JP2022190407A - ポリイミド多孔質膜及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド多孔質膜及びその製造方法 Download PDF

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英也 小針
Hideya Kobari
陽明 森田
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Abstract

【課題】高い誘電率を有するポリイミド多孔質膜及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係るポリイミド多孔質膜は、多孔質ポリイミドと導電性繊維状材料とを含み、前記導電性繊維状材料の量は、前記多孔質ポリイミドに対し、3.1~7.7質量%である。本発明に係るポリイミド多孔質膜の製造方法は、ポリアミック酸と微粒子と導電性繊維状材料とを含む未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、前記未焼成複合膜を焼成して、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜を得る焼成工程と、前記ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜から微粒子を取り除いて、前記ポリイミド多孔質膜を得る微粒子除去工程と、を含み、前記導電性繊維状材料の量は、前記ポリアミック酸に対し、3.1~7.7質量%である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド多孔質膜及びその製造方法に関する。
近年、ガス又は液体の分離膜用として使用されるフィルター、リチウムイオン電池のセパレータ、燃料電池電解質膜、又は低誘電率材料として、ポリイミド多孔質膜の研究がなされている。
例えば、ポリイミドの多孔質膜として、ポリアミック酸やポリイミドの溶液中にシリカ粒子を分散させたワニスを基板上に塗布した後、必要に応じて塗布膜を加熱してシリカ粒子を含むポリイミド膜を得、次いで、ポリイミド膜中のシリカをフッ化水素水で溶出除去して得られた多孔質膜が知られている(特許文献1参照)。
特許第5605566号公報
ポリイミド多孔質膜は、空隙を有することにより、通常、低誘電率材料となりやすい。このようなポリイミド多孔質膜は、高誘電率化することができれば、断熱性を有する高出力電子部品若しくは高出力電子デバイスにおける部材又は接触帯電により発電を行う発電体における高出力部材として好適に使用できることが期待される。しかし、本発明者らの検討によれば、導電性材料の添加によりポリイミド多孔質膜を高誘電率化しようとしても、高誘電率化せずに導電性が発現してしまいやすいことが判明した。
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、高い誘電率を有するポリイミド多孔質膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、多孔質ポリイミドと導電性繊維状材料とを含み、前記導電性繊維状材料の量が所定の範囲内であるポリイミド多孔質膜により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
本発明の第一の態様は、多孔質ポリイミドと導電性繊維状材料とを含むポリイミド多孔質膜であって、
前記導電性繊維状材料の量は、前記多孔質ポリイミドに対し、3.1~7.7質量%であるポリイミド多孔質膜である。
本発明の第二の態様は、第一の態様に係るポリイミド多孔質膜の製造方法であって、
ポリアミック酸と微粒子と導電性繊維状材料とを含む未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、
前記未焼成複合膜を焼成して、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜を得る焼成工程と、
前記ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜から微粒子を取り除いて、前記ポリイミド多孔質膜を得る微粒子除去工程と、
を含み、
前記導電性繊維状材料の量は、前記ポリアミック酸に対し、3.1~7.7質量%であるポリイミド多孔質膜の製造方法である。
本発明によれば、高い誘電率を有するポリイミド多孔質膜及びその製造方法を提供することができる。
<ポリイミド多孔質膜>
ポリイミド多孔質膜は、多孔質ポリイミドと導電性繊維状材料とを含み、前記導電性繊維状材料の量は、前記多孔質ポリイミドに対し、3.1~7.7質量%である。以下、ポリイミド多孔質膜を単に「多孔質膜」ともいう。多孔質ポリイミドとは、ポリイミド樹脂からなる多孔質材料をいう。
多孔質膜は、上記量の導電性繊維状材料を含むことにより、空隙を有するにもかかわらず、高い誘電率を有する。多孔質膜は、誘電率が、例えば、2以上であり、好ましくは2.2以上であり、より好ましくは2.5以上である。該誘電率の上限は、例えば、20以下であり、好ましくは15以下であり、より好ましくは12以下である。誘電率の観点から、多孔質膜は、非導電性であることが好ましい。また、多孔質膜において、導電性繊維状材料は、多孔質ポリイミド中に分散していることが好ましい。これにより、導電性繊維状材料同士の接触が起こりにくくなり、多孔質膜は、非導電性となりやすい。
導電性繊維状材料は、導電性を有する繊維状材料である限り、特に限定されず、炭素系導電性繊維状材料でも金属系導電性繊維状材料でもよい。炭素系繊維状材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。金属系導電性繊維状材料としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタン、鉛等の金属、2種以上の金属の合金(ステンレス等)、鋼等からなる導電性繊維状材料が挙げられる。また、導電性繊維状材料は、中空繊維からなる導電性繊維状材料でも中実繊維からなる導電性繊維状材料でもよく、中空繊維からなる導電性繊維状材料としては、前述のカーボンナノチューブが挙げられる。
