JP2022179924A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022179924000001
【課題】同じ時間帯で取得したノックセンサの出力信号を用いて、バックグラウンドのノイズ成分とノック成分とを精度よく取得し、ノイズ成分及びノック成分に基づいて、ノックの発生を精度よく判定することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】演算周期ごとに、ノックセンサの出力信号に含まれる、複数の解析周波数の成分の強度を算出し、演算周期ごとに、複数の解析周波数の内、ノック発生の判定用の解析周波数以外の解析周波数に設定された補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、補正用強度を算出し、前記演算周期ごとに、判定用の解析周波数の成分の強度を、補正用強度に基づき補正して、補正後の判定用の強度を算出し、各演算周期で算出された補正後の判定用の強度に基づいて、ノックの発生の有無を判定する内燃機関の制御装置。
【選択図】図2

Description

本願は、内燃機関の制御装置に関するものである。
最適な燃焼効率となる点火時期に設定すると、環境、使用燃料、運転状態の変化によってはノッキング(以下、ノックと称す)が発生する場合がある。過大なノックが発生すると、内燃機関の損傷に繋がるため、ノックセンサの出力信号によりノックの発生を検出して、点火時期をノックの発生しない遅角側に変化させる必要がある。
特開昭59-39972号公報
ところで、制御装置が検知するノックセンサの出力信号は、ノックセンサの個体バラツキ、制御装置の入力回路のバラツキ等により、同じ強さのノッキング振動であっても変動する。このセンサバラツキにより、ノック発生時の、ノックセンサの出力信号の強度が、増加又は減少し、ノック発生の誤判定が発生する問題がある。
特許文献1には、ノック発生を判定する比較基準値を予め設定した一定値に固定すると、ノックセンサの出力特性の個体バラツキ又は経年変化等によって、ノック発生の検出漏れが発生することが記載されている。特許文献1の技術では、ノックセンサの出力信号を、ノッキング固有の周波数帯域(7~8kHz)を通過するバンドパスフィルタ48を介して取得し、ピークホールド回路50により、フィルタ後のノックセンサの出力信号のピーク値を取得し、整流回路51及び積分回路55により、フィルタ後のノックセンサの出力信号の振幅を平均化した値を、ピークホールドを行うノック判定期間の直前に、バックグラウンド信号値として取得し、バックグラン信号値に応じて比較基準値を変化させ、比較基準値とピーク値とが比較され、ノック発生の有無が判定される。
しかしながら、特許文献1の技術では、ノック判定期間の直前の信号が、バックグラウンド信号値として設定されるが、ノックの発生現象には様々な偶発的な要素を含み、ノック発生時期のばらつきが大きい。そのため、バックグラウンド信号値にノック成分が含まれることがあり、真のバックグラウンドのノイズ成分による信号値に比べて、算出されたバックグラウンド信号値が大きくなり、比較基準値が大きくなる場合がある。この場合は、強度の大きいノック発生は検出できるが、強度の小さいノック発生を検出できなくなる。また、ピークホールドを行うノック判定期間において、バックグラウンドのノイズ成分が増加した場合は、ノックの未発生時でも、ピーク値が増加し、誤ってノックが発生したと判定される可能性がある。
従って、特許文献1の技術では、ノックセンサの出力信号の同じ周波数帯の成分を用い、設定時間帯を分けて、バックグラウンド信号値、及び判定用の信号値(ピーク値)を設定しているので、発生時期のバラツキの大きいノックの発生現象に対して、ノック発生による成分と、バックグラウンドのノイズ成分との分離精度が低下し、ノックの判定精度が低下する問題があり、また、ノック発生期間において、バックグラウンドのノイズ成分が変動した場合に、ノックの判定精度が低下する問題がある。
そこで、本願は、同じ時間帯で取得したノックセンサの出力信号を用いて、バックグラウンドのノイズ成分とノック成分とを精度よく取得し、ノイズ成分及びノック成分に基づいて、ノックの発生を精度よく判定することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本願に係る内燃機関の制御装置は、
