JP2022187942A - 運動検出器 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の磁界発生源を用いて高周期の交番磁界を効率よく磁性ワイヤに印加することにより小型化が図られた検出器を提供する。【解決手段】検出器400は、発電センサ420を用いて運動体410の運動を検出する。発電センサは磁性ワイヤ421とコイル422とを備え、運動体は、軟磁性体部411と複数の磁界発生源412とを備える。運動体の運動により磁界発生源が描く軌道の近傍に、発電センサが配置される。発電センサに対して磁界発生源が近接したときに、磁界発生源の運動方向は磁性ワイヤの軸方向に垂直であり、磁界発生源の着磁方向は磁性ワイヤの軸方向に平行であり、磁性ワイヤの軸方向中央部から軸方向第1端部までのうち少なくとも一部が磁界発生源の中央部と対向し、磁性ワイヤの前記少なくとも一部から軸方向第2端部までのうち少なくとも一部が軟磁性体部と対向する。【選択図】図8A

Description

本発明は、発電センサを用いて運動体の運動を検出する検出器に関する。
大バルクハウゼン効果(大バルクハウゼンジャンプ)を有する磁性ワイヤは、ウィーガンドワイヤ又はパルスワイヤの名で知られている。この磁性ワイヤは、芯部とその芯部を取り囲むように設けられた表皮部とを備えている。芯部及び表皮部の一方は弱い磁界でも磁化方向の反転が起きるソフト(軟磁性)層であり、芯部及び表皮部の他方は強い磁界を与えないと磁化方向が反転しないハード(硬磁性)層である。
ハード層とソフト層がワイヤの軸方向に沿って同じ向きに磁化されているときに、その磁化方向とは反対方向の外部磁界強度が増加してソフト層の磁化方向が反転する磁界強度に達すると、ソフト層の磁化方向が反転する。このとき、大バルクハウゼン効果が発現し、当該磁性ワイヤに巻かれたコイルにパルス信号が誘発される。ソフト層の磁化方向が反転するときの磁界強度を本明細書では「動作磁界」と呼ぶ。また、磁性ワイヤとコイルとをまとめて発電センサと呼ぶ。
上述の外部磁界強度がさらに増加し、ハード層の磁化方向が反転する磁界強度に達すると、ハード層の磁化方向が反転する。ハード層の磁化方向が反転するときの磁界強度を本明細書では「安定化磁界」と呼ぶ。
大バルクハウゼン効果が発現するためには、ハード層とソフト層の磁化方向が一致していることを前提として、ソフト層のみ磁化方向が反転することが必要である。ハード層とソフト層の磁化方向が不一致の状態で、ソフト層のみ磁化方向が反転したとしても、パルス信号は生じないか、あるいは生じたとしても非常に小さい。
この磁性ワイヤによる出力電圧は、磁界の変化スピードにかかわらず一定であり、入力磁界に対するヒステリシス特性を持つためチャタリングがないなどの特徴を有する。そのため、この磁性ワイヤは、磁石及びカウンタ回路と組み合わせて、位置検出器などにも使用される。また、外部電力の供給なく、磁性ワイヤの出力エネルギーにより周辺回路も含めて動作させる事ができる。
発電センサに交番磁界が与えられた場合、1周期に対して正パルス信号1つ及び負パルス信号1つの計2つのパルス信号が発生する。磁界の発生源としての磁石を運動体とし、運動体である磁石と発電センサとの位置関係により発電センサに与えられる磁界が変化するようにすることで、運動体の運動を検出することができる。
しかし、単一の発電センサを用いるのみでは、運動体の運動方向が変化した場合に運動方向の識別がつかない。特許文献1の図1に見られるように、複数の発電センサを用いれば運動方向を識別することができるが、検出器のサイズ及びコストの増加につながる。
特許文献2には、単一の発電センサと、発電センサではない別のセンサ要素とを用いることが記載されている。同文献にはさらに、単一の磁石(2極)を用いた場合と複数の磁石(多極)を用いて分解能を向上させることが記載されている。
また、単一磁石による検出(特許文献2の図2)の構造例として、特許文献3の図1が挙げられる。2極磁石と発電センサを対向させる構造は発電センサの全長まで径を小さくできるので小型化に向く。分解能を上げる(特許文献2の図3)ための構造例として、特許文献4の図1が挙げられる。この種の運動検出器の主な用途に1回転単位の回転数の検出がある。発電センサを用いた運動検出器は本来出力されるはずのパルス信号が場合によっては、出力されないという問題があり、1回転当たり2パルスしか出力されない単一の磁石(2極)の構造では通常は精度が不足し、回転数の検出が正しくできない。
特許文献5には、発電センサ内のコイルに電流を流し磁界を発生させて、出力状態をモニタすることで発電センサ内の磁性ワイヤの磁化方向を判別することが記載されている。同文献では、このような磁化方向の判別により、単一の磁石を用いる場合でも回転数を識別することができるとされている。
特許第5511748号公報 特許第4712390号公報 米国特許第9,528,856号公報 米国特許第8,283,914号公報 特許第5730809号公報
運動の検出に際し、複数の発電センサを用いることは、検出器自体のサイズ増加につながりやすい。他方、発電センサが単一であったとしても、発電センサ内の磁性ワイヤの磁化方向を判別することは、処理が複雑となる可能性がある。
そこで、本発明は、単一の発電センサと複数の磁界発生源とを用いて高周期の交番磁界を効率よく磁性ワイヤに印加することにより小型化が図られた検出器を提供することを目的とする。
