIL12をコードする核酸配列を含む改変細胞、および/または2Aペプチドで連結されたIL6およびIFNγをコードする核酸配列を含む別の改変細胞を含む。
図62は、CAR T細胞と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の組み合わせのための例示的なプロセスを示す概略図である。本開示に記載の様々な方法を用いて、被検体のPBMCを入手し、WBCの抗原(例えば、CD19)を標的とするCAR Tを調製することができる。実施形態では、CAR T細胞は、図61に記載の結合成分細胞であってもよい。その後、被検体はリンパ球枯渇(lymphodeplete)を実施する可能性がある。様々な方法を用いてTILを調製することができる。方法の一例として、TIL 102を調製する。例えば、切除後、腫瘍転移部を24ウェルプレートで単細胞懸濁液に消化する。その後、これらの懸濁液/フラグメントをIL-2の存在下で培養する。実施形態では、IFNγ ELISAを用いて培地中に分泌されるIFNγを測定することにより、自家メラノーマ細胞(例えば、メラノーマ細胞株または新鮮に凍結された腫瘍消化液、利用できない場合はHLAにマッチした同種異系腫瘍細胞株のパネル)の認識について試験される。実施形態では、腫瘍反応性の選択ステップを省略することができる。その後、可溶性抗CD3モノクローナル抗体と高濃度のIL-2、照射した同種異系フィーダー細胞で刺激し、TIL培養物を治療レベルまで増幅する。TIL培養物を精製して生成物細胞を得た後、被検体におけるTILの増幅を増強し得るCAR T細胞を生成物細胞に注入する準備が整っている。TIL調製に関する情報は、国際出願第WO2018/081473およびWO2018/094167号、およびMolecular Oncology、第9巻、第10期、2015年12月、第1918-1935ページに記載されており、前記参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
T細胞が固形腫瘍を克服するためには、3つの理論的課題を解決する必要がある。1つ目の課題は、腫瘍を認識するT細胞を決定することである。1つの標的を特定することの代わりに、できるだけ多くの異種癌細胞を特定する必要がある。この点では、TIL(腫瘍浸潤性Tリンパ球)療法が有望であるように思われる。2つ目の課題は、腫瘍を認識するこれらの選別されたT細胞が、腫瘍微小環境への阻害を克服できるようにすることである。3つ目の課題は、腫瘍を認識し、微小環境への阻害を克服して十分に増幅した選別されたT細胞集団を進行した腫瘍と戦い、疾患の経過を逆転させることである。通常のTIL技術は、インビトロで大量に増幅されるが、コストが高く、サイクルが長い。コストが高すぎると、将来の薬価が高くなる可能性があり、サイクルが長すぎると、進行した癌患者が買えなくなる可能性があり、今後の治療への応用が課題となる。そこで、免疫療法システム102は、後者の2つの課題の解決に役立つ可能性がある。結合成分106は、被検体の免疫応答とTIL療法を結合でき、それにより、例えば、被検体のTILを増幅し、被検体中のTIL群を維持することでコストを削減し、TIL療法に関連するサイクルを短縮し、および/または腫瘍微小環境への阻害を克服することができる。
本開示は、血液癌(例えば、白血病、黒色腫およびリンパ腫)を治療するための組成物を記載する。血液癌の例には、慢性リンパ球性白血病(CLL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)が含まれる。組成物は、血液癌抗原(例えば、CD19、CD20およびBCMA)に結合するCARをコードするポリヌクレオチドをそれぞれ有する、少なくとも2群の改変細胞からなる改変細胞混合集団を含む。改変細胞混合集団における1群の改変細胞は、1つ以上の組換えタンパク質(例えば、IL-6、IL-12、IL-7、IL-15およびIFNγ)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。例えば、改変細胞混合集団は、CD19 CARをコードするポリヌクレオチド(例えば、図87A)を含む第1群の改変細胞、CD19 CARおよびIL-6をコードするポリヌクレオチドを含む第2群の改変細胞、CD19 CARおよびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含む第3群の改変細胞、およびCD19 CARおよびIFNγをコードするポリヌクレオチド(例えば、図87B)を含む第4群の改変細胞のうちの少なくとも1つを含む。これらの改変細胞群を混合して、改変細胞混合集団を得て、それを、B細胞白血病およびリンパ腫を有する被検体に投与することができる。実施形態では、改変細胞混合集団は、改変細胞混合集団を得るために、所定比率に基づいて混合することができる。所定比率は、被検体における1つ以上のサイトカインの発現量を制御するために使用され、それにより、被検体において制御可能で持続的かつ効率的なサイトカインの効果を達成すると同時に、細胞傷害性の効果が少なくなる。実施形態では、第1群、第2群、第3群および第4群の改変細胞の所定比率は、改変細胞混合集団において、第1群の改変細胞が第2群、第3群または第4群の改変細胞よりも多くなるように設定される。例えば、第1群の改変細胞と第2群、第3群または第4群の改変細胞の所定比率は、10:1である。実施形態では、所定比率は、1:1、10:1、100:1、1000:1、および104:1、並びにその範囲内の個々の数値、例えば、10:1、100:1または1000:1である。実施形態では、第2の所定比率は、10:1~1000:1である。実施形態では、第2の所定比率は、10:1~1:100である。実施形態では、第2の所定比率は、1:1~100:1である。
本開示は、固形腫瘍を治療するための組成物を記載する。組成物は、2つの改変細胞集団を含む。第1の改変細胞集団は、2つ以上の群の改変細胞を含む。改変細胞の1群は、第1のCAR(例えば、CD19、CD22、BCMA CAR)をコードするポリヌクレオチドを含み、改変細胞の少なくとも1つの他の群は、1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-6、IL12およびIFN)をコードするポリヌクレオチドか、または1つ以上のサイトカインおよび第1のCARをコードするポリヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のCARは、WBC抗原に結合する。例えば、第1の改変細胞集団は、CD19 CARをコードするポリヌクレオチド(例えば、図87A)を含む第1群の改変細胞と、CD19 CARおよびサイトカインをコードするポリヌクレオチド(例えば、図87の実施例2)を含む第2群の改変細胞とを含む。第1群の改変細胞および第2群の改変細胞を混合して、第1の改変細胞集団を得る。実施形態では、第1群の改変細胞および第2群の改変細胞は、第1の改変細胞集団において、第1群の改変細胞が第2群の改変細胞よりも多くなるように、第3の所定比率に基づいて混合される。例えば、第1群の改変細胞と第2群の改変細胞の第3の所定比率は、10:1である。実施形態では、第2の改変細胞集団は、固形腫瘍抗原に結合するCARを含む。実施形態では、第2の改変細胞集団は、1つ以上のサイトカインを発現しない。第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を混合して、改変細胞混合集団を得て、被検体に前記改変細胞混合集団を注入することができる。実施形態では、第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団は、第2の改変細胞集団が第1の改変細胞集団よりも多くなるように、第4の所定比率に基づいて混合され得る。例えば、第1の改変細胞集団と第2の改変細胞集団の第2の所定比率は、1:1未満であるが、1:10,000を超える。実施形態では、第4の所定比率は、1:1、1:1、1:10、1:100、1:1000および1:104、並びにその範囲内の個々の数値であり、1:10、1:100または1:1000が好ましい。実施形態では、第4の所定比率は、1:10~1:1000である。実施形態では、第2の所定比率は、1:10~1:100である。実施形態では、第2の所定比率は、1:1~1:100である。所定比率は、被検体における1つ以上のサイトカインの発現量を制御するために使用され、被検体において制御可能で持続的かつ効率的なサイトカイン効果を達成すると同時に、細胞傷害性を低下させる。
以下の例示的な実施形態および実施例を参照して、本開示をさらに説明する。これらの例示的な実施形態および実施例は、例示のみを目的として提供され、特に指定されていない限り、本発明を限定することを意図しない。したがって、本開示は、以下の例示的な実施形態および実施例に限定されると解釈されるべきではなく、本明細書に記載される示唆の結果として明らかになる一切の変形形態を包含するように解釈されるべきである。
例示的な実施形態
例示的な実施形態は以下のとおりである。
1、患者において改変細胞の増幅および/または維持に有効な改変細胞集団であって、少なくとも2つの異なる改変細胞、すなわち、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを含む第1の改変細胞と、腫瘍細胞などの標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを含む第2の改変細胞とを含む、改変細胞集団である。実施形態では、改変細胞は改変T細胞である。実施形態では、少なくとも2つの異なる改変細胞は、2つの異なる改変T細胞、2つの異なる改変免疫細胞、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、改変免疫細胞は、改変T細胞、DC細胞および/またはマクロファージを含む。
2、抗原結合ドメインが異なる抗原に結合する、実施形態1に記載の改変細胞集団。
3、改変細胞集団が、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを発現する第3の改変細胞をさらに含み、前記2つの異なる抗原結合ドメインが、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン及び標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメインであり、かつ2つの異なる抗原結合ドメインが同じ細胞上で発現される、実施形態1に記載の改変細胞集団。
4、改変細胞集団が、標的細胞を殺すための抗原結合ドメインを発現する改変細胞と、少なくとも2つの抗原結合ドメインを発現する改変細胞とを含み、前記2つの抗原結合ドメインが、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン及び標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメインであり、かつ2つの異なる抗原結合ドメインが同じ改変細胞上で発現される、実施形態1に記載の改変細胞集団。
5、改変細胞集団が、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインを発現する改変細胞と、少なくとも2つの抗原結合ドメインを発現する改変細胞とを含み、前記2つの抗原結合ドメインが、改変細胞を増幅および/または維持するための第1の抗原結合ドメイン及び標的細胞を殺すための第2の抗原結合ドメインであり、かつ2つの異なる抗原結合ドメインが同じ改変細胞上で発現される、実施形態1に記載の改変細胞集団。
6、改変細胞が、改変T細胞、改変NK細胞、改変マクロファージまたは改変樹状細胞である、実施形態1-5のいずれか一項に記載の改変細胞集団。
7、改変細胞を増幅および/または維持するための抗原結合ドメインがWBCの表面抗原に結合し、標的細胞を殺すための抗原結合ドメインが腫瘍抗原に結合する、実施形態1-6のいずれか一項に記載の改変細胞集団。
8、WBCがB細胞である、実施形態7に記載の改変細胞集団。
9、WBCの細胞表面抗原が、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である、実施形態7に記載の改変細胞集団。
10、固形腫瘍抗原が、tMUC1、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、KISS1R、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIII、B7-H3、EGFR、または表1にリストされているものの1つである、実施形態1-9のいずれか一項に記載の改変細胞集団。
11、WBCの細胞表面抗原が、CD19、CD20、CD22またはBCMAである、実施形態7に記載の改変細胞集団。
12、B細胞の細胞表面抗原がCD19であり、腫瘍抗原が、tMUC1、TSHR、GUCY2C、ACPP、CLDN18.2 (18.2)、PSMAまたはUPK2である、実施形態7に記載の改変細胞集団。
13、第1の抗原に結合する第1のCARを含む第1の細胞集団と、第2の抗原に結合する第2のCARを含む第2の細胞集団とを含む組成物であって、第2の抗原が腫瘍抗原であり、第1の抗原と第2の抗原が異なる抗原である、組成物。
14、第1の細胞集団が第2のCARを含まず、および/または第2の細胞集団が第1のCARを含まない、実施形態13に記載の組成物。
15、組成物が、第1のCARおよび第2のCARを含む第3の細胞集団をさらに含む、実施形態14に記載の組成物。
16、第2の細胞集団が第1のCARをさらに含み、第1の細胞集団が第2のCARを含まず、または第1の細胞集団が第2のCARをさらに含む、実施形態13に記載の組成物。
17、第2の細胞集団が第1のCARを含まず、第1の細胞集団が第2のCARを含む、実施形態13に記載の組成物。
18、固形腫瘍を標的とする細胞である第2の細胞集団の増幅を増強する方法であって、実施形態13-17のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、腫瘍抗原に関連するかまたは腫瘍抗原を発現する形態の癌を有する被検体に投与することを含む、第2の細胞集団の増幅を増強する方法。
19、実施形態13-17のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、腫瘍抗原に関連するかまたは腫瘍抗原を発現する形態の癌を有する被検体に投与することを含む、被検体におけるT細胞応答を増強するまたは癌を有する被検体を治療する方法。
20、細胞を、第1のCARをコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターおよび第2のCARをコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターと接触させて、実施形態13-17のいずれか一項に記載の組成物を得ることと、組成物の有効量を、腫瘍抗原に関連するかまたは腫瘍抗原を発現する形態の癌を有する被検体に投与することと、を含む、被検体における細胞の増幅を増強する方法。
