JP2022179174A - 人工皮革、及びその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な風合、高いストレッチ性、高い耐摩耗性、及び難燃性を兼ね備えたリサイクル可能な人工皮革、及びその製法の提供。【解決手段】第一の表面を構成する表面繊維層を含む人工皮革であって、(1)表面繊維層が主体繊維と主体繊維の融点よりも所定温度以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂を含む;(2)主体繊維の繊度が所定範囲である;(3)熱可塑性樹脂が、主体繊維同士を接着し、熱可塑性樹脂の少なくとも一部が塊状樹脂の形態で、所定の投影面積平均値で露出している;(4)表面繊維層が、織物であるスクリム層と交絡されている;(5)人工皮革においてMD方向とCD方向の所定定荷重伸度(%)の和を(A)、スクリム層のMD方向の織密度とCD方向の織密度の和を(B)、スクリム層を構成する織糸の繊度を(C)としたとき、所定の関係式を満たし、MD方向の所定定荷重伸度が所定値以上である;を特徴とする人工皮革。【選択図】なし

Description

本発明は、人工皮革、及びその製法に関する。
人工皮革は、衣料、靴、鞄、インテリア、家具類、自動車や鉄道車両や航空機や船舶などのシート表皮材や内装材、ワッペン基材などの分野において好適に用いられる。これらの分野では、良好な外観品位、風合とともに、難燃性や、摩耗などの物理負荷に対する耐性が要求される。
人工皮革用の素材は、不織布構造体に高分子弾性体樹脂を含浸し付着させた形態のものが主流である。弾性体樹脂を含浸させず、ニードルパンチやウォータージェット処理などによって単に構成繊維を物理交絡させるのみでは、染色時の液流による負荷に耐える十分な強度を持たないか、人工皮革としての使用時に容易に破損を生じてしまうという欠点を生じる。
人工皮革製造業者の間では、ポリウレタンなどの高分子弾性体を付着させることにより、良好な風合と耐摩耗性を付与させるという手法が一般的に用いられている。例えば、ポリウレタンを含浸付着させたタイプの人工皮革として、エクセーヌ(商標)やアルカンターラ(商標)などの名称の下で市販されている。しかし、ポリウレタンなどの高分子弾性体は燃焼しやすいために、付着させることによって人工皮革自体の難燃性が低下してしまうという問題を生じやすい。
以下の特許文献1には、ポリウレタンを含浸するタイプの人工皮革において難燃剤をバックコートすることにより難燃性を補う例が開示されている。この方法では良好な難燃性が得られる反面、不織布がきわめてかたくなってしまい、人工皮革として用いるにあたって良好な風合が得られなくなるという欠点がある。また、難燃剤の塗布加工を行うために製造時の工程が煩雑になり、コストも増大しやすいという欠点がある。
ポリウレタンなどの高分子弾性体を含浸付着させる他に、人工皮革に強度を付与するためのバインダー効果を得る手段として、人工皮革用不織布製造時に熱融着性繊維を混在させておき、それを溶融することによって主体繊維間を接着させるという方法が過去に検討されてきた。例えば、以下の特許文献2では、その実施例において、熱融着繊維として繊維径が太く、しかも鞘芯型である繊維を使用している。主体繊維の融着点が芯部の繊維を介して連結されていることにより、不織布の風合がかたくなり、品位に劣るという欠点を有している。
また、以下の特許文献3では、不織布を熱収縮させる工程が含まれるため、熱融着繊維の溶融塊が大きくなってしまい、表面品位に劣るという欠点を生じやすい。さらに、海島型繊維に代表される極細繊維発生型複合繊維より溶融繊維を発生させるために、溶融塊がもとの複合繊維の部位に集中しやすい。この点からも、溶融塊が大きくなりやすいという製造方法に由来する欠点を生じやすい。
また、以下の特許文献4では、融着繊維不織布を含んだ積層構造によって構成される皮革様物が提案されている。この皮革様物では、表皮層が極細繊維からなり、融着繊維を含む不織布層が下層に配される形の積層構造となっている。かかる積層構造のシートは、表皮層の最表面の繊維が融着などによって保持されていないために、人工皮革として実用に堪える耐摩耗性を有さないという欠点を持つ。
また、以下の特許文献5では、ポリウレタン樹脂などの高分子弾性体を含浸しなくても、良好な風合と高い耐摩耗性、及び裁ち切り性や形状安定性を兼ね備えた人工皮革を提供すべく、表面繊維層と織編物であるスクリム層の少なくとも2層以上の多層構造をもつ不織布の少なくとも表面繊維層に熱融着性短繊維を特定の比率で混合させた後に熱融着処理を施すことにより、人工皮革を製造している。得られた人工皮革は、ポリウレタン樹脂を含まないため人工皮脂耐性が向上し、また、ポリエステル系繊維からなるものとすれば、リサイクル性の高いものとなるものの、耐摩耗性(マーチンデール法による耐摩耗試験で20000回以上)や風合(KES順曲げ測定における曲げ値26cm未満)の点で、未だ改善の余地があり、高速水流の噴射による交絡後にピンテンター乾燥機を用いて200℃で熱処理すると同時に熱融着性短繊維の熱融着処理を行っているため、形状安定性は良好なものの、ストレッチ性は低いものであった。
また、以下の特許文献6では、特許文献5に記載された発明において、熱融着性短繊維が溶融して形成される熱可塑性樹脂の一部を、所定のサイズの塊状状態で表面繊維層の表面に露出させることで、耐摩耗性(マーチンデール法による耐摩耗試験で40000回以上)と風合(KES純曲げ測定における曲げ値24cm未満)を改善しているが、特許文献5と同様、高速水流の噴射による交絡後にピンテンター乾燥機を用いて190℃で熱処理すると同時に熱融着性短繊維の熱融着処理を行っているため、ストレッチ性は低いものであった。尚、特許文献6は、ポリエステル系の主体繊維と熱融着性短繊維を用いることで、得られる人工皮革の難燃性が向上することを開示している。
また、以下の特許文献7には、上層基紙と、下地繊維層を含む少なくとも2層からなる繊維積層シートであって、前記上層基紙は、ポリエステル短繊維を主成分繊維とし、融点が210~250℃の範囲の共重合ポリエステルを含むポリエステル系バインダー短繊維を含んで湿式抄造された合成繊維紙であり、前記上層基紙の構成繊維は、前記ポリエステル系バインダー短繊維により抄紙時には部分的に仮接着されているが、水流交絡により解離し、交絡後抄紙時の乾燥温度より高い温度で加熱処理されることで、交絡点が部分的に軟化結合され、前記下地繊維層は、不織布、不織布ウェブ、織編物の少なくとも一つから選ばれ、そして前記上層基紙と前記下地繊維層が積層され、両層を構成する繊維が互いに交絡されて一体化されていることを特徴とする繊維積層シートが、記載されている。特許文献7には、本発明は、弾性高分子を含浸させない場合は、ソフトな表面風合で適度なハリ、コシ及び通気性のある新規な繊維積層シートを提供し、弾性高分子を含浸させる場合は、天然皮革により近似した風合の人工皮革になし得る繊維積層シートとこれを用いた人工皮革及びこれに用いる水流交絡において単繊維同士を解離させやすくかつ交絡させやすい合成繊維紙を低コストで提供するとも記載されているため、特許文献7に記載された人工皮革は、水系ポリウレタンのような高分子弾性体を含むものに限定されている。
また、特許文献7には、本発明の合成繊維紙は、(1)繊維同士が膠着により弱く結合している合成繊維紙であり、(2)機械的交絡の圧力により膠着が解離し、繊維が厚さ方向に再分散して3次元交絡を形成する合成繊維紙であり、かつ、(3)交絡後の加熱処理でバインダー短繊維が軟化収縮変形し、交絡点を結合することにより、層間の剥離強度が交絡時よりも向上する合成繊維紙であり、これら(1)~(3)の一連の作用を発現するため、主成分繊維としてポリエステル短繊維を含み、抄紙時の乾燥温度(100~120℃)では主成分繊維と弱い膠着により部分的に結合し、その後、抄紙時の乾燥温度より高い150~180℃の温度で加熱処理されることでさらに軟化収縮し結合発現作用をもつバインダー短繊維を含む湿式抄造された合成繊維紙であるとも、記載されている。
これらの記載によれば、軟化収縮する物はバインダー短繊維であることから、特許文献7には、特許文献6に記載されるような、熱融着性短繊維が溶融して形成される熱可塑性樹脂の一部を、所定のサイズの塊状状態で表面繊維層の表面に露出させることは教示されておらず、また耐摩耗性や風合が改善することは記載されていない。
