JP2022521079A - 止血酵素及びカルボキシメチルキトサンを含む血液凝固検査用組成物及びその用途 - Google Patents

止血酵素及びカルボキシメチルキトサンを含む血液凝固検査用組成物及びその用途 Download PDF

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Abstract

本発明は、血液凝固検査用組成物及びその用途に関し、より詳細には、止血酵素(hemostatic enzyme)及びカルボキシメチルキトサンを含む血液凝固検査用組成物及びその用途に関する。本発明に係る血液凝固検査用組成物は、止血酵素の活性及び凝塊強度を向上させてフィブリン形成速度を増加させるので、高い敏感度かつ速い速度で血液凝固検査を行うことができ、有用である。

Description

本発明は、血液凝固検査用組成物及びその用途に関し、より詳細には、止血酵素(hemostatic enzyme)及びカルボキシメチルキトサンを含む血液凝固検査用組成物及びその用途に関する。
フィブリノゲンとトロンビンは、血管損傷後の止血に関与し、血塊形成に必須な重要タンパク質である。フィブリノゲンとトロンビンは、典型的な凝塊(clot)形成反応を開始せずに粉末状又は非水性懸濁液で配合され得るので、タンパク質を溶解可能な水性媒質又は他の液体環境中でこれらのタンパク質を水和する前までは、フィブリン凝塊の形成を防止することができる。これらのタンパク質の粉末状の混合物は、局所的止血、組織の復旧、薬物伝達などを含む様々な潜在的な生医学用途を有する。また、これらのタンパク質の混合物は、粉末状でキャリア(carrier)又は基質、又は別の医療装置上にローディング(loading)され、例えば、止血装置として使用可能な製品を形成することができる。
フィブリノゲンは、最も頻繁には、凝塊形成の速度を基準にしてフィブリノゲン機能性を測定する、クラウス(Clauss)が創始した方法により測定される。典型的なクラウス分析法では、未知量の溶解性フィブリノゲンを含有する試料を過量のトロンビンと共に配合する。このようなフィブリノゲンとトロンビンの比率では、フィブリノゲンが速度制限反応物であり、凝塊形成速度はフィブリノゲン濃度の関数となる。速い凝塊形成時間は、フィブリノゲンの濃度が高いということを示すだろう。逆に、長い凝塊形成時間は、機能性フィブリノゲンの濃度が低いということを示すだろう。機能性フィブリノゲンの量は、試料の凝塊形成時間を標準曲線の作成のための一連の標準物の凝塊形成時間と比較することによって定量することができる。試料中のフィブリノゲンの濃度は、標準物の凝塊形成時間から得た方程式に基づいて数学的に測定することができる。
Instrument Lab.社のFibrinogen C試薬は、前記原理のフィブリノゲンの濃度を検出できる診断試薬であるが、敏感度が低いという問題点がある。
一方、蛇毒が人を含む哺乳類の血液凝固系及び血栓溶解系に及ぼす影響は、古くから多く研究されてきており、多数の有効成分が分離され、その活性が明らかにされた。蛇毒を構成する様々な成分は、フィブリン凝固(fibrin clotting)又は血小板凝集などに直間接的に影響を与え、凝固促進剤(pro-coagulant)或いは抗凝固剤(anticoagulant)としての機能を有していることが知られている(Meaume,J.Toxicon,4:2558(1966);Matsuiet al.,Biochim.Biophys.Acta.,1477:146-156(2000))。このうち一部の成分は、血栓症の診断及び治療に広範囲に用いられている。そのうちフィブリノ-ペプチドを切断してフィブリノゲンをフィブリンに転換させるトロンビン様酵素(thromnbin-like enzyme)が現在まで20種以上が報告されており、一部はcDNA配列まで究明された。
トロンビン様酵素の作用は、哺乳類本来の血液凝固タンパク質であるトロンビンと違い、初期にはフィブリノゲン分子のフィブリノペプチドAを加水分解してdes-A-フィブリンという不安定なフィブリン凝塊(fibrin clot)を形成するが、時間が経つにつれ、この不安定なフィブリン凝塊は、生体内の血栓溶解系(fibrinolysis system)が作動しながら速く分解され、結果的に血中のフィブリノゲン濃度を減少させる(Pirkle,H.,and Stocker,K.Thromb.Haemost.65:444-450(1991);Marsh,N.A.,Blood Coagul.Fibrinolysis,5:339-410(1994))。
実際の臨床では、このような両面的な酵素特性を用いて、止血剤として用いることもあれば、血栓の予防及び治療剤として応用していることもある。また、この酵素は、血液内の他の凝固因子などには影響を与えない上に、血小板の活性化にも影響を及ぼさない利点があるので、手術の1~2時間前に少量(2 NIH unit/60kg)を筋肉及び静脈注射すると、効果的な止血活性を示す。一方、酵素の投与量及び投与時間を調節することによって、血中内のフィブリノゲン濃度を、血栓溶解酵素を用いるときに発生し得る出血のような副作用なしで下げることができ、この過程で形成されたdes-A-フィブリンとFDP(fibrinogen degradation products)の放出によって血管内皮細胞を刺激してプラスミノーゲン活性子の生成を誘導し、トロンビンの活性を抑制して血栓症の予防及び治療にも用いられている。(Schumacher et al.,Thromb.Res.81:187-194(1996);及びBell W.R.Jr.,Drugs,54:18-30(1997))。
