以下、添付図面を参照して本実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る加工装置の構成例について説明する。図1は、加工装置2を示す斜視図である。加工装置2は、被加工物11に対して切削加工を施す切削装置である。なお、図1において、X軸方向(加工送り方向、左右方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、前後方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
加工装置2は、加工装置2を構成する各構成要素を支持及び収容する基台4を備える。基台4の前端側の角部には、直方体状の開口4aが形成されている。開口4aの内部には、昇降機構(不図示)によってZ軸方向に沿って移動(昇降)するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6上には、加工装置2によって加工される複数の被加工物11を収容可能なカセット8が搭載される。なお、図1ではカセット8の輪郭のみを二点鎖線で示している。
図2は、被加工物11を示す斜視図である。例えば被加工物11は、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面11a及び裏面11bを備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。
ストリート13によって区画された領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。被加工物11を加工装置2(図1参照)で加工してストリート13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。
なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)、樹脂、セラミックス、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
加工装置2によって被加工物11を加工する際には、被加工物11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17は、例えばSUS(ステンレス鋼)等の金属でなる。また、フレーム17の中心部には、被加工物11よりも直径が大きい円柱状の開口17aが、フレーム17を厚さ方向に貫通するように設けられている。被加工物11は、開口17aの内側に配置される。
被加工物11及びフレーム17には、テープ19が貼付される。テープ19は、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含む。例えば基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。また、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型樹脂であってもよい。
テープ19の中心部が被加工物11の裏面11b側に貼付され、テープ19の外周部がフレーム17に貼付されると、被加工物11がテープ19を介してフレーム17によって支持される。そして、被加工物11はフレーム17によって支持された状態でカセット8(図1参照)に収容される。
図1に示すように、開口4aの後方には、被加工物11を搬送する搬送ユニット(搬送機構)10が設けられている。搬送ユニット10は、Y軸方向に沿って移動可能に構成されており、被加工物11をカセット8から搬出するとともに被加工物11をカセット8に搬入する。また、搬送ユニット10の開口4a側(カセット8側)の端部には、フレーム17を把持する把持部10aが設けられている。
開口4aと搬送ユニット10との間には、カセット8から搬出された被加工物11、及び、カセット8に搬入される被加工物11が仮置きされる仮置き領域12が設けられている。仮置き領域12には、Y軸方向に沿って互いに概ね平行に配置された一対のガイドレール14が設けられている。一対のガイドレール14は、X軸方向に沿って互いに接近及び離隔するように移動し、フレーム17を挟み込んで被加工物11の位置合わせを行う。
仮置き領域12の近傍には、被加工物11を搬送する搬送ユニット(搬送機構)16が設けられている。例えば搬送ユニット16は、フレーム17の上面側を吸引保持する複数の吸引パッドを備える。