特公平03-080914号公報 特開平07-216756号公報 特公平03-016427号公報 特許第4835181号公報 特許第5685003号公報 特許第6118174号公報 特許第4708494号公報
前記した従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、良好な風合、高いストレッチ性、高い耐摩耗性、及び難燃性を兼ね備えたリサイクル可能な人工皮革、及びその製法を提供することである。
前記課題を解決すべく本発明者らは鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の特徴を有する人工皮革であれば該課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]第一の表面を構成する表面繊維層を少なくとも含む人工皮革であって、以下の特徴:
(1)該表面繊維層が、少なくとも1種の主体繊維と該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂を含む;
(2)該主体繊維の繊度が、0.01dtex以上0.5dtex以下である;
(3)該熱可塑性樹脂が、該主体繊維同士を接着し、かつ、該熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、塊状樹脂の形態で、該表面繊維層の表面に、該塊状樹脂1個当たり0.66×10-92以上5.0×10-92以下の投影面積平均値で、露出している;
(4)該表面繊維層が、織物であるスクリム層と交絡されている;及び
(5)該人工皮革において、MD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)とCD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)の和を(A)とし、該スクリム層のMD方向の織密度(本/2.54cm)とCD方向の織密度(本/2.54cm)の和を(B)とし、該スクリム層を構成する織糸の繊度(デニール)を(C)としたとき、以下の式:
220000≦(A)×(B)×(C)≦600000
を満たし、かつ、MD方向の500gf/cm定荷重伸度が3%以上である;
を有する、人工皮革。
[2]前記主体繊維は、ポリエステル系繊維である、前記[1]に記載の人工皮革。
[3]前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂である、前記[1]又は[2]に記載の人工皮革。
[4]前記スクリム層は、ポリエステル系樹脂繊維からなる、前記[1]~[3]のいずれかに記載の人工皮革。
[5]以下の工程:
(1)主体繊維と、該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂からなる熱融着繊維とを、該熱融着繊維の重量比率が3%以上25%以下となるように、混合し、次いで、スクリム層上で湿式抄造により交絡させ、次いで、水流交絡処理又はニードルパンチング処理により、該スクリム層と交絡した表面繊維ウェブを形成する;及び
(2)得られた表面繊維ウェブの交絡組織を、該熱融着繊維の融点以上、該主体繊維の融点未満の温度で、熱アニール収縮によりリラックスさせて表面繊維層を形成する;
を有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の人工皮革の製造方法。
[6]前記工程(1)における主体繊維の長さが、2.5mm以上90mm以下である、前記[5]に記載の製造方法。
[7]前記工程(1)における熱融着繊維の繊度が、0.5dtex以上2.2dtex以下である、前記[5]又は[6]に記載の製造方法。
[8]KESの純曲げ測定における単位幅あたりの曲げ剛性が1.0gfcm2/cm以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の人工皮革。
[9]JIS-L-1096 E法(マーチンデール法)に準拠し、押圧荷重12kPaで表面を摩耗したとき、摩耗回数50000回未満では、スクリムが露出しない、前記[1]~[4]のいずれかに記載の人工皮革。
本発明に係る人工皮革では、熱可塑性樹脂が、繊度0.01dtex以上0.5dtex以下の主体繊維同士を、交絡組織がリラックスした状態で、接着し、かつ、該熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、塊状樹脂の形態で、該表面繊維層の表面に、所定のサイズで露出しているため、風合に優れ、ストレッチ性が高く、かつ、耐摩耗性も高い。また、本発明に係る人工皮革は、主体繊維と熱可塑性樹脂として、ポリエステル系繊維を用い、水系ポリウレタンのごとき弾性高分子を含まないものとすれば、リサイクル性に優れ、また、燃焼時の発生ガスを抑制することができる点で耐燃焼性にも優れるものとなる。さらに、本発明に係る人工皮革は、高いストレッチ性を有するため、特に、車のシート材や天井材としての成型性に優れ、カーインテリア素材として好適に利用可能である。
表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 表面繊維層の塊状樹脂の存在状態の別の一例を示した図である。 乾熱収縮法の概念図である。 熱可塑性樹脂が、主体繊維同士を接着し、かつ、該熱可塑性樹脂が、塊状樹脂の形態で、表面繊維層の表面に存在する状態の図面に代わる写真である。 車両用ルーフパネルテストピースの一例を示した図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、第一の表面を構成する表面繊維層を少なくとも含む人工皮革であって、以下の特徴:
(1)該表面繊維層が、少なくとも1種の主体繊維と該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂を含む;
(2)該主体繊維の繊度が、0.01dtex以上0.5dtex以下である;
(3)該熱可塑性樹脂が、該主体繊維同士を接着し、かつ、該熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、塊状樹脂の形態で、該表面繊維層の表面に、該塊状樹脂1個当たり0.66×10-92以上5.0×10-92以下の投影面積平均値で、露出している;
(4)該表面繊維層が、織物であるスクリム層と交絡されている;及び
(5)該人工皮革において、MD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)とCD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)の和を(A)とし、該スクリム層のMD方向の織密度(本/2.54cm)とCD方向の織密度(本/2.54cm)の和を(B)とし、該スクリム層を構成する織糸の繊度(デニール)を(C)としたとき、以下の式:
220000≦(A)×(B)×(C)≦600000
を満たし、かつ、MD方向の500gf/cm定荷重伸度が3%以上である;
を有する、人工皮革である。
表面繊維層に含まれる主体繊維とは、表面繊維層100質量%に対して60質量%以上含まれる繊維であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。上限については特に限定されないが、99質量%以下であってよい。
表面繊維層に含まれる主体繊維は、強度、入手しやすさなどの観点から、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維又はポリオレフィン系繊維が好ましいが、前記したように、難燃性を兼ね備えたリサイクル可能な人工皮革とする観点から、ポリエステル系繊維であることが特に好ましい。