臨床で実際に用いられているトロンビン様酵素は、全て蛇毒から分離精製した天然型のタンパク質であり、最も代表的なものは中南米の毒蛇であるBothrops atrox moojeniの毒から分離したバトロキソビンである。スイスのPentapharm社が独占販売しており、レプチラーゼ(reptilase)(止血用)、デフィブラーゼ(defibrase)(血栓溶解用)、レプチラーゼ試薬(reptilase-reagent)(診断試薬用)などの商品名でも市販されている。また、中南米の毒蛇であるBothrops jararacaの毒から精製したボトロパーゼ(botropase)(止血用、イタリアRavizza社)、Malayan pit viperとCalloselasma rhodostomaの毒から分離したアンクロド(ancrod)(米国Knoll Pharmacetical社)なども販売されている。
また、最近では手術時の出血防止及び縫合目的の自家フィブリン接合剤(autologous fibrin sealant)にバトロキソビンを用いたVivostat System(デンマーク、Vivosolution社)などが脚光を浴びている。
韓国特許第10-1901150号では、糖鎖化(glycosylation)された組換えバトロキソビンからなる組換えバトロキソビン混合組成物及びこれを含む止血用組成物について開示しているが、組換えバトロキソビンを用いて血液凝固検査に用いる方法は知られていない。
そこで、本発明者らは、上記の問題点を解決し、高い敏感度を有する血液凝固検査用組成物を開発するために鋭意努力した結果、止血酵素(hemostatic enzyme)とカルボキシメチルキトサンを含む組成物を用いてフィブリノゲンの濃度を測定する場合、高い敏感度及び正確度でフィブリノゲンの濃度を検出できることを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、血液凝固検査用組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、前記組成物を用いたフィブリノゲンの濃度測定方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記組成物を用いた抗凝固物質のスクリーニング方法を提供することである。
前記目的を達成するために、本発明は、止血酵素(hemostatic enzyme)及びカルボキシメチルキトサン(carboxymethyl chitosan,CMCS)を含む血液凝固検査用組成物を提供する。
本発明は、また、a)前記組成物を血清含有サンプルに添加して凝塊(clot)形成速度を測定する段階;及びb)凝塊形成速度からフィブリノゲン濃度を導出する段階を含む、フィブリノゲン濃度測定方法を提供する。
本発明は、また、a)フィブリノゲンを含む血清含有サンプルに止血酵素及びカルボキシメチルキトサンを添加する段階;b)前記混合物に候補物質を添加する段階;c)凝塊(clot)形成時間を測定する段階;及びd)凝塊形成時間が候補物質を添加していない対照群に比べて増加する候補物質を抗凝固物質として選別する段階を含む、抗凝固物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明は、また、止血酵素(hemostatic enzyme)及びカルボキシメチルキトサン(carboxymethyl chitosan,CMCS)を含む組成物の血液凝固検査用途を提供する。
止血酵素(hemostatic enzyme)とカルボキシメチルキトサンの組合せによるシナジー効果を確認したグラフであり、(A)は血漿において凝塊(clot)時間を比較したグラフで、(B)はフィブリノゲンにおいて凝塊(clot)時間を比較したグラフで、(C)はrTLH濃度別凝塊(clot)時間を示すグラフで、(D)はCMCS濃度別凝塊(clot)時間を示すグラフである。
様々な種類の止血酵素(組換え止血酵素(rTLH)、天然型バトロキソビン(nBat)、トロンビン(Thrombin)、ボトロパーゼ(Botropase)、アンクロド(Ancrod)、スリング(Suling)の血漿凝塊時間(A)、及びフィブリノゲン凝塊時間(B)を測定した結果であり、酵素単独及びカルボキシメチルキトサンを含む酵素組成物を比較した結果である。
カルボキシメチルキトサンの有無によって、組換え止血酵素によりフィブリノゲンアルファ鎖(α-chain)が切られる時間を確認した結果である。
合成基質を用いて、カルボキシメチルキトサンによる組換え止血酵素(rTLH)の活性を測定した結果であり、(A)は組換え止血酵素の活性程度を示すグラフで、(B)は定量的に測定した数値を整理した表である。