演算周期ごとに、内燃機関に設けられたノックセンサの出力信号に含まれる、複数の解析周波数の成分の強度を算出するノック信号算出部と、
前記演算周期ごとに、前記複数の解析周波数の内、ノック発生の判定用の解析周波数以外の解析周波数に設定された補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、補正用強度を算出する補正用強度算出部と、
前記演算周期ごとに、前記判定用の解析周波数の成分の強度を、前記補正用強度に基づき補正して、補正後の判定用の強度を算出する強度補正部と、
各前記演算周期で算出された前記補正後の判定用の強度に基づいて、ノックの発生の有無を判定するノック判定部と、を備えたものである。
本願に係る内燃機関の制御装置によれば、演算周期ごとに、ノック発生の判定用の解析周波数の成分の強度と、判定用の解析周波数とは異なる補正用の解析周波数の成分の強度とが算出され、補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて補正用強度が算出され、判定用の解析周波数の成分の強度を、補正用強度に基づき補正して、補正後の判定用の強度が算出される。よって、発生時期のバラツキの大きいノックの発生現象に対して、同じ時間帯で取得したノックセンサの出力信号を用いて、バックグラウンドのノイズ成分の強度とノック成分の強度とを精度よく分離して取得することができ、ノックの発生期間において、バックグラウンドのノイズ成分が変動した場合でも、ノイズ成分の挙動を精度よく取得し、ノック発生判定に反映させることができる。よって、ノック発生判定の精度を高めることができる。
実施の形態1に係る内燃機関の概略構成図である。 実施の形態1に係る内燃機関の制御装置のブロック図である。 実施の形態1に係る内燃機関の制御装置のハードウェア構成図である。 実施の形態1に係る複数の解析周波数の成分の強度の算出を説明する図である。 実施の形態1に係るノックセンサのゲイン特性を説明する図である。 実施の形態1に係るゲインの特性データを説明する図である。 実施の形態1に係る強度増加特性データを説明する図である。 実施の形態1に係るセンサゲインのバラツキを説明する図である。 実施の形態1に係るセンサゲインのバラツキによる強度の増減を説明する図である。 実施の形態1に係るセンサゲインのバラツキに対する、補正後の各解析周波数の成分を説明する図である。 実施の形態1に係る補正後の判定用の強度によるノック判定を説明する図である。
1.実施の形態1
実施の形態1に係る内燃機関1の制御装置50(以下、単に制御装置50と称す)について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る内燃機関1の概略構成図である。なお、本実施の形態に係る内燃機関1は、複数の燃焼室25(例えば、3つ)を備えているが、図1には便宜上、1つの燃焼室25のみを示している。内燃機関1及び制御装置50は、車両に搭載され、内燃機関1は、車両(車輪)の駆動力源となる。
1-1.内燃機関1の構成
まず、内燃機関1の構成について説明する。内燃機関1は、空気と燃料の混合気を燃焼する燃焼室25を有している。内燃機関1は、燃焼室25に空気を供給する吸気路23と、燃焼室25で燃焼した排気ガスを排出する排気路17とを備えている。内燃機関1は、吸気路23を開閉するスロットルバルブ6を備えている。スロットルバルブ6は、制御装置50により制御される電気モータにより開閉駆動される電子制御式スロットルバルブとされている。スロットルバルブ6には、スロットルバルブ6の開度に応じた電気信号を出力するスロットル開度センサ7が設けられている。
吸気路23の最上流部には、吸気路23に吸入された空気を浄化するエアクリーナ24が設けられている。スロットルバルブ6の上流側の吸気路23には、吸気路23に吸入される吸入空気流量に応じた電気信号を出力するエアフローセンサ3が設けられている。スロットルバルブ6の下流側の吸気路23の部分は、吸気マニホールド11とされており、複数の燃焼室25に連結されている。吸気マニホールド11の上流側の部分は、吸気脈動を抑制するサージタンクとされている。