開口4aの側方には、長手方向がX軸方向に沿うように形成された直方体状の開口4bが設けられている。開口4bの内部には、平板状の移動テーブル18aを備える移動ユニット(移動機構)18が設けられている。移動ユニット18は、例えばボールねじ式の移動機構であり、移動テーブル18aをX軸方向に沿って移動させる。また、移動テーブル18aの両側には、X軸方向に沿って伸縮する蛇腹状の防塵防滴カバー20が、移動ユニット18の構成要素を覆うように設けられている。
移動テーブル18a上には、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)22が設けられている。チャックテーブル22の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面22aを構成している。保持面22aは、チャックテーブル22の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル22の周囲には、フレーム17を把持して固定する複数のクランプ24が設けられている。
移動ユニット18は、チャックテーブル22を移動テーブル18aとともにX軸方向に沿って移動させる。そして、チャックテーブル22は移動ユニット18によって、被加工物11の搬送が行われる搬送領域Aと、被加工物11の加工が行われる加工領域Bとに位置付けられる。また、チャックテーブル22にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。この回転駆動源は、チャックテーブル22をZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。
加工領域Bには、被加工物11を加工する加工ユニット(切削ユニット)26が設けられている。加工ユニット26には、環状の切削ブレード28が装着される。加工ユニット26は、切削ブレード28を回転させて被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11を切削する。
図3は、加工ユニット26を示す斜視図である。加工ユニット26は、中空の円柱状のハウジング30を備える。ハウジング30には、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル32が収容されている。スピンドル32の先端部(一端側)は、ハウジング30から露出している。また、スピンドル32の基端部(他端側)には、スピンドル32を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
スピンドル32の先端部には、切削ブレード28を支持するマウント34が固定されている。マウント34は、円盤状のフランジ部36と、フランジ部36の表面36aの中心部から突出する円柱状の支持軸(ボス部)38とを備える。フランジ部36の外周部の表面36a側には、表面36aから突出する環状の凸部36bがフランジ部36の外周縁に沿って設けられている。凸部36bの先端面36cは、表面36aと概ね平行に形成されている。また、支持軸38の外周面には、ねじ溝38aが形成されている。
マウント34には、被加工物11を切削する環状の切削ブレード28が装着される。切削ブレード28は、アルミニウム合金等の金属でなる環状の基台28aと、基台28aの外縁部に沿って形成された環状の切り刃28bとを備える。また、切削ブレード28の中心部には、切削ブレード28を厚さ方向に貫通する円柱状の開口28cが設けられている。
切り刃28bは、基台28aの外周縁から基台28aの半径方向外側に向かって突出するように形成される。例えば切り刃28bは、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するニッケルめっき層等の結合材とを含む。なお、砥粒の材質、砥粒の粒径、結合材の材質等に制限はなく、被加工物11の材質等に応じて適宜選択される。
支持軸38のねじ溝38aには、切削ブレード28を固定するための環状の固定ナット40が締結される。固定ナット40の中心部には、固定ナット40を厚さ方向に貫通する円柱状の開口40aが設けられている。また、開口40aの内部で露出する固定ナット40の内周面には、支持軸38のねじ溝38aに対応するねじ溝が形成されている。
切削ブレード28は、開口28cに支持軸38が挿入されるように、マウント34に装着される。この状態で、固定ナット40を支持軸38のねじ溝38aに螺合して締め付けると、切削ブレード28がフランジ部36の先端面36cと固定ナット40とによって挟持される。このようにして、切削ブレード28がスピンドル32の先端部に装着される。そして、切削ブレード28は、回転駆動源からスピンドル32及びマウント34を介して伝達される動力により、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
