JP2022182161A - シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体およびその製造方法 - Google Patents

シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体およびその製造方法 Download PDF

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Hiroaki Sasaki
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Abstract

【課題】シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、ヒドロシラン化合物の使用量を抑制する。【解決手段】本発明の一態様に係る製造方法は、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にジアルコキシヒドロシラン化合物を反応させるヒドロシリル化工程を含む、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法であって、上記ヒドロシリル化工程を、上記ジアルコキシヒドロシラン化合物の沸点±15℃の温度条件にて行う。【選択図】なし

Description

本発明は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体およびその製造方法に関する。
従来、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体をヒドロシリル化させて、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得る製造方法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
特開2004-002835号 特開2010-229236号
特許文献1には、ヒドロシリル化触媒の低減が可能である製造方法が示されている。しかし、この製造方法は、ヒドロシリル化の効率が低く、大過剰のヒドロシラン化合物を使用する。特許文献2には、110~130℃にてヒドロシリル化を行い、ヒドロシラン化合物の使用量を低減することが示されている。しかし、このような高温条件ヒドロシリル化を行うと、シランの一部が劣化たり、ポリマー末端シラン同士の縮合により粘度が上昇したりする課題があった。さらに、分子量が高いポリマーの製造においては、高温での反応は適していない。そのため、特許文献2のような製造方法においても、やはり、ヒドロシリル化を行う際には、大過剰のヒドロシラン化合物を反応系に投入する必要があった。
本発明の一態様は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、ヒドロシラン化合物の使用量を抑制することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、
アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にジアルコキシヒドロシラン化合物を反応させるヒドロシリル化工程を含む、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法であって、
上記ヒドロシリル化工程を、上記ジアルコキシヒドロシラン化合物の沸点±15℃の温度条件にて行う。
本発明の一態様によれば、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、ヒドロシラン化合物の使用量を抑制できる。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタアクリル」を意味する。
〔1.シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
本発明の一態様に係る製造方法は、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にジアルコキシヒドロシラン化合物を反応させるヒドロシリル化工程を含む。アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、どのようにして準備してもよい(例えば、市販の重合体を利用しても構わない)。一実施形態において、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、重合工程および導入工程を経て製造される。以下、各工程について詳述する。
[1.1.重合工程]
重合工程は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合して(メタ)アクリル系ポリマー鎖を得る工程である。
[1.1.1.(メタ)アクリル酸エステルモノマー]
重合工程で使用される(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、特に限定されない。1種類のみの(メタ)アクリル酸エステルモノマーを用いてもよいし、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを組合せて用いてもよい。
このような(メタ)アクリル酸エステルモノマーの類型として、以下のものが挙げられる。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基を有しており、かつ、上記アルキル基は炭素数が1~5のアルコキシ基を有しているモノマー。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、2が特に好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1~3が好ましく、1~2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が1~5であるモノマー。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が6~15であるモノマー。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が16~25であるモノマー。
一実施形態において、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の好ましいモノマー組成は、以下の通りである。なお、以下の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖に含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準とする。このようなモノマー組成であることにより、(メタ)アクリル系ポリマー鎖は、良好な作業性、機械物性および耐候性を得ることができる。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)由来の繰り返し単位:0~40重量%が好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)および(メタ)アクリル酸モノマー(γ)由来の繰り返し単位の合計:45~100重量%が好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)由来の繰り返し単位:0~35重量%が好ましい。
一実施形態において、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の好ましいモノマー組成は、以下の通りである。なお、以下の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖に含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準する。このようなモノマー組成であることにより、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の粘度をさらに低減できるので、作業性がさらに良好となる。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)由来の繰り返し単位:0~20重量%が好ましく、10~20重量%がより好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)由来の繰り返し単位:45~70重量%が好ましく、50~70重量%がより好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)由来の繰り返し単位:0~25重量%が好ましく、10~25重量%がより好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)由来の繰り返し単位:0~25重量%が好ましく、15~20重量%がより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)由来の繰り返し単位の含有率が上記の範囲ならば、低粘度で作業性の良好な硬化性組成物が得られる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)由来の繰り返し単位の含有率が上記の範囲ならば、耐久性に優れた硬化物が得られる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)由来の繰り返し単位の含有率が上記の範囲ならば、機械物性に優れた硬化物が得られる。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、特に限定されず、従来公知のものが使用できる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)の例としては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)の例としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)の例としては、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)の例としては、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシルが挙げられる。
上述したモノマーの中で、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)としては、アクリル酸2-メトキシエチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)としては、アクリル酸ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)としては、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸ドデシルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)としては、アクリル酸オクタデシルが好ましい。これらのモノマーを選択することにより、硬化性組成物および硬化物に応用した際の粘度、耐候性、機械物性、耐久性が高水準でバランスよく達成されうる。
一実施形態において、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)は、下記(a)および/または(b)である。
(a)(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が1~5個であるモノマー。ただし、「アルキル基の炭素数」には、当該アルキル基が有するアルコキシ基に含まれる炭素は含めない。
(b)(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチルからなる群から選ばれる1つ以上のモノマー。
(メタ)アクリル系ポリマー鎖に含まれている(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖に含まれている全ての繰り返し単位を基準として、70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の含有率が70%以上であれば、硬化性組成物および硬化物に応用した際に、良好な耐候性、機械物性および耐久性が得られる。
[1.1.2.重合方法]
(メタ)アクリル系ポリマー鎖の重合方法は特に限定されず、公知の重合方法を用いることができる(ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法など)。中でも、重合体分子の末端に官能基を導入できることから、リビング重合法が好ましい。リビング重合法の例としては、リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合法、リビングアニオン重合法が挙げられ、その中でもリビングラジカル重合法がアクリル酸エステルモノマーの重合に適している。リビングラジカル重合法の例としては、以下が挙げられる。
・原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization;ATRP(J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5614;Macromolecules. 1995, 28, 1721を参照))
・一電子移動重合(Sigle Electron Transfer Polymerization;SET-LRP(J. Am.