吸気マニホールド11には、吸気マニホールド11内の気体の圧力であるマニホールド圧に応じた電気信号を出力するマニホールド圧センサ8が設けられている。なお、エアフローセンサ3及びマニホールド圧センサ8の何れか一方のみが設けられてもよい。吸気マニホールド11の下流側の部分には、燃料を噴射するインジェクタ13が設けられている。なお、インジェクタ13は、燃焼室25内に直接燃料を噴射するように設けられてもよい。
燃焼室25の頂部には、空気と燃料の混合気に点火する点火プラグ18と、点火プラグ18に点火エネルギーを供給する点火コイル16と、が設けられている。また、燃焼室25の頂部には、吸気路23から燃焼室25内に吸入される吸入空気量を調節する吸気バルブ14と、シリンダ内から排気路17に排出される排気ガス量を調節する排気バルブ15と、が設けられている。吸気バルブ14には、吸気バルブの開閉タイミングを可変にする可変バルブタイミング機構14aが設けられている。排気バルブ15には、排気バルブの開閉タイミングを可変にする可変バルブタイミング機構15aが設けられている。吸気及び排気の可変バルブタイミング機構14a、15bは、それぞれ、バルブの開閉タイミングを変化させる電動アクチュエータを有している。
内燃機関1のクランク軸には、外周に予め定められた角度間隔で複数の歯が設けられた信号プレートが設けられている。クランク角センサ9は、クランク軸の信号プレートの歯に対向してシリンダブロックに固定されており、歯の通過に同期したパルス信号を出力する。図示は省略するが、内燃機関1のカム軸には、外周に予め定められた角度間隔で複数の歯が設けられた信号プレートが設けられている。カム角センサ10は、カム軸の信号プレートの歯に対向して固定されており、歯の通過に同期したパルス信号を出力する。
制御装置50は、クランク角センサ9及びカム角センサ10の2種類の出力信号に基づいて、各ピストン5の上死点を基準としたクランク角度を検出すると共に、各燃焼室25の行程を判別する。
シリンダブロックにはノックセンサ12が固定されている。ノックセンサ12は、内燃機関1の振動に応じた信号(振動波形信号)を出力する。ノックセンサ12は、圧電素子等により構成される。ノックセンサ12は、非共振タイプとされている。
なお、内燃機関1に、外部EGR機構、可変バルブリフト機構、可変圧縮比機構、ターボチャージャ機構、スワールコントロールバルブ機構、タンブルコントロールバルブ機構等の公知の各種の機構が設けられ、制御装置50により制御されるように構成されてもよい。また、内燃機関1に、吸気及び排気の可変バルブタイミング機構14a、15bの一方又は双方向が設けられてなくてもよい。
1-2.制御装置50の構成
次に、制御装置50について説明する。制御装置50は、内燃機関1を制御対象とする制御装置である。図2のブロック図に示すように、制御装置50は、ノック信号算出部51、補正用強度算出部52、強度補正部53、ノック判定部54、及び点火制御部55等の制御部を備えている。制御装置50の各制御部51~55等は、制御装置50が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御装置50は、図3に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90にバス等の信号線を介して接続された記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、および演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93等を備えている。
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、および各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。
記憶装置91として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の揮発性及び不揮発性の記憶装置が備えられている。入力回路92は、各種のセンサ及びスイッチが接続され、これらセンサ及びスイッチの出力信号を演算処理装置90に入力するA/D変換器等を備えている。出力回路93は、電気負荷が接続され、これら電気負荷に演算処理装置90から制御信号を出力する駆動回路等を備えている。