なお、加工ユニット26には、加工ユニット26をY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる移動ユニット(移動機構、不図示)が接続されている。例えば移動ユニットは、Y軸方向に沿って配置されたY軸ボールねじとZ軸方向に沿って配置されたZ軸ボールねじとを備えるボールねじ式の移動機構である。この移動ユニットによって、加工ユニット26に装着された切削ブレード28のY軸方向及びZ軸方向における位置が調節される。
図1に示すように、チャックテーブル22の移動経路(搬送領域Aと加工領域Bとの間)と重なる位置には、カメラ(撮像ユニット)42が設けられている。カメラ42は、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備え、チャックテーブル22によって保持された被加工物11等を撮像する。例えばカメラ42として、可視光を受光して電気信号に変換する撮像素子を備える可視光カメラや、赤外線を受光して電気信号に変換する撮像素子を備える赤外線カメラが用いられる。
チャックテーブル22の後方には、被加工物11を洗浄する洗浄ユニット(洗浄機構)44が設けられている。例えば洗浄ユニット44は、被加工物11を保持して回転するスピンナテーブルと、スピンナテーブルによって保持された被加工物11に向かって純水等の洗浄流体を供給するノズルとを備える。
洗浄ユニット44の上方には、チャックテーブル22と洗浄ユニット44との間で被加工物11を搬送する搬送ユニット(搬送機構)46が設けられている。例えば搬送ユニット46は、フレーム17の上面側を吸引保持する複数の吸引パッドを備える。
加工領域Bの後方には支持台48が設けられており、支持台48上には表示ユニット(表示部、表示装置)50が搭載されている。また、基台4の前端部には、加工装置2に各種の情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)52が設けられている。
表示ユニット50としては、各種のディスプレイが用いられる。また、入力ユニット52としては、複数の操作キーを備える操作パネル、マウス、キーボード等が用いられる。なお、加工装置2は、ユーザーインターフェースとして機能するタッチパネル式のディスプレイを備えていてもよい。この場合には、タッチパネル式のディスプレイが表示ユニット50及び入力ユニット52として機能する。そして、オペレーターはタッチパネル式のディスプレイのタッチ操作によって、加工装置2に各種の情報(加工条件、ストリート検出条件等)を入力できる。
加工装置2を構成する各構成要素(カセット支持台6、搬送ユニット10、ガイドレール14、搬送ユニット16、移動ユニット18、チャックテーブル22、クランプ24、加工ユニット26、カメラ42、洗浄ユニット44、搬送ユニット46、表示ユニット50、入力ユニット52等)はそれぞれ、制御ユニット(制御部、制御装置)54に接続されている。制御ユニット54は、加工装置2の各構成要素の動作を制御する制御信号を生成して出力することにより、加工装置2の稼働を制御する。
例えば制御ユニット54は、コンピュータによって構成される。具体的には、制御ユニット54は、加工装置2の稼働に必要な演算を行う演算部と、加工装置2の稼働に必要な各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。演算部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、主記憶装置、補助記憶装置等として機能するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
上記の加工装置2によって、被加工物11が加工される。具体的には、まず、搬送ユニット10がカセット8に向かって移動し、カセット8に収容されているフレーム17の端部を把持部10aで把持する。その後、搬送ユニット10はY軸方向に沿ってカセット8から離れるように移動する。これにより、被加工物11がカセット8から引き出され、一対のガイドレール14上に配置される。
一対のガイドレール14は、フレーム17を下側から支持した状態で互いに接近し、フレーム17を挟み込む。これにより、被加工物11の位置合わせが行われる。その後、被加工物11は搬送ユニット16によって吸引保持され、搬送領域Aに位置付けられたチャックテーブル22に搬送される。
