JP2022513617A - 3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(bp-tmc)を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。特に、本発明は、ガス状酸性触媒の存在下で、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとフェノールとからの3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。この製造は、第1の乾燥工程と第2の乾燥工程とを含み、第1の乾燥工程に比べて第2の乾燥工程の温度が高いか、又は第1の乾燥工程に比べて第2の乾燥工程の圧力が低いか、又は第1の乾燥工程(d1)に比べて第2の乾燥工程の温度が高く、かつ圧力が低い。【選択図】なし
Description
本発明は、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。特に、本発明は、ガス状酸性触媒の存在下で、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとフェノールとからの3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。この製造は、第1の乾燥工程と第2の乾燥工程とを含み、第1の乾燥工程に比べて第2の乾燥工程の温度が高いか、又は第1の乾燥工程に比べて第2の乾燥工程の圧力が低いか、又は第1の乾燥工程(d1)に比べて第2の乾燥工程の温度が高く、かつ圧力が低い。
ガス状酸性触媒の存在下、反応容器中で、第1の反応物質である3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(以下、TMC-oneという)と、第2の反応物質であるフェノールとから3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(以下、BP-TMCともいう)を製造すること自体は既知である。
特許文献1には、酸性触媒の存在下で、TMCとフェノールとからBP-TMCを製造することが既に開示されている。特許文献1は、得られた反応生成物を乾燥することにも言及しているが、その詳細は何ら開示されていない。
欧州特許出願公開第1277723号にも、酸性触媒の存在下で、TMCとフェノールとからBP-TMCを製造することが既に開示されている。欧州特許出願公開第1277723号も、得られた反応生成物を乾燥することに言及している。しかしながら、欧州特許出願公開第1277723号にも、反応生成物の乾燥についての詳細は何ら開示されていない。
欧州特許出願公開第1277723号によれば、BP-TMCは、BP-TMC-フェノール付加物の結晶として断続的に得ることができる。欧州特許出願公開第1277723号の内容は引用することにより本明細書の一部をなす。
BP-TMCを製造する工業プロセスにおいて、これらの結晶は、60重量%~70重量%のBP-TMCと、30重量%~40重量%のフェノールとを含み、ごく少量の、特に1000ppm未満の不可避不純物も含み得る。これらの不可避不純物は、例えば、反応物質及び触媒によって導入される。当業者であれば、全ての主要な不可避不純物の種類及び量が分かる。また、BP-TMCは、乾燥により、少なくとも99重量%、好ましくは少なくとも99.5重量%、最も好ましくは少なくとも99.9重量%のBP-TMCと、1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、最も好ましくは200ppm以下のフェノールとを含む結晶として得られる。BP-TMCの量とフェノールの量と不可避不純物の量とを合わせると、常に100重量%になる。乾燥中に、フェノールが蒸発する。
しかしながら、大気圧(1013.25mbar)での純BP-TMCの融点は、210℃であり、BP-TMCが乾燥中に分解されないようなBP-TMCの熱安定性には、200℃未満の乾燥温度が必要となる。BP-TMCの分解により、最終生成物の不純物が多くなり、結晶構造が不適なものとなり、その最終生成物を、更なる処理、例えば、相界面法においてBP-TMC及びホスゲンを用いる、又は炭酸ジフェニルを使用する溶融エステル交換においてBP-TMCを用いるポリカーボネートの製造に移行して使用するのは難しい。
そのため、乾燥中に液体状態のBP-TMCを製造するための工業プロセスで得られたBP-TMCを含む結晶を含めた構成全体を維持することは不可能である。結晶のフェノール含有量は乾燥中に低下する。工業的には、乾燥中に液体状態のBP-TMCを含む結晶を含めた構成全体を維持することが望ましい。というのも、これにより乾燥が強まり、特に乾燥が促進されるためである。しかしながら、これは、上記で説明した理由から不可能である。したがって、乾燥機にて固体状態のBP-TMCを含む結晶の乾燥を行う必要がある。従来の乾燥機、例えば回転式乾燥機での乾燥中に、乾燥機の内部には、BP-TMC-フェノール付加物の結晶からの蒸発により、フェノールが大量にあることから、BP-TMC-フェノール付加物の結晶からのフェノールの適度な蒸発を達成するのに十分高い温度を維持するために、熱エネルギーの入力を非常に高くしなければならないという問題が生じる。さらに、これにより、乾燥機の内壁の温度が高くなるため、乾燥機の内壁に接するBP-TMCを含む結晶が液体になるという状況に繋がる。このことによっても、結晶形態の変化、すなわち不適な結晶構造、又は更にはBP-TMCの分解が起こる。