表面繊維層を構成する主体繊維としてのポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリラクテート、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。ポリアミド系繊維としては、ナイロン、メタ系アラミド、パラ系アラミド、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。アクリル系繊維としては、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルの重合体、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。ポリオレフィン系繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。
主体繊維だけでなく、以下に説明する表面繊維層に含まれる該主体繊維の融点よりも20℃以上低い融点を持つ熱可塑性樹脂、及びスクリムをポリエステル系樹脂で構成すれば、例えば、衣料や飲料ボトルから使用後のPETを回収し、これを再生PET樹脂に加工し、これを用いて人工皮革を製造し、更に使用後(寿命の尽きた)人工皮革をリサイクル処理して、例えば、断熱材やフィルター材に加工し、さらに使用後の断熱材やフィルター材からPETを回収するというサーキュラーエコノミー適性をもつリサイクル可能な人工皮革とすることができる。
主体繊維は、天然皮革に近い風合や、スエード調またはヌバック調の表面感が得られやすい点から、繊度が0.5dtex以下であることが好ましく、繊度が0.35dtex以下であることがより好ましく、繊度が0.2dtex以下であることがさらに好ましい。また、繊維製造時の生産効率、生産安定性の観点から、繊度は0.01dtex以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.03dtex以上である。
主体繊維としては、溶融紡糸法により直接紡糸された繊維や、湿式紡糸法により得られる繊維、共重合ポリエステルを海成分に、レギュラーポリエステルを島成分に用いた海島繊維から海成分を除去することによって得られる極細繊維などを用いることができる。
また、主体繊維は必ずしも単一のポリマーからなる繊維のみによって構成されていなくとも構わず、他種のポリマーからなる繊維が混合されていても構わない。また、主体繊維は必ずしも単一の繊度を持つ繊維のみによって構成されていなくとも構わず、複数の繊度を持つ繊維が混合されていても構わない。
また、主体繊維には所望の効果が奏される限り添加剤の類が混入又は付着していても構わない。添加剤の類とは、酸化チタン、各種耐酸化剤、耐光剤、帯電防止剤、難燃剤、柔軟剤、堅牢度向上剤、カーボンブラックなどの顔料、染料などを指す。
表面繊維層を構成する、該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂は、入手しやすさの観点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリラクテート、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン、そのコポリマーなどが好適に用いられる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類の重合体、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。
熱可塑性樹脂も、必ずしも単一のポリマーのみによって構成されていなくとも構わず、複数種のポリマーが混合されていても構わない。
また、この熱可塑性樹脂には所望の効果が奏される限り添加剤の類が混入又は付着していても構わない。添加剤の類とは、酸化チタン、各種耐酸化剤、耐光剤、帯電防止剤、難燃剤、柔軟剤、堅牢度向上剤、カーボンブラックなどの顔料、染料などを指す。
熱可塑性樹脂は、前記主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つものであり、主体繊維が2種類以上の場合は最も低い融点を持つ主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つことが必要である。尚、熱可塑性樹脂が複数種のポリマーが混合されたものである場合、最も高い融点をもつ熱可塑性樹脂が、最も低い融点を持つ主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つことが必要である。融点の範囲に関しては、上記範囲であれば本願に記載されるストレッチ性や耐摩耗性、外観品位を達成することができるが、外観品位を特に良好に保つ観点で、好ましくは、40℃以上150℃以下低い融点、さらに好ましくは40℃以上100℃以下低い融点であるとよい。
熱可塑性樹脂は塊状形状で表面繊維層の表面に露出していること必要である。表面に露出していない場合は、表面に存在する主体繊維が樹脂融着によって十分に保持されておらず、繊維の脱落や破損を生じやすいために、人工皮革として満足な耐摩耗性を有さない。
また、熱可塑性樹脂の一部又は全部が、主体繊維間を接着していることが好ましい。熱可塑性樹脂が主体繊維間を接着していない場合は、主体繊維間の保持が不十分で、繊維の脱落や破損を生じやすいために、人工皮革として満足な耐摩耗性や強度を有さない。
本実施形態では、前記熱可塑性樹脂が、前記主体繊維同士を接着し、かつ、該熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、塊状樹脂の形態で、該表面繊維層の表面に、該塊状樹脂1個当たり0.66×10-92以上5.0×10-92以下の投影面積平均値で、露出していることが必要であり、好ましく0.66×10-92以上3.0×10-92以下である。
表面繊維層を表面(おもてめん)から観察した際の塊状形状の熱可塑性樹脂の投影面積の平均値は、5.0×10-92以下であることが好ましい。投影面積の平均値が、5.0×10-92より大きい場合は、主体繊維に対して表面に存在している樹脂塊が大きすぎるために、外観品位と手触り風合を損なうものとなり、また、主体繊維間の融着点個数の密度が小さくなってしまい、主体繊維間の十分な保持がなされず表面層の耐摩耗性が劣るものとなる。該投影面積の平均値は、好ましくは3.0×10-92以下、より好ましくは1.5×10-92以下である。他方、主体繊維間を接着するために塊状樹脂が十分な大きさであることが必要であるという観点から、当該投影面積の平均値は0.66×10-92以上であることが好ましい。
本発明の他の実施形態は、以下の工程:
(1)主体繊維と、該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂からなる熱融着繊維とを、該熱融着繊維の重量比率が3%以上25%以下となるように混合し、次いで、スクリム層上で、湿式抄造により交絡させ、次いで、水流交絡処理又はニードルパンチングにより、該スクリム層と交絡された表面繊維ウェブを形成する;及び
(2)得られた表面繊維ウェブの交絡組織を、該熱融着繊維の融点以上、該主体繊維の融点未満の温度で、熱アニール収縮によりリラックスさせて表面繊維層を形成する;
を有する、前記人工皮革の製造方法である。
本実施形態における熱可塑性樹脂の表面繊維層における混合比率は3%以上25%以下が好ましい。混合比率とは、主体繊維と熱可塑性樹脂との合計重量に対する熱可塑性樹脂重量を百分率で表した値である。混合比率が3%未満であると、十分な融着力が得られないので、良好な耐摩耗性や形態安定性を得難く、他方、混合比率が25%を超えると、風合が固くなるため好ましくない。この混合比率はより好ましくは4%以上20%以下、さらに好ましくは6%以上15%以下である。
本実施形態の人工皮革を構成するスクリム層は織物である織物は、加工糸の無撚糸や400~1200T/mの有撚糸からなるものが好適に用いられる。スクリム層の素材は染色における同色性の点から、主体繊維と同じポリマー系が好ましい。
スクリム層のMD・CD方向の織密度(本/2.54cm)は、40以上100以下であることが好ましく、より好ましくは45以上80以下、さらに好ましくは50以上70以下である。尚、得られた人工皮革から、どちらがスクリム層が製造され、ロールとして巻き上げられていくMD方向で、どちらがMD方向と直行するCD方向であるかは、全幅ロールの場合、人工皮革が巻き付けられている方向や、端部に残ったピンテンター乾燥機のピンの跡により、切り出された端材の場合、表面を撫でた場合MD方向に向け起毛が揃うという人工皮革の製法上の特徴を利用し判断することができる。