本発明に係る検出器は、発電センサを用いて運動体の運動を検出する。前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルとを備える。前記運動体は、軟磁性体部と、前記軟磁性体部に取り付けられた複数の磁界発生源とを備え、前記複数の磁界発生源の各々は、N極及びS極の対を有し、着磁方向が前記軟磁性体部に対する取付方向と平行であり、隣り合う2つの前記磁界発生源において取付方向外側の磁極が異極である。前記運動体の運動により前記複数の磁界発生源が描く軌道の近傍に、前記発電センサが配置されている。前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときの前記磁界発生源の運動方向は、前記磁性ワイヤの軸方向に垂直であり、前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときの前記磁界発生源の着磁方向は、前記磁性ワイヤの軸方向に平行である。前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときに、前記磁性ワイヤの軸方向中央部から軸方向第1端部までのうち少なくとも一部が前記磁界発生源の中央部と対向し、前記磁性ワイヤの前記少なくとも一部から軸方向第2端部までのうち少なくとも一部が前記軟磁性体部と対向する。
本発明によれば、複数の磁界発生源を用いて高周期の交番磁界を効率よく磁性ワイヤに印加することにより小型化が図られた検出器を提供することができる。
第1実施形態に基づくリニアタイプの検出器の斜視図である。 第1実施形態に基づくリニアタイプの検出器の上面図である。 磁性ワイヤと運動体を示す説明図である。 磁気シミュレ―ション図である。 別の磁気シミュレ―ション図である。 (A)~(D)はいずれも、磁性ワイヤと運動体の位置関係を示す説明図である。 第2実施形態に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第2実施形態の基づくロータリータイプの検出器の側面図である。 第2実施形態の第1変形例に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第2実施形態の第2変形例に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第2実施形態の変形例に係る、多極着磁された磁石の斜視図である。 第3実施形態に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第3実施形態の第1変形例に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第3実施形態の変形例に係る、多極着磁された磁石の斜視図である。 第3実施形態の第2変形例に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第3実施形態の第2変形例に基づくロータリータイプの検出器の上面図である。 第4実施形態に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第4実施形態に基づくロータリータイプの検出器の上面図である。 第4実施形態に係る発電センサに印加される磁界と出力信号を示す説明図である。 第4実施形態に係る磁気センサに印加される磁界と出力信号を示す説明図である。 (A)第4実施形態に係る発電センサの検出結果と磁気センサの検出結果との組み合わせを示す説明図である。(B)第4実施形態に基づく発電センサと磁気センサの同期と出力信号の回転座標を示す説明図である。 第4実施形態に基づく出力信号のカウント数を示す説明図である。 第4実施形態の変形例に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第5実施形態に基づくロータリータイプの検出器の斜視図である。 第5実施形態に基づくロータリータイプの検出器の上面図である。 第5実施形態に基づく発電センサに印加される磁界と出力信号を示す説明図である。 第5実施形態に基づく磁気センサに印加される磁界と出力信号を示す説明図である。 第5実施形態に係る発電センサ、第1磁気センサ及び第2磁気センサの検出結果の組み合わせを示す説明図である。
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
[第1実施形態]
図1A及び図1Bに、第1実施形態に基づく検出器100を示す。検出器100は、直線運動する運動体110と1つの発電センサ120とを備えている。運動体110は、細長の直方体状の軟磁性体部111と複数の磁石(磁界発生源)112とを有する。軟磁性体部111の長手方向111aはx軸に平行であり、幅方向はy軸に平行であり、高さ方向はz軸に平行である。
複数の磁石112は、軟磁性体部111の幅方向第1端面111bにおいて、長手方向111aに沿って並べられ取り付けられている。取付方向は、軟磁性体部111の幅方向に平行である。取付方法の例として、埋込み、嵌合及び接着がある。磁石112は、軟磁性体部111の幅方向に着磁されており、N極及びS極の対を有する。磁石112は、軟磁性体部111の幅方向外側にある外側磁極112aを有する。複数の磁石112は、隣り合う外側磁極112aが異極となるように配置されている。
発電センサ120は、大バルクハウゼン現象を発現する磁性ワイヤ121と、磁性ワイヤ121に巻回されたコイル122とを有する。発電センサ120は、運動体110が軟磁性体部111の長手方向111aに沿って直線運動したときに複数の磁石112が描く軌道の近傍に、運動体110と干渉しないように配置されている。磁性ワイヤ121の軸方向121aは、軟磁性体111の幅方向(磁石112の着磁方向)と平行である。
図2Aに示すように、運動体110が直線運動すると、各磁石112の中央部112bは、磁性ワイヤ121の軸方向中央部121bと軸方向第1端部121cとの間の領域の下方を通過する。軟磁性体部111は、磁性ワイヤ121の軸方向第2端部121dと磁石112との間を遮る位置(軸方向第2端部121dと磁石112との間の磁路を埋める位置)に存在する。
軸方向第1端部121cは、軟磁性体部111から見て磁石112が取り付けられている側の端部である。軸方向第2端部121dは、軟磁性体部111から見て磁石112が取り付けられている側とは反対側の端部である。
