JP2022186361A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成によりシステム起動時の燃料の消費を抑制し且つ起動時間を短縮する。【解決手段】燃料電池システムは、改質部よりも後段を流れる燃料の一部を原燃料ガス供給路に還流させる還流路を備える。燃料電池システムの制御装置は、システムの起動が要求されたとき、脱硫器に吸着させるべき燃料の必要量を単位時間当りの原燃料ガスの供給量とこの供給量に所定の還流率を乗じて得られる還流量との和の流量で除して脱硫器への燃料の吸着が飽和状態に達するまでに要する所要時間を設定する。そして、設定した所要時間に基づいて供給量で原燃料ガスが供給されるよう原燃料ガス供給装置を制御する燃料吸着制御を実行する。【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池システムに関する。
従来、この種の燃料電池システムとしては、燃料を供給する燃料供給本ラインと、燃料供給本ラインに設けられた脱硫器および改質器と、脱硫器の入口側に燃料を供給する燃料供給仮ラインと、を備える燃料電池システムにおいて、脱硫器の入口側と出口側とにそれぞれ流量計を備え、システムの起動時において、脱硫器入口側の流量と脱硫器出口側の流量との差に基づいて脱硫器で燃料の吸着が平衡状態に到達したかを計測すると共に必要な燃料を燃料供給仮ラインから供給するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、現在の運転モードにおける起動運転の開始時点の燃料電池検出温度と直前の運転モードにおける停止運転の終了時点の燃料電池検出温度とから現在の運転モードにおける起動運転の開始時点に、脱硫器の吸着部が吸着可能な吸着質の量(吸着可能量)を導出し、導出した吸着可能量だけ吸着質を吸着部に吸着させるものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1記載の燃料電池システムでは、専用の補機(流量計)が必要であり、装置の複雑化を招くと共にコスト増を招く。更に、流量計が故障した場合には、脱硫器での燃料吸着の平衡状態を判定することができなくなる。また、脱硫器に吸着される燃料は流入する燃料のうちの一部であり、特に分子量の比較的小さな燃料ガスはその多くが破過してしまう。このため、特許文献1や特許文献2記載の燃料電池システムでは、燃料の吸着が飽和状態に達するまでに多くの燃料が消費され、省エネルギ性が低下してしまう。
本発明の燃料電池システムは、簡易な構成によりシステム起動時の燃料の消費を抑制し且つ起動時間を短縮することができる燃料電池システムを提供することを主目的とする。
本発明の燃料電池システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の燃料電池システムは、
アノードガスとカソードガスとに基づいて発電する燃料電池と、原燃料ガスを改質して前記アノードガスを生成する改質部と、前記燃料電池で使用されなかった未使用燃料を燃焼させる燃焼部と、を含む発電モジュールと、
前記原燃料ガスに含まれる硫黄成分を脱硫して前記改質部へ供給する脱硫器と、
原燃料ガス供給路を介して原燃料ガス供給源からの前記原燃料ガスを前記脱硫器へ供給する原燃料ガス供給装置と、
前記燃料電池に前記カソードガスを供給するカソードガス供給装置と、
前記改質部よりも後段を流れる燃料の一部を前記原燃料ガス供給路に還流させる還流路と、
システムの起動が要求されたとき、前記脱硫器に吸着させるべき燃料の必要量を単位時間当りの前記原燃料ガスの供給量と該供給量に所定の還流率を乗じて得られる還流量との和の流量で除して前記脱硫器への燃料の吸着が飽和状態に達するまでに要する所要時間を設定し、前記供給量で前記原燃料ガスが供給されるよう前記原燃料ガス供給装置を制御する燃料吸着制御を実行し、前記所要時間が経過した後、前記燃焼部に供給される前記未使用燃料に着火する着火制御を実行する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
アノードガスとカソードガスとに基づいて発電する燃料電池と、原燃料ガスを改質して前記アノードガスを生成する改質部と、前記燃料電池で使用されなかった未使用燃料を燃焼させる燃焼部と、を含む発電モジュールと、
前記原燃料ガスに含まれる硫黄成分を脱硫して前記改質部へ供給する脱硫器と、
原燃料ガス供給路を介して原燃料ガス供給源からの前記原燃料ガスを前記脱硫器へ供給する原燃料ガス供給装置と、
前記燃料電池に前記カソードガスを供給するカソードガス供給装置と、
前記改質部よりも後段を流れる燃料の一部を前記原燃料ガス供給路に還流させる還流路と、
