JP2022520198A - 4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの精製方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、(a)モノクロロベンゼン中に粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを含む懸濁液を提供する工程と、(b)懸濁液を固液分離して、残留水分含有4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを得る工程と、(c)モノクロロベンゼンで、残留水分含有4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを洗浄する工程と、(d)任意に、工程(a)~(c)を繰り返す工程とを含む、4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの精製方法に関する。
Description
本発明は、1-クロロ-4(4-クロロフェニル)スルフィニルベンゼン又はビス(4-クロロフェニル)スルホキシドとも呼ばれる4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを精製する方法に関する。
その製造方法に応じて、製造された4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド(以下、DCDPSO)は一般に、不純物、例えば2,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド又は2,2’-ジクロロジフェニルスルホキシドのような異性体、触媒残余、又はその他の副産物を含有する。これらの不純物を除去するために、いくつかの方法において、4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを結晶化させて、溶媒中に粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを含有する懸濁液を形成し、この粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを懸濁液から分離する。
DCDPSOは、例えば、ポリマー、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリフェニレンスルホンのようなポリアリーレンエーテルを調製するためのモノマーとして、又は医薬品、染料及び農薬の中間体として使用される4,4-ジクロロジフェニルスルホンを製造するための前駆体として使用することができる。
DCDPSOの製造にはいくつかの方法が知られている。1つの方法は、触媒、例えば塩化アルミニウムの存在下でチオニルクロリド及びクロロベンゼンを出発材料として使用するフリーデル・クラフツ反応である。一般的には、チオニルクロリドとクロロベンゼンの反応は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの製造における第1の部分として開示されており、これにより、チオニルクロリドとクロロベンゼンの反応によって中間反応生成物が得られ、この中間反応生成物が高温で加水分解され、その後に酸化されて4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを得る。
硫黄含有ジアリール化合物の一般的な製造方法は、例えば、Sun,X.ら,「ルイス酸で触媒するチオニルクロリドとセレンクロリドの求電子性芳香族置換反応、置換基効果、及び反応機構に関する研究」,Journal of Chemical Research,2013年,736~744頁、Sun,X.ら,「ベンゼンとチオニルクロリドの塩化アルミニウム促進の求電子性芳香族置換、及び硫黄(IV)から硫黄(II)への新規還元反応による、ジフェニルスルホキシド及びジフェニルスルフィドの生成」,Phosphorus,Sulfur,and Silicon,2010年,第185巻,2535~2542頁、及びSun,X.ら,「塩化鉄(II)(FeCl3)で触媒するクロロベンゼンとチオニルクロリド(SOCl2)の求電子性芳香族置換、及び硫黄でのオートレドックスを同時に行ってジアリールスルフィド(Ar2S)を得る:塩化アルミニウム(AlCl3)による触媒作用との比較」,Phosphorus,Sulfur,and Silicon,2017年,第192巻,No.3,376~380頁に開示されている。これらの論文では、異なる反応条件及び触媒が比較されている。
また、4.4’-ジクロロジフェニルスルホンの製造の一部として、ルイス酸触媒の存在下でのチオニルクロリドとクロロベンゼンのフリーデル・クラフツのアシル化反応は、例えばCN-A 108047101、CN-A 102351756、CN-A 102351757、CN-A 102351758又はCN-A 104557626にも開示されている。
第1の段階でDCDPSOを製造する、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの2段階製造方法は、CN-B 104402780に開示されている。DCDPSOの製造において、チオニルクロリド及びクロロベンゼンを原料として、無水塩化アルミニウムを触媒として使用して、20~30℃で行うフリーデル・クラフツ反応が記載されている。フリーデル・クラフツ反応の後に、冷却、加水分解、加熱、及び還流を行う。さらに、還流終了後、反応混合物を冷却し、DCDPSOを白色の結晶の形態で沈殿させ、これを濾過することが記載されている。その後、DCDPSOを酸化して4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを得る。
SU-A 765262も、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの2段階製造法を開示しており、ここで、第1の段階では、塩化アルミニウムの存在下で-10~50℃の範囲の温度でチオニルクロリド及びクロロベンゼンを使用するフリーデル・クラフツ反応によってDCDPSOが得られる。実施例によれば、フリーデル・クラフツ反応で得られた混合物を3%の塩酸水溶液に注ぎ、加熱してDCDPSOを過剰に添加されたクロロベンゼンに完全に溶解させる。2つの相に分離した後、有機相を洗浄し、次に冷却してDCDPSOを沈殿させる。1つの実施例において、フリーデル・クラフツ反応に関連する塩化水素を捕捉することにより、塩酸が得られる。
Sun,X.ら,「ルイス酸で触媒するチオニルクロリドとセレンクロリドの求電子性芳香族置換反応、置換基効果、及び反応機構に関する研究」,Journal of Chemical Research,2013年,736~744頁
Sun,X.ら,「ベンゼンとチオニルクロリドの塩化アルミニウム促進の求電子性芳香族置換、及び硫黄(IV)から硫黄(II)への新規還元反応による、ジフェニルスルホキシド及びジフェニルスルフィドの生成」,Phosphorus,Sulfur,and Silicon,2010年,第185巻,2535~2542頁
Sun,X.ら,「塩化鉄(II)(FeCl3)で触媒するクロロベンゼンとチオニルクロリド(SOCl2)の求電子性芳香族置換、及び硫黄でのオートレドックスを同時に行ってジアリールスルフィド(Ar2S)を得る:塩化アルミニウム(AlCl3)による触媒作用との比較」,Phosphorus,Sulfur,and Silicon,2017年,第192巻,No.3,376~380頁