スクリム層を構成する織糸の繊度は、良好なストレッチ性と機械強度を発現するという観点から、60dtex以上200dtex以下であることが好ましく、より好ましくは65dtex以上170dtex以下、さらに好ましくは70dtex以上150dtex以下である。
前記工程(1)における主体繊維の長さは、2.5mm以上90mm以下であることが好ましい。主体繊維の長さがこの範囲にあれば、スクリム層との水流交絡が充分なものとなる。主体繊維の長さが2.5mm以下である場合、交絡工程においてスクリム層との絡み合い効果が十分に発現されず、主体繊維層とスクリム層の間から相関剥離が起こりやすくなり、接着不良や外観不良といった品質上の不具合を引き起こすおそれがある。主体繊維の長さはより好ましくは2.5mm以上20mm以下、さらに好ましくは3mm以上10mm以下である。
本実施形態の人工皮革は、第一の表面を構成する表面繊維層を少なくとも含むものであることができ、例えば、表面繊維層とスクリム層からなる人工皮革の場合、第一の表面(上側の面)が表面(おもてめん)となり、該スクリム層の裏面が第二の表面(下側の面)となる。また、本実施形態の人工皮革が表面繊維層/スクリム層/裏面繊維層の3層からなる場合、裏面繊維層の裏面が第二の表面となる。
また、本実施形態の一態様として表面繊維層/スクリム層/裏面繊維層の構成を採る場合における裏面繊維層を構成する素材は特に限定されないが、良好なリサイクル性を発現する観点から前記表面繊維層の主体繊維及び/又は熱可塑性樹脂と同様のものであることが好ましい。
スクリム層は、芯材として機能し、抄造工程における抄造シートの作製を安定化したり、得られる人工皮革の機械強度を高めたりすることができる。
また、裏面繊維層を含む場合、表面繊維層とは異なるもとのし、例えば、難燃剤を付与したりして、所望の特性を追加することができる。
本実施形態の人工皮革の製造方法としては、少なくとも1種の主体繊維と該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ全融型の熱融着性繊維とが混合されて表面繊維層が構成された不織布構造体を熱処理することにより、熱融着繊維が溶融され、表面繊維層に塊状の熱可塑性樹脂が形成される方法が好ましい。
この熱融着繊維は、溶融後の塊状樹脂が主体繊維間を融着する点の個数を十分有するように、全融型の繊維であることが好ましい。鞘部に低融点の熱可塑性樹脂を用いた鞘芯型繊維や、片側のみに低融点の熱可塑性樹脂を用いたサイドバイサイド型の繊維を用いた場合に比べ、全融型の繊維であれば主体繊維間を接着する点が多く、かつ、融着部における融着成分量が多い為ため、融着力が十分である点で好ましい。また、融着点が熱融着繊維を介して連続して近傍に存在することがないので、風合が柔らかくなりやすい点でも好ましい。
表面繊維層を構成する、主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱融着性繊維(熱溶融糸)は、入手しやすさの観点から、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維が好ましい。ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリラクテート、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。ポリアミド系繊維としては、ナイロン、そのコポリマーなどが好適に用いられる。アクリル系繊維としては、アクリル酸エステル類若しくはメタクリル酸エステル類の重合体、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。ポリオレフィン系繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、それらのコポリマーなどが好適に用いられる。
この熱融着繊維は、必ずしも単一のポリマーのみによって構成されていなくとも構わず、複数種のポリマーが混合されていても構わない。融着力の高さや染色での同一性の点から、ポリマー系を主体繊維と同じにすることが好ましい。
熱融着繊維は溶融紡糸法により直接紡糸された繊維や、湿式紡糸法により得られる繊維、共重合ポリエステルを海成分に、レギュラーポリエステルを島成分に用いた海島繊維から海成分を除去することによって得られる極細繊維などを用いることができる。
この熱融着性繊維の繊度は、溶融後の塊状の熱可塑性樹脂の大きさの点から、0.5dtex以上2.2dtex以下であることが好ましい。繊度が2.2dtex以下であれば、溶融後の塊状熱可塑性樹脂が表面繊維層の表面に均一に分散し、外観品位、風合に優れる。熱融着性繊維の繊度はより好ましくは0.6dtex以上2.0dtex以下、さらに好ましくは0.7dtex以上1.5dtex以下である。
また、この熱融着繊維には、所望の効果が奏される限り添加剤の類が混入又は付着していても構わない。添加剤の類とは、酸化チタン、各種耐酸化剤、耐光剤、帯電防止剤、難燃剤、柔軟剤、堅牢度向上剤、カーボンブラックなどの顔料、染料などを指す。
表面繊維層を形成する方法としては、主体繊維及び/又は熱融着繊維を短繊維の形態で使用し、抄造法、カード法、エアレイ法などを用いて、該繊維を交絡させて不織布構造を形成する方法などが挙げられる。
構成繊維の均一分散性、極細繊維が利用しやすいという観点から、抄造法によって表面繊維層が形成されていることが特に好ましい。
また、本実施形態における各層間の交絡にはスパンレース法と呼ばれる水流交絡法、ニードルパンチ法などを用いることができるが、スクリム層である織編物の組織を破壊することがない水流交絡法が好ましい。
本実施形態の人工皮革は、高いストレッチ性を有し、特に、車の天井材としてのストレッチ適性に優れたものである。具体的には、本実施形態の人工皮革は、該人工皮革において、MD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)とCD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)の和を(A)とし、該スクリム層のMD方向の織密度(本/2.54cm)とCD方向の織密度(本/2.54cm)の和を(B)とし、該スクリム層を構成する織糸の繊度(デニール)を(C)としたとき、以下の式:
220000≦(A)×(B)×(C)≦600000
を満たし、かつ、MD方向の500gf/cm定荷重伸度が3%以上であることが必要である。かかる高いストレッチ性は、以下に説明するように、交絡組織がリラックスした状態での熱接着(本書中、「熱アニール収縮」ともいう。)により達成することができる。(A)×(B)×(C)は、好ましくは230000以上500000以下、より好ましくは240000以上400000以下である。また、MD方向の500gf/cm定荷重伸度は、好ましくは4%以上15%以下、より好ましくは4.5%以上7%以下である。尚、人工皮革のMD方向とCD方向は全幅ロールの場合、人工皮革が巻き付けられている方向や、端部に残ったピンテンター乾燥機のピンの跡により、切り出された端材の場合、表面を撫でた場合MD方向に向け起毛が揃うという人工皮革の製法上の特徴を利用し判断できる。
「交絡組織がリラックスした状態での熱融着(熱アニール収縮)」
本実施形態における熱融着処理には、ドラム乾燥機、カレンダーロールのような接触式乾燥機、二軸延伸型のフィルム延伸機又はピンテンター乾燥機のようなエアースルー乾燥機を用いることができる。処理温度は、表面繊維層を構成する、主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂の融点よりも、5℃以上高い温度、好ましくは10℃以上高い温度であり、処理温度の上限は好ましくは240℃以下である。処理温度と熱可塑性繊維の融点との差が5℃未満であると、十分な熱融着効果が得られない場合がある。処理温度が240℃を超えると、ポリエステル繊維が溶融し、表面品位や耐摩耗性が十分に発現しないことがある。
