JP2022179815A - 人工芝生用基布及び人工芝生 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的簡易な素材や構造に基づいて、高強度で軽量であり、かつ、パイル糸の抜け出し、へたりを防止してパイル糸を堅固に保持しつつ長期に使用することが可能な人工芝生用の基布及びかかる基布を用いた人工芝生を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂を延伸したフラットヤーンを経糸110及び緯糸120として織成した基布100であって、緯糸120は、経糸110よりも広幅で薄肉であり、かつ、フラットヤーンとステープルとが結合した複合糸であることを特徴とする人工芝生用積層基布。【選択図】図1

Description

本発明は主に基布上に多数の合成樹脂のパイル糸を殖設して形成される人工芝生及びそれを構成する基布に関する。
庭、ベランダ、公園、店舗等に加え、野球、サッカー等のスポーツ競技場においても広く人工芝生が使用されている。
比較的運動量の高い用途に用いられる人工芝生は、一般的に、織物より成る基布にパイル糸をタフト加工により植設し、その後、ラテックス等の接着剤でパイル糸を基布裏側に接着固定することにより作成される。パイル糸素材としてはナイロン、塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が使用され、その形状はモノフィラメント、テープ、スプリットテープが多く使用されている。又、基布は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂のフラットヤーンを平織りしたものが多く用いられる。
しかし、ポリプロピレン製フラットヤーンによる基布とラテックス等の接着剤では十分な固着力を得られず、植設されたパイル糸が動いたり抜け落ちたりすることがある。
このため、基布の下(裏側)に不織布層を重ねた基布を作成し、タフト加工により裏側に配置されたパイル糸と不織布とを合わせて接着固定することにより、パイル糸と不織布を介した基布との固着力を高め、激しい運動にも使用可能とした提案がある。(特許文献1)
この発展形として、ポリプロピレン製基布の上にポリエステル中心の短い繊維を薄く何層も重ねてシート状に広げた不織布(ウェブ)を重ねた基布を作成し、鈎付きのニードルによって不織布(ウェブ)を機械的に押し込むこと(ニードルパンチング)で、不織布の一部を基布の下(裏側)に多数突き出させた基布とする技術がある(「FLW基布」と称されている。)。タフト加工によって基布裏側に配置されたパイル糸とニードルパンチングにより基布の裏側に突き出た不織布の一部である多数のステープル(短繊維)とフラットヤーン(織物部分)が一体的にラテックスで接着されることから、パイル糸が強く固着される効果を有する。このため、現在きわめて一般的に用いられている。
FLW基布の技術によりパイル糸の固着力が強化される一方、鈎付ニードルによるニードルパンチングすることにより基布を構成する多数の緯糸、経糸を破断してしまい、基布の強度が著しく低下するという問題があった。また、ステープルを重ねて均一に分布することや裏側に突き出させるステープルの量を確保するための基布の単位面積当たりの針の数、突き刺す深さの最適設計等の困難性から、ウェブ量の厚みが過大になりがちで軽量化の要請に答えにくいという問題があった。
別の技術として、ニードルパンチングによる基布の強度低下を防止するため、多数の小径線状体が互いに結合した集合糸からなる基布用線状体を織成してなる耐久人工芝用基布の提案がある。(特許文献2)タフティング針が挿通されたときには、小径線状体が分裂してパイル糸を容易に通すことができ、線状体の破断、強度低下を防止できる。一方、集合糸を作成するために、小型線状体を熱接合する必要があり、そのため小型線状体は融点の低い樹脂を被覆した構造となっている。したがって、基布用材料の製造が複雑化するという問題があった。