導電性繊維状材料の量の上限は、前記多孔質ポリイミドに対し、7.7質量%以下であり、電気抵抗値、表面電位等の観点から、7.6質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましい。
導電性繊維状材料の量の下限は、前記多孔質ポリイミドに対し、3.1質量%以上であり、誘電率等の観点から、4.0質量%以上であることが好ましく、4.5質量%以上であることがより好ましい。
多孔質膜は、1種類の膜のみからなる単層膜であっても、2種類以上の膜が2層以上積層された積層膜であってもよい。
多孔質膜が積層膜である場合、ラミネート法等の常法に従って積層膜を形成することができる。また、積層膜の最外層のいずれか一方を構成する多孔質膜の上に、順次、積層膜に含まれる多孔質膜を形成していってもよい。また、多孔質膜の前駆膜を、ラミネート法、塗布法等により積層した後に、前駆膜が積層された積層膜を多孔質化して、積層膜である多孔質膜を形成することもできる。前駆膜としては、例えば、樹脂からなるマトリックス中に、熱分解や、有機溶剤、水、酸、又はアルカリ等による処理により除去可能な微粒子を含む層が挙げられる。
多孔質膜が備える空隙の形状は、特に限定されない。多孔質膜は通気性を有してもよい。
多孔質膜は、所望の空隙率を有し、後述するように、球状孔が相互に連通した構造(以下、連通孔と略称する)を有するのが好ましい。多孔質膜が積層体である場合に、積層体に含まれる多孔質層についても同様である。
孔の形状に関する球状は、真球状を含む概念であるが、必ずしも真球のみに限定されない。球状とは、実質的に真球状であればよく、孔部の拡大像を目視により確認した場合に略真球状と認識できる形状も、球状に含まれる。
具体的には球状孔では、孔部を規定する面が曲面であり、当該曲面により真球状又は略真球上の空孔が規定されていればよい。
なお、多孔質膜が積層膜である場合に、積層膜を構成する各多孔質膜について、空隙率や、連通孔を構成する球状孔の孔径は、同じであっても異なっていてもよい。
例えば、多孔質膜について、個々の球状孔は、典型的には、後述するポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜中に存在する個々の微粒子が後工程で除去されることにより形成される。
また、連通孔は、後述する多孔質膜の製造方法において、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜中にそれぞれ接して存在する複数の微粒子が、後工程で除去されることにより形成される。連通孔における球状孔が連通する箇所は、除去される前の複数の微粒子が互いに接触する箇所に由来する。
多孔質膜の開口部の直径は、優れた気体の通過速度と、多孔質膜の強度との両立の点で、50nm以上3000nm以下が好ましく、100nm以上2000nm以下がより好ましく、200nm以上1000nm以下が更に好ましい。
開口部の直径は、連通孔を構成する球状孔の直径と同等又は略同等である。
多孔質膜の膜厚は特に限定されない。多孔質膜の膜厚は、多孔質膜の用途に応じて適宜決定される。典型的には、多孔質膜の膜厚は、20μm以上が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下が更により好ましい。
多孔質膜の膜厚や、多孔質膜が積層膜である場合に当該積層膜に含まれる各多孔質膜の膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めたり、膜断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して平均することで求めたりすることができる。
多孔質膜の空隙率は、優れた気体の通過速度の点で、60%以上が好ましく、65%以上85%以下がより好ましく、70%以上80%以下が更に好ましい。
空隙率は、例えば、多孔質膜の単位体積あたりの空隙の割合を示す。空隙率は、以下の式(A)によって算出することができる。
空隙率(%)={試験片の体積(cm)-[試験片の重量(g)/ポリイミド樹脂又はポリイミド樹脂組成物の比重(g/cm)]}/試験片の体積(cm)×100・・・(A)
後述するように多孔質膜を製造する際に用いられる微粒子の粒径や含有量を適宜調整することにより空隙率を所望の値に調整できる。
<多孔質膜の製造方法>
多孔質膜は、例えば、
ポリアミック酸と微粒子と導電性繊維状材料とを含む未焼成複合膜を成膜する未焼成複合膜形成工程と、
前記未焼成複合膜を焼成して、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜を得る焼成工程と、
前記ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜から微粒子を取り除いて、前記ポリイミド多孔質膜を得る微粒子除去工程と、
を含み、
前記導電性繊維状材料の量は、前記ポリアミック酸に対し、3.1~7.7質量%であるポリイミド多孔質膜の製造方法により製造することができる。上記未焼成複合膜は、例えば、下記の多孔質膜製造用組成物から成膜することができる。
以下、多孔質膜の製造方法について、多孔質膜製造用組成物と、上記の多孔質膜の好ましい製造方法とについて詳細に説明する。
〔多孔質膜製造用組成物〕
多孔質膜製造用組成物は、ポリイミド樹脂を生成し得る化合物を含有する。ポリイミド樹脂を生成し得る化合物は、ポリイミド樹脂形成用の単量体であってもよく、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸であってもよい。ポリイミド樹脂を生成し得る化合物としては、ポリアミック酸が好ましい。