図9は、熱アニール収縮の概念図である。
本実施形態の人工皮革において、MD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)とCD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)の和を(A)とし、該スクリム層のMD方向の織密度(本/2.54cm)とCD方向の織密度(本/2.54cm)の和を(B)とし、該スクリム層を構成する織糸の繊度(デニール)を(C)としたとき、以下の式:
220000≦(A)×(B)×(C)≦600000
を満たし、かつ、MD方向の500gf/cm定荷重伸度が3%以上とするためには、熱融着(熱接着)において、主体繊維の交絡組織がリラックスした状態で、溶融した熱可塑性樹脂により該主体繊維同士を接着させることが必要である。
本実施形態の人工皮革のストレッチ性発現の作用機序は、人工皮革の弾性変形時のしなやかさと伸び、及び表面品位との複合的な相関によって説明される。人工皮革の弾性変形時のしなやかさと伸びに関しては、人工皮革の中心に芯材として存在するスクリムの弾性変形挙動が表及び裏の極細繊維層と、それらを結着する熱融着繊維の融着点の大きさ、数によってどのように影響を受けるかに大きく左右される。カーシートにおける天井のように、複雑かつ広幅な領域に、表面品位を維持したまま人工皮革を張り付けるためには、人工皮革が適度に弾性変形をし、張り合わせ後もその品位を維持することが必要となる。この観点から発明者らは鋭意検証を行った結果、人工皮革の弾性変形挙動をスクリム層の繊度(デニール)と、MD方向とCD方向の織密度の積によって評価し、人工皮革の定荷重伸度をさらに掛け合わせることで、前記した意図する効果を説明できることを明らかにした。この概念によって導かれる(A)×(B)×(C)の値は、交絡した熱融着繊維の融着点密度の影響を受ける。(A)×(B)×(C)の値が220000より小さくなると、スクリム層は十分な伸縮性を有しないため、貼り合わせの工程において皺なく貼り合わせることが困難となる。(A)×(B)×(C)の値が600000より大きくなると、伸張性は十分ではあるものの、表層の極細繊維の密度が減少してしまい、張り合わせたときに人工皮革がもつ高級感のある表面品位を達成することができないおそれがある。
スクリム層と交絡された表面繊維ウェブを、MD方向及びCD方向にたるませて収縮させながら、上記熱融着を行うことで、図9に示すような交絡組織がリラックスした状態、すなわち、主体繊維が緊張してない状態で固定された状態になるため、ピンテンターを用いて緊張させて収縮させながら熱融着を行う従来技術の方法に比較して、所望のストレッチ性と柔軟性を有する人工皮革を得ることができる。
尚、以下の表1中、「熱アニール収縮」における「+」は、不織布を収縮させた状態で熱融着処理していることを、「0」は、不織布を伸縮も収縮もさせずに熱融着処理していることを、そして、「-」は、不織布を伸長させた状態で熱融着処理していることを意味する。
上記方法によって得られた人工皮革用不織布は、表面繊維層の表面を起毛し、染色処理することによってスエード調やヌバック調の人工皮革として用いられる。起毛処理としてはサンドペーパーでバフィングするなどの公知の方法を用いることができる。その場合、表面繊維層の熱融着繊維を熱融着させる前に起毛処理を行えばスエード調の表面感が得られる。他方、熱融着繊維を熱融着させた後に起毛処理を行えばヌバック調の表面感が得られる。
染色処理においては、特に限定されない。例えば、主体繊維がポリエステル系繊維の場合は分散染料を用いることが一般的である。染色方法は、染色加工業者に周知の常法であることができ、人工皮革においては均染性の点から液流染色機が好適に用いられる。このようにして染色された人工皮革はソーピングや化学的還元剤の存在下で還元洗浄され、余剰染料が除去される。還元洗浄における条件は特に限定されず、常法に従い塩基性還元剤、酸性還元剤を特に限定することなく用いることができる。
本実施形態の人工皮革の厚みは、0.40mm~1.50mmであることが好ましい。人工皮革の厚みが0.40mm以上1.50mmの範囲に入ることにより、極細繊維層の厚みを十分に確保しつつ、単位面積当たりの融着点と表面の極細繊維層にある繊維間どうしの絡み合いを十分に維持することができるので、しなやかな手触りと十分なストレッチ性を両立することができる。
本実施形態の人工皮革の目付は、100g/m2~400g/m2であることが好ましい。目付を100g/m2~400g/m2とすることにより、しなやかな手触りと適度な硬さを両立することができる。
本実施形態の人工皮革は、人工皮革として用いるにあたって良好な風合として、後述する方法で測定した、風合の代用特性としての風合値(KESの純曲げ測定における単位幅あたりの曲げ剛性)が1.0gfcm2/cm以下未満の値を示すことが好ましい。風合値の測定にあたっては、特に限定されないが、幅20cmの試料を用い、市販のKES純曲げ測定器を用いた評価を行い、得られた曲げ剛性を単位幅当たりに換算する手法が好適である。風合値を1.0gfcm2/cm以下未満の値とすることによって、人工皮革に特有な良好な品位を得ることができる。
本実施形態の人工皮革は、人工皮革として用いるにあたって良好な耐摩耗性として、JIS-L-1096 E法(マーチンデール法)に準拠し、押圧荷重12kPaで表面を摩耗したとき、摩耗回数50000回未満では、スクリムが露出しないものであることが好ましい。
本実施形態の人工皮革は、米国連邦自動車安全基準「FMVSS No.302」に準拠する燃焼性試験において4級以上の難燃性を示すことが好ましい。4級以上の難燃性を保持することで、自動車用途、航空機用途などに用いる耐燃焼性基準をクリアすることができ、人工皮革として用いるにあたり適応可能な用途範囲を広げることができる。
以下、本発明を実施例、比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例等で用いた物性値は以下の方法により測定したものである。
(1)塊状樹脂の投影面積の平均値
試料不織布表面の任意の100ヶ所を走査型電子顕微鏡の倍率250倍にて撮影して100枚の画像を採取した。各画像を用いて塊状樹脂100点の面積を求め、平均し、塊状樹脂の投影面積の平均値とした。尚、100枚の画像に塊状樹脂100点が撮影されない場合は、追加で撮影を行った。
撮影には、日本電子(株)製の走査電子顕微鏡JSM-5610を使用した。塊状樹脂の面積の算出には、画像処理ソフトとしてImageJを使用した。倍率250倍の画像より塊状樹脂を縁取りして得た面積を、撮影画像の縮尺に換算することによって求めた。縁取りして得た面積は0.001×10-92未満の桁を四捨五入した。塊状樹脂100点の面積の平均値は0.01×10-92未満の桁を四捨五入した。
塊状樹脂の選別には、塊状樹脂が主体繊維間を接着していることと、塊状樹脂が表面繊維層の表面に露出していることとを満たすものをカウントするという判定基準を用いた。塊状樹脂が主体繊維間を接着しているとは、塊状樹脂が2本以上の主体繊維に接触一体化している状態であることをいう。塊状樹脂が表面繊維層の表面に露出しているとは、塊状樹脂の全面が主体繊維などに隠れることなく画像中で表面に露出していることをいう。図1~図8は表面繊維層の塊状樹脂の存在状態を示した模式図である。これらの図を用いて塊状樹脂の状態とその判定について説明すると、図1は表面繊維層の表面に露出しているが主体繊維間を接着していない例であり、図2は表面に露出して主体繊維間を接着している例である。図3は表面に露出していないが主体繊維間を接着している例であり、図4は表面に露出して主体繊維間を接着している例であり、図5は表面に露出しているが主体繊維間を接着していない例である。図6は熱融着繊維が未溶融の例であり、塊状樹脂とは言わない。図7は熱融着繊維として鞘芯繊維を用いた例であり、熱融着繊維は繊維形状を残しており、塊状樹脂とは言わない。図8は表面に露出しているが主体繊維間を接着していない例である。図中、1は主体繊維、2は塊状樹脂、3は未溶融樹脂、4は鞘芯繊維である。