被加工物11は、チャックテーブル22の保持面22a上にテープ19を介して配置される。また、フレーム17が複数のクランプ24によって固定される。この状態で、保持面22aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がテープ19を介してチャックテーブル22によって吸引保持される。そして、被加工物11を保持したチャックテーブル22が、移動ユニット18によって加工領域Bに位置付けられる。
次に、加工ユニット26に装着された切削ブレード28によって、被加工物11が切削される。具体的には、切削ブレード28の下端を被加工物11の上面よりも下方に位置付けた状態で、切削ブレード28を回転させつつチャックテーブル22をX軸方向に沿って移動させる(加工送り)。これにより、チャックテーブル22と加工ユニット26とがX軸方向に沿って相対的に移動し、回転する切削ブレード28が被加工物11に切り込む。その結果、被加工物11が線状に切削される。
被加工物11の加工が完了すると、被加工物11は搬送ユニット46によってチャックテーブル22から洗浄ユニット44に搬送され、洗浄ユニット44によって洗浄される。そして、洗浄後の被加工物11は搬送ユニット16によって一対のガイドレール14上に搬送された後、搬送ユニット10の把持部10aに把持されてカセット8に収容される。
加工装置2を用いて被加工物11をストリート13(図2参照)に沿って分割する場合には、被加工物11に切削ブレード28をストリート13に沿って切り込ませる必要がある。そこで、切削ブレード28で被加工物11を切削する前には、カメラ42で被加工物11を撮像し、撮像によって取得された画像に基づいてストリート13を検出する作業が行われる。例えばストリート13は、被加工物11に含まれる特徴的なパターンを目印(キーパターン)として用いたパターンマッチングによって検出される。
図4(A)は、被加工物11の一部を示す平面図である。加工装置2において実施されるパターンマッチングでは、被加工物11の表面11a側に存在する特徴的なパターンがキーパターンに設定される。なお、キーパターンに設定されるパターンに制限はない。例えば、デバイス15に含まれる所定の構造物(電極、配線、端子等)、デバイス15の輪郭等がキーパターンとして用いられる。また、ストリート13上にデバイス15の検査用のTEG(Test Element Group)が設けられている場合には、TEGに含まれる所定の構造物(電極、配線、端子等)をキーパターンとして用いることもできる。
図4(B)は、キーパターン21を示す平面図である。例えば、デバイス15に含まれる十字型のパターンがキーパターン21として設定される。なお、キーパターン21の形状は、周囲に存在する他のパターンの形状と一致しないことが好ましい。例えば、デバイス15にそれぞれ1つずつ含まれる所定のパターンがキーパターン21として設定される。これにより、他のパターンがキーパターン21として認識される誤認識が発生しにくくなる。
次に、キーパターン21を用いたストリート13の検出の詳細について説明する。ストリート13の検出は、加工装置2に搭載されたカメラ42及び制御ユニット54(図1参照)を用いて行われる。図5は、制御ユニット54を示すブロック図である。図5には、制御ユニット54の機能的な構成を示すブロックに加えて、カメラ42及び入力ユニット52を示すブロックを図示している。
制御ユニット54は、処理部60及び記憶部80を含む。処理部60は、外部から入力された情報(信号、データ等)を処理するとともに、各種の情報(信号、データ等)を生成して外部に出力する。また、記憶部80は、処理部60における処理に用いられる情報(データ、プログラム等)を記憶する。
処理部60は、ストリート検出条件が入力されるストリート検出条件入力部62を含む。ストリート検出条件は、被加工物11に設定されたストリート13(図2参照)の検出に必要な情報であり、加工装置2(図1参照)による被加工物11の加工の開始前にあらかじめ制御ユニット54に登録される。
具体的には、被加工物11に含まれるキーパターン21(図4(A)及び図4(B)参照)に対応する画像が、参照用画像としてストリート検出条件入力部62に入力される。参照用画像は、パターンマッチングで用いられる比較用の画像であり、キーパターン21の像を含む。例えば参照用画像は、被加工物11と同一の構造を有する撮像用ウェーハをカメラ42で撮像することによって取得される。なお、参照用画像の取得方法の詳細については後述する。