このように、運動体110が直線運動すると、磁石112は、磁性ワイヤ121の軸方向第1端部121cの下方を通過するが、軸方向第2端部121dの下方を通過することはない。
運動体110が軟磁性体部111の長手方向111aに沿って往復運動することで、コイル122に出力信号が誘発される。つまり、検出器100はリニアタイプの検出器である。
磁性ワイヤ121と運動体110との位置関係をさらに詳しく説明する。
図2Bに、軟磁性体部111及び磁石112と磁性ワイヤ121とによる磁気シミュレーション結果を示す。軟磁性体部111の集磁効果及びシールド効果により、磁石112に対向する磁性ワイヤ121の軸方向第1端部121cに対し集中的に磁界が印加される。軸方向第1端部121cに対して磁界が局所的に印加されると、磁性ワイヤ121において軸方向第1端部121cから軸方向第2端部121dへ向かって反転磁界が伝搬し、磁性ワイヤ全体に単一磁区が形成される。
他方、図2Cには、軟磁性体部111に代えて設けられた非磁性体部191及び磁石112と磁性ワイヤ121とによる磁気シミュレーション結果を示す。図2Bとは異なり、軸方向第1端部121cに加え軸方向中央部121bにも磁界が印加される。そのため、磁性ワイヤ全体にわたる単一磁区が形成されにくくなる。
また、磁性ワイヤ121と磁石112と軟磁性体部111とにより、図2D(A)において矢印で示すような磁気回路が構成される。よって、磁性ワイヤの一端部へ磁界を印加する従来の手法よりも広い範囲で、また磁性ワイヤ全体に磁界を印加するのと同じように安定化磁界が磁性ワイヤに印加される。そのため、単一磁区が磁性ワイヤ全体に形成され、高出力のパルス信号が得られる。
なお、図2D(B)に示すように、軟磁性体部111の幅を磁石112とは反対方向(y軸負方向)へ広げ、軟磁性体部111の幅方向第2端面111cと軸方向第2端部121dとy軸位置が略同じになるようにしてもよい。この場合、磁気回路の磁気抵抗がより小さくなり、印加磁界が軸全体により伝搬しやすくなって、パルス信号の出力がさらに高まる。
図2D(C)に示すように、磁性ワイヤ121の軸方向第1端部121cと磁石112の外側磁極112aの端面とのy軸位置が凡そ一致するようにしてもよい。あるいは、図2D(D)に示すように、磁性ワイヤ121の軸方向中央部121bと磁石112の中央部112bとのy軸位置が凡そ一致するようにしてもよい。図2D(C)及び図2D(D)のいずれにおいても、図2D(A)及び図2D(B)と同様の磁気回路が形成される。
このように、磁石112が磁性ワイヤ121に近接したときに、磁性ワイヤ121の軸方向中央部121bから軸方向第1端部121cまでのうち少なくとも一部が磁石112の中央部112bと対向し、磁性ワイヤ121の上記少なくとも一部から軸方向第2端部121dまでのうち少なくとも一部が軟磁性体部111と対向する。
すなわち、軟磁性体111の幅方向に沿った磁石112のサイズは、磁性ワイヤ121の軸方向の長さの半分以下で済む。磁石112の材質を適宜定めることで、磁性ワイヤ121に安定化磁界を印加できる程度の大きさにまで磁石112を小さくし、y軸方向に沿った磁石112の設置許容範囲を広くすることができる。また、磁性ワイヤ121には、磁石112の側面(磁性ワイヤ121と対向する面)から磁界が印加される。そのため、通過時の磁石112と磁性ワイヤ121との距離を調整することで、磁性ワイヤ121に印加される磁界の強度を容易に調整できる。これにより、安定性のあるパルス信号がもたらされる。
複数のNS極対の磁界発生源である磁石112は、図2B及び図2Cにおいては、紙面奥側及び手前側に配置されている。隣接する磁石間で発生する磁気干渉が磁性ワイヤ121に与える影響も、軟磁性体部111による集磁効果と、磁性ワイヤ121の軸方向第1端部121cに磁界を印加することとにより軽減される。よって、隣接する磁界発生源同士を近接させ、磁石の極数密度を高くすることが可能である。換言すれば、検出器100の小型化が図られる。
磁性ワイヤ121の軸方向一端部に磁界を印加することで、磁性ワイヤの軸方向両端部の両端又は磁性ワイヤ全体に対して、強度の等しい磁界を印加する必要がないため、配置の自由度が高い。軟磁性体部の形状をリング状又は円盤状に変えて、中空型、シャフト型のラジアルギャップ型又はアキシャルギャップ型のロータリータイプ等の検出器とすることもできる。これらの各種形態を以下に説明する。
[第2実施形態]
図3A及び図3Bに、第2実施形態に基づく検出器200を示す。検出器200は、回転運動する運動体210と1つの発電センサ220とを備えている。
運動体210は、リング状の軟磁性体部211と、複数の磁石212とを備える。複数の磁石212は、軟磁性体部211の軸方向一端面において、周方向に並べられ固定されている。磁石212は、軟磁性体部211の軸方向(図3Bの紙面上下方向)に着磁されており、N極及びS極の対を有する。磁石212は、軟磁性体部211の軸方向上側にある外側磁極212aを有する。複数の磁石212は、隣り合う外側磁極212aが異極となるように配置されている。運動体210は、上下方向に延びる軟磁性体部211の軸213を回転軸として回転する。
発電センサ220は、運動体210の径方向外側に配置されており、大バルクハウゼン現象を発現する磁性ワイヤ221と、磁性ワイヤ221に巻回されたコイル222とを有する。磁性ワイヤ221は、回転軸213と平行に配置されている。
運動体210の回転運動により、複数の磁石212は発電センサ220の近傍を通過する。磁石212が磁性ワイヤ221に近接したときの、磁石212の運動方向は、磁性ワイヤ221の軸方向221aに対して垂直である。磁石212が磁性ワイヤ221に近接したときに、磁性ワイヤ221の軸方向中央部221bから軸方向上端部221cまでのうち少なくとも一部が磁石212の中央部212bと対向する。また、このときに、磁性ワイヤ221の上記少なくとも一部から軸方向下端部221dまでのうち少なくとも一部が軟磁性体部211と対向する。軟磁性体部211は、磁性ワイヤ221の軸方向下端部221dと通過する磁石212との間を遮る位置(磁路を埋める位置)に存在することになる。
