JP2022187207A - 鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラム - Google Patents
鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】一般耐火被覆材で被覆した鉄骨部材、および木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部の接合部を介しての熱エネルギーの移動を考慮した鋼材温度を簡易に計算することができる鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラムを提供する。【解決手段】あらかじめ設定した要求耐火時間の加熱を受けた場合の各鉄骨部材の単体での鋼材温度の最高値を計算するステップと、計算した鋼材温度の最高値に基づいて、火災開始時から要求耐火時間経過時に至るまでの鋼材温度と時間の関係を設定し、設定した関係を用いて、熱伝導率に基づく熱コンダクタンスの経時変化を算定するステップと、接合部近傍の各鉄骨部材を材軸方向についてそれぞれ複数の要素に分割し、隣り合う要素間の熱移動特性と、算定した熱コンダクタンスの経時変化に基づいて、各鉄骨部材の鋼材温度を計算するステップとを有するようにする。【選択図】図1
Description
特許法第30条第2項適用申請有り 清水建設研究報告 第98号 発行日 令和2年12月21日
本発明は、耐火被覆材で被覆した鉄骨部材の鋼材温度を計算する鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラムに関するものである。
従来、鋼構造建築物の架構において、けい酸カルシウム板、巻付け耐火被覆材、吹付けロックウールなどの耐火被覆材(以下、一般耐火被覆材という。)で被覆した鉄骨部材と、木質材料を耐火被覆材(以下、木質耐火被覆材という。)として被覆した鉄骨部材とが接合される場合がある。その一例として、図5(1)に梁伏図を、(2)、(3)に梁1の断面図を、(4)に梁2の断面図を示す。図中の符号3は、梁1、梁2の上面に配置される床部材である。
梁1は、図5(2)または(3)に示すようなH形鋼からなる鉄骨梁4(鉄骨部材)を一般耐火被覆材5で被覆した梁である(例えば、特許文献1を参照)。図5(2)は鉄骨梁4のウェブから左右に間隔をあけて一般耐火被覆材5を箱張り被覆した例、(3)は鉄骨梁4の表面に一般耐火被覆材5を直吹き被覆した例である。鉄骨梁4が要求耐火時間の加熱を受けた場合の鋼材最高温度は350~500℃程度に達する。
これに対して、梁2は、H形鋼からなる鉄骨梁6(鉄骨部材)を木質耐火被覆材7で被覆した梁である。この梁は全体の断面形状が矩形となる。鉄骨梁6が要求耐火時間の加熱を受けた場合、木質耐火被覆材7が鋼材に達する前に燃え止まらないと、木質耐火被覆材7の燃焼によって鋼材最高温度が500℃を超えてしまう可能性がある。そのため、木質耐火被覆材7で被覆した鉄骨梁6の鋼材最高温度は、木の引火温度である260℃を超えてはならない。ただし、鋼材最高温度が150℃を超えると燃え止まらない可能性が高いことから、木質耐火被覆材7で被覆された鉄骨梁6において許容される鋼材最高温度は150℃程度を目安とすることが好ましい。
図5(1)のように、一般耐火被覆材で被覆した鉄骨部材(梁1)、および木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材(梁2)で構成される架構を考えた場合、各々の部材に関して個別に要求耐火時間の性能を担保しようとすると、一般耐火被覆材で被覆した鉄骨部材(梁1)の方が、木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材(梁2)より、鋼材最高温度が高くなってしまう。そのため、両部材同士の接合部を介して、前者から後者に熱エネルギーの移動が生じ、木質耐火被覆材で被覆された鉄骨部材の鋼材最高温度が許容温度を超える可能性がある。
木質耐火被覆材が燃え止まらないと、鉄骨部材の鋼材最高温度が500℃を超える。また、このような状態になると、木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材が荷重を支持できなくなって破壊に至り、ひいては架構の崩壊につながる可能性がある。