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA、BPA)は、大気圧(1013.25mbar)にてより低い融点(約155℃)を有することから、BPAが液体状態になる場合には分解の問題が生じない。そのため、BPAを乾燥する方法をBP-TMCの乾燥に使用することはできない。
上記で説明された現行の技術水準による問題を克服するために、BP-TMCを含む結晶を含めた乾燥構成にバッチ式乾燥機が使用されている。これらのバッチ式乾燥機は、温度を経時的に変化させることで、この問題を回避することができる。しかしながら、バッチ式乾燥機は、連続して稼働することができないため、バッファーボリューム(buffer volumes)が大きくなり、追加の操作工程が必要となることから、より多くの運転コストがかかる。
現行の技術水準、例えば、特許文献2による別の解決策は、フェノール及びBP-TMCと混合しない溶媒を再結晶化工程で使用することである。これにより、付加物からフェノールが除去され、かかる溶媒中にBP-TMCの結晶が形成される。これらのBP-TMCの結晶は、もはやBP-TMCとフェノールとの付加物の一部ではないため、これらの結晶の融点が非常に高く、そのためかかる溶媒の除去に必要とされる温度上昇による結晶の相変化は起こらない。しかしながら、最終生成物においてこの溶媒も僅かに見られる。これらの微量の溶媒は、例えば、BP-TMC及びホスゲンからの、又はBP-TMC及び炭酸ジフェニルからのポリカーボネートの製造を妨げ得ることから、不利に働く。
水による洗浄工程を用いて付加物からフェノールを除去し、乾燥工程にて水を除去することも可能である。しかしながら、所要のフェノールを除去し得るのに必要となる水の消費量が多く、水を蒸発させるのに実質的にかなりのエネルギーが消費される。
そのため、現在、フェノール含有量の低い、特にフェノール含有量が1000ppm未満、好ましくは300ppm未満、最も好ましくは200ppm未満であるBP-TMC結晶を得るために、連続した固体乾燥プロセスにて乾燥を行うことは不可能である。
したがって、本発明の目的は、現行の技術水準の不利点を克服することである。
特に、本発明の目的は、連続して実施する乾燥工程を含む、純度が少なくとも99重量%のBP-TMCを製造する方法を提供することである。
驚くべきことに、この目的は、請求項1の主題により達成された。好ましい実施の形態は、従属項に見ることができる。
特に、この目的は、下記により達成された。
1000ppm未満のフェノールを含むBP-TMCを製造する方法であって、該方法は、
(a)TMC-oneとフェノールとを酸性触媒の存在下で反応させることで、BP-TMC-フェノール付加物の形態のBP-TMCと水とを含む混合生成物を得る工程と、
(b)前記混合生成物から前記BP-TMC-フェノール付加物を分離する工程と、
を含み、
該方法は、
(d)前記BP-TMC-フェノール付加物から、
(d1)BP-TMC-フェノール付加物とBP-TMCとを含み、フェノール濃度が10重量%未満である中間混合生成物が得られるまで、160℃以下、より好ましくは145℃以下の温度、及び200mbar~20mbar、好ましくは50mbar~25mbarの絶対圧力で前記BP-TMC-フェノール付加物を乾燥させることと、
(d2)工程(d1)から得られた前記中間混合生成物を、150℃~180℃の温度及び50mbar未満、好ましくは25mbar未満、より好ましくは20mbar未満の絶対圧力で乾燥させることと、
により前記フェノールを除去する工程、
を更に含み、工程(d1)に比べて工程(d2)の温度が高いか、又は工程(d1)に比べて工程(d2)の圧力が低いか、又は工程(d1)に比べて工程(d2)の温度が高く、かつ圧力が低い、方法。
(a)TMC-oneとフェノールとを酸性触媒の存在下で反応させることで、BP-TMC-フェノール付加物の形態のBP-TMCと水とを含む混合生成物を得る工程と、
(b)前記混合生成物から前記BP-TMC-フェノール付加物を分離する工程と、
を含み、
該方法は、
(d)前記BP-TMC-フェノール付加物から、
(d1)BP-TMC-フェノール付加物とBP-TMCとを含み、フェノール濃度が10重量%未満である中間混合生成物が得られるまで、160℃以下、より好ましくは145℃以下の温度、及び200mbar~20mbar、好ましくは50mbar~25mbarの絶対圧力で前記BP-TMC-フェノール付加物を乾燥させることと、