実開昭54-32357 特開2005―15972
本発明は上記の問題に対応すべく提案するものである。すなわち、比較的簡易な素材や構造に基づいて、高強度で軽量であり、かつ、パイル糸の抜け出し、へたりを防止してパイル糸を堅固に保持しつつ長期に使用することが可能な人工芝生用の基布及びかかる基布を用いた人工芝生を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明により、熱可塑性樹脂を延伸したフラットヤーンを経糸及び緯糸として織成した基布であって、前記緯糸は、前記経糸よりも広幅で薄肉であり、かつ、前記フラットヤーンとステープルとが結合した複合糸であることを特徴とする人工芝生用積層基布が提供される。
一般に、糸とは、「繊維を細く長くひきのばして、撚りをかけたもの」とされ、スパン糸とフィラメント糸に分けられるとされるが、本願発明のシートを構成する経糸及び緯糸として用いられるものは、熱可塑性樹脂のフィルムをスリット等した後に延伸された「フラットヤーン」であり、断面視長方形のテープ形状を呈している。経糸及び緯糸の素材は、特に限定されないが、強度の点からポリプロピレンが好ましい。
緯糸の幅は経糸より広幅であり、厚みは経糸よりも薄い。本発明に係る積層基布にパイル糸を植設する際に、パイル糸と積層基布を一体化する機能は主に緯糸が担うように役割を明確化するためである。かかる構成により、タフト加工されたパイル糸は主に緯糸を貫通することとなり、容易に貫通することが可能となる。パイル糸を容易に貫通することにより強度の低下も少なく、経糸がパイル糸を保持する機能(把持力)を担うため、積層基布全体の強度とパイル糸の把持力は担保されることとなる。具体的な経糸及び緯糸の幅、厚み、経糸と緯糸の各寸法の比率は適宜選択され、特に限定されない。
本発明における緯糸は、熱可塑性樹脂を延伸したフラットヤーンそのものではなく、フラットヤーンとステープルとが結合した複合糸である。本発明における「ステープル」とは、短繊維の集合体を言い、紡績したものも、紡績していないわた状のものも含まれる。素材は綿、混紡糸、ポリエステル、アクリル等から選択される。短繊維の集合体なので、集合体を構成する各繊維の端部は周囲に伸びる。本発明においては、集合体を構成する単一の短繊維を「単繊維」と、周囲に伸びている部分を「毛羽」と称する。
製織法は、平織り、綾織が一般的に使用され好ましいが、特に限定されるものではなく、朱子織等他の製織法も用いられる。
フラットヤーンとステープルとの「結合」には、フラットヤーンとステープルが全体的に均一に撚られる態様のものや、引き揃えられたステープルを細い糸でフラットヤーンに括り付ける態様のものや、ステープル自体がフラットヤーンに巻きついていく態様のものが含まれる。
また、前記ステープルはスライバーであり、かつ、前記複合糸は前記フラットヤーンと前記スライバーを撚り合わせた複合糸であることを特徴とする人工芝生用積層基布が提供される。
本発明における「スライバー」とは、綿、混紡糸、ポリエステル、アクリル等から選択された素材の短繊維をときほぐして各繊維を分離し、まっすぐに引き延ばし平行に揃え太いひも状にして直線状に並行に揃えたもの及びギル工程後のダブリング及びドラフトを繰り返した後に太さを減じ、繊維の平行度を良くし、均整な状態となったものを言う。上述の「ステープル」の中に含まれる概念である。
基本的に撚りはかけられておらず、スライバーの周囲にはスライバーを構成する単繊維の毛羽が不規則に伸びている。なお、粗紡工程後のゆるく撚りのかかったものも、毛羽が周囲に不規則に伸びていればスライバーに含まれる。スライバーは、紡績における中間工程のものであり、精紡工程後の撚りをかけた「糸」は含まれない。
フラットヤーンとスライバーを「撚り合わせた」とは、両者を引き揃えて同時に均一の撚りをかけることを言い、「合撚」とも称する。合撚の加工は、リング精紡機等を用いて精紡する従来の方法により行われることが好ましいが、特に限定されるものではない。