システムの起動が要求されたとき、前記脱硫器に吸着させるべき燃料の必要量を単位時間当りの前記原燃料ガスの供給量と該供給量に所定の還流率を乗じて得られる還流量との和の流量で除して前記脱硫器への燃料の吸着が飽和状態に達するまでに要する所要時間を設定し、前記供給量で前記原燃料ガスが供給されるよう前記原燃料ガス供給装置を制御する燃料吸着制御を実行し、前記所要時間が経過した後、前記燃焼部に供給される前記未使用燃料に着火する着火制御を実行する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の燃料電池システムは、改質部よりも後段を流れる燃料の一部を原燃料ガス供給路に還流させる還流路を備える。この燃料電池システムにおいて、システムの起動が要求されたとき、脱硫器に吸着させるべき燃料の必要量を単位時間当りの原燃料ガスの供給量とこの供給量に所定の還流率を乗じて得られる還流量との和の流量で除して脱硫器への燃料の吸着が飽和状態に達するまでに要する所要時間を設定する。そして、供給量で原燃料ガスが供給されるよう原燃料ガス供給装置を制御する燃料吸着制御を実行し、所要時間が経過した後、燃料部の未使用燃料に着火する着火制御を実行する。燃料の一部を原燃料ガス供給路に還流させるため、脱硫器に吸着されなかった燃料を脱硫器に再度流入させることができ、燃料吸着制御において燃料の消費を抑制して省エネルギ性を向上させることができる。また、燃料の還流量を加味して燃料の吸着が飽和状態に達するまでの所要時間を設定するため、燃料吸着制御の所要時間を短縮でき、ひいてはシステムの起動時間を短縮することができる。これらの結果、簡易な構成によりシステム起動時の燃料の消費を抑制し且つ起動時間を短縮することができる燃料電池システムとすることができる。
こうした本発明の燃料電池システムにおいて、前記還流路に設けられた電磁弁を備え、前記制御装置は、前記電磁弁を開弁して前記燃料吸着制御を行ない、前記燃料吸着制御が完了すると、前記電磁弁を閉弁してから前記着火制御を実行してもよい。こうすれば、燃料吸着制御において燃料の消費を抑制しつつ、着火制御において燃焼部への未使用燃焼の供給を素早く行なうことができる。
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記原燃料ガスの燃料種を取得し、該取得した燃料種に基づいて前記所要時間を調整してもよい。こうすれば、燃料種に拘わらず脱硫器への燃料の吸着が飽和状態に達するまでの適切な所要時間を設定することが可能となる。
さらに、本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記システムの起動が要求されたときに前記温度センサにより検出された温度が所定温度以上である場合には、前記カソードガスにより前記発電モジュール内が冷却されるよう前記カソードガス供給装置を制御してから前記燃料吸着制御を実行してもよい。こうすれば、発電モジュールの状態を燃料吸着制御に適した状態とすることができる。
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。本実施形態の燃料電池システム10は、図示するように、アノードガス中の水素とカソードガス中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池スタック21を含む発電モジュール20と、原燃料ガス供給管31を介して発電モジュール20にアノードガスの原料となる原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)を供給する原燃料ガス供給装置30と、発電モジュール20に原燃料ガスからアノードガスへの改質(水蒸気改質)に必要な改質水を供給する改質水供給装置40と、発電モジュール20(燃料電池スタック21)にカソードガスとしてのエアを供給するエア供給装置50と、発電モジュール20において発生した排熱を回収する排熱回収装置60と、燃料電池スタック21において電気化学反応(発電)に使用されなかった未使用燃料の一部を原燃料ガス供給管31に還流させる還流装置80と、システム全体をコントロールする制御装置90と、を備える。
発電モジュール20は、燃料電池スタック21や、気化器22、改質器23、燃焼器24、2つの熱交換器26,27を含み、これらは、断熱性を有するモジュールケース29に収容されている。
燃料電池スタック21は、酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とをそれぞれ有し、左右方向(水平方向)に配列された複数の固体酸化物形の単セルを備える。各単セルのアノード電極内には、図示しないアノードガス通路が形成されている。また、各単セルのカソード電極内には、図示しないカソードガス通路が形成されている。更に、燃料電池スタック21の近傍には、温度センサ97が設置されている。温度センサ97は、燃料電池スタック21の温度に相関する温度(スタック相関温度T4)を検出する。
