JP2022527851A - 炎症性皮膚疾患のためのデキストラン硫酸 - Google Patents
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Abstract
本発明は、炎症性皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎の処置および/または予防における、デキストラン硫酸の使用、およびデキストラン硫酸を含む皮膚科学的組成物または皮膚美容的組成物に関する。
Description
本発明は、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩、ならびに炎症性皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎の処置および/または予防における使用のためのそれを含む皮膚科学的または皮膚美容的な組成物に関する。
皮膚疾患とは、赤みおよび落屑などの見苦しい症状を特徴とする皮膚および粘膜の疾患である。いくつかの病状は、炎症性皮膚疾患の名の下にグループ化されている。非限定的な例としては、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、酒さ、扁平苔癬、痒疹、脂漏性皮膚炎およびざ瘡が挙げられる。これらの皮膚疾患は、多くの場合、炎症現象や免疫疾患に起因する。
アトピー性皮膚炎は、アトピーの皮膚症状である。遺伝的に決定された背景で発生する慢性炎症性皮膚疾患である。子供の15~30%および成人の2~10%が罹患する。その有病率は先進国で増加し続けており、過去30年間で2倍、または3倍にすらなり、現在では公衆衛生上の主要な懸念事項と考えられている。アトピー性皮膚炎は、アレルギー性鼻炎および喘息などの他のアトピー性疾患と関連していることが多い。この状態は、多くの場合、幼児期に現れ、数年にわたって発疹を繰り返すことが特徴である。それは、再燃と合間の自然寛解によって進行する。病変は、丘疹、水疱、鱗状で極めて痒い紅斑性発疹などの炎症症状に関連する重度の皮膚乾燥を特徴とする。組織学的には、他の多くの皮膚疾患と同様に、アトピー性皮膚炎は、小血管や毛細血管の周りのリンパ球、単球、好酸球の浸潤を特徴とし;生化学的には、アトピー性皮膚炎に関連する炎症を引き起こす主要なタンパク質である胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)などのサイトカインの発現を特徴とする。さらに、ケモカイン、特にインターロイキン8(IL8)および炎症の脂質メディエーター、例えばプロスタグランジン6kF1α(PG6KF1α)は、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患および慢性炎症性疾患全般に大きく関与していることが実証されている。
湿疹は、発赤、小さな水ぶくれ、鱗片および掻痒を伴う皮膚の炎症を特徴とする掻痒性皮膚疾患である。それは人生の極めて早期に始まり得て;それは新生児でも観察されている。罹患した個人は、その間に症状が悪化する「湿疹再燃」と一般に呼ばれる期間を経験する。持続時間が変動するこれらの再燃には、寛解期が合間にある。湿疹は遺伝性障害であるが、化学的刺激物質またはストレスの存在などの環境因子がその発症に影響を与える。
古典的な炎症性疾患である乾癬は、皮膚の厚くて鱗状の斑点の出現を特徴とする。これらの斑点は、身体の様々な領域、多くの場合、肘、膝および頭皮に存在する。この慢性疾患は、寛解期を伴って周期的に進行する。乾癬は、手のひらもしくは足の裏、または皮膚のひだに現れるとき、極めて不快で痛みを伴うことさえあり得る。乾癬にはいくつかの種類があり、最も一般的な形態はプラーク乾癬(plaque psoriasis)または尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)である。他の形態は、滴状、紅皮症および膿疱性乾癬である。
酒さは、血管弛緩に関連する一般的な慢性および進行性の炎症性皮膚疾患である。それは顔の小血管に影響を与える障害である。それはしばしば色白の人に影響を及ぼし、心理的および感情的に大きな意義を有し得る。この疾患の名称は、罹患中の顔の特徴的な色を指す。
扁平苔癬は、成人にのみ影響を及ぼす掻痒性発疹である。それは原因不明の炎症性皮膚状態である。この皮膚疾患は、皮膚および粘膜、ならびに髪および爪に影響を及ぼす。これらの後2者の領域は、一般に慢性的な進行状態にあり、脱毛症および爪の破壊などの不可逆的な後遺症につながり得る。
痒疹は、引っかいた病変を伴う紅斑性および小水疱性丘疹を伴う皮膚の激しい掻痒である。これは多くの場合、虫刺されに対する過敏症の増悪であり、過敏症は異常に長く続き、特に幼児によく見られる。
脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が豊富な領域、すなわち頭皮および顔に影響を及ぼす慢性炎症性皮膚状態である。それは、皮膚に存在し、皮脂で成長する酵母のマラセチア(Malassezia)によるものである。この状態は、ストレス、日光の欠如および汚染によって悪化して再燃して、進行する。
ざ瘡は、一般的な皮膚疾患であり、主に漏斗におけるキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)によるコロニー形成に起因する毛包脂腺の炎症に起因する(Dreno et al., JEADV 2018, 32 (Suppl 2) 5-14)。
軽度の炎症性皮膚症の場合は、皮膚軟化剤と角質溶解剤が推奨される。これらの処置の目的は、病変を患者が忍容できるようにすることであるが、しばしば進行を遅らせるのみである。より重症の状態では、皮膚の炎症を調節できる抗炎症薬またはコルチコステロイドが数年間使用されている。これらの処置はすべて、患者にとって極めて負担となることがある大きな副作用がある。皮膚の自然免疫および炎症性上皮応答の活性化の状態に起因する皮膚または頭皮障害に対する上記の既存の処置の大きな副作用のために、当該皮膚または頭皮状態の処置の代わりに、または処置と一緒に使用できる新しい美容的活性成分および新しい美容的組成物が本当に必要とされている。