そして、制御装置50が備える各制御部51~55等の各機能は、演算処理装置90が、ROM、EEPROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入力回路92、および出力回路93等の制御装置50の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各制御部51から56等が用いる強度増加特性データ、ゲインの特性データ、閾値等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM、EEPROM等の記憶装置91に記憶されている。また、各制御部51~55等が算出したノックセンサの出力信号、複数の解析周波数の成分の強度、補正用強度、補正後の判定用の強度等の各演算値および各検出値のデータは、RAM等の記憶装置91に記憶される。
本実施の形態では、入力回路92には、エアフローセンサ3、スロットル開度センサ7、マニホールド圧センサ8、クランク角センサ9、カム角センサ10、ノックセンサ12、及びアクセルポジションセンサ26等が接続されている。出力回路93には、スロットルバルブ6(電気モータ)、インジェクタ13、吸気バルブ及び排気バルブの可変バルブタイミング機構14a、15b、及び点火コイル16等が接続されている。なお、制御装置50には、図示していない各種のセンサ、スイッチ、及びアクチュエータ等が接続されている。
制御装置50は、エアフローセンサ3又はマニホールド圧センサ8の出力信号等に基づいて吸入空気量を検出し、スロットル開度センサ7の出力信号に基づいてスロットル開度を検出し、アクセルポジションセンサ26の出力信号に基づいてアクセル開度を検出する。制御装置50は、クランク角センサ9及びカム角センサ10の出力信号に基づいてクランク角度及び回転速度、並びに吸気バルブ14の開閉タイミングを検出する。
制御装置50は、基本的な制御として、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、燃料噴射量、点火時期等を算出し、インジェクタ13及び点火コイル16等を駆動制御する。点火制御については、後述する。制御装置50は、アクセル開度等に基づいて、運転者が要求している内燃機関1の出力トルクを算出し、当該要求出力トルクを実現する吸入空気量となるように、スロットルバルブ6等を制御する。具体的には、制御装置50は、目標スロットル開度を算出し、スロットル開度が目標スロットル開度に近づくように、スロットルバルブ6の電気モータを駆動制御する。
また、制御装置50は、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、吸気バルブの目標開閉タイミング及び排気バルブの目標開閉タイミングを算出し、各目標開閉タイミングに基づいて、吸気及び排気の可変バルブタイミング機構14a、15aを駆動制御する。
1-2-1.ノック信号算出部51
ノック信号算出部51は、入力回路92のA/D変換器により、各燃焼サイクルに対応して設定されたノック判定期間の間にサンプリング周期でノックセンサ12の出力信号をA/D変換させ、ノックセンサ12の出力信号を取得する。サンプリング周期で取得されたノックセンサ12の出力信号は、所定の記憶期間分、RAM等の記憶装置91に記憶される。
ノック信号算出部51は、演算周期ごとに、ノックセンサ12の出力信号に含まれる複数の解析周波数の成分の強度を算出する。
本実施の形態では、ノック信号算出部51は、各燃焼サイクルに対応して設定されたノック判定期間において演算周期ごとに、直前の処理期間の間に取得された複数のノックセンサ12の出力信号に対してフーリエ変換処理又はバンドパスフィルタ処理等を行って、複数の解析周波数の成分の強度を算出する。各燃焼サイクルのノック判定期間は、各気筒の点火時期の前後の所定の角度範囲の期間(例えば、上死点前10度から上死点後60度の期間)に設定される。処理期間は、例えば、演算周期に設定される。