また、前記複合糸は、前記フラットヤーンを芯材とし、前記ステープルを鞘材として、カバー糸を巻き付けることによって前記芯材と前記鞘材を結合させることとを特徴とする人工芝生用積層基布が提供される。
フラットヤーンとスライバーを撚り合わせずに平行に引き揃えつつ、細いカバー糸で巻き付ける方法である。カバーリング精紡機を用いて行われることが好ましいが、特に限定されるものではない。
また、前記ステープルを構成する単繊維の繊度を6.6dt以上とすることを特徴とする人工芝生用積層基布が提供される。なお、「dt」はデシテックスの略であり、繊維や糸の太さを表す単位である。
また、上述の積層基布にパイル糸をタフティング加工した後に前記積層基布裏面で前記パイル糸と前記積層基布を接着加工したことを特徴とする人工芝生が提供される。
パイル糸と積層基布が接着加工される場合は、毛羽を含むステープル及びステープルと結合しているフラットヤーンもパイル糸と一体的に接着加工されることとなる。接着はラテックス等従来の方法により行われる。
また、熱可塑性樹脂を延伸したフラットヤーンを経糸とし、前記熱可塑性樹脂を延伸した前記経糸よりも広幅で薄肉なフラットヤーンとステープルを結合して複合糸である緯糸とし、前記経糸と前記緯糸を製織して製造することを特徴とする人工芝生用積層基布の製造方法が提供される。
従来の主要な人工芝生用基布であるFLW基布は、パイル糸と基布を一体化するためのニードルパンチングにより、基布を構成する糸を破断し基布の強度を大きく低下させるという課題があった。本発明では、ニードルパンチングのような基布を破壊する方法によらずに基布とパイル糸の一体化を図った。基布を破壊することはないので、基布の強度を高く維持でき、長期間使用することができる。基布の強度低下を計算する必要がないので、過大な安全代を見込む必要がない。
緯糸にステープルを結合することによって、フラットヤーンと毛羽を有するステープルとパイル糸とを一体的に接着することができ、パイル糸は積層基布に強固に保持されることとなる。したがって、パイル糸の抜けやへたりを防止することができる。
本発明では、経糸は緯糸に比べて幅狭で厚肉なので、パイルは経糸に突き刺さらずに経糸と経糸の間を通る可能性が高くパイルによって経糸の強度保持に影響が及ぶ可能性は低い。加えて、厚肉であることにより、経糸は基布の強度保持という役割を果たすことができる。一方、緯糸は幅広で薄肉なので、パイルは緯糸を貫通する可能性が高く、薄肉故に抵抗少なく貫通できる。したがって、パイルと緯糸との一体性が高くなる。上述の接着における一体化とパイル糸の緯糸貫通における一体化の相乗効果によって、緯糸とパイル糸の結びつきの強化が進み、パイル糸は積層基布により強固に保持されることとなる。
FLW基布では、不織布を重ねる必要があり、かつ、ニードルパンチングにより基布裏側に突き出す分の質量減を見込んで余分に重ねる必要がある。一方、本発明では不織布そのものが不要であることから、強度とのバランスを考慮しつつ人工芝生を大きく軽量化することが可能である。
フラットヤーンとステープルを並べてリング精紡機等で撚り合わせると、ねじり棒のように全体として均一に撚りが生じることとなる。そうすると、緯糸は断面視で極めて薄い長方形を呈しているので、撚りによって断面形状自体が湾曲したり、楕円状に丸まっていく変化が生じる場合がある。この場合、ステープルの相当部分は湾曲するフラットヤーンの内側に取り込まれてしまうこととなり、人工芝生作成の際にステープルの毛羽が外側に現れず、ステープルとパイル糸とを一体化に接着加工することができずに積層基布のパイル糸保持力が低下する。
このような問題に対応するために、フラットヤーンと結合するものをスライバーに限定した。スライバーであれば、撚って糸にした状態が除かれるので、広い範囲に多数の毛羽が立つこととなる。したがって、スライバーの相当部分が湾曲するフラットヤーンの中に取り込まれたとしても、フラットヤーンからはみ出る多数の毛羽とパイル糸とを一体的に接着加工することができ、積層基布のパイル糸保持力の低下を防止することができる。