本発明は、これらのニーズに応えることを目的とする。実際、全く予想外なことに、本発明者らは、デキストラン硫酸が、炎症性皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎の処置および予防のために目的とする薬理活性を有することを実証した。
したがって、本発明の第1の目的は、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防における使用のための、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩に関する。
本発明の別の目的は、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防を意図とした皮膚科学的または皮膚美容的な組成物を製造するための、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩の使用に関する。
本発明の別の目的は、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防のための、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩の使用に関する。
本発明の別の目的は、有効量のデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を、処置および/または予防を必要とする人に投与することを含む、炎症性皮膚疾患を処置および/または予防するための方法に関する。
本発明に関連して、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩は、有利には、
- ビート、特にテンサイ糖を発酵して、デキストランを得て、その後
- 特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、そして
- 所望により、塩化して、皮膚科学的にまたは皮膚美容的に許容されるデキストラン硫酸塩、より具体的にはデキストラン硫酸ナトリウム塩を得る
ことにより得ることが可能であるかまたは得る。
- ビート、特にテンサイ糖を発酵して、デキストランを得て、その後
- 特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、そして
- 所望により、塩化して、皮膚科学的にまたは皮膚美容的に許容されるデキストラン硫酸塩、より具体的にはデキストラン硫酸ナトリウム塩を得る
ことにより得ることが可能であるかまたは得る。
このようにして得られたデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩は、有利には、9kD~20kDで構成される平均分子量を有する。
(定義)
本発明の意味において、「予防」は、疾患または障害、または1つ以上の兆候および/または症状の発生を防ぐことを意味する。
本発明の意味において、「予防」は、疾患または障害、または1つ以上の兆候および/または症状の発生を防ぐことを意味する。
炎症性皮膚疾患の「処置」または「処置すること」という用語は、炎症性皮膚疾患の発症および/またはその症状の少なくとも1つを軽減および/または抑制することを意味する。
本発明において、「皮膚科学的または皮膚美容的に許容される」は、皮膚科学的または皮膚美容的な組成物の調製に有用であり、一般的に安全で、無毒で、生物学的またはその他の点で望ましくないものではなく、特に局所適用による、皮膚科学的または皮膚美容的な使用に許容されるものを意味する。
本発明において、デキストラン硫酸の「皮膚科学的または皮膚美容的に許容される塩」は、デキストラン硫酸の硫酸官能基(-OSO3H)から形成される皮膚科学的または皮膚美容的に許容される塩基付加塩を意味し、その酸性プロトンは、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、NaまたはK)、アルカリ土類イオン(例えば、MgまたはCa)またはアルミニウムイオンにより置き換えられているか;または、医薬的許容される有機塩基、例えばジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなど;もしくは医薬的許容される無機塩基、例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどと配位している。有利には、ナトリウムまたはカリウム塩であり、好ましくはナトリウム塩である。
「局所適用」は、皮膚、粘膜および/または付属器官肢への適用を意味する。
(実施態様の説明)
デキストランは多糖類であり、より具体的には、荷電基を有しない中性の多糖類である。それは、分岐グルコースポリマー(デキストロース)である。有利には、このポリマーは、グルコースモノマーとα-1,2、α-1,3および/またはα-1,4グリコシド結合によって形成される分岐との間にα-1,6グリコシド結合を有する主鎖を含む。
デキストランは多糖類であり、より具体的には、荷電基を有しない中性の多糖類である。それは、分岐グルコースポリマー(デキストロース)である。有利には、このポリマーは、グルコースモノマーとα-1,2、α-1,3および/またはα-1,4グリコシド結合によって形成される分岐との間にα-1,6グリコシド結合を有する主鎖を含む。
テンサイ(sugar beet)発酵により製造し得る。異なる分子量のデキストラン画分の加水分解および精製により、天然のデキストランからそれを得ることが可能である。合成的に製造することもできる。
デキストランを、特に硫酸マグネシウムの存在下で、硫酸化して、デキストラン硫酸を得ることができる。
したがって、デキストラン硫酸は、水酸基の少なくとも一部が硫酸基に置き換えられたデキストランである。
デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩は、有利には、
- ビート、特にテンサイ糖(beet sugar)を発酵して、デキストランを得て、その後
- 特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、そして