組換え止血酵素の凝塊(clot)形成強度をカルボキシメチルキトサンの濃度に従って測定した結果であり、(A)は凝塊形成程度を示すグラフで、(B)は定量的数値を示す表である。
本発明に係る組換え止血酵素及びカルボキシメチルキトサンを用いてフィブリノゲン濃度を測定した結果である。
本発明に係る組換え止血酵素及びカルボキシメチルキトサン含有組成物に塩化カルシウムを追加してフィブリノゲン濃度を測定した結果である。
本発明に係る組換え止血酵素及びカルボキシメチルキトサン含有組成物に塩化カルシウムを追加して血清内の低い濃度のフィブリノゲンを検出した結果である。
本発明に係る組換え止血酵素及びカルボキシメチルキトサン含有組成物を用いてフィブリノゲンを測定するとき、結果値に影響を与え得る干渉因子であるヘモグロビン、ビリルビン、ヘパリンなどを含有量別にプラズマに添加してフィブリノゲン濃度を検出した結果である。
本発明に係る組換え止血酵素及びカルボキシメチルキトサン含有組成物を用いて測定したフィブリノゲン測定値が国際標準物質の結果値と一致するか否かを確認した結果である。
別の方式で定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家に通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法及び以下に記述する実験方法は、本技術分野によく知られており、通常用いられるものである。
本発明では、止血酵素(hemostatic enzyme)とカルボキシメチルキトサンを含有した組成物を用いて血液凝固検査を行う場合、高い敏感度及び速い速度で血液凝固検査を行うことができる、ということを確認しようとした。
すなわち、本発明の一実施例では、カルボキシメチルキトサンが止血酵素(hemostatic enzyme)の酵素活性と凝塊強度(clot strength)を向上させるということを確認し(図1~図5)、トロンビン様酵素(TLE;Thrombin-like Enzyme)及びカルボキシメチルキトサンを含む組成物を用いてフィブリノゲン濃度を測定する場合、商用製品に比べて低い濃度のフィブリノゲンが検出できることを確認した(図6~図8)。
したがって、本発明は一観点において、止血酵素(hemostatic enzyme)及びカルボキシメチルキトサン(carboxymethyl chitosan,CMCS)を含む血液凝固検査用組成物に関する。
本発明において、前記止血酵素(hemostatic enzyme)は、止血効果を示す酵素であれば制限なく利用可能であるが、好ましくは、天然型若しくは組換えトロンビン様酵素(Thrombin like enzyme,TLE)、又は天然型若しくは組換え止血酵素(rTLH;recombinant Thrombin-like Hemocoagulase)であってよく、より好ましくは、トロンビン、組換えバトロキソビン、天然型バトロキソビン(nBat)、トロンビン(Thrombin)、ボトロパーゼ(Botropase)、アンクロド(Ancrod)及びスリング(Suling)よりなる群から選ばれることを特徴とし得るが、これに限定されない。
本発明で使われる用語“組換えバトロキソビン”は、天然型バトロキソビンのcDNA配列を変形させてピキアパストリス(Pichia pastoris)で製造したバトロキソビンを意味し、これの製造方法は公開特許WO2009/084841に詳細に開示されており、この公開特許文献は本発明に参照によって組み込まれる。
本発明において、用語“BU”は、バトロキソビン単位(Batroxobin unit)を意味し、2BUは、血漿を19±0.2秒で固める量のことを意味する。BUは、天然型バトロキソビン(NIBSC)の力価スタンダードグラフを用いて力価計算ができる。
本発明において、前記血液凝固検査は、血液凝固反応と関連した検査であれば制限なく利用可能であるが、好ましくは、トロンビン時間(Thrombin time,TT)測定、レプチラーゼ時間(Reptilase time)測定、及びフィブリノゲン(fibrinogen)濃度測定よりなる群から選ばれることを特徴とし得る。
本発明において、トロンビン時間は、標準化された量のトロンビンを血漿に添加してから凝塊が形成されるまでの時間を測定する方法であり、この際のトロンビンを本発明の組成物に代替可能である。本発明の組成物を用いれば、ヘパリン、アスピリンなどのような抗凝固剤の影響を受けない。
本発明において、レプチラーゼ時間は、バトロキソビンを血漿に添加してから凝塊が形成されるまでの時間を測定する方法であり、この際のバトロキソビンを本発明の組成物に代替可能であり、抗凝固剤の影響を受けない。
本発明において、フィブリノゲン濃度は、クラウス方法(clauss method)を用いて得ることを特徴とし得る。
クラウス方法は、過量のトロンビン(35~200U/ml)を希釈したサンプル血漿に投入して凝塊形成時間を測定し、標準曲線と比較してフィブリノゲン濃度を決定する方法である。
標準曲線は、フィブリノゲン濃度を知っている標準血漿を希釈して作製したサンプルで凝塊形成時間を測定することによって濃度と時間との相関関係を示すグラフであり、g/1形式で構成される。
本発明の血液凝固検査は、標準曲線を生成して直接比較分析することができるが、好ましくは、自動化機器を用いて行うことを特徴とし得る。