例えば、ノック信号算出部51は、フーリエ変換処理として、演算周期ごとに、処理期間の間に取得された複数のノックセンサ12の出力信号に対して離散フーリエ変換(DFT)又は短時間フーリエ変換(STFT)等を行って、複数の解析周波数のスペクトルを算出し、各解析周波数のスペクトルの大きさを、各解析周波数の成分の強度として算出する。
例えば、図4にフーリエ変換処理の結果を示すように、複数の解析周波数は、所定の周波数区間における所定の周波数間隔ごとの複数の周波数に設定されており、各解析周波数について強度が算出される。例えば、周波数区間は、例えば、4kHzから22kHzに設定され、周波数間隔は、2kHzに設定され、複数の解析周波数は、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22kHzに設定される。ノック判定に用いられる周波数帯は、通常、5kHz~20kHz程度であり、この周波数帯をカバーできるように、複数の解析周波数が設定される。
或いは、ノック信号算出部51は、バンドパスフィルタ処理として、各燃焼サイクルに対応して設定されたノック判定期間において演算周期ごとに、直前の処理期間の間に取得された複数のノックセンサ12の出力信号に対して、無限インパルス応答(IIR)フィルタ又は有限インパルス応答(FIR)フィルタ等を行って、複数の解析周波数の成分を取得し、各解析周波数の成分の大きさを、各解析周波数の成分の強度として算出してもよい。複数の解析周波数のそれぞれについて、各解析周波数の成分を通過させるバンドパスフィルタ処理が行われ、各解析周波数の成分が抽出される。すなわち、複数の解析周波数の数のバンドパスフィルタ処理が並列して行われる。
なお、ノック信号算出部51は、判定用の解析周波数及び補正用の解析周波数のみの成分の強度を算出してもよい。
<センサのゲイン特性の補正>
ノックセンサによっては、図5に示すように、各解析周波数のゲインが変化し、判定用の解析周波数のゲインと、補正用の解析周波数のゲインとが異なる場合がある。この場合は、ゲインの異なりにより、補正用強度による判定用の解析周波数の成分の強度の補正精度が低下する。
本実施の形態では、ノック信号算出部51は、ゲインの特性データを用いて、複数の解析周波数の成分の強度を補正するように構成されている。ゲインの特性データは、ノックセンサに入力される各解析周波数の振動成分の強度に対する、ノック信号算出部51により算出される各解析周波数の成分の強度のゲインの特性データである。例えば、ゲインの特性データは、図6に示すように、解析周波数ごとにゲインが設定されたマップデータとされ、ROM等の記憶装置に予め記憶されている。特性データのゲインには、基準ゲインに対するゲイン比などが設定されるとよい。
ノック信号算出部51は、ゲインの特性データから取得した各解析周波数のゲインの逆数に応じた補正係数(例えば、ゲインの逆数)を、各解析周波数の成分の強度に乗算した値を、最終的な各解析周波数の成分の強度として算出する。
本実施の形態では、ノック判定に用いられる周波数帯(例えば、5kHz~20kHz)において、ゲインが一定であるノックセンサが用いられており、ゲインの特性データによる補正が行われなくてもよい。
1-2-2.補正用強度算出部52
補正用強度算出部52は、演算周期ごとに、複数の解析周波数の内、ノック発生の判定用の解析周波数以外の解析周波数に設定された補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、補正用強度を算出する。
<補正用の解析周波数の設定>
補正用強度算出部52は、ノック発生時に強度が大きくなるノック発生の判定用の解析周波数以外の解析周波数に、補正用の解析周波数を設定する。例えば、補正用強度算出部52は、ノック判定期間ごとに、補正用の解析周波数を設定する。
本実施の形態では、補正用強度算出部52は、複数の解析周波数の内、ノック発生時に強度が閾値よりも小さくなる特定の解析周波数を、補正用の解析周波数に設定する。例えば、図4に示すように、中央品のノックセンサが用いられる場合に、ノック発生時に強度が閾値よりも小さくなる単数又は複数の解析周波数(図4の例では、12、20kHzを除く8つ(4~10、14~18、22kHz)が、補正用の解析周波数に設定される。