また、キーパターン21とストリート13との位置関係を示す位置情報が、ストリート検出条件入力部62に入力される。例えば、キーパターン21の座標と、キーパターン21からストリート13までの距離d(図4(B)参照)とが、位置情報としてストリート検出条件入力部62に入力される。なお、位置情報の取得方法の詳細については後述する。
記憶部80は、ストリート検出条件を記憶するストリート検出条件記憶部82を含む。そして、参照用画像と、キーパターン21とストリート13との位置関係を示す位置情報と、を含むストリート検出条件が、ストリート検出条件入力部62からストリート検出条件記憶部82に入力され、ストリート検出条件記憶部82に記憶される。これにより、ストリート検出条件が制御ユニット54に登録される。なお、キーパターン21の形状、位置、ストリート13の幅、間隔等が異なる複数の種類の被加工物11が加工装置2によって加工される場合には、被加工物11の種類ごとにストリート検出条件が選定され、ストリート検出条件記憶部82に記憶される。
また、処理部60は、カメラ42によって取得された画像(撮像画像)が入力される画像入力部64を含む。ストリート検出条件が制御ユニット54に登録された後、加工装置2で被加工物11を加工する際に、チャックテーブル22(図1参照)によって保持された被加工物11がカメラ42によって撮像される。そして、被加工物11の撮像画像がカメラ42から画像入力部64に入力される。
また、処理部60は、撮像画像と参照用画像とを比較する画像比較部66を含む。画像比較部66は、画像入力部64に入力された撮像画像と、ストリート検出条件記憶部82に記憶されている参照用画像とを比較して、両者の類似度を算出、数値化する。なお、類似度の算出方法に制限はない。例えば画像比較部66は、撮像画像と参照用画像とを用いて、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、NCC(Normalized Cross Correlation)、又はZNCC(Zero-means Normalized Cross Correlation)を算出する。
そして、画像比較部66は、撮像画像と参照用画像との類似度を閾値と比較する。具体的には、記憶部80はあらかじめ設定された閾値を記憶する閾値記憶部84を含む。そして、画像比較部66は、パターンマッチングによって算出された撮像画像と参照用画像との類似度と、閾値記憶部84に記憶された閾値とを比較することにより、類似度が閾値以上であるか否かを判定する。
撮像画像と参照用画像との類似度が閾値以上である場合には、ストリート検出条件記憶部82に記憶されているストリート検出条件に基づいてストリート13の位置が特定される。これにより、加工装置2によって加工される被加工物11に設定されているストリート13が検出される。
一方、撮像画像と参照用画像との類似度が閾値未満である場合には、類似度と比較される閾値が変更される。具体的には、処理部60は閾値変更部68を含み、画像比較部66による判定の結果が閾値変更部68に入力される。そして、撮像画像と参照用画像との類似度が閾値未満である場合には、閾値変更部68は閾値記憶部84にアクセスし、閾値記憶部84に記憶されている閾値を所定の値だけ下げる。
閾値が変更されると、画像比較部66は撮像画像と参照用画像との類似度と変更後の閾値とを比較する。そして、類似度が変更された閾値以上である場合には、ストリート検出条件記憶部82に記憶されている参照用画像が撮像画像によって上書きされる。具体的には、処理部60は上書き部70を含み、画像比較部66による判定の結果が上書き部70に入力される。そして、撮像画像と参照用画像との類似度が変更された閾値以上である場合には、上書き部70はストリート検出条件記憶部82にアクセスし、ストリート検出条件記憶部82に記憶されている参照用画像を撮像画像に書き換える。
次に、加工装置2にストリート検出条件を登録する具体的な方法について説明する。図6は、ストリート検出条件の登録方法を示すフローチャートである。以下、図5、図6等を参照しつつ、制御ユニット54等の動作の具体例を説明する。
まず、加工装置2にストリート検出条件の初期条件を登録する(ストリート検出条件登録ステップ、ステップS1)。ストリート検出条件登録ステップでは、被加工物11に含まれるキーパターン21(図4(A)及び図4(B)参照)に対応する参照用画像と、キーパターン21とストリート13との位置関係を示す位置情報と、を含むストリート検出条件が、制御ユニット54のストリート検出条件記憶部82に記憶される。