本発明の目的は、DCDPSOを精製するための信頼性の高い方法を提供することであり、この方法により、高純度のDCDPSOが達成され、環境的にも持続可能である。
この目的は、
(a)モノクロロベンゼン中に粒子状DCDPSOを含む懸濁液を提供する工程と、
(b)懸濁液を固液分離して、残留水分含有DCDPSOを得る工程と、
(c)モノクロロベンゼンで、残留水分含有DCDPSOを洗浄する工程と、
(d)任意に、工程(a)~(c)を繰り返す工程と
を含むDCDPSOの精製方法によって達成される。
(a)モノクロロベンゼン中に粒子状DCDPSOを含む懸濁液を提供する工程と、
(b)懸濁液を固液分離して、残留水分含有DCDPSOを得る工程と、
(c)モノクロロベンゼンで、残留水分含有DCDPSOを洗浄する工程と、
(d)任意に、工程(a)~(c)を繰り返す工程と
を含むDCDPSOの精製方法によって達成される。
残留水分含有DCDPSO(以下、「湿ったDCDPSO」と称する)をモノクロロベンゼン(以下、「MCB」と称する)で洗浄することにより、結晶化したDCDPSOの表面に付着している可能性のある不純物を除去することができる。湿ったDCDPSOの洗浄にMCBを使用することは、DCDPSOが表面で溶解し始め、したがって表面に付着している不純物が緩んで除去することができるので、結晶化したDCDPSOの表面に付着した不純物を除去することができるというさらなる利点もある。
MCB中に粒子状DCDPSOを含む懸濁液(以下、「懸濁液」と称する)は、例えば、結晶化プロセスに由来するものであり得、この結晶化プロセスでは、DCDPSO及びMCBを含む液体混合物を、MCB中のDCDPSOの飽和点未満の温度まで冷却し、冷却によりDCDPSOが結晶化し始める。
飽和点とは、DCDPSOが結晶化し始める液体混合物の温度を表す。この温度は、液体混合物中のDCDPSOの濃度に依存する。液体混合物中のDCDPSOの濃度が低いほど、結晶化が始まる温度は低くなる。
結晶化プロセスに加えて、懸濁液は、粒子状DCDPSO及びMCBを混合することによって製造することもできる。このような混合は、例えば、粒子状DCDPSOをさらに精製する場合に行われてもよい。
本発明の方法で使用されるモノクロロベンゼンは、好ましくは高純度又は超高純度を有する。好ましくは、MCBは、MCBの総質量に基づいて1質量%未満の不純物を含む。
DCDPSOを結晶化するための冷却は、任意の結晶化装置、又は液体混合物の冷却を可能にする任意の他の装置、例えば、冷却することができる表面を備える装置、例えば冷却ジャケット、冷却コイル又はいわゆる「パワーバッフル」のような冷却バッフルを備えた容器又はタンクで行うことができる。
DCDPSOの結晶化のための液体混合物の冷却は、連続的に又はバッチ式で行うことができる。沈殿及び冷却された表面での汚れを避けるために、
(i)気密性密閉容器の圧力を低下させること、
(ii)MCBを蒸発させること、
(iii)冷却によって蒸発したMCBを凝縮させること、
(iv)凝縮したMCBを気密性密閉容器中に戻すこと
によって、気密性密閉容器中で冷却を行うことが好ましい。
(i)気密性密閉容器の圧力を低下させること、
(ii)MCBを蒸発させること、
(iii)冷却によって蒸発したMCBを凝縮させること、
(iv)凝縮したMCBを気密性密閉容器中に戻すこと
によって、気密性密閉容器中で冷却を行うことが好ましい。
このプロセスは、結晶化したDCDPSOが蓄積して固体層を形成する冷却された表面がなして液体混合物を冷却することを可能にする。これは、冷却プロセスの効率を向上する。また、この固体層を除去するための追加の努力を回避することができる。したがって、冷却された表面のない気密性密閉容器を使用することが特に好ましい。
結晶化したDCDPSOの沈殿を避けるために、結晶化装置中で液体混合物をかき混ぜることがさらに好ましい。したがって、好適な装置は、例えば、撹拌タンク又はドラフトチューブ結晶器である。結晶化装置が撹拌タンクである場合、任意の撹拌器を使用することができる。撹拌装置によって結晶器に入力される比出力は、好ましくは0.2~0.5W/kgの範囲、より好ましくは0.2~0.35W/kgの範囲である。好ましくは、局所的なエネルギー散逸に関する高い勾配のない、かなり均一な電力入力が得られるタイプの撹拌器が使用される。
DCDPSOを結晶化させるためには、結晶核を提供する必要がある。結晶核を提供するためには、液体混合物に添加される乾燥結晶を使用するか、又は粒子状DCDPSOを含む懸濁液を結晶核として添加することが可能である。後者は、任意の好適な液体をベースとする懸濁液であり得る。好ましくは、MCB中に粒子状DCDPSOを含む懸濁液である。乾燥結晶を使用するが、結晶が大きすぎる場合は、結晶を、結晶核として使用することができるより小さな粒子に粉砕することが可能である。さらに、液体混合物に超音波を適用することにより、必要な結晶核を提供することも可能である。好ましくは、結晶核は、初期化ステップでその場で生成される。初期化ステップは、好ましくは、ステップ(i)で減圧を設定する前に、以下のステップを含む:
- 液体混合物の沸点が80~95℃の範囲であるように、気密性密閉容器中の圧力を低下させるステップと
- 固体の初期形成が起こるまで溶媒を蒸発させるステップと
- 気密性密閉容器中の圧力を上げ、前記容器中の液体混合物を85~100℃の範囲の温度に加熱するステップと。
- 液体混合物の沸点が80~95℃の範囲であるように、気密性密閉容器中の圧力を低下させるステップと
- 固体の初期形成が起こるまで溶媒を蒸発させるステップと
- 気密性密閉容器中の圧力を上げ、前記容器中の液体混合物を85~100℃の範囲の温度に加熱するステップと。
液体混合物の沸点が80~95℃の範囲、より好ましくは83~92℃の範囲であるように気密性密閉容器中の圧力を低下させることにより、次のMCBの蒸発は、飽和溶液及びDCDPSOの沈殿をもたらす。次の圧力の上昇、及び気密性密閉容器中の液体混合物を85~100℃の範囲の温度に加熱することにより、固形化したDCDPSOが再び部分的に溶解し始める。これは、結晶核の数が減少し、より大きなサイズの結晶を少量製造することを可能にするという効果がある。製造された結晶核の完全な溶解を避けるために、事前に設定した上記の範囲の温度に達した直後に、特に減圧による冷却を開始することができる。しかしながら、事前に設定した温度で例えば0.5~1.5時間の滞留時間の後に冷却を開始させることも可能である。
冷却、及びしたがってDCDPSOの結晶化をバッチ式で行う場合、ステップ(i)の減圧中にステップ(ii)~(iv)を行うことが好ましい。したがって、気密性密閉容器中の温度が0~45℃の範囲、好ましくは10~35℃の範囲、特に20~30℃の範囲の所定の値に達するまで、ステップ(i)において圧力を継続的に低下させることが特に好ましい。これらの所定の温度では、気密性密閉容器中の圧力は、典型的に20~350ミリバール(abs)の範囲、より好ましくは20~200ミリバール(abs)の範囲、特に20~100ミリバール(abs)の範囲である。所定の温度値に達した後、減圧を停止し、その後、常圧に達するまで、気密性密閉容器を通気する。気密性密閉容器における温度プロファイルは、好ましくは、液体混合物が一定の過飽和状態になるように選択される。これらの条件は、液相中のDCDPSOのそれぞれの濃度での飽和温度未満の温度を維持しながら、冷却プロファイルを適用することによって達成することができる。具体的には、相平衡、結晶核の質量、及び結晶核の初期サイズに基づいて、適用される冷却プロファイルを選択する。さらに、冷却プロファイルを適用するために、一定の成長率を仮定する。冷却プロファイルを適用するためのデータを決定するために、例えば、濁度プローブ、屈折率プローブ又はATR-FTIR-プローブを使用することができる。温度プロファイル及び/又は圧力プロファイルは、例えば、段階的、線形、又は漸進的であり得る。