磁石212が軟磁性体部211の周方向に沿って等間隔に20個設けられている場合、コイル222には、運動体210の正転一回転につき正のパルス信号が10回、負のパルス信号が10回誘発される。また、運動体210の反転一回転につき正のパルス信号が10回、負のパルス信号が10回誘発される。
このように、検出器200は、運動体210が中空型であり、ラジアルギャップタイプの検出器である。検出器200は、運動体210の軸方向厚みが磁性ワイヤ221の長さ以下に収まるため、薄型である。また、発電センサ220が運動体210の径方向外側に位置するため、中空型である検出器200の中空部を大きく取ることができる。
[第2実施形態の第1変形例]
図4Aに示す検出器200-1においては、発電センサ220は、運動体210の径方向内側に、回転軸213から間隔を置いて配置される。この場合、検出器の外径を小さくすることができる。
[第2実施形態の第2変形例]
図4Bに示すように、検出器200-2は、図3Aに示したリング状の軟磁性体部211に代えて、略円盤状の軟磁性体部211aを備えている。複数の磁石212は、軟磁性体部211aの外周縁部に配置されている。軟磁性体部211aの軸方向下端面にはシャフト213aが取り付けられている。このように、運動体210をシャフト型とすることができる。シャフト213aの材料は非磁性体であっても磁性体であってもよい。
複数の磁界発生源を多極着磁された磁石とすることも可能である。図4Cに示すように、所定の着磁ピッチλに相当する面積を持つ着磁ヨークにより、リング状の硬磁性体部215の上面及び下面に同時着磁を行うと、回転軸213bの方向に着磁され、硬磁性体部215の上面と下面に磁極が現れる。このように多極着磁されてなる磁石を、リング状の軟磁性体部211又は円盤状の軟磁性体部211aに固定すればよい。硬磁性体部の形状を長尺形状にすることで、第1実施形態にも適用できる。
[第3実施形態]
図5Aに、第3実施形態に係る検出器300を示す。第2実施形態(図3A)とは異なり、複数の磁石312は、リング状の軟磁性体部311の外周面に周方向等間隔に固定されている。発電センサ320は回転軸313と直交するように配置され、磁性ワイヤ321の軸方向321aは法線方向に平行である。磁性ワイヤ321の長さ方向中心位置321bは、回転軸313に対してオフセットしている。オフセット量を符号OF1により示す。
あるいは、図5Bに示すように、複数の磁石312を軟磁性体部311の内周面に固定してもよい。この場合の磁性ワイヤ321の長さ方向中心位置321bと回転軸313とのオフセット量を符号OF2により示す。
このように、発電センサ320の位置が異なる2種類の、中空型でアキシャルギャップタイプの検出器が得られる。いずれにしても、検出回路を構成する電子部品が搭載される基板(不図示)の上に発電センサを横置きすることができ、実装の安定性が高い。
[第3実施形態の変形例]
第2実施形態の変形例と同様に、複数の磁界発生源を多極着磁された磁石とすることも可能である。図6に示すように、所定の着磁ピッチλに相当する面積を持つ着磁ヨークにより、リング状の硬磁性体部315の外周面及び内周面に同時着磁を行うと、回転軸方向313に沿って着磁され、硬磁性体部315の外周面及び内周面に磁極が現れる。このように多極着磁されてなる磁石を、軟磁性体部311に固定すればよい。
図7A及び図7Bに、別の変形例に係る検出器300-2を示す。運動体310-2の外径は、磁性ワイヤ321の全長程度にまで小さい。運動体310-2において、円盤状の軟磁性体部311-2の外周面に8個の磁石312-2が配置されている。磁性ワイヤ321は、運動体310-2の回転軸と交差している。発電センサ320の磁性ワイヤ321の一端部321aが軟磁性体部311-2の外周部と軸方向に対向し、他端部が軟磁性体部311-2の内周部と軸方向に対向している。
この構造によれば、径方向に対向する2つの磁石312-2において、径方向内側にある2つの磁極は同極であるが、磁性ワイヤ321に磁界を印加するのは一方の磁極のみである。そのため、磁性ワイヤ321は、大バルクハウゼン現象の発現が可能である。本形態によれば、周期が限定されない複数周期の交番磁界を磁性ワイヤに印加でき、磁性ワイヤに巻回されたコイルに、安定性のある高出力信号が誘発される。さらに、径方向寸法の小型化も図られる。
[多回転機能の説明]
次に、多回転検出機能を持った検出器について説明する。発電センサは、電源遮断時の1回転単位の粗検出に利用される。電源投入時の正確な位置検出には、1回転内アブソリュート角度検出器が使われる。発電センサは、交番磁界1周期に対して正負各1パルスの計2パルスを出力するが、このパルスだけでは正転・逆転の判別が不可能である。そこで、以下に示す方法が従来用いられている。
1)発電センサの数を増やして位相差信号を得る方法
2)別の検出手段を追加する方法
前者は、発電センサが複数必要である。後者は、特許文献2に記載されているように、発電センサ1個と追加のセンサ要素とにより達成できる。
単一の発電センサを使用する場合、十分なレベルのパルス信号を得るために、安定化磁界と動作磁界とが決められた順序で磁性ワイヤに印加される必要がある。回転体の正転時に磁性ワイヤに対し、動作磁界が印加されてパルス信号が出力された直後に回転体が逆転すると、上記順序が守られないために、回転検出に必要なパルス信号が1回分抜けてしまう。その場合、誤差が±180°を超え、正しい回転量検出はできない。