21、細胞を、第1のCARをコードする第1の核酸配列を含む第1のベクターおよび第2のCARをコードする第2の核酸配列を含む第2のベクターと接触させて、実施形態13-17のいずれか一項に記載の組成物を得ることと、組成物の有効量を、腫瘍抗原に関連するかまたは腫瘍抗原を発現する形態の癌を有する被検体に投与することと、を含む、それを必要とする被検体におけるT細胞応答を増強するまたは癌を有する被検体を治療する方法。
22、実施形態13-17のいずれか一項に記載の組成物の第1の細胞集団の有効量を投与することと、第2の細胞集団の有効量を投与することと、を含む、被検体における細胞の増幅を増強する方法。
23、第1のベクターおよび第2のベクターが、レンチウイルスベクターを含む、実施形態20-22のいずれか一項に記載の方法。
24、第1の抗原または第2の抗原が、白血球(WBC)の表面分子、腫瘍抗原、または固形腫瘍抗原であるか、またはそれらを含む、実施形態13-23のいずれか一項に記載の組成物または方法。
25、細胞が、改変T細胞、改変NK細胞、改変マクロファージまたは改変樹状細胞である、実施形態13-24のいずれか一項に記載の組成物または方法。
26、WBCが、顆粒球、単球またはリンパ球である、実施形態24に記載の組成物または方法。
27、WBCがB細胞である、実施形態26に記載の組成物または方法。
28、WBCの細胞表面分子が、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である、実施形態27に記載の組成物または方法。
29、WBCの細胞表面分子が、CD19、CD20、CD22またはBCMAである、実施形態26に記載の組成物または方法。
30、WBCの細胞表面分子がCD19である、実施形態26に記載の組成物または方法。
31、腫瘍抗原が固形腫瘍抗原である、実施形態26に記載の組成物または方法。
32、固形腫瘍抗原が、tMUC1、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、KISS1R、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIII、B7-H3、CLDN18.2またはEGFRである、実施形態26に記載の組成物または方法。
33、固形腫瘍抗原がtMUC1であるか、またはtMUC1を含む、実施形態26に記載の組成物または方法。
34、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む、実施形態13-33のいずれか一項に記載の組成物または方法。
35、共刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドの細胞内ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態34に記載の組成物または方法。
36、第2のCARの共刺激ドメインが、4-1BBの細胞内ドメインを含むか、またはそれであり、第2のCARの抗原結合ドメインがtMUC1に結合し、および/または第1のCARの抗原結合ドメインがCD19に結合し、第2のCARの共刺激ドメインが、CD28の細胞内ドメインを含むか、またはそれである、実施形態34に記載の組成物または方法。
37、第1の細胞集団および/または第2の細胞集団が、ドミナントネガティブ形態のPD-1をさらに含む、実施形態13-36のいずれか一項に記載の組成物または方法。
38、第1の細胞集団が、第1のCARおよびドミナントネガティブ形態のPD-1をコードするベクターを含む、実施形態37に記載の組成物または方法。
39、第1のCARが、tMUC1に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含み、第2のCARが、CD19に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含む、実施形態13-38のいずれか一項に記載の組成物または方法。
40、第1のCARが配列番号5を含み、第2のCARが配列番号70を含む、実施形態13-39のいずれか一項に記載の組成物または方法。
41、第2の細胞集団が、第1のCARおよび治療薬をコードするレンチウイルスベクターを含み、第1の細胞集団が、第2のCARおよびドミナントネガティブ形態のPD-1をコードするレンチウイルスベクターを含む、実施形態13-40のいずれか一項に記載の組成物または方法。
42、第1の細胞集団が、第1のCARおよび治療薬を含み、第2の細胞集団が、第2のCARおよびドミナントネガティブ形態のPD-1を含む、実施形態13-41のいずれか一項に記載の組成物または方法。
43、治療薬が、サイトカインを含むか、またはそれである、実施形態41または42に記載の組成物または方法。
44、サイトカインが、IL6および/またはINFγである、実施形態43に記載の組成物または方法。
45、CD19に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含むCARを一つ含む第1のT細胞集団の有効量を被検体に投与することにより、被検体における第1のT細胞集団の増幅を増強することと、tMUC1に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含むCARをもう一つ含む第2のT細胞集団の有効量を被検体に投与することと、を含む、方法。
46、第1の細胞集団が別のCARをさらに含み、前記CARがtMUC1に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含む、実施形態45に記載の方法。
47、第2の細胞集団が、CD19に結合するscFvを含まない、実施形態45に記載の方法。
48、第1の細胞集団が、tMUC1に結合するscFvを含まない、実施形態45に記載の方法。
49、WBC抗原を標的とするCAR T細胞を被検体に投与することと、
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を被検体に投与することと、を含む、癌を有する被検体の治療を増強する方法。
50、WBC抗原を標的とするCAR T細胞を被検体に投与することと、
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を被検体に投与することと、を含む、癌を有する被検体の治療を増強する方法。
51、TILが、
(i)被検体から切除された腫瘍から第1のTIL集団を得るステップと、
(ii)IL-2を含む細胞培地で第1のTIL集団を培養して第1の増幅を行い、第2のTIL集団を産生するステップと、
(iii)第2のTIL集団の細胞培地に、追加のIL-2、OKT-3および抗原提示細胞(APC)を補充することにより、第2の増幅を行い、第3のTIL集団を産生するステップと、ここで、第3のTIL集団の数が第2のTIL集団の数よりも少なくとも100倍多くなり、かつ第3のTIL集団を得るために第2の増幅を少なくとも14日間行い、第3のTIL集団が、第2のTIL集団と比較して増加したエフェクターT細胞および/または中央記憶T細胞亜集団を含むTILの治療集団であり、
(iv)第3のTIL集団の治療上有効な投与量を被検体に投与するステップと、によって調製される、実施形態49または50に記載の方法。
52、前記方法は、ステップ(iv)の前に、第3のTIL集団の細胞培地に追加のIL-2、追加のOKT-3および追加のAPCを補充することによって追加の第2の増幅を行うステップをさらに含み、ここで、追加の第2の増幅は、ステップ(iii)で得られたTIL治療集団よりも大きなものを得るために、少なくとも14日間行われ、より大きなTIL治療集団は、第3のTIL集団に対して増加したエフェクターT細胞および/または中央記憶T細胞亜集団をさらに含む、実施形態51に記載の方法。
53、ステップ(ii)の後、実施形態51の第2の増幅の前に、細胞を細胞培地から取り出し、貯蔵媒体に凍結保存する、実施形態51に記載の方法。
54、実施形態51の第2の増幅の前に細胞を解凍する、実施形態53に記載の方法。
55、ステップ(iii)が、TILTIL治療集団において治療上有効な投与量のための十分なTILを得るために、1~4回繰り返される、実施形態51に記載の方法。
56、APCが、末梢血単核細胞(PBMC)である、実施形態49-55のいずれか一項に記載の方法。
57、エフェクターT細胞および/または中央記憶T細胞が、第3の細胞集団におけるエフェクターT細胞および/または中央記憶T細胞と比較して、CD27の発現、CD28の発現、より長いテロメア、CD57の発現の増加およびCD56の発現の低下からなる群から選択される1つ以上の特性を示す、実施形態49-55のいずれか一項に記載の方法。
58、エフェクターT細胞および/または中央記憶T細胞が、第3の細胞集団におけるエフェクターT細胞および/または中央記憶T細胞と比較して、CD57の発現の増加およびCD56の発現の低下を示す、実施形態49-55のいずれか一項に記載の方法。
59、癌が、黒色腫、子宮頸癌、頭頸部癌、膠芽腫、卵巣癌、肉腫、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌および非小細胞肺癌からなる群から選択される、実施形態49-55のいずれか一項に記載の方法。
60、CARが、CD19、CD20、CD22、またはBCMAに結合する、実施形態49-59のいずれか一項に記載の方法。
61、CAR T細胞とTILの両方を注入した被検体におけるTILの数が、TILを注入した被検体におけるTILの数よりも多い、実施形態49-60のいずれか一項に記載の方法。
62、CAR T細胞が、図63の改変細胞2および改変細胞1を含む、実施形態49-60のいずれか一項に記載の方法。
63、腫瘍抗原を発現する形態の癌を有する被検体に組成物の有効量を投与することを含み、
前記組成物が、第1の抗原に結合する第1のCARを含む第1の細胞集団と、第2の抗原に結合する第2のCARを含む第2の細胞集団とを含み、ここで、第2の抗原が腫瘍抗原であり、かつ第1の抗原と異なる、それを必要とする被検体における細胞増幅を増強するまたは癌を有する被検体を治療する方法。
64、細胞が、T細胞、NK細胞または樹状細胞である、実施形態63に記載の方法。
65、第1の抗原が、白血球(WBC)の細胞表面分子、腫瘍抗原、または固形腫瘍抗原を含む、実施形態63に記載の方法。
66、WBCが、顆粒球、単球またはリンパ球である、実施形態65に記載の方法。
67、リンパ球がB細胞である、実施形態66に記載の方法。
68、WBCの細胞表面分子が、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である、実施形態65に記載の方法。
69、WBCの細胞表面分子が、CD19、CD20、CD22またはBCMAである、実施形態65に記載の方法。
70、WBCの細胞表面分子がCD19である、実施形態65に記載の方法。
71、腫瘍抗原が固形腫瘍抗原である、実施形態63に記載の方法。
72、固形腫瘍抗原が、tMUC1、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、KISS1R、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIII、B7-H3、CLDN18.2またはEGFRである、実施形態71に記載の方法。
73、固形腫瘍抗原がtMUC1を含む、実施形態71に記載の方法。
74、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む、実施形態63に記載の方法。
75、共刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に結合するリガンドの細胞内ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態74に記載の方法。
76、第1のCARが、CD19に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含み、第2のCARが、tMUC1に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメイン、およびCD3ζドメインを含む、実施形態63に記載の方法。
77、第1のCARの抗原結合ドメインが、配列番号5を含み、第2のCARの抗原結合ドメインが、配列番号70を含む、実施形態63に記載の方法。
78、第2の細胞集団が、第2のCARおよびドミナントネガティブ形態のPD-1をコードするレンチウイルスベクターを含む、実施形態63に記載の方法。
79、第1の細胞集団が、第1のCARおよび治療薬をコードするレンチウイルスベクターを含む、実施形態63に記載の方法。
80、治療薬がサイトカインを含む、実施形態79に記載の方法。
81、サイトカインが、IL6および/またはINFγである、実施形態80に記載の方法。
82、サイトカインが、IL6、IL12、IL7、IL15、TNF-αまたはIFNγのうちの少なくとも1つである、実施形態80に記載の方法。
83、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞集団を得ることにより、改変細胞混合集団を得ることを含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なる、インビトロで細胞を調製するための方法。
84、被検体または健康なドナーから細胞を得ることと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて、改変細胞混合集団を得ることと、被検体に有効量の改変細胞混合集団を投与することと、を含み、ここで第1の抗原が第2の抗原と異なり、改変細胞混合集団の有効量を投与した被検体における細胞増幅のレベルが、第2のベクターではなく第1のベクターと接触する改変細胞集団の有効量を投与した被検体における細胞増幅のレベルよりも高い、癌を有する被検体における細胞増幅を増強するための方法。
85、被検体または健康なドナーから細胞を得ることと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞混合集団を得ることと、被検体に有効量の改変細胞混合集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なる、癌を有する被検体を治療するための方法。
86、被検体または健康なドナーから細胞を得ることと、細胞を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(1)第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む(2)第2のベクターと接触させて改変細胞混合集団を得ることと、被検体に有効量の改変細胞混合集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なり、かつ有効量の改変細胞混合集団を投与した被検体における腫瘍成長の阻害レベルが、第1のベクターではなく第2のベクターと接触する改変細胞集団の有効量を投与した被検体における腫瘍成長の阻害レベルよりも高い、癌を有する被検体の治療を増強するための方法。