図4の例では、判定用の解析周波数は、20kHzに設定されており、補正用の解析周波数に設定されていないが、12kHzの強度も、ノック発生時の強度が閾値よりも高くなるため、補正用の解析周波数に設定されていない。このように、判定用の解析周波数以外にもノック発生時に強度が閾値よりも大きくなる解析周波数があり、このような解析周波数が、補正用の解析周波数に設定されないようにできる。強度が閾値よりも小さくなる全ての解析周波数が、補正用の解析周波数に設定されなくてもよく、一部の解析周波数が、補正用の解析周波数に設定されてもよい。
なお、後述する図11に示すように、ノックが発生したノック判定期間の間であっても、各時点において、判定用の解析周波数の成分の強度が変化するため、判定用の解析周波数の成分の強度が最大になる時点の、各解析周波数の強度に基づいて、補正用の解析周波数が設定される。
内燃機関の運転状態によって、ノック発生時に強度が閾値よりも小さくなる解析周波数が変化する。そこで、補正用強度算出部52は、内燃機関の特定の運転状態の動作点ごとに、ノック発生時の各解析周波数の成分の強度の増加に関する情報が予め設定された強度増加特性データを用いて、現在の運転状態に対応する補正用の解析周波数を設定する。
本実施の形態では、特定の運転状態として、回転速度Neが用いられている。なお、特定の運転状態として、回転速度Neに加えて、筒内吸入空気量等の他の運転状態が用いられてもよい。図7に示すように、強度増加特性データは、特定の運転状態(本例では、回転速度Ne)の予め設定された複数の動作点のそれぞれについて、複数の解析周波数と、ノック発生時の各解析周波数の強度との関係が予め設定されたマップデータとされている。そして、補正用強度算出部52は、強度増加特性データを参照し、現在の運転状態(回転速度Ne)に対応する各解析周波数の強度を取得する。そして、補正用強度算出部52は、図4に示すように、取得した各解析周波数の強度と、閾値を比較し、強度が閾値よりも低くなる単数又は複数の解析周波数を、補正用の解析周波数として設定する。一方、判定用の解析周波数は、ノック発生時に強度が最大になる解析周波数に対応して設定される。なお、判定用の解析周波数は、強度増加特性データを用いて設定されてもよい。
或いは、強度増加特性データは、特定の運転状態(本例では、回転速度Ne)の動作点ごとに、単数又は複数の補正用の解析周波数の設定情報が予め設定されたマップデータとされてもよい。そして、補正用強度算出部52は、強度増加特性データを参照し、現在の運転状態(回転速度Ne)に対応する単数又は複数の補正用の解析周波数の設定情報を取得し、単数又は複数の補正用の解析周波数を設定してもよい。
また、補正用強度算出部52は、強度増加特性データを用いずに、補正用の解析周波数を、予め設定された特定の解析周波数に設定してもよい。
<補正用強度の算出>
補正用強度算出部52は、演算周期ごとに、補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、補正用強度を算出する。本実施の形態では、補正用強度算出部52は、演算周期ごとに、ノック信号算出部51により算出された複数の解析周波数の成分の強度から、設定された補正用の解析周波数に対応する強度を選択し、選択した補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて補正用強度を算出する。
複数の補正用の解析周波数が設定されている場合は、補正用強度算出部52は、複数の補正用の解析周波数の成分の強度の平均値を、補正用強度として算出する。1つの補正用の解析周波数が設定されている場合は、補正用強度算出部52は、1つの補正用の解析周波数の成分の強度を、補正用強度として算出する。
1-2-3.強度補正部53
<ゲイン特性のバラツキによる強度の変動>
ノックセンサは、ノック検出でよく使用する5k~20kHzのゲインがほぼ一定になるように管理されている。しかし、図8に示すように、センサのバラツキ、又は制御装置50の入力回路92等のバラツキにより、センサゲインが、全ての解析周波数について、同等の割合で増加側又は減少側に変動する場合がある。図8のAが、中央品のゲイン特性であり、Bが、増加側にばらついた場合の上限品のゲイン特性であり、Cが、減少側にばらついた場合の下限品のゲイン特性である。