具体的には、まず、被加工物11と同一の構造を有する撮像用ウェーハが、チャックテーブル22(図1参照)によって保持される。撮像用ウェーハは、被加工物11と同様に、ストリート13、デバイス15、キーパターン21(図4(A)及び図4(B)参照)を含む。なお、撮像用ウェーハとして被加工物11を用いることもできる。
次に、撮像用ウェーハを保持したチャックテーブル22がカメラ42(図1参照)の直下に位置付けられ、撮像用ウェーハがカメラ42によって撮像される。カメラ42は、所定の撮像領域(撮像視野)に存在する被写体を撮像して、被写体の画像を生成する。なお、カメラ42の撮像領域内には、キーパターンに設定される所定のパターンが位置付けられるキーパターン設定領域42a(図4(B)参照)が含まれる。
ストリート検出条件登録ステップでは、撮像用ウェーハのキーパターン21を含む所定の領域がカメラ42の撮像領域に納まるように、チャックテーブル22とカメラ42との位置関係が調節される。また、キーパターン21がキーパターン設定領域42aに納まるように、キーパターン設定領域42aの位置、形状及びサイズが設定される。例えば、キーパターン設定領域42aの中心位置とキーパターン21の中心位置とが一致するように、キーパターン設定領域42aの位置が調節される。この状態で撮像用ウェーハをカメラ42で撮像すると、キーパターン21を含む画像が取得される。
図7(A)は、参照用画像90を示す画像図である。参照用画像90には、キーパターン21がキーパターン設定領域42aに納まる位置に表される。そして、キーパターン21を含む参照用画像90が、パターンマッチングに用いられる比較用の画像としてストリート検出条件入力部62に入力される。
また、制御ユニット54は、キーパターン21とストリート13との位置関係を示す位置情報を取得する。例えば、制御ユニット54は、撮像用ウェーハに含まれるキーパターン21の位置に対応する座標と、撮像用ウェーハに含まれるキーパターン21とストリート13との距離とを位置情報として取得する。
具体的には、まず、キーパターン設定領域42a(図4(B)参照)の中心位置の座標が取得される。なお、キーパターン設定領域42aの中心とキーパターン21の中心とは互いに一致するように位置付けられている。そのため、キーパターン設定領域42aの中心位置の座標はキーパターン21の中心位置の座標に相当する。ただし、キーパターン設定領域42aの中心とキーパターン21の中心とは必ずしも完全に一致していなくてもよい。
次に、撮像用ウェーハのうちストリート13及びキーパターン21を含む領域(図4(B)参照)の画像が、表示ユニット50(図1参照)に表示される。そして、加工装置2のオペレーターは、表示ユニット50に表示された画像を参照しつつ入力ユニット52を操作し、ストリート13の幅方向における中心位置を加工装置2に入力する。
その後、キーパターン設定領域42aの中心位置のY座標と、オペレーターによって指定されたストリート13の中心位置のY座標との差分が、制御ユニット54によって算出される。その結果、キーパターン設定領域42aの中心位置からストリート13の中心位置までの距離d(図4(B)参照)が特定される。そして、キーパターン設定領域42aの座標と、キーパターン設定領域42aからストリート13までの距離dとが、位置情報としてストリート検出条件入力部62に入力される。
ストリート検出条件入力部62は、カメラ42から入力された参照用画像90(図7(A)参照)と、キーパターン21とストリート13との位置関係を示す位置情報と、を含むストリート検出条件を、ストリート検出条件記憶部82に記憶する。これにより、ストリート検出条件が制御ユニット54に登録される。
なお、加工効率の向上のため、複数の加工装置によって同種の被加工物11に対して同種の加工が同時進行で実施されることがある。この場合には、1台の加工装置によって取得されたストリート検出条件を他の加工装置に移植してもよい。具体的には、まず、加工装置2以外の加工装置(移植元加工装置)において、上記の手順に従ってストリート検出条件が登録される。その後、移植元加工装置から移植先加工装置である加工装置2にストリート検出条件が送信され、加工装置2のストリート検出条件記憶部82に記憶される。これにより、加工装置2における検査用ウェーハの撮像、キーパターン21とストリート13との位置関係の算出等が省略され、ストリート検出条件登録ステップが簡略化される。
その後、ストリート検出条件が登録された加工装置2によって被加工物11(図2参照)が加工される。このとき、被加工物11の加工に先立ち、パターンマッチングによって被加工物11のストリート13が検出される。被加工物11のストリート13を検出する際は、まず、被加工物11をカメラ42で撮像することによって取得される撮像画像と、参照用画像と、を比較して、撮像画像と参照用画像との類似度を算出する(画像比較ステップ、ステップS2)。