以下、多孔質膜製造用組成物に含まれる、必須又は任意の成分について説明する。
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸としては、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合して得られる樹脂を、特に限定なく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物1モルに対するジアミンの使用量は、0.50モル以上1.50モル以下が好ましく、0.60モル以上1.30モル以下がより好ましく、0.70モル以上1.20モル以下が特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は1種類を単独で又は二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよく、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2個以上10個以下程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4-ジアミノトルエン、2,4-トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物では、2つのアミノフェニル基同士が結合している。例えば、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合した化合物である。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合の炭素原子数は1~6程度である、アルキレン基の誘導体基は、1以上のハロゲン原子等で置換されたアルキレン基である。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(p-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-1-ペンテン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-2-ペンテン、イミノジアニリン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)ペンタン、ビス(p-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニル尿素、4,4’-ジアミノジフェニルアミド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基がいずれも他の基を介して結合した化合物である。他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様の基が選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5-ジアミノナフタレン及び2,6-ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6-アミノ-1-(p-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(m-アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9-ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、例えば、2~15程度がよい。脂肪族ジアミンの具体例としては、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
ポリアミック酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類、キシレン系混合溶媒等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミック酸の含有量が5~50質量%とするのが望ましい。
これらの溶剤の中では、生成するポリアミック酸の溶解性から、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には-10℃以上120℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3時間以上24時間以下である。
ポリアミック酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[ポリイミド樹脂]
ポリイミド樹脂は、その構造や分子量が限定されることはなく、公知のものを使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。また、多孔質膜製造用組成物が溶剤を含有するものである場合、使用する溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドが好ましい。
溶剤に可溶なポリイミド樹脂とするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するための単量体の使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2-メチル-1,4-フェニレンジアミン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、溶剤への溶解性を向上する官能基を有する単量体の使用、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミド樹脂の溶解性を向上するための単量体に加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミック酸の欄に記したものと同じ単量体を併用することもできる。