Chem. Soc. 2006, 128, 14156; JPSChem 2007, 45, 1607を参照))
・可逆移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyzed Polymerization;RTCP(「有機触媒で制御するリビングラジカル重合」『高分子論文集』68, 223-231 (2011);
特開2014-111798を参照))
・可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT重合)
・ニトロキシラジカル法(NMP法)
・有機テルル化合物を用いる重合法(TERP)法
・有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)
・有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP)
・ヨウ素移動重合法。
上述した重合法の中では、原子移動ラジカル重合、一電子移動重合および可逆移動触媒重合が好ましく、原子移動ラジカル重合がより好ましい。特に、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合では、遷移金属錯体がヒドロシリル化工程の触媒毒となることが知られている。それゆえ、従来の製造方法では、ヒドロシリル化工程において、大過剰のジアルコキシヒドロシラン化合物を使用する必要があった。本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、ヒドロシリル化工程で使用するジアルコキシヒドロシラン化合物の量を削減できる。したがって、この製造方法を原子移動ラジカル重合による重合工程と組合せる実施形態は、本発明の好ましい実施形態の一つである。
より好ましい製造方法としては、ATRPまたはSET-LRPを利用して、遷移金属または遷移金属錯体を触媒とする、ビニル系モノマーのリビングラジカル重合方法を挙げることができる。
遷移金属錯体を触媒とするリビングラジカル重合のメカニズムには、現在のところ、ATRPおよびSET-LRPの2通りの解釈がある。ATRPに基づいて解釈すると、リビングラジカル重合は、以下の2つの反応の平衡からなる(例として、銅錯体を使用する場合で説明する)。
(a)1価銅錯体は、重合体末端のハロゲンを引き抜いてラジカルを発生させ、2価銅錯体となる。
(b)2価銅錯体は、重合末端のラジカルにハロゲンを付加し、1価銅錯体となる。
一方、SET LRPに基づいて解釈すると、リビングラジカル重合は、以下の3つの反応の平衡からなる(例として、銅錯体を使用する場合で説明する)。
(a)0価の金属銅または銅錯体は、重合体末端のハロゲンを引き抜いてラジカルを発生させて、2価銅錯体となる。
(b)2価銅錯体は、重合末端のラジカルにハロゲンを付加して、0価銅錯体となる。
(c)1価銅錯体は、不均化して、0価および2価の銅錯体となる。
また、ATRPを改良した合成方法である、Activators Regenerated by Electron Transfer:ARGETも報告されている(Macromolecules. 2006, 39, 39)。この方法は、重合の遅延または停止の原因となる高酸化遷移金属錯体を、還元剤を用いて減らすことによって、遷移金属錯体が少ない低触媒条件においても、速やかに高反応率まで重合反応を進行させることができる。このARGETも、重合工程として採用できる。
重合工程において使用できる各種の物質について、下記に説明する。
(a.開始剤)
リビングラジカル重合における好適な開始剤の例としては、有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物が挙げられる。有機ハロゲン化物の例としては、反応性の高い炭素-ハロゲン結合を有する化合物(α位にハロゲンを有するカルボニル化合物、ベンジル位にハロゲンを有する化合物など)が挙げられる。
例えば、分子内にハロゲン基を2つ有する開始剤を使用できる。このような開始剤の例としては、ジエチル2,5-ジブロモアジペート、ジメチル2,5-ジブロモアジペートが挙げられる。あるいは、分子内にハロゲン基を1つ有する開始剤も使用できる。このような開始剤の例としては、2-ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、(1-ブロモエチル)ベンゼン、アリルブロミド、2-ブロモプロピオン酸メチル、クロロ酢酸メチル、2-クロロプロピオン酸メチル、(1-クロロエチル)ベンゼンが挙げられる。入手性および反応性の観点から、ジエチル2,5-ジブロモアジペート、2-ブロモイソ酪酸エチル、(1-ブロモエチル)ベンゼン、クロロ酢酸メチルが好ましい。安全性の観点をさらに考慮すると、ジエチル2,5-ジブロモアジペート、2-ブロモイソ酪酸エチルがより好ましい。
(b.重合触媒)
還元剤を使用する場合も還元剤を使用しない場合も、ATRP系においては、周期表の7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を用いることができる。その中でも、特に1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄を中心金属とする金属錯体が好適である。
具体例を挙げると、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、酢酸第一銅、過塩素酸第一銅などがある。銅化合物を重合触媒として用いる場合には、触媒活性を高めるために、アミン配位子を重合系に添加することが好ましい。また、二価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も、触媒として好適である。この触媒を使用する場合は、触媒活性を高めるために、アルミニウム化合物(トリアルコキシアルミニウムなど)を重合系に添加することが好ましい。さらに、二価の塩化鉄のトリストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)も、触媒として好適である。
上述した中では、銅触媒が廉価で好ましい。触媒活性が高めて生産性を高めるために、多座アミンと銅触媒とを組合せて使用することがより好ましい。
(c.多座アミン)
配位子として使用されうる多座アミンの例としては、以下が挙げられる。
・二座配位の多座アミン:2,2-ビピリジン、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジン、N-(n-プロピル)ピリジルメタンイミン、N-(n-オクチル)ピリジルメタンイミン
・三座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N-プロピル-N,N-ジ(2-ピリジルメチル)アミン
・四座配位の多座アミン:ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン(MeTREN)、N,N-ビス(2-ジメチルアミノエチル)-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、2,5,9,12-テトラメチル-2,5,9,12-テトラアザテトラデカン、2,6,9,13-テトラメチル-2,6,9,13-テトラアザテトラデカン、4,11-ジメチル-1,4,8,11-テトラアザビシクロヘキサデカン、N’,N’’-ジメチル-N’,N’’-ビス((ピリジン-2-イル)メチル)エタン-1,2-ジアミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、2,5,8,12-テトラメチル-2,5,8,12-テトラアザテトラデカン
・五座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’-ヘプタメチルテトラエチレンテトラミン
・六座配位の多座アミン:N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン
・ポリアミン:ポリエチレンイミン。
(d.塩基)
重合系中に存在または発生する酸を中和して、酸の蓄積を防ぐために、塩基を重合系に添加してもよい。塩基の例としては、以下が挙げられる。
・モノアミン:モノアミンとは、塩基として作用する部位が、1分子あたり1個ある化合物を指す。モノアミンの例としては、一級アミン(メチルアミン、アニリン、リシンなど)、二級アミン(ジメチルアミン、ピペリジンなど)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、芳香族系アミン(ピリジン、ピロールなど)、アンモニアが挙げられる。
・ポリアミン:ポリアミンの例としては、ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミンなど)、トリアミン(ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなど)、テトラミン(トリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミンなど)、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
・無機塩基:無機塩基とは、周期表の1族および2族に属する元素の単体または化合物を指す。周期表の1族および2族に属する元素の単体の例としては、リチウム、ナトリウム、カルシウムが挙げられる。周期表の1族および2族に属する元素の化合物の例としては、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、メチルリチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、フェノキシナトリウム、フェノキシカリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムが挙げられる。
(e.還元剤)
銅錯体を触媒とするリビングラジカル重合においては、還元剤を併用することにより、重合活性が向上することが知られている(ARGET ATRP)。ARGET ATRPにおいては、重合反応の遅延または停止の原因となる高酸化遷移金属錯体(ラジカル同士のカップリングなどによって生じる)を、還元して減少させることにより、重合活性が向上すると考えられている。これによって、通常ならば数百~数千ppm必要な遷移金属触媒を、数十~数百ppmまで減少させることができる。本発明の一実施形態における製造方法では、還元剤を用いて、ARGET ATRPと同様の反応機構とすることができる。還元剤の例としては、以下が挙げられる。
(銅錯体を還元する際に酸を発生させない還元剤)
・金属:金属の例としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、典型金属(アルミニウム、亜鉛など)、遷移金属(銅、ニッケル、ルテニウム、鉄など)が挙げられる。これらの金属は、水銀との合金(アマルガム)の形態で用いることもできる。
・金属化合物:金属化合物の例としては、金属塩、金属錯体が挙げられる。金属錯体に配位している配位子の例としては、一酸化炭素、オレフィン、含窒素化合物、含酸素化合物、含リン化合物、含硫黄化合物が挙げられる。より具体的な例としては、金属とアンモニア/アミンとの化合物、三塩化チタン、チタンアルコキシド、塩化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、塩化鉄、塩化銅、臭化銅、塩化スズ、酢酸亜鉛、水酸化亜鉛、カルボニル錯体(Ni(CO)、CoCOなど)、オレフィン錯体([Ni(cod)]、[RuCl(cod)]、[PtCl(cod)]など;codはシクロオクタジエンを表す)、ホスフィン錯体([RhCl(P(C]、[RuCl(P(C]、[PtCl(P(C]など)が挙げられる。
・有機スズ化合物:具体例としては、オクチル酸スズ、2-エチルヘキシル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレートが挙げられる。