図9に示すように、図8における中央品Aに対する上限品B及び下限品Cのセンサゲインの増加割合又は減少割合に比例して、ノック発生時の全ての解析周波数の成分の強度が、同等の割合で増加又は減少する。このセンサゲインの変動により増加又は減少した判定用の解析周波数の成分の強度を用いて、ノック判定を行えば、誤判定を生じやすくなる。
<補正用強度による補正>
そこで、強度補正部53は、演算周期ごとに、判定用の解析周波数の成分の強度を、補正用強度に基づき補正して、補正後の判定用の強度を算出する。
センサのゲイン特性の変動の影響は、判定用の解析周波数の成分の強度だけでなく、補正用の解析周波数の成分の強度にも表れる。各解析周波数の成分の強度には、ノック発生の有無に関わらず、各種の機械的な振動等によるバックグランドのノイズ成分の強度が含まれる。ノックが発生すると、判定用の解析周波数の成分の強度は、バックグランドのノイズ成分の強度から大幅に増加するが、補正用の解析周波数の成分の強度は、バックグランドのノイズ成分の強度からあまり増加しない。よって、補正用の解析周波数の成分の強度は、ノック発生による強度の増加が低くなるため、センサゲインの変動の影響が強く表れる。すなわち、補正用の解析周波数の成分の強度により、ノック発生による影響を低くし、センサゲイン変動の影響を検出することができる。上記の構成によれば、判定用の解析周波数の成分の強度を、補正用強度に基づき補正することで、センサゲインの変動による判定用の解析周波数の成分の強度の変動を精度よく補償することができる。
例えば、強度補正部53は、判定用の解析周波数の成分の強度を、補正用強度で除算して、補正後の判定用の強度を算出する。この構成によれば、補正用の解析周波数の成分の強度に含まれるセンサゲインの変動割合により、判定用の解析周波数の成分の強度に含まれるセンサゲインの変動割合を除算して、センサゲインの変動の影響を打ち消すことができる。
図10に、図9の各解析周波数の成分の強度を、補正用強度で除算した補正後の各解析周波数の成分の強度を示す。中央品A、上限品B、下限品Cの場合において、ゲイン特性の変動の影響が打ち消されている。図10に、仮に、ノック判定閾値を示しているが、中央品A、上限品B、下限品Cとも、補正後の判定用の解析周波数の成分の強度が、ノック判定閾値を上回っており、センサゲインの変動が生じても、精度よく判定可能である。
判定用の解析周波数は、複数の解析周波数に設定されてもよい。強度補正部53は、複数の判定用の解析周波数の成分の強度の最大値を、判定用の解析周波数の成分の強度として設定し、補正用強度に基づき補正してもよい。
1-2-4.ノック判定部54
ノック判定部54は、各演算周期で算出された補正後の判定用の強度に基づいて、ノックの発生の有無を判定する。本実施の形態では、ノック判定部54は、各燃焼サイクルのノック判定期間の複数の演算周期で算出された複数の補正後の判定用の強度に基づいて、各燃焼サイクルにおけるノックの発生の有無を判定する。
図11に、1つの燃焼サイクルのノック判定期間の複数の演算周期で算出された複数の補正後の判定用の強度の時系列のグラフを示す。各演算周期の補正後の判定用の強度は、各演算周期で算出された補正用の解析周波数の成分の強度、補正用強度、及び判定用の解析周波数の成分の強度に基づいて算出される。
例えば、ノック判定部54は、ノック判定期間において、1つ以上の演算周期の補正後の判定用の強度が、ノック判定閾値を超えた場合に、ノックが発生したと判定し、いずれの演算周期の補正後の判定用の強度も、ノック判定閾値を超えていない場合に、ノックが発生していないと判定する。ノック判定閾値の設定方法、及び閾値を用いた判定方法には、公知の各種の方法を用いることができる。
1-2-5.点火制御部55
点火制御部55は、ノック判定結果に基づいて点火時期を変化させ、点火時期(クランク角度)で点火プラグ18に放電が開始するように、点火コイル16への通電制御を行う。点火制御部55は、ノックが発生したと判定された場合は、次回の燃焼サイクルの点火時期を、遅角側に変化させ、ノックが発生していないと判定された場合は、次回の燃焼サイクルの点火時期を、進角側に変化させる。ノック判定結果に基づく点火制御には、各種の公知の方法が用いられる。
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