このような事態を避けるため、木質耐火被覆材で被覆された鉄骨部材の鋼材温度が許容温度(150℃)を超えないようにするための耐火被覆材の種類と被覆範囲を適切に設計する必要がある。設計を効率的に行うために、両部材同士の接合部を介しての熱エネルギーの移動を考慮した鋼材温度を簡易に計算できることが求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、一般耐火被覆材で被覆した鉄骨部材、および木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材で構成される架構において、両部材同士の接合部を介しての熱エネルギーの移動を考慮した鋼材温度を簡易に計算することができる鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラムを提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼材温度計算方法は、非木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材と、木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材の接合部を介した熱移動を考慮して鉄骨部材の鋼材温度を計算する方法であって、あらかじめ設定した要求耐火時間の加熱を受けた場合の各鉄骨部材の単体での鋼材温度の最高値を計算するステップと、計算した鋼材温度の最高値に基づいて、火災開始時から要求耐火時間経過時に至るまでの鋼材温度と時間の関係を設定し、設定した関係を用いて、熱伝導率に基づく熱コンダクタンスの経時変化を算定するステップと、接合部近傍の各鉄骨部材を材軸方向についてそれぞれ複数の要素に分割し、隣り合う要素間の熱移動特性と、算定した熱コンダクタンスの経時変化に基づいて、各鉄骨部材の鋼材温度を計算するステップとを有することを特徴とする。
また、本発明に係る鋼材温度計算プログラムは、上述した鋼材温度計算方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明に係る鋼材温度計算方法によれば、非木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材と、木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材の接合部を介した熱移動を考慮して鉄骨部材の鋼材温度を計算する方法であって、あらかじめ設定した要求耐火時間の加熱を受けた場合の各鉄骨部材の単体での鋼材温度の最高値を計算するステップと、計算した鋼材温度の最高値に基づいて、火災開始時から要求耐火時間経過時に至るまでの鋼材温度と時間の関係を設定し、設定した関係を用いて、熱伝導率に基づく熱コンダクタンスの経時変化を算定するステップと、接合部近傍の各鉄骨部材を材軸方向についてそれぞれ複数の要素に分割し、隣り合う要素間の熱移動特性と、算定した熱コンダクタンスの経時変化に基づいて、各鉄骨部材の鋼材温度を計算するステップとを有するので、接合部を介しての熱エネルギーの移動を考慮した鋼材温度を簡易に計算することができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係る鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
まず、本発明の実施の形態に係る鋼材温度計算方法を適用する架構の例を図1に示す。
図1(1)は、木質耐火被覆材16で被覆した鉄骨部材12の接合部近傍端部の被覆を、鉄骨部材10よりも厚い一般耐火被覆材14で被覆した例である。
図1(2)は、一般耐火被覆材14で被覆した鉄骨部材10と、木質耐火被覆材16で被覆した鉄骨部材12との接合部において、鉄骨部材10の接合部付近の一般耐火被覆材14の厚さを、接合部から離れた範囲の厚さよりも厚くした例である。
なお、鉄骨部材10が図5の梁1に相当し、鉄骨部材12が図5の梁2に相当する。
図1(1)は、木質耐火被覆材16で被覆した鉄骨部材12の接合部近傍端部の被覆を、鉄骨部材10よりも厚い一般耐火被覆材14で被覆した例である。