ポリイミド樹脂及びその単量体の各々は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミド樹脂を製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミック酸を化学イミド化又は加熱イミド化させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミド樹脂としては、脂肪族ポリイミド樹脂(全脂肪族ポリイミド樹脂)、芳香族ポリイミド樹脂等を挙げることができ、芳香族ポリイミド樹脂が好ましい。芳香族ポリイミド樹脂としては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミック酸を熱又は化学的な手段で閉環反応させることによって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミド等が挙げられる。式中、Arはアリール基を示す。多孔質膜製造用組成物が溶剤を含有する場合、これらのポリイミド樹脂は、次いで、使用する溶剤に溶解させるとよい。
Figure 2022190407000001
Figure 2022190407000002
[微粒子]
微粒子の材質は、多孔質膜製造用組成物に含まれる溶剤に不溶で、後にポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜から除去可能であれば、特に限定されることなく公知の材質が採用可能である。例えば、無機材料としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al)等の金属酸化物、有機材料としては、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。
具体的に微粒子としては、例えば、コロイダルシリカが挙げられる。中でも単分散球状シリカ粒子を選択する場合、均一な孔を形成できるために好ましい。
また、微粒子について、真球率が高く、粒径分布指数が小さいのが好ましい。これらの条件を備えた微粒子は、多孔質膜製造用組成物中での分散性に優れ、互いに凝集しない状態で使用することができる。使用する微粒子の平均粒径は、多孔質膜の表面における開口径や多孔質膜の膜厚を勘案して適宜選択される。微粒子の平均粒径は、例えば、50nm以上が好ましく、100nm以上2000nm以下がより好ましく、200nm以上1000nm以下が更に好ましい。これらの条件を満たすことで、微粒子を取り除いて得られる多孔質膜の孔径を揃えることができる。
微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[導電性繊維状材料]
導電性繊維状材料としては、前述の通りである。導電性繊維状材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電性繊維状材料の量の上限は、前記ポリアミック酸に対し、7.7質量%以下であり、電気抵抗値、表面電位等の観点から、7.6質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましい。
導電性繊維状材料の量の下限は、前記ポリアミック酸に対し、3.1質量%以上であり、誘電率等の観点から、4.0質量%以上であることが好ましく、4.5質量%以上であることがより好ましい。
[溶剤]
溶剤としては、溶剤が、ポリアミック酸及び/又はポリイミド樹脂を溶解させ、微粒子を溶解させなければ、特に限定されない。溶剤の好適な例としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応について例示した溶剤が挙げられる。溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[分散剤]
多孔質膜製造用組成物の微粒子を均一に分散することを目的に、微粒子とともに更に分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することにより、微粒子を多孔質膜製造用組成物中に一層均一に混合でき、更には、多孔質膜製造用組成物を成膜した膜中で、微粒子を均一に分布させることができる。その結果、最終的に得られる多孔質膜の表面に稠密な開口を設け、且つ、表裏面を効率よく連通させることが可能となり、多孔質膜の透気度が向上する。更に、分散剤を添加することにより、多孔質膜製造用組成物の乾燥性が向上しやすく、また、形成された未焼成複合膜の基板等からの剥離性が向上しやすい。
分散剤は、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。また、上記分散剤は、2種以上を混合して使用することもできる。
多孔質膜製造用組成物において、分散剤の含有量は、例えば、成膜性の点で、上記微粒子の質量に対し0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.7質量%以下が更により好ましい。
〔多孔質膜の好適な製造方法〕
[未焼成複合膜形成工程]
未焼成複合膜形成工程では、例えば、基板上に上述した多孔質膜製造用組成物を塗布し、常圧又は真空下で0℃以上100℃以下、好ましくは常圧下10℃以上100℃以下で乾燥することにより、未焼成複合膜を形成することができる。基板としては、例えば、PETフィルム、SUS基板、ガラス基板等が挙げられる。