具体的には、加工装置2による加工の対象である被加工物11がチャックテーブル22(図1参照)によって保持され、チャックテーブル22がカメラ42(図1参照)の直下に位置付けられる。そして、被加工物11がカメラ42によって撮像され、被加工物11の撮像画像が取得される。図7(B)は、撮像画像92を示す画像図である。
撮像画像92は、カメラ42から画像入力部64に入力される。そして、画像比較部66は、画像入力部64から入力される撮像画像92とストリート検出条件記憶部82に記憶されている参照用画像90とを比較して、両者の類似度を算出する。さらに、画像比較部66は、算出された類似度と閾値記憶部84に記憶されている閾値とを比較する。
ここで、参照用画像90に含まれるキーパターン21(図7(A)参照)の位置と撮像画像92に含まれるキーパターン21(図7(B)参照)の位置とが概ね一致している場合には、撮像画像92と参照用画像90との類似度が高くなり、類似度が閾値以上となる。一方、撮像画像92にキーパターン21が含まれていない場合や、撮像画像92に含まれるキーパターン21の位置がずれている場合には、撮像画像92と参照用画像90との類似度が低くなり、類似度が閾値未満となる。そのため、撮像画像92と参照用画像90との類似度が閾値以上である場合には、被加工物11に含まれるキーパターン21がカメラ42のキーパターン設定領域42aに位置付けられていると判断できる。
撮像画像92と参照用画像90との類似度が閾値以上である場合には(ステップS3でYES)、ストリート検出条件記憶部82に記憶されているストリート検出条件に基づいて、被加工物11に含まれるキーパターン21の位置と、キーパターン21からストリート13までの距離とが特定される。その結果、被加工物11に設定されているストリート13の位置が特定され、ストリート13が検出される(ステップS4)。そして、検出されたストリート13に沿って被加工物11が切削ブレード28(図1及び図3参照)によって切削される。
一方、撮像画像92と参照用画像90との類似度が閾値未満である場合には(ステップS3でNO)、チャックテーブル22とカメラ42との位置関係を変更した後に被加工物11を再度撮像し、取得された撮像画像92と参照用画像90とを比較する(ステップS5でNO、ステップS2)。この作業を繰り返すことにより、参照用画像90(図7(A)参照)に対応する領域が被加工物11に存在するか否かが確認される。
ここで、撮像用ウェーハをカメラ42で撮像して参照用画像90(図7(A)参照)を取得する際の撮像条件と、加工対象である被加工物11をカメラ42で撮像して撮像画像92(図7(B)参照)を取得する際の撮像条件とが異なる場合がある。例えば、参照用画像90が取得されてから撮像画像92が取得されるまでの間に、カメラ42や光源の経年劣化が生じ、参照用画像90と撮像画像92との間で濃淡や明暗の差が生じることがある。また、加工装置2に他の加工装置から移植された参照用画像90が登録される場合、加工装置間におけるカメラ及び光源の特性ばらつき等が原因で、被加工物11を加工する際に参照用画像90と同等の画質の撮像画像92が得られないことがある。
例えば、図7(A)及び図7(B)に示すように参照用画像90に含まれるキーパターン21と撮像画像92に含まれるキーパターン21との間に濃淡の差があると、参照用画像90と撮像画像92とに同一のキーパターン21が同じ位置に配置されていても、参照用画像90と撮像画像92との類似度が低下する。その結果、被加工物11に含まれるキーパターン21が正しく検出されず、被加工物11に設定されたストリート13の検出が困難になることがある。
そこで、本実施形態においては、カメラ42によって取得された全ての撮像画像92と参照用画像90との類似度が閾値未満である場合に(ステップS5でYES)、閾値を所定の値だけ下げる(閾値変更ステップ、ステップS6)。例えば、閾値の初期値が類似度90%に相当する値である場合には、閾値変更部68は閾値を類似度80%に相当する値に変更する。そして、画像比較部66は、撮像画像92と参照用画像90との類似度と、変更後の閾値とを比較する。
撮像画像92と参照用画像90との類似度が変更された閾値以上である場合には(ステップS7でYES)、制御ユニット54は表示ユニット50(図1参照)に制御信号を出力し、参照用画像90及び撮像画像92を表示させる。これにより、参照用画像90と撮像画像92とが表示ユニット50に並んで同時に表示される(表示ステップ、ステップS8)。