本発明において、前記自動化機器は、血液凝固検査を行える機器であれば制限なく利用可能であり、好ましくは、ACL Family、ACL Futura、ACL Advance、ACL TOP Family、ACL10000(Instrument Lab.)、Thrombotimer(Behnk Electronik)、Sysmex CA1500、CA660、CA620、CS5100、CS2500、CS1600(Simens)、STA-Revolution、STA-R Max、STA Compact Max及びSTA Satellite(Stage)よりなる群から選ばれることを特徴とし得るが、これに限定されない。
本発明において、前記組換え止血酵素は、0.1~100BU/mlの濃度で含むことができ、好ましくは0.5~90、0.5~80、1~70、2~60、2.5~50BU/mlの濃度で含むことができ、最も好ましくは50BU/ml濃度で含むことを特徴とし得る。
本発明において、前記カルボキシメチルキトサンは、0.1~100mg/ml濃度で含むことができ、好ましくは0.5~30、0.5~20、0.5~15、0.5~12、0.5~10、0.8~30、0.8~20、0.8~15mg/ml濃度で含むことができ、最も好ましくは1mg/ml濃度で含むことを特徴とし得る。
本発明において、前記組成物は、塩化カルシウム(CaCl)をさらに含むことができ、その濃度は、0~100mM、好ましくは0.5~30、0.5~20、0.5~15、0.5~12、0.5~10、0.8~30、0.8~20、0.8~15、0.8~12mMの濃度で含むことができ、最も好ましくは10mMの濃度で含むことを特徴とし得る。
本発明において、前記組成物は、1~100mMのバッファーをさらに含むことができ、前記バッファーは、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid,MES)、マレイン酸塩(Maleate)、クエン酸塩(Citrate)、ビス-トリス(BIS-Tris)、リン酸塩(Phosphate)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid,ADA)、炭酸塩(Carbonate)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(piperazine-N,N’-bis(2-ethanesulfonic acid),PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(N-(2-Acetamido)-2-aminoethanesulfonic acid,ACES)、3-モルフォリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(3-Morpholino-2-hydroxypropanesulfonic acid,MOPSO)、イミダゾール(Imidazole)、ビス-トリス-プロパン(BIS-Tris-Propane)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(N,N-bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic acid,BES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid,MOPS)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-2-アミノエタンスルホン酸(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-2-aminoethanesulfonic acid,TES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid,HEPES)、3-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(3-Bis(2-hydroxyethyl)amino-2-hydroxypropane-1-sulfonic acid,DIPSO)、3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(3-[Tris-(Hydroxymethyl)Methylamino]-2-Hydroxypropane Sulphonic Acid,TAPSO)、トリエタノールアミン(triethanolamine,TEA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(N-(2-Hydroxyethyl)-piperazine-N'-2-hydroxypropanesulfonic acid,HEPPSO)、ピペラジンー-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸(Piperazine-1,4-bis(2-hydroxy-3propanesulfonic