- 所望により、塩化して、皮膚科学的にまたは皮膚美容的に許容されるデキストラン硫酸塩、より具体的にはデキストラン硫酸ナトリウム塩を得る
ことにより製造される。
- ビート、特にテンサイ糖(beet sugar)を発酵して、デキストランを得て、その後
- 特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、そして
- 所望により、塩化して、皮膚科学的にまたは皮膚美容的に許容されるデキストラン硫酸塩、より具体的にはデキストラン硫酸ナトリウム塩を得る
ことにより製造される。
より具体的には、デキストラン硫酸は、ナトリウム塩形態であり、有利には、
- ビート、特にテンサイ糖を発酵して、デキストランを得て、その後
- 特にギ酸による、酸性の水に溶解させ、および特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、
- 塩化して、デキストラン硫酸ナトリウム塩を得て、
- 特に水に溶解させ、エタノール中で1回以上沈殿させることにより、精製し、そして
- 特に遠心分離、乾燥(例えば真空下)および粉砕することにより、デキストラン硫酸ナトリウム塩を回収する
ことにより得ることが可能であるかまたは得る。
- ビート、特にテンサイ糖を発酵して、デキストランを得て、その後
- 特にギ酸による、酸性の水に溶解させ、および特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、
- 塩化して、デキストラン硫酸ナトリウム塩を得て、
- 特に水に溶解させ、エタノール中で1回以上沈殿させることにより、精製し、そして
- 特に遠心分離、乾燥(例えば真空下)および粉砕することにより、デキストラン硫酸ナトリウム塩を回収する
ことにより得ることが可能であるかまたは得る。
先行技術で知られているデキストラン硫酸の物理化学的特性は、水および生理食塩溶液への良好な溶解性および周囲温度にて4~10の範囲のpHの溶液中での高い安定性を有する、美容的組成物のための優れた化合物にする。デキストラン硫酸はまた、吸水特性、特に局所適用によるフリーラジカルによって誘発される損傷に対する保護効果、タンパク質または不安定物質の安定化効果、およびその優れた親水特性の結果としての水分補給効果を有すると説明されている。生物学的特性、例えば抗凝固効果、ヒアルロニダーゼ、グルコシダーゼ、エラスターゼもしくはトロンビンなどの酵素の阻害効果、または抗ウイルス活性も説明されている。
デキストラン硫酸は、合成または天然であり得る。デキストラン硫酸は、あらゆる起源のものであり得ることが理解される。
好ましくは、本発明によれば、デキストラン硫酸は、ナトリウム塩の形態で存在する。INCI名は「デキストラン硫酸ナトリウム」であり、CAS番号は「9011-18-1」である。
本発明によれば、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩は、有利には、2kDa~5000kDa、好ましくは4kDa~1000kDa、より好ましくは5kDa~100kDa、さらにより好ましくは9kDa~20kDaで構成される平均分子量を有し、同様に好ましくは、デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩は、4kDa~8kDaの分子量を有する。
好ましくは、本発明によるデキストラン硫酸は、SAFIC ALCAN社からDextralip 10Cの名称で提供されており、ナトリウム塩の形態である。
デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩は、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防に有用である。
好ましくは、炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、酒さ、扁平苔癬、痒疹、脂漏性皮膚炎およびざ瘡より選択される。好ましくは、アトピー性皮膚炎である。
本発明の別の目的は、上記で定義した少なくとも1つのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を、少なくとも1つの皮膚科学的または皮膚美容的に許容される添加剤と共に活性成分として含む、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防における使用のための、皮膚科学的または皮膚美容的な組成物に関する。
本発明の別の目的は、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防における、上記で定義した少なくとも1つのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を、少なくとも1つの皮膚科学的または皮膚美容的に許容される添加剤と共に活性成分として含む、皮膚科学的または皮膚美容的な組成物の使用に関する。
本発明の別の目的は、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防を意図とした医薬品の製造のための、上記で定義した少なくとも1つのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を、少なくとも1つの皮膚科学的または皮膚美容的に許容される添加剤と共に活性成分として含む、皮膚科学的または皮膚美容的な組成物の使用に関する。
本発明の別の目的は、上記で定義した少なくとも1つのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を、少なくとも1つの皮膚科学的または皮膚美容的に許容される添加剤と共に活性成分として含む皮膚科学的または皮膚美容的な組成物の有効量を、処置および/または予防を必要とする人に投与することを含む、炎症性皮膚疾患を処置および/または予防するための方法に関する。
特定の実施態様において、本発明による組成物は、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、酒さ、扁平苔癬、痒疹、脂漏性皮膚炎およびざ瘡より選択される炎症性皮膚疾患の処置および/または予防に用いられる。