DCDPSOの溶解度を下げ、したがって固形化したDCDPSOの収率を上げるためには、飽和点を変える必要がある。一定の温度でMCBの量を連続的に減少させることにより、例えば溶媒を蒸発させることにより、又は一定の濃度で液体混合物を冷却することにより、これは可能となる。MCBの量を減少させると、一定の臨界濃度に達したときに非常に粘稠な懸濁液が得られるので、蒸発によってMCBの量を減少した後に温度を下げることにより、固形化したDCDPSOの収率を部分的に高めることが好ましい。液体混合物中のDCDPSOの溶解度を低下させ、結晶化を改善するために、少なくとも1つのドラウニングアウト剤(drowning-out agent)、例えば水、アルコール、及び/又は酸、特にカルボン酸のような少なくとも1つのプロトン性溶媒、又は直鎖及び/又は環状アルカンのような少なくとも1つの高非極性溶媒をさらに添加することが可能である。ワークアップの容易さに関して、水、メタノール、エタノール、酢酸及び/又はギ酸、特に水及び/又はメタノールが好ましいドラウニングアウト剤である。
常圧に達した後、冷却により気密性密閉容器中に形成されたMCB中に粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを含む懸濁液(上記及び以下では「懸濁液」とも称する)を取り出し、固液分離(b)に供給する。
冷却、及びしたがってDCDPSOの結晶化を連続的に行う場合、冷却及び結晶化を少なくとも2つのステップ、特に2つ~3つのステップで段階的に行うことが好ましい。冷却及び結晶化を2つのステップで行う場合、第1のステップでは、好ましくは、液体混合物を40~90℃の範囲の温度に冷却し、第2のステップでは、好ましくは、-10~50℃の範囲の温度に冷却する。冷却を2つを超えるステップで行う場合、好ましくは、第1のステップを40~90℃の範囲の温度で行い、最後のステップを-10~30℃の範囲の温度で行う。さらなるステップは、ステップごとに温度を下げながら、これらの範囲の間の温度で行われる。冷却及び結晶化を3つのステップで行う場合、例えば第2のステップを10~50℃の範囲の温度で行う。
バッチ式プロセスでは、連続運転プロセスの温度は、冷却される表面、例えば冷却ジャケット、冷却コイル、又はいわゆる「パワーバッフル」のような冷却バッフルを有する冷却及び結晶化のための装置を使用して設定することができる。冷却及び結晶化のための少なくとも2つのステップを確立するために、各ステップには冷却及び結晶化のための少なくとも1つの装置を使用する。DCDPSOの沈殿を避けるために、連続プロセスにおいても、冷却及び結晶化のための装置中の圧力を下げることによって温度を下げることが好ましく、ここで、冷却及び結晶化のための装置は好ましくは気密性密閉容器である。冷却及び結晶化のための好適な装置は、例えば、撹拌タンク式結晶器、ドラフトチューブ式結晶器、水平式結晶器、強制循環式結晶器又はオスロ式結晶器である。必要な温度を達成するために設定される圧力は、液体混合物の蒸気圧に対応する。減圧により、MCBを含む低沸点のボイラー(蒸留物)が蒸発する。蒸発した低沸点のボイラーは冷却されて凝縮し、凝縮した低沸点のボイラーは、温度が設定された冷却及び結晶化のためのそれぞれの装置に戻される。
冷却及び結晶化を連続的に行う場合、懸濁液の流れは、冷却及び結晶化のための装置から連続的に取り出される。その後、懸濁液は、固液分離(b)に供給される。冷却及び結晶化のための装置中の液体レベルを所定の範囲内に維持するために、DCDPSO及びMCBを含む新鮮な液体混合物を、装置から取り出された懸濁液の量に対応する又は本質的に対応する量で装置に供給することができる。新鮮な液体混合物は、冷却及び結晶化のための装置中の最小液体レベルに到達するたびに、連続的又はバッチ式で添加することができる。
バッチ式で又は連続的に行われることにかかわらず、結晶化の最後のステップにおいて懸濁液中の固形分が、懸濁液の質量に基づいて、5~50質量%の範囲、より好ましくは5~40質量%の範囲、特に20~40質量%の範囲になるまで、好ましくは結晶化を継続する。
冷却及び結晶化を連続的に又はバッチ式で行うことができるが、冷却及び結晶化をバッチ式で行うこと、特に冷却及び結晶化のための装置の冷却された表面に結晶化したDCDPSOの沈殿を避けるためにステップ(i)~(iv)を含む上述プロセスに従って圧力を低下させることにより液体混合物を冷却することが好ましい。バッチ式の冷却及び結晶化により、操作ウィンドウ(operating window)及び結晶化条件に関して高い柔軟性が得られ、プロセス条件の変動に対してより堅牢である。
冷却及び結晶化を連続的に行うか、又はバッチ式で行うかにかかわらず、固液分離(b)を、連続的に又はバッチ式で、好ましくは連続的に行うことができる。
冷却及び結晶化をバッチ式で行い、固液分離を連続的に行う場合は、冷却及び結晶化に使用される装置から取り出された懸濁液が充填された少なくとも1つのバッファ容器を使用する。懸濁液を提供するために、連続流が少なくとも1つのバッファ容器から取り出され、固液分離装置に供給される。少なくとも1つのバッファ容器の容量は、好ましくは、冷却及び結晶化のための装置の内容物がバッファ容器に供給される2つの充填サイクルの間に、各バッファ容器が完全に空にならないようにする。複数のバッファ容器を使用する場合、別のバッファ容器の内容物を取り出して固液分離装置に供給されている間に、1つのバッファ容器を充填することが可能である。この場合、少なくとも2つのバッファ容器は並列に接続される。バッファ容器の並列接続は、1つのバッファ容器が満たされた後に、さらに別のバッファ容器に懸濁液を充填することを可能にする。少なくとも2つのバッファ容器を使用することの利点は、バッファ容器の容量が1つのバッファ容器のみの場合よりも小さい場合があることである。このより小さな容量は、懸濁液をより効率的に混合して、結晶化したDCDPSOの沈降を避けることを可能にする。懸濁液を安定に維持し、バッファ容器中の固体DCDPSOの沈殿を避けるために、バッファ容器に懸濁液をかき混ぜるための装置、例えば撹拌機を提供し、バッファ容器中の懸濁液をかき混ぜることが可能である。かき混ぜは、好ましくは、撹拌によるエネルギー入力が、結晶を懸濁させるのに十分な高さでありながら、結晶の破損を防ぐことができる最小レベルに維持されるように行われる。この目的のために、エネルギー入力は、好ましくは0.2~0.5W/kgの範囲、特に0.25~0.4W/kgの範囲である。
冷却及び結晶化と固液分離をバッチ式で行う場合、固液分離装置が冷却及び結晶化のための容器の全内容物を取り込むのに十分な大きさであれば、冷却及び結晶化のための容器の内容物を固液分離装置に直接供給することができる。この場合、バッファ容器を省略することが可能である。また、冷却及び結晶化と固液分離を連続的に行う場合は、バッファ容器を省略することも可能である。この場合も、懸濁液を固液分離装置に直接供給する。固液分離装置が小さすぎて、冷却及び結晶化のための容器の全内容物を取り込むことができない場合は、バッチ式実行の場合でも、結晶化装置を空にして新しいバッチを開始できるように、少なくとも1つのさらなるバッファ容器が必要である。