フラットヤーンを芯材とし、ステープルを鞘材として引き揃え、カバーリング糸でフラットヤーンとステープルを取り巻いて巻き付けることによりフラットヤーンとステープルを一体化させることができる。ステープルとパイル糸とを一体的に接着することができ、パイル糸は積層基布に強固に保持されることとなる。
フラットヤーンとステープルを合撚すると、上述のようにフラットヤーンが湾曲する場合がある。カバー糸を巻き付ける場合は、フラットヤーンを撚ることはないのでフラットヤーンはあまり湾曲しない。したがって、ステープルはフラットヤーンの中に巻き込まれることがなく、撚った糸の状態であっても毛羽を接着加工に活かすことができる。
又、湾曲せず薄く平坦な形状を維持することができるので、植設する際にパイル糸はフラットヤーン(緯糸)を高確率でかつ容易に貫通することができ、緯糸とパイル糸の結びつきの強化を確保することができる。また、フラットヤーンが変形しないことから、目ずれを起こす可能性も低い。
ステープルとパイル糸を一体的に接着する場合、接着強度を高くするためには、ステープルの毛羽が接着剤の中にできるだけ深く入り込んでいることが重要である。毛羽が接着剤の中に突き刺さった態様で立体的に接着されている場合は、いわゆるくさび効果となって、接着強度が高まる。一方、毛羽が寝た状態で接着されている場合は、毛羽と接着剤の接触部分が平面的になり、外力によって離脱しやすくなる。毛羽が接着剤の中に突き刺さった態様にするためには、毛羽はあまり細くならないようにする必要がある。ステープルを構成する短繊維の繊度を6.6dt以上とすることにより、毛羽が接着剤の中に突き刺さり、くさび効果を発揮することができる。ステープルがスライバーである場合は、より広い範囲に多数の毛羽が立つのでくさび効果をより有効に発揮できる。
上述の積層基布にパイル糸を植設した人工芝生は、基布の強度が高く長期間使用することができる。又、パイル糸は積層基布に強固に保持されるので、パイルの抜けやへたりを防止することができる。
本発明に係る製造方法により、ニードルパンチングによる強度の低下やウェブ(積層不織布)の目減りに基づいて、ウェブ量が不足したり、不足分を過度に織り込んだ無駄な積み重ねを行ったりすることなく、積層基布を製造することができる。さらに、本発明に係る製造方法により、強度の低下がなく軽量でパイル糸が積層基布に強固に保持される積層基布を提供することができる。
本発明に係る積層基布の模式図である。 本発明に係る積層基布を用いた人工芝生の模式図である。(経糸省略) 合撚方式による積層基布製造に関する模式図である。 合撚方式によって作成された緯糸の模式図である。 合撚方式によって作成された緯糸の写真である。 合撚方式による緯糸を用いて製造された積層基布(裏面)の写真である。 カバーリング方式による積層基布製造に関する模式図である。 カバーリング方式によって作成された緯糸の模式図である。 カバーリング方式によって作成された緯糸の写真である。 カバーリング方式による緯糸を用いて製造された積層基布(裏面)の写真である。 ニードルハンチング前のFLW基布の模式図である。 ニードルハンチング中のFLW基布の模式図である。 FLW基布を用いた人工芝生の模式図である。 FLW基布の表面の写真である。 FLW基布の裏面の写真である。
以下に本発明に係る積層基布100を従来技術(FLW基布)と比較しながらより詳細に説明する。
テニスコート、サッカー練習場や野球場等には、ポリプロピレン、ポリエステル等を経糸、緯糸に使用し製織してなる基布にタフト加工でパイル糸を植設してラテックス等で接着した人工芝生が使用される。過酷な使用状況に対応するためには、基布自体の物性が高強度であること及び基布とパイル糸が一体的に固定されていることが重要である。他に、人工芝生として敷き込まれた後に経時的な寸法変化を少く保つため伸度が低く、熱収縮が低い事が好ましい。
従来技術について説明する。図11及び図12は従来技術による人工芝用積層基布(FLW基布)200の模式図である。ポリプロピレン製テープ等で構成の基布とラテックスとでは十分な接着強度は得られないため、基布の上に重ねたウェブの一部を一体的に接着することで接着強度を向上させている。