87、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを第1の細胞集団に導入することと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを第2の細胞集団に導入することと、第1の細胞集団および第2の細胞集団を別々に培養することと、を含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なる、インビトロで細胞を調製するための方法。
88、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを、第1の細胞集団に導入して第1の改変細胞集団を得ることと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを、第2の細胞集団に導入して第2の改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なり、かつ第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における細胞増幅のレベルが、第1の改変細胞集団ではなく第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における細胞増幅のレベルよりも高い、癌を有する被検体における細胞増幅を増強するための方法。実施形態では、第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団は、同時または順に投与される。
89、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを、第1の細胞集団に導入して第1の改変細胞集団を得ることと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを、第2の細胞集団に導入して第2の改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なる、癌を有する被検体を治療するための方法。実施形態では、第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団は、同時または順に投与される。
90、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを、第1の細胞集団に導入して第1の改変細胞集団を得ることと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを、第2の細胞集団に導入して第2の改変細胞集団を得ることと、被検体に有効量の第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団を投与することと、を含み、ここで、第1の抗原が第2の抗原と異なり、かつ第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における腫瘍成長の阻害レベルが、第1の改変細胞集団ではなく第2の改変細胞集団の有効量を投与した被検体における腫瘍成長の阻害レベルよりも高い、癌を有する被検体の治療を増強するための方法。実施形態では、第1の改変細胞集団および第2の改変細胞集団は、同時または順に投与される。
91、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを第1の細胞集団に導入することと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを第2の細胞集団に導入することと、第2の抗原を発現する細胞を、第1の細胞集団および第2の細胞集団と接触させることと、T細胞応答のレベルを測定することと、を含み、ここで、第1の細胞集団および第2の細胞集団と接触する細胞におけるT細胞応答のレベルが、第1の細胞集団ではなく第2の細胞集団と接触する細胞におけるT細胞応答のレベルよりも高い、T細胞応答を増強するための方法。
92、細胞集団を、第1の抗原に結合する第1の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクター、および第2の抗原に結合する第2の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターと接触させて改変細胞混合集団を得ることと、第2の抗原を発現する細胞を、改変細胞混合集団と接触させることと、T細胞応答のレベルを測定することと、を含み、ここで、改変細胞混合集団と接触した細胞におけるT細胞応答のレベルが、第1のベクターではなく第2のベクターと接触した細胞集団と接触した細胞におけるT細胞応答のレベルよりも高い、T細胞応答を増強するための方法。
93、細胞が、T細胞、NK細胞または樹状細胞である、実施形態83-92のいずれか一項に記載の方法。実施形態では、細胞はT細胞である。
94、第1の抗原結合分子が、WBCの細胞表面分子に結合する、実施形態83-93のいずれか一項に記載の方法。
95、WBCが、顆粒球、単球またはリンパ球である、実施形態94に記載の方法。
96、WBCがB細胞である、実施形態94に記載の方法。
97、WBCの細胞表面分子が、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である、実施形態94に記載の方法。
98、WBCの細胞表面分子が、CD19、CD20、CD22またはBCMAである、実施形態94に記載の方法。
99、WBCの細胞表面分子がCD19である、実施形態94に記載の方法。
100、第2の抗原結合分子が、固形腫瘍抗原に結合する、実施形態83-99のいずれか一項に記載の方法。
101、固形腫瘍抗原が、tMUC1、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、KISS1R、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIII、CLDN18.2またはEGFRである、実施形態100に記載の方法。
102、第1の結合分子および第2の結合分子がCARである、実施形態83-101のいずれか一項に記載の方法。
103、CARが、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、かつ細胞外ドメインが腫瘍抗原に結合する、実施形態102に記載の方法。
104、細胞内ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含む共刺激ドメインを含む、実施形態103に記載の方法。
105、細胞内ドメインが、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、実施形態105に記載の方法。
106、第1の結合分子がCARであり、第2の結合分子がTCRである、実施形態83-101のいずれか一項に記載の方法。
107、T細胞が、改変T細胞受容体(TCR)を含む、実施形態106に記載の方法。
108、TCRが、患者において自発的に発生した腫瘍特異的T細胞に由来する、実施形態106に記載の方法。
109、TCRが腫瘍抗原に結合する、実施形態106に記載の方法。
110、腫瘍抗原が、CEA、gp100、MART-1、p53、MAGE-A3またはNY-ESO-1を含む、実施形態109に記載の方法。
111、TCRが、TCRγおよびTCRδ鎖、TCRαおよびTCRβ鎖、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態106に記載の方法。
112、第2の細胞集団がTILに由来する、実施形態106に記載の方法。
113、改変細胞集団が、第1の結合分子を含む細胞と、第2の結合分子を含む細胞とを含む、実施形態83-112のいずれか一項に記載の方法。
114、改変細胞集団が、第1の結合分子を含む細胞と、第2の結合分子を含む細胞と、第1の結合分子と第2の結合分子の両方を含む細胞とを含む、実施形態83-112のいずれか一項に記載の方法。
115、T細胞応答が、CARのコピー数および/または放出されるサイトカインの量によって測定される、実施形態83-112のいずれか一項に記載の方法。実施形態では、放出されるサイトカインが、IL-6および/またはIFN-γである。
116、T細胞応答が、サイトカイン放出、細胞増幅および/または活性化レベルを含む、実施形態83-112のいずれか一項に記載の方法。
117、第1のベクターが、IL-6、IFN-γまたはそれらの組み合わせをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態83-112のいずれか一項に記載の方法。
118、第1のベクターが、IL-12をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態83-112のいずれか一項に記載の方法。
119、ポリヌクレオチドが、NFATおよび/またはVHLをコードするポリヌクレオチドを含む、実施形態116および117のいずれか一項に記載の方法。
120、改変細胞集団が、第1の結合分子およびIL-6、IFNγまたはそれらの組み合わせを発現する細胞と、第2の結合分子を発現する細胞と、第1の結合分子および第2の結合分子を発現する細胞と、および/または第1の結合分子およびIL-12を発現する細胞と、を含む、実施形態83-119のいずれか一項に記載の方法。
121、改変細胞集団が、第2の結合分子およびIL-6、IFNγまたはそれらの組み合わせを発現する細胞と、第2の結合分子を発現する細胞と、第1の結合分子および第2の結合分子を発現する細胞と、および/または第1の結合分子およびIL-12を発現する細胞と、を含む、実施形態83-120のいずれか一項に記載の方法。
122、改変細胞集団が、第2の結合分子およびIL-6、IFNγまたはそれらの組み合わせを発現する細胞と、第2の結合分子を発現する細胞と、第1の結合分子および第2の結合分子を発現する細胞と、および/または第2の結合分子およびIL-12を発現する細胞と、を含む、実施形態83-121のいずれか一項に記載の方法。
123、改変細胞集団が、ドミナントネガティブ形態のPD-1を発現する細胞を含む、実施形態83-122のいずれか一項に記載の方法。
124、第1の抗原結合ドメイン、第2の抗原結合ドメイン、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを含み、ここで、第1の抗原結合ドメインが第1の抗原を認識し、第2の抗原結合ドメインが第2の抗原を認識し、第1の抗原が第2の抗原と異なる、二重特異性キメラ抗原受容体。
125、第1の抗原および第2の抗原が、同じ細胞上で発現しない、実施形態124に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
126、第1の抗原が血液成分の抗原であり、第2の抗原が固形腫瘍の抗原である、実施形態124または125に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
127、第1の抗原がCD19であり、第2の抗原が腫瘍関連MUC1である、実施形態124-126のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
128、第1の抗原結合ドメインが、配列番号5または6のアミノ酸配列を含む、実施形態124-127のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
129、第2の抗原結合ドメインが、配列番号70、71、72、79、80または81のアミノ酸配列のうちの1つを含む、実施形態124-128のいずれか一項に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
130、CARが、表5に示すtanCARのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態124に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
131、第1の結合ドメインが非必須組織抗原に結合し、第2の結合ドメインが腫瘍組織抗原に結合する、実施形態124に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。実施形態では、第1の結合ドメインが、TSHRまたはGUCY2Cに結合する。実施形態では、第2の結合ドメインが、tMUC1、MAGE-E1、または上皮腫瘍抗原(ETA)に結合する。
132、第1の結合ドメインが組織特異的抗原に結合し、第2の結合ドメインが、2つ以上の組織で発現される抗原に結合する、実施形態124に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。実施形態では、第1の結合ドメインが、TSHRまたはPRLRに結合する。実施形態では、第2の結合ドメインが、tMUC1、MAGE-E1またはETAに結合する。
133、第1の結合ドメインが正常組織抗原に結合し、第2の結合ドメインが、腫瘍組織で発現される抗原に結合する、実施形態124に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。実施形態では、第1の結合ドメインが、ACPP、TSHR、GUCY2C、UPK2、CLDN18.2、PSMA、DPEP3、CXCR5、B7-H3、MUC16、SIGLEC-15、CLDN6、Muc17、PRLRまたはFZD10に結合する。実施形態では、第2の結合ドメインが、tMUC1、MAGE-E1またはETAに結合する。
134、第1の結合ドメインが、非悪性細胞で発現される抗原に結合し、第2の結合ドメインが、対応する非悪性細胞で発現されずに腫瘍細胞で発現される抗原に結合する、実施形態123に記載の二重特異性キメラ抗原受容体。
135、実施形態123-134のいずれか一項に記載の二重特異性CARを含む、細胞。
136、実施形態123-134のいずれか一項に記載の二重特異性CARをコードする、核酸。
137、実施形態135に記載の細胞の有効量を投与することを含む、T細胞応答を増強する、癌の治療を増強する、被検体における癌を治療する、腫瘍を有する被検体を治療する、または腫瘍の成長を阻害する方法。
138、それを必要とする被検体の治療における、実施形態1-135のいずれか一項に記載の細胞、二重特異性CAR、改変細胞集団、組成物または方法の用途。
139、被検体が癌を有する、実施形態136に記載の細胞、二重特異性CAR、改変細胞集団、組成物または方法の用途。
<実施例1.二重特異性CAR>
各CAR分子をコードするレンチウイルスベクターを産生し、かつT細胞でトランスフェクトし、その詳細は以下のとおりである。細胞培養、細胞傷害性Tリンパ球のアッセイの構築に関する技術は、「Control of large,established tumor xenografts with genetically retargeted human T cells containing CD28 and CD137 domains」、PNAS、2009年3月3日、第106巻第9期、第3360-3365ページ、および「Chimeric Receptors Containing CD137 Signal Transduction Domains Mediate Enhanced Survival of T Cells and Increased Antileukemic Efficacy In Vivo,」 Molecular Therapy、2009年、第17巻第8期、第1453-1464ページに記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