(d2)工程(d1)から得られた前記中間混合生成物を、150℃~180℃の温度及び50mbar未満、好ましくは25mbar未満、より好ましくは20mbar未満の絶対圧力で乾燥させることと、
により前記フェノールを除去する工程、
を更に含み、工程(d1)に比べて工程(d2)の温度が高いか、又は工程(d1)に比べて工程(d2)の圧力が低いか、又は工程(d1)に比べて工程(d2)の温度が高く、かつ圧力が低い、方法。
工程(d1)において、結晶の初期フェノール濃度は、少なくとも50重量%であり、次いで10重量%未満の値に減少する。
工程(d1)において、温度が、135℃以上かつ160℃以下、より好ましくは135℃以上かつ145℃以下であることが好ましい。
工程(d2)において、温度が、工程(d1)よりも少なくとも20℃高いことが好ましい。
工程(d2)において、圧力が、工程(d1)よりも少なくとも10mbar低いことが更に好ましい。
工程(b)において、BP-TMC-フェノール付加物が、BP-TMCとフェノールとを含む結晶として得られることが更に好ましい。
工程(d)の完了後、BP-TMCは結晶として得られる。
工程(d1)又は工程(d2)の少なくとも一方が回転式乾燥機にて行われることが更に好ましい。
前記フェノールが、フェノールを除く任意の有機溶媒の非存在下にて前記BP-TMC-フェノール付加物の結晶から除去されることが更に好ましい。
BP-TMC-フェノール付加物もBP-TMCも工程(d1)又は工程(d2)では溶融しない、すなわちBP-TMC-フェノール付加物及びBP-TMCはどちらも工程(d1)又は工程(d2)では結晶であることが更に好ましい。
工程(d2)で得られた前記BP-TMCが1000ppm未満、好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満、最も好ましくは150ppm未満のフェノール含有量を有することが更に好ましい。
工程(d1)と工程(d2)とが連続して行われることが更に好ましい。
工程(d1)において、前記結晶のフェノール濃度が5重量%未満に低下することが更に好ましい。
工程(a)において、ガス状酸性触媒が、塩化水素と硫化水素とを含むことが更に好ましい。ガス状酸性触媒が、塩化水素と硫化水素との混合物であることが好ましい。
工程(b)において、前記BP-TMC-フェノール付加物が、
(b1)蒸留により前記触媒及び前記水を除去することと、
(b2)蒸留残渣から前記BP-TMC-フェノール付加物を結晶化することと、
(b3)濾過により、前記BP-TMC-フェノール付加物を分離することと、
により分離されることが更に好ましい。
(b1)蒸留により前記触媒及び前記水を除去することと、
(b2)蒸留残渣から前記BP-TMC-フェノール付加物を結晶化することと、
(b3)濾過により、前記BP-TMC-フェノール付加物を分離することと、
により分離されることが更に好ましい。
方法が、
(c)液体フェノールから、工程(b)で得られた前記BP-TMC-フェノール付加物の結晶を再結晶化する工程、
を更に含むことが更に好ましい。
(c)液体フェノールから、工程(b)で得られた前記BP-TMC-フェノール付加物の結晶を再結晶化する工程、
を更に含むことが更に好ましい。
工程(d2)で得られた前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの20重量%~60重量%、好ましくは30重量%~50重量%の量が工程(d1)に戻されることが更に好ましい。
本発明による方法により、フェノール含有量が1000ppm未満、好ましくは300ppm未満、最も好ましくは200ppm未満である、純度が少なくとも99重量%のBP-TMCが得られる。BP-TMC-フェノール付加物もBP-TMCも溶融しないという事実から、結晶形態の変化もBP-TMCの分解も起こらない。本発明による方法により得られた結晶は、更に良好な結晶構造を示す。そのため、BP-TMCは、更に前処理することなく、ポリカーボネートの製造に使用することができる。
Claims (14)
- 1000ppm未満のフェノールを含む3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールを製造する方法であって、該方法は、
(a)3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとフェノールとを酸性触媒の存在下で反応させることで、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物の形態の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノールと水とを含む混合生成物を得る工程と、
(b)前記混合生成物から前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物を分離する工程と、
を含み、
該方法は、
(d)前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物から、