図11は、ニードルパンチング前の基布の状態を示す。経糸210と緯糸220よりなる織物の上にポリエステルのステープル(短繊維)を均等分布させた複数の不織布より成るウェブ230が重ねられている。図12は、ニードルパンチングを行っている状態を示している。ウェブの上からニードルパンチングしてステープルを基布と絡ませ一部のステープルを基布の裏側に飛び出させている。パンチングの調整に基づき、飛び出すステープルの量は総ウェブ量の数%程度に制御される。調整は、ぺネ数(n/cm:単位当たりの突刺し数)と針深度(基布を突刺すニードルの深さ)により行う。
図13は、パイルを殖設したFLW基布200の模式図である。タフト加工において前述のFLWの裏側からパイルを突き刺し、少量飛び出したステープルとパイルの裏側にラテックスを塗布することでステープルとパイルと基布本体(経糸、緯糸)が一体的に接着されることとなる。パンチングによる基布の破壊は不可避であるものの、破壊を最小限とするため、出来る限り裏に出るステープル量を少なくしつつ均一に分布させることが必要である。
図1は本発明にかかる積層基布100の模式図である。緯糸120はフラットヤーン121とスライバー122が結合した複合糸である。上述のように、スライバー122は撚られておらず、スライバーの周囲にはスライバーを構成する単繊維の一部である毛羽123が不規則に伸びている。スライバーの繊度は300dt~2000dtが好ましく、毛羽123は上述のくさび効果を発揮するためには単繊維の繊度は6.6d以上であることが好ましいが、いずれも限定されるものではない。毛羽を有する複合糸である緯糸123は製織され、経糸110と共に本発明にかかる積層基布100を構成する。
フラットヤーン121とスライバー122の結合方法としては、フラットヤーン121とスライバー122を共に巻き付ける合撚方式がある。スライバー122がフラットヤーン121に巻きつけられることから織られた基布には一定の分布で毛羽123が発現することになる。スライバー122の素材は接着材であるラテックスとの関係で任意に選択することができる。
図3は、フラットヤーン121とスライバー122を同時に投入し、リング精紡機131を用いた撚り合わせによって積層基布1を製造する方法(合撚方式)を示す。また、図4は、合撚方式による緯糸130の模式図である。フラットヤーン121とスライバー122は交互に巻き付けられ、スライバー122から伸びた毛羽123は一定の分布で緯糸130の表面に現れる。幅広で薄いテープ状のフラットヤーン121は撚り合わせによって折れ曲がった形状に変形する場合がある。その際にスライバー122が折れ曲がりの内側に巻き込まれる可能性がある。しかし、本発明にかかるスライバーは撚っていないため、周囲に毛羽123を伸ばした状態で巻き込まれることとなる。したがって、毛羽は折れ曲がりの内側に留まらずにパイル糸と一体となることができ、ラテックスに入り込んでくさび効果を発揮できることとなる。
他の結合方法として、フラットヤーン121とステープル(スライバー122を含む)を並置して細い糸で両者を括り付ける方法(カバーリング方式)もある。図7及び図8は、フラットヤーンとスライバー122を結合させた形態である。図7は、フラットヤーン121とスライバー122を同時に投入し、カバーリング精紡機141により、撚り合わせずにカバー糸142を用いて両者を括り付ける方法を示す。また、図8は、カバーリング方式による緯糸140の模式図である。カバーリング方式ではフラットヤーン121とスライバー122が交互に巻き付けられることはなく、スライバーはフラットヤーンと並置してカバー糸によって一体化することとなる。ただし、カバー糸の括り付けや製織機への供給の際の撚れがあるため、スライバーの側が常に積層基布の裏側にあるというわけではない。
なお、本発明にかかるフラットヤーン121とステープル(スライバー122を含む)の結合方法は上述の2つの方法が好ましいが、それらに限定されるわけではない。