0日目に、健康なボランティアから末梢血を抽出し、選別してCD3+ T細胞を収集した。1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを収集したCD3+ T細胞に加えた。1日目に、CD19 CAR(MOI=15;CARの結合ドメインが配列番号5)を含むベクターと、TSHR CAR(MOI=92;CARの結合ドメインが配列番号8)を含むベクターと、TSHR-CD19二重特異性CAR(MOI=92、CARの結合ドメインが配列番号435)を含むベクターを用いて活性化したCD3+ T細胞をトランスフェクトした。より多くの構造および配列の情報を図7および表5に提供する。2日目に、培地を交換した。レンチウイルスを除去し、細胞を新鮮な培地に再懸濁した。5日目に、CAR発現のフロー検出を行った。様々な発現率(CD19 CAR 17.45%、TSHR CAR 76.84%、TSHR-CD19二重特異性CAR 20.59%)を観察した。さらに、0日目に、健康なボランティアから末梢血を抽出し、選別してCD3+ T細胞を収集した。1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを収集したCD3+ T細胞に加えた。1日目に、CD19 CAR(MOI=2;CARの結合ドメインが配列番号5)を含むベクターと、tMUC1 CAR(MOI=30;CARの結合ドメインが配列番号70)を含むベクターと、tMUC1-CD19二重特異性CAR(MOI=95;CARの結合ドメインが配列番号437)を含むベクターと、CLDN18.2-CD19(18.2-CD19)二重特異性CAR(MOI=180、CARの結合ドメインが配列番号439)を含むベクターを用いて活性化したCD3+ T細胞をトランスフェクトした。より多くの配列情報を図10、12、13および表5に提供する。2日目に、培地を交換した。レンチウイルスを除去し、細胞を新鮮な培地に再懸濁した。5日目に、CAR発現のフロー検出を行った。様々な発現率(CD19CAR 68.28%、tMUC1CAR 31.58%、tMUC1CD19二重特異性CAR 28.11%および35.11%)を観察した。
図8に示すように、0.2×10または1×10個のCAR T細胞と1×10個のNalm6またはB-CPAB-B腫瘍細胞を24時間共培養し、上澄み液を収集した。IFNγの放出を検出した。Nalm6はCD19陽性腫瘍細胞であり、B-CPAB-BはTSHR陽性腫瘍細胞である。図8の左図に示すように、CD19 CAR T細胞は、B-CPAB-Bに応答して放出されるIFNγと比較して、Nalm6に応答してより多くのIFNγを放出した。図8の中図に示すように、TSHR CAR T細胞は、Nalm6に応答して放出されるIFNγと比較して、B-CPAB-Bに応答してより多くのIFNγを放出した。右図に示すように、二重特異性CAR T細胞は、Nalm6とB-CPAB-Bのそれぞれに応答して、大量のIFNγを放出した。これらの結果から、CD19陽性細胞またはTSHR陽性細胞の両方がいずれも二重特異性CAR T細胞を刺激し得ることがわかった。10個のCAR T細胞および10個のNalm6またはB-CPAB-B腫瘍細胞を24時間共培養した後、フローサイトメトリーによってCAR T CD8陽性細胞のCD137発現を検出した。図9の左図は、腫瘍細胞と共培養していないCAR T細胞のCD137発現を示し、中図と右図は、Nalm6またはB-CPAB-Bと共培養したCAR T細胞のCD137発現を示した。結果から、Nalm6とB-CPAB-Bの両方はいずれも二重特異性CAR T(TSHR-CD19二重特異性CAR)を活性化し得ることがわかった。同様のサイトカイン放出アッセイを行うと、Nalm6とCLDN18.2を発現する細胞の両方がいずれも二重特異性CAR T(CLDN18.2-CD19二重特異性CARまたはCLDN18.2-19tan CAR)細胞を活性化し得ることを示した(図12-15)。
図12は、CAR分子をコードするベクター構築物の概略構造を示す。図13は図12に示されるCAR分子の発現を示す。CD19 CARにはヒト化抗体が含まれるので、18.2 CARはマウス抗体である。そのため、検出にはヒトCAR抗体とマウスCAR抗体を使用した。二重特異性CARを用いて、この2つの抗体の発現率を検出し、前記発現率が1:1に近いので、二重特異性CARの発現が期待通りであったことがわかった。図14は、共培養したCAR T細胞と腫瘍細胞のIFNγ放出結果を示す。0.2×10または1×10個のCAR T細胞と、1×10個の293TまたはKATO III-18.2+またはNalm-6細胞とを共培養して実験を行った。24時間後、上澄み液を収集し、IFN-γを検出した。Nalm-6はCD19 T細胞であり、KATO III-18.2+は、CLDN18.2を過剰発現する細胞であり、293Tは、CD19およびCLDN18.2を発現しないダブルネガティブ細胞である。図に示すように、KATOIII-18.2+細胞と共培養した場合、18.2 CAR Tに明らかなIFN-γの放出が見られ、これにより、KATOIII-18.2+が18.2 CAR T細胞によって認識され、かつIFN-γを放出して標的細胞を殺傷できることがわかり、Nalm-6も、CD19 CAR T細胞によって認識され、IFN-γを放出して標的細胞を殺傷することができ、KATOIII-18.2+およびNalm-6を共培養すると、18.2-CD19二重特異性CAR(18.2-19tan CAR)は、明らかなIFN-γの放出が見られた。さらに、Nalm-6は18.2 CAR T細胞からのIFN-γの放出を刺激することができず、CD19 CAR T細胞はKATO III-18.2+によってIFN-γの放出を刺激することができなかったから、この2つのCAR T細胞は特異的であることがわかった。要するに、18.2-CD19二重特異性CAR T細胞は、18.2とCD19陽性の標的細胞を特異的に認識し、かつIFN-γを放出して標的細胞を殺傷することができる。
図15はCAR T細胞と腫瘍細胞を共培養したCD137発現を示したフローサイトメトリーアッセイの結果を示す。1×10個のCAR T細胞と1×10個の293T-WTまたはKATOIII-18.2+またはNalm-6細胞を共培養した。48時間後、フローサイトメトリーによってCAR T CD8+細胞のCD137発現を検出した。左列は、293Tと共培養したCAR T細胞のCD137発現を示す。CD19 CAR群、18.2 CAR群および18.2-19 tan CAR群では、CD19 CARの発現が存在しない。293Tは特異的抗原発現を有さず、CAR T細胞を活性化できないことがわかる。中列は、CAR T細胞を、18.2タンパク質を高発現するKATO III-18.2+細胞と共培養したものである。18.2 CAR群では、CD137の発現率は8.77%であり、18.2-19二重特異性CAR群では、CD137の発現率は6.36%である。CD19 CAR群では、CD137の発現が観察されなかった。18.2-CAR Tと18.2-CD19二重特異性CAR Tは、KATOIII-18.2+における18.2タンパク質を認識して活性化したが、CD19 CAR Tはしなかった。右列は、CAR T細胞と、CD19 CAR T細胞によって特異的に認識して活性化されるCD19+細胞であるNalm-6細胞を共培養したものである。結果から、CD19 CAR群でのCD137の発現率は11.14%、18.2-19二重特異性CAR群でのCD137の発現率は10.55%、18.2 CAR群での発現率は検出できなかったことがわかった。CD19 CARと18.2-CD19二重特異性CARは、Nalm-6によって活性化され得るが、18.2 CARはNalm-6を活性化できなかった。要するに、結果から、18.2-CD19二重特異性CAR T細胞は、18.2抗原およびCD19抗原を特異的に認識できることがわかった。CD137はT細胞の活性化のためのマーカータンパク質であるため、CAR T細胞と基質標的細胞を共培養した後、CAR T細胞のCD137のアップレギュレーションレベルによって、CAR T細胞が活性化されているかどうかを決定することができる。
MUC1(tMUC1)のグリコシル化異常など、多くの腫瘍でグリコシル化異常が見られることが知られている。tMUC1に結合するCARは、5E5抗体に基づくscFvを含み得る。多くの腫瘍は、特定の特徴的な標的を特異的に発現する。腫瘍マーカーの傷害およびその対応する癌種に関するより多くの情報を表3に示す。例としては、リンカーで連結された2つのscFvが、2つのscFvを含むタンデムCAR(tanCAR)を形成する。
Figure 2022531814000006
0日目に、健康なボランティアから末梢血を抽出した。CD3+ T細胞をpan Tキットで選別し、3:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを用いて活性化した。1日目に、活性化したCD3+ T細胞を感染させた。表4に基づくベクターで複数の細胞群(各群1.00E+06個のT細胞)を感染させ、残りの細胞をNT(トランスフェクトなし)とした。2日目に、レンチウイルスおよびダイナビーズを除去し、培地を交換した。6日目に、フローサイトメトリーアッセイにより、各群のCAR T細胞のCAR比率と細胞表現型を測定した。抗ACPP抗体はヒト化抗体、抗MUC1抗体はマウス抗体であるため、これら2つのscFvの発現を検出するために、それぞれウサギ抗ヒトCAR抗体とウサギ抗マウスCAR抗体を用いた。7日目に、表4に基づいて実験を行った。24時間完全に活性化した後、サンプルをフロー染色した。上澄み液を収集してサイトメトリービーズアレイ(CBA)の検出に用い、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)染色を行い、増殖を観察した。細胞を蛍光基質細胞と共培養し、蛍光基質を持つ細胞の生存率を観察して殺傷効果を決定した。
Figure 2022531814000007
図66は、フローサイトメトリーアッセイを使用した、CAR T細胞およびtanCAR T細胞におけるいくつかのマーカーの発現を示すヒストグラムを提供する。NT、6917、6921、2529、2530、2533、2534と基質細胞(MCF-7、PC3-acpp、293T細胞)を24時間共培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。CAR T細胞を3つの基質細胞(293T、MCF-7、PC3-acpp)と24時間共培養した。CAR T細胞の活性化後、フローサイトメトリーアッセイを行った。図66では、縦座標はそれぞれCAR+CD137+細胞(CAR+細胞の合計)およびCAR+CD25+(CAR+細胞の合計)である。CD137とCD25の発現から、4種類のtanCAR細胞が対応する基質細胞によって効果的に活性化され得ることがわかった。CAR T細胞を基質細胞(293T、MCF-7およびPC3-acpp)と24時間共培養した後、フローサイトメトリーによってCD40Lの発現の統計分析を行った。4種類のtanCAR細胞がCD40Lを発現し、これらはCD40+細胞、およびB細胞、活性化単球やDCなどの免疫系細胞を活性化することができる。
図67は、CAR T細胞およびtanCAR T細胞のサイトカイン放出を示すヒストグラムを提供する。NT、6917、6921、2529、2530、2533および2534を基質細胞(MCF-7、PC3-acpp、293T細胞)と24時間共培養24し、8日目にサイトカイン放出を測定した。
図68は、対応する基質細胞で5日間刺激した後の、各群の細胞の増幅を示す。対照群と比較して、tanCAR群は、これら二つの基質細胞に応答して顕著な増幅を示した。基質細胞(MCF-7、PC3-acpp、293T細胞)と5日間共培養した後、12日目に6917、6921、2529、2530、2533、2534およびNTの増殖を測定した。
図69は、殺傷アッセイの結果を示す。その結果、6917がMCF-7を阻害し、6921がPC3-ACPPを阻害することがわかった。4群のtanCAR T細胞は、この2つの基質細胞を殺した。NTの実験結果は陰性であった。対照は腫瘍細胞のみを含んでいた。基質細胞と5日間共培養した後、6917、6921、2529、2530、2533、2534およびNT細胞の殺傷アッセイを行った。
図70は、フローサイトメトリーアッセイを使用した、他のCAR T細胞およびtanCAR T細胞におけるいくつかのマーカーの発現およびサイトカイン放出を示すヒストグラムを提供する。2407、163および2517をMCF-7、KATO3+および293T細胞と24時間共培養し、8日目にサイトカイン放出アッセイを行った。TanCAR 2517は、MCF-7とKATO3+基質細胞の両方で活性化され、その強度と割合が単一のCARに近いものであった。対応するCAR T細胞を基質細胞(293T、MCF-7およびKATO3+)と24時間共培養し、フローサイトメトリーによってCD40Lの発現を検出した。
図71は、基質細胞に応答した、様々なCAR T細胞およびtanCAR T細胞のサイトカイン放出を示す。実験方法および実験設計は、上記の実験と同様であった。
Figure 2022531814000008

Figure 2022531814000009

Figure 2022531814000010

Figure 2022531814000011

Figure 2022531814000012

Figure 2022531814000013

Figure 2022531814000014
Figure 2022531814000015
<実施例2.患者におけるCAR T細胞増幅および抗腫瘍活性>
臨床研究は、いくつかの固形腫瘍マーカーの特異的CAR/4-1BB/CD3-ζを発現するように改変された自己T細胞を患者に注入することの安全性と治療効果を評価するために設計された。本研究の第1群では、患者には、固形腫瘍マーカーの特異的CAR T細胞のみが投与された。固形腫瘍マーカーはTSHRおよびtMuc1を含む。第2群では、患者には、CD19および固形腫瘍抗原(例えば、TSHR、tMUC1またはGUCY2C)に向けられたCAR T細胞が投与された。患者からT細胞を得て、前記T細胞を改変して患者に注入した。第1群と第2群2からの患者のT細胞応答を測定し、試験が実施された病院によって承認された以下の手段を用いて比較した。すべての患者には、書面によるインフォームドコンセントが提供された。これらの患者の情報は、以下の表9中(SD:安定した疾患;PD:進行性疾患;PR:部分寛解;CR:完全寛解;NR:応答なし)に提供される。