ここでいう『主体繊維間を接着している』とは、塊状樹脂(熱可塑性樹脂)の内部に、主体繊維が少なくとも2本以上貫通し、物理的に結合された状態を意味する。
(2)繊度
人工皮革の表面又は裏面繊維層サンプルの任意の10ヶ所をマイクロスコープの倍率2500倍にて撮影して、50点の繊維の直径を測定し、それらの平均値を平均繊維径として求めた。得られた平均繊維径と熱融着樹脂の密度から換算して、主体繊維の繊度[dtex]を求めた。
また、人工皮革をエタノールに浸漬し、ゼラチンカプセルに包んだものを液体窒素中で凍結乾燥し、カプセルごとナイフで割断し、常温に戻した試料の割断断面を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM-5610)を用いてWD=10mm、倍率200倍の条件で観察し、得られた画像20枚から各5点ずつ測定したスクリム層を構成する織糸の太さを計測することによって、スクリム層を構成する織糸の繊度を求めた。
熱溶融糸の繊度は、原料短繊維の繊度であり、走査型電子顕微鏡を用いて評価した。具体的には、評価ステージの上に粘着性のカーボンテープを張り付け、その上に原料短繊維を0.05g載せ、余剰の熱溶融糸をエアダスターで除去したものを試料とし、WD=10mm、倍率200倍の条件で観察し、得られた画像20枚から各5点ずつ太さを計測することによって求めた。
(3)風合
風合試験は、KATO TECH製、KES純曲げ試験機 KES FB2-A 自動化順曲げ試験機を用い、幅20cm、長さ20cmのサンプルを用いてSENS 4の条件により測定を行った。評価基準を以下に示す。風合値が1.0gf・cm2以下を合格とした。
(評価基準)
×:風合値が1.0gf・cm2より大きい。
○:風合値が1.0gf・cm2以下である。
(4)耐摩耗性
JIS-L-1096 E法(マーチンデール法)に規定される手法で、押圧荷重12kPaにてサンプル表面の摩耗を実施した。この試験方法での評価基準として、サンプル表面層が摩耗し、スクリムが露出する部分を生じるまでの摩耗回数によって下記評価基準(等級)に分けて評価した。
(評価基準)
××:摩耗回数5000回で繊維の脱落が著しく、評価できない。
× :摩耗回数30000回未満でスクリムが露出する。
△ :摩耗回数30000回以上40000回未満でスクリムが露出する。
○ :摩耗回数40000回以上50000回未満でスクリムが露出する。
◎ :摩耗回数50000回以上でスクリムが露出する。
(5)表面繊維層/スクリム交絡強度(N/cm)
得られた人工皮革サンプルを各方向に垂直になるように留意しながら、MD方向に2.5cm、CD方向に25cmのサイズになるよう2枚切り出した。このサンプルの表面と裏面の間に幅2.5cm、長さ20cmのホットメルトテープ(ハーネス社製 ホットメルトテープ S1297-1X10―FT)を挟み、ハリロンプレッサーで105℃、2分間プレスして圧着した。接着面が十分に(>20N/cm)強固であることを確認した後、接着面のサンプルの表面で、ホットメルトテープがついていない部分にカッターナイフで切りこみを入れ、スクリム層と表面が剥離面となるように調整したサンプルを作製し、これを、引張試験機(テンシロン万能試験機 RTF-2410)を用いて、引張速度1.0cm/秒、ロードセル50Nの条件で10cm引張試験を行った。その際に測定される単位幅あたりの引張強度の極大値の平均を計算し、本操作を3回繰り返した平均値をとることによって表面繊維層/スクリム交絡強度とした。
以下の評価基準で評価した。
×:4N/cm未満の強度を有する。
〇:4N/cm以上の強度を有する。
(6)500gf/cm定荷重伸度
人工皮革をJIS-L-1096(2015年度版):8-14「引張強さ及び伸び率」(A法:ストリップ法)に従って試験片の幅2.5cm、つかみ間隔10cm、10cm/分の定速伸張法により、500g/cm荷重時点の伸度を計測した。
(7)自動車天井材ストレッチ適性
得られた人工皮革の裏面に下記の組成の接着剤溶液を、コンマコーターを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥させ、ポリウレタン樹脂接着層を有する人工皮革を得た。
(接着剤溶液組成)
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂溶液(固形分35%、水65%):100部
カルボジイミド系架橋剤(官能基数3以上):10部
増粘剤(ポリアクリルアミド):1部
消泡材:0.1部
こうして得た接着剤層を有する人工皮革を図11に示す車両用ルーフパネルテストピース(PET製)に重ね合わせ120℃に加熱した金属製ニップロールを用いた熱圧着により貼り合わせた。次に、72時間60℃にてエージングをおこなうことにより、人工皮革とテストピースを強固に貼り合わせた。得られたテストピースの空白で示された2つの穴部にあたる部分に貼られているポリウレタン樹脂接着層を有する人工皮革を、トムソン型打ち抜き機で打ち抜き、以下の評価基準にて自動車天井材ストレッチ適性として評価した。
(評価基準)
×:皺が入る、端部がひきつる、穴部から捲れが起こるなどにより、良好に貼り合わせすることができなかった。
〇:良好に貼り合わせできた。
[実施例1]
直接紡糸法によって単繊維繊度0.15dtex、融点255℃のポリエチレンテレフタレート繊維を製造し、長さ5mmに切断して主体繊維とした。熱融着繊維として、融点178℃のポリエチレンテレフタレートコポリマーからなる単繊維繊度0.7dtex、長さ5mmの全融タイプ熱融着性繊維(ユニチカ(株)製キャスベン8000)を用いた。これらの短繊維を、主体繊維:熱溶融糸=90:10の重量比率となるよう水中に分散させてスラリーを作製した。このスラリーから抄造法によって目付130g/m2の表面繊維用抄造シートを作製した。また、直接紡糸法によって単繊維繊度0.15dtex、融点255℃のポリエチレンテレフタレート繊維を製造し、長さ5mmに切断して主体繊維とした。熱融着繊維として、融点178℃のポリエチレンテレフタレートコポリマーからなる単繊維繊度0.7dtex、長さ5mmの全融タイプ熱融着性繊維(ユニチカ(株)製キャスベン8000)を用いた。これらの短繊維を、主体繊維:熱溶融繊維=97:3の重量比率となるよう水中に分散させてスラリーを作製した。このスラリーから抄造法によって目付50g/m2の裏面繊維用抄造シートを作製した。これら2層を織物スクリムと積層し、表面繊維層/スクリム層/裏面繊維層の3層構成とした。得られた3層積層体を、直進流噴射ノズルを用いた高速水流を噴射して絡合させて交絡した後に、エアースルー方式の乾燥機を用いて、130℃で5分間乾燥して、3層構造の不織布を得た。尚、スクリム層にはMD方向の織密度とCD方向の織密度の和が120(本/2.54cm)、166dtex/48fのポリエチレンテレフタレート繊維からなる目付100g/m2の織物を用いた。
得られた不織布の表面繊維層の表面を400メッシュのサンドペーパーでバフィングすることによって起毛処理した後に、東洋精機製作所製 二軸延伸試験装置X4HDHTに不織布をMD・CD方向にそれぞれ収縮率5%となるようにたるませ、圧縮エア式グリップにより両辺の中心と四隅を固定した。その後、チャンバー内にて不織布を5分間、190℃で熱アニール処理し、人工皮革用不織布を得た。次いで青色分散染料(BlueFBL:住友化学製)を用い、液流染色機にて130℃で染色し、80℃で還元洗浄処理を行うことでスエード調の人工皮革を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例2]
実施例1において裏面繊維層の重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5としたこと以外は同様としてスエード調の人工皮革2を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの目付を110g/m2としたこと以外は同様としてスエード調の人工皮革3を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=80:20、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融糸=96:4としたこと以外は同様としてスエード調の人工皮革4を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例5]