図1(2)は、一般耐火被覆材14で被覆した鉄骨部材10と、木質耐火被覆材16で被覆した鉄骨部材12との接合部において、鉄骨部材10の接合部付近の一般耐火被覆材14の厚さを、接合部から離れた範囲の厚さよりも厚くした例である。
なお、鉄骨部材10が図5の梁1に相当し、鉄骨部材12が図5の梁2に相当する。
本実施の形態に係る鋼材温度計算方法は、あらかじめ設定した要求耐火時間の加熱を受けた場合の各鉄骨部材10、12の単体での鋼材温度の最高値を計算するステップ1と、計算した鋼材温度の最高値に基づいて、火災開始時から要求耐火時間経過時に至るまでの鋼材温度と時間の関係を設定し、設定した関係を用いて、熱伝導率に基づく熱コンダクタンスの経時変化を算定するステップ2と、接合部近傍の各鉄骨部材10、12を材軸方向についてそれぞれ複数の小要素に分割し、隣り合う小要素間の熱移動特性と、算定した熱コンダクタンスの経時変化に基づいて、各鉄骨部材の鋼材温度を計算するステップ3とを有する。
次に、各ステップ1~3の具体的な処理内容について説明する。
次に、各ステップ1~3の具体的な処理内容について説明する。
(ステップ1:梁単体の鋼材最高温度の計算)
まず、以下の参考文献1に記載の耐火性能検証法に示されている下式(1)~(3)によって、要求耐火時間の加熱を受けた場合の各部材単体の鋼材最高温度を計算する。
まず、以下の参考文献1に記載の耐火性能検証法に示されている下式(1)~(3)によって、要求耐火時間の加熱を受けた場合の各部材単体の鋼材最高温度を計算する。
[参考文献1] 国土交通省住宅局建築指導課他、「2001年版耐火性能検証法の解説及び計算例とその解説」、2001年3月
ここに、
Ts:鋼材温度の最高値(℃)、T0:鋼材温度の初期値
α:火災温度上昇係数(℃min1/6)
t:火災継続時間(min)
h:部材温度上昇係数(min-1)
tw:温度上昇遅延時間(min)
φ:Hi/Hs(加熱を受ける部分の被覆材と鋼材の周長比)
C:ρici/ρscs(被覆材と鋼材の熱容量比)、ρs:鋼材の密度7860(kg/m3)、cs:鋼材の比熱442(J/(kg・K))、被覆材の密度(kg/m3)、被覆材の比熱(J/(kg・K))
R:ht/λi(熱抵抗係数(m-1))、ht:鋼材表面と火災空間との間の総合熱伝達率(W/m2K)、λi:被覆材の熱伝導率(W/(m・K))
K0:基本温度上昇速度(m/min)
αw:温度上昇遅延時間係数(min/m2)
H:加熱を受ける部分の周長(m)、添え字s:鋼材、添え字i:被覆材
A:断面積(m2)、添え字s:鋼材、添え字i:被覆材
なお、上記のC、R、K0、αwについては、図5(5)に記載の数値を用いる。
Ts:鋼材温度の最高値(℃)、T0:鋼材温度の初期値
α:火災温度上昇係数(℃min1/6)
t:火災継続時間(min)
h:部材温度上昇係数(min-1)
tw:温度上昇遅延時間(min)
φ:Hi/Hs(加熱を受ける部分の被覆材と鋼材の周長比)
C:ρici/ρscs(被覆材と鋼材の熱容量比)、ρs:鋼材の密度7860(kg/m3)、cs:鋼材の比熱442(J/(kg・K))、被覆材の密度(kg/m3)、被覆材の比熱(J/(kg・K))
R:ht/λi(熱抵抗係数(m-1))、ht:鋼材表面と火災空間との間の総合熱伝達率(W/m2K)、λi:被覆材の熱伝導率(W/(m・K))
K0:基本温度上昇速度(m/min)
αw:温度上昇遅延時間係数(min/m2)
H:加熱を受ける部分の周長(m)、添え字s:鋼材、添え字i:被覆材
A:断面積(m2)、添え字s:鋼材、添え字i:被覆材
なお、上記のC、R、K0、αwについては、図5(5)に記載の数値を用いる。
(ステップ2:熱コンダクタンスの算定)
次に、火災開始前0分時における鋼材温度を20℃、要求耐火時間経過時における鋼材温度を上記のステップ1で求めた鋼材温度の最高値とし、鋼材温度-時間関係として、当該関係において、座標(0分時、20℃)と(要求耐火時間経過時、鋼材最高温度)を直線で結んだ線形関係を仮定する。
次に、火災開始前0分時における鋼材温度を20℃、要求耐火時間経過時における鋼材温度を上記のステップ1で求めた鋼材温度の最高値とし、鋼材温度-時間関係として、当該関係において、座標(0分時、20℃)と(要求耐火時間経過時、鋼材最高温度)を直線で結んだ線形関係を仮定する。