患者からPBMCを得た。様々なレンチウイルスベクターを生成した後、それらをT細胞にトランスフェクトし、さらに前記T細胞を数日間培養した後、共培養してアッセイを行った。より詳細な情報は、以下の表7、9および10に記載されている。細胞培養、細胞傷害性Tリンパ球のアッセイ構築に関連する技術は、「Control of large, established tumor xenografts with genetically retargeted human T cells containing CD28 and CD137 domains」、PNAS、2009年3月3日、第106巻第9号、3360-3365に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの方法を使用してCAR T細胞を生成する。患者001-003の場合、PBMCからCD3+細胞を得て、IL-2を含むX-vivo 15培地を用いて培養した。例えば、CD14、CD15、CD16、CD19、CD34、CD36、CD56、CD123およびCD235aを含む抗体キットを用いてCD3+ T細胞を収集し、望ましくない細胞を除去することができる。CD3/CD28 ダイナビーズを用いてCD3+ T細胞を活性化した後、感染前にサンプリングしてカウントした。感染する細胞の数を得た。群1の細胞数は6 x 107、群2の細胞数は7 x 107であった。必要なベクターMOIに応じて、対応するベクター数とベクター体積を算出した(表10を参照)。患者004-010の場合、IL-2を含むTEXMACS培地を用いて、PBMCを培養した。CD4とCD8の磁気ビーズを用いて、PBMC中のT細胞を分類して選択した。適当な培養開始量を選択し、Transactアクチベーターを用いてT細胞を性化した。MACS(登録商標) GMP T Cell TransActTMには、ヒトCD3およびCD28に対するヒト化組換えアゴニストに共有結合したコロイド状高分子ナノマトリックスが含まれる。ナノマトリックスの使用により、GMP T Cell TransActを滅菌ろ過でき、かつ、余分な試薬は、遠心分離と従来の澄み液交換、または培地による簡単な洗浄によって除去することができる。この試薬は、CliniMACS Prodigy(登録商標)Instrumentなどの自動培養システムでの使用に適している。必要なベクターMOIに応じて、対応するベクター数とベクター体積を算出した(表10を参照)。具体的には、患者004-008および010の場合、複数のベクターを含むレンチウイルスベクターをT細胞と24時間混合した。T細胞をさらに洗浄し、8日間培養した後、病院に運んだ。患者009の場合、T細胞を4つの群に分け、各群のT細胞を、1つ以上のベクター(表7を参照)を含むレンチウイルスベクターと24時間混合し、これらのT細胞を洗浄して8日間培養した。この4つの群のトランスフェクトされたT細胞を混合した後、病院に運んだ。
Figure 2022531814000016
新鮮な細胞の場合、磁気ビーズを除去した後、形質導入された細胞を遠心分離するか、95%複合電解質と5%ヒトアルブミンの溶液で交換し、返送用バッグに入れ、密封後15-25℃で輸送した。新鮮な製剤は直接回収された。凍結保存された細胞の場合、33.75%の複合電解質溶液、33.75%のデキストラン40グルコース溶液、25%のヒト血液アルブミンおよび7.5%のジメチルスルホキシドを含む培地は凍結保存に使用された。細胞懸濁液を凍結保存用バッグに入れた後、バッグを-90℃まで冷却し、気相液体窒素タンクに移して保管した。凍結製剤の蘇生後30分以内に凍結製剤の再構成を完了した。CAR T細胞の調製のために、患者から末梢血単核細胞(PBMC)を白血球アフェレーシスにより入手し、CAR T注入の最初の日を試験の0日目とした。
数人の患者は、CAR T細胞注入のためのリンパ球枯渇のコンディショニング治療を受けた。フルダラビンとシクロホスファミドを用いたコンディショニング治療は、骨髓(BM)と末梢血(PB)中の腫瘍量に応じて変化した。患者には、感染の予防に重要な役割を果たす好中球を増やすために、長時間作用型のG-CSFを、コンディショニング治療後の1-3日間、それぞれ約6mgまたは100μg/kg体重の量で投与した。CAR T細胞を患者に注入した。毎日、CAR T細胞を病院に輸送し、洗浄、カウント、生存率のチェックを行い、その後、患者への投与準備の後、患者を少なくとも2時間綿密に観察した。サイトカイン放出症候群(CRS)は、改訂された評価システムに従って評価された(Lee DW.ら.,Blood 2014;124:188-95を参照)。治療中および治療後のその他の毒性は、治療中および治療後の他の毒性は、国立衛生研究所の有害事象共通用語基準バージョン4.0(http://ctep.cancer.gov/)に従って評価された。治療応答は、フローサイトメトリーおよび形態学的分析により評価された。可能な場合、患者はキメラ遺伝子の発現レベルによって評価された。
CAR T細胞注入後の骨髓(BM)および末梢血(PB)サンプルをK2EDTA BDバキュテナーチューブに採取した。患者のPBおよびBMにおけるCD19 CAR T細胞の持続性をFACSで決定した。測定された絶対CD3+ Tリンパ球数に基づいて、マイクロリットルあたりの循環CAR T細胞数を計算した。同時に、CAR DNAコピーは、CAR T細胞増幅および持続性を決定する別の方法として評価された。QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen社)を用いて、凍結保存されたPBとBMからゲノムDNAを抽出した。補足資料に記載されているように、CAR DNAコピーは、定量的なリアルタイムPCRによって評価された。血清およびCSF中のサイトカインIFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-6、IL-10、IL-17などのレベルを、製造者の指示に従ってマルチプレックス形態で測定した。
QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen社)を用いて、凍結保存された末梢血と骨髓からゲノムDNAを抽出した。定量的なPCR(qPCR)は、7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社)で、ABI 2×TaqMan ユニバーサルマスターミックスとAmpErase UNG(Applied Biosystems社)を使用して、3回ずつリアルタイムで実施した。102-108個のコピー数/マイクロリットルを含む精製CARプラスミドの10倍連続希釈液の標準曲線から、ゲノムDNAのマイクログラムあたりのコピー数を算出した。DNA量の正規化には、内部対照遺伝子の増幅を用いた。CAR導入遺伝子および内部対照遺伝子に特異的なプライマー/プローブは、以前に記載されたとおりである(Gokbuget N.ら,Blood 2012;120:2032-41およびO’Brien S.ら,J Clin Oncol 2013;31:676-83を参照)。
各CARのCARコピー数に基づいてCAR T細胞の増幅を観察し、図16および17に示した。これらの図に示すように、患者004と005におけるCAR T細胞の増幅は、患者002、003および001におけるCAR T細胞の増幅に比べて明らかに高いため、CD19 CARおよび/またはCD19 CARおよびtMUC1 CARを発現するT細胞がCAR T細胞増幅を増強したことを示している(表10も参照)。CD19 CAR、固形腫瘍CAR(例えば、tMUC1、TSHR、GUCY2C CAR)およびダブルCAR(CD19 CARと固形腫瘍CAR)を発現するT細胞を算出した。例えば、以下の式を用いて、CD19 CAR、tMUC1 CARおよびブルCAR(CD19 CARおよびtMUC1 CAR)を発現するT細胞を算出した:
WBC×CD3%×((tMUC1CAR+ CD19CAR-)/CD3);
WBC×CD3%×((tMUC1CAR- CD19CAR+)/CD3);および
WBC×CD3%×((tMUC1CAR+ CD19CAR+)/CD3);
ここで、WBCはWBCの数であり、CD3%は、WBCにおけるCD3陽性細胞のパーセンテージであり、(tMUC1CAR+ CD19CAR-)/CD3は、CD3陽性細胞においてCD19 CARではなくtMUC1 CARを発現するT細胞のパーセンテージであり、(tMUC1CAR- CD19CAR+)/CD3は、CD3陽性細胞においてtMUC1 CARではなくCD19 CARを発現するT細胞のパーセンテージであり、および(tMUC1CAR + CD19CAR+)/CD3は、CD3陽性細胞においてCD19 CARおよびtMUC1 CARを発現するT細胞のパーセンテージである。結果を図18および19に示す。これらの図に示すように、CD19 CAR細胞は、tMUC1 CAR T細胞の増幅を有意に増加させ、CD19 CARの存在がtMUC1 CAR T細胞の増幅を増強することを示している。同様の結果は、患者006-010でも観察された(図20および21を参照)。上記インビトロの結果と下記の実施例におけるインビボの結果を組み合わせると、WBC抗原を標的とするCAR T細胞を活性化することで、固形腫瘍抗原を標的とするCAR T細胞の増幅を増強し得ることがわかる。
患者008は、甲状腺切除術を受けていた。注入から28日後、右の腫瘍は消失し、左の腫瘍のサイズは減少した。PET CTスキャン画像の例を図33に示す。注入から3ヶ月後、右の腫瘍は再発せず、左の腫瘍は消失した。PET CT画像(図示せず)では、腫瘍の再発、または手術領域の再発はなかった。走査信号を増強した後、上記の領域には異常な増強信号が観察されていない。ネックIIおよびIIIのダブル領域には、最大短径が10 mm以下の小さなリンパ節が複数示された。両側の顎下腺の形態と信号には異常がなかった。同時に、頸髄の形態やCT信号も正常であった。患者は、少なくとも部分寛解(PR)を達成したようであった。治療中、患者008では重度のCRS(例えば、レベル2以下のCRS)が観察されなかった。患者はPRを達成したと評価された。
患者009は、甲状腺の神経内分泌癌を伴う低分化濾胞性乳頭癌と診断された。患者009は、甲状腺二葉切除術を受け、その後診察を受けたところ、複数の肺転移が確認された。縦隔には複数の肥大したリンパ節が見られた。CAR T細胞を注入してから30日後のCT走査では、小さな腫瘍は消失し、2つの大きな腫瘍のサイズは70%以上縮小した(表8を参照)。図34は、大きな腫瘍が縮小し、小さな腫瘍が消失したことを示す(図34の線と丸を参照)。患者はPRを達成したと評価された。
Figure 2022531814000017
患者010は結腸直腸癌と診断され、CAR T細胞を注入する前に、8サイクルの化学療法に加え、手術など他の治療も行った。注入してから1ヶ月後、PET-CT走査の結果、ほとんどの標的病巣が大幅に減少し(50%以上)、腫瘍減少量を総合的に計算すると44.7%であったことが分かった。患者は、PRを達成したと評価された(図35の矢印を参照)。
患者011は、甲状腺癌と診断された。患者のPBMCを収集し、Prodigyを用いて選別してCD3+細胞を得た後、それを6つの群に分けた。表19に示すように、6つの群の細胞のそれぞれを、対応するベクターを含む培地と混合した。この6つの群の細胞では、CD19 CARおよびTSHR CARの両方を発現する細胞はなかった。その後、適切な条件で、この6つの群の細胞を、ベクターを含まない培地で7日目まで培養し、細胞数を算出した。その後、各群から一定数の細胞を得て、表19に示すように混合して細胞混合集団を得て、前記細胞混合集団を病院に搬送して注入した。図73は、注入に応答した、患者011のCAR T細胞を含むリンパ球、自然キラー(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)および単球の増加を示す。図74および図75は、細胞注入に応答した、患者011の各CAR T細胞の数とCAR T細胞の総数の増加を示す。各CAR T細胞のコピー数を測定し、患者011の血液中の各種類のCAR T細胞数とCAR T細胞の総数を算出した。コピー数とフローサイトメトリーデータを用いて、線形回帰分析を行い、各CAR T細胞の数を算出した。線形回帰分析と各CAR T細胞増幅を図75に示す。これらのデータおよび以前の患者のデータから、(1) CD19 CAR T細胞が固形腫瘍CAR T細胞(例えば、TSHR CAR)の増幅を増強し、(2) CD19 CAR T細胞が、非CAR T細胞の増幅を増強した(図73の個々のリンパ球数の増加を参照)ことがわかった。さらに、これらのデータは、この増強作用がCD19 CARの活性化によって引き起こされ、患者のインビボの免疫細胞(例えばDC)によって媒介されることを示している。したがって、WBC抗原(例えば、CD19およびBCMA)に結合するCAR T細胞は、他のT細胞に基づく療法(例えば、NK、TCRおよびTIL)を増強するためにも使用することができる。例えば、CD19 CAR T細胞を、操作されたTCRまたはTILを発現するNKおよび/またはT細胞群と組み合わせて患者に投与することができ、かつCD19 CAR T細胞の活性化は、患者におけるこれらのリンパ球の増幅を増強することができる。図76は、細胞注入に応答した、患者011のサイトカイン放出を示す。
Figure 2022531814000018
上記のインビトロの結果と本実施例のインビボの結果と組み合わせると、WBC抗原を標的とするCAR T細胞を活性化することで、固形腫瘍抗原を標的とするCAR T細胞の抗腫瘍活性を増強できることがわかる。
図72は、0日目、1日目および4日目の患者009における単球のPDL1発現を示す。混合CAR T細胞(CD19CAR + tMuc1 CAR、CD19CAR + GUCY2C CARおよびCD19CAR + TSHR CAR)を患者に注入する前および注入した後、複数の患者から単球を得た。フローサイトメトリーを用いて単球を分析し、PDL1などのマーカーの発現を測定した。フローサイトメトリーの結果、混合CAR T細胞を注入した後の患者の単球では、PDL1の発現がアップレギュレートした。その一例を図72に示す。単球におけるPDL1のアップレギュレーションは、単球の活性化を示し、患者の免疫系が活性化されたことをさらに証明する。
Figure 2022531814000019
Figure 2022531814000020

Figure 2022531814000021
<実施例3.結合/混合したT細胞の活性化>