冷却及び結晶化を連続的に行い、固液分離をバッチ式で行う場合は、冷却及び結晶化装置から取り出した懸濁液をバッファ容器に供給し、固液分離のための各バッチをバッファ容器から取り出して固液分離装置に供給する。
固液分離は、例えば、濾過、遠心分離又は沈降を含む。好ましくは、固液分離は濾過である。固液分離では、固体DCDPSOから液体母液を除去し、残留水分含有DCDPSO(以下、「湿ったDCDPSO」とも称する)が得られる。固液分離が濾過である場合、湿ったDCDPSOは「濾過ケーキ」と呼ばれる。
連続的に行うか、又はバッチ式で行うかにかかわらず、固液分離は、好ましくは室温又は室温未満の温度、好ましくは室温で行われる。例えば、ポンプを使用することにより、又は高圧の不活性ガス、例えば窒素を使用することにより、高圧で懸濁液を固液分離装置に供給することは可能である。固液分離が濾過であり、懸濁液を高圧で濾過装置に供給する場合は、濾過プロセスに必要な差圧は、濾過装置の濾過物側に常圧を設定することによって実現される。懸濁液を常圧で濾過装置に供給する場合は、濾過装置の濾液側に減圧を設定して、必要な差圧を実現する。さらに、濾過装置の供給側に常圧を超える圧力、及び濾過物側に常圧未満の圧力を設定することが可能であり、又は濾過装置のフィルターの両側に常圧未満の圧力を設定することも可能であり、この場合も濾過物側の圧力が供給側よりも低くなければならない。さらに、濾過プロセスにおいてフィルター上の液体層の静圧を使用することのみにより濾過を行うことも可能である。好ましくは、供給側と濾過物側との圧力差、従って濾過装置における差圧は、100~6000ミリバール(abs)の範囲、より好ましくは300~2000ミリバール(abs)の範囲、特に400~1500ミリバール(abs)の範囲であり、ここで、差圧は固液分離(b)で使用されるフィルターにも依存する。
固液分離(b)を行うために、当業者に知られている任意の固液分離装置を使用することができる。好適な固液分離装置としては、例えば、撹拌式圧力ヌッチェ、回転式圧力フィルター、ドラムフィルター、ベルトフィルター又は遠心分離機が挙げられる。固液分離装置に使用されるフィルターの細孔径は、好ましくは1~1000μmの範囲、より好ましくは10~500μmの範囲、特に20~200μmの範囲である。
特に好ましくは、冷却及び結晶化をバッチ式で行い、固液分離を連続的に行う。
固液分離が濾過である場合、濾過が連続的に行われるか、又はバッチ式で行われるかにかかわらず、濾過装置における濾過ケーキの次の洗浄を行うことが可能である。洗浄後、濾過ケーキは生成物として取り出される。
連続的な固液分離プロセスでは、湿ったDCDPSOを固液分離装置から連続的に取り出し、その後、湿ったDCDPSOを洗浄することができる。固液分離が濾過であり、連続ベルトフィルターを使用する場合、懸濁液を濾過し、こうして生じた濾過ケーキをフィルターベルト上で輸送し、同じ濾過装置の別の位置で濾過ケーキを洗浄することが好ましい。
固液分離が濾過プロセスである場合、濾過を半連続的に行うこともさらに可能である。この場合、懸濁液を連続的に濾過装置に供給し、濾過は所定のプロセス時間で行われる。その後、濾過中に製造された濾過ケーキは、同じ濾過装置で洗浄される。例えば、濾過を行うためのプロセス時間は、差圧に依存してもよい。濾過ケーキの増加に伴い、濾過装置における差圧が増大する。濾過のためのプロセス時間を決定するために、例えば、第1の濾過装置において濾過が行われるまでの目標差圧を定義することが可能である。その後、懸濁液は、濾過が継続される第2の又はさらなる濾過装置に供給される。これにより、濾過を連続的に行うことが可能になる。濾過が完了した装置では、濾過ケーキを洗浄し、洗浄終了後に取り出すことができる。必要に応じて、濾過ケーキを取り出した後に、濾過装置を洗浄することができる。濾過ケーキを取り出し、必要に応じて濾過装置を洗浄した後、その濾過装置を再び濾過に使用することができる。濾過ケーキの洗浄及び任意の濾過装置の洗浄が、1つの濾過装置での濾過の時間よりも多くの時間を必要とする場合、少なくとも2つの濾過装置を使用して、濾過装置で懸濁液を連続的に供給することができるようにし、他の装置では濾過ケーキが洗浄され、又は濾過装置が洗浄される。
半連続プロセスの各濾過装置では、濾過がバッチ式で行われる。したがって、濾過及び洗浄をバッチ式で行う場合、このプロセスは、上述の半連続プロセスの1つの装置でのプロセスに対応する。
このプロセスで使用されるMCBの量を減らすために、好ましくは、MCBの少なくとも一部は、湿ったDCDPSOの洗浄に使用された後に精製され、リサイクルされる。MCBの精製は、当業者に知られている各プロセスによって行うことができる。特に好適なのは、MCBから不純物を分離するための蒸留又は蒸発プロセスである。本発明の方法において、特に洗浄(c)で湿ったDCDPSOから洗い出される不純物は、副生成物、DCDPSOの異性体、及びDCDPSOの製造に使用された触媒などの助剤の残りである。湿ったDCDPSOから洗い出されるこれらの不純物は、通常、MCBよりも高い沸点を有するため、MCBの精製は、蒸発によって行うことができ、ここで、MCBが蒸発されて後続の凝縮器で凝縮される。蒸留プロセスでは、MCBは頂部ストリームとして蒸留装置(好ましくは蒸留塔)から取り出され、蒸留塔から取り出された底部ストリームは不純物を含有する。底部ストリームがDCDPSOも含有する場合、底部ストリームの一部を冷却(III)にリサイクルして、収率を向上させ、プロセスから取り出されるDCDPSOの量を減らすことも可能である。
このようにして精製されたMCBは、例えば、湿ったDCDPSOの洗浄に再利用することができる。あるいは、また、精製されたMCBの少なくとも一部を、DCDPSOを含む懸濁液を製造するプロセスにリサイクルすることも可能である。
湿ったDCDPSOの洗浄に使用されるMCBは、MCBの総質量に基づいて1質量%未満の不純物を含むことが好ましい。したがって、湿ったDCDPSOの洗浄に精製されたMCBが使用される場合、精製ステップの後にMCBの純度を監視することが好ましい。精製されたMCB中の不純物の量が1質量%を超える場合、例えば、混合MCB中の不純物の含有量が1質量%未満になるような量で純MCBを添加することが可能である。MCBの必要な純度を達成するために、さらなる精製ステップ、例えば第2の蒸発又は蒸留ステップを追加することも可能である。
また、より低い純度のMCBを使用することも可能である。より低い純度のMCBは、例えば、リサイクルプロセスに由来するものであり、第1の洗浄(c)で使用することができる。1つ以上の洗浄(c)において、その後、より高い純度のMCBを使用することが可能である。
濾過ケーキの濾過及び洗浄を1つの装置で行う以外に、濾過ケーキを濾過装置から取り出し、後続の洗浄装置で洗浄することも可能である。濾過がベルトフィルターで行われる場合、フィルターベルト上の濾過ケーキを洗浄装置中に輸送することが可能である。この目的のために、フィルターベルトは、濾過装置から出て洗浄装置に入るように設計されている。フィルターベルト上の濾過ケーキを濾過装置から洗浄装置中に輸送する以外にも、好適なコンベヤーで濾過ケーキを集めて、コンベヤーからの濾過ケーキを洗浄装置に供給することも可能である。濾過ケーキが好適なコンベヤーで濾過装置から取り出される場合、濾過ケーキは、全体として、又は塊(chunks)又は粉状などのより小さな断片で、濾過装置から取り出すことができる。例えば、塊は、濾過ケーキが濾過装置から取り出されるときに壊れた場合に生じる。粉末状に達成するためには、通常、濾過ケーキを粉砕する必要がある。濾過ケーキの状態にかかわらず、洗浄において濾過ケーキをMCBと接触させる。例えば、濾過ケーキを洗浄装置の好適なトレイに置き、洗浄液をトレイ及び濾過ケーキに通って流すことができる。さらに、濾過ケーキを小さな塊又は粒子にして、この塊又は粒子をMCBと混合することも可能である。続いて、濾過ケーキの塊又は粒子とMCBとのこのようにして製造された混合物を濾過してMCBを除去する。洗浄が個別の洗浄装置で行われる場合、洗浄装置は任意の好適な装置であり得る。好ましくは、洗浄装置は、より少量のMCBを使用し、1つの装置でMCBを固体DCDPSOから分離することができるフィルター装置である。しかしながら、洗浄装置として、例えば攪拌タンクを使用することも可能である。この場合、次のステップで、例えば濾過又は遠心分離により、MCBを洗浄されたDCDPSOから分離する必要がある。