好ましくは、本発明による組成物は、アトピー性皮膚炎の処置および/または予防に用いられる。
特定の実施態様において、本発明による皮膚科学的または皮膚美容的な組成物は、組成物の総重量に対して、0.01~1重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、さらにより好ましくは0.02~0.3重量%のデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を含む。有利には、本発明による皮膚科学的または皮膚美容的な組成物は、組成物の総重量に対して、乾燥重量で0.03%のデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を含む。
本発明による組成物は、有利には、局所的な適用、特に皮膚への適用を意図する。
したがって、本発明による組成物は、一般的に知られている局所投与のための形態、すなわち、特にローション、ムース、ゲル、分散液、エマルション、スプレー、セラム、バーム、マスクまたはクリームで提供され得る。
有利なのは、クリームまたはバームである。
本発明はまた、局所適用に適した適切な形態で存在することを特徴とする、本発明の実施態様の1つによる皮膚科学的または皮膚美容的な組成物に関する。
本発明による硫酸ナトリウム塩に加えて、これらの化合物は、一般的には、水または溶媒、例えばアルコール、エーテルまたはグリコールを一般的にベースとした生理学的に許容される媒体を含む。それらはまた、界面活性剤、錯化剤、防腐剤、安定化剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、微量元素、エッセンシャルオイル、香料、色素、艶消し(mattifying)剤、ケミカルまたはミネラルフィルター、保湿剤、温泉水などを含み得る。
以下の実施例は、その範囲を制限することなく本発明を例示する。
実施例1、プロスタグランジンPG6Kに対する炎症におけるデキストラン硫酸の影響
ケラチノサイトは表皮で最も一般的な細胞である。環境に存在するいくつかの細胞外因子に応答して、表皮は、様々な生物学的に活性なメディエーター、特に炎症性皮膚反応の開始および調節に重要な役割を果たし、免疫応答の調節にも関与する生物活性脂質、プロスタグランジン、ロイコトリエンを放出する。
ケラチノサイトは表皮で最も一般的な細胞である。環境に存在するいくつかの細胞外因子に応答して、表皮は、様々な生物学的に活性なメディエーター、特に炎症性皮膚反応の開始および調節に重要な役割を果たし、免疫応答の調節にも関与する生物活性脂質、プロスタグランジン、ロイコトリエンを放出する。
ケラチノサイトは、皮膚の薬理学的試験のための良いモデルであると考えられる。この細胞モデルは、アラキドン酸の代謝から生じるこれらのメディエーターの産生を調節する様々な化合物の能力をインビトロで決定することを可能にする。
本試験において、本発明者らは、1つのプロスタグランジン、特にプロスタサイクリンの安定な代謝物である6-ケト-PGF1α(PG6KF1α)を調査した。この代謝物は、刺激されたケラチノサイトによって生成される主要な代謝物の1つであり、アラキドン酸代謝物の生成の調節を表している(Dorris and Stokes Peebles, Mediators of inflammation, vol 2012, article ID 926968, 9 pages)。
この試験の目的は、プロスタグランジンPG6KF1αの放出に対するその効果を測定することにより、デキストラン硫酸の潜在的な抗炎症活性を探すことである。
この試験で用いた細胞株は、HaCat株(ヒトケラチノサイト)である。
細胞を、24ウェルプレート上で37℃、5%CO2の環境で、ウシ胎児血清を添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)で培養する。その後、37℃のまま60分間プレインキュベートし、試験する製剤を水に溶解させる。アラキドン酸経路の刺激物質を5時間加える。これは刺激段階であり;刺激物質は、5μMで用いられるカルシウムイオノフォアA23187(0.01%DMSO中の溶液)である。この試験において、9000~20000Daの分子量を有するSAFIC ALCANの天然デキストラン硫酸、Dextralip(登録商標)および4000~8000Daの分子量を有するGMBH & Coの合成デキストラン硫酸の2つの異なるデキストラン硫酸を試験する。同じ培地で5時間刺激した後、各ウェルの培養上清を抜き取り、3000RPMで遠心分離し、その後-20℃にて保存する。培養上清中のプロスタグランジンPG6KF1αの産生を、サプライヤーの指示に従ってEuromedex Elisaキットで測定する。統計分析を、ANOVAおよびそれに続くダネットの事後検定によって実施する。3回の独立した実験を行ったことに留意されたい。各製剤および各用量の結果は、3つのウェルで実施した測定から平均化される。したがって、対照群(刺激物質なし)は、基本的なPG6KF1αの産生を定量することを可能にする。他の製剤がない(PG6KF1αの最大産生を知ることを可能にする)、または参照製剤として用いたインドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬)の存在下、またはデキストラン硫酸の異なる濃度の存在下である、他のすべての群には刺激期間がある。
カルシウムイオノフォアA23187による刺激は、PG6KF1αの産生を著しく刺激する。非ステロイド性抗炎症薬のインドメタシンは、この産生を3分の1阻害し、これは、この試験の妥当性を確認する。10μg/mlから3mg/mlまで試験した2つのデキストラン硫酸は、PG6KF1α放出に対して統計的に有意な阻害剤効果を示す。合成デキストラン硫酸濃度の増加に応じたこの産生は、ベルカーブに似ている。同様に、天然のデキストラン硫酸では、濃度反応効果を明確に示さなかった。
本発明者らは、炎症におけるデキストラン硫酸の有効性を実証した。
実施例2、炎症におけるデキストラン硫酸のNFκB活性に対する影響