また、未焼成複合膜を基板から剥離する場合、膜の剥離性を更に高めるために、予め離型層を設けた基板を使用することもできる。基板に予め離型層を設ける場合は、多孔質膜製造用組成物の塗布の前に、基板上に離型剤を塗布して乾燥あるいは焼き付けを行う。ここで使用される離型剤は、アルキルリン酸アンモニウム塩系、フッ素系又はシリコーン等の公知の離型剤が特に制限なく使用可能である。上記乾燥した未焼成複合膜を基板から剥離する際、未焼成複合膜の剥離面にわずかながら離型剤が残存するため、焼成中の変色や電気特性への悪影響の原因ともなるので、極力取り除くことが好ましい。離型剤を取り除くことを目的として、基板より剥離した未焼成複合膜を、有機溶剤を用いて洗浄する洗浄工程を導入してもよい。
一方、未焼成複合膜の成膜に、離型層を設けず基板をそのまま使用する場合は、上記離型層形成の工程や上記洗浄工程を省くことができる。また、未焼成複合膜の製造において、後述の焼成工程の前に、水を含む溶剤への浸漬工程、プレス工程、当該浸漬工程後の乾燥工程をそれぞれ任意の工程として設けてもよい。
[焼成工程]
未焼成複合膜に加熱による後処理(焼成)を行ってポリイミド樹脂と微粒子と導電性繊維状材料とからなる複合膜(ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜)を形成する。焼成工程における焼成温度は、未焼成複合膜の構造や縮合剤の有無によっても異なり、120℃以上480℃以下が好ましく、150℃以上450℃以下がより好ましい。また、微粒子に、有機材料を使用するときは、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。焼成工程においてはイミド化を完結させることが好ましい。
焼成条件は、例えば、250~300℃程度の焼成装置の中に前記未焼成複合膜を投入後、380℃~450℃の設定温度まで昇温し、30分間保持させる方法等の段階的な乾燥-熱イミド化法を用いることもできる。基板上に未焼成複合膜を成膜し、上記基板から上記未焼成複合膜を一旦剥離する場合は、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ることもできる。
[微粒子除去工程]
以上のようにして形成された、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜から、微粒子を適切な方法を選択して除去することにより、所望する構造の多孔質膜を再現性よく製造することができる。
微粒子の材質として、例えば、シリカを採用し、かつ、導電性繊維状材料として、例えば、カーボンナノチューブ等の炭素系繊維状材料を採用した場合、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜を低濃度のフッ化水素水等により処理して、シリカを溶解除去することが可能である。
なお、微粒子が有機微粒子である場合、有機微粒子を熱分解させることにより、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜からも微粒子を除去することができる。
また、微粒子が有機微粒子である場合、微粒子を溶解させるが、ポリイミド樹脂も導電性繊維状材料も溶解させない処理液を選択して、当該処理液による処理を行い、有機離微粒子を除去することができる。典型的には、処理液としては有機溶剤が使用される。有機微粒子が酸又はアルカリに可溶であり、導電性繊維状材料が酸又はアルカリに不溶である場合、酸性水溶液やアルカリ性水溶液も処理液として使用できる。
[樹脂除去工程]
微粒子除去工程前に、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜の樹脂部分の少なくとも一部を除去するか、又は、微粒子除去工程後に多孔質膜の少なくとも一部を除去する樹脂除去工程を有していてもよい。
微粒子除去工程前に、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜の樹脂部分の少なくとも一部を除去するか、微粒子除去工程後に多孔質膜の少なくとも一部を除去することにより、除去が行われない場合と比較し、最終製品である多孔質膜の開孔率を向上させることが可能となる。
ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜の樹脂部分の少なくとも一部を除去する工程、又は、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜の樹脂部分の少なくとも一部を除去する工程は、通常のケミカルエッチング法、物理的除去方法、又は、これらを組み合わせた方法により行うことができる。
ケミカルエッチング法としては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液による処理が挙げられる。無機アルカリ溶液が好ましい。無機アルカリ溶液として、例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。
上記の各溶液の溶媒については、純水、アルコール類を適宜選択できる。また界面活性剤を適当量添加したものを使用することもできる。アルカリ濃度は、例えば0.01~20質量%である。
また、物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを多孔質膜の表面に30~100m/sの速度で照射することで膜表面を処理する方法等が使用できる。
一方、微粒子除去工程後に行う樹脂除去工程にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、積層体を台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、処理対象表面に存在する多孔質膜の表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、多孔質膜が台紙フィルムから引きはがされる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、下記の実施例に限定されるものではない。