交番磁界の多周期化と検出器の小型化との両立がこれまでは難しかった。しかし、図7A及び図7Bに示した形態の変形として、磁界発生源の数を4つとし、1回転あたり2周期の交番磁界が磁性ワイヤに印加されるようにすることができる。つまり、多回転検出機能を備え、小型で、コストが低く、パルス信号の出力が安定した検出器が得られる。以下に、その形態を詳しく説明する。
[第4実施形態]
図8A及び図8Bに、第4実施形態に基づく多回転検出機能を持つ検出器400を示す。検出器400は、回転する運動体410と単一の発電センサ420とを備えている。
運動体410は、円盤状の軟磁性体部411と、磁界発生源となる4つの磁石412とを有する。4つの磁石412は、軟磁性体部411の外周面に周方向等間隔に配置されている。磁石412は、軟磁性体部411の径方向に着磁されており、N極及びS極の対を有する。磁石412は、軟磁性体部411の径方向外側にある外側磁極412aを有する。4つの磁石412は、周方向に隣り合う外側磁極412aが異極となるように配置されている。
発電センサ420は、大バルクハウゼン現象を発現する磁性ワイヤ421と、磁性ワイヤ421に巻回されたコイル422とを有する。磁性ワイヤ421は、回転軸413と直交し、磁性ワイヤ421の軸方向421aは法線方向に平行である。
運動体410の回転運動により、4つの磁石412は、磁性ワイヤ421の軸方向第1端部の近傍を通過する。通過時の、磁石412の運動方向は、磁性ワイヤ421の軸方向421aに対して垂直である。磁石412の中央部412bは、磁性ワイヤ421の軸方向中央部421bと軸方向第1端部421cとの間の領域の下方を通過する。軟磁性体部411は、磁性ワイヤ421の軸方向第1端部421cとは軸方向に対向していないが、軸方向第2端部421dと対向している。
以上の構造により、運動体410が1回転すると、磁性ワイヤ421には2周期の均等な交番磁界が印加される。
検出器400はさらに、一つの磁気センサ440を備えている。磁気センサ440は、発電センサ420がパルス信号を出力したときに、磁界発生源からの磁界を判定できる位置に配置されている。
4つの磁石412のうち、ある磁石(「第1磁石」と呼ぶ)が磁性ワイヤ421の近傍を通過することで、磁性ワイヤ412に安定化磁界が印加されることになる。続いて、第1磁石に隣接する第2磁石が近づいてきたときに、上述の安定化磁界とは逆方向の動作磁界が磁性ワイヤ412に印加され、発電センサ420がパルス信号を出力する。
つまり、磁気センサ440は、図8Bに示すように、回転軸413に関して軸方向第1端部421cと所定角度をなすように配置されている。この所定角度は、図8Bに示すように凡そ45度である。あるいは、所定角度は、約135度、約225度、又は約315度でもよい。
[回転数、回転方向を判定する方法]
図8Bにおいて、運動体410の右回転を正転、左回転を反転とする。回転時に発電センサ420に印加される磁界Haを図9Aに示す。また、正転時に発電センサ420に生じる正パルス信号を符号Pで示し、信号Pの出力の前提となる安定化磁界を符号Psで示し、負パルス信号を符号Nで示し、信号Nの出力の前提となる安定化磁界を符号Nsで示す。安定化磁界は±H2、動作磁界は±H1とする。反転時の出力は正転時と同一符号で示すが、正転時は白塗り、反転時は黒塗りで示す。
永久磁石412から発電センサ420に印加される磁界は、1回転2周期の交番磁界となる。よって、発電センサ420は、正転1回転につき正負(P,N)の信号を2回出力し、反転1回転についても、正転時と同じように正負(P,N)の信号を2回出力する。
図9Bに、磁気センサ440に印加される磁界Hbを一点鎖線で示す。磁気センサ440は、前述のとおり、回転軸413に関して軸方向第1端部421cと凡そ45度をなすように配置されている。そのため、交番磁界Hbは、図9Aに示した交番磁界Haより45°位相がずれる。磁気センサ440として、例えばホール素子、磁気抵抗効果素子(SV-GMR、TMR)のようにNS極(図におけるプラス及びマイナス)を判別できる磁気センサを使用することができる。この場合、発電センサ420から、正転の2つのP信号、反転の2つのN信号が出力されると、磁気センサ440からマイナス磁界を検出した信号が出力される。これを図中の白塗り及び黒塗りの三角形で示す。また、発電センサ420から、正転の2つのN信号、反転の2つのP信号が出力されると、磁気センサ440からはプラス磁界を検出した信号が出力される。これを図中の白塗り及び黒塗りの四角形で示す。
図9C(A)に、発電センサ420の出力信号と磁気センサ440の検出信号との組み合わせを示す。
図9C(B)に回転座標を示す。正パルス信号Pが出力されてから、運動体410が符号Rに示すように右回転し、次の信号N´が検出されるまでの回転角度は、+90度である。その一方で、正パルス信号Pが出力された直後に運動体410が符号Lに示すように左回転した場合、次の信号は信号Nであることが期待される。しかし、安定化磁界Nsを経ていないことから、信号Nは出力されないか、あるいは出力されたとしても非常に小さく、評価することが困難である。よって、次の、評価できる信号P´の左回転信号が出力されるまでの回転角度は、約-(90度+α)となる。このように正転、反転の双方において安定化磁界が印加されない回転運動が起きても、同一信号で重複する範囲が発生しない。また、判定できる位置の範囲は360度未満となり、運動体410の回転数を正確に検出することができる。
運動体410の回転方向を判定する方法について、理解を容易にするため、一例として連続する信号を2つとして説明する。