発電モジュール20の気化器22および改質器23は、モジュールケース29内の燃料電池スタック21の上方に間隔をおいて配設される。また、燃料電池スタック21と気化器22および改質器23との間には、燃料電池スタック21の作動や、気化器22および改質器23での反応に必要な熱を発生させる燃焼器24が配設される。燃焼器24には、着火ヒータ25が設置されている。
気化器22は、燃焼器24からの熱により原燃料ガス供給装置30からの原燃料ガスと改質水供給装置40からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器22により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混合され、その混合ガスは、当該気化器22から改質器23に流入する。また、気化器22には、気化器22に流入する混合ガスの温度(気化器温度T1)を検出する温度センサ95が設置され、改質器23には、改質器23に流入する混合ガスの温度(改質器温度T2)を検出する温度センサ96が設置されている。
改質器23は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼器24からの熱の存在下で、改質触媒による気化器22からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器23は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器23によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。改質器23により生成されたアノードガスは、アノードガス配管71を通って各単セルのアノードガス通路へ流入し、アノード電極に供給される。
また、カソードガスとしてのエアは、カソードガス配管72を介して各単セルのカソードガス通路へ流入し、カソード電極に供給される。各単セルのカソード電極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。
各単セルにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)は、アノードオフガス配管73を通って凝縮器62に供給され、凝縮器62により冷却させられてアノードオフガスに含まれる水蒸気が除去された後、アノードオフガス配管74を通って燃焼器24に供給される。アノードオフガス配管73,74には熱交換器26が設置され、アノードオフガス配管74を流れるアノードオフガス(凝縮器62を通過した後のアノードオフガス)は、熱交換器26において燃料電池スタック21からアノードオフガス配管73を流れる高温のアノードオフガス(凝縮器62を通過する前のアノードオフガス)との熱交換により昇温させられる。また、各単セルにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったカソードガス(以下、「カソードオフガス」という)は、カソードオフガス配管75を通って燃焼器24に供給される。
燃焼器24に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、燃焼器24に流入した酸素を含むカソードオフガスと混合される。そして、着火ヒータ25により点火させられて燃焼器24で混合ガスが着火すると、当該混合ガスの燃焼により、燃料電池スタック21の作動や、気化器22での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器23での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、燃焼器24では、未燃燃料を含む燃焼排ガスが生成され、当該燃焼排ガスは、燃焼排ガス配管76を通り、熱交換器27および燃焼触媒28を経て外気へ排出される。燃焼触媒28は、燃焼排ガス中の未燃燃料を再燃焼させるための酸化触媒である。