・リンまたはリン化合物:具体例としては、リン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ヘキサメチルホスフォラストリアミド、ヘキサエチルホスフォラストリアミドが挙げられる。
・硫黄または硫黄化合物:具体例としては、硫黄、ロンガリット類、ハイドロサルファイト類、二酸化チオ尿素が挙げられる。ロンガリットとは、スルホキシル酸塩のホルムアルデヒド誘導体のことを指し、一般式:MSO・CHOで表される(式中、MはNaまたはZnである)。ロンガリットの具体例としては、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレートが挙げられる。ハイドロサルファイトとは、次亜硫酸ナトリウムおよび次亜硫酸ナトリウムのホルムアルデヒド誘導体を指す。
(銅錯体を還元する際に酸を発生させる還元剤(水素化物還元剤))
・金属水素化物:具体例としては、水素化ナトリウム、水素化ゲルマニウム、水素化タングステン、アルミニウム水素化物(水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素アルミニウムナトリウム、水素化トリエトキシアルミニウムナトリウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなど)、有機スズ水素化物(水素化トリフェニルスズ、水素化トリ-n-ブチルスズ、水素化ジフェニルスズ、水素化ジ-n-ブチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズなど)が挙げられる。
・ケイ素水素化物:具体例としては、トリクロロシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、ポリメチルヒドロシロキサンが挙げられる。
・ホウ素水素化物。具体例としては、ボラン、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリメトキシホウ酸ナトリウム、硫化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ-s-ブチルホウ素リチウム、水素化トリ-t-ブチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素テトラ-n-ブチルアンモニウムが挙げられる。
・窒素水素化合物:具体例としては、ヒドラジン、ジイミドが挙げられる。
・リンまたはリン化合物:具体例としては、ホスフィン、ジアザホスホレンが挙げられる。
・硫黄または硫黄化合物:具体例としては硫化水素が挙げられる。
・還元作用を示す有機化合物:具体例としては、アルコール、アルデヒド、フェノール類、有機酸化合物が挙げられる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。アルデヒドの例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ギ酸が挙げられる。フェノール類の例としては、フェノール、ハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロールが挙げられる。有機酸化合物の例としては、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステルが挙げられる。
また、電解還元によって、還元剤を重合系中で生成させてもよい。電解還元においては、陰極で生じた電子が直接に(または、溶媒和した後で)、還元作用を示す。つまり、還元剤を、電気分解により生成させてもよい。
(f.溶媒)
溶媒の例としては、以下が挙げられる。ただし、ATRPは、溶媒を用いない条件でも実施可能である。
・高極性非プロトン性溶媒:ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン
・カーボネート系溶媒:エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート
・アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール
・ニトリル系溶媒:アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル
・ケトン系溶媒:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン
・エーテル系溶媒:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン
・ハロゲン化炭化系溶媒:塩化メチレン、クロロホルム
・エステル系溶媒:酢酸エチル、酢酸ブチル
・炭化水素系溶媒:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン
・その他の溶媒:イオン性液体、水、超臨界流体。
還元剤を用いるATRP(ARGET)系においては、遷移金属または遷移金属化合物、多座アミン、塩基、還元剤、モノマーおよび開始剤が重合系中で均一になっていることが、反応制御、重合反応速度、仕込みやすさおよびスケールアップリスクの点から好ましい。したがって、これらの物質を溶解させられる溶媒を選択することが好ましい。
[1.2.導入工程]
導入工程は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の少なくとも一方の末端に、アルケニル基を導入する工程である。導入工程により、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、一方または両方の末端にアルケニル基を有している。
[1.2.1.アルケニル基を複数個有する化合物]
導入工程においては、アルケニル基を複数個有する化合物が好適に用いられる。このような化合物の例としては、非共役ジエン化合物が挙げられる。非共役ジエン化合物は、例えば、下記式により表される。
C=C(R)-R-(R)C=CH
式中、Rは炭素数1~20で2価の炭化水素基である。任意構成で、Rは、O、N、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子の数は、1個、2個、3個、4個または5個でありうる。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子およびメチル基から選択される。
好ましくは、Rは、炭素数1~20で2価の炭化水素基であり、ヘテロ原子を有していない。このような非共役ジエン化合物の中でも、下記式で表される化合物が好ましい。
C=CH-(CH-HC=CH
式中、nは1~20の整数である。
原料入手が容易であることから、非共役ジエン化合物は、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンおよび1,9-デカジエンが好ましく、1,7-オクタジエンがより好ましい。
[1.2.2.アルケニル基の導入方法]
導入工程は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の少なくとも一方の末端に、アルケニル基を複数個有する化合物を反応させることにより行われる。より具体的な例を挙げると、重合工程の終了時において、アルケニル基を複数個有する化合物を反応系に加えることにより、導入工程を実施できる。重合工程の終了時とは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの80%以上、90%以上、95%以上または99%以上が反応した時点でありうる。
アルケニル基を複数個有する化合物の添加量は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の重合成長末端に対して、過剰量であることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の重合成長末端に対して、1.5倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。添加量が上述の範囲であれば、導入されたアルケニル基同士が反応して、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の末端同士をカップリングしてしまうこと回避できる。
[1.3.ヒドロシリル化工程]
ヒドロシリル化工程は、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にジアルコキシヒドロシラン化合物を反応させて、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得る工程である。
[1.3.1.ジアルコキシヒドロシラン化合物]
ジアルコキシヒドロシラン化合物の例としては、下記式で示される化合物が例示される。
H-[Si(R2-a(Y)O]-Si(R)(Y)
式中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、メトキシメチル基、または(RSiO-で示されるトリオルガノシロキシ基から選択される(式中、Rは炭素数1~20の1価の炭化水素基である。3個存在するRは、同一であってもよく、異なっていてもよい)。Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは、炭素数1~20のアルコキシ基を表す。2個以上存在するYは、同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0、1または2を表す。mは、0~19の整数である。
これらジアルコキシヒドロシラン化合物の中でも、下記式で表される化合物が、入手容易な点から好ましい。
H-Si(R)(Y)
式中、RおよびYは上述の通りである。
ジアルコキシヒドロシラン化合物の具体例としては、HSi(CH)(OCH、HSi(CH)(OC、HSi(C)(OCH、HSi(C)(OCH、HSi(CHO-[Si(CHO]-Si(CH)(OCHが挙げられる(上記化学式中、Cはフェニル基を表す)。入手および取扱いが容易であるため、これらの化合物の中では、メチルジメトキシシランが好ましい。
ヒドロシリル化工程におけるジアルコキシヒドロシラン化合物の使用量の上限は、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれているアルケニル基を1当量として、2.0当量以下が好ましく、1.8当量以下がより好ましく、1.5当量以下がさらに好ましい。また、使用量の下限は、1.0当量以上が好ましく、1.2当量以上がより好ましい。本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、従来の製造方法よりも、ジアルコキシヒドロシラン化合物の使用量を削減できる。そのため、環境付加および製造コストを抑制できる。ちなみに、従来の製造方法では、ジアルコキシヒドロシラン化合物の使用量を削減すれば、その分だけヒドロシリル化効率も低下する傾向にある。
[1.3.2.ヒドロシリル化触媒]
ヒドロシリル化工程においては、通常、遷移金属触媒が用いられる。遷移金属触媒の例としては、白金系触媒が挙げられる。具体例としては、白金単体;担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラックなど)に白金固体を分散させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体;白金-オレフィン錯体;白金(0)-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金系触媒以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・HO、NiCl、TiClが挙げられる。
ヒドロシリル化工程におけるヒドロシリル化触媒の使用量は、アルケニル基末端を有する1kgの(メタ)アクリル系重合体に対して、触媒に含まれる金属の重量に換算して、0.1~100ppmが好ましく、1~20ppmが好ましく、3~10ppmがより好ましい。上記の範囲であれば、ヒドロシリル化を速やかに進行させることができ、かつ経済的である。