判定は、メモリを含む信号処理回路(不図示)により行われる。この信号処理回路は、識別機能と参照機能と演算機能とを有する。まず、信号処理回路は、識別機能により、発電センサ420からの信号を、P、P’、N、及びN’の4つのいずれかとして識別する。次に、信号処理回路は、参照機能にて、回転数及び回転方向の計数を開始する初期状態で記憶された1つ前の(前状態)履歴信号と、その後の回転に伴う信号(新状態)とを順次、メモリに書き込む。信号処理回路は、メモリに格納された過去と現在の連続する2つの信号を、予め設定した4種類のコード化したテーブルで検索し、一致したカウント値を返す。このテーブルの一例を図9Dに示す。信号処理回路は、信号が入力される毎に検索を行い、その結果のカウント値を演算機能にて、順次加減算する。加減算された数値は、その時点での回転数と回転方向を表すことになる。信号Nと信号Pとの間に規準位置を設定し、図9Dに示したようなテーブルを用いることで、運動体410の回転方向及び回転数を正確にカウントできる。
[1回転内の位置と回転数を同期する方法]
検出器をモーターの多回転用として用いる場合、モーター駆動システムの停電中は、図9Dを参照しながら先に述べた方法で回転数を検出する。モーター駆動システムの起動時には、信号P、P´、N、及びN´は、1回転にそれぞれ2箇所存在するため、2つの領域の二者択一となり、回転数を特定できない。そのため、回転数カウンタの基準位置からの変位角度を判別する必要がある。そこで、1回転アブソリュート型の位置センサを外付けすることで、どの領域に位置しているかを判別し、回転数を特定することができる。
[第4実施形態の変形例]
図10に示すように、第4実施形態の変形例として、中空タイプでも多回転機能が提供できる。検出器400-1は、運動体410-1と発電センサ420-1と磁気センサ440-1とを備える。運動体410-1は、リング状の軟磁性体部411-1と、この軟磁性体部の上面に固定された4つの磁石412-1とを備える。4つの磁石412-1は、リング状の硬磁性体を着磁してなる。発電センサ420-1は、磁性ワイヤ421-1とコイル422-1とを備える。磁性ワイヤ421-1は、運動体410-1の回転軸413-1と平行に配置される。
[第5実施形態]
前述の第4実施形態では、磁性ワイヤ421より周方向で凡そ45°離れた位置にある1つの磁気センサ440により、発電センサ420の正転・反転各4つ、計8つの信号をカバーできる。これは、周方向等間隔に配置された磁界発生源どうしがある程度、近接しており、正転・反転の両方において磁気センサ440だけで検出できる十分な磁界が磁気センサ440に印加されるためである。しかし、第4実施形態の第1変形例のような中空タイプでは、磁界発生源どうしが近接していない場合がある。そのような場合について以下に説明する。
図11Aに示すように、検出器500は、運動体510と発電センサ520と第1磁気センサ540と第2磁気センサ541とを備えている。運動体510は、リング状の軟磁性体部511と、軟磁性体部511の外周面に周方向等間隔に配置された4つの磁石512とを備える。磁石512どうしは、第4実施形態(図8A)とは異なり、近接していない。発電センサ520は、磁性ワイヤ521とコイル522とを備える。発電センサ520は、運動体510の径方向と平行に、運動体510の回転軸513からオフセットされて配置されている。
発電センサ520がパルス信号を出力するのは、4つの磁石512のうち、ある磁石が磁性ワイヤ521の近傍を通過したのち、次の磁石が近づいて反転磁界が徐々に強まりつつ動作磁界が印加されるときである。パルス信号が出力される際の運動体510の回転位置は、正転時に発電センサ520が正パルス信号Pと負パルス信号Nを出力する回転位置と、反転時に発電センサ520が正パルス信号Pと負パルス信号Nを出力する位置の計8か所ある。
この8か所に対応して、磁界発生源の磁界を検出できるように第1磁気センサ540と第2磁気センサ541とが配置される。第1磁気センサ540が正転時の磁界を、第2磁気センサ541が反転時の磁界を検出できるように、それぞれの磁気センサを-20度、+20度の位相でずらして配置する。図11Bに示すように、第1磁気センサ540は、一つの磁石512(第1磁石と呼ぶ)が磁性ワイヤ521の真下に来たときに第1磁石から時計方向に少し離れた位置に配置され、第2磁気センサ541は、第1磁石の時計方向に隣接する別の磁石から反時計方向に少し離れた位置に配置される。第1磁気センサ及び第2磁気センサの配置は、磁石の材質、大きさ等に応じて適宜定めればよい。
図11Bにおいて、運動体510の右回転を正転、左回転を反転とする。第1磁気センサ540は、正転時の発電センサ520の信号識別を担い、第2磁気センサ541は反転時の発電センサ520の信号識別を担う。図11Bの3時方向を0度とすると、発電センサ520は0度の位置にあり、第1磁気センサ540は+70度の位置にあり、第2磁気センサ541は+20度の位置にある。磁性ワイヤが0度位置にあり、両磁気センサが0度から90度の領域に配置されているが、その他3つの領域(90度から180度の領域、180度から270度の領域、及び270度から360度の領域)のいずれかに配置されても良い。
図12Aに、運動体510の回転時に発電センサ520に印加される磁界Haを点線で示す。同図において、正転時に発電センサ520に生じる正パルス信号を符号Pで示し、信号Pの出力の前提となる安定化磁界を符号Psで示し、負パルス信号を符号Nで示し、信号Nの出力の前提となる安定化磁界を符号Nsで示す。安定化磁界は±H2、動作磁界は±H1とし、反転時の出力は正転時と同一符号で示すが、正転時は白塗り、反転は黒塗りで示す。磁石512から発電センサ520に印加される磁界は、1回転2周期の交番磁界となる。よって発電センサ520の信号は、正転1回転で正負(P,N)の信号が各2回出力され、反転1回転でも、正転時と同じように正負(P,N)の信号が各2回出力される。
図12Bに、第1磁気センサ540に印加される磁界Hbを二点鎖線で示し、第2磁気センサ541に印加される磁界Hcを一点鎖線で示す。前述のとおり、第1磁気センサ540と第2磁気センサ541は、発電センサ520より周方向に距離を置いて配置されている。そのため、交番磁界Hb及びHcは、図12Aに示した交番磁界Haとは位相がずれる。