原燃料ガス供給装置30は、原燃料ガスを供給する原燃料供給源1と気化器22とを接続する原燃料ガス供給管31と、当該原燃料ガス供給管31に設置された開閉弁(2連弁)32,33、オリフィス34、ゼロガバナ(均圧弁)35、ガスポンプ36および脱硫器38とを有する。原燃料ガスは、ガスポンプ36を作動させることで、原燃料供給源1から脱硫器38を介して気化器22へと圧送(供給)される。また、原燃料ガス供給管31のオリフィス34とゼロガバナ35との間には、原燃料ガス供給管31を流れる原燃料ガスの単位時間当りの流量(ガス流量Fg)を検出する流量センサ39が設置されている。脱硫器38は、原燃料ガスに添加されている付臭剤(有機硫黄化合物)を吸着する吸着剤が収容されている。吸着剤は、金属を担持したゼオライト等の多孔質材料であり、脱硫器38は、吸着剤が性能を発揮できる温度となるように、発電モジュール20からの熱を受熱可能にモジュールケース29と接触または近接して設置されている。
改質水供給装置40は、改質水を貯留する改質水タンク42と、改質水タンク42と気化器22とを接続する改質水供給管41と、改質水供給管41に設置された改質水ポンプ43と、を有する。改質水タンク42内の改質水は、改質水ポンプ43を作動させることで、当該改質水ポンプ43により気化器22へと圧送(供給)される。
エア供給装置50は、モジュールケース29内に設置されたカソードガス配管72に接続されるエア供給管51と、エア供給管51の入口に設けられたエアフィルタ52と、エア供給管51に設置されたエアポンプ53と、を有する。エアポンプ53を作動させることで、カソードガスとしてのエアは、エアフィルタ52を介してエア供給管51に吸引され、カソードガス配管72を通って燃料電池スタック21(カソード電極)へと圧送(供給)される。カソードガス配管72を流れるエアは、熱交換器27において燃焼排ガス配管76を流れる高温の燃焼排ガスと熱交換されて昇温させられる。
排熱回収装置60は、湯水を貯留する貯湯タンク61と、燃料電池スタック21からアノードオフガス配管73を流れるアノードオフガスと湯水とを熱交換してアノードオフガス中に含まれる水蒸気を凝縮させる凝縮器62と、貯湯タンク61と凝縮器62とに接続された循環配管63と、循環配管63に組み込まれた循環ポンプ64と、を有する。貯湯タンク61内に貯留されている湯水は、循環ポンプ64を作動させることで、凝縮器62へと導入され、凝縮器62でアノードオフガスとの熱交換によって昇温させられた後、貯湯タンク61へと返送される。
また、凝縮器62におけるアノードオフガス側の通路出口には、凝縮水配管44とアノードオフガス配管74とが接続されており、アノードオフガス中の水蒸気が貯湯タンク61からの湯水との熱交換により凝縮することにより得られた凝縮水は、凝縮水配管44を通って改質水タンク42内に導入される。また、上述したように、凝縮器62において水蒸気が除去されたアノードオフガスは、アノードオフガス配管74を通って燃焼器24に供給される。
還流装置80は、アノードオフガス配管74から分岐すると共に原燃料ガス供給管31におけるゼロガバナ35とガスポンプ36との間に接続される還流配管81と、還流配管81に設置される電磁弁82と、還流配管81に形成されるオリフィス83と、を有する。電磁弁82は、常閉式の開閉弁であり、電磁弁82が閉弁された状態において、アノードオフガス配管74から原燃料ガス供給管31へのアノードオフガスの還流ラインが遮断され、電磁弁82を開弁することにより、アノードオフガス配管74と原燃料ガス供給管31とが連通することで還流ラインが開放される。本実施形態では、還流装置80は、電磁弁82を備える仕様としたが、電磁弁82を省略した仕様があってもよい。
燃料電池スタック21の出力端子には、図示しないが、パワーコンディショナの入力端子が接続され、当該パワーコンディショナの出力端子には、リレーを介して電力系統から負荷への電力ラインに接続される。パワーコンディショナは、燃料電池スタック21から出力された直流電圧を所定電圧(例えば、DC250V~300V)に変換するDC/DCコンバータや、変換された直流電圧を電力系統と連系可能な交流電圧(例えば、AC200V)に変換するインバータを有する。燃料電池スタック21の出力端子には、燃料電池スタック21から出力される電流(スタック電流Ist)を検出する電流センサが取り付けられ、燃料電池スタック21の出力端子間には、端子間電圧(スタック電圧Vst)を検出する電圧センサが取り付けられている。
制御装置90は、CPU91を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU91の他に、処理プログラムを記憶するROM92と、データを一時的に記憶するRAM93と、タイマ94と、図示しない入出力ポートと、を備える。制御装置90には、流量センサ39や、温度センサ95,96,97、電流センサ、電圧センサなどからの各種検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置90からは、開閉弁32,33のソレノイドや、ガスポンプ36のポンプモータ、改質水ポンプ43のポンプモータ、エアポンプ53のポンプモータ、循環ポンプ64のポンプモータ、着火ヒータ25、電磁弁82のソレノイドなどへの各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。また、制御装置90には、無線式または有線式の通信回線を介して図示しないリモコンが接続される。制御装置90は、燃料電池システム10のユーザにより操作された当該リモコンからの信号に基づいて各種制御を実行する。