カーボンナノチューブ(製品名:VGCF(登録商標)、昭和電工(株)製)をメノウ鉢に入れ、5分間粉砕した。粉砕後のカーボンナノチューブと、分散剤としてのノニオン系界面活性剤とをジメチルアセトアミドに懸濁させて、カーボンナノチューブ懸濁液を得た。得られた懸濁液をホモジナイザー(製品名:Advanced Digital Sonifier MODEL 250DA、Branson Ultrasonics Corporation製)にて、3分間、20%の条件で処理した。処理後の懸濁液にシリカ微粒子(平均粒子径300nm)を添加し、更に、上記ホモジナイザーにて、3分間、20%の条件で処理して、スラリーAを得た。
一方、ポリアミック酸(ピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとの反応物)と、ジメチルアセトアミドとを、撹拌機(製品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて、5分間、2000rmpの条件で撹拌して、ポリアミック酸溶液を得た。
スラリーAと上記ポリアミック酸溶液とを上記撹拌機にて、10分間、2000rmpの条件で撹拌して、シリカ微粒子及びカーボンナノチューブを分散させ多孔質膜製造用組成物を調製した。調製の際、多孔質膜製造用組成物の固形分濃度を30質量%に合わせるため、溶媒として、適宜、ジメチルアセトアミドとγ-ブチロラクトンとを添加した。各溶媒の添加量は、多孔質膜製造用組成物において、ジメチルアセトアミドとγ-ブチロラクトンとの質量比が90:10となるように、調整した。多孔質膜製造用組成物の固形分を構成する成分の量を表1に示す。なお、表1において、カーボンナノチューブの濃度は、後述の通りにシリカ微粒子を除去した後に残る多孔質ポリイミドに対する値である。
多孔質膜製造用組成物をPETフィルム上に塗布した後、90℃で4分間加熱して溶剤を除去して膜厚約40μmの未焼成複合膜を形成した。
未焼成複合膜を、マッフル炉(製品名:FP-412、ヤマト科学(株)製)中で、450℃で30分間加熱処理(焼成)することにより、イミド化させ、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜を得た。得られたポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜について、20質量%HF溶液中に10分間浸漬することで、膜中に含まれるシリカ微粒子を除去した。シリカ微粒子の除去後、水洗及び乾燥を行い、多孔質膜を得た。
以上のようにして得られた多孔質膜について、透気度、電気抵抗値、表面電位、誘電率、及び誘電正接を、以下の方法に従い、測定した。結果を表1に記す
<透気度の測定>
5cm×5cmのサイズの多孔質膜のサンプルを用い、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製)を用いて、JIS P 8117に準じて、100mLの空気が上記サンプルを通過する時間を測定した。透気度の値が小さいほど、100mLの空気の通過時間が短いことを意味し、サンプルの気体の通過速度が速い。
<電気抵抗値>
10cm×10cmのサイズの多孔質膜のサンプルを用い、テスター(製品名:CDM-5000E、カスタム(株)製)を用いて、1cm間の電気抵抗値を測定した。
<表面電位>
10cm×10cmのサイズの多孔質膜のサンプルを用い、低電位測定器(製品名:KSD-3000、春日電機(株)製)を用いて、表面電位を測定した。
<誘電率及び誘電正接>
膜厚を10μmに変えることの他は、前述のフィルム化と同様の方法で得られたフィルムをサンプルとして、サンプルの誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)を、電子情報通信学会の信学技報vol.118,no.506,MW2018-158,pp.13-18,2019年3月「感光性絶縁フィルムの円筒空洞共振器法によるミリ波複素誘電率評価に関する検討」(高萩耕平(宇都宮大学)、海老澤和明(東京応化工業株式会社)、古神義則(宇都宮大学)、清水隆志(宇都宮大学))に記載された方法で測定した。ネットワークアナライザーHP8510C(キーサイト社製)を使用し、空洞共振器法で、室温25℃、湿度50%、周波数10GHz、サンプル厚さ40μmの条件で測定した。
Figure 2022190407000003
表1から分かる通り、実施例で得られたポリイミド多孔質膜は、導電性の発現を抑えつつ、高い誘電率を有することが確認された。

Claims (4)

  1. 多孔質ポリイミドと導電性繊維状材料とを含むポリイミド多孔質膜であって、
    前記導電性繊維状材料の量は、前記多孔質ポリイミドに対し、3.1~7.7質量%であるポリイミド多孔質膜。
  2. 誘電率が2以上である請求項1に記載のポリイミド多孔質膜。
  3. 前記導電性繊維状材料はカーボンナノチューブである請求項1に記載のポリイミド多孔質膜。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミド多孔質膜の製造方法であって、
    ポリアミック酸と微粒子と導電性繊維状材料とを含む未焼成複合膜を形成する未焼成複合膜形成工程と、
    前記未焼成複合膜を焼成して、ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜を得る焼成工程と、
    前記ポリイミド樹脂-微粒子-導電性繊維状材料複合膜から微粒子を取り除いて、前記ポリイミド多孔質膜を得る微粒子除去工程と、
    を含み、
    前記導電性繊維状材料の量は、前記ポリアミック酸に対し、3.1~7.7質量%であるポリイミド多孔質膜の製造方法。
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