実施例1においてポリエチレンテレフタレート繊維の短繊維繊度を0.1dtex、熱融着繊維の繊度を1.1dtex、表面繊維用抄造シートの目付を150g/m2としたこと以外は同様としてスエード調の人工皮革5を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、熱融着繊維の繊度を1.1dtex、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融糸=96:4、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=93:7とした以外は同様としてスエード調の人工皮革6を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、熱融着繊維を融点110℃のポリエチレンテレフタレートコポリマーからなる単繊維繊度2.2dtex、長さ5mmの全融タイプ熱融着性繊維(ユニチカ(株)製メルティ4000)に変更し、表面繊維用抄造シートの目付を150g/m2、裏面繊維用抄造シートの目付を50g/m2とし、熱アニール処理時の温度を125℃としたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革7を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、スクリム層の織糸の繊度を75デニールに変更し、表面繊維用抄造シートの目付を90g/m2とし、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5としたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革8を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例9]
実施例1において、スクリム層の織糸の繊度を75デニールに、スクリム層の織密度の和を100本/2.54cmに、表面繊維用抄造シートの目付を80g/m2に、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=92:8に、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5にしたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革9を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例10]
実施例1において、スクリム層の織糸の繊度を75デニールに、スクリム層の織密度の和を130本/2.54cmに、熱融着繊維を融点110℃のポリエチレンテレフタレートコポリマーからなる単繊維繊度2.2dtex、長さ5mmの全融タイプ熱融着性繊維(ユニチカ(株)製メルティ4000)に、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5に、表面繊維用抄造シートの目付を80g/m2に、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=97:3に、熱アニールの温度を125℃にしたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革10を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例11]
実施例1において、スクリム層の織糸の繊度を75デニールに、スクリム層の織密度の和を140本/2.54cmに、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=96:4に、表面繊維用抄造シートの目付を65g/m2に、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=97:3にしたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革11を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[実施例12]
実施例1において、スクリム層の織密度の和を140本/2.54cmに、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5に、表面繊維用抄造シートの目付を200g/m2に、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=97:3にしたこと以外は同様にしてスエード調の人工皮革12を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、ピンテンター乾燥機を用い、MD、CD方向に基布をたるませることなく190℃で5分間加熱し、熱アニール収縮を行わなかったこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革13を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの目付を140g/m2にし、ピンテンター乾燥機を用い、MD、CD方向に基布をたるませることなく190℃で5分間加熱し、熱アニール収縮を行わなかったこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革14を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、主体繊維の長さを2mmとし、熱融着繊維の単繊維繊度を1.1dtexとし、表面繊維用抄造シートの目付を140g/m2とし、ピンテンター乾燥機を用いMD、CD方向に基布をたるませることなく190℃で5分間加熱し、熱アニール収縮を行わなかったこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革15を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの目付を150g/m2とし、熱アニール収縮ではなく逆にMD、CD方向にそれぞれ3%伸長させたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革16を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの目付を20g/m2とし、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=70:30とし、ピンテンター乾燥機を用いMD、CD方向に基布をたるませることなく190℃で5分間加熱し、熱アニール収縮を行わなかったこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革17を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例6]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの目付を125g/m2とし、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=97.5:2.5とし、ピンテンター乾燥機を用いMD、CD方向に基布をたるませることなく190℃で5分間加熱し、熱アニール収縮を行わなかったこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革18を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例7]