上記の鋼材温度-時間関係から、鋼材表面の熱伝達率と被覆材の熱伝導率を総合した熱コンダクタンスの経時変化を算定する。具体的には、熱コンダクタンス-時間関係を下式(4)による逐次計算によって求める。
Ui+1={(cs×ρs×Vs)×(Ts,i+1-Ts,i)}/{Hs×(Tf,i+1-Ts,i)×(ti+1-ti)×60} ・・・(4)
ここに、
U:熱コンダクタンス(W/(m2・K))
cs:鋼材の比熱(=442J/(kg・K))
ρs:鋼材の密度(=7860kg/m3)
Vs:鉄骨部材の単位長さ当たりの体積(m3)
Ts:鋼材温度(℃)
Hs:鉄骨部材の単位長さ当たりの加熱面積(m2)
Tf:加熱温度(℃)
t:時間(分)
i,i+1:時間ステップ
U:熱コンダクタンス(W/(m2・K))
cs:鋼材の比熱(=442J/(kg・K))
ρs:鋼材の密度(=7860kg/m3)
Vs:鉄骨部材の単位長さ当たりの体積(m3)
Ts:鋼材温度(℃)
Hs:鉄骨部材の単位長さ当たりの加熱面積(m2)
Tf:加熱温度(℃)
t:時間(分)
i,i+1:時間ステップ
(ステップ3:部分架構における部材の鋼材温度の計算)
次に、部分架構を構成する鉄骨部材の長さ方向を要素分割し、上記のステップ2で得られた熱コンダクタンスを用いて、部分架構における鉄骨部材の鋼材温度を下式(5)の逐次計算によって計算する。
次に、部分架構を構成する鉄骨部材の長さ方向を要素分割し、上記のステップ2で得られた熱コンダクタンスを用いて、部分架構における鉄骨部材の鋼材温度を下式(5)の逐次計算によって計算する。
Ts,j,i+1=Ts,j,i+ΔTs,j,i+1 ・・・(5)
ΔTs,j,i+1={(Qf→s,j+ΣQs,j+n→s,j)×(ti+1-ti)×60}/(cs×ρs×Vs,j×Ls,j)
Qf→s,j=Uj,i+1×Hs,j×Ls,j×(Tf,i+1-Ts,j,i)
Qs,j+n→s,j=λs×As,j-j+n×(Ts,j+n,i-Ts,j,i)/{(Ls,j+n+Ls,j)/2}
ΔTs,j,i+1={(Qf→s,j+ΣQs,j+n→s,j)×(ti+1-ti)×60}/(cs×ρs×Vs,j×Ls,j)
Qf→s,j=Uj,i+1×Hs,j×Ls,j×(Tf,i+1-Ts,j,i)
Qs,j+n→s,j=λs×As,j-j+n×(Ts,j+n,i-Ts,j,i)/{(Ls,j+n+Ls,j)/2}
ここに、
ΔTs,j,i+1:(時間ステップiからi+1の間における)小部材jの鋼材温度上昇(℃)
Qf→s,j:火災加熱によって小部材jに単位時間当たりに流入する熱量(W)
Qs,j+n→s,j:隣接する小部材j+nから小部材jに単位時間当たりに流入する熱量(W)
Ls,j:鉄骨部材を長さ方向に分割した際の小部材jの長さ(m)
λs:鋼材の熱伝導率(40W/(m・K))
As,j-j+n:小部材jと隣接する小部材j+nとの境界における断面積(m2)
j:鉄骨部材を長さ方向に分割した際の小部材の要素番号
j+n:鉄骨部材を長さ方向に分割した際の小部材jに隣接する小部材の要素番号
ΔTs,j,i+1:(時間ステップiからi+1の間における)小部材jの鋼材温度上昇(℃)
Qf→s,j:火災加熱によって小部材jに単位時間当たりに流入する熱量(W)
Qs,j+n→s,j:隣接する小部材j+nから小部材jに単位時間当たりに流入する熱量(W)
Ls,j:鉄骨部材を長さ方向に分割した際の小部材jの長さ(m)
λs:鋼材の熱伝導率(40W/(m・K))
As,j-j+n:小部材jと隣接する小部材j+nとの境界における断面積(m2)
j:鉄骨部材を長さ方向に分割した際の小部材の要素番号
j+n:鉄骨部材を長さ方向に分割した際の小部材jに隣接する小部材の要素番号
本実施の形態によれば、一般耐火被覆材で被覆した鉄骨部材と、木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材との接合部において、木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材の鋼材温度が許容温度(例えば150℃)を超えないようにするための被覆仕様(耐火被覆材の種類と被覆範囲)を簡易に予測することができる。接合部の設計段階でこの計算方法を用いれば、耐火被覆材の種類と被覆範囲を容易に決定することができる。