acid),POPSO)、トリシン(Tricine)、グリシルグリシン(Glycylglycine)、トリス(Tris)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]プロパン-1-スルホン酸(3-[4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-yl]propane-1-sulfonic acid,HEPPS,EPPS)、ビシン(Bicine)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-3-aminopropanesulfonic acid,TAPS)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-Amino-2-methyl-1,3-propanediol,AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(N-(1,1-Dimethyl-2-hydroxyethyl)-3-amino-2-hydroxypropanesulfonic acid,AMPSO)、タウリン(Taurine)及びホウ酸(Boric acid)よりなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とし、最も好ましくは、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(3-N-morpholino)propanesulfonic acid,MOPS)を含むことを特徴とし得るが、これに限定されない。
本発明において、前記組成物は、0.1~10mg/mlの安定化剤をさらに含むことを特徴とし得る。
本発明において、前記安定化剤は、糖アルコール、マルトース、ソルビトール、マンノース、グルコース、トレハロース、アルブミン、リシン(lysine)、グリシン、ゼラチン(gelatin)、PEG及びTween 80から選ばれる一つ以上であることを特徴とし得るが、これに限定されない。
本発明は、また、a)前記組成物を血清含有サンプルに添加して凝塊(clot)形成速度を測定する段階;及びb)凝塊形成速度からフィブリノゲン濃度を導出する段階を含む、フィブリノゲン濃度測定方法に関する。
本発明において、前記血清含有サンプルは血液であってよく、好ましくは、血液から分離された血清であることを特徴とし得るが、これに限定されない。
本発明は、他の観点において、a)フィブリノゲンを含む血清含有サンプルに止血酵素及びカルボキシメチルキトサンを添加する段階;b)前記混合物に候補物質を添加する段階;c)凝塊(clot)形成時間を測定する段階;及びd)凝塊形成時間が候補物質を添加していない対照群に比べて増加する候補物質を抗凝固物質として選別する段階を含む、抗凝固物質のスクリーニング方法に関する。
本発明において、前記候補物質は、天然化合物、合成化合物、DNA、RNA、ペプチド、酵素、リガンド、細胞抽出物又は哺乳動物の分泌物であることを特徴とし得る。また、タンパク質、非ペプチド性化合物、発酵生産物、植物抽出液又は血漿などがあり、前記化合物は、新規化合物又は周知の化合物であってよく、好ましくは合成又は天然化合物のライブラリーから得ることができる。
このような化合物のライブラリーを得る方法は、当業界に公知されている。合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical CO.(UK)、Comgenex(USA)、Brandon Associates(USA)、Microsource(USA)及びSigma-Aldrich(USA)から商業的に購入可能であり、天然化合物のライブラリーは、Pan Laboratories(USA)及びMycoSearch(USA)から商業的に購入可能である。試料は、当業界に公知の様々な組合せライブラリー方法によって得ることができ、例えば、生物学的ライブラリー、空間アドレッサブルパラレル固相又は液相ライブラリー(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries)、デコンボリューションが要求される合成ライブラリー方法、“1-ビード1-化合物”ライブラリー方法、そして親和性クロマトグラフィー選別を用いる合成ライブラリー方法によって得ることができる。分子ライブラリーの合成方法は、DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,6909,1993;Erb et al.Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,11422,1994;Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37,2678,1994;Cho et al.,Science 261,1303,1993;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2059,1994;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2061;Gallop et al.,J.Med.Chem.37,1233,1994などに開示されている。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