この試験の目的は、ヒトケラチノサイトにおいてTNFαによって刺激される転写因子NFκBの活性化のレベルで、デキストラン硫酸の潜在的な鎮静特性を評価することである。この試験で用いた細胞株は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子で安定的にトランスフェクトされたHaCat株(ヒトケラチノサイト)である。
この試験の目的は、ヒトケラチノサイトにおいてTNFαによって刺激される転写因子NFκBの活性化のレベルで、デキストラン硫酸の潜在的な鎮静特性を評価することである。この試験で用いた細胞株は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子で安定的にトランスフェクトされたHaCat株(ヒトケラチノサイト)である。
これらの細胞を、実施例1と同じ条件下、24ウェルプレート上で培養する。その後、それらを試験する製剤と共に60分間プレインキュベートし、水溶液の形態で培養培地に加える。刺激物質のTNFα(0.3ng/ml、培養培地で希釈)を培養物に加え、その後37℃にて5時間インキュベートする。この試験において、9000~20000Daの分子量を有するSAFICALCANの天然デキストラン硫酸、Dextralip(登録商標)を試験する。この試験において、陽性対照が用いられ、デキサメタゾン(抗炎症作用および免疫抑制作用を有する合成糖質コルチコイドホルモンを、水溶液の形態で培養培地に添加)を培養培地中2μMにて試験した。3回の独立した実験を行ったことに留意されたい。Bright-GloTM剤(細胞溶解を誘導し、これによりルシフェラーゼの放出を可能にする)およびその基質(ルシフェリン)を、発光を読み取る前に加える。生データをExcelにより分析する。群間の比較を、一元配置分散分析およびそれに続くダネットの事後検定によって実施する。
TNFα刺激(0.3ng/ml)は、NFκBの活性化を誘導する。免疫抑制剤として用いたデキサメタゾンは、この活性化を40%超阻害し(p<0.05、対TNFαなし)、これはこの試験の信頼性を確認する。
0.3および1mg/mlにて試験したデキストラン硫酸は、NFκBの活性化を減少させない。それに対して、3mg/mlの濃度にて、硫酸デキストランは、TNFαによって誘導されるNFκBの活性化を有意に42%減少させる(p<0.01)。
したがって、本発明者らは、デキストラン硫酸が鎮静特性を備えていることを実証した。
実施例3、皮膚炎症(アトピー性皮膚炎モデル)におけるデキストラン硫酸の影響
アトピー性皮膚炎またはアトピー性湿疹は、寛解期を伴って周期的に進行する慢性炎症性疾患である。アトピー性皮膚炎の病変は、特にアレルゲンに特異的なT細胞の活性化によるものである。この免疫応答は、おそらく皮膚への環境アレルゲンの浸透によるものである。皮膚バリアの破壊とその結果としてのアレルゲンの分散は、特定の免疫応答および湿疹病変の誘発に関連する。病気の起源を説明するために、2つの相補的な仮説が提案されている。第1の仮説は、皮膚のバリア機能への損傷がアレルゲンの侵入を可能にし、免疫感作を誘発するというものである。第2の仮説は、アトピーは免疫系の機能不全であり、これがTh2有利へのTh1/Th2の不均衡およびアレルゲンに特異的なIgEの産生を引き起こすというものである。これらすべての理由から、アトピー性皮膚炎は、いくつかのメカニズムを伴う複雑な疾患であると考えられている。
アトピー性皮膚炎またはアトピー性湿疹は、寛解期を伴って周期的に進行する慢性炎症性疾患である。アトピー性皮膚炎の病変は、特にアレルゲンに特異的なT細胞の活性化によるものである。この免疫応答は、おそらく皮膚への環境アレルゲンの浸透によるものである。皮膚バリアの破壊とその結果としてのアレルゲンの分散は、特定の免疫応答および湿疹病変の誘発に関連する。病気の起源を説明するために、2つの相補的な仮説が提案されている。第1の仮説は、皮膚のバリア機能への損傷がアレルゲンの侵入を可能にし、免疫感作を誘発するというものである。第2の仮説は、アトピーは免疫系の機能不全であり、これがTh2有利へのTh1/Th2の不均衡およびアレルゲンに特異的なIgEの産生を引き起こすというものである。これらすべての理由から、アトピー性皮膚炎は、いくつかのメカニズムを伴う複雑な疾患であると考えられている。
この試験において、本発明によるデキストラン硫酸の効果を、刺激されたヒトケラチノサイトに対するアトピー性皮膚炎環境を模倣するモデルで評価する。
(方法)
この試験を、標準的な条件下(37℃、5%CO2)で培養した正常なヒト上皮ケラチノサイトで実施する。培養培地は標準である(0.25ng/ml上皮細胞増殖因子(EGF)、25μg/ml下垂体抽出物および25μg/mlゲンタマイシンを添加したケラチノサイト-SFM)。試験培地は、増殖因子のない同一のものである。
この試験を、標準的な条件下(37℃、5%CO2)で培養した正常なヒト上皮ケラチノサイトで実施する。培養培地は標準である(0.25ng/ml上皮細胞増殖因子(EGF)、25μg/ml下垂体抽出物および25μg/mlゲンタマイシンを添加したケラチノサイト-SFM)。試験培地は、増殖因子のない同一のものである。
アトピー性皮膚炎環境をシミュレートするために、ケラチノサイトを、30nMにて試験する化合物、ビヒクル(水)または陽性対照、バフィロマイシン(マクロライドファミリー)を含むまたは含まない(対照)培地中で1時間プレインキュベートする。この試験で試験するデキストラン硫酸は、分子量9000~20000DaのSAFICALCANのDextralip(登録商標)である。このプレインキュベート後、ケラチノサイトを、TLRリガンド(Poly I:CおよびPamC3)と炎症性サイトカイン(IL-4およびIL-13)の混合物により24時間刺激する。刺激しない対照条件も同時に行う。細胞を24時間インキュベートする。
培養上清を回収し、遠心分離し、-80℃にて凍結する。TSLPおよびIL-8をELISAにより定量する。
3回の独立した実験を行う。統計分析を、一元配置分散分析とそれに続くダネットの事後検定により決定する。