固液分離を遠心分離により行う場合、遠心分離機によっては、湿ったDCDPSOを洗浄するために別個の洗浄装置を使用する必要がある。しかしながら、通常、分離ゾーン及び洗浄ゾーンを含む遠心分離機を使用することができ、又は遠心分離機で遠心分離した後に洗浄を行うことができる。
湿ったDCDPSOの洗浄は、好ましくは室温で行われる。また、湿ったDCDPSOを、室温とは異なる温度、例えば室温を超える温度で洗浄することも可能である。DCDPSOをMCBに溶解することを避けるために、洗浄温度を、DCDPSOのMCBへの溶解度が非常に低く、好ましくはDCDPSOとMCBの合計に基づいて0~5質量%である温度に維持することが好ましい。洗浄が濾過装置で行われる場合、濾過ケーキを洗浄するためには、差圧を確立しなければならない。これは、例えば、濾過ケーキを洗浄するためのMCBを常圧を超える圧力で供給し、MCBが供給される圧力未満の圧力、例えば常圧で濾過ケーキを通過させた後にMCBを取り出すことによって可能である。さらに、濾過ケーキを洗浄するためのMCBを常圧で供給し、濾過ケーキを常圧未満の圧力で通過させた後にMCBを取り出すことも可能である。
固液分離(b)において、湿ったDCDPSO以外に、DCDPSO及び不純物を含有する母液が得られる。DCDPSOの収率を上げるために、母液を濃縮し、DCDPSOの冷却及び結晶化にリサイクルすることができる。母液の濃縮は、蒸留又は蒸発によって、好ましくは蒸発によって行うことができる。
母液を濃縮するための蒸留又は蒸発は、常圧又は減圧で、好ましくは20~800ミリバール(abs)の範囲、より好ましくは50~500ミリバール(abs)の範囲、特に100~350ミリバール(abs)の範囲の圧力で行うことができる。
蒸発プロセス中で、低沸点のボイラー、特にMCBが蒸発し、取り出される。高沸点のボイラーであるDCDPSOは母液中に残り、したがってDCDPSOの濃度が増大する。蒸発において母液が減少した量は、母液中のDCDPSOの量、及び濃縮された母液中の所望の濃度に依存する。母液を減らすことができる最小量は、母液中のDCDPSOの量よりも大きいことが望ましい。さらに、蒸発させる低沸点のボイラーの最小量は、濃縮された母液中のDCDPSOの濃度が上昇するような量であることが望ましい。したがって、母液中のDCDPSOの濃度に応じて、好ましくは、母液の量が、蒸発装置に供給される母液の量の4~80質量%、より好ましくは4~40質量%、特に4~20質量%に低下するまで、蒸発プロセスが継続される。好適な蒸発装置としては、例えば、容器、好ましくは撹拌容器、回転式蒸発器、薄膜蒸発器及び流下膜式蒸発器が挙げられる。特に好ましい蒸発装置は、流下膜式蒸発器である。
蒸発プロセスに加えて、母液を濃縮するために蒸留プロセスを行うことも可能である。蒸留プロセスでは、MCBを含む低沸点のボイラーを頂部ストリームとして除去する。濃縮された母液は、通常、底部ストリームとして蒸留プロセスから取り出される。蒸留プロセスは、例えば、蒸留塔で行われる。好適な蒸留塔は、例えばプレート塔又は充填塔である。充填塔を使用する場合は、充填床又は構造化された充填物のいずれかを使用することができる。このような蒸留塔を運転するための好適な圧力は、例えば20ミリバール(abs)~800ミリバール(abs)、好ましくは50~500ミリバール(abs)、特に100~350ミリバール(abs)の範囲である。蒸留塔の底部温度及び頂部温度は圧力に依存し、底部温度は、好ましくは40~110℃の範囲、より好ましくは55~100℃の範囲、特に55~80℃の範囲であり、頂部温度は、好ましくは30~100℃の範囲、より好ましくは45~90℃の範囲、特に45~80℃の範囲である。
蒸発又は蒸留は、好ましくは、母液中のDCDPSOの濃度が、濃縮された母液の総量に基づいて、6~60質量%の範囲、より好ましくは10~50質量%の範囲、特に15~40質量%の範囲になるまで続ける。
濃縮された母液の少なくとも一部は、DCDPSOの冷却及び結晶化にリサイクルされる。高沸点の副産物及び汚染物質の過剰な蓄積を避けるためには、濃縮された母液の一部をDCDPSOの冷却及び結晶化にリサイクルし、残りの濃縮された母液をプロセスから取り出すことが好ましい。DCDPSOの冷却及び結晶化にリサイクルされる濃縮された母液の量は、それぞれ濃縮された母液の総量に基づいて、好ましくは10~95質量%の範囲、より好ましくは40~90質量%の範囲、特に65~90質量%の範囲である。
リサイクルされる濃縮された母液は、好ましくは新鮮な液体混合物と混合され、DCDPSOの冷却及び結晶化に供給される。新鮮な液体混合物と濃縮された母液の比は、好ましくは60:1~6:1の範囲、より好ましくは15:1~7:1の範囲、特に10:1~7:1の範囲である。DCDPSOの冷却及び結晶化にリサイクルされる濃縮された母液の量は、好ましくは、DCDPSOの冷却及び結晶化に完全に供給されるDCDPSOの異性体の量、特に2,4-ジクロロジフェニルスルホキシドの量が、DCDPSOの冷却及び結晶化に供給される液体の総量に基づいて、0~40質量%の範囲、特に10~30質量%の範囲になるように設定される。
リサイクルされる濃縮された母液と新鮮な液体混合物との混合は、冷却及び結晶化が行われる装置に供給する前に、リサイクルされる濃縮された母液と新鮮な液体混合物との混合物がこの装置に供給されるように行うことができる。あるいは、リサイクルされる濃縮された母液及び新鮮な混合液を別々に、冷却及び結晶化を行う装置に供給し、この装置中で混合する。
プロセスから除去されるMCBの量を減らすために、プロセスから取り出された母液の一部からMCBを分離することが可能である。これは、例えば、母液の蒸留又は蒸発によって行うことができる。
母液と濾過ケーキを洗浄するために使用されるMCBを混合し、MCBを精製するために上述したプロセスステップによってこの混合物からMCBを取り戻すことが可能である。この場合、MCBの少なくとも一部を、懸濁液を得るためのプロセス又は濾過ケーキの洗浄にリサイクルすることも可能である。
プロセスを行うことに必要な設備を減らすために、濾過プロセスから取り出された母液、及び洗浄に使用されたMCBを混合し、このように形成された混合物を、例えば蒸留又は蒸発によってMCBを分離することによって濃縮することも可能である。母液と洗浄に使用されたMCBとの混合物から分離されたMCBは、懸濁液の製造プロセス又は洗浄工程にリサイクルすることができる。さらに、MCBの一部を懸濁液の製造プロセスにリサイクルし、MCBのもう一部を洗浄工程にリサイクルすることも可能である。
さらに、母液を濃縮し、洗浄に使用されたMCBを別個に精製することも可能である。この場合、母液から分離されたMCB及び洗浄工程で精製されたMCBを混合し、この混合したMCBを懸濁液の製造及び/又は洗浄工程で使用することが可能である。したがって、洗浄工程からのMCB精製からの残りは、好ましくはプロセスから取り出される。