図2は本発明にかかる積層基布を用いた人工芝生の模式図である。経糸は省略している。積層基布にパイル糸310を殖設した後に接着加工すると、基布裏側に伸びている毛羽123とパイル糸310が一体的に接着される。一定の繊度を有する毛羽310は、くさび効果で接着剤の中に入り込んで強固に接着される。毛羽は緯糸120を構成するスライバー122の一部であり緯糸120を構成する不可分の部分といえるので、パイル糸310と毛羽123を含む緯糸120は一体的に接着されることとなる。FLW基布では、パイル糸310と一体的に接着されるのは不織布の飛び出た一部であり、緯糸(又は経糸)の一部ではない。パイル糸と基布本体とは間接的な繋がりである。この点、本発明に係る積層基布本体はパイル糸と直接繋がっており、より強固に把持される。
[実施例]
以下、実施例、及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、実施例、及び比較例に掲載した物性測定値は以下に示す方法によって行ったものである。
1)定長機
浅野機械(株)製 検尺器(10m)
2)繊度測定(電子天秤:10mの重さ)
(株)島津製作所製 ELECTRONIC BALANCE TYPE UX2200H
3)強度・伸度
糸用:浅野機械製 300N
布用:(株)島津製作所製 AUTOGRAPH AGS-X 5KN
4)熱収縮
恒温乾燥器 DKN402
5)撚糸数
25cm検撚器
ポリプロピレン製でブラックの繊度1280dtのフラットヤーン(幅:4.4mm、厚み:30μm)とポリエステル製で繊度1562dt(単繊維の繊度8.8dt)のスライバー(繊維長84mm)をリング精紡機に挿入し、撚糸回数160回/mで合撚して本発明にかかる緯糸を作成した。また、ポリプロピレン製でブラックのフラットヤーン550dt(幅:1.1mm、厚み:50μm)を経糸とした。当該緯糸と経糸の密度を、経24本/2.54cm、緯13本/2.54cmとした平織りで製織して本発明にかかる積層基布を作成した。
実施例1の形態を示す。図5は、リング精紡機131を用いて撚り合わせた緯糸130の写真を示す。芯部(中心)に黒いフラットヤーン121があり、フラットヤーン121をスライバー122で包み込む態様となっている。
図6は、合撚方式による緯糸を用いて製織した積層基布100の写真を示す。縦方向に伸びているのが経糸110、横方向に伸びているのが緯糸130である。緯糸からは多数の毛羽123が伸びている。後述するFLW基布のステープルの出現状況(写真15)と比較すると、本発明にかかる合撚方式による積層基布の方がむしろ多数の毛羽が出現している。
実施例1にかかる測定条件は強度、伸度は布幅5cm、チャック間20cm、熱収縮は130℃、15分間である。製織した積層基布の物性は後述する。
ポリプロピレン製基布構成については実施例1と同じであり、合撚で得られた緯糸も同一であり、基布の緯密度のみ9本/2.54cmとした。
測定条件は強度、伸度は布幅5cm、チャック間20cm、熱収縮は130℃、15分間である。製織した積層基布の物性は後述する。
ポリプロピレン製でブラックの繊度1280dtのフラットヤーン(幅:4.4mm、厚30μm)とポリエステル製で繊度1562dt(単繊維の繊度8.8dt)のスライバー(繊維長84mm)を引き揃えてカバーリング機に挿入し、ナイロン製のカバー糸142で両者を括り付けて緯糸を作成した。また、ポリプロピレン製でブラックのフラットヤーン550dt(幅:1.1mm、厚み:50μm)を経糸とした。当該緯糸と経糸の密度を、経24本/2.54cm、緯13本/2.54cmとした平織りで製織して本発明にかかる積層基布を作成した。カバー糸142の巻き付け回数は167回/mとした。
実施例3の形態を示す。図9は、カバーリング機141を用いて結合した緯糸140の写真を示す。緯糸140の右側端に上下に伸びている黒い部分がフラットヤーン121である。また、中央部の右上から左下に交差している細い糸がカバー糸142である。この方式では、フラットヤーン121とスライバー122は平行に引き出されることから、並置して結合した態様が続くこととなる。