[1.3.3.ヒドロシリル化反応の方法]
ヒドロシリル化工程は、例えば、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にヒドロシリル化触媒を混合した後に、ジアルコキシヒドロシラン化合物を添加することにより行われる。あるいは、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体、ヒドロシリル化触媒およびジアルコキシヒドロシラン化合物を一括して仕込み、反応させてもよい。
ヒドロシリル化工程における反応温度の下限は、ジアルコキシヒドロシラン化合物の沸点をT℃とすると、T-15℃以上である。反応温度の下限は、T-14℃以上もしくは超、T-13℃以上もしくは超、T-12℃以上もしくは超、T-11℃以上もしくは超、T-10℃以上もしくは超、T-9℃以上もしくは超、T-8℃以上もしくは超、T-7℃以上もしくは超、T-6℃以上もしくは超、または、T-5℃以上もしくは超でありうる。ヒドロシリル化工程における反応温度の上限は、ジアルコキシヒドロシラン化合物の沸点をT℃とすると、T+15℃以下である。反応温度の上限は、T+14℃以下もしくは未満、T+13℃以下もしくは未満、T+12℃以下もしくは未満、T+11℃以下もしくは未満、T+10℃以下もしくは未満、T+9℃以下もしくは未満、T+8℃以下もしくは未満、T+7℃以下もしくは未満、T+6℃以下もしくは未満、または、T+5℃以下もしくは未満でありうる。
メチルジメトキシシランの沸点は、61℃である。したがって、メチルジメトキシシランを用いる場合、ヒドロシリル化工程における反応温度の下限は46℃以上である。このとき、反応温度の下限は、47℃以上もしくは超、48℃以上もしくは超、49℃以上もしくは超、50℃以上もしくは超、51℃以上もしくは超、52℃以上もしくは超、53℃以上もしくは超、54℃以上もしくは超、55℃以上もしくは超、または、55℃以上もしくは超でありうる。メチルジメトキシシランを用いる場合、ヒドロシリル化工程の反応温度の上限は76℃以下である。このとき、反応温度の上限は、75℃以下もしくは未満、74℃以下もしくは未満、73℃以下もしくは未満、72℃以下もしくは未満、71℃以下もしくは未満、70℃以下もしくは未満、69℃以下もしくは未満、68℃以下もしくは未満、67℃以下もしくは未満、または、66℃以下もしくは未満でありうる。
ヒドロシリル化工程においては、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれているアルケニル基の大部分がヒドロシリル化されることが好ましい。例えば、アルケニル基のうち、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上がヒドロシリル化されうる。ヒドロシリル化の上限は、100%以下でありうる。
このような反応率を達成するためには、充分な反応時間をかけてヒドロシリル化工程を行えばよい。ヒドロシリル化工程の反応時間の下限は、0.25時間以上、0.5時間以上、1時間以上または2時間以上でありうる。ヒドロシリル化工程の反応時間の上限は、12時間以下、6時間以下または3時間以下でありうる。ちなみに、従来の製造方法では、比較的短時間(15分程度)でヒドロシリル化反応率がプラトーに達し、それ以上はヒドロシリル化が進行しなくなる傾向にある。
あるいは、ヒドロシリル化工程に供されるアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を精製して重合触媒含有率を低下させることも、ヒドロシリル化反応の反応率を向上させる上で好ましい。好適な重合触媒の含有率は、[1.4.]節を参照。
ヒドロシリル化工程は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、窒素雰囲気下で行うことがより好ましい。このようにすれば、ジアルコキシヒドロシラン化合物が副反応により消費されることを抑制できる。
ヒドロシリル化工程は、無溶媒条件で行うこともできる。しかし、溶媒を使用すると、基質および/または触媒を均一化させたり、反応系の温度を制御したり、基質および/または触媒の添加を容易にしたりすることができる。ヒドロシリル工程で使用できる溶媒の例としては、炭化水素化合物(ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼンなど);ハロゲン化炭化水素化合物(クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなど);エーテル(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなど)が挙げられる。これらの溶媒は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ヒドロシリル化工程においては、加水分解性エステル化合物および/またはアルキルアルコールを反応系に添加してもよい。このようにすれば、反応系のゲル化が抑制できる。
加水分解性エステル化合物の例としては、オルトギ酸トリアルキル(オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル、オルトギ酸トリブチルなど);オルト酢酸トリアルキル(オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチルなど);加水分解性有機シラン化合物(メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチルなど)が挙げられる。これらの中では、オルトギ酸トリアルキルが好ましい。加水分解性エステル化合物の使用量は、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対し、0.1~50重量部が好ましく、0.1~30重量部がより好ましい。
アルキルアルコールは、炭素数が1~10のアルコールが好ましい。このようなアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、セロソルブが挙げられる。アルキルアルコールの使用量は、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対し、0.1~100重量部が好ましい。
加水分解性エステル化合物およびアルキルアルコールは、それぞれ、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。加水分解性エステル化合物とアルキルアルコールとを混合して用いてもよい。加水分解性エステル化合物および/またはアルキルアルコールは、ヒドロシリル化反応中またはヒドロシリル化反応後に反応系に加えれば、ゲル化を抑制できる。
[1.4.その他の工程]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、上述した以外の工程を含んでもよい。このような工程の例としては、加熱処理工程、固液分離工程、吸着処理工程が挙げられる。加熱処理工程は、固液分離工程と組合せることが好ましい。このとき、加熱処理工程に引き続いて固液分離工程を施すことが好ましい。また、加熱処理工程および固液分離工程は、吸着処理工程と組合せることが好ましい。このようにすれば、吸着処理工程で使用される吸着剤の量を削減できる。
加熱処理工程と固液分離工程との組合せや、吸着処理工程を施すことにより、重合工程で使用した重合触媒(遷移金属錯体触媒など)を除去できる。これらの工程は、重合工程で得られる(メタ)アクリル系ポリマー鎖に対して施してもよい。あるいは、導入工程で得られるアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に対して施してもよい。好ましくは、導入工程の後にこれらの工程を施す。
重合触媒(遷移金属錯体触媒など)は、ヒドロシリル化工程における触媒毒となりうる。そのため、本発明の一実施形態に係る製造方法においては、ヒドロシリル化工程に供されるアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれている重合触媒の量が、少ない方が好ましい。アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれている重合触媒の量の上限は、金属の含有量(銅の含有量など)に換算して、1ppm以下が好ましく、0.5ppm以下がより好ましく、0.3ppm以下がさらに好ましい。アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれている重合触媒の量の下限は、例えば、0ppm超または0.1ppm以上でありうる。
[1.4.1.加熱処理工程]
加熱処理工程では、(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を加熱処理する。加熱処理温度の下限は、140℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、190℃以上がさらに好ましい。加熱処理温度の上限は、250℃以下とすることができる。加熱処理時間は、通常、数分間~数十時間である。上記の温度および時間であれば、(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の熱劣化を抑制できる。一般的に、加熱処理温度が高ければ、加熱処理工程に要する時間を短縮できる。
加熱処理工程においては、溶媒が存在しない方が好ましい。また、減圧下で加熱処理するのが好ましい。加熱処理工程における圧力は、700Torr以下が好ましく、100Torr以下がより好ましく、20Torr以下がさらに好ましく、10Torr以下が特に好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体がハロゲン基を有している場合には、加熱処理工程によって、脱ハロゲン化させられる。脱ハロゲン化反応により沸点の低いハロゲン化物が発生するので、これを減圧除去しながら加熱処理工程を行うことが好ましい。
[1.4.2.固液分離工程]
固液分離工程では、(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれている不溶成分を除去する。固液分離工程は、具体的には、濾過、沈降などの一般的な分離方法により実施できる。
濾過の例としては、減圧濾過(ブフナー漏斗を利用する濾過など)、加圧濾過(フィルタープレス方式など)が挙げられる。不溶成分の量が少なく、容易に濾過できる場合には簡易濾過(カートリッジフィルター、バグフィルター、砂を用いた濾過など)を利用できる。沈降の例としては、静置分離、デカンター、遠心沈降法(分離盤型遠心沈降機などを用いた沈降)が挙げられる。濾過および沈降を組合せた方法の例としては、遠心濾過(バスケット型遠心濾過機を用いた方法など)、沈降濾過(水平盤式濾過機を用いた方法など)が挙げられる。
固液分離工程においては、濾過助剤を使用してもよい。濾過助剤としては、珪藻土などの一般的な濾過助剤を使用できる。
(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の粘度が高く、固液分離の操作性が悪くなる場合には、溶剤で稀釈してから固液分離工程を施してもよい。稀釈溶剤の例としては、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、ヘキサン、メチルシクロヘキサンなど);エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)が挙げられる。
[1.4.3.吸着処理工程]
吸着処理工程では、(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれる不純物を、吸着剤により除去する。吸着剤としては、酸性吸着剤および塩基性吸着剤が挙げられる。酸性吸着剤は、重合工程で用いられる配位子の除去に好適である。塩基性吸着剤は、重合工程で用いられる遷移金属の除去に好適である。より具体的な例としては、活性炭、合成樹脂系吸着剤(イオン交換樹脂など)、無機系吸着剤(ゼオライトなど)が挙げられる。
