JP2022182679A - 保護制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】多端子系統の送電線を適切に保護することが可能な保護制御システムを提供する。【解決手段】保護制御システムは、第1端~第3端にそれぞれ設けられた第1~第3保護制御装置を備える。第3保護制御装置は、第1保護制御装置に含まれる第1方向リレー要素による判定結果を受信する第1受信部と、第2保護制御装置に含まれる第2方向リレー要素による判定結果を受信する第2受信部と、第3送電線の第3端の電流と第3母線の電圧とに基づいて、事故方向を判定する第3方向リレー要素と、第3送電線の第3端の電流および第4送電線の第3端の電流の和電流と、第3母線の電圧とに基づいて、事故方向を判定する第4方向リレー要素と、第1送電線の事故の発生の有無を判定する事故判定部とを含む。規定条件が成立する場合に、事故判定部は、第1分岐点と第3遮断器との間で事故が発生したと判定する。【選択図】図6
Description
本開示は、保護制御システムに関する。
変電所等の電気所構内では、送電線に発生する短絡事故、地絡事故等の保護リレーにより事故を検出し、遮断等で事故による影響を最小限にしている。特開2007-318951号公報(特許文献1)は、各送電線の後備保護をする総合後備保護機能付き母線保護継電装置を開示している。
特許文献1に係る母線保護継電装置は、単母線または複母線により電力供給をする際に各送電線の後備保護をする構成については開示されているが、3端子等の多端子系統の送電線を保護するための手段については何ら開示されていない。
本開示のある局面における目的は、多端子系統の送電線を適切に保護することが可能な保護制御システムを提供することである。
ある実施の形態に従う保護制御システムは、電源端である第1端に設けられた第1母線と、非電源端である第2端に設けられた第2母線とを接続する第1送電線および第2送電線と、第3端に設けられた第3母線と、第1送電線上の第1分岐点とを接続する第3送電線と、第3母線と、第2送電線上の第2分岐点とを接続する第4送電線と、第1送電線の第1端側および第2送電線の第1端側にそれぞれ設けられた第1遮断器および第2遮断器と、第1送電線の第2端側および第2送電線の第2端側にそれぞれ設けられた第3遮断器および第4遮断器と、第3送電線の第3端側および第4送電線の第3端側にそれぞれ設けられた第5遮断器および第6遮断器と、第1端~第3端にそれぞれ設けられた第1~第3保護制御装置とを備える。第3保護制御装置は、第1保護制御装置に含まれる第1方向リレー要素による判定結果を受信する第1受信部と、第2保護制御装置に含まれる第2方向リレー要素による判定結果を受信する第2受信部と、第3送電線の第3端の電流と第3母線の電圧とに基づいて、事故方向を判定する第3方向リレー要素と、第3送電線の第3端の電流および第4送電線の第3端の電流の和電流と、第3母線の電圧とに基づいて、事故方向を判定する第4方向リレー要素と、第1送電線の事故の発生の有無を判定する事故判定部とを含む。第1遮断器および第3~第6遮断器の各々が閉成されており、第2遮断器が開放されている場合であって、かつ第1~第3条件の各々が成立する場合に、事故判定部は、第1分岐点と第3遮断器との間で事故が発生したと判定する。第1条件は、第1方向リレー要素が、第1送電線の第1端の電流と第1母線の電圧とに基づいて、第1母線から第1送電線の方向に事故が発生したと判定することである。第2条件は、第2方向リレー要素が、第1送電線の第2端の電流と第2母線の電圧とに基づいて、第2母線から第1送電線の方向に事故が発生したと判定することである。第3条件は、第3方向リレー要素が、第3送電線から第3母線の方向に事故が発生したと判定し、かつ、第4方向リレー要素が、第3母線から送電線方向に事故が発生したと判定することである。
本開示によると、多端子系統の送電線を適切に保護することができる。
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<全体構成>
図1は、保護制御システムの構成を示すブロック図である。図1を参照して、保護制御システム100は、平行2回線の3端子系統の送電線を保護するためのシステムである。なお、保護制御システム100は、4端子以上の多端子系統の送電線を保護するように構成されていてもよい。
図1は、保護制御システムの構成を示すブロック図である。図1を参照して、保護制御システム100は、平行2回線の3端子系統の送電線を保護するためのシステムである。なお、保護制御システム100は、4端子以上の多端子系統の送電線を保護するように構成されていてもよい。
保護制御システム100は、A端電気所(例えば、変電所)1Aと、B端電気所1Bと、C端電気所1Cとを含む。具体的には、A端電気所1Aは、送電線L1,L2のA端に設けられる。B端電気所1Bは、送電線L1,L2のB端に設けられる。C端電気所1Cは、送電線L3,L4のC端に設けられる。送電線L3は、送電線L1上の分岐点P1から分岐された分岐線である。送電線L4は、送電線L2上の分岐点P2から分岐された分岐線である。なお、各送電線L1~L4は3相送電線であるとする。
送電線L1は、A端に設けられた母線91aと、B端に設けられた母線91bとを接続する。送電線L2は、母線92aと、母線92bとを接続する。送電線L3は、分岐点P1と母線91cとを接続する。送電線L4は、分岐点P2と母線92cとを接続する。各端子の母線91a,91b,91cを接続するT字状の1号線は、送電線L1および送電線L3で構成されている。各端子の母線92a,92b,92cを接続するT字状の2号線は、送電線L2および送電線L4で構成されている。
保護制御システム100は、A端電気所1A内において、統合ユニット(マージングユニット:Merging Unit(MU))とも称される電気量を取得する複数のMU2a~2f(以下、「MU2A」とも総称する。)と、IED(Intelligent Electronic Device)とも称される保護制御装置5Aとを含む。保護制御システム100は、さらに、電流変成器11a~14aと、遮断器21a~23aと、電圧変成器81a,82aと、母線91a,92aとを含む。
保護制御システム100は、B端電気所1B内において、保護制御装置5Bと、MU2h~2m(以下、「MU2B」とも総称する。)と、電流変成器11b~14bと、遮断器21b~23bと、電圧変成器81b,82bと、母線91b,92bとを含む。
保護制御システム100は、C端電気所1C内において、保護制御装置5Cと、電流変成器11c,12cと、遮断器21c~23cと、電圧変成器81c,82cと、母線91c,92cとを含む。なお、図解の容易化のため、C端電気所1C内においては、電流変成器13a,14aに対応する電流変成器と、各電流変成器および各電圧変成器に対応するMUとは図示されていない。