なお、上記の実施の形態の鋼材温度計算方法は、上記のステップ1~3をそれぞれコンピュータに実行させるように構成した鋼材温度計算プログラムの形態で実行可能である。この鋼材温度計算プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておき、適宜利用可能なようにしてもよい。また、コンピュータ上で稼働する表計算ソフトウェアの計算シートで容易に実行することも可能である。
(実施例)
図2は、計算例とした鉄骨梁の梁伏図である。図2(1)中の凸形の網掛け部分を計算対象とした。図2(2)に示すように、大梁は長さ100mmの小部材で計算範囲を9分割し、小梁も長さ100mmの小部材で計算範囲を10分割した。大梁と小梁の耐火被覆の条件は、図2(3)のように設定した。なお、大梁が図1(1)の鉄骨部材10に相当し、小梁が図1(1)の鉄骨部材12に相当する。
図2は、計算例とした鉄骨梁の梁伏図である。図2(1)中の凸形の網掛け部分を計算対象とした。図2(2)に示すように、大梁は長さ100mmの小部材で計算範囲を9分割し、小梁も長さ100mmの小部材で計算範囲を10分割した。大梁と小梁の耐火被覆の条件は、図2(3)のように設定した。なお、大梁が図1(1)の鉄骨部材10に相当し、小梁が図1(1)の鉄骨部材12に相当する。
[計算例1]
本計算例1は、1時間加熱、大梁が吹付けロックウール被覆(t=25mm)という条件で計算したものである。梁単体の鋼材最高温度の計算結果は、以下のとおりである。
本計算例1は、1時間加熱、大梁が吹付けロックウール被覆(t=25mm)という条件で計算したものである。梁単体の鋼材最高温度の計算結果は、以下のとおりである。
大梁:320℃
小梁:111℃
小梁:111℃
熱コンダクタンスの算定結果に関して、仮定した大梁と小梁の鋼材温度-時間関係を図3(1)に示し、熱コンダクタンスの算定結果を図3(2)に示す。
部分架構における部材の鋼材温度の計算結果として、大梁の鋼材温度-時間関係を図3(3)に示し、その拡大図を図3(4)に示す。小梁の鋼材温度-時間関係を図3(5)に示し、その拡大図を図3(6)に示す。また、梁材軸方向の鋼材最高温度分布を図3(7)に示す。なお、小部材G5の温度が、小梁との接合部における大梁の鋼材温度に相当する。小部材B1の温度が、大梁との接合部における小梁の鋼材温度に相当する。
この計算結果より、小梁の鋼材温度を許容温度である150℃以下にするために、小梁の耐火被覆の範囲は、大梁との接合部から200mm、好ましくは300mmの範囲を「けい酸カルシウム板厚さ25mm×2層による箱張り被覆」で被覆するのがよいことがわかる。
大梁との接合部から200mm以上、好ましくは300mm以上離れた範囲は、木質耐火被覆材で被覆することが可能である。木質耐火被覆材は、例えばヒバ、カラマツ、スギなどを用いて構成することができ、その被覆厚さは例えば50~80mm程度に設定してもよい。
[計算例2]
本計算例2は、2時間加熱、大梁がけい酸カルシウム板被覆(t=35mm)という条件で計算したものである。梁単体の鋼材最高温度の計算結果は、以下のとおりである。
本計算例2は、2時間加熱、大梁がけい酸カルシウム板被覆(t=35mm)という条件で計算したものである。梁単体の鋼材最高温度の計算結果は、以下のとおりである。
大梁:359℃
小梁:121℃
小梁:121℃
熱コンダクタンスの算定結果に関して、仮定した大梁と小梁の鋼材温度-時間関係を図4(1)に示し、熱コンダクタンスの算定結果を図4(2)に示す。
部分架構における部材の鋼材温度の計算結果として、大梁の鋼材温度-時間関係を図4(3)に示し、その拡大図を図4(4)に示す。小梁の鋼材温度-時間関係を図4(5)に示し、その拡大図を図4(6)に示す。また、梁材軸方向の鋼材最高温度分布を図4(7)に示す。なお、小部材G5の温度が、小梁との接合部における大梁の鋼材温度に相当する。小部材B1の温度が、大梁との接合部における小梁の鋼材温度に相当する。
この計算結果より、小梁の鋼材温度を許容温度である150℃以下にするために、小梁の耐火被覆の範囲は、大梁との接合部から350mm、好ましくは400mmの範囲を「けい酸カルシウム板厚さ35mm×2層による箱張り被覆」で被覆するのがよいことがわかる。
大梁との接合部から350mm以上、好ましくは400mm以上離れた範囲は、木質耐火被覆材で被覆することが可能である。木質耐火被覆材は、例えばヒバ、カラマツ、スギなどを用いて構成することができ、その被覆厚さは例えば125~200mm程度に設定してもよい。