実施例1:組換えバトロキソビン発現ベクターの構築、分離、精製
大韓民国特許第10-1801150号に開示された方法で組換えバトロキソビン発現ベクターを構築して分離及び精製した後、冷蔵庫(2~8℃)に保管して後の分析に活用した。
実施例2:組換えバトロキソビン及びカルボキシメチルキトサンのシナジー効果の確認
2-1.血漿凝塊時間の確認
ヒト血漿(Innovative Reserch,米国)を購入して1mlずつ分注して凍結しておいた。測定時に37℃で迅速に溶かして用いた。
分析用試料としては、rTLH及び天然型バトロキソビン(hyphen、米国)、トロンビン(Sigma、米国)、ボトロパーゼ(Ravizza、イタリア)、アンクロド(Knoll Pharmacetical、米国)、スリング(Konruns、中国)を各10BU/ml(天然型バトロキソビン基準)となるようにサリンで希釈した後、10mM Tris-HCl、pH6.8又はCMCS及びCS(chitosan)と希釈して5BU/mlの濃度にした。
各試料と血漿は、37℃で10分間予熱した後、Thrombotimerで血漿300ulに試料100ulを入れ、凝固までの時間を測定した。
その結果、図1に示すように、カルボキシメチルキトサン含有rTLHの血漿凝塊時間が、キトサン含有rTLH又はrTLHのみ含有組成物に比べて早いことが確認できた。
2-2.フィブリノゲン時間の確認
フィブリノゲン(Sigma,米国)を購入し、2mg/ml濃度で溶かした。
分析用試薬は、前記血漿凝塊時間の確認組成物と同様に作った。
試料とフィブリノゲンは、ACL10000のFIB-Cプロトコルに合わせて機械に装着した後、プログラムによって測定した。
その結果、図1及び図2に示すように、rTLH+CMCS組成物のフィブリノゲン凝塊時間がrTLH only又はrTLH+CS(キトサン)に比べて早いことを確認した。
2-3.フィブリノゲンα鎖切断時間の確認
ヒトフィブリノゲンを2mg/mLの濃度に溶かし、バッファー又はCMCSを入れてよく混ぜた後、rTLHを入れて反応させた。反応時間は10~30秒までにし、反応が終わると直ちに5X SDS-PAGE試料バッファーを入れ、100℃で5分間加熱して反応を終えた。サンプルは、12%SDS-PAGEゲルにローディングして2時間電気泳動し、ゲルはクマシーブルー(coomassie blue)で染色した。
その結果、図3に示すように、CMCSを添加していない場合には、30秒でフィブリノゲンα鎖が完全に切断され、CMCSを添加している場合には、10秒でフィブリノゲンα鎖が完全に切断されることを確認した。
2-4.酵素活性の確認
トロンビン基質であるS-2238(hyphen,米国)を購入し、20mMの濃度に溶かした。rTLH活性測定時の最終濃度を25、50、100、200、400uMにして測定し、希釈するために100mM Tris-Hcl、pH6.8を添加した。
分析用試料は、rTLHを10BU/ml濃度にし、10mM Tris-HCl、pH6.8又はCMCSと混合した。
5BU/ml又は5BU/ml+10mg/ml CMCSで作られた試料は、96ウェルプレートに各20ulを入れ、濃度別トロンビン基質を180ulずつ入れた後、ELISAを用いて37℃で20分間吸光度を測定した。
その結果、図4に示すように、CMCSがrTLHの酵素活性を増加させることを確認した。
2-5.凝塊強度(clot strength)の確認
ラット全血(Rat whole blood)を購入して使用した。
分析用試料は、rTLHを5BU/ml濃度にした。
ラット全血300ulにCMCSを濃度別(0.1、0.25、0.5mg/ml)に20ulを入れて混ぜた後、rTLH 20ul、CaCl 20ul、血300ulの比率でROTEMを用いて1時間測定した。
その結果、図5に示すように、CMCSの濃度に依存して凝塊強度が増加することを確認した。
実施例3:組換えバトロキソビン及びカルボキシメチルキトサン混合物ベースのフィブリノゲン濃度測定
実施例1で製造した組換えバトロキソビン2.5BU/ml又は5BU/mlを含み、カルボキシメチルキトサン10mg/mlを含む試薬を用いて、濃度別フィブリノゲンの検出をACL10000FIB_Cプロトコルを用いて試みた。
その結果、図6に示すように、0.3mg/mlのフィブリノゲンが検出可能であることを確認した。
また、前記条件に10mMの塩化カルシウム(CaCl)を追加して行った結果、図7に示すように、0.2mg/mlのフィブリノゲンを検出可能であることが確認できた。
のみならず、前記組成物を用いて血清内のフィブリノゲン濃度0.15mg/mlの濃度まで検出できることを確認したが(図8)、これは、最も優れた商用フィブリノゲン検出試薬の検出限界が0.35mg/mlであるのに比べて、著しく優れていることが確認できた。
実施例4:組換えバトロキソビン及びカルボキシメチルキトサン混合物ベースのフィブリノゲン濃度測定試薬の干渉性能試験