図7(C)は、参照用画像90及び撮像画像92を表示する表示ユニット50を示す正面図である。例えば図7(C)に示すように、表示ユニット50は、参照用画像90に含まれるキーパターン21の拡大画像と、撮像画像92に含まれるキーパターン21の拡大画像とを並べて同時に表示する。
加工装置2のオペレーターは、表示ユニット50に表示された参照用画像90及び撮像画像92を参照し、参照用画像90に含まれるキーパターン21が撮像画像92にも含まれていることを確認する。そして、オペレーターは入力ユニット52を操作して、撮像画像92を新たな参照用画像として用いることを加工装置2に指示する。この指示が加工装置2に入力されると、上書き部70は画像入力部64から入力された撮像画像92をストリート検出条件記憶部82に出力し、ストリート検出条件記憶部82に記憶されている参照用画像90を撮像画像92で上書きする(上書きステップ、ステップS9)。
参照用画像90が撮像画像92で上書きされると、それ以降は、ストリート13の検出及び被加工物11の加工を行う加工装置2自身によって直近に取得された撮像画像92が、パターンマッチングの参照用画像として用いられる。これにより、カメラ42及び光源の経年劣化、複数の加工装置間におけるカメラ42及び光源の特性ばらつき等に起因するパターンマッチングの精度の低下が抑制される。
また、上書きステップの前に、上書き前の参照用画像に対応する参照用画像90と、上書き後の参照用画像に対応する撮像画像92とを表示ユニット50に並べて表示し(表示ステップ)、オペレーターに参照用画像の上書きの許可を求めることにより、参照用画像の上書きがオペレーターによって認識されないまま実行されることを防止できる。
なお、画像比較ステップ(ステップS2)では、カメラ42の撮像領域を変更しつつ複数の撮像画像92を取得し、複数の撮像画像92をそれぞれ参照用画像90と比較することもできる。ただし、カメラ42によって被加工物11が広範囲に渡って撮像されると、参照用画像90との類似度が閾値以上である撮像画像92が2枚以上取得されることがある。この場合には、カメラ42による被加工物11の撮像範囲を絞った上で、改めて画像比較ステップ(ステップS2)を実施することが好ましい。
また、撮像画像92と参照用画像90との類似度が変更された閾値未満である場合には(ステップS7でNO)、更に閾値を下げた後、類似度と変更後の閾値とを比較してもよい。ただし、閾値が変更された結果、閾値が所定の下限値未満となった場合には、参照用画像の上書きを中止してもよい。この場合には、ストリート検出条件登録ステップが実施され、最新の参照用画像を含むストリート検出条件が制御ユニット54に登録される。
以上の通り、本実施形態に係る加工装置2では、撮像画像92と参照用画像90との類似度が閾値未満である場合に、閾値が所定の値だけ下げられる。そして、撮像画像92と参照用画像90との類似度が変更後の閾値以上である場合に、参照用画像90が撮像画像92で上書きされる。これにより、撮像条件の変化に起因するパターンマッチングの精度の低下が抑制され、被加工物11に設定されたストリート13をキーパターン21に基づいて適切に検出することが可能になる。
なお、上記の実施形態においては、被加工物11を加工する加工装置として加工装置2(切削装置)を説明したが、本発明に係る加工装置の種類に制限はない。例えば、本発明に係る加工装置は、レーザービームの照射によって被加工物11を加工するレーザー加工装置であってもよい。
レーザー加工装置は、被加工物11を保持するチャックテーブルと、被加工物11にレーザービームを照射する加工ユニット(レーザー照射ユニット)と、被加工物11を撮像するカメラと、制御ユニットとを備える。レーザー加工装置のチャックテーブル、カメラ、制御ユニットの構成はそれぞれ、チャックテーブル22(図1参照)、カメラ42(図1参照)、制御ユニット54(図1及び図5参照)と同様である。
レーザー照射ユニットは、レーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームをチャックテーブルによって保持された被加工物11へと導く光学系とを備える。レーザー照射ユニットから照射されたレーザービームは、光学系に含まれる集光レンズによって被加工物11の表面又は内部で集光され、被加工物11にレーザー加工を施す。これにより、例えば被加工物11のストリート13に沿ってレーザー加工溝が形成される。
その他、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更できる。