活性炭は、大部分が炭素質の炭である。活性炭は、木材、褐炭、泥炭などを、活性化剤(塩化亜鉛、リン酸など)で処理してから乾留することにより得られる。あるいは、木炭などを水蒸気で活性化しても得られる。活性化剤で処理した活性炭は酸性吸着剤としての性質を示す。水蒸気で活性化した活性炭は、塩基性吸着剤としての性質を示す。
イオン交換樹脂の例としては、酸性イオン交換樹脂、塩基性イオン交換樹脂、キレート型イオン交換樹脂が挙げられる。酸性イオン交換樹脂が有している官能基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基が挙げられる。塩基性イオン交換樹脂が有している官能基の例としては、アミノ基が挙げられる。キレート型イオン交換樹脂が有している官能基の例としては、イミノジ酢酸基、ポリアミン基が挙げられる。
無機系吸着剤の例としては、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素などを主成分とする物質が挙げられる。より具体的な例としては、二酸化ケイ素;酸化マグネシウム;シリカゲル;シリカ・アルミナまたはアルミニウムシリケート;マグネシウムシリケート;活性アルミナ;水酸化アルミニウム;粘土系吸着剤(酸性白土、活性白土など);ゼオライト系吸着剤(ケイ酸アルミニウムナトリウムなどの含水アルミノケイ酸塩鉱物類);ドーソナイト類化合物;ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
ゼオライトの例としては、天然ゼオライト、合成ゼオライトが挙げられる。
二酸化ケイ素の例としては、結晶性二酸化ケイ素、無定形二酸化ケイ素、非晶質二酸化ケイ素、ガラス状二酸化ケイ素、合成二酸化ケイ素、天然二酸化ケイ素が挙げられる。粉体状の二酸化ケイ素が好適に用いられる。より具体的な二酸化ケイ素の例としては、活性白土を酸処理して得られる二酸化ケイ素;カープレックスBS304、カープレックスBS304F、カープレックス#67、カープレックス#80(いずれもシオノギ製薬)が挙げられる。
アルミニウムシリケートとは、ケイ酸のケイ素の一部がアルミニウムに置換された物質である。アルミニウムシリケートの例としては、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土が挙げられる。合成アルミニウムシリケートは、比表面積が大きく、吸着能力が高い。合成アルミニウムシリケートの例としては、キョーワード700シリーズ(協和化学製)が挙げられる。
ハイドロタルサイト類化合物とは、2価の金属(Mg2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+など)と3価の金属(Al3+,Fe3+,Cr3+,Co3+,In3+など)との、含水水酸化物を表す。水酸化物に含まれる水酸基の一部は、他の陰イオン(ハロゲンイオン、NO3-,CO 2-,SO 2-,Fe(CN) 3-,CHCO2-,シュウ酸イオン、サリチル酸イオンなど)に交換されていてもよい。ハイドロタルサイト類化合物の中では、2価の金属がMg2+であり、3価の金属がAl3+であり、水酸基の一部がCO 2-に交換されている物質が好ましい。このような物質の例としては、キョーワード500シリーズ、キョーワード1000シリーズ(いずれも協和化学(株)製)が挙げられる。
ハイドロタルサイト類化合物を焼成して得られる吸着剤も、好適に使用される。このような吸着剤のなかでは、2価の金属がMg2+であり、3価の金属がAl3+であるハイドロタルサイト類化合物を焼成して得られる、MgO-AlO系固溶体が好まし。このような物質の例としては、キョーワード2000(協和化学(株)製)が挙げられる。
固体酸および固体塩基の両方を有する吸着剤を使用してもよい。このような吸着剤の例としては、マグネシウムシリケートが挙げられる。マグネシウムシリケートは、固体酸および固体塩基の両方を有しており、酸および塩基の両方に対する吸着性能を示す。マグネシウムシリケートの例としては、キョーワード600s(2MgO・6SiO・XHO;協和化学(株)製)、ミズカライフP-1G(水澤化学(株)製)が挙げられる。キョーワード600sは、酸および塩基の両方を吸着するため、酸性吸着剤および塩基性吸着剤の両方に分類される。ミズカライフP-1Gは、塩基の吸着能の方が高いため、酸性吸着剤に分類される。
水酸化アルミニウムは両性であるため、条件によっては塩基の吸着能を示す。しかし、水酸化アルミニウムは主として酸に対する吸着剤であるため、塩基性吸着剤に分類される。
Al(OH)・NaHCOは、ドーソナイトと称される物質であり、塩基性吸着剤に分類される。
酸性の無機系吸着剤の例としては、酸性白土、活性白土、アルミニウムシリケート、シリカゲルが挙げられる。塩基性の無機系吸着剤の例としては、酸化マグネシウム、活性アルミナ、ゼオライト系吸着剤(ケイ酸アルミニウムナトリウムなどの含水アルミノケイ酸塩鉱物)、ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
吸着処理工程に用いる吸着剤としては、無機系吸着剤が好ましい。酸性吸着剤としては、酸性白土、活性白土、アルミニウムシリケートがより好ましく、活性白土、アルミニウムシリケートがさらに好ましく、アルミニウムシリケートが特に好ましい。塩基性吸着剤としては、活性アルミナ、ゼオライト系吸着剤、ハイドロタルサイト類化合物がより好ましく、活性アルミナ、ハイドロタルサイト類化合物がさらに好ましく、ハイドロタルサイト類化合物が特に好ましい。
吸着剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。酸性吸着剤および塩基性吸着剤の両方を使用する際、これらは同時に使用してもよいし、別の工程に分けて使用してもよい。
吸着処理工程は、加熱処理工程および固液分離工程と組合せて実施できる。例えば、以下の組合せ方が挙げられる。
(1)加熱処理工程より前に、吸着処理工程を実施する。
(2)吸着剤存在下にて、加熱処理工程および吸着処理工程を同時に実施する。
(3)加熱処理工程の後に吸着処理工程を実施する。その後、吸着剤の分離回収操作を兼ねて、固液分離工程を実施する。
(4)固液分離工程より後に、吸着処理を実施する。
吸着処理工程は、溶剤非存在下で実施してもよいし、溶剤存在下で実施してもよい。溶剤を用いて吸着処理工程を実施すると、通常は、溶剤をリサイクルする必要がある。そのため、溶剤を用いない方法が好ましい。仮に溶剤を用いる方法を採用するならば、溶剤量を少なくすることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の粘度が高く、取り扱いが困難な場合などでは、少量の溶剤で稀釈した溶液状態にて吸着処理工程を実施してもよい。吸着処理工程における、(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の濃度は、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
吸着処理工程の温度は、0℃~200℃が好ましく、20℃~180℃がより好ましい。溶剤非存在下で吸着処理工程を実施する場合には、高温で実施する方が好ましい。具体的には、0℃~250℃が好ましく、20℃~200℃がより好ましく、100℃~180℃がさらに好ましい。
吸着処理工程における吸着剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましく、0.5~10重量部がさらに好ましく、0.5~5重量部が特に好ましく、0.5~2重量部がより一層好ましい。吸着剤の使用量が上記の範囲内であれば、製造コストの上昇を防ぎ、適度な操作性を確保できる。
(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に吸着剤を接触させる方法の例としては、攪拌混合および固液分離を回分操作で行う回分式、容器に充填した吸着剤に重合体溶液を通液する固定層式、移動する吸着剤を重合体溶液に通じる移動層式、吸着剤を流動化させる流動層式が挙げられる。必要に応じて、分散効率を向上させる諸操作(容器の振盪、超音波照射など)を取り入れてもよい。
吸着処理工程の後、沈降分離などにより吸着剤を除去し、必要に応じて稀釈および水洗すれば、清澄な(メタ)アクリル系ポリマー鎖またはアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得られる。
〔2.シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の用途〕
本発明の一態様に係る製造方法によって得られるシリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、例えば、硬化性組成物の成分として使用できる。一実施形態において、硬化性組成物は、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含んでいる。一実施形態において、硬化性組成物は、その他の添加剤を含んでいる。ポリオキシアルキレン重合体系および添加剤は、本技術分野における公知の物質を使用できる。
[2.1.硬化性組成物に含まれうる添加剤]
(錫系硬化触媒)
硬化性組成物は、公知の縮合触媒を用いてシロキサン結合を形成することにより、架橋、硬化させることができる。このような縮合触媒の例として、錫系硬化触媒が挙げられる。錫系硬化触媒の具体例としては、ジアルキル錫カルボン酸塩類(ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレートなど);ジアルキル錫オキサイド類(ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの混合物など);4価錫化合物(ジアルキル錫オキサイド、ジアルキル錫ジアセテートなど)とアルコキシシリル基を有する低分子ケイ素化合物(テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなど)との反応物;2価の錫化合物類(オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫など);モノアルキル錫類(モノブチル錫化合物(モノブチル錫トリスオクトエート、モノブチル錫トリイソプロポキシドなど)、モノオクチル錫化合物など);アミン系化合物と有機錫化合物との反応物または混合物(ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物または混合物など);キレート化合物(ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジオクチル錫ビスアセチルセトナート、ジブチル錫ビスエチルアセトナート、ジオクチル錫ビスエチルアセトナートなど);錫アルコラート類(ジブチル錫ジメチラート、ジブチル錫ジエチラート、ジオクチル錫ジメチラート、ジオクチル錫ジエチラートなど)が挙げられる。
この中でも、キレート化合物(ジブチル錫ビスアセチルアセトナートなど)および錫アルコラート類は、シラノール縮合触媒としての活性が高い点が好ましい。また、ジブチル錫ジラウレートは、硬化性組成物に添加しても着色が少なく、廉価であり、入手が容易である点が好ましい。
錫系硬化触媒の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
(接着性付与剤)
硬化性組成物には、接着性付与剤を添加してもよい。接着付与剤を添加することにより、シーリング材がサイディングボードなどの被着体から剥離する危険性を低減できる(この剥離は、外力により目地幅などが変動することによって生じる)。また、接着性を向上させるためのプライマーを使用する必要性がなくなる場合もある。この場合は、施工作業の簡略化が期待される。