(d1)3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物と3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノールとを含み、フェノール濃度が10重量%未満である中間混合生成物が得られるまで、160℃以下、より好ましくは145℃以下の温度、及び200mbar~20mbar、好ましくは50mbar~25mbarの絶対圧力で前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物を乾燥させることと、
(d2)工程(d1)から得られた前記中間混合生成物を、150℃~180℃の温度及び50mbar未満、好ましくは25mbar未満、より好ましくは20mbar未満の絶対圧力で乾燥させることと、
により前記フェノールを除去する工程、
を更に含み、工程(d1)に比べて工程(d2)の温度が高いか、又は工程(d1)に比べて工程(d2)の圧力が低いか、又は工程(d1)に比べて工程(d2)の温度が高く、かつ圧力が低い、方法。 - 工程(d2)において、温度が工程(d1)より少なくとも20℃高い、請求項1に記載の方法。
- 工程(d2)において、圧力が工程(d1)より少なくとも10mbar低い、請求項1又は2に記載の方法。
- 工程(b)において、前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物が、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールとフェノールとを含む結晶として得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(d1)又は工程(d2)の少なくとも一方が回転式乾燥機にて行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記フェノールが、フェノールを除く任意の有機溶媒の非存在下にて前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物の結晶から除去される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物も前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールも工程(d1)又は工程(d2)では溶融しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(d2)で得られた前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールが1000ppm未満、好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満、最も好ましくは150ppm未満のフェノール含有量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(d1)と工程(d2)とが連続して行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(d1)において、前記結晶のフェノール濃度が5重量%未満に低下する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(b)において、前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物が、
(b1)蒸留により前記触媒及び前記水を除去することと、
(b2)蒸留残渣から前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物を結晶化することと、
(b3)濾過により、前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物を分離することと、
により分離される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。 - (c)液体フェノールから、工程(b)で得られた前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物の結晶を再結晶化する工程、
を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。 - 工程(d2)で得られた前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの20重量%~60重量%、好ましくは30重量%~50重量%の量が工程(d1)に戻される、請求項1に記載の方法。
- 工程(d1)において、温度が135℃以上かつ160℃以下、より好ましくは135℃以上かつ145℃以下である、請求項1又は2に記載の方法。
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