アトピー性皮膚炎環境を模倣するための薬剤のカクテル(Poly I:C、PamC3、IL-4およびIL-13)によるケラチノサイト刺激は、24時間にてTSLP産生の増加を誘発する。陽性対照として用いたバフィロマイシンは、TSLPの産生を有意に阻害する。これらの結果は、この薬理学的試験を完全に確認する。
本発明によるデキストラン硫酸は、24時間にて測定されたTSLP産生をほぼ完全に阻害する。実際、3μg/mlのデキストラン硫酸は、TSLP産生を90%、30μg/mlで最大96%減少させる(表3の刺激条件に対して、2つの濃度でp<0.01)。それに対して、10分の1の低濃度のデキストラン硫酸は、TSLP産生の減少を引き起こさない。アトピー性皮膚炎環境により誘発されるTSLP産生に対するデキストラン硫酸の阻害効果は、明らかに濃度依存性であると考えられる。
アトピー性皮膚炎環境を模倣するための薬剤のカクテルによるケラチノサイトの刺激は、IL-8の大量産生を誘発する。バフィロマイシン(30nM)は、IL-8の産生を有意に阻害する(50%超の減少)。これらの結果はすべて、薬理学的試験を確認する。
本発明によるデキストラン硫酸は、濃度依存的にアトピー性皮膚炎環境により誘発されるIL-8産生を減少させる。試験した最低のデキストラン硫酸濃度は、IL-8の産生を阻害するのに十分ではない(表2)。それに対して、3μg/mlのデキストラン硫酸は、IL-8の産生を有意に80%超減少させる(刺激条件に対してp<0.01)。30μg/mlのデキストラン硫酸は、IL-8の産生を完全に阻害し(100%阻害)、これは、本発明によるデキストラン硫酸がアトピー性皮膚炎のこれらの選択的サイトカインを減少させるのに極めて効果的であることを示している。
(これらの試験の結論)
したがって、本発明者らは、正常なヒト上皮ケラチノサイトが、アトピー性皮膚炎環境を模倣する薬剤のカクテル(Poly I:C、PamC3、IL-4およびIL-13)による刺激の24時間後にかなりの量のTSLPおよびIL-8を産生することを示した。このモデルにおいて、本発明者らは、本発明によるデキストラン硫酸が極めて効果的であり、炎症性サイトカイン、特にアトピー性皮膚炎の発症における重要なマーカーであるTSLPのこの放出を防ぐことができ、この疾患における保護的役割を実証した。
したがって、本発明者らは、正常なヒト上皮ケラチノサイトが、アトピー性皮膚炎環境を模倣する薬剤のカクテル(Poly I:C、PamC3、IL-4およびIL-13)による刺激の24時間後にかなりの量のTSLPおよびIL-8を産生することを示した。このモデルにおいて、本発明者らは、本発明によるデキストラン硫酸が極めて効果的であり、炎症性サイトカイン、特にアトピー性皮膚炎の発症における重要なマーカーであるTSLPのこの放出を防ぐことができ、この疾患における保護的役割を実証した。
実施例4、ケラチノサイトの分化および水分補給に関与する遺伝子の調節におけるデキストラン硫酸の評価
表皮は、身体の機械的および化学的バリアとして主要な保護的役割を果たす。それは不浸透性の皮膚バリア機能が維持されることを確実にする。角質層のケラチノサイトである角質細胞は、脂質マトリックスと共に、ほとんどの部分でこの機能を確実にする。それにもかかわらず、より深い層もこの機能に固有の要素の構築に貢献する。上皮ケラチノサイトの分化能力は、選択的透過性の機能を有するバリアの構築を確実にする(Elias and Choi, Exp. Dermatol. 14(10), p 719-726, 2005)。
表皮は、身体の機械的および化学的バリアとして主要な保護的役割を果たす。それは不浸透性の皮膚バリア機能が維持されることを確実にする。角質層のケラチノサイトである角質細胞は、脂質マトリックスと共に、ほとんどの部分でこの機能を確実にする。それにもかかわらず、より深い層もこの機能に固有の要素の構築に貢献する。上皮ケラチノサイトの分化能力は、選択的透過性の機能を有するバリアの構築を確実にする(Elias and Choi, Exp. Dermatol. 14(10), p 719-726, 2005)。
ケラチノサイトの分化は、基底膜が最も分化していない皮膚の最深層から、角質細胞へのケラチノサイト分化の最終段階である角質層まで、空間および時間で調節されている(Houben et al., Skin Pharmacol. Physiol. 20(3), p 122-132, 2007)。細胞および分子の観点から、ケラチンフィラメントの形成、ケラチノサイトの角質細胞への変換、または「角質化」、および層状構造の細胞間脂質充填構造の形成が主に観察され、これは皮膚バリアの不浸透性および機能を確実にする。
タンパク質に関して、上皮の分化は主に、表皮の構造的完全性に寄与するサイトケラチンなどの構造細胞質タンパク質の発達に集中している。それらの発現は、ケラチノサイトの成熟度によって変化する。塩基性ケラチン1および酸性ケラチン10は、表皮の基底上層に存在する終末ケラチノサイト分化の初期マーカーである。後で行われるこの生物学的プロセスにおける他のマーカーの発現は、構造タンパク質がそれらの間およびケラチノサイト脂質およびトランスグルタミナーゼ(TGM)、例えばTGM1または3とブリッジを形成させる特定の主要な酵素と共に、インボルクリンなどの角質エンベロープについて同じ方法で、追跡できる(Houben et al ., Skin Pharmacol. Physiol. 20(3), p 122-132, 2007)。
角質細胞に存在する線維性マトリックスは、顆粒層のケラチノサイトと角質細胞との間の移行中に形成される。ロリクリンは、グルタミンおよびリジン残基を含む構造タンパク質であり、角質エンベロープ内の他のタンパク質への付着を可能にする。ケラトヒアリン顆粒に保存された前駆体であるプロフィラグリンから生成された塩基性のフィラグリン分子は、サイトケラチンフィラメントと結合して、その後凝集できる。カスパーゼ14によって分解されるフィラグリンはまた、角質層の天然の水分補給因子のいくつかの主要な構成要素の主要な供給源でもある。他のマーカーは、分化したケラチノサイトに特異的である。クローディン4(CLDN4)は、タイトジャンクションタンパク質の1つである。それは本質的に顆粒層で発現し、その発現はケラチノサイトの分化中に増加する。コルネオデスモシン(CDSN)は角質細胞で発現する。それはコルネデスモソームの必須タンパク質であり、そのタンパク質分解は落屑に必要である。KLK5やKLK7などのカリクレインは、キモトリプシンと同様の活性を示し、落屑に先行する細胞間接着構造のタンパク質分解、すなわち角質層の最外層の除去において役割を果たす。