1 内燃機関、12 ノックセンサ、16 点火コイル、50 内燃機関の制御装置、51 ノック信号算出部、52 補正用強度算出部、53 強度補正部、54 ノック判定部、55 点火制御部
本願に係る内燃機関の制御装置は、
演算周期ごとに、内燃機関に設けられたノックセンサの出力信号に含まれる、複数の解析周波数の成分の強度を算出するノック信号算出部と、
前記演算周期ごとに、前記複数の解析周波数の内、ノック発生の判定用の解析周波数以外の解析周波数に設定された補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、補正用強度を算出する補正用強度算出部と、
前記演算周期ごとに、前記判定用の解析周波数の成分の強度を、前記補正用強度に基づき補正して、補正後の判定用の強度を算出する強度補正部と、
各前記演算周期で算出された前記補正後の判定用の強度に基づいて、ノックの発生の有無を判定するノック判定部と、を備え
前記補正用強度算出部は、前記判定用の解析周波数に隣接しない解析周波数を含む、複数の前記補正用の解析周波数を設定し、複数の前記補正用の解析周波数の成分の強度の平均値を、前記補正用強度として算出するものである。

Claims (6)

  1. 演算周期ごとに、内燃機関に設けられたノックセンサの出力信号に含まれる、複数の解析周波数の成分の強度を算出するノック信号算出部と、
    前記演算周期ごとに、前記複数の解析周波数の内、ノック発生の判定用の解析周波数以外の解析周波数に設定された補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、補正用強度を算出する補正用強度算出部と、
    前記演算周期ごとに、前記判定用の解析周波数の成分の強度を、前記補正用強度に基づき補正して、補正後の判定用の強度を算出する強度補正部と、
    各前記演算周期で算出された前記補正後の判定用の強度に基づいて、ノックの発生の有無を判定するノック判定部と、を備えた内燃機関の制御装置。
  2. 前記補正用強度算出部は、前記複数の解析周波数の内、ノック発生時に強度が閾値よりも小さくなる特定の解析周波数を、前記補正用の解析周波数に設定する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記補正用強度算出部は、複数の前記補正用の解析周波数を設定し、複数の前記補正用の解析周波数の成分の強度の平均値を、前記補正用強度として算出する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記補正用強度算出部は、前記内燃機関の特定の運転状態の動作点ごとに、ノック発生時の各解析周波数の成分の強度の増加に関する情報が予め設定された強度増加特性データを用いて、現在の前記運転状態に対応する前記補正用の解析周波数を設定する請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記ノック信号算出部は、前記ノックセンサに入力される各解析周波数の振動成分の強度に対する、前記ノック信号算出部により算出される各解析周波数の成分の強度のゲインの特性データを用いて、前記複数の解析周波数の成分の強度を補正する請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記ノック信号算出部は、各燃焼サイクルに対応して設定されたノック判定期間において前記演算周期ごとに、前記ノックセンサの出力信号に基づいて、前記複数の解析周波数の成分の強度を算出し、
    前記補正用強度算出部は、前記演算周期ごとに、前記補正用の解析周波数の成分の強度に基づいて、前記補正用強度を算出し、
    前記強度補正部は、前記演算周期ごとに、前記判定用の解析周波数の成分の強度を、前記補正用強度に基づき補正して、前記補正後の判定用の強度を算出し、
    前記ノック判定部は、各前記燃焼サイクルの前記ノック判定期間の複数の前記演算周期で算出された複数の前記補正後の判定用の強度に基づいて、各前記燃焼サイクルにおけるノックの発生の有無を判定する請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
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