保護制御装置5A,5B,5Cは、互いに通信可能に構成されている。保護制御装置5Aは、プロセスバスを介して、各MU2Aと通信する。保護制御装置5Bは、プロセスバスを介して、各MU2Bと通信する。保護制御装置5Cは、プロセスバスを介して、図示しない各MUと通信する。
A端電気所1Aにおいて、電流変成器11aは送電線L1のA端における電流I1aを検出し、電流変成器12aは送電線L2のA端における電流I2aを検出する。電流変成器13aは、母線91aの電流I3aを検出し、電流変成器14aは母線92aの電流I4aを検出する。電圧変成器81aは母線91aの電圧V1aを検出し、電圧変成器82aは母線92aの電圧V2aを検出する。
MU2eは、電流変成器11aで検出された電流I1aを取得する。具体的には、MU2eは、規定のサンプリング周期でサンプリングし、サンプリングした電流I1aをA/D(Analog to Digital)変換する。MU2eは、A/D変換後の電流I1aのデジタル値を、保護制御装置5Aに出力する。以下、同様に、MU2b,2c,2fは、それぞれ電流I3a,I4a,I2aのデジタル値を保護制御装置5Aに出力する。MU2a,2dは、それぞれ電圧V1a,V2aのデジタル値を保護制御装置5Aに出力する。
遮断器21aは送電線L1のA端側に設けられ、遮断器22aは送電線L2のA端側に設けられる。遮断器23aは、母線91a,92bに設けられる。具体的には、遮断器23aは、母線91aと母線92aとを接続するブスタイに設けられた母線連絡用遮断器(すなわち、ブスタイ遮断器)である。
B端電気所1Bにおいて、電流変成器11bは送電線L1のB端における電流I1bを検出し、電流変成器12bは送電線L2のB端における電流I2bを検出する。電流変成器13bは、母線91bの電流I3bを検出し、電流変成器14bは母線92bの電流I4bを検出する。電圧変成器81bは母線91bの電圧V1bを検出し、電圧変成器82bは母線92bの電圧V2bを検出する。MU2h,2i,2k,2lは、それぞれ電流I1b,I2b,I3b,I4bのデジタル値を、保護制御装置5Bに出力する。MU2j,2mは、それぞれ電圧V1b,V2bのデジタル値を保護制御装置5Bに出力する。
遮断器21bは送電線L1のB端側に設けられ、遮断器22bは送電線L2のB端側に設けられる。遮断器23bは、母線91bと母線92bとを接続するブスタイに設けられた母線連絡用遮断器である。
C端電気所1Cにおいて、電流変成器11cは送電線L3のC端における電流I1cを検出し、電流変成器12cは送電線L4のC端における電流I2cを検出する。電圧変成器81cは母線91cの電圧V1cを検出し、電圧変成器82cは母線92cの電圧V2cを検出する。電流I1c,I2cおよび電圧V1c,V2cのデジタル値は、対応するMUにより保護制御装置5Cに出力される。
遮断器21cは送電線L3のC端側に設けられ、遮断器22cは送電線L4のC端側に設けられる。遮断器23cは、母線91cと母線92cとを接続するブスタイに設けられた母線連絡用遮断器である。
A端に設けられた保護制御装置5Aは、各MU2Aから取得した電気量データ(例えば、電流I1a~I4aのデータ、電圧V1a,V2aのデータ)を用いてリレー演算を実行する。B端に設けられた保護制御装置5Bは、各MU2Bから取得した電気量データ(例えば、電流I1b~I4bのデータ、電圧V1b,V2bのデータ)を用いてリレー演算を実行する。C端に設けられた保護制御装置5Cは、各MUから取得した電気量データ(例えば、電流I1c,I2cのデータ、電圧V1c,V2cのデータ)を用いてリレー演算を実行する。
保護制御装置5Aは、保護制御装置5B,5Cで実行されたリレー演算結果および他の情報を受信する。他の情報は、各端電気所に設けられた遮断器の開閉情報、各端子が電源端であるか非電源端であるかを示す電源情報等を含む。各端子の電源情報は、例えば、各端子に設けられた保護制御装置5の内部メモリに記憶されている。保護制御装置5Aは、自装置で実行したリレー演算結果、他の保護制御装置5B,5Cから受信したリレー演算結果、各遮断器の開閉情報、および電源情報等に基づいて、保護対象に事故が発生したか否かを判定する。保護制御装置5B,5Cにおいても同様の事故判定が行われる。例えば、各保護制御装置5A~5Cは、T字状の1号線(すなわち、送電線L1および送電線L3)において事故が発生したと判定した場合、遮断器21a~21cを開放することにより事故電流を遮断する。本実施の形態においては、3端子系統における各送電線L1~L4の保護に着目して説明を行なう。
<外部流出電流について>
図2は、3端子系統で発生する外部流出電流を説明するための図である。図2では、図解の容易化のため、電流変成器、電圧変成器、遮断器、MU、保護制御装置は図示されていない。なお、以下の説明では、A端に設けられた母線91a,92aを母線90aと総称し、B端に設けられた母線91b,92bを母線90bと総称し、C端に設けられた母線91c,92cを母線90cと総称する場合がある。
図2は、3端子系統で発生する外部流出電流を説明するための図である。図2では、図解の容易化のため、電流変成器、電圧変成器、遮断器、MU、保護制御装置は図示されていない。なお、以下の説明では、A端に設けられた母線91a,92aを母線90aと総称し、B端に設けられた母線91b,92bを母線90bと総称し、C端に設けられた母線91c,92cを母線90cと総称する場合がある。
図2を参照して、母線90aには電源7(例えば、3相交流電源)が接続されており、他の母線90b,90cには電源が接続されていない。具体的には、A端は電源端であり、B端およびC端は非電源端である。また、送電線L2のA端側に設けられた遮断器22aが開放されており、他の遮断器21a~21c,22b,22cは閉成されている。このような場合に、送電線L1のB端近傍の事故点F1で事故(例えば、短絡事故または地絡事故)が発生したものとする。
事故点F1での事故の発生に伴って、事故電流が図2の矢印方向に流れる。具体的には、事故電流は、電源端であるA端の母線90a(この場合、母線91a)から送電線L1の方向に流れ、分岐点P1において分流される。分流された事故電流の一方は、送電線L1上の事故点F1に流れ込む。事故電流の他方は、送電線L3、母線90c(具体的には、母線91c、92c)、送電線L4、分岐点P2、母線90b(具体的には、母線92b,91b)、送電線L1の順の経路で、事故点F1に流れ込む。
事故点F1は、保護対象である送電線L1における事故であり、保護対象区間内の事故であるため、各保護制御装置5A~5Cにおいて当該事故を検出し、対応する遮断器を開放して事故を除去する必要がある。