磁気センサ540及び541として、例えばホール素子、磁気抵抗効果素子(SV-GMR、TMR)のように、NS極(図におけるプラス及びマイナス)を判別できる磁気センサを使用することができる。
発電センサ520から正転の2つのP信号が出力されたとき、第1磁気センサ540からマイナス磁界の検出信号が出力される(図中の白抜きの三角形)。発電センサ520から正転の2つのN信号が出力されたときには、第1磁気センサ540からプラス磁界の検出信号が出力される(図中の白抜きの四角形)。
発電センサ520から反転の2つのP信号が出力されたとき、第2磁気センサ541からプラス磁界の検出信号が出力される(図中の黒塗りの四角形)。発電センサ520から反転の2つのN信号が出力されたときには、第2磁気センサ541からマイナス磁界の検出信号が出力される(図中の黒塗りの三角形)。
第1磁気センサ540及び第2磁気センサ541の検出信号を発電センサ520の出力信号と組み合わせることで、図12Cに示すように、識別されたP、P´、N及びN´の4種類の信号となる。この4種類の信号にて、上述した[回転数、回転方向を判定する方法]及び[1回転内の位置と回転数を同期する方法]に従って操作すれば、この検出器500をモーターの多回転用として用いることができる。
[回路の他の実施例]
各実施形態の検出器は、磁性ワイヤを備えた発電センサを使用している。そのため、その大バルクハウゼン効果による出力信号は、既に知られているように起電力であり、電源として活用できる。すなわち、発電センサの出力を整流器とコンデンサーにて処理する機能を追加することで、第1実施形態の検出器を例えばスイッチ(ドアの開閉、シャッターの位置)に、第2、第3実施形態の検出器を例えばメーター(流量、水道、風量、ガス)に用いることができる。このような1回転以内の回転角度の同期が必要ない用途において、電源あるいはバッテリーを使用しなくて済む。さらに発電センサによる電力を利用してデータを無線で送ることも可能である。第4、第5実施形態の検出器では、発電センサから回路と磁気センサに電力を供給することで、モーターの多回転位置検出器のバッテリーレス化に応用可能である。
[作用及び効果]
これまでに述べた実施形態の作用及び効果について改めて説明する。
磁界発生源が発電センサに近接したときに、発電センサ内の磁性ワイヤの軸方向第1端部側には磁界が印加されるが、軸方向第2端部側は磁界発生源に対向していないために磁界が印加されない。これにより、軸方向第1端部から軸方向第2端部へ向かって磁区の一斉反転を引き起こせるため磁気誘導ヨークを必要とせず、磁性ワイヤの両端に磁界を印加する方法と同じように単一磁区が磁性ワイヤ全体に形成される。これにより発電センサからの高出力のパルス信号が得られる。
磁性ワイヤの一方の軸端片側に磁界が印加されることにより、磁性ワイヤにおいて磁界発生源と対向する部分の軸方向寸法を、磁性ワイヤの長さの半分以下とすることができる。よって、磁性ワイヤの線長全体に磁界を印加する方法において必要となる比較的大きな磁石が不要である。また、磁石の材質を適宜定めることで、安定化磁界が印加できる薄さまで磁石を小さくすることができる。さらに磁性ワイヤの磁界発生源の側面の磁界を検知するため、ギャップ(磁界発生源のNS境界と磁性ワイヤの第1端部との距離)の調整範囲が広い。耐久性があることから出力に安定性が生まれる。
印加される磁界が磁性ワイヤの軸端片側であり、磁界が印加されない側の軸端では軟磁性体部が磁力を集磁することと相まって、隣接した異極の磁界発生源どうしの磁気干渉が磁性ワイヤに与える影響が軽減される。そのため、複数の磁界発生源を接近させて配置することができる。磁界発生源の極数密度(運動体の外周長あたりの極数)を高めることが可能である。運動体が回転運動体の場合には、その回転運動体の外周を短くすることができる。換言すれば検出器の全体構造が小型になる。
磁性ワイヤの両端部又は全体に強度の等しい磁界を印加する必要がないため、配置の自由度が高い。磁性ワイヤを回転運動体の回転軸と平行な直線上に配置すれば、軟磁性体部の形状はリング状、円盤状のいずれでも可能である。中空型、シャフト型のいずれでも、ラジアルギャップロータリータイプの検出器として適応できる。この構造では、回転運動体の回転軸方向の寸法が磁性ワイヤ長以下に収まり、薄型の検出器となる。中空型においては、検出器の内径を大きく取りたい場合は、発電センサを外周側に配置し、外径を小さくしたい場合は、発電センサを内周側に配置することができる。つまり、設計の自由度がある。
配置の自由度という点では、磁性ワイヤを回転軸と直交する直線上に設置すれば、軟磁性体部の形状をリング又は円盤状とすることができる。つまり、中空型又はシャフト型のアキシャルギャップロータリータイプの検出器として適応できる。回転軸が上下方向であれば、水平に配置された基板上に、発電センサなどの、回路を構成する電子部品を安定的に搭載することができる。
磁性ワイヤを回転運動体の回転軸と直交するように配置することができる。この場合、シャフト型かつアキシャルギャップロータリータイプの検出器となる。2周期以上の交番磁界が印加される。一層の小型化(特に径方向寸法の小型化)を図ることができる。また、磁性ワイヤに巻回されたコイルに誘発される信号の安定性を高めることができる。
シャフト型かつアキシャルギャップロータリータイプの検出器では、磁界発生源の数が4個又は8個の場合、磁性ワイヤの中央を回転軸の中心に配置するとワイヤの両端に同極の磁界が印加され大バルクハウゼン現象を発現できない。しかし、回転軸の中心から磁性ワイヤをずらす(オフセットを設ける)ことで、磁性ワイヤに対して均等な多周期の交番磁界が印加される。特に磁界発生源の数を4にすることで、最小周期である2周期の交番磁界が印加でき、最小半径の回転運動体となる。
発電センサに加えて磁気センサを設けてもよい。2周期の交番磁界が印加されることから、発電センサを複数設ける必要がない。
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