異常血液及び抗凝固剤を含む血液において測定値の干渉があるかどうか確認するために、干渉性能を確認した。キャリブレーション血漿(Calibration plasma)をACL TOP300装備のFIB-Cプロトコルに合わせて機械に装着した後、プログラムによって測定して検量線(calibration curve)を作った。干渉物質としては、ヘモグロビン、ビリルビン、ヘパリンを使用して、各試薬を高濃度で溶かし、血漿に濃度に合わせて添加して測定した。
その結果、図9に示すように、ヘモグロビンは500mg/dL、ビリルビンは40mg/dLまで、測定結果値に影響がなかった。特に、抗凝固剤であるヘパリンは、10U/mL濃度まで測定値に影響がないことを確認し、干渉限界が1U/mLである最も優れた商用フィブリノゲン検出試薬に比べて干渉がないことが確認できた。
実施例5:組換えバトロキソビン及びカルボキシメチルキトサン混合物ベースのフィブリノゲン濃度測定試薬の正確度確認試験
製造された試薬を用いてフィブリノゲンの濃度試験測定値と真値との一致度を確認する試験であり、公認された参考値を有する国際標準物質を使用する。標準物質は、NIBSCの3rd international standard for fibrinogen plasma(09/264)を使用した。標準物質と試薬をACL TOP装備のプロトコルに合わせて装着した後、プログラムによって測定した。
その結果、図10に示すように、前記組成物を用いて測定した結果値は、国際標準物質の結果値と比較して±3%以内の差を示したが、これは、最も優れた商用フィブリノゲン検出試薬の正確度測定結果値が±15%以内であることに比べて、著しく優れていることが確認できた。
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態に過ぎなく、これによって本発明の範囲が制限されないことは明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とそれらの等価物によって定義されると言えよう。
本発明に係る血液凝固検査用組成物は、止血酵素(hemostatic enzyme)の活性及び凝塊強度を向上させてフィブリン形成速度を増加させるので、高い敏感度かつ速い速度で血液凝固検査を行うことができ、有用である。

Claims (12)

  1. 止血酵素(hemostatic enzyme)及びカルボキシメチルキトサン(carboxymethyl chitosan,CMCS)を含む、血液凝固検査用組成物。
  2. 前記血液凝固検査は、トロンビン時間(Thrombin time,TT)測定、レプチラーゼ時間(Reptilase time)測定及びフィブリノゲン(fibrinogen)濃度測定よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  3. 前記止血酵素(hemostatic enzyme)は、トロンビン、組換えバトロキソビン、天然型バトロキソビン、ボトロパーゼ(Botropase)、アンクロド(ancrod)及びスリング(Suling)よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  4. 前記止血酵素は、0.1~100BU/ml濃度で含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  5. 前記カルボキシメチルキトサンは、0.1~100mg/ml濃度で含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  6. 0~100mMの塩化カルシウム(CaCl)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  7. 1~100mMのバッファーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  8. 前記バッファーは、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid,MES)、マレイン酸塩(Maleate)、クエン酸塩(Citrate)、ビス-トリス(BIS-Tris)、リン酸塩(Phosphate)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid,ADA)、炭酸塩(Carbonate)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(piperazine-N,N’-bis(2-ethanesulfonic acid),PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(N-(2-Acetamido)-2-aminoethanesulfonic acid,ACES)、3-モルフォリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(3-Morpholino-2-hydroxypropanesulfonic