以上説明したように、本発明に係る鋼材温度計算方法によれば、非木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材と、木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材の接合部を介した熱移動を考慮して鉄骨部材の鋼材温度を計算する方法であって、あらかじめ設定した要求耐火時間の加熱を受けた場合の各鉄骨部材の単体での鋼材温度の最高値を計算するステップと、計算した鋼材温度の最高値に基づいて、火災開始時から要求耐火時間経過時に至るまでの鋼材温度と時間の関係を設定し、設定した関係を用いて、熱伝導率に基づく熱コンダクタンスの経時変化を算定するステップと、接合部近傍の各鉄骨部材を材軸方向についてそれぞれ複数の要素に分割し、隣り合う要素間の熱移動特性と、算定した熱コンダクタンスの経時変化に基づいて、各鉄骨部材の鋼材温度を計算するステップとを有するので、接合部を介しての熱エネルギーの移動を考慮した鋼材温度を簡易に計算することができる。
以上のように、本発明に係る鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラムは、一般耐火被覆材で被覆した鉄骨部材と、木質耐火被覆材で被覆した鉄骨部材とが接合した架構の設計に有用であり、特に、接合部を介しての熱エネルギーの移動を考慮した鋼材温度を簡易に計算するのに適している。
10,12 鉄骨部材
14 一般耐火被覆材
16 木質耐火被覆材
14 一般耐火被覆材
16 木質耐火被覆材
Claims (2)
- 非木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材と、木質の耐火被覆材で被覆した鉄骨部材の接合部を介した熱移動を考慮して鉄骨部材の鋼材温度を計算する方法であって、
あらかじめ設定した要求耐火時間の加熱を受けた場合の各鉄骨部材の単体での鋼材温度の最高値を計算するステップと、
計算した鋼材温度の最高値に基づいて、火災開始時から要求耐火時間経過時に至るまでの鋼材温度と時間の関係を設定し、設定した関係を用いて、熱伝導率に基づく熱コンダクタンスの経時変化を算定するステップと、
接合部近傍の各鉄骨部材を材軸方向についてそれぞれ複数の要素に分割し、隣り合う要素間の熱移動特性と、算定した熱コンダクタンスの経時変化に基づいて、各鉄骨部材の鋼材温度を計算するステップとを有することを特徴とする鋼材温度計算方法。 - 請求項1に記載の鋼材温度計算方法をコンピュータに実行させることを特徴とする鋼材温度計算プログラム。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2021095100A JP2022187207A (ja) | 2021-06-07 | 2021-06-07 | 鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラム |
Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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JP2021095100A Pending JP2022187207A (ja) | 2021-06-07 | 2021-06-07 | 鋼材温度計算方法および鋼材温度計算プログラム |
Country Status (1)
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-
2021
- 2021-06-07 JP JP2021095100A patent/JP2022187207A/ja active Pending
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80 Effective date: 20210622 |
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A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20240308 |