発電センサを用いて運動体の運動を検出する検出器であって、
前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルとを備え、
前記運動体は、軟磁性体部と、前記軟磁性体部に取り付けられた複数の磁界発生源とを備え、前記複数の磁界発生源の各々は、N極及びS極の対を有し、着磁方向が前記軟磁性体部に対する取付方向と平行であり、隣り合う2つの前記磁界発生源において取付方向外側の磁極が異極であり、
前記運動体の運動により前記複数の磁界発生源が描く軌道の近傍に、前記発電センサが配置されており、
前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときの前記磁界発生源の運動方向は、前記磁性ワイヤの軸方向に垂直であり、
前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときの前記磁界発生源の着磁方向は、前記磁性ワイヤの軸方向に平行であり、
前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときに、前記磁性ワイヤの軸方向中央部から軸方向第1端部までのうち少なくとも一部が前記磁界発生源の中央部と対向し、前記磁性ワイヤの前記少なくとも一部から軸方向第2端部までのうち少なくとも一部が前記軟磁性体部と対向する、
検出器。
[付記2]
前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときに、前記軟磁性体部は前記磁性ワイヤの前記軸方向第2端部と対向する、付記1に記載の検出器。
[付記3]
前記運動体が回転運動し、
前記磁性ワイヤは、前記回転運動の回転軸と平行に配置されている、付記1又は2に記載の検出器。
[付記4]
前記運動体が回転運動し、
前記磁性ワイヤは、前記回転運動の回転軸と直交する直線上にあり、前記磁性ワイヤの前記軸方向中央部は前記回転軸に対してオフセットしている、付記1又は2に記載の検出器。
[付記5]
前記磁性ワイヤが、前記回転運動の回転軸と交差するように配置されている、付記4に記載の検出器。
[付記6]
前記磁界発生源の数が4である、付記1~5のいずれか一項に記載の検出器。
[付記7]
前記発電センサが信号を出力したときの前記磁界発生源からの磁界を検出する磁気センサと、
前記運動体の回転運動に応じて前記発電センサ及び前記磁気センサが出力する信号に基づき、前記運動体の回転数及び回転方向を求める回路と
をさらに備える付記1~6のいずれか一項に記載の検出器。
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
100、200、300、400、500 運動検出器

110、210、310、410、510 運動体
111、211、311、411、511 軟磁性体部
112、212、312、412、512 磁石

120、220、320、420、520 発電センサ
121、221、321、421、521 磁性ワイヤ
122、222、322、422、522 コイル
440、540、541 磁気センサ

Claims (7)

  1. 発電センサを用いて運動体の運動を検出する検出器であって、
    前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルとを備え、
    前記運動体は、軟磁性体部と、前記軟磁性体部に取り付けられた複数の磁界発生源とを備え、前記複数の磁界発生源の各々は、N極及びS極の対を有し、着磁方向が前記軟磁性体部に対する取付方向と平行であり、隣り合う2つの前記磁界発生源において取付方向外側の磁極が異極であり、
    前記運動体の運動により前記複数の磁界発生源が描く軌道の近傍に、前記発電センサが配置されており、
    前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときの前記磁界発生源の運動方向は、前記磁性ワイヤの軸方向に垂直であり、
    前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときの前記磁界発生源の着磁方向は、前記磁性ワイヤの軸方向に平行であり、
    前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときに、前記磁性ワイヤの軸方向中央部から軸方向第1端部までのうち少なくとも一部が前記磁界発生源の中央部と対向し、前記磁性ワイヤの前記少なくとも一部から軸方向第2端部までのうち少なくとも一部が前記軟磁性体部と対向する、
    検出器。
  2. 前記発電センサに対して前記磁界発生源が近接したときに、前記軟磁性体部は前記磁性ワイヤの前記軸方向第2端部と対向する、請求項1に記載の検出器。
  3. 前記運動体が回転運動し、
    前記磁性ワイヤは、前記回転運動の回転軸と平行に配置されている、請求項1又は2に記載の検出器。
  4. 前記運動体が回転運動し、
    前記磁性ワイヤは、前記回転運動の回転軸と直交する直線上にあり、前記磁性ワイヤの前記軸方向中央部は前記回転軸に対してオフセットしている、請求項1又は2に記載の検出器。
  5. 前記磁性ワイヤが、前記回転運動の回転軸と交差するように配置されている、請求項4に記載の検出器。
  6. 前記磁界発生源の数が4である、請求項1~5のいずれか一項に記載の検出器。
  7. 前記発電センサが信号を出力したときの前記磁界発生源からの磁界を検出する磁気センサと、
    前記運動体の回転運動に応じて前記発電センサ及び前記磁気センサが出力する信号に基づき、前記運動体の回転数及び回転方向を求める回路と
    をさらに備える請求項1~6のいずれか一項に記載の検出器。
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