図10は、カバーリング方式による緯糸を用いて製織した積層基布100の写真を示す。縦方向に伸びているのが経糸110、横方向に伸びているのが緯糸130である。緯糸からは多数の毛羽123が伸びている。カバーリング方式による積層基布においても合撚方式と同様に多数の毛羽123が出現している。
実施例1にかかる測定条件は強度、伸度は布幅5cm、チャック間20cm、熱収縮は130℃、15分間である。製織した積層基布の物性は後述する。
ポリプロピレン製基布構成については実施例3と同じであり、カバーリング方式で得られた緯糸も同一であり、基布の緯密度のみ9本/2.54cmとした。
測定条件は強度、伸度は布幅5cm、チャック間20cm、熱収縮は130℃、15分間である。製織した積層基布の物性は後述する。
[比較例1]
従来一般的に使用されるニードルパンチ方式によるFLW基布の裏面ステープル発現の状態、及び物性を確認した。使用した基布は実施例1のもとになる繊度、密度等全て同じものを使用した。ニードルパンチングの条件としてウェブ量を70g/m(均一分布の為の最低量)のポリエステルステープルを使用した。ニードリングとしては基布破壊を極力最小限に、また裏に出すステープルの量を接着適性の関係から極力少なくコントロールする為にペネ数(単位当たりの突き刺す数):49.7/cm、針深度(突き刺す針の深さ)を7.5mmとした。このコントロールがポイントであるが、ステープルの量が少なすぎると接着力が不十分になり、多すぎるとラテックスの使用量が増えることになる。
図14は製織後のFLW基布の表面(上面)である。ステープルが密集したウェブを示している。図15は裏面(下面)である。ニードルパンチングにより飛び出したステープルが示されている。
測定条件は強度、伸度は布幅5cm、チャック間20cm、熱収縮は130℃、15分間である。
上述の実施例及び比較例に基づいて、本発明にかかる積層基布の物性とFLW基布(従来の基布)の物性を比較する。
Figure 2022179815000002
比較例と同じ製織密度の実施例1及び3について述べる。FLW基布の強度は、ベースとなっているポリプロピレン基布(ニードルパンチング前)では、経糸1076N,緯糸1155Nであるが、ニードルパンチング後には経糸988N、緯糸674Nと低下している。特に、広幅で厚みの薄い緯糸フラットヤーンはニードルパンチングによる破壊の影響が甚大で強度が極端に低下している。
一方、本発明にかかる積層基布(同条件の緯糸密度13本/2.54cm)はベースとなっているポリプロピレン基布と比べて、強度が全く低下していない。経糸強度は合撚方式1062N,カバーリング方式1081Nとニードルパンチング前のFLW基布とほぼ同じである。また、緯糸強度は、合撚方式1435N、カバーリング方式1231Nとニードルパンチング前のFLW基布の強度を上回っている。ニードルパンチング後のFLW基布と比較すると、本発明に係る積層基布は、いずれの方式の場合も、経糸で10%弱上回り、緯糸では2倍前後と大幅に上回っている。これは、スライバーを結合させたことによるものと推測される。スライバーを並置するカバーリング方式よりも、撚り合わせる合撚方式の方が、より強度の上昇が大きくなっている。
目付を比較する。FLW基布の目付は、ベースとなっているポリプロピレン基布は、124.2g/mであるのに対して、ウェブを重ねたFLW基布は205.5g/mとなっている。これに対して、合撚方式では205.3g/m、カバーリング方式では201.6g/mとFLW基布とほぼ同等である。重量の増加を伴わずにFLW基布よりはるかに高い強度を実現していることを示している。