次に、こうして構成された燃料電池システム10の動作について説明する。制御装置90のCPU91は、システム起動が要求されると、脱硫器38に燃料成分を吸着させる燃料吸着処理や、発電モジュール20内をエアの供給によってパージするパージ処理、燃焼器24に燃料とエアとを供給してその混合ガスを着火させる着火処理、気化器22に原燃料ガスと改質水とを供給して改質器23において水蒸気改質反応を生起させる水蒸気改質処理を順次実行してシステムを起動する。
システム起動が完了すると、CPU91は、システムに要求される要求発電出力に応じた目標電流が燃料電池スタック21から出力されるよう原燃料ガス、改質水およびエアの供給量を制御して発電を開始する。原燃料ガスの供給量の制御は、目標電流Itagに応じたガス流量を燃料利用率Ufに基づいて増加側に補正した目標ガス流量Fgtagを設定し、流量センサ39により検出されるガス流量Fgが設定した目標ガス流量Fgtagに一致するようガスポンプ36を制御することにより行なわれる。改質水の供給量の制御は、改質器23におけるスチームカーボン比SC(原燃料ガス中の炭化水素に含まれる炭素と水蒸気改質のために添加される水蒸気とのモル比)が予め定められた目標比SCtagに一致するよう目標ガス流量Fgtagに基づいて目標改質水流量Fwtagを設定し、設定した目標改質水流量Fwtagの改質水が供給されるよう改質水ポンプ43を制御することにより行なわれる。エアの供給量の制御は、温度センサ97により検出される温度(スタック相関温度)T4が予め定められた目標温度T4tagに一致するようフィードバック制御により目標エア流量Fatagを設定し、設定した目標エア流量Fatagのエアが供給されるようエアポンプ53を制御することにより行なわれる。
システム停止が要求されると、CPU91は、温度センサ97により検出される温度(スタック相関温度)T4が停止許可温度以下になるまで、高温雰囲気下において燃料電池スタック21(電極)が酸化劣化しない程度の流量(一定流量)を目標ガス流量Fgtagに設定してガスポンプ36を制御すると共に燃料電池スタック21を冷却するのに必要な流量(一定流量)を目標エア流量Fatagに設定してエアポンプ53を制御する。そして、温度T4が停止許可温度以下になると、ガスポンプ36やエアポンプ53を停止して、システムを停止させる。システムの停止が完了すると、温度センサ97により検出される温度T4を停止時温度TstopとしてRAM93あるいは不揮発性メモリに記憶しておく。
次に、システム起動処理、特に燃料吸着処理の詳細について説明する。図2は、制御装置90のCPU91により実行されるシステム起動処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、システム起動が要求されたときに実行される。
システム起動処理が実行されると、制御装置90のCPU91は、まず、発電モジュール20内に設置された温度センサ95,96,97からの温度T1,T2,T4のいずれもが所定温度Tref未満であるか否かを判定する(ステップS100)。所定温度Trefは、発電モジュール20に原燃料ガスを供給した場合に、原燃料ガスから炭素が析出するおそれのある温度範囲の下限付近に定められている。温度T1,T2,T4のいずれかが所定温度Tref以上であると判定すると、発電モジュール20の内部がエアによって冷却されるようエアポンプ53を制御して(ステップS120)、ステップS110に戻る。
ステップS110において温度T1,T2,T4のいずれもが所定温度Tref未満であると判定すると、燃料吸着制御を開始する。燃料吸着制御では、まず、本燃料電池システム10の還流装置80が電磁弁82を備える仕様のものか否かを判定する(ステップS130)。上述したように、燃料電池システム10は、還流装置80が電磁弁82を備える仕様のものと電磁弁82を備えない仕様のものとがあり、システム起動処理は、いずれの仕様であっても、共通のプログラムを用いて実行される。