混合CAR T細胞(結合CAR T細胞)は、活性化についてのアッセイを行うために、CD19 CARとtMUC1 CAR(第1群)、抗CD19 CARとACPP CAR(第2群)、およびCD19とCLDN18.2 CAR(第3群)の3つの群に分けられた。健康なボランティアから末梢血を採取した。Pan Tキットを用いてCD3+ T細胞を選別し、1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを加えた。その後、レンチウイルスでCD3+ T細胞をトランスフェクトした。レンチウイルスとダイナビーズを除去し、新鮮な培地を加えた。CARの比率と細胞の表現型を決定した。これらの3群の細胞におけるCARの発現を測定した。CD19 CAR T細胞、tMUC1 CAR T細胞および標的細胞を選択し、24時間または48時間混合した。対応する細胞における様々なマーカーの発現を測定した。20×10個のCAR T細胞と20×10個の基質細胞を24時間共培養した。フローサイトメトリーにより、T細胞におけるhCAR(ヒト化scFv)、mCAR(マウスscFv)、CD25やCD137などの分子の発現を測定した。例えば、CD25およびCD137の陽性染色は、T細胞が活性化されたことを示した。抗原活性化に応答して様々なT細胞から放出されるサイトカインの量を測定し、対応するT細胞のバックグラウンドを差し引いた。
表11、12および13はそれぞれ、第1群、第2群と第3群のCAR T細胞、および対応する基質細胞の情報を示す。例えば、CAR 1204はヒト化CARであり、ヒトCAR抗体およびCD137抗体で標識することができる。CAR 2407(tMUC1 CAR)はマウスCARであり、マウスCAR抗体およびCD137抗体で標識して活性化することができる。CAR 1204を発現する細胞(CD19 CAR T細胞)は、CD19を発現するK562細胞によって活性化されることができ、よって、CD137の発現がアップレギュレートされる。CAR 1204細胞、CAR 2407細胞、およびCD19を発現するK562細胞を共培養してCD19 CAR T細胞の活性化を誘導した。CD19 CARおよびtMUC1 CARの結合ドメインはそれぞれ、配列番号5および配列番号70を含む。2407 CAR T細胞の活性化は、CD137の発現に基づいて検出および測定され、これはCD19 CAR T細胞の間接的な活性化を証明する。
Figure 2022531814000022
図36はK19細胞の存在下または非存在下でCD19 CAR T細胞とtMUC1 CAR T細胞とを共培養したフローサイトメトリー分析の結果を示す。
0日目に、健康なボランティアの末梢血を収集した。Pan Tキットを用いてCD3+ T細胞を選別し、1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを収集したCD3+ T細胞に加えた。1日目に、活性化したCD3+ T細胞を2つの亜群に分け、各亜群をそれぞれ単一のCAR(CD19 CARまたはtMUC1 CAR)をコードするレンチウイルスでトランスフェクトした。よって、CD19 CARを発現するCAR T細胞亜群と、tMUC1 CARを発現するCAR T細胞亜群との2つのCAR T細胞亜群を得た。CD19 CARおよびtMUC1 CARの結合ドメインはそれぞれ、配列番号5および配列番号70を含む。2日目に、レンチウイルスおよびダイナビーズを除去し、新鮮な培地を加えた。7日目に、CAR T細胞および標的細胞を24時間共培養し、8日目に様々なアッセイを行った。細胞亜群を混合し、対応する基質細胞と共培養することができる(図36-60を参照)。
図36は、異なる細胞培養物におけるCD137の発現を示すヒストグラムを提供する。各細胞培養物において、CAR T細胞を対応する基質細胞と培養し、フローサイトメトリーによりCD137の発現を測定した(Gate mCAR+: tMUC1CAR)。細胞培養物は、(1) tMUC1CAR T細胞およびK19、(2) tMUC1CAR T細胞、K19およびPBMC、(3) tMUC1CAR T細胞、CD19CAR T細胞およびK19、(4) tMUC1CAR CAR T細胞、CD19 CAR T細胞、K19およびPBMCを含む。さらにCD8+ T細胞をカウントした。図36に示すように、K19の存在下では、tMUC1CAR T細胞の活性化(すなわち、CD137発現)が観察され、かつMUC1 CAR T細胞の活性化レベルは、単一群の活性化レベルよりも高い。さらに、PBMCを加えた後の活性化レベルがより高くなった(例えば、CD137のMFI)。これらの結果から、K19によるCD19 CAR T細胞の活性化は、tMUC1 CARが結合する抗原(tMUC1)の非存在下でtMUC1 CAR T細胞を活性化することができ、かつ、この活性化はPBMCの存在によって増強されることが示された。実験結果は、差の測定のための主な根拠とする発現率に基づく(左図)。割合の差が有意でない場合は、発現強度(MFI)を差の測定基準としている(右図)。
図37は、図36に記載の細胞培養物におけるPBMCおよび単球の活性化を示す。単球(CD14+)および活性化単球(CD14+CD80+)のフローサイトメトリーアッセイをPBMCで実施し、図37は、アッセイの統計分析ヒストグラムを示す。h19CARはヒト化CD19CARであり、細胞培養物は、(1)単一のPBMC、(2) PBMC+K19、(3) PBMCおよびCD19CAR T細胞、(4) PBMC、K19及びCD19CAR T細胞を含む。図37に示すように、最後の1群のPBMCは、活性化(CD80の発現)を示した。これらの結果は、CAR T細胞の活性化が、単球を含むPBMCを活性化できることを示す。図36および37に示す結果を組み合わせると、K19によるCD19 CAR T細胞の活性化は、tMUC1 CARが結合する抗原の非存在下でtMUC1CAR T細胞を活性化し、このような活性化は少なくとも部分的にPBMCを介して媒介され得ることが示される。
図38は、tMUC1 CAR T細胞およびCD19 CAR T細胞によるIFNγ放出を示すヒストグラムを提供する。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。前記図は、対流グラフ(convective graph)を統計的に分析したものである。これらのアッセイでは、対照としてNT(非トランスフェクトされたT細胞)を用いた。対照と比較して、CD19 CAR T細胞およびtMUC1 CAR T細胞を含む細胞培養物では、CD19 CAR TおよびMUC1 CAR T細胞における細胞内IFNγの増加が見られたことから、K19で活性化されたCD19CAR T細胞がIFNγを放出し、tMUC1CAR T細胞を活性化してIFNγを放出したことが示された。PBMC群は、CD19CAR T細胞およびtMUC1CAR T細胞から放出されるIFNγの比率をアップレギュレートした。単一のCAR(CD19 CARまたはtMUC1 CAR)を発現した細胞と比較して、結合CAR群で蓄積されたIFNγがより多く、かつPBMCを加えることでこの作用をアップした。mCAR群はすべてCD19 CAR陽性細胞ではなく、その統計値は相対的なものである。その結果、CD19 CAR T細胞の活性化により、tMUC1 CAR T細胞がより多くのIFNγを発現し、それによって、tMUC1 CARが結合する抗原(tMUC1)の非存在下でIFNγを放出することを示している。
図39は、tMUC1 CAR T細胞およびCD19 CAR T細胞によるGZMB放出を示すヒストグラムを提供する。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。フローサイトメトリーアッセイでは、活性化したCD19 CAR T細胞およびMUC1 CAR T細胞によるGZMB放出が示された。対流グラフの統計分析(MFI割合比較)から、CD19 CAR T細胞の活性化はMUC1 CAR T細胞にGZMBを放出させることができ、そのような放出はPBMCの存在下で増強されることがわかる。mCAR群はすべてCD19 CAR陽性細胞ではなく、その統計値は相対的なものである。これらの結果は、CD19 CAR T細胞の活性化によって、MUC1 CAR T細胞が細胞内GZMBを放出することを示す。
図40および41は、様々な実施形態におけるMUC1 CAR T細胞の増殖を示す。CFSE反応を行い、細胞増殖のレベルを示すために使用した。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。図40に示すように、1行目は2つの基質細胞と共培養した結合CAR T細胞の実験群であり、2行目は2つの基質細胞と共培養したMUC1 CAR T細胞の対照群である。1行目および2行目における3列目と4列目に示すように、K19でCD19 CAR T細胞を活性化することで、MUC1 CAR T細胞の増殖が誘導される。5列目および6列目は、MCF-7がMUC1CAR T細胞の増殖を活性化して誘導することを示す。図41は、図40に示すフローサイトメトリーの結果を示す。体積較正を行い、tMUC1 CAR細胞集団をゲート制御し、各群のtMUC1 CARの細胞数を統計分析した。図41に示すように、CD19 CAR T細胞およびtMUC1CAR T細胞を含む群の細胞数は対照群に比べてより多く、PBMCの存在下でのCD19 CAR T細胞およびtMUC1CAR T細胞を含む群の増殖が最も高いことがわかった。この結果から、CD19 CAR T細胞の活性化がMUC1 CAR T細胞の増殖を増強することができ、この増強作用が、PBMCを介して増強および/または媒介できることを示している。
図12は様々な実施形態におけるCD19 CAR T細胞の増殖を示す。CFSE反応を行い、細胞増殖のレベルを示すために使用した。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。CD19 CAR T細胞、tMUC1 CAR T細胞、MCF-7を含む細胞群は、PBMCの存在または不存下で、CD19 CAR T細胞の増殖が認められた。これらの結果から、tMUC1 CAR T細胞の活性化がCD19 CAR T細胞の増殖を増強することができ、この増強作用がPBMCを介して増強および/または媒介できることを示している。図40-42に示す結果を組み合わせると、CD19 CAR T細胞およびtMUC1 CAR T細胞の混合物は、CD19 CAR T細胞またはtMUC1 CAR T細胞の活性化がさらに互いに活性化して、CD19 CAR T細胞およびtMUC1 CAR T細胞の増殖および/またはCD19 CAR T細胞とtMUC1 CAR T細胞によるサイトカインの放出を増強するように、PBMCを介してフォワード循環を形成している可能性があり、この増強作用はPBMCによって媒介および/または増強される可能性がある(図62を参照)。これらの結果をもたらす理由として、単一種類のCAR T細胞を含む細胞集団を注入した被検体よりも、結合CAR T細胞を含む細胞集団を注入した被検体(例えば、患者001-003)において、tMUC1 CAR T細胞の増幅程度がより高いというように解釈することもできる。結合CAR T細胞(例えば、CD19 CAR T細胞およびtMUC1 CAR T細胞)は、このような増強された細胞増幅に寄与することができる。
図43は、実施形態におけるサイトカインの放出を示す。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。図43に示すように、対照群のIFN-γ放出は限られている。結合CAR群と単一のCAR群は、それぞれ実線と点線で表表されている。放出されたIFN-γのレベルは、PBMCがない場合、類似する。PBMCを加えると、放出されるIFN-γのレベルが増加した。IL6は主にPBMCによって分泌され、活性化したシステムではその放出量が増加した。ここで、tMUC1CARのサイトカインの放出量は比較的少なかった。
Figure 2022531814000023
図44は様々な細胞培養物におけるCD137発現の他のヒストグラムを示す。0日目に、健康なボランティアの末梢血を収集した。Pan Tキットで選別してCD3+ T細胞を収集し、1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを収集したCD3+ T細胞に加えた。1日目に、それぞれCD19 CARおよびACPP CARをコードするレンチウイルスでCD3+ T細胞をトランスフェクトした。CD19 CARおよびACPP CARの結合ドメインはそれぞれ、配列番号5および配列番号489を含む。2日目に、レンチウイルスおよびダイナビーズを除去し、新鮮な培地を加えた。7日目に、CAR T細胞および標的細胞を24時間共培養し、8日目に様々なアッセイを行った。フローサイトメトリーアッセイを行い、その結果、CD19 CARおよびACPP CAR T細胞の発現を示した。図44に示すように、ACPP CAR T細胞の活性化がより高く、PBMCの存在下で活性化が増加した。これらの結果から、nalm6によるCD19 CAR T細胞の活性化が、ACPP CAR T細胞を活性化することができ、この作用がPBMCによって増強されることを示している。
図45は、活性化分析のフローサイトメトリーアッセイを示す。CD45ROおよびCD62Lを使用して、CART細胞を4つの状態に分けることができる。Nalm6は、CD19 CAR T細胞上のCD45ROおよびCD62Lの発現を活性化することができ、かつ、ACPP CAR T細胞におけるエフェクター細胞の割合が増加した。これらの結果から、CD19 CAR T細胞の活性化がACPP CAR T細胞を機能的な状態にするように誘導し、それがACPP CAR T細胞の事前活性化として作用したことを示している。
図46は図44に記載の細胞培養物におけるPBMCおよび単球の活性化を示す。フローサイトメトリーアッセイは、PBMCにおける単球(CD14+)と活性化単球(CD14+およびCD80+)を示した。h19CARは、ヒト化CD19CARであり、これらの群は、(1)単一のPBMC、(2)PBMC+K19、(3)PBMCとCD19CAR T細胞、(4) PBMC、K19とCD19CAR T細胞を含む。これらの結果は、CAR T細胞の活性化がPBMCの活性化につながることを示している。
図47は、CD19 CAR T細胞の活性化により、ACPP CAR T細胞が細胞内IFNγを放出することを示す。上記と同様に、7日目に様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。この2つのCAR T細胞が存在し、かつシステムにPBMCが存在する場合、ACPP CAR T細胞はさらに増強したIFNγ放出を示した。
図48および図49は、細胞培養物で細胞を24時間共培養した後のサイトカインの放出を示す。対照群では、TNF-α、IFN-γ、GZMBの放出量は限られている。結合CAR群(CD19 CAR T細胞とACPP CAR T細胞)および単一のCAR群(CD19 CAR T細胞またはACPP CAR T細胞)は、それぞれ実線と点線で表されている。放出されるTNF-α、IFN-γ、GZMBレベルは、PBMCがない場合に、類似する。PBMCを加えると、放出されるTNF-α、IFN-γ、GZMBの量が増加した。IL6は主にPBMCによって分泌され、PBMCの存在下で結合CAR群におけるサイトカインの放出量が増強した。
Figure 2022531814000024