同時に、ケラチノサイト脂質の合成および輸送は、皮膚バリアに不可欠な角質細胞間脂質充填構造のベースを形成し、その形成は終末表皮分化の最終段階である。この細胞外脂質マトリックスは、体液および電解質の経皮輸送の主要なバリアである(Feingold, J. Lipid Res. 48, p 2531-2549, 2007)。したがって、特定の数の酵素と脂質トランスポーターは、分化と共にケラチノサイトの発現が上方制御される。充填構造は、コレステロール、遊離脂肪酸およびセラミドの3つの脂質種間の平衡から生じる。これらの脂質は、有棘層および顆粒層で生成されるグルコシルセラミド、スフィンゴミエリン、コレステロール、リン脂質に由来する。それらは、分泌細胞小器官であり、顆粒層および角質層と融合する層状体によって輸送される。これらの脂質前駆体に加えて、層状体は、酸性および中性のリパーゼと共に、酸性スフィンゴミエリナーゼ、βグルコセレブロシダーゼまたはホスホリピダーゼA2などのリパーゼを含む多くの酵素を含む。脂質前駆体と同時に細胞外空間に送達されるこれらの酵素は、それぞれスフィンゴミエリンをセラミドに、グルコセレブロシドをセラミドに、リン脂質を遊離脂肪酸とグリセロールに変換する。SULT2B1は、分化したケラチノサイトで発現するスルホトランスフェラーゼコレステロールであり、硫酸コレステロールの合成に関与する。最近の試験はまた、硫酸コレステロールがRORαの発現増加によってフィラグリンの発現を誘導することを明らかにしている(Hanyu et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 428(1), p 99-104, 2012)。
上皮セラミドは、特異的で主要な役割を果たし、皮膚バリアの機能の本質的なマーカーである。皮膚のセラミド産生において役割を果たす酵素は、特にバリア機能が変化したときに、上皮の分化の程度と共に、その発現と活性が増加する(Feingold, 2007)。これは、皮膚セラミドの細胞外代謝に関与するaSmaseおよびβ-グルコセラミダーゼの特定のケースである。UGCG(UDP-グルコースセラミドグルコシルトランスフェラーゼ)もグルコシルセラミドの合成に関与する。UGCGは、スフィンゴ糖脂質の生合成における第1のグリコシル化工程を触媒し、層状体における脂質およびタンパク質の規則的な配置ならびに上皮バリアの維持に必要である(Jennemann et al. J. Biol. Chem. 282(5), p 3083-3094, 2007)。DGS2(スフィンゴ脂質C4-ヒドロキシラーゼ/デルタ-4デサチュラーゼ)は、スフィンゴ脂質C4-ヒドロキシラーゼとデルタ-4デサチュラーゼの両方として作用し;そのジヒドロセラミドヒドロキシラーゼ活性は、ヒトの皮膚のフィトセラミドの産生と競合する。
上皮脂肪酸に結合するためのタンパク質であるFABP-E(FABP5)は、脂質トランスポーターである。FABP-Eは、ケラチノサイトの分化において重要な役割を果たす。
角質層における水の機能の1つは、皮膚の柔軟性および正常な落屑に必要な酵素加水分解反応の活性化である(Rawlings and Matts J. Invest. Dermatol. 124(6), p 1099-1110, 2005)。角質層における水分含量が臨界レベルを下回ると、酵素反応が阻害され、角質細胞が付着し、皮膚表面に細胞が蓄積する。これは、目に見える乾燥および掻痒を生じ、皮膚が剥け、角質が剥離する。
皮膚のバリア機能はまた、微生物に対する防御も含む。上皮は、宿主の先天的な防御において積極的な役割を果たす。皮膚抗菌システムは、とりわけ、RNAse7またはプロテイナーゼ阻害剤3などのケラチノサイトの分化の状態に従ってますます発現される特定の表面脂質および特定の構成タンパク質の存在に依存する。これらのタンパク質は、抗菌活性を有する。直接的な抗菌活性を有する抗菌ペプチドの誘導性分泌に依存する自然免疫の適応要素もある。それらは、上皮細胞および炎症細胞に影響を与えることにより、炎症メディエーターとして重要な役割を果たす。抗菌ペプチドは、一般的に有棘層および顆粒層の上層において合成されるが、そこで放出される角質層において活性である。皮膚の最も試験されている抗菌ペプチドは、β-ディフェンシンおよびカテリシジンである。ヒトβ-ディフェンシンは、ヒト上皮に見られる抗菌ペプチドの主要なクラスであり、そのうちの4つが皮膚で同定されている(hBD1-4)。それらは同じファミリーに属するが、異なる経路により制御される。ヘパリンに結合する4kDaのペプチドであるヒトβ-ディフェンシン2(hBD-2またはDEFB4A)は、主要な皮膚抗菌ペプチドの1つである。
皮膚の水分補給は、皮膚血流からの経皮水供給と、バリア機能が関与する上皮水分保持の2点に依存する。しかしながら、水の損失に対するバリアは、絶対ではない。角質層を通る外部環境と内部環境の間の正常な水の交換は、経表皮水分喪失(TEWL)と呼ばれ、不感水分喪失(IWL)に固有のものである。
正常なヒトケラチノサイトを、2mg/mlにて培養培地に溶解したデキストラン硫酸と共に48時間インキュベートした。この試験で試験するデキストラン硫酸は、Welding GMBH & Coからのものであり;その分子量は4000~8000Daである。この化合物の効果を、ケラチノサイトの分化、抗菌防御および水分補給における重要性について選択した12個の標的遺伝子の分析を伴うRT-qPCR技術により評価した。塩化カルシウム(1.5mMで試験)を参照化合物(終末上皮分化を誘発する生理学的薬剤)として用いる。その後、リアルタイムPCRによる標的の発現(mRNA)の分析のために細胞を収集する。トータルRNAを、サプライヤーの指示(Roche Life Science、Meylan、France)に従って、TriPure Isolation Reagent(登録商標)で抽出した。それらを、Bioanalyser 2100(Agilent Technologies、Les Ulis、France)で分析した。mRNAを、オリゴ(dT)およびTranscriptor Reverse Transcriptaseを用いて相補DNAに逆転写した。PCRを、LightCycler(登録商標)システムでサプライヤーの指示(Roche)に従って実施した。用いたPCRミックスはSYBRグリーンIである。結果をMicrosoft Excel(登録商標)で分析した。相対量を、リボソームタンパク質L13A(RPL13A)とTATAボックス結合タンパク質(TBP)の2つの参照遺伝子で正規化することにより、各遺伝子について計算する。