接着性付与剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、イソシアネート基含有シラン類(γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなど);アミノ基含有シラン類(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランなど);メルカプト基含有シラン類(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなど);エポキシ基含有シラン類(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなど);カルボキシシラン類(β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(β-カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなど);ビニル型不飽和基含有シラン類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシランなど);ハロゲン含有シラン類(γ-クロロプロピルトリメトキシシランなど);イソシアヌレートシラン類(トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。また、シランカップリング剤を変性させた誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステルなども、シランカップリング剤として用いることができる。
接着性付与剤の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
(可塑剤)
硬化性組成物には、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤と充填材(後述)とを併用すると、硬化物の伸びが大きくなったり、多量の充填材を混合できるようになったりする。
可塑剤の例としては、フタル酸エステル類(ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレートなど);非芳香族二塩基酸エステル類(ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなど);脂肪族エステル類(オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルなど);ポリアルキレングリコールのエステル類(ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなど);リン酸エステル類(トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなど);トリメリット酸エステル類、ポリスチレン類(ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレンなど);ポリブタジエン;ポリブテン;ポリイソブチレン;ブタジエン-アクリロニトリル;ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;炭化水素系油(アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなど);プロセスオイル類;ポリエーテル類(ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)、および、ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体など);エポキシ可塑剤類(エポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体およびそれらの混合物など);2塩基酸と2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類(セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどと、から得られるポリエステルなど);ビニル系重合体類(アクリル系可塑剤などのビニル系モノマーを、種々の方法で重合して得られる)が挙げられる。
エポキシ可塑剤類の具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ジ-(2-エチルヘキシル)4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレ-ト、エポキシブチルステアレ-トなどが挙げられる。上述したエポキシ可塑剤の中では、E-PSが好ましい。エポキシ基を有する化合物を可塑剤として使用すると、硬化物の復元性を高めることができる。
アクリル系可塑剤は、溶剤および連鎖移動剤を使用せずに、高温連続重合法にて作製できる(米国特許第4414370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5010166号明細書を参照)。アクリル系可塑剤の具体例としては、ARUFON UP-1000、UP-1020、UP-1110(以上、東亞合成(株)製)、JDX-P1000、JDX-P1010、JDX-P1020(以上、ジョンソンポリマー(株)製)が挙げられる。また、アルコキシシリル基を有するアクリル系反応性可塑剤を用いてもよい。このような可塑剤の具体例としては、ARFUON US-6100が挙げられる。
可塑剤の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、5~800重量部が好ましく、10~600重量部がより好ましく、10~500重量部がさらに好ましい。
(充填材)
硬化性組成物には、充填材を含有させてもよい。充填材の例としては木粉;補強性充填材(パルプ、木綿チップ、アスベスト、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、カーボンブラックなど);充填材(重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、べんがら、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛、シラスバルーンなど);繊維状充填材(石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバーなど)が挙げられる。
充填材の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、5~5000重量部が好ましく、10~2500重量部より好ましく、15~1500重量部が特に好ましい。
(物性調整剤)
硬化性組成物には、硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を含有させてもよい。物性調整剤を用いることにより、硬化物の硬度を上げたり、逆に硬化物の硬度を下げて伸びを出したりすることができる。
物性調整剤の例としては、アルキルアルコキシシラン類(メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシランなど);アルキルイソプロペノキシシラン(ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなど);官能基を有するアルコキシシラン類(γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなど);シリコーンワニス類;ポリシロキサン類が挙げられる。
物性調整剤の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体総量100重量部に対して、0.1~80重量部が好ましく、0.1~50重量部がより好ましい。
(チクソ性付与剤(垂れ防止剤))
硬化性組成物には、垂れを防止し、作業性を良くするために、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を含有させてもよい。
チクソ性付与剤の例としては、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;金属石鹸類(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなど)が挙げられる。
チクソ性付与剤の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、0.1~50重量部が好ましく、0.2~25重量部がより好ましい。
(光硬化性物質)
硬化性組成物には、光硬化性物質を含有させてもよい。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間で化学変化をおこし、物性的変化(硬化など)を生ずる物質である。光硬化性物質を含有させることにより、硬化物表面の粘着性(残留タック)を低減できる。典型的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近など)に、1日間、室温にて静置することにより硬化させることができる。光硬化性物質には、有機単量体、オリゴマー、樹脂およびこれらを含む組成物など、多くのものが知られており、その種類は特に限定されない。光硬化性物質の例としては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂が挙げられる。
不飽和アクリル系化合物の具体例としては、低分子量アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコールなど)の(メタ)アクリル酸エステル類;酸(ビスフェノールA、イソシアヌル酸)または低分子量アルコールなどを、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどで変性させた、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸エステル類(主鎖がポリエーテルであり末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、主鎖がポリエーテルであるポリオール中でビニル系モノマーをラジカル重合することにより得られるポリマーポリオール、主鎖がポリエステルで末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、主鎖がビニル系または(メタ)アクリル系共重合体であり主鎖中に水酸基を有するポリオールなど);エポキシ樹脂(ビスフェノールA型やノボラック型など)と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られるエポキシアクリレート系オリゴマー類;ポリオール、ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートなどを反応させることにより得られる分子鎖中に、ウレタン結合および(メタ)アクリル基を有する、ウレタンアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
光硬化性物質の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、0.01~30重量部が好ましい。
(空気酸化硬化性物質)
硬化性組成物には、空気酸化硬化性物質を含有させてもよい。空気酸化硬化性物質とは、空気中の酸素により架橋硬化しうる不飽和基を有している化合物を指す。空気酸化硬化性物質を含有させることにより、硬化物表面の粘着性(残留タック)を低減できる。典型的な空気酸化硬化性物質は、例えば空気中にて、室内に1日間静置することにより硬化させることができる。