本燃料電池システム10が電磁弁82を備えない仕様のシステムであると判定すると、原燃料ガスの供給量に対する還流装置80により還流される還流量の割合である還流率(リサイクル率)γに所定比率αを設定する(ステップS140)。所定比率αは、予め実験により計測した値が定められる。続いて、温度センサ97により検出される温度(スタック相関温度)T4を起動時温度Tstartとして取得すると共に、前回のシステム停止時に記憶した停止時温度Tstopを取得し(ステップS150)、停止時温度Tstopと起動時温度Tstartとに基づいて燃料吸着処理において脱硫器38に吸着させるべき燃料の必要量(必要吸着量A)を設定する(ステップS160)。必要吸着量Aの設定は、起動時温度Tstartに基づいてシステム起動時の脱硫器38における燃料の飽和吸着量を導出すると共に停止時温度Tstopに基づいて前回のシステム停止時の脱硫器38における燃料の飽和吸着量を導出し、両者の差分をとることにより行なわれる。飽和吸着量は、図3のマップを用いて導出することができる。
次に、原燃料ガスの燃料種を取得し(ステップS170)、取得した燃料種に基づいて破過率kを設定する(ステップS180)。破過率kは、脱硫器38に流入する燃料に対して脱硫器38に吸着されることなく通過する燃料の割合を示し、燃料種と破過率との関係を予め実験などにより求めてROM92に記憶しておき、燃料種が与えられると、記憶した関係から破過率を導出するものとした。なお、燃料種は、製品の出荷前に予め入力されたものを取得してもよいし、周知の推定方法(例えば国際公開第2013/111777号公報)を用いて推定したものを取得するようにしてもよい。
こうして還流率γと必要吸着量Aと破過率kとを設定すると、これらに基づいて単位時間当りに燃料供給量Fで原燃料ガスを供給した場合に脱硫器38への燃料の吸着が飽和状態に達するまでの所要時間である吸着所要時間Qを次式(1)により算出する(ステップS180)。式(1)中、「F×γ」は、燃料供給量Fで燃料を供給した場合に還流配管81を介して還流される燃料の量、すなわち還流量を示す。そして、燃料供給量Fを目標ガス流量Fgtagに設定してガスポンプ36を制御することで原燃料ガスの供給を開始すると共に(ステップS190)、タイマ94をスタートさせて(ステップS200)、吸着所要時間Qが経過するのを待つ(ステップS210)。吸着所要時間Qが経過したと判定すると、上述したパージ処理、着火制御へ移行して(ステップS230)、システム起動処理を終了する。
Q=A/[(F+F×γ)×k] …(1)
ステップS130において、本燃料電池システム10が電磁弁82を備える仕様のシステム(図1に示すシステム)であると判定すると、電磁弁82を開弁すると共に(ステップS240)、還流率γに電磁弁82を開弁したときの比率として予め実験などにより定められた所定比率βを設定する(ステップS250)。そして、上述したステップS150~S220と同様のステップS260~S330により、吸着所要時間Qを設定すると共に設定した吸着所要時間Qに達するまで燃料供給量Fで原燃料ガスを供給し、吸着所要時間Qに達すると、脱硫器38への燃料吸着が完了したと判断し、電磁弁83を閉弁すると共に(ステップS340)、上述したパージ処理、着火制御へ移行して(ステップS230)、システム起動処理を終了する。
以上説明した本実施形態の燃料電池システム10では、システムの起動が要求されたとき、脱硫器38の必要吸着量Aを単位時間当りの燃料供給量Fとこの燃料供給量Fに還流率γを乗じてえられる還流量との和の流量で除した値に基づいて吸着所要時間Qを算出する。そして、吸着所要時間Qが経過するまで燃料供給量Fで原燃料ガスが供給されるようガスポンプ36を制御する燃料吸着制御を実行し、吸着所要時間Qが経過すると、パージ制御を経て着火制御を実行する。燃料の一部を原燃料ガス供給管31に還流させるため、脱硫器38に吸着されなかった燃料を脱硫器38に再度流入させることができ、燃料吸着制御において燃料の消費を抑制して省エネルギ性を向上させることができる。また、燃料の還流量を加味して吸着所要時間Qを設定するため、燃料吸着制御の所要時間を短縮でき、ひいてはシステムの起動時間を短縮することができる。これらの結果、簡易な構成によりシステム起動時の燃料の消費を抑制し且つ起動時間を短縮することができる燃料電池システムとすることができる。
また、本実施形態の燃料電池システム10では、還流配管81に電磁弁82を備え、システム起動する際に、電磁弁82を開弁してから燃料吸着制御を実行し、燃料吸着制御が終了すると、電磁弁82を閉弁して着火制御へ移行する。これにより、燃料吸着制御において燃料の消費を抑制しつつ、着火制御において燃焼器24への未使用燃焼の供給を素早く行なうことができる。
さらに、本実施形態の燃料電池システム10では、燃料吸着制御において、燃料種を取得し、取得した燃料種に基づいて破過率kを設定して吸着所要時間Qを算出する。これにより、燃料種に拘わらず脱硫器38への燃料吸着の最適な吸着所要時間Qを算出することができる。