緯糸の配置を9本/2.54cmとした実施例2及び4について述べる。経糸強度は、実施例2(合撚方式)で1053N、実施例4(カバーリング方式)で1079Nとなっており、ニードルパンチング前のFLW基布とほぼ同じであり、ニードルパンチング後のFLW基布を上回っている。緯糸強度は実施例2で1006N、実施例4で791Nとなっており、いずれもニードルパンチ後のFLW基布の強度を上回っている。特に、実施例2(合撚方式)の強度はFLW基布の強度を大きく上回っている。実施例2の目付は155.5g/m、実施例4の目付は153.9g/mとFLW基布よりも25%程度軽い。
すなわち、いずれの方式においても、軽量化しつつ強度を増していることを示している。
伸度は、FLW基布(ニードルパンチング後)が経糸13.7%、緯糸6.9%であるのに対して、同じ製織密度の場合、合撚方式の積層基布が経糸19.9%、緯糸16.0%、カバーリング方式の積層基布が経糸18.0%、緯糸12.5%と大きくなっている。緯糸の配置を9本/2.54cmとした実施例2及び4の場合は、合撚方式の積層基布が経糸16.0%、緯糸15.8%、カバーリング方式の積層基布が経糸15.7%、緯糸12.3%となっている。いずれもFLW基布に比べ伸度は大きくなっている。
また、熱収縮は、FLW基布(ニードルパンチング後)が経糸1.9%、緯糸1.2%であるのに対して、同じ製織密度の合撚方式の積層基布が経糸2.8%、緯糸1.6%、カバーリング方式の積層基布が経糸2.1%、緯糸0,9%となっている。緯糸の配置を9本/2.54cmとした実施例2及び4の場合は、合撚方式の積層基布が経糸2.5%、緯糸2.0%、カバーリング方式の積層基布が経糸2.3%、緯糸1.5%となっている。概ねFLW基布に比べて熱収縮値が大きくなっている。
施工後の寸法の経時変化という観点からは、伸度や熱収縮は小さい方が好ましいが、合撚方式及びカバーリング方式による積層基布の物性は特に問題になるレベルのものではない。
本発明は、人工芝、特にスポーツ等の過酷な使用に用いられる人工芝の耐久性を向上させるものであり、産業上の利用可能性が大きい。
100 積層基布
110 経糸
120 緯糸
121 緯糸フラットヤーン
122 スライバー
123 毛羽
130 緯糸(合撚方式)
131 リング精紡機
140 緯糸(カバーリング方式)
141 カバーリング精紡機
142 カバー糸
200 FLW基布
210 経糸(FLW)
220 緯糸(FLW)
230 ウエブ
240 ニードル
250 ステープル
300 人工芝
310 パイル糸


Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂を延伸したフラットヤーンを経糸及び緯糸として織成した基布であって、前記緯糸は、前記経糸よりも広幅で薄肉であり、かつ、前記フラットヤーンとステープルとが結合した複合糸であることを特徴とする人工芝生用積層基布。
  2. 前記ステープルはスライバーであり、かつ、前記複合糸は前記フラットヤーンと前記スライバーを撚り合わせた複合糸であることを特徴とする請求項1に記載する人工芝生用積層基布。
  3. 前記複合糸は、前記フラットヤーンを芯材とし、前記ステープルを鞘材として、カバー糸を巻き付けることによって前記芯材と前記鞘材を結合させることとを特徴とする請求項1に記載する人工芝生用積層基布。
  4. 前記ステープルを構成する単繊維の繊度を6.6dt以上とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載する人工芝生用積層基布。
  5. 請求項1に記載する積層基布にパイル糸をタフティング加工した後に前記積層基布裏面で前記パイル糸と前記緯糸を接着加工したことを特徴とする人工芝生。
  6. 熱可塑性樹脂を延伸したフラットヤーンを経糸とし、前記熱可塑性樹脂を延伸した前記経糸よりも広幅で薄肉なフラットヤーンとステープルを結合して複合糸である緯糸とし、前記経糸と前記緯糸を製織して製造することを特徴とする人工芝生用積層基布の製造方法。

























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