実施例1において、表面繊維用抄造シートの目付を115g/m2とし、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5とし、熱アニール収縮ではなく逆にMD、CD方向にそれぞれ3%伸長させたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革19を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例8]
実施例1において、熱融着繊維を融点110℃のポリエチレンテレフタレートコポリマーからなる単繊維繊度2.2dtex、長さ5mmの鞘芯タイプ熱融着性繊維(ユニチカ(株)製メルティ4080)を用い、表面繊維用抄造シートの目付を139g/m2とし、熱アニール収縮ではなく、温度125℃でMD、CD方向にそれぞれ3%伸長させながら加熱処理したこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革20を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例9]
実施例1において、スクリム層の織糸の繊度を75デニールに、スクリム層の織密度の和を75本/2.54cmに、表面繊維用抄造シートの目付を100g/m2に、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=95:5とし、熱アニール収縮ではなく逆にMD、CD方向にそれぞれ3%伸長させたこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革21を得た。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例10]
実施例1において、スクリム層の織糸の繊度を100デニールに、スクリム層の織密度の和を120本/2.54cmに、熱融着繊維の繊度を1.1dtexに、表面繊維用抄造シートの目付を220g/m2に、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=80:20に、ピンテンター乾燥機を用いMD、CD方向に基布をたるませることなく130℃で5分間加熱したこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革22を得た。溶融樹脂の形成は確認できなかった。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
[比較例11]
実施例1において、熱融着繊維を融点110℃のポリエチレンテレフタレートコポリマーからなる単繊維繊度2.2dtex、長さ5mmの鞘芯タイプ熱融着性繊維(ユニチカ(株)製メルティ4080)を用い、スクリム層の織糸の繊度を75デニールに、スクリム層の織密度の和を120本/2.54cmに、表面繊維用抄造シートの目付を180g/m2に、表面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=85:15に、裏面繊維用抄造シートの重量比率を主体繊維:熱溶融繊維=96:4に、ピンテンター乾燥機を用いMD、CD方向に基布をたるませることなく80℃で5分間加熱したこと以外は同様にして、スエード調の人工皮革22を得た。溶融樹脂の形成は確認できなかった。得られた人工皮革の製造条件と評価結果を以下の表1に示す。
Figure 2022179174000001
本発明の人工皮革では、熱可塑性樹脂が、繊度0.01dtex以上0.5dtex以下の主体繊維同士を、交絡組織がリラックスした状態で、接着し、かつ、該熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、塊状樹脂の形態で、該表面繊維層の表面に、所定のサイズで露出しているため、風合に優れ、ストレッチ性が高く、かつ、耐摩耗性も高い。また、本発明の人工皮革は、用いる主体繊維と熱可塑性繊維をポリエステル系繊維とし、水系ポリウレタンのごとき弾性高分子を含まないものとすれば、リサイクル性に優れ、また、燃焼時の発生ガスを抑制できる点で耐燃焼性にも優れるものとなる。本発明の人工皮革は、高いストレッチ性を有するため、特に、車の天井材としてのストレッチ適性に優れ、カーンテリア素材として好適に利用可能である。さらに本発明の人工皮革は、カーインテリア素材の他、鉄道車両、航空機、船舶などのシート表皮材や内装材、衣料、靴、鞄、スマートフォンケース、インテリア、家具類などの分野においても好適に利用可能である。
1 主体繊維
2 塊状樹脂
3 未溶融樹脂(熱溶融糸)
4 鞘芯繊維

Claims (9)

  1. 第一の表面を構成する表面繊維層を少なくとも含む人工皮革であって、以下の特徴:
    (1)該表面繊維層が、少なくとも1種の主体繊維と該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂を含む;
    (2)該主体繊維の繊度が、0.01dtex以上0.5dtex以下である;
    (3)該熱可塑性樹脂が、該主体繊維同士を接着し、かつ、該熱可塑性樹脂の少なくとも一部が、塊状樹脂の形態で、該表面繊維層の表面に、該塊状樹脂1個当たり0.66×10-92以上5.0×10-92以下の投影面積平均値で、露出している;
    (4)該表面繊維層が、織物であるスクリム層と交絡されている;及び
    (5)該人工皮革において、MD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)とCD方向の500gf/cm定荷重伸度(%)の和を(A)とし、該スクリム層のMD方向の織密度(本/2.54cm)とCD方向の織密度(本/2.54cm)の和を(B)とし、該スクリム層を構成する織糸の繊度(デニール)を(C)としたとき、以下の式:
    220000≦(A)×(B)×(C)≦600000
    を満たし、かつ、MD方向の500gf/cm定荷重伸度が3%以上である;
    を有する、人工皮革。
  2. 前記主体繊維は、ポリエステル系繊維である、請求項1に記載の人工皮革。
  3. 前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂である、請求項1又は2に記載の人工皮革。
  4. 前記スクリム層は、ポリエステル系樹脂繊維からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の人工皮革。
  5. 以下の工程:
    (1)主体繊維と、該主体繊維の融点よりも20℃以上170℃以下低い融点を持つ熱可塑性樹脂からなる熱融着繊維とを、該熱融着繊維の重量比率が3%以上25%以下となるように、混合し、次いで、スクリム層上で湿式抄造により交絡させ、次いで、水流交絡処理またはニードルパンチング法により、該スクリム層と交絡された表面繊維ウェブを形成する;及び
    (2)得られた表面繊維ウェブの交絡組織を、該熱融着繊維の融点以上、該主体繊維の融点未満の温度で、熱アニール収縮によりリラックスさせて表面繊維層を形成する;
    を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の人工皮革の製造方法。
  6. 前記工程(1)における主体繊維の長さが、2.5mm以上90mm以下である、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記工程(1)における熱融着繊維の繊度が、0.5dtex以上2.2dtex以下である、請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. KESの純曲げ測定における単位幅あたりの曲げ剛性が1.0gfcm2/cm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の人工皮革。
  9. JIS-L-1096 E法(マーチンデール法)に準拠し、押圧荷重12kPaで表面を摩耗したとき、摩耗回数50000回未満では、スクリムが露出しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の人工皮革。
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