acid,MOPSO)、イミダゾール(Imidazole)、ビス-トリス-プロパン(BIS-Tris-Propane)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(N,N-bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic acid,BES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid,MOPS)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-2-アミノエタンスルホン酸(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-2-aminoethanesulfonic acid,TES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid,HEPES)、3-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(3-Bis(2-hydroxyethyl)amino-2-hydroxypropane-1-sulfonic acid,DIPSO)、3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(3-[Tris-(Hydroxymethyl)Methylamino]-2-Hydroxypropane Sulphonic Acid,TAPSO)、トリエタノールアミン(triethanolamine,TEA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(N-(2-Hydroxyethyl)-piperazine-N'-2-hydroxypropanesulfonic acid,HEPPSO)、ピペラジンー-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸(Piperazine-1,4-bis(2-hydroxy-3propanesulfonic acid),POPSO)、トリシン(Tricine)、グリシルグリシン(Glycylglycine)、トリス(Tris)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]プロパン-1-スルホン酸(3-[4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-yl]propane-1-sulfonic acid,HEPPS,EPPS)、ビシン(Bicine)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸(N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-3-aminopropanesulfonic acid,TAPS)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-Amino-2-methyl-1,3-propanediol,AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(N-(1,1-Dimethyl-2-hydroxyethyl)-3-amino-2-hydroxypropanesulfonic acid,AMPSO)、タウリン(Taurine)及びホウ酸(Boric acid)よりなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項7に記載の血液凝固検査用組成物。
  9. 0.1~10mg/mlの安定化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の血液凝固検査用組成物。
  10. 前記安定化剤は、糖アルコール、マルトース、ソルビトール、マンノース、グルコース、トレハロース、アルブミン、リシン、グリシン、ゼラチン(gelatin)、PEG及びTween 80から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項9に記載の血液凝固検査用組成物。
  11. 下記の段階を含むフィブリノゲン濃度測定方法:
    a)請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を血清含有サンプルに添加し、凝塊(clot)形成速度を測定する段階;及び
    b)凝塊形成速度からフィブリノゲン濃度を導出する段階。
  12. 下記の段階を含む抗凝固物質のスクリーニング方法:
    a)フィブリノゲンを含む血清含有サンプルに止血酵素及びカルボキメチルキトサンを添加する段階;
    b)前記混合物に候補物質を添加する段階;
    c)凝塊(clot)形成時間を測定する段階;及び
    d)凝塊形成時間が候補物質を添加していない対照群に比べて増加する候補物質を抗凝固物質として選別する段階。
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