図50は、異なる細胞培養物におけるCD137発現を示す他のヒストグラムを提供する。0日目に、健康なボランティアの末梢血を収集した。Pan Tキットを用いてCD3+ T細胞を選別し、1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを加えた。1日目に、それぞれCD19 CARおよびCLDN 18.2 CARをコードするレンチウイルスでCD3+ T細胞をトランスフェクトした。CD19 CARおよびCLDN 18.2 CARの結合ドメインはそれぞれ、配列番号5および配列番号37を含む。2日目に、レンチウイルスおよびダイナビーズを除去し、新鮮な培地を加えた。7日目に、CAR T細胞および標的細胞を24または48時間共培養し、8日目に様々なアッセイを行った。図50に示すように、CLDN18.2 CAR T細胞の活性化がより高く、PBMCの存在下で活性化が増加した。これらの結果は、K19によるCD19 CAR T細胞の活性化が、CLDN18.2 CAR T細胞を間接的に活性化することができ、この作用がPBMCによって増強されることを示している。
図51KATO3+細胞と48時間共培養した各種CAR T細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。ヒストグラムから、KATO3+細胞の存在下で、結合CAR T群(CD19 CAR T細胞およびCLDN 18.2 CAR)におけるCD19 CAR T細胞の活性化レベルは、単一のCAR T群(CD19 CAR T細胞またはCLDN 18.2 CAR)よりも高いことがわかる。CD19 CAR T細胞の活性化レベルは、PBMCの存在下で活性化された後の方が高かった(例えば、CD25和CD137の比率)ことから、KATO3+細胞によるCLDN18.2 CAR T細胞の活性化により、CD19 CAR T細胞を活性化し得、この作用はPBMCによって増強されたことが示された。CD40Lは主にCD4 T細胞によって発現される(B細胞、活性化単球、DCなどのPBMCにおけるCD40L+細胞と相互作用する)。その結果、KATO3+細胞によるCLDN18.2 CAR T細胞の活性化は、CD19 CAR T細胞によるCD40Lの発現をアップレギュレートし、B細胞および単球を活性化することができることがわかる。この作用はPBMCによって増強された。
図52は図50に記載のシステムにおけるPBMCおよび単球の活性化を示す。h19CARはヒト化CD19 CARであり、これらの群は、(1)単一のPBMC、(2) PBMCおよびK19、(3)PBMCおよびCD19 CAR T細胞、(4)PBMC、K19およびCD19 CAR T細胞を含む。図52に示すように、最後列のPBMCが活性化を示しており、CAR T細胞の活性化がPBMCを活性化することができることを示している。
図53および54は、CLDN18.2 CAR T細胞の活性化により、CD19 CAR T細胞が細胞内IFNγを放出することを示す。図39に示すものと同様に、結合CAR T細胞群(CD19 CAR T細胞およびCLDN 18.2 CAR)から放出されるIFNγ量は、単一種類のCAR T細胞群(CD19 CAR T細胞またはCLDN 18.2 CAR)よりも多く、PBMCの添加によりこの作用をアップレギュレートすることができる。
図55は、様々な細胞培養物に対する殺傷アッセイを示す。2つの基質細胞の開始量は、2.0×10/600ulまたは3.33×10/mlである。図55は、殺傷の3日後の基質細胞の細胞密度を示す。PBMCは基質細胞の殺傷を助け、結合CAR T細胞群(CD19 CAR T細胞およびCLDN 18.2 CAR)は、単一のCD19 CAR T細胞または単一のCLDN18.2 CAR T細胞の殺傷効果を増強した。PBMCの存在下で、結合CAR T細胞はより優れた殺傷効果を発揮したことから、活性化したCAR T細胞がPBMCを活性化し、さらに結合CAR Tシステムにおける一種類のCAR T細胞が活性化されると、結合CAR T細胞群における別の種類のCAR T細胞をさらに活性化してサイトカインを放出し、有効性を増強することを示している。
図56はCLDN18.2 CAR T細胞の増殖を示す。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。さらに、CFSE反応を測定し、増殖レベルを評価した。図56に示すように、1行目は、2つの基質細胞と共培養した結合CARを含む実験群であり、2行目は、2つの基質細胞と共培養したCLDN18.2CARを含む対照群である。図56は、K19によるCD19 CAR T細胞の活性化が、CLDN18.2CAR T細胞の増殖を誘導することを示す。KATO3細胞は、CLDN18.2 CAR T細胞によって効果的に活性化されて増殖することができる。PBMCの存在は、増殖をさらに増強することができる。結果から、CD19 CARは、結合CAR群のK19によって効果的に活性化され、かつ活性化されたCD19 CARTは、CLDN18.2 CAR T細胞を活性化してCLDN18.2細胞の増殖を促進することができ、これはPBMCによってさらに増強されることがわかった。
図57は、CD19 CAR T細胞の増殖を示す。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。さらに、CFSE反応を測定し、増殖レベルを評価した。図57に示すように、1行目は、2つの基質細胞と共培養した結合CAR T細胞を含む実験群であり、2行目は、2つの基質細胞と共培養したCD19 CAR T細胞を含む対照群である。図57は、KATO3+細胞によるCLDN18.2 CAR T細胞の活性化が、CD19 CAR T細胞の増殖を誘導できることを示す。5列目および6列目は、PBMCがCD19 CAR T細胞の増殖をさらに増強することができることを示す。結果から、CLDN18.2 CAR T細胞は、結合CAR群のKATO3+細胞によって活性化され、かつ活性化されたCLDN18.2 CAR T細胞は、CD19 CAR T細胞を活性化してCD19 CAR T細胞の増殖を促進することができ、これはPBMCによってさらに増強されることが分かった。
図58-60は、様々な細胞培養物におけるサイトカイン放出を示す。7日目に、様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。示すように、対照群ではIL12、IFNγおよびGZMBの放出量が限られている。結合CAR T細胞群および単一のCAR T細胞群は、それぞれ実線と点線で表されている。放出されるIL12、IFNγおよびGZMBの量は、PBMCがない場合に、類似する。PBMCを加えると、放出されるIL12、IFN-γおよびGZMBの量が増加した。
Figure 2022531814000025
図84は様々な細胞培養物におけるCD137発現の他のヒストグラムを示す。0日目に、健康なボランティアの末梢血を収集した。Pan Tキットで選別してCD3+ T細胞を収集し、1:1の比率でCD3/CD28 ダイナビーズを収集したCD3+ T細胞に加えた。1日目に、それぞれBCMA CARおよびGUCY2C CARのレンチウイルスでCD3+ T細胞をトランスフェクトした。CD19 CARおよびACPP CARの結合ドメインはそれぞれ、配列番号60および配列番号488を含む。2日目に、レンチウイルスおよびダイナビーズを除去し、新鮮な培地を加えた。7日目に、CAR T細胞および標的細胞(例えば、8226)を24時間共培養し、8日目に様々なアッセイを行った。フローサイトメトリーアッセイを行い、その結果、CD19 CARおよびACPP CAR T細胞の発現を示した。図84に示すように、GUCY2C CAR T細胞の活性化がより高く、PBMCの存在下で活性化が増加した。これらの結果から、8226によるBCMA CAR T細胞の活性化が、GUCY2C CAR T細胞を活性化することができ、この作用がPBMCによって増強されることを示している。PBMCにはBCMAを含むB細胞やプラズマ細胞が含まれているため、PBMCはBCMA CAR T細胞を活性化することができる。PMBCによるBCMA CAR T細胞の活性化は、GUCY2C CAR T細胞によって増強される。
図85はGUCY2C CAR T細胞の増殖を示す。7日目に様々な細胞を培養し、8日目にフローサイトメトリーアッセイを行った。さらに、CFSE反応を測定し、増殖レベルを評価した。PMBCはB細胞およびプラズマ細胞を含み、前記B細胞およびプラズマ細胞はBCMAを含む。図85に示すように、PMBCによるBCMA CAR T細胞を活性化することで、GUCY2C CAR T細胞の増殖を誘導することができる。
図86は、細胞培養物において、細胞を24時間共培養した後のサイトカイン放出を示す。対照群では、IL-6、IFN-γ、GZMBの放出量が限られている。放出されるIL-6およびGZMBレベルは、PBMCがない場合に、類似する。PBMCを加えると、放出されるIL-6およびGZMBの量が増加した。PBMCの存在下で、結合CAR群におけるサイトカインの放出量が増強した。
NY-ESO-1形質導入されたT細胞(NYESO-1 TCRTSまたは8302)およびAFP形質導入されたT細胞(AFP TCRTSまたはDW105)を、それぞれCD19 CAR T細胞(1234)と混合し、様々な対応する標的細胞(例えば、K19:K562-CD19)と共培養した。図78は、フローサイトメトリーを用いて、目的遺伝子の表現型および発現を決定することを示す。混合細胞を7日間共培養した後、フローサイトメトリーを用いて、細胞の表現型と目的遺伝子の発現を検出した。例えば、(A)生細胞のおおよその範囲を画定し、(B)接着細胞を除去し、(C)DAPI染色を行って生細胞集団を画定し、(D)CD3陽性細胞集団(すなわち、T細胞)を画定した。フローサイトメトリーを用いて、細胞表現型とCAR発現を決定した。NT(CARを発現しないT細胞)群およびCD19 CAR T群では、NYESO-1 TCRTSおよびAFP TCRTSのCD8の割合は、それぞれ70.32%、56.44%、73.85%および72.74%であった。CD19 CARの発現率は63.71%、NYESO-1 TCRの発現率は88.80%、AFP TCRの発現率は71.61%であった。細胞の発現表現型は正常であり、CD137の発現率は低く、細胞は既に休眠状態にあり、その後の実験に使用することができる。
図79は、フローサイトメトリーを用いて共培養された細胞を識別することを示す。共培養した後の2つのT細胞を区別するために、CD19 CAR細胞をVIOLETで染色し、紫色の蛍光で標識した。細胞をフローサイトメトリーV450-PBチャンネルで2つの群に分け、陽性群はCD19 CAR細胞、陰性群はNYESO-1/AFP TCRTS(C)であった。CD3陽性群はT細胞であった。
図80は、CD19 CAR T細胞およびNYESO-1 TCRTSを含む共培養細胞の活性化に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。異なる細胞群を24時間共培養し、フローサイトメトリーを用いてこれらの細胞の活性化を測定した。対照群NCでは、NYESO-1 TCRTSの活性化は非常に低かった(1.43% MFI=5559)。PC群では、NYESO-1 TCRTSの活性化は正常であった(15.02%、MFI=23301)。A群のNYESO-1 TCRTSの活性化(2.56%,MFI=6087)は、NC群よりも高かった(102および104を参照)。B群のNYESO-1 TCRTSの活性化(5.28%,MFI=12352)は、A群(2.56%,MFI=6087)よりも高かった(106および108を参照)。C群のNYESO-1 TCRTSの活性化(6.80%,MFI=12352)は、B群(5.28%,MFI=12352)よりも高かった(110および112を参照)。C群のNYESO-1 TCRTSの活性化は、A群よりも高かった(114および116を参照)。
図81はCD19 CAR T細胞およびNYESO-1 TCRTSを含む共培養細胞の増殖に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。異なる細胞群を96時間共培養し、フローサイトメトリーを用いてこれらの細胞の増殖を測定した。細胞増殖の比較を行った。NC対照群では、NYESO-1 TCRTS細胞の増殖率は2.46%であった。A群では、NYESO-1 TCRTS細胞の増殖率は28.17%であり、NC群と比較して増加した(202を参照)。B群NYESO-1 TCRTS細胞の増殖率は41.60%であり、A群よりも高かった(204を参照)。C群NYESO-1 TCRTS細胞の増殖率は47.79%であり、B群の41.60%よりも高く(206を参照)、かつA群よりも高かった(208を参照)。
図82はCD19 CAR T細胞およびAFP TCRTSを含む共培養細胞の活性化に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。異なる細胞群を24時間共培養し、フローサイトメトリーを用いてこれらの細胞の活性化を測定した。対照群NCのAFP TCRTSは、活性化されなかった(0.70% MFI=4568)。PC群AFP TCRTSの活性化は正常であった(38.58%、MFI=23327)。A群AFP TCRTSの活性化(1.24%,MFI=4884)は、NC群よりも高かった(302および304を参照)。B群AFP TCRTSの活性化(4.17%,MFI=13112)は、A群(1.24%,MFI=4884)よりも高かった(306および308を参照)。C群AFP TCRTSの活性化(6.47%、MFI=14218)は、B群(4.17%,MFI=13112)よりも高く(310および312を参照)、かつA群よりも高かった(314および316を参照)。さらに、TCR陰性のT細胞も部分的に活性化された(NC=0.51%、A=1.46%、B=2.84%、C=5.12%)。群間の関係は、陽性部分と同じであった。
図83はCD19 CAR T細胞およびAFP TCRTSを含む共培養細胞の増殖に関するフローサイトメトリー分析の結果を示す。異なる細胞群を96時間共培養し、フローサイトメトリーを用いてこれらの細胞の活性化を測定した。細胞増殖の比較を行った。NC対照群AFP TCRTSの増殖率は3.11%であった。A群AFP TCRTSの増殖率は36.44%で、NC群に比べて増加した(402)。B群AFP TCRTSの増殖率は39.59%で、A群の36.44%よりも高かった(404)。C群AFP TCRTSの増殖率は51.97%で、B群の39.59%よりも高く(406)、かつA群よりも高かった(408)。よって、CD19 CAR T細胞は、その増殖率を高めることで、TCRT細胞の増幅が増強される。