(結果)
いくつかのマーカーは対照細胞では極めて弱く発現しているため、実験によれば、相対量は極めて高く、変動性であり得る。
いくつかのマーカーは対照細胞では極めて弱く発現しているため、実験によれば、相対量は極めて高く、変動性であり得る。
本発明者らは、48時間のインキュベーション後、2mg/mlで試験したデキストラン硫酸が、ケラチノサイトの脂質分化の異なるマーカー(SULT2B1、FABP5、DGS2の誘導)、ケラチノサイトのタンパク質分化の多数のマーカー(KLK7、FLG、TGM1、CASP14およびCLDN4の誘導)を有意に誘導し、抗菌ペプチドhBD2(またはDEFB4)を誘導し、最後に水分補給マーカー(FLGおよびCASP14)を誘導することを示した。これらの結果すべてを以下の表5に示す。
したがって、本発明者らは、デキストラン硫酸が、ケラチノサイトの分化を活性化し、抗菌ペプチドの発現を誘導することにより、効果的に作用することを示している。この二重の効果により、硫酸デキストランは皮膚のバリアを大幅に回復し、皮膚の微生物防御を強化し、皮膚の脱水を防ぐと結論付けることができる。本発明者らは、デキストラン硫酸が炎症性皮膚疾患の処置および/または予防に有用であることを実証している。
Claims (14)
- - ビートを発酵して、デキストランを得て、その後
- 特に硫酸マグネシウムの存在下で、デキストランを硫酸化して、デキストラン硫酸を得て、そして
- 所望により、塩化して、皮膚科学的にまたは皮膚美容的に許容されるデキストラン硫酸塩を得る
ことにより得られる、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防における使用のためのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩。 - 2kDa~5000kDaの分子量を有する、請求項1に記載の使用のためのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩。
- 9kDa~20kDaの分子量を有する、請求項1に記載の使用のためのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩。
- デキストラン硫酸がナトリウム塩形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩。
- 炎症性皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、酒さ、扁平苔癬、痒疹、脂漏性皮膚炎およびざ瘡より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩。
- 炎症性皮膚疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩。
- 少なくとも1つのデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を、少なくとも1つの皮膚科学的にまたは皮膚美容的に許容される添加剤と共に活性成分として含む、炎症性皮膚疾患の処置および/または予防における使用のための、皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩が2kDa~5000kDaの分子量を有する、請求項7に記載の使用のための皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- デキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩が9kDa~20kDaの分子量を有する、請求項7に記載の使用のための皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- 組成物の総重量に対して、0.01~0.5重量%のデキストラン硫酸またはその皮膚科学的もしくは皮膚美容的に許容される塩を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用のための皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- デキストラン硫酸がナトリウム塩形態である、請求項7~10のいずれか一項に記載の使用のための皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- 炎症性皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、酒さ、扁平苔癬、痒疹、脂漏性皮膚炎およびざ瘡より選択される、請求項7~11のいずれか一項に記載の使用のための皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- 炎症性皮膚疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項7~11のいずれか一項に記載の使用のための皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
- 局所投与に適した形態である、請求項7~13のいずれか一項に記載の皮膚科学的または皮膚美容的な組成物。
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