MCB中に粒子状DCDPSOを含む懸濁液を製造するために使用される液体混合物は、DCDPSO及びMCBを含む液体混合物が製造されるDCDPSOを製造するための任意のプロセスに由来することができる。
液体混合物は、例えば、以下の工程:
(A)チオニルクロリド、MCB及び塩化アルミニウムを、1:(6~9):(1~1.5)のチオニルクロリド:MCB:塩化アルミニウムのモル比で、0~20℃未満の範囲の温度で反応させ、中間反応生成物及び塩化水素を生成する工程と
(B)塩酸水溶液及び中間反応生成物を70~110℃の範囲の温度で混合して、DCDPSOを含む粗反応生成物を得る工程と、
(C)粗反応生成物を、DCDPSOを含む有機相及び水相に分離する工程と、
(D)有機相を抽出液で洗浄する工程と
を含むDCDPSOの製造プロセスで得ることができる。
(A)チオニルクロリド、MCB及び塩化アルミニウムを、1:(6~9):(1~1.5)のチオニルクロリド:MCB:塩化アルミニウムのモル比で、0~20℃未満の範囲の温度で反応させ、中間反応生成物及び塩化水素を生成する工程と
(B)塩酸水溶液及び中間反応生成物を70~110℃の範囲の温度で混合して、DCDPSOを含む粗反応生成物を得る工程と、
(C)粗反応生成物を、DCDPSOを含む有機相及び水相に分離する工程と、
(D)有機相を抽出液で洗浄する工程と
を含むDCDPSOの製造プロセスで得ることができる。
DCDPSOを得るために、反応(A)において、チオニルクロリド、MCB及び塩化アルミニウムは、1:(6~9):(1~1.5)のチオニルクロリド:MCB:塩化アルミニウムのモル比で、好ましくは1:(6~8):(1~1.2)のチオニルクロリド:MCB:塩化アルミニウムのモル比で、特に1:(6~7):(1~1.1)のチオニルクロリド:MCB:塩化アルミニウムのモル比で、反応器に供給される。
反応器は、反応器に供給された成分の混合及び反応を可能にする任意の反応器であり得る。好適な反応器は、例えば、撹拌タンク反応器又はジェットループ型反応器である。撹拌タンク反応器を使用する場合、撹拌器は好ましくは軸方向に輸送する撹拌器、例えば、斜めのブレード撹拌器である。反応は、連続的に又はバッチ式で行うことができる。好ましくは、反応はバッチ式で行われる。
チオニルクロリド、MCB及び塩化アルミニウムは、同時に又は連続的に添加することができる。反応を行いやすくするために、特にバッチ式反応の場合、好ましくは、最初に塩化アルミニウム及びMCBを反応器に供給し、次にチオニルクロリドを塩化アルミニウム及びMCBに添加する。この場合、塩化アルミニウム及びMCBは、同時に又は次々に添加することができる。しかしながら、いずれの場合も、塩化アルミニウム及びMCBを混合した後にチオニルクロリドを添加することが好ましい。特に好ましくは、最初に塩化アルミニウム及びMCBを反応器に供給し、チオニルクロリドを塩化アルミニウム及びMCBに添加する。反応中に、典型的にガス状の塩化水素(HCl)が生成され、これは少なくとも部分的に反応器から取り出される。チオニルクロリドを添加するための体積流量は、典型的に、熱放散及び反応器から取り出されるガスの流量に依存する。
反応器に過剰に添加され、したがって化学反応中で部分的にしか変換されないMCBは、反応生成物の溶媒としても機能する。
チオニルクロリド及びMCBは、塩化アルミニウムの存在下で反応し、それによって中間反応生成物及び塩化水素を生成する。中間反応生成物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド-AlCl3付加物を含む。一般的には、塩化アルミニウムは触媒として機能することができる。化学反応は、以下の化学反応式(1)によって模式的に表すことができる。
反応(A)は、0~20℃未満の範囲の温度、好ましくは3~15℃の範囲、特に5~12℃の範囲の温度で行われる。
これにより、反応は一定の温度又はほぼ一定の温度で行うことができる。また、例えば、反応時間又は反応器にわたる温度プロファイルを用いて、上記の範囲内で変化された温度で反応を行うことも可能である。
反応時間は一般的に、使用する反応物の量に依存し、反応物の量が増えるに伴って増加する。塩化アルミニウムとMCBの混合物へのチオニルクロリドの添加が完了した後、反応は、好ましくは10~120分間、より好ましくはチオニルクロリドの総量を反応器に供給した後に20~50分間継続される。
反応が連続的に行われるか、又はバッチ式で行われるかにかかわらず、チオニルクロリドの流量は、反応によって生成する熱を好適な冷却装置によって反応器から放散し、反応器の温度を所定の範囲内に維持することができるように選択される。
反応で生成される塩化水素(HCl)は、典型的に、ガス状であり、少なくとも部分的に反応器から取り出される。それはガス状で他の用途に使用することもできるが、好ましくは、反応から取り出された塩化水素を水と混合して塩酸水溶液を製造する。
反応後、中間反応生成物は塩酸水溶液と混合される。エネルギー効率、生産効率及び持続可能性の観点から、特に好ましくは、反応(A)から取り出された塩化水素から塩酸水溶液を製造する。中間反応生成物と塩酸水溶液を混合することにより、中間反応生成物の加水分解を行うことができる。DCDPSOを含む粗反応生成物が得られる。また、粗反応生成物は、典型的に、一般にAlCl3・6H2Oとしての水和形態である塩化アルミニウムを含むこともできる。加水分解は、反応式(2)によって模式的に表すことができる。
加水分解を行う温度は、70~110℃の範囲、好ましくは80~100℃の範囲、特に80~90℃の範囲である。加水分解のための全ての成分を添加した後の加水分解の反応時間は、好ましくは30~120分間の範囲、より好ましくは30~60分間の範囲、特に30~45分間の範囲である。この反応時間は、中間反応生成物を加水分解してDCDPSOを得るのに十分である。加水分解を促進し、できるだけ早く完了させるために、混合物をかき混ぜることができ、好ましくは混合物を撹拌する。加水分解の終了後、混合物は、AlCl3を含む水相、及び過剰なMCBに溶解したDCDPSOを含む有機相に分離する。混合物を撹拌する場合、撹拌を止めて混合物が分離されることが可能である。
塩酸水溶液は、任意の濃度を有してもよい。ただし、3質量%超の塩酸の濃度は、塩化アルミニウムの溶解性を向上する。好ましくは、加水分解に使用される塩酸水溶液は、3~12質量%の範囲、より好ましくは6~12質量%の範囲、特に好ましくは10~12質量%の範囲の濃度を有する。本明細書における濃度は、塩化水素と水の質量合計に基づく塩化水素の量である。高い濃度、特に10~12質量%の範囲の濃度の利点は、水相の密度が増大し、したがって水相が下層相を形成するのに対し、上層相はDCDPSOを含む有機相(以下「有機相」とも称する)であることである。これにより、水相を容易に排出して有機相を得ることができる。さらに、濃度が高いほど、塩化アルミニウムを除去するための水の量を少なくすることができる。さらに、塩酸水溶液の濃度が高いほど、相分離が早くなる。
(B)で使用される塩酸水溶液の量は、好ましくは、塩化アルミニウムが沈殿せず、さらに2つの液相が形成され、下層相が水相であり、有機相が上層相となるような量である。これを達成するために、反応混合物に添加される塩酸水溶液の量は、好ましくは、加水分解後に水相の有機相に対する質量比が0.6~1.5kg/kgの範囲、より好ましくは0.7~1.0kg/kgの範囲、特に0.8~1.0kg/kgの範囲であるような量である。塩酸水溶液の量が少ないと、塩化アルミニウムが沈殿することがある。特に、塩酸水溶液の濃度が高い場合には、沈殿を避けるために多量の塩酸水溶液が必要となる。したがって、好ましくは、塩酸水溶液の濃度は12質量%未満に維持される。