これらのデータは、結合CAR T細胞(例えば、CD19 CAR T細胞およびCLDN18.2 CAR T細胞)において、活性化した第1の種類のCAR T細胞が、第2の種類のCAR T細胞を活性化できることを示している。例えば、活性化された第1の種類のCAR T細胞は、第2の種類CAR T細胞の活性化、サイトカイン放出、および細胞増殖を増強した。この作用は、PBMCが存在する場合に増強された。PBMCと単球が活性化された以上、第1の種類のCAR T細胞は単球(例えばDC)を活性化し、次に第2の種類のCAR T細胞を活性化することができる。ここで提供されたデータおよび本開示のインビボの実施例で示されたデータを組み合わせると、被検体の樹状細胞(DC)は媒介として、第1の種類CAR T細胞の活性化を第2の種類CAR T細胞の活性化と関連付け、かつフォワード活性化の循環を形成し、免疫恒常性の増幅により、被検体(患者004-011)に観察されたCAR T細胞の増幅に寄与する可能性があることが示される。これらのデータおよび上記の臨床データは、結合または混合T細胞が、T細胞増幅および/またはサイトカイン放出を含むT細胞応答の増強を達成することを示している。結合または混合T細胞の例としては、BCMAとGUCY2C CAR T細胞、およびCD19 CAR T細胞とNYESO-1 TCRTSが含まれる。混合T細胞を患者に注入した後、第1群のT細胞(例えば、CD19およびBCMA CAR T細胞)は、B細胞抗原に結合し、活性化される。活性化後、第1群のCAR T細胞は、特定の細胞膜分子(例えば、CD28、OX40、4-1BB、CD40Lなど)をアップレギュレートし、かつ特定のサイトカイン(例えば、IFNγおよびGM-CSF)を放出する。これらの表面分子やサイトカインは、単球(例えばDC)や好中球などの細胞を活性化および/またはリクルートする。リクルートおよび/または活性化された細胞は、放出サイトカイン(例えば、TNFα、IL6、IL12)を放出し、炎症様環境を形成する。炎症様環境により、これらの活性化された免疫細胞は、いくつかのタンパク質(例えばCD80、CD80およびCD40)をアップレギュレートし、前記タンパク質は、第2群のT細胞(例えばNT、固形腫瘍を標的としたCAR T細胞およびNYESO-1 TCRTS)を活性化する。さらに、第1群のT細胞によって分泌されるサイトカイン(例えばIFNγ)も、第2群のT細胞を活性化する。
<実施例4.ZFN、TALENおよび/またはCas9を用いた改変細胞>
複数の遺伝子特異的ZFNは、突然変異の部位特異的導入を可能にするために構築された。基本的にMalaら(2005) Biochem Biophys Res Commun 335(2):447-57,Liuら(2002) J Bio Chem 277(6):3850-6,Sanderら(2011) Nat Methods. 8(1):67-9,Urnovら(2005) Nature 435(7042):646-651および米国特許公開第2008/0131962号に記載するように、様々なZFNを設計してプラスミドベクターに組み込んでいる。ZFNは、表14および表15に記載された、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、ZFN左結合ドメインおよびZFN右結合ドメイン)の様々な組み合わせを含んでいた。ZFNの開裂ドメインは、操作されたFokI開裂ドメイン(配列番号280、281または282)を含む。
Figure 2022531814000026
ZFN左腕プラスミドベクターおよびZFN右腕プラスミドベクターを、それぞれfugeneトランスフェクト試薬を用いてHela細胞にトランスフェクトした。24時間トランスフェクトした後、Hela細胞を1 μg/mlのピューロマイシンで48時間処理し、ZFNに富んだ細胞を得た。その後、Hela細胞を収集した。様々な遺伝子(すなわち、CTLA4、LAG3、BTLA、TIM3、FOXP3、SIVA1またはLGALS9)およびHela細胞ゲノムに特異的なプライマーをテンプレートとして用い、PCRによってZFNを含む溶解したDNAフラグメントを増幅した。フォワードプライマーを用いてDNAフラグメントを配列決定した。DNAフラグメントをベクターにクローニングした。約30個のモノクローナル細胞を有するDNAフラグメントを配列決定し、そのDNAフラグメントに突然変異が含まれているかどうかを決定した。配列決定の結果を表15に示す。
Figure 2022531814000027
複数の遺伝子特異的ZFNは、突然変異の部位特異的導入を可能にするために構築された。基本的にMalaら(2005) Biochem Biophys Res Commun 335(2):447-57;Liuら(2002) J Bio Chem 277(6):3850-6;Sanderら(2011) Nat Methods. 8(1):67-9;Handelら(2009) Mol Ther.Jan;17(1):104-11;Urnovら(2005) Nature 435(7042):646-651および米国特許公開第2008/0131962号に記載するように、様々なZFNを設計してプラスミドベクターに組み込み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ZFNは、表16に記載された、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、ZFN左結合ドメインおよびZFN右結合ドメイン)の様々な組み合わせを含んでいた。ZFNの開裂ドメインは、操作されたFokI開裂ドメイン(配列番号:96、97または98)を含んでいた。
Figure 2022531814000028
ZFN左腕プラスミドベクターおよびZFN右腕プラスミドベクターを、それぞれfugeneトランスフェクト試薬を用いてHela細胞にトランスフェクトした。24時間トランスフェクトした後、Hela細胞を1 μg/mlのピューロマイシンで48時間処理し、ZFNに富んだ細胞を得た。その後、Hela細胞を収集した。様々な遺伝子(すなわち、B2MおよびCIITA)およびHela細胞ゲノムに特異的なプライマーをテンプレートとして用い、PCRによってZFNを含む溶解したDNAフラグメントを増幅した。フォワードプライマーを用いてDNAフラグメントを配列決定した。DNAフラグメントをベクターにクローニングした。約30個のモノクローナル細胞を有するDNAフラグメントを配列決定し、そのDNAフラグメントに突然変異が含まれているかどうかを決定した。配列決定の結果を表18に示す。T細胞は、TRAC遺伝子での部位特異的変異導入を可能にするように構築されたTRAC特異的ZFNで導入された。基本的にUrnovら(2005) Nature 435(7042):646-651;Lombardoら(2007) Nat Biotechnol. November; 25(11):1298-306および米国特許公開第2008/0131962に記載するように、様々なZFNを設計してプラスミドベクターに組み込み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ZFNは、表17に記載された、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、ZFN左結合ドメインおよびZFN右結合ドメイン)の様々な組み合わせを含んでいた。ZFNの開裂ドメインは、FokI開裂ドメイン(配列番号96、97または98)を含む。1対のZFNをコードするmRNA(表17を参照)を形質導入細胞に導入し、TCR鎖に関連する標的ゲノム遺伝子座を改変した。
Figure 2022531814000029
CIITA用のTALENは、エクソン2(2L1:gctgaccccctgtgcct(配列番号426);2L2:gaccccctgtgcctct(配列番号427);2R1:ctccagccaggtccatct(配列番号419);2R2:tctccagccaggtccat(配列番号420))およびエクソン3(3L1:tcagcaggctgttgt(配列番号421);3L2:tcagcaggctgttgtgt(配列番号422);3R1:ccctggtctcttcat(配列番号423);3R2:aagcctccctggtctt(配列番号424);3R3:aagcctccctggtct(配列番号425))を標的とするように設計された。前記のように、TALENはFastTALE TALEN組立キット(Sidansai)を用いて構築し、293T細胞でその活性を確認した。構築したTALENトランスフェクトを293T細胞にトランスフェクトし、2μg/mlのピューロマイシン(Sigma)で選択した。選択後、293T細胞のゲノムDNAを採取した。その後、PCRと配列決定を行い、TALENの効率を検出した。fugeneトランスフェクト薬剤を使用し、Cas9およびgRNAを発現するプラスミドを293T細胞に同時トランスフェクトした。72時間後、293T細胞を収集し、フローサイトメトリーによりB2mとHLAタンパク質の発現を検出した。
Figure 2022531814000030
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み込まれたことが明確かつ個別的に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。上記のことを様々な実施形態で説明したが、当業者は、その精神から逸脱することなく、様々な修正、置換、省略および変更が可能であることを理解するべきである。

Claims (24)

  1. 第1の抗原に結合する第1のCARを含む第1の細胞集団と、第2の抗原に結合する第2のCARを含む第2の細胞集団とを含み、ここで、前記第2の抗原が腫瘍抗原であり、かつ前記第1の抗原と異なる、組成物。
  2. 腫瘍抗原を発現する癌形態を有する被検体に、請求項1に記載の組成物の有効量を投与することを含む、請求項1に記載の組成物の用途、またはそれを必要とする被検体における細胞増幅を増強するまたは癌を有する被検体を治療する方法。
  3. 前記組成物を投与した前記被検体における前記第2の細胞集団の増幅が、前記第1の細胞集団ではなく前記第2の細胞集団を投与した被検体における前記第2の細胞集団の増幅よりも大きい、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  4. 前記増幅が、第2の細胞集団の数または前記第2のCARをコードするDNAのコピー数に基づいて測定される、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  5. 前記細胞が、T細胞、NK細胞、マクロファージまたは樹状細胞である、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  6. 前記第1の抗原が、白血球(WBC)の細胞表面分子、腫瘍抗原または固形腫瘍抗原を含む、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  7. 前記WBCが、顆粒球、単球またはリンパ球である、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  8. 前記WBCがB細胞である、請求項6に記載の組成物または方法。
  9. 前記WBCの前記細胞表面分子が、CD19、CD22、CD20、BCMA、CD5、CD7、CD2、CD16、CD56、CD30、CD14、CD68、CD11b、CD18、CD169、CD1c、CD33、CD38、CD138またはCD13である、請求項6に記載の組成物または方法。
  10. 前記WBCの前記細胞表面分子が、CD19、CD20、CD22またはBCMAである、請求項6に記載の組成物または方法。
  11. 前記WBCの前記細胞表面分子が、CD19またはBCMAである、請求項6に記載の組成物または方法。
  12. 前記腫瘍抗原が固形腫瘍抗原である、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  13. 前記固形腫瘍抗原が、腫瘍関連MUC1(tMUC1)、PRLR、CLCA1、MUC12、GUCY2C、GPR35、CR1L、MUC 17、TMPRSS11B、MUC21、TMPRSS11E、CD207、SLC30A8、CFC1、SLC12A3、SSTR1、GPR27、FZD10、TSHR、SIGLEC15、SLC6A3、KISS1R、CLDN18.2、QRFPR、GPR119、CLDN6、UPK2、ADAM12、SLC45A3、ACPP、MUC21、MUC16、MS4A12、ALPP、CEA、EphA2、FAP、GPC3、IL13-Rα2、メソテリン、PSMA、ROR1、VEGFR-II、GD2、FR-α、ErbB2、EpCAM、EGFRvIII、B7-H3またはEGFRである、請求項12に記載の組成物または方法。
  14. 前記固形腫瘍抗原が、tMUC1、ACPP、TSHR、GUCY2C、UPK2、CLDN18.2、PSMA、DPEP3、CXCR5、B7-H3、MUC16、SIGLEC-15、CLDN6、Muc17、PRLRまたはFZD10を含む、請求項12に記載の組成物または方法。
  15. 前記固形腫瘍抗原が、tMUC1、ACPP、TSHR、GUCY2C、UPK2またはCLDN18.2を含む、請求項12に記載の組成物または方法。
  16. 前記CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびCD3ζドメインを含む、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  17. 前記共刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に結合するリガンドの細胞内ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の組成物または方法。
  18. 前記第1のCARが、CD19に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメインおよびCD3ζドメインを含み、前記第2のCARが、tMUC1、ACPP、TSHR、GUCY2CまたはCLDN18.2に結合するscFv、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメインおよびCD3ζドメインを含む、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  19. 前記第1のCARの抗原結合ドメインが、配列番号5の配列を含み、前記第2のCARの抗原結合ドメインが、配列番号70の配列を含む、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  20. 前記第2の細胞集団が、前記第2のCARおよびドミナントネガティブ形態のPD-1をコードするレンチウイルスベクターを含む、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  21. 前記第1の細胞集団が、前記第1のCARおよび治療薬をコードするレンチウイルスベクターを含む、請求項1または2に記載の組成物または方法。
  22. 前記治療薬がサイトカインを含む、請求項21に記載の組成物または方法。
  23. 前記サイトカインが、IL6および/またはINFγである、請求項22に記載の組成物または方法。
  24. 前記サイトカインが、IL-6、IL-12、IL-15、IL-7、TNF-αまたはIFN-γのうちの少なくとも1つである、請求項22に記載の組成物または方法。
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