上述した実施形態では、還流配管81の一端は、アノードオフガス配管74の熱交換器62と燃焼器24との間に接続されたが、アノードガス配管71の改質器23と燃料電池スタック21との間に接続されてもよい。また、還流配管81の他端は、原燃料ガス供給管31のゼロガバナ35とガスポンプ36との間に接続されるものとしたが、ガスポンプ36と脱硫器38との間に接続されてもよい。
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池スタック21が「燃料電池」に相当し、改質器23が「改質部」に相当し、燃焼器24が「燃焼部」に相当し、発電モジュール20が「発電モジュール」に相当し、脱硫器38が「脱硫器」に相当し、原燃料ガス供給装置30が「原燃料ガス供給装置」に相当し、エア供給装置50が「カソードガス供給装置」に相当し、還流配管81が「還流路」に相当し、制御装置90が「制御装置」に相当する。また、電磁弁82が「電磁弁」に相当する。また、温度センサ95,96,97が「温度センサ」に相当する。
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
1 原燃料供給源、10 燃料電池システム、20 発電モジュール、21 燃料電池スタック、22 気化器、23 改質器、24 燃焼器、25 着火ヒータ、26,27 熱交換器、28 燃焼触媒、29 モジュールケース、30 原燃料ガス供給装置、31 原燃料ガス供給管、32,33 開閉弁、34 オリフィス、35 ゼロガバナ、36 ガスポンプ、38 脱硫器、39 流量センサ、40 改質水供給装置、41 改質水供給管、42 改質水タンク、43 改質水ポンプ、44 凝縮水配管、50 エア供給装置、51 エア供給管、52 エアフィルタ、53 エアポンプ、60 排熱回収装置、61 貯湯タンク、62 凝縮器、63 循環配管、64 循環ポンプ、71 アノードガス配管、72 カソードガス配管、73,74 アノードオフガス配管、75 カソードオフガス配管、76 燃焼排ガス配管、80 還流装置、81 還流配管、81 電磁弁、82 オリフィス、90 制御装置、91 CPU、92 ROM、93 RAM、94 タイマ、95,96,97 温度センサ。
Claims (4)
- アノードガスとカソードガスとに基づいて発電する燃料電池と、原燃料ガスを改質して前記アノードガスを生成する改質部と、前記燃料電池で使用されなかった未使用燃料を燃焼させる燃焼部と、を含む発電モジュールと、
前記原燃料ガスに含まれる硫黄成分を脱硫して前記改質部へ供給する脱硫器と、
原燃料ガス供給路を介して原燃料ガス供給源からの前記原燃料ガスを前記脱硫器へ供給する原燃料ガス供給装置と、
前記燃料電池に前記カソードガスを供給するカソードガス供給装置と、
前記改質部よりも後段を流れる燃料の一部を前記原燃料ガス供給路に還流させる還流路と、
システムの起動が要求されたとき、前記脱硫器に吸着させるべき燃料の必要量を単位時間当りの前記原燃料ガスの供給量と該供給量に所定の還流率を乗じて得られる還流量との和の流量で除して前記脱硫器への燃料の吸着が飽和状態に達するまでに要する所要時間を設定し、前記供給量で前記原燃料ガスが供給されるよう前記原燃料ガス供給装置を制御する燃料吸着制御を実行し、前記所要時間が経過した後、前記燃焼部に供給される前記未使用燃料に着火する着火制御を実行する制御装置と、
を備える燃料電池システム。 - 請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記還流路に設けられた電磁弁を備え、
前記制御装置は、前記電磁弁を開弁して前記燃料吸着制御を行ない、前記燃料吸着制御が完了すると、前記電磁弁を閉弁してから前記着火制御を実行する、
燃料電池システム。 - 請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記原燃料ガスの燃料種を取得し、該取得した燃料種に基づいて前記所要時間を調整する、
燃料電池システム。 - 請求項1ないし3いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記発電モジュールの内部に設けられた温度センサを備え、
前記制御装置は、前記システムの起動が要求されたときに前記温度センサにより検出された温度が所定温度以上である場合には、前記カソードガスにより前記発電モジュール内が冷却されるよう前記カソードガス供給装置を制御してから前記燃料吸着制御を実行する、
燃料電池システム。
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