チオニルクロリド、MCB及び塩化アルミニウムの反応、塩酸水溶液との混合、及びしたがって加水分解は、同じ反応器で、又は異なる反応器で行うことができる。好ましくは、第1の反応器で反応を行い、第2の反応器で加水分解を行う。第1の反応器及び第2の反応器を使用する場合、第1の反応器は上述した反応器に対応する。また、第2の反応器も、バッチ式の反応を行い、反応器中の成分の攪拌ができる任意の反応器であり得る。したがって、好ましくは、第2の反応器も撹拌タンク反応器である。
反応及び加水分解を同じ反応器で行う場合は、1つの反応器を使用するか、又は好ましくは使用される第1及び第2の反応器を、反応器内の温度を調整するために温度を設定できるように設計する。この目的のために、例えば、加熱媒体又は冷却媒体が流れるパイプを反応器の内部に設けることが可能である。反応器のメンテナンスのしやすさ及び/又は加熱の均一性の観点から、好ましくは、反応器は、加熱媒体又は冷却媒体が流れる二重ジャケットを備える。反応器内のパイプ又は二重ジャケット以外に、反応器(単数又は複数)の加熱及び/又は冷却は、当業者に知られている各方法で行うことができる。
反応及び加水分解を異なる反応器で行う場合、反応が完了した後、中間反応生成物を第1の反応器から第2の反応器に輸送する前に、中間反応生成物をMCB中の中間反応生成物の溶解点(solubility point)を超える温度に加熱することが特に好ましい。第2の反応器に輸送及び供給する前に中間反応生成物を加熱することにより、中間反応生成物が溶解し、固体成分を含まない液体が輸送される。これにより、第1の反応器の汚れが回避されるという利点がある。
溶解点は、中間反応生成物がMCBに完全に溶解する反応混合物の温度を表す。この温度は、MCB中の中間反応生成物の濃度に依存する。有機相中のDCDPSOの濃度が低いほど、中間反応生成物がMCBに完全に溶解する温度は低くなる。
反応及び加水分解を同じ反応器で行う場合、反応が完了した後、中間反応生成物を加水分解の温度に加熱した後、塩酸水溶液を反応器に供給する。塩酸水溶液の流量は、好ましくは、反応器を調節することにより、加水分解の温度を加水分解のための特定の範囲に保持することができるように設定される。反応及び加水分解を異なる反応器で行う場合は、まず第2の反応器に塩酸水溶液を供給し、塩酸水溶液に中間反応生成物を添加することが好ましい。この場合、中間反応生成物を第2の反応器に添加する流量は、第2の反応器を調節することにより、第2の反応器の温度が加水分解のための特定の温度範囲内に保持されるように設定される。
塩酸水溶液及び塩化アルミニウムの残存物を有機相から除去するために、(C)で得られた有機相を分離し、抽出液で洗浄する。
加水分解後の相分離は、加水分解を行った反応器で、又は別の相分離のための容器で行うことができる。複雑さが少ないという観点から、好ましくは、相分離は加水分解が行われた反応器で行われる。相分離が完了した後、水相及び有機相は、相分離が行われた容器、好ましくは加水分解が行われた反応器から別々に取り出される。塩化アルミニウムを除去するために高濃度の塩酸水溶液、特に水相の密度が高まり、したがって水相が下層相を形成するように10~12質量%の濃度を有する塩酸水溶液を使用することは、水相の排出を容易にするために、有機相の洗浄を加水分解と同じ装置で行うことができるという利点もある。
分離された後、有機相は、洗浄工程(D)に供給されて残留の塩化アルミニウム及び塩酸を除去する。有機相の洗浄に使用される抽出液は、好ましくは水である。
洗浄は、好ましくは個別の洗浄容器で行われる。しかしながら、加水分解が行われた反応器から水相のみを除去し、加水分解が行われた反応器で洗浄工程を行うことも可能である。洗浄を個別の洗浄容器で行う場合、有機相を洗浄することができる任意の容器を使用することができる。洗浄容器は、通常、有機相と抽出液を密接に混合する手段を備えている。好ましくは、洗浄容器は、有機相及び抽出液が供給され、次に混合される攪拌タンクである。
相分離を相分離のための容器で行う場合、洗浄は、洗浄容器又は相分離のための容器のいずれかで行うことができる。相分離及び洗浄を同じ容器で行う場合、有機相から分離された水相を排出した後に、有機相と抽出液を混合する手段を提供する必要がある。
洗浄は、好ましくは70~110℃の範囲、より好ましくは80~100℃の範囲、特に80~90℃の範囲の温度で行われる。特に好ましくは、洗浄は加水分解と同じ温度で行われる。
一般的には、好ましくは水である抽出液の量は、有機相から塩化アルミニウムのすべて又は本質的にすべてを除去するのに十分である。廃棄物管理の観点からは、通常、可能な限り少ない抽出液を使用することが好ましい。洗浄に使用される水の量は、好ましくは、水相の有機相に対する質量比が0.3~1.2kg/kgの範囲、より好ましくは0.4~0.9kg/kgの範囲、特に0.5~0.8kg/kgの範囲が得られるように選択される。持続可能性及び大量の廃水流の回避の観点から、洗浄工程に使用する水の量をできる限り少なくすることが好ましい。洗浄工程からの水相全体を使用して、加水分解に必要な濃度の塩酸水溶液を生成することができるような量の水を使用することが特に好ましい。この目的のため、洗浄に使用した水を分離し、反応で得られた塩化水素と混合して塩酸水溶液を得る。塩化水素と水の混合は、例えば、ガス状の塩化水素及び水を供給する洗浄塔で行うことができる。このような洗浄塔を使用する場合、好ましくは塩化水素及び水は向流で供給される。洗浄塔に加えて、塩化水素を水に吸収させることができるすべてのさらなる容器を使用することができる。したがって、例えば、水を容器に供給し、水中に塩化水素を導入することが可能である。塩化水素を水中に導入するために、例えば、水中に浸かるパイプを使用することができる。塩化水素を水中に分散させるために、水に浸かるパイプの端部に、塩化水素が水中に流れ込む小さな穴を有する浸漬ヘッドを設けることが可能である。あるいは、塩化水素を水中に分散させるために、フリットを使用することもできる。
所定の洗浄時間の後、混合を停止して、混合物を水相及び有機相に分離させる。水相及び有機相は別々に洗浄容器から取り出される。有機相は、溶媒としての過剰なMCBに溶解したDCDPSOを含む液体混合物を含む。所定の洗浄時間は、好ましくは、全体のプロセス時間を短くするためにできるだけ短くする。同時に、塩化アルミニウムの除去を可能にするために十分な時間が必要である。
本発明の方法は、そのような洗浄サイクルを1つ以上含んでもよい。通常、1つの洗浄サイクルで十分である。
上述した各方法工程は、装置の大きさ及び添加する化合物の量に応じて、1つの装置のみで、又は複数の装置で行うことができる。方法工程に複数の装置を使用する場合、装置は同時に、又は特にバッチ式で行うプロセスで異なる時間に運転することができる。これにより、例えば、1つの装置で方法工程を行うと同時に、同じ方法工程のための他の装置が整備され、例えば、洗浄されることが可能になる。さらに、すべての成分を添加した後、装置の内容物が一定時間残る方法工程、例えば反応又は加水分解では、1つの装置ですべての化合物を供給した後、第1の装置でのプロセスがまだ継続している間に、成分をさらなる装置に供給することが可能である。しかしながら、すべての装置に成分を同時に添加し、この装置で方法工程を同時に行うことも可能である。
本発明の例示的な実施態様は、図に示され、以下の説明でより詳細に説明される。
図において、唯一の図は、DCDPSOを精製する方法の概略フロー図を示す。