空気酸化硬化性物質の例としては、乾性油(桐油、アマニ油など);乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;アクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂などを乾性油により変性させた物質;1,2-ポリブタジエン;1,4-ポリブタジエン;C5~C8ジエンの重合体または共重合体;C5~C8ジエンの重合体または共重合体の各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)が挙げられる。上述した中では、桐油、液状のジエン系重合体およびその変性物が好ましい。
空気酸化硬化性物質の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、0.01~30重量部が好ましい。
(酸化防止剤および光安定剤)
硬化性組成物には、酸化防止剤および/または光安定剤を含有させてもよい。酸化防止剤および光安定剤は、各種のものが知られている。例えば、[猿渡健市 他『酸化防止剤ハンドブック』大成社、1976年][大沢善次郎 監『高分子材料の劣化と安定化』シーエムシー、1990年、235-242ページ]などに記載された物質が挙げられる。
酸化防止剤の例としては、アデカスタブ PEP-36、アデカスタブ AO-23などのチオエーテル系酸化防止剤(以上、全て旭電化工業製);Irgafos38、Irgafos168、IrgafosP-EPQ(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)などリン系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;が挙げられる。上述した中では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、モノ(またはジもしくはトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]o-クレゾール、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコール(分子量約300)縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート挙げられる。
市販されている酸化防止剤の例としては、ノクラック200、ノクラックM-17、ノクラックSP、ノクラックSP-N、ノクラックNS-5、ノクラックNS-6、ノクラックNS-30、ノクラック300、ノクラックNS-7、ノクラックDAH(以上、全て大内新興化学工業製);アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-616、アデカスタブ AO-635、アデカスタブ AO-658、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-15、アデカスタブ AO-18、アデカスタブ 328、アデカスタブ AO-37(以上、全て旭電化工業製);IRGANOX-245、IRGANOX-259、IRGANOX-565、IRGANOX-1010、IRGANOX-1024、IRGANOX-1035、IRGANOX-1076、IRGANOX-1081、IRGANOX-1098、IRGANOX-1222、IRGANOX-1330、IRGANOX-1425WL(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製);SumilizerGM、SumilizerGA-80、SumilizerGS(以上、全て住友化学製)が挙げられる。
光安定剤の例としては、紫外線吸収剤(チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)などのベンゾトリアゾール系化合物;チヌビン1577などトリアジン系光安定剤;CHIMASSORB81などのベンゾフェノン系化合物;チヌビン120(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)などのベンゾエート系化合物;ヒンダードアミン系化合物)が挙げられる。上述した中では、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリディニル)エステルが挙げられる。
市販されている光安定剤の例としては、チヌビン622LD、チヌビン144、CHIMASSORB944LD、CHIMASSORB119FL;(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、アデカスタブ LA-52、アデカスタブ LA-57、アデカスタブ LA-62、アデカスタブ LA-67、アデカスタブ LA-63、アデカスタブ LA-68、アデカスタブ LA-82、アデカスタブ LA-87(以上、全て旭電化工業製);サノールLS-770、サノールLS-765、サノールLS-292、サノールLS-2626、サノールLS-1114、サノールLS-744、サノールLS-440(以上、全て三共製)が挙げられる。
酸化防止剤および光安定剤を、併用してもよい。これらを併用することにより、それぞれの効果がさらに向上し、硬化物の耐熱性、耐候性などが向上することがある。例えば、耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物(HALS)とを組合せることできる。この組合せは、それぞれの薬剤の効果をより向上させることができ、好ましい。
酸化防止剤および/または光安定剤の配合量は、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対して、それぞれ、0.1~20重量部が好ましい。
[2.2.硬化性組成物の形態]
硬化性組成物は、1成分型であってもよいし、2成分型であってもよい。1成分型の硬化性組成物とは、全ての配合成分を予め配合した後、密封保存したものである。1成分型の硬化性組成物は、使用後に空気中の湿気により硬化する。一方、2成分型の硬化性組成物においては、硬化触媒、充填材、可塑剤、水などの成分を配合した硬化剤を別途用意する。2成分型の硬化性組成物は、硬化剤と、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を含む主剤とを混合して使用する。なお、2成分型の硬化性組成物は、主剤および硬化剤以外の剤(着色剤など)を備えていてもよい。
硬化性組成物を2成分型として調製すると、2成分の混合時に、着色剤をさらに添加することができる。このことにより、例えば、限られた硬化性組成物の種類から、サイディングボードの色に合わせて豊富な色揃えのシーリング材を提供することができるようになる。それゆえ、2成分型の硬化性組成物は、多色化に対する市場からの要望に容易に応えることができ、低層建物用途などに好適である。着色剤は、例えば、顔料、可塑剤、必要に応じて充填材を混合し、ペースト化したものが、作業性が高く好ましい。
また、2成分型の硬化性組成物は、2成分の混合時に遅延剤を添加することができる。これにより、硬化速度を作業現場にて微調整することができる。
[2.3.硬化性組成物の用途]
硬化性組成物およびこれを硬化させてなる硬化物の用途は、特に限定はされない。一例として、建築用および工業用のシーリング材(ワーキングジョイントに用いられる高耐久性建築用弾性シーリング材に加えて、サイディングボード用シーリング材、複層ガラス用シーリング材、車両用シーリング材など)、電気・電子部品材料(太陽電池裏面封止剤など)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材など)、粘着剤、接着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、反応性ホットメルト接着剤、塗料、粉体塗料、コーティング材、発泡体、缶蓋などのシール材、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、注型材料、各種成形材料、人工大理石、網入りガラスや合わせガラスの切断部の防錆・防水用封止材、防振・制振・防音・免震材料(自動車、船舶、家電などに使用される)、液状シール剤(自動車部品、電機部品、各種機械部品などに使用される)、防水剤が挙げられる。
上述した中でも、シーリング材および接着剤として特に有用である。とりわけ、耐候性もしくは耐久性が要求される用途、または透明性が必要な用途に有用である。また、この硬化性組成物および硬化物は、耐候性および接着性に優れるので、目地埋めのない外壁タイル接着工法に使用できる。さらに、線膨張係数の異なる材料の接着や、ヒートサイクルにより繰り返し変位を受けるような部材の接着に用いる弾性接着剤の用途に有用である。さらに、透明性を活用して、下地が見える用途でのコーティング剤、透明材料(ガラス、ポリカ、メタクリル樹脂など)の貼り合わせに用いる接着剤としても有用である。
〔まとめ〕
<1>
アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にジアルコキシヒドロシラン化合物を反応させるヒドロシリル化工程を含む、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法であって、
上記ヒドロシリル化工程を、上記ジアルコキシヒドロシラン化合物の沸点±15℃の温度条件にて行う、製造方法。
<2>
上記ヒドロシリル化工程において投入される上記ジアルコキシヒドロシラン化合物の量は、上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれているアルケニル基を1当量として、1.0~2.0当量である、<1>に記載の製造方法。
<3>
上記ヒドロシリル化工程において、上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれているアルケニル基のうち90%以上がヒドロシリル化される、<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>
上記ジアルコキシヒドロシラン化合物は、メチルジメトキシシランである、<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5>
(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合して(メタ)アクリル系ポリマー鎖を得る重合工程と、
上記(メタ)アクリル系ポリマー鎖の少なくとも一方の末端にアルケニル基を導入して、上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得る導入工程と、
をさらに含む、<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>
上記ヒドロシリル化工程に供される上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記重合工程で使用される重合触媒を、0を超え1ppm以下含有する、<5>に記載の製造方法。
<7>
上記重合工程は、リビングラジカル重合によって行われる、<5>または<6>に記載の製造方法。
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
〔物性の測定方法〕
[残存Cu量]
アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に、超高純度硝酸および超高純度硫酸を加えて、マイクロウェーブを照射して分解させた。ICP質量分析装置(HP-4500、横河アナリティカルシステムズ株式会社製)を用いて、分解物に残存している銅の量を測定および定量した。
〔実施例1〕
(重合工程)
リビングラジカル重合によって(メタ)アクリル系ポリマー鎖を得た。具体的な手順は下記の通りである。
1. 攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素した。
2. 5.8gの臭化第一銅と、200gの(メタ)アクリル酸エステルモノマー(141gのアクリル酸ブチル、22gのアクリル酸エチル、および37gのアクリル酸ステアリル)とを仕込み、加熱攪拌した。