ここで、各保護制御装置5A~5Cは、一定以上の電流を検出し、かつ当該電流の電圧に対する位相に基づいて、事故方向を判定する方向リレー要素を備えている。典型的には、方向リレー要素の判定方式は、図3のような特性図を用いて行われる。
図3は、方向リレー要素の位相特性図の一例を示す図である。図3の例では、短絡方向リレー要素の位相特性図を示している。ここでは、保護制御装置5Aに含まれる、1号線を保護するための短絡方向リレー要素について説明する。この場合、短絡方向リレー要素は、電流I1aおよび電圧V1aに基づいて、リレー演算を実行する。
電流I1aにおけるU相電流、V相電流、W相電流をそれぞれIu、Iv、Iwとし、電圧V1aにおけるU相電圧、V相電圧、W相電圧をそれぞれVu、Vv、Vwとする。U相電流IuおよびV相電流Ivに基づいてUV相の線間電流Iuv(=Iu-Iv)が算出される。同様に、VW相の線間電流Ivw、WU相の線間電流Iwuが算出される。また、U相電圧VuおよびV相電圧Vvに基づいてUV相の線間電圧Vuv(=Vu-Vv)が算出される。同様に、VW相の線間電圧Vvw、WU相の線間電圧Vwuが算出される。
図3の例では、線間電圧Vuvの位相に対する線間電流Iuvの位相θの特性が示されている。領域Riは、円400と直線401とによって囲まれた領域であり、領域Reは、円400と直線401によって囲まれた斜線領域である。円400は、過電流として検出される最小感度の電流値を半径とする円である。
線間電流Iuvのベクトルが領域Ri内に存在する場合、短絡方向リレー要素は、内部方向においてUV相の短絡事故が発生したと判定する。内部方向とは、母線から送電線の方向を示している。具体的には、線間電流Iuvの絶対値が閾値Th1(例えば、円400の半径)以上であって、かつ線間電流Iuvの位相θが範囲G1(例えば、(360°-φ)≦θ≦360°および0°≦φ≦(180°-φ))に含まれる場合に、短絡方向リレー要素は、母線90aから送電線L1の方向においてUV相の短絡事故が発生したと判定する。
一方、線間電流Iuvのベクトルが領域Re内に存在する場合、短絡方向リレー要素は、外部方向においてUV相の短絡事故が発生したと判定する。外部方向とは、送電線から母線の方向を示している。具体的には、線間電流Iuvの絶対値が閾値Th1以上であって、かつ線間電流Iuvの位相θが範囲G2内(例えば、(180°-φ)<θ<(360°-φ))に含まれる場合に、短絡方向リレー要素は、送電線L1から母線90aの方向においてUV相の短絡事故が発生したと判定する。
図3の例では、短絡方向リレー要素の特性図について説明したが、地絡方向リレー要素の特性図についても同様である。地絡方向リレー要素の場合、各相電流Iu,Iv,Iwから零相電流I0が算出され、各相電圧Vu,Vv,Vwから零相電圧V0が算出される。I0=(Iu+Iv+Iw)/3で定義され、V0=(Vu+Vv+Vw)/3で定義される。地絡方向リレー要素は、零相電流I0の絶対値と、零相電圧V0の位相に対する零相電流I0の位相θxとに基づいて、内部方向および外部方向の地絡事故の有無を判定する。
例えば、零相電流I0の絶対値が閾値Th2以上であって、かつ零相電流I0の位相θxが範囲G3内(例えば、0°≦θ≦90°および270°≦θ≦360°)に含まれる場合に、地絡方向リレー要素は、母線90aから送電線L1の方向(すなわち、内部方向)において地絡事故が発生したと判定する。一方、零相電流I0の絶対値が閾値Th2以上であって、かつ零相電流I0の位相θxが範囲G4内(例えば、90°<θ<270°)に含まれる場合に、地絡方向リレー要素は、送電線L1から母線90aの方向(すなわち、外部方向)において地絡事故が発生したと判定する。
上記では、保護制御装置5Aにおける方向リレー要素の判定方式について説明したが、保護制御装置5B,5Cにおける方向リレー要素においても同様の判定方式により、短絡事故および地絡事故の方向が判定される。
ここで、事故電流が図2のように流れる場合に、各保護制御装置5A~5Cの方向リレー要素の判定結果を用いて事故点F1の事故を適切に検出できるか否かを考察する。
A端においては、事故電流は母線91aから送電線L1の方向に流れる。そのため、保護制御装置5Aにおける1号線を保護するための方向リレー要素は、送電線L1のA端の電流I1aおよび母線91aの電圧V1aを用いて、母線91aから送電線L1の方向(すなわち、内部方向)に事故が発生したと判定する。また、B端においては、事故電流は母線91bから送電線L1の方向に流れる。そのため、保護制御装置5Bにおける1号線を保護するための方向リレー要素は、送電線L1のB端の電流I1bおよび母線91bの電圧V1bを用いて、母線91bから送電線L1の方向(すなわち、内部方向)に事故が発生したと判定する。
しかし、C端においては、事故電流は送電線L3から母線91cの方向に流れる。そのため、保護制御装置5Cにおける1号線を保護するための方向リレー要素は、送電線L3のC端の電流I1cおよび母線91cの電圧V1cを用いて、送電線L3から母線91cの方向(すなわち、外部方向)に事故が発生したと判定する。
典型的な判定方式として、1号線を保護するために設けられた、各保護制御装置5A~5Cにおける方向リレー要素の判定結果に基づいて、最終的な事故判定がなされる方式が知られている。この判定方式によると、各保護制御装置5A~5Cにおけるすべての方向リレー要素が内部方向に事故が発生したと判定した場合に、保護対象であるT字状の1号線に事故が発生したと最終的に判定される。
図2の例のように、遮断器22aが開放されている状態で事故点F1で事故が発生した場合、上述したように、保護制御装置5A,5Bにおける方向リレー要素は、内部方向に事故が発生したと判定するが、保護制御装置5Cにおける方向リレー要素は、外部方向に事故が発生したと判定する。その結果、この判定方式によると、実際には保護対象である1号線で事故が発生しているにも関わらず、当該事故は発生していないと誤判定されてしまう。したがって、図2のようなケースの場合には、単に、各保護制御装置5A~5Cの方向リレー要素の判定結果を組み合わせるだけでは、適切な事故判定が実行されないことが理解される。
なお、図2において仮に、遮断器22aが閉成状態であった場合には、B端から事故点F1に流れる事故電流は、送電線L2、母線90b(具体的には、母線92b、母線91b)、送電線L1の順の経路で事故点F1に流れ込むため、C端を経由しない。したがって、保護制御装置5Cにおける方向リレー要素は、少なくとも外部方向に事故が発生したと判定することなく、上記判定方式においても誤判定は発生しない。
<電源および電流の関係>
図2においては、A端が電源端であり、B端およびC端が非電源端である構成について説明した。ここでは、A端が電源端およびB端が非電源端である場合に、C端が電源端か否かに応じて、電流I1c,I2cと、電流I1cおよび電流I2cの和電流I12c(=I1c+I2c)とがどのように変化するのかを説明する。以下の説明では、電流I1c,I2cおよび和電流I12cをC端電流とも総称する。
図2においては、A端が電源端であり、B端およびC端が非電源端である構成について説明した。ここでは、A端が電源端およびB端が非電源端である場合に、C端が電源端か否かに応じて、電流I1c,I2cと、電流I1cおよび電流I2cの和電流I12c(=I1c+I2c)とがどのように変化するのかを説明する。以下の説明では、電流I1c,I2cおよび和電流I12cをC端電流とも総称する。
図4は、C端電源とC端電流の関係を説明するための図である。図2のように、遮断器22aが開放され、他の各遮断器21a,21b,22b,21c,22cは閉成されている場合に、事故点F1で事故が発生したものとする。
図4のグラフの縦軸は、送電線L1のA端側で検出される電流I1a(図中の「A端電流」に対応)の大きさ(例えば、絶対値)に対するC端電流の大きさの割合を示している。以下、電流Iの大きさを|I|と記載する。図4のグラフの横軸は、A端電源容量(例えば、図2の電源7の容量)に対するC端電源容量の割合を示している。C端が非電源端である場合には当該割合は0%であり、C端がA端と同容量の電源端である場合には当該割合は100%であり、C端がA端電源容量の2倍の容量を有する電源端である場合には当該割合は200%である。
図4を参照して、状態X1では、C端が非電源端である。状態X2では、C端電源容量の割合が0%よりも大きく、100%よりも小さい。状態X3では、C端電源容量の割合が100%である。
C端が非電源端である状態X1は、図2の例と同様の状態である。この場合、電流I1cは外部方向(すなわち、送電線から母線の方向)に流れ、|I1c|は|I1a|の50%となる。電流I2cは内部方向(すなわち、母線から送電線の方向)に流れ、|I2c|は|I1a|の50%となる。電流I1cおよび電流I2cは打ち消し合うため、|I12c|はゼロ(すなわち、|I1a|の0%)となる。
状態X2においては、C端は電源端であり、その電源容量はA端電源容量よりも小さい。そのため、電流I1cは外部方向に流れ、|I1c|は|I1a|の50%未満となる。電流I2cは内部方向に流れ、|I2c|は|I1a|の50%となる。和電流I12cの方向は内部方向となり、|I12c|は|I1a|の50%未満となる。
状態X3においては、C端は電源端であり、その電源容量はA端電源容量と同じである。この場合、A端側から分岐点P1を介して送電線L3からC端に流入する電流と、C端側から送電線L3に流出する電流とが打ち消し合うため、|I1c|はゼロ(すなわち、|I1a|の0%)となる。電流I2cは内部方向に流れ、|I2c|は|I1a|の50%となる。和電流I12cの方向は内部方向となり、|I12c|は|I1a|の50%となる。
状態X4においては、C端は電源端であり、その電源容量はA端電源容量よりも大きい。この場合、電流I1c,I2cおよび和電流I12cの方向は内部方向となる。
上記より、C端の電源容量がA端電源容量よりも大きい場合(すなわち、状態X4の場合)には、電流I1cの方向が内部方向となる。そのため、各保護制御装置5A~5Cの方向リレー要素の判定結果を組み合わせることで、事故点F1を内部事故であると判定できる。一方、C端の電源容量がA端電源容量以下である場合(すなわち、状態X1~X3の場合)には、電流I1cの方向が外部方向であるか、または|I1c|がゼロになるため、各保護制御装置5A~5Cの方向リレー要素の判定結果を組み合わせるだけでは、事故点F1を内部事故であると判定することはできない。
本実施の形態に係る保護制御システム100は、状態X1~X3の場合においても、事故点F1を保護対象区間内の事故であると適切に判定するように構成されている。その詳細については、後述する。
<MUおよび保護制御装置のハードウェア構成>
以下、図1のMU2a~2f,2h~2m(以下、「MU2」とも総称する。)および保護制御装置5A,5B,5C(以下、「保護制御装置5」とも総称する。)が、マイクロコンピュータに基づいて構成されている例について説明する。
以下、図1のMU2a~2f,2h~2m(以下、「MU2」とも総称する。)および保護制御装置5A,5B,5C(以下、「保護制御装置5」とも総称する。)が、マイクロコンピュータに基づいて構成されている例について説明する。
以下の例と異なり、MU2および保護制御装置5は、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの電子回路に基づいて構成されていてもよい。もしくは、MU2および保護制御装置5は、FPGAまたはASICなどの電子回路とマイクロコンピュータとを組み合わせることによって構成されていてもよい。
図5は、MU2および保護制御装置5のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図5を参照して、MU2は、補助変成器32と、A/D変換部35と、演算処理部40と、インターフェイス部50とを含む。
補助変成器32は、電流変成器および電圧変成器からの電気量を取り込み、リレー内部回路での信号処理に適した電圧に変換して出力する。A/D変換部35は、補助変成器32から出力される電圧を取り込んでデジタルデータに変換する。具体的には、A/D変換部35は、アナログフィルタと、サンプルホールド回路と、マルチプレクサと、A/D変換器とを含む。
アナログフィルタは、補助変成器32から出力される電流の波形信号から高周波のノイズ成分を除去する。サンプルホールド回路は、アナログフィルタから出力される電流の波形信号を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。マルチプレクサは、演算処理部40から入力されるタイミング信号に基づいて、サンプルホールド回路から入力される波形信号を時系列で順次切り替えてA/D変換器に入力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力される波形信号をアナログデータからデジタルデータに変換する。A/D変換器は、デジタル変換した波形信号(すなわち、デジタルデータ)を演算処理部40へ出力する。
演算処理部40は、CPU(Central Processing Unit)41と、RAM(Random Access Memory)42と、ROM(Read Only Memory)43とを含む。これらの各要素はバス44を介して相互に接続されている。演算処理部40は、フラッシュメモリなど電気的に書換え可能な不揮発性メモリを含んでいてもよい。RAM42およびROM43は、CPU41の主記憶として用いられる。CPU41は、ROM43および不揮発性メモリに可能されたプログラムに従って、MU2全体の動作を制御する。
インターフェイス部50は、プロセスバスである通信回線52を介して保護制御装置5にデータ送信を行なう通信回路51(図5中の「TX/RX」に対応)を含む。
保護制御装置5は、インターフェイス部61と演算処理部70とを備える。インターフェイス部61は、通信回路62(図5中の「TX/RX1」に対応)と、送受信回路63(図5中の「TX/RX2」に対応)と、デジタル出力回路64(D/O:Digital Output)と、デジタル入力回路65(D/I:Digital input)とを含む。
通信回路62は、MU2の通信回路51から出力され、通信回線52を介して送信されたデータを受信する。送受信回路63は、例えば、ステーションバスと称する通信回線を介して上位の計算機との間で規定のプロトコルに従った通信を行なう。デジタル出力回路64は、外部機器に信号を出力するためのインターフェイス回路である。例えば、デジタル出力回路64は、CPU71の指令に従って、各遮断器に開放指令(例えば、トリップ信号)を出力する。CPU71は、通信回線52を介して、通信回路62からMU2の通信回路51に遮断器の開放指示を出力する場合もある。この場合、MU2のデジタル出力回路は、遮断器の開放指示に従って、当該遮断器にトリップ信号を出力する。
デジタル入力回路65は、各遮断器の開閉状態を示す開閉情報を各遮断器から受信する。なお、保護制御装置5は、MU2を介して、当該開閉情報を受信する構成であってもよい。
演算処理部70は、CPU71と、RAM72と、ROM73とを備える。これらの各要素はバス74を介して相互に接続されている。演算処理部70は、フラッシュメモリなど電気的に書換え可能な不揮発性メモリを含んでいてもよい。RAM72およびROM73は、CPU71の主記憶として用いられる。CPU71は、ROM73および不揮発性メモリに可能されたプログラムに従って動作する。
<保護制御装置の機能構成>
図6は、保護制御装置5の機能構成を示すブロック図である。保護制御装置5Cは、第1受信部210と、第2受信部220と、方向リレー要素230と、複合判定部240と、事故判定部250とを含む。典型的には、これらの機能は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、図5の演算処理部70の内部メモリ(例えば、RAM72、ROM73)に格納されるプログラムを実行するCPU71であってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA、ASIC、またはこれらを組み合わせたもの等で構成される。なお、保護制御装置5A,5Bも保護制御装置5Cと同様の機能構成を有する。
図6は、保護制御装置5の機能構成を示すブロック図である。保護制御装置5Cは、第1受信部210と、第2受信部220と、方向リレー要素230と、複合判定部240と、事故判定部250とを含む。典型的には、これらの機能は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、図5の演算処理部70の内部メモリ(例えば、RAM72、ROM73)に格納されるプログラムを実行するCPU71であってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA、ASIC、またはこれらを組み合わせたもの等で構成される。なお、保護制御装置5A,5Bも保護制御装置5Cと同様の機能構成を有する。
第1受信部210は、保護制御装置5AからA端に関する各種情報を受信する。A端に関する各種情報は、保護制御装置5Aの方向リレー要素によるリレー判定結果Daと、保護制御装置5Aの複合判定部による複合判定結果Eaと、A端に設けられた遮断器21a,22aの開閉情報と、A端の電源情報とを含む。当該方向リレー要素および当該複合判定部は、それぞれ方向リレー要素230および複合判定部240と同様の機能を有する。電源情報は、例えば、電源端であるか非電源端であるかを示す情報を含む。
第2受信部220は、保護制御装置5BからB端に関する各種情報を受信する。B端に関する各種情報は、保護制御装置5Bの方向リレー要素によるリレー判定結果Dbと、保護制御装置5Bの複合判定部による複合判定結果Ebと、B端に設けられた遮断器21b,22bの開閉情報と、B端の電源情報とを含む。当該方向リレー要素および当該複合判定部は、それぞれ方向リレー要素230および複合判定部240と同様の機能を有する。
方向リレー要素230は、図3で説明した短絡方向リレー要素の機能、および地絡方向リレー要素の機能を含む。方向リレー要素230は、電流I1cおよび電圧V1cに基づいて、1号線における事故(すなわち、短絡事故、地絡事故)の発生の有無および事故方向を判定する。事故方向は、内部方向(この場合、母線90cから送電線L3の方向)または、外部方向(この場合、送電線L3から母線90cの方向)である。同様に、方向リレー要素230は、電流I2cおよび電圧V2cに基づいて、2号線における事故の発生の有無および事故方向を判定する。方向リレー要素230の判定結果をリレー判定結果Dcとも称する。
複合判定部240は、A端に関する開閉情報および電源情報と、B端に関する開閉情報および電源情報と、C端に関する開閉情報および電源情報と、電流I1c,I2cと、電圧V1c,V2cとに基づいて、C端電源とC端電流との関係が規定の状態であるか否かを判定する。例えば、複合判定部240は、C端電源とC端電流との関係が図4の状態X1,X2またはX3であるか否かを判定する。
図7は、複合判定部240のロジックの一部の構成を示す図である。図7を参照して、複合判定部240は、判定器121~132と、ANDゲート141~145と、ORゲート151,152とを含む。ANDゲート145から出力される信号S1は、C端電源およびC端電流の関係が、図4の状態X1または状態X2であるか否かを示す信号である。C端電源およびC端電流の関係が状態X1または状態X2である場合には、信号S1は“1”となり、そうではない場合には信号S1は“0”となる。
判定器121は、電流I1cに基づいて、|I1c|が閾値K1よりも大きいと判定した場合に値“1”を出力し、|I1c|が閾値K1以下であると判定した場合に“0”を出力する。判定器122は、電流I1cおよび電圧V1cに基づいて、電流I1cの方向が外部方向であると判定した場合に値“1”を出力し、内部方向であると判定した場合に“0”を出力する。判定器121,122は、電流I1cおよび電圧V1cに基づいて事故方向を判定する方向リレー要素230の機能に対応する。具体的には、判定器121,122の各々の出力値が“1”であることは、方向リレー要素230が、電流I1cおよび電圧V1cに基づいて、送電線L1から母線90cの方向(すなわち、外部方向)に事故が発生したと判定することに相当する。
判定器123は、C端の開閉情報に基づいて、各遮断器(図中の「CB」に対応)21c,22cが閉成されていると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。判定器124は、電流I1c,I2cに基づいて、|I12c|が閾値K1以下であると判定した場合に値“1”を出力し、|I12c|が閾値K1よりも大きいと判定した場合に“0”を出力する。
判定器125は、電流I1c,I2cに基づいて、|I12c|が閾値K1よりも大きいと判定した場合に値“1”を出力し、|I12c|が閾値K1以下であると判定した場合に“0”を出力する。判定器126は、電流I1c,I2cおよび電圧V1cに基づいて、和電流I12cの方向が内部方向であると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。ANDゲート142は、判定器125の出力値と、判定器126の出力値とのAND演算を行なう。
判定器125,126は、和電流I12cおよび電圧V1cに基づいて事故方向を判定する方向リレー要素(便宜上、「方向リレー要素H」と称する。)の機能に対応する。具体的には、判定器125,126の各々の出力値が“1”である(すなわち、ANDゲート142の出力値が“1”)ことは、方向リレー要素Hが、和電流I12cおよび電圧V1cに基づいて、母線90cから送電線の方向(すなわち、内部方向)に事故が発生したと判定することに相当する。
ORゲート151は、判定器124およびANDゲート142の各出力値のOR演算を行なう。ANDゲート141は、判定器121~123およびORゲート151の各出力値のAND演算を行なう。
上記より、遮断器21c,22cが閉成状態であって(すなわち、判定器123の出力値が“1”)、方向リレー要素230が電流I1cおよび電圧V1cに基づいて送電線L1から母線90cの方向に事故が発生したと判定し(すなわち、判定器121,122の各出力値が“1”)、かつ、方向リレー要素Hが和電流I12cおよび電圧V1cに基づいて母線90cから送電線の方向に事故が発生したと判定した(すなわち、AND142の出力値が“1”)場合に、ANDゲート141の出力値が“1”となる。
また、遮断器21c,22cが閉成状態であって、方向リレー要素230が電流I1cおよび電圧V1cに基づいて送電線L1から母線90cの方向に事故が発生したと判定し、かつ、|I12c|が閾値K1以下である(すなわち、判定器124の出力値が“1”)場合に、ANDゲート141の出力値が“1”となる。
判定器127は、A端の開閉情報に基づいて、遮断器21aが閉成されており、かつ遮断器22aが開放されていると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。判定器128は、A端の電源情報に基づいてA端が電源端であると判定し、かつB端の電源情報に基づいてB端が非電源端であると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。判定器129は、B端の開閉情報に基づいて遮断器21b,22bが閉成されていると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。ANDゲート143は、判定器127~129の各出力値のAND演算を行なう。
判定器130は、B端の開閉情報に基づいて、遮断器21bが閉成されており、かつ遮断器22bが開放されていると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。判定器131は、A端の電源情報に基づいてA端が非電源端であると判定し、かつB端の電源情報に基づいてB端が電源端であると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。判定器132は、A端の開閉情報に基づいて、遮断器21a,22aが閉成されていると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。ANDゲート144は、判定器130~132の各出力値のAND演算を行なう。
ORゲート152は、ANDゲート143,144の各出力値のOR演算を行なう。ANDゲート145は、ANDゲート141およびORゲート152の各出力値のAND演算を行なう。
ここで、判定器121~124の各出力値が“1”であることによりANDゲート141の出力値が“1”となり、判定器127~129の各出力値が“1”であることによりANDゲート143の出力値が“1”となり、その結果、ANDゲート145から出力される信号S1の値が“1”となる場合について考察する。
この場合、遮断器21a~21c,22b,22cの各々が閉成され、遮断器22aのみが開放されている。A端は電源端であり、B端は非電源端である。|I1c|が閾値K1よりも大きく電流I1cの方向は外部方向である(すなわち、方向リレー要素230が電流I1cおよび電圧V1cを用いて外部方向に事故が発生したと判定する)。|I12c|が閾値K1以下である。これは、図4の状態X1を示している。したがって、C端電源およびC端電流の関係が図4の状態X1である場合、信号S1は“1”となる。
次に、判定器121~123,125,126の各出力値が“1”であることによりANDゲート141の出力値が“1”となり、判定器127~129の各出力値が“1”であることによりANDゲート143の出力値が“1”となり、その結果、ANDゲート145から出力される信号S1が“1”となる場合について考察する。
この場合、遮断器21a~21c,22b,22cの各々が閉成され、遮断器22aのみが開放されている。A端は電源端であり、B端は非電源端である。|I1c|が閾値K1よりも大きく電流I1cの方向は外部方向である。|I12c|が閾値K1よりも大きく和電流I12cの方向は内部方向である(すなわち、方向リレー要素Hが和電流I12cおよび電圧V1cを用いて内部方向に事故が発生したと判定する)。これは、図4の状態X2を示している。したがって、C端電源およびC端電流の関係が図4の状態X2である場合にも、信号S1の値は“1”となる。
なお、A端に関する条件と、B端に関する条件とが入れ替わった場合にも、C端電流およびC端電源の関係は、図4のグラフと同様の関係となる。そのため、ANDゲート141の出力値が“1”であり、ANDゲート144の出力値が“1”である場合(すなわち、判定器130~132の各出力値が“1”の場合)にも、信号S1の値は“1”となる。具体的には、遮断器21a~21c,22a,22cの各々が閉成され、遮断器22bのみが開放されており、A端およびB端がそれぞれ非電源端および電源端である場合に、送電線L1のA端近傍で事故が発生したとする。この場合、C端電流およびC端電源の関係を示すグラフは、図4のグラフにおいて、縦軸を“B端電流に対するC端電流の割合”に置き換え、横軸を“B端電源に対するC端電源の割合”に置き換えたものに相当する。
図8は、複合判定部240のロジックの他の一部を示す図である。図8を参照して、複合判定部240は、判定器161~164と、ANDゲート166,167と、ORゲート168とを含む。ANDゲート167から出力される信号S2は、C端電源およびC端電流の関係が、図4の状態X3であるか否かを示す信号である。C端電源およびC端電流の関係が状態X3である場合には信号S2は“1”となり、そうではない場合には信号S2は“0”となる。
判定器161は、電流I1c,I2cに基づいて、|I12c|が閾値K1よりも大きいと判定した場合に値“1”を出力し、|I12c|が閾値K1以下であると判定した場合に“0”を出力する。判定器162は、電流I1c,I2cおよび電圧V1cに基づいて、和電流I12cの方向が内部方向であると判定した場合に値“1”を出力し、外部方向であると判定した場合に“0”を出力する。判定器161,162の機能は、図7の判定器125,126の機能と同様であり、方向リレー要素Hの機能に対応する。ANDゲート166は、判定器161および判定器162の各出力値のAND演算を行なう。
判定器163は、電流I1cに基づいて、|I1c|が閾値K1以下であると判定した場合に“1”を出力し、|I1c|が閾値K1よりも大きいと判定した場合に値“0”を出力する。判定器164は、C端の開閉情報に基づいて、遮断器21c,22cが閉成されていると判定した場合に値“1”を出力し、そうではない場合に値“0”を出力する。ANDゲート167は、ANDゲート166、判定器163,164およびORゲート152の各出力値のAND演算を行なう。
上記より、ORゲート152の出力値が“1”であり、遮断器21c,22cが閉成状態であって(すなわち、判定器164の出力値が“1”)、方向リレー要素Hが和電流I12cおよび電圧V1cに基づいて母線90cから送電線の方向に事故が発生したと判定し(すなわち、AND166の出力値が“1”)、|I1c|が閾値K1以下である(すなわち、判定器163の出力値が“1”)場合に、ANDゲート167の出力値が“1”となる。ここで、例えば、図7のANDゲート143の出力値が“1”であることでORゲート152の出力値が“1”になったとする。この場合、遮断器21a~21c,22b,22cの各々が閉成され、遮断器22aのみが開放されており、A端およびB端はそれぞれ電源端および非電源端である。そして、|I12c|が閾値K1よりも大きく和電流I12cの方向は内部方向であり、|I1c|が閾値K1以下である。これは、図4の状態X3を示している。このように、C端電源およびC端電流の関係が図4の状態X3である場合、ANDゲート167から出力される信号S2は“1”となる。
ORゲート168は、信号S1および信号S2のOR演算を実行して、信号Sxを出力する。ここで、C端電源およびC端電流の関係が状態X1または状態X2である場合には信号S1は“1”となり、当該関係が状態X3である場合には信号S2は“1”となる。したがって、C端電源およびC端電流の関係が状態X1,X2またはX3である場合に信号Sxは“1”となり、そうではない場合に信号Sxは“0”となる。
再び、図6を参照して、複合判定部240は、C端電源およびC端電流の関係が状態X1,X2またはX3であるか否かを示す複合判定結果Ec(すなわち、信号Sxに対応)を出力する。
事故判定部250は、リレー判定結果Da~Dcと、複合判定結果Ea~Ecとに基づいて、1号線または2号線に事故が発生したか否かを判定する。図9は、事故判定部250における事故判定パターンを説明するための図である。ここでは、説明の容易化のため、1号線の事故判定パターンについて説明する。
図9を参照して、事故判定部250は、パターン1~4のいずれかが成立する場合、1号線において事故が発生したと判定する。
パターン1の場合について説明する。この場合、リレー判定結果Da~Dcがすべて内部事故との判定結果を示している。具体的には、保護制御装置5Aの方向リレー要素は、電流I1aおよび電圧V1aに基づいて、母線90aから送電線L1の方向(すなわち、内部方向)に事故が発生したと判定する。保護制御装置5Bの方向リレー要素は、電流I1bおよび電圧V1bに基づいて、母線90bから送電線L1の方向(すなわち、内部方向)に事故が発生したと判定する。方向リレー要素230は、電流I1cおよび電圧V1cに基づいて、母線90cから送電線L3の方向(すなわち、内部方向)に事故が発生したと判定する。この場合、事故判定部250は、送電線L1または送電線L3において事故が発生したと判定する。
パターン2の場合について説明する。この場合、リレー判定結果Da,Dbが内部事故との判定結果を示している。複合判定結果Ecは、C端電源およびC端電流の関係が状態X1,X2またはX3であるとの判定結果を示している(図中の「Ec=1」に対応)。A端およびB端がそれぞれ電源端および非電源端である場合、パターン2は、図2のように事故点F1に事故が発生した場合の判定パターンを反映している。A端およびB端がそれぞれ電源端および非電源端であって、かつパターン2が成立する場合、事故判定部250は、1号線における分岐点P1と遮断器21bとの間で事故が発生したと判定する。
なお、図7および図8の複合判定部240のロジックを鑑みると、同一端(例えば、C端)において、方向リレー要素230により内部事故が発生したと判定され、かつ、複合判定部240によりC端電源およびC端電流の関係が状態X1,X2またはX3であると判定されることはない。
パターン3の場合について説明する。この場合、リレー判定結果Db,Dcが内部事故との判定結果を示している。複合判定結果Eaは、A端電源およびA端電流の関係が図4の状態X1,X2またはX3に対応する状態であるとの判定結果を示している(図中の「Ea=1」に対応)。なお、この場合には、B端またはC端の一方が電源端であり他方が非電源端である。
パターン4の場合について説明する。この場合、リレー判定結果Da,Dcが内部事故との判定結果を示している。複合判定結果Ebは、B端電源およびB端電流の関係が図4の状態X1,X2またはX3に対応する状態であるとの判定結果を示している(図中の「Eb=1」に対応)。なお、この場合には、A端またはC端の一方が電源端であり他方が非電源端である。
事故判定部250は、上記のパターン1~4のいずれかが成立して、1号線に事故が発生したと判定した場合、C端側の1号線である送電線L3に設けられた遮断器21cを開放するための開放指令(例えば、トリップ信号)を出力する。
その他の実施の形態.
(1)上述した実施の形態では、電気所の母線方式が二重母線方式である構成について説明したが、当該母線方式は単母線方式であってもよい。
(1)上述した実施の形態では、電気所の母線方式が二重母線方式である構成について説明したが、当該母線方式は単母線方式であってもよい。
(2)上述した実施の形態では、保護制御装置5がMUを介して電気量を取得する構成について説明したが、当該構成に限られない。保護制御装置5は、MUを介することなく、電流変成器および電圧変成器から、それぞれ電流および電圧を直接取得する構成であってもよい。
(3)上述した実施の形態において、判定器121,124,163で用いられる閾値と、判定器125で用いられる閾値と、判定器161で用いられる閾値とは互いに異なる値であってもよい。
(4)上述の実施の形態として例示した構成は、本実施の形態の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1A A端電気所、1B B端電気所、1C C端電気所、5 保護制御装置、7 電源、11a~11c,12a~12c,13a,13b,14a,14b 電流変成器、21a~21c,22a~22c,23a~23c 遮断器、32 補助変成器、35 A/D変換部、40,70 演算処理部、41,71 CPU、42,72 RAM、43,73 ROM、44,74 バス、50,61 インターフェイス部、51,62 通信回路、52 通信回線、63 送受信回路、64 デジタル出力回路、65 デジタル入力回路、81a~81c,82a~82c 電圧変成器、90a~90c,91a~91c,92a~92c 母線、100 保護制御システム、121~132,161~164 判定器、141~145,166,167 ANDゲート、151,152,168 ORゲート、210 第1受信部、220 第2受信部、230 方向リレー要素、240 複合判定部、250 事故判定部。
Claims (6)
- 電源端である第1端に設けられた第1母線と、非電源端である第2端に設けられた第2母線とを接続する第1送電線および第2送電線と、
第3端に設けられた第3母線と、前記第1送電線上の第1分岐点とを接続する第3送電線と、
前記第3母線と、前記第2送電線上の第2分岐点とを接続する第4送電線と、
前記第1送電線の前記第1端側および前記第2送電線の前記第1端側にそれぞれ設けられた第1遮断器および第2遮断器と、
前記第1送電線の前記第2端側および前記第2送電線の前記第2端側にそれぞれ設けられた第3遮断器および第4遮断器と、
前記第3送電線の前記第3端側および前記第4送電線の前記第3端側にそれぞれ設けられた第5遮断器および第6遮断器と、
前記第1端~第3端にそれぞれ設けられた第1~第3保護制御装置とを備え、
前記第3保護制御装置は、
前記第1保護制御装置に含まれる第1方向リレー要素による判定結果を受信する第1受信部と、
前記第2保護制御装置に含まれる第2方向リレー要素による判定結果を受信する第2受信部と、
前記第3送電線の前記第3端の電流と前記第3母線の電圧とに基づいて、事故方向を判定する第3方向リレー要素と、
前記第3送電線の前記第3端の電流および前記第4送電線の前記第3端の電流の和電流と、前記第3母線の電圧とに基づいて、事故方向を判定する第4方向リレー要素と、
前記第1送電線の事故の発生の有無を判定する事故判定部とを含み、
前記第1遮断器および前記第3~第6遮断器の各々が閉成されており、前記第2遮断器が開放されている場合であって、かつ第1~第3条件の各々が成立する場合に、前記事故判定部は、前記第1分岐点と前記第3遮断器との間で事故が発生したと判定し、
前記第1条件は、前記第1方向リレー要素が、前記第1送電線の前記第1端の電流と前記第1母線の電圧とに基づいて、前記第1母線から前記第1送電線の方向に事故が発生したと判定することであり、
前記第2条件は、前記第2方向リレー要素が、前記第1送電線の前記第2端の電流と前記第2母線の電圧とに基づいて、前記第2母線から前記第1送電線の方向に事故が発生したと判定することであり、
前記第3条件は、前記第3方向リレー要素が、前記第3送電線から前記第3母線の方向に事故が発生したと判定し、かつ、前記第4方向リレー要素が、前記第3母線から送電線方向に事故が発生したと判定することである、保護制御システム。 - 前記第1遮断器および前記第3~第6遮断器の各々が閉成されており、前記第2遮断器が開放されている場合であって、かつ前記第1条件、前記第2条件、および第4条件が成立する場合、前記事故判定部は、前記第1送電線上における前記第1分岐点と前記第3遮断器との間で事故が発生したと判定し、
前記第4条件は、前記第3方向リレー要素が、前記第3送電線から前記第3母線の方向に事故が発生したと判定し、かつ、前記和電流の大きさが閾値以下であるとの条件である、請求項1に記載の保護制御システム。 - 前記第1遮断器および前記第3~第6遮断器の各々が閉成されており、前記第2遮断器が開放されている場合であって、かつ前記第1条件、前記第2条件、および第5条件が成立する場合、前記事故判定部は、前記第1送電線上における前記第1分岐点と前記第3遮断器との間で事故が発生したと判定し、
前記第5条件は、前記第4方向リレー要素が、前記第3母線から送電線方向に事故が発生したと判定し、かつ、前記第3送電線の前記第3端の電流の大きさが前記閾値以下であるとの条件である、請求項2に記載の保護制御システム。 - 前記事故判定部は、前記第1送電線上における前記第1分岐点と前記第3遮断器との間で事故が発生したと判定した場合に前記第5遮断器を開放するための開放指令を出力する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の保護制御システム。
- 前記第1条件、前記第2条件、および第6条件が成立する場合、前記事故判定部は、前記第1送電線または前記第3送電線で事故が発生したと判定し、
前記第6条件は、前記第3方向リレー要素が、前記第3母線から前記第3送電線の方向に事故が発生したと判定することである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の保護制御システム。 - 前記第1~第4方向リレー要素の各々は、短絡方向リレー要素または地絡方向リレー要素である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の保護制御システム。
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