DCDPSO及びMCBを含む懸濁液1は濾過装置3に供給される。濾過装置3において、懸濁液1は、濾過ケーキ5を形成する固体DCDPSO、及び濾液としての母液7に分離される。母液7は、濾過装置3から取り出される。
図に示す実施態様では、その後に濾過ケーキ5は濾過装置で洗浄される。濾過ケーキ5を洗浄するために、MCBがMCB供給ライン9を介して濾過装置に供給される。洗浄工程の後、濾過ケーキ5は、矢印6で描かれている濾過装置3から取り出される。
濾過及び洗浄が1つの装置で連続的に行われる場合、好ましくは、濾過装置3はバンドフィルターである。バンドフィルターでは、懸濁液はフィルターバンド11の一端に供給され、濾過装置3を通って輸送される。懸濁液は、濾過装置3を通って輸送される間に濾過され、濾過ケーキ5及び母液7を形成する。フィルターバンド11の長さ及び速度に依存する一定の濾過時間の後、濾過ケーキ5を洗浄するためのMCBが添加される。濾過ケーキを洗浄するために、MCBは、濾過ケーキ、及び濾過ケーキ5が載っているフィルターバンド11を通過し、フィルターバンド11の下に集められ、ライン13を介して濾過装置3から取り出される。
図1に示すように、濾過及び洗浄に1つの装置を使用する以外に、懸濁液を濾過して濾過ケーキ及び母液を形成する1つの濾過装置、及び濾過ケーキを輸送して次に洗浄する第2の装置を使用することも可能である。さらに、濾過及び洗浄をバッチ式で行う場合は、まず懸濁液を濾過し、同じ装置で濾過によって得られた濾過ケーキを洗浄する。しかしながら、バッチ式のプロセスでは、連続的プロセスと違って、濾過ケーキを輸送する必要がない。したがって、濾過ケーキを輸送しないフィルター装置、例えば撹拌圧力ストレーナー、回転圧力フィルター又はドラムフィルターを使用することができる。
洗浄13に使用された母液7及びMCBは、濾過装置3から取り出され、精製工程15に供給される。洗浄に使用された母液及びMCBの精製は、例えば蒸発又は蒸留によって行うことができる。一般的には、MCBは低沸点のボイラーであるため、蒸発して蒸気17として取り出される。その後、蒸気状のMCBは凝縮され、例えば、懸濁液の製造又は濾過ケーキの洗浄に再利用することができる。
蒸発又は蒸留において、高沸点のボイラーはMCB中に濃縮される。この濃縮液19は、精製工程15から取り出され、例えば、4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの冷却及び結晶化によって、懸濁液を製造するためのプロセスにリサイクルすることができる。
図1に示すように、濾過で得られた母液及び洗浄工程からのMCBを1つの精製工程に添加する以外に、母液の濃縮及び洗浄工程からのMCBの精製を別々に行うことも可能である。この場合、母液の濃縮及びMCBの精製は、好ましくは両方とも蒸留又は蒸発によって行われ、ここで、それぞれ、両方の蒸留及び/又は蒸発におけるMCBは低沸点のボイラーであり、ガス状で取り出され、濃縮された母液及び洗浄工程からの不純物は高沸点のボイラーであり、液体の形態である。濃縮された母液は、懸濁液を製造する工程で使用することができ、洗浄に使用されるMCBの精製工程で蒸留又は蒸発によって得られた高沸点ボイラーは取り出される。
さらに、母液の濃縮及び精製を別々に行うことも可能である。また、濃縮プロセスで母液から取り出されたMCBをさらに精製するために、母液から取り出されたMCBをMCBの精製プロセスにも添加する。
5.5モルの塩化アルミニウム及び40モルのMCBを第1の反応器としての撹拌タンク反応器に供給した。5モルのチオニルクロリドを160分間で反応混合物に加えた。第1の反応器における反応を10℃で行った。反応中に製造した塩化水素をプロセスから取り出した。チオニルクロリドの添加が終了した後、反応混合物を60℃に加熱した。
第1の反応器における反応が終了した後、得られた反応混合物を、濃度11質量%の塩酸3400gを含有する第2の撹拌タンク反応器に供給した。第2の撹拌タンク反応器を90℃の温度に加熱した。30分後に攪拌を停止し、混合物を水相と有機相に分離した。
水相を取り出し、90℃で撹拌しながら有機相を3000gの水で洗浄した。洗浄後、撹拌を停止し、混合物を水相と有機相に分離した。
水相を取り出し、有機相を結晶化に付した。30℃で得られた懸濁液を濾過した。濾過により、濾過ケーキが得られ、この濾過ケーキをモノクロロベンゼン(MCB)で洗浄した。表1は、使用した洗浄液の量に応じた濾過ケーキの組成に関する結果をまとめたものである。
Claims (10)
- 4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの精製方法であって、
(a)モノクロロベンゼン中に粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを含む懸濁液を提供する工程と、
(b)前記懸濁液を固液分離して、残留水分含有4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを得る工程と、
(c)モノクロロベンゼンで、前記残留水分含有4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを洗浄する工程と、
(d)任意に、工程(a)~(c)を繰り返す工程と
を含む、方法。 - 前記モノクロロベンゼンの少なくとも一部が、濾過ケーキの洗浄に使用された後に精製され、リサイクルされる、請求項1に記載の方法。
- 前記モノクロロベンゼンが蒸留又は蒸発によって精製される、請求項2に記載の方法。
- 前記精製されたモノクロロベンゼンの少なくとも一部が、モノクロロベンゼン中に粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを含む懸濁液を製造するプロセスにリサイクルされる、請求項2又は3に記載の方法。
- 前記精製されたモノクロロベンゼンの少なくとも一部が、前記残留水分含有4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの洗浄に再利用される、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
- 固液分離及び洗浄が1つの装置中で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記固液分離が濾過である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記濾過が、撹拌式圧力ヌッチェ、回転式圧力フィルター、ドラムフィルター又はベルトフィルターで行われる、請求項7に記載の方法。
- 前記残留水分含有4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの洗浄に使用される前記モノクロロベンゼンが、1体積%未満の不純物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
- 4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド及びモノクロロベンゼンを含む前記懸濁液が、4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを前記モノクロロベンゼン中で結晶化することによって製造される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
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