3. 90gのアセトニトリルと、10.7gの開始剤(ジエチル2,5-ジブロモアジペート)とを加え、混合した。混合液の温度は、約65℃に調節した。
4. 0.15gのペンタメチルジエチレントリアミンを加えて、重合反応を開始させた。
5. 801gの(メタ)アクリル酸エステルモノマー(566gのアクリル酸ブチル、86gのアクリル酸エチル、および149gのアクリル酸ステアリル)を逐次加えて、重合反応を進行させた。重合反応中には、ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜追加し、重合速度を調整した。重合反応の全体で使用したペンタメチルジエチレントリアミンの総量は、1.7gであった。重合が進行すると反応熱により反応系の温度は上昇傾向を示すが、反応容器内の温度は約80℃~約90℃に調整した。
6. モノマー転化率(重合反応率)が95%となった時点で、揮発分を減圧脱揮して除去し、(メタ)アクリル系ポリマー鎖を得た。
(導入工程)
(メタ)アクリル系ポリマー鎖の末端にアルケニル基を導入して、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。具体的な手順は以下の通りである。
1. 重合工程で得られた(メタ)アクリル系ポリマー鎖に、200gの1,7-オクタジエン、360gのアセトニトリル、および3.1gのペンタメチルジエチレントリアミンを加えた。このときに加えた1,7-オクタジエンの量は、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の重合成長末端に対して30当量である。
2. 反応容器内の温度を約80℃~約90℃に調節しながら4時間加熱攪拌した。これにより、(メタ)アクリル系ポリマー鎖の末端に1,7-オクタジエンを反応させ、アルケニル基を導入した。
(固液分離工程、加熱処理工程および吸着処理工程)
アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を精製した。具体的な手順は以下の通りである。
1. 導入工程の反応終了時点において、反応容器内の気相部に酸素-窒素混合ガスを導入した。
2. 反応容器内の温度を約80℃~約90℃に保ちながら、反応液を4時間加熱攪拌した。これにより、反応液中に含まれる重合触媒と酸素とを接触させた。
3. アセトニトリルおよび未反応の1,7-オクタジエンを減圧脱揮して除去した。
4. 1000gの酢酸ブチルを加えて稀釈した。
5. 10gの濾過助剤(珪藻土)を加えて攪拌した。
6. 重合工程で使用した触媒成分を濾別した。
7. 濾液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤(キョーワード700SEN-Sおよびキョーワード500SH)を加えた。
8. 反応容器内の気相部に酸素-窒素混合ガスを導入して、約100℃にて1時間加熱攪拌した。
9. 不溶成分(吸着剤など)を濾別して、清澄な濾液を得た。工程7~9は合計2回行った。
10. 濾液を濃縮して、粗精製物を得た。
11. 粗精製物に、熱安定剤(スミライザーGS:住友化学(株)製)および吸着剤(キョーワード700SEN-S、キョーワード500SH)を加えた。
12. 反応容器内を昇温して、約170℃~約200℃の高温下にて2時間程度、加熱攪拌および減圧脱揮を施した。これにより、粗生成物を吸着精製した。
13. アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に、吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH)をさらに加えた。
14. 反応容器内の気相部を酸素-窒素混合ガス雰囲気とし、約170℃~約200℃の高温下にて4時間程度加熱攪拌した。
15. 1000gの酢酸ブチルを加えて稀釈した。その後、吸着剤を濾別した。
16. 濾液を濃縮して、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。このアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、両方の末端にアルケニル基を有していると見做せる。
(ヒドロシリル化工程)
アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にヒドロシラン化合物を反応させ、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。具体的な手順は下記の通りである。
1. 1000gのアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体、0.83gのメチルジメトキシシラン(DMS)、5.4gのオルト蟻酸メチル、および0.304mLのビス(1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のイソプロパノール溶液(1.32×10-4mmol/μL)を63℃にて加熱攪拌した。攪拌時間は2時間であった。
2. 揮発分(未反応のメチルジメトキシシランなど)を減圧留去した。これにより、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。
〔実施例2、比較例1~8〕
ヒドロシリル化工程における温度、反応時間および投入したヒドロシラン化合物の量を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の手順により、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。
Figure 2022182161000001
〔結果〕
比較例1~3に係る製造方法は、従来の製造方法に該当する。すなわち、ヒドロシリル化工程において大過剰(3.0~4.0当量)のメチルジメトキシシランを投入し、メチルジメトキシシランの沸点(61℃)よりも遥かに高い温度にてヒドロシリル化を進めた。比較例4、5を参照すると、高温でヒドロシリル化工程を行った場合には、一定限度を超えてメチルジメトキシシランの投入量を減らすと、ヒドロシリル化の反応効率が低下した。比較例6、7参照すると、メチルジメトキシシランの沸点(61℃)よりも遥かに高い温度領域でシリル化工程を行う際に反応時間を長くしても、シリル基変換率は高くならなかった。これに対し、実施例1、2に係る製造方法では、メチルジメトキシシランの沸点(61℃)よりも2℃または13℃だけ高い温度でヒドロシリル化工程を行った。
実施例1、2と比較例1~3とを比較すると、実施例1に係る製造方法では、メチルジメトキシシランの投入量が少ないにもかかわらず、シリル基変換率が許容される範囲に含まれていた。比較例7に係る製造方法では、メチルジメトキシシランの沸点(61℃)よりも29℃だけ高い温度でシリル化工程を行った。その結果、実施例1、2と比較してシリル基変換率が低かった。
〔実施例3、比較例9、10〕
本発明の一実施形態に係る製造方法における、ヒドロシリル化反応の継時的変化を検討した。ヒドロシリル化工程における温度、反応時間および投入したヒドロシラン化合物の量を表2の通り変更した以外は、実施例1と同様の手順により、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。
Figure 2022182161000002
〔結果〕
比較例9は、従来の製造方法に該当する(反応時間以外は比較例1と同等である)。比較例9では、反応開始から0.5時間または2時間におけるシリル基変換率は、変わらなかった。すなわち、比較例9の反応条件では、ヒドロシリル化反応は0.5時間で停止してしまい、その後ほとんど進行しなかったと考えられる。比較例10は、温度条件を従来の製造方法と同じにし、投入するメチルジメトキシシランを減量した。比較例10では、反応開始から0.5時間または2時間におけるシリル基変換率は、変わらなかった。すなわち、比較例10の反応条件では、ヒドロシリル化反応は0.5時間で停止してしまい、その後ほとんど進行しなかったと考えられる。
実施例3に係る製造方法では、メチルジメトキシシランの沸点(61℃)よりも3℃だけ高い温度でヒドロシリル化工程を行った。実施例3では、反応開始から0.5時間~2時間にかけて、シリル基変換率が上昇していた。すなわち、実施例3の反応条件では、反応開始から2時間以上にわたって、ヒドロシリル化反応が進行していたと考えられる。
〔実施例4〕
ヒドロシリル化工程に供するアルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の精製度を上げ、重合触媒の含有量を減らすことによる効果を検討した。実施例4では、吸着処理工程において使用した吸着剤の量を、実施例1の約2倍にした。それ以外の条件は、実施例2と同様にして、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。
Figure 2022182161000003
実施例4に係る製造方法は、実施例2に係る製造方法と比較して、シリル基変換率が大幅に向上していた。このシリル基変換率は、従来の製造方法に該当する比較例1~3に係る製造方法によって達成される値よりも高かった。このことから、アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の重合触媒含有率を低下させる実施例4に係る製造方法は、好ましい態様であることが分かる。
本発明は、シーリング材、接着剤などに利用することができる。

Claims (7)

  1. アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体にジアルコキシヒドロシラン化合物を反応させるヒドロシリル化工程を含む、シリル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法であって、
    上記ヒドロシリル化工程を、上記ジアルコキシヒドロシラン化合物の沸点±15℃の温度条件にて行う、製造方法。
  2. 上記ヒドロシリル化工程において投入される上記ジアルコキシヒドロシラン化合物の量は、上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれているアルケニル基を1当量として、1.0~2.0当量である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記ヒドロシリル化工程において、上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体に含まれているアルケニル基のうち90%以上がヒドロシリル化される、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 上記ジアルコキシヒドロシラン化合物は、メチルジメトキシシランである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. (メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合して(メタ)アクリル系ポリマー鎖を得る重合工程と、
    上記(メタ)アクリル系ポリマー鎖の少なくとも一方の末端にアルケニル基を導入して、上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体を得る導入工程と、
    をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 上記ヒドロシリル化工程に供される上記アルケニル基末端を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記重合工程で使用される重合触媒を、0を超え1ppm以下含有する、請求項5に記載の製造方法。
  7. 上記重合工程は、リビングラジカル重合によって行われる、請